説明

リアクトル及びその製造方法

【課題】リアクトルに用いられる絶縁被覆コイルにおける隣合う線材と線材との間の絶縁膜の膜厚を薄くし得て絶縁被覆コイルを小径化、小型化でき、併せてリアクトルを小型化し且つ安価とすることを目的とする。
【解決手段】軟磁性粉とバインダとの混合材の成形体で構成したコア16の内部に、コイル10の全体を樹脂被覆層22にて外側から包み込んで成る絶縁被覆コイル24を内蔵したリアクトル15において、コイル10を、絶縁被膜の付いていない平角線材を線材6と線材6との間に、予め膜状に成形してある絶縁性のフィルム7を挟み込む状態に巻回したフラットワイズコイルとなし、また絶縁被覆コイル24の樹脂被覆層22を熱可塑性樹脂の射出成形体で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は軟磁性粉末を含んだコアの内部に導電性の導体線材を巻いて成るコイルを内蔵したリアクトル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コアの内部に絶縁被膜付きの導体線材、詳しくは外表面の全面に絶縁被膜を付着形成した絶縁被膜付きの導体線材を巻いて成るコイルを内蔵した、インダクタンス部品としてのリアクトルが従来様々な分野に用いられている。
例えばハイブリット自動車や燃料電池自動車,電気自動車等ではバッテリーと、モータ(電気モータ)に交流電力を供給するインバータとの間に昇圧回路が設けられており、その昇圧回路にインダクタンス部品であるリアクトル(チョークコイル)が用いられている。
例えばハイブリット自動車では、バッテリーの電圧は最大で300V程度であり、一方モータには大出力が得られるように600V程度の高電圧を印加する必要がある。そのための昇圧回路用の部品としてリアクトルが用いられている。
このリアクトルは太陽光発電の昇圧回路用その他にも広く用いられている。
【0003】
従来においてこのリアクトルは、一対のU字状のコア片をそれぞれの端面間に所定のギャップを生ぜしめる状態に配置して成るコアの周りに、コイルを巻回した形態のものが一般に使用されていた。
【0004】
しかしながらこの形態のリアクトルの場合、コイルが外部に露出した状態にあるため、コイルの励磁に伴いコイル振動が発生してこれが騒音となったり、またコイル片間のギャップの寸法を高精度で定めなければならない他、コアとコイルとの組付けの工程が必要である等の問題があり、そこで軟磁性粉と樹脂との混合材から成る成形体(軟磁性樹脂成形体)にてコアを構成し、そしてそのコアの内部にコイルを埋込状態に一体に内包した形態のリアクトルが提案されている。
【0005】
例えば下記特許文献1,特許文献2にこの種形態のリアクトル及びその製造方法が開示されている。
これら特許文献1,特許文献2に示すリアクトルの製造方法は、外ケースないし容器の内部にコイルをセットした状態で、熱硬化性の樹脂の液に軟磁性粉を分散状態に混合したものを、外ケースないし容器の内部に注入し、そしてその後これを所定温度に加熱し且つ所定時間かけて樹脂液を硬化反応させ、以てコアを成形すると同時にコイルと一体化させるといったものである。
【0006】
このようにして得たリアクトルの場合、コイル振動に伴う騒音の発生を防止でき、またコア片とコア片との間にギャップを高精度で設定するといったことを必要とせず(成形体コアの軟磁性粉と軟磁性粉との間に微小なギャップが形成される)、更にコアとコイルとの組付けの工程を必要としない他、コイルをコア(軟磁性樹脂成形体)にて外側から保護できる等の利点を有する。
【0007】
しかしながらこのように絶縁被膜付きのコイルを容器内にセットした状態で、そこに軟磁性粉を分散状態に混合した熱硬化性の樹脂の液を注入したとき、図11の模式図に示しているように、その際の注入の圧力や流動の圧力で軟磁性粉14(軟磁性粉14としては硬質の金属鉄粉等が用いられる)がコイル10の線材11表面の絶縁被膜12に強く当ったり擦れを生じたりし(リアクトルのコアの場合、通常鉄粉等の軟磁性粉が体積%で50〜70%程度含有されている)、それによってコイル10表面の絶縁被膜12が破れたりする等損傷してしまう問題が生ずる。
【0008】
コイル10の上記の絶縁被膜12は、通常絶縁性の樹脂(例えばポリアミドイミド)を溶剤に溶かして所定粘性とした液(ワニス)を、コイル10を形成する線材11の表面に塗布し、その後これを乾燥及び硬化反応させて被膜形成することによって得られているが、この絶縁被膜12は膜厚が平均で25μm程度のものであり、そのような絶縁被膜12に対してコアの成形時に鉄粉等の軟磁性粉14が強く当たったり擦れを生じたりすることで絶縁被膜12が損傷してしまう。
而してこのようにして絶縁被膜12が損傷するとコイル10の絶縁性能が低下し、リアクトルにおける耐電圧(絶縁破壊電圧)特性が低下してしまう。
【0009】
その外、容器内にコイルをセットして軟磁性粉と熱硬化性樹脂の液との混合材を注入したとき、その注入圧や流動圧によってコイルが変形してしまう問題を生ずる。
【0010】
コイルは、それ自身あたかもアコーディオンのように簡単に伸張変形したりねじれ変形したりし易いものであり、軟磁性粉と熱硬化性樹脂の液との混合材を容器内に注入したとき、その注入の圧力や流動圧によって容易にコイルが変形してしまうのである。
そしてこのようにしてコイルが変形してしまうとリアクトルとしての性能が損なわれてしまう。
【0011】
これに加えて熱硬化性樹脂が硬化する際の硬化収縮によって絶縁被膜に応力が加わり、このときにも絶縁被膜がその応力によって損傷してしまうといった問題が生ずる。
【0012】
リアクトルの製造方法としては、他に、コイルを成形型のキャビティ内にセットしておき、軟磁性粉と熱可塑性樹脂との混合材をキャビティ内に射出し、以てコアを射出成形するとともに、その内部にコイルを埋込状態に一体化する方法が考えられる。
【0013】
特にこのような射出成形にてコアを成形する場合、強い射出圧及び流動圧の下にコイルがより変形し易いとともに、コイルの絶縁被膜12に対して軟磁性粉が強く当り或いは擦れを生じ、絶縁被膜が一層傷付き易い問題を生ずる。
【0014】
また特に射出成形にてコアを成形する場合、成形時の加熱による膨張と冷却による収縮とによって絶縁被膜に熱応力が加わり、その熱応力によって絶縁被膜が損傷してしまうといった困難な問題が発生する。
【0015】
軟磁性粉を含んだ熱可塑性樹脂は、成形型のキャビティ内への射出時において温度が例えば300℃以上の溶融状態で液状のものであり、射出後に成形型で冷却されて固化し成形体となる。
【0016】
その際に或いはその後成形型から取り出されて室温まで冷却される過程で、成形体としてのコアが大きく収縮しようとする。そしてそのコアの収縮の際にコアとコイルとの収縮量の差に起因してコイルの絶縁被膜に大きな応力が作用し、そのことによって絶縁被膜に歪みが発生し、またその歪みによって絶縁被膜が破れたりする等損傷してしまう。
これもまたリアクトルとしての耐電圧特性に悪影響を及ぼす。
【0017】
このような問題の対策として、絶縁被膜付きのコイルの全体を電気絶縁性の樹脂にて外側から包み込む状態に被覆して、予めコイルを絶縁被覆コイルとなしておき、その状態でこれを一体に内包する状態にコアを成形するといったことが考えられる。
従来において、コイルをこのような絶縁被覆コイルとなしておいて、その状態でコアを成形する点については例えば下記特許文献1等に開示されている。
【0018】
ところで、コイルの全体を外側から包み込む状態に被覆する樹脂被覆層をディッピング手法にて形成すると、即ち樹脂の液にコイル全体を浸漬し、これによりコイル全体を被覆する状態に塗布した樹脂の液を、その後硬化反応させて上記の樹脂被覆層を形成する方法の場合、必然的に樹脂被覆層の厚みは20μm程度の薄いものとなる。
【0019】
電気部品としてのコイルは、他部品へ絶縁性能として、安全率を考慮して定格電圧の5〜20倍の耐電圧特性が要求される。
例えば、上記のハイブリット自動車の昇圧回路用に用いられるリアクトルの場合、耐電圧3000V程度の高い耐電圧が必要とされるが、そのためには樹脂被覆層の厚みは最低でも0.1mm以上必要である。しかるに上記のディッピング手法により形成される樹脂被覆層ではその厚みが不十分である。
【0020】
尤も、ディッピング及びその後の硬化を何回も繰返し行うことによって、樹脂被覆層の厚みを0.1mm以上に厚くするといったことも可能であるが、この場合、ディッピング及び硬化反応の繰返しを何回も行わなければならず、処理コストが非常に高価なものとなってしまう。
【0021】
一方、従来の絶縁被膜付き線材において、線材の全外表面に亘って固着形成される絶縁被膜は、上記のように線材の外表面に樹脂の液を塗布し硬化させることによって形成しているが、この絶縁被膜は、隣り合う線材同士の耐電圧の観点で逆に膜厚が厚過ぎるといった問題がある。
【0022】
リアクトル用のコイルの線材として、従来平角線材が用いられているが、この線材の外表面に固着形成される絶縁被膜の膜厚は20μm以上の膜厚、通常は20〜30μmの膜厚である。
従ってコイルにおける隣合う線材と線材との間に介在する絶縁被膜の全厚みは20〜30μmの2倍の40〜60μmの厚みとなる。
【0023】
しかしながらコイルにおける隣合う線材と線材との電位差はせいぜい数十ボルト程度であり、安全率を考慮しても耐電圧は100V〜200V程度である。このような耐電圧に対して40〜60μmの絶縁被膜は、その厚みが不必要に厚いものである。
その結果、同じ巻数の下でコイル外径が大径化し、コイルが大型化してしまう。
そしてコイルの大径化によって、コイルを構成する線材の全線長が長くなり、その分コイルの所要コストが高くなるのに加えて、コイルにおける直流重畳電流によるコイルからの銅損(以下、直流銅損)が大となり、このことがリアクトルの性能の低下に繋がるといった問題を生ずる。
【0024】
更にコイルが大径化し、大型化することによって、リアクトル自体も大型化してしまい、使用するコア材の量も必然的に多くなり、これもまたリアクトルのコストを押し上げる要因となる。
【0025】
加えて従来の絶縁被膜付きの平角線材は、その製造方法による制約から、線材の扁平度を十分に高めることが難しく、その扁平度はせいぜい10程度であって、これよりも扁平度の高いものを得ようとするとそのコストが急激に高くなってしまう。
而して平角線材の扁平度が一定以下に制約されることから、これを高周波で使用したときに表皮効果による発熱が大となってしまう。
【0026】
尚本発明に対する先行技術として、下記特許文献3には「電磁コイルの製造方法及びその装置」についての発明が示され、そこにおいてシート状導体(線材)とPETフィルム等の絶縁シートを所定回数共巻状態に巻回し、その後エポキシプリプレグテープで幅方向外側の絶縁層を形成し且つこれを加熱硬化させる点が、特許文献3に開示の発明に対する従来技術として開示されている。
【0027】
しかしながらこの特許文献3に開示のものは、コイル全体を包み込む状態に被覆する絶縁被覆の形態が本発明と異なっており、更にこの特許文献3の発明では、上記シート状導体と絶縁シートとを所定回数共巻きして線材と線材との間の絶縁層を形成する方法ではコイルの小型化の障害になるとするもので、本発明の成立を否定する内容のものであり、従って本発明と異なったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2007−27185号公報
【特許文献2】特開2008−147405号公報
【特許文献3】特開2000−21669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は以上のような事情を背景としてなされたもので、リアクトルに用いられる絶縁被覆コイルにおける隣合う線材と線材との間の絶縁膜の膜厚を、所要の耐電圧を保持しつつ薄くし得て絶縁被覆コイルを小径化、小型化でき、コイルにおける直流銅損を低減し得るとともに、併せて絶縁被覆コイルのための所要コストを安価とすること、またリアクトルを小型化し得てコア材に要するコストを安価とすることを目的とする。
また本発明の他の目的は、コイルにおける平角線材の扁平度を従来に増して高めることを可能とし、これに伴って高周波で使用したときの表皮効果による発熱を抑制可能とすることを目的とする。
更に本発明の他の目的は、絶縁被覆コイルにおける樹脂被覆層を1回の成形で十分な厚みで形成でき且つこれを短時間で容易に成形できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
而して請求項1はリアクトルに関するもので、軟磁性粉とバインダとの混合材の成形体で構成したコアの内部に、導体線材を巻回したコイルの全体を絶縁性の樹脂被覆層にて外側から包み込んで成る絶縁被覆コイルを内蔵したリアクトルであって、前記コイルは、絶縁被膜の付いていない平角線材を該線材と線材との間に、予め膜状に成形してある絶縁性のフィルムを挟み込む状態に該線材の厚み方向に巻回したフラットワイズコイルとなしてあるとともに、前記絶縁被覆コイルの前記樹脂被覆層は熱可塑性樹脂の射出成形体にて構成してあり、且つ該樹脂被覆層は、前記コイルの外周面を被覆する外周被覆部を含む成形体と、該コイルの内周面を被覆する内周被覆部を含む成形体とを含んで構成してあり、且つそれら成形体を射出成形により接合して一体化してあることを特徴とする。
【0031】
請求項2のものは、請求項1において、前記コアが、前記軟磁性粉と前記バインダとしての熱可塑性樹脂との混合材を射出成形して成る成形体で構成してあることを特徴とする。
【0032】
請求項3はリアクトルの製造方法に関するもので、長尺を成す前記平角線材を、該平角線材に対応した幅で長尺に成形してある前記フィルムとともに且つ該フィルムを該線材と線材との間に挟み込むようにして共巻きし、前記コイルを製造する工程Aと、前記樹脂被覆層を射出成形して該コイルを該樹脂被覆層で被覆し、前記絶縁被覆コイルを製造する工程Bと、該絶縁被覆コイルを外側から包み込む状態に前記コアを成形する工程Cと、を経て前記リアクトルを製造し、且つ前記樹脂被覆層を射出成形する工程Bでは、前記コイルの内周面又は外周面に対して該樹脂被覆層用の1次成形型を接触させ、該1次成形型にて該コイルを該内周面又は外周面において径方向に位置決めし拘束した状態で、該コイルの外周側又は内周側に形成される該1次成形型の1次成形キャビティに樹脂材料を射出して、前記樹脂被覆層における外周被覆部又は内周被覆部を含む1次成形体を成形し且つ該コイルと一体化する1次成形工程と、しかる後該1次成形体を該コイルとともに該樹脂被覆層用の2次成形型にセットして、該コイルの内周側又は外周側に形成される該2次成形型の2次成形キャビティに前記樹脂材料を射出して、前記樹脂被覆層における内周被覆部又は外周被覆部を含む2次成形体を成形し且つ該コイル及び前記1次成形体と一体化する2次成形工程と、に分けて射出成形を行うことを特徴とする。
【0033】
請求項4のものは、請求項3において、前記コアの成形工程では、前記絶縁被覆コイルを成形型のキャビティにセットした状態で、該キャビティに前記軟磁性粉と前記バインダとしての熱可塑性樹脂との混合材を前記絶縁被覆コイルを隙間なく包み込む状態に射出成形し、前記請求項2に記載のリアクトルを製造することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0034】
以上のように請求項1のものは、絶縁被膜の付いていない平角線材を、線材と線材との間に予め膜状に成形してある絶縁性のフィルムを挟み込む状態に、線材の厚み方向に巻回してフラットワイズコイルとなし、また絶縁被膜コイルの樹脂被覆層を熱可塑性樹脂の射出成形体で構成して、その絶縁被覆コイルとこれを内蔵したコアとでリアクトルを構成するようになしたものである。
【0035】
この請求項1によれば、コイルにおける線材(平角線材)と線材との間に介在して、それら線材同士を絶縁する絶縁膜の厚みを、用いるフィルムの厚みを変えることで自在に異ならせることができるとともに、求められる耐電圧を確保しつつ、その膜厚を最小限の膜厚とすることが可能である。
【0036】
これによりコイル外径を小径化し得てコイルを小型化することができ、従ってまたリアクトルを小型化することが可能となる。
またコイルを構成する線材の線長を短くすることができ、これにより線材のための所要コストを安価となし得るとともに、併せてリアクトルのための所要コア材を少量化し得て、コア材のためのコストも安価となすことができる。
更に線材の線長を短くできることによって、動作時における直流銅損を少なくすることができる。
【0037】
またこの請求項1のリアクトルにおいては、絶縁被膜の付いていない平角線材を用いてコイルを構成することができるため、かかる線材として圧延加工した線材を用いることが可能となり、線材に要する所要コストを低減することができる外、扁平度が10を超える高扁平度の線材を容易に製造することができる。
而してこのような高扁平度の線材を用いることが可能となることによって、高周波で使用したときの表皮効果によるコイルの発熱を効果的に抑制することができる。
【0038】
尚、本発明に従ってコイルを構成した場合、線材の幅方向の端面は露出した状態となる。
そこでこの請求項1では、コイルの全体を絶縁性の樹脂被覆層にて外側から包み込み、コイルを被覆する。そして線材と線材との間の絶縁膜及び樹脂被覆層の全体によって、コイルに対し十分なる絶縁性を与えることができる。
この請求項1では、その絶縁被覆コイルにおける樹脂被覆層を、熱可塑性樹脂の射出成形体にて構成し、且つその樹脂被覆層を、コイルの外周面を被覆する外周被覆部を含む成形体と、コイルの内周面を被覆する内周被覆部を含む成形体とを含み、且つそれら2つの成形体を射出成形により接合し一体化した形態で構成する。
樹脂被覆層をこのように2つの成形体を含んで構成し且つそれらを射出成形により接合一体化することで、樹脂被覆層を容易に射出成形にて成形することができる。
【0039】
この場合、樹脂被覆層を簡単な成形操作によって形成でき、しかも樹脂被覆層を十分な肉厚で形成することができ、コイルに対し高い耐電圧(絶縁破壊電圧)特性を付与することができる。
尚本発明において、リアクトルは以下のような構成とし、また以下のような方法で製造することができる。
【0040】
(軟磁性粉末の成分について)
本発明では軟磁性粉末として純Fe若しくはSiを0.2〜9.0%(質量%以下同じ)含有した組成の粉末を用いるのが望ましい。
純Feはコアロスが高い難点がある一方で安価で取扱い易く、磁性材料中では磁束密度がパーメンジュールに次いで高い特徴を有し、従ってこの特徴を重視する場合には純Feの粉末を用いるのが望ましい。
【0041】
Siを0.2〜9.0%含有したFe基軟磁性合金の粉末は、Siの増加に伴い純Feより磁束密度は低くなるが、コアロスも小さくできるため、両者のバランスが良く取扱い易い利点を有する。
特にSiの含有量が6.5%のときコアロスは極小値を取り、磁束密度も比較的高いため、優れた軟磁性材料となる。
6.5%を超えるとコアロスは増加に転じるが、それでも9.0%までは磁束密度も高いため十分実用的である。
但し9.0%を超えると磁束密度は小さく、コアロスは大きくなる。
一方0.2%未満ではほぼ純Feと同じ特徴となる。
【0042】
Si含有のFe基軟磁性合金の粉末において、Siを6〜7%含有したものは、インダクタンス特性と発熱特性とのバランスが良く、これらを重視する場合にはSiを6〜7%含有した組成のものを用いるのが望ましい。
他方Siを2〜3%含有したものは、コストとインダクタンス特性及び発熱特性等の性能のバランスが良く、この点を重視する場合にはSiを2〜3%含有したものを用いるのが望ましい。
【0043】
本発明では軟磁性粉末に、必要に応じてCr,Mn,Niの1種以上を任意元素として添加しておくことができる。
但しCrを添加する場合には、この添加量を5質量%以下とするのが良い。その理由はコアロスをより低減し易くなることによる。
またMn,Niは合計で1質量%以下とするのが良い。その理由は低い保磁力を維持し易くなることによる。
【0044】
(粉末について)
上記軟磁性粉末は、ガス噴霧、水噴霧、遠心噴霧、これらの組み合わせ(例えば、ガス・水噴霧)、ガス噴霧直後に速やかに冷却する等によるアトマイズ法や、ジェットミル、スタンプミル、ボールミル等による機械粉砕法や、化学還元法などによる粉末を用いることができる。
【0045】
比較的歪みが小さい、球状になりやすく分散性に優れる、粉砕に機械的エネルギーが不要であるなどの観点から、上記軟磁性粉末はアトマイズ法による粉末とするのが良い。より好ましくは歪みが小さく、酸化も少ないなどの観点からガスアトマイズ法による粉末とするのが良い。
【0046】
上記軟磁性粉末の粒径は、例えば、アトマイズ時の粉末の歩留まり、混練時の混練トルクや焼き付き性、射出成形時の流動性、磁心で使用される周波数などの観点から1〜500μmの範囲内、好ましくは5〜250μmの範囲内、より好ましくは10〜150μmの範囲内とするのが良い。
【0047】
粉末は粒径が小さくなるほど渦電流損失の低減には効果が大きいものの、逆にヒステリシス損失は大きくなる傾向がある。したがって粉末の歩留り(すなわちコスト)と得られる効果(すなわちコアロス)とのバランス、使用される周波数などから、粉末の粒径の上下限や粒径の分布などを決めれば良い。
【0048】
上記軟磁性粉末は、歪みの除去や結晶粒の粗大化を図るため、熱処理されていても良い。熱処理条件としては、水素、アルゴンの何れか一方または双方等の雰囲気下、温度700℃〜1000℃、時間30分〜10時間などを例示することができる。
【0049】
軟磁性粉末とともにコア材を構成するバインダとしては、各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の樹脂,ゴム,熱可塑性エラストマー若しくはそれらの組み合わせを用いることができる。好ましくは耐熱性、機械的強度などの観点から樹脂を好適に用いることができる。
【0050】
その樹脂としては、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂,ポリアミド(PA)樹脂,ポリエステル樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,エポキシ樹脂(例えばコアをポッティング成形する場合等)などを例示することができる。
このうち耐熱性、難燃性、絶縁性、成形性、機械的強度などの観点からポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂が好適である。
【0051】
軟磁性粉末とバインダとの混合材における軟磁性粉末の割合は、磁束密度を高めたり、透磁率を適切な範囲としたり、熱伝導率を高めたりするなどの観点から30体積%以上、好ましくは50体積%以上、より好ましくは60体積%以上とするのが良い。
上記混合材には、軟磁性粉末、上記の有機高分子から成るバインダ以外にも必要に応じて酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、安定剤、強化剤、着色剤などの各種添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0052】
軟磁性粉を含んだ混合材は、例えば軟磁性粉末と、粉末状等の有機バインダと、必要に応じて添加される各種の添加物とを適当な割合となるように配合し、これを2軸混練機等の混練機を用いてバインダを溶融状態として、各種配合物を練り合わせるなどの工程を経ることにより製造することができる。
【0053】
(成形方法について)
成形方法は、コアを射出成形する場合には、射出成形装置に、軟磁性混合材として、予め軟磁性粉末と有機バインダとを混練した混練材を供給し、これを可塑化して(溶融状態にして)、金型内に射出することにより成形する方法を用いることができる。また他にも、射出成形装置に、軟磁性粉末と粉末状等の有機バインダとをそれぞれ単独または混合状態で供給し、装置中にて有機バインダを溶融状態にし、軟磁性粉末とバインダとを混練し、これを金型内に射出するようになすこともできる。
【0054】
軟磁性混合材を金型内に射出した後、適当な時間冷却することで金型のキャビティ形状に応じた所定形状を有する射出成形コアを得ることができる。なお、得られた射出成形コアは、必要に応じて、機械加工等などの加工が施されても良い。
射出成形装置としては、横型射出成形装置、縦型射出成形装置、プランジャー式射出成形装置、スクリュー式射出成形装置、電動式射出成形装置、油圧式射出成形装置、2材射出成形装置、これらを組み合わせた射出成形機装置等を用いることができる。
【0055】
本発明では上記コアを、軟磁性粉とバインダとしての熱可塑性樹脂との混合材(混合材は他の材料を含有していても良い)を射出成形して成る成形体にて構成しておくのが好適である(請求項2)。
このようにすれば、短時間で且つ容易にコアを成形することができる。
【0056】
本発明において、この絶縁膜の厚みは用いるフィルムの膜厚によって定まるものであり、従ってかかるフィルムとして様々な厚みのフィルムを用いることで、絶縁膜の膜厚を自在に異ならせることができる。
而して絶縁膜の膜厚を薄くしておくことで、コイル外径を有効に小径化でき、コイルを小型化することができる。
【0057】
本発明では、線材と線材との間の絶縁膜を形成するフィルムとして樹脂フィルムを用いる場合において、絶縁膜に耐熱性が要求される場合には、樹脂のフィルムとして耐熱性に優れた材質のフィルムを用いる。この場合、ポリイミド(PI)樹脂のフィルム,ポリアミド(PA)樹脂のフィルム,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂のフィルム,ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂のフィルム等を好適に用いることができる。
【0058】
このうちポリイミド樹脂のフィルムは高耐熱,高強度を有し、またポリアミド樹脂のフィルムは高強度,高熱伝導の特性を有するとともに安価であり、またポリテトラフルオロエチレン樹脂のフィルムは高絶縁性を有し、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルムは吸湿性が無視できるほど小さくなおかつ加水分解し難く、更には安価である等の特徴があり、目的に応じてそれらを使い分けることができる。
【0059】
またフィルムの厚みは、好ましい厚みとして、絶縁被膜つきの平角銅線の膜厚を重ね合わせた厚みより薄くでき、フィルムの取り扱い易さという観点から50μm以下とするのが良い。これだけでも圧延平角線が使用できるという利点がある。更には、コイルやコアの小型化・低損失化という観点から30μm以下とするのがより好ましい。更に好ましくは、コイル線間の電位差の数十ボルトに対し安全率をみて最低200Vの耐電圧を有する8〜15μm程度の膜厚とするのが良い。
尚、絶縁破壊耐力は材質と厚みにより異なる。比較的入手し易く膜厚が薄いフィルムの厚みと絶縁破壊耐力は以下のようになる。
ポリイミド樹脂のフィルムは厚み12.5μmの下で絶縁破壊耐力400Vであり、ポリアミド樹脂のフィルムは8μmの厚みの下で絶縁破壊耐力200Vを有し、ポリテトラフルオロエチレン樹脂のフィルムは膜厚12μmの下で1500Vの絶縁破壊耐力を有し、更にポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルムは膜厚12μmの下で200Vの絶縁破壊耐力を有している。いずれも耐電圧200Vは満足しており、これらのものを用いるのが好ましい。
【0060】
本発明のリアクトルはまた、周波数が1〜50kHzの交番磁界中で使用されるもの、例えば上記のハイブリット自動車や燃料電池自動車,電気自動車或いは太陽光発電の昇圧回路に用いられるリアクトルに好適に適用可能である。
【0061】
ところで本発明のリアクトルにおいては、絶縁被覆コイルにおける樹脂被覆層を射出成形による成形体で構成するものであり、この場合、短時間で樹脂被覆層を成形でき、生産性も高いものであるが、このときコイルをどのようにして成形型のキャビティ内に位置決状態に保持するか、また射出圧や流動圧によってコイルの変形をどのようにして防止するかといった点が大きな課題となる。
成形時にコイルが大きく変形してしまうとリアクトルの特性を悪化させてしまう。
【0062】
そこで本発明のリアクトルでは、絶縁被覆コイルにおける樹脂被覆層を、コイルの外周面を被覆する外周被覆部を含む成形体と、コイルの内周面を被覆する内周被覆部を含む成形体とを含んで構成し、且つそれら成形体を射出成形により接合し一体化して構成する。
【0063】
樹脂被覆層をこのように構成することで、絶縁被覆コイルを含むリアクトルを次のようにして製造することができる。
即ち、長尺をなす平角線材を樹脂のフィルムとともに共巻きしてコイルを製造する工程Aと、樹脂被覆層を射出成形して絶縁被覆コイルを製造する工程Bと、絶縁被覆コイルを外側から包み込む状態にコアを成形する工程Cとを経てリアクトルを製造し、そして樹脂被覆層を射出成形する工程Bでは、次のようにして射出成形を行うことができる。
【0064】
即ちこの製造方法では、樹脂被覆層を射出成形する工程を、1次成形工程と2次成形工程とに分けて射出成形する。
具体的には、1次成形工程でコイルの内周面又は外周面に対し樹脂被覆層用の1次成形型を接触させてコイルを径方向に位置決めし拘束した状態で、コイルの外周側又は内周側に形成される1次成形キャビティに樹脂材料を射出して、樹脂被覆層における外周被覆部又は内周被覆部を含む1次成形体を成形し且つコイルと一体化する。
【0065】
そして2次成形工程では、その後において1次成形体をコイルとともに2次成形型にセットし、コイルの内周側又は外周側に形成される2次成形キャビティに上記樹脂材料を射出して、樹脂被覆層における内周被覆部又は外周被覆部を含む2次成形体を成形し、且つコイル及び1次成形体と一体化する。
【0066】
この製造方法では、絶縁被覆コイルを射出成形するに際し、成形を少なくとも2回に分けて行うことで、コイルを成形型により良好に位置決めし保持した状態で絶縁被覆コイル、即ち樹脂被覆層を良好に射出成形することができ、その成形に際してコイルが射出圧や流動圧により位置ずれしたり変形したりするのを良好に防止することができ、且つ樹脂被覆層をコイルを被覆する状態に良好に成形することができる。
【0067】
尚、請求項2に従ってリアクトルのコアを射出成形の成形体にて構成する場合においては、リアクトルの製造、具体的にはコアの成形を次のようにして行うことができる。
即ち絶縁被覆コイルを成形型のキャビティにセットした状態で、キャビティに軟磁性粉とバインダとしての熱可塑性樹脂との混合材を、絶縁被覆コイルを隙間無く包み込む状態に射出成形し、コアを成形すると同時にこれを絶縁被覆コイルと一体化する(請求項4)。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態であるリアクトルの図である。
【図2】図1のリアクトルを分解して示した斜視図である。
【図3】図2の絶縁被覆コイルを樹脂被覆層とコイルとに分解して示した斜視図である。
【図4】図3の絶縁被覆コイルを別の角度から見た図及び上、下コイルに分解して示した図である。
【図5】同実施形態の絶縁被覆コイルの成形手順の説明図である。
【図6】図5に続く成形手順の説明図である。
【図7】図1のリアクトルの製造方法の工程説明図である。
【図8】同実施形態における絶縁被覆コイルの成形方法の説明図である。
【図9】図1のリアクトルにおけるコアの成形方法の説明図である。
【図10】同実施形態におけるコイルの製造方法の説明図である。
【図11】本発明の背景の問題点を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1において、15はリアクトルで、軟磁性樹脂成形体から成るコア16の内部にコイル10が、後述の絶縁被覆コイル24として埋込状態に一体化されている。即ちコア16は、ギャップをもたない構造のリアクトルとなるように作製してある。
【0070】
この実施形態において、コイル10は絶縁被膜の付いていない金属単体の平角線材を、線材の厚み方向(径方向)に巻回してコイル形状となしたフラットワイズコイルで、図10(B)に示すように隣合う線材6Aと6Aとの間に樹脂の絶縁膜7Aが介在させてある。ここで絶縁膜7Aは、線材6Aと同幅となしてある。
このコイル10は、次のようにして製造することができる。
【0071】
図10(A)において、6は圧延材から成る金属単体の長尺の線材で、7は図10(B)の線材6Aと6Aとの間の絶縁膜7Aを形成するための、予め線材6と同幅で膜状に成形してある絶縁性の長尺をなす樹脂のフィルムである。
この例のコイル10の製造方法では、長尺をなす金属単体の線材6をフラットワイズ巻きする際に、樹脂のフィルム7を挟み込む状態に長尺の線材6をその厚み方向に共巻きして行く。
そのことによって、図10(B)に示すように線材6Aと6Aとの間に樹脂のフィルム7から成る絶縁膜7Aが介在せしめられる。
【0072】
本実施形態において、コイル10は図3,図4に示しているように上コイル10-1と下コイル10-2とを巻き方が反対方向になるように上下に重ねて、それぞれの内径側の端部20を接合し、1つの連続したコイルとして構成してある。但し1本の線材で上コイル10-1と下コイル10-2とを連続して構成したものであっても良い。
尚、上コイル10-1と下コイル10-2との間には大きな電位差が生ずるため、それらの間には図4(B)に示しているように円環状の絶縁シート21が介装してある。ここで絶縁シート21は厚みが約0.5mmのものである。
尚図中18はコイル10におけるコイル端子で、径方向外方に突出せしめられている。
【0073】
図5(A)に示しているように、コイル10は平面形状が円環状をなしている。
コイル10は、図1に示しているようにコイル端子18の先端側の一部を除いて全体的にコア16に埋込状態に一体に内包されている。
【0074】
この実施形態においてコイル10は銅,アルミニウム,銅合金,アルミニウム合金等種々の材質のものを用いることができる。特に、絶縁被膜付き導線を得るのが難しい、アルミニウム,アルミニウム合金の線材でも容易にコイルとして適用できる。
【0075】
この例において、コア16は軟磁性粉と熱可塑性樹脂との混合材(混合材は他の材料を含有していても良い)を射出成形して得た成形体から成っている。
【0076】
コイル10は、コイル端子18の先端側の一部を除いて、その全体が電気絶縁性の樹脂で外側から被覆されている。
図1,図2中24はコイル10と樹脂被覆層22とから成る絶縁被覆コイルで、コイル10はこの絶縁被覆コイル24としてコア16の内部に埋め込まれている。
この実施形態において、樹脂被覆層22の厚みは0.5〜2.0mmとしておくことが好ましい。
この樹脂被覆層22は、軟磁性粉を含有していない電気絶縁性の熱可塑性樹脂から成っている。その熱可塑性樹脂としてはPPS,PA12,PA6,PA6T,POM,PE,PES,PVC,EVAその他種々の材質のものを用いることができる。
【0077】
図2の分解図にも示しているように、コア16は、1次成形体16-1と2次成形体16-2とを、図1(B)に示す境界面Pで射出成形による接合にて一体化して構成してある。
1次成形体16-1は、図1,図2に示すように絶縁被覆コイル24の外周面に接する円筒状の外周側成形部25と、絶縁被覆コイル24の図中下側に位置する底部26とを有する容器状且つコイル軸線方向の図中上端に開口30を有する形状をなしている。
尚、この1次成形体16-1の外周側成形部25には切欠部28が設けられている。
この切欠部28は、後述の絶縁被覆コイル24の厚肉部36(図2参照)を嵌め入れるためのものである。
【0078】
一方2次成形体16-2は、図2にも示しているように絶縁被覆コイル24の内周面に接し、且つコイル10の内側の空所を埋めて1次成形体16-1における底部26に達する内周側成形部32と、絶縁被覆コイル24の図中上側に位置し、1次成形体16-1における上記の開口30を閉鎖して、1次成形体16-1の凹所40及びそこに収容された絶縁被覆コイル24を内側に隠蔽する上部の円形の蓋部34とを一体に有している。
【0079】
一方、コイル10を被覆する樹脂被覆層22もまた、図3の分解図にも示しているように1次成形体22-1と2次成形体22-2とから成っており、それらが図1(B)に示す境界面Pにおいて射出成形による接合にて一体化されている。
【0080】
1次成形体22-1は、コイル10の外周面を被覆する円筒状の外周被覆部46と、コイル10の下端面の全体を被覆する下被覆部48とを一体に有している。
一方2次成形体22-2は、コイル10の内周面を被覆する円筒状の内周被覆部50と、コイル10の上端面の全体を被覆する上被覆部52とを一体に有している。
尚、1次成形体22-1には径方向外方に突出する厚肉部36が全高に亘って形成されており、その厚肉部36に、これを径方向に貫通する一対のスリット38が形成されている。
コイル10における上記の一対のコイル端子18は、これらスリット38を貫通して1次成形体22-1の径方向外方に突出せしめられている。
また2次成形体22-2には、径方向外方に突出する舌片状の突部42が上被覆部52に一体に形成されている。1次成形体22-1における厚肉部36は、その上面がこの突部42にて被覆される。
【0081】
図2〜図9に、図1のリアクトル15の製造方法が絶縁被覆コイル24の製造方法と併せて具体的に示してある。
この実施形態では、図5及び図6に示す手順に従って図5(A)に示すコイル10を外側から包み込むように樹脂被覆層22を形成し、コイル10と樹脂被覆層22とを一体化して成る絶縁被覆コイル24を構成する。
【0082】
このとき、図5(B)に示しているように先ず外周被覆部46と下被覆部48を一体に有する1次成形体22-1を成形し、しかる後に図6(C)に示すように内周被覆部50と上被覆部52とを一体に有する2次成形体22-2を成形し、樹脂被覆層22の全体を成形する。
【0083】
図8に、その際の具体的な成形方法が示してある。
図8(A)において、54は絶縁被覆コイル24具体的には樹脂被覆層22用の1次成形型で、上型56と下型58を有している。
ここで下型58は中型部58Aと外型部58Bとを有している。
【0084】
図8(A)に示す1次成形型54を用いた1次成形では、先ずコイル10を1次成形型54にセットする。このときコイル10は図3に示す向きとは上下の向きを逆向きにしてセットする。
詳しくは下コイル10-2が上側に、上コイル10-1が下側に位置するように上下を逆向きにして1次成形型54にセットする。
そして中型部58Aをコイル10の内周面に接触させて、この中型部58Aによりコイル10の内周面を径方向に拘束し保持する。
【0085】
そして1次成形型54の、コイル10の外周側に形成されたキャビティ66に通路68を通じて樹脂(熱可塑性樹脂)材料を射出し、図1及び図5(B)に示す樹脂被覆層22の1次成形体22-1を射出成形する。
詳しくは、図8(B)に示す外周被覆部46と下被覆部48とを一体に有する1次成形体22-1を射出成形する。
【0086】
以上のようにして樹脂被覆層22の1次成形体22-1を成形したら、これと一体のコイル10とともに、それらを図8(B)に示す2次成形型70にセットする。
このとき、図8(B)に示しているようにコイル10を1次成形体22-1とともに上下逆向きにして2次成形型70にセットする。
この2次成形型70は、上型72と下型74とを有している。また下型74は、中型部74Aと外型部74Bとを有している。
この2次成形型70は、1次成形体22-1をコイル10とともにセットした状態で、その内周側と上側とにキャビティ80を形成する。
【0087】
この2次成形型70を用いた2次成形では、通路82を通じて1次成形の際の樹脂材料と同一の樹脂材料をキャビティ80に射出し、樹脂被覆層22における2次成形体22-2を射出成形して同時にこれを1次成形体22-1及びコイル10と一体化する。
【0088】
本実施形態では、以上のようにして成形された絶縁被覆コイル24を、図1のコア16の成形の際にコア16と一体化する。
その具体的な手順が図7及び図9に示してある。
この実施形態では、コア16の全体を成形するに際して、図7に示すように先ず容器状をなす1次成形体16-1を予め成形しておく。
【0089】
そしてその後において、図7(A)に示すように容器状をなす1次成形体16-1の凹所40の内部に、図5及び図6に示す手順で成形した絶縁被覆コイル24を、1次成形体16-1の開口30を通じて図中下向きに全高に亘って嵌め込み、絶縁被覆コイル24を1次成形体16-1にて保持させる。
【0090】
そしてその状態で1次成形体16-1と絶縁被覆コイル24とを成形型にセットし、コア16における2次成形体16-2を射出成形して、これを1次成形体16-1及び絶縁被覆コイル24と一体化する。
【0091】
図9(A)は、1次成形体16-1を成形するコア16用の1次成形型を示している。
84は、1次成形体16-1を成形する1次成形型で、上型86と下型88とを有している。
【0092】
ここでは通路92を通じて軟磁性粉と熱可塑性樹脂の混合材をキャビティ94に射出成形し、以て外周側成形部25と底部26とを一体に有する1次成形体16-1を成形する。
【0093】
図9(B)は、コア16における2次成形体16-2を成形する2次成形型を示している。
96はその2次成形型で、上型98と下型100とを有している。
この2次成形では、先に成形した1次成形体16-1に絶縁被覆コイル24を嵌め込み、保持させた状態で、それらを2次成形型96にセットする。
【0094】
このとき、1次成形体16-1はその外周面が2次成形型96への全周に亘る接触によって径方向に位置決めされ、更に底部26の下面が2次成形型96内において上下方向に位置決状態に保持される。
即ち絶縁被覆コイル24が1次成形体16-1を介して2次成形型96内で径方向にも、また上下方向にも位置決めされ保持される。
【0095】
この2次成形では、その状態でキャビティ104よりも図中上方の通路102を通じキャビティ104内に1次成形の際と同一の混合材を射出し、以て図1(B),図2及び図7(B)の2次成形体16-2を成形し、同時にこれを1次成形体16-1及び絶縁被覆コイル24と一体化する。
ここにおいて図1及び図7(B)に示すリアクトル15が得られる。
【0096】
以上のような本実施形態によれば、コイル10を成形型により良好に位置決めし保持した状態で、絶縁被覆コイル24即ち樹脂被覆層22を良好に射出成形することができ、その成形に際してコイル10が射出圧や流動圧により位置ずれしたり変形したりするのを良好に防止することができ、且つ樹脂被覆層22をコイル10を被覆する状態に良好に成形することができる。
またコイル10は樹脂被覆層22と一体の絶縁被覆コイル24をなしているため、コア16を射出成形する際にコイル10が変形を生じるのも良好に防止することができる。
【0097】
この実施形態では、コア16を射出成形する工程を、絶縁被覆コイル24の外周面に接する筒状の外周側成形部25を含む1次成形体16-1を予め射出成形しておく1次成形の工程と、絶縁被覆コイル24の内周面に接する内周側成形部32を含む2次成形体16-2を成形する2次成形の工程とに分け、そして2次成形の工程では、先の射出成形にて得た1次成形体16-1の外周側成形部25に絶縁被覆コイル24を内嵌状態に嵌合させ、且つコア用の2次成形型96にてその外周側成形部25を外周側から径方向に拘束し保持した状態で、内周側成形部32を含む2次成形体16-2を成形し且つ同時に1次成形体16-1及び絶縁被覆コイル24と一体化する。
【0098】
即ちこの実施形態では、コア16における外周側成形部25が、予めコイル10とは別に単独で1次成形体16-1として成形されているため、コア16の成形に際してその内側に位置しているコイル10が原因となって外周側成形部25に亀裂発生するといった問題は生じない。
【0099】
コイル10をキャビティにセットした状態で外周側成形部25を射出成形した場合、冷却によって外周側成形部が径方向に収縮しようとしたとき、径方向内側にコイル10が位置していることによって径方向に収縮するのが阻止される。そのため外周側成形部25は周方向に収縮しようとして、そのときに外周側成形部に亀裂が生じてしまう。
しかるにこの実施形態では外周側成形部25をコイル10の存在していない状態で単独で成形するため、そうした不具合は生じない。
【0100】
この実施形態ではまた絶縁被覆コイル24、即ちコイル10を1次成形体16-1を介してコア16用の2次成形型96にて位置決めし保持した状態で、コアの2次成形体16-2を成形するため、その際にコイル10が射出圧及び流動圧にてセット位置から位置ずれするのを防止でき、コイル10を予め設定した位置に正確に位置決めし且つ保持した状態でコア16を成形完了することができる。
従ってコア16の成形時にコイル10が位置ずれすることによって、リアクトル15の特性に悪影響が及ぶのを良好に防止することができる。
以上はコイル10を上コイル10-1と下コイル10-2とを重ねて構成した場合の例であるが、本発明ではコイル10を段重ねしない形態で、1段に構成することも可能である。
【実施例】
【0101】
本発明に従って、絶縁被膜の付いていない平角線材を樹脂のフィルムを挟み込む状態に共巻きして、フラットワイズコイル10を構成し、その効果を以下に示す通り確認した。
尚上記以外のリアクトルの構成は次のようにした。
【0102】
(a)リアクトルの構成
ここでは、コア材の軟磁性粉末としてFe-2Si(質量%)の組成のものを用いた。
コア材の軟磁性粉末としては、アルゴンガスを用いて噴霧した軟磁性粉末を使用し、粉末熱処理は酸化防止や還元作用を狙って水素中で750℃×3時間行った。またコア材として1〜50kHzの交番磁界中で使用されることを想定し、軟磁性粉末は粉末熱処理後に250μm以下に篩で篩ったものを使用した。
【0103】
次いで、透磁率を適正な範囲に制御するためや熱伝導率を高めるための観点及び金型内での流動性の観点から、軟磁性粉末を65体積%の配合でPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂と混合した。そして2軸混練機により約300℃で樹脂を溶融させ、軟磁性粉末と練り合わせてペレット化した。
そして横型インラインスクリュー式射出成形装置により、このペレット状の軟磁性混練物を約300℃で加熱し溶融状態として、これを成形型内に射出した後、冷却してコア材を作製した。
【0104】
絶縁被覆コイル24における樹脂被覆層22はPPS樹脂製とし、その肉厚はコイル内周側が0.5mm,コイル外周側と上下面側は1mmの肉厚とした。
またコイルを上下に2段に段重ねする場合には、上下のコイルの間に0.5mmの厚みの絶縁シートを介在させた。
尚、コア16の軸心とコイル10の軸心、及びコア16の軸方向中央とコイル10の軸方向中央とはそれぞれ一致するように揃えて配置した。
【0105】
<比較例1>
平均膜厚25μmのポリアミドイミド樹脂の絶縁被膜付きの平角銅線(厚み0.85mm(絶縁被膜付きの厚み)×幅9mm)を用いてフラットワイズコイル(内径50mm,32ターン)を構成し、これを樹脂被覆層22で被覆して絶縁被覆コイル24とした。
尚、コイル10は上記の図に示したものと異なって2段に段重ねせず、1段で構成している。この点は後述する比較例3を除いて何れも同じである。
【0106】
<実施例1>
膜厚12.5μmのポリイミド樹脂のフィルムを、圧延で製造した平角裸銅線(厚み0.8mm×幅9mm)の巻線時に線材と線材との間に挟み込んで共巻きし、フラットワイズコイル(内径50mm,32ターン)を構成し、そしてこれを樹脂被覆層22にて被覆して絶縁被覆コイル24とした。
この結果、コイル外径を2.4mm小径化することができた。またその結果、銅線使用量を6%少なくでき、更に樹脂被覆層に用いる樹脂も5%少なくすることができた。
【0107】
<比較例2>
比較例1のコイルを用いてリアクトル(外径φ117.4mm×高さ31mm)を構成した。
【0108】
<実施例2>
上記実施例1のコイルを用いてリアクトル(外径φ115mm×高さ31mm)を構成した。
この実施例2のリアクトルは比較例2と同一インダクタンスである(尚インダクタンスの測定方法は下記とした)。
この実施例2では、リアクトル外径で略2.4mm小径化することができた。その結果コア材使用量も4%少なくすることができた。またリアクトル全体として、体積%で4%小さくでき、重量も4%小さくすることができた。
また、比較例2対比で、重畳電流0A(ゼロアンペア)での損失で4%低減できた。この低減分はほとんどが鉄損低減による効果と推定される。また、重畳電流50Aでの直流銅損で6%低減できた(これらの損失の評価方法は下記)。
【0109】
<比較例3>
平均膜厚25μmのポリアミドイミド樹脂の絶縁被膜付きの平角銅線(厚み1.25mm×幅6mm)を用いて、フラットワイズ巻きしたコイル(内径53mm,16ターン)を上下に2段に段重ねして、全体を樹脂被覆層22にて被覆し、絶縁被覆コイル24とした。そしてこの絶縁被覆コイルを用いてリアクトル(外径φ106mm×高さ34.5mm)を構成した。
【0110】
<実施例3>
膜厚8μmのポリアミド樹脂のフィルムを、圧延で製造した平角裸銅線(厚み0.6mm×幅12mm、扁平度20)の巻線時に線材間に挟み込んで共巻きし、フラットワイズコイル(内径53mm,32ターン)を構成するとともに、その全体を外側から樹脂被覆層22で被覆し、絶縁被覆コイル24とした。
そしてこれを用いてリアクトル(外径φ105mm×高さ34mm)を構成した。このもののインダクタンスは比較例3と同一インダクタンスである。
【0111】
この実施例3では、比較例3対比で、リアクトル全体として重量で3.0%小さくすることができ、また体積で3.3%小さくすることができた。
またスイッチング周波数20kHzで300V→600V昇圧の重畳電流0Aでの損失を25%低減することができた(この損失の評価方法は下記)。この内2〜3%分は鉄損低減分と推定されるが、残りの低減分は高偏平平角銅線を用いたことによる表皮効果損の低減によるものと推定される。
【0112】
<実施例4>
膜厚8μmのポリアミド樹脂のフィルムを、圧延で製造した平角裸アルミ線(厚み0.6mm×幅12mm、扁平度20)の巻線時に線材間に挟み込んで共巻きし、フラットワイズコイル(内径53mm,32ターン)を構成するとともに、その全体を外側から樹脂被覆層22で被覆し、絶縁被覆コイル24とした。
そしてこれを用いてリアクトル(外径φ105mm×高さ34mm)を構成した。このもののインダクタンスは比較例3と同一インダクタンスである。
【0113】
この実施例4では、比較例3対比で、コイル単体で重量70%低減、リアクトル全体として重量25%低減できた。更には高価な絶縁被膜付き平角銅線を、安価で加工し易い圧延アルミ材で置き換えられ、コイルにかかるコストを1/3以下に低減できた。
尚上記実施例,比較例は全て耐電圧試験及び熱衝撃試験の評価を行い、何れも基準を満たしている。
【0114】
[評価方法]
<インダクタンス測定>
インダクタンスの測定は、リアクトル15を昇圧チョッパ回路に組込み、入力電圧300V、昇圧後電圧600V、スイッチング周波数10kHz(比較例3,実施例3では20kHz)で所定の重畳電流を流して回路を駆動させた。そしてリアクトルに流れる電流(片方の端子にクランプ式電流計を取り付け測定)の波形を測定し、ある時間間隔の電流波形の傾きからインダクタンスを算出した。
【0115】
<損失測定>
損失の測定は以下の方法で行った。
水冷プレート上にリアクトル15を固定した。このとき熱伝導グリスを水冷プレートとの間に薄く塗布した。
重畳電流0A及び50Aで300V→600Vにスイッチング周波数10kHz(比較例3、実施例3は20kHz)の条件でインダクタンス測定と同じ昇圧チョッパ回路で駆動させ、熱的に定常状態(コアの内部温度や冷却水温が時間的に変化しなくなる状態)になるまで連続運転した。また冷却水はチラー(恒温水循環装置)で50℃、毎分10リットルで流れるよう制御した。
この時のコア内部の温度を数点測定して、その最も高い温度を内部温度とした。温度の測定箇所には熱電対を埋め込んで測定を行った。
この時の水冷プレートの冷却水の流量と、入側と出側の温度との差から熱量を測定し、この熱量を損失とした。重畳電流0A及び50Aの時のそれぞれの損失の値を求め、重畳電流50Aの時の損失から重畳電流0Aの時の損失を差引いた値を、重畳電流50Aの直流銅損とした。
【0116】
ここで、重畳電流0Aでの損失を要因毎に分解すると、以下のようになる。
・コア材の損失(ヒステリシス損失と渦電流損失の和)からくる損失(鉄損)
・リアクトルに流れる電流から直流重畳電流を除いた電流振幅分によるコイルの発熱からくる損失(交流銅損)
・コイルの導線に高周波電流が流れる際に生じる表皮効果からくる損失(表皮効果損)
・隣り合う導線同士が電流の流れを互いに阻害しあう近接効果からくる損失(近接効果損)
これらを正確に分解することは困難であるため、各実施例、比較例では、重畳電流0Aでの損失を直接比較している。
【0117】
<耐電圧測定>
耐電圧測定は次のようにして行った。
ここではリアクトル15をアルミベースプレート上に直接置いて、リアクトル15をアルミベースプレートに電気的に繋がった状態とし、そして測定装置の一方の端子をリアクトル15の一方のコイル端子18に、また他方の端子をアルミベースプレートにそれぞれ結線し、そしてその状態で通電を行って交流0V〜3500V(ボルト)まで徐々に電圧を高め、3500Vで1秒間保持した。
その際、流れる電流が10mA(ミリアンペア)以下であれば合格、それよりも多ければ不合格として耐電圧を判定した。
【0118】
<熱衝撃試験>
熱衝撃試験は次のようにして行った。
(a)[試験方法]:下記熱衝撃試験装置で低温槽を−40℃とし、高温槽を150℃とし、低温さらしと高温さらしとを交互に繰り返し、600サイクル実施した。また、各さらし時間は2時間とした。
(b)[評価基準]:600サイクル後、(i)外観にクラックなきこと。(ii)再度耐電圧試験を実施しクリアできること。(iii)熱衝撃試験前後のインダクタンスの変化が5%以下であること。
(c)[試験装置]:エスペック社製で型式はTSA−41L−Aである。
【0119】
以上本発明の実施形態,実施例を詳述したがこれらはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様,形態で実施,構成可能である。
【符号の説明】
【0120】
6 線材
7 樹脂のフィルム
7A 絶縁膜
10 コイル
15 リアクトル
16 コア
16‐1 1次成形体
16‐2 2次成形体
22 樹脂被覆層
24 絶縁被覆コイル
46 外周被覆部
50 内周被覆部
66 1次成形キャビティ
80 2次成形キャビティ
84 1次成形型
96 2次成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性粉とバインダとの混合材の成形体で構成したコアの内部に、導体線材を巻回したコイルの全体を絶縁性の樹脂被覆層にて外側から包み込んで成る絶縁被覆コイルを内蔵したリアクトルであって、
前記コイルは、絶縁被膜の付いていない平角線材を該線材と線材との間に、予め膜状に成形してある絶縁性のフィルムを挟み込む状態に該線材の厚み方向に巻回したフラットワイズコイルとなしてあるとともに、
前記絶縁被覆コイルの前記樹脂被覆層は熱可塑性樹脂の射出成形体にて構成してあり、
且つ該樹脂被覆層は、前記コイルの外周面を被覆する外周被覆部を含む成形体と、該コイルの内周面を被覆する内周被覆部を含む成形体とを含んで構成してあり、且つそれら成形体を射出成形により接合して一体化してあることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記コアが、前記軟磁性粉と前記バインダとしての熱可塑性樹脂との混合材を射出成形して成る成形体で構成してあることを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
請求項1,2の何れかに記載のリアクトルを製造する方法であって
長尺を成す前記平角線材を、該平角線材に対応した幅で長尺に成形してある前記フィルムとともに且つ該フィルムを該線材と線材との間に挟み込むようにして共巻きし、前記コイルを製造する工程Aと、
前記樹脂被覆層を射出成形して該コイルを該樹脂被覆層で被覆し、前記絶縁被覆コイルを製造する工程Bと、
該絶縁被覆コイルを外側から包み込む状態に前記コアを成形する工程Cと、
を経て前記リアクトルを製造し、
且つ前記樹脂被覆層を射出成形する工程Bでは、前記コイルの内周面又は外周面に対して該樹脂被覆層用の1次成形型を接触させ、該1次成形型にて該コイルを該内周面又は外周面において径方向に位置決めし拘束した状態で、該コイルの外周側又は内周側に形成される該1次成形型の1次成形キャビティに樹脂材料を射出して、前記樹脂被覆層における外周被覆部又は内周被覆部を含む1次成形体を成形し且つ該コイルと一体化する1次成形工程と、
しかる後該1次成形体を該コイルとともに該樹脂被覆層用の2次成形型にセットして、該コイルの内周側又は外周側に形成される該2次成形型の2次成形キャビティに前記樹脂材料を射出して、前記樹脂被覆層における内周被覆部又は外周被覆部を含む2次成形体を成形し且つ該コイル及び前記1次成形体と一体化する2次成形工程と、に分けて射出成形を行うことを特徴とするリアクトルの製造方法。
【請求項4】
前記コアの成形工程では、前記絶縁被覆コイルを成形型のキャビティにセットした状態で、該キャビティに前記軟磁性粉と前記バインダとしての熱可塑性樹脂との混合材を前記絶縁被覆コイルを隙間なく包み込む状態に射出成形し、前記請求項2に記載のリアクトルを製造することを特徴とする請求項3に記載のリアクトルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate