説明

リウマチ様関節炎(RA)のためのバイオマーカー

本発明は生物学的試料中の少なくとも2つのバイオマーカーの同時測定に基づくリウマチ様関節炎(RA)の予測のための方法および予測に使用するための組成物を提供する。本発明はさらにRAに対する処置の有効性を追跡調査するための方法およびRAを予防または軽減する可能性のある被験物質を同定するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
リウマチ様関節炎(RA)は未知の病因の炎症性、自己免疫性、全身性疾患である。白人集団の約1%が女性の男性に対する比率2.5/1でリウマチ様関節炎に罹患する(Lee & Weinblatt; Lancet 358(9285): 903−911(2001))。疾患はいずれの年齢でも生じ得るが、最も一般的であるのは30から55歳の間の年齢の人々であり(Kodadek ; Chem.Biol. 8,(2):105−115(2001); Stoll, Templin, Schrenk, Traub, Vohringer, & Joos; Front Biosci. 7:c13−c32(2002); Templin et al. ; Proteomics. 3(11):2155−2166(2003))、その罹患率は年齢と共に上昇する。
【0002】
RAの顕著な症状は痛み、こわばり、および末梢関節の腫脹である。障害の臨床症状は非常に多様であり、穏やかな自己限定性関節炎から著しい罹患率および死亡率を伴う急速に進行する多臓器炎症にわたる(Lee & Weinblatt (2001); ibid; Sweeney & Firestein(2004); ibid)。関節損傷はリウマチ様関節炎の経過中の初期に生じ;患者の30%は診断時に骨浸食の証拠となるX線像を有し、そしてこの比率は2年までに60%まで上昇する(van der Heijde; Br.J.Rheumatol.34(Suppl 2):74−78(1995))。
【0003】
RAは多くの関節(6またはそれより多い)に関与し得る多関節炎であるが、疾患の初期の段階では1つまたは少しの関節しか冒されないこともある。実際に全末梢関節が疾患に冒され得る;しかしながら最も一般的には関与する関節は手、足および膝の関節である(Smolen et al.; Arthritis Rheum., 38(1):38−43(1995))。加えてRAは脊椎に影響を及ぼし得て、そして長期にわたる疾患では環軸関節の関与が一般的であり、そして致死の直接的な関節関連の原因となる。関節外関与はRAのもう一つの特徴であり、そしてこれはリウマトイド結節から生命を脅かす脈管炎にわたり得る(Smolen & Steiner; Nat.Rev.Drug Discov. 2(6):473−488(2003))。
【0004】
RAは免疫および炎症系が軟骨および骨の破壊に密接に関連する疾患である。2つの系の関連は明らかではなく、そしてRAの原因は未知のままであるが、疾患の発生に関与する多くの経路が認識されている。ここ数年にわたる研究により、遺伝性および感染性因子が複雑に相互に関係する方式でRA病因に関与していることが同定された(Smith & Haynes; Ann.Intern.Med. 136(12):908−922(2002))。IL−1β、TNFαおよびIL−1ra(Gabay et al.; J.Rheumatol. 24(2):303−308(1997))、IL−6(Arvidson et al. ; Ann.Rheum.Dis. 53(8):521−524(1994))、IL−8およびMCP−1(De Benedetti et al.; J.Rheumatol. 26(2):425−431(1999))、ならびに炎症過程に関係する血清アミロイド(SAA)のような、可溶性サイトカインおよびケモカインがリウマチ様関節炎に関連することが示されている(Szekanecz & Koch ; Curr.Rheumatol.Rep. 3(1):53−63(2001))。
【0005】
薬物がRAの処置の主要な形態を構成する。現在用いられる薬物は4つの主要なカテゴリーに分けられる:a)非ステロイド系抗炎症薬(NSAID);b)疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、c)ステロイドおよびd)鎮痛薬。
【0006】
歴史的に、RAの処置は疾患に関連する腫脹および痛みを軽減するためのNSAID薬(イブプロフェンおよびアスピリンのような)の使用に基づいている。しかしながらこの方法は疾患に関連する痛みの根本的な(複数の)原因に取り組んではいない。この方法はスルファサラジンおよびメトトレキサートのような疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の開発に取って代わられている。別の型のDMARDには生物剤が含まれる。承認された生物学的DMARDには例えばインフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブまたはアナキンラが含まれる。
【0007】
RAの診断はアメリカリウマチ協会(ARA)により認識されている7つの診断基準の使用に基づく(Arnett et al.; Arthritis Rheum. 31(3):315−324(1988))。診断には臨床因子が必要とされるため、臨床医が尋ねる鋭い質問および、微妙になりがちな初期の身体的所見の認識に依存する。ARAの基準:
1)最大改善の前に少なくとも1時間持続する関節および関節周囲の朝のこわばり;
2)医師により観察される3つまたはそれより多い関節部分の軟組織腫脹(関節炎);
3)手の関節の腫脹(関節炎);
4)対称性腫脹(関節炎);
5)リウマトイド結節;
6)血清リウマトイド因子(RF)のレベル上昇;
7)手および/または手首関節のX線像変化;
が含まれる。
【0008】
最初の4つの基準はリウマチ様関節炎の診断がなされ得る前、最低6週間存在しなければならない。RA試験はリウマトイド因子:IgG分子のFc領域のエピトープと反応するIgM自己抗体を測定する(Corper et al., Nat.Struct.Biol. 4(5):374−381(1997))。RFは一次的にRAに関連するが、これらの抗体は疾患特異性が低く、正常な高齢者、健常な個体、およびその他の自己免疫障害または慢性感染を伴う患者の血清でも検出され得る。(Williams DG (1998))。
したがって、RAを診断する代替の方法、およびRAに対する処置の有効性を追跡調査するための方法に関する必要性が存在する。
【発明の開示】
【0009】
(発明の要旨)
1つの態様では、本発明は対象がリウマチ様関節炎(RA)を有しているか、または発症する可能性があるかどうかを決定するための方法を提供し、該方法は該対象から得られた生物学的試料中の腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−アルファ、TNFα、TNF−a);マクロファージ走化性タンパク質−1(MCP−1)、IL−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra;IL−1ra)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−6(IL−6)およびインターロイキン−1ベータ(IL−1ベータ、IL−1β、IL−1b)からなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定することを含む。
【0010】
本発明のさらなる態様は、対象におけるRAを予防または軽減する可能性のある被験物質を同定するための方法に関し、該方法はa)該対象から得られた生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定すること;b)生物学的試料を被験物質と接触させること;およびc)工程bの生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定すること;の工程を含み、ここで工程a)の少なくとも2つのバイオマーカーの量と比較した場合の工程b)の生物学的試料中の少なくとも2つのバイオマーカーの量における変化により、RAを予防または軽減する可能性のある被験物質が同定される。
【0011】
本発明の別の態様はRAに対する処置の有効性を追跡調査するための方法を提供し、該方法は該処置を開始する前にRAを患う対象から得られた生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を、該処置を開始した後に該対象から得られた生物学的試料中の該少なくとも2つのバイオマーカーの量と比較することを含み、ここで双方の生物学的試料中の量の類似は処置が有効でないことを示し、そして該処置を開始した後に該対象から得られた生物学的試料中の少なくとも2つのバイオマーカーの量における変化は処置が有効であることを示している。
【0012】
なおさらなる本発明の態様は、TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定するための少なくとも2つの検出剤を含むリウマチ様関節炎(RA)の予測、診断または予後診断のための組成物に関する。
本発明はまた本発明による組成物および使用のための指示書を含む診断または薬物発見キットをも提供する。そして本発明の別の態様は本発明の方法の1つにおけるかかる診断または薬物発見キットの使用に関する。
【0013】
(図面の簡単な説明)
図1:コーティング溶液へのグリセロールの添加の結果を示す。
図2:コーティング抗体力価。種々の濃度のコーティングIL−1β、IL−6およびIL−8抗体をプリントした(左から右にバックグラウンド、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/ml)。最良のシグナル対ノイズ比は全被分析物に関してコーティング抗体200μg/mlで測定した。
図3:種々の濃度のビオチン化抗体を用いてアッセイを実施した(抗体;左から右に:62.5ng/ml、125ng/ml、250ng/ml、500ng/mlビオチン化抗体)。最良のシグナル対ノイズ比は各被分析物に関してビオチン化抗体500ng/mlの濃度で作成された。示したシグナル対ノイズ比はIL−8アッセイに関して作成された。
図4:2工程および同時インキュベーションプロトコールで実施したアッセイに関する代表的なIL−6標準曲線。丸はIL−6 1工程プロトコールを表し、四角はIL−6 2工程プロトコールを表す。得られた結果により、1工程プロトコールがアッセイ感度を改善できることが示される。
図5:ノンパララックストレイ装置で作成された画像。3つの異なる画像様式を比較する:高(左)、標準(中)および高分解能様式(右)。
図6:抗体アレイおよびELISA手順の相関性。78個の血清および10個のスパイクされた試料中のサイトカインを抗体マイクロアレイまたはELISAのいずれかを用いて並行して定量した。これらの2つの分析からのデータを互いに対してプロットし、そして線形回帰分析により相関係数を決定した。
【0014】
(発明の詳細な説明)
本明細書に引用した全ての特許出願、特許および参照文献はその全てを出典明示により本明細書の一部とする。
本発明の実施に際して、分子生物学、微生物学および組換えDNAにおける多くの従来技術を用いる。これらの技術は周知であり、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II, and III, 1997(F. M. Ausubel ed.); Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II, 1985(D. N. Glover ed.); Oligonucleotide Synthesis, 1984(M. L. Gait ed.); Nucleic Acid Hybridization, 1985,(Hames and Higgins); Transcription and Translation, 1984(Hames and Higgins eds.); Animal Cell Culture, 1986(R. I. Freshney ed.); Immobilized Cells and Enzymes, 1986(IRL Press); Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series, Methods in Enzymology(Academic Press, Inc.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, 1987(J. H. Miller and M. P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory);および Methods in Enzymology Vol. 154およびVol. 155(各々Wu and Grossman, and Wu, eds.)にて説明されている。
【0015】
本発明はRAを有する対象のバイオマーカープロファイルの発見に少なくとも一部基づいている。好ましくは、本発明は生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6、IL−1ベータおよびRFからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定することによる、最も好ましくは本発明によるタンパク質マイクロアレイのような組成物に使用によるRAバイオマーカープロファイルの決定に関する。
【0016】
生物学的試料は血液試料または組織試料でよい。適当な試料には全血、血清、精液、唾液、涙液、尿、糞便物質、汗、頬側塗抹標本、皮膚、および筋肉または神経組織のような特定の器官組織の生検、ならびに毛髪が含まれる。最も好ましくは生物学的試料は血清である。
生物学的試料を採取する対象をスルファサラジン、メトトレキサート、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブもしくはアナキンラ、またはシクロスポリンのような疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)で処置することができる。
【0017】
本発明の方法によるバイオマーカープロファイルの決定は、対象中または該対象から単離された生物学的試料中の核酸またはタンパク質の測定を含み得る。本発明の1つの好ましい実施態様では、バイオマーカーの決定はバイオマーカーをコードするmRNAの量の決定を含む。例えばAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, pp.4.1.1-4.2.9 and 4.5.1-4.5.3, John Wiley & Sons, Inc.(1996)に記載されるような当業者に周知の方法により試料からmRNAをも含むRNAを単離することができる。mRNAの量を検出するための方法は当分野で周知であり、そして限定するものではないがノーザンブロッティング、逆転写PCR、リアルタイム定量的PCRおよびその他のハイブリダイゼーション方法を含む。好ましくはmRNAを少なくとも1つの配列特異的オリゴヌクレオチドと接触させることによりmRNAの量を決定する。好ましい実施態様では、2つの配列特異的オリゴヌクレオチドで該mRNAを決定する。配列特異的オリゴヌクレオチドはバイオマーカーをコードするmRNAまたは該mRNAから調製されたcDNAにのみに特異的にハイブリダイズするのに十分な長さのものであるのが好ましい。本明細書で用いる「オリゴヌクレオチド」なる用語は一本鎖核酸を意味する。一般に配列特異的オリゴヌクレオチドは少なくとも15から20ヌクレオチド長であるが、少なくとも20から25ヌクレオチド長のより長いプローブが望ましい場合もある。配列特異的オリゴヌクレオチドを1つまたはそれより多い標識部分で標識して、ハイブリダイズされたプローブ/標的ポリヌクレオチド複合体の検出を可能にすることができる。標識部分は分光学的、生化学的、光化学的、生体電子工学的、免疫化学的、および電気光学的または化学的な手段により検出することができる組成物を含み得る。標識部分の実例には、限定するものではないが放射性同位元素、例えば32P、33P、35S、化学発光化合物、標識結合タンパク質、重金属原子、蛍光マーカーおよび色素のような分光学的マーカー、結合酵素、質量分析タグ、および磁気標識が含まれる。mRNAまたは発現モニタリングのためのオリゴヌクレオチドアレイを調製し、そして例えばLockhart et al., Nature Biotechnology, 14:1675−1680(1996); McGall et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:13555−13460(1996);および米国特許第6040138号に記載されるような当業者に周知である技術に従って用いることができる。
【0018】
本発明の少なくとも2つのバイオマーカーをコードするmRNAの量を決定するための特に有用な方法は、配列特異的オリゴヌクレオチドの規則的なアレイへの標識mRNAのハイブリダイゼーションを伴う。かかる方法によりTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータ、ならびにRFからなる群から選択される少なくとも2つ、少なくとも3つもしくは4つ、または少なくとも5つもしくは6つのバイオマーカーのmRNAの量を同時に決定することが可能になる。このハイブリダイゼーション方法に利用される配列特異的オリゴヌクレオチドは典型的には固体支持体に結合されている。固体支持体の実例には、限定するものではないが膜、フィルター、スライド、紙、ナイロン、ウェファー、繊維、磁性または非磁性ビーズ、ゲル、管類、ポリマー、塩化ポリビニル皿等が含まれる。
【0019】
本発明の別の好ましい実施態様によると、TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量の決定をタンパク質の量、すなわちTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6および/またはIL−1ベータタンパク質の量を測定することにより実施する。本発明の別の好ましい実施態様では、該少なくとも2つのバイオマーカーの量に加えて、RFの量を決定する。
【0020】
本明細書で用いる「タンパク質」なる用語を「ポリペプチド」なる用語と同義的に用いることができるか、またはそれに加えて、ペプチド結合以外の結合により連結できる2つまたはそれより多いポリペプチドの複合体、例えばジスルフィド結合により連結され得るタンパク質を作るかかるポリペプチドを意味し得る。最も好ましくは本発明による該バイオマーカーはTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6および/もしくはIL−1ベータタンパク質、ならびに/またはRFを含む。「タンパク質」なる用語はまた同一のアミノ酸配列を有するが、とりわけかかるタンパク質が真核細胞宿主において発現される場合に加えられ得るような、翻訳後修飾が異なるポリペプチドのファミリーをも含み得る。これらのタンパク質はその元来の形態でよいか、または例えばタンパク質分解から得られたタンパク質の免疫学的に検出可能なフラグメントでよいかのいずれかである。「免疫学的に検出可能」とはタンパク質フラグメントが例えば質量分析または以下で記載するような抗体試薬により特異的に認識されるエピトープを含有することを意味する。
【0021】
好ましい実施態様では、該少なくとも2つのバイオマーカーまたはバイオマーカータンパク質の量を質量分析を用いて決定する。さらに好ましい本発明の実施態様によれば、少なくとも2つのバイオマーカーの量を少なくとも2つのバイオマーカータンパク質に特異的に結合する試薬により決定し、ここでタンパク質はTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータ、ならびにRFからなる群から選択される。本発明の実施態様では、少なくとも2つのバイオマーカーに特異的に結合する試薬は、SELEX(試験管内進化法)と称されるインビトロ選択法から作成され、そしてタンパク質を含む特異的リガンドに対して高親和性を有するアプタマー、短いDNAまたはRNA分子を含む(Brody et al., Mol.Diagn. 4(4):381−388(1999))。さらに好ましくは、バイオマーカーに特異的に結合する試薬は抗体(Ab)、抗体誘導体および抗体フラグメントを含む。最も好ましくは試薬はモノクローナル抗体(mAb)である。最も好ましくは該抗体はさらに以下の実施例において記載するものである。
【0022】
本明細書で用いる「抗体」なる用語には、限定するものではないがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体および生物学的に機能的な抗体フラグメントが含まれ、それらは抗体フラグメントがタンパク質またはタンパク質のフラグメントに結合するのに十分なこれらのフラグメントである。かかる抗体はIgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびその任意のサブクラスを含む任意の免疫グロブリンのクラスのものでよい。本発明のmAbを生成するハイブリドーマをインビトロまたはインビボで培養することができる。キメラ抗体はマウスmAb由来の可変または超可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有するもののような、異なる部分が異なる動物種から誘導された分子である。これに代えて、抗体は一本鎖抗体を含み得る。一本鎖抗体の生成に関して記載された技術(米国特許第4946778号; Bird, Science, 242:423−426(1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883(1988);および Ward et al., Nature 334:544−546(1989))を差次的に発現される遺伝子一本鎖抗体を生成するために適合させることができる。最も好ましくは。「ヒト化抗体」を生成するのに有用な技術をタンパク質、そのフラグメントまたは誘導体に対する抗体を生成するために適合させることができる。かかる技術は米国特許第5932448号;第5693762号;第5693761号;第5585089号;第5530101号;第5569825号;第5625126号;第5633425号;第5789650号;第5661016号;および第5770429号に開示されている。本発明のバイオマーカーの特異的エピトープを認識する抗体フラグメントを公知の技術により作成することができる。例えばかかるフラグメントには、限定するものではないがF(ab’)フラグメント(これは抗体分子のペプシン消化により生成することができる)およびFabフラグメント(これはF(ab’)フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより作成することができる)が含まれる。これに代えて、Fab発現ライブラリーを構築して(Huse et al., Science, Vol. 246, pp. 1275-1281(1989))望ましい特異性を有するモノクローナルFabフラグメントを迅速に、そして容易に同定することを可能にすることができる。本発明のバイオマーカー/バイオマーカータンパク質の量を、前記した抗体を利用するイムノアッセイ法により決定することができる。かかるイムノアッセイ法には、限定するものではないが例えば競合結合アッセイ、非競合結合アッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、サンドイッチアッセイ、ゲル拡散免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、ドットブロッティング、蛍光活性化セルソーティング(FACS)のような蛍光イムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、イムノPCRイムノアッセイ、プロテインAまたはプロテインGイムノアッセイ、およびウェスタンブロッティングのような免疫電気泳動アッセイ、ならびに一般的に用いられ、科学および特許文献に広く記載されるその他のもの、ならびに商業的に用いられる多くのものが含まれる。
【0023】
酵素イムノアッセイの場合、通常グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩を用いて二次抗体に酵素を結合させる。しかしながら容易に認識されるように、当業者に周知である非常に多様なライゲーション技術が存在する。一般に用いられる酵素にはとりわけ西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼおよびアルカリ性ホスファターゼが含まれる。特異的酵素と共に用いられる基質は、一般的に対応する酵素による加水分解時に検出可能な色の変化を生成することで選択される。例えばp−ニトロフェニルリン酸がアルカリホスファターゼ共役体と共に使用するのに適当であり;ペルオキシダーゼ共役体には1,2−フェニレンジアミンまたはトルイジンが一般的に用いられる。前記で記した発色性基質よりもむしろ、蛍光生成物を生じる蛍光発生基質を用いることも可能である。次いで適切な基質を含有する溶液を第3の複合体に加える。基質は二次抗体に連結させた酵素と反応して定性的な可視シグナルを生じ、これをさらに通常分光光度法により定量して分泌されたタンパク質またはそのフラグメントの量を評価することができる。これに代えて、フルオレセインおよびローダミンのような蛍光化合物をその結合能力を変化させずに化学的に抗体に結合させることができる。特定の波長の光を有する照明により活性化する場合、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収して、分子の励起状態を誘導し、続いて特徴的なより長い波長で光を放出させる。放出は光学顕微鏡により視覚的に検出可能な特徴的な色として現れる。免疫蛍光およびEIA技術は双方共に当分野において非常によく確立されており、そして本方法にとりわけ好ましい。しかしながら、放射性同位元素、化学発光または生物発光分子のようなその他のレポーター分子を用いることもできる。
【0024】
本発明の好ましい実施態様では、少なくとも2つのバイオマーカータンパク質と特異的に結合する該試薬を例えばポリスチレン表面のような固体支持体に固定する。本発明の好ましい実施態様は、本発明による少なくとも2つのバイオマーカータンパク質の同時結合および定量のためのタンパク質マイクロアレイ(Templin et al., Comb.Chem.High Throughput.Screen. 7(3):223−229(2004))を提供する。タンパク質マイクロアレイは支持材料上の規定のスポット位置に結合した分子(捕捉剤)からなる。次いでアレイを複合体タンパク質試料に暴露する。抗体のような捕捉剤は生物学的試料の目的のタンパク質に結合することができる。次いで特異的被分析物の個々のスポットへの結合を、各スポットにより生じたシグナルを定量することによりモニタリングすることができる(MacBeath, Nat.Genet. 32(Suppl):526−532(2002); Zhu & Snyder, Curr.Opin.Chem.Biol. 7(1):55−63(2003))。タンパク質マイクロアレイをその適用によって2つの主要なカテゴリーに分類することができる。これらをタンパク質発現マイクロアレイおよびタンパク質機能マイクロアレイと定義する(Kodadek, Chem.Biol. 8(2):105−115(2001))。タンパク質発現マイクロアレイは主に分析ツールとして提供され、そして生物学的液体または試料中のタンパク質、抗原または抗体を検出および定量するために使用され得る。一方タンパク質機能マイクロアレイはタンパク質−タンパク質、酵素−基質および小型分子−タンパク質相互作用を研究するために使用され得る(Huang, Front Biosci. 8:d559−d576(2003))。タンパク質マイクロアレイにはまた多くの構造形態がある。これには平板な表面上に構築された二次元マイクロアレイ、および「フロースルー」支持体を用いる三次元マイクロアレイが含まれる。
【0025】
タンパク質マイクロアレイ構成の型:逆相アレイ(RPA)および順相アレイ(FPA)(Liotta et al. 2003; Cancer Cell, vol. 3, no. 4, pp. 317-325)。RPAでは少量の組織または細胞試料を各アレイスポットに固定して、アレイが異なる患者の試料または細胞ライセートからなるようにする。RPA形式では各アレイを1つの検出タンパク質(例えば抗体)と共にインキュベートし、そして単一の被分析物の評価項目を測定し、そして複数の試料にわたって直接比較する。FPAでは捕捉剤、通常抗体または抗原は表面に固定され、そして捕捉分子として作用する。各スポットは1つの型の固定抗体または捕捉タンパク質を含有する。各アレイを1つの被験試料と共にインキュベートし、そして複数の被分析物を直ぐに測定する。
【0026】
FPAの最も一般的な形態の1つは抗体マイクロアレイである。サンドイッチアッセイによるか、または直接標識法によるかのいずれかで、抗体マイクロアレイを2つの形態で生成することができる。サンドイッチアッセイ法は標的タンパク質の2つの異なるエピトープを認識する2つの異なる抗体を利用する。1つの抗体が固体支持体に固定され、そして生物学的試料からその標的分子を捕捉する。適切な検出系を用いて標識二次抗体が結合標的を検出する。サンドイッチアッセイの主な利点はその高い特異性および感度である(Templin, Stoll, Bachmann, & Joos, Comb.Chem.High Throughput.Screen. 7(3):223−229(2004))。高いシグナル対ノイズ比を生じるバックグラウンドの劇的な低下により高い感度が達成される。加えて、大量の標識タンパク質が試料中に存在する直接標識法とは対照的に、少量の標識された検出抗体のみが適用される。またサンドイッチイムノアッセイ形式はマイクロアレイテクノロジーの分野で容易に扱いやすく、そしてかかるイムノアッセイをタンパク質マイクロアレイ形式に適合させて、条件培地および/または患者血清中のタンパク質を定量することができる(Huang et al., Clin.Chem.Lab Med. 39(3):209−214(2001); Schweitzer et al., Nat.Biotechnol. 20(4):359−365(2002))。
【0027】
直接標識法では、試料中の全タンパク質をフルオロフォアで標識する。次いで抗体マイクロアレイのようなタンパク質マイクロアレイに結合する標識タンパク質を蛍光により直接検出する。直接標識法の適応はHaabおよび共同研究者(Haab, Dunham, & Brown, Genome Biol.2(2): p(2001))により記載されている。この方法では、2つの異なる生物学的試料をCy3またはCy5のいずれかのフルオロフォアで標識する。次いでこれらの2つの標識試料を一緒に同等に混合し、そして抗体マイクロアレイに適用する。この方法により、例えば罹患および健常、または処置および未処置試料の間で比較することが可能になる。直接標識にはいくつかの利点があり、その1つは、直接標識法がアッセイを実施するのに1つの特異的抗体しか必要としないということである。
【0028】
また小型および多重イムノアッセイを用いて、抗体のようなタンパク質の存在または不在に関して生物学的試料をスクリーニングすることもできる(Joos et al., Electrophoresis 21(13):2641−2650(2000); Robinson et al., Nat.Med. 8(3):295−301(2002))。
【0029】
したがって、本発明は、TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6、IL−1ベータおよびRFからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定するための少なくとも2つの検出または捕捉剤を含む例えばタンパク質マイクロアレイのような組成物を提供する。最も好ましくは、該タンパク質マイクロアレイはIL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの抗体およびIL−6に特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体;ならびに/またはIL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの抗体およびMCP−1に特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体、ならびに/またはIL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの抗体およびTNF−アルファに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体、ならびに/またはIL−6に特異的に結合する少なくとも1つの抗体およびMCP−1に特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体、ならびに/またはIL−6に特異的に結合する少なくとも1つの抗体およびTNF−アルファに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体、ならびに/またはMCP−1に特異的に結合する少なくとも1つの抗体およびTNF−アルファに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体を含む。なおさらに好ましくは、本発明によるタンパク質マイクロアレイはIL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの抗体、IL−6に特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体、およびMCP−1に特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体;ならびに/またはIL−6に特異的に結合する少なくとも1つの抗体、MCP−1に特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体、およびTNF−アルファに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体;ならびに/またはIL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの抗体、MCP−1に特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体、およびTNF−アルファに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体を含む。最も好ましくは、タンパク質マイクロアレイはIL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの抗体、IL−6に特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体、およびTNF−アルファに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる抗体を含む。その他の好ましい実施態様では、かかるタンパク質マイクロアレイはさらにRFの量をも決定するために例えば抗体のような手段を含む。
【0030】
本発明の好ましい実施態様では、抗体のような検出または捕捉剤を例えばポリスチレン表面のような固体支持体上に固定する。別の最も好ましい実施態様では、検出または捕捉剤を2検体ずつ、3検体ずつまたは4検体ずつ96ウェルプレートの1つのウェルの底部にスポットまたは固定する。
【0031】
本発明の別の態様は、対象がリウマチ様関節炎(RA)を有するかまたは発症する可能性があるかどうかを決定するための方法を提供し、該方法は該対象から得られた生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータから選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定することを含む。本発明の方法の別の実施態様はさらに浸食の存在および/または生物学的試料中のRFの量の決定を含む。好ましい実施態様では、対照試料中の該少なくとも2つのバイオマーカーおよび場合によってはRFの量ならびに/または骨浸食の存在に相対して、対象からの試料中の少なくとも2つのバイオマーカーおよび場合によってはRFの量の増加は、対象がRAを有するかもしくは発症する可能性があることを示すか、またはここで対照試料に相対して対象からの試料中の少なくとも2つのバイオマーカーおよび場合によってはRFの量の増加の程度、ならびに/もしくは浸食の程度がRAの進行と相関する。好ましくは、対照試料は健常個体から得られた試料である。
該増加量は好ましくは統計的に有意な増加量を意味し、すなわちこれらの少なくとも2つのバイオマーカーに関して健常個体において見出された、および/またはRFに関して見出された正常レベルを有意に超えるレベルを意味する。「有意に」または「統計的に有意な」なる用語は統計的有意性を意味し、そして一般的に正常、または高濃度のマーカーを超える2標準偏差(SD)を意味する。好ましい実施態様では少なくとも2つのバイオマーカーの量および場合によってはRFの量の少なくとも約5%増加は、対象がリウマチ様関節炎(RA)を有するかまたは発症する可能性があることの指標である。好ましくは、増加は少なくとも約6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50%である。
【0032】
別の態様では、本発明は対象におけるRAを予防または軽減する可能性のある被験物質を同定する方法に関し、該方法はa)該対象から得られた生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定すること;b)生物学的試料を被験物質と接触させること;およびc)工程b)の生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を再度決定することの工程を含み;ここで工程a)で測定した量に相対した工程b)で測定した少なくとも2つのバイオマーカーの量の変化により、RAを予防または軽減する可能性のある被験物質が同定される。本発明の別の実施態様はさらに浸食の存在および/または生物学的試料中のRFの量の決定を含む。本発明の好ましい実施態様によれば、(工程a)で決定される少なくとも2つのバイオマーカーおよび場合によってはRFの量に比較する場合工程c)で決定される)少なくとも2つのバイオマーカー、および場合によってはRFの量の低下は、被験物質がRAを予防または軽減する可能性のある被験物質であることを示している。
【0033】
別の態様では、本発明はRAに対する処置の有効性を追跡調査するための方法を提供し、該方法はa)該処置を開始する前にRAを患う対象から生物学的試料を入手すること、b)該処置を開始した後にRAを患う対象から生物学的試料を入手すること、ならびにc)工程a)およびb)の生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を比較すること;の工程を含み、ここで工程a)およびb)の試料中の量の類似により、処置が有効でないことが示され、そしてここで工程b)の試料中の少なくとも2つのバイオマーカーの量の変化により処置が有効であることが示される。別の実施態様では、RAに対する処置の有効性を追跡調査するための方法は、該処置を開始する前にRAを患う対象から得られた生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータ、ならびにRFからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を、該処置を開始した後に該対象から得られた生物学的試料中の該少なくとも2つのバイオマーカーの量と比較することを含み、ここで該処置を開始する前に試料中で決定された量に比較して、該処置を開始した後に該対象から得られた生物学的試料中の少なくとも2つのバイオマーカーの量の変化により、処置が有効であることが示される。好ましくは、工程b)の試料中、すなわち該処置を開始する前に該対象から得られた生物学的試料中で決定された量に相対して、該処置を開始した後に対象から得られた試料中の少なくとも2つのバイオマーカーの量の低下により、処置が有効であることが示される。本発明の別の実施態様はさらに浸食の存在および/または生物学的試料中のRFの量の決定を含む。好ましい実施態様によれば、該処置は疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の投与を含む。
【0034】
好ましくは、本発明の方法の1つで決定された該低下は統計的に有意な低下であり、すなわち少なくとも2つのバイオマーカーに関して、および場合によってはRFに関してRA患者において見出されるレベルより有意に低く、そして健常な個体で見出されるレベルに近いレベルを意味する。例えば少なくとも2つのバイオマーカーの量の約5%の低下により、被験物質がRAを予防または軽減する可能性のあることが示されるか、または処置が有効であることが示される。好ましくは低下は少なくとも約6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50%である。
【0035】
本発明のさらに別の態様は、RAの特定のサブタイプを有するかまたは有する可能性のある対象を同定するための方法を提供し、該方法はa)RAを患う対象から生物学的試料を入手すること、b)工程a)の生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を特定のRAサブタイプの量と比較すること;の工程を含み、ここで工程a)およびb)の試料中の量の類似により、対象が該特定のサブタイプに属することが示され、そしてここで工程a)およびb)の少なくとも2つのバイオマーカーの量の差により、対象がRAの異なるサブタイプに属することが示される。該方法の別の実施態様はさらに浸食の存在および/または生物学的試料中のRFの量の決定を含む。好ましくは該差は統計的に有意な差であり、すなわちRAの特定のサブタイプに関して公知の該バイオマーカーのレベルと有意に異なる、少なくとも2つのバイオマーカーの、ならびに場合によってはRFおよび/または浸食のレベルを意味する。
【0036】
本発明の別の態様はリウマチ性疾患を有するかまたは有する可能性のある対象を同定するための方法を提供し、該方法は該対象から得られた生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定することを含む。該方法のさらなる実施態様は浸食の存在および/または生物学的試料中のRFの量のさらなる決定を提供する。好ましい実施態様では、健常個体の対照試料に相対して対象から得られた試料中の少なくとも2つのバイオマーカーおよび場合によってはRFの量の増加、ならびに/または浸食の存在により、該対象が該リウマチ性疾患を有するかまたは発症する可能性があることが示される。該増加量は好ましくは統計的に有意な量を含む。好ましい実施態様では、少なくとも2つのバイオマーカー量の少なくとも約5%増加は、対象が該リウマチ性疾患を有するかまたは発症する可能性があることの指標である。好ましくは、増加は少なくとも約6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50%である。リウマチ性疾患は例えばリウマチ性多発筋痛症(PMR)、若年性リウマチ様関節炎(JRA)、結合組織病(CTD)および巨細胞性動脈炎でよい。
【0037】
少なくとも2つのバイオマーカーの量、ならびに場合によってはRFの量、および/または浸食の決定を本明細書に記載するように実施するのが好ましい。例えば浸食を例えばX線フィルム検査により視覚的および定性的に評価することができるか、またはMRI分析を用いることにより決定することができる;少なくとも2つのバイオマーカーの量またはRFの量を、配列特異的オリゴヌクレオチドを用いて該バイオマーカーをコードするmRNAの量を測定することにより決定することができる。別の好ましい実施態様では、該バイオマーカーおよび場合によってはRFの量を質量分析を用いて、または例えばモノクローナル抗体、抗体誘導体もしくは抗体フラグメントを含む抗体のような少なくとも2つのバイオマーカータンパク質および/もしくはRFに特異的に結合する試薬を用いて決定する。好ましくは少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定するために用いる該手段を例えばポリスチレン表面のような固体支持体に固定する。最も好ましくは、本発明の少なくとも2つのバイオマーカーに特異的に結合する抗体はさらに以下の実施例において記載するものである。
【0038】
種々の方法を用いてRFを測定することができ;その全ては血清中のIgM RFの検出に基づく。用いることができる方法は例えば:a)Waaler Rose:ウサギIgGでコーティングしたヒツジ赤血球を用いる古典的半定量的アッセイ(Waaler E. ヒツジ血球の特異的凝集を活性化するヒト血清中の因子の発生に関して、ActaPathol. Microbiol. Scan.17:172−178(1940); Rose HM, Ragan C, Pearce E, Lipman MO. リウマチ様関節炎を有する患者の血清による正常および感作ヒツジ赤血球の差次的凝集、Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 68:1−11(1949));b)ラテックス吸着アッセイ:ヒトIgGでコーティングしたラテックスビーズを用いる、これもまた古典的半定量的アッセイ(Singer JM, Plotz CM.ラテックス試験I.リウマチ様関節炎の血清学的診断への適用、Am J Med 21:888(1956))および/またはc)非濁法:ヒトIgGでコーティングしたラテックスビーズを用いる自動検出、「NラテックスRF」試薬を用いて比濁計「BNII」で測定(Dade Behringによる装置およびアッセイ、OUUA G13 E0540 135 H; Weinblatt, ME, Schur PH. 非濁法によるリウマトイド因子検出、 Arthitis and Rheumatism 23:777−779(1980))。
【0039】
好ましい実施態様では、TNF−アルファの量ならびにMCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定する。最も好ましくは、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーはMCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6またはIL−1ベータである。別の好ましい実施態様では、加えてRFの量および/または浸食の存在を決定する。
【0040】
別の好ましい実施態様では、MCP−1の量ならびにTNF−アルファ、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定する。最も好ましくは、該少なくとも1つのさらなるバイオマーカーはTNF−アルファ、IL−1ra、IL−8、IL−6またはIL−1ベータである。別の好ましい実施態様によれば、MCP−1およびTNF−アルファの量を決定する。その他の好ましい実施態様では、さらにRFの量および/または浸食の存在を決定する。
【0041】
なおさらなる実施態様では、IL−1raの量ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定し、ここで最も好ましくは該少なくとも1つのさらなるバイオマーカーはTNF−アルファ、MCP−1、IL−8、IL−6またはIL−1ベータである。最も好ましい実施態様では、IL−1raおよびIL−6の量を決定する。本発明の別の最も好ましい実施態様では、IL−1raおよびMCP−1の量、またはIL−1raおよびTNF−アルファの量を決定する。その他の好ましい実施態様では、加えてRFの量および/または浸食の存在を決定する。
【0042】
別の好ましい実施態様では、IL−8の量ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定する。最も好ましくは少なくとも1つのさらなるバイオマーカーはTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−6またはIL−1ベータである。
【0043】
なおさらなる実施態様では、IL−6の量ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定する。好ましくは、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーはTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8またはIL−1ベータである。最も好ましい実施態様では、IL−6およびMCP−1の量またはIL−6およびTNF−アルファの量を決定する。その他の好ましい実施態様では、さらにRFの量および/または浸食の存在を決定する。
【0044】
別の好ましい実施態様ではIL−1ベータの量ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8およびIL−6からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定する。好ましくは、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーはTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8またはIL−6である。さらなる好ましい実施態様では、加えてRFの量および/または浸食の存在を決定する。
【0045】
なおさらに好ましい実施態様によれば、TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも3つのバイオマーカーの量を決定する。最も好ましくはTNF−アルファ、IL−1raおよびIL−6の量を決定する。最も好ましい実施態様では、TNF−アルファ、IL−1raおよびMCP−1の、TNF−アルファ、MCP−1およびIL−6の量、またはIL−1ra、IL−6およびMCP−1の量を決定する。なおさらなる実施態様はTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも4つのバイオマーカーの量を決定することを提供する。本発明の最も好ましい実施態様では、TNF−アルファ、MCP−1、IL−1raおよびIL−6の量を決定する。本発明の別の最も好ましい実施態様では、場合によっては骨浸食の決定と一緒に、TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−6およびRFの量を決定する。
【0046】
本発明の別の実施態様ではTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも5つのバイオマーカーの量を決定する方法に関する。好ましくはTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8およびIL−6の量を決定する。さらに好ましい実施態様はTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される最大4、5または6つのバイオマーカーの量を決定する。好ましい実施態様ではTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータの量を決定する。本発明のその他の好ましい方法によれば、前記で概要を示したように、生物学的試料中の少なくとも2、3、4、5または最大4、5または6つのバイオマーカーの量をRFの量と一緒に、および/または骨浸食の決定と一緒に測定する。
【0047】
好ましい実施態様では、TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を場合によってはRFの量と一緒に、別個に逐次的にまたは同時に決定する。最も好ましくは、少なくとも2つのバイオマーカーの量を同時に決定する。したがって、抗体のような該バイオマーカーに特異的に結合することができる手段の混合物を試料と接触させることにより、生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカー、ならびに場合によってはRFを同時に決定する。本発明の別の好ましい実施態様では、本明細書に記載したような組成物またはキットを用いることによりバイオマーカーの量の同時決定を実施する。
【0048】
本発明はさらにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定するための少なくとも2つの検出剤を含む、リウマチ様関節炎(RA)の予測、診断または予後診断のための組成物の発見に基づく。該組成物の別の実施態様はさらにRFの量を決定するための少なくとも1つの検出剤を含む。また該組成物をRAの診断または進行もしくは処置をモニタリングするために用いることもできる。検出剤は好ましくはTNF−アルファに特異的に結合する手段ならびにMCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む。最も好ましくは該手段はTNF−アルファに特異的に結合し、そして該その他の手段はMCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6またはIL−1ベータに特異的に結合する。本発明にさらに好ましい実施態様では、検出剤はMCP−1に特異的に結合する手段ならびにTNF−アルファ、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む。好ましくは該少なくとも1つのさらなるバイオマーカーはTNF−アルファ、IL−1ra、IL−8、IL−6またはIL−1ベータである。本発明の別の実施態様では、組成物はMCP−1に特異的に結合する少なくとも1つの手段およびTNF−アルファに特異的に結合する1つのさらなる手段を含む。別の実施態様では該組成物はさらにRFに特異的に結合する少なくとも1つの手段を含む。
【0049】
なおさらに好ましい実施態様では、検出剤はIL−1raに特異的に結合する手段ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む。最も好ましくは、組成物はIL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの手段およびIL−6に結合する少なくとも1つのさらなる手段、またはIL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの手段およびMCP−1に特異的に結合する少なくともさらなる手段、またはIL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの手段およびTNF−アルファに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む。その他の実施態様では、該組成物はさらにRFに特異的に結合する少なくとも1つの手段を含む。
【0050】
別の好ましい実施態様では、検出剤はIL−8に特異的に結合する手段ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む。最も好ましくは、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーはTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−6またはIL−1ベータである。なおさらに好ましい実施態様は、検出剤がIL−6に特異的に結合する手段ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含むことを提供する。好ましくは該少なくとも1つのさらなるバイオマーカーはTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8またはIL−1ベータである。最も好ましくは、組成物はIL−6に特異的に結合する少なくとも1つの手段およびMCP−1に結合する少なくとも1つのさらなる手段および場合によってはRFに結合する少なくとも1つの手段を含むか;または組成物はIL−6に特異的に結合する少なくとも1つの手段およびTNF−アルファに結合する少なくとも1つのさらなる手段および場合によってはRFに結合する少なくとも1つの手段を含む。
【0051】
本発明の別の実施態様は、検出剤がIL−1ベータに特異的に結合する手段ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8およびIL−6からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む組成物に関する。最も好ましくは該少なくとも1つのさらなるバイオマーカーはTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8またはIL−6である。そして本発明のなおさらなる実施態様は検出剤がTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも3つのバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも3つの異なる手段を含む組成物に関する。最も好ましくは該組成物はTNF−アルファに特異的に結合する少なくとも1つの手段、IL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの手段、およびMCP−1に特異的に結合する少なくとも1つの手段を含むか;または組成物はTNF−アルファに特異的に結合する少なくとも1つの手段、MCP−1に特異的に結合する少なくとも1つの手段、およびIL−6に特異的に結合する少なくとも1つの手段を含むか;または組成物はIL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの手段、IL−6に特異的に結合する少なくとも1つの手段、およびMCP−1に特異的に結合する少なくとも1つの手段を含むか;または組成物はIL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの手段、IL−6に特異的に結合する少なくとも1つの手段、およびTNF−アルファに特異的に結合する少なくとも1つの手段を含む。本発明のその他の最も好ましい実施態様では、少なくとも3つのバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも3つの異なる手段を含む該組成物はさらにRFに結合する少なくとも1つの手段を含む。
【0052】
本発明のなお別の実施態様は、検出剤がTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも4つのバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも4つの異なる手段を含む組成物を提供する。最も好ましくは少なくとも4つのバイオマーカーはTNF−アルファ、MCP−1、IL−1raおよびIL−6を含む。別の最も好ましい実施態様では、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも4つの異なる手段を含む組成物はさらにRFに結合する少なくとも1つの手段を含む。本発明のもっとさらに好ましい実施態様は、検出剤がTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも5つのバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも5つの異なる手段を含み、ここで最も好ましくは少なくとも5つのバイオマーカーはTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8およびIL−6を含むことを提供する。本発明の別の実施態様は検出剤がTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される最大4、5もしくは6つのバイオマーカーに特異的に結合する最大4、5もしくは6つの異なる手段を含むか、または最大6つのバイオマーカーがTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータを含む組成物を提供する。本発明の別の実施態様によれば、バイオマーカーに特異的に結合する手段は該バイオマーカーをコードするmRNAに結合することができる少なくとも1つの配列特異的オリゴヌクレオチドを含むか、または、さらに前記で詳記し、そしてまた実施例でも概要を示すように、TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカー/バイオマーカータンパク質に結合することができる抗体、モノクローナル抗体、抗体誘導体もしくは抗体フラグメントを含む。特に好ましい実施態様では、バイオマーカーに特異的に結合する手段を例えばポリスチレン表面のような固体支持体に固定する。最も好ましい実施態様はさらに以下の実施例で記載するようにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6もしくはIL−1ベータ、またはRFに特異的に結合する少なくとも2、3、4つの、または少なくとも5もしくは6つの抗体を提供し、ここで該抗体を96ウェルプレートの1つのウェル内のようなポリスチレン表面にスポットまたは固定する。別の好ましい実施態様はTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−1ベータおよびIL−6の群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも2つの抗体、ならびに場合によってはRFを2検体ずつ、3検体ずつまたは4検体ずつで96ウェルプレートの1つのウェル内にスポットまたは固定する。
【0053】
本発明のその他の態様はまた本発明による組成物のいずれか1つおよび使用のための指示書を含む診断または薬物発見キットを提供する。好ましい実施態様では、該診断または薬物発見キットはさらにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータ、ならびにRFから選択される少なくとも2つのバイオマーカーに特異的に結合することができる例えばビオチン化抗体のような標識抗体の混合物を含む。
そして本発明のなおさらなる態様は本発明による方法の1つにおけるかかる診断または薬物発見キットの使用に関する。
本発明を以下の実施例でさらに記載する。
【実施例】
【0054】
実施例1
ガラスチップ形式のタンパク質マイクロアレイの開発
タンパク質マイクロアレイを多重タンパク質分析に有用なツールとして開発を続ける。タンパク質マイクロアレイの開発はタンパク質沈着、アッセイ手順、シグナル検出およびデータ解析のために多くの技術を組み合わせる。異なる支持体、液体処理方法および検出系を伴う多くの試みが、タンパク質マイクロアレイ開発に関して為されている(Kodadek ; Chem.Biol. 8,(2):105−115(2001); Stoll, Templin, Schrenk, Traub, Vohringer, & Joos; Front Biosci. 7:c13−c32(2002); Templin et al. ; Proteomics. 3(11):2155−2166(2003))。開発は以下の工程を網羅する:
2つの界面化学物質を用いたガラスチップの処理の比較:ポリ−L−リジン対オクタデシルリン酸エステルの自己組織化単分子膜;
抗体沈着に関する接触および非接触圧電型アレイの比較;
コーティング抗体の種々濃度の比較;
種々検出系の比較:CCDカメラ対蛍光スキャナ。
ガラスチップ上のサンドイッチタンパク質マイクロアレイの開発は例えばUrbanowska et al., Cell Biology and Toxicology 19:189−202(2003)に記載されている。
【0055】
最適化アッセイ
プリンティングバッファーへのグリセロール添加の影響をMCP−1アッセイで調べる。MCP−1に対する抗体をPBS単独ならびに10、20、30、40および50%グリセロールを添加したPBSで希釈する。5ng/mlの濃度のMCP−1に関してサンドウィッチアッセイの間に生じたシグナルをコーティング溶液に加えたグリセロールの種々の量に対してプロットする(図1)。結果により、10%グリセロールをコーティング溶液に加えた場合、シグナル強度が低下することが示される。しかしながら20−50%グリセロールの添加の場合、生じたシグナルは同程度であるが、スポット(n=16)間の変動性はかなり増加する。
【0056】
実施例2
96ウェルプレート形式のタンパク質マイクロアレイの開発
界面化学を用いてチップをコーティングする方法(実施例1をも参照)は、アッセイ処理のロボット自動化がなされておらず、そしてチップ間変動性が高く、かなり時間がかかり、そして複雑であるので、タンパク質マイクロアレイ製造に関してあまり複雑でなく、そしてより確固とした代替を求める探求が促された。結果的に類似するが、ガラススライドを用いる代わりに固体支持体として96ウェルプレートのポリスチレン表面を使用するマイクロアレイを開発する試みが為された。
【0057】
ポリスチレンプレートは96ウェル形式でイムノアッセイに用いられる明確に確立された固体支持体であり、そして古典的ELISA技術において広く利用されている。界面化学は抗体結合に関して標準化および最適化されており、そしてアッセイ処理工程は完全に自動化される。したがって、このテクノロジーをマイクロアレイ形式に適合させる可能性はその他の固体支持体に勝る多くの利点を提供できるであろう。
【0058】
バイオチップアレイヤー(BCA)プリンティング装置に適合するロングネックチップ(PerkinElmer)の利用可能性により固体支持体としての96ウェルプレートの使用の選択肢が提供された。重要なことに、これらのロングネックチップにより、抗体を96ウェルプレートの底部に正確にスポットすることが可能になる(Moody, Van Arsdell, Murphy, Orencole, & Burns, Biotechniques 31(1):186−4(2001))。開発過程は試薬選択、プリンティングプロトコール最適化、マトリックス検査、アッセイプロトコール確立および検出系評価を伴った。
【0059】
得られた結果に基づいて、マイクロアレイ調製のために以下の条件を選択した:ガラス処理のためのODPのSAM;非接触圧電型プリンターを用いる200μg/mlの濃度でのコーティング抗体の沈着、および蛍光によるシグナル検出。
【0060】
実施した実験の結果として、96ウェルプレートの各ウェルで4×4マイクロアレイを開発した。圧電型装置を用いて抗体を各ウェルに200μg/mlの濃度で、スポットあたり3nl固定した。抗原およびビオチン化抗体の混合物の試料インキュベーションに続いて、各ウェル内の各スポットで生じた化学発光シグナルを、ノンパララックストレイを有するCCDカメラを用いて撮像した。次いで画像をArrayVision(商標)ソフトウェアを用いて分析した。各スポットで生じたシグナルの量は元来の標準または試料中の標的タンパク質の量に比例した。
【0061】
材料および方法
一般試薬
PBSバッファー 10×PBSバッファー、Roche Diagnostic, Indianapolis, IN,USA)
Tween(登録商標)20 Fluka Chemie Sarl, Buchs, Switzerland
SuperBlock(商標) Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL, USA
ウシ血清アルブミン(V分画) Fluka Chemie Sarl, Buchs, Switzerland
洗浄バッファー PBS1×0.05%Tween含有
アッセイバッファー PBS1×0.05%Tween、3%BSA含有
【0062】
ソフトウェア
Quantity One バージョン4.2.1(Bio-Rad, Hercules, CA, USA)
Aida バージョン5.0(Raytest GmbH, D 75339 Straubenhardt, Germany)
ImaGene(商標)バージョン5.0(BioDiscovery, Inc. , El Segundo, CA, USA)
Array Vision(商標)バージョン8.0(Imaging Research Inc. , Ontario, Canada)
SOFTmax(登録商標) PRO バージョン3.1.1(Molecular Devices Corp. , Sunnyvale, CA, USA)
【0063】
研究室装置
ブラックプレート:Maxisorp(商標)96ウェルプレート(Nalge Nunc International, Rochester, NY, USA)
透明プレート:Maxisorp(商標)96ウェルプレート(Nalge Nunc International, Rochester, NY, USA)
プレートシェーカー:Wesbart(IS89)(Fischer scientific, Wohlen, Switzerland)
洗浄器: Embla, Molecular Devices(Bucher Biotec AG, Basel, Switzerland)
【0064】
装置
プリンティング装置 バイオチップアレイヤー(BCA)(PerkinElmer, Boston, MA, USA)
カメラ LAS1000− Fuji, Raytest GmbH, D 75339 Straubenhardt, Germany.
LAS3000− Fuji, Raytest GmbH, D 75339 Straubenhardt, Germany
【0065】
プリンティング系設定
マイクロアレイ製造のためにBCAを使用した。圧電系のパラメーターをチップあたり110−200ボルトに設定した。チップとウェル底部との間の距離は0.5mmであった。抗体を2検体ずつ、スポット間1mmの距離で分配した。
【0066】
抗体および組換えタンパク質
抗体試薬
【表1】

【0067】
組換えタンパク質
【表2】

【0068】
市販キット
ELISAキット
【表3】

【0069】
抗体選択
抗体96ウェルプレートの開発に用いる試薬は市販の異なるエピトープに対するELISA抗体適合対、および対応する抗原であった。マイクロアレイ開発のために選択されるバイオマーカーのパネルはIL−1β、IL−1ra、IL−6、IL−8、MCP−1、TNFαであった。
【0070】
多重形式の前記の抗体適合対の適応性を確認するために、交差反応の可能性を調べる実験を行った。全ての捕捉抗体を各ウェルの底部にスポットし、そして単一の組換えサイトカイン(0.64ng/ml IL−1β、IL−6、IL−8、0.58ng/ml IL−1ra、0.8 ng/ml MCP−1および0.038ng/ml TNFα)および全抗原に対するビオチン化抗体のカクテルでスパイクしたPBSと共にインキュベートした。試料にスパイクしなかった全ての被分析物のレベルは定量限界以下であった。したがって、選択した抗体適合対はこのマイクロアレイ形式で特異的である。
【0071】
IL−1β、IL−6、IL−8およびMCP−1に対する抗体のサブセットの交差反応性もまたBIAcore(登録商標)テクノロジーで調べた。結果により、マイクロアレイ製造のために選択された抗体適合対間に交差反応性がないことが実証された。
【0072】
試薬条件最適化
アッセイの各工程に関して、種々の条件を試験しなければならない。様々の濃度のコーティングおよび検出抗体ならびに種々のスポット容量を比較した。検出抗体に関しては、高いシグナル対ノイズ比を生じるために種々濃度が必要とされる。
【0073】
コーティング抗体濃度の力価測定
IL−1β、IL−6およびIL−8に対する抗体を4つの濃度でプリントした:25、50、100および200μg/ml。アッセイを実施した後、各被分析物に関して生じたシグナルをバックグラウンド値で除した。バックグラウンドは被分析物を加えなかった(ブランク)ウェルから定量した。各被分析物に関して10000、1000および100pg/mlの濃度でシグナル対ノイズ比を計算した。図2では被分析物濃度100pg/mlに関するシグナル対ノイズ比を示す。IL−1βに関しては、コーティング抗体濃度10、50、100および200μg/mlに関してシグナル対ノイズ比1.5、19.5、92.9および129.2を測定した。IL−6の場合、同一のコーティング抗体濃度に関してシグナル対ノイズ比は1.0、106.9、113.9、116.5であったが;IL−8に関しては、2.1、59.7、155.1、157.8という結果であった(図2)。全被分析物に関して最も高いシグナル対ノイズ比は、200μg/mlの濃度のコーティング抗体を用いた場合に得られ、結果として、マイクロアレイ製造のためにこの濃度を選択した。
【0074】
スポットあたりのコーティング溶液の容量
各ウェルの底部に抗体をプリントした。全抗体をウェルあたり4検体ずつでプリントした。各標準曲線濃度を2つのウェルに分配した。結果的に被分析物あたり8つのスポットを生じた。抗体溶液を滴あたり〜0.333plの容量で分配した。4つの異なる場合の全スポット容量を調べた:20nl(60滴)、10nl(30滴)、3nl(9滴)および0.333nl(1滴)。各分配容量に関して変動係数(CV%)を計算した。滴あたり20nlを分配した場合、スポットの大きさは比較的大きく、スポットのお互いの重複を引き起こし、それによりアッセイ結果が不正確になった。3つのその他の場合では、各スポットから生じたシグナル強度のCV%を全標準曲線濃度に関して計算した:10、25、50、100および1000pg/ml。最良の感度およびCV%はスポットあたり3nlの容量を分配した場合に得られた。全標準曲線濃度にわたるCV%範囲を示す(表1)。結果的に、3nl/スポットをマイクロアレイ製造に選択した。
【0075】
【表4】


各被分析物に関してスポットあたり種々容量のコーティング抗体溶液を分配した。式:(標準偏差/平均*100)を用いて各スポット(n=8)から生じたシグナル強度に関してCV%を計算した。CV%は3nl/スポット容量を分配した場合に最良であった。
【0076】
ビオチン化抗体濃度の力価測定
種々濃度のビオチン化抗体を試験した。IL−1b、IL−6およびIL−8に対するビオチン化抗体を62.5、125、250および500ng/mlに希釈した。ビオチン化抗体の各希釈に関して生じたシグナルを対応するバックグラウンドで除した。最も高いシグナル対ノイズ比は各被分析物に関してコーティング抗体の濃度500ng/mlを用いた場合に得られた。種々濃度のビオチン化AbでIL−8アッセイに関して発生したたシグナル対ノイズ比の実例を図3に示す。結果的に、500ng/mlの濃度をマイクロアレイ製造に選択した。
【0077】
ヒト、イヌおよび子ウシ血清評価
無作為にイヌ、ヒトおよび子ウシ血清でIL−1β、IL−6およびIL−8に関する標準曲線を調製した。プロットする前に各ウェルからのローカルバックグラウンドをシグナル強度から減じた。
【0078】
バッファー評価
市販のELISAキットで標準作成に使用するアッセイバッファーでIL−1β、IL−6およびIL−8に関する標準曲線を調製した。様々な濃度の組換えタンパク質でスパイクしたヒト血清プールから調製した試料を標準に基づいて計算した。
【0079】
【表5】


IL−1βでスパイクしたヒト血清試料に関して計算した正確性[(スパイクした被分析物濃度/実測被分析物濃度)100]。バッファー中で調製したIL−1β標準に基づいて正確性を計算した。得られた値はIL−1βのスパイクした量に比較して半分の値になった。
【0080】
種々のヒト血清スクリーニング
低レベルのIL−1β、IL−1ra、IL−6、IL−8、MCP−1、TNFαを含有するマトリックスを選択するために、それらに対する抗体を各ウェルの底部にプリントした。ヒト血清の種々のバッチをアレイの各ウェルに適用した。各バッチを2検体ずつで分析した。プリントされた被分析物に関して高いシグナルが得られた血清を拒絶し、そして調べた被分析物に関して低いシグナルを生じた血清を可能性のあるプール構成成分として選択した。これらの血清中の内因性の被分析物の量を市販のELISAキットを用いて測定した。得られた結果に基づいて、ELISAデータシートに記載された正常なヒト血清中の値に相当する被分析物の量を含有する血清を、プールを調製するために選択した。スクリーニングした全部で36個のヒト血清のバッチから12個を選択し、そして一緒にプールした。続いてヒト血清プール中の被分析物の量もまたELISAキットで測定した。結果により、プール中の目的の被分析物の全量はまた正常血清中に見出されたレベルに相当することが示された。結果を表3に示す。
【0081】
【表6】

【0082】
続いてヒト血清プールで全被分析物に関する標準曲線を生成した。シグナルおよび濃度をプロットする前に各ウェルからのローカルバックグラウンドを減じた。全標準は満足できる直線性を示した。
【0083】
バッファーマトリックス評価の間に同一の様式で調製された試料を前記した標準に基づいて測定した。全被分析物に関する実測濃度はスパイク濃度に相当し、70%≦および≦130%内のアッセイの正確さが得られた。IL−1βに関する実例の結果を表4に示す。選択されたヒト血清プールをアッセイバリデーションに用いた。
【0084】
【表7】


IL−1βヒト血清スパイク試料をヒト血清で調製した標準曲線で測定した。濃度は満足できる正確性70%≦および≦130%で実測された。
【0085】
アッセイ条件最適化
コーティング溶液へのグリセロールの添加
グリセロール10、5および0%を添加したPBSをコーティング溶液として用いた。全ての標準曲線濃度点に関してCV%および正確さを計算した。IL−1βに関する代表的なデータを表5に示す。CV%とAcc%の間で、種々のグリセロール添加で得られた結果の間に主要な差異はなかった。しかしながらグリセロールの添加は技術的観点の理由で問題があった。粘性のグリセロール特性がプリンティングチップに詰まりを引き起こした。この結果に基づいて、グリセロールを添加していないPBSをマイクロアレイ作成のためのコーティングバッファーとして選択した。
【0086】
【表8】

【0087】
アッセイ形式
2つの異なるアッセイ形式を比較した:サンドイッチアッセイならびに試料およびビオチン化抗体の同時インキュベーション。サンドイッチ法ではアッセイを2工程で実施する。最初にプリントしたコーティング抗体を試料と共にインキュベートし、次いで洗浄工程の間に未結合試料を除去した後、アレイをビオチン化抗体のカクテルに暴露する。2工程インキュベーションは、アッセイ抗体のいくつかがポリクローナルである場合に有利であろう。
【0088】
同時インキュベーションの場合、アッセイを1工程で実施する。プリントしたコーティング抗体を試料およびビオチン化抗体のカクテルの混合物と一緒にインキュベートする。同時インキュベーション法は試料適用の間の時間差を最小にし得る。IL−6標準曲線は双方のアッセイ形式を用いて作成した標準曲線を表す(図4)。1工程形式を実施した場合、作成した標準曲線は最低範囲でさえも直線であり、アッセイ感度を高めた。
【0089】
CCDカメラ選択および設定
次いでHRP−共役ストレプトアビジンおよび化学発光の強化を用いて視覚化したシグナルを、電荷結合素子(CCD)カメラを用いて撮像した。96ウェル形式により化学発光およびCCD組み合わせの選択が決定づけられた。2つの異なるCCDカメラを用いて画像を作成した。撮像に利用した2つの異なるCCDカメラはFuji LAS1000およびLAS3000であった。ノンパララックストレイなしで生成された画像はエッジ効果を生み出し、画像分析を不正確にすることが観察された。第2のカメラの利点は96ウェルプレートウェルの視差を排除するノンパララックストレイである。また第2のカメラにより、スポットの大きさを小さくすることによりマイク分析を容易にそしてより精密にする高解像度ビニング様式の選択肢が得られた。図5はノンパララックストレイ装置で、そして3つの異なる画像様式で撮影した画像を示す:高(左)、標準(中央)および高解像度様式(右)。もはやエッジ効果は観察されなかった。結果的にマイクロアレイ製造のために第2のカメラを選択した。アッセイの間に生じたバックグラウンドはプレートの全ウェルにわたって安定していた。各ウェルからのバックグラウンドシグナル強度間のCV%は3.3%であった。これらの結果により、生成されたシグナル強度のバックグラウンド補正は必要でないことが示された。
【0090】
定量ソフトウェア
3つの市販の定量ソフトウェアを評価した:Aida、ImageneおよびArrayVision。3つのツール間の主要な差異はArrayVision(商標)システムに含まれる標準曲線作成特徴である。その他のプログラムは標準曲線作成にさらなるツールを必要とした。例えばその他の2つのソフトウェアでデジタル化シグナル値をExcelプログラムにエクスポートしてプログラム変動性計算を実施しなければならなかった。その後でデータを再度標準曲線作成のためにSoftmaxPro(登録商標)ソフトウェアにエクスポートした。これが、ArrayVision(商標)を抗体マイクロアレイ製造のためのソフトウェアとして選択することになった主要な原因であった。3つのソフトウェアの比較を表6に示す。
【0091】
【表9】

【0092】
開発したプロトコール
一般試薬:
プレート: ブラックプレート
コーティングバッファー: PBS1X
CCDカメラ: LAS−3000高解像度ビニング様式
ソフトウェア: ArrayVision(登録商標)
【0093】
アッセイプロトコール
コーティング 200μg/mlモノクローナル抗体
3nl/スポット
バイオチップアレイヤーエンクロージャー中2時間乾燥
4℃で一晩インキュベーション
室温で30分間乾燥
37℃で10分間乾燥
遮断 SuperBlock/ウェル3×200μl
SuperBlock/ウェル100μl、室温で30分間インキュベーション
試料インキュベーション 試料50μl/ウェル
500ng/mlビオチン化抗体のカクテル50μl/ウェル
振盪プラットフォーム上で室温で4時間インキュベーション
洗浄バッファー300μl/ウェルで3回洗浄
ストレプトアビジン−HRP 0.2μg/ml濃度で100μl/ウェル
振盪プラットフォーム上で室温で30分間インキュベーション
洗浄バッファー300μl/ウェルで3回洗浄
化学発光基質 100μl/ウェル、即座に読み出し
撮像 CCDカメラ露出20秒
画像デジタル化および16ビットtiffファイルとして保存
シグナル定量 ArrayVision(商標)
【0094】
要約すれば、96ウェル形式でTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6および/またはIL−1ベータのようなリウマチ様関節炎に関連する少なくとも2、3、4、5または6つのバイオマーカーを同時に測定するのに有効な方法の開発における主要な構成成分、工程および条件を評価した。評価は試薬力価測定、スポットあたりに沈着したコーティング抗体の量、マトリックス選択、検出および解析、ならびにソフトウェア評価を網羅する。
【0095】
最適なシグナル対ノイズ比を生成するのに必要な、ELISAに比較して高い抗体濃度を検討する場合、プリンティング過程の間に抗体変性の可能性を考慮すべきである。別の可能性は抗体をポリスチレン96ウェルプレートに固定する物理的吸着である。物理的吸着はアッセイ中のタンパク質脱離に至り得て、これはシグナル損失に至り得る。コーティング溶液の濃度が高い場合、抗体の変性または脱離の可能性は低くなるかもしれない。
【0096】
薬物動態イムノアッセイのための既存の手引きは、分析する試料と同一起源のマトリックス、これに代えて異種動物マトリックスまたはタンパク質不含バッファーで被分析物測定のための標準曲線を調製することを推奨した。
化学発光反応において生成された光は全方向に同等に放出される。そのためにいわゆる光パイピング現象を回避するために、化学発光測定のために透明のプレートの代わりにブラックプレートを使用することが推奨される。光パイピングは単に各ウェルから生じたシグナルの干渉である。しかしながらブラックプレートは視誤差を取り込む危険性を創成するプレートの上から画像を撮影することを必要とする。したがって抗体アレイのための撮像ツールとして2種のCCDカメラを比較した。LAS3000カメラにより提供されるノンパララックストレイの選択肢により全てのプレートを視差の影響なく撮像することが可能になった。
【0097】
実施例3
96ウェルプレートの抗体マイクロアレイのバリデーション
開発した96ウェルプレートの抗体マイクロアレイは古典的なイムノアッセイで利用されるサンドイッチELISA手順に基づく(Wild 2001; The Imunoassay Handbook)。イムノアッセイはしばしば疾病の経過および処置に応答して誘発された抗体を示すバイオマーカー定量化に適用される。(Findlay, Smith, Lee, Nordblom, Das, DeSilva, Khan, & Bowsher; J.Pharm.Biomed.Anal. 21(6):1249−1273(2000))。したがって、イムノアッセイが正確であり、そして精密であることが非常に重要である。正確性は、方法により得られた濃度の値が被分析物の公知の真の濃度の値に近似することと定義され、一方精度は、方法を同一の生物学的試料の複数のアリコートに繰り返し適用した場合に被分析物の個々の測定値が近似することである。
正確性=(算出濃度/名目濃度)100
精度=(標準偏差/算出平均濃度)100
【0098】
任意の生物分析方法のこれらの重要な特徴をバリデーションの過程で調べる。分析方法のバリデーションにより供給源を同定し、そして方法における潜在誤差を定量化する(Findlay, Smith, Lee, Nordblom, Das, DeSilva, Khan, & Bowsher, J.Pharm.Biomed.Anal. 21(6):1249−1273(2000);Shah, Midha, Findlay, Hill, Hulse, McGilveray, McKay, Miller, Patnaik, Powell, Tonelli, Viswanathan, & Yacobi, Pharm.Res. 17(12):1551−1557(2000))。アッセイバリデーションは数学的および定量可能な用語でアッセイの動作特性について説明する。古典的なイムノアッセイはFDAの指令(2004)に沿ってバリデートされなければならない。
【0099】
バリデーションプロトコール
抗体マイクロアレイのバリデーションに採用されたプロトコールは薬物動態イムノアッセイに関するFDAの指令(2004)の重要な要素を用いた許容基準文書に基づいた。96ウェル形式のAbマイクロアレイに採用された修飾されたプロトコールがバリデーション方法で実践された。
【0100】
96ウェルプレートの抗体マイクロアレイのバリデーションプロトコール
マトリックス
そこから(複数の)被分析物を定量する血漿、血清、全血、尿、糞便、組織のような生物学的培地を記載するためにマトリックスを用いる。測定された低レベルの被分析物を含有する選択されたヒト血清のプールで全てのバリデーション実験を実施した。
【0101】
標準曲線は装置応答性と被分析物の公知の濃度との間の関係である。
標準曲線の直線部分は疾病状態の被分析物濃度レベル内にあるべきである。8つの異なる濃度レベルを用いて標準曲線を構築した。(複数の)被分析物も内部標準も加えられていない試料をブランクとした。
【0102】
【表10】


マトリックス中に標準を新たに調製し、そして各バリデーション日に実行した。
標準を1回調製し、そして3検体ずつで分析した。
作動範囲内の標準に関する逆算値は予測濃度から≦30%偏差になるべきである(70%≦正確性≦130%)。
個々の標準の最大1/4は排除され得る。
各標準濃度で少なくとも50%の値(スポット)が正確性および精度範囲内に入らなければならない。
【0103】
品質管理試料
品質管理試料(QC)は生物分析方法の性能をモニタリングするため、および個々のバッチで分析される未知試料の結果の完全性および妥当性を評価するために用いられるスパイクされた試料である。QCを標準曲線と同一のマトリックスで調製する。
QC試料を各被分析物に関して6濃度で調製した。
【0104】
【表11】


各QC濃度に関して同一のマトリックスから別個に2つのQCセットを調製し、3検体ずつで分析した。
QC試料は予想される動的濃度範囲を網羅すべきであり、1つのQCは予想される定量下限(LLOQ)で;1つはLLOQの3倍内で、1つは高および低QC濃度のほぼ間で、そして1つは予想される定量上限(ULOQ)である。LLOQは適当な精度および正確性を伴って定量的に決定され得る試料中の被分析物の最低濃度である。ULOQは適当な精度および正確性を伴って定量的に決定され得る試料中の被分析物の最高量である。
70%≦正確さ≦130%は各濃度レベルでの平均値に基づいた。
各濃度レベルで精度≦30%
個々のQC濃度値の少なくとも2/3は正確性および精度の範囲内でなければならない。
各QC濃度で少なくとも50%の値(スポット)は正確性および精度の範囲内でなければならない。
標準およびQCを同一ストック溶液から調製した。
日間変動性:異なる日で3回バリデーションを実行した。バリデーション実行は分析に問題がある場合にのみ拒絶されるべきである(例えば試薬調製のエラー、装置不備、ピペッティングエラーまたは実行からのデータがあまりに異常であるので、その値が説明できない分析エラーの結果でしかあり得ない場合)。
【0105】
安定性
安定性は規定の時間間隔で特定の保存条件下での、規定の溶液またはマトリックス中の被分析物の物理化学的安定性である。
スパイクされた試料の短時間安定性。室温で少なくとも6時間評価される、非分析物のヒト血清プールをスパイクするストックの安定性。望ましい保存時間の完了後、保存した試料対新たに調製した試料を測定することにより安定性を試験すべきである。安定性はQC3およびQC4で試験する。
長期間安定性:日間変動性バリデーションのために調製したQC3およびQC4を最初のバリデーション実行時、1週間間隔および1か月間隔で分析する。
【0106】
標準曲線およびQC試料調製
各被分析物に関して同一ストック溶液を用いて標準およびQC試料を調製した。標準およびQC試料を各分析日に同一ヒト血清プールから新たに調製した。バリデーションプロトコールで示すように濃度範囲は標準およびQCを網羅した。
【0107】
標準曲線調製
ヒト血清プールで20μg/ml被分析物ストック溶液を用いてプレ試料溶液を調製した。ストック溶液をヒト血清プールで10ng/mlの濃度まで2倍希釈(1:10)した。IL−1β、IL−1ra、IL−6、IL−8およびMCP−1の目標濃度を調製するために、100ng/ml濃度を用いた。TNFαに関しては、10ng/mlの濃度を用いた。ヒト血清中の組換えタンパク質のカクテルをヒト血清で、バリデーションプロトコールで定義した目標濃度まで連続希釈で1:2に希釈した。各被分析物に関してArrayVision(商標)でロジスティック(ELISA)設定を用いて、シグナル対濃度をプロットすることにより標準曲線が得られた。個々の較正線の品質を較正標準の逆算濃度の正確性および精度から評価した。これらの正確さをSOFTmax(登録商標) PROソフトウェアを用いて計算した。
【0108】
計算
正確性%および精度%
平均 各標準濃度に関して全スポット(n=6)の少なくとも50%の平均
CV% (各標準濃度に関して全スポットの少なくとも50%のSD/平均)100%
Acc% (観察濃度/予測濃度)100%=各濃度レベルでの平均値に基づく
【0109】
QC試料調製
各被分析物に関して20μg/mlストック溶液からヒト血清プールでプレ試料溶液を調製した。ストック溶液をヒト血清プールで10ng/mlの濃度まで2倍希釈(1:10)した。IL−1β、IL−1ra、IL−6、IL−8およびMCP−1の目標濃度を調製するために、100ng/ml濃度を用いた。TNFαに関しては、10ng/mlの濃度を用いた。ヒト血清中の組換えタンパク質のカクテルをバリデーションプロトコールで定義した目標濃度まで連続希釈で1:2.5に希釈した。各日に較正試料(n=3)と一緒に分析したQC試料の日間正確性および精度ならびに日内正確さおよび精度を計算することにより、方法の正確性および精度を評価した。別個のQCセットに関してQCを3検体ずつ、ウェルあたり2スポット(n=12)で調製した。QC試料に関する正確性および精度を以下の式を用いてArrayVision(商標)ソフトウェアで計算した。
【0110】
計算
日内正確性%および精度
平均 各QC濃度に関して全スポット(n=12)の少なくとも50%の平均
CV% (各QC濃度に関して全スポットの少なくとも50%のSD/平均)100%
Acc% (観察濃度/予測濃度)100%=各濃度レベルでの平均値に基づく
日間正確性%および精度%
平均 各QC濃度に関して3日間のバリデーション日の全スポット(n=36)の少なくとも50%の平均
CV% (各QC濃度に関して3日間のバリデーション日の全スポットの少なくとも50%のSD/平均)100%
Acc% (観察濃度/予測濃度)100%=各濃度レベルでの平均値に基づく
【0111】
安定性試料調製
ヒト血清プールを各被分析物に関してQC3およびQC4に相当する濃度の組換えタンパク質でスパイクした。別個に調製した2セットに関して3検体ずつで試料を分析した。各バリデーション日に室温で8時間保存した後にスパイクしたヒト血清の安定性を測定した。毎日新たな試料を調製し、そして室温で8時間保存した。−80℃で1週間および1か月保存の場合、最初のバリデーション日に試料を調製した。特定の保存時間の後、1回の実験で安定性を調べ、新たに調製した標準曲線で保存した試料のデータを計算した。
【0112】
アッセイ手順
さらに前記で記載したプロトコールに従って各バリデーション日に実験を行った。
【0113】
較正曲線
バリデーションプロトコールに記載したようにキャリブラントの濃度を用いて各バリデーション日にヒト血清プールで標準/較正曲線を調製した。シグナル密度を統合データ値(IDV)として定義する。ロジスティックELISAフィットを用いてシグナルを被分析物濃度に対してプロットした。IL−1β、IL−6、IL−8およびTNFαに関して、全キャリブラントに関する精度および正確性は許容基準内であった。IL−1raおよびMCP−1標準に関しては、最も低い較正試料を除いて全試料に関する正確性および精度は許容基準を満たした。IL−1raの最も低い較正試料、0.090ng/mlにより40.2%の精度が得られたが、正確性は許容基準を満たした。MCP−1の最も低い較正試料、0.117ng/mlにより各々198.3%および38.5%の正確性および精度が得られた(表9および10)。
【0114】
【表12】


各標準曲線濃度に関する逆算値をSOFTmax(登録商標) PROソフトウェアで評価した。各標準濃度に関して全スポットの少なくとも50%(n=6)で平均正確性を計算した。
【0115】
【表13】


各標準曲線濃度に関する逆算値をSOFTmax(登録商標) PROソフトウェアで評価した。各標準濃度に関して全スポットの少なくとも50%(n=6)で平均精度を計算した。
【0116】
品質管理試料
日内正確性および精度、ならびに日間正確さおよび精度に関する結果を各々表11および12に示す。全QC試料は日内および日間アッセイ正確性および精度に関する許容基準を満たした。
【0117】
【表14】

【0118】
【表15】

【0119】
【表16】

【0120】
アッセイ作動範囲
LLOQとULOQの間でアッセイ作動範囲を決定した。アッセイ作動範囲は測定した被分析物に関する疾患濃度を満たしていた。
【0121】
【表17】

【0122】
安定性
MCP−1を除く全ての被分析物は室温で8時間後、および−80℃保存で1週間後に安定であった。−80℃で1か月保存の後、スパイクされた試料の濃度はスパイクされた名目値と比較した場合に3倍少なかった。これらの結果を室温保存測定に関しては表15、ならびに−80℃で1週間および1か月保存に関しては表16に示す。
【0123】
【表18】

【0124】
【表19】


バイオマーカー定量に用いるテクノロジーとしてのイムノアッセイは正確性、精度およびに室間再現精度に関してバリデートする必要がある。96ウェル形式の抗体マイクロアレイを薬物動態アッセイに関する食品医薬品規制ガイドラインに基づいてバリデートした。バリデーション過程で以下のパラメーターを調べた:逆算値に基づくキャリブラント正確性および精度;品質管理試料に基づく日内および日間正確性および精度;室温で8時間後、ならびに−80℃で1週間および1か月保存の後の抗原スパイクされたヒト血清試料の安定性;LLOQおよびULOQに基づくアッセイWR。
【0125】
得られたデータにより、IL−1β、IL−6、IL−8およびTNFα被分析物に関する全較正試料に関する正確さおよび精度が許容基準に合致したことが示される。MCP−1の場合正確さおよび精度が、ならびにIL−1raに関しては標準曲線の最低濃度の精度のみが許容基準を網羅しなかった。しかしながらこれらの試料はアッセイ作動範囲決定の間に排除される。アッセイ作動範囲はRA血清中の試験される被分析物を網羅するので、結果は全体にわたって満足できるものである。
バリデーション結果により、96ウェルプレートの抗体マイクロアレイが決定されたアッセイ作動範囲内で正確であり、精密であり、そして再現性があることが実証される。
【0126】
実施例4
抗体マイクロアレイおよびELISAテクノロジーの比較
ELISAは血清試料中のタンパク質を分析するための標準的な方法である。実施するのが容易であり、そして特異的な方法であるので、ELISAは過去10年間にわたり臨床および微生物学研究における血清サイトカインの検出のために広く用いられている(Klimiuk et al. (2002);Lloyd et al., Ann.Rheum.Dis. 61(9):804−809(1991); Mangge et al., Arthritis Rheum. 38(2):211−220(1995))。このセクションでは、前記したようにバリデートされたタンパク質マイクロアレイをELISAテクノロジーと比較する。双方のテクノロジーを用いて35個のRA試料、14個のリウマチ性疾患試料および26個の対照ヒト血清でIL−1β、IL−1ra、IL−6、IL−8、MCP−1およびTNFαレベルを測定した。続いて双方の方法で得られた結果を線形回帰分析を用いて比較した。
【0127】
IL−1β、IL−1ra、IL−6、IL−8、MCP−1およびTNFαに関する多重アッセイ
前記したようにバリデートされたタンパク質マイクロアレイでIL−1β、IL−1ra、IL−6、IL−8、MCP−1およびTNFαの血清濃度を測定した。
【0128】
IL−1β、IL−1ra、IL−6、IL−8、MCP−1およびTNFαに関するELISAアッセイ
マイクロアレイ製造ならびに抗体適合対および組換えタンパク質の各々で用いた同一の試薬でサンドウィッチELISAを調製した。血清プールを用いて標準曲線および抗体マイクロアレイを生成するために用いたのと同一の濃度点を有するQC試料を調製した(表7および表8)。製造者の指示書に従ってELISAを実施した。
【0129】
スパイクされた試料の調製
組換えIl−1ベータ、IL−6、IL−8およびTNFαを3、1.500、0.750、0.375、0.188、0.094、0.047、0.023、0.012および0.006ng/mlの濃度でヒト血清プールをスパイクした。サイトカインレベル決定に用いたマイクロアレイおよびELISAの標準曲線範囲を網羅する様式で濃度を選択した。試料を−80℃で凍結させた。
【0130】
多重アッセイ動作をサンドイッチELISAアッセイと比較した。52個のリウマチ患者血清試料および26個の無作為ヒト血清を多重アッセイおよびサンドイッチELISAの双方で検定した。2つの分析群の結果を一緒にプールして78個の血清の群を作った。IL−1βアッセイの場合、双方のテクノロジーにより検出できる値の数が小さすぎて回帰分析を実施できなかった。相関性分析を実施するために、ヒト血清プールを10の異なる濃度の目的の被分析物でスパイクした。スパイクされた試料中のIL−1β、IL−6、IL−8およびTNFαのレベルをもまた測定した。スパイクされた試料の結果を以前に分析した78個の血清の結果と共にプールした。IL−1β、IL−6、IL−8およびTNFαに関する78個の全被分析物および10個のスパイクされた試料の被分析物濃度を線形回帰分析に供した。結果を図6に示す。IL−1β、IL−1ra、IL−6、IL−8、MCP−1、およびTNFαに関する相関係数(R)は各々0.90、0.60、0.93、0.96、0.94および0.95であった。
【0131】
IL−1β、IL−6、IL−8、MCP−1およびTNFαに関する多重アッセイにより、同一の被分析物に関する個々のELISAとの非常に良好な相関性が示された。相関係数は各々0.90、0.93、0.96、0.94および0.95であった。IL−1raアッセイに関しては、ELISAとの相関性は低かった(0.60)。これはサンドイッチイムノアッセイでしばしば直面する問題により説明でき、そして恐らくアッセイ多重化により増幅され得る。例えばリウマトイド因子または天然発生ヒト異好抗体はしばしば自己免疫性および炎症性疾患に関連し、動物およびヒト免疫グロブリンを認識できる。結果的に偽陽性または陰性結果を生じる(Hennig, Rink, Fagin, Jabs, & Kirchner, J.Immunol.Methods 235(1−2):71−80(2000))。別の理由は可溶性受容体IL−1 I型の存在であろう(Arend,Cytokine Growth Factor Rev. 13(4−5):323−340(2002))。多分IL−1raのその可溶性受容体への結合親和性が多重形式により偏る。それは多重および単一ELISAで異なる偽の高または低サイトカインレベルを引き起こし得る。
タンパク質マイクロアレイおよびELISA間の良好な相関性は、試料あたりいくつかの被分析物をモニタリングするタンパク質マイクロアレイの適用性および高速大量処理スクリーニングツールとしてのその可能性を示している。
【0132】
実施例5
リウマチ試料中の参考になる被分析物を評価するための抗体マイクロアレイの適用
多重アッセイを用いてリウマチ様関節炎(RA)およびその他のリウマチ性疾患と診断された患者からの試料中のIL−1β、IL−1ra、IL−6、IL−8、MCP−1およびTNFα血清濃度を測定した。
【0133】
対象および試料
研究した試料はRAと診断された患者からの35個の試料ならびに、リウマチ性多発筋痛症(PMR)、若年性リウマチ様関節炎(JRA)、結合組織病(CTD)および巨細胞性動脈炎のようなリウマチ性疾患と診断された患者からの13個の試料からなった。患者の集団の特徴を表17に示す。
【0134】
【表20】


SD−標準偏差
RF−リウマトイド因子
DMARD−疾患修飾性抗リウマチ薬
NA−評価不能
【0135】
患者の関節外徴候(骨浸食、皮膚変化、胸膜肺徴候、心臓疾患、レイノー現象、シェーグレン症候群、リウマトイド血管炎、骨粗鬆症および主要関節置換)についての情報もまた収集した。
IL−1β、IL−1ra、IL−6、IL−8、MCP−1およびTNFαの血清濃度をさらに前記したようにバリデートされたタンパク質マイクロアレイで測定した。
【0136】
一方向分散分析を用いてデータの分析を行った(Kempthorne O 1983)。p値が5%未満である場合(p<0.05)、結果は有意であると考えられた。
測定したIL−1β、IL−1ra、IL−6、IL−8、MCP−1およびTNFαの血清レベルを2工程で分析した。最初に6つの被分析物の各々に関する平均値をRAおよび非RA試料に関して計算した。これらのデータにより、2群間の5つの被分析物レベル(IL−1ra、IL−6、IL−8、MCP−1およびTNFα)に関する差異が示された(表18)。
【0137】
【表21】


SD−標準偏差
【0138】
分析は3つの患者群の比較を含む:RA対非RA、リウマトイド因子(RF)陽性対陰性、骨浸食陽性対陰性。目的の6つの被分析物の血清レベル、患者の年齢、罹病期間および現在投与されているDMARDの数に関して分析を行った。罹病期間は診断の日付から試料収集の日付までと定義する。
【0139】
RAおよび非RAリウマチ患者の比較の結果を表19に示す。血清中のIL−1ra、IL−6、MCP−1およびTNFαの濃度はRA患者で有意に高かった(各々p<0.0022、p<0.0107、p<0.0024およびp<0.0057)。加えて、DMARDの数もまた調べた患者集団間で有意に異なった(p<0.0060)。
【0140】
【表22】


RF陽性対RF陰性患者の比較からの結果を表20に示す。L−1ra、IL−6およびTNFαに関してこの患者の2群間で有意差があった(各々p<0.0210、p<0.0325、p<0.0109)。
【0141】
【表23】

【0142】
表21は浸食を有する患者と浸食を有さない患者間の比較の結果を示す。IL−1raおよびIL−6に関してこの2群間で有意差があった(p<0.0105およびp<0.0220)。罹病期間(p<0.0002)およびDMARDの数(p<0.0058)に関して分析した集団間でも差が観察された。
【0143】
【表24】


結果によりRAとその他の関節炎患者との間でIL−1ra、IL−6、MCP−1およびTNFαの血清濃度で有意差が示された。DMARDの数もまたこれらの2集団間で異なった。
RF陽性およびRF陰性患者集団を研究すると、IL−1ra、IL−6およびTNFαのレベルで差が観察された。
最後に骨浸食を有するおよび有さない患者においてIL−1raおよびIL−6の測定レベルにおいても差があった。加えて、罹病期間およびDMARDパラメーターの数もまた浸食を有するおよび有さない患者間で区別され得る。浸食は疾患の後期の、さらに進行した段階で、および関節炎のより侵攻性の形態で発現する。
【0144】
各々の集団間で測定したレベルで差が観察された被分析物(IL−1ra、IL−6、MCP−1、TNFα)を、RAに関連すると同定した(Arend, Arthritis Rheum. 45(1):101−106(2001); Arend & Gabay, Rheum.Dis.Clin.North Am. 30(1):41−vi (2004); Choy & Panayi, N.Engl.J.Med. 344(12):907−916(2001))。さらに、IL−1ra(Anakira)(Fleischmann et al., Arthritis Rheum. 48(4):927−934(2003); Smolen & Steiner, Nat.Rev.Drug Discov. 2(6):473−488)およびTNFα阻害剤(エントラセプト、インフリキシマブおよびアダリムマブ)(Breedveld et al., Ann.Rheum.Dis. 63(2):149−155(2004); Lipsky et al., N.Engl.J.Med. 343(22):1594−1602(2000))は生物学的DMARD治療に属する。加えて、抗IL−6受容体抗体(MRA)を伴う予備研究により、それはTNFαに向けた方法とほぼ同様に有効であることが示唆される(Wendling, Racadot, & Wijdenes, J.Rheumatol. 20(2):259−262(1993))。またMCP−1に対するモノクローナル抗体を用いる可能性のある抗MCP−1処置を関節炎モデルで試験した(ラットコラーゲン誘起関節炎(CIA))(Ogata et al. , J.Pathol. 182(1):106−114(1997))。
【0145】
実施例6
統計分析
臨床データおよび多重アッセイのバイオマーカーの濃度(実施例5)を含む生データをさらに統計分析した。リウマトイド対非リウマトイド患者の臨床データの一変量統計比較(バイナリデータに関するカイ二乗検定および連続データに関するスチューデントt検定)の結果以下のp値が得られた:センター(p=0.006)、性別(p=0.23)、RF(p=0.002)、MTX前処置(p=0.006)、NSAID(p=0.38)、浸食(p=0.0006)、関節外(p=0.54)、抗TNF−アルファ処置(p=0.62)、DMARD(p=0.0001)、年齢(p=0.57)、および診断からの期間(p=0.93)。
【0146】
リウマトイド対非リウマトイド患者の被分析物濃度に適用したスチューデントt検定により以下のp値が作成された:IL−1ベータ(p値=0.47);IL−1ra(p値=0.02);IL−6(p値=0.007);IL−8(p値=0.23);MCP−1(p値=0.005);およびTNF−アルファ(p値=0.02)。
【0147】
クロスバリデーションおよび応答順列のバリデーションを含む部分最小二乗法−判別分析(PLS−DA、SIMCA−P+Vers 10.5)による多変量統計分析を実施した。別個の予測モデルを臨床データのみ(施設、性別、年齢および診断からの期間を含まない)、被分析物データのみ、および双方のパラメーターのセットのいくつかの組み合わせに適用した。異なるモデルの予測力をインプット変数(R2X)および応答変数(R2Y)の被説明分散、ならびにクロスバリデーションによりモデルにより予測され得る応答の全変動の分画(Q2)に対して測定した。加えて、モデルの予測スコアにスチューデントt検定を適用した。異なるモデルのランキングはQ2に基づいた。分析の結果を表22に表す。
【0148】
【表25】


R2X:モデルにより説明される予測パラメーターの分散の比率
R2Y:モデルにより説明される応答変数の分散の比率
Q2:クロスバリデーションに基づくモデルの予測力
スコアt検定:双方の群の予測スコアの統計比較(スチューデントt検定、両側、不等分散)
【0149】
略語一覧
Ab 抗体
BCA バイオチップアレイヤー
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
IL−1ベータ、IL−1β、IL−1b インターロイキン−1ベータ
IL−1Ra;IL−1ra IL−1受容体アンタゴニスト
IL−6 インターロイキン−6
IL−8 インターロイキン−8
MCP−1 マクロファージ走化性タンパク質−1
ODP オクタデシルリン酸エステル
RA リウマチ様関節炎
RF リウマトイド因子
SAM 自己組織化単分子膜
TNF−アルファ、TNFα、TNF−a 腫瘍壊死因子−アルファ
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】コーティング溶液へのグリセロールの添加の結果を示す。
【図2】コーティング抗体力価。種々の濃度のコーティングIL−1β、IL−6およびIL−8抗体をプリントした(左から右にバックグラウンド、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/ml)。最良のシグナル対ノイズ比は全被分析物に関してコーティング抗体200μg/mlで測定した。
【図3】種々の濃度のビオチン化抗体を用いてアッセイを実施した(抗体;左から右に:62.5ng/ml、125ng/ml、250ng/ml、500ng/mlビオチン化抗体)。最良のシグナル対ノイズ比は各被分析物に関してビオチン化抗体500ng/mlの濃度で作成された。示したシグナル対ノイズ比はIL−8アッセイに関して作成された。
【図4】2工程および同時インキュベーションプロトコールで実施したアッセイに関する代表的なIL−6標準曲線。丸はIL−6 1工程プロトコールを表し、四角はIL−6 2工程プロトコールを表す。得られた結果により、1工程プロトコールがアッセイ感度を改善できることが示される。
【図5】ノンパララックストレイ装置で作成された画像。3つの異なる画像様式を比較する:高(左)、標準(中)および高分解能様式(右)。
【図6】抗体アレイおよびELISA手順の相関性。78個の血清および10個のスパイクされた試料中のサイトカインを抗体マイクロアレイまたはELISAのいずれかを用いて並行して定量した。これらの2つの分析からのデータを互いに対してプロットし、そして線形回帰分析により相関係数を決定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象から得られた生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定することを含む該対象がリウマチ様関節炎(RA)を有するかまたは発症する可能性があるかどうかを決定するための方法。
【請求項2】
対照試料に相対して対象から得られた試料中の少なくとも2つのバイオマーカーの量の増加が、対象がRAを有するかまたは発症する可能性があることを示す請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)該対象から得られた生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定すること;
b)生物学的試料を被験物質と接触させること;
c)工程bの生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定すること;ここで工程a)で測定される量に相対して工程b)で測定される少なくとも2つのバイオマーカーの量の変化によりRAを予防するかまたは低減させる可能性を有する被験物質が同定される;
を含む対象におけるRAを予防するかまたは低減させる可能性がある被験物質を同定する方法。
【請求項4】
工程a)で決定された少なくとも2つのバイオマーカーの量と比較する場合、工程c)で少なくとも2つのバイオマーカーの量の低下が、被験物質がRAを予防するかまたは低減させる可能性があることを示す請求項3に記載の方法。
【請求項5】
処置を開始する前にRAを患う対象から得られた生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を、処置を開始した後に該対象から得られた生物学的試料中の該少なくとも2つのバイオマーカーの量と比較することを含み、ここで生物学的試料中の類似の量は処置が有効でないことを示し、そして処置を開始した後に該対象から得られた生物学的試料中の少なくとも2つのバイオマーカーの量の変化は処置が有効であることを示すRAに対する処置の有効性を追跡調査するための方法。
【請求項6】
該処置を開始する前に対象から得られた生物学的試料中において決定された量に相対して該処置を開始した後に該対象から得られた生物学的試料中の少なくとも2つのバイオマーカーの量の低下は処置が有効であることを示している請求項5に記載の方法。
【請求項7】
処置が疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の投与を含む請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
生物学的試料が全血、血清、精液、唾液、涙液、尿、糞便物質、汗、頬側塗抹標本、皮膚、および特定の器官組織の生検からなる群から選択される請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つのバイオマーカーをコードするmRNAの量を測定することにより少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定する請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
mRNAの各々を少なくとも1つの配列特異的オリゴヌクレオチドと接触させることによりmRNAの量を決定する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
質量分析を用いることにより少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定する請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
少なくとも2つのバイオマーカータンパク質に特異的に結合する試薬を用いることにより少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定する請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
試薬が抗体、抗体誘導体および抗体フラグメントからなる群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
試薬がモノクローナル抗体である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも2つのバイオマーカーの量の決定が競合結合アッセイ、非競合結合アッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、サンドイッチアッセイ、ゲル拡散免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、ドットブロッティング、蛍光活性化セルソーティング(FACS)のような蛍光イムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、イムノPCRイムノアッセイ、プロテインAまたはプロテインGイムノアッセイ、および免疫電気泳動アッセイからなる群から選択される少なくとも1つの直接的または間接的イムノアッセイを含む請求項8または12から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
配列特異的オリゴヌクレオチドまたは少なくとも2つの試薬が固体支持体に固定されている請求項10または12から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
固体支持体がポリスチレン表面を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
TNF−アルファの量ならびにMCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定する請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
MCP−1の量ならびにTNF−アルファ、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定する請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
MCP−1およびTNF−アルファの量を決定する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
IL−1raの量ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定する請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
IL−1raおよびIL−6の量を決定する請求項21に記載の方法。
【請求項23】
IL−1raおよびMCP−1の量を決定する請求項21に記載の方法。
【請求項24】
IL−1raおよびTNF−アルファの量を決定する請求項21に記載の方法。
【請求項25】
IL−8の量ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定する請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
IL−6の量ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定する請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
IL−6およびMCP−1の量を決定する請求項26に記載の方法。
【請求項28】
IL−6およびTNF−アルファの量を決定する請求項26に記載の方法。
【請求項29】
IL−1ベータの量ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8およびIL−6からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定する請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも3つのバイオマーカーの量を決定する請求項1から17、18、19、21,25、26または29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
TNF−アルファ、IL−1raおよびIL−6の量を決定する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
TNF−アルファ、IL−1raおよびMCP−1の量を決定する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
TNF−アルファ、MCP−1およびIL−6の量を決定する請求項30に記載の方法。
【請求項34】
IL−1ra、IL−6およびMCP−1の量を決定する請求項30に記載の方法。
【請求項35】
TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも4つのバイオマーカーの量を決定する請求項1から17、18、19、21,25、26、29または30のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
TNF−アルファ、MCP−1、IL−1raおよびIL−6の量を決定する請求項35に記載の方法。
【請求項37】
TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも5つのバイオマーカーの量を決定する請求項1から17、18、19、21,25、26、29、30または35のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8およびIL−6の量を決定する請求項37に記載の方法。
【請求項39】
TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を同時に決定する請求項1から38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
1つの生物学的試料中のTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を同時に決定する請求項39に記載の方法。
【請求項41】
TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの量を決定するための少なくとも2つの検出剤を含むリウマチ様関節炎(RA)の予測、診断または予後診断のための組成物。
【請求項42】
検出剤がTNF−アルファに特異的に結合する少なくとも1つの手段ならびにMCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
検出剤がMCP−1に特異的に結合する少なくとも1つの手段ならびにTNF−アルファ、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
検出剤がMCP−1に特異的に結合する少なくとも1つの手段ならびにTNF−アルファに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
検出剤がIL−1raに特異的に結合する少なくとも1つの手段ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む請求項41に記載の組成物。
【請求項46】
該少なくとも1つのさらなる手段がIL−6に特異的に結合する請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
該少なくとも1つのさらなる手段がMCP−1に特異的に結合する請求項45に記載の組成物。
【請求項48】
該少なくとも1つのさらなる手段がTNF−アルファに特異的に結合する請求項45に記載の組成物。
【請求項49】
検出剤がIL−8に特異的に結合する少なくとも1つの手段ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む請求項41に記載の組成物。
【請求項50】
検出剤がIL−6に特異的に結合する少なくとも1つの手段ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む請求項41に記載の組成物。
【請求項51】
該少なくとも1つのさらなる手段がTNF−アルファに特異的に結合する請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
該少なくとも1つのさらなる手段がMCP−1に特異的に結合する請求項50に記載の組成物。
【請求項53】
検出剤がIL−1ベータに特異的に結合する少なくとも1つの手段ならびにTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8およびIL−6からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つのさらなる手段を含む請求項41に記載の組成物。
【請求項54】
検出剤がTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも3つのバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも3つの異なる手段を含む請求項41から43、45、49、50または53のいずれかに記載の組成物。
【請求項55】
少なくとも3つの異なる手段がTNF−アルファ、IL−1raおよびIL−6に特異的に結合する請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
少なくとも3つの異なる手段がTNF−アルファ、IL−1raおよびMCP−1に特異的に結合する請求項54に記載の組成物。
【請求項57】
少なくとも3つの異なる手段がIL−1ra、IL−6およびMCP−1に特異的に結合する請求項54に記載の組成物。
【請求項58】
少なくとも3つの異なる手段がTNF−アルファ、IL−6およびMCP−1に特異的に結合する請求項54に記載の組成物。
【請求項59】
検出剤がTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも4つのバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも4つの異なる手段を含む請求項41から43、45、49、50、53または54のいずれかに記載の組成物。
【請求項60】
少なくとも4つの異なる手段がTNF−アルファ、MCP−1、IL−1raおよびIL−6に特異的に結合する請求項56に記載の組成物。
【請求項61】
検出剤がTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される少なくとも5つのバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも5つの異なる手段を含む請求項41から43、45、49、50、53、54または59のいずれかに記載の組成物。
【請求項62】
少なくとも5つの異なる手段がTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8およびIL−6に特異的に結合する請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
検出剤がTNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータからなる群から選択される最大4、5または6つのバイオマーカーに特異的に結合する最大4、5または6つの異なる手段を含む請求項41から62のいずれかに記載の組成物。
【請求項64】
バイオマーカーに特異的に結合する手段が該バイオマーカーをコードするmRNAに特異的に結合することができる少なくとも1つの配列特異的オリゴヌクレオチドを含む請求項41から63のいずれかに記載の組成物。
【請求項65】
バイオマーカーに特異的に結合する手段が抗体、抗体誘導体および抗体フラグメントからなる群から選択される請求項41から63のいずれかに記載の組成物。
【請求項66】
手段がモノクローナル抗体を含む請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
バイオマーカーに特異的に結合する手段が固体支持体に固定されている請求項41から66のいずれかに記載の組成物。
【請求項68】
固体支持体がポリスチレン表面を含む請求項67に記載の組成物。
【請求項69】
少なくとも2つの異なる抗体のような少なくとも2つの検出剤を96ウェルプレートの1つのウェル内にスポットするかまたは固定する請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
TNF−アルファ、MCP−1、IL−1raおよびIL−6に特異的に結合する抗体を2検体ずつ、3検体ずつ、または4検体ずつで96ウェルプレートの1つのウェル内にスポットするかまたは固定する請求項69に記載の組成物。
【請求項71】
請求項41から70のいずれかに記載の組成物および使用のための指示書を含む診断または薬物発見キット。
【請求項72】
TNF−アルファ、MCP−1、IL−1ra、IL−8、IL−6およびIL−1ベータならびにRFからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーに特異的に結合することができる標識抗体の混合物をさらに含む請求項71に記載の診断または薬物発見キット。
【請求項73】
請求項1から40に記載の方法のいずれかにおける診断または薬物発見キットの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−507686(P2008−507686A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521914(P2007−521914)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008042
【国際公開番号】WO2006/008183
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】