説明

リグスチリドを含む新規の組成物およびその製造のための方法

50重量%未満のリグスチリドを含む、マルバトウキ(Ligusticum)種由来、具体的にはマルバトウキ(Ligusticum wallichii)(センキュウ(chuanxiong))由来の粗抽出物を、特定の条件下の精留に供することによって、マルバトウキ(Ligusticum)種由来の新規の精製抽出物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、マルバトウキ(Ligusticum)種、具体的にはマルバトウキ(L.wallichii)由来の成分を含む、新規の組成物、およびその製造のための方法に関する。より具体的には、本発明は、少なくとも約50重量%のリグスチリド、ならびに5重量%以下の脂肪酸およびグリセリドを含む、マルバトウキ(Ligusticum)種由来の精製抽出物に関する。
【0002】
マルバトウキ(L.wallichii)(センキュウ(L.Chuanxiong)としても公知)等のマルバトウキ(Ligusticum)種由来の抽出物は、伝統的な中国、日本および韓国の医療において、種々の病気、例えば頭痛、腹痛、月経障害およびリウマチ性関節痛の治療のために使用されている。例えば超臨界流体抽出法によって得られるような、市販の抽出物は、典型的には、約40重量%まで、例えば30〜40重量%の、必須の生理活性成分としてのフタリド、具体的にはリグスチリド、センキュウノリド、セダノリド、3−n−ブチルフタリドおよび3−ブチリデンフタリド、ならびに脂肪酸、グリセリドおよびいくらかの水を含む、暗褐色で、においの強い製品である。これらの抽出物の暗い色および強烈なにおいが、これらを、薬剤としての、特に栄養補助食品としての使用に、あまり適さなくしている。
【0003】
本発明によると、マルバトウキ(Ligusticum)種由来の商業的な抽出物は、その中の必須の生理活性成分、特にリグスチリドを濃縮しながら、官能特性および外観に関して改良され得ることがわかっている。
【0004】
したがって、ある態様において、本発明は、少なくとも約50重量%、具体的には約50〜60重量%のリグスチリド、ならびに5重量%以下の脂肪酸およびグリセリドを含む、マルバトウキ(Ligusticum)種、特にマルバトウキ(L.wallichii)由来の精製および濃縮抽出物に関する。具体的な実施形態において、本発明は、少なくとも約50重量%のリグスチリド、ならびに10重量%以下の脂肪酸およびトリグリセリドを含む、マルバトウキ(Ligusticum)種、特にマルバトウキ(L.wallichii)由来の精製および濃縮抽出物に関する。
【0005】
別の態様において、本発明は、少なくとも約85重量%、特に少なくとも90重量%の、マルバトウキ(Ligusticum)種に見られるフタリドを含む、マルバトウキ(Ligusticum)種、特にマルバトウキ(L.wallichii)由来の精製および濃縮抽出物に関する。
【0006】
さらに別の態様において、本発明は、約50〜60重量%のリグスチリド、ならびに5重量%以下の脂肪酸およびグリセリドを含む、マルバトウキ(Ligusticum)種、特にマルバトウキ(L.wallichii)由来の精製および濃縮抽出物に関する。
【0007】
本発明による好ましい精製抽出物は、50〜60重量%のリグスチリド、少なくとも20重量%のセンキュウノリド、1〜5重量%の3−ブチリデンフタリド、1〜5重量%の3−n−ブチルフタリド、1〜5重量%のセダノリドならびに5重量%以下の脂肪酸およびグリセリドを含む。かかる好ましい精製抽出物は、ガードナー色数で9未満、特に6以下の色を有する。
【0008】
さらに別の態様において、本発明は、上記で定義されるようなマルバトウキ(Ligusticum)種由来の精製および濃縮抽出物の製造のための方法に関する。
【0009】
本明細書中のその態様によると、50重量%未満のリグスチリドならびに5重量%より多い脂肪酸およびグリセリドを含むマルバトウキ(Ligusticum)種の抽出物が、精留に供される。精留は、約130℃〜約400℃の温度、および約0.1mbar〜約25mbarの圧力で、適当に行われる。好ましい実施形態において、精留は、約200℃〜230℃の加熱温度および約0.1mbar〜約3mbarの精留塔の最高圧で行われる。適当には、本発明の方法において出発物質として使用される抽出物は、マルバトウキ(Ligusticum)種の根、特にマルバトウキ(L.wallichii)の乾燥根由来の抽出物であり、例えば二酸化炭素を使用した超臨界流体抽出法によって得られる。好ましい実施形態において、精留の前に、抽出物は、脱ガス装置で脱ガスに供される。脱ガス装置は、熱および減圧をかけることによって抽出物から水を除去させる、任意の蒸発システムであってもよい。簡便には、脱ガスは、120〜180℃の温度で、10〜50mbarで行われる。
【0010】
本発明の方法によって、リグスチリド、およびセンキュウノリド、3−n−ブチルフタリド、セダノリド、3−ブチリデンフタリド等の他のフタリドが、得られる留出物中で、留出物の重量に基づいて90%より高くまで濃縮され得る。出発物質と対照的に、本発明に従って得られる留出物は、気持ちよいにおいがし、淡黄色を示す。グリセリドおよび脂肪酸は、蒸留残留物中で濃縮される。
【0011】
精留は、あらゆる種類の蒸発器の型で行われ得るが、好ましい装置は、滞留時間が短く、好ましくは3分を超えず、かつ圧力損失の少ない、ワイプト薄層蒸発器である。
【0012】
精留塔は、棚板、ランダムまたは規則充填物等の、あらゆる種類の種々の塔内部構造物を備え得るが、好ましい内部構造物は、圧力損失が低く液体ホールドアップの少ない、規則充填物である。これは、より高い温度およびより長い滞留時間でのフタリドの分解を防ぐ。
【0013】
本発明に従って調整された好ましい精留塔は、塔の精留区画に液体サイドドローを備える。得られる精製リグスチリド抽出物が、液体サイドドローとして精留塔から取り出されると、フタリドと比較して軽い他の沸騰成分を留出物流とともに分離することができるので、これは、より高いフタリド濃度につながる。同じ効果は、精留が、分割壁塔を備える場合に達成される。この場合、得られる精製リグスチリド抽出物もまた、サイドドローとして塔から取り出される。
【0014】
本発明の方法は、回分式で行うことができ、好ましくは、フタリドの熱的不安定性のために、連続した様式で行うことができる。本発明の方法によって得られるような精製抽出物は、従来の技術によって、固形剤に転換することができる。
【0015】
本発明の新規の抽出物は、液体または固体形態で、ビタミン、ミネラルおよび微量元素等のさらなる栄養学的に望ましい成分を含んでもよい、食品、または栄養補助食品等の、栄養補助組成物に製剤化することができる。栄養補助組成物は、本発明の抽出物を、1日あたり、リグスチリド投与を必要とする被験体の体重1kgあたり0.01〜50mgのリグスチリドの投薬を提供するのに十分な量、含んでもよい。
【実施例】
【0016】
以下の実施例は、本発明をさらに説明する。
【0017】
実施例1
例えば、マルバトウキ(Ligusticum)根から二酸化炭素での超臨界抽出法によって得られるような、29重量%(8.2重量%のセンキュウノリド、0.5重量%の3−n−ブチルフタリド、1.2重量%のセダノリド、18.3%のリグスチリド、0.6重量%の3−ブチリデンフタリド)の総フタリド濃度の粗マルバトウキ抽出物を、連続真空精留によって、90重量%(26.4%のセンキュウノリド、1.6重量%の3−n−ブチルフタリド、3.7重量%のセダノリド、56.3重量%のリグスチリド、2.0重量%の3−ブチリデンフタリド)の総フタリド濃度まで精製した。
【0018】
最初に、粗抽出物から水を分離するために、粗マルバトウキを脱ガスした。25mbarの減圧および160℃の加熱温度で、およそ1.0%の供給量を蒸発させた。残留物は、ほとんど水を含まない粗マルバトウキ抽出物を含む。得られた塔の留出物流中のフタリドを濃縮するために、この材料を継続的に精留装備(0.05mの加熱面積、高さ1mの規則充填物を有する蒸留塔を備えたワイプト薄層蒸発器)に供給した(液体サイドドローが稼動していない図1参照)。0.5mbarの減少した最高塔圧および230℃の加熱温度の条件で、留出物/供給比は0.33:1であった。留出物流の還流比は約1であった。グリセリドおよび脂肪酸は、蒸留残留物中で濃縮される。留出物流は、全ての上述のフタリドを、90重量%の総フタリド濃度で含む。最終的な精製マルバトウキ抽出物の色は、ガードナー色数で4.7であった。
【0019】
実施例2
例えばマルバトウキ(Ligusticum)根から二酸化炭素での超臨界抽出法によって得られるような、36重量%の総フタリド濃度(11.4重量%のセンキュウノリド、1.1重量%の3−n−ブチルフタリド、1.6重量%のセダノリド、20.4重量%のリグスチリド、1.3重量%の3−ブチリデンフタリド)の粗マルバトウキ抽出物を、以下の方法で、液体サイドドローを備えた連続真空精留によって、94重量%の総フタリド濃度(29.3重量%のセンキュウノリド、3.3重量%の3−n−ブチルフタリド、3.9重量%のセダノリド、53.5重量%のリグスチリド、3.9重量%の3−ブチリデンフタリド)まで精製した。
【0020】
最初に、粗抽出物から水を分離するために、粗マルバトウキを脱ガスした。25mbarの減圧および160℃の加熱温度で、およそ1.0%の供給量を蒸発させた。残留物は、ほとんど水を含まない粗マルバトウキ抽出物を含む。得られた液体副流中のフタリドを濃縮するために、この材料を継続的に精留装備(0.05mの加熱面積、高さ1.5mの規則充填物を有する蒸留塔、下から1mの塔の高さの液体サイドドローを備えたワイプト薄層蒸発器)に供給した(液体サイドドローが稼動している図1参照)。
【0021】
1mbarの減圧および230℃の加熱温度で、供給流を、以下のように36%の液体サイドドロー、62%の残留物および2%の留出物に分離した。留出物の還流比は約10であり、副流の還流比は約1であった。グリセリドおよび脂肪酸は、蒸留残留物中で濃縮され、軽い蒸発成分は、留出物中で濃縮される。所望のフタリドは、液体副流中で、94%の濃度で濃縮される。最終的な精製マルバトウキ抽出物の色は、ガードナー色数で4.6であった。
【0022】
実施例3
有効成分としての、錠剤あたり50mgのリグスチリドを提供する量の、実施例1または2から得られるような抽出物から調製された顆粒、および200mgまでの賦形剤(微結晶性セルロース、二酸化シリコーン(SiO2)、ステアリン酸マグネシウム、クロスカルメロースナトリウム)を含んで、従来の手順によって、錠剤を調製する。
【0023】
実施例4
リグスチリド抽出物を含む清涼飲料を、以下のように調製してもよい。
I.清涼飲料化合物を、以下の成分から調製する。
果汁濃縮物および水溶性香料
[g]
オレンジ濃縮物
60.3°ブリックス、5.15%酸度 657.99
レモン濃縮物
43.5°ブリックス、32.7%酸度 95.96
オレンジ香料、水溶性 3.43
アンズ香料、水溶性 6.71
水 26.46
【0024】
1.2 色
β−カロテン10% CWS 0.89
水 67.65
【0025】
1.3 酸および酸化防止剤
アスコルビン酸 4.11
無水クエン酸 0.69
水 43.18
【0026】
1.4 安定剤
ペクチン 0.20
安息香酸ナトリウム 2.74
水 65.60
【0027】
1.5 油溶性香料
オレンジ香料、油溶性 0.34
蒸留オレンジオイル 0.34
【0028】
1.6 有効成分
500mgのリグスチリドを提供する量の、実施例1または2で得られるようなリグスチリド抽出物
果汁濃縮物および水溶性香料を、空気の混和なしに混合する。色を脱イオン水に溶解させる。アスコルビン酸およびクエン酸を水に溶解させる。安息香酸ナトリウムを水に溶解させる。ペクチンを、撹拌しながら加え、沸騰させながら溶解させる。溶液を冷却する。オレンジオイルおよび油溶性香料を前もって混合する。1.6によって言及される有効成分を、果汁濃縮物混合物に入れて撹拌する(1.1)。
【0029】
清涼飲料化合物を調製するために、全ての部分3.1.1〜3.1.6をともに混合し、その後、ターラックス(Turrax)、次いで高圧ホモジナイザー(p=200bar、p=50bar)を用いて、均質化する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】精留装備である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約50重量%のリグスチリドならびに約5重量%以下の脂肪酸およびグリセリドを含む、マルバトウキ(Ligusticum)種由来の精製抽出物。
【請求項2】
少なくとも約50重量%のリグスチリドならびに約10重量%以下の脂肪酸およびトリグリセリドを含む、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
少なくとも約70重量%のリグスチリドを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項4】
少なくとも約85重量%の、マルバトウキ(Ligusticum)種に見られるフタリドを含む、請求項1に記載の抽出物。
【請求項5】
少なくとも約90重量%の、マルバトウキ(Ligusticum)種に見られるフタリドを含む、請求項1に記載の抽出物。
【請求項6】
約50〜60重量%のリグスチリドを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項7】
50〜60重量%のリグスチリド、少なくとも20重量%のセンキュウノリド、1〜5重量%の3−ブチリデンフタリド、1〜5重量%の3−n−ブチルフタリドおよび1〜5重量%のセダノリドを含む、請求項6に記載の抽出物。
【請求項8】
マルバトウキ(Ligusticum wallichii)(センキュウ(chuanxiong))由来である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項9】
ガードナー色数で9未満、特に6以下の色を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項10】
50重量%未満のリグスチリドを含む、マルバトウキ(Ligusticum)種、具体的にはマルバトウキ(Ligusticum wallichii)(センキュウ(chuanxiong))由来の粗抽出物を、減圧下および約130℃〜約400℃の温度での精留に供すること、ならびに留出物を収集することを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の抽出物の調製のための方法。
【請求項11】
約130℃〜約400℃の温度および約0.1〜約25mbarの圧力、好ましくは約200℃〜約230℃の温度および約0.1〜約5mbarの精留塔の最高圧で精留が行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
粗抽出物が精留の前に脱ガスされる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
脱ガスが、抽出物を約120℃〜約180℃に加熱することによって達成される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
抽出物が、マルバトウキ(Ligusticum)種の根の超臨界流体抽出法によって得られる、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
留出物が乾燥組成物に転換される、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に従うことによって得られる抽出物を含む、栄養補助組成物。
【請求項17】
下記に具体的に、特に実施例を参照しながら記載される、本発明。

【図1】
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【公表番号】特表2008−528645(P2008−528645A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553504(P2007−553504)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000648
【国際公開番号】WO2006/081972
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】