説明

リグノセルロース材料をエステル化する方法

エステル化リグノセルロース材料の製造方法並びに得られた組成物及び物品を開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
無処理の木材よりも寸法安定性が高いこと、そしてその他の品質の理由から、エステル化リグノセルロース材料、例えばアセチル化木材がいくつかの用途において望ましい場合がある。これらの利点は、アセチル化ボード及び製材のようなエステル化無垢材と、アセチル化されて、次いで複合材料中に使用される繊維化リグノセルロース材料との両方にとって存在する。しかしながら、これらの材料の好ましい特性を改善することが引き続き必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
従って本発明のいくつかの態様は、
(a) リグノセルロース材料を、酢酸を含む液体で含浸させる工程;
(b) 該リグノセルロース材料のうちの少なくともいくらかをアセチル化するのに十分な条件下で、(a)工程から得られた含浸されたリグノセルロース材料と、酢酸を含む蒸気流とを接触させる工程
を含んで成るリグノセルロース材料をアセチル化する方法を提供する。
いくつかの態様では、本発明のアセチル化方法はさらに:
(c) (b)工程から得られた接触されたリグノセルロース材料を、無水酢酸を含有する液体で含浸させる工程;及び
(d) 該リグノセルロース材料のアセチル化を増大させるのに十分な条件下で、(c)工程での含浸されたリグノセルロース材料と、無水酢酸、酢酸、又はその両方を含有する蒸気流とを接触させる工程
を含む。
【0003】
本発明はさらに、本発明の方法によって製造されたアセチル化リグノセルロース材料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明は、リグノセルロース材料をアセチル化する方法を提供する。本発明はさらに、アセチル化リグノセルロース材料、及びアセチル化リグノセルロース材料を使用して製造された組成物及び物品を提供する。
【0005】
リグノセルロース材料
リグノセルロース材料は、セルロース及びリグニンを含有する任意の材料(並びに必要に応じてヘミセルロースのような他の材料)を包含する。いくつかの例は、木材、樹皮、ケナフ、ヘンプ、サイザル、ジュート、作物わら、堅果の殻、ヤシ殻、草及び穀類の殻及び茎、トウモロコシ茎葉、バガス、針葉樹及び広葉樹の樹皮、トウモロコシの穂軸、他の作物残余、及びこれらの任意の組み合わせを含む。
【0006】
いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料は木材である。木材は、硬材又は軟材の任意の種から選択されてよい。いくつかの態様の場合、木材は軟材である。いくつかの態様では、木材は松、樅、トウヒ、ポプラ、オーク、楓、ブナから選択される。いくつかの態様の場合、木材は硬材である。いくつかの態様では、木材はレッドオーク、レッドメープル、ジャーマンビーチ、及びパシフィック・アルバスから選択される。いくつかの態様の場合、木材は松種である。いくつかの態様では、木材はロブロリーパイン、ロングリーフ・パイン、ショートリーフ・パイン、スラッシュ・パイン、ラジアータ・パイン、及びスコッツ・パインから選択される。いくつかの態様の場合、木材はラジアータ・パインである。いくつかの態様では、木材は、「サザン・イエローパイン(Southern Yellow Pine)」(ロングリーフ・パイン、ショートリーフ・パイン、スラッシュ・パイン、ロブロリーパイン)と商業的に呼ばれる4つの種のうちの1つ又は2つ以上から選択される。いくつかの態様の場合、木材は、ロングリーフ・パイン、ショートリーフ・パイン、及びロブロリーパインから選択される。いくつかの態様では、木材はロブロリーパインである。
【0007】
リグノセルロース材料は任意の形態となることができる。例には、破砕材料(例えば破砕木材)、繊維化材料(例えば繊維化木材)、木粉、チップ、粒子、木毛、フレーク、ストランド、木材粒子、及び樹木、木の幹又は大枝、樹皮を剥がれた木の幹又は大枝、ボード、ベニヤ、厚板、角材、ビーム又は異形材、及び任意の寸法の他の切断製材が含まれる。
【0008】
いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料は木材である。木材は、硬材又は軟材の任意の種から選択されてよい。いくつかの態様の場合、木材は軟材である。いくつかの態様では、木材は松、樅、トウヒ、ポプラ、オーク、楓、ブナから選択される。いくつかの態様の場合、木材は硬材である。いくつかの態様では、木材はレッドオーク、レッドメープル、ジャーマンビーチ、及びパシフィック・アルバスから選択される。いくつかの態様の場合、木材は松種である。いくつかの態様では、木材はロブロリーパイン、ロングリーフ・パイン、ショートリーフ・パイン、スラッシュ・パイン、ラジアータ・パイン、及びスコッツ・パインから選択される。いくつかの態様の場合、木材はラジアータ・パインである。いくつかの態様では、木材は、「サザン・イエローパイン(Southern Yellow Pine)」(ロングリーフ・パイン、ショートリーフ・パイン、スラッシュ・パイン、ロブロリーパイン)と商業的に呼ばれる4つの種のうちの1つ又は2つ以上から選択される。いくつかの態様の場合、木材は、ロングリーフ・パイン、ショートリーフ・パイン、及びロブロリーパインから選択される。いくつかの態様では、木材はロブロリーパインである。
【0009】
リグノセルロース材料は任意の形態となることができる。例は、破砕材料(例えば破砕木材)、繊維化材料(例えば繊維化木材)、木粉、チップ、粒子、木毛、フレーク、ストランド、木材粒子、及び樹木、木の幹又は大枝、樹皮を剥がれた木の幹又は大枝、ボード、ベニヤ、厚板、角材、ビーム又は異形材、及び任意の寸法の他の切断製材を含む。
【0010】
いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料は無垢材である。本出願全体を通して使用される「無垢材」という用語は、少なくとも1つの寸法では少なくとも10センチメートルであるが、しかしそうでなければ任意の寸法を有する木材、例えば、2フィート×2フィート×4フィート、2フィート×2フィート×6フィート、1フィート×1フィート×6フィート、2インチ×2インチ×4インチ、2インチ×2インチ×6インチ、1インチ×1インチ×6インチ、などのような公称寸法を有する木材、並びに切断木材から機械加工された物体(例えばモールディング、スピンドル、手すり子など)を意味するものとする。いくつかの例は、製材、ボード、ベニヤ、厚板、角材、ビーム、又は異形材を含む。いくつかの態様の場合、無垢材は製材である。任意の寸法の無垢材が使用されてよい。いくつかの態様の場合、無垢材は、少なくとも1つの寸法が少なくとも10センチメートルであり、別の寸法は少なくとも5ミリメートルである。最長寸法は例えば3フィート、4フィート、6フィート、8フィート、10フィート、12フィート、14フィート、16フィートなどであることが可能である。最長寸法は、前記値のうちの少なくともいずれかの値、又はこれを上回る値、又はこれに等しい値として記述することもできる(例えば少なくとも3フィート、少なくとも4フィート、12フィート以上、など)。木材の第2の寸法は、二番目に長い寸法を有しているか、又は最長寸法に等しくてよい。二番目に長い寸法のいくつかの例は、1/10インチ、1/8インチ、1/6インチ、1/4インチ、1/3インチ、3/8インチ、0.5インチ、5/8インチ、0.75インチ、1インチ、1.5インチ、2インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、8インチ、9インチ、10インチ、12インチ、14インチ、16インチ、18インチ、20インチ、24インチ、3フィート、4フィートなどを含む。二番目に長い寸法は、前記値のうちの少なくともいずれかの値、又はこれを上回る値、又はこれに等しい値として記述することもできる(例えば少なくとも1/10インチ、0.5インチ以上、少なくとも0.75インチなど)。第3の寸法は、第2の寸法と同じであるか又は異なっていてよく、例えば、第2寸法に関して上述した値のいずれかであることが可能である。いくつかの態様の場合、木材は3つのすべての寸法において同じ長さである。いくつかの態様の場合、無垢材は最長寸法が少なくとも30インチであり、そして他の2つの寸法が少なくとも0.25インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は最長寸法が少なくとも30インチであり、そして他の2つの寸法が少なくとも0.5インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は最長寸法が少なくとも30インチであり、そして他の2つの寸法が少なくとも0.75インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は最長寸法が少なくとも36インチであり、そして他の2つの寸法が少なくとも0.5インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は最長寸法が少なくとも48インチであり、そして他の2つの寸法が少なくとも0.75インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は少なくとも1つの寸法が少なくとも30インチであり、別の寸法が少なくとも1.5インチであり、そして第3寸法が少なくとも0.5インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は少なくとも1つの寸法が少なくとも4フィートであり、別の寸法が少なくとも1.5インチであり、そして第3の寸法が少なくとも0.5インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は最長寸法が少なくとも8フィートであり、別の寸法が少なくとも5インチであり、そして第3の寸法が少なくとも1インチである。特定の寸法を「測定する」木材に言及するときには、これは、言及された寸法が、実際の測定寸法であって、公称寸法ではないことを意味する。ただし、これらの数値は限定しているのではなく、前述の数字のそれぞれが測定寸法ではなく公称寸法である態様も存在する。2つ又は3つ以上の寸法が特定される場合、これはそれぞれの寸法が、挙げられた他の寸法に対して90度の角度を成すことを意味する(例えば0.5厚×1.5インチ幅×30インチ長)。
【0011】
いくつかの態様の場合、前記段落に記載した寸法のうちの1つは、無垢材の木目の方向に対して平行である。従って、上記測定値のいずれかは、無垢材の木目の軸におけるボードの寸法を表すことがある。いくつかの態様において、最長寸法は、無垢材の木目の方向に対して平行である。
【0012】
本発明は、前記寸法のいずれかを有する無垢材を含む複数の無垢材片のアセチル化が、一度にエステル化されるのを可能にする。いくつかの態様の場合、無垢材が2つ又は3つ以上の片から成る鉛直方向スタックを成して配列され、積み重ねられた片の間にはスペーサ{「桟木(sticker)」}が配置される。桟木は典型的には、選択された厚さを有する材料から成る小さなロッドであり、任意の有効厚を有していてよい。桟木のためのいかなる公知の又は有効な厚さ又は組成材料を使用してもよい。桟木の厚さのいくつかの例としては、1/4インチ、1/3インチ、3/8インチ、0.5インチ、5/8インチ、0.75インチ、1インチ、1.5インチ、2インチが挙げられる。いくつかの態様の場合、アセチル化プロセスの効率が、所与のスタックにおいて使用する桟木の数を少なくするのを可能にする。例えば、いくつかの態様の場合、各桟木間に材木スタックがあり、各スタックの厚さが0.5インチであり、そして各スタックが0.5インチ未満の寸法を有する複数の無垢材片(例えば1/8インチ厚のベニヤ4枚)を、これらが桟木間に積み重ねられた状態で含有するように、桟木は配列されている。桟木間の木材スタックの厚さが0.75インチ、1インチ、1.5インチ、2インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、8インチ、9インチ、10インチ、12インチ、14インチ、16インチ、8インチ、20インチ、24インチ、3フィート、4フィートなどである態様が存在する。前文における木材の厚さは、このような厚さの個別の木材片、又はこのような厚さの木材スタック、例えば4インチ厚の単一木材片、又はそれぞれが1インチ厚である4つの木材片から成るスタックを反映することができる。木材スタックの厚さは、前記値のうちの少なくともいずれかの値、又はこれを上回る値、又はこれに等しい値として記述することもできる(例えば少なくとも0.75インチ、1.5インチ以上、など)。
【0013】
リグノセルロース材料は、アセチル化前に任意の適合性のある密度を有していてよい。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.30〜0.65グラムである。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.30〜0.55グラムである。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.40〜0.65グラムである。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.40〜0.60グラムである。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.40〜0.625グラムである。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.40〜0.50グラムである。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.45〜0.55グラムである。
【0014】
リグノセルロース材料は、アセチル化前に水を含有することができる。例えば、リグノセルロース材料は、初めは、エステル化前に少なくとも15重量パーセントの水、少なくとも17重量パーセントの水、少なくとも19重量パーセントの水を含有することができる。いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料を乾燥させるか又はその他の処理によって水を除去し、その結果として、脱水されたリグノセルロース材料をもたらすことができる。例えば、乾燥リグノセルロース材料は、15重量パーセント未満の水、10重量パーセント未満の水、7.5重量パーセント未満の水、又は5重量パーセント未満の水という含水率を有することができる。エステル化前のリグノセルロース材料の所望の含水率を達成するために、任意の効果的な方法を採用することができる。いくつかの例は、キルン乾燥、及び/又は水以外の液体で含浸することによる溶剤乾燥を含む。溶剤乾燥には、例えば酢酸、メタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、及びエステル溶剤(例えばアセテートエステル、例えばイソプロピルアセテート、n−プロピルアセテートなど)を含む任意の効果的な溶剤を使用してよい。これらのプロセスは、真空、加圧、又はその両方の多段サイクルを含む真空環境、加圧環境、又はその両方を適用することによって支援することができる。例えば酢酸、メタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、及びエステル溶剤(例えばアセテートエステル、例えばイソプロピルアセテート、n−プロピルアセテートなど)を含む任意の効果的な溶剤を溶剤乾燥に使用することができる。
【0015】
アセチル化プロセス
リグノセルロース材料のアセチル化(例として木材(wood)を使用)を、下記式(1)及び(2)で概略的に示す:
酢酸アセチル化:AcOH + 2Wood-OH → Wood-OAc + H2O (1)
無水酢酸アセチル化:Ac2O + Wood-OH → Wood-OAc + AcOH (2)
上記式中、「Ac」はCH3CH2C(O)−である。
【0016】
従って、アセチル化のためのAcOH−Ac2O逐次プロセスは下記スキームによって表すことができる:
AcOH + 2Wood-OH → Wood-OAc + Wood-OH + H2O
Ac2O + Wood-OH → Wood-OAc + AcOH
NET: Ac2O + 2 Wood-OH → 2 Wood-OAc + H2O
【0017】
工程(c)及び(d)(実施する場合)は、リグノセルロース材料をさらなる程度までアセチル化する。
【0018】
含浸工程(a)及び必要に応じて(c)
工程(a)、及び実施する場合には(c)は、リグノセルロース材料をそれぞれ酢酸及び無水酢酸で含浸することを伴う。いくつかのリグノセルロース材料含浸法が知られており、そして任意の効果的なリグノセルロース材料含浸法を用いてよい。いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料と無水酢酸を含有する液体とを接触させることよって、例えばリグノセルロース材料を液体中に浸すことによって、含浸が行われる。いくつかの態様の場合、含浸が行われる際の圧力を制御する。例えばいくつかの態様の場合、加圧容器内、又は圧力が大気圧未満に低減されている容器内で、リグノセルロース材料と液体と接触させる。圧力は、液体との接触前、接触中、又は接触後に変化させることができる。いくつかの態様の場合、含浸中又は含浸と関連させて圧力を変化させる。例えば、いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料を容器内に入れることができ、次いでこの容器内で真空を形成し、所定の時間にわたって維持することにより、リグノセルロース材料中の所望の程度の空気又は他の気体を除去し、次いで真空を維持しながら材料と液体とを接触させ、次いで加圧することにより、含浸を容易にする。加圧、真空、及び/又は大気圧の復元から成る複数の工程又はサイクル、並びに任意の反復順序又は反復回数で実現される、これらの状態のうちのいずれか又はすべての組み合わせを用いてよい。例えば大気空気を加える、追加の蒸気又は気体、例えば不活性ガス(例えば窒素)を加える、液体状又は気体状の無水酢酸を加える、又はその他の材料を加えることを含む任意の手段によって、加圧又は再加圧を達成することができる。
【0019】
(a)の含浸液は、任意の有効量の酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも50重量%の酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は濃度が少なくとも60重量%の酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は濃度が少なくとも70重量%の酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、酢酸を含有する液体は、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、又は100重量%から選択された濃度の酢酸を含有する。酢酸が100%未満の量で存在するいくつかの態様の場合、残りは、例えば1種又は2種以上の適合性のある希釈剤を含むことができる。希釈剤の例としては、水、無水酢酸、キシレン、メタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、エステル溶剤(例えば酢酸エステル、例えばイソプロピルアセテート、n−プロピルアセテートなど)、及び前記のもののうちの2種又は3種以上の適合性のある組み合わせが挙げられる。いくつかの態様の場合、含浸液は、以前にアセチル化プロセス中に使用されたか又はアセチル化プロセス中の副生成物として発生した無水酢酸及び/又は酢酸を含有してよい。このような材料は木材副生成物質及びその誘導体を含有してもしなくてもよい。いくつかの例は、タンニン及びその他のポリフェノール、着色物質、精油、脂肪、樹脂、ワックス、ガムスターチ、又は代謝中間体を含む。
【0020】
工程(c)の含浸のために、含浸液は、任意の有効量の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも50重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも60重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも75重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも80重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも85重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも90重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも95重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも98重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、無水酢酸を含有する含浸液はまた酢酸も含有している。いくつかの態様の場合、含浸液は、以前にアセチル化プロセス中に使用されたか又はアセチル化プロセス中の副生成物として発生した無水酢酸及び/又は酢酸を含有してよい。このような材料は木材副生成物質及びその誘導体を含有してもしなくてもよい。いくつかの例は、タンニン及びその他のポリフェノール、着色物質、精油、脂肪、樹脂、ワックス、ガムスターチ、又は代謝中間体を含む。(c)のいくつかの態様の場合、無水酢酸を含有する液体の無水酢酸:酢酸比は60:40〜100:0である。(c)のいくつかの態様の場合、無水酢酸を含有する液体の無水酢酸:酢酸比は75:25〜100:0である。(c)のいくつかの態様の場合、無水酢酸を含有する液体の無水酢酸:酢酸比は90:10〜100:0である。無水酢酸:酢酸比が60:40〜100:0であるいくつかの態様の場合、本質的に酢酸を含有しない液体が、この混合物の無水酢酸:酢酸比が100:0となるため、60%という僅かな無水酢酸をまだ含有することができる。液体は無水酢酸及び希釈剤を含有することができる。希釈剤の例としては、酢酸、メタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、キシレン及びエステル溶剤(例えば酢酸エステル、例えばイソプロピルアセテート、n−プロピルアセテートなど)が挙げられる。
【0021】
接触工程(b)及び必要に応じて(d)
(b)及び必要に応じて(d)の「接触」は、リグノセルロース材料と蒸気流とを接触させることを伴う。蒸気はリグノセルロース材料の加熱をもたらす。加熱はアセチル化反応を加速する。いくつかの態様において、熱は先ず、無水酢酸と、リグノセルロース材料中に存在する水との反応を開始又は加速させる。この反応は発熱性であり、そしてリグノセルロース材料のさらなる加熱をもたらすことになる。
【0022】
(b)及び必要に応じて(d)の蒸気は、任意の効果的な手段によって発生させることができる。いくつかの態様の場合、蒸気は接触加熱又は非接触加熱によって発生させられる。非接触加熱の例は、スチームの使用又は任意のその他の効果的な伝熱法を伴う。いくつかの態様の場合、加熱は、選択された圧力のスチームを含有する熱交換器に関与する。圧力の例としては、15ポンド/平方インチ、ゲージ厚(psig)、20psig、25psig、30psig、40psig、50psig、60psig、70psig、80psig、90psig、100psig、125psig、150psig、200psig、250psig、及び300psigが挙げられる。蒸気圧は、前記値のうちの少なくともいずれかの値、又はこれを上回る値、又はこれに等しい値として記述することもできる。
【0023】
(b)の酢酸を含有する蒸気流は、少なくとも50重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させることにより得られる。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも75重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気流は、濃度が少なくとも80重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも85重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも90重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも95重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は50重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は75重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は85重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は90重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は少なくとも98重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は、蒸気を生成するために沸騰させた液体と同じ重量パーセントの酸含量を有している。いくつかの態様の場合、蒸気は50重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は75重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は85重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は90重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は少なくとも98重量%の酢酸を含有する。組成物の残りは、エステル化を過度に妨害することのない任意の化合物、又は化合物の組み合わせであってよい。いくつかの態様の場合、沸騰した組成物はまた、酢酸に加えて1種又は2種以上の希釈剤を含有している。いくつかの態様の場合、組成物は無水酢酸を含有しており、例えばこの場合、蒸気は、95重量%の酢酸と5重量%の無水酢酸とを含有する組成物を沸騰させた結果である。このように、いくつかの態様の場合、蒸気流は、無水酢酸と酢酸との両方を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気流は、上記パーセンテージのうち1つの酢酸と、無水酢酸とを含有する組成物(例えば酸/無水物比80:20、酸/無水物比85:15、酸/無水物比90:10、酸/無水物比95:5)を沸騰させた結果である。このように、いくつかの態様の場合、(b)の蒸気の酸/無水物比は50:50〜99:1である。いくつかの態様の場合、(b)の蒸気の酸/無水物比は75:25〜99:1である。いくつかの態様の場合、(b)の蒸気の酸/無水物比は75:25〜95:1である。蒸気が沸騰して加圧容器に入るのを可能にするのに効果的な温度で沸騰を行うことができる。蒸気流はさらに、酢酸に加えて希釈剤、例えば本明細書中に記載された任意の希釈剤(例えば(a)に関して記載された希釈剤)を含有することができる。
【0024】
いくつかの態様の場合、(b)の蒸気流はさらに、水と共沸物を形成することになる少なくとも1種の物質を含有する。共沸剤の一例としては、キシレン、トルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸エステル、及び前記のもののうちの2種又は3種以上の組み合わせが挙げられる。
【0025】
(d)の蒸気流は、これが使用される場合には、酢酸、無水酢酸、又はその両方を含有する。いくつかの態様の場合、(d)の蒸気は、少なくとも50重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも60重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも75重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気流は、濃度が少なくとも80重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも85重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも90重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも95重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも98重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、蒸気を生成するために沸騰させた液体と同じ重量パーセントの無水物含量を有している。いくつかの態様の場合、蒸気は50重量%〜100重量%の無水酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は75重量%〜100重量%の無水酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は85重量%〜100重量%の無水酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は90重量%〜100重量%の無水酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は少なくとも98重量%の無水酢酸を含有する。組成物の残りは、エステル化を過度に妨害することのない任意の化合物、又は化合物の組み合わせであってよい。いくつかの態様の場合、沸騰した組成物はまた、無水酢酸に加えて1種又は2種以上の希釈剤を含有している。希釈剤の例としては、酢酸、キシレン、メタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、エステル溶剤(例えば酢酸エステル、例えばイソプロピルアセテート、n−プロピルアセテートなど)、及び前記のもののうちの2種又は3種以上の組み合わせが挙げられる。
【0026】
いくつかの態様の場合、(d)の蒸気は、少なくとも50重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも60重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも75重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気流は、濃度が少なくとも80重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも85重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも90重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも95重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、蒸気を生成するために沸騰させた液体と同じ重量パーセントの酸含量を有している。いくつかの態様の場合、蒸気は50重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は75重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は85重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は90重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は少なくとも98重量%の酢酸を含有する。組成物の残りは、エステル化を過度に妨害することのない任意の化合物、又は化合物の組み合わせであってよい。いくつかの態様の場合、沸騰した組成物はまた、酢酸に加えて1種又は2種以上の希釈剤を含有している。いくつかの態様の場合、組成物は無水酢酸を含有しており、例えばこの場合、蒸気は、95重量%の酢酸と5重量%の無水酢酸とを含有する組成物を沸騰させた結果である。このように、いくつかの態様の場合、蒸気流は、無水酢酸と酢酸との両方を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気流は、上記パーセンテージのうち1つの酢酸と、無水酢酸とを含有する組成物(例えば酸/無水物比80:20、酸/無水物比85:15、酸/無水物比90:10、酸/無水物比95:5)を沸騰させた結果である。蒸気が沸騰して加圧容器に入るのを可能にするのに効果的な温度で沸騰を行うことができる。いくつかの態様の場合、沸騰組成物は、酢酸に加えて1種又は2種以上の希釈剤をも含有する。希釈剤の例としては、酢酸、キシレン、メタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、エステル溶剤(例えば酢酸エステル、例えばイソプロピルアセテート、n−プロピルアセテートなど)、及び前記のもののうちの2種又は3種以上の組み合わせが挙げられる。いくつかの態様の場合、蒸気は、蒸気を生成するために沸騰させた液体と同じ重量パーセントの組成を有している。
【0027】
このように、いくつかの態様の場合、(d)の蒸気の無水物/酸比は50:50〜99:1である。いくつかの態様の場合、(d)の蒸気の無水物/酸比は75:25〜99:1である。いくつかの態様の場合、(d)の蒸気の無水物/酸比は75:25〜95:1である。いくつかの態様において、蒸気は、蒸気を生成するために沸騰させた液体と同じ重量パーセントの組成を有している。
【0028】
いくつかの態様の場合、本明細書中に記載されたアセチル化プロセスは、リグノセルロース材料の含水率を低減する。いくつかの態様の場合、(a)の含浸前のリグノセルロース材料の含水率は1重量%〜20重量%である。いくつかの態様の場合、(a)の含浸前のリグノセルロース材料の含水率はより高く(例えば未乾燥リグノセルロース材料)、そして(b)の接触は、リグノセルロース材料の含水率が8重量%以下になるまで、例えばリグノセルロース材料の含水率が2重量%以下になるまで行われる。いくつかの態様の場合、(b)の接触は、リグノセルロース材料の含水率が5重量%〜6重量%になるまで行われる。いくつかの態様の場合、(b)の接触は、リグノセルロース材料の含水率が1重量%未満になるまで行われる。
【0029】
(b)及び/又は(d)の接触は、アセチル化触媒、着色剤、及び殺生物剤から選択された少なくとも1種の成分の存在又は不在において行うことができる。いくつかの態様の場合、プロセスは、ステップ(b)、ステップ(d)、又はその両方において存在するアセチル化触媒を用いて行われる。いくつかの態様の場合、プロセスは、有効量のアセチル化触媒を添加することなしに行われる。「アセチル化触媒」とは、アセチル化前又はアセチル化中のリグノセルロース材料と化合して、測定可能にアセチル化反応速度を高めるか、アセチル化反応を開始させるのに必要となるエネルギー量を低減するか、又はその両方を可能にする任意の化合物を意味する。いくつかの態様の場合、触媒は酸又は塩基触媒反応を介して作業する。アセチル化触媒のいくつかの例は、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリフルオロ酢酸、金属酢酸塩(例えば酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、など)、過塩素酸、及び過塩素酸金属塩を含む。触媒との関連における「有効量」は単純に、存在するとこのような顕著な効果をもたらす量を意味する。触媒が使用されるいくつかの態様の場合、触媒はプロセスにおけるより早い時点で導入される。例えば触媒を(b)で使用するために(a)で導入する。
【0030】
いくつかの態様の場合、蒸気の付与には、他の加熱手段が伴う。任意の効果的な補足加熱手段を使用してよい。いくつかの例は、電磁線(例えばマイクロ波、赤外線、又は高周波加熱)を施すこと、又は反応器の外壁に熱を加える(例えば伝熱媒体のジャケットを使用する)ことを含む。無水酢酸と、リグノセルロース材料中の水との発熱反応も熱源である。発熱アセチル化反応も、他のリグノセルロース材料中の反応開始を加速し得る熱源を提供する。
【0031】
(b)又は(d)の接触は、任意の効果的な温度で実施することができる。例えば(b)及び/又は(d)の接触は、50〜230℃の温度の蒸気を用いて実施することができる。いくつかの態様の場合、(b)及び/又は(d)の接触は、70〜200℃の温度の蒸気を用いて実施することができる。いくつかの態様の場合、(b)及び/又は(d)の接触は、90〜170℃の温度の蒸気を用いて実施することができる。
【0032】
加熱蒸気の適用継続時間は、操作可能な別のプロセス変数である。いくつかの態様の場合、特定の時点に達したら、例えば加熱開始後、所望の時間長さが経過したら、加熱蒸気の適用が中止される。いくつかの例は20分間、25分間、30分間、40分間、45分間、50分間、55分間、60分間、75分間、90分間、2時間、3時間、4時間、5時間、及び6時間を含む。いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料のバッチにおける1つ又は2つ以上の個所で所望の温度が測定されたら、加熱蒸気の適用が中止される。いくつかの温度の例は、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、及び190℃を含む。中止は、選択された初期圧力の達成を基準にして、或いは反応終了に向かって選択値を下回って温度又は圧力が低下したときに決定することもできる。中止は、選択温度に達した後の特定の時間量の経過に基づいて決定することもできる。いくつかの態様の場合、他の熱源の適用は、プロセス中の同じ規定の時点又は異なる時点で中止してもよい。前記の例は限定しているのではなく、許容し得る任意のエンドポイントを使用することができる。
【0033】
(b)又は(d)の接触は効果的な圧力下で実施することができる。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、20〜7700 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、5000 Torrまでの圧力に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、1000 Torr〜3500 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、1200〜2600 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、750〜5000 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、750〜2250 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、1000〜2000 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、1300〜1700 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、500〜1500 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、1500〜2500 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、750〜1250 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、900〜1110 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、1750〜2250 Torrの範囲に維持される。(b)又は(d)の接触は、同じ圧力又は異なる圧力で実施してよい。
【0034】
生成するアセチル化リグノセルロース材料
アセチル化の程度は、重量パーセント・ゲイン(WPG)(すなわち、アセチル化前のリグノセルロース材料の元の重量に対する、アセチル化時のリグノセルロース材料によって得られた重量)
WPG(%)=[{(アセチル化後の重量)−(元の乾燥重量)}/(元の乾燥重量)]×100
を割り出すことによって測定することができる。いくつかの態様の場合、工程(a)及び(b)の後、リグノセルロース材料は4〜15のWPGを有する。いくつかの態様の場合、工程(d)後のWPGは、8WPG〜35WPGの量である。いくつかの態様の場合、工程(b)後のWPGは、(d)のWPGの少なくとも25%である。いくつかの態様の場合、工程(b)後のWPGは、(d)のWPGの少なくとも50%である。
【0035】
アセチル化の程度の別の測定値は、結合アセチルパーセントである。本明細書中に使用される「結合アセチルパーセント」、又は「結合アセチル基パーセント」は、下記手順又は同等の方法に従って割り出される。リグノセルロース材料中の遊離酢酸%、並びに総アセチル基%を求める。遊離酢酸%を総アセチル基%(酢酸として測定)から差し引くことにより、結合アセチル基%を求め、次いでこれを、アセチル基のモル重量を酢酸のモル重量で割り算した値を表す比(すなわち43/60)で掛け算する。このことは下記等式(3)によって示すことができる。
結合アセチル%=(総酢酸%−遊離酢酸%)×(43/60) (3)
ドリルビット削り屑以下の厚さと、ほぼ0.5gの重さとを有するリグノセルロース材料試料を使用して、測定を行った。総酢酸%を割り出すために、予め風袋計量された8ドラム型バイアル内に試料を入れる。試料の重量を記録する(四捨五入して0.1mgの位にする)。10mM重炭酸ナトリウム(Mallinckrodt #7412-12又は同等のもの)20mLをバイアル内にピペットで入れ、そしてバイアルを密封し、そして2時間にわたって周囲温度で置いた。2mLの上澄み液を10mLフラスコ内にピペットで入れ、0.1mLの85%リン酸(Mallinckrodt #2796又は同等のもの)を添加し、そして液体をHPLC等級の水(ASTMタイプ1HPLC等級)で10mLに希釈する。結果としての溶液を十分に混合し、0.45ミクロンのナイロンフィルタを使用して濾過する。次いで、25℃で温度を保つためにサーモスタットを備えたHYDROBOND PS-C18カラム(MAC MOD Analytical INC., Chadd's Ford, PA)又は同等のものを用いた逆相液体クロマトグラフィによって、濾過された溶液の酢酸含有率%を割り出す。検出には、210nmのAgilent 1100 Series Variable Wavelength Detector (Agilent Technologies, Inc., Santa Clara CA)又は同等のものを用いる。7分間にわたって50ミリモルのリン酸を使用して、酢酸を均一濃度に分離し、続いてアセトニトリルのカラムフラッシュ及び5分間の再平衡化を施した。そして酢酸(保持時間はほぼ4分間)を210nmで光度測定的に検出することによって、遊離酢酸%を求めた。10〜1000ppmの範囲(100mL較正溶液中0.001〜0.1gの酢酸の質量に相当する)にわたって較正曲線を調製する。試料に対して、結果として生じた酢酸ピーク下面積を較正曲線と比較することにより、試料溶液100mL当たりの酢酸量(グラム)を求める。総アセチル基(酢酸で測定)を割り出すために、40%(w/v)水酸化ナトリウム(Mallinckrodt #7708-10又は同等のもの)2mLを、上で調製された残りの18mLの遊離酢酸%溶液中にピペットで入れる。バイアルを密封し、リグノセルロース材料を懸濁された状態に保つのに必要な最小速度に調節された振盪器で少なくとも2時間にわたって機械的に振盪させる。1mLの上澄み液を100mLフラスコ内にピペットで入れ、1mLの85%リン酸(Mallinckrodt #2796又は同等のもの)を添加し、そして液体をHPLC等級の水(ASTMタイプ1HPLC等級)で100mLに希釈する。結果としての溶液を十分に混合し、0.45ミクロンのナイロンフィルタを使用して濾過する。次いで、同じクロマトグラフィ手順を用いて、濾過溶液の%酢酸含有率を割り出す。この値及び%遊離酢酸値を式3に入れることにより、%結合アセチルを求める。
【0036】
本発明はまた、本発明の方法によって製造されたアセチル化リグノセルロース材料を提供する。いくつかの態様の場合、前記方法のうちの1つ又は2つ以上を適用する結果、(結合アセチル基パーセントによって測定した)アセチル化度が少なくとも10重量パーセントであるアセチル化リグノセルロース材料が生じる。いくつかの態様の場合、アセチル化リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントは少なくとも15重量パーセントである。いくつかの態様の場合、アセチル化リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントは少なくとも16重量パーセントである。いくつかの態様の場合、アセチル化リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントは少なくとも17重量パーセントである。いくつかの態様の場合、アセチル化リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントは少なくとも18重量パーセントである。いくつかの態様の場合、アセチル化リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントは少なくとも19重量パーセントである。いくつかの態様の場合、アセチル化リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントは少なくとも20重量パーセントである。いくつかの態様の場合、結果としての結合アセチル基パーセントは2重量パーセント〜30重量パーセント、10重量パーセント〜25重量パーセント、又は15重量パーセント〜25重量パーセントであってよい。上記パーセンテージのそれぞれに対して、アセチル化プロセスによって製造されたリグノセルロース材料のバッチ全体に上記パーセンテージが見いだされる態様が存在する。アセチル化プロセスによって製造されたリグノセルロース材料のバッチ全体においてすべての非心材に上記結合アセチルパーセント値が見いだされる態様も、上記パーセンテージのそれぞれに対して存在する。一片のアセチル化無垢材全体に上記結合アセチルパーセント値が見いだされる態様も、上記パーセンテージのそれぞれに対して存在する。一片のアセチル化無垢材全体のすべての非心材部分に上記結合アセチルパーセント値が見いだされる態様も、上記パーセンテージのそれぞれに対して存在する。所与のアセチル化バッチに由来するアセチル化無垢材のスタック群全体(桟木によって分離されている)に上記結合アセチルパーセント値が見いだされる態様も、上記パーセンテージのそれぞれに対して存在する。所与のアセチル化バッチに由来するアセチル化無垢材のスタック群全体(桟木によって分離されている)のすべての非心材部分に上記結合アセチルパーセント値が見いだされる態様も、上記パーセンテージのそれぞれに対して存在する。本出願全体を通して使用される「非心材」アセチル化リグノセルロース材料は、源リグノセルロース材料が樹木の心材からは取られていない材料を意味する。
【0037】
いくつかの態様の場合、アセチル化非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動(すなわち所与のバッチに見いだされる結合アセチル基の最高重量パーセンテージと最低重量パーセンテージとの差)が5パーセンテージ・ポイント以下であるアセチル化リグノセルロース材料が生じる。いくつかの態様の場合、アセチル化非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動は、3パーセンテージ・ポイント以下である。いくつかの態様の場合、アセチル化非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動は、2パーセンテージ・ポイント以下である。いくつかの態様の場合、アセチル化非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動は、1パーセンテージ・ポイント以下である。
【0038】
いくつかの態様の場合、密度0.45〜0.60グラムの非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動が、5パーセンテージ・ポイント以下であるアセチル化リグノセルロース材料が生じる。いくつかの態様の場合、密度0.45〜0.60グラムの非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動は、3パーセンテージ・ポイント以下である。いくつかの態様の場合、密度0.45〜0.60グラムの非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動は、2パーセンテージ・ポイント以下である。いくつかの態様の場合、密度0.45〜0.60グラムの非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動は、1パーセンテージ・ポイント以下である。密度0.45〜0.60グラムの非心材リグノセルロース材料は、源リグノセルロース材料が樹木の心材からは取られていない、密度0.45〜0.60グラムのアセチル化リグノセルロース材料を意味する。本出願において使用される密度値は乾燥重量を基準としている。
【0039】
いくつかの態様の場合、密度が0.45〜0.60グラムであるようなアセチル化リグノセルロース材料の部分全体に対して、所与のバッチの結合アセチル基パーセントの変動が、5パーセンテージ・ポイント以下であるアセチル化リグノセルロース材料が生じる。いくつかの態様の場合、所与のバッチの結合アセチル基パーセントの変動は、密度が0.45〜0.60グラムであるようなアセチル化リグノセルロース材料の部分全体に対して3パーセンテージ・ポイント以下である。いくつかの態様の場合、所与のバッチの結合アセチル基パーセントの変動は、密度が0.45〜0.60グラムであるようなアセチル化リグノセルロース材料の部分全体に対して2パーセンテージ・ポイント以下である。いくつかの態様の場合、所与のバッチの結合アセチル基パーセントの変動は、密度が0.45〜0.60グラムであるようなアセチル化リグノセルロース材料の部分全体に対して1パーセンテージ・ポイント以下である。
【0040】
アセチル化リグノセルロース材料のさらなる処理
いくつかの態様では、アセチル化リグノセルロース材料にさらなる処理を施すことができる。例えば、いくつかの態様では、リグノセルロース材料中に存在する過剰のエステル化用化合物及び/又は反応副生成物を除去するために、リグノセルロース材料を処理する。こうして、本発明のアセチル化方法は:
(e) (d)工程の接触されたリグノセルロース材料から過剰の無水酢酸及び/又は酢酸のうちの少なくともいくらかを除去する工程を含んでもよい。
このことは、アセチル化プロセスと同じ反応容器内で又は異なる場所で行うことができる。この除去プロセスは、酢酸及び/又は無水酢酸の含有率を任意の所望のレベルに低下させることができる任意のプロセスであることが可能である。本発明で使用することができるプロセスの一例としては、不活性ガス(例えば窒素)を伴う又は伴わない電磁放射線(例えばマイクロ波放射線、高周波放射線、放射赤外線など)の適用、大気圧未満の圧力での貯蔵、反応容器への加熱蒸気(例えばスチーム)の添加、反応容器への水の添加、キルン内での乾燥、又は前記のもののうちの2つ又は3つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0041】
アセチル化リグノセルロース材料には、任意の望ましい追加のさらなる処理を施すこともできる。いくつかの例としては、殺生物剤による処理、ステイン又は被膜の適用、所望の寸法及び形状への切断、より小さな材料へのチッピング又はリファイニング、などが挙げられる。
【0042】
いくつかの態様の場合、工程(e)後のリグノセルロース材料は5重量%未満の量の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、工程(e)後のリグノセルロース材料は3重量%未満の量の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、工程(e)後のリグノセルロース材料は2重量%未満の量の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、工程(e)後のリグノセルロース材料は1重量%未満の量の酢酸を含有する。
【0043】
物品
本発明はさらに、本発明のリグノセルロース材料を含有する、又はこれらの材料から形成された物品を提供する。いくつかの例としては、製材、エンジニアド木材、建築材料(例えばデッキ、梁、筋交い、手すり、屋内床張り材、手すり子、スピンドル、ドア、トリム、羽目板、モールディング、窓及び窓部品、間柱など)、運動場設備、フェンス、家具、電柱、杭、桟橋、ボート、パレット、及び容器、枕木が挙げられる。
【0044】
好ましい態様の下記例によって本発明をさらに説明することができるが、これらの例が、説明の目的のためにのみ含まれるのであって、他に具体的に指示のない限り、本発明の範囲を限定するものではないことは明らかである。
【実施例】
【0045】
反応器設計
これらの例のために使用される反応器は、横型2フィート・ガラス反応器、横型4フィート・ガラス反応器、10フィート・ステンレス鋼反応器、及び2フィート縦型ガラス・ユニットを含む。反応器はEastman Chemical Company and Lab Glass Inc.によって製造した。
【0046】
8インチのShottフランジが一方の端部に設けられた2フィート長及び8インチ直径の横型ガラス反応器を調製した。反対側の端部は閉じられ、これには3リットルのリボイラフラスコ及び加熱窒素流量計に接続するための玉継ぎ手が取り付けられた。ユニットの作業体積は5ガロンであり、ユニットは18インチの3枚のデッキボード又は同等物を保持することができた。ユニットには、ガラス外面にサーモカップルを取り付けておいた。ユニットを絶縁テープ及びヒートテープでサンドイッチし、ブランケット絶縁体で覆った。ユニットはまた、内部温度サーモカップルを備えた。ユニットは、蒸留物の凝縮及び除去のためのテイクオフ・ヘッドを有していた。
【0047】
例1:サザン・イエローパインのアセチル化
サザン・イエローパインから成る3枚のデッキボード(公称5.5インチ×1インチ×18インチ)を10%の水分含有量(MC)を有する状態で、反応器ユニット内に入れた。真空(250mmHg)を施し、そしてボードを完全に浸すように真空下で氷酢酸を引き込んだ。圧力を2.67kPaまで低下させ、そして30分間にわたって20℃で保持した。次いで真空を大気圧まで解放し、ボードをさらに15分間にわたって浸しておいた。この真空含浸サイクルを2回繰り返した。次いでユニットから酸を排出し、そして酸蒸気を供給するようにユニットを組み立てた。
【0048】
3リットル丸底フラスコに酢酸を装入し、そしてこれを還流させた(118℃)。酸蒸気はユニットを通り、ボードを加熱し、そして凝縮された。蒸留された酸を取り出すのに伴って、新鮮な空気をリボイラに供給することにより、一定レベルを維持した。蒸留物の含水率を定期的に分析した。ボードの元の含水率と、蒸留物中で捕集された水の量とを比較した。計算水量がほぼ一定である場合には、ボードは水を含んでおらず、酸蒸気が停止されていると考えた。
【0049】
ボードの元の含水率を水分含有量(Moisture Content: MC)として表した。水分含有量は、絶乾木材の重量に対する比率、普通はパーセンテージとして表される木材中の水の重量として定義される。水分含有量は、水分計、例えばWagner Electronics Products, Inc, (326 Pine Grove Road, Rogue River, OR, 97537, USA)によるModel MMC 220を使用することによって測定した。或いは、水分含有量はASTM D4442絶対乾燥を用いて測定し、そして式(4):
水分含有量(%)=MC=[(木材の湿潤重量−絶乾重量)/絶乾重量]
×100 (4)
によって表す。
【0050】
冷却後、ボードを再び浸すように、ユニットに無水酢酸を装入した。上記真空含浸サイクルを3回繰り返すことにより、ボードを無水酢酸で含浸した。次いで無水酢酸をユニットから排出した。無水酢酸をリボイラに装入し、これを還流温度(138℃)にした。無水物蒸気はユニットを通過し、ボードを所望の反応温度に加熱し、そして凝縮された。この時間中、ボードをアセチル化し、そして酢酸を遊離させ、そして無水物と共蒸留した。蒸留物の酸含有率をモニタリングした。液体が除去されるのに伴って、リボイラに追加の無水物を添加した。蒸留物中の所定の酸濃度において、所望のレベルのアセチル化を達成し、リボイラを冷却し、ユニットから分離した。
【0051】
ユニットに真空及び熱を施すことにより、残留する酢酸及び無水酢酸を除去した。ユニットに高温窒素流を加えることにより、液体除去を補助することもできる。ボードから酸及び無水物が遊離されたら、ボードを冷却して取り出す。どれくらいの長くの時間にわたってボードがアセチル化条件下に置かれたかに応じて、アセチル化度は8〜25%である。アセチル化プロセスにおいて達成されたWPGを実証する結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
例2:ラジアータ・パインのアセチル化
サザン・イエローパインのアセチル化に関して上述した反応条件を、ラジアータ・パイン(Radiata Pine)から成るボードについても用いた。表2の実験2−1から2−3はこのプロセスの結果を示す。
【0054】
例3:100%未満の無水物から成る酢酸無水物によるアセチル化
無水物が87%の無水物と13%の酢酸とを呈する以外は、例1の反応条件を用いた。表2の実験3−1及び3−2はこのプロセスの結果を示す。
【0055】
【表2】

【0056】
例4:より大きいボードのアセチル化
例1の反応条件を、表3に示す寸法(インチ)を有するボード上で用いた。
【0057】
【表3】

【0058】
例5:酢酸によるボードのアセチル化
サザン・イエローパインから成る3枚のデッキボード(公称5.5インチ×1インチ×18インチ)を10%のMCを有する状態で、反応器ユニット内に入れた。真空(250mmHg)を施し、そしてボードを完全に浸すように真空下で氷酢酸を引き込んだ。圧力を20mmHgまで低下させ、そして30分間にわたって周囲温度で保持した。次いで真空を大気圧まで解放し、ボードをさらに15分間にわたって浸しておいた。この真空含浸サイクルを2回繰り返した。次いでユニットから酸を排出し、そして酸蒸気を供給するようにユニットを組み立てた。
【0059】
3リットル丸底フラスコに酢酸を装入し、そしてこれを還流させた(118℃)。酸蒸気はユニットを通過し、ボードを加熱し、そして凝縮された。蒸留された酸を取り出すのに伴って、新鮮な空気をリボイラに供給することにより、一定レベルを維持した。蒸留物の含水率を定期的に分析した。ボードの元の含水率と、蒸留物中で捕集された水の量とを比較した。計算水量がほぼ一定である場合には、ボードは水を含んでおらず、酸蒸気が停止されていると考えた。
【0060】
酢酸を使用して12WPGまで達するために、酸蒸気を発生させ続け、そしてこれを反応器に供給した。酢酸及び反応の水を含有する蒸気を凝縮して除去した。1つの態様の場合、10WPGを実現した。このプロセスの結果を表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
例6:共沸剤を使用した水の除去及び酢酸によるアセチル化
約2〜4%のn−プロピルアセテートを酢酸に添加するとともに、例1及び2のプロセス条件を用いた。加えて、テイクオフ・ヘッドの代わりに、水/n−プロピルアセテート共沸物の分離、及び塔へのn−プロピルアセテートの返還を可能にする小型蒸留塔とデカンタとを設けた。リボイラから蒸気を提供し続け、そして反応器からの酢酸凝縮物をアンダーフローさせることによりリボイラに戻すことによって、デカンタから水を連続的に除去することができた。除去された水の質量平衡から、WPG 11を実現することができた。このプロセスの結果を表5に示す。
【0063】
【表5】

【0064】
例7:ステンレス鋼10フィート・ユニット反応器システムの設計及びプロセス
この態様の場合、反応器は横型ジャケット付き金属10インチ管、10フィート長であった。ジャケットは最大90psigのスチームで加熱され、そして冷却水で冷却された。管反応器は150psigに対して定格された。反応器の一方の端部を、平らな金属フランジ・カバーで半永久的に閉じた。反応器の反対側の端部は、化学処理のために木材を積み卸しするために取り外し可能な平らな金属フランジ・カバーで閉じた。反応器容積は35ガロンであった。1インチの入口ノズルに液体フィード・ポンプを接続することにより、建造物屋根に設けられた加熱タンクから重力によって酢酸及び/又は無水酢酸(又はその混合物)を添加できるようにした。このフィード・ノズルに、スチーム気化器を備えた別のフィード・システムも接続することにより、無水酢酸又は無水酢酸/酢酸混合物を、正圧下で蒸気として反応器に供給することができた。
【0065】
反応器の反対側の端部に設けられた2インチ蒸気出口ノズルを、凝縮器及び凝縮物保持タンクに接続した。凝縮器から延びる通気孔を制御弁に通すことにより、反応器の正圧を維持し制御できるようにした。この通気孔には弁を設けることにより、反応器を真空に引くために、弁がシステムを大気に向かって、又はシステムをスチームジェットに向かって通気することができるようにした。反応器を正圧下に置くことが望ましい場合には、反応器蒸気ライン内の弁を閉じることができる。システムを加圧するために、最大100psigの窒素を(蒸気入口ノズルを通して)反応器に供給することができた。
【0066】
デッキボードのアセチル化:3枚のデッキボード(公称5.5インチ×1インチ×98インチ)をユニット内に入れた。スチームジェットを介して10〜20分間にわたって真空(30〜50mmHg)を施すことによって、ボードから空気を除去した。真空下の反応器に氷酢酸を装入することによりボードを完全に浸した。真空を10〜20分間にわたって維持することによって、ボードを完全に脱気した。真空を窒素で解放し、そして反応器を窒素で60〜90psigまで加圧し、そしてボードを10〜30分間にわたって浸しておいた。次いで酢酸をユニットからポンピングした。
【0067】
反応器を凝縮器に向かって通気し、そして凝縮器を通してこれを大気圧にした。10〜40psigの反応器圧力を制御するように、圧力制御弁を設定した。反応器ジャケットをスチームで加熱した。反応器が加熱するのに伴って、反応器の上部空間を窒素で25〜40psigまで加圧した。ここで連続フィード・システムから気化器へ酢酸を供給することにより、酸蒸気が反応器に入って、反応器を加熱して反応器内の圧力を維持するようにした。酢酸蒸気が木材を加熱するのに伴って、いくらかの酢酸とともにボードから水を駆出した。この蒸気は反応器を出て凝縮された。上部空間の凝縮物試料を捕集して分析することにより、経時的な含水率を割り出して、木材が酢酸蒸気によって十分に乾燥させられているかどうかを見極めた。乾燥エンドポイントに達したら、酢酸蒸気供給を停止した。ジャケットへのスチーム供給を停止し、そして冷却水をジャケットに供給した。
【0068】
反応器圧力を大気圧に低下させた。種々の量の真空を施すことにより、木材からいくらかの酢酸をフラッシングした。無水酢酸又は無水酢酸/酢酸を反応器に装入することにより、ボードを完全に浸した。この工程は真空下又は大気圧で実施してよい。反応器を窒素で60〜90psigまで加圧し、そしてボードを10〜30分間にわたって浸しておくことにより、無水物で十分に含浸した。無水酢酸を次いでユニットからポンピングした。
【0069】
反応器通気弁を凝縮器から閉鎖した。反応器ジャケットをスチームで加熱した。反応器が加熱するのにつれて、反応器上部空間を窒素で15〜30psigまで加圧した。無水酢酸又は無水酢酸/酢酸を、連続的なフィード・システムから気化器に供給することにより、無水物蒸気が反応器に入って、反応器を加熱して反応器内の圧力を高めるようにした。無水酢酸蒸気が木材を50〜90℃まで加熱すると、無水酢酸と木材中の成分(例えば残留水、リグニン中のヒドロキシル基、ヘミセルロース及びセルロース)とに関与するいくつかの発熱反応が始まる。木材の温度及び反応時間は、アセチル化反応が望ましいエンドポイントまで進行したときにそれを見極めるのに十分な指標であった。
【0070】
反応後の木材乾燥
反応が完了すると、木材の温度は145〜170℃であり、そして反応器圧力は15〜50psigだった。ジャケット上のスチームを維持した。反応器蒸気ライン内の弁を開放することにより、反応器の過剰圧力を逃して圧力を大気圧まで低減した。反応器に真空を施すことにより、圧力を30〜60mmHgまで低減した。アセチル化木材中に存在する無水酢酸及び酢酸のほとんどは、圧力が低減するのに伴ってフラッシュオフした。木材の温度は、フラッシングの結果として70〜95℃まで低下した。蒸気で加熱された反応器内で保持することにより、そして窒素流を反応器に通すことにより、木材を乾燥させることができた。或いは、マイクロ波発射装置を通して反応器内にマイクロ波を発することによって、マイクロ波が木材を加熱して無水酢酸/酢酸を駆逐できるようにした。ボードから酸及び無水物が遊離したら、ボードを僅かに冷却して取り出した。このプロセスの結果を表6に示す。
【0071】
【表6】

【0072】
例7:より大きいボードのアセチル化
例6の反応条件を2×6×18インチのボード、1×5.5×48インチのボード、1×5.5×96インチのボード、4×4×96インチのボードに対して用いる。
【0073】
好ましい態様の下記例によって本発明をさらに説明することができるが、これらの例が、説明の目的のためにのみ含まれるのであって、他に具体的に指示のない限り、本発明の範囲を限定するものではないことは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) リグノセルロース材料を、酢酸を含む液体で含浸させる工程;
(b) 該リグノセルロース材料のうちの少なくともいくらかをアセチル化するのに十分な条件下で、(a)工程から得られた含浸されたリグノセルロース材料と、酢酸を含む蒸気流とを接触させる工程
を含んで成る方法。
【請求項2】
(c) (b)工程から得られた該接触されたリグノセルロース材料を、無水酢酸を含む液体で含侵させる工程;及び
(d) 該リグノセルロース材料のアセチル化を増大させるのに十分な条件下で、(c)工程での前記含浸されたリグノセルロース材料と蒸気流とを接触させる工程であって、前記蒸気流が、無水酢酸、酢酸、又は無水酢酸及び酢酸の両方を含む工程
をさらに含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)工程での前記液体が、水、無水酢酸、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エステル、又は前記のもののうちの2つ又は3つ以上の組み合わせをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該リグノセルロース材料が無垢材である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該リグノセルロース材料が、サザン・イエローパイン(Southern Yellow Pine)又はラジアータ・パイン(Radiata pine)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(b)工程での酢酸蒸気流が、少なくとも1種の共沸剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該少なくとも1種の共沸剤が、キシレン、トルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸エステル、又は前記のもののうちの2つ又は3つ以上の組み合わせを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
リグノセルロース材料のWPGが、(b)工程の後で4〜15%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
リグノセルロース材料のWPGが、(d)工程の後で8〜35%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
(b)工程でのWPGが、(d)工程でのWPGの少なくとも25%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
(b)工程でのWPGが、(d)工程でのWPGの少なくとも50%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
(a)工程での含浸前のリグノセルロース材料が1重量%〜20重量%の含水率を有し、そして(b)工程での接触が、該リグノセルロース材料の含水率が2重量%以下になるまで行われる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
含浸前のリグノセルロース材料が、未乾燥リグノセルロース材料であり、そして(b)工程での接触が、該リグノセルロース材料の含水率が8重量%以下になるまで行われる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
(b)工程での接触が、該リグノセルロース材料の含水率が1重量%以下になるまで行われる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法によって製造されたリグノセルロース材料。
【請求項16】
請求項15に記載のリグノセルロース材料を含む物品。

【公表番号】特表2012−531332(P2012−531332A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517490(P2012−517490)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/001806
【国際公開番号】WO2010/151321
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】