説明

リスクステータスを計算し、表示することによって病気を回避するための予防モジュール

患者データを読み込むための入力装置と、該データを評価するための評価装置と、図式形式で該評価の結果を出力する出力装置とからなる、該評価装置が、少なくとも1つのリスクパラメータについて該患者のパラメータ値を読み込み、現リスクステータスを計算するプログラムを含み、該パラメータ値を変えるための短期目標リスクを計算することを特徴とする、患者の健康の状態を視覚化するためのシステムが説明されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に関連するデータを該患者の健康の状態を表すものとして視覚化することに関する。
【背景技術】
【0002】
予防医学の重要性についての議論にはたえず行き戻りがあった。短期的な考察のために予防医学が必ずしも受け入れられない場合にも、長期的な考察による結論は、予防は費用効率の高い解決策であるというものである。さらに予防医学の追加の利点は、それが多くの患者の生活の質の向上をもたらすということである。重病の場合、予防医学は多くの場合このような病気を治療する唯一の可能性である。したがって、たとえば多くの種類の(肺、卵管、または胸の)癌および脳梗塞も、予防策なしではすぐに死に至る病である。対照的に、予防策と組み合わされた早期発見の場合には、何百万人の人の生命を救済する、または実質的に延長することができる。
【発明の開示】
【0003】
予防医学の発展は多くの研究分野で成果を上げてきた。前述された病気だけではなく、他の多くの病気のための予防策の発展につながってきた膨大な量の出版物、臨床研究および実験がある。患者がこの大量の情報の中の信頼できる研究と信頼できない研究を区別し、それを使用して、自身の健康のための予防策の使用について評価を下すことはまったく不可能である。このため、医師と患者に、患者のために個別に合わせられた予防策を提案する科学的な根拠のある研究に基づいて計算を行うツールを与えることが望ましい。
【0004】
たとえば、糖尿病は、その重要性が後遺症のリスクによって強調される臨床像である。糖尿病は複雑な病理学的な過程である。診断および治療方法の決定は、十分な科学的所見が入手できるのであれば科学的根拠に基づくべきである。系統だった決定支援なしで、医学研究によって作り出されるデータの洪水を管理して、治療のためにそれを使用することはほとんど不可能である。
【0005】
健康管理プログラムは、病気を予防することを目的とする米国特許出願第2004/0122715号に説明されている。患者にはインターネットを介して多数の予防プログラムを送られ、患者はその中から自分のライフスタイルに最もうまく適合するものを選ぶことができる。このようにして、患者データは匿名のままでなければならない。このシステムは予防要素を提供し、患者の状態がこれらの予防要素と比較される。したがって、一時的な予防状態がユーザに表示される。類似するシステムが米国特許出願第6,584,445号に説明されている。患者の入手可能な医療データおよび個人データがデータベース内に蓄積され、特定の病気のリスクが計算される。このシステムを活用して、患者は、特定の病気にかかるリスクとともに、考えられる治療の種類、関連する費用およびリスクを示される。
【0006】
これらのシステムのすべてに欠如しているものは、患者が万一生活様式を変更した場合、または患者が特定の治療を受ける場合の患者の予後診断を視覚化することである。これらの見通しがなければ、患者が自分の生活様式を変更するためのやる気を起こさせるものはない。これは、糖尿病等の病気の結果として後遺症を考慮に入れなければならない患者の治療では重要な構成要素である。
【0007】
さらに、従来の技術のシステムでは、患者が影響を及ぼすことのできるパラメータの変化がどのような影響を有するのかは明らかではない。
【0008】
したがって、一番近い従来の技術から、この目的は、患者がたとえば自分の生活様式を変更することによって少なくとも1つのリスクパラメータのパラメータ値を変更するときに、患者に自分の健康の考えられる状態について追加情報を提供するシステムを開発することである。
【0009】
別の目的は、この後に続く患者の検査で、患者がそれまで行ってきた方向について患者に知らせることができるようにすることである。
【0010】
さらに、患者は個々のリスクパラメータごとにいつでも新しい目標値を設定する機会を与えられ、視覚的形式で比較するものとして過去の結果をつねに示される必要がある。
【0011】
患者データを読み込むための入力装置と、該データを評価するための評価装置と、該評価の該結果を図式形式で出力する出力装置とからなる、患者の健康状態を視覚化するためのシステムであって、該評価装置が、少なくとも1つのリスクパラメータについて患者のパラメータ値を読み込み、現リスクステータスを計算するプログラムを含み、パラメータ値を変えるための(以下では短期目標リスクと呼ばれる)「目標リスク」を計算することを特徴とするシステムをここに説明する。
【0012】
以下で説明されているシステムでは、現リスクステータスは、多様なリスクパラメータについての患者のパラメータ値に基づいて計算される。後で、個々のパラメータ値が変わると、潜在的な短期目標リスクが患者のために計算される。したがって、この場合、考えられるタイプの治療およびライフスタイルの変化が提案されるだけではなく、それらは患者にとっての意味に直接関係する。したがって、患者は、特定のパラメータ値を変えると、自分が発現する可能性がある方向を示される。これは患者が自分の生活様式を変更するための追加の刺激策になる。患者にとってもう1つの優位点は、最高4つの異なる検査レポートからの結果の提示である。この比較図を使用して、患者は、自分がすでにいくつかのリスクパラメータで改善を認めることができるのか、または自分が悪化した可能性があるのかを認識することができる。リスクの現状を該短期目標リスクと該比較することにより、患者は計算された自分のさらなる改善の可能性の程度について知らされる。
【0013】
このシステムはリスク評価を実施し、最高4つの異なる評価時間の過程でそれらを図式的に表示する可能性を提供する。この目的を達成するために、患者データを入力するための入力装置と、データを評価するための評価装置と、評価の結果を図式形式で出力する出力装置とからなる、患者の健康の状態を視覚化できるシステムをここに説明する。評価装置は、患者のリスクパラメータについて値のプロファイルを入力し、このプロファイルから、現リスクステータスを計算し、治療する人物によって決定される目標プロファイルの前提の下で短期目標リスクも計算するプログラムを含む。患者のためのガイドラインとして、計算が全国糖尿病治療ガイドライン(National Diabetes Care Guideline)によって低リスク範囲に対する閾値として指定されてきた値に基づく場合の、リスクの程度を示す(以下では長期目標リスクとも呼ばれる)「理想リスクステータス」が同様に追加される。
【0014】
リスクパラメータのプロファイルは、長期血糖値またはコレステロール等の血液値、ならびに患者の血圧、喫煙、体重、年齢および性別等の他の患者に特殊なデータから構成されている。さらに、医師または患者が入手可能であるすべての患者関連データをこのシステムに入力できる。したがって、患者に特殊なリスクを、多くの様々な病気についてこれらのデータから計算できる。これは、糖尿病患者にとって、彼らが二次的な糖尿病にかかるリスクが非常に高いために特に重要である。この場合、たとえば心筋梗塞、脳梗塞、腎不全、失明または足の切断のリスクを計算することが可能である。この計算の結果は、教訓的に(didactically)作成され、科学的に評価された概念にしたがって出力装置によって図式的に表示できる。
【0015】
このシステムの入力装置は、たとえばデータキャリヤ読取装置、スキャナ、データインタフェースまたは他のすべての公知の入力手段であることができる。これにより、すべての入手可能な電子データおよび紙形式のデータも該このシステムの中に読み込むことができる。紙形式のデータも電子システムのキーボードで入力できることは言うまでもない。入力データを処理するための評価装置は、多様な形式のアルゴリズムを含むプログラムからなる。プログラムは電子形式で存在するデータを評価する。評価は、個々の患者データが、関連性のある医療研究から引き出される、このシステムに存在する医学的所見と、アルゴリズムによって決定される形式でリンクされることを意味する。評価されたデータはここで電子的に出力装置に渡される。この出力装置は、電子的に、プリンタで印刷できる、または電子文書として送信できる図式レポートを作成する。出力装置は当業者に公知の別の出力装置であることもできる。このようにして、評価の結果は患者のため、および医師のために視覚化される。
【0016】
評価装置内のプログラムは、各パラメータが少なくとも1つのパラメータ値を有し、この一群のリスクパラメータについて患者の現リスクステータスを計算するためにアルゴリズムを使用する、患者の現リスクパラメータプロファイルを読み込む。(パーセント単位の)患者の現リスクの値は、該当患者と同じ医療プロファイルを有する100人のグループから何人の人が統計的に次の10年の内にそれぞれの後遺症を患うことになるのかを述べている。患者の短期目標リスクを計算するために、患者または医師が多様な危険因子に関して(通常患者と合意される)目標群を指定し、これから、または関連する糖尿病続発症について全国糖尿病治療ガイドライン(National Diabetes Care Guideline)によって指定される群から、このシステムは最初に「現リスク」と「短期目標リスク」の間のリスク絶対差を計算する。その後、相対的リスク削減(の可能性)が現リスクに基づいてこの絶対リスク差異から求められる。
【0017】
患者は、システムに入力されたリスクパラメータに影響を及ぼすことができる場合もあれば、できない場合もある。したがって、喫煙、血圧、総コレステロール値、HDLコレステロール値、長期血糖値、および体重等のリスクパラメータは、患者によって影響を及ぼすことができる。これとは対照的に、年齢、性別、病気の持続時間、および既往のデータ等のリスクパラメータは、患者によって影響を及ぼされることはない。可能性を表示することは、患者に自分の健康の見通し、つまり、患者自身が自分の生き方および行動パターン(生活様式、治療のコンプライアンス)を変更することによってプラスの影響をもたらすことができる、総リスクの割合を示している。このようにして、喫煙家として、患者は喫煙をやめることができ、または肥満患者として、該患者は対応するリスクパラメータにしたがって糖尿病続発症のリスクに影響を及ぼすためにさらに多くのスポーツ活動に携わることができるであろう。患者がさらに長い期間監視される場合、患者はいつでも、自分の現リスクステータスが自分の短期目標リスクに向かって進展したかどうか、または現リスクステータスが悪化したかどうかを認識できる。この関連で、現リスクステータスは、リスクパラメータの現在値を使用して毎回計算される。
【0018】
このため、モデル予測に従った次の10年間に発生する典型的な糖尿病長期続発症の絶対確率が、個人のパラメータおよび患者の現在の健康ステータスに関して計算される。この図式情報は、たとえば不健康な生活様式と、療法での協力の欠如とが健康に及ぼす影響を患者に対して説明するために、医師−患者の話し合いで使用できる。
【0019】
患者に対し、病気のさらなる経過に患者がどのように影響を及ぼすことができるか、したがって活発な協力の重要性を明示するために、健康の可能性がシナリオ計算を使用して推定される。短期目標リスクを計算するための、患者と合意された危険因子のための個々の目標値、または長期目標リスクを計算するための全国糖尿病治療ガイドライン(National Diabetes Care Guideline)によって勧められる閾値が、比較のための基準として使用される。これらの健康可能性を推定することで、個々の目標について患者と合意し、ガイドライン推奨策に対して彼らが段階的に近づいてゆくための話し合いがもたらされる。
【0020】
具体的な治療結果を使用し、やる気を高めるために、(続発症レポートの形を取る)追加のリスクレポートと可能性レポートが長期の治療期間で蓄積されるのであれば、リスクパラメータおよび長期の経時的な二次リスクの進行が、比較図式によって示される。この表記は、健康機会が活用されたかどうか、およびどのように活用されたのかを文書化する。システムはリスクの絶対差とリスク相対差を計算し、視覚化する。リスクの絶対差は、患者の現リスクと、リスクパラメータ値が改善された場合に患者が有するであろう軽減されたリスクとの間の計算された差異である。リスクの相対差異(可能性)はこのリスク絶対差異を現絶対リスクに関連付ける。これによって、たとえば、影響を及ぼせるすべての危険要因の目標群が存在する場合に、現リスクと比較して心筋梗塞のリスクが33パーセント低くなるとき、この理想的な群で、続く心筋梗塞の3件のうち1件が統計的に回避できることが明らかとなる。
【0021】
したがって、リスクおよび可能性報告書は、患者または医師が自分の病気に対する患者の態度および自分自身の可能性とチャンスについての自分の認識にプラス影響を及ぼすのに役立つことができる。
【0022】
リスクおよび可能性報告書は、UKPDS(英国糖尿病予測調査(UK Prospective Diabetes Study)、ランセット(Lancet)1998, 352(9131):873-853)、DCCT(糖尿病制御および合併症試用(Diabetes control and complication trial)、N. Engl. J., 1993, 329(14):977-986)等の、その科学的に質のために選択された80を超える研究からのまとめられた経験的知識によって、患者および/または医師に自分の糖尿病との経験を広げ、これらの研究からの研究成果を活用して、治療決定を支持する機会を与える。
【0023】
たとえば、糖尿病のケースでは、研究結果を患者のマスタデータと、患者の個々の診断および既往症の所見、

・年齢、性別、糖尿病の期間、喫煙のステータス(マスタデータ)
・長期の血糖HbA1c、総コレステロール、およびHDLコレステロール
・収縮期血圧
・前の病気

とにリンクすることによって、以下の5つの糖尿病の長期続発症

・心筋梗塞
・脳梗塞
・足の切断
・腎不全
・失明

の現個別リスクプロファイルが患者について推定される。この目的のために、病気の過程は患者に特殊なデータに基づいて糖尿病モデルを使用してシミュレーションされる。加えて、健康可能性が、代謝調節、血圧および喫煙のステータスに関して嘱望されている目標を参照して計算される。これらの計算は、個々に合意した目標、または全国治療ガイドライン(National Care Guideline)によって指定された目標、ならびに現在の健康状態および患者の個人的な特徴(マスタデータ)も考慮に入れている。
【0024】
この関連で、システムは5つの典型的な長期糖尿病続発症のための潜在的な病気の過程をシミュレーションする。モデルの複雑な全体的な構造は個々の長期の続発症のためのモデル構成要素から構成されている。各モデル構成要素では、時間依存確率および状態依存遷移確率のあるマルコフ状態プロセスがその個々の段階(健康状態)とともに後遺症の進行を描いている。該モデルシミュレーションは、約80の公表された糖尿病研究の結果に現在基づいている。
【0025】
システムを継続的に更新するために、医療、疫学、および健康の経済性の分野での現在の参考文献が新しい科学的所見のために定期的に検討されている。体系的な参考文献によって収集された出版物は多段階プロセスを受ける。最初に、それらは関連性がないか質的に調べられる。研究が関連性があると見なされると、それは(症例の数、研究設計等に関して)定められた品質基準に基づいて、特に、研究結果、ひいては結論を歪める可能性があるであろう系統的誤差(「偏り」:は研究結果を歪める系統的誤差である)がないか分析され、評価され、(Harbour R, Miller J:証拠に基づいたガイドラインで推奨策を格付けするための新しいシステム(A new system for grading recommendations in evidence based guidelines)の中の研究ガイドライン証拠を評価するための方法(Method for Evaluating Research Guideline Evidence)、BMJ 2001;323:334-336からのMERGE分類にしたがって)証拠クラスに分類される。各ケースで現在最良のMERGE分類(したがって低い偏り)を有する研究の結果は病気モデルに組み込まれた。MERGEは「研究ガイドライン証拠を評価するための方法(Method for Evaluating Research Guideline Evidence)の略であり、本来、研究結果が外部要因(「偏り」)によって影響を受ける範囲をチェックしなければならない品質チェックリストを作成する。該研究は偏りの程度にしたがって証拠クラスに割り当てられる。
【0026】
この選択および評価のプロセスが、モデルを構築するための要件にしたがって文書化される。相反する証拠の事例では、専門家が、どの研究がモデルで究極的に使用される必要があるのかを決定するためのプロセスに組み込まれる。
【0027】
モデル分類の有効性は、定められた患者の包含および除外の基準、および(たとえば、患者の年齢についての)リスクパラメータの値について証拠によって保証された範囲を決定する等の他の品質保証手段だけではなく、病気モデルを確証することによっても保証できる。証拠に基づいた値範囲に近いパラメータ値は、近似計算を可能にするために証拠範囲の最小値または最大値によって置換される。
【0028】
このシステムでは、糖尿病のための全国健康管理ガイドラインII型(National Health Care Guideline for Diabetes mellitus Type II)(2002年5月)の値範囲が、内服薬のためのドイツ学会(German Society for Internal Medicine)(DGIM)および科学医療専門家学会(scientific medical specialists societies)(AWMF)の作業グループだけではなく、ドイツ医師会の薬物委員会(Drug Commission for the German Medical Association)(AkdA)、ドイツ糖尿病学会(German Diabetes Society)(DDG)、サクソニー(Saxony)の糖尿病のための専門家委員会(Specialists Commission for Diabetes)の後援の下に、ドイツ医師会(German Medical Association)の代りに品質保証のための医療センタ(Medical Centre for Quality Assurance)が議長を務めるこのシステムに含まれている。このシステムは、それが包含し、その関連で患者の最適化可能性の表現を可能にするガイドラインから逸脱する(たとえば、中間目標の意味での)個々の目標値パラメータを定義する可能性も提供する。
【0029】
このシステムは以下の3つのサブコンポーネントからなる。
a)モデルコア付きサーバ(糖尿病病気モデル)
b)クライアント(データインポート、サーバとのデータ交換、レポート作成プログラム)
c)リスクレポートおよび可能性レポート
サーバは、糖尿病等の病気モデル、制御論理、およびデータベースから構成されている。糖尿病の病気モデルはシステムのコアを表し、重要な内科疾患パラメータに基づいた病気、糖尿病(1型と2型に弁別される)の構造のモデルを表すアルゴリズムである。予後診断が関連する糖尿病続発症に対応して5つのサブモデル(心筋梗塞症、脳梗塞、腎不全、失明および切断)の間で区別が付けられる。シミュレーションモデル全体は、その数値が重要な糖尿病研究から採取される個々の状態間の遷移確率を含むいわゆるマルコフ連鎖から構成されている。これらの研究はシステム(たとえば、Accu-Chek MellibaseR)の証拠ベースを形成する。それらは一定の時間をおいて更新され、該モデルに組み込まれる前に「MERGE」にしたがって証拠の程度を評価するための標準化された方法によって評価される。制御論理はクライアントとの通信およびサーバ内のデータ制御に関与する。標準的なデータベースは、このシステムに向けられる照会データ、およびこれに基づいて計算される結果を記憶するために使用される。
【0030】
モジュール式のクライアントはリスクレポートと可能性レポートを作成するためにサーバ(ウェブサービス)を使用する。それは、各モジュールが、データ入力、計算およびPDF作成等の個々のプロセスを表す多様なモジュールからなる。可能な場合、かつ適切な場合、すべてのモジュールは自動化されている。データベースは中心にある。データベースは、リスクレポートおよび可能性レポートが完成するまで多様な中間段階を記憶し、多様なモジュールがこのデータベースを介して互いと通信する。
【0031】
レポートの手作業による入力は複数のコンピュータと同時に行うことができる。レポートデータは理想的には電子形式でモジュール式クライアントに送信される。このために、特殊なCSVフォーマットが定義される。所定のディレクトリ内のこのCSVフォーマットでレポートデータを書き込むアプリケーションは、モジュール式クライアントにレポートデータを入力する、または送信するために追加できる。データインポートはCSVフォーマットだけに制限されるのではなく、従来の技術で公知のフォーマットのすべてを使用して実施できる。データインポートのためのモジュールは、いつ新しいレポートデータがインポートのために準備できるのかを検出する。レポートデータは自動的にインポートされ、その後アーカイブに入れられる。それらが完了すると、インポートされたレポートは計算のために即座にリリースされる。計算のためにリリースされたレポートは自動的に内部XMLフォーマットに変換され、計算のためにサーバに転送される。機能するインターネット接続がこのために使用される。これは、従来の技術から公知の任意の他のフォーマットでも行われることがある。計算プロセスの後、リスクレポートと可能性レポートのプリントアウトが自動的に開始する。
【0032】
図1は、長期血糖値(HbA1c)(13)、血圧(14)、総コレステロール(15)、HDLコレステロール(16)、喫煙(17)および体重(18)等の6つの最も重要な影響を及ぼす要因を示している。現在値(1)、個人目標値(2)、長期目標値(3)および個人目標達成値(4)がこれらの影響を及ぼす要因について入力される。多様な値の値は元のバージョンで色で記されている。したがって、たとえば、現在値(1)は青で記され、個人目標値(2)は緑で記され、長期目標値(3)は薄灰色で記され、達成目標値(4)は濃い灰色で記されている。青の記号で現在値(8)を、緑の記号で個人目標値(9)を、薄灰色の記号で足の切断(10)を表す記号が、同じ色でこのために使用される。この表は患者に、患者の長期目標値と、これらの目標値がすでに達成されているかどうかだけではなく、最も重要な影響を及ぼす要因の現在の値、患者の個人目標値の概要を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1の表は、図2の図に変換される。これは、棒図表として6つの最も重要な影響を及ぼす要因を示し、それによって薄灰色の中間線(元は青緑)が個人目標値を示している。
濃い灰色の柱(203)(元は緑)は、個人目標値が達成されたことを示し、薄灰色の柱(201)(元は黄色)は個人目標値からのわずかな偏差(最高10%の偏差)を示すのに対し、黒の柱(202)(元は赤)は個人目標値からの大幅な偏差(10%を超える偏差)を示す。この場合、偏差は1つのパラメータに対して高すぎる値について、または1つのパラメータに対して低すぎる値について出現することがある。したがって、高すぎる値はパラメータ、長期糖(213)、血圧(214)、総コレステロール(215)、喫煙(217)または体重(218)について不利である。したがって、負の偏差は目標値を超える柱で示されている。対照的に、パラメータHDLコレステロール(216)の高い値は、目標値が達成されていないことが目標値の下方の柱によって示される理由である、正として評価される。目標値の正確な達成は、目標値線の上だけではなく下の小さな緑の柱を示す柱で示されている。パラメータ喫煙(217)のための図2の柱(201)は、目標値に達したことを示している。この図式は患者に対して、患者がどの影響を及ぼす要因を改善する必要があるのか(赤の柱)、およびどの目標を患者がすでに達成したのか(緑の柱)またはほぼ到達した(黄色の柱)のかを描く必要がある。さらに、第1の以後のレポートから前方へ、前に取得された値に比較される変化が、笑い顔(205)、泣き顔(206)、および中立の顔(207)を示す顔の記号を用いて示されている。このようにして、泣き顔は負の変化が発生したときに表示され、笑い顔は改善が発生すると表示され中立の顔は値が変更されていないときに表示される。
【0034】
図1の表の値は、多様な病気について患者のリスクと改善可能性を決定するために使用される。このリスクと可能性は、5つの異なる臨床的な症候群についてリスクステータスと可能性として図3に図表で示される。該5つの異なる病気は心筋梗塞(319)、脳梗塞(320)、腎不全(321)、失明(322)、および足切断(323)である。3つの異なる記号がこのために使用される。現リスクステータス(308)から計算された可能性、個人短期目標リスクステータス(309)および長期目標リスク(310)から計算される可能性のための図記号が、長期目標リスクに達するための患者の現在の可能性がどの程度高いのかを、患者に対して明確にするために使用されている。この関連で、水平に配列され、左から右へリスクの増加を示す棒図表が臨床的な症候群ごとに使用される。長期目標リスク(310)のための記号は棒の下に配列されているのに対し、現リスクステータス(308)の可能性、および短期目標リスクステータス(309)からの可能性のための2つの記号は棒の上に配列されている。この理由は、該記号(310)に対するのとは別の尺度が該記号(308)と(309)に使用されているためである。現リスクステータスまたは短期目標リスクステータスの可能性は以下のとおりに計算される。つまり、(現リスク−長期目標リスク)/現リスクまたは(短期目標リスク−長期目標リスク)/短期目標リスクである。長期目標リスク(310)の記号が棒の下に付けられている。0〜30%の尺度で、それはガイドラインの値を達成する人のグループのそれぞれの病気にかかる絶対リスクの希望をしている。進行可能性は、現リスクステータス(308)の記号がさらに右側に配置されるほど、すべていっそう大きくなる。右境界が長期目標リスクに関して現リスクステータスを引き下げるための100%の可能性を示しているのに対し、棒の左境界は、長期目標リスクに関して現リスクステータスを引き下げるためのゼロ可能性を示している。同じ尺度は短期目標リスクステータス(309)に適用する。笑い顔(305)、中立(306)、または泣き顔(307)記号は棒図の隣に再び取り付けられる。これは、患者が前回医師を訪問して以来自分の短期目標リスクステータスに近づいたのかどうか(笑い顔(305))、短期目標リスクステータスまでの距離が同じままなのか(中立顔(307))、または短期目標リスクステータスへの距離が大きくなったのか(泣き顔(307))を患者に示す。顔記号に加えて、患者が多様な影響を及ぼす要因を変更する必要があるかどうかを示す塗りつぶされた円または塗りつぶされていない円の行(324)がある。これにより、患者は、どの影響を及ぼす要因がどの病気のリスクに重要であるのか、およびこの病気リスクに影響を及ぼすため、および自分の短期目標リスクステータスに達するために、自分がどの要因をさらに改善できるのか、および改善する必要があるのかを認識できる。表現の方法の結果として、絶対長期目標リスクが、相対的な改善の可能性の間でだけではなく、個々の図式の間でも比較できる。
【0035】
図4は、経時的な多様な影響を及ぼす要因の進行の概要を示す。この場合、影響を及ぼす要因の対応する値(413a−418a)の付いた最高4つのことある時点を入力することが可能である。影響及ぼす要因(413―418)は縦に一覧表示され、最高4つの時点と関連する値が表の左側に記録されている(413a−418a)。現リスクステータス(408)と短期目標リスクステータス(409)の多様な図記号は右側に示されている。この関連で、短期目標リスクステータスの進行、および現リスクステータスとそれぞれの短期目標リスクステータスの間のギャップが患者にとって重要である。患者の目標は短期目標リスクステータスに向かって進行することである。そうする上で、短期目標リスクステータスは、患者が短期目標リスクステータスに到達すると、または患者がそこから削除されて遠すぎる場合には、あるときから別のときに変化することがある。これは医師または患者の裁量による。この場合、短期目標リスクステータス(409)は、長期血糖値(413)、血圧(414)、総コレステロール(415)、喫煙ステータス(417)、および体重(418)の場合においてのように、現リスクステータス(408)よりさらに低い値を有するか、またはHDLコレステロール(416)の場合においてのようにさらに高い値を有するかのどちらかである。
【0036】
図4に類似する棒図表は、多様な臨床像のリスク進展の時間過程を患者に示すために図5で使用されている。このために、5つの異なる臨床像、つまり心筋梗塞(519)、脳梗塞(520)、腎不全(521)、失明(522)および足の切断(523)が重ねて配置されている。この場合、4つの時点(516a〜520a)での長期目標リスク(灰色の縦棒)に関連して現リスク値と目標リスク値を示すことも可能である。図記号は再び現リスクステータス(508)と短期目標リスクステータス(509)に使用される。横棒は、左、小さなリスクから右、大きなリスクへサイズが大きくなる各リスクの各表の上に示されている。これによって、患者は長い期間での自分の進展を監視できる。そうする上で、患者は、自分の長期目標リスクに対して依然として残っているギャップの程度、および個々の臨床像に対する自分のリスクが改善したのか、または悪化したのかどうかを確かめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】現在の値、個人目標値、長期目標値、および達成された個人目標値に関して多様な影響を及ぼす要因の表形式の表示である。
【図2】前回の検査と比較した変化を評価する、それぞれの個人目標値および顔記号からの、影響を及ぼす要因の逸脱を示す棒図表である。
【図3】現リスクステータス、短期目標リスクおよび長期目標リスクから計算される5つの異なる臨床図のための可能性を視覚化するために使用される水平棒図表である。
【図4】絶対リスクパラメータおよび個人目標値の経時的な進展を示す図式的表示である。
【図5】個人目標値および長期目標値に関して5つの異なる臨床図のための患者のリスク進展の図式的表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者データを読み取るための入力装置と、該データを評価するための評価装置と、該評価の該結果を図式形式で出力する出力装置とからなる患者の健康の状態を視覚化するためのシステムであって、
該評価装置が、少なくとも1つのリスクパラメータについて該患者のパラメータ値を読み込み、現リスクステータスを計算するプログラムを含み、該パラメータ値を変えるための短期目標リスクステータスを計算することを特徴とするシステム。
【請求項2】
該患者が影響を及ぼすことができないリスクパラメータだけではなく、該患者が影響を及ぼすことができるリスクパラメータも計算に含まれることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
該リスクパラメータが、該患者の少なくとも長期血糖値、血圧、コレステロール、喫煙および体重を含むことを特徴とする請求項2記載のシステム。
【請求項4】
該リスクが少なくとも以下、つまり心筋梗塞、脳梗塞、腎不全、失明および足切断の長期的な続発症を含むことを特徴とする請求項1〜3記載のシステム。
【請求項5】
該計算の該結果が図式的に示されることを特徴とする請求項1〜4記載のシステム。
【請求項6】
該患者の多様な生活様式のためのリスク計算が計算され、示されることを特徴とする請求項1〜5記載のシステム。
【請求項7】
該個人現リスクステータスが、このリスクパラメータの該短期目標リスクステータスと長期目標リスクとともに図式的の示されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
複数のチャートが様々なリスクパラメータについて作成されることを特徴とする請求項7記載のシステム。
【請求項9】
リスク計算が、経時的に該患者のリスクの変化の視覚化を可能にする多様なときのために実施されることを特徴とする請求項1〜8記載のシステム。
【請求項10】
現リスク、短期目標リスク、または長期目標リスクのために異なる記号が使用されることを特徴とする請求項7記載のシステム。
【請求項11】
該記号が、リスクが高まるにつれて幅広くなる棒を備える横棒図に示されることを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項12】
リスクパラメータの改善が正の記号で記され、リスクパラメータの悪化が負の記号で記される、または一定のリスクパラメータが棒図表の端縁で中立記号で記されることを特徴とする請求項10または11記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−541249(P2008−541249A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510421(P2008−510421)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001347
【国際公開番号】WO2006/119810
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】