リチウムイオンキャパシタおよびその製造方法
【課題】
金属リチウムを配置した電極群と非水電解液を(円筒形)容器に収容して(円筒形容器を)密封したリチウムイオンキャパシタを対象として、量産性に優れ、非水電解液の電極群への浸透性を高め、さらには、予め負極にリチウムイオンを吸蔵させることが容易なリチウムイオンキャパシタおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回した電極群と、非水電解液と、電極群および非水電解液を収容する容器とを備えたリチウムイオンキャパシタであり、電極群は、負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に、金属リチウムが配置される。前記第1の金属箔もしくは前記第2の金属箔の少なくとも一方には多数の貫通孔が形成されている。
金属リチウムを配置した電極群と非水電解液を(円筒形)容器に収容して(円筒形容器を)密封したリチウムイオンキャパシタを対象として、量産性に優れ、非水電解液の電極群への浸透性を高め、さらには、予め負極にリチウムイオンを吸蔵させることが容易なリチウムイオンキャパシタおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回した電極群と、非水電解液と、電極群および非水電解液を収容する容器とを備えたリチウムイオンキャパシタであり、電極群は、負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に、金属リチウムが配置される。前記第1の金属箔もしくは前記第2の金属箔の少なくとも一方には多数の貫通孔が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捲回電極群を備えたリチウムイオンキャパシタおよびその製造方法に係り、特に、予め負極活物質にリチウムイオンを吸蔵させるための金属リチウムを備えたリチウムイオンキャパシタとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題がクローズアップされる中、太陽光、風力発電等によるクリーンエネルギの蓄電システムや、自動車、ハイブリッド電気自動車等の移動体用の主電源ないし補助電源として蓄電デバイスが着目されている。この蓄電デバイスとしては、従来、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等が知られており、とりわけ、近時、リチウムイオン電池の研究開発が盛んに行われている。
【0003】
また、最近では、リチウムイオン電池の利点と電気二重層キャパシタの利点とを組み合わせた大容量(例えば、500F以上)のリチウムイオンキャパシタないしハイブリッドキャパシタの研究開発も行われている(例えば、特許文献1、2参照)。リチウムイオンキャパシタは、一般に、正極活物質に活性炭、負極活物質にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材が用いられており、正負極を、セパレータを介して配置し、リチウム塩を含む非水電解液で浸潤した構成が採られている。
【0004】
リチウムイオンキャパシタは、予め負極にリチウムイオンが吸蔵ないしドープされていることにより、負極電位が通常の電気二重層キャパシタより、より低く保たれるため、使用電圧範囲を広くとることができ、また、正極充放電機構として、通常の電気二重層キャパシタで利用される陰イオンの吸着に加え、陽イオンの吸着も利用できるため、容量を原理的に倍取り出すことができる。また、リチウムイオン電池に比べ、容量は小さいものの、内部抵抗が小さく出力特性の点で優れるとともに、長寿命である、という利点がある。なお、本発明に関連する技術として、リチウムイオンを吸蔵ないしドープさせるための金属リチウムを電極群内に捲回配置したリチウムイオンキャパシタが開示されている(特許文献3参照)。
【0005】
また、セパレータを介して交互に積層された正極と負極とによって電極群が構成され、積層方向の最外部にはリチウム極が負極に対向するように配置された三極積層ユニットを用いたリチウムイオンキャパシタが開示されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−294539号公報
【特許文献2】特開2006−286841号公報
【特許文献3】特開2007−067105号公報
【特許文献4】特開2008−300667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金属リチウムを配置した電極群と非水電解液を円筒形容器に収容して円筒形容器を密封したリチウムイオンキャパシタを対象として、量産性に優れ、非水電解液の電極群への浸透性を高め、さらには、予め負極にリチウムイオンを吸蔵させることが容易なリチウムイオンキャパシタの製造方法を提供することを課題とする。また、上述したリチウムイオンキャパシタの製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、次に示すような構成が有効と考えられる。
【0009】
第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回した電極群と、非水電解液と、電極群および非水電解液を収容する容器とを備え、電極群における負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に、リボン状または紐状の金属リチウムが配置されるリチウムイオンキャパシタ。ただし、金属リチウムが溶解した後は、金属リチウム自体は残っていないが,その形跡は確認できる。ここで「上縁または下縁」とは、電極群の捲回軸方向を上下として表現したものである。この構成では、第1の金属箔と第2の金属箔の少なくともいずれか一方に多数の貫通孔を形成することを要する。多数の貫通孔は,前記貫通孔の各面積の平均値が8×10−7m2以下であり、前記貫通孔の開孔率が5%〜55%の範囲内にあることが好ましい。
【0010】
本発明において、貫通孔の開口率が単位面積あたり略均等であることが好ましい。貫通孔は円形の場合、直径が0.5mm以下に設定しても良い。貫通孔の開口率が大きすぎると正負極板を構成したときに強度が弱くなり、逆に小さくなりすぎるとリチウムイオンが移動しづらくなり内部抵抗の上昇を招き、予め負極にリチウムイオンを吸蔵させる時間を長く必要とするので、貫通孔の開口率は10%〜40%の範囲にあることが好ましい。さらに、10〜25%の範囲にあればより好ましい。また、容量低下を長時間起こらないようにするためには、正負極板の両面に活物質合剤が塗工されているとともに、貫通孔に活物質が充填されていることが望ましい。
【0011】
なお、金属箔が帯状であれば、電極群を捲回して構成する際に望ましい形状となる。
【0012】
また、電極群を収容する容器が円筒形であれば、捲回された電極群との形状の近似が見られ、望ましい形状と考えられる。
【0013】
負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔に配置されている金属リチウムは、連続して切れ目なく配置されていてもよいし、間欠的に配置されていてもよい。金属リチウムの溶解後は、いずれもスペースとして存在する。
【0014】
金属リチウムが溶解してスペースが形成される場合、金属リチウムが配置されていた部分を含み、活物質未塗工部分の幅方向の長さは、2mm以上であることが好ましい。
【0015】
正極板と負極板とは、それぞれの上縁および下縁の位置が揃わないように捲回されていることが好ましく、金属リチウムは、正極板が対向しない位置に配置されていることが好ましい。
【0016】
さらに、金属リチウムが負極板の負極活物質に吸蔵されることで、金属リチウムが配置された活物質未塗工部分金属箔が露出することが好ましい。
【0017】
一方、上述したリチウムイオンキャパシタの製造方法は、次の構成が有効と考えられる。
【0018】
第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回し電極群を構成するにあたり、捲回開始前に、負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に金属リチウムを貼り付ける工程を有するリチウムイオンキャパシタの製造方法。金属リチウムはこのように捲回開始前に貼り付けるほか、捲回時に貼り付ける工程であってもよい。
【0019】
上述したいずれの工程においても、金属箔が帯状であれば、電極群を捲回する際に好ましい。
【0020】
電極群を構成後に、容器に収容してリチウムイオンキャパシタを形成するが、ここでは容器の形状を特に問わない。しかし、容器が円筒状であれば、捲回された電極群との形状の近似が見られ、望ましい形状を構成できる。
【0021】
なお、負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の両面に金属リチウムを貼り付ける工程においては、金属リチウムは、連続して切れ目なく配置されていてもよいし、間欠的に配置されていてもよい。その際、活物質未塗工部分の幅方向の長さを、2mm以上に設定することが好ましい。
【0022】
また、上述したリチウムイオンキャパシタの製造方法に関して、電極群と非水電解液とを円筒形容器に収容して円筒形容器を密封し、密封した組立体を、金属リチウムが溶解して負極板の負極活物質に吸蔵されるように所定期間放置する。
【0023】
この放置する工程の全体または一部期間において、組立体を、金属リチウムを配置した側が上部になるようにして放置することが好ましい。
【0024】
さらに、この放置する工程の全体または一部期間において、金属リチウムを溶解させて、負極板の負極活物質に吸蔵させることが望ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、金属リチウムを負極の上縁および/または下縁の活物質未塗工部分の金属箔に配置させるため、金属リチウムが溶解して負極板の活物質合剤を構成する負極活物質に吸蔵ないしドープされるリチウムイオンのドーピング量を電極群の捲回方向に均一化することができる。
【0026】
さらに、電極群の捲回方向の一部に金属リチウムを配置させる場合には、第1の金属箔と第2の金属箔の両方に多数の貫通孔を形成することを要するが、本発明によれば、第1の金属箔と第2の金属箔の少なくともいずれか一方に貫通孔を形成すれば良く、工程を省くことができる。また、第1の金属箔と第2の金属箔の少なくともいずれか一方に貫通孔を形成することにより、金属リチウムを負極の少なくとも片面に配置すれば良いため、両面に配置しなければならない場合と比較し、量産性に優れる。
【0027】
また、金属リチウムは、捲回方向に負極板と重なっていないので、金属リチウムの溶解後に生じる捲き緩みを防ぐという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明が適用可能な実施形態のリチウムイオンキャパシタの断面図の例である。
【図2】(A)は本発明が適用可能な実施形態のリチウムイオンキャパシタの極板の捲回前の平面図であり、(B)はその極板を構成する集電体の平面図である。
【図3】極板のリード片形成部近傍を模式的に示す拡大断面図である。
【図4】本発明が適用可能な実施形態のリチウムイオンキャパシタの金属リチウムの貼り付け位置を示した負極板の捲回前の平面図である。
【図5】電極群を捲回する前の状態を模式的に示す説明図である。
【図6】(A)は塗工機内で極板にスラリが塗工される状態を模式的に示す平面図であり、(B)は塗工機の概略を示す構成図である。
【図7】本発明が適用可能な実施形態のリチウムイオンキャパシタの電極群の断面図の例である。
【図8】極板形成装置を模式的に示す構成図である。
【図9】切断装置でアルミニウム箔が切断される切断位置を示す平面図である。
【図10】金属リチウム貼付装置を模式的に示す構成図である。
【図11】捲回装置の中央部を模式的に示す構成図である。
【図12】各条件の負極リチウム放電量を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0030】
<全体構成>
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオンキャパシタ30(以下、キャパシタ30と略称する。)は、ニッケルメッキが施されたスチール製有底円筒形容器(缶)8を有している。円筒形容器8内には、中空円筒状で縦方向に複数本(本例では3本)のスリットが形成されたポリプロピレン製軸芯1に帯状の正極板(W1、W2)および負極板(W3、W4)がセパレータ4を介して捲回された電極群7が収容されている。なお、本例では、円筒形容器8の外径は40mm、内径は39mmである。
【0031】
本実施形態においては、容器8として円筒形容器を採用しているが、その断面が楕円形や略長方形となるように円筒形でなくとも良いが、容器8が円筒形であれば、セパレータを介して捲回された正極板及び負極板の形状に近似し、望ましい形状と言える。
【0032】
また、本実施形態においては、正極板及び負極板を帯状としているが、帯状ではない(縦横比が1:1の)正極板または負極板を組み合わせて、あるいは帯状であっても複数枚を組み合わせて、軸心に捲回できれば、それでも良い。ただし帯状の正極板及び負極板を採用することの方が望ましい。
【0033】
<正極>
図2(A)、(B)に示すように、正極板2は、例えば、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)W1の両面に、正極活物質として活性炭を含む正極活物質合剤W2が塗工されている(図1も参照)。アルミニウム箔W1は、長手方向に沿う一側が櫛状に切り欠かれており、この切り欠き残部からなる正極リード片2aと、正極リード片2aに隣接して多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とで構成されている。また、孔明き形成部は、長手方向に沿ってリード片形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している。この孔明き形成部に該孔明き形成部の幅方向の長さに満たない長さで上述した正極活物質合剤W2が塗工されている。正極活物質合財W2が塗工されていない部分の幅方向の長さは0になるのが好ましいが、加工上、0には成り得ないため、例えば0〜2mm形成されている。
【0034】
本例では、正極板2は次の寸法に設定されている:長手方向の長さ=2800mm、幅方向の長さa=90mm、正極リード片を除く幅方向の長さb=60mm、未塗布部の幅方向の長さc=30mm、正極リード片を除く幅方向の長さのうち正極活物質合財W2が塗工されていない部分の幅方向の長さβ=0.5mm、正極活物質合剤W2の片面塗工厚=40μm(両面で80μm)、正極活物質合剤W2のかさ密度=0.5g/cm3。孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率が20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。さらに、隣り合う正極リード片2aの間隔dは50mm、正極リード片2aの幅fは5mmに設定されている。なお、最終的な正極活物質合剤の塗工幅はe=b−β、正極リード片2aの先端からの正極活物質合剤が未塗工の幅=c+βである。
【0035】
図2(A)および図3に示すように、正極活物質合剤W2が塗工された正極リード片2a側の端部の断面は、スラリ塗工幅eから正極活物質合剤W2が乾燥する前のスラリ状態で最も外側まで流動することで、スラリ塗工幅eの塗工表面に対して鈍角状に(角度δ参照)傾斜している。
【0036】
<負極>
一方、負極板3も正極板2とほぼ同じ構造を有している。すなわち、負極板3は、例えば、厚さ16μmの銅箔(負極集電体)W3の両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質合剤W4が塗工されている。銅箔W3は、長手方向に沿う一側が櫛状に切り欠かれており、この切り欠き残部からなる負極リード片3aと、負極リード片3aに隣接して配置され多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とで構成されている。また、孔明き形成部は、長手方向に沿ってリード片形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している。負極活物質合財W4が塗工されていない部分の幅方向の長さは、正極板と異なり、金属リチウムを貼り付けるため2mm以上、好ましくは3〜10mm形成されている。さらに好ましくは、4〜6mm形成されている。
【0037】
本例では、負極板3は次の寸法に設定されている:長手方向の長さ=3000mm、幅方向の長さa=97mm、負極リード片を除く幅方向の長さb=67mm、未塗布部の幅方向の長さc=30mm、負極リード片を除く幅方向の長さのうち負極活物質合財W4が塗工されていない部分の幅方向の長さβ=5.5mm、負極活物質合剤W4の片面塗工厚=20μm(両面で40μm)、負極活物質合剤W4のかさ密度=1.0g/cm3。孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率が20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。さらに、隣り合う負極リード片3aの間隔dは50mm、負極リード片3aの幅fは5mmに設定されている。なお、最終的な負極活物質合剤の塗工幅はe=b−β、負極リード片3aの先端からの負極活物質合剤が未塗工の幅=c+βである。
【0038】
また、正極板2と同様に、負極活物質合剤W4が塗工された負極リード片3a側の端部の断面は、スラリ塗工幅eから負極活物質合剤W4が乾燥する前のスラリ状態で最も外側まで流動することで、スラリ塗工幅eの塗工表面に対して鈍角状に傾斜している。
【0039】
<箔の貫通孔>
正極板2のアルミニウム箔W1と負極板3の銅箔W3の両方に貫通孔が形成されている例を示したが、この貫通孔は金属リチウムが溶解したリチウムイオンが負極板の活物質合剤への吸蔵される際に通るためのものであるため、少なくとも一方の箔に形成されていれば良い。ただし、正極よりも負極に貫通孔があれば、リチウムイオンの移動距離は小さくなり、負極板の活物質合剤への吸蔵を促進することができ、好ましい。さらに正負極両方に貫通孔があれば、より好ましい。
しかし、箔に貫通孔を形成する工程が省かれるため、箔のどちらか一方に貫通孔がある方が、量産性に優れている。
【0040】
また、本実施形態では、貫通孔の各面積の平均値が8×10−7m2以下の3.1×10−8m2で略均等に設定され、貫通孔の開口率が20%に設定されているので、量産工程において金属箔への活物質合剤への塗工が容易で、かつ、キャパシタ全体の内部抵抗を小さくすることができる。換言すれば、貫通孔の各面積の平均値が8×10−7m2を超えるとスラリの均一塗工(活物質合材の集電体への均一塗工)が難しくなり(特に、貫通孔への活物質合剤の充填および凹凸の発生)、また、電極を構成したときに正負極板の強度の弱化を招く。なお、貫通孔の面積が小さい場合には、リチウムイオンの移動距離を短くし内部抵抗の増加を避けるためにアルミニウム箔W1および銅箔W3にリチウムイオンが通過可能なように単位面積あたりの貫通孔を多く形成することが望ましい。
【0041】
<金属リチウム>
図4に示すように、金属リチウムW5は、負極板3の負極活物質合剤W4が塗工されていない部分に配置されている。すなわち、負極リード片3aが形成される銅箔W3の一方の側の端部にリボン状に連続して切れ目なく配置されている。
【0042】
図4においては、金属リチウムW5をリボン状に連続して切れ目ない形状としているが、断続的に、負極板3の負極活物質合剤W4が塗工されていない部分に配置しても良い。ただしその効果を比較すると、リボン状に連続して切れ目ない形状である方が優れている。
【0043】
なお、金属リチウムW5は、負極板3の両面に配置しても、片面に配置しても良い。ただしその効果を比較すると、両面に配置した方が、金属リチウムの表面積及び銅箔との接触面積が大きくなり、金属リチウムが溶解して負極板の活物質合剤へ吸蔵されるのを促進することができ、優れている。また、両面に配置した方が、金属リチウムを貼り付けるための負極活物質合財W4が塗工されていない部分の幅方向の長さを小さくできるため好ましい。
【0044】
また、金属リチウムW5の総充填量は、負極板3の活物質合剤を構成する負極活物質にリチウムイオンを十分吸蔵可能な量に設定されるが、このような総充填量は負極活物質の材質、量を考慮して論理計算を行うとともに、実際にリチウムイオンの吸蔵を行って十分に吸蔵されたかを確認することで設定することができる。これにより、金属リチウムW5を量産する場合の金属リチウムW5の面積および厚さの設定が可能となる。さらに、金属リチウムW5の厚みは、(正極活物質合剤W2の片面塗工厚+負極活物質合剤W4の片面塗工厚)以下になるように設定する(図7参照)。
【0045】
<電極群>
図5に示すように、正極板2と負極板3とは、両極板が直接接触しないように、2枚の紙セパレータ4(ここでは厚さ50μmのセパレータ)を介して、軸芯1を中心として断面渦巻き状に捲回され、電極群7が構成されている。
また、図7に示すように、上述した正極リード片2aと負極リード片3aとは、それぞれ電極群7の互いに反対側に配置されており、セパレータ4の端から所定長さ(例えば、4mm)はみ出している。電極群7は、正極板2、負極板3、セパレータ4等の長さを調整することで、所定の内直径(例えば、9mm)および所定の外直径(例えば、38±0.1mm)に設定されている。なお、電極群7の捲回終端部は、巻き解けを防止するために、粘着テープを貼り付けることで固定されている。
【0046】
<キャパシタ構造>
図1に示すキャパシタ30の構造について、以下の通り説明する。
電極群7の下側には、電極群7の下端側端面に対向するように、負極板3からの電位を集電するための銅製の負極集電リング6が配置されている。負極集電リング6の内周面には軸芯1の下端部外周面が嵌着されている。負極集電リング6の外周縁には、負極板3から導出された負極リード片3aの先端部が超音波溶接で接合されている。負極集電リング6の下部には電気的導通のための銅製の負極リード板9が配置されており、負極リード板9は負極外部端子を兼ねる円筒形容器8の内底部に抵抗溶接で接合されている。本実施形態においては、負極集電リング6と負極リード板9とを別体として記載しているが、負極集電リング6と負極リード板9とが一体に構成されていて、負極集電リング6のみであっても良い。負極集電リング6と負極リード板9とが別体である場合、負極集電リング6および負極リード板9はエポキシ樹脂等の樹脂製絶縁材11で覆われ、樹脂製絶縁材11は負極集電リング6の上部から円筒形容器8の内底面まで配されている構成を採用することができる。この場合、円筒形容器8の底部は樹脂製絶縁材11により詰め物がなされた状態となっている。もちろん、樹脂性絶縁材11が配されていない構成であってもかまわない。
【0047】
一方、電極群7の上側には、電極群7の上端面と対向するように、軸芯1のほぼ延長線上に正極板2からの電位を集電するためのアルミニウム製の正極集電リング5が配置されている。正極集電リング5は軸芯1の上端部に嵌着されている。正極集電リング5の周囲から一体に張り出している鍔部周縁には、正極板2から導出された正極リード片2aの先端部が超音波溶接で接合されている。
【0048】
正極集電リング5の上方には、正極外部端子を兼ねる容器蓋12が配置されている。容器蓋12は、下側に配置された蓋ケース12aと、上側に配置された蓋キャップ12bとで構成されており、これらが積層されて蓋ケース12aの周縁を蓋キャップ12bにかしめることで組み立てられている。なお、蓋ケース12aには、内圧上昇により開裂する開裂溝が形成されている。正極集電リング5の上面には、リボン状のアルミニウム箔を積層した2本の正極リード板10のうち1本の一方の側が接合されている。正極リード板10のもう1本の一方の側は、容器蓋12を構成する蓋ケース12aの外底面に接合されている。また、2本の正極リード板10の他端同士も接合されている。
【0049】
容器蓋12は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂製ガスケット13を介して円筒形容器8の上部にかしめられている。このため、キャパシタ30の内部は密封されている。また、円筒形容器8内には、電極群7全体を浸潤可能な量の非水電解液(不図示)が、前記密封前に注液されている。非水電解液には、例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比30:50:20の割合で混合した溶媒中にリチウム塩として6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解したものが用いることができる。なお、本例のキャパシタ30の定格容量は700Fである。
【0050】
<活物質合剤の調製>
まず、正極活物質合剤および負極活物質合剤を調製する。正極活物質合剤は、例えば、正極活物質として比表面積が1000m2/g以上の活性炭と、結着剤としてアクリル系バインダと、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)と、導電助材としてアセチレンブラック等の導電性炭素粉末とを重量(質量)比で85:7:3:5となるように混合し、これに水(分散溶媒)を添加、混練して正極スラリを作製する。
【0051】
一方、負極活物質合剤は、例えば、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出可能な非晶質炭素と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、導電助材としてアセチレンブラック等の導電性炭素材とを重量(質量)比90:5:5となるように混合し、これに分散溶媒のN−メチルピロリドン(NMP)を添加、混練して負極スラリを作製する。
【0052】
<塗工>
次に、調整した活物質合剤のスラリの集電体への塗工について説明する。以下、説明を簡単にするために、アルミニウム箔W1へのスラリの塗工について例示するが、銅箔W3についても同じである。図6(B)に示すように、アルミニウム箔Wへの塗工は、それぞれ塗工口を有する4つの塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bと、攪拌機(不図示)を有し各塗工ヘッドにスラリを供給するスラリ貯留槽21C、21Dと、を備えた塗工装置21により行われる。上述したように作製された正極スラリは、スラリ貯留槽21C、21Dに一時的に貯留される。
【0053】
図6(A)に示すように、本例の塗工装置21は、塗工ヘッド21Aと塗工ヘッド21Bとで正極板2の幅方向で2倍幅分のスラリを塗工し、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド22Bとで正極板2の幅方向で2倍幅分のスラリを塗工することで、合計4倍幅分の正極板2の塗工を同時に行うものである。
【0054】
アルミニウム箔供給部から供給されたアルミニウム箔Wは、図示しない駆動ローラおよび従動ローラを介して塗工装置21内を略垂直方向(図6の矢印V方向)に搬送される(図8も参照)。アルミニウム箔Wは搬送方向と交差する幅方向で長さがAに設定されている。塗工ヘッド21Aと塗工ヘッド21Bとは、搬送されるアルミニウム箔Wに対し、一面側(表面側)、他面側(裏面側)にそれぞれ配設されており、塗工ヘッド21Aの塗工口と塗工ヘッド21Bの塗工口とは、垂直方向で距離D(例えば、50mm)ずれた位置に配置されている(図6(B)参照)。同様に、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド22Bとは、搬送されるアルミニウム箔Wの一面側、他面側にそれぞれ配設されており、塗工ヘッド22Aの塗工口と塗工ヘッド21Bの塗工口とは、垂直方向で距離D(例えば、50mm)ずれた位置に配置されている。このため、本例では、図6(A)に示すように、アルミニウム箔Wの搬送方向上流側から下流側に向けて、塗工ヘッド22B、塗工ヘッド22A、塗工ヘッド21B、塗工ヘッド21Aの順で配設されている。なお、塗工ヘッド22B、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド21B、塗工ヘッド21Aとが垂直方向でずれて配設されているのは、アルミニウム箔Wの幅に対し各塗工ヘッドを並べた合計幅が大きいためである。
【0055】
各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bの塗工口の搬送されるアルミニウム箔Wの幅方向(搬送方向と交差する方向)に対する長さは、アルミニウム箔W1のスラリ塗工幅eの2倍の2eに設定されており、塗工ヘッド21A、21Bの塗工口は、搬送されるアルミニウム箔Wの一方の側端(図6(A)に示す右端)を基準として順に、幅方向の一端(右端)がc+(α+β)の位置、幅方向の他端(左端)が{c+(α+β)+2e}の位置に配置されている。一方、塗工ヘッド22A、22Bの塗工口は、搬送されるアルミニウム箔Wの他側端(図6(A)に示す左端)を基準として順に、幅方向の一端(左端)がc+(α+β)の位置、幅方向の他端(右端)が{c+(α+β)+2e}の位置に配置されている。塗工ヘッド21A、21Bの塗工口の左端と塗工ヘッド22A、2Bの塗工口の右端とには、c+2(α+β)の間隔が設定されている。
【0056】
塗工装置21では、スラリ貯留槽21C、21Dに所定エア圧を加えることによりスラリ貯留槽21C、21D内に貯留されたスラリが各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bに供給され、各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bに所定のエア圧を加えることにより、各塗工ヘッドの塗工口から、搬送されるアルミニウム箔Wにスラリを表裏の両面とも略均等な厚さで塗工することができる。
【0057】
<乾燥>
図8に示すように、塗工装置21の下流側には乾燥機29が配置されている。アルミニウム箔Wに塗工されたスラリ(分散溶媒を含む)は、塗工装置21を経て乾燥機29に至るまで、略垂直方向に搬送され、塗工装置21によるスラリ塗工幅2eから、スラリが乾燥する前に、流動することによってアルミニウム箔Wへのスラリ塗工幅が広がる(図9も参照)。
【0058】
乾燥機29は、垂直方向に搬送されるアルミニウム箔Wに対し水平方向両側に複数のヒータなどの熱源が所定間隔で配置されており、アルミニウム箔Wに塗工されたスラリから分散溶媒を蒸発させるものである。スラリが塗工されたアルミニウム箔Wは、乾燥機29内を略垂直方向に搬送され、ヒータなどの熱源による加熱よりスラリを構成する分散溶媒が蒸発し、アルミニウム箔Wには正極活物質合剤が2(e+α)の幅でそれぞれ塗工され(図9参照)、乾燥後に金属や各種プラスチックなどでできたパイプ状のコアを芯とした巻き取り装置にてロール状に巻き取る。
【0059】
<リード片形成>
乾燥機29を出てロール状に巻き取られた正極板をリード片形成装置に移して引出し、スラリが塗工されていないアルミニウム箔W部分cを切り欠くことにより所定間隔で正極リード片2aを形成する。上述した切り欠きは、金属ローラに所定形状の刃物を埋め込んだ専用ローラ対23を配置し、専用ローラ対23を構成する2本のローラはともに駆動ローラであり、正極板をこのローラ対に通過させることにより、スラリを塗工していないアルミニウム箔W部分に所定間隔で複数の正極リード片2aを形成する。この工程は専用ローラ対23に代え、所定形状に刃物を埋め込んだ打ち抜き体を装着したプレス装置を、正極板の間欠送りと連動して作動させる工程でもよい。
【0060】
<プレス>
専用ローラ対23の下流側には、正極活物質合剤が塗工されたアルミニウム箔Wの両面を所定の線圧でプレスするヒートローラ対24が配置されている。ヒートローラ対24を構成する2本のローラはともに駆動ローラであり、ローラ内には、ニクロム線やヒートランプ等の熱源が内蔵されている。正極活物質合剤が塗工されたアルミニウム箔は、ヒートローラ対24間を搬送され、上述した厚さおよびかさ密度に設定される。なお、以上の乾燥、プレス工程を経ることにより、正極スラリに対し正極活物質合剤の比重は1.25、固形分は30%、負極スラリに対し負極活物質合剤の比重は1.30、固形分は50%となる。
【0061】
<分離>
ヒートローラ対24の下流側には、ループ機構25および切断装置26が配設されている。ループ機構25は、正極活物質合剤が塗工されたアルミニウム箔Wの切断装置26への搬送を調整するものであり、切断装置26は、正極活物質合剤が塗工されたアルミニウム箔Wを切断することにより幅方向で4枚分の正極板2に分離するものである。
【0062】
ループ機構25は、アルミニウム箔Wをカイト状にループ搬送するための5つのローラで構成されている。5つのローラのうち1つのローラは水平方向に移動可能であり、常時矢印H方向にバネで付勢されている。このため、切断装置26によるアルミニウム箔Wの切断の際に、切断装置26内でアルミニウム箔Wの搬送が停止されても、1つのローラがバネで付勢され水平方向に移動することにより、搬送されるアルミニウム箔Wの張力を一定に保つことができる。
【0063】
切断装置26内では、切断の際、アルミニウム箔Wの搬送が停止され(上述した駆動ローラの回転を停止し)、台座をアルミニウム箔W側に進出させ、カッタを、アルミニウム箔Wを介して台座方向に所定スピードで進出させることで、アルミニウム箔Wを幅方向で4枚分の正極板2に分離する。
【0064】
図9は、切断装置26によるアルミニウム箔Wの切断位置を示したものである。ここで、確認のため、図6と図9とを比較することで、スラリ塗工幅と活物質塗工幅との相違について簡単に説明する。上述したように、スラリ塗工幅はそれぞれ2e、両端の未塗工幅はc+(α+β)、2つのスラリ塗工幅間の未塗工幅は{c+2(α+β)}である(図6参照)。一方、乾燥機29に搬送されるまでにスラリ塗工幅は2α分広がるため、活物質塗工幅はそれぞれ2(e+α)、両端の未塗工幅はc+β、2つの活物質塗工幅間の未塗工幅はc+2βとなる(図9参照)。
【0065】
アルミニウム箔Wの両側(左端側および右端側)には、上述した正極リード片2aが形成され、正極活物質合剤が塗工された合剤塗工幅間の中央にも正極リード片2aが形成される。また、正極活物質合剤が塗工された合剤塗工幅2(e+α)の中央も切断される。従って、このような塗工方式および切断方式を採用することにより、アルミニウム箔Wの幅を正極リード片2aの長さcの分を節約することができるとともに、正極板4倍幅分の正極リード片2aを一度に形成することができる。
【0066】
図8に示すように、切断装置26では、正極活物質合剤が塗工されたアルミニウム箔Wを所定距離ずつバッチ処理により幅方向に4つに分離する。この間、ループ機構25の上述した1つのローラは図6の矢印H方向に移動しアルミニウム箔Wのループ機構25内での張力が保たれている。切断装置26での切断(カッタによる正極板2の幅方向での4枚分の分離)が終了すると、台座およびカッタをアルミニウム箔Wから退避する方向へ移動させ、駆動ローラを回転させる。これにより、ループ機構25の上述した1つのローラは図8の矢印H方向とは反対側に移動しアルミニウム箔Wのループ機構25内での張力を保つとともに、新たに(連続して)切断対象となるアルミニウム箔Wの部分を切断装置26に搬送する。
【0067】
<巻取>
切断装置26の下流側には、幅方向で4枚分の正極板2に分離されたフープ状の正極板2を巻き取る正極板巻取リールが所定間隔隔てて配設されている。正極板巻取リールは上述した駆動ローラの回転と同期して回転を開始し、分離された4倍幅分の正極板2はロール状にそれぞれ正極板巻取リールを中心として巻き取られる。これにより、ロール状に巻き取られた(フープ状の)正極板2を得ることができる。
【0068】
なお、ロール状に巻き取られた負極板3も同様の方法で得ることができる。
【0069】
<金属リチウム貼り付け>
図4に示すように、負極板3の負極活物質合財W4が塗工されていない部分の両面に、金属リチウムW5を貼り付ける。金属リチウムW5の貼り付けは貼付装置で行われる。図10は、本例で使用される貼付装置を模式的に示したものである。まずロール状に巻き取られた負極板3を供給する負極板供給部31、その上部および下部にはそれぞれロール状の金属リチウムを供給するリチウム供給部32が配置されている。リチウム貼り付け後の負極板3を巻き取る負極板巻取リール33との間に、専用ローラ対34を配置し、専用ローラ対34を構成する2本のローラはともに駆動ローラであり、負極板および金属リチウムをこのローラ対に通過させることにより、負極板3に金属リチウムW5を貼り付ける。また、この工程を巻取工程に組み込んでも良い。
【0070】
さらに、この工程を行わずに、後工程の捲回時に負極板3と同時に金属リチウムを捲回しても良い。
【0071】
なお、金属リチウムW5はロール状に保たれているため、リボン状または紐状になって貼り付けられている。しかし、その形状に限定されることなく、断続的に配置させるため、金属リチウムを切断して貼り付け、負極板上に配置することも可能である。
【0072】
<捲回>
図11に示すように、電極群7は、軸芯1を捲回中心として、2枚のセパレータ4を介して、正極板2および負極板3が直接接触しないように捲回されることで構成される。以下、便宜上、電極群7の最内周に配置される(軸芯1の周面に当接する)セパレータを4A、電極群7の最外周に配置されるセパレータを4Bとして説明する。
【0073】
電極群7の形成(捲回)は捲回装置で行われる。図11は、本例で使用される捲回装置27の要部(中央部)を模式的に示したものである。捲回装置27は、軸芯1を装着、回転可能な軸芯回転部(不図示)を有している。軸芯回転部の上部にはセパレータ4Bと正極板供給部が配置されている。捲回軸上部右から、時計回りの方向に、正極板2を供給する正極板供給部、セパレータ4Aを供給する第1のセパレータ供給部、負極板3を供給する負極板供給部、セパレータ4Bを供給する第2のセパレータ供給部、の順で配置されており、各供給部はフープ状の供給物を所定長さで切断するカッタ(不図示)を有するとともに、搬送ローラ、搬送ガイド(不図示)を有している。
【0074】
オペレータが操作ボタンを押下すると、図示しないロボットアームにより軸芯1が軸芯回転部に装着され、第1および第2のセパレータ供給部からそれぞれセパレータ4A、4Bの供給が開始され粘着テープで軸心に固定する。固定後、軸芯1の回転および第1および第2のセパレータ供給部からそれぞれセパレータ4A、4Bの供給が再開される。これにより、セパレータ4A、4Bは、少なくとも1周、好ましくは2ないし3周、軸芯1の周りに捲回される。
【0075】
次に、負極板供給部から負極板3の供給が開始され1周以上捲回する。続いて、正極板供給部から正極板2の供給が開始される。上述したように、正極板2は負極板3より長手方向の長さが短いため、負極板3より正極板2の捲回が1周以上早く終了する。
【0076】
正極板供給部は、図示しないカッタで正極板2が所定の長さとなるように切断し、正極板2の供給を停止する。負極板2はなおも負極供給部から供給されるが、所定長さ供給すると、正極板2と同様に、カッタで切断され、負極板2の供給が停止される。
【0077】
第1および第2のセパレータ供給部はなおもセパレータ4A、4Bの供給を続行し、少なくとも1周、好ましくは2ないし3周捲回可能な長さに至ると、カッタでセパレータ4A、4Bを切断し、セパレータ4A、4Bの供給を停止する。従って、セパレータ4A、4Bは捲回途中で切断されることはない。軸芯回転部はなおも軸芯1を回転させ、セパレータ4A、4Bが電極群7の外周を構成するまで回転を継続して、軸芯1の回転を停止後、重ねて切断し終端位置を合わせる。次に、電極群7の外周に捲回されたセパレータ4A、4Bの巻き解けを防止するために、電極群7の長手方向に沿って粘着テープが貼り付けられる。粘着テープの貼付は、図示を省略したテープ貼付部により行われる。次いで、電極群7(軸芯1)は、図示しないロボットアームにより軸芯回転部から脱着され、所定位置に配置され軸芯1を支持するための支持部を有する載置台上に載置され、1つの電極群7の捲回が終了する。
【0078】
<組立>
図1に示すように、正極リード片2aを変形させ、その全てを、電極群7の軸芯1のほぼ延長線上にある正極集電リング5の周面付近に集合させ、接触させた後、正極リード片2aの先端部と周面とを超音波溶接して正極リード片2aを周面に接合する。一方、負極集電リング6と負極リード片3aとの接続操作も、正極集電リング5と正極リード片2aとの接合操作と同様に接合する。また、積層体20A、20Bのタブ20aの先端部も同様に負極集電リング6に接合する。なお、タブ20aおよび負極リード片3aの負極集電リング6への接合は同時に行われる。
【0079】
その後、正極集電リング5の周面全周に絶縁被覆を施す。すなわち、粘着テープを正極集電リング5の周面から電極群7外周面に亘って一重以上巻いて絶縁被覆とし、電極群7を円筒形容器8内に挿入する。絶縁被覆には、例えば、基材がポリイミドで、その片面にアクリレート系粘着剤を塗布した粘着テープを用いることができる。
【0080】
負極集電リング6には予め電気的導通のための負極リード板9が溶接されており、または負極集電リング6と負極リード板9とが一体に構成されており、円筒形容器8内に電極群7を挿入後、軸芯1の内周を利用して円筒形容器8の内底部と負極リード板9とを抵抗溶接により接合する。次いで、軸芯1の内周を利用して所定量のエポキシ樹脂を所定量注入することが好ましい。この場合、上述したように、軸芯1には縦方向に複数本のスリットが形成されているため、エポキシ樹脂は、これらのスリットを介して円筒形容器8の内底面から負極集電リング6の上部まで進入し、負極リード板9および負極集電リング6はエポキシ樹脂で埋没するように覆われる。所定時間経過すると、注入されたエポキシ樹脂は固化して樹脂絶縁材11が形成される。もちろんエポキシ樹脂の注入は、必須ではなく、エポキシ樹脂が充填されない場合であっても良い。
【0081】
一方、正極集電リング5には、正極リード板10を溶接しておき、正極リード板10の他端を、円筒形容器8を封口するための容器蓋12の下面(蓋ケース12aの外底面)に接合する。上述したように、容器蓋12は、蓋ケース12aと蓋キャップ12bとで構成されており、これらが積層されて蓋ケース12aの周縁をかしめることによって予め組立てられている。なお、蓋ケース12aには、何らかの異常でリチウムイオンキャパシタの内圧が上昇したときに、安全のために所定の内圧に達したときに開裂する開裂溝が形成されている。開裂溝の開裂により、リチウムイオンキャパシタの内圧が開放される。
【0082】
次に、軸芯1の内周を利用して非水電解液を所定量円筒形容器8内に注入する。このような注液は安全性を確保するため低温環境下がよい。上述したように、軸芯1には複数本のスリットが形成されているため、これらのスリットを介して電極群7は非水電解液に浸潤される。その後、正極リード板10を折りたたむようにして容器蓋12で円筒形容器8に蓋をし、ガスケット13を介してかしめて密封することにより、キャパシタ30の組立体を作製する。
【0083】
<負極活物質へのリチウムの吸蔵>
次に、本実施形態のキャパシタ30の製造において、金属リチウムW5の負極活物質(非晶質炭素)への吸蔵方法について説明する。
【0084】
本例では、所定温度(例えば、室温)に管理された貯蔵室に所定期間(例えば、2週間〜4週間)、上記キャパシタ30の組立体を放置することで、非水電解液を電極群7に浸透させ、リチウムイオンを負極活物質に吸蔵させる。金属リチウムW5は、負極板3の銅箔W3に接合されているため、負極電位とリチウム電位との電位差により、所定期間放置することで、金属リチウムW5は溶解し、負極板3の負極活物質(非晶質炭素)に吸蔵される。これにより、負極板3の負極活物質合剤W4が塗工されていない未塗工部分の両面に貼り付けられた金属リチウムW5は溶解し、負極板3には銅箔剥き出し部分が残存配置されることになる。
【0085】
なお、本実施形態では、金属リチウムW5は、負極リード片3aが形成されている一方の側の端部の両面に連続して切れ目なく配置されている例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、金属リチウムW5は、間欠的に配置されていてもよい。また、負極リード片3aが形成されていない銅箔W3のもう一方の側の端部、もしくは両端部に配置されていてもよい。このような形態では、正極板の正極活物質合財W2が塗工されている部分と金属リチウムは捲回時に重ならないように配置することが好ましい。
【0086】
さらに、本実施形態では、正負極板の孔明き形成部に円形の貫通孔を例示したが、本発明はこれに制限されるものではない。すなわち、貫通孔の形状は、例えば、三角形,四角形等の多角形、星形、台形等の任意の形状をとることができる。また、正負極板の孔明き形成部の貫通孔の開口率に20%のものを例示したが、これについても本発明を制限するものではない。開口率としては、例えば、5%〜55%、好ましくは10%〜40%、より好ましくは、10%〜25%とする。
【0087】
円筒形容器8の形状については、前述の通り、円筒状に限らず、断面が楕円状、小判状、矩形状のものも使用可能である。円筒状とは、横断面形状が円形のほか、楕円状、小判状、矩形状のものも、均等物として含む。
【0088】
また、本実施形態では、理解が容易なように、例として種々の数値を挙げて説明したが、特許請求の範囲で定義された数値でない限り、本発明がこれらに制限されるものでないことは云うまでもない。さらに、本実施形態では、リチウムイオンキャパシタを作製するための部材について具体的に例示したが、これらについても、特許請求の範囲で言及のない限り、本発明を制限するものではない。従って、本願出願時点で公知の部材や材料を用いることができる。
【0089】
例えば、負極活物質には、天然黒鉛、人造黒鉛、MCMB(メゾフェーズカーボンマイクロビーズ)、MCF(メゾフェーズカーボンファイバ)、コークス、VGCF(気相成長炭素繊維)、難黒鉛化性炭素、ポリアセチレン系有機半導体、カーボンナノチューブ、これらの混合物、さらにこれらまたはこれらの混合物にホウ素、珪素、窒素などを導入したものを用いることができ、比表面積も例示したものに限られるものではない。また、正極活物質には、材料表面近傍に存在する電気二重層へのリチウムイオンおよび陰イオンの吸脱着を充放電に利用できるものであれば特に制限はなく、代表的な物質として活性炭が選択される。さらに、正負活物質の粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に本発明が制限されるものではない。
【0090】
また、負極活物質の結着剤には、エチレンアクリル酸系バインダ、ポリアクリル酸系バインダ、SBR系バインダ、NBR系バインダ、PVDF系バインダ、PVA系バインダおよびこれらの混合物等を用いるようにしてもよく、これらの水分散エマルジョンを用いることもできる。バインダに水分散エマルジョンを用いる場合は、好ましくはカルボキシメチルセルロースやPVA等の、高粘度の分散剤を添加する。
【0091】
正極活物質の結着剤には、エチレンアクリル酸系バインダ、ポリアクリル酸系バインダ、SBR系バインダ、NBR系バインダ、PVDF系バインダ、PVA系バインダ、PTFE系バインダおよびこれらの混合物等を用いるようにしてもよく、これらの水分散エマルジョンを用いることもできる。バインダに水分散のエマルジョンを用いる場合は、好ましくはカルボキシメチルセルロースやPVA等の、高粘度の分散剤を添加する。正極活物質のバインダが水分散バインダであると、キャパシタの特性上特に好ましい。
【0092】
さらにまた、導電助材には、アセチレンブラックやケッチェンブラック、微粉砕した黒鉛粉末等の導電性炭素粉末を用いることもできる。
【0093】
さらに、非水電解液には、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液を使用してもよく、リチウム塩や有機溶媒にも特に制限されるものではない。例えば、電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、LiB(C6H5)4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(C2F5SO2)2NLi、(CF3SO2)2NLi等やこれらの混合物を用いることができる。さらにまた、非水電解液の有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニルカーボネート、トリフルオロメチルプロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等又はこれら2種類以上の混合溶媒を用いるようにしてもよい。
【0094】
さらにまた、セパレータとしては、多孔質基材が用いられ、例えば、クラフト紙等のセルロース系の多孔質基材、ポリエチレン、ポリプロポレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド等の多孔質フィルム基材や、ガラス繊維からなる多孔質基材あるいはこれらを重ねて用いるようにしてもよい。
(実施例)
(実施例1)
上記実施の形態において、調整した活物質合剤のスラリを下記に示す貫通孔の面積の異なる3種の銅箔へ塗工し,負極を製作した。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示すように、貫通孔の各面積が8×10−7m2以下である場合,活物質合材は,銅箔へ均一に塗工できた。比較例1−1の銅箔を用いた場合,貫通孔に活物質合剤が埋まりきらず,孔抜けおよび凹凸が発生し均一に塗工できなかった。
【0097】
また、これらの負極を用いて上記実施の形態において、キャパシタ30の組立体を製作した。
【0098】
その組立体を40℃に管理された貯蔵室に放置した。その間に、金属リチウムは溶解し、負極板の負極活物質に吸収される。放置を開始してから15日および30日経過後にそれぞれ組立体を解体して得た負極活物質の単位重量あたりの容量を測定した。測定方法は、まず組立体を解体後、取り出した負極板を2.0×2.0cm2サイズに切り出し、評価用負極とした。評価用負極の対極としての金属リチウムを、密度0.4g/cm3、厚み50μmのセルロースシートをセパレータとして介し、評価用セルを組んだ。参照極として、金属リチウムを用いた。電解液としては、1.0M LiPF6/(EC/DMC/DEC)を用いた。電流値を負極の単位重量あたり56.2mA/gで、1.5V まで負極活物質に充電されたリチウムを放電した。ここでは、負極に流れた放電電流の積算値を負極活物質の重量で除した値を放電量とし、単位はmAh/gである。各部位の放電量の結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
表2から明らかなように、箔の貫通孔の各面積は8×10−7m2以下であれば、キャパシタとして問題なく使用できる。しかし、貫通孔が小さくなりすぎるとリチウムイオンが移動しづらくなり、予め負極にリチウムイオンを吸蔵させる時間を長く必要とする。そのため、箔の量産性、強度、さらにキャパシタの量産性など考慮に入れた設計が必要である。
(実施例2)及び(実施例3)
上記実施の形態において、下記に示す6種の各条件で、キャパシタ30の組立体を製作した。
【0101】
その組立体を40℃に管理された貯蔵室に放置した。その間に、金属リチウムは溶解し、負極板の負極活物質に吸収される。放置を開始してから30日経過後に組立体を解体して、金属リチウムの残存状況を確認した。溶け残った金属リチウムの重量を表3に示す。
【0102】
また、組立体を解体して得た負極活物質の単位重量あたりの容量を測定した。測定方法は、まず組立体を解体後、取り出した負極板の巻芯側から長手方向に、5mm、750mm、1500mm、2250mm、2995mmの5箇所において、2.0×2.0cm2サイズに切り出し、評価用負極とした。評価用負極の対極としての金属リチウムを、密度0.4g/cm3、厚み50μmのセルロースシートをセパレータとして介し、評価用セルを組んだ。参照極として、金属リチウムを用いた。電解液としては、1.0M LiPF6/(EC/DMC/DEC)を用いた。電流値を負極の単位重量あたり56.2mA/gで、1.5V まで負極活物質に充電されたリチウムを放電した。ここでは、負極に流れた放電電流の積算値を負極活物質の重量で除した値を放電量とし、単位はmAh/gである。各部位の放電量の結果を表4と図12に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
負極板の負極活物質にリチウムイオンを吸蔵させるための金属リチウムを、負極板下縁の活物質未塗工部分金属箔の両面に、リボン状に連続して配置した。金属リチウムは、長手方向の長さ=3000mm、幅方向の長さ=3mmのものを使用した。
【0106】
実施例2−1は、正極板と負極板の両方に貫通孔を形成した箔を用いた。
実施例2−2は、正極板のみに貫通孔を形成した箔を用いた。
実施例2−3は、負極板のみに貫通孔を形成した箔を用いた。
負極板の負極活物質にリチウムイオンを吸蔵させるための金属リチウムを、負極板下縁の活物質未塗工部分金属箔の片面に、リボン状に連続して配置した。金属リチウムは、長手方向の長さ=3000mm、幅方向の長さ=6mmのものを使用した。
【0107】
実施例3−1は、正極板と負極板の両方に貫通孔を形成した箔を用いた。
実施例3−2は、正極板のみに貫通孔を形成した箔を用いた。
実施例3−3は、負極板のみに貫通孔を形成した箔を用いた。
(比較例2)
負極板の負極活物質(本例では非晶質炭素)にリチウムイオンを吸蔵させるための金属リチウムを、薄板状で、2枚の銅箔で挟持した積層体とした。銅箔は、長手方向に沿う一方の側にタブが形成されたタブ形成部と、タブ形成部に隣接して配置され多数の貫通孔が形成された孔空き形成部とを有しており、金属リチウムは、2枚の銅箔の孔空き形成部に当接して挟持されている。なお、孔空き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率が20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。
【0108】
銅箔に形成された孔空き形成部の面積は金属リチウムの面積より大きく、金属リチウムは孔空き形成部の中央部に配置されている。金属リチウムを銅箔に形成された孔空き形成部で挟持し金属リチウムと銅箔を重ねてロールで圧接すると、金属リチウムは粘性を発揮し、銅箔、金属リチウム、銅箔の積層体とすることができる。積層体は、電極群内で内周部(軸芯1の近傍)と外周部の2箇所に配置した。すなわち、負極板3が挟まれたセパレータ4の2面間で負極板3の捲回延長線上に配置されるように、負極板3の捲回前および捲回後に挿入捲回されている。銅箔には長手方向に沿う一方の側にタブを形成し、タブの先端部は負極リード片3aと同様に負極集電リング6に接合した。その他は、上記実施の形態と同様にして、キャパシタ30の組立体とした。
【0109】
比較例2−1は、正極板と負極板の両方に貫通孔を形成した箔を用いた。
比較例2−2は、正極板のみに貫通孔を形成した箔を用いた。
比較例2−3は、負極板のみに貫通孔を形成した箔を用いた。
【0110】
その組立体を40℃に管理された貯蔵室に放置した。放置後30日を経過した時点で、組立体を解体して、金属リチウムの残存状況と、負極の単位重量あたりの容量を実施例2及び実施例3と同様に確認した。溶け残った金属リチウムの重量を表3に、放電量を表4に示す。
表3から明らかなように、本発明によれば、負極のリチウムイオン供給源である金属リチウムを負極板下縁の活物質未塗工部分金属箔に、リボン状に配置することにより、従来の電極群内で内周部と外周部に金属リチウムを配置するのに比べ、金属リチウムが溶解し負極板の活物質合剤へ吸蔵するのを促進することができる。さらに、表4が示すように、リチウムイオンを捲回方向に(負極板の長手方向に)均一に吸蔵させることができる。
【0111】
実施例2と実施例3とを比較すると明らかなように、金属リチウムは負極板の片面に配置しても効果があるが、両面に配置した方がより望ましい。
【0112】
さらに、貫通孔を形成した箔は、正極板と負極板の少なくとも一方に用いれば良いが、正極板より負極板に用いた方が優れている。さらに、正極板と負極板の両方に用いた方がより優れている。
【0113】
また、比較例の結果が示すように、電極群内で内周部と外周部に金属リチウムを配置する場合、正極板と負極板の両方に貫通孔を形成した箔を用いる必要がある。本発明の形態で、正極板と負極板のどちらか一方にのみ貫通孔を形成した箔を用いれば、箔に貫通孔を形成する工程を省くことができ、コストと生産性を大幅に向上できる。
また、電極捲回機に金属リチウムW5を排出するロールを組み込み、金属リチウムW5を配置する工程を捲回工程で自動化する作業を簡易化でき(作業時間を短縮でき)、生産性を大幅に向上できる。
【符号の説明】
【0114】
1…軸心、2…正極板、3…負極板、4…セパレータ、5…正極集電リング、6…負極集電リング、7…電極群、8…円筒形容器、9…負極リード板、10…正極リード板、11…樹脂製絶縁材、12…容器蓋、13…樹脂製ガスケット、21…塗工装置、26…切断装置、29…乾燥機、30…キャパシタ、W1…アルミニウム箔(第1の金属箔)、W3…銅箔(金属箔、第2の金属箔)、W5…金属リチウム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、捲回電極群を備えたリチウムイオンキャパシタおよびその製造方法に係り、特に、予め負極活物質にリチウムイオンを吸蔵させるための金属リチウムを備えたリチウムイオンキャパシタとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題がクローズアップされる中、太陽光、風力発電等によるクリーンエネルギの蓄電システムや、自動車、ハイブリッド電気自動車等の移動体用の主電源ないし補助電源として蓄電デバイスが着目されている。この蓄電デバイスとしては、従来、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等が知られており、とりわけ、近時、リチウムイオン電池の研究開発が盛んに行われている。
【0003】
また、最近では、リチウムイオン電池の利点と電気二重層キャパシタの利点とを組み合わせた大容量(例えば、500F以上)のリチウムイオンキャパシタないしハイブリッドキャパシタの研究開発も行われている(例えば、特許文献1、2参照)。リチウムイオンキャパシタは、一般に、正極活物質に活性炭、負極活物質にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材が用いられており、正負極を、セパレータを介して配置し、リチウム塩を含む非水電解液で浸潤した構成が採られている。
【0004】
リチウムイオンキャパシタは、予め負極にリチウムイオンが吸蔵ないしドープされていることにより、負極電位が通常の電気二重層キャパシタより、より低く保たれるため、使用電圧範囲を広くとることができ、また、正極充放電機構として、通常の電気二重層キャパシタで利用される陰イオンの吸着に加え、陽イオンの吸着も利用できるため、容量を原理的に倍取り出すことができる。また、リチウムイオン電池に比べ、容量は小さいものの、内部抵抗が小さく出力特性の点で優れるとともに、長寿命である、という利点がある。なお、本発明に関連する技術として、リチウムイオンを吸蔵ないしドープさせるための金属リチウムを電極群内に捲回配置したリチウムイオンキャパシタが開示されている(特許文献3参照)。
【0005】
また、セパレータを介して交互に積層された正極と負極とによって電極群が構成され、積層方向の最外部にはリチウム極が負極に対向するように配置された三極積層ユニットを用いたリチウムイオンキャパシタが開示されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−294539号公報
【特許文献2】特開2006−286841号公報
【特許文献3】特開2007−067105号公報
【特許文献4】特開2008−300667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金属リチウムを配置した電極群と非水電解液を円筒形容器に収容して円筒形容器を密封したリチウムイオンキャパシタを対象として、量産性に優れ、非水電解液の電極群への浸透性を高め、さらには、予め負極にリチウムイオンを吸蔵させることが容易なリチウムイオンキャパシタの製造方法を提供することを課題とする。また、上述したリチウムイオンキャパシタの製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、次に示すような構成が有効と考えられる。
【0009】
第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回した電極群と、非水電解液と、電極群および非水電解液を収容する容器とを備え、電極群における負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に、リボン状または紐状の金属リチウムが配置されるリチウムイオンキャパシタ。ただし、金属リチウムが溶解した後は、金属リチウム自体は残っていないが,その形跡は確認できる。ここで「上縁または下縁」とは、電極群の捲回軸方向を上下として表現したものである。この構成では、第1の金属箔と第2の金属箔の少なくともいずれか一方に多数の貫通孔を形成することを要する。多数の貫通孔は,前記貫通孔の各面積の平均値が8×10−7m2以下であり、前記貫通孔の開孔率が5%〜55%の範囲内にあることが好ましい。
【0010】
本発明において、貫通孔の開口率が単位面積あたり略均等であることが好ましい。貫通孔は円形の場合、直径が0.5mm以下に設定しても良い。貫通孔の開口率が大きすぎると正負極板を構成したときに強度が弱くなり、逆に小さくなりすぎるとリチウムイオンが移動しづらくなり内部抵抗の上昇を招き、予め負極にリチウムイオンを吸蔵させる時間を長く必要とするので、貫通孔の開口率は10%〜40%の範囲にあることが好ましい。さらに、10〜25%の範囲にあればより好ましい。また、容量低下を長時間起こらないようにするためには、正負極板の両面に活物質合剤が塗工されているとともに、貫通孔に活物質が充填されていることが望ましい。
【0011】
なお、金属箔が帯状であれば、電極群を捲回して構成する際に望ましい形状となる。
【0012】
また、電極群を収容する容器が円筒形であれば、捲回された電極群との形状の近似が見られ、望ましい形状と考えられる。
【0013】
負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔に配置されている金属リチウムは、連続して切れ目なく配置されていてもよいし、間欠的に配置されていてもよい。金属リチウムの溶解後は、いずれもスペースとして存在する。
【0014】
金属リチウムが溶解してスペースが形成される場合、金属リチウムが配置されていた部分を含み、活物質未塗工部分の幅方向の長さは、2mm以上であることが好ましい。
【0015】
正極板と負極板とは、それぞれの上縁および下縁の位置が揃わないように捲回されていることが好ましく、金属リチウムは、正極板が対向しない位置に配置されていることが好ましい。
【0016】
さらに、金属リチウムが負極板の負極活物質に吸蔵されることで、金属リチウムが配置された活物質未塗工部分金属箔が露出することが好ましい。
【0017】
一方、上述したリチウムイオンキャパシタの製造方法は、次の構成が有効と考えられる。
【0018】
第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回し電極群を構成するにあたり、捲回開始前に、負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に金属リチウムを貼り付ける工程を有するリチウムイオンキャパシタの製造方法。金属リチウムはこのように捲回開始前に貼り付けるほか、捲回時に貼り付ける工程であってもよい。
【0019】
上述したいずれの工程においても、金属箔が帯状であれば、電極群を捲回する際に好ましい。
【0020】
電極群を構成後に、容器に収容してリチウムイオンキャパシタを形成するが、ここでは容器の形状を特に問わない。しかし、容器が円筒状であれば、捲回された電極群との形状の近似が見られ、望ましい形状を構成できる。
【0021】
なお、負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の両面に金属リチウムを貼り付ける工程においては、金属リチウムは、連続して切れ目なく配置されていてもよいし、間欠的に配置されていてもよい。その際、活物質未塗工部分の幅方向の長さを、2mm以上に設定することが好ましい。
【0022】
また、上述したリチウムイオンキャパシタの製造方法に関して、電極群と非水電解液とを円筒形容器に収容して円筒形容器を密封し、密封した組立体を、金属リチウムが溶解して負極板の負極活物質に吸蔵されるように所定期間放置する。
【0023】
この放置する工程の全体または一部期間において、組立体を、金属リチウムを配置した側が上部になるようにして放置することが好ましい。
【0024】
さらに、この放置する工程の全体または一部期間において、金属リチウムを溶解させて、負極板の負極活物質に吸蔵させることが望ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、金属リチウムを負極の上縁および/または下縁の活物質未塗工部分の金属箔に配置させるため、金属リチウムが溶解して負極板の活物質合剤を構成する負極活物質に吸蔵ないしドープされるリチウムイオンのドーピング量を電極群の捲回方向に均一化することができる。
【0026】
さらに、電極群の捲回方向の一部に金属リチウムを配置させる場合には、第1の金属箔と第2の金属箔の両方に多数の貫通孔を形成することを要するが、本発明によれば、第1の金属箔と第2の金属箔の少なくともいずれか一方に貫通孔を形成すれば良く、工程を省くことができる。また、第1の金属箔と第2の金属箔の少なくともいずれか一方に貫通孔を形成することにより、金属リチウムを負極の少なくとも片面に配置すれば良いため、両面に配置しなければならない場合と比較し、量産性に優れる。
【0027】
また、金属リチウムは、捲回方向に負極板と重なっていないので、金属リチウムの溶解後に生じる捲き緩みを防ぐという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明が適用可能な実施形態のリチウムイオンキャパシタの断面図の例である。
【図2】(A)は本発明が適用可能な実施形態のリチウムイオンキャパシタの極板の捲回前の平面図であり、(B)はその極板を構成する集電体の平面図である。
【図3】極板のリード片形成部近傍を模式的に示す拡大断面図である。
【図4】本発明が適用可能な実施形態のリチウムイオンキャパシタの金属リチウムの貼り付け位置を示した負極板の捲回前の平面図である。
【図5】電極群を捲回する前の状態を模式的に示す説明図である。
【図6】(A)は塗工機内で極板にスラリが塗工される状態を模式的に示す平面図であり、(B)は塗工機の概略を示す構成図である。
【図7】本発明が適用可能な実施形態のリチウムイオンキャパシタの電極群の断面図の例である。
【図8】極板形成装置を模式的に示す構成図である。
【図9】切断装置でアルミニウム箔が切断される切断位置を示す平面図である。
【図10】金属リチウム貼付装置を模式的に示す構成図である。
【図11】捲回装置の中央部を模式的に示す構成図である。
【図12】各条件の負極リチウム放電量を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0030】
<全体構成>
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオンキャパシタ30(以下、キャパシタ30と略称する。)は、ニッケルメッキが施されたスチール製有底円筒形容器(缶)8を有している。円筒形容器8内には、中空円筒状で縦方向に複数本(本例では3本)のスリットが形成されたポリプロピレン製軸芯1に帯状の正極板(W1、W2)および負極板(W3、W4)がセパレータ4を介して捲回された電極群7が収容されている。なお、本例では、円筒形容器8の外径は40mm、内径は39mmである。
【0031】
本実施形態においては、容器8として円筒形容器を採用しているが、その断面が楕円形や略長方形となるように円筒形でなくとも良いが、容器8が円筒形であれば、セパレータを介して捲回された正極板及び負極板の形状に近似し、望ましい形状と言える。
【0032】
また、本実施形態においては、正極板及び負極板を帯状としているが、帯状ではない(縦横比が1:1の)正極板または負極板を組み合わせて、あるいは帯状であっても複数枚を組み合わせて、軸心に捲回できれば、それでも良い。ただし帯状の正極板及び負極板を採用することの方が望ましい。
【0033】
<正極>
図2(A)、(B)に示すように、正極板2は、例えば、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)W1の両面に、正極活物質として活性炭を含む正極活物質合剤W2が塗工されている(図1も参照)。アルミニウム箔W1は、長手方向に沿う一側が櫛状に切り欠かれており、この切り欠き残部からなる正極リード片2aと、正極リード片2aに隣接して多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とで構成されている。また、孔明き形成部は、長手方向に沿ってリード片形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している。この孔明き形成部に該孔明き形成部の幅方向の長さに満たない長さで上述した正極活物質合剤W2が塗工されている。正極活物質合財W2が塗工されていない部分の幅方向の長さは0になるのが好ましいが、加工上、0には成り得ないため、例えば0〜2mm形成されている。
【0034】
本例では、正極板2は次の寸法に設定されている:長手方向の長さ=2800mm、幅方向の長さa=90mm、正極リード片を除く幅方向の長さb=60mm、未塗布部の幅方向の長さc=30mm、正極リード片を除く幅方向の長さのうち正極活物質合財W2が塗工されていない部分の幅方向の長さβ=0.5mm、正極活物質合剤W2の片面塗工厚=40μm(両面で80μm)、正極活物質合剤W2のかさ密度=0.5g/cm3。孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率が20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。さらに、隣り合う正極リード片2aの間隔dは50mm、正極リード片2aの幅fは5mmに設定されている。なお、最終的な正極活物質合剤の塗工幅はe=b−β、正極リード片2aの先端からの正極活物質合剤が未塗工の幅=c+βである。
【0035】
図2(A)および図3に示すように、正極活物質合剤W2が塗工された正極リード片2a側の端部の断面は、スラリ塗工幅eから正極活物質合剤W2が乾燥する前のスラリ状態で最も外側まで流動することで、スラリ塗工幅eの塗工表面に対して鈍角状に(角度δ参照)傾斜している。
【0036】
<負極>
一方、負極板3も正極板2とほぼ同じ構造を有している。すなわち、負極板3は、例えば、厚さ16μmの銅箔(負極集電体)W3の両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質合剤W4が塗工されている。銅箔W3は、長手方向に沿う一側が櫛状に切り欠かれており、この切り欠き残部からなる負極リード片3aと、負極リード片3aに隣接して配置され多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とで構成されている。また、孔明き形成部は、長手方向に沿ってリード片形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している。負極活物質合財W4が塗工されていない部分の幅方向の長さは、正極板と異なり、金属リチウムを貼り付けるため2mm以上、好ましくは3〜10mm形成されている。さらに好ましくは、4〜6mm形成されている。
【0037】
本例では、負極板3は次の寸法に設定されている:長手方向の長さ=3000mm、幅方向の長さa=97mm、負極リード片を除く幅方向の長さb=67mm、未塗布部の幅方向の長さc=30mm、負極リード片を除く幅方向の長さのうち負極活物質合財W4が塗工されていない部分の幅方向の長さβ=5.5mm、負極活物質合剤W4の片面塗工厚=20μm(両面で40μm)、負極活物質合剤W4のかさ密度=1.0g/cm3。孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率が20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。さらに、隣り合う負極リード片3aの間隔dは50mm、負極リード片3aの幅fは5mmに設定されている。なお、最終的な負極活物質合剤の塗工幅はe=b−β、負極リード片3aの先端からの負極活物質合剤が未塗工の幅=c+βである。
【0038】
また、正極板2と同様に、負極活物質合剤W4が塗工された負極リード片3a側の端部の断面は、スラリ塗工幅eから負極活物質合剤W4が乾燥する前のスラリ状態で最も外側まで流動することで、スラリ塗工幅eの塗工表面に対して鈍角状に傾斜している。
【0039】
<箔の貫通孔>
正極板2のアルミニウム箔W1と負極板3の銅箔W3の両方に貫通孔が形成されている例を示したが、この貫通孔は金属リチウムが溶解したリチウムイオンが負極板の活物質合剤への吸蔵される際に通るためのものであるため、少なくとも一方の箔に形成されていれば良い。ただし、正極よりも負極に貫通孔があれば、リチウムイオンの移動距離は小さくなり、負極板の活物質合剤への吸蔵を促進することができ、好ましい。さらに正負極両方に貫通孔があれば、より好ましい。
しかし、箔に貫通孔を形成する工程が省かれるため、箔のどちらか一方に貫通孔がある方が、量産性に優れている。
【0040】
また、本実施形態では、貫通孔の各面積の平均値が8×10−7m2以下の3.1×10−8m2で略均等に設定され、貫通孔の開口率が20%に設定されているので、量産工程において金属箔への活物質合剤への塗工が容易で、かつ、キャパシタ全体の内部抵抗を小さくすることができる。換言すれば、貫通孔の各面積の平均値が8×10−7m2を超えるとスラリの均一塗工(活物質合材の集電体への均一塗工)が難しくなり(特に、貫通孔への活物質合剤の充填および凹凸の発生)、また、電極を構成したときに正負極板の強度の弱化を招く。なお、貫通孔の面積が小さい場合には、リチウムイオンの移動距離を短くし内部抵抗の増加を避けるためにアルミニウム箔W1および銅箔W3にリチウムイオンが通過可能なように単位面積あたりの貫通孔を多く形成することが望ましい。
【0041】
<金属リチウム>
図4に示すように、金属リチウムW5は、負極板3の負極活物質合剤W4が塗工されていない部分に配置されている。すなわち、負極リード片3aが形成される銅箔W3の一方の側の端部にリボン状に連続して切れ目なく配置されている。
【0042】
図4においては、金属リチウムW5をリボン状に連続して切れ目ない形状としているが、断続的に、負極板3の負極活物質合剤W4が塗工されていない部分に配置しても良い。ただしその効果を比較すると、リボン状に連続して切れ目ない形状である方が優れている。
【0043】
なお、金属リチウムW5は、負極板3の両面に配置しても、片面に配置しても良い。ただしその効果を比較すると、両面に配置した方が、金属リチウムの表面積及び銅箔との接触面積が大きくなり、金属リチウムが溶解して負極板の活物質合剤へ吸蔵されるのを促進することができ、優れている。また、両面に配置した方が、金属リチウムを貼り付けるための負極活物質合財W4が塗工されていない部分の幅方向の長さを小さくできるため好ましい。
【0044】
また、金属リチウムW5の総充填量は、負極板3の活物質合剤を構成する負極活物質にリチウムイオンを十分吸蔵可能な量に設定されるが、このような総充填量は負極活物質の材質、量を考慮して論理計算を行うとともに、実際にリチウムイオンの吸蔵を行って十分に吸蔵されたかを確認することで設定することができる。これにより、金属リチウムW5を量産する場合の金属リチウムW5の面積および厚さの設定が可能となる。さらに、金属リチウムW5の厚みは、(正極活物質合剤W2の片面塗工厚+負極活物質合剤W4の片面塗工厚)以下になるように設定する(図7参照)。
【0045】
<電極群>
図5に示すように、正極板2と負極板3とは、両極板が直接接触しないように、2枚の紙セパレータ4(ここでは厚さ50μmのセパレータ)を介して、軸芯1を中心として断面渦巻き状に捲回され、電極群7が構成されている。
また、図7に示すように、上述した正極リード片2aと負極リード片3aとは、それぞれ電極群7の互いに反対側に配置されており、セパレータ4の端から所定長さ(例えば、4mm)はみ出している。電極群7は、正極板2、負極板3、セパレータ4等の長さを調整することで、所定の内直径(例えば、9mm)および所定の外直径(例えば、38±0.1mm)に設定されている。なお、電極群7の捲回終端部は、巻き解けを防止するために、粘着テープを貼り付けることで固定されている。
【0046】
<キャパシタ構造>
図1に示すキャパシタ30の構造について、以下の通り説明する。
電極群7の下側には、電極群7の下端側端面に対向するように、負極板3からの電位を集電するための銅製の負極集電リング6が配置されている。負極集電リング6の内周面には軸芯1の下端部外周面が嵌着されている。負極集電リング6の外周縁には、負極板3から導出された負極リード片3aの先端部が超音波溶接で接合されている。負極集電リング6の下部には電気的導通のための銅製の負極リード板9が配置されており、負極リード板9は負極外部端子を兼ねる円筒形容器8の内底部に抵抗溶接で接合されている。本実施形態においては、負極集電リング6と負極リード板9とを別体として記載しているが、負極集電リング6と負極リード板9とが一体に構成されていて、負極集電リング6のみであっても良い。負極集電リング6と負極リード板9とが別体である場合、負極集電リング6および負極リード板9はエポキシ樹脂等の樹脂製絶縁材11で覆われ、樹脂製絶縁材11は負極集電リング6の上部から円筒形容器8の内底面まで配されている構成を採用することができる。この場合、円筒形容器8の底部は樹脂製絶縁材11により詰め物がなされた状態となっている。もちろん、樹脂性絶縁材11が配されていない構成であってもかまわない。
【0047】
一方、電極群7の上側には、電極群7の上端面と対向するように、軸芯1のほぼ延長線上に正極板2からの電位を集電するためのアルミニウム製の正極集電リング5が配置されている。正極集電リング5は軸芯1の上端部に嵌着されている。正極集電リング5の周囲から一体に張り出している鍔部周縁には、正極板2から導出された正極リード片2aの先端部が超音波溶接で接合されている。
【0048】
正極集電リング5の上方には、正極外部端子を兼ねる容器蓋12が配置されている。容器蓋12は、下側に配置された蓋ケース12aと、上側に配置された蓋キャップ12bとで構成されており、これらが積層されて蓋ケース12aの周縁を蓋キャップ12bにかしめることで組み立てられている。なお、蓋ケース12aには、内圧上昇により開裂する開裂溝が形成されている。正極集電リング5の上面には、リボン状のアルミニウム箔を積層した2本の正極リード板10のうち1本の一方の側が接合されている。正極リード板10のもう1本の一方の側は、容器蓋12を構成する蓋ケース12aの外底面に接合されている。また、2本の正極リード板10の他端同士も接合されている。
【0049】
容器蓋12は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂製ガスケット13を介して円筒形容器8の上部にかしめられている。このため、キャパシタ30の内部は密封されている。また、円筒形容器8内には、電極群7全体を浸潤可能な量の非水電解液(不図示)が、前記密封前に注液されている。非水電解液には、例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比30:50:20の割合で混合した溶媒中にリチウム塩として6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解したものが用いることができる。なお、本例のキャパシタ30の定格容量は700Fである。
【0050】
<活物質合剤の調製>
まず、正極活物質合剤および負極活物質合剤を調製する。正極活物質合剤は、例えば、正極活物質として比表面積が1000m2/g以上の活性炭と、結着剤としてアクリル系バインダと、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)と、導電助材としてアセチレンブラック等の導電性炭素粉末とを重量(質量)比で85:7:3:5となるように混合し、これに水(分散溶媒)を添加、混練して正極スラリを作製する。
【0051】
一方、負極活物質合剤は、例えば、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出可能な非晶質炭素と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、導電助材としてアセチレンブラック等の導電性炭素材とを重量(質量)比90:5:5となるように混合し、これに分散溶媒のN−メチルピロリドン(NMP)を添加、混練して負極スラリを作製する。
【0052】
<塗工>
次に、調整した活物質合剤のスラリの集電体への塗工について説明する。以下、説明を簡単にするために、アルミニウム箔W1へのスラリの塗工について例示するが、銅箔W3についても同じである。図6(B)に示すように、アルミニウム箔Wへの塗工は、それぞれ塗工口を有する4つの塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bと、攪拌機(不図示)を有し各塗工ヘッドにスラリを供給するスラリ貯留槽21C、21Dと、を備えた塗工装置21により行われる。上述したように作製された正極スラリは、スラリ貯留槽21C、21Dに一時的に貯留される。
【0053】
図6(A)に示すように、本例の塗工装置21は、塗工ヘッド21Aと塗工ヘッド21Bとで正極板2の幅方向で2倍幅分のスラリを塗工し、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド22Bとで正極板2の幅方向で2倍幅分のスラリを塗工することで、合計4倍幅分の正極板2の塗工を同時に行うものである。
【0054】
アルミニウム箔供給部から供給されたアルミニウム箔Wは、図示しない駆動ローラおよび従動ローラを介して塗工装置21内を略垂直方向(図6の矢印V方向)に搬送される(図8も参照)。アルミニウム箔Wは搬送方向と交差する幅方向で長さがAに設定されている。塗工ヘッド21Aと塗工ヘッド21Bとは、搬送されるアルミニウム箔Wに対し、一面側(表面側)、他面側(裏面側)にそれぞれ配設されており、塗工ヘッド21Aの塗工口と塗工ヘッド21Bの塗工口とは、垂直方向で距離D(例えば、50mm)ずれた位置に配置されている(図6(B)参照)。同様に、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド22Bとは、搬送されるアルミニウム箔Wの一面側、他面側にそれぞれ配設されており、塗工ヘッド22Aの塗工口と塗工ヘッド21Bの塗工口とは、垂直方向で距離D(例えば、50mm)ずれた位置に配置されている。このため、本例では、図6(A)に示すように、アルミニウム箔Wの搬送方向上流側から下流側に向けて、塗工ヘッド22B、塗工ヘッド22A、塗工ヘッド21B、塗工ヘッド21Aの順で配設されている。なお、塗工ヘッド22B、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド21B、塗工ヘッド21Aとが垂直方向でずれて配設されているのは、アルミニウム箔Wの幅に対し各塗工ヘッドを並べた合計幅が大きいためである。
【0055】
各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bの塗工口の搬送されるアルミニウム箔Wの幅方向(搬送方向と交差する方向)に対する長さは、アルミニウム箔W1のスラリ塗工幅eの2倍の2eに設定されており、塗工ヘッド21A、21Bの塗工口は、搬送されるアルミニウム箔Wの一方の側端(図6(A)に示す右端)を基準として順に、幅方向の一端(右端)がc+(α+β)の位置、幅方向の他端(左端)が{c+(α+β)+2e}の位置に配置されている。一方、塗工ヘッド22A、22Bの塗工口は、搬送されるアルミニウム箔Wの他側端(図6(A)に示す左端)を基準として順に、幅方向の一端(左端)がc+(α+β)の位置、幅方向の他端(右端)が{c+(α+β)+2e}の位置に配置されている。塗工ヘッド21A、21Bの塗工口の左端と塗工ヘッド22A、2Bの塗工口の右端とには、c+2(α+β)の間隔が設定されている。
【0056】
塗工装置21では、スラリ貯留槽21C、21Dに所定エア圧を加えることによりスラリ貯留槽21C、21D内に貯留されたスラリが各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bに供給され、各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bに所定のエア圧を加えることにより、各塗工ヘッドの塗工口から、搬送されるアルミニウム箔Wにスラリを表裏の両面とも略均等な厚さで塗工することができる。
【0057】
<乾燥>
図8に示すように、塗工装置21の下流側には乾燥機29が配置されている。アルミニウム箔Wに塗工されたスラリ(分散溶媒を含む)は、塗工装置21を経て乾燥機29に至るまで、略垂直方向に搬送され、塗工装置21によるスラリ塗工幅2eから、スラリが乾燥する前に、流動することによってアルミニウム箔Wへのスラリ塗工幅が広がる(図9も参照)。
【0058】
乾燥機29は、垂直方向に搬送されるアルミニウム箔Wに対し水平方向両側に複数のヒータなどの熱源が所定間隔で配置されており、アルミニウム箔Wに塗工されたスラリから分散溶媒を蒸発させるものである。スラリが塗工されたアルミニウム箔Wは、乾燥機29内を略垂直方向に搬送され、ヒータなどの熱源による加熱よりスラリを構成する分散溶媒が蒸発し、アルミニウム箔Wには正極活物質合剤が2(e+α)の幅でそれぞれ塗工され(図9参照)、乾燥後に金属や各種プラスチックなどでできたパイプ状のコアを芯とした巻き取り装置にてロール状に巻き取る。
【0059】
<リード片形成>
乾燥機29を出てロール状に巻き取られた正極板をリード片形成装置に移して引出し、スラリが塗工されていないアルミニウム箔W部分cを切り欠くことにより所定間隔で正極リード片2aを形成する。上述した切り欠きは、金属ローラに所定形状の刃物を埋め込んだ専用ローラ対23を配置し、専用ローラ対23を構成する2本のローラはともに駆動ローラであり、正極板をこのローラ対に通過させることにより、スラリを塗工していないアルミニウム箔W部分に所定間隔で複数の正極リード片2aを形成する。この工程は専用ローラ対23に代え、所定形状に刃物を埋め込んだ打ち抜き体を装着したプレス装置を、正極板の間欠送りと連動して作動させる工程でもよい。
【0060】
<プレス>
専用ローラ対23の下流側には、正極活物質合剤が塗工されたアルミニウム箔Wの両面を所定の線圧でプレスするヒートローラ対24が配置されている。ヒートローラ対24を構成する2本のローラはともに駆動ローラであり、ローラ内には、ニクロム線やヒートランプ等の熱源が内蔵されている。正極活物質合剤が塗工されたアルミニウム箔は、ヒートローラ対24間を搬送され、上述した厚さおよびかさ密度に設定される。なお、以上の乾燥、プレス工程を経ることにより、正極スラリに対し正極活物質合剤の比重は1.25、固形分は30%、負極スラリに対し負極活物質合剤の比重は1.30、固形分は50%となる。
【0061】
<分離>
ヒートローラ対24の下流側には、ループ機構25および切断装置26が配設されている。ループ機構25は、正極活物質合剤が塗工されたアルミニウム箔Wの切断装置26への搬送を調整するものであり、切断装置26は、正極活物質合剤が塗工されたアルミニウム箔Wを切断することにより幅方向で4枚分の正極板2に分離するものである。
【0062】
ループ機構25は、アルミニウム箔Wをカイト状にループ搬送するための5つのローラで構成されている。5つのローラのうち1つのローラは水平方向に移動可能であり、常時矢印H方向にバネで付勢されている。このため、切断装置26によるアルミニウム箔Wの切断の際に、切断装置26内でアルミニウム箔Wの搬送が停止されても、1つのローラがバネで付勢され水平方向に移動することにより、搬送されるアルミニウム箔Wの張力を一定に保つことができる。
【0063】
切断装置26内では、切断の際、アルミニウム箔Wの搬送が停止され(上述した駆動ローラの回転を停止し)、台座をアルミニウム箔W側に進出させ、カッタを、アルミニウム箔Wを介して台座方向に所定スピードで進出させることで、アルミニウム箔Wを幅方向で4枚分の正極板2に分離する。
【0064】
図9は、切断装置26によるアルミニウム箔Wの切断位置を示したものである。ここで、確認のため、図6と図9とを比較することで、スラリ塗工幅と活物質塗工幅との相違について簡単に説明する。上述したように、スラリ塗工幅はそれぞれ2e、両端の未塗工幅はc+(α+β)、2つのスラリ塗工幅間の未塗工幅は{c+2(α+β)}である(図6参照)。一方、乾燥機29に搬送されるまでにスラリ塗工幅は2α分広がるため、活物質塗工幅はそれぞれ2(e+α)、両端の未塗工幅はc+β、2つの活物質塗工幅間の未塗工幅はc+2βとなる(図9参照)。
【0065】
アルミニウム箔Wの両側(左端側および右端側)には、上述した正極リード片2aが形成され、正極活物質合剤が塗工された合剤塗工幅間の中央にも正極リード片2aが形成される。また、正極活物質合剤が塗工された合剤塗工幅2(e+α)の中央も切断される。従って、このような塗工方式および切断方式を採用することにより、アルミニウム箔Wの幅を正極リード片2aの長さcの分を節約することができるとともに、正極板4倍幅分の正極リード片2aを一度に形成することができる。
【0066】
図8に示すように、切断装置26では、正極活物質合剤が塗工されたアルミニウム箔Wを所定距離ずつバッチ処理により幅方向に4つに分離する。この間、ループ機構25の上述した1つのローラは図6の矢印H方向に移動しアルミニウム箔Wのループ機構25内での張力が保たれている。切断装置26での切断(カッタによる正極板2の幅方向での4枚分の分離)が終了すると、台座およびカッタをアルミニウム箔Wから退避する方向へ移動させ、駆動ローラを回転させる。これにより、ループ機構25の上述した1つのローラは図8の矢印H方向とは反対側に移動しアルミニウム箔Wのループ機構25内での張力を保つとともに、新たに(連続して)切断対象となるアルミニウム箔Wの部分を切断装置26に搬送する。
【0067】
<巻取>
切断装置26の下流側には、幅方向で4枚分の正極板2に分離されたフープ状の正極板2を巻き取る正極板巻取リールが所定間隔隔てて配設されている。正極板巻取リールは上述した駆動ローラの回転と同期して回転を開始し、分離された4倍幅分の正極板2はロール状にそれぞれ正極板巻取リールを中心として巻き取られる。これにより、ロール状に巻き取られた(フープ状の)正極板2を得ることができる。
【0068】
なお、ロール状に巻き取られた負極板3も同様の方法で得ることができる。
【0069】
<金属リチウム貼り付け>
図4に示すように、負極板3の負極活物質合財W4が塗工されていない部分の両面に、金属リチウムW5を貼り付ける。金属リチウムW5の貼り付けは貼付装置で行われる。図10は、本例で使用される貼付装置を模式的に示したものである。まずロール状に巻き取られた負極板3を供給する負極板供給部31、その上部および下部にはそれぞれロール状の金属リチウムを供給するリチウム供給部32が配置されている。リチウム貼り付け後の負極板3を巻き取る負極板巻取リール33との間に、専用ローラ対34を配置し、専用ローラ対34を構成する2本のローラはともに駆動ローラであり、負極板および金属リチウムをこのローラ対に通過させることにより、負極板3に金属リチウムW5を貼り付ける。また、この工程を巻取工程に組み込んでも良い。
【0070】
さらに、この工程を行わずに、後工程の捲回時に負極板3と同時に金属リチウムを捲回しても良い。
【0071】
なお、金属リチウムW5はロール状に保たれているため、リボン状または紐状になって貼り付けられている。しかし、その形状に限定されることなく、断続的に配置させるため、金属リチウムを切断して貼り付け、負極板上に配置することも可能である。
【0072】
<捲回>
図11に示すように、電極群7は、軸芯1を捲回中心として、2枚のセパレータ4を介して、正極板2および負極板3が直接接触しないように捲回されることで構成される。以下、便宜上、電極群7の最内周に配置される(軸芯1の周面に当接する)セパレータを4A、電極群7の最外周に配置されるセパレータを4Bとして説明する。
【0073】
電極群7の形成(捲回)は捲回装置で行われる。図11は、本例で使用される捲回装置27の要部(中央部)を模式的に示したものである。捲回装置27は、軸芯1を装着、回転可能な軸芯回転部(不図示)を有している。軸芯回転部の上部にはセパレータ4Bと正極板供給部が配置されている。捲回軸上部右から、時計回りの方向に、正極板2を供給する正極板供給部、セパレータ4Aを供給する第1のセパレータ供給部、負極板3を供給する負極板供給部、セパレータ4Bを供給する第2のセパレータ供給部、の順で配置されており、各供給部はフープ状の供給物を所定長さで切断するカッタ(不図示)を有するとともに、搬送ローラ、搬送ガイド(不図示)を有している。
【0074】
オペレータが操作ボタンを押下すると、図示しないロボットアームにより軸芯1が軸芯回転部に装着され、第1および第2のセパレータ供給部からそれぞれセパレータ4A、4Bの供給が開始され粘着テープで軸心に固定する。固定後、軸芯1の回転および第1および第2のセパレータ供給部からそれぞれセパレータ4A、4Bの供給が再開される。これにより、セパレータ4A、4Bは、少なくとも1周、好ましくは2ないし3周、軸芯1の周りに捲回される。
【0075】
次に、負極板供給部から負極板3の供給が開始され1周以上捲回する。続いて、正極板供給部から正極板2の供給が開始される。上述したように、正極板2は負極板3より長手方向の長さが短いため、負極板3より正極板2の捲回が1周以上早く終了する。
【0076】
正極板供給部は、図示しないカッタで正極板2が所定の長さとなるように切断し、正極板2の供給を停止する。負極板2はなおも負極供給部から供給されるが、所定長さ供給すると、正極板2と同様に、カッタで切断され、負極板2の供給が停止される。
【0077】
第1および第2のセパレータ供給部はなおもセパレータ4A、4Bの供給を続行し、少なくとも1周、好ましくは2ないし3周捲回可能な長さに至ると、カッタでセパレータ4A、4Bを切断し、セパレータ4A、4Bの供給を停止する。従って、セパレータ4A、4Bは捲回途中で切断されることはない。軸芯回転部はなおも軸芯1を回転させ、セパレータ4A、4Bが電極群7の外周を構成するまで回転を継続して、軸芯1の回転を停止後、重ねて切断し終端位置を合わせる。次に、電極群7の外周に捲回されたセパレータ4A、4Bの巻き解けを防止するために、電極群7の長手方向に沿って粘着テープが貼り付けられる。粘着テープの貼付は、図示を省略したテープ貼付部により行われる。次いで、電極群7(軸芯1)は、図示しないロボットアームにより軸芯回転部から脱着され、所定位置に配置され軸芯1を支持するための支持部を有する載置台上に載置され、1つの電極群7の捲回が終了する。
【0078】
<組立>
図1に示すように、正極リード片2aを変形させ、その全てを、電極群7の軸芯1のほぼ延長線上にある正極集電リング5の周面付近に集合させ、接触させた後、正極リード片2aの先端部と周面とを超音波溶接して正極リード片2aを周面に接合する。一方、負極集電リング6と負極リード片3aとの接続操作も、正極集電リング5と正極リード片2aとの接合操作と同様に接合する。また、積層体20A、20Bのタブ20aの先端部も同様に負極集電リング6に接合する。なお、タブ20aおよび負極リード片3aの負極集電リング6への接合は同時に行われる。
【0079】
その後、正極集電リング5の周面全周に絶縁被覆を施す。すなわち、粘着テープを正極集電リング5の周面から電極群7外周面に亘って一重以上巻いて絶縁被覆とし、電極群7を円筒形容器8内に挿入する。絶縁被覆には、例えば、基材がポリイミドで、その片面にアクリレート系粘着剤を塗布した粘着テープを用いることができる。
【0080】
負極集電リング6には予め電気的導通のための負極リード板9が溶接されており、または負極集電リング6と負極リード板9とが一体に構成されており、円筒形容器8内に電極群7を挿入後、軸芯1の内周を利用して円筒形容器8の内底部と負極リード板9とを抵抗溶接により接合する。次いで、軸芯1の内周を利用して所定量のエポキシ樹脂を所定量注入することが好ましい。この場合、上述したように、軸芯1には縦方向に複数本のスリットが形成されているため、エポキシ樹脂は、これらのスリットを介して円筒形容器8の内底面から負極集電リング6の上部まで進入し、負極リード板9および負極集電リング6はエポキシ樹脂で埋没するように覆われる。所定時間経過すると、注入されたエポキシ樹脂は固化して樹脂絶縁材11が形成される。もちろんエポキシ樹脂の注入は、必須ではなく、エポキシ樹脂が充填されない場合であっても良い。
【0081】
一方、正極集電リング5には、正極リード板10を溶接しておき、正極リード板10の他端を、円筒形容器8を封口するための容器蓋12の下面(蓋ケース12aの外底面)に接合する。上述したように、容器蓋12は、蓋ケース12aと蓋キャップ12bとで構成されており、これらが積層されて蓋ケース12aの周縁をかしめることによって予め組立てられている。なお、蓋ケース12aには、何らかの異常でリチウムイオンキャパシタの内圧が上昇したときに、安全のために所定の内圧に達したときに開裂する開裂溝が形成されている。開裂溝の開裂により、リチウムイオンキャパシタの内圧が開放される。
【0082】
次に、軸芯1の内周を利用して非水電解液を所定量円筒形容器8内に注入する。このような注液は安全性を確保するため低温環境下がよい。上述したように、軸芯1には複数本のスリットが形成されているため、これらのスリットを介して電極群7は非水電解液に浸潤される。その後、正極リード板10を折りたたむようにして容器蓋12で円筒形容器8に蓋をし、ガスケット13を介してかしめて密封することにより、キャパシタ30の組立体を作製する。
【0083】
<負極活物質へのリチウムの吸蔵>
次に、本実施形態のキャパシタ30の製造において、金属リチウムW5の負極活物質(非晶質炭素)への吸蔵方法について説明する。
【0084】
本例では、所定温度(例えば、室温)に管理された貯蔵室に所定期間(例えば、2週間〜4週間)、上記キャパシタ30の組立体を放置することで、非水電解液を電極群7に浸透させ、リチウムイオンを負極活物質に吸蔵させる。金属リチウムW5は、負極板3の銅箔W3に接合されているため、負極電位とリチウム電位との電位差により、所定期間放置することで、金属リチウムW5は溶解し、負極板3の負極活物質(非晶質炭素)に吸蔵される。これにより、負極板3の負極活物質合剤W4が塗工されていない未塗工部分の両面に貼り付けられた金属リチウムW5は溶解し、負極板3には銅箔剥き出し部分が残存配置されることになる。
【0085】
なお、本実施形態では、金属リチウムW5は、負極リード片3aが形成されている一方の側の端部の両面に連続して切れ目なく配置されている例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、金属リチウムW5は、間欠的に配置されていてもよい。また、負極リード片3aが形成されていない銅箔W3のもう一方の側の端部、もしくは両端部に配置されていてもよい。このような形態では、正極板の正極活物質合財W2が塗工されている部分と金属リチウムは捲回時に重ならないように配置することが好ましい。
【0086】
さらに、本実施形態では、正負極板の孔明き形成部に円形の貫通孔を例示したが、本発明はこれに制限されるものではない。すなわち、貫通孔の形状は、例えば、三角形,四角形等の多角形、星形、台形等の任意の形状をとることができる。また、正負極板の孔明き形成部の貫通孔の開口率に20%のものを例示したが、これについても本発明を制限するものではない。開口率としては、例えば、5%〜55%、好ましくは10%〜40%、より好ましくは、10%〜25%とする。
【0087】
円筒形容器8の形状については、前述の通り、円筒状に限らず、断面が楕円状、小判状、矩形状のものも使用可能である。円筒状とは、横断面形状が円形のほか、楕円状、小判状、矩形状のものも、均等物として含む。
【0088】
また、本実施形態では、理解が容易なように、例として種々の数値を挙げて説明したが、特許請求の範囲で定義された数値でない限り、本発明がこれらに制限されるものでないことは云うまでもない。さらに、本実施形態では、リチウムイオンキャパシタを作製するための部材について具体的に例示したが、これらについても、特許請求の範囲で言及のない限り、本発明を制限するものではない。従って、本願出願時点で公知の部材や材料を用いることができる。
【0089】
例えば、負極活物質には、天然黒鉛、人造黒鉛、MCMB(メゾフェーズカーボンマイクロビーズ)、MCF(メゾフェーズカーボンファイバ)、コークス、VGCF(気相成長炭素繊維)、難黒鉛化性炭素、ポリアセチレン系有機半導体、カーボンナノチューブ、これらの混合物、さらにこれらまたはこれらの混合物にホウ素、珪素、窒素などを導入したものを用いることができ、比表面積も例示したものに限られるものではない。また、正極活物質には、材料表面近傍に存在する電気二重層へのリチウムイオンおよび陰イオンの吸脱着を充放電に利用できるものであれば特に制限はなく、代表的な物質として活性炭が選択される。さらに、正負活物質の粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に本発明が制限されるものではない。
【0090】
また、負極活物質の結着剤には、エチレンアクリル酸系バインダ、ポリアクリル酸系バインダ、SBR系バインダ、NBR系バインダ、PVDF系バインダ、PVA系バインダおよびこれらの混合物等を用いるようにしてもよく、これらの水分散エマルジョンを用いることもできる。バインダに水分散エマルジョンを用いる場合は、好ましくはカルボキシメチルセルロースやPVA等の、高粘度の分散剤を添加する。
【0091】
正極活物質の結着剤には、エチレンアクリル酸系バインダ、ポリアクリル酸系バインダ、SBR系バインダ、NBR系バインダ、PVDF系バインダ、PVA系バインダ、PTFE系バインダおよびこれらの混合物等を用いるようにしてもよく、これらの水分散エマルジョンを用いることもできる。バインダに水分散のエマルジョンを用いる場合は、好ましくはカルボキシメチルセルロースやPVA等の、高粘度の分散剤を添加する。正極活物質のバインダが水分散バインダであると、キャパシタの特性上特に好ましい。
【0092】
さらにまた、導電助材には、アセチレンブラックやケッチェンブラック、微粉砕した黒鉛粉末等の導電性炭素粉末を用いることもできる。
【0093】
さらに、非水電解液には、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液を使用してもよく、リチウム塩や有機溶媒にも特に制限されるものではない。例えば、電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、LiB(C6H5)4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(C2F5SO2)2NLi、(CF3SO2)2NLi等やこれらの混合物を用いることができる。さらにまた、非水電解液の有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニルカーボネート、トリフルオロメチルプロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等又はこれら2種類以上の混合溶媒を用いるようにしてもよい。
【0094】
さらにまた、セパレータとしては、多孔質基材が用いられ、例えば、クラフト紙等のセルロース系の多孔質基材、ポリエチレン、ポリプロポレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド等の多孔質フィルム基材や、ガラス繊維からなる多孔質基材あるいはこれらを重ねて用いるようにしてもよい。
(実施例)
(実施例1)
上記実施の形態において、調整した活物質合剤のスラリを下記に示す貫通孔の面積の異なる3種の銅箔へ塗工し,負極を製作した。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示すように、貫通孔の各面積が8×10−7m2以下である場合,活物質合材は,銅箔へ均一に塗工できた。比較例1−1の銅箔を用いた場合,貫通孔に活物質合剤が埋まりきらず,孔抜けおよび凹凸が発生し均一に塗工できなかった。
【0097】
また、これらの負極を用いて上記実施の形態において、キャパシタ30の組立体を製作した。
【0098】
その組立体を40℃に管理された貯蔵室に放置した。その間に、金属リチウムは溶解し、負極板の負極活物質に吸収される。放置を開始してから15日および30日経過後にそれぞれ組立体を解体して得た負極活物質の単位重量あたりの容量を測定した。測定方法は、まず組立体を解体後、取り出した負極板を2.0×2.0cm2サイズに切り出し、評価用負極とした。評価用負極の対極としての金属リチウムを、密度0.4g/cm3、厚み50μmのセルロースシートをセパレータとして介し、評価用セルを組んだ。参照極として、金属リチウムを用いた。電解液としては、1.0M LiPF6/(EC/DMC/DEC)を用いた。電流値を負極の単位重量あたり56.2mA/gで、1.5V まで負極活物質に充電されたリチウムを放電した。ここでは、負極に流れた放電電流の積算値を負極活物質の重量で除した値を放電量とし、単位はmAh/gである。各部位の放電量の結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
表2から明らかなように、箔の貫通孔の各面積は8×10−7m2以下であれば、キャパシタとして問題なく使用できる。しかし、貫通孔が小さくなりすぎるとリチウムイオンが移動しづらくなり、予め負極にリチウムイオンを吸蔵させる時間を長く必要とする。そのため、箔の量産性、強度、さらにキャパシタの量産性など考慮に入れた設計が必要である。
(実施例2)及び(実施例3)
上記実施の形態において、下記に示す6種の各条件で、キャパシタ30の組立体を製作した。
【0101】
その組立体を40℃に管理された貯蔵室に放置した。その間に、金属リチウムは溶解し、負極板の負極活物質に吸収される。放置を開始してから30日経過後に組立体を解体して、金属リチウムの残存状況を確認した。溶け残った金属リチウムの重量を表3に示す。
【0102】
また、組立体を解体して得た負極活物質の単位重量あたりの容量を測定した。測定方法は、まず組立体を解体後、取り出した負極板の巻芯側から長手方向に、5mm、750mm、1500mm、2250mm、2995mmの5箇所において、2.0×2.0cm2サイズに切り出し、評価用負極とした。評価用負極の対極としての金属リチウムを、密度0.4g/cm3、厚み50μmのセルロースシートをセパレータとして介し、評価用セルを組んだ。参照極として、金属リチウムを用いた。電解液としては、1.0M LiPF6/(EC/DMC/DEC)を用いた。電流値を負極の単位重量あたり56.2mA/gで、1.5V まで負極活物質に充電されたリチウムを放電した。ここでは、負極に流れた放電電流の積算値を負極活物質の重量で除した値を放電量とし、単位はmAh/gである。各部位の放電量の結果を表4と図12に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
負極板の負極活物質にリチウムイオンを吸蔵させるための金属リチウムを、負極板下縁の活物質未塗工部分金属箔の両面に、リボン状に連続して配置した。金属リチウムは、長手方向の長さ=3000mm、幅方向の長さ=3mmのものを使用した。
【0106】
実施例2−1は、正極板と負極板の両方に貫通孔を形成した箔を用いた。
実施例2−2は、正極板のみに貫通孔を形成した箔を用いた。
実施例2−3は、負極板のみに貫通孔を形成した箔を用いた。
負極板の負極活物質にリチウムイオンを吸蔵させるための金属リチウムを、負極板下縁の活物質未塗工部分金属箔の片面に、リボン状に連続して配置した。金属リチウムは、長手方向の長さ=3000mm、幅方向の長さ=6mmのものを使用した。
【0107】
実施例3−1は、正極板と負極板の両方に貫通孔を形成した箔を用いた。
実施例3−2は、正極板のみに貫通孔を形成した箔を用いた。
実施例3−3は、負極板のみに貫通孔を形成した箔を用いた。
(比較例2)
負極板の負極活物質(本例では非晶質炭素)にリチウムイオンを吸蔵させるための金属リチウムを、薄板状で、2枚の銅箔で挟持した積層体とした。銅箔は、長手方向に沿う一方の側にタブが形成されたタブ形成部と、タブ形成部に隣接して配置され多数の貫通孔が形成された孔空き形成部とを有しており、金属リチウムは、2枚の銅箔の孔空き形成部に当接して挟持されている。なお、孔空き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率が20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。
【0108】
銅箔に形成された孔空き形成部の面積は金属リチウムの面積より大きく、金属リチウムは孔空き形成部の中央部に配置されている。金属リチウムを銅箔に形成された孔空き形成部で挟持し金属リチウムと銅箔を重ねてロールで圧接すると、金属リチウムは粘性を発揮し、銅箔、金属リチウム、銅箔の積層体とすることができる。積層体は、電極群内で内周部(軸芯1の近傍)と外周部の2箇所に配置した。すなわち、負極板3が挟まれたセパレータ4の2面間で負極板3の捲回延長線上に配置されるように、負極板3の捲回前および捲回後に挿入捲回されている。銅箔には長手方向に沿う一方の側にタブを形成し、タブの先端部は負極リード片3aと同様に負極集電リング6に接合した。その他は、上記実施の形態と同様にして、キャパシタ30の組立体とした。
【0109】
比較例2−1は、正極板と負極板の両方に貫通孔を形成した箔を用いた。
比較例2−2は、正極板のみに貫通孔を形成した箔を用いた。
比較例2−3は、負極板のみに貫通孔を形成した箔を用いた。
【0110】
その組立体を40℃に管理された貯蔵室に放置した。放置後30日を経過した時点で、組立体を解体して、金属リチウムの残存状況と、負極の単位重量あたりの容量を実施例2及び実施例3と同様に確認した。溶け残った金属リチウムの重量を表3に、放電量を表4に示す。
表3から明らかなように、本発明によれば、負極のリチウムイオン供給源である金属リチウムを負極板下縁の活物質未塗工部分金属箔に、リボン状に配置することにより、従来の電極群内で内周部と外周部に金属リチウムを配置するのに比べ、金属リチウムが溶解し負極板の活物質合剤へ吸蔵するのを促進することができる。さらに、表4が示すように、リチウムイオンを捲回方向に(負極板の長手方向に)均一に吸蔵させることができる。
【0111】
実施例2と実施例3とを比較すると明らかなように、金属リチウムは負極板の片面に配置しても効果があるが、両面に配置した方がより望ましい。
【0112】
さらに、貫通孔を形成した箔は、正極板と負極板の少なくとも一方に用いれば良いが、正極板より負極板に用いた方が優れている。さらに、正極板と負極板の両方に用いた方がより優れている。
【0113】
また、比較例の結果が示すように、電極群内で内周部と外周部に金属リチウムを配置する場合、正極板と負極板の両方に貫通孔を形成した箔を用いる必要がある。本発明の形態で、正極板と負極板のどちらか一方にのみ貫通孔を形成した箔を用いれば、箔に貫通孔を形成する工程を省くことができ、コストと生産性を大幅に向上できる。
また、電極捲回機に金属リチウムW5を排出するロールを組み込み、金属リチウムW5を配置する工程を捲回工程で自動化する作業を簡易化でき(作業時間を短縮でき)、生産性を大幅に向上できる。
【符号の説明】
【0114】
1…軸心、2…正極板、3…負極板、4…セパレータ、5…正極集電リング、6…負極集電リング、7…電極群、8…円筒形容器、9…負極リード板、10…正極リード板、11…樹脂製絶縁材、12…容器蓋、13…樹脂製ガスケット、21…塗工装置、26…切断装置、29…乾燥機、30…キャパシタ、W1…アルミニウム箔(第1の金属箔)、W3…銅箔(金属箔、第2の金属箔)、W5…金属リチウム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回した電極群と、非水電解液と、前記電極群および前記非水電解液を収容する容器と、を備え、
前記電極群において前記負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に、金属リチウムが配置されていたスペースを有することを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【請求項2】
前記第1の金属箔もしくは前記第2の金属箔の少なくとも一方に貫通孔が形成されており、前記貫通孔の平均面積が8×10−7m2以下であり、前記貫通孔の開口率が5%〜55%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項3】
前記第1および第2の金属箔が、帯状であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項4】
前記金属リチウムが連続して配置されていた形跡を有することを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項5】
前記正極板と負極板とはそれぞれの上縁および下縁の位置が揃わないように捲回されており、前記金属リチウムは、前記正極板が対向しない位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項6】
前記金属リチウムが前記負極板の負極活物質に吸蔵されることで、前記金属リチウムが配置された活物質未塗工部分金属箔が露出することを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項7】
前記活物質未塗工部分の幅方向の長さが2mm以上であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項8】
帯状の第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と帯状の第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回した電極群と、非水電解液と、前記電極群および前記非水電解液を収容する円筒形の容器と、を備え、
前記電極群において前記負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に、連続して金属リチウムが配置されていた形跡を有し、前記第1の金属箔もしくは前記第2の金属箔の少なくとも一方に貫通孔が形成されており、前記貫通孔の平均面積が8×10−7m2以下であり、前記貫通孔の開口率が5%〜55%の範囲にあることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【請求項9】
第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回し電極群を構成するに当たり、捲回開始前に、前記負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に金属リチウムを貼り付け、前記電極群を非水電解液とともに容器に収容することを特徴とするリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項10】
前記第1および第2の金属箔が、帯状であることを特徴とする請求項9記載のリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項11】
前記活物質未塗工部分の幅方向の長さを2mm以上とすることを特徴とする請求項9記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項12】
前記金属リチウムを連続して切れ目なく配置することを特徴とする請求項9記載のリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項13】
第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回し電極群を構成するに当たり、捲回時に、前記負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に金属リチウムを配置し、前記電極群を非水電解液とともに容器に収容することを特徴とするリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項14】
前記第1および第2の金属箔が、帯状であることを特徴とする請求項13記載のリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項15】
前記活物質未塗工部分の幅方向の長さを2mm以上とすることを特徴とする請求項13記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項16】
前記金属リチウムを連続して切れ目なく配置することを特徴とする請求項13記載のリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項17】
帯状の第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と帯状の第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回し電極群を構成するに当たり、捲回開始前または捲回時に、前記負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に、連続して切れ目なく金属リチウムを配置し、前記電極群を非水電解液とともに円筒形の容器に収容することを特徴とするリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項18】
前記容器に収容する工程の後、前記容器を密封して組立体を形成し、所定期間放置する工程の全体または一部期間において、前記金属リチウムを配置した側が上部になるように放置することを特徴とする請求項17記載のリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項19】
前記所定期間放置する工程の全体または一部期間において、前記金属リチウムを溶解させて前記負極板の負極活物質に吸蔵させることを特徴とする請求項17記載のリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項1】
第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回した電極群と、非水電解液と、前記電極群および前記非水電解液を収容する容器と、を備え、
前記電極群において前記負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に、金属リチウムが配置されていたスペースを有することを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【請求項2】
前記第1の金属箔もしくは前記第2の金属箔の少なくとも一方に貫通孔が形成されており、前記貫通孔の平均面積が8×10−7m2以下であり、前記貫通孔の開口率が5%〜55%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項3】
前記第1および第2の金属箔が、帯状であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項4】
前記金属リチウムが連続して配置されていた形跡を有することを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項5】
前記正極板と負極板とはそれぞれの上縁および下縁の位置が揃わないように捲回されており、前記金属リチウムは、前記正極板が対向しない位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項6】
前記金属リチウムが前記負極板の負極活物質に吸蔵されることで、前記金属リチウムが配置された活物質未塗工部分金属箔が露出することを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項7】
前記活物質未塗工部分の幅方向の長さが2mm以上であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項8】
帯状の第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と帯状の第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回した電極群と、非水電解液と、前記電極群および前記非水電解液を収容する円筒形の容器と、を備え、
前記電極群において前記負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に、連続して金属リチウムが配置されていた形跡を有し、前記第1の金属箔もしくは前記第2の金属箔の少なくとも一方に貫通孔が形成されており、前記貫通孔の平均面積が8×10−7m2以下であり、前記貫通孔の開口率が5%〜55%の範囲にあることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【請求項9】
第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回し電極群を構成するに当たり、捲回開始前に、前記負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に金属リチウムを貼り付け、前記電極群を非水電解液とともに容器に収容することを特徴とするリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項10】
前記第1および第2の金属箔が、帯状であることを特徴とする請求項9記載のリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項11】
前記活物質未塗工部分の幅方向の長さを2mm以上とすることを特徴とする請求項9記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項12】
前記金属リチウムを連続して切れ目なく配置することを特徴とする請求項9記載のリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項13】
第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回し電極群を構成するに当たり、捲回時に、前記負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に金属リチウムを配置し、前記電極群を非水電解液とともに容器に収容することを特徴とするリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項14】
前記第1および第2の金属箔が、帯状であることを特徴とする請求項13記載のリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項15】
前記活物質未塗工部分の幅方向の長さを2mm以上とすることを特徴とする請求項13記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項16】
前記金属リチウムを連続して切れ目なく配置することを特徴とする請求項13記載のリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項17】
帯状の第1の金属箔に活物質が塗工された正極板と帯状の第2の金属箔に活物質が塗工された負極板とをセパレータを介して捲回し電極群を構成するに当たり、捲回開始前または捲回時に、前記負極板の上縁または下縁の活物質未塗工部分金属箔の少なくとも片面に、連続して切れ目なく金属リチウムを配置し、前記電極群を非水電解液とともに円筒形の容器に収容することを特徴とするリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項18】
前記容器に収容する工程の後、前記容器を密封して組立体を形成し、所定期間放置する工程の全体または一部期間において、前記金属リチウムを配置した側が上部になるように放置することを特徴とする請求項17記載のリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項19】
前記所定期間放置する工程の全体または一部期間において、前記金属リチウムを溶解させて前記負極板の負極活物質に吸蔵させることを特徴とする請求項17記載のリチウムイオンキャパシタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−9715(P2012−9715A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145652(P2010−145652)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】
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