説明

リチウムイオンキャパシタ

【課題】静電容量維持率の高いリチウムイオンキャパシタを提供する。
【解決手段】多孔質基材と、多孔質基材の表面および/または内部に含有されるポリマーからなる網状構造体からなり、該網状構造体の少なくとも一部が該多孔質基材に絡合しているセパレータを具備してなることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来よりも静電容量維持率を大きくできるリチウムイオンキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオンキャパシタのセパレータとしては、溶剤紡糸セルロース繊維や再生セルロース繊維が叩解処理されてなる繊維を主体として抄紙法により製造された紙製セパレータが使用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。紙製セパレータは、厚みを35μmより薄くすると繊維間の空孔が大きくなりすぎて内部短絡しやすい問題があった。
【特許文献1】特開平5−267103号公報
【特許文献2】特開平11−168033号公報
【特許文献3】特開2000−3834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、上記実情を鑑みたものであって、静電容量維持率の高いリチウムイオンキャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、この課題を解決するために鋭意研究を行った結果、多孔質基材と多孔質基材の表面および/または内部に特殊形状の構造体が存在してなるセパレータを用いることにより、静電容量維持率の高いリチウムイオンキャパシタを製造できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0005】
即ち、本発明は、多孔質基材と多孔質基材の表面および/または内部に含有されるポリマーからなる網状構造体からなり、該網状構造体の少なくとも一部が該多孔質基材に絡合しているセパレータを具備してなることを特徴とするリチウムイオンキャパシタである。
【0006】
本発明のリチウムイオンキャパシタにおいては、セパレータを構成する多孔質基材が、再生セルロース繊維からなる湿式スパンボンド不織布であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のリチウムイオンキャパシタは、具備されるセパレータが、多孔質基材と多孔質基材の表面および/または内部に含有されるポリマーからなる網状構造体からなり、該網状構造体の少なくとも一部が該多孔質基材に絡合している。該セパレータは、網状構造体が存在するため厚みが薄くても電解液保持性に優れ、内部抵抗を低くできるため、静電容量維持率の高いリチウムイオンキャパシタを得ることができ、リチウムイオンキャパシタの寿命が長くなる。多孔質基材が、再生セルロース繊維からなる湿式スパンボンド不織布の場合には、電解液保持性が極めて優れるため、より静電容量維持率を高めることができる。
【0008】
本発明のリチウムイオンキャパシタに用いられるセパレータは、多孔質基材と網状構造体の少なくとも一部が絡合しているため、多孔質基材から網状構造体が分離したり離散したりすることがなく、取り扱い時やリチウムイオンキャパシタの製造中にセパレータ表面が指や装置等でこすられても、毛羽立ったり、層間剥離したりすることがなく、支障を来たすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いられるセパレータは、多孔質基材と、多孔質基材の表面および/または内部にポリマーからなる網状構造体からなる。以下、特にことわりのない場合は、「多孔質基材」とは、ポリマーからなる網状構造体を含有していない多孔質基材を意味する。
【0010】
本発明におけるセパレータは、厚みが9〜30μmであることが好ましく、密度は0.300〜0.900g/cmであることが好ましい。厚みが9μm未満では、取り扱い時や加工時に破れたり、穴があいたりすることがあり、30μmより厚いと、リチウムイオンキャパシタに収納できる電極面積が小さくなり、容量が不十分になる場合がある。密度が0.300g/cm未満だと、リチウムイオンキャパシタの短絡不良率が大きくなる場合があり、0.900g/cmより大きいと、電解液保持性が不十分になる場合がある。バブルポイント法で測定される最大孔径が0.1〜10μmであることが好ましい。
【0011】
本発明における多孔質基材は、湿式抄紙法、湿式スパンボンド法、エレクトロスピニング法、メルトブローン法、フラッシュ紡糸法、スパンボンド法、これらの組み合わせなどの方法で製造することができる。本発明においては、均一性の高い多孔質基材が得られる点でエレクトロスピニング法、湿式抄紙法、湿式スパンボンド法が好ましく、製造効率の点で湿式抄紙法と湿式スパンボンド法が好ましい。多孔質基材は必要に応じて、カレンダー処理、熱カレンダー処理、熱処理などが施される。
【0012】
本発明の多孔質基材は、坪量が5〜40g/mが好ましい。多孔質基材の坪量が5g/m未満では、多孔質基材の強度が不十分になりやすく、網状構造体を形成する際のポリマー溶液の含浸性や塗工性に問題が生じる場合があり、40g/mを超えるとセパレータの厚みを薄くしにくくなる。
【0013】
多孔質基材は、平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維を含有することが好ましい。セパレータの骨格部分をこの平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維が担い、優れた電解液浸透性を発現することができる。平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびそれらの誘導体、芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどのポリエステル、ポリオレフィン、アクリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、脂肪族ポリケトン、芳香族ポリケトン、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリ(パラ−フェニレンベンゾビスチアゾール)、ポリ(パラ−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどの樹脂からなる繊維、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、溶剤紡糸セルロース繊維などの有機繊維が挙げられる。
【0014】
有機繊維以外の非フィブリル状繊維としては、ガラス、アルミナ、シリカ、ジルコニア、炭化珪素、各種セラミックスからなる無機繊維が挙げられる。
【0015】
非フィブリル状繊維は枝分かれしていない繊維であり、溶融紡糸、溶液紡糸、液晶紡糸、フラッシュ紡糸、エレクトロスピニング、火焔延伸法、ロータリー法、メルトブローン法、スパンボンド法、湿式スパンボンド法などの方法で製造されたものを用いることができる。非フィブリル状繊維は、単独で用いても良いし、2種類以上の組み合わせで用いても良い。非フィブリル状繊維の繊維断面は円形、扁平、多角形のいずれでも良い。
【0016】
芳香族ポリアミドや芳香族ポリエステルなどの芳香族とは、全芳香族とは違って主鎖の一部または全部に例えば脂肪鎖などを有するものを指す。全芳香族ポリアミドは、パラ型、メタ型のいずれでも良い。ポリ(パラ−フェニレンベンゾビスチアゾール)はトランス型、シス型のいずれでも良い。本発明におけるアクリルとは、アクリロニトリル100%の重合体からなるもの、アクリロニトリルに対して、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体、酢酸ビニルなどを共重合させたものを指す。セルロース繊維としては、溶剤紡糸セルロース、再生セルロース、麻、柔細胞繊維などが挙げられる。柔細胞繊維とは、植物の茎、葉、根、果実等に存在する柔細胞を主体とした部分をアルカリで処理する等して得られるセルロースを主成分とし、水に不溶な繊維である。
【0017】
平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維の繊維長は1〜15mmが好ましく、2〜6mmがより好ましい。繊維長が1mmより短いと、セパレータから脱落しやすく、15mmより長いと、繊維がもつれてダマになりやすく、厚みむらが生じやすい。非フィブリル状繊維の平均繊維径が0.01μm未満だと、非フィブリル状繊維1本の強度が弱く、多孔質基材の強度が不十分になる場合があり、10μmより太いと、多孔質基材の厚みを薄くしにくくなる。非フィブリル状繊維の平均繊維径は0.1〜10μmがより好ましい。
【0018】
多孔質基材が、平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維を含有する場合、該繊維の含有率は5〜100質量%が好ましい。多孔質基材における平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維の含有率が5質量%未満で、平均繊維径0.01μm未満の非フィブリル状繊維が主体となる場合には、該非フィブリル状繊維で形成される繊維間空隙が狭く、網状構造体が繊維間空隙に形成されにくくなって、多孔質基材表面を網状構造体が覆い隠してしまい、電解液浸透性が不十分になる傾向がある。多孔質基材における平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維の含有率が5質量%未満で、平均繊維径10μmより太い非フィブリル状繊維が主体となる場合には、該非フィブリル状繊維で形成される繊維間空隙が広すぎて、網状構造体が抜けやすく、網状構造体がまだらに形成されたり、網状構造体の含有率が不十分になりやすい傾向がある。
【0019】
平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維以外の繊維としては、パルプ状繊維、フィブリル状繊維、フィブリッド、平均繊維径が0.01μmより細い非フィブリル状繊維、10μmより太い非フィブリル状繊維等が挙げられる。これらの繊維を構成する樹脂としては、平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維で例示した樹脂を挙げることができる。その他、溶剤紡糸セルロース、再生セルロース、木材繊維、リンター、リント、麻、柔細胞繊維なども挙げられる。パルプ状繊維やフィブリル状繊維としては、カナディアンスタンダードフリーネスが0〜500mlの範囲にあることが好ましく、質量平均繊維長は0.2〜2mmの範囲にあることが好ましい。パルプ状繊維やフィブリル状繊維としては、均一に細くしやすい点でセルロースが好ましい。
【0020】
フィブリルとは、主に繊維軸と平行な方向に非常に細かく分割された部分を有する繊維状で、少なくとも一部が繊維径1μm以下になっている繊維を指す。リファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に少なくとも13MPaの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより繊維に剪断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等を用いて製造される。フィブリッドとは、非顆粒状且つ非剛性の繊維状またはフィルム状微小粒子である。フィブリッドは、米国特許第2999788号明細書や米国特許第3018091号明細書に明示されているように、ポリマー溶液を貧溶媒(凝固浴)の中へ剪断沈殿させることによって製造することができる。
【0021】
パルプ状繊維、フィブリル状繊維、フィブリッドは、多孔質基材の透気度を調整しやすくする効果や網状構造体の脱落を抑制する効果があるため、好ましい。多孔質基材に占めるパルプ状繊維、フィブリル状繊維、フィブリッドの合計含有率は0〜40質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。パルプ状繊維、フィブリル状繊維、フィブリッドの合計含有率が40質量%より多いと、セパレータの透気度が不十分になる傾向がある。
【0022】
再生セルロース繊維からなる湿式スパンボンド不織布は、コットンリンターなどのセルロースを銅アンモニウム溶液に溶解させた原液を多数の紡糸口金から押し出し、硫酸や水を接触させて脱アンモニアにより原液を凝固させて再生セルロース繊維とし、延伸してネット上に捕集してウェブを形成させる方法により製造される。この場合、再生セルロース繊維同士の一部が接着して強度を発現するため、再生セルロース繊維100%の湿式スパンボンド不織布が得られる。再生セルロース繊維からなる湿式スパンボンド不織布は、通常のスパンボンド不織布や熱融着成分を含有する湿式不織布にできる場合がある大面積の皮膜を形成しにくいため、電解液を隈なく保持することができる。
【0023】
湿式スパンボンド不織布を構成する再生セルロース繊維の平均繊維径は1〜20μmが好ましい。再生セルロース繊維の平均繊維径が1μm未満では、再生セルロース繊維の強度が弱くなって湿式スパンボンド不織布の強度が不十分になりやすい。再生セルロース繊維の平均繊維径が20μmを超えると、セパレータの厚みむらが生じやすい。
【0024】
網状構造体とは、ポリマーで構成され、貫通孔からなる空隙が連続的に形成され、厚みを持って網状に広がっていて、網状構造体全体の平面積に占める貫通孔の平面積率が10%以上である構造体を指す。網状構造体全体の平面積に占める貫通孔の平面積率を求めるには、まず網状構造体の電子顕微鏡写真を撮影し、貫通孔の平均孔径を算出する。貫通孔の平均孔径は、網状構造体に存在する貫通孔の中から無作為に選んだ20個の貫通孔の孔径の平均値である。ここで、孔径とは貫通孔の面積を真円の面積に換算したときの直径を意味する。網状構造体の貫通孔は500倍以上、好ましくは5000倍以上の倍率で撮影した電子顕微鏡写真で観察することにより確認することができる。
【0025】
本発明の網状構造体は、孔径0.01〜10μmの貫通孔を有することが好ましい。網状構造体の貫通孔の形は円形、楕円形、多角形などがある。貫通孔の孔径が0.01μm未満だとセパレータの電解液浸透性が悪くなる場合や電極との接触抵抗が大きくなる場合があり、10μmより大きいとセパレータの強度や電解液含浸状態での突刺強度が不十分になる場合や短絡不良率が大きくなる場合がある。
【0026】
網状構造体は網状、蓮根を薄く輪切りにした断面のような形状、蜂の巣状、蜘蛛の巣状、スポンジ状などの形状をとり、単層のものもあれば多層のものもある。また、一部が単層で一部が多層の場合もある。本発明のセパレータは、形状や平均孔径が異なる網状構造体を含んでいても良い。また、本発明のセパレータは、孔径0.01〜10μm以外の貫通孔を有する網状構造体を含んでいても良い。
【0027】
本発明における網状構造体は、多孔質基材の表面と内部の繊維間空隙にポリマーが析出して形成される。このとき、多孔質基材を構成する繊維と網状構造体が絡合し、網状構造体は多孔質基材から物理的に単離することができないため、多孔質基材から網状構造体が分離したり離散したりすることがない。ここで、絡合とは、網状構造体が多孔質基材を構成する繊維の少なくとも一部を包み込んだ状態や、網状構造体が該繊維の少なくとも一部に絡まった状態を意味する。本発明のセパレータにおいて、網状構造体は、多孔質基材の表面と内部に部分的に存在していれば良く、例えば、片表面と内部だけに存在していても良い。網状構造体が多孔質基材の表裏面に存在する場合には、表裏面に存在する網状構造体の面積が異なっていても良い。
【0028】
本発明のセパレータに対する網状構造体の含有率は1〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。網状構造体の含有率が1質量%未満の場合、リチウムイオンキャパシタの短絡不良率が大きくなる場合がある。網状構造体の含有率が40質量%より多い場合、電解液浸透性が不十分になる場合やリチウムイオンキャパシタの内部抵抗が高くなる場合がある。また、本発明のセパレータに対する平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維と網状構造体との合計含有率は、6〜100質量%が好ましい。平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維と網状構造体との合計含有率が6質量%未満の時、セパレータの強度が不十分になる場合がある。
【0029】
網状構造体の厚みは、0.01〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましい。網状構造体の厚みが0.01μm未満では、セパレータの強度が不十分になる場合がある。網状構造体の厚みが10μmより厚いと、電解液浸透性に問題が生じる場合がある。網状構造体の厚みは、セパレータの表面または断面を500倍以上、好ましくは5000倍以上の倍率で撮影した電子顕微鏡写真を観察することにより確認することができる。
【0030】
本発明において、網状構造体を構成するポリマーとしては、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、アクリル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、フッ化ビニリデン成分含有ポリマー、セルロースが挙げられる。ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、メタ型全芳香族ポリアミド、パラ型全芳香族ポリアミドのいずれでも良い。芳香族ポリアミドとしては、例えば、一般式(1)で示される芳香族ジアミン誘導単位または一般式(2)で示される芳香族ジカルボン酸誘導単位を含有する芳香族ポリアミドが挙げられる。
【0031】
【化1】

【0032】
【化2】

【0033】
一般式(1)、(2)において、フェニレン基への結合は、パラ位、メタ位、オルト位の何れでも良いが、有機溶媒への溶解性、ポリマーの耐熱性、網状構造体の貫通孔の大きさと数を好ましい範囲に制御しやすい点でパラ位が好ましい。また、R、Rは、−O−、−NH−、−S−、スルホニル基、カルボニル基、カーボネート基、ウレア基、ウレタン基、アリーレン基、炭素数1〜30のアルキレン基、炭素数2〜30のアルケニレン基を示す。
【0034】
ここで、アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのアリーレン基は、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、CH−、C−、CF−等のアルキル基、CHO−、CO−、CFO−、CO−等のアルコキシ基、(CHN−、(CN−等のアミノ基、CSO−、シアノ基などの置換基を有していても良い。
【0035】
炭素数1〜30のアルキレン基とは、直鎖、分岐または環状アルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、ヘンイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、トリアコンチレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基、シクロトリデシレン基、シクロテトラデシレン基、シクロペンタデシレン基、シクロヘキサデシレン基、シクロヘプタデシレン基、シクロオクタデシレン基、シクロノナデシレン基、シクロイコシレン基、シクロヘンイコシレン基、シクロドコシレン基、シクロトリコシレン基、シクロテトラコシレン基、シクロペンタコシレン基、シクロヘキサコシレン基、シクロヘプタコシレン基、シクロオクタコシレン基、シクロノナコシレン基、シクロトリアコンチレン基等が挙げられる。
【0036】
炭素数1〜30のアルキレン基は、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、CH−、C−、CF−等のアルキル基、CHO−、CO−、CFO−、CO−等のアルコキシ基、(CHN−、(CN−等のアミノ基、CSO−、シアノ基、チオアルキル基などの置換基を有していても良い。
【0037】
炭素数2〜30のアルケニレン基とは、直鎖、分岐または環状アルケニレン基であり、具体的には、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基、トリデシニレン基、テトラデシニレン基、ペンタデシニレン基、ヘキサデシニレン基、ヘプタデシニレン基、オクタデシニレン基、ノナデシニレン基、イコシニレン基、ヘンイコシニレン基、ドコシニレン基、トリコシニレン基、テトラコシニレン基、ペンタコシニレン基、ヘキサコシニレン基、ヘプタコシニレン基、オクタコシニレン基、ノナコシニレン基、トリアコンチニレン基、シクロプロピニレン基、シクロブチニレン基、シクロペンチニレン基、シクロヘキシニレン基、シクロヘプチニレン基、シクロオクチニレン基、シクロノニニレン基、シクロデシニレン基、シクロウンデシニレン基、シクロドデシニレン基、シクロトリデシニレン基、シクロテトラデシニレン基、シクロペンタデシニレン基、シクロヘキサデシニレン基、シクロヘプタデシニレン基、シクロオクタデシニレン基、シクロノナデシニレン基、シクロイコシニレン基、シクロヘンイコシニレン基、シクロドコシニレン基、シクロトリコシニレン基、シクロテトラコシニレン基、シクロペンタコシニレン基、シクロヘキサコシニレン基、シクロヘプタコシニレン基、シクロオクタコシニレン基、シクロノナコシニレン基、シクロトリアコンチニレン基等を挙げることができる。
【0038】
炭素数2〜30のアルケニレン基は、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、CH−、C−、CF−等のアルキル基、CHO−、CO−、CFO−、CO−等のアルコキシ基、(CHN−、(CN−等のアミノ基、CSO−、シアノ基、チオアルキル基などの置換基を有していても良い。
【0039】
図1は、本発明のセパレータにおけるその表面の一例の電子顕微鏡写真である。多孔質基材を構成する繊維と網状構造体が確認できる。図2は、図1の網状構造体を高倍率で撮影した写真である。図2の網状構造体は、孔径0.19〜1.42μmの貫通孔を有し、多層になっている。
【0040】
本発明に用いられるセパレータの製造方法としては、多孔質基材に有機溶媒を主媒体とするポリマー溶液を含浸または塗工した後、多孔質基材を水溶液に接触させるか、または、水溶液中に浸漬して、ポリマーからなる網状構造体を析出させる方法、多孔質基材と多孔質支持体との積層体を、有機溶媒を主媒体とするポリマー溶液に含浸した後、水溶液に該積層体を接触させるか、または、水溶液中に浸漬して、ポリマーからなる網状構造体を析出させた後、多孔質基材から多孔質支持体を剥がす方法が挙げられる。いずれの方法も、多孔質基材にポリマーからなる網状構造体を析出させた後、水洗、乾燥してセパレータを作製する。
【0041】
多孔質支持体としては、多孔質基材と同一でも良く、異なるものでも良い。多孔質支持体は、湿式抄紙法、エレクトロスピニング法、メルトブローン法、フラッシュ紡糸法、スパンボンド法、湿式スパンボンド法、これらの組み合わせなどの方法で製造されたものが好ましい。
【0042】
ポリマー溶液の媒体としては、使用するポリマーに応じて溶解可能な有機溶媒を選択する。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アミンオキサイド、テトラヒドロフラン、キシレン、トルエン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、混合して使用しても良い。これら有機溶媒に水を混合しても良い。水はイオン交換水や蒸留水が好ましい。また、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カルシウムなどの金属ハロゲン化物を溶解させても良いが、塩素イオンがアルミ集電体を腐食する場合があるため、塩素化合物は使用しない方が好ましい。
【0043】
有機溶媒を主媒体とするとは、有機溶媒が全媒体の51質量%以上を占めることを意味する。ポリマー溶液におけるポリマー濃度は、1.0〜20質量%が好ましい。ポリマー濃度が1.0質量%未満では、網状構造体の形成が不十分になる場合があり、20質量%より高いと、ポリマー溶液の粘度が高くなりすぎて、多孔質基材への含浸性や塗工性に支障を来たす場合や、必要以上のポリマーが付着して網状構造体が形成されにくい場合がある。
【0044】
網状構造体を析出させるために使用する水溶液は、水のみでも良いし、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルコール類、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アミンオキサイドなどを混合しても良い。水溶液中の水の含有率は、30質量%以上が好ましく、51質量%以上がより好ましい。水はイオン交換水や蒸留水を使うことが好ましい。
【0045】
本発明のセパレータの製造方法において、多孔質基材にポリマー溶液を含浸させるには、公知の含浸機、例えばディップコーターを用いれば良い。多孔質基材にポリマー溶液を塗工するには、公知の塗工機、例えばトランスファロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、エアドクターコーター、ロッドコーター、グラビアコーター、ダイコーター、ノッチバーコーターを用いれば良い。
【0046】
水溶液に多孔質基材の表面を接触させる方法としては、多孔質基材を水浴に浮かべる方法、トランスファロールコーターやリバースロールコーターなどを使い、水で濡らしたロールに接触させる方法、シャワー水やカーテン状水を多孔質基材に当てる方法などが挙げられる。水溶液の温度は特に限定されるものではないが、0〜60℃の範囲が好ましい。
【0047】
水溶液に多孔質基材を浸漬させる方法としては、多孔質基材を水浴に通す方法が挙げられる。このとき複数の水浴を使っても良い。多孔質基材を連続して水浴に通す場合は、間欠的または連続的に排水と新水供給とを実施することが好ましい。
【0048】
リチウムイオンキャパシタとは、負極、正極、電解液を備え、負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質であり、正極活物質がリチウムイオンおよび/またはアニオンを可逆的に担持可能な物質であり、予め負極および/または正極にリチウムイオンが担持されてなるキャパシタである。
【0049】
負極活物質としては、例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、ポリアセン系有機半導体などが挙げられる。正極活物質としては、例えばポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレンなどの導電性高分子、活性炭、ポリアセン系有機半導体などが挙げられる。電解液としては、リチウム塩の非プロトン性有機溶媒が用いられる。リチウム塩としては、例えばLiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、Li(CSO)Nなどが挙げられる。非プロトン性有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメトキシエタン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、塩化メチレン、スルホラン、これらの混合溶液が挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0051】
<セパレータ1>
平均繊維径2.3μmのポリエチレンテレフタレート繊維(非フィブリル状繊維)60質量%、平均繊維径4.5μmの熱融着性ポリエステル繊維(非フィブリル状繊維)40質量%からなる湿式抄紙法で作製された多孔質基材と、該多孔質基材の表面および内部にパラ型芳香族ポリアミドからなる網状構造体が絡合してなる坪量16g/m、厚み28μmのセパレータを作製し、セパレータ1とした。セパレータ1における網状構造体の含有率は18.5%であった。ここで用いたパラ型芳香族ポリアミドは、一般式(1)において、Rが−SO−である芳香族ジアミン誘導単位と下記一般式(3)で示されるテレフタル酸誘導単位を含有してなる芳香族ポリアミドである。一般式(1)のフェニレン基への結合位は全てパラ位である。
【0052】
【化3】

【0053】
<セパレータ2>
平均繊維径2.3μmのポリエチレンテレフタレート繊維(非フィブリル状繊維)60質量%、平均繊維径4.5μmの熱融着性ポリエステル繊維(非フィブリル状繊維)40質量%からなる湿式抄紙法で作製された多孔質基材と、該多孔質基材の表面および内部にパラ型芳香族ポリアミドからなる網状構造体が絡合してなる坪量15g/m、厚み25μmのセパレータを作製し、セパレータ2とした。セパレータ1における網状構造体の含有率は11.1%であった。ここで用いたパラ型芳香族ポリアミドは、一般式(2)において、Rが−O−である芳香族ジカルボン酸誘導単位と下記一般式(4)で示されるパラ−フェニレンジアミン誘導単位を含有してなる芳香族ポリアミドである。一般式(2)のフェニレン基への結合位は全てパラ位である。
【0054】
【化4】

【0055】
<セパレータ3>
平均繊維径0.01μmのポリエチレンテレフタレート繊維からなり、エレクトロスピニング法で作製した多孔質基材と、該多孔質基材の表面および内部にポリアミドイミドからなる網状構造体が絡合してなる坪量10g/m、厚み20μmのセパレータを作製し、セパレータ3とした。セパレータ3における網状構造体の含有率は6.5%であった。
【0056】
<セパレータ4>
平均繊維径4.0μmの再生セルロース繊維からなり、湿式スパンボンド法で作製した多孔質基材と、該多孔質基材の表面および内部にポリフッ化ビニリデンからなる網状構造体が絡合してなる坪量15g/m、厚み25μmのセパレータを作製し、セパレータ4とした。セパレータ4における網状構造体の含有率は25%であった。
【0057】
<セパレータ5>
溶剤紡糸セルロースの叩解物(カナディアンスタンダードフリーネス70ml)50質量%と麻パルプ50質量%からなる坪量16g/m、厚み35μmの紙を作製し、セパレータ5とした。
【0058】
<負極の作製>
ポリフッ化ビニリデン粉末10質量部をN−メチル−2−ピロリドン80質量部に溶解し、これに難黒鉛化炭素粉末(クレハ製、商品名:カーボトロンP)100質量部を添加して混合攪拌機にて充分混合して、負極用スラリーを作製した。該負極用スラリーを、厚さ32μm(気孔率57%)の銅製エキスパンドメタルからなる負極集電体の両面に塗布し、負極電極層を設けた。真空乾燥後、全体の厚さが90μmの負極を得た。
【0059】
<正極の作製>
フェノール樹脂由来で、アルカリ賦活処理を施した比表面積2000m/gの活性炭粉末を92質量部、アセチレンブラック6質量部、アクリル系バインダー7質量部、カルボキシメチルセルロース4質量部、水200質量部を混合攪拌機にて充分混合して正極用スラリーを作製した。
【0060】
また、厚さ38μm(気孔率47%)のアルミニウム製エキスパンドメタルの両面に、非水系のカーボン系導電塗料をロールコーターにてコーティングし、乾燥させて導電層が形成された正極用集電体を作成した。全体の厚みは52μmであり、貫通孔はほぼ導電塗料により閉塞された。該正極用集電体の両面に、正極用スラリーをロールコーターにて塗布して正極電極層を成形した。真空乾燥後、正極全体の厚さが173μmの正極を得た。
【0061】
<リチウムイオンキャパシタセルの作製>
負極を2.5cm×3.9cmに6枚カットし、正極を2.4cm×3.8cmに5枚カットし、カットされた負極と正極を、セパレータを介して積層し、150℃で12時間真空乾燥した。その後、最上部と最下部にセパレータを配置させて4辺を密封し、リチウムイオンキャパシタ素子を作製した。負極活物質質量に対してドープ量が350mAh/gのイオン供給になるような金属リチウムを、厚さ70μmの銅ラスに圧着し、負極と対向するように上記リチウムイオンキャパシタ素子の最外部に1枚配置した。このように金属リチウムを配置したリチウムイオンキャパシタ素子を外装ラミネートフィルムへ挿入後、プロピレンカーボネートにLiPFを1.2M溶解した電解液を真空含浸させた。その後、外装ラミネートフィルムを熱融着し、真空封止してリチウムイオンキャパシタセルを組立てた。
【0062】
実施例1
<リチウムイオンキャパシタセルの作製>の方法に従い、セパレータ1を具備したリチウムイオンキャパシタセル1を作製した。
【0063】
実施例2
<リチウムイオンキャパシタセルの作製>の方法に従い、セパレータ2を具備したリチウムイオンキャパシタセル2を作製した。
【0064】
実施例3
<リチウムイオンキャパシタセルの作製>の方法に従い、セパレータ3を具備したリチウムイオンキャパシタセル3を作製した。
【0065】
実施例4
<リチウムイオンキャパシタセルの作製>の方法に従い、セパレータ4を具備したリチウムイオンキャパシタセル4を作製した。
【0066】
(比較例1)
<リチウムイオンキャパシタセルの作製>の方法に従い、セパレータ5を具備したリチウムイオンキャパシタセル5を作製した。
【0067】
リチウムイオンキャパシタ1〜5について、下記の試験方法により評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0068】
<静電容量維持率>
リチウムイオンキャパシタセル1〜5を、40Cの定電流でセル電圧が3.8Vになるまで充電し、その後3.8Vの定電圧を1時間印加して定電流−定電圧充電を行った。次いで、40Cの定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した。この充放電サイクルを繰り返し、10回目の放電における静電容量を初期静電容量とした。その後、セル電圧3.8V60℃にて、1000時間の連続充電試験した。1000時間経過した後電圧印加をやめ、25℃で3時間放置した後、3.8V−2.2Vの充放電サイクルを行って静電容量を算出し、初期静電容量に対する割合、即ち静電容量維持率を求めた。
【0069】
<短絡不良率>
リチウムイオンキャパシタセル1〜5それぞれ20個中の短絡不良率を求めた。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1〜4で作製したリチウムイオンキャパシタセル1〜4は、セパレータとして、多孔質基材と、多孔質基材の表面および/または内部に含有されるポリマーからなる網状構造体からなり、該網状構造体の少なくとも一部が多孔質基材と絡合しているセパレータを具備してなるため、静電容量維持率が高く、短絡不良率が低く優れていた。多孔質基材に再生セルロース繊維からなる湿式スパンボンド不織布を用いた実施例4は、実施例1〜3よりも静電維持率が高く優れていた。
【0072】
比較例1のリチウムイオンキャパシタセル5は、セパレータがセルロース100%の紙であるため、実施例1〜4で作製したリチウムイオンキャパシタセルよりも静電容量維持率が小さく、短絡不良率が高かった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施例で使用したセパレータ3の表面の電子顕微鏡写真を示す。
【図2】本発明の実施例で使用したセパレータ3に含有される網状構造体の電子顕微鏡写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、多孔質基材の表面および/または内部に含有されるポリマーからなる網状構造体からなり、該網状構造体の少なくとも一部が該多孔質基材に絡合しているセパレータを具備してなることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【請求項2】
多孔質基材が、再生セルロース繊維からなる湿式スパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンキャパシタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−114334(P2010−114334A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287255(P2008−287255)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】