説明

リチウムイオン電池用の混合された金属かんらん石電極材料

リチウム(Li)、電気活性金属(M)、およびリン酸塩(PO)を含む1またはそれ以上の相を有する電気活性材料を含む正電極材料が提供される。完全にリチオ化された状態で、全体の組成は、Li:Mの比が約1.0より大きく約1.3までの範囲であり、(PO):Mの比が約1.0から約1.132の範囲であり、MはCr、Mn、Fe、Co、およびNiからなるグループから選択された1またはそれ以上の金属であり、少なくとも1つの相は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩である。幾つかの例では、電気活性かんらん石遷移金属リン酸塩と、リチウムとリン酸塩のリッチな第2相とを含み、リチウムイオン電池で使用される、複合カソード材料が開示される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本発明は、2008年1月17日に出願された米国特許出願61/021,844の出願日の利益を主張するものであり、その内容は参照することによりその全体がここに取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
電池は、電気化学反応からエネルギーを生成する。電池は、一般には、正電極および負電極と、2つの電極間でのイオンの移動を支持するイオン化電解質溶液と、2つの電極は接触しないがイオンが電極間を移動できるようにする多孔質のセパレータとを含む。
【0003】
従来の持ち運び可能な電気機器は、電源として再充電可能なリチウム(Li)イオン電池にもっぱら頼っている。これは、それらのエネルギー蓄積能力、電力性能、サイクル寿命、および安全特性を増加し、それらのコストを下げるために、連続した努力に拍車をかけた。リチウムイオン電池またはリチウムイオンセルは、リチウム金属の量を超えるリチウム化学ポテンシャルにおける実質的なリチウムの量を蓄積することができる負電極を有する充電可能な電池をいう。リチウムイオン電池が充電される場合、リチウムイオンは正電極から負電極に移動する。放電する場合は、それらのイオンはプロセス中にエネルギーを放出しながら正電極に戻る。
【0004】
一般的なLiイオン電池では、セルは、正電極(またはカソード)のための金属酸化物と、負電極(またはアノード)のための炭素/グラファイトと、電解質のための有機溶媒中のリチウムを含む。最近では、リチウム金属リン酸塩(lithium metal phosphate)がカソード電気活性材料として使用される。リン酸鉄リチウム(リチウム鉄リン酸塩:lithium iron phosphate)は、二次電池のための安全で信頼性のあるカソード材料として知られている。これは、現在商業的なリチウムイオン電池で使用されている、より危険なリチウムコバルト酸化物の次世代の代替品である。
【0005】
リン酸鉄リチウム(LFP)ベースのカソード材料を用いるそれらのLiイオン電池は、現在、コードレスの手で持つツールや、船上のUPSデバイスで見られる。電池パックは、航空機や充電式の電気自動車(REV)、差し込み式のハイブリッド電気自動車(PHEV)、自動車およびバスを含む輸送用に実施されている。
【0006】
新しい電池の応用は、電池の放電速度能力と、平行した充電時間の低減の絶え間のない改良を要求する。
【発明の概要】
【0007】
1つの形態では、正電極材料は、(かんらん石リチウム遷移金属リン酸塩の化学量論的な組成に比較して)リチウムがリッチである全体の組成を有するように提供される。
【0008】
1つの形態では、正電極材料は、(かんらん石リチウム遷移金属リン酸塩の化学量論的な組成に比較して)リチウムとリン酸塩がリッチである全体の組成を有するように提供される。1つの具体例では、組成はリチウムとリン酸塩のリッチな第2相を含む。
【0009】
1またはそれ以上の具体例では、リチウム(Li)、電気活性金属(M)、およびリン酸塩(PO)を含む1またはそれ以上の相を有する電気活性な材料を含んで提供され、完全にリチオ化された(lithiated)状態において、全体の組成は、約1.0より大きく約1.3までの範囲のLi:Mの比と、約1.0より大きく1.132までの範囲の(PO):Mの比とを有し、MはCr、Mn、Fe、Co、およびNiからなるグループから選択される1またはそれ以上の材料であり、少なくとも1つの相が、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩を含む。
【0010】
1またはそれ以上の具体例では、全体の組成は、約1.0の(PO):Mの比と、約1.0より大きく約1.07までの範囲のLi:Mの比とを有する。
【0011】
1またはそれ以上の具体例では、全体の組成は、約1.0の(PO):Mの比と、約1.0より大きく約1.05までの範囲のLi:Mの比とを有する。
【0012】
1またはそれ以上の具体例では、電気活性材料は、更に、V、Nb、Ti、Al、Mn、Co、Ni、Mg、およびZrからなるグループから選択された1またはそれ以上のドーパント材料(Z)を含む。
【0013】
幾つかの具体例では、電気活性材料は、5mol%までの1またはそれ以上のドーパント金属を含み、MはFeであり、Li:Mは約1.05より大きく約1.12の範囲であり、(PO):Mは約0.1から約1.03の範囲である。
【0014】
幾つかの具体例では、電気活性材料は、5mol%までの1またはそれ以上のドーパント金属を含み、MはFeであり、Li:Mは約1.1から約1.15の範囲であり、(PO):Mは約1.03から約1.05の範囲である。
【0015】
幾つかの具体例では、電気活性材料は、5mol%までの1またはそれ以上のドーパント金属を含み、MはFeであり、Li:Mは約1.15から約1.2の範囲であり、(PO):Mは約1.05から約1.07の範囲である。
【0016】
幾つかの具体例では、電気活性材料は、5mol%までの1またはそれ以上のドーパント金属を含み、MはFeであり、Li:Mは約1.2から約1.3の範囲であり、(PO):Mは約1.07から約1.1の範囲である。
【0017】
1またはそれ以上の具体例では、1またはそれ以上のドーパント金属が、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩中の1またはそれ以上のリチウムまたは電気活性金属を置き換える。
【0018】
幾つかの具体例では、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩は、(Li1−x)MPOの式を有し、xは約0.001から約0.05の範囲であり、(Li1−x):Mは約1.0より大きく約1.3までの範囲である。
【0019】
幾つかの他の具体例では、電気活性材料は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩相と、リチウムとリン酸塩のリッチな第2相とを含む。1またはそれ以上の具体例では、第2相は、リン酸リチウムまたはピロリン酸リチウムを含む。
【0020】
1またはそれ以上の具体例では、電気活性かんらん石遷移金属リン酸塩相と、リチウムとリン酸塩がリッチな第2相とを含む複合カソード材料が提供される。1またはそれ以上の具体例では、第2相は、リン酸リチウムまたはピロリン酸リチウムを含む。
【0021】
1またはそれ以上の具体例では、正電極電流コレクタと電子的に接続した正電極であって、電流コレクタは外部回路と電気的に接続された正電極と、負電極電流コレクタと電子的に接続した負電極であって、電流コレクタは外部回路と電気的に接続された負電極と、カソードとアノードの間に配置され、それらとイオン接続するセパレータと、正電極および負電極とイオン接続する電解質とを含むリチウム第2セルが提供され、ここで正電極は、リチウム(Li)、電気活性金属(M)、およびリン酸塩(PO)を含む1またはそれ以上の相を有する電気活性な材料を含み、全体がリチオ化状態の場合に、全体の組成は、約1.0より大きく約1.3までの範囲のLi:Mの比と、約1.0から約1.132までの範囲の(PO):Mの比とを有し、MはCr、Mn、Fe、Co、およびNiからなるグループから選択される1またはそれ以上の材料であり、少なくとも1つの相がかんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩を含む。1またはそれ以上の具体例では、Li:Mの比は、約1.0より大きく約1.1までの範囲である。
【0022】
所定の具体例では、リチウム二次電池の電気活性な材料は、更に、V、Nb、Ti、Al、Mn、Co、Ni、Mg、およびZrからなるグループから選択される1またはそれ以上のドーパント金属(Z)を含む。
【0023】
1またはそれ以上の具体例では、電気活性材料は、約5mol%までの1またはそれ以上のドーパント金属を含む。1の形態では、1またはそれ以上のドーパント金属は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩中の1またはそれ以上のリチウムまたは電気活性金属を置き換える。例えば、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩は、(Li1−x)MPOの式を有し、xが約0.001から約0.05の範囲であり、(Li1−x):Mが約1.0より大きく約1.3までの範囲である。
【0024】
幾つかの他の具体例では、電気活性材料は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩相と、リチウムとリン酸塩のリッチな第2相とを含む。1またはそれ以上の具体例では、リチウム二次電池の負電極は、リチウム層間化合物またはリチウム金属合金を含む。1の形態では、負電極は炭素を含む。他の形態では、負電極はグラファイトカーボンを含む。更に他の形態では、炭素は、グラファイト、球状黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、および炭素繊維からなるグループから選択される。
【0025】
1またはそれ以上の具体例では、正電極材料を含む正電極が提供される。正電極材料は、リチウム(Li)、電気活性金属(M)、およびリン酸塩(PO)を含む1またはそれ以上の相を有する電気活性な材料を含み、全体がリチオ化状態の場合に、全体の組成は、約1.0より大きく約1.3までの範囲のLi:Mの比と、約1.0から約1.132までの範囲の(PO):Mの比とを有し、MはCr、Mn、Fe、Co、およびNiからなるグループから選択される1またはそれ以上の材料であり、少なくとも1つの相は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩を含む。所定の具体例では、Li:Mの比は、約1.0より大きく約1.1までの範囲である。
【0026】
1またはそれ以上の具体例では、電気活性な材料は、更に、V、Nb、Ti、Al、Mg、Mn、Co、Ni、およびZrからなるグループから選択される1またはそれ以上のドーパント金属(Z)を含む。1の形態では、電気活性材料は、約5mol%までの1またはそれ以上のドーパント金属を含む。1の形態では、1またはそれ以上のドーパント金属は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩中の1またはそれ以上のリチウムまたは電気活性金属を置き換える。例えば、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩は、(Li1−x)MPOの式を有し、xが約0.001から約0.05の範囲であり、(Li1−x):Mが約1.0より大きく約1.3までの範囲である。
【0027】
1またはそれ以上の具体例では、電気活性材料は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩相と、リチウムとリン酸塩のリッチな第2相とを含む。
【0028】
1またはそれ以上の具体例では、正電極は、更に、バインダおよび電気的に導電性の材料を含む。
【0029】
必ずしも動作の特別なモードや理論に縛られないが、この第2相の存在は、リチウムイオンカソードとしてのこの複合材料の有利な使用に貢献するであろう。なぜならば、リチウムとリン酸塩のリッチな相は、複合材料のリチウム導電性を大きくするからである。更に、中心のかんらん石結晶を部分的に覆うような、第2のリチウムとリン酸塩がリッチな層の存在は、クリスタライトシンタリングを防止し、ナノメータ(<100nm)の範囲での粒子サイズ制御を行い、カソード材料として使用した場合に有利な特性を示すために使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明のより完全な評価とその利点の多くが、図示のみを目的として表され、添付した請求の範囲を制限することを意図するものではない以下の図面を考慮して、以下の詳細な説明を参照することにより理解できるであろう。
【0031】
【図1】10mol%までの過剰のリチウムを有するリン酸鉄リチウムの、放電容量(mAh/g)と放電速度(C)の関係のプロットである。
【図2】様々なLi/Fe比、を有し、P/Fe比が1.064に一定に保持されたLiFePOベースの組成について、様々な充電および放電条件でのリチウムイオンセル容量を示す棒グラフである。
【図3】1またはそれ以上の具体例にかかる複合カソード材料の、X線回折(XRD)パターンである。
【詳細な説明】
【0032】
1の具体例では、少量(<10wt%)のリチウムリッチ、またはリチウムとリン酸塩リッチの相を、正電極に混ぜると、リチウムイオン電池のより高いエネルギー蓄積容量に寄与する。複合カソード材料は、リチウムとリン酸塩がリッチな第2相の存在と、第2のリチウムイオン電池応用の、高電力性能および優れた可逆性の容量保持との間に、強い相関関係を示す。いずれの特定の動作モードに縛られることなく、リチウムリッチ相は、正電極のかんらん石電気活性材料と接続する相を形成することにより、高速(高電力)リチウム挿入を特別に増加させる。
【0033】
従来の考え方では、過剰なリチウムは、潜在的な安全性リスクを示すため、リチウムイオン電池では望まれなかった。充電中にアノードを完全にリチオ化するには不十分な量のリチウムを有する電池システムは、減少した容量となるために望まれない一方、過剰のリチウムの添加は、通常は層間炭素(intercalation carbon)の形態で、リチウム金属として負電極をめっきする問題があると考えられている。正電極材料から除去されるリチウムの量が、適合する負電極の容量より多い場合、余剰のリチウムは、負電極の炭素粒子の外部表面上に金属リチウムとして堆積またはめっきされる。リチウム金属は、可燃性であり、電池の火事や熱暴走のリスクを増加させる。
【0034】
それゆえに、リチウムがリッチな、またはリチウムとリン酸塩がリッチな全体組成を有するカソード電気活性材料は、リチウムの全充電容量を増加させ、特に、10Cまで、および50Cまでの高い放電速度を提供する。
【0035】
1の形態では、正電極材料は、1.0に標準化される電気活性金属Mに比較して、過剰な量のリチウムおよび/またはリン酸塩を有する全体組成を有する。一般的なかんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩は、一般式LiMPOを有し、MはCr、Mn、Fe、Co、およびNiを含む1またはそれ以上の電気活性金属であり、リチウムと電気活性金属とリン酸塩の化学量論比は1.0:1.0:1.0である。
【0036】
ここで使用したように、「過剰のリチウム(excess lithium)」または「リチウムリッチ(lithium rich)」は、化学量論的なかんらん石化合物MPOを形成するのに必要な量を超えた全体組成中のリチウム量を言い、ここでM:M:POは1:1:1である(例えば、リチウムはMサイト占め、鉄はMサイトを占める)。ここで使用したように、「過剰のリン酸塩(excess phosphate)」または「リン酸塩リッチ(phosphate rich)」は、化学量論的なかんらん石化合物MPOを形成するのに必要な量を超えた全体組成中のリン酸塩量を言い、ここでM:M:POは1:1:1である。全体組成中の過剰のリチウムおよび過剰のリン酸塩は、非化学量論的なかんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩を提供する必要はない。むしろ、過剰のリチウムおよび/またはリン酸塩は、例えば第2相等として、全体組成中に存在する。
【0037】
ここで使用したように、「電気活性金属(electroactive metal)」は、セルの動作電気化学的ポテンシャル中の、電気化学反応に耐えることができる金属を意味する。更に明確にするために、所定の金属がドーピング元素(Z)として述べられるが、これらは、電池材料の電気蓄積能力の多くを生じさせるとは考えられない。特に、ドーパント元素は、非常に低いレベルで取り込まれ、好ましくは、電気化学的に活性な金属に比較して0.1〜5%である。理論で束縛されることなく、ここに明白に挙げられたドーパント金属の殆どは、電気活性な金属(M)の動作電圧から十分に異なる安定した酸化状態を有し、それゆえに、ドーパント金属は、材料の電気蓄積能力に直接寄与することは想像できない。更に、所定の具体例では、所定の金属が電気活性金属および/またはドーパント金属として使用される。例えば、鉄が支配的な電気活性金属の場合の1に具体例では、その含有量が少ない(例えば鉄の10%より少ない(<10%))場合、例えばCo、Ni、Mn、Crのような他の電気活性金属がドーパント金属として使用できる。更に、Co、Ni、MnおよびCrの酸化還元ポテンシャルが、鉄のポテンシャルより少なくとも約0.5V高い場合、そのような金属は、Fe2+−>Fe3+の酸化還元安定状態またはその近傍での電池セル操作に対して十分な電気蓄積容量を与えないであろう。
【0038】
それ故に、ここで使用したように、「かんらん石構造(olivine structures)」または「かんらん石構造(olivinic structures)」は、化学量論的、非化学量論的、および/またはドープされた構造(例えば、リチウム/リン酸塩リッチ相)の双方を言う。
【0039】
1の具体例では、正電極材料は、Li:M:(PO)の全体組成を有し、ここでMはCr、Mn、Fe、Co、およびNiを含む1またはそれ以上の金属であり、約1.0より大きく約1.30までの範囲のLi:Mの比と、約1.0から約1.14までの範囲の(PO):Mの比とを有する。正電極材料は、約100%より大きく、約130%までの化学量論的な量のリチウムと、約114%までの化学量論的な量のリン酸塩を含んでも良い。代わりに、正電極活性組成は、約30%モル(molar)の過剰のリチウムと、約14%モルまでの過剰のリン酸塩を含む。最適な正電極容量を提供するための、最適なリチウムの添加量は、かんらん石リチウム鉄リン酸塩型の電気活性材料の正確な組成に依存し、および動作放電速度に依存し、変わっても良い。最適リチウム添加量は、また、組成のリン酸塩添加量にも依存する。正電極材料中でリン酸塩がより過剰になれば、充電容量を最適化するために必要なリチウムの量も多くなる。
【0040】
1またはそれ以上の具体例では、正電極材料は、Li:M:(PO)の全体組成を有し、ここでMはCr、Mn、Fe、Co、およびNiを含む1またはそれ以上の金属であり、約1.0より大きく約1.07までの範囲のLi:Mの比と、約1.0の(PO):Mの比とを有する。言い換えれば、正電極材料は、約100%より大きく約107%までの化学量論的な量のリチウムを含む。代わりに、カソード活性成分が約7%モルまでの過剰なリチウムを含む。最適な正電極容量を提供するための、最適なリチウム添加量は、かんらん石リチウム鉄リン酸塩型の電気活性材料の正確な組成に依存し、および動作放電速度に依存し、変わっても良い。例えば、全体組成が過剰のリン酸塩を含まない場合は、より少ない過剰のリチウムが、電極容量を最適化するために必要とされる。
【0041】
結晶LiFePOは、良好なリチウム導電性化合物である、しかしながら、また、これは電子絶縁物(electronic insulator)でもある、電子導電性を改良するために、超電子価(n>3)の遷移金属の少ないドーパントが、かんらん石リチウム鉄リン酸塩ベースの化合物に含まれ、このドーパントは複合物の全電子導電性に寄与する。ドープされたかんらん石化合物の導電性は、約10−3〜10−4S/cmの範囲である。更に、最初のかんらん石結晶サイズを<100nmの寸法に制御することは、リチウムの輸送動態(transport kinetics)とリチウム鉄リン酸塩型材料の導電性の双方を大きくする。更に、(超電子価の遷移金属ドーピングとかんらん石粒子サイズ制御を達成する方法の双方を含む)それらの化合物の組成と準備に関する詳細は、現在は米国特許7,338,734である、米国で公開された出願2004/0005265に記載され、これは参照されることにより、その全体がここに組み込まれる。
【0042】
1またはそれ以上の具体例では、過剰のリチウムおよび/またはリン酸塩を有する正の電気活性材料は、かんらん石構造化合物LiMPOを含んでも良く、ここでMは1またはそれ以上の電気活性金属Cr、Mn、Fe、Co、およびNiであり、その中では化合物は、Li、MまたはPサイトに選択的にドープされる。リチウム電気活性金属リン酸塩化合物は、選択的に金属、メタロイド、またはハロゲンにより補償されても良い。Liサイトでの欠乏は、金属またはメタロイドの添加により補償でき、Pサイトの欠乏は、ハロゲンの追加により補償される。
【0043】
ここで用いるように、「ドーパント金属(dopant metal)」は正電極組成の電気活性なかんらん石材料の結晶格子中にドープ可能な金属であるが、(電気活性金属の濃度に比較して)低濃度で存在し、電気活性金属から十分に異なった酸化還元ポテンシャルを有し、ドーパント金属は、電気化学セル中での電気蓄積容量は十分には寄与しない。
【0044】
1またはそれ以上の具体例では、電気活性な材料は、リチウム(Li)、電気活性金属(M)、およびリン酸塩(PO)を含む全体組成を有し、ここでMはFeであり、更に5mol%までの1またはそれ以上ドーパント金属、例えばV、Nb、Ti、Al、Mn、Co、Ni、Mg、およびZrを含む。幾つかの具体例では、Li:Mは約1.05から約1.12の範囲であり、(PO):Mは約1.0から1.03の範囲である。幾つかの他の具体例では、Li:Mは約1.1から約1.15の範囲であり、(PO):Mは約1.03から1.05の範囲である。幾つかの他の具体例では、Li:Mは約1.15から約1.2の範囲であり、(PO):Mは約1.05から1.07の範囲である。幾つかの他の具体例では、Li:Mは約1.2から約1.3の範囲であり、(PO):Mは約1.07から1.1の範囲である。
【0045】
1またはそれ以上の具体例では、電気活性な材料は、リチウム(Li)、電気活性金属(M)、およびリン酸塩(PO)を含む全体組成を有し、ここでMはFeであり、更に5mol%までの1またはそれ以上ドーパント金属、例えばV、Nb、Ti、Al、Mn、Co、Ni、Mg、およびZrを含む。幾つかの他の具体例では、Li:Mは約1.05から約1.15の範囲であり、(PO):Mは約1.033である。幾つかの他の具体例では、Li:Mは約1.1から約1.15の範囲であり、(PO):Mは約1.045である。幾つかの他の具体例では、Li:Mは約1.12から約1.17の範囲であり、(PO):Mは約1.064である。幾つかの他の具体例では、Li:Mは約1.2から約1.3の範囲であり、(PO):Mは約1.132である。
【0046】
幾つかの具体例では、正の電気活性材料は、2またはそれ以上の電気活性金属を含む熱的に安定で電気活性な金属リン酸塩を含む。1またはそれ以上の具体例では、正の活性材料は、1またはそれ以上のV、Nb、Ti、Al、Mn、Co、Ni、Mg、およびZrのような金属ドーパントを含むかんらん石構造を有する、ドープされたリチウム電気活性金属リン酸塩を含む。1またはそれ以上の具体例では、正の活性金属は、10mol%までのバナジウム、または約5mol%のバナジウムを含むかんらん石構造を有するドープされたリチウム電気活性金属リン酸塩を含む。幾つかの具体例では、正の活性材料は、かんらん石構造と(Li1−x)MPOの式を有するドープされたリチウム電気活性金属リン酸塩を含み、Mは、Cr、Mn、Fe、Co、およびNiの1またはそれ以上であり、Zは、V、Nb、Ti、Al、Mn、Co、Ni、Mg、およびZrの1またはそれ以上のような金属ドーパントであり、xは0.005から約0.05の範囲である。例示的な具体例では、電気活性材料は(Li1−x)MPOであり、ここでMはFe、ZはNb、Zr、またはTiである。
【0047】
組成が十分に過剰のリン酸塩を含まない場合、正電極組成中の過剰のリチウムは約7mol%まででも良い。他の具体例では、組成は3〜5mol%の過剰リチウムを含む。過剰のリン酸塩の量が増加すると、最適な充電容量を有する組成を得るために使用されるリチウム量も増加する。
【0048】
超電子価の遷移金属を用いたドーピングは、再充電可能なリチウムイオン電池応用のための、結果のかんらん石材料の有利な応用に寄与する。ドーパントの有利な役割は、多くの折り畳みであり、かんらん石粉体の増加した電気導電性を含み、かんらん石のナノリン酸塩のシンターを制限して、電池の速い充電/放電中にリチウム容量の全てを使用できるようにする。しかしながら、かんらん石材料に基づく複合カソード材料は、電気活性金属ドーピングが無いものも想定される。
【0049】
正の電気活性材料は、一般に多相の材料である。1またはそれ以上の具体例では、カソード材料は電気活性なかんらん石電気活性金属リン酸塩相と、リチウムとリン酸塩のリッチな第2相を含む。第2相は、例えば、LiPOのようなリン酸リチウム、またはLi(P)のようなピロリン酸リチウムを含む。リチウムリッチ相は、ピロリン酸リチウム、Li(PO)相で、x≦3およびy≦4でも良く、例えばLi(P)やLi(P)である。またリン酸リチウムは、部分的に結晶またはアモルファスでも良い。リン酸リチウムおよび/またはピロリン酸リチウムの第2相、および/または存在するかもしれない他の第2相は、電子的および/またはイオン的に導電性である。動作の特別なモードや理論により縛られないで、導電性の第2相は、電極の全体の導電性や接の全体の速度特性を改良するのを助ける。
【0050】
1またはそれ以上の具体例では、第2相は約10%までの組成を有し、最初のかんらん石相の特定のカチオンリチウム挿入容量は高いままであり、複合電極材料の電気導電性は否定的な影響を受けない。
【0051】
リチウム鉄リン酸塩型の複合カソード中の、リン酸リチウムリッチの第2相の存在は、多くの長所を有する、第1に、LiPOは、ca.10−7S/cmの良好なリチウムイオン導電体として知られている。それゆえに、複合カソード材料は、リン酸リチウムの第2相に近く、密着したかんらん石コア(例えば、リチウム鉄リン酸塩型)を含む。このリン酸リチウムの第2相は、LiPOまたは酸素欠乏ピロリン酸リチウムLi(PO)、但しx≦3およびy≦4、のいずれかである。幾つかの具体例では、第2のリン酸リチウム相は、少なくとも部分的に、かんらん石コア材料により覆われまたは被覆される。
【0052】
この第2相の存在は、この複合材料を、リチウムイオンカソードとして有利に使用するのに寄与する。なぜならば、リチウムとリン酸塩がリッチな相は複合材料に対してリチウムの導電性を増加させる。かんらん石の結晶化中にその場で準備されるリン酸リチウムのリッチ相は、SEI(固体電解質インターフェイス)型と考えられ、これは最初のリチウムイオンセルの充電/放電中により伝統的に形成される。SEIの目的は、層が速いイオン挿入を容易にし、セルの動作中に、ダメージからリチウム挿入材料を保護することである。双方の品質は、複合かんらん石電極材料のリン酸リチウムに備えられる。
【0053】
追加のおよび/または代わりの第2相の役割は、高温固体接合手続の間に、コアかんらん石(ら例えば、リチウム鉄リン酸塩型)クリスタライトのシンターを防止できることである。ナノメータレジームでの粒子サイズの制御は、最初にかんらん石カソードに対するリチウム拡散を可能にする。コアかんらん石クリスタライトの少なくとも一部を覆う第2相の存在は、かんらん石ナノリン酸塩粒子の集合体の粒界での近い接触を防止し、それらの集合体がより大きな(>100nm)かんらん石単結晶にシンター(焼結)されるのを防止する。これは、リチウムイオン電池の高電力応用に十分な優位点を与え、複合カソード材料のための優秀な高速カソード容量(10Cまたは50Cまで)に寄与する。
【0054】
正電極材料中の、第2のリチウムおよびリン酸塩のリッチ相の量と組成は、正電極中のその特性に寄与する。例えばトリリチウムリン酸塩、結晶性のLiPOのようないくつかのリン酸リチウムは、電気的に絶縁性である。それゆえに、リン酸リチウムの十分な割合(例えば>10wt%)との複合物は、複合電極に対してより高い抵抗(インピーダンス)となる。これは、続いて、特に速い充電や放電速度における、最適な可逆的容量より低くなる。それゆえに、電池セルから最大の特性を達成するためには、最適導入条件に対する第2リン酸リチウム相の割合の制御が重要である。
【0055】
更に、主な開始前駆体(例えば、リン酸鉄二水和物および炭酸リチウム)が密に混合される程度は、期待される生成物比の形成に、無視できない動的な制限を与える。例えば、不均一に混合された開始前駆体と十分に速い温度勾配がありそうな場合には、バルクのLi/Fe比およびP/Fe比が、双方とも開始混合物中の比より少なくても、かんらん石の結晶化は、第2相(例えば、Li(PO)、x≦3およびy≦4、)の形成を伴う可能性がある。
【0056】
ドープされたかんらん石の電気活性化合物を含む正の電気活性材料は、炭酸リチウム、リン酸アンモニウム、および蓚酸鉄を含むがこれには限定されない、リチウム塩、鉄化合物、およびリン酸塩の開始材料から準備され、これには、一般には金属酸化物や金属アルコキシドとして、V、Nb、Ti、Al、Mn、Co、Ni、Mg、およびZrのような低濃度の追加ドーパント金属が加えられる。粉体の混合物が、例えば不活性雰囲気のような低酸素雰囲気中で、300℃から900℃の温度、例えば約600〜700℃で加熱される。それらの化合物は、室温やその近傍で増加した電気導電性を示し、これはリチウム蓄積材料として使用する場合に特に有利である。化合物やそれらの化合物の準備に関する更なる詳細は、米国で公開された出願2004/0005265に示され、これは参照することによりここに取り込まれる。
【0057】
他の具体例では、リチウムの電気活性金属リン酸塩の作製プロセスは、リチウム源、リン酸鉄、および1またはそれ以上の添加ドーパント金属源を含む材料の混合物を、減圧雰囲気で混合および加熱する工程を含む。例示的な開始材料は、これらに限定されないが、炭酸リチウム、リン酸第二鉄、および酸化バナジウムを含む。混合物は、減圧雰囲気で、約550〜700℃の温度に加熱され、続いて、一般には不活性雰囲気で室温まで冷却される。化合物やそれらの化合物の準備に関する更なる詳細は、米国特許7,282,301に示され、これは参照することによりここに取り込まれる。
【0058】
正電極(カソード)は、適当なキャスティング溶媒中で重合体バインダの溶液中に均一に分散させたカソード活性化合物と導電性添加物を含む半流動体ペーストを、電流コレクタ箔またはグリッドの両側に配置し、適用された正電極組成を乾燥させることにより作製される。アルミニウム箔や引き延ばされた金属グリッドのような金属基板が、電流コレクタとして使用される。電流コレクタへの活性層の接着を改良するたまに、例えば薄い炭素重合体相互被覆のような接着層が適用されても良い。乾燥させた層は均一な膜厚と密度の層を提供することを予定する。電極中に使用されたバインダは、非水電解質セル用のバインダとして使用される好ましいバインダでも良い。
【0059】
リチウムイオンセルの組立では、負電極の活性材料は、可逆的にリチウムを取り込めるいずれの材料でも良い。1の具体例では、負の活性材料は、炭素質(carbonaceous)の材料である。炭素質材料は、非グラファイトまたはグラファイトでも良い。小さな粒子サイズの、グラファイト化された天然または人工の炭素は、負の活性材料として提供される。非グラファイト炭素材料またはグラファイトカーボン材料が用いられても良いが、天然炭素、楕円天然グラファイト、メソカーボンマイクロビーズのようなグラファイト材料、およびメソカーボンファイバーのような炭素繊維が好適に用いられる。
【0060】
非水電解質が用いられ、非水溶媒に分布した適当なリチウム塩を含む。電解質は、正電極と負電極とを分ける多孔質セパレータにしみこまされる。1またはそれ以上の具体例では、マイクロ多孔質の電気的に絶縁なセパレータが用いられる。
【0061】
正電極の活性材料は、いかなる電池形状にも取り込まれる。実際、円筒形(ゼリーロール)、四角形、矩形(柱状)のコイン、ボタン等の多の形状や大きさを用いても良い。
【0062】
例1
リチウムリッチ正電極を有するリチウムイオン二次電池の準備
【0063】
LiFePOを準備するために、蓚酸鉄、炭酸リチウム、無水リン酸アンモニウム(すべてAldrich Chemicals社から入手)と蓚酸ニオブ(Alfa Chemical社から入手)とを、ステンレス鋼のグラインド媒体とアセトンの入ったプラスチックミリング容器中で3日間混ぜ、続いてロータリーエバポレータを用いて乾燥させた。材料は、製造者により提供された分析証明書中の金属含有量に基づき、最終生成物中のそれぞれの金属の目標モル%を提供するように選択される。乾燥した粉体はチューブ炉中で、不活性雰囲気で600℃で加熱された。加熱速度は、5〜10C/分で、600℃まで加熱され、製品は、最終温度で10〜20時間保持された。採取製品は、ミリングされ、続いて水分の無い状態で蓄えられた。
【0064】
正電極スラリーは、Kynar(登録商標)2810としてAtoFinaから商業的に入手可能なPVDF−HFP共重合体0.0225gを、1.496gのアセトンに溶かして、その結果の溶液中に、上述のように準備されたドープされた0.1612gのLiFePOと、0.00204gの導電性炭素(Super PまたはEnsaco)との乾燥混合物を分散させて準備した。ペーストは、Wig-L-Bugを用いてビンの中で均一にされ、ダイキャスト装置を用いてアルミニウム箔の電流コレクタの一側面に配置され、キャスティング溶液を除去するためにオーブン中で乾燥させ、カレンダー装置を用いて緻密化される。
【0065】
正電極と、負電極としてのリチウム箔は、適当な寸法に切断され、マイクロ多孔質のポリオレフィンセパレータCelgard(登録商標)2500(Celgard LLC)が間に挟み込まれ、リチウム箔に向かってスウェージロック型ハーフセルを形成する。最初の充電容量(FCC)が容量とともに、C/5、C/2、1C、2C、5C、10C、20C、35C、および50Cの速度で測定された。図1は、化学量論的製造物に必要な99%(+1%Nb)、105%、107%、および110%のリチウムを含むリチウム電気活性金属リン酸塩を有する正電極活性材料を含むセルの、放電容量とC速度のプロットである。全てのセルは、例えば0.1〜1Cのような低い速度で、同等の放電容量を示した、しかしながら、例えば2〜10Cのようなより高い速度では、105%Liと107%リチウムを有して準備されたセルが、99%Li材料より高い放電容量を示した。105%Liを用いて準備されたセルの場合、99%Liセルに比較して、50Cまでで増加した放電容量が観察された。広範囲の放電速度に対して同様に改良された放電速度が、103%Liカソード材料を用いたセルに対して観察された。これに対して、110%Liセルは、99%Liセルに比較して、良くなく、最も高い速度においても劣った。
【0066】
性能と表面積との間に相関関係は無いようであり、容量や速度の改良は、電極材料の粒子サイズの変化に起因しないことを示唆する。動作の理論やモードに縛られることなく、より高いリチウム含有量での性能の改良は、リチウム含有第2相に起因する。特に、例えば、リチウムイオン導電相のような導電性第2相の存在に起因する。
【0067】
例2
リチウムとリン酸塩にリッチな正電極を有するリチウムイオン二次電池の準備
【0068】
表1と、続く図2、3で総合され、試験され、報告された複合カソードの全ては、ドーピング遷移金属添加でまとめられた。報告された金属中に、(鉄に比較して)2〜5%のモル分率でバナジウムがドープされた。リン酸鉄二水和物(ca.ICP中95%)、炭酸リチウム(>99%)、酸化バナジウム(>99.9%)、およびビニル系共重合物を含む開始材料が、イソプロパノール溶液(<0.3wt%HO)中に分散させられ、25〜35wt%固体のスラリーを形成した。スラリーは、続いてYSZ媒体(5mm)を用いて24〜72時間ミリングされ、続いてアルコール溶媒を蒸発させることで乾燥させた。回復した乾燥粉体は、純窒素または5%H(N中)の流れ中で、最終温度650〜700℃で反応させた。加熱速度は5〜10℃/分であり、生成物は、最終温度に0〜2時間保持された。
【0069】
結果の粉体は、5wt%のアセチレンブラック(HS−100)と5wt%のフッ化ビニリデンレジン(Kureha)と、同じ重さのNメチル2ピロリドンとともに混ぜて、アルミニウム箔の上に配置した。乾燥したカソードは1〜1.5mAh/cmの活性負荷(active loading)を有した。1cmのディスクのカソードを有し、Celguard2320セパレータ、アノードとしての純リチウムディスク、および50:50の炭酸エチレン:炭酸ジメチル溶媒中の1.3MLiPFを有するコインセルが組み立てられ、試験された。
【0070】
カソード材料は、リン酸塩含有量の範囲でまとめられた。開始材料は、最終製品のリチウム、鉄、およびリン酸塩の所望の比率を提供するのに適当な量が用いられた。それぞれの前駆体のICP元素分析に基づいて、最終製品中の各金属の目標モル%を提供するように選択された。所定のP/Fe比(化学量論比1.00を越えて存在するリン酸塩の量の測定)に対して、リチウム含有量が変化し、最初の充電と、C/5と10Cの放電速度における容量が測定された。カソード特性(容量)値が、電極材料の合成において使用されたLi/Fe(mol/mol)比とFe/P(mol/mol)比とともに、表1にまとめられた。それぞれのリン酸鉄の前駆体に対して、選択されたLi/Fe/Pの処方が、結果の製品のための最適カソード容量となった。リン酸鉄前駆体のためのより高いP/Fe比は、最適のカソード容量を得るためには、それに応じてより多くのリチウムを必要とする。このように、それぞれの特有のリン酸鉄前駆体から形成されたカソード材料の最適エネルギー蓄積容量は、組立中に加えられたリン酸リチウム試薬の量に関連することが見出された。
【0071】
表1 リン酸鉄試薬材料と、異なるLi/Fe比の処方に対する結果のカソード容量の特徴

* mAhr/gとしてのカソード比容量。FCCは最初の充電容量;C/5は単位時間あたりの理論セル容量の1/5倍の速度における放電容量;10Cは単位時間あたりの理論セル容量の10倍の速度における放電容量。
【0072】
図2において、リン酸鉄前駆体(試料4)を表す4つの異なる処方(Li/Fe)に対して、カソード容量(mAh/g)がまとめられる。この例では、低速度(C/5)における最適カソード容量は、Li/Fe比>1.1の場合であり、一方、より高いLi含有量(Li/Feが1.17)は、より高い放電速度(10C)における容量を更に改良する。このように、増加したリチウム含有量は、より要求される10C放電において改良された性能を提供し、リン酸リチウム第2相の存在からの組成の利点を示す。
【0073】
データは、また、加えることができるリチウム量に上限があることを示唆し、一方、性能の改良を示す。例えば、表1で報告された複合カソードを見ると、リン酸鉄前駆体を用いて合成された試料7は、ここで報告される最高のP/Feを有し、合成中に1.3のLi/Fe比を有する。この処方では、LiPOの計算された割合はリチウム鉄リン酸塩の理論的収量に基づき、LiPOはca.15wt%である。明らかに、この複合電極材料のための高速容量は、他のリン酸鉄前駆体で達成されるものほど良くは無く、これは、この発明にまとめられた、複合カソード中のリン酸リチウム第2相の有利な存在の実際的限界があることを示す。
【0074】
結果のカソード材料の更なる分析は、最も高いP/Fe比および高いLi/Fe比を含む試料は、第2相のからなることを示す。カソード試料のXRD分析は、カソード試料が、主にトリフィライト(triphylite)のようなリチウム鉄リン酸塩からなることを示すが、所定の試料はリン酸リチウムの小さな寄与(約15vol%まで)、図3のLiPO、を示す。Li/Fe比およびP/Fe比が1より大きな、全てのカソード材料のXRD分析では、しかしながら、結晶LiPOの存在を示さない。少量の相不純物が、粉体XRD分析により常に現れるわけではないことはよく知られており、一般に、長い走査条件でも、良好に特徴付けられるためには、不純物は、全試料の5wt%より多く含まれることが期待される。一般に、1より大きなLi/Fe比およびP/Fe比で合成されたカソード材料は、多量のかんらん石リチウム鉄リン酸塩型相と、少量のリチウムとリン酸塩のリッチな相との複合物を含む。幾つかの場合、この第2相は結晶LiPOを含むが、アモルファス相も想定される。高温の固相反応と不均一な反応物の分散の下では、P/Feおよび/またはLi/Feのモル比が1より小さい場合でも、リチウム鉄リン酸塩とリン酸リチウムリッチな第2相が共存することが予想される。非平衡な条件では、それらの2つの相の速い結晶化動力学が、限定試薬(PまたはLiのいずれか)のために競争し、測定可能な量のリン酸リチウムリッチの第2相が存在する。更に、それらのカソード材料の形成に必要な減圧条件下では、リチウムリッチ相の幾つかが、ピロリン酸リチウム、Li(PO)相、但しx≦3およびy≦4、例えばLi(P)またはLi(P)を含むように減少することが想像でき、リン酸リチウム相は、部分的に結晶またはアモルファスである。
【0075】
複合カソード材料中の第2のリチウムリッチおよびリン酸リッチの相の存在は、また、元素分析により確認された。ICP−AESは、合成生成物のLi/Fe比およびP/Fe比が、開始合成混合物のために計算された化学量論比と一致することを確認するために多くの複合材料において行われた。それらの材料の多くは、冷たい脱イオン水を用いてリンスされた。リンス水と結果の洗浄された生成物は、続いて、ICP/AESにより分析される。すべての試料において、少量のリチウムおよびリン酸塩がリンス水中で検出され(鉄は無い)、洗浄された生成物のLi/Fe比およびP/Fe比は、洗浄しない材料より低いことが分かった。リンス水中のリチウムおよびリン酸塩の化学量論は、洗浄により分析された試料の全てにおいて約3であった。これは、結晶かんらん石格子の無視できる溶解度と、乏しいが測定可能な冷水中のLiPOの溶解度と一致する。
【0076】
更に、合成され、試験され、表1およびそれに続く図面に報告された複合材料は、リチウム鉄リン酸塩に基づくが、第2のリチウムおよびリン酸塩のリッチな相が、同様に他のリン酸ベースの電極材料の利益になることが予想される。この電極材料は、これには限定されないが他のかんらん石化合物を含み、ここでは遷移金属は1またはそれ以上の他のCr、Mn、Fe、Co、およびNiを含み、選択的に約10mol%までのV、Nb、Ti、Al、Mn、Co、Ni、Mg、および/またはZrでドープされても良い。また、第2のリチウムおよびリン酸リッチは、同様に他のリン酸ベースの電極材料の利益になり、この電極材料は、これらに限定されないが、NaSICON型材料と呼ばれるA(PO材料、例えばLi(PO等を含む。
【0077】
例3
アンドープのかんらん石カソード材料を有するリチウムイオン二次電池の準備
【0078】
材料が過剰のLiおよびリン酸を含む場合、即ちLi/Feモル比は1より大きく、P/Feモル比が1より大きい場合に、リチウム蓄積容量を増加させる利益を示すドーピング元素追加の添加を行うことなく、追加のカソード材料が合成された。材料は、例2に記載したように合成され、鉄およびリン酸源は、結晶リン酸鉄二水和物(純度ca95wt%)であり、リチウム源は、炭酸リチウム(>99%の純度)であり、ビニル系共重合体はイソプロピール溶液(<0.3wt%HO)に分散させた。スラリーはミリングされて、乾燥され、例3に記載したように高温で反応させた。
【0079】
結果のナノリン酸塩カソード材料が、(例2に記載したように)リチウム電池セルで試験され、カソード粉体の結果の比容量は、より高いリチウム含有量で合成された材料で有利であった。リン酸塩の鉄に対する比が1.02で、リチウムの鉄に対するモル比が合成混合物中で0.98と1.00の間であり、結果のカソード粉体の可逆的な容量は、低い放電速度C/5において135〜150mAhr/gであった。リン酸の鉄に対する比が同じく1.02であるが、リチウムの鉄に対するモル比が増加した1.05〜1.06の場合、結果のカソード粉体の可逆的な容量は、同じ低い放電速度において145〜150mAhr/gであった。
【0080】
例4
チタンがドープされたかんらん石カソード材料を有するリチウムイオン二次電池の準備
【0081】
本発明の他の形態では、例2で述べたようにカソード材料が合成されるが、バナジウムの代わりにチタンがドーパントとして用いられる。材料は、鉄およびリン酸源は、結晶リン酸鉄二水和物(純度ca95wt%)であり、リチウム源は、炭酸リチウムであり、ビニル系共重合体はイソプロピール溶液(<0.3wt%HO)に分散させた。チタンは、合成混合物中で0.025と0.05の間のTi/Feのモル比を与えるために加えた。ここでチタンはチタンテトライソプロポキシド(99wt%純度)または二酸化チタン(99wt%純度)の形態である。例2で述べたように、合成された混合物はミリングされ、乾燥され、そして高温で反応した。
【0082】
ナノリン酸塩カソード材料が、(例2で述べたように)リチウム電池セル中で試験された場合、結果のカソード粉体の比容量は、鉄の含有量に比較して、過剰のリチウムと過剰のリン酸塩を有する材料、即ち、Li/Fe>1およびP/Fe>1で利益を示した。チタンの鉄に対する比が0.05で、リチウムの鉄に対するモル比が1.02と1.00の間で、リン酸塩の鉄に対する比が1.02として準備されたチタンがドープされたかんらん石材料の一例は、10Cの放電速度において、ca110mAhr/gの可逆的な蓄積容量を示した。比較として、他のチタンドープされたかんらん石材料が、同じTi/Fe=0.05およびP/Fe=1.02であるが、Li/Fe=1.05〜1.06の増加したリチウム含有量で合成され、同じ放電速度で、130mAhr/gの可逆的なリチウム蓄積容量を示した。
【0083】
上述の説明と具体例を検討すると、当業者は、本発明の本質から離れることなく、本発明を実施する上で修正や等価な代替えが行えることを理解するであろう。このように、本発明は、上で明確に記載された具体例により限定されないことを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電極材料であって、
リチウム(Li)、電気活性金属(M)、およびリン酸塩(PO)を含む1またはそれ以上の相を有する電気活性な材料を含み、完全にリチオ化された状態において、全体の組成は、約1.0より大きく約1.3までの範囲のLi:Mの比と、約1.0から1.14までの範囲の(PO):Mの比とを有し、MはCr、Mn、Fe、Co、およびNiからなるグループから選択される1またはそれ以上の金属であり、少なくとも1つの相がかんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩を含む正電極材料。
【請求項2】
(PO):Mの比は約1.0であり、Li:Mの比は約1.0より大きく約1.07までの範囲である請求項1に記載の正電極材料。
【請求項3】
(PO):Mの比は約1.0であり、Li:Mの比は約1.03より大きく約1.05までの範囲である請求項1に記載の正電極材料。
【請求項4】
(PO):Mの比は約1.02であり、Li:Mの比は約1.05から約1.06までの範囲である請求項1に記載の正電極材料。
【請求項5】
電気活性材料は、更に、V、Nb、Ti、Al、Mg、Mn、Co、NiおよびZrからなるグループから選択された1またはそれ以上のドーパント材料(Z)を含む請求項1に記載の正電極材料。
【請求項6】
MはFeを含み、
Li:Mの比は約1.05から約1.15の範囲であり、
(PO):Mの比は約1.0から約1.03の範囲であり、
電気活性材料は、5mol%までの1またはそれ以上のドーパント金属を含む請求項5に記載の正電極材料。
【請求項7】
MはFeを含み、
Li:Mの比は約1.05から約1.15の範囲であり、
(PO):Mの比は約1.03から約1.05の範囲であり、
電気活性材料は、5mol%までの1またはそれ以上のドーパント金属を含む請求項5に記載の正電極材料。
【請求項8】
MはFeを含み、
Li:Mの比は約1.1から約1.2の範囲であり、
(PO):Mの比は約1.05から約1.07の範囲であり、
電気活性材料は、5mol%までの1またはそれ以上のドーパント金属を含む請求項5に記載の正電極材料。
【請求項9】
MはFeを含み、
Li:Mの比は約1.1から約1.3の範囲であり、
(PO):Mの比は約1.07から約1.14の範囲であり、
電気活性材料は、5mol%までの1またはそれ以上のドーパント金属を含む請求項5に記載の正電極材料。
【請求項10】
1またはそれ以上のドーパント金属は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩中の、1またはそれ以上のリチウムまたは電気活性金属を置き換える請求項5に記載の正電極材料。
【請求項11】
かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩は、(Li1−x)MPOの式を有し、xは約0.001から約0.05の範囲であり、(Li1−x):Mの比は約1.0より大きく約1.3までの範囲である請求項5に記載の正電極材料。
【請求項12】
電気活性材料は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩相と、リチウムとリン酸塩のリッチな第2相とを含む請求項1に記載の正電極材料。
【請求項13】
第2相は、リン酸リチウムまたはピロリン酸リチウムを含む請求項12に記載の正電極材料。
【請求項14】
リチウム二次電池であって、
正電極電流コレクタと電子的に接続した正電極であって、電流コレクタは外部回路と電気的に接続された正電極と、
負電極電流コレクタと電子的に接続した負電極であって、電流コレクタは外部回路と電気的に接続された負電極と、
カソードとアノードの間に配置され、それらとイオン接続するセパレータと、
正電極および負電極とイオン接続する電解質とを含み、
正電極は、リチウム(Li)、電気活性金属(M)、およびリン酸塩(PO)を含む1またはそれ以上の相を有する電気活性な材料を含み、全体がリチオ化状態の場合に、全体の組成は、約1.0より大きく約1.3までの範囲のLi:Mの比と、約1.0から約1.14までの範囲の(PO):Mの比とを有し、MはCr、Mn、Fe、Co、およびNiからなるグループから選択される1またはそれ以上の材料であり、少なくとも1つの相がかんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩を含むリチウム二次電池。
【請求項15】
LI:Mの比は、約1.0より大きく約1.1までの範囲である請求項14に記載のリチウム二次電池。
【請求項16】
電気活性な材料は、更に、V、Nb、Ti、Al、Mg、Mn、Co、Ni、およびZrからなるグループから選択される1またはそれ以上のドーパント金属(Z)を含む請求項14に記載のリチウム二次電池。
【請求項17】
電気活性材料は、約5mol%までの1またはそれ以上のドーパント金属を含む請求項16に記載のリチウム二次電池。
【請求項18】
1またはそれ以上のドーパント金属は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩中の、1またはそれ以上のリチウムまたは電気活性金属を置き換える請求項16に記載のリチウム二次電池。
【請求項19】
かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩は、(Li1−x)MPOの式を有し、xは約0.001から約0.05の範囲であり、(Li1−x):Mの比は約1.0より大きく約1.3までの範囲である請求項16に記載のリチウム二次電池。
【請求項20】
電気活性材料は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩相と、リチウムとリン酸塩のリッチな第2相とを含む請求項14に記載のリチウム二次電池。
【請求項21】
負電極は、リチウム層間化合物またはリチウム金属合金を含む請求項14に記載のリチウム二次電池。
【請求項22】
負電極は、炭素を含む請求項14に記載のリチウム二次電池。
【請求項23】
負電極は、グラファイトカーボンを含む請求項22に記載のリチウム二次電池。
【請求項24】
炭素は、グラファイト、球状黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、および炭素繊維からなるグループから選択される請求項22に記載のリチウム二次電池。
【請求項25】
請求項1の正電極材料を含む正電極。
【請求項26】
Li:Mの比は、約1.0より大きく約1.1までである請求項25に記載の正電極。
【請求項27】
電気活性な材料は、更に、V、Nb、Ti、Al、Mg、Mn、Co、Ni、およびZrからなるグループから選択される1またはそれ以上のドーパント金属(Z)を含む請求項25に記載の正電極。
【請求項28】
電極活性材料は、約5mol%までの1またはそれ以上のドーパント金属を含む請求項27に記載の正電極。
【請求項29】
1またはそれ以上のドーパント金属は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩中の、1またはそれ以上のリチウムまたは電気活性金属を置き換える請求項27に記載の正電極。
【請求項30】
かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩は、(Li1−x)MPOの式を有し、xは約0.001から約0.05の範囲であり、(Li1−x):Mの比は約1.0より大きく約1.3までの範囲である請求項27に記載の正電極。
【請求項31】
電気活性材料は、かんらん石リチウム電気活性金属リン酸塩相と、リチウムとリン酸塩のリッチな第2相とを含む請求項25に記載の正電極。
【請求項32】
更に、バインダと電気的に導電性の材料とを含む請求項25に記載の正電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−510457(P2011−510457A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543309(P2010−543309)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/031552
【国際公開番号】WO2009/092098
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(505239219)エイ 123 システムズ,インク. (24)
【Fターム(参考)】