説明

リチウム二次電池及びリチウム二次電池の製造方法、セパレータ

【課題】静電気を帯びにくいセパレータを提供する。また、セパレータに吸着されたごみや埃に起因する短絡が生じにくく、信頼性に優れたリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極とを隔離するセパレータと、非水電解質とを具備してなり、前記セパレータに、帯電防止剤が担持されているリチウム二次電池を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池及びリチウム二次電池の製造方法、セパレータに関するものであり、特に、静電気が発生しにくいセパレータを用いたリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、携帯電話機、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、ノートパソコン等の電子機器の電源として広く普及している。従来から、リチウム二次電池として、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、正極と負極とを隔離するセパレータと、非水電解質とを備えたものが知られている。リチウム電池に用いられるセパレータとしては、例えば、高分子多孔質膜からなるものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−329392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のセパレータは静電気を帯びやすいので、例えば、これを用いたリチウム二次電池を製造する場合に、作業者や製造機械などにセパレータがまとわりつき、取り扱いにくいという問題があった。また、セパレータが静電気を帯びやすいので、セパレータにごみや埃が吸着されてしまうなどの不都合があった。具体的には、リチウム二次電池の製造工程において、リチウム二次電池を構成する活物質由来のごみや製造環境に存在する埃などが、セパレータに吸着されてしまう場合があった。製造工程においてセパレータに吸着されたごみや埃は、リチウム二次電池の短絡を生じさせる原因となる。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、静電気を帯びにくいセパレータを提供することを目的とする。また、セパレータに吸着されたごみや埃に起因する短絡が生じにくく、信頼性に優れたリチウム二次電池を提供することを目的とする。さらに、容易に信頼性に優れたリチウム二次電池を製造できるリチウム二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明のリチウム二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極とを隔離するセパレータと、非水電解質とを具備してなり、前記セパレータに、帯電防止剤が担持されていることを特徴とする。
また、本発明のリチウム二次電池は、前記帯電防止剤が、下記の一般式(1)〜(5)のうちのいずれか1種または2種以上のポリエーテル変性シリコーン油であることを特徴とするものとすることができる。
ただし、一般式(1)〜(5)において、kは1〜9の範囲であり、lは0から3の範囲の自然数であり、mは0から1の範囲の自然数であり、nは1〜2の範囲の自然数であり、RはCHまたはCのいずれかであり、ZはCHまたはCのいずれかである。
【0006】
【化1】

【0007】
本発明のリチウム二次電池の製造方法は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極とを隔離するセパレータと、非水電解質とを具備してなるリチウム二次電池の製造方法であって、前記セパレータに、帯電防止剤を担持させることを特徴とする。
また、本発明のリチウム二次電池の製造方法は、前記セパレータに前記帯電防止剤を浸すことにより、前記セパレータに前記帯電防止剤を担持させることを特徴とする方法とすることができる。
【0008】
また、本発明のリチウム二次電池の製造方法は、前記帯電防止剤が、下記の一般式(6)〜(10)のうちのいずれか1種または2種以上のポリエーテル変性シリコーン油であることを特徴とする方法とすることができる。
ただし、一般式(6)〜(10)において、kは1〜9の範囲であり、lは0から3の範囲の自然数であり、mは0から1の範囲の自然数であり、nは1〜2の範囲の自然数であり、RはCHまたはCのいずれかであり、ZはCHまたはCのいずれかである。
【0009】
【化2】

【0010】
本発明のセパレータは、リチウム二次電池に用いられるセパレータであって、帯電防止剤が担持されていることを特徴とする。
また、本発明のセパレータは、帯電防止剤が、下記の一般式(11)〜(15)のうちのいずれか1種または2種以上のポリエーテル変性シリコーン油であるものとすることができる。
ただし、一般式(11)〜(15)において、kは1〜9の範囲であり、lは0から3の範囲の自然数であり、mは0から1の範囲の自然数であり、nは1〜2の範囲の自然数であり、RはCHまたはCのいずれかであり、ZはCHまたはCのいずれかである。
【0011】
【化3】

【0012】
また、本発明のセパレータは、高分子多孔質膜からなることを特徴とするものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセパレータは、帯電防止剤が担持されているので、静電気を帯びにくいものとなる。したがって、本発明のセパレータは、ごみや埃を吸着しにくく、作業者や製造機械などにまとわりつきにくい、取り扱いしやすいものとなる。
また、本発明のリチウム二次電池は、セパレータに帯電防止剤が担持されているものであるので、セパレータに吸着されたごみや埃に起因する短絡が生じにくい、信頼性に優れたものとなる。
また、本発明のリチウム二次電池の製造方法は、セパレータに帯電防止剤を担持させるので、作業者や製造機械などにセパレータがまとわりつきにくくなり、セパレータの取り扱いが容易となり、容易に効率よく本発明のリチウム二次電池を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
はじめに本発明のセパレータについて説明する。
(セパレータ)
本実施形態のセパレータは、リチウム二次電池において正極と負極を隔離するセパレータとして用いられるものである。本実施形態のセパレータは、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンからなる高分子多孔質膜に、帯電防止剤として上記の一般式(11)〜(15)のうちのいずれか1種または2種以上のポリエーテル変性シリコーン油を担持させたものである。
高分子多孔質膜は、厚み10μm〜30μmのポリオレフィンからなるフィルムの表面に微細な貫通孔が多数形成されているものである。なお、ポリオレフィンからなるフィルムは、ポリプロピレンの単層構造でもよいが、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造でもよい。
ここで、セパレータにポリエーテル変性シリコーン油が担持されているとは、例えば、セパレータ自体にポリエーテル変性シリコーン油をしみ込ませた状態をいい、具体的には高分子多孔質膜の表面にポリエーテル変性シリコーン油が塗布されている状態、または、高分子多孔質膜の微細な孔にポリエーテル変性シリコーン油が充填されている状態、あるいはこれら両方の状態をいう。
【0015】
ポリエーテル変性シリコーン油としては、上記の一般式(11)〜(15)のうちのいずれか1種または2種以上のポリエーテル変性シリコーン油を用いることができる。上記の一般式(11)〜(15)に示すポリエーテル変性シリコーン油は、直鎖ポリシロキサン鎖(SiR-O-(SiRO-)-SiR)または環状ポリシロキサンに、1本乃至2本のポリエーテル鎖[(-(CH-(CH(CH)CH-O-(CO)-Z)または(-(CH-(CH(CH)CH-O-(CO)-(CHCH(CH))-(CH)-]が結合してなるものである。これらのポリエーテル変性シリコーン油は、鎖状または環状のポリシロキサン鎖を有するために熱安定性が高いものである。
【0016】
また、上記一般式(11)〜(15)に示すポリエーテル変性シリコーン油の構造式の中で、kは1〜9の範囲であり、lは0から3の範囲の自然数であり、mは0から1の範囲の自然数であり、nは1〜2の範囲の自然数であり、RはCHまたはCのいずれかであり、ZはCHまたはCのいずれかである。
kが9を越えると熱安定性は向上するものの、粘度が高くなるおそれがあり、電池にした場合に電解液が浸透しにくくなるため好ましくない。またkが0ではシリコーン油が分解しやすくなるので、kは1以上が好ましい。
また、lが3を越えると粘度が高くなって、電池にした場合に電解液が浸透しにくくなるので好ましくない。また、mが1を越えた場合にも、ポリエーテル鎖が長くなって粘度が高くなり、電池にした場合に電解液が浸透しにくくなるので好ましくない。
また、nが1未満(即ちnが0)だと、分解しやすくなるので好ましくない。
また、nが2を越えるとポリエーテル鎖が長くなって粘度が高くなり、電池にした場合に電解液が浸透しにくくなるので好ましくない。
更に、RがCHまたはCのいずれかであり、ZがCHまたはCのいずれかであれば、ポリエーテル変性シリコーン油の合成が容易になる。
【0017】
高分子多孔質膜に担持されているポリエーテル変性シリコーン油の量は、高分子多孔質膜の厚みや多孔度に応じて変更されるが、例えば、厚みが10〜30μm、多孔度が30〜50%の高分子多孔質膜1mに対して、0.3g〜5.0gの範囲とするのが好ましく、1.0g〜5.0gの範囲がより好ましい。ポリエーテル変性シリコーン油の量が高分子多孔質膜1mに対して0.3g未満だと、高分子多孔質膜の静電気を防止する効果が十分に得られない恐れがある。また、ポリエーテル変性シリコーン油の量が高分子多孔質膜1mに対して5.0gを超えると、セパレータの細孔がシリコーン油で閉塞されてリチウムイオンの移動が阻害され、電池インピーダンスが上昇して充放電特性が悪くなるので好ましくない。
【0018】
また、高分子多孔質膜にポリエーテル変性シリコーン油を担持させる方法としては、いかなる方法を用いてもよく、例えば、高分子多孔質膜をポリエーテル変性シリコーン油中に浸すことにより高分子多孔質膜にポリエーテル変性シリコーン油を含浸させた後、乾燥させる方法などを用いることができる。
この場合、例えば、ポリエーテル変性シリコーン油に代えて、ポリエーテル変性シリコーン油を含む溶媒などの溶液を用い、溶液中に高分子多孔質膜を浸した後、乾燥して溶媒を揮発させる方法などを用いることができる。ここでの溶媒としては、例えば、電池電解液で用いるカーボネート系溶媒(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど)や、アセトン、エーテル、アルコール等、上記のポリエーテル変性シリコーン油を溶解するものであれば、いかなるものであってもよい。ただし、溶媒が残存する可能性のある場合、電池電解液で用いる溶媒が好ましい。また、ハンドリングのしやすさを考慮すると、沸点が高く、揮発しにくいものを用いることが望ましい。
【0019】
ポリエーテル変性シリコーン油を製造するには、例えば、R基の一部を水素に置換したポリシロキサンに対して、例えば(CH=CH-)のような二重結合を有するポリエーテル化合物を反応させることによって得られる。
尚、このようにして製造されたポリエーテル変性シリコーン油には、触媒成分であるPt(白金)や、重合禁止剤であるBHTが数〜数十ppm程度含まれている。PtやBHTはサイクル特性に悪影響を及ぼすものであるから、できるだけ除去することが望ましい。本発明ではポリエーテル変性シリコーン油に含まれるPtが少なくとも5ppm未満であるとともにBHTが60ppm未満であることが好ましく、Pt、BHTがそれぞれ検出限界以下であることがより好ましい。
【0020】
本実施形態のセパレータは、帯電防止剤が担持されたものであるので、静電気を帯びにくいものとなる。したがって、本実施形態のセパレータは、ごみや埃を吸着しにくく、作業者や製造機械などにまとわりつきにくい、取り扱いしやすいものとなる。
特に、帯電防止剤として、上記ポリエーテル変性シリコーン油を用いた場合、非常に効果的に静電気を防止できる。したがって、非常に静電気を帯びやすい高分子多孔質膜からなるセパレータにおいても、十分に静電気を防止できる。
【0021】
次に、本実施形態のリチウム二次電池について説明する。本実施形態のリチウム二次電池は、正極と負極と電解質とセパレータとを具備したものであり、セパレータとして上述した本実施形態のセパレータを備えたものである。
(正極)
本発明のリチウム二次電池では、正極として、リチウムの挿入、脱離が可能な正極活物質と導電助材と結着剤とが含有されてなる正極合材と、正極合材に接合される正極集電体とからなるシート状の電極を用いることができる。また、正極の電極として、上記の正極合材を円板状に成形させてなるペレット型若しくはシート状の電極も用いることができる。
【0022】
正極活物質としては、Liを含んだ化合物、酸化物、硫化物を挙げることができ、含まれる金属としては、例えば、Mn、Co、Ni、Fe、Al、Mg、Ca等、少なくとも一種類以上含む物質を例示できる。更に具体的にはLiMn、LiCoO、LiNiO、LiFeO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/32、LiNi0.8Co0.2等を例示できる。
また結着剤としてはポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン等を例示できる。
更に導電助材としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素化物を例示できる。
更に正極集電体としては、アルミニウム、ステンレス等からなる金属箔または金属網を例示できる。
【0023】
(負極)
負極としては、リチウムの挿入、脱離が可能な負極活物質と結着剤及び必要に応じて導電助材とが含有されてなる負極合材と、この負極合材に接合される負極集電体とからなるシート状の電極を用いることができる。また、上記の負極合材を円板状に成形させてなるペレット型若しくはシート状の電極も用いることができる。
【0024】
負極の結着剤は、有機質または無機質のいずれでも良く、負極活物質と共に溶媒に分散あるいは溶解し、更に溶媒を除去することにより負極活物質を結着させるものであればどのようなものでもよい。また、負極活物質と共に混合し、加圧成形等の固化成形を行うことにより負極活物質を結着させるものでもよい。このような結着剤として例えば、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フェノール樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが使用でき、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバー、等の樹脂を例示できる。
また、負極活物質及び結着剤の他に、導電助材としてカーボンブラック、黒鉛粉末、炭素繊維、金属粉末、金属繊維等を添加しても良い。
更に負極集電体としては、銅からなる金属箔または金属網を例示できる。
【0025】
負極活物質としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ、非晶質炭素等の炭素質材料を用いてもよい。また、上記のものの他に、リチウムと合金化が可能な金属質物単体やこの金属質物と炭素質材料を含む複合物も負極活物質として例示できる。リチウムと合金化が可能な金属としては、Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金、Al合金等を例示できる。また負極活物質として金属リチウム箔も使用できる。
【0026】
(非水電解質)
非水電解質としては、例えば、非プロトン性溶媒にリチウム塩が溶解されてなる非水電解質を例示できる。
非プロトン性溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル等の非プロトン性溶媒、あるいはこれらの溶媒のうちの二種以上を混合した混合溶媒を例示でき、特にプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)のいずれか1つを必ず含むとともにジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)のいずれか1つを必ず含むものが好ましい。
【0027】
また、リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y十1SO)(ただしx、yは自然数)、LiCl、LiI等のうちの1種または2種以上のリチウム塩を混合させてなるものを例示でき、特にLiPFを含むものが好ましい。
【0028】
また非水電解質に代えて、PEO、PVA等のポリマーに上記記載のリチウム塩のいずれかを混合させたものや、膨潤性の高いポリマーに有機電解液を含浸させたもの等、いわゆるポリマー電解質を用いても良い。
【0029】
なお、本実施形態のリチウム二次電池においては、セパレータに担持されていた帯電防止剤の一部が非水電解質中に移行するものと推定される。すなわち、ポリエーテル変性シリコーン油が担持されたセパレータを用いて製造されたリチウム二次電池においては、セパレータに担持されたポリエーテル変性シリコーン油が徐々に非水電解質中に拡散するものと推定される。非水電解質中に含有されたポリエーテル変性シリコーン油は、充放電サイクルに伴う非水電解質の分解を抑制して、非水電解質の劣化を防止するものと考えられる。このため、ポリエーテル変性シリコーン油が担持されているセパレータを備えたリチウム二次電池では、ポリエーテル変性シリコーン油が担持されていないセパレータを備えたリチウム二次電池と比較して、優れたサイクル特性が得られると考えられる。
【0030】
なお、一般に、Siを含む負極活物質を用いた場合、黒鉛からなる負極活物質を用いた場合と比較して、高容量なものとなるが、サイクル特性が劣化する。しかし、本実施形態のリチウム二次電池では、上述したようにサイクル特性を向上させることができるので、負極活物質としてSiを含むものを用いることで、高容量で、なおかつサイクル特性に優れたリチウム二次電池が得られる。
しかも、本実施形態のリチウム二次電池は、静電気を帯びにくく、ごみや埃が吸着しにくいセパレータを備えたものであるので、製造時にセパレータに吸着されたごみや埃に起因する短絡が生じにくい信頼性に優れたものとなる。
【0031】
次に、本実施形態のリチウム二次電池の製造方法について例を挙げて説明する。
まず、正極、負極、非水電解質、セパレータをそれぞれ製造した後、これらを組み立てる組立作業を行なう。
正極は、例えば、正極活物質と導電助材と結着剤とをN−メチル−2−ピロリドンなどのバインダーに投入して正極スラリーとし、得られた正極スラリーを集電体上に塗布した後、乾燥させてバインダーを揮発除去する方法などにより製造する。
負極は、例えば、負極活物質と導電助材と結着剤とをN−メチル−2−ピロリドンなどのバインダーに投入して負極スラリーとし、得られた負極スラリーを集電体上に塗布した後、乾燥させてバインダーを揮発除去する方法などにより製造する。
【0032】
また、非水電解質は、例えば、非プロトン性溶媒にリチウム塩を添加して溶解する方法などによって調製する。
また、セパレータは、例えば、高分子多孔質膜に帯電防止剤であるポリエーテル変性シリコーン油を浸した後、乾燥させる上述した方法などによって、セパレータに帯電防止剤を担持させることにより製造する。
【0033】
その後、正極と負極を対向させて正極と負極の間にセパレータを配置し、これらを電池ケースに収納し、非水電解質を注液してから電池ケースを密閉する組み立て作業を行うことにより本実施形態のリチウム二次電池が得られる。
本実施形態のリチウム二次電池の製造方法では、セパレータに、ポリエーテル変性シリコーン油を担持させるので、セパレータが静電気を帯びにくくなり、二次電池の組み立て作業において、作業者や製造機械などにセパレータがまとわりつかないし、セパレータにごみや埃が吸着しにくいので、セパレータの取り扱いが容易となり、容易に効率よくリチウム二次電池を製造できる。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
次のようにして評価用のリチウム二次電池を製造した。
まず、Li箔からなる厚さ200μmのシート状の対極を製造した。
また、Siを10質量%含む黒鉛からなる負極活物質と、ポリフッ化ビニリデンからなる結着剤と、N−メチル−2−ピロリドンとを混合して負極スラリーとし、得られた負極スラリーを厚み20μmのCu箔からなる集電体上に塗布し、乾燥させて作用極を得た。
【0035】
次に、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=30:70で混合させてなる混合溶媒に、1.3モル/Lの濃度となるようにLiPFを添加して非水電解質を調製した。
【0036】
また、以下に示すようにセパレータを製造した。
すなわち、下記式(16)に示す構造のポリエーテル変性シリコーン油をジメチルカーボネート(DMC)からなる溶媒に添加することにより、30質量%のシリコーン溶液を調製した。
そして、得られたシリコーン溶液中に、厚み20μmのポリプロピレン製の高分子多孔質膜を1分間浸した後、60℃のオーブンで熱風乾燥して溶媒を揮発させてセパレータを得た。なお、得られたセパレータに担持されたポリエーテル変性シリコーン油の量は、高分子多孔質膜1mに対して2.2gであった。
【0037】
【化4】

【0038】
その後、水分が1ppm以下に管理されたArグローブボックス中において、上記の対極および作用極を円板状に切り出して対極と作用極を対向させ、対極と作用極の間にセパレータを配置して電池ケースに収納し、上記の電解質を注液してから電池ケースを密閉することにより、コイン型の評価用のリチウム二次電池を製造した。
【0039】
(実施例2)
次のようにしてリチウム二次電池を製造した。
実施例1で用いたポリエーテル変性シリコーン油に代えて、下記式(17)に示す構造のポリエーテル変性シリコーン油を担持させたセパレータを製造した。
【0040】
【化5】

【0041】
そして、得られたセパレータと、実施例1と同様の対極と作用極と非水電解質とを用い、実施例1と同様にして、コイン型の評価用のリチウム二次電池を製造した。
【0042】
(比較例1)
次のようにしてリチウム二次電池を製造した。
まず、実施例1と同様の対極と作用極と非水電解質と、実施例1のポリエーテル変性シリコーン油に浸す前のポリプロピレン製の高分子多孔質膜とを用いて、実施例1と同様にして、コイン型の評価用のリチウム二次電池を製造した。
【0043】
このようにして得られた実施例1〜比較例1のリチウム二次電池について、0.1Cの電流で10時間定電流充電をした後、30分休止し、電池電圧が1.5Vになるまで0.1Cの電流で定電流放電をした。この充電および放電を40サイクル行なった。その結果を図1に示す。
図1は、リチウム二次電池の放電容量を示したグラフである。なお、図1においては、比較例1の40サイクルのときの容量を100%とした場合の容量を示す。
【0044】
図1に示すように、実施例1および実施例2のリチウム二次電池は、比較例1のリチウム二次電池と比較して、容量が高いことが確認できた。これは、実施例1および実施例2のセパレータにポリエーテル変性シリコーン油が担持されているために、非水電解質の分解が抑制された結果によるものと推定される。
【0045】
また、実施例1、実施例2、比較例1で用いたセパレータの静電気量を測定した。静電気量の測定装置としては、オムロン社製の静電気測定センサZJ−SDを用いた。
その結果を図2に示す。なお、図2においては、比較例1で用いたセパレータの静電気量を100%としたときの実施例1および実施例2で用いたセパレータの静電気量を算出して示した。
【0046】
図2に示すように、実施例1および実施例2で用いたセパレータは、比較例1で用いたセパレータと比較して、静電気量が1/5程度に低減されている。これは、実施例1および実施例2のセパレータにポリエーテル変性シリコーン油が担持されているために、静電気が抑制された結果によるものと推定される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】リチウム二次電池の放電容量を示したグラフ。
【図2】セパレータの静電気量を示したグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極とを隔離するセパレータと、非水電解質とを具備してなり、
前記セパレータに、帯電防止剤が担持されていることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項2】
前記帯電防止剤が、下記の一般式(1)〜(5)のうちのいずれか1種または2種以上のポリエーテル変性シリコーン油であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
ただし、一般式(1)〜(5)において、kは1〜9の範囲であり、lは0から3の範囲の自然数であり、mは0から1の範囲の自然数であり、nは1〜2の範囲の自然数であり、RはCHまたはCのいずれかであり、ZはCHまたはCのいずれかである。
【化1】

【請求項3】
正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極とを隔離するセパレータと、非水電解質とを具備してなるリチウム二次電池の製造方法であって、
前記セパレータに、帯電防止剤を担持させることを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記セパレータに前記帯電防止剤を浸すことにより、前記セパレータに前記帯電防止剤を担持させることを特徴とする請求項3に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記帯電防止剤が、下記の一般式(6)〜(10)のうちのいずれか1種または2種以上のポリエーテル変性シリコーン油であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のリチウム二次電池の製造方法。
ただし、一般式(6)〜(10)において、kは1〜9の範囲であり、lは0から3の範囲の自然数であり、mは0から1の範囲の自然数であり、nは1〜2の範囲の自然数であり、RはCHまたはCのいずれかであり、ZはCHまたはCのいずれかである。
【化2】

【請求項6】
リチウム二次電池に用いられるセパレータであって、
帯電防止剤が担持されていることを特徴とするセパレータ。
【請求項7】
前記帯電防止剤が、下記の一般式(11)〜(15)のうちのいずれか1種または2種以上のポリエーテル変性シリコーン油であることを特徴とする請求項6に記載のセパレータ。
ただし、一般式(11)〜(15)において、kは1〜9の範囲であり、lは0から3の範囲の自然数であり、mは0から1の範囲の自然数であり、nは1〜2の範囲の自然数であり、RはCHまたはCのいずれかであり、ZはCHまたはCのいずれかである。
【化3】

【請求項8】
高分子多孔質膜からなることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のセパレータ。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−172960(P2007−172960A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367638(P2005−367638)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】