説明

リチウム二次電池用セパレータ及びリチウム二次電池

【課題】本発明の課題は、突刺強度が強く、破断伸度が大きく、巻回性に優れ、電解液保持率と耐リチウムデントライト性に優れるリチウム二次電池用セパレータ及び該リチウム二次電池用セパレータを用いてなるリチウム二次電池を提供することにある。
【解決手段】エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維とを含有してなる湿式不織布からなるリチウム二次電池用セパレータ及びリチウム二次電池用セパレータを用いてなるリチウム二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用セパレータ及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電子機器の普及及びその高性能化に伴い、高エネルギー密度を有する二次電池が望まれている。この種の電池として、有機電解液を使用するリチウムイオン電池が注目されてきた。このリチウムイオン電池は、平均電圧として従来の二次電池であるアルカリ二次電池の約3倍である3.7V程度が得られることから高エネルギー密度となるが、アルカリ二次電池のように水系の電解液を用いることができないため、十分な耐酸化還元性を有する非水電解液を用いている。非水電解液は可燃性であるため、発火等の危険性があり、その使用において安全性には細心の注意が払われている。発火等の危険に曝されるケースとしていくつか考えられるが、特に過充電が危険である。
【0003】
過充電を防止するために、現状の非水系二次電池では定電圧・定電流充電が行われ、電池に精密なIC(保護回路)が装備されている。この保護回路にかかるコストは大きく、非水系二次電池をコスト高にしている要因にもなっている。
【0004】
保護回路で過充電を防止する場合、当然保護回路がうまく作動しないことも想定され、本質的に安全であるとは言い難い。現状の非水系二次電池には、過充電時に保護回路が壊れ、過充電されたときに安全に電池を破壊する目的で、安全弁・PTC素子の装備、セパレータには熱ヒューズ機能を有する工夫がなされている。しかし、上記のような手段を装備していても、過充電される条件によっては、確実に過充電時の安全性が保証されているわけではなく、実際には非水系二次電池の発火事故は現在でも起こっている。
【0005】
セパレータとしては、ポリエチレン等のポリオレフィンからなるフィルム状の多孔質フィルムが多く使用されており、電池内部の温度が130℃近傍になった場合、溶融して微多孔を塞ぐことで、リチウムイオンの移動を防ぎ、電流を遮断させる熱ヒューズ機能(シャットダウン機能)があるが、何らかの状況により、さらに温度が上昇した場合、ポリオレフィン自体が溶融してショートし、熱暴走する可能性が示唆されている。そこで、現在、200℃近くの温度でも溶融及び収縮しない耐熱性セパレータが開発されている。
【0006】
耐熱性セパレータとして、不織布からなるセパレータがあり、ポリエステル不織布(例えば、特許文献1及び2参照)、水分存在下で加熱することによってゲル化しうる湿熱ゲル化樹脂と他の繊維とを含む不織布で構成されたセパレータ(例えば、特許文献3〜6参照)、ビニルアルコール単位を含むポリマーを含む多孔質体(エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンの分割型複合繊維を含む不織布)をセパレータとして内蔵するリチウムイオン二次電池(例えば、特許文献7〜8参照)、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンの分割型複合繊維を含む不織布をポリシロキサンで処理したセパレータ(例えば、特許文献9〜10参照)、セルロース100%からなるセパレータを用いた非水系電池(例えば、特許文献11参照)が開示されている。
【0007】
しかしながら、リチウム二次電池に充放電を繰り返し行ったときや過充電したときに、負極表面に金属リチウムが析出する。この析出物は「リチウムデンドライト」と呼ばれている。リチウムデンドライトは、徐々に成長し、セパレータを貫通して正極に達し、内部短絡の原因になる場合がある。特許文献1〜2のセパレータは、不織布の孔が大きく、ピンホールができやすいために、この内部短絡が発生しやすいという問題があった。特許文献3〜6のセパレータは、湿熱ゲル化樹脂の皮膜があるため、セパレータの空隙が不十分になりやすい問題があった。皮膜を少なくすると、ピンホールができやすく、リチウムデンドライトがセパレータを貫通する問題があった。また、湿熱ゲル化の方法が複雑であるため、湿熱ゲル化樹脂の皮膜面積とセパレータの空隙率のバランスを取ることが難しい問題があった。
【0008】
特許文献7〜8は、ビニルアルコール単位を含むポリマーをリチウム二次電池に内蔵することによって、電池電圧を下げることができ、高温に曝された後の電池が再度充電できないようにして安全性を高めるという効果を達成している。実施例には、ビニルアルコール単位を含むポリマーとして、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンからなる分割型複合繊維を使用したセパレータがリチウム二次電池に内蔵された場合が記載されてはいるが、このセパレータは繊維同士の接着力が不十分で、取り扱い時に毛羽立ちやすく、巻回性に問題があった。さらに、特許文献8のエチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンからなる分割型複合繊維を含有するセパレータは、非常に密度が高いため、電解液保持率が悪い問題があった。
【0009】
特許文献9〜10のセパレータは、分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維を含有しているものの、ポリシロキサンの担持量が少ない場合には、最大細孔径が依然として大きく、ピンホールができる場合があった。また、熱カレンダー処理されてなるため、熱処理温度や樹脂の種類によっては、エチレン−ビニルアルコール共重合体やその他の樹脂が皮膜を形成し、繊維間の空隙の大部分を閉塞してしまい、電解液保持率が悪くなる場合があり、熱処理条件を最適化する余地が残っていた。
【0010】
特許文献11の非水系電池に用いられるセルロース100%からなるセパレータは、突刺強度が弱く、破断伸度が小さいため、巻回性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−123728号公報
【特許文献2】国際公開第2008/130020号パンフレット
【特許文献3】特開2005−317215号公報
【特許文献4】特開2005−317216号公報
【特許文献5】特開2005−317217号公報
【特許文献6】国際公開第2004/038833号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2009/025332号パンフレット
【特許文献8】特開2010−192248号公報
【特許文献9】特開2000−285895号公報
【特許文献10】特開2000−340205号公報
【特許文献11】特許第3661104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、突刺強度が強く、破断伸度が大きく、巻回性に優れ、電解液保持率と耐リチウムデントライト性に優れるリチウム二次電池用セパレータ及び該リチウム二次電池用セパレータを用いてなるリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンからなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維とを含有してなる湿式不織布からなることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータ及び該リチウム二次電池用セパレータを用いてなるリチウム二次電池を見出した。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維とを含有してなる湿式不織布からなるため、極細繊維同士の交点、該極細繊維と溶剤紡糸セルロース繊維の交点、溶剤紡糸セルロース繊維同士の交点といった繊維間の交点がポリプロピレンで接着されることによって、突刺強度が強く、破断伸度が大きく、巻回性に優れる。また、湿式不織布表面及び内部を皮膜で覆うことがないため、湿式不織布内部の空隙が維持され、電解液保持率が高い。さらに、分割型複合繊維が分割して得られる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維との効果により、ピンホールがなく、最大細孔径が小さく、充放電の繰り返しによって、リチウムデンドライトが電極表面に生成した場合でも、リチウムデンドライトが正負極間で導通することを防ぐことができ、耐リチウムデンドライト性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維のカナダ標準濾水度と変法濾水度(試料濃度を0.03%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した濾水度)の関係を表したグラフである。
【図2】叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度(ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度)を表したグラフの一例である。
【図3】本発明の実施例で用いた叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度(ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度)を表したグラフである。
【図4】叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[I]の繊維長分布ヒストグラムである。
【図5】叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[II]の繊維長分布ヒストグラムである。
【図6】叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[I]及び[II]の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合のグラフと近似直線を示した図である。
【図7】0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有する叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[i]の繊維長分布ヒストグラムの例である。
【図8】最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[ii]の繊維長分布ヒストグラムの例である。
【図9】本発明の実施例2で作製したリチウム二次電池用セパレータにおける表面の電子顕微鏡写真(1000倍率)の一例である。
【図10】本発明の実施例2で作製したリチウム二次電池用セパレータにおける断面の電子顕微鏡写真(1500倍率)の一例である。
【図11】本発明の実施例20で作製したリチウム二次電池用セパレータにおける表面の電子顕微鏡写真(1000倍率)の一例である。
【図12】本発明の実施例20で作製したリチウム二次電池用セパレータにおける断面の電子顕微鏡写真(1500倍率)の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明におけるリチウム二次電池とは、リチウムイオン電池やリチウムイオンポリマー電池を意味する。リチウム二次電池の負極活物質としては、黒鉛やコークスなどの炭素材料、金属リチウム、アルミニウム、シリカ、スズ、ニッケル、鉛から選ばれる1種以上の金属とリチウムとの合金、SiO、SnO、Fe、WO、Nb、Li4/3Ti5/3等の金属酸化物、Li0.4CoNなどの窒化物が用いられる。正極活物質としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、チタン酸リチウム、リチウムニッケルマンガン酸化物、リン酸鉄リチウムが用いられる。リン酸鉄リチウムは、さらに、マンガン、クロム、コバルト、銅、ニッケル、バナジウム、モリブデン、チタン、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、マグネシウム、ホウ素、ニオブから選ばれる1種以上の金属との複合物でも良い。
【0017】
リチウム二次電池の電解液には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、これらの混合溶媒などの有機溶媒にリチウム塩を溶解させたものが用いられる。リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウムや4フッ化ホウ酸リチウムが挙げられる。固体電解質としては、ポリエチレングリコールやその誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、ポリシロキサンやその誘導体、ポリフッ化ビニリデンなどのゲル状ポリマーにリチウム塩を溶解させたものが用いられる。
【0018】
本発明のリチウム二次電池用セパレータ(以下、「セパレータ」と表記することもある)は、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維とを含有してなる湿式不織布からなる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニルを鹸化して得られる。鹸化度は95%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。
【0019】
分割型複合繊維の断面形状は、放射状型、層状型、櫛型、碁盤型などが挙げられる。放射状型は、中心部分が中空になっていても良い。本発明では、断面が中空になっている場合を「中空放射状」型と表記する。分割型複合繊維は、パルパーやミキサーなどで攪拌する方法や高圧水流を当てる方法により、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる極細繊維とポリプロピレンからなる極細繊維とに分割させることができるものが好ましい。分割型複合繊維をパルパーやミキサーで攪拌して分割させる際には、必要に応じて分散助剤や消泡剤を使用しても良い。分割型複合繊維の平均繊維径は3〜18μmが好ましく、3〜16μmがより好ましく、6〜16μmがさらに好ましい。3μm未満であると、分割しにくくなる場合があり、18μmより太いと、分割後の極細繊維断面の長軸が長くなるため、セパレータの空隙を閉塞する場合がある。
【0020】
分割して得られる極細繊維は、断面の短軸長さが1.00〜5.00μmであることが好ましく、1.00〜3.50μmであることがより好ましい。例えば、特許文献9(特開2000−285895号公報)や特許文献10(特開2000−340205号公報)のように、この断面の短軸長さを考慮していない場合、ピンホールが発生する場合がある。断面の短軸長さが1.00μm未満だと、断面の理論扁平度が大きくなりすぎて湿式不織布の空隙を閉塞する場合や、繊維間の交点の接着が不十分になる場合がある。5.00μmを超えると、湿式不織布の厚みを薄くしにくくなる場合がある。なお、短軸長さとは、極細繊維断面の短軸方向の最大長さを意味する。
【0021】
極細繊維の長さは0.5〜10mmであることが好ましく、1〜6mmであることがより好ましく、1〜4mmであることがさらに好ましい。0.5mm未満であると、湿式抄紙の際に漉き網から抜け落ちて排水に流出する割合が多くなる場合がある。10mmより長いと、極細繊維同士が撚れて塊ができる場合がある。極細繊維の理論扁平度は、1.00〜5.00であることが好ましく、1.00〜3.00であることがより好ましい。理論扁平度とは極細繊維の長軸の最大長さを短軸長さで除した値を意味し、分割型複合繊維の繊維径と分割数から計算することができる。理論扁平度が5.00より大きいと、湿式不織布の空隙を閉塞する場合や、繊維間の交点の接着が不十分になる場合がある。
【0022】
本発明における湿式不織布を構成する必須成分である溶剤紡糸セルロース繊維とは、セルロース誘導体を経ずに、直接、有機溶剤に溶解させて紡糸して得られるセルロース繊維を意味する。ISO規格及び日本のJIS規格に定める用語として、「リヨセル」ともいう。本発明においては、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維が用いられる。本発明においては、溶剤紡糸セルロース繊維の叩解度を変法濾水度で表す。
【0023】
本発明における変法濾水度とは、JIS P8121に規定されるカナダ標準濾水度の測定方法に対して、試料濃度若しくはふるい板のいずれかを又は試料濃度及びふるい板の両方を変更して測定した濾水度を意味する。これまで、針葉樹木材パルプ、広葉樹木材パルプ、麻パルプ、エスパルトパルプなどの天然セルロース繊維のカナダ標準濾水度と変法濾水度との関係については報告されているが、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維のカナダ標準濾水度と変法濾水度との関係は明らかになっていなかった。本発明では、リファイナーを用いて溶剤紡糸セルロース繊維を微細化していき、微細化の程度ごとにカナダ標準濾水度と変法濾水度を測定した結果、溶剤紡糸セルロース繊維の濾水挙動が、特開2000−331663号公報に開示されている天然セルロース繊維の濾水挙動と異なることを見出した。
【0024】
図1に、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維のカナダ標準濾水度と変法濾水度の関係を表す。図1において、標準濾水度とはJIS P8121のカナダ標準濾水度を意味している。変法濾水度とは、試料濃度を0.03%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した濾水度を意味する。図1の横軸は長さ加重平均繊維長を示しており、右に向かうほど微細化の程度が進んでいる。カナダ標準濾水度は、長さ加重平均繊維長が0.72mmまで濾水度が0.5mlであるが、長さ加重平均繊維長が0.55mm以下では短くなるほど濾水度が大きくなっている。一方、変法濾水度は、微細化の程度が進むに従って、濾水度が大きくなっている。この濾水挙動は、特開2000−331663号公報に開示されている天然セルロース繊維の濾水挙動、すなわち、微細化の程度が進むほど、カナダ標準濾水度と変法濾水度が減少する濾水挙動とは全く異なっている。
【0025】
このように微細化の程度が進むほど濾水度が大きくなる理由は、微細化が進むに従って叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長が短くなっていき、特に試料濃度が薄い場合に、繊維同士の絡みが少なくなり、繊維ネットワークが形成されにくくなるため、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維自体がふるい板の穴をすり抜けてしまうからである。つまり、微細化した溶剤紡糸セルロース繊維の場合は、JIS P8121の測定方法では、正確な濾水度が計測できないのである。より詳細に説明すると、天然セルロース繊維は、微細化の程度が進むほど、繊維の幹から細いフィブリルが多数裂けた状態になるため、フィブリルを介して繊維同士が絡みやすく、繊維ネットワークを形成しやすいのに対し、溶剤紡糸セルロース繊維は、微細化処理によって繊維の長軸に平行に細かく分割されやすく、分割後の繊維1本1本における繊維径の均一性が高いため、平均繊維長が短くなるほど繊維同士が絡みにくくなり、繊維ネットワークを形成しにくいと考えられる。
【0026】
そこで、本発明では、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の正確な濾水度を測定するための検討を行った。図2は、試料濃度とふるい板の両方を変更して測定した変法濾水度の一例を表す。すなわち、JIS P8121に規定されているふるい板の代わりに80メッシュの金網を用い、試料濃度を0.1%にして測定した変法濾水度である。80メッシュの線径は直径0.14mmで、目開き0.18mmの金網(PULP AND PAPER RESEARCH INSTITUTE OF CANADA製)を使用した。図2から明らかなように、微細化の程度が進むほど濾水度は小さくなっており、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の抜けが抑えられ、より正確な濾水度を計測できたことがわかる。以下、本発明における変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度を意味し、特に断りのない限り、単に「変法濾水度」と表記する。
【0027】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長及び繊維長分布ヒストグラムは、繊維にレーザー光を当てて得られる偏向特性を利用して求める市販の繊維長測定器を用いて測定することができる。本発明では、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.52「紙及びパルプの繊維長 試験方法(光学的自動計測法)」に準じてKajaaniFiberLabV3.5(Metso Automation社製)を使用して測定した。叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の「繊維長」、「平均繊維長」及び「繊維長分布」とは、上記に従って測定・算出される「長さ加重繊維長」、「長さ加重平均繊維長」及び「長さ加重繊維長分布」を意味する。
【0028】
また、微細化の条件を変えることによって、変法濾水度0〜400mlの範囲内で長さ加重平均繊維長をいかようにも調節することができるため、同程度の変法濾水度であっても、長さ加重平均繊維長の異なる叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を作製することができる。図3は、本発明の実施例1〜68で用いた叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度を表す。
【0029】
本発明において用いられる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度は、0〜400mlであることが好ましく、0〜300mlであることがより好ましく、0〜250mlであることがさらに好ましい。400mlを超えると、太い繊維径の割合が多くなり、セパレータに大きな貫通孔ができる場合や、厚み斑や地合斑を生じる場合がある。
【0030】
本発明における溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長は、0.10〜2.00mmであることが好ましく、0.40〜1.80mmであることがより好ましく、0.50〜1.50mmであることがさらに好ましい。長さ加重平均繊維長が0.10mm未満だと、湿式抄紙の際に漉き網が目詰まりして、濾水性が悪くなり、抄紙性が悪くなる場合があり、ピンホールが多数できる場合がある。2.00mmより長いと、繊維同士が撚れてダマになる場合がある。
【0031】
さらに、本発明では、変法濾水度0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.10〜2.00mmである叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維において、その繊維長分布ヒストグラムを詳細に検討した結果、下記に説明する第一の繊維長分布を有する場合、分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維がスラリーの水面に浮くことを抑制し、湿式不織布の表面平滑性を向上させる効果が得られ、第二の繊維長分布を有する場合、抄紙性と表面平滑性を両立させる効果が得られるため、より好ましいことを見出した。
【0032】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維において、好ましい第一の繊維長分布は、該繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%以上である。このような叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維は、分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と良く絡み合い、極細繊維がスラリーの水面に浮くことを抑制する。その結果、湿式不織布の表面に極細繊維が束状に堆積することがなく、湿式不織布の表面平滑性が高くなる。また、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−3.0以上−0.5以下である場合、極細繊維との絡みがより良くなり、結果的に湿式不織布の表面平滑性がより優れていて、さらに好ましいことを見出した。
【0033】
図4及び図5は、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムであり、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%以上である。表面平滑性という点で、より好ましくは、繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.30〜0.70mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が12%以上であることがより好ましい。1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合はより高い方が好ましいが、50%程度あれば十分である。
【0034】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−3.0以上−0.5以下であることが好ましく、−2.5以上−0.8以下であることがより好ましく、−2.0以上−1.0以下であることがさらに好ましい。傾きが−3.0より小さい場合、分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維との絡みが弱くなり、極細繊維がスラリーの水面に浮き、湿式不織布の表面に極細繊維が束状に堆積しやすくなる場合がある。また傾きが−0.5を超えると、緻密性が向上しない場合がある。図4及び図5に示すように、「傾きが大きい」とは叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布が広い状態である。「傾きが小さい」とは叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布が狭く、より繊維長が揃っている状態である。なお、図4における叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[I]の傾きは−2.9であり、図5における叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[II]の傾きは−0.6である。
【0035】
なお、「1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾き」とは、図6に示したように、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の値に対し、最小二乗法により近似直線を算出し、得られた近似直線の傾きを意味する。
【0036】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維において、好ましい第二の繊維長分布は、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上である。このような叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維は、濾水性が相対的に良く、抄紙速度を上げることができ、抄紙性と表面平滑性を両立できる。また、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する場合、このようなピークを有さない溶剤紡糸セルロース繊維よりも濾水性が良く、より抄紙速度を上げることができる。
【0037】
図7は、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムであり、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上である。表面平滑性という点において、繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.30〜0.70mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が55%以上であることがより好ましい。1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合は高い方が望ましいが、75%程度あれば十分である。
【0038】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、図8に示したように、上記の最大頻度ピーク以外に、1.50〜3.50mmの間にピークを有することがより好ましく、1.75〜3.25mmの間にピークを有することがさらに好ましく、1.90〜3.00mmの間にピークを有することが特に好ましい。この範囲にピークを有することにより、さらに濾水性が良く、より抄紙速度を上げることができる。該ピークの繊維長が1.50mmより短い場合、濾水性が悪くなり、抄紙速度を上げにくくなる場合がある。また3.50mmを超えると、ダマが発生して厚み斑になり、表面平滑性が悪く場合がある。
【0039】
本発明における叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を得るには、溶剤紡糸セルロースの短繊維を適度な濃度で水などに分散させ、これをリファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、高圧ホモジナイザーなどに通して、刃の形状、流量、処理回数、処理速度、処理濃度などの条件を調節して叩解すれば良い。これらの叩解により、溶剤紡糸セルロース繊維は、繊維長軸に平行に分割するとともに繊維長が短くなる。
【0040】
本発明のリチウム二次電池用セパレータにおいて、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維と溶剤紡糸セルロース繊維との質量比率は、8:2〜2:8であることが好ましく、7:3〜3:7であることがより好ましい。分割型複合繊維の比率が8:2より多いと、湿式不織布の熱処理の際に著しく収縮し、しわになる場合や湿式不織布の空隙が閉塞される場合がある。2:8より少ないと、湿式不織布の突刺強度が弱くなり、取り扱い時や電極との巻回時に毛羽立つ場合や破損する場合や、耐デンドライト性が不十分になる場合がある。
【0041】
本発明のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維以外の繊維を含有しても良い。例えば、天然セルロース繊維、天然セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物、溶剤紡糸セルロースの短繊維、合成樹脂からなる短繊維(以下、「合成短繊維」と表記することもある)、フィブリッド、パルプ化物、フィブリル化物、無機繊維を含有しても良い。
【0042】
天然セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物のカナダ標準濾水度は、0〜700mlであることが好ましく、0〜500mlであることがより好ましい。無機繊維としては、ガラス、アルミナ、シリカ、セラミックス、ロックウールが挙げられる。無機繊維を含有する場合は、セパレータの耐熱寸法安定性や突刺強度が向上するため好ましい。
【0043】
合成短繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ジエン、ポリウレタン、フェノール、メラミン、フラン、尿素、アニリン、不飽和ポリエステル、フッ素、シリコーン、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリテトラフルオロエチレン、これらの誘導体などの樹脂からなる短繊維、又は2種類以上の樹脂からなる複合繊維が挙げられる。複合繊維としては、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型が挙げられる。本発明におけるアクリルとは、アクリロニトリル100%の重合体からなるもの、アクリロニトリルに対して、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体、酢酸ビニルなどを共重合させたものを指す。ポリアミドとは、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドを指す。半芳香族ポリアミドとは、主鎖の一部に脂肪鎖などを有する芳香族ポリアミドを指す。
【0044】
合成短繊維の断面形状は、円形、楕円形、扁平、三角形、四角形、多角形のいずれでも良いが、湿式不織布の空隙を閉塞しにくいことから、円形、楕円形、三角形、四角形、多角形が好ましい。平均繊維径は、0.1〜12.0μmであることが好ましく、0.5〜8.0μmであることがより好ましく、1.0〜5.0μmであることがさらに好ましい。合成短繊維の平均繊維径が12.0μmを超えた場合、厚さ方向における繊維本数が少なくなるため、ピンホールができる場合や厚みを薄くしにくくなる場合や表面粗さが大きくなる問題がある。0.1μm未満であると、合成短繊維の添加効果が現れにくい場合がある。断面形状が円形以外の場合の平均繊維径は、同面積の円形に換算したときの平均繊維径を意味する。
【0045】
合成短繊維の繊維長としては、0.1〜10mmであることが好ましく、0.3〜6mmであることがより好ましい。繊維長が10mmを超えた場合、地合不良となることがある。一方、繊維長が0.1mm未満の場合には、セパレータの突刺強度が弱くなり、破断伸度が小さくなる場合がある。
【0046】
本発明のリチウム二次電池用セパレータは、湿式抄紙法で製造される。具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割させて得られる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維とを水に分散して均一なスラリーとし、このスラリーを抄紙機で漉きあげて湿式不織布を製造する。スラリーには、必要に応じて分散助剤、消泡剤、増粘剤、剥離剤、紙力増強剤などの薬品を添加しても良い。抄紙機としては、円網抄紙機、長網抄紙機、傾斜型抄紙機、傾斜短網抄紙機、これらの複合抄紙機が挙げられる。湿式不織布を製造する工程においては、必要に応じて、水流交絡処理を施しても良い。
【0047】
本発明においては、湿式不織布を140〜175℃で熱処理して、ポリプロピレンの少なくとも一部を溶融させ、極細繊維同士の交点及び/又は極細繊維と溶剤紡糸セルロース繊維の交点を接着させることが好ましい。本発明における熱処理は、加熱したロールに非加圧下で湿式不織布の片面又は両面を所定時間接触させる方法、加熱したロール間に湿式不織布を通して加圧する方法、ホットプレス機を用いて所定時間加圧処理する方法等で行うことができる。本発明においては、巻取りを連続的に処理でき、極細繊維を溶融劣化させずに繊維形状を維持させやすいことから、非加圧下で加熱したロールに接触させる方法が好ましい。加熱するロールは樹脂製、金属製のいずれでも良い。熱処理の温度が140℃未満であると、極細繊維同士の交点及び/又は該極細繊維と溶剤紡糸セルロース繊維の交点の接着が弱く、耐水性が不十分になる場合がある。175℃を超えると、熱量が過剰となり、ポリプロピレンからなる極細繊維が繊維形状を消失し、薄い皮膜を形成するため、湿式不織布表面及び内部の空隙が少なくなるとともに湿式不織布が脆くなる場合がある。また、薄く形成された皮膜により電解液をはじき、電解液のしみ込みが不均一になる場合がある。熱処理の後、必要に応じてカレンダー処理して厚みを調整することもできる。
【0048】
図9は、本発明の実施例2で作製したセパレータ表面の電子顕微鏡写真の一例である。極細繊維同士の交点、該極細繊維と溶剤紡糸セルロース繊維の交点、溶剤紡糸セルロース繊維同士の交点がポリプロピレンにより接着されていることがわかる。図10は、本発明の実施例2で作製したセパレータ断面の電子顕微鏡写真の一例である。図9及び10から、本発明のセパレータでは表面及び内部を覆う皮膜が形成されておらず、十分な空隙が残っていることがわかる。図11は、本発明の実施例20で作製したセパレータ表面の電子顕微鏡写真の一例である。極細繊維の大部分が溶融して繊維形状を消失しており、薄い皮膜が形成されていることがわかる。図12は、本発明の実施例20で作製したセパレータ断面の電子顕微鏡写真の一例である。セパレータ内部にも皮膜が形成されており、空隙が少ないことがわかる。
【0049】
本発明のリチウム二次電池用セパレータの厚みは4〜45μmであることが好ましく、10〜35μmであることがより好ましく、15〜30μmであることがさらに好ましい。45μmを超えると、セパレータの抵抗値が高くなる場合がある。4μm未満であると、セパレータの強度が弱くなりすぎて、セパレータの取り扱い時に破損する恐れがある。
【0050】
本発明のリチウム二次電池用セパレータの密度は、0.250〜0.750g/cmであることが好ましく、0.300〜0.650g/cmであることがより好ましく、0.400〜0.600g/cmであることがさらに好ましい。密度が0.250g/cm未満であると、厚みを薄くしにくくなる場合があり、0.750g/cm超だと、セパレータの抵抗値が高くなる場合がある。
【0051】
本発明のリチウム二次電池用セパレータでは、ASTM−F316−86で規定される最大孔径が、0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜6μmであることがより好ましい。0.1μm未満であると、電解液保液率が低くなる場合がある。10μmより大きいと、耐リチウムデンドライト性が不十分になる場合がある。
【0052】
本発明のリチウム二次電池用セパレータでは、流れ方向の引張強度が300N/m以上であることが好ましく、400N/m以上であることがより好ましい。300N/m未満であると、電池組立ての際の巻回時や取り扱い時に切断する場合や破れる場合がある。ここでいう引張強度とは、流れ方向に長い短冊状の試験片の上下を100mm間隔で固定し、100mm/minの一定速度で試験片が切断するまで引き上げていったときの最大荷重を意味する。
【0053】
本発明のリチウム二次電池用セパレータでは、流れ方向の破断伸度が3.0%以上であることが好ましく、4.0%以上であることがより好ましい。3.0%未満であると、電池組立ての際の巻回時や取り扱い時に切断する場合や破れる場合がある。ここでいう破断伸度とは、流れ方向に長い短冊状の試験片の上下を100mm間隔で固定し、100mm/minの一定速度で試験片が切断するまで引き上げていったときの破断伸度を意味する。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0055】
≪実施例1〜20、比較例1〜9≫
表1に、使用した分割型複合繊維、合成短繊維、溶剤紡糸セルロース繊維を示した。表1中の分割型複合繊維の断面形状は、分割型複合繊維全体の断面が円形であり、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンの配置が放射状型であること又は中心部分が中空で、且つエチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンの配置が放射状型であることを意味する。表1中の中空率とは、繊維の断面積に占める中空部分の面積の割合を意味する。表1中の芯鞘複合繊維は、芯部にポリプロピレン、鞘部に高密度ポリエチレンを配してなり、芯部と鞘部の断面積比は50:50である。
【0056】
溶剤紡糸セルロース繊維について、「変法濾水度」は、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度である。また、「平均繊維長」は、長さ加重平均繊維長である。なお、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維は、叩解されていない溶剤紡糸セルロース短繊維(繊度1.7dtex、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して作製した。
【0057】
【表1】

【0058】
<スラリー1〜11の調製>
表2に示したスラリー1〜11の配合率になるように、分割型複合繊維と溶剤紡糸セルロース繊維を計量した。分割型複合繊維をパルパーで水に分散させた後、溶剤紡糸セルロース繊維を添加して所定時間攪拌し、スラリー1〜11を調製した。分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。分割型複合繊維の分散には必要に応じて、分散助剤、消泡剤を使用した。
【0059】
<スラリー12〜15の調製>
表2に示したスラリー12〜15の配合率になるように、分割型複合繊維、溶剤紡糸セルロース繊維、合成短繊維を計量した。分割型複合繊維をパルパーで水に分散させた後、合成短繊維を添加して所定時間攪拌し、さらに溶剤紡糸セルロース繊維を添加して所定時間攪拌し、スラリー12〜15を調製した。分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。分割型複合繊維の分散には、必要に応じて分散助剤、消泡剤を使用した。
【0060】
実施例1
スラリー1を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、165℃に加熱した金属ロールに湿式不織布の表裏面をそれぞれ5秒ずつ接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、実施例1のセパレータを作製した。
【0061】
実施例2、4〜11、13、14
表3に示した実施例2、4〜11、13、14に対応するスラリーを傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表3に示した熱処理温度と熱処理時間に従って、実施例1と同様にして湿式不織布の表裏面を熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、実施例2、4〜11、13、14のセパレータを作製した。
【0062】
実施例3
スラリー2を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表3に示した熱処理温度と熱処理時間に従って、実施例1と同様にして湿式不織布の表裏面を熱処理し、実施例3のセパレータとした。
【0063】
実施例12
スラリー9を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表3に示した熱処理温度と熱処理時間に従って、実施例1と同様にして湿式不織布の表裏面を熱処理し、実施例12のセパレータを作製した。
【0064】
実施例15
スラリー12を2連式の円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表3に示した熱処理温度と熱処理時間に従って、実施例1と同様にして湿式不織布の表裏面を熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、実施例15のセパレータを作製した。
【0065】
実施例16〜18
実施例16〜18に対応するスラリー13〜15を用いて、実施例15と同様にして湿式不織布を作製した。次いで、表3に示した熱処理温度と熱処理時間に従って、実施例1と同様にして湿式不織布の表裏面を熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、実施例16〜18のセパレータを作製した。
【0066】
実施例19
スラリー2を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、135℃に加熱した金属ロールに湿式不織布の表裏面をそれぞれ30秒ずつ接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、実施例19のセパレータを作製した。
【0067】
実施例20
スラリー2を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、180℃に加熱した金属ロールに湿式不織布の表裏面をそれぞれ5秒ずつ接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、実施例20のセパレータを作製した。
【0068】
(比較例1)
B1をパルパーで水に分散させたスラリー16を調製した。分割型複合繊維B1は、ほぼ分割していることを確認した。スラリー16を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表3に示した熱処理温度と熱処理時間に従って、金属ロールに湿式不織布の表裏面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、比較例1のセパレータを作製した。
【0069】
(比較例2)
表2に示したスラリー17の配合率になるようにB1とF4を計量した。B1とF4をパルパーで水に分散させたスラリーを調製した。分割型複合繊維B1は、ほぼ分割していることを確認した。スラリー17を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表3に示した熱処理温度と熱処理時間に従って、金属ロールに湿式不織布の表裏面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、比較例2のセパレータを作製した。
【0070】
(比較例3)
C4をパルパーで水に分散させたスラリー18を調製した。スラリー18を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、湿式不織布をカレンダー処理して厚み調整し、比較例3のセパレータを作製した。
【0071】
(比較例4〜6)
表2に示したスラリー19〜21の配合率になるように溶剤紡糸セルロース繊維と合成短繊維を計量した。合成短繊維をパルパーで水に分散させた後、溶剤紡糸セルロース繊維を添加して所定時間攪拌し、スラリー19〜21を調製した。スラリー19〜21を2連式の円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、湿式不織布をカレンダー処理して厚み調整し、比較例4〜6のセパレータを作製した。
【0072】
(比較例7)
表2に示したスラリー22の配合率になるように、B1とF7を計量した。B1とF7をパルパーで水に分散させてスラリー22を調製した。B1の分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。スラリー22を円網抄紙機と短網抄紙機の複合抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を135℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、湿式不織布を体積比率でフッ素:酸素:窒素=1:73:26の混合ガス中に1分間曝した。その後、60℃の湯で洗浄し、70℃雰囲気の熱風乾燥機に通して乾燥させた。この湿式不織布に水分を噴霧して100質量%含浸させ、130℃に加熱した一対の金属ロールに線圧500N/cm、速度3.3m/minで通してエチレン−ビニルアルコール共重合体をゲル皮膜化し、比較例7のセパレータを作製した。
【0073】
(比較例8)
表2に示したスラリー23の配合率になるように、B7とF7を計量した。B7をパルパーで水に分散させた後、F7を添加して所定時間攪拌し、スラリー23を調製した。B7の分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。B7の分散には、必要に応じて分散助剤、消泡剤を使用した。スラリー23を円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、130℃に加熱した金属ロール間に線圧500N/cmで通した後、さらにカレンダー処理して厚み調整し、比較例8のセパレータを作製した。
【0074】
(比較例9)
表2に示したスラリー24の配合率になるように、B7とF7を計量した。スラリー23と同様にしてスラリー24を調製した。B7の分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。スラリー24を円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、120℃に加熱した金属ロール間に線圧500N/cmで通して、厚み25μmの湿式不織布を作製した。次いで、1分子中にメトキシ基を3個有するポリアルキレンオキサイド変性ポリシロキサンの5質量%水溶液を該不織布に含浸させ、120℃で乾燥させて、該ポリシロキサンを10.5質量%担持させた後、カレンダー処理して厚みを再調整し、比較例9のセパレータを作製した。
【0075】
【表2】

【0076】
表2中の原料の記号は、表1の記号に該当する。
【0077】
[評価]
各セパレータについて、下記の評価を行い、結果を表3に示した。
【0078】
<厚み>
JIS P8118に準拠して厚みを測定し、その平均値を算出した。
【0079】
<密度>
JIS P8124に準拠してセパレータの坪量を測定し、坪量を厚みで除して100倍した値を密度とした。
【0080】
<最大細孔径>
ASTM F316−86に規定されるバブルポイント法を用いて最大細孔径を測定した。
【0081】
<ピンホール>
セパレータの裏面から光を当て、セパレータにピンホールがあるかどうかを目視で判定した。ピンホールがある場合を「あり」、ない場合を「なし」と記した。
【0082】
<単位突刺強度>
セパレータを50mm幅、200mm長に切り揃えた。卓上型材料試験機(商品名:STA−1150、(株)オリエンテック製)に据え付けられた40mmφの固定枠にセパレータを装着し、直径1.0mmの金属針((株)オリエンテック製)をセパレータ面に対して直角に50mm/分の一定速度で貫通するまで降ろしたときの最大荷重(N)を任意の5か所以上で計測し、その平均値を坪量で除して得られる値を単位突刺強度とした。
【0083】
<破断伸度>
セパレータを50mm幅、250mm長に切り揃えた。250mm長はセパレータの流れ方向とした。試験片の上下を卓上型材料試験機((株)オリエンテック製)のチャックに100mm間隔で固定し、100mm/minの一定速度で試験片が切断するまで引き上げていったときの破断伸度を示した。1つのセパレータにつき、5本以上の試験片を測定し、その平均値とした。
【0084】
<巻回性>
セパレータを50mm幅、500mm長に切り揃えた。正極と負極を45mm幅、490mm長に切り揃えた。セパレータ、負極、セパレータ、正極の順に1枚ずつ積層し、これを巻回機にかけて巻回した。このとき、セパレータが切断や破れることなく、巻回できた場合を「○」、セパレータの毛羽立ちが生じたが、巻回機の張力を弱めに調整することにより巻回できた場合を「△」、セパレータの切断や破れが生じた場合を「×」とした。正極は、活物質のコバルト酸リチウム、導電助剤のアセチレンブラック、結着剤のポリフッ化ビニリデンを質量比率で90:5:5に混合したスラリーをアルミニウム集電体の両面に塗布したものを用いた。負極は、天然黒鉛97質量%とポリフッ化ビニリデン3質量%の比率で混合したスラリーを銅箔集電体の両面に塗布したものを用いた。
【0085】
<電解液保持率>
セパレータについて、100mm幅×100mmに切り揃え、電解液に1分間浸漬した後、1分間吊るして余剰電解液を切り、セパレータの質量W1を測定した。W1から電解液を保持させる前のセパレータの質量W0を差し引いて得られる値W2をW0で除して100倍した値を電解液保持率(%)とした。電解液としては、LiPFを1mol/l溶解させた混合溶液を使用した。混合溶液は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを質量比率で3:7としたものである。
【0086】
<耐デンドライト性>
セパレータの片面に金属リチウム箔を、セパレータの反対側に正極を配置して積層し、電解液を注入してラミネートセルを100個ずつ作製した。0.5mA/cmで3.6Vまで定電流充電し、さらに3.6Vを24時間印加し、過充電した。この過充電中に異常電流が流れた場合を内部短絡したと見なし、過充電を中止し、ラミネートセルを開封してリチウムデンドライトの発生状態を確認した。過充電により、リチウムデンドライトが発生してセパレータを貫通したセルの割合を耐デンドライト性とした。この割合が少ないほど、耐デンドライト性に優れることを意味する。正極は、<巻回性>の評価に用いた正極と同様である。電解液は、<電解液保持率>の評価に記載したものと同様である。
【0087】
【表3】

【0088】
実施例1〜18のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維とを含有してなる湿式不織布からなるため、ピンホールがなく、最大細孔径が小さく、耐デンドライト性に優れていた。極細繊維同士の交点、該極細繊維と溶剤紡糸セルロース繊維の交点、溶剤紡糸セルロース繊維同士の交点がポリプロピレンで接着されていて、突刺強度が強く、破断伸度が大きく、巻回性に優れていた。また、セパレータ表面及び内部に皮膜がないため、電解液保持率が高かった。実施例1〜18のリチウム二次電池用セパレータは、湿式不織布が140〜175℃で熱処理されてなるため、ポリプロピレンからなる極細繊維が溶融せず、繊維形状を維持しており、それが骨組みを形成するため、大きな破断伸度を示した。
【0089】
実施例19のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維が分割されてなる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維からなるため、ピンホールはなく、最大細孔径は小さく、電解液保持率は高かったが、熱処理温度が140℃未満だったため、繊維間の交点の接着が不十分な箇所があり、実施例1〜18と比較して突刺強度が弱く、破断伸度が小さく、巻回性が悪かった。
【0090】
実施例20のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維が分割されてなる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維からなるため、ピンホールがなく、最大細孔径が小さく、電解液保持率と耐デンドライト性は良かったが、熱処理温度が175℃を超えていたため、熱量が過剰になり、ポリプロピレンからなる極細繊維の大部分が溶融して繊維形状を消失し、セパレータ表面及び内部に薄く脆い皮膜が形成されているため、実施例1〜18と比較して、突刺強度が弱く、破断伸度が小さく、巻回性が悪かった。
【0091】
一方、比較例1のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維が分割されてなる極細繊維のみで構成されているため、ピンホールがなく、最大細孔径は小さめで、突刺強度は強く、破断伸度が大きく、巻回性と耐デンドライト性は良かったが、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を含有しないため、セパレータ内部の空隙が少なく、電解液保持率は悪かった。
【0092】
比較例2のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維が分割されてなる極細繊維と、それ以外の合成短繊維とからなるため、突刺強度は強く、電解液保持率は良かったが、破断伸度が小さく、巻回性が悪かった。叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を含有しないため、最大細孔径が大きく、ピンホールが存在し、耐デンドライト性が悪かった。
【0093】
比較例3のリチウム二次電池用セパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維100%からなるため、最大細孔径が小さく、ピンホールがなく、電解液保持率は高かったが、突刺強度が弱く、破断伸度が小さく、巻回性が悪かった。突刺強度が著しく弱いため、耐デンドライト性がやや悪かった。
【0094】
比較例4及び5のリチウム二次電池用セパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維と合成短繊維からなるため、最大細孔径が小さく、ピンホールがなく、電解液保持率は高く、耐デンドライト性は良かったが、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維が分割されてなる極細繊維を含有しないため、突刺強度が弱く、破断伸度が小さく、巻回性が悪かった。
【0095】
比較例6のリチウム二次電池用セパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維と合成短繊維からなるため、電解液保持率は高かったが、合成短繊維の繊維径が太いため、最大細孔径がやや大きく、ピンホールがあり、耐デンドライト性が悪かった。エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維が分割されてなる極細繊維を含有しないため、突刺強度が弱く、破断伸度が小さく、巻回性が悪かった。
【0096】
比較例7のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体のゲル皮膜がセパレータ表面及び内部に形成されているため突刺強度は強く、巻回性は良かったが、破断伸度が小さく、セパレータ内部の空隙が少なく、電解液保持率が悪かった。また、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を含有しないため、ピンホールが存在し、耐デンドライト性が劣っていた。
【0097】
比較例8のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維が分割されてなる極細繊維とそれ以外の合成短繊維からなるため、突刺強度は強かったが、繊維同士の接着が不十分なため、破断伸度が小さく、巻回性が悪かった。叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を含有しないため、最大細孔径が大きく、ピンホールがあり、耐デンドライト性が悪かった。また、密度が著しく高いため、電解液保持率が悪かった。
【0098】
比較例9のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維が分割されてなる極細繊維とそれ以外の合成短繊維からなるため、突刺強度は強かったが、繊維同士の接着が不十分なため、破断伸度が小さく、巻回性が悪かった。叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を含有しないため、最大細孔径が大きく、ピンホールがあり、耐デンドライト性が悪かった。
【0099】
≪実施例21〜37≫
[叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の物性値]
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維について、
(1)ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度:「変法濾水度」
(2)長さ加重平均繊維長:「平均繊維長」
を表4に示す。なお、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維は、叩解されていない溶剤紡糸セルロース短繊維(繊度1.7dtex、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して作製した。
【0100】
表4に、使用した分割型複合繊維、合成短繊維、溶剤紡糸セルロース繊維を示した。表4中の分割型複合繊維の断面形状は、分割型複合繊維全体の断面が円形で、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンの配置が放射状型であることを意味する。
【0101】
【表4】

【0102】
<スラリー25〜37の調製>
表5に示したスラリー25〜37の配合率になるように、分割型複合繊維B1と溶剤紡糸セルロース繊維を計量した。スラリー1と同様にしてスラリー25〜37を調製した。いずれのスラリーにおいても、分割型複合繊維B1は、ほとんど分割していることを確認した。
【0103】
<スラリー38〜41の調製>
表5に示したスラリー38〜41の配合率になるように、分割型複合繊維B1、溶剤紡糸セルロース繊維、合成短繊維を計量した。スラリー12と同様にしてスラリー38〜41を調製した。いずれのスラリーにおいても、分割型複合繊維B1は、ほとんど分割していることを確認した。
【0104】
実施例21〜37に対応するスラリーを2連式の円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を110℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表6に示した熱処理温度と熱処理時間に従って、金属ロールに湿式不織布の表裏面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、実施例21〜37のセパレータを作製した。
【0105】
【表5】

【0106】
表5中の原料の記号は、表1及び表4の記号に該当する。
【0107】
[評価]
各セパレータについて、下記の評価を行い、結果を表6に示した。
【0108】
<厚み>
JIS P8118に準拠して厚みを測定し、その平均値を算出した。
【0109】
<密度>
JIS P8124に準拠してセパレータの坪量を測定し、坪量を厚みで除して100倍した値を密度とした。
【0110】
<浮き>
セパレータを湿式抄紙する際に、原料スラリーを円網抄紙機に送液する途中の希釈種箱の中で、分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維がスラリーの水面に浮いているか否か目視確認した。浮いている極細繊維の量が多い場合を「多」、少ない場合を「少」、多くもなく、少なくもない場合を「中」とした。
【0111】
<抄紙性>
セパレータを高速で安定して湿式抄紙できた場合を「◎」、やや高速で安定して湿式抄紙できた場合を「○」、10m/min以上の低速で安定して湿式抄紙できた場合を「△」、10m/min未満の抄紙速度でしか安定して湿式抄紙できなかった場合を「×」とした。抄紙速度が速いほど、抄紙性が良いことを意味する。
【0112】
<表面平滑性>
セパレータの表面について、任意の10か所の厚みを測定し、その標準偏差(μm)を算出し、表面平滑性の指標とした。標準偏差の値が小さいほど表面平滑性に優れている。
【0113】
<巻回性>
セパレータを50mm幅、500mm長に切り揃えた。正極と負極を45mm幅、490mm長に切り揃えた。セパレータ、負極、セパレータ、正極の順に1枚ずつ積層し、これを巻回機にかけて巻回した。このとき、セパレータが切断や破れることなく、巻回できた場合を「○」、セパレータの毛羽立ちが生じたが、巻回機の張力を弱めに調整することにより巻回できた場合を「△」、セパレータの切断や破れが生じた場合を「×」とした。正極は、活物質のコバルト酸リチウム、導電助剤のアセチレンブラック、結着剤のポリフッ化ビニリデンを質量比率で90:5:5に混合したスラリーをアルミニウム集電体の両面に塗布したものを用いた。負極は、天然黒鉛97質量%とポリフッ化ビニリデン3質量%の比率で混合したスラリーを銅箔集電体の両面に塗布したものを用いた。
【0114】
<ピンホール>
セパレータの裏面から光を当て、セパレータにピンホールがあるかどうかを目視で判定した。ピンホールがある場合を「あり」、ない場合を「なし」と記した。
【0115】
<耐デンドライト性>
セパレータの片面に金属リチウム箔を、セパレータの反対側に正極を配置して積層し、電解液を注入してラミネートセルを100個ずつ作製した。0.5mA/cmで3.6Vまで定電流充電し、さらに3.6Vを24時間印加し、過充電した。この過充電中に異常電流が流れた場合を内部短絡したと見なし、過充電を中止し、ラミネートセルを開封してリチウムデンドライトの発生状態を確認した。過充電により、リチウムデンドライトが発生してセパレータを貫通したセルの割合を耐デンドライト性とした。この割合が少ないほど、耐デンドライト性に優れることを意味する。正極には、活物質のコバルト酸リチウム、導電助剤のアセチレンブラック、結着剤のポリフッ化ビニリデンを質量比率で90:5:5に混合したスラリーをアルミニウム集電体の両面に塗布したものを用いた。電解液は、LiPFを1mol/l溶解させた混合溶液を使用した。混合溶液は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを質量比率で3:7としたものである。
【0116】
【表6】

【0117】
実施例21〜28、32〜37のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維とを含有してなる湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.10〜2.00mmであるため、繊維同士の交点がポリプロピレンで接着されており、巻回性に優れていた。充放電の繰り返しによって、リチウムデンドライトが電極表面に生成した場合でもリチウムデンドライトが正負極間で導通することを防ぐことができ、耐リチウムデンドライト性に優れていた。
【0118】
実施例29のリチウム二次電池用セパレータは、巻回性は良かったが、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長が0.10mm未満であるため、濾水性が悪く、抄紙性が悪く、表面平滑性が悪く、ピンホールが多く、耐デンドライト性が悪かった。
【0119】
実施例30のリチウム二次電池用セパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長が2.00mmを超えていたため、抄紙性と巻回性は良かったが、表面平滑性と耐デンドライト性が悪かった。
【0120】
実施例31のリチウム二次電池用セパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が400mlを超え、且つ、長さ加重平均繊維長が2.00mmを超えているため、抄紙性と巻回性は良かったが、表面平滑性と耐デンドライト性が悪かった。
【0121】
≪実施例38〜53≫
[叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の物性値]
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維について、
(1)繊維長分布ヒストグラムにおける最大頻度ピークの繊維長:「最大頻度ピークの繊維長」
(2)1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合:「1.00mm以上の繊維割合」
(3)繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾き:「割合の傾き」
(4)長さ加重平均繊維長:「長さ加重平均繊維長」
(5)ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度:「変法濾水度」
を表7に示す。なお、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維C14〜C25は、叩解されていない溶剤紡糸セルロース短繊維(繊度1.7dtex、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して作製した。
【0122】
【表7】

【0123】
<スラリー42〜53の調製>
表8に示したスラリー42〜53の配合率になるように、分割型複合繊維B1、溶剤紡糸セルロース繊維を計量した。スラリー1と同様にしてスラリー42〜53を調製した。いずれのスラリーにおいても、分割型複合繊維B1は、ほとんど分割していることを確認した。
【0124】
<スラリー54〜57の調製>
表8に示したスラリー54〜57の配合率になるように、分割型複合繊維B1、溶剤紡糸セルロース繊維、合成短繊維を計量した。スラリー12と同様にしてスラリー54〜57を調製した。いずれのスラリーにおいても、分割型複合繊維B1は、ほとんど分割していることを確認した。
【0125】
実施例38〜53に対応するスラリーを2連式の円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を110℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表9に示した熱処理温度と熱処理時間に従って、金属ロールに湿式不織布の表裏面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、実施例38〜53のセパレータを作製した。実施例21と同様の方法でセパレータの評価を行い、評価結果を表9に示した。
【0126】
【表8】

【0127】
表8中の原料の記号は、表1及び表7の記号に該当する。
【0128】
【表9】

【0129】
実施例38〜47、50〜53で作製したリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維とを含有してなる湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.10〜2.00mmであり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%以上であるため、巻回性と耐デンドライト性に優れるだけでなく、抄紙性が良好であった。分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維がスラリーの水面に浮くことが抑制される傾向にあり、表面平滑性が向上した。
【0130】
実施例48のセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%以上であるが、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有さないため、スラリーの水面に極細繊維が多く浮き、湿式不織布の表面に束状に堆積したため、実施例38〜47、50〜53よりも表面平滑性が劣っていた。
【0131】
実施例49のセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%未満であるため、スラリーの水面に極細繊維が多く浮き、湿式不織布の表面に束状に堆積したため、実施例38〜47、50〜53よりも表面平滑性が劣っていた。
【0132】
実施例38〜41、43〜46、50〜53で作製したリチウムイオン電池用セパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−3.0以上−0.5以下であるため、極細繊維との絡みが良好で、極細繊維の浮きがより少なく、表面平滑性が優れていた。実施例42のセパレータは、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−3.0よりもマイナス側であるため、スラリーの水面に極細繊維が多く浮き、湿式不織布の表面に束状に堆積したため、実施例38〜41、43〜46、50〜53よりも表面平滑性が劣っていた。実施例47のセパレータは、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−0.5よりもプラス側であるため、抄紙性は良かったが、スラリーの水面に極細繊維がやや多めに浮き、湿式不織布の表面に束状に堆積したため、実施例38〜41、43〜46、50〜53よりも表面平滑性がやや劣っていた。
【0133】
≪実施例54〜68≫
[叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の物性値]
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維について
(1)1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合:「1.00mm以上の繊維割合」
(2)繊維長分布ヒストグラムにおける最大頻度ピークの繊維長:「最大頻度ピークの繊維長」
(3)最大頻度ピーク以外のピークの繊維長:「第2ピークの繊維長」
(4)ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した濾水度:「変法濾水度」
(5)長さ加重平均繊維長:「長さ加重平均繊維長」
を表10に示す。なお、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維C26〜C36は、叩解されていない溶剤紡糸セルロース短繊維(繊度1.7dtex、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して作製した。
【0134】
【表10】

【0135】
<スラリー58〜68の調製>
表11に示したスラリー58〜68の配合率になるように、分割型複合繊維B1、溶剤紡糸セルロース繊維を計量した。スラリー1と同様にしてスラリー58〜68を調製した。いずれのスラリーにおいても、分割型複合繊維B1は、ほとんど分割していることを確認した。
【0136】
<スラリー69〜72の調製>
表11に示したスラリー69〜72の配合率になるように、分割型複合繊維B1、溶剤紡糸セルロース繊維、合成短繊維を計量した。スラリー12と同様にしてスラリー69〜72を調製した。いずれのスラリーにおいても、分割型複合繊維B1は、ほとんど分割していることを確認した。
【0137】
実施例54〜68に対応するスラリーを2連式の円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を110℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表12に示した熱処理温度と熱処理時間に従って、金属ロールに湿式不織布の表裏面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、実施例54〜68のセパレータを作製した。実施例21と同様の方法でセパレータの評価を行い、評価結果を表12に示した。
【0138】
【表11】

【0139】
表11中の原料の記号は、表1及び表10の記号に該当する。
【0140】
【表12】

【0141】
実施例54〜62、65〜68で作製したリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維とを含有してなる湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.10〜2.00mmであり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上であるため、巻回性と耐デンドライト性に優れるだけでなく、抄紙性がさらに良好であった。
【0142】
実施例63で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有さず、1.00mm超に最大頻度ピークを有するため、抄紙性は良かったが、実施例54〜62、65〜68と比較して表面平滑性が悪かった。
【0143】
実施例64で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有するが、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が5%と少ないため、巻回性と耐デンドライト性は良かったが、実施例54〜62、65〜68と比較して抄紙性と表面平滑性で劣っていた。
【0144】
実施例54〜56、58〜61、65〜68で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有するため、抄紙性に優れていた。実施例57で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に存在するピークが1.50mmより短いため、実施例54〜56、58〜61、65〜68と比較して、抄紙性と表面平滑性で劣っていた。実施例62で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に存在するピークが3.50mmより長いため、実施例54〜56、58〜61、65〜68と比較して表面平滑性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明のリチウム二次電池用セパレータは、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等のリチウム二次電池に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維とを含有してなる湿式不織布からなることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項2】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の下記で定義される変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.10〜2.00mmであることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用セパレータ。
変法濾水度:ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した濾水度。
【請求項3】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%以上である請求項2記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項4】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−3.0以上−0.5以下である請求項3記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項5】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上である請求項2記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項6】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する請求項5記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項7】
溶融された少なくとも一部のポリプロピレンによって、極細繊維同士の交点及び/又は極細繊維と溶剤紡糸セルロース繊維の交点が接着されてなる請求項1〜6のいずれかに記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項8】
湿式不織布が140〜175℃で熱処理されてなる請求項1〜7のいずれかに記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のリチウム二次電池用セパレータを用いてなることを特徴とするリチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−227116(P2012−227116A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273290(P2011−273290)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】