説明

リチウム二次電池

【課題】容量が大きく、かつ、安全性が高いリチウム二次電池用正極材料を提供する。
【解決手段】組成式Li1.1+xNi(式中、Mは、Co又はCo及びMnであり、Mは、Mo、W又はNbである。−0.07≦x≦0.1、0.6≦a≦0.9、0.05≦b≦0.38、0.02≦c≦0.06である。)で表される正極活物質のうち組成が異なる二種類以上を混合して用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
プラグインハイブリッド自動車用電池としてリチウム二次電池を採用するためには、高い安全性を維持しながら、低コスト化、低体積化、軽量化及び高出力化を実現する必要がある。このため、正極材料に含まれる正極活物質は、容量が大きく、かつ、安全性が高いことが要求される。
【0003】
特許文献1には、第1リチウムニッケル複合酸化物で構成されたコア部と、第1リチウムニッケル複合酸化物と異なる複数のリチウムニッケル複合酸化物で構成された表層部とを含む活物質粒子が開示されている。
【0004】
特許文献2には、結晶構造が空間群R−3mの三方晶に帰属し、酸素席占有率及び3bサイト−6cサイト間距離に数値的特徴を有するリチウム遷移金属酸化物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、組成式LiNi1−b−cで表され、Li含有量は0.95≦a≦1.05である正極活物質が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−302880号公報
【特許文献2】特開2010−47466号公報
【特許文献3】特開2000−323143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、異種元素が正極活物質の表面のみに存在しているため、昇温した際に起こる結晶格子中からの酸素放出を低減させることができず、充電状態の安全性を十分に確保することができない。
【0008】
特許文献2においては、Liの遷移金属に対する割合が1〜1.08であり、元素置換による容量低下を十分に補てんすることはできない。
【0009】
特許文献3に記載されている材料は、Li含有量が少ないため、元素置換による容量低下を十分に補てんすることはできない。
【0010】
このように、特許文献1〜3の技術を用いても、プラグインハイブリッド自動車用電池に要求される容量及び安全性を達成するために十分とは言えない。
【0011】
本発明の目的は、プラグインハイブリッド自動車用電池に要求される容量及び安全性を確保したリチウム二次電池用正極材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明においては、組成式Li1.1+xNi(式中、Mは、Co又はCo及びMnであり、Mは、Mo、W又はNbである。−0.07≦x≦0.1、0.6≦a≦0.9、0.05≦b≦0.38、0.02≦c≦0.06である。)で表される正極活物質のうち組成が異なる二種類以上の活物質を混合して用いる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容量が大きく、かつ、安全性が高いリチウム二次電池用正極材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】充電状態の正極と電解液との混合物の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。
【図2】リチウム二次電池の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、容量が大きく、かつ、安全性が高いリチウム二次電池用正極材料及びこれを用いたリチウム二次電池に関する。
【0016】
プラグインハイブリッド自動車用電池としてリチウム二次電池を採用するためには、容量が大きく、かつ、安全性が高いことが要求される。リチウム二次電池において、これらの特性は、正極活物質の性質と密接な関係がある。組成式LiMO(Mは遷移金属である。)で表される層状系の正極活物質において高容量を得るためには、遷移金属中のNi含有量を増やす必要がある。
【0017】
しかし、Ni含有量の多い(高Ni含有量の)正極活物質は、高容量が得られるが、充電状態における熱安定性が低いという欠点を有する。すなわち、内部短絡などにより電池の温度が上昇した際、比較的低温度で正極から酸素が放出され、この酸素が電解液と反応して急激な発熱を伴う反応を起こす。
【0018】
本発明者は、適切な組成の正極活物質を二種類以上混合して用いることにより、容量を大きくするとともに、充電状態で昇温した場合の最大発熱量を抑制することができることを見出した。具体的には、高Ni含有量の正極活物質にMo、W又はNbを添加したものを二種類以上混合することにより、充電状態の熱安定性を改善した。
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る正極材料並びにこれを用いた正極合剤、正極及びリチウム二次電池について説明する。
【0020】
前記正極材料は、組成式Li1.1+xNi(式中、Mは、Co又はCo及びMnであり、Mは、Mo、W又はNbである。−0.07≦x≦0.1、0.6≦a≦0.9、0.05≦b≦0.38、0.02≦c≦0.06である。)で表される正極活物質のうち組成が異なる二種類以上の活物質を含むものである。
【0021】
前記正極材料は、MがMoである正極活物質、及びMがW又はNbである正極活物質を含む。
【0022】
前記正極材料において、正極活物質は、組成の異なる三種類以上を含む。
【0023】
前記正極材料は、MがMoである正極活物質、MがWである正極活物質、及びMがNbである正極活物質を含む。
【0024】
前記正極材料においては、0.7≦a≦0.8であることが望ましい。
【0025】
前記正極材料においては、−0.05≦x≦0.05であることが望ましい。
【0026】
前記正極材料においては、0.03≦c≦0.05であることが望ましい。
【0027】
前記正極合剤は、前記正極材料と、バインダとを含む。なお、前記正極合剤は、さらに、導電助剤を含んでいてもよい。
【0028】
前記正極は、前記正極合剤と、この正極合剤を塗工した正極集電板とを含む。
【0029】
前記リチウム二次電池は、リチウムを吸蔵放出可能な正極及び負極と、前記正極と前記負極との間に挟まれたセパレータと、非水電解質とを含み、前記正極は、前記正極合剤を含む。
【0030】
上記の組成式において、x<−0.07の場合、Li層中に存在するLiの量が少ないため、層状の結晶構造を維持できなくなる。一方、0.1<xの場合、複合酸化物における遷移金属の量が少なくなるため、電池の容量が小さくなる。
【0031】
上記の組成式においてa<0.6の場合、充放電反応に主に寄与するNiの含有量が少ないため、容量が低下する。一方、a>0.9の場合、他の元素の含有量が少なくなるため、熱安定性が低下する。
【0032】
上記の組成式において、b>0.38の場合、充放電反応に主に寄与するNiの含有量が減少するため、容量が低下する。また、b<0.05の場合、クーロン効率が低下する。
【0033】
上記の組成式において、c<0.02の場合、高温保存時の劣化を抑制することができない。また、c>0.06の場合、結晶構造が不安定になる。
【0034】
Ni含有量は、70〜80%が更に好ましい。すなわち、0.7≦a≦0.8であることが好ましい。また、活物質に含まれるMの含有量は3〜5%が更に好ましい。すなわち、0.03≦c≦0.05であることが好ましい。
【0035】
前記正極材料は、添加元素としてMo、W又はNbを含まない高Ni含有量の正極活物質で構成された正極材料と比較して、電解液と混合して昇温させた際の最大発熱量を大幅に低下させることができ、リチウム二次電池に適用した場合の高温状態における安全性を向上することができる。
【0036】
(正極活物質の作製)
リチウムを含まない原料としては、酸化ニッケル、二酸化マンガン及び酸化コバルト並びに酸化モリブテン、酸化タングステン及び酸化ニオブを適宜使用し、所定の原子比となるように秤量した後、純水を加えて混合することによりスラリーとした。
【0037】
このスラリーに含まれる粒子の平均粒径が0.2μmとなるまでジルコニアのビーズミルで粉砕した。このスラリーにポリビニルアルコール(PVA)溶液を固形分比に換算して1wt.%添加し、さらに1時間混合し、スプレードライヤーにより乾燥して造粒した。
【0038】
造粒した粒子状の材料にLi:(NiMnCoM)比が1.00〜1.25:1となるように水酸化リチウム及び炭酸リチウムを加えた。ここで、Mは、Mo、W及びNbからなる元素群である。
【0039】
次に、得られた粒子状の材料(粉末)を750〜950℃で10時間焼成することにより、層状構造の結晶を有する材料を得た。その後、この材料を解砕して粒子状の正極活物質を得た。
【0040】
さらに、この正極活物質のうち粒径30μm以上の粗大粒子を分級によって除去した後、電極の作製に用いた。
【0041】
正極活物質の作製方法は、上記の方法に限定されるものではなく、共沈法など、他の方法でもよい。
【0042】
表1〜3は、上記の方法で作製した正極活物質の組成比を示したものである。
【0043】
表1は、MとしてMoを用いた第一の正極活物質の組成比を示したものである。第一の正極活物質は、正極活物質1−1〜1−22である。このうち、実施例に用いたものは、正極活物質1−1〜1−15である。
【0044】
表2は、MとしてWを用いた第二の正極活物質の組成比を示したものである。第二の正極活物質は、正極活物質2−1〜2−19である。このうち、実施例に用いたものは、正極活物質2−1〜2−15である。
【0045】
表3は、MとしてNbを用いた第三の正極活物質の組成比を示したものである。第三の正極活物質は、正極活物質3−1である。これは、実施例に用いた。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【実施例1】
【0049】
(試作電池)
まず、正極活物質1−1と正極活物質2−1とを質量比で50:50になるように秤量した。
【0050】
混合した正極活物質と炭素系導電剤とを質量比で85:10.7になるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。正極活物質と導電剤との混合材料とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解した結着剤とを、混合材料と溶質である結着剤とが質量比で95.7:4.3になるように均一に混合してスラリーとした。
【0051】
このスラリーを厚さ20μmのアルミ集電体箔上に塗布した後、120℃で乾燥し、プレスにて電極密度が2.7g/cmになるように圧縮成形した。その後、直径15mmの円板状に打ち抜き、正極を作製した。
【0052】
作製した正極と、金属リチウムで形成された負極とを用い、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを体積比で1:2の割合で混合した混合溶媒にLiPFを1.0モル/リットルとなるように溶解させたものを非水電解液として用いて試作電池を作製した。
【0053】
次に、前述の試作電池を用いて以下の試験を行った。
【0054】
(充放電試験)
0.1Cで上限電圧4.3Vから下限電圧2.7Vまでの充放電を3回繰り返して初期化した。さらに、0.1Cで上限電圧4.3Vから下限電圧2.7Vまでの充放電を行い、放電容量を測定した。
【0055】
(示差走査熱量測定)
4.3Vまで定電流/定電圧で充電した後、電極を試作電池から取り出し、DMCで洗浄した後、直径3.5mmの円板状に打ち抜き、サンプルパンに入れ、電解液を1μl(マイクロリットル)加えて密封し、試料とした。
【0056】
この試料を室温から400℃まで5℃/minで昇温した際の発熱挙動を調べた。
【0057】
〔実施例2〜18、比較例1〜7〕
表4に示す正極活物質の組合せを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で試作電池を作成し、充放電試験及び示差走査熱量測定を行った。なお、実施例10については正極活物質1−1、正極活物質2−1及び正極活物質3−1を質量比で1:1:1の割合で混合した。
【0058】
実施例1〜10及び13〜18並びに比較例1、3、4及び6、7においては、得られた放電容量を比較例1の放電容量で除した値を容量比とした。また、これらの実施例及び比較例においては、得られた発熱量の最大値(最大発熱量)を比較例1の最大発熱量で除した値を最大発熱量比とした。
【0059】
実施例11及び12並びに比較例2及び5においては、得られた放電容量の値を比較例2の放電容量の値で除した値を容量比とした。また、これらの実施例及び比較例においては、得られた発熱量の最大値(最大発熱量)を比較例2の最大発熱量で除した値を最大発熱量比とした。
【0060】
表4は、表1〜3に示す正極活物質を混合して作製した実施例及び比較例に係る正極活物質の混合物をまとめて示したものである。
【0061】
表5は、実施例1〜10並びに比較例1、3及び4について容量比及び最大発熱量比をまとめて示したものである。
【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
表5において、実施例1〜7は、Mnを含まずMoを含む正極活物質と、Mnを含まずWを含む正極活物質とを混合したものであり、それぞれの正極活物質のLiの組成を103〜120の範囲で変化させたものである。
【0065】
実施例8は、実施例1で用いた正極活物質の組成のうち、WをNbに置き換えたものである。
【0066】
実施例9は、実施例1で用いた正極活物質1−1の組成のうち、Niを減らしてCoを増やしたものである。
【0067】
実施例10は、実施例1の正極活物質の混合物に更にNbを含む正極活物質3−1を加えたものである。
【0068】
比較例1は、Mo、W及びNbを含まない正極活物質を一種類だけ用いたものであり、実施例に比べてNiが少なく、Mnを含み、Coが多いものである。
【0069】
比較例3は、実施例2よりもLiが少ない正極活物質を二種類混合したものである。
【0070】
比較例4は、実施例7よりもLiが多い正極活物質を二種類混合したものである。
【0071】
表5より、実施例1〜10においては、比較例1と比べて放電容量が大きく、最大発熱量が小さいことがわかる。
【0072】
比較例1と比べて放電容量が大きい値を示したのは、それぞれの実施例で選択した正極活物質に含まれる遷移金属のうちNiの含有量が多いためであると考える。また、比較例1と比べて最大発熱量が小さいのは、充電状態の熱安定性に寄与する元素(Mo、W及びNb)が2%以上含まれるためであると考える。
【0073】
一方、比較例3及び4においては、放電容量の向上及び最大発熱量の低減を両立することはできなかった。比較例3においては、Li含有量が少ないため、容量が低下したと考える。比較例4においては、Li含有量が多すぎるため、結晶中に取り込まれず、容量が低下したと考える。
【0074】
表6は、実施例11及び12並びに比較例2及び5について容量比及び最大発熱量比をまとめて示したものである。
【0075】
【表6】

【0076】
実施例11は、実施例9で用いた正極活物質2−1の組成のうち、Niを減らしてCoを増やしたものである。
【0077】
実施例12は、実施例11で用いたそれぞれの正極活物質の組成のうち、Niを更に減らしてCoを増やしたものである。
【0078】
比較例2は、Mo、W及びNbを含まない正極活物質を一種類だけ用いたものであり、実施例に比べてNiが少なく、Mnを含み、Coが多いものである。
【0079】
比較例5は、実施例12よりもNiが少なく、Coが多い正極活物質を二種類混合したものである。
【0080】
表6より、実施例11及び12においては、比較例2と比べて放電容量が大きく、最大発熱量が小さいことがわかる。
【0081】
放電容量が大きい値を示したのは、それぞれの実施例で選択した正極活物質に含まれる遷移金属のうちNiの含有量が多いためであると考える。また、最大発熱量が小さいのは、充電状態の熱安定性に寄与するMoが2%以上含まれるためであると考える。
【0082】
一方、比較例5においては、放電容量の向上及び最大発熱量の低減を両立することができなかった。比較例5においては、遷移金属のうちNiの含有量が50%と少ないため、放電容量が低下したと考える。
【0083】
表7は、実施例13及び14並びに比較例6及び7について容量比及び最大発熱量比をまとめて示したものである。
【0084】
【表7】

【0085】
実施例13は、実施例1で用いたそれぞれの正極活物質の組成のうち、Mo又はWを減らしてCoを増やしたものである。
【0086】
実施例14は、実施例1で用いたそれぞれの正極活物質の組成のうち、Coを減らしてMo又はWを増やしたものである。
【0087】
比較例6は、Mo、W及びNbを含まない正極活物質を一種類だけ用いたものであり、で用いた正極活物質1−1に比べてCoが多いものである。
【0088】
比較例7は、実施例よりもMo又はWを増やし、Coを減らしたものである。
【0089】
表7より、実施例13及び14においては、比較例1と比べて放電容量が大きく、最大発熱量が小さいことがわかる。
【0090】
放電容量が大きい値を示したのは、それぞれの実施例で選択した正極活物質に含まれる遷移金属のうちNiの含有量が多いためであると考える。また、最大発熱量が小さいのは、充電状態の熱安定性に寄与するMo、W又はNbを2%以上含むためであると考える。
【0091】
一方、比較例6及び7においては、放電容量の向上及び最大発熱量の低減を両立することができなかった。比較例6においては、最大発熱量の低減に寄与するMo、W及びNbを含まないため、最大発熱量を低減することができないと考える。一方、比較例7においては、Moの含有量が8%と多いため、放電容量が低下したと考える。
【0092】
表8は、実施例15〜18及び比較例8について容量比及び最大発熱量比をまとめて示したものである。
【0093】
【表8】

【0094】
実施例15〜18は、実施例1で用いたそれぞれの正極活物質の組成のうち、Coを減らしてMnを添加したものである。それぞれの実施例は、Mnの組成を2〜8の範囲で変化させたものである。
【0095】
表8より、実施例15〜18においては、比較例1と比べて放電容量が大きく、最大発熱量が小さいことがわかる。放電容量が大きい値を示したのは、それぞれの実施例で選択した正極活物質に含まれる遷移金属のうちNiの含有量が多いためであると考える。また、最大発熱量が小さいのは、充電状態の熱安定性に寄与するMo、W又はNbを2%以上含むためであると考える。
【0096】
以上より、正極活物質を表す組成式のMとしてCoとMnを用い、MとしてMoを用いた場合にも、放電容量の向上と最大発熱値の低減を両立できることがわかった。
【0097】
図1は、実施例1及び比較例1の示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)の結果を示したものである。横軸に温度をとり、縦軸に単位質量当たりの熱流量をとっている。
【0098】
本図において、実施例1は、比較例1に比べて熱流量の温度依存性が小さくなっている。これに対して、比較例1は、290℃付近に急峻なピークを有する。
【0099】
この結果から、実施例1は、充電状態における熱安定性が高いことがわかる。
【0100】
図2は、リチウム二次電池を示す断面図である。
【0101】
本図においては、集電体の両面に正極材料を塗布した正極板3(正極とも呼ぶ。)と、集電体の両面に負極材料を塗布した負極板4(負極とも呼ぶ。)とが直接接触しないように、正極板3と負極板4と間にセパレータ5を配置して捲回することにより、電極群を形成している。この電極群は、SUS製の電池缶9に挿入してある。セパレータ5は、微多孔性ポリプロピレンフィルムで形成されている。
【0102】
電池缶9には、非水電解液(例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを体積比で1:2とした混合溶媒に1.0モル/リットルのLiPFを溶解させたもの)を注入してある。電池缶9は、パッキン10を取り付けた密閉蓋部8を用いて密閉してある。正極板3のリード片6は、密閉蓋部8に電気的に接続してある。また、負極板4のリード片7は、電池缶9の底部に電気的に接続してある。密閉蓋部8と電極群との間、及び電池缶9の底部と電極群との間には、絶縁板11を配置してある。
【0103】
以上のように、リチウム二次電池の正極材料として本実施形態で示した材料を用いることにより、プラグインハイブリッド自動車用電池に要求される性能である大容量、高出力及び高い安全性を達成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、特に、リチウム二次電池の正極材料に適用することができる。また、プラグインハイブリッド自動車用のリチウム二次電池にも利用可能である。
【符号の説明】
【0105】
3:正極板、4:負極板、5:セパレータ、6、7:リード片、8:密閉蓋部、9:電池缶、10:パッキン、11:絶縁板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式Li1.1+xNi(式中、Mは、Co又はCo及びMnであり、Mは、Mo、W又はNbである。−0.07≦x≦0.1、0.6≦a≦0.9、0.05≦b≦0.38、0.02≦c≦0.06である。)で表される正極活物質のうち組成が異なる二種類以上を含むことを特徴とする正極材料。
【請求項2】
前記MがMoである正極活物質、及び前記MがW又はNbである正極活物質を含むことを特徴とする請求項1記載の正極材料。
【請求項3】
前記正極活物質は、組成の異なる三種類以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の正極材料。
【請求項4】
前記MがMoである正極活物質、前記MがWである正極活物質、及び前記MがNbである正極活物質を含むことを特徴とする請求項3記載の正極材料。
【請求項5】
0.7≦a≦0.8であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の正極材料。
【請求項6】
−0.05≦x≦0.05であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の正極材料。
【請求項7】
0.04≦c≦0.06であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の正極材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の正極材料と、バインダとを含むことを特徴とする正極合剤。
【請求項9】
請求項8記載の正極合剤と、この正極合剤を塗工した正極集電板とを含むことを特徴とする正極。
【請求項10】
リチウムを吸蔵放出可能な正極及び負極と、前記正極と前記負極との間に挟まれたセパレータと、非水電解質とを含み、前記正極は、請求項8記載の正極合剤を含むことを特徴とするリチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−178295(P2012−178295A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41218(P2011−41218)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発 要素技術開発 高出力可能な高エネルギー密度型リチウムイオン電池の研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】