説明

リッド開閉機構

【課題】 フリクションが低くしかもガタ音が発生しないようにする。
【解決手段】 車両用物入本体1にリッド2が開閉可能に取付けられ、車両用物入本体1に対するリッド2の回動中心部3に、リッド2を回動方向へ付勢するねじりバネ24が介装されたリッド開閉機構であって、ねじりバネ24の巻取部25を荒巻にして、巻取部25の両端が車両用物入本体1とリッド2とを離反方向へ付勢可能となるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リッド開閉機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内にドリンクホルダーや灰皿など各種の車両用物入装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記車両用物入装置には、例えば、図3に示すように、車両用物入本体1に対してリッド2(蓋体)が開閉可能に設けられたものが存在する。このようなリッド2を有する車両用物入装置では、一般に、車両用物入本体1に対するリッド2の回動中心部3に、リッド2を回動方向(通常は開方向)へ付勢するねじりバネ4が介装されている。なお、車両用物入本体1とリッド2との間には、その他に、リッド2を閉状態に保持するロック装置が設けられると共に、ねじりバネ4の回動付勢力を減衰させるダンパ装置が設けられる。
【0004】
上記回動中心部3は、例えば、図4に示すような構造を備えている。即ち、車両用物入本体1の外側面から側方へネジ孔を有するボス部5が突設され、このボス部5に対して段付ボルト6が螺着される。この段付ボルト6の段部7には、リッド2からボス部5へ向けて突設されたアーム部8と、ダンパ駆動ギヤ9などの機能部品とからなる回動側部材13が回動自在に嵌合される。この場合、ダンパ駆動ギヤ9が段付ボルト6の段部7に直接外嵌され、リッド2のアーム部8は、ダンパ駆動ギヤ9の内側面に突設された環状突出部10に外嵌されている。アーム部8とダンパ駆動ギヤ9とは段付ボルト6の段部7に対して一体的に回動されるようになっている。なお、ダンパ駆動ギヤ9は、ダンパ装置の入力軸に取付けられたギヤに噛み合わされる。
【0005】
一方、上記ねじりバネ4は、中央に所要の回動付勢力が得られる巻数の巻取部11を有し、巻取部11の両端から係止脚部12が延設されている。そして、ねじりバネ4の巻取部11は、互いに接触する密巻にされて車両用物入本体1の外側面とアーム部8の内側面とに対し両端が同時に接触しない状態でボス部5の外周部に遊嵌される。ねじりバネ4の係止脚部12は、車両用物入本体1とリッド2とにそれぞれ係止される。そして、ねじりバネ4は、回動方向の付勢力が蓄積された状態にしてセットされる。
【0006】
そして、リッド2が閉じた状態でロック装置を解除すると、ねじりバネ4の回動付勢力によってリッド2が開く。この際、ダンパ装置がねじりバネ4の回動付勢力を減衰することにより、リッド2は所望の回動速度で開かれる。
【特許文献1】特開平8−282382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記リッド開閉機構では、以下のような問題があった。
【0008】
即ち、図5に示すような段付ボルト6の段部7の軸線方向の長さ寸法Aと、この段部7に嵌合される図6の回動側部材13の上記軸線方向の長さ寸法Bとは、回動時のフリクションを減らすために、A>Bの関係とする必要がある。なお、回動時のフリクションが大きいと、リッド2の回動速度が安定しなくなって、開き方にバラツキが生じることとなる。
【0009】
一方で、AとBとの寸法差を大きくすると、ガタ付きによる異音(ガタ音)が発生してしまう。
【0010】
そこで、AとBとの寸法差を、フリクションが低くしかもガタ音が発生しないものとすることが考えられるが、背反する上記両不具合を寸法管理によって解決しようとした場合、AとBとの寸法精度がかなりシビアで精密なものとなってしまい大幅なコストアップを招くので、量産品としては成立し得なくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、車両用物入本体にリッドが開閉可能に取付けられ、車両用物入本体に対するリッドの回動中心部に、リッドを回動方向へ付勢するねじりバネが介装されたリッド開閉機構において、前記ねじりバネの巻取部を荒巻にして、巻取部の両端が車両用物入本体とリッドとを離反方向へ付勢し得るよう構成したリッド開閉機構を特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、ねじりバネの巻取部を荒巻にして、巻取部の両端が車両用物入本体とリッドとを離反方向へ付勢し得るよう構成したことにより、ねじりバネが圧縮バネとなって車両用物入本体とリッドとを同時に押さえるように作用するので、ラフな寸法管理で回動時のフリクションが低くなるように設定してもガタ音の発生を防止することができる。よって、コストアップを招くことなく、且つ、構造を大きく変更することなく、背反する両不具合を解決し、開き感が良く、安定していて、しかも、ガタ音のないリッドを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
フリクションが低くしかもガタ音が発生しないようにするという目的を、ねじりバネの巻取部を荒巻にして、巻取部の両端が車両用物入本体とリッドとを離反方向へ付勢可能とする、という手段で実現した。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0015】
図1は、この発明の実施例を示すものである。また、図3〜図6と同一ないし同等の部分については、同一の符号を用いると共に、必要に応じてこれらの図面を参照する。
【0016】
まず、構成を説明すると、自動車などの車両には、車室内にドリンクホルダーや灰皿など各種の車両用物入装置が設けられる。
【0017】
上記車両用物入装置は、例えば、図3に示すように、車両用物入本体1と、この車両用物入本体1に対して開閉可能なリッド2(蓋体)とを有している。そして、車両用物入本体1に対するリッド2の回動中心部3には、リッド2を回動方向(通常は開方向)へ付勢するねじりバネ24が介装されている。なお、車両用物入本体1とリッド2との間には、その他に、リッド2を閉状態に保持するロック装置が設けられると共に、ねじりバネ24の回動付勢力を減衰させるダンパ装置が設けられる。
【0018】
上記回動中心部3は、例えば、図1に示すような構造を備えている。即ち、車両用物入本体1の外側面から側方へネジ孔を有するボス部5が突設され、このボス部5に対し段付ボルト6が螺着される。この段付ボルト6の段部7には、リッド2からボス部5へ向けて突設されたアーム部8と、ダンパ駆動ギヤ9などの機能部品とからなる回動側部材13が回動自在に嵌合される。この場合、ダンパ駆動ギヤ9が段付ボルト6の段部7に直接外嵌され、リッド2のアーム部8は、ダンパ駆動ギヤ9の内側面に突設された環状突出部10に外嵌されている。アーム部8とダンパ駆動ギヤ9とは段付ボルト6の段部7に対し一体的に回動されるようになっている。なお、ダンパ駆動ギヤ9は、ダンパ装置の入力軸に取付けられたギヤに噛み合わされる。
【0019】
一方、上記ねじりバネ24は、中央に所要の回動付勢力が得られる巻数の巻取部25を有し、巻取部25の両端から係止脚部12が延設されている。そして、ねじりバネ24の巻取部25は、所要の間隔sを有して互いに離間される荒巻にされて車両用物入本体1の外側面とアーム部8の内側面とに対し両端が同時に接触し且つ離反方向へ付勢可能な状態でボス部5の外周部に遊嵌される。ねじりバネ24の係止脚部12は、車両用物入本体1とリッド2とにそれぞれ係止される。そして、ねじりバネ24は、回動方向の付勢力が蓄積された状態にしてセットされる。
【0020】
なお、ねじりバネ24は、巻線の材質、太さ、巻取部25の巻数、巻径などを変更すると、特性が変ってしまうため、基本的にこれらの条件は変更しないようにする。
【0021】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0022】
リッド2が閉じた状態でロック装置を解除すると、ねじりバネ24の回動付勢力によってリッド2が開く。この際、ダンパ装置がねじりバネ24の回動付勢力を減衰することにより、リッド2は所望の回動速度で開かれる。
【0023】
この実施例では、ねじりバネ24の巻取部25を荒巻にして、巻取部25の両端が車両用物入本体1とリッド2とを離反方向へ付勢し得るよう構成したことにより、ねじりバネ24が圧縮バネとなって車両用物入本体1とリッド2とを同時に押さえるように作用するので、ラフな寸法管理で回動時のフリクションが低くなるように設定してもガタ音の発生を防止することができる。よって、コストアップを招くことなく、且つ、構造を大きく変更することなく、背反する両不具合を解決し、開き感が良く、安定していて、しかも、ガタ音のないリッド2を得ることができる。
【実施例2】
【0024】
図2は、この発明を具体化した実施例2を示すものである。なお、実施例1と同一ないし同等な部分については、同一の符号を付すものとし、説明が省略されている部分については、上記実施例1の記載を以て、この実施例の記載とする。
【0025】
この実施例2のものでは、実施例1でねじりバネ24の巻取部25を荒巻にしたことにより、巻取部25の横剛性が低下するので、その対策として巻取部25の内倒れ(横変形)を防止する内倒防止部28を設けるようにしている。
【0026】
この内倒防止部28は、車両用物入本体1の外側面における巻取部25の設置位置に設ける。内倒防止部28は、巻取部25の外周部をほぼ線接触状態で支持し得るように、段付ボルト6の軸線方向へ向けて、巻取部25よりも若干短い長さで延設する。
【0027】
更に、必要に応じて、内倒防止部28に、巻取部25の中へ挟み込まれる挟み込み部29を1箇所設ける。なお、挟み込み部29の設置位置は、状況に応じて決定する。
【0028】
次に、この実施例2の作用について説明する。
【0029】
リッド2が閉じた状態でロック装置を解除すると、ねじりバネ24の回動付勢力によってリッド2が開く。この際、ダンパ装置がねじりバネ24の回動付勢力を減衰することにより、リッド2は所望の回動速度で開かれる。
【0030】
この際、ねじりバネ24の巻取部25を荒巻にして、巻取部25の両端が車両用物入本体1とリッド2とを離反方向へ付勢し得るよう構成したことにより、ねじりバネ24が圧縮バネとなって車両用物入本体1とリッド2とを同時に押さえるように作用するので、ラフな寸法管理で回動時のフリクションが低くなるように設定してもガタ音の発生を防止することができる。よって、コストアップを招くことなく、且つ、構造を大きく変更することなく、背反する両不具合を解決し、開き感が良く、安定していて、しかも、ガタ音のないリッド2を得ることができる。
【0031】
更に、この実施例では、内倒防止部28を設けたことにより、荒巻にされて横剛性が低下された巻取部25の内倒れを防止することができるので、ねじりバネ24の特性を一定状態に保持することができる。
【0032】
また、内倒防止部28を、車両用物入本体1の外側面における巻取部25の設置位置に、巻取部25の外周部に対してほぼ線接触状態で支持し得るよう軸線方向へ延設したことにより、簡単な構成で、有効且つ確実に巻取部25の内倒れを防止することができる。
【0033】
更に、内倒防止部28に巻取部25の中へ挟み込まれる挟み込み部29を1箇所設けたことにより、挟み込み部29を基準として巻取部25の両端部が車両用物入本体1とリッド2とをそれぞれ離反方向へ付勢するようになるので、それぞれに対する付勢力を最適な状態に配分することができる。
【0034】
上記以外の部分については、上記実施例と同様の構成を備えており、同様の作用・効果を得ることができる。
【0035】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例1の側方断面図である。
【図2】本発明の実施例2の側方断面図である。
【図3】車両用物入装置の斜視図である。
【図4】従来例の側方断面図である。
【図5】段付ボルトの段部の長さ寸法Aの説明図である。
【図6】回動側部材の長さ寸法Bの説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用物入本体
2 リッド
3 回動中心部
24 ねじりバネ
25 巻取部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用物入本体にリッドが開閉可能に取付けられ、車両用物入本体に対するリッドの回動中心部に、リッドを回動方向へ付勢するねじりバネが介装されたリッド開閉機構において、
前記ねじりバネの巻取部を荒巻にして、巻取部の両端が車両用物入本体とリッドとを離反方向へ付勢し得るよう構成したことを特徴とするリッド開閉機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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