説明

リベットボルト

【課題】リテーナーとボルトとの仮組付けを実現するリベットであって、部材を締結する際、リテーナーとボルトとの締結をより簡単かつ堅固に行いつつ、係止解除時にリテーナーからボルトが容易に抜け出るようにし、作業性を向上させる。
【解決手段】リテーナー2のフランジ部24の上面には、平面部22から隆起した傾斜部24が周方向に均等に分布し、ボルト頭8の下面には、対応して昇降片10が突出形成される。締結状態では、リテーナー2の締結片6の先端の係止突起30がボルト4の軸部の突出片16に係止される。締結を解除するためにボルト4を回転させた際、ボルト4の押し上げが、まず、ネジ切り部28,14同士の作用により、次いで、リテーナー2の傾斜部34と昇降片10との作用により行われる。この途中で、係止突起30が突出片16の間をすり抜ける。締結解除後、係止突起30が離脱防止片20に係止されて、ボルト4の脱落が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、複数の締結対象の部材(板材、シート類、不特定形状の物など)をリベット継手の形態にて締結するリベットに関する。特には、締結対象の部材に設けられた孔をリテーナーが貫通し、リテーナーの組付け孔中にボルトが差し込まれ、ネジ方式で組み付けられて押し込まれた際に、リテーナーの締結片が拡げられて締結がなされるリベットボルトに関する。中でも、リベットボルトを構成するリテーナー及びボルトを仮組付けした後、締結対象の部材に組付ける際、離脱なしに、より堅固に組付けられて、リテーナーからボルトが容易に分離されないようにし、部品の紛失を未然に防止できるリベットボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、主に自動車に入る樹脂又は不織布などの内装材パネルを車体パネルに締結する際、ナットを使用できない場合は、リベット継手の形式で締結するリベットが広く使用されている。
【0003】
一例として、特許文献1の「リベットボルト」が登録されている。この従来のリベットボルトは、大きくはリテーナーとボルトで構成されており、ボルトをリテーナーの組付け孔に挿入した後、ボルトをさらに押し入れると、リテーナーの下部の切開された締結部が外側に拡張され、複数の締結対象の部材を互いに締結するように構成したものである。
【0004】
締結対象の部材をリベット継手で締結すると、別途のリベッティング加工なしに簡便に締結することによって作業性を向上させるという長所があるが、ボルトがリテーナーの締結部を拡張する際、作業者が何回もネジ切り部を回して押し入れなければならないので、相当不便であった。さらに、締結部が拡張されるにあたり、ボルトのネジ切り部と、リテーナーの内側に設けられた突出枠との締結が確実に行われないので、締結部の拡張状態を持続的に維持することが難しい。その結果、締結対象の部材からリベットが容易に離脱するという短所があった。
【0005】
また、リテーナーにボルトのネジ切り部が組み合わさって仮組付けされる際に互いに分離されないように構成しているものの、実際には、ボルトをつかんで引っ張るとボルトがリテーナーから容易に抜け出る。そのため、作業時にボルトを紛失することが頻繁に発生し、その度に部品を別途に購入しなければならないという短所があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国実用新案登録20-386889Y1
【特許文献2】特開2011-080544
【特許文献3】特開平11-013719
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、リテーナーとボルトとの仮組付けによる紛失のおそれをなくし、複数の締結対象の部材をリベット継手で締結するとき、リテーナーとボルトとの締結をより簡単かつ堅固に行いながら、係止解除時にリテーナーからボルトが容易に抜け出るようにし、作業性を向上させるリベットボルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するために、リテーナー2とボルト4とからなるリベットボルトAにおいて、特には、以下のように構成される。リテーナー2のフランジ部24の内周面の側にはネジ切り部28が備えられた組付け孔26が形成される。フランジ部24の上面には、組付け孔26を中心に平面部32と傾斜部34が周方向に交互に形成されて所定角度の回転対称をなすように配列される。リテーナー2における下方へと開いて切開された各締結片6の下端部には、内側へと湾曲した係止突起30が形成される。ボルト4が、ボルト頭8と、この中央部から下方へ延びるボルト軸本体12とからなり、ボルト頭8は、リテーナー2の凹陥部に嵌められて組み付けられる。ボルト頭8の下面からは、複数の昇降片10が突出形成される。この昇降片10は、傾斜部34とそれぞれ組み合わされ、ボルト4を回転させた際に昇降作動を行う。ボルト軸本体12には、上端部にネジ切り部14が設けられ、下端部には、外周面に複数の突出片16が、周方向に均一に一定間隔で配列される。ボルト軸本体12の下端部からは下方へ向かってすぼまるテーパー状の拡張部18が延び、この下方には、径方向に広がった離脱防止片20が設けられる。
【発明の効果】
【0009】
複数の締結対象の部材をリベットで締結するにあたり、簡単に堅固な締結が実現される。すなわち、ボルトを少し回すだけでリテーナーとボルトがこれらのネジ切り部により、ねじ合わされるとともに、ボルト軸本体の突出片とリテーナーの締結片が互いに係止される。これにより、二重で、リテーナーとボルトとの間の接続・固定が行われる。また、拡張された締結片を離脱なしに持続的に維持させるという長所がある。締結解除時には、ボルト頭を回転させたならば、ボルト頭の下面に設けられた昇降片が、フランジ部の凹陥部内にある傾斜部を伝って昇降することにより、作業者による容易な操作が可能となり、ボルトがリテーナーから自動的に容易に抜け出るので作業性を向上させるという長所がある。
【0010】
また、ボルトとリテーナーとの締結が解除された後にも、ボルト軸本体の下端に備えられた離脱防止片にリテーナーの締結片が係止されており、ボルトとリテーナーとが仮組付け状態となっているので、部品を紛失するおそれがないという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係るリベットボルトの斜視図である。
【図2】図1のリベットの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係るリベットボルトの分解状態での、リテーナーの軸方向断面及びボルトの側面を示す分解・半断面半側面図である。
【図4】本発明の実施例に係るリベットボルトと締結対象の部材とが締結された状態を示す軸方向断面図である。
【図5】本発明の実施例に係るリベットボルトと締結対象の部材との締結が解除された状態を示す図4と同様の軸方向断面図である。
【図6A】本発明の実施例に係るリベットボルトにおけるリテーナーとボルトとが、図1及び図4のように締結状態にあるときの、リテーナーの上端付近における、軸に垂直の方向の断面図である。
【図6B】図6Aと同一の締結状態にあるときの、リテーナーの下端付近における、軸に垂直の方向の断面図である。
【図7A】本発明の実施例に係るリベットにおけるリテーナーとボルトとが、図2及び図5のように締結解除状態にあるときの、図6Aに対応する、リテーナーの上端付近における、軸に垂直の方向の断面図である。
【図7B】図7Aと同一の締結解除状態にあるときの、リテーナーの下端付近における、軸に垂直の方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施例について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施例に係るリベットボルトの斜視図であり、図2は、図1の分解斜視図であり、図3は、本発明の実施例に係るリベットの分解断面構成図である。本発明のリベットボルトAは、複数の締結対象の部材(板材、シート類、不特定形状の物など)を狭持するリテーナー2と、ボルト4とを含んで構成される。ボルト4は、前記リテーナー2に、分離されないように締結されており、図4及び図5に示すように、リテーナー2の下部にある切開された各締結片6を拡張させることで、締結対象の部材同士を、リベット継手をなすようにして締結する。
【0014】
より具体的に説明すると、本発明のリベットボルトAを構成するリテーナー2とボルト4を合成樹脂で成形するにあたり、前記ボルト4は、次のように形成される。
【0015】
まず、図1〜2に示すように、リテーナー2に締め付けられて締結されるように、上面に十字溝が備えられた丸いボルト頭8が形成される。また、図1〜5並びに図6A及び7Aに示すように、ボルト頭8の下面の外側部分には、径方向にて互いに対向するように、複数の短柱状の昇降片10が突出形成される。図示の例では、図6A及び7Aから明らかなように、4つの短柱状の昇降片10が設けられており、水平方向断面(リベットの軸に垂直の断面)が、ほぼ正方形をなしている。この昇降片10は、ボルト4とリテーナー2との締結時、及びその解除時に、後述のようにリテーナー2上面に形成された傾斜部34と組み合わさって、ボルト4をリテーナー2に対して昇降させる役割を行う。そのため、昇降片10は、図2〜3に示すように、反時計回りに回転させる場合に先の側に来る箇所で、下端の角が丸められている。図示の具体例においては、滑らかな曲線に沿って延びる傾斜面をなしており、さらに、昇降片10の下端を頂点とする放物線に沿って延びている。
【0016】
一方、ボルト頭8の中央部分からは、下方へと円柱状のボルト軸本体12が延びている。ボルト頭8に一体に形成されるボルト軸において、該ボルト軸本体12の長さ寸法は、リテーナー2の長さ寸法に準じている。すなわち、ほぼ同一である。そして、円柱形のボルト軸本体12から下方へと突出形成されるテーパー状の部分(拡張部18)、すなわち、先細の円錐台形の部分が、ボルト4とリテーナー2との締結時、及びその解除時に、リテーナー2の下端から出沒可能となっている。
【0017】
ここで、ボルト軸本体12の上端部の外周面には、ネジ切り部14が形成され、リテーナー2の軸部の上端部の内周面に形成されたネジ切り部28にねじ締結される。ボルト軸本体12の下端の外周面には、周方向に延びる複数のリブ状の突出片16が、等間隔に突出形成される。図示の例では、図2並びに図6B及び図7Bから明らかなように、4つの突出片16が設けられており、90度の回転対称(4回対称)をなしている。また、図示の具体例で、突出片16同士の間の間隔は、突出片16の周に沿った長さの約半分、または、これより少し小さくなっている。したがって、突出片16は約55〜70度にわたって延び、その間の間隔は20〜45度にわたって延びる。しかし、突出片16は、後述の係止突起30が確実に係止される位置及び寸法でありさえすれば良く、また、突出片16の間の間隔は、締結解除時に係止突起30が容易に抜け出ることのできる寸法でありさえすれば良い。
【0018】
図6Aと図6Bは、いずれも、ボルト軸本体12とリテーナー2とが図4に示す位置関係にある場合(締結状態)の水平方向断面図(軸方向に垂直の方向の断面図)である。一方、図7Aと図7Bは、ボルト軸本体12とリテーナー2とが図1及び図5に示す位置関係にある場合(締結解除状態)の水平方向断面図(軸方向に垂直の方向の断面図)である。図6A及び図7Aはリテーナー2の上端部の箇所の水平断面図であり、図6B及び図7Bは、突出片16の近傍での水平断面図である。
【0019】
これらの図から知られるように、図示の例で、上記の各突出片16の回転方向における中心の位置と、ボルト頭8の下面に設けられた上記の短柱状の昇降片10における時計回り方向前端面(図2中に垂直面として描かれている部分)とは、回転方向に45゜ずれている。リベットの中心軸を通る垂直面を想定するとき、突出片16の回転方向での中心を通る垂直面と、昇降片10の時計回り方向前端面を通る垂直面とは、45゜だけ中心軸まわりの回転方向にずれている。したがって、図示の例で、90゜ごとに配置される突出片16の間の間隔に相当する位置に、昇降片10が位置する。なお、第一義的に重要なのは、回転方向における、係止突起30と、突出片16及びその間の間隙との位置関係であり、後述のように、リベットがα°(例えば90°)の回転対称に構成されるときは、締結状態からα°/2(例えば45°)だけ回転させることで、係止突起30が突出片16の間隙をすり抜けるようにして係止を解除し、さらにα°/2(例えば45°)回転させるだけで、仮組付け状態を実現可能とすることである。しかし、図示の例のように昇降片10と突出片16との間の回転位置関係を設定するならば、締結操作時及び締結解除時に応力分布を均等にできるために好ましい。一方、図示の具体例で、リブ状またはレール状の突出片16は、垂直断面が鋸歯状であり、上面が水平面(リベットの中心軸に垂直な面)をなし、外周面がテーパー面である。
【0020】
円柱状のボルト軸本体12の下端からは、下方にすぼまる円錐台部としての拡張部18が延びている。この拡張部18の先端部またはこれから下方に延びる部分から、さらに、全周にて径方向外側へと延び広がる部分により離脱防止片20が形成される。すなわち、ボルト軸の下端部が、ボルト軸本体12と一体の、拡張部18及び離脱防止片20により構成される。この離脱防止片20により、図1及び5に示すように、ボルト4とリテーナー2とが、これらの仮組付け時に互いに分離されないように係止される。図示の例で、突出片16の外周のテーパー面は、拡張部18の外周のテーパー面から同一傾斜角にて延長され、互いに連続面をなしている。なお、離脱防止片20は、図示の具体例で、球欠状ないし半球状であり、その上面をなす水平面の中央部と、拡張部18の先端部とが、該先端部と同径の円盤状ないし短円柱状の接続部を介して連続している。離脱防止片20の形状が上記のようであると、仮組付け時には水平な平坦面で確実な係止を行い、締結操作の際には、球面にて締結片6の先端部に突き当てられて押し広げ、締結後には、突出寸法を最小にすることができる。
【0021】
以下、リベットボルトAを構成するとともに、ボルト4と仮組付けが可能なリテーナー2について、構成を説明する。
【0022】
リテーナー2は、少なくとも下部が切開された略円筒状ないしカップ状の軸部をなす締結片6と、ボルト頭8に対応するフランジ部24とからなる。締結片6は、ボルト軸本体12のネジ切り部14の下端から拡張部18の下端までの距離に相当する一定の長さを有し、下方へと開いた切開部22によって複数に分離されている。図1〜2に示す例では、切開部22が締結片6の全長にわたって延びており、これら複数に分割されてなる締結片6が、互いに組み合わさって円筒状またはカップ状をなしている。但し、締結片6の上端部が互いに周方向に連続して円筒部またはリング部をなし、その下方にて切開部22により分離されるのでも良い。また、各締結片6の下端部(先端部)は、内側へと湾曲して、離脱防止片20及び突出片16の箇所に係止可能となっている。図1〜2に示す具体例では、4つの切開部22により互いに分離された4つの締結片6が、フランジ部24の内周部と連続することで、一つにまとめられている。また、これら締結片6は、組み合わさった状態で、下端部が、図6A及び図7Bに示すように、袋状の部分を4つに分割した形状となっている。そのため、各締結片6の先端部は、平面図において扇状をなす。
【0023】
一方、リテーナー2の上部には、ボルト頭8より直径の大きいフランジ部24が、締結片6の上端から径方向外側へと延びるようにして、締結片6と一体に形成される。そして、フランジ部24の内側中央部から、各締結片6内を貫通して延びる組付け孔26が形成される。その結果、この組付け孔26に、ボルト軸本体12が嵌められて締結される構成となっている。
【0024】
組付け孔26の上端部の内面には、ネジ切り部28が形成される。図示の例では、フランジ部24の内周面の全体と、締結片6がなす円筒部の上端部内周面とにわたる一つのネジ切り部28が設けられる。この一組の締結片6におけるネジ切り部28は、ボルト軸本体12のネジ切り部14に、ねじ合わされて組み付けられる。また、円筒状にまとめられた締結片6は、各締結片6の下端部が内側に湾曲して形成されているので、締結対象の部材の通孔に、容易に組み付けられる。各締結片の先端部(扇状の部分)が、係止突起30をなしており、この係止突起30は、締結片6を拡張させるボルト軸本体12に形成された各突出片16に対応して形成される。なお、図示の例で、係止突起30の先端部は、厚みがテーパー状に小さくなっており、尖った形態をなしている。
【0025】
フランジ部24は、その内側部分にて、ボルト頭8を受け入れる凹陥部をなしており、図4に示すように締結がされた締結状態では、フランジ部24の外周部の上面とボルト頭8の上面とがなめらかに連続する一つの湾曲面をなす。図示の具体例で湾曲面は、球面の一部(球欠の曲面)である。フランジ部24の凹陥部の内部には、組付け孔26を中心に、複数の平面部32と、これから隆起していく傾斜面をなす傾斜部34とが交互に連続する。ここで、各傾斜部34は、互いに90゜ずつ回転方向にずれるようにして組付け孔26の周りに形成され、フランジ部24の上部に載置されるボルト頭8の下面に設けられた昇降片10と接触する。このようにして、締結解除時にボルト4がリテーナー2と仮組付けされた状態で自動的に容易に抜け出るように構成される。
【0026】
なお、傾斜部34は、図2に示すように、フランジ部24の凹陥部の底面から隆起する隆起部として設けられ、平面図において2重円間の扇状部分をなし、時計まわり回転方向における前端から、後端付近のほぼ水平の頂部へと、なめらかに隆起する曲線をなしており、図示の具体例では、前端から後端付近の頂部へと、徐々に傾斜角が減少している。傾斜部34の傾斜面は、ボルト4を反時計方向に回転させた際に、昇降片10の傾斜面に突き当てられて、ボルト4を上方へと押し上げる作用を行う。
【0027】
このような押し上げは、ネジ切り部同士の噛み合いからちょうど外れた時点で開始するのが好ましく、また、押し上げの寸法は、締結片6がさらに湾曲され、その反発力により先端の係止突起30がボルト軸の突出片16に押し当てられて回転を防止する係止が行われるように設計される。そのため、図6Aに示すように、締結状態では、昇降片10が、平面部32中にあって、傾斜部34における上記前端より遠い位置にあり、締結を解除する操作の最も初期には、ボルト4が、ネジ切り部同士の噛み合いによる押し上げ作用を受けて、平面部32の面から離れていくとともに、傾斜部34の前端へと向かって進んでいく。そして、昇降片10と傾斜部34が、傾斜面同士で突き当たるか当たらないかという時点で、ネジ切り部同士の噛み合いが外れる。また、ほぼ同時に、締結片6の先端の係止突起30が、突出片16の間の間隙のところまで回転移動して、この間隙をすり抜ける。ドライバーによりボルトを下方へと押しつつ反時計方向にさらに回転させると、ボルト4が傾斜面同士の作用により一気に押し上げられる。この際、締結片6の内側への弾性回復力によって、係止突起30が拡張部18を伝って滑り動くことによっても、ボルト4が上方へと押し上げられる。このようにして、係止突起30が離脱防止片20の上面にて係止されるまでボルト4が上方に押し上げられ、この状態(図5の仮組付け状態)で保持される。なお、上記に代えて、例えば、係止突起30が、全周にわたって突起が設けられ、その一部に傾斜などにより乗り越え易い箇所が設けられていても良い。
【0028】
逆に締結を行う際には、およそこの逆であり、リテーナー2が締結対象の部材の孔に、突き抜けるように差し込まれた状態で、まず、ボルト4を手で押し込み図5の仮組付け状態とする。次いで、ドライバーをボルト頭8の十字溝にあてがい、昇降片10が傾斜部34の頂部に突き当たるように、回転位置を合わせつつ、ボルト4を押し込む。すなわち、図1に示すような回転位置にて突き当てられるようにする。この後、ドライバーを用い、ボルト4を押し込みつつ時計回りに回転させることで、昇降片10の先端が、傾斜部34を伝って時計回りに移動しつつ、ボルト4が一気に押し込まれていくようにする。この際、締結片6の先端の係止突起30は、拡張部18を伝って螺旋状に滑り動きつつ径方向に押し広げられて行く。そして、昇降片10の先端が平面部22へと移行するあたり、すなわち、ボルト4が図5及び図7A〜7Bに示す仮組付け状態から約45°回転した際に、締結片6の先端の係止突起30は、突出片16の間の間隙をすり抜けてボルト軸本体12の外周面へと移行する。この時点でネジ切り部同士の噛み合いが開始される。さらにボルト4を時計回りに回すと、締結片6の先端の係止突起30は、突出片16の上面へと移行し、次いで、ネジ切り部同士の作用によってボルト4がさらに押し上げられることにり、突出片16によって上方へと押し上げられる。このようにして、締結片6の係止突起30が突出片16の上面に押し当てられる。また、回転により突出片16の中央部の上面に位置する。そのため、締結操作が完了した図4の状態では、確実に係止が行われ、締結後にボルト4が振動などにより緩むのを防止する。なお、ここでは、締結の際も、係止突起30が突出片16の間の間隙をすり抜けるとして説明したが、寸法やバネ弾性などの設計により、突出片16の稜部を越えて係止するようにしても全く同様である。
【0029】
図4〜図7を参照すると、まず、本発明のリテーナー2の組付け孔26内にボルト4のボルト軸本体12が締結された仮組付け状態でのリベットボルトAを複数の締結対象の部材の通孔内に挿入した後、リテーナー2のフランジ部24から上昇したボルト頭8の十字溝にドライバーを嵌めて押しながらボルト頭8を回して締め付ける。このとき、ボルト軸本体12の上部に位置するネジ切り部14がフランジ部24の内側に設けられたネジ切り部28と締結されると同時に、ボルト軸本体12下部の傾斜した拡張部18が前進するにともない各締結片6が外側に拡張される。
【0030】
ボルト軸本体12のさらなる前進により、締結片6の下端部に形成された係止突起30が拡張部18の上側に設けられる突出片16にそれぞれ係止される。このようにして、拡張された締結片6が、より堅固に支持されることによって、図4に示すように、複数の締結対象の部材がリベット継手で締結される。
【0031】
したがって、本発明のボルト4がリテーナー2に挿入されて締結片6が拡張されるとき、ボルト4がネジ切り部14を通してリテーナー2にねじ方式で締結されると同時に、拡張された締結片6がボルト軸本体12の突出片16に係止されることによって二重に締結される。そのため、外部から衝撃を受けるとしても、締結対象の部材からリベットボルトAが抜け出ることのない堅固な構造となる。
【0032】
このようにリベットボルトAと締結対象の部材との締結が完了した際、図6A及び図6Bに示すように、ボルト頭8の下面から突出した各昇降片10は、フランジ部24の内側に設けられた平面部32上に位置する。また、この状態で、図4に示すようにボルト頭8がフランジ部24の凹陥部内に嵌め込まれる。そして、図6Aに示すように、各締結片6は、昇降片10の時計回り方向前端面(図2に示すように垂直面)から45゜だけ回転方向にずれた垂直面にて外側へと拡張されており、ボルト軸本体12の下端の各突出片16には、締結完了状態にて、拡張された締結片6の係止突起30が係止されている。
【0033】
上記のような状態でリベットボルトAを締結対象の部材から分離しようとする場合は、作業者がボルト頭8の十字溝にドライバーを入れ、締め付け方向とは逆方向にボルト頭8を回す。すると、ボルト軸本体12のネジ切り部14と、フランジ部24のネジ切り部28との締結が解除される。同時に、ボルト軸本体12が45゜回転することで、突出片16に係止されていた締結片6が、各突出片16間の間隙中に位置することとなり、係止が解除される。これにより、図4のように径方向に拡張されていた締結片6は、図5に示す元のすぼんだ状態に戻る。このとき、締結片6の先端の係止突起30は、下部の離脱防止片20の上面に位置するようになる。
【0034】
締結解除について、以下に、さらに説明する。ボルト頭8を締め付け方向とは逆方向に回すと、図7A及び図7Bに示すように、ボルト頭8の下面に設けられた昇降片10がフランジ部24内の平面部32に載置された状態から、上向きに傾斜した傾斜部34上を伝って移動し、ボルト頭8がフランジ部24の凹陥部から抜け出るとき、ボルト軸本体12のネジ切り部14と突出片16は、それぞれ、フランジ部24のネジ切り部28と、締結片6の係止突起30との係止が解除された状態に位置するようになる。
【0035】
昇降片10が傾斜部34を伝って昇降することでボルト頭8がフランジ部24から完全に離脱されると同時に、ボルト4がリテーナー2との締結状態から自動的に抜け出る。そのため、作業者は、ボルト4を少し回すだけでボルト4とリテーナー2との締結解除を簡単に行うことができる。
【0036】
また、ボルト4とリテーナー2との締結を解除した際、各締結片6がボルト軸本体12の下端に設けられた離脱防止片20に係止されるので、ボルト4とリテーナー2との仮組付け状態を維持するようになり、作業中にボルト2を紛失するおそれが全くない。
【0037】
以上では、本発明を具体的な実施例に基づいて説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲で多様な変形が実施可能である。したがって、本発明の範囲は、上述した実施例によって定められるものでなく、特許請求の範囲及びそれと均等なものによって定められなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のリベットボルトは、特には、複数のパネルをリベット継手の形式にて締結するときに用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
A リベットボルト 2 リテーナー 4 ボルト
6 締結片 8 ボルト頭 10 昇降片
12 ボルト軸本体 14 ネジ切り部 16 突出片
18 拡張部 20 離脱防止片 22 切開部
24 フランジ部 26 組付け孔 28 ネジ切り部
30 係止突起 32 平面部 34 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リテーナー(2)とボルト(4)とからなり、複数の締結対象の部材に設けられた孔をリテーナー(2)が貫通した状態で、ボルト(4)が、リテーナー(2)の組付け孔(26)中に差し込まれ、ネジ方式で組み付けられて押し込まれた際に、リテーナー(2)の締結片(6)が外側へと押し拡げられて締結がなされるリベットボルトにおいて、
リテーナー(2)が、締結対象の部材の孔を挿通するための締結片(6)と、その上端に連続する部分から径方向外側へと延びるフランジ部(24)とからなり、
フランジ部(24)の内周面の側に、ネジ切り部(28)が備えられた組付け孔(26)が形成され、フランジ部(24)の上面には、組付け孔(26)を囲む凹陥部が形成され、この凹陥部の底面には、組付け孔(26)を中心にして周方向に、水平の平面部(32)と、これから隆起して傾斜面を形成する傾斜部(34)とが交互に形成され、下方へと開くように切開された各締結片(6)の下端部には、径方向内側へと湾曲した係止突起(30)が形成され、
ボルト(4)が、
ボルト頭(8)と、その中央部から下方に延びるボルト軸本体(12)と、
その先端から、下方へ向かってすぼまるように延び、ボルト(4)を組付け孔(26)中に押し込んでボルト頭(8)がフランジ部(24)の凹陥部に嵌まり込む際に締結片(6)を径方向外側へと拡張させる拡張部(18)と、
その先端部から径方向外側へと延びる離脱防止片(20)とからなり、
ボルト頭(8)の下面には、フランジ部(24)の傾斜部(32)と組み合わさってボルト(4)の回転時に昇降作動を行うための複数の昇降片(10)が突出形成され、ボルト軸本体(12)の上端部には、リテーナー(2)のネジ切り部(28)に噛み合わせるためのネジ切り部(14)が設けられ、ボルト軸本体(12)の下端部の外周面には、締結時に締結片(6)を係止させるための複数の突出片(16)が設けられ、
締結を解除するためにボルト(4)をリテーナー(2)に対して回転させた際、ボルト(4)の押し上げが、まず、ネジ切り部(28)(14)同士の作用により行われ、次いで、傾斜部(34)と昇降片(10)との作用により行われ、この押し上げの途中で、係止突起(30)は、突出片(16)の間の間隙の箇所を通り抜けて突出片(16)との係止から外れ、上記の押し上げの後、係止突起(30)が離脱防止片(20)の上面に係止されることで、ボルト(4)がリテーナー(2)に対して仮組付け状態に保持されることを特徴とするリベットボルト。
【請求項2】
フランジ部(24)の上面には、4個の傾斜部(34)が周方向に均等に分布するように設けられ、これに対応して、ボルト頭(8)の下面にも4個の昇降片(10)が周方向に均等に分布するように設けられ、
ボルト軸本体(12)の突出片(16)は、ボルト頭(8)の下面から突出した昇降片(10)の位置を基準にして、45゜回転させた垂直面上に位置するように形成されたことを特徴とする、請求項1に記載のリベットボルト。
【請求項3】
ボルト軸の下端部に設けられた離脱防止片(20)が球欠状または半球状に形成され、この上面をなす水平面に、リテーナー(2)の各締結片(6)の係止突起(30)が係止されることを特徴とする、請求項1または2に記載のリベットボルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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