説明

リボソーム抗生物質のスクリーニングアッセイ

本発明は、微生物リボソームに選択的であるが、ミトコンドリアリボソームおよび/または細胞質リボソームには選択的でないリボソーム抗微生物性物質を同定する方法を対象とする。具体的には、該方法は、(i)微生物リボソームを有する細菌株内、および(ii)キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームを有する細菌株内、および/または(iii)キメラ型細胞質性細菌リボソームを有する細菌株内で、リボソーム抗微生物性物質候補の相互作用を比較するアッセイを対象とする。さらなる態様では、本発明は、微生物リボソームに選択的であるが、ミトコンドリアリボソームおよび/または細胞質リボソームには選択的でないリボソーム抗微生物性物質を同定するための、微生物リボソームを有する細菌株、およびキメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームを有する細菌株、および/またはキメラ型細胞質性細菌リボソームを有する細菌株の使用にも関する。さらに、1つまたは複数の上記(i)〜(iii)の細菌株は、機能的に等価な無細胞生体系により代替されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物リボソームに選択的であるが、ミトコンドリアリボソームおよび/または細胞質リボソームには選択的でないリボソーム抗微生物性物質を同定する方法を対象とする。具体的には、該方法は、(i)微生物リボソームを有する細菌株内、および(ii)キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームを有する細菌株内、および/または(iii)キメラ型細胞質性細菌リボソームを有する細菌株内で、リボソーム抗微生物性物質候補の相互作用を比較するアッセイを対象とする。さらなる態様では、本発明は、微生物リボソームに選択的であるが、ミトコンドリアリボソームおよび/または細胞質リボソームには選択的でないリボソーム抗微生物性物質を同定するための、微生物リボソームを有する細菌株、およびキメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームを有する細菌株、および/またはキメラ型細胞質性細菌リボソームを有する細菌株の使用にも関する。さらに、1つまたは複数の上記(i)〜(iii)の細菌株は、機能的に等価な無細胞生体系により代替されうる。
【0002】
本発明は、リボソーム抗微生物性物質の分野に関する。微生物リボソームは、多数の重要な抗微生物性物質、例えば抗生物質の標的である。これらの化合物は、タンパク質合成に必須なステップに干渉する。リボソーム抗微生物性物質は、微生物の増殖が低下または微生物が死滅するように、微生物のタンパク質合成に干渉する。現在、抗微生物性物質という用語は、細菌、原虫および真菌など、任意の由来の微生物に対して活性である全ての物質を包含すると理解される。リボソーム抗微生物性物質は、特にリボソーム抗生物質は、例えば、2-デオキシストレプタミンアミノグリコシド、ストレプトマイシン系統の化合物、マクロライド、リンコサミドおよびストレプトグラミンBを含む。
【背景技術】
【0003】
最近、微生物耐性は、抗微生物治療に関する一般的な問題である。最近の報告によれば、耐性は、リボソームRNA内での1つまたは複数の変異の結果である可能性が指摘されている。微生物、例えば細菌は、一般的にゲノム当り幾つかのrDNAの遺伝子コピーを有するため、これらの変異の研究は困難であることが判明している。しかしながら、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)など、低コピー数のrRNAオペロンを有する細菌を使用する新しい変異についての研究は、抗微生物性物質耐性の分子的基盤の研究を可能にする(Sanderら、Introducing mutations into a chromosomal rRNA gene using a genetically modified eubacterial host with a single rRNA operon、Molecular Microbiology(1996年)第22巻(第5号)、841〜848頁)。
【0004】
例えば、以下の部位;16sRNAの1408位(Sander、上記参照)および1491位(Pfisterら、Mutagenesis of 16 S rRNA C1409-G1491 base-pair differentiates between 6'OH and 6'NH3+ aminoglycosides、J. Mol. Biol.(2005年)第346巻:467〜475頁)ならびに23SrRNAの2058位(Sanderら、Mol. Microbiol. 1997年、第26巻:469〜484頁)は、抗微生物性物質、例えば、抗生物質に対する耐性を付与することが特定された。具体的には、使用される抗微生物性物質によっては、A1408G、G1491C(A)およびA2058Gの変異は、耐性を付与する。ヌクレオチド位を示す参照番号は全て、大腸菌(E. Coli)のナンバリングに基づく。
【0005】
真核生物の細胞質rRNAにおける対応部位は、1408G、1491A、および2058Gであるが、真核生物のミトコンドリアrRNAにおける同部位は、1408A、1491C、および2058Gである。
【0006】
以上から、細胞質リボソームおよびミトコンドリアリボソームは、薬物およびrRNAの構成によっては、抗微生物活性に対して感受性を有しうるし、または耐性も有しうることが明らかである。
【0007】
「薬物耐性細菌の生体外(in vitro)および生体内(in vivo)選択、耐性を付与する変異のマッピングならびに真核生物(ミトコンドリア性および細胞質性)リボソームの核酸配列およびタンパク質配列との比較は、細菌リボソームを標的にする未来の抗生物質の特異性および毒性を予測するための重要な戦略を提供できる」ことが示唆されている(Bottgerら、Structural basis for selectivity and toxicity of ribosomal antibiotics、EMBO reports、(2001年)第2巻:第4号、318〜323頁)。
【0008】
現在、抗微生物性物質、特に抗生物質は、微生物を直接接触させることにより抗微生物活性および耐性が試験される一方で、毒性は、真核細胞および動物を接触させることにより試験されている。
【非特許文献1】Sanderら、Introducing mutations into a chromosomal rRNA gene using a genetically modified eubacterial host with a single rRNA operon、Molecular Microbiology(1996年)第22巻(第5号)、841〜848頁
【非特許文献2】Pfisterら、Mutagenesis of 16 S rRNA C1409-G1491 base-pair differentiates between 6'OH and 6'NH3+ aminoglycosides、J. Mol. Biol.(2005年)第346巻:467〜475頁
【非特許文献3】Sanderら、Mol. Microbiol. 1997年、第26巻:469〜484頁
【非特許文献4】Bottgerら、Structural basis for selectivity and toxicity of ribosomal antibiotics、EMBO reports、(2001年)第2巻:第4号、318〜323頁
【非特許文献5】Mathisら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、2005年8月:3251〜3255頁
【非特許文献6】Mathisら、Molecular & Biochemical Parasitology、第135巻、223〜227頁、2004年
【非特許文献7】Prammanananら、Antimicrob. Agents Chermother. 1999年、第43巻:447〜453頁
【非特許文献8】PfisterらChemBioChem 2003年、第4巻:1078〜1088頁
【非特許文献9】Pfisterら、Antimicrob. Agents Chemother. 2003年、第47巻:1496〜1502頁
【非特許文献10】Sanderら、Mol. Microbiol. 2002年、第46巻:1295〜1304頁
【非特許文献11】Sanderら、Mol. Microbiol. 1997年、第26巻:469〜480頁
【非特許文献12】Stoverら、Nature 1991年、第351巻:456〜460頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、抗微生物性物質候補の特異性および毒性を決定するための、より迅速、経済的かつ簡便な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、微生物リボソームに選択的であるが、ミトコンドリアリボソームおよび/または細胞質リボソームには選択的でないリボソーム抗微生物性物質を同定する方法であって、
a)(i)微生物リボソームを有する少なくとも1つの細菌株、および
(ii)キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームを有する少なくとも1つの細菌株、および/または
(iii)キメラ型細胞質性細菌リボソームを有する少なくとも1つの細菌株を準備するステップと、
b)リボソーム抗微生物性物質候補を、a)に記載の各細菌株に接触させるステップと、
c)リボソーム抗微生物性物質候補と、a)に記載の各細菌株の1つまたは複数のリボソームとの相互作用を決定するステップと
を含む方法を提供することにより解決される。
【0011】
(i)微生物リボソーム、好ましくは細菌リボソーム、(ii)キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームおよび/または(ii)キメラ型細胞質性細菌リボソームを含む微生物系が、リボソーム抗微生物性物質のリボソーム特異性および結果的にはその毒性を決定するのに十分であることが見出された。本発明の方法は、完全に細菌細胞を利用するものであり、現在にいたっても特異性および毒性試験に使用されている真核細胞系および動物モデルを回避する。細菌系は、費用、複製時間、操作性および取り扱いの点で、対応する真核生物系よりいっそう経済的である。純粋に細菌株で得られた結果が、真核細胞系および動物で得られた結果と有意に一致することが実証された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法の好ましい実施形態では、上記(i)〜(iii)項で言及した細菌株の少なくとも1つは、機能的に等価な無細胞生体系により代替されうる。より好ましくは、上記(i)〜(iii)項で言及した細菌株の少なくとも2つ、最も好ましくは3つ全てが、機能的に等価な無細胞生体系により代替される。この点において留意すべきことは、「細菌株」という用語が、機能的に等価な無細胞生体系を包含すると意図されることである。「無細胞系」という用語は、当業者であれば十分に理解され、それ以上の解説は不要である。また、無細胞系を提供する方法は、当技術分野においてありふれた一般的な知見であり、当業者により日常的に実施されている。上記の観点において、「機能的に等価な」という用語は、ヌクレオチドからポリペプチドを産生する翻訳活性能力を持つ機能的なリボソーム系を少なくとも含む無細胞系に関すると意図される。
【0013】
「リボソーム抗微生物性物質」という用語は、微生物リボソームと、好ましくは細菌リボソームと特異的に相互作用し、抗微生物剤、好ましくは殺菌剤および/または静菌剤として機能する化合物を定義すると意図される。
【0014】
本発明による、微生物リボソーム、好ましくは細菌リボソームに選択的であるリボソーム抗微生物性物質は、ミトコンドリアリボソームおよび/または細胞質リボソームに影響を与えない物質であり、好ましくはミトコンドリアリボソームおよび細胞質リボソームに影響を与えない物質である。
【0015】
「微生物リボソーム」という用語は、真菌リボソーム、細菌リボソームおよび原虫リボソームなど、微生物の野生型およびキメラ型リボソームを含む。
【0016】
抗生物質は、例えば蠕虫類の多包条虫(Echinococcus multilocularis)(Mathisら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、2005年8月:3251〜3255頁)および原虫類のアカントアメーバ・カステラーニ(Acanthamoeba castellanii)(Mathisら、Molecular & Biochemical Parasitology、第135巻、223〜227頁、2004年)など、種々の微生物生命体で、効果的なリボソーム抗微生物性物質であることが示されている。したがって本発明の方法は、多数の、ほとんどのまたは全てのタイプの微生物生命体にさえ選択的であるリボソーム抗微生物性物質、特に抗生物質を同定するのに好適である。例えば、本発明の方法は、リーシュマニア症およびトリパノソーマ症を引き起こす寄生虫に選択的である抗微生物性物質を同定するのに好適である。
【0017】
「キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソーム」という用語および「キメラ型細胞質性細菌リボソーム」という用語は、細菌リボソームに由来するリボソームであって、リボソームRNAの1つまたは複数のヌクレオチドが、ミトコンドリアリボソームまたは細胞質リボソーム由来の、対応するヌクレオチドによりそれぞれ置換されたリボソームを定義すると意図される。
【0018】
典型的には、本発明の方法のステップb)における接触は、少なくと1つの抗微生物性物質候補を、場合によっては溶媒または溶媒系内で、細菌または機能的に等価な無細胞生体系に直接添加すること、例えば抗微生物性物質候補を細菌または無細胞系の表面上に配置すること、または間接的に、例えば細菌株(複数可)または無細胞系(複数可)を取り囲むまたはその下に横たわる液体培地または固体培地(例えばゲル、ビーズ)に、抗微生物性物質を添加することによりもたらされる。接触ステップは、非限定的であり、当業者に公知である任意の好適な方法でもたらされうる。
【0019】
ミトコンドリアリボソームまたは細胞質リボソームに対する抗微生物性物質候補の選択性および結果的には毒性は、通常の方法により、特に、(i)微生物リボソーム、および(ii)キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソーム、および/または(iii)キメラ型細胞質性細菌リボソームを含む細菌株および/または機能的に等価なリボソーム無細胞生体系の増殖に対する、抗微生物性物質候補の阻害活性を比較することにより決定できる。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、細菌リボソーム、原虫リボソームおよび/または真菌リボソームに選択的であり、好ましくは細菌リボソームおよび/または原虫リボソームに選択的であり、より好ましくは細菌リボソームに選択的であるリボソーム抗微生物性物質を同定するための方法である。特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、リーシュマニア症およびトリパノソーマ症を引き起こす寄生虫に選択的である抗微生物性物質を同定するのに好適である。
【0021】
本発明の方法のより好ましい実施形態では、ステップa)(i)の微生物リボソームを有する少なくとも1つの細菌株(または機能的に等価な無細胞系)は、天然型もしくはキメラ型の細菌リボソーム、原虫リボソームおよび真菌リボソームからなる群から選択される微生物リボソームを、好ましくは天然型もしくはキメラ型の細菌リボソームおよび/または原虫リボソームを、より好ましくは天然型もしくはキメラ型の細菌リボソームを含む。細菌株(または機能的に等価な無細胞系)は、少なくとも1つの該微生物リボソームを含み、複数の微生物の微生物リボソーム、例えば真菌リボソームおよび細菌リボソーム、真菌リボソームおよび原虫リボソーム、原虫リボソームおよび細菌リボソームまたは原虫リボソーム、真菌リボソームおよび細菌リボソームを含みうる。
【0022】
リボソーム抗微生物性物質の好ましい候補は、アミノグリコシド、マクロライド、リンコサミドからなる群から選択され、好ましくはアミノグリコシド、より好ましくは2-デオキシストレプタミンである。
【0023】
細菌に対して選択的な抗微生物性物質、すなわち抗生物質が望ましい場合、微生物リボソームは任意の細菌リボソームでありうるが、本発明の方法で使用する微生物リボソームは、マイコバクテリウム・スメグマチス由来の細菌リボソームであるのが好ましい。
【0024】
真菌に対して選択的なリボソーム抗微生物性物質を同定するためには、微生物リボソームは、大腸菌のナンバリングによる1408A、1410G、1490Cおよび1491Gからなる群から選択される変異を少なくとも1つ含む細菌リボソームに由来することを特徴とするキメラ型真菌リボソームであるのが好ましい。
【0025】
原虫に対して選択的なリボソーム抗微生物性物質を同定するためには、微生物リボソームは、大腸菌のナンバリングによる1408A、1409U、1409A、1410G、1410A、1490U、1491G、1491Uおよび2058Aからなる群から選択される変異を少なくとも1つ含む細菌リボソームに由来することを特徴とするキメラ型原虫リボソームであるのが好ましい。
【0026】
本発明の方法を実施するのに好ましいキメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームは、大腸菌のナンバリングによるG1491Cの変異を少なくとも含み、好ましくはG1410C、U1411C、C1412U、A1413C、U1414C、G1415U、A1416C、U1484G、U1485A、G1488A、A1489GおよびC1490Aからなる群から選択される変異をさらに有する細菌リボソームに由来することを特徴とする。
【0027】
より好ましくは、キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームは、G1410C、U1411C、C1412U、A1413C、U1414C、G1415U、A1416C、U1484G、U1485A、G1488A、A1489GおよびC1490Aの変異を含む。
【0028】
最も好ましくは、キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームは、変異(複数可)により、好ましくはリボソームのデコーディング部位内(decoding site)の変異(複数可)によりさらにヒト化される。
【0029】
本発明の方法を実施するのに好ましいキメラ型細胞質性細菌リボソームは、大腸菌のナンバリングによるA1408Gおよび/またはG1491Aの変異を少なくとも含み、より好ましくはG1410U、U1411A、A1413U、U1414A、G1415C、A1416C、U1484G、U1485G、G1486A、G1487A、A1489UおよびC1490Aからなる群から選択される変異をさらに有する細菌リボソームに由来することを特徴とする。
【0030】
より好ましくは、キメラ型細胞質性細菌リボソームは、G1410U、U1411A、A1413U、U1414A、G1415C、A1416C、U1484G、U1485G、G1486A、G1487A、A1489UおよびC1490Aの変異を含み、よりいっそう好ましくはA1408GおよびG1491Aをさらに含む。
【0031】
最も好ましくは、キメラ型細胞質性細菌リボソームは、好ましくはリボソームのデコーディング部位内の変異(複数可)により、さらにヒト化される。
【0032】
本発明の方法は、16SrRNA内の変異を特徴とする微生物リボソームに限定されず、まして、16SrRNAのリボソームのデコーディング部位内の変異には限定されないことに留意されたい。16SrRNAのデコーディング部位内の変異に関する本明細書中の実施形態は、単に本発明を例示するための実施例としての役割を果たし、本発明の範囲を限定することを決して意図しない。例えば、本発明の方法は、本発明の方法のための変異基盤としての役割を果たしうる天然性の配列多型性を有する16SrRNAまたは23SrRNAの機能的関連領域の任意の操作を包含する。
【0033】
当業者に利用可能な、リボソーム抗微生物性物質の相互作用を決定する標準的方法は数多くあるが、本発明の方法の実施には、リボソーム抗微生物性物質の相互作用は、ステップa)に記載の各細菌株内および/または各無細胞系内での抗微生物性物質の最小阻害濃度(minimal inhibitory concentration、MIC)、好ましくは、細菌株および/または無細胞系(i)のMICに対する抗微生物性物質のMICを算出することにより決定するのが好ましい。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明により同定された抗微生物性物質候補は、細菌リボソーム、真菌リボソーム、および/または原虫リボソームに選択的であるが、ミトコンドリアリボソームおよび細胞質リボソームには選択的でない。より好ましくは、抗微生物性物質候補は、細菌リボソームに選択的であり、すなわちリボソーム抗生物質である。
【0035】
細菌細胞(または無細胞系)自体の天然に存在するリボソームが、導入された少なくとも部分的に異種性のミトコンドリア性または細胞質性細菌リボソームと干渉するのを回避するため、天然に存在するリボソームをコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部を、修飾、置換または欠失させうる。
【0036】
好ましい実施形態では、本発明による方法は、
(i)微生物リボソームを有する少なくとも1つの細菌株、および/または
(ii)キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームを有する少なくとも1つの細菌株、および/または
(iii)キメラ型細胞質性細菌リボソームを有する少なくとも1つの細菌株が、
天然に存在する細菌リボソームRNA配列をコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部を欠失し、異種性の微生物性(i)、ミトコンドリア性(ii)および/または細胞質性(iii)リボソームRNA配列をそれぞれコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部により置換された細菌株である方法である。また、該細菌株の代わりに、等価な無細胞生体系を使用してもよい。
【0037】
より好ましくは、本方法を実施するための細菌株は、rrnAおよび/またはrrnB遺伝子の少なくとも一部が欠失し、異種性の微生物性(i)、ミトコンドリア性(ii)および/または細胞質性(iii)リボソームRNA配列をコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部により置換されたマイコバクテリウム・スメグマチスである。
【0038】
別の好ましい実施形態では、本発明を実施するための無細胞系は、好ましくは、染色体rRNAの、好ましくはrrnAおよび/またはrrnB遺伝子の少なくとも一部が欠失し、異種性の微生物性(i)、ミトコンドリア性(ii)および/または細胞質性(iii)リボソームRNA配列をコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部により置換されたリボソームを含む、好ましくはマイコバクテリウム・スメグマチス由来の、細菌リボソームのコンポーネントを含む系である。
【0039】
本発明の別の態様は、細菌株または機能的に等価な無細胞生体系の、本発明の方法における使用に関する。
【0040】
この態様の好ましい実施形態では、本発明は、大腸菌のナンバリングによる1408A、1410G、1490C、および1491Gからなる群から選択される変異を少なくとも1つ含む細菌リボソームに由来することを特徴とする細菌リボソームに由来することを特徴とするキメラ型真菌リボソームを含む細菌株または機能的に等価な無細胞生体系の、本発明の方法における使用に関する。
【0041】
この態様の別の好ましい実施形態では、本発明は、大腸菌のナンバリングによる1408A、1409U、1409A、1410G、1410A、1490U、1491G、1491Uおよび2058Aからなる群から選択される変異を少なくとも1つ含む細菌リボソームに由来することを特徴とする細菌リボソームに由来することを特徴とするキメラ型原虫リボソームを含む細菌株または機能的に等価な無細胞生体系の、本発明の方法における使用に関する。
【0042】
この態様の別の好ましい実施形態では、本発明は、大腸菌のナンバリングによるG1491Cの変異を少なくとも含み、好ましくはG1410C、U1411C、C1412U、A1413C、U1414C、G1415U、A1416C、U1484G、U1485A、G1488A、A1489GおよびC1490Aからなる群から選択される変異をさらに有する細菌リボソームに由来することを特徴とするキメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームを含む細菌株または機能的に等価な無細胞生体系の、本発明の方法における使用に関する。
【0043】
より好ましくは、キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームは、G1410C、U1411C、C1412U、A1413C、U1414C、G1415U、A1416C、U1484G、U1485A、G1488A、A1489GおよびC1490Aの変異を含む。
【0044】
最も好ましくは、キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームは、好ましくはリボソームのデコーディング部位内の変異(複数可)によりさらにヒト化される。
【0045】
この態様のさらなる好ましい実施形態では、本発明は、大腸菌のナンバリングによるA1408Gおよび/またはG1491Aの変異を少なくとも含み、より好ましくはG1410U、U1411A、A1413U、U1414A、G1415C、A1416C、U1484G、U1485G、G1486A、G1487A、A1489UおよびC1490Aからなる群から選択される変異をさらに有する細菌リボソームに由来することを特徴とするキメラ型細胞質性細菌リボソームを含む細菌株または機能的に等価な無細胞生体系の、本発明の方法における使用に関する。
【0046】
より好ましくは、キメラ型細胞質性細菌リボソームは、G1410U、U1411A、A1413U、U1414A、G1415C、A1416C、U1484G、U1485G、G1486A、G1487A、A1489UおよびC1490Aの変異を含み、より好ましくはA1408GおよびG1491Aの変異をさらに含む。
【0047】
最も好ましくは、キメラ型細胞質性細菌リボソームは、好ましくはリボソームのデコーディング部位内の変異(複数可)によりさらにヒト化される。
【0048】
上述したように、細菌細胞(または無細胞生体系)自体の天然に存在するリボソームが、導入された少なくとも部分的に異種性のミトコンドリア性または細胞質性細菌リボソームと干渉するのを回避するため、天然に存在するリボソームをコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部を、修飾、置換または欠失させうる。
【0049】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明は、天然に存在する細菌リボソームRNA配列をコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部が欠失し、異種性の微生物性(i)、ミトコンドリア性(ii)および/または細胞質性(iii)リボソームRNA配列をコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部により置換された細菌株または機能的に等価な無細胞生体系の、本発明の方法における使用に関する。
【0050】
より好ましくは、本発明は、細菌株がマイコバクテリウム・スメグマチスであり、または機能的に等価な無細胞生体系がマイコバクテリウム・スメグマチスに由来し、rrnAおよび/またはrrnB遺伝子の少なくとも一部が欠失し、異種性の微生物性(i)、ミトコンドリア性(ii)および/または細胞質性(iii)リボソームRNA配列をコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部により置換されている、本発明による使用を対象とする。
【0051】
本発明のさらなる態様は、本発明の方法において使用する、任意の1つまたは複数の上記細菌株または機能的に等価な無細胞生体系またはそのコンポーネント、および場合によっては使用説明書、緩衝液剤、細菌栄養素(複数可)、水性溶媒(複数可)、抗微生物性物質(複数可)などを含む部品のキットに関する。
【0052】
本発明を例示する目的のために、また本発明を実施する最良の形態を提供するために、本発明の具体的な実施形態を以下において説明する。
【実施例】
【0053】
(実施例1:M.スメグマチスのrRNA遺伝子を変異させる一般的方法)
遺伝子組み換えマイコバクテリウム・スメグマチス誘導体(Sanderら、Mol. Microbiol. 1996年、第22巻:841〜848頁)および所望の変異を有する部分的なrRNA遺伝子断片を担持するプラスミドを使用すると、この変異は結果的に、RecA相同組換えにより、単一の機能的染色体rRNAオペロンへと導入されることができる(Prammanananら、Antimicrob. Agents Chermother. 1999年、第43巻:447〜453頁)。さらなる詳細は、PfisterらChemBioChem 2003年、第4巻:1078〜1088頁も参照されたい。
【0054】
(実施例2:組換えM.スメグマチス株の産生)
変異的変更の導入/選択に使用された菌株は、単一の機能的染色体rRNAオペロンを担持するマイコバクテリウム・スメグマチスの遺伝子組み換え誘導体(Sanderら、Mol. Microbiol. 1996年、第22巻:841〜848頁)であった。M.スメグマチスrrn-と名付けられたこの菌株は、単一コピーのrRNA遺伝子の変異的変更の選択を可能にした。変異は結果的に、それぞれの変異的変更を有するrRNA遺伝子を担持するプラスミドを使用して、RecAを介する相同組換えにより、単一の機能的染色体rRNAオペロンへと導入させた(Prammanananら、Antimicrob. Agents Chemother. 1999年、第43巻:447〜453頁)。
【0055】
プラスミドに担持されたrRNA遺伝子は、完全なrRNAオペロン(Prammanananら、Antimicrob. Agents Chemother. 1999年、第43巻:447〜453頁)または約1.0Kbの非機能的rRNA遺伝子断片(Pfisterら、Antimicrob. Agents Chemother. 2003年、第47巻:1496〜1502頁)のいずれか一方をコードする。in vitroでのPCR変異誘発を使用して、変異性rRNA遺伝子断片を産生した。部分的rRNA遺伝子断片の場合、変異性rRNA遺伝子断片は、pMV261ベクターまたはpMV361ベクターにクローニングし(Sanderら、Mol. Microbiol. 2002年、第46巻:1295〜1304頁;Pfisterら、Antimicrob. Agents Chemother. 2003年、第47巻:1496〜1502頁)、変異的変更が導入された約1.0kbの部分的rRNA遺伝子断片を担持するベクターがもたらされた。完全なrRNAオペロンを担持するプラスミドの場合、PCRにより得られた変異性rRNA遺伝子断片は、適切な制限部位を使用して、pMV361rRNAベクターまたはpMV261rRNAベクターにクローニングした(Prammanananら、Antimicrob. Agents Chemother. 1999年、第43巻: 447〜453頁)。pMV361rRNAベクターおよびpMV261rRNAベクターは、M.スメグマチスに由来するrRNAオペロンの完全コピーを担持した(Sanderら、Mol. Microbiol. 1997年、第26巻:469〜480頁)。rRNAをコードするプラスミドへの変異導入は、配列決定法により確認した。
【0056】
M.スメグマチスの単一rRNA対立遺伝子誘導体、すなわちM.スメグマチスrrn-を、プラスミドの形質転換に使用した。標準的技術に従い、以前に記載されているように、菌株を電気穿孔による形質転換に感受性にし、形質転換した(Sanderら、Mol. Microbiol. 1997年、第26巻:469〜484頁)。一次選択後、プラスミドにコードされたrRNA遺伝子の変異的変更を、RecAを介した相同組換えにより、単一の染色体rRNAオペロンへと移入した(Prammanananら、Antimicrob. Agents Chemother. 1999年、第43巻:447〜453頁)。遺伝子変換による、単一の機能的染色体rRNAオペロンへの、rRNA遺伝子の変異的変更の導入は、配列決定法により確認した。
【0057】
本技術の別の態様では、単一の機能的染色体rRNAオペロンは不活化され、リボソームRNAの合成は、プラスミドにコードされた変異性rRNAオペロンのみによって推進された。
【0058】
機能的rRNAオペロン内にそれぞれの変異的変更を担持する組換え体をコロニー精製し、リボソーム薬物感受性を決定するために、最小阻害濃度(MIC)の測定に供した。単一のコロニーに由来する培養物を、0.05%のTween80で補完したLB培地内で増殖させ、マイクロタイタープレート形式でMIC試験用に使用した。開始培養物は、600nmでの吸光度が0.025の細菌細胞を200μl含有し、2倍の連続希釈でそれぞれの薬物を添加した。MICは、24代目に相当する、37℃で72時間のインキュベーション後、培養物の増殖が完全に阻害された薬物濃度と定義した。
【0059】
(実施例3:組換えM.スメグマチスΔrrnA ΔrrnB attB::prrnB株の産生)
以下は、全ての内在性rrn遺伝子が欠失し、rRNAオペロンをコードするプラスミドにより機能的リボソームRNAが産生される菌株を産生する1つの方法を実証する。
【0060】
陽性選択可能マーカー、例えばaphと、陰性選択可能マーカー、例えばsacBとの組合せを無標識の欠失変異誘発に使用した。簡単に説明すると、sacB遺伝子を、マイコバクテリア発現ベクターpMV361(Stoverら、Nature 1991年、第351巻:456〜460頁)にクローニングし、pMS32aがもたらされた。pMS32aでは、sacBが、hsp60プロモーターの下流に位置する。hsp60p-sacB構築体を担持するpMS32aの制限断片を、pGEM-7クローニングベクター(Promega社)に移入し、rrnAおよびrrnB両置換ベクターの構築に骨格として使用したpZ130プラスミドがもたらされた。各rrnオペロンの5'および3'領域に隣接する染色体DNA配列を、PCRにより取得し、pZ130にクローニングした。さらに遺伝子組み換えを施し、rrn置換ベクターを得た。例として、rrnB置換ベクターの産生をここで説明し、rrnBの不活化方法を図1に図示した。
【0061】
補完的に、機能的rrnBオペロンを組込みが容易なベクターにクローニングした。図2に概略が示されている方法に従い、16S、23S、および5SrRNA遺伝子(rrs、rrl、およびrrf、図1を参照)全体にわたる遺伝子の欠失により、内在性染色体rRNAオペロンが不活化されているM.スメグマチスの誘導体、すなわちΔrrnAΔrrnBattB::prrnB株を得た。この菌株は、染色体rRNA遺伝子を完全に欠き、rRNAはプラスミドDNAのみから転写される。
【0062】
そのような菌株は、本発明のアッセイ法において、細菌細胞自体の天然に存在するリボソームの活性が、導入された少なくとも部分的に異種性のミトコンドリア性または細胞質性細菌リボソームの活性と干渉するのを回避するため、特に有用である。
【0063】
(実施例4:組換えM.スメグマチスを使用したリボソーム抗生物質のスクリーニングアッセイ)
このアッセイは、「ヒト」rRNAヌクレオチド位を担持する細菌リボソームが、薬物とヒトリボソームとの相互作用を研究するための代用として、有用であることを実証した。これは、16SrRNA1408位の多型、および6'NH3基を有する4,6-アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、カナマイシン)に対する感受性により例証された。6'NH3基を有する4,6-アミノグリコシドは、ヌクレオチド1400〜1900位を包含するリボソームA部位に結合し、細菌リボソームを選択的に標的にしたが、真核生物の細胞質リボソームは標的にしなかった。rRNA内の重要な多型は、ヌクレオチド1408位に関係し、原核生物リボソームではアデニンにより、真核生物の細胞質リボソームではグアニンにより特徴付けられる。16SrRNAの1408位でアデニンをグアニンに置換すると、細菌リボソームは、6'NH3基を有する4,6-アミノ-グリコシドに対して完全に非感受性になった(表を参照)。したがって、ヒトヌクレオチド1408位を細菌リボソームに導入する、単一ヌクレオチドの変更は、真核生物の細胞質リボソームの天然に有する薬物耐性に類似する高レベルの薬物耐性を付与した。
【0064】
表1のデータは、(i)rRNA内の一塩基多型が、リボソーム薬物の選択性および特異性を決定しうること、およびii)薬物と真核生物リボソームとの相互作用を研究するために、適切に改変された細菌リボソームを構築し、使用しうることを示す。
【0065】
【表1】

【0066】
(実施例5:組換えM.スメグマチスを使用した、原虫rRNAのデコーディング部位を標的にするリボソーム抗生物質のスクリーニングアッセイ)
下記で示された実施例5のMICデータは、本発明の方法において、ヒトおよび原虫rRNAのデコーディング部位を担持するハイブリッド細菌リボソームを使って得た。ヒトおよび原虫rRNAのデコーディング部位の二次構造だけでなく、このデータもまた、特定の原虫rRNAのデコーディング部位(ここでは、リーシュマニア原虫およびトリパノソーマ原虫)を標的にするリボソーム抗微生物性物質を同定する本発明の方法の有用性を実証する。太字表記のヌクレオチド位は、対応する真核生物のデコーディング部位に特異的な残基を表す。細菌リボソームに導入したヒトおよび原虫のデコーディング部位の部分を、枠で囲んだ。ヌクレオチド位は、大腸菌16SrRNAの相同性部位のナンバリングに従って番号付けをしている。
【0067】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例3によるrRNAオペロンrrnBの欠失方法を示す図である。白抜き矢印はrRNA遺伝子を表し、PおよびTはそれぞれプロモーターおよび終止配列を表す。黒塗り矢印は、rrnBの上流および下流のオープンリーディングフレームを示す。斜線の長方形は抗生物質耐性カセットを、斑点の矢印はsacB遺伝子を表す。点線は、置換ベクター(A)内の相同配列および染色体目標部位(B)間の、交差可能な部位を示す。rrnBの5'隣接領域内へのプラスミド組込み後(C)、相同的な3'隣接領域との二回目の交差によって、染色体タンデム反復を解消し、rrnBを欠失させる(D)。
【図2】実施例3によるM.スメグマチスΔrrnA ΔrrnB attB::prrnBを産生する連続的な方法を示す図である。染色体rrnBの欠失後、機能的rrnBオペロンを担持する補完ベクターを、染色体attB部位に導入する。続くrrnAの欠失によって、リボソームRNAがプラスミドのみから転写されるM.スメグマチスΔrrnA ΔrrnB attB::prrnB株がもたらされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物リボソームに選択的であるが、ミトコンドリアリボソームおよび/または細胞質リボソームには選択的でないリボソーム抗微生物性物質を同定する方法であって、
a)(i)微生物リボソームを有する少なくとも1つの細菌株、および
(ii)キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームを有する少なくとも1つの細菌株、および/または
(iii)キメラ型細胞質性細菌リボソームを有する少なくとも1つの細菌株を準備するステップと、
b)リボソーム抗微生物性物質候補を、a)に記載の各細菌株に接触させるステップと、
c)前記リボソーム抗微生物性物質候補と、a)に記載の各細菌株の1つまたは複数のリボソームとの相互作用を決定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記リボソーム抗微生物性物質が、細菌リボソーム、原虫リボソームおよび/または真菌リボソームに、好ましくは細菌リボソームおよび/または原虫リボソームに、より好ましくはリーシュマニア原虫またはトリパノソーマ原虫のリボソームに、最も好ましくは細菌リボソームに選択的である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物リボソームを有する少なくとも1つの細菌株が、天然型もしくはキメラ型の細菌リボソーム、原虫リボソームおよび真菌リボソームからなる群から選択される微生物リボソームを、好ましくは天然型もしくはキメラ型の細菌リボソームおよび/または原虫リボソームを、より好ましくは天然型もしくはキメラ型の細菌リボソームを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記リボソーム抗微生物性物質候補が、アミノグリコシド、マクロライド、リンコサミドからなる群から選択され、好ましくはアミノグリコシド、より好ましくは2-デオキシストレプタミンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記微生物リボソームが、マイコバクテリウム・スメグマチス由来の細菌リボソームである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記微生物リボソームが、大腸菌のナンバリングによる1408A、1410G、1490C、および1491Gからなる群から選択される変異を少なくとも1つ含む細菌リボソームに由来することを特徴とするキメラ型真菌リボソームである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記微生物リボソームが、大腸菌のナンバリングによる1408A、1409U、1409A、1410G、1410A、1490U、1491G、1491Uおよび2058Aからなる群から選択される変異を少なくとも1つ含む細菌リボソームに由来することを特徴とするキメラ型原虫リボソームである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームが、大腸菌のナンバリングによるG1491Cの変異を少なくとも含み、好ましくはG1410C、U1411C、C1412U、A1413C、U1414C、G1415U、A1416C、U1484G、U1485A、G1488A、A1489GおよびC1490Aからなる群から選択される変異をさらに有する細菌リボソームに由来することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームが、G1410C、U1411C、C1412U、A1413C、U1414C、G1415U、A1416C、U1484G、U1485A、G1488A、A1489GおよびC1490Aの変異を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームが、変異により、好ましくはリボソームのデコーディング部位内の変異によりさらにヒト化される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記キメラ型細胞質性細菌リボソームが、大腸菌のナンバリングによるA1408Gおよび/またはG1491Aの変異を少なくとも含み、より好ましくはG1410U、U1411A、A1413U、U1414A、G1415C、A1416C、U1484G、U1485G、G1486A、G1487A、A1489UおよびC1490Aからなる群から選択される変異をさらに有する細菌リボソームに由来することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記キメラ型細胞質性細菌リボソームが、G1410U、U1411A、A1413U、U1414A、G1415C、A1416C、U1484G、U1485G、G1486A、G1487A、A1489UおよびC1490Aの変異を含み、より好ましくはA1408GおよびG1491Aの変異をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記キメラ型細胞質性細菌リボソームが、好ましくはリボソームのデコーディング部位内の変異によりさらにヒト化される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記リボソーム抗微生物性物質の相互作用が、ステップa)に記載の各細菌株での前記抗微生物性物質の最小阻害濃度(MIC)、好ましくは前記細菌株(i)のMICに対する前記抗微生物性物質のMICを算出することにより決定される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記同定された抗微生物性物質候補が、細菌リボソーム、真菌リボソーム、および/または原虫リボソームに選択的であるが、ミトコンドリアリボソームおよび細胞質リボソームには選択的でない、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(i)微生物リボソームを有する少なくとも1つの細菌株、および/または
(ii)キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームを有する少なくとも1つの細菌株、および/または
(iii)キメラ型細胞質性細菌リボソームを有する少なくとも1つの細菌株が、
前記天然に存在する細菌リボソームRNA配列をコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部が、欠失し、異種性の微生物性(i)、ミトコンドリア性(ii)および/または細胞質性(iii)リボソームRNA配列をそれぞれコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部により置換された細菌株である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記細菌株が、rrnAおよび/またはrrnB遺伝子の少なくとも一部が、欠失し、異種性の微生物性(i)、ミトコンドリア性(ii)および/または細胞質性(iii)リボソームRNA配列をコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部により置換されたマイコバクテリウム・スメグマチスである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細菌株の少なくとも1つが、機能的に等価な無細胞生体系により代替される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
大腸菌のナンバリングによる1408A、1410G、1490C、および1491Gからなる群から選択される変異を少なくとも1つ含む細菌リボソームに由来することを特徴とする細菌リボソームに由来することを特徴とするキメラ型真菌リボソームを含む、細菌株または機能的に等価な無細胞生体系の、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法における使用。
【請求項20】
大腸菌のナンバリングによる1408A、1409U、1409A、1410G、1410A、1490U、1491G、1491Uおよび2058Aからなる群から選択される変異を少なくとも1つ含む細菌リボソームに由来することを特徴とする細菌リボソームに由来することを特徴とするキメラ型原虫リボソームを含む細菌株または機能的に等価な無細胞生体系の、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法における使用。
【請求項21】
大腸菌のナンバリングによるG1491Cの変異を少なくとも含み、好ましくはG1410C、U1411C、C1412U、A1413C、U1414C、G1415U、A1416C、U1484G、U1485A、G1488A、A1489GおよびC1490Aからなる群から選択される変異をさらに有する細菌リボソームに由来することを特徴とするキメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームを含む細菌株または機能的に等価な無細胞生体系の、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法における使用。
【請求項22】
前記キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームが、G1410C、U1411C、C1412U、A1413C、U1414C、G1415U、A1416C、U1484G、U1485A、G1488A、A1489GおよびC1490Aの変異を含む、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記キメラ型ミトコンドリア性細菌リボソームが、好ましくはリボソームのデコーディング部位内の変異によりさらにヒト化される、請求項21または22に記載の使用。
【請求項24】
大腸菌のナンバリングによるA1408Gおよび/またはG1491Aの変異を少なくとも含み、より好ましくはG1410U、U1411A、A1413U、U1414A、G1415C、A1416C、U1484G、U1485G、G1486A、G1487A、A1489UおよびC1490Aからなる群から選択される変異をさらに有する細菌リボソームに由来することを特徴とするキメラ型細胞質性細菌リボソームを含む細菌株または機能的に等価な無細胞生体系の、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法における使用。
【請求項25】
前記キメラ型細胞質性細菌リボソームが、G1410U、U1411A、A1413U、U1414A、G1415C、A1416C、U1484G、U1485G、G1486A、G1487A、A1489UおよびC1490Aの変異を含み、より好ましくはA1408GおよびG1491Aの変異をさらに含む、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記キメラ型細胞質性細菌リボソームが、好ましくはリボソームのデコーディング部位内の変異によりさらにヒト化される、請求項24または25に記載の使用。
【請求項27】
天然に存在する細菌リボソームRNA配列をコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部が、欠失し、異種性の微生物性(i)、ミトコンドリア性(ii)および/または細胞質性(iii)リボソームRNA配列をコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部により置換された細菌株または機能的に等価な無細胞生体系の、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法における使用。
【請求項28】
前記細菌株がマイコバクテリウム・スメグマチスであり、または前記機能的に等価な無細胞生体系がマイコバクテリウム・スメグマチスに由来し、rrnAおよび/またはrrnB遺伝子の少なくとも一部が、欠失し、異種性の微生物性(i)、ミトコンドリア性(ii)および/または細胞質性(iii)リボソームRNA配列をコードする少なくとも1つの遺伝子の少なくとも一部により置換された、請求項27に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−531041(P2009−531041A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501961(P2009−501961)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002861
【国際公開番号】WO2007/112965
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(505357971)
【出願人】(501393966)ウニヴェルジテート・チューリッヒ (13)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET ZUERICH
【Fターム(参考)】