説明

リボヌクレオチド還元酵素R2を指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび癌の治療におけるこれらの使用

【課題】ボヌクレオチド還元酵素R2を指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供すること、および癌の治療におけるそれらの使用を提供すること。
【解決手段】シタラビンと併用して、ヒト患者の急性骨髄性白血病を治療するための医薬の製造における、配列番号1で示される配列を含む、長さが35個以下のヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用であって、医薬がアンチセンスヌクレオチドを3mg/kg/日から8mg/kg/日の用量で患者に提供するために配合される使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療の分野、特にアンチセンスオリゴヌクレオチド単独での使用または癌治療のための1以上の化学療法薬と併用した使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リボヌクレオチド還元酵素、特にR2コンポーネントの調節は、いくつかの腫瘍プロモータおよび成長因子TGF−βに曝された悪性細胞で変化される[Amara, et al., 1994 ; Chen et al., 1993; Amara et al., 1995b; Hurta and Wright, 1995; Hurta et al., 1991(非特許文献1〜5)]。非悪性細胞と比較した場合、培養された悪性細胞でより高いレベルの酵素活性が観測されており[Weber, 1983; Takeda and Weber, 1981; Wright et al., 1989a(非特許文献6〜8)]、正常な対照組織サンプルと比較した場合、R2タンパク質およびR2mRNAのレベルの増加が、前悪性組織および悪性組織で見いだされている[Saeki et al., 1995; Jensen et al., 1994(非特許文献9〜10)]。しかし、これらの相関する研究は、癌細胞の形質転換および腫瘍の進行におけるリボヌクレオチド還元酵素に対する直接の役割を示していない。その理由は、同様に、非常に多くの他の酵素活性が癌細胞で変化されることが示されており[例えば、Weber, 1983(非特許文献6)]、その結果は細胞増殖の増加、および、形質転換された細胞の集団および悪性細胞の集団の細胞サイクルの調節特性の変化によって容易に説明することができるからである[Morgan and Kastan, 1997(非特許文献11)]。
【0003】
リボヌクレオチド還元酵素のR1またはR2コンポーネントを指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、癌細胞の成長を弱めるのに効果的であることが示されている[例えば、米国特許第5,998,383号明細書および同6,121,000(特許文献1および2)を参照]。
【0004】
世界中で種々のタイプの癌の高い発生率に鑑みて、癌の治療の耐目の改善された療法の必要性がある。
【0005】
この背景情報は、公知の情報が本発明に予想可能に関連性があると出願人によって信じさせる意図を提供する。先行する情報のいずれも本発明に対する先行技術を構成するという自認を必ずしも意図しておらず、そのように解釈すべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,998,383号明細書
【特許文献2】米国特許第6,121,000号明細書
【特許文献3】米国特許第3,687,808号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Amara, et al., 1994
【非特許文献2】Chen et al., 1993
【非特許文献3】Amara et al., 1995b
【非特許文献4】Hurta and Wright 1995
【非特許文献5】Hurta et al., 1991
【非特許文献6】Weber, 1983
【非特許文献7】Takeda and Weber, 1981
【非特許文献8】Wright et al., 1989a
【非特許文献9】Saeki et al., 1995
【非特許文献10】Jensen et al., 1994
【非特許文献11】Morgan and Kastan, 1997
【非特許文献12】Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. (1981) 2: 482
【非特許文献13】Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. (1970) 48: 443
【非特許文献14】Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. (U. S. A.) (1988) 85: 2444
【非特許文献15】Pavloff et al., J DNA sequencing and Mapping, 2; 227-234 (1992)
【非特許文献16】Nielsen et al., Science, 254:1497-1500 (1991)
【非特許文献17】Singh et al., Chem. Commun., 1998, 4:455-456
【非特許文献18】Koshkinetal., Tetrahedron, 1998, 54:3607-3630
【非特許文献19】Wahlestedt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 2000, 97:5633-5638
【非特許文献20】Koshkin et al., J. Am. Chem. Soc., 1998,120:13252-13253
【非特許文献21】Singh et al., J. Org. Chem., 1998, 63, 10035-10039
【非特許文献22】Kumar et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8:2219-2222
【非特許文献23】Martin et al., Helv. Chim. Acta, 78:486-504 (1995)
【非特許文献24】The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, (1990) pp 858-859, Kroschwitz, J. I., ed. John Wiley & Sons
【非特許文献25】Englisch et al., Angewandte Chemie, Int. Ed., 30:613 (1991)
【非特許文献26】Sanghvi, Y. S., (1993) Antisense Research and Applications, pp 289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., ed., CRC Press
【非特許文献27】Sanghvi, Y. S., (1993) Antisense Research and Applications, pp 276-278, Crooke, S. T. and Lebleu, B., ed., CRC Press, Boca Raton
【非特許文献28】Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:6553-6556 (1989)
【非特許文献29】Manoharan et al., Bioog. Med. Chem. Let., 4:1053-1060 (1994)
【非特許文献30】Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 660:306-309 (1992)
【非特許文献31】Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 3:2765-2770 (1993)
【非特許文献32】Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 20:533-538 (1992)
【非特許文献33】Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 10:1111-1118 (1991)
【非特許文献34】Kabanov et al., FEBS Lett., 259:327-330 (1990)
【非特許文献35】Svinarchuk et al., Biochimie, 75:49-54 (1993)
【非特許文献36】Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 36:3651-3654 (1995)
【非特許文献37】Shea et al., Nucl. Acids Res., 18:3777-3783 (1990)
【非特許文献38】Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 14:969-973 (1995)
【非特許文献39】Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1264:229-237 (1995)
【非特許文献40】Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 277:923-937 (1996)
【非特許文献41】Sambrook et al., 1992
【非特許文献42】Ausubel et al., 1989
【非特許文献43】Chang et al., 1995
【非特許文献44】Vega et al., 1995
【非特許文献45】Vectors: A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses (1988)
【非特許文献46】Enna, et al., Current Protocols in Pharmacology, J. Wiley & Sons, Inc., New York, NY
【非特許文献47】"Remington: The Science and Practice of Pharmacy," Gennaro, A., Lippincott, Williams & Wilkins, Philidelphia, PA (2000)
【非特許文献48】Cohen et al (1995) Palliative Medicine 9: 207-219
【非特許文献49】McCorkle and Young (1978) Cancer Nursing 1: 373-378
【非特許文献50】Welch, et al., Int J Cancer 47:227-37 (1991)
【非特許文献51】Krieg, A. M. Annu. Rev. Immunol. 20: 709-760 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、リボヌクレオチド還元酵素R2を指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供すること、および癌の治療におけるそれらの使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、長さが7から100個のヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、癌の治療が必要である哺乳動物内の癌の治療に使用するための、配列番号1[SEQ ID NO:1]からの連続した少なくとも7個のヌクレオチドを含むものを提供する。
【0010】
本発明の他の態様によれば、長さが7から100個のヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、癌の治療が必要である哺乳動物内の癌の治療において、1以上の化学療法剤と併用して使用するための、配列番号1からの連続した少なくとも7個のヌクレオチドを含むものを提供する。
【0011】
本発明の他の態様によれば、長さが20から100個のヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、固形腫瘍、腎臓癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、および白血病よりなる群から選択される癌を有するヒトの治療において、1以上の化学療法剤と併用して使用するための、配列番号1に示した配列を含むものを提供する。
【0012】
本発明の他の態様によれば、配列番号1からの連続した少なくとも7個のヌクレオチドを含む、長さが7から100個のヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドの、癌の治療のための医薬の製造のための使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ヌードマウス内のHT−29結腸腫瘍の成長に関する併用療法の効果を示す図である。
【図2】ヌードマウス内のHT−29結腸腫瘍の成長に関する併用療法の効果を示す図である。
【図3】SCIDマウス内のCaki−1腎臓腫瘍の成長に関する併用療法の効果を示す図である。
【図4】SCIDマウス内の前立腺腫瘍の成長に関する併用療法の効果を示す図である。
【図5】SCIDマウス内の前立腺腫瘍の成長に関する併用療法の効果を示す図である。
【図6】ヌードマウス内のA2058メラノーマの成長に関する併用療法の効果を示す図である。
【図7】CD−1ヌードマウス内の乳房腫瘍の成長に関する併用療法の効果を示す図である。
【図8】CD−1ヌードマウス内の卵巣腫瘍の成長に関する併用療法の効果を示す図である。
【図9】CD−1ヌードマウス内のヒト膵臓癌の治療における配列番号1の効果を示す図である。
【図10】SCIDマウス内での、ヒドロキシ尿素に耐性なヒト子宮頸部類上皮癌の治療における配列番号1の効果を示す図である。
【図11】SCIDマウス内での、シスプラチンに耐性なヒト乳房腺癌の治療における配列番号1の効果を示す図である。
【図12】SCIDマウス内での、シスプラチンに耐性なヒト乳房腺癌の治療における配列番号1の効果を示す図である。
【図13】SCIDマウス内での、タキソールに耐性なヒト乳房腺癌の治療における配列番号1の効果を示す図である。
【図14】SCIDマウス内での、タキソールに耐性なヒト乳房腺癌の治療における配列番号1の効果を示す図である。
【図15】SCIDマウス内での、タキソールに耐性なヒト前骨髄性白血病の治療における配列番号1の効果を示す図である。
【図16】SCIDマウス内での、多剤耐性なヒト結腸腺癌であるLS513の治療における配列番号1の効果を示す図である。
【図17】CD−1ヌードマウス内のHT−29結腸腫瘍の成長に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図18】(A)CD−1ヌードマウス内のA2058メラノーマの成長、(B)CD−1ヌードマウス内のMDA−MB−231乳房腫瘍の成長、(C)Balb/cヌードマウス内のSK−OV−3卵巣腫瘍の成長、および(D)CD−1ヌードマウス内のNCI−H460肺腫瘍の成長、に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図19】CD−1ヌードマウス内のSU.86.86膵臓腫瘍の成長に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図20】CD−1ヌードマウス内のHepG2肝臓腫瘍の成長に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図21】(A)CD−1ヌードマウス内のCaki−腎臓腫瘍の成長、および(B)SCIDマウスのA498腎臓腫瘍の成長、に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図22】SCIDマウス内のSIHA子宮頸部腫瘍の成長に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図23】SCIDマウス内のHeLa S3子宮頸部腫瘍の成長に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図24】(A)マウス線維肉腫(R3)細胞、および(B)C8161ヒトメラノーマ細胞を用いた転移のマウス実験モデルにおける配列番号1の効果を示す図である。
【図25】ヒトリンパ腫(Raji)を有するSCIDマウスの生存時間を示す図である。
【図26】赤白血病(CB7)を有するCB−17 SCIDマウスの生存時間を示す図である。
【図27】C3Hマウス内のR3マウス線維肉腫に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図28】SCIDマウス内のCaki−1ヒト腎臓癌細胞およびA498ヒト腎臓細胞の成長に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図29】異種移植実験における種々のヒト腫瘍細胞系での配列番号1の効果を示す図である。
【図30】ヒトバーキットリンパ腫(Raji)細胞を注射したマウスの生存に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図31】SCIDマウスにおけるC8161メラノーマ細胞の転移に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図32】SCID/BeigiマウスにおけるCaki腎臓腫瘍の異種移植に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図33】CD−1ヌードマウスにおけるHT29腫瘍の異種移植に関する配列番号1の効果を示す図である。
【図34】配列番号1に対するフェーズIの臨床試験の結果を示す。(A)は、配列番号1に対するAUC対実際の用量のプロットを表す図であり、(B)は、配列番号1の血漿濃度対時間を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、哺乳動物のリボヌクレオチド還元酵素R2タンパク質をコードする遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、並びに、種々の癌の治療におけるそのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドと1以上の化学療法剤の併用に関する。アンチセンスオリゴヌクレオチド、並びに、アンチセンスオリゴヌクレオチドと1以上の化学療法剤の併用は、難治性癌細胞、進行した癌細胞、かつ薬物耐性の癌細胞を含めた癌の成長および/または転移を、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは化学療法剤(1種または複数種)単独で治療した場合よりも低減する点で有効である。
【0015】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0016】
本明細書で使用する用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、所望の遺伝子に対するmRNAに相補的なヌクレオチド配列を意味する。本発明の関連では、所望の遺伝子は哺乳動物リボヌクレオチド還元酵素R2タンパク質をコードする遺伝子である。
【0017】
本明細書で使用する用語「選択的にハイブリダイズする」は、検出できるように且つ特異的に第二の核酸に結合する核酸の能力をいう。オリゴヌクレオチドは、非特異的な核酸への、無視できない量の検出可能な結合を最小限に抑えるハイブリダイゼーション条件および洗浄条件下で標的核酸のストランドに選択的にハイブリダイズする。非常に厳しい条件を使用して、当分野で公知であり、本明細書で議論する選択的ハイブリダイゼーション条件を実現する。
【0018】
典型的には、ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件は、従来のハイブリダイゼーションの手順に従った非常な厳格さで行われる。洗浄条件は、一般に、1〜3×SSC、0.1〜1%SDS、50〜70℃であり、約5〜30分後に洗浄溶液の交換を伴う。
【0019】
核酸配列に関連して本明細書で使用する用語「〜に対応する」は、リファレンスポリヌクレオチド配列の全てまたは一部と同一であるポリヌクレオチド配列を意味する。反対に、用語「〜に相補的」は、ポリヌクレオチド配列がリファレンスポリヌクレオチド配列の相補体の全てまたは一部と同一であることを意味するものとして本明細書で使用される。例示として、ヌクレオチド配列「TATAC」は、リファレンス配列「TATAC」に対応し、リファレンス配列「GTATA」に相補的である。
【0020】
以下の用語は、2以上のポリヌクレオチド間の配列関係を説明するために本明細書で使用される:「リファレンス配列」、「比較のウインドウ」、「配列同一性」、「配列相同性のパーセンテージ」、および「実質的同一性」。「リファレンス配列」は、配列の比較のための基準として使用される、定義された配列であり、リファレンス配列は、より大きな配列のサブセット、例えば全長cDNAまたは遺伝子配列のセグメントであってもよく、または完全なcDNAまた遺伝子配列を含んでいてもよい。一般には、リファレンスポリヌクレオチド配列は、長さが少なくとも20のヌクレオチドであり、多くの場合長さが少なくとも50のヌクレオチドである。
【0021】
本明細書で使用する「比較のウインドウ」は、候補配列がリファレンス配列と比較されうる、少なくとも15の隣接したヌクレオチド位置のリファレンス配列の概念上のセグメントであり、比較ウインドウ内の候補配列の部分が、2つの配列の最適アライメントに対してリファレンス配列(付加または欠失を含まない)と比べた場合に20パーセント以下の付加または欠失(即ちギャップ)を含むことができることをいう。本発明は、リファレンスまたは候補配列の全長までおよびこれを含む比較のウインドウに対して、種々の長さを意図している。比較ウインドウを整列するための配列の最適アライメントは、SmithおよびWaterman(Adv. Appl. Math. (1981) 2: 482(非特許文献12))の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. (1970) 48: 443(非特許文献13))の相同性アライメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman(Proc. Natl. Acad. Sci. (U. S. A.) (1988) 85: 2444(非特許文献14))の類似の方法のための検索を用いて、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(例えば、GAP,BESTFIT,FASTA,およびTFASTA、ウイスコンシン・ジェネティックス・ソフトウエア・パッケージ・リリース7.0、ジェネティックスコンピュータグループ、573 サイエンスドクター、マジソン、WI(the Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 573 Science Dr., Madison, WI))を用いて、公的に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えばALIGNまたはMegalign(DNASTAR)を用いて、または、検査によって実施される。次に、最適なアライメント(即ち、比較ウインドウ上で最も高い同一性のパーセンテージをもたらすもの)を選択する。
【0022】
用語「配列同一性」は、2種のポリヌクレオチド配列が、比較ウインドウ上で同一(即ち、ヌクレオチド単位を基準にして)であることを意味する。
【0023】
配列に関連して本明細書で使用される、用語「パーセント(%)配列同一性」は、配列の最適アライメントの後であり、且つ、必要であれば、配列同一性の一部としての任意の保存的置換を考慮することなく、最大のパーセント配列相同性を達成するためのギャップの導入の後における、比較のウインドウ上のリファレンスポリヌクレオチド配列内の残基と同一である候補配列内のヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。
【0024】
本明細書で使用される用語「実質的同一性」は、ポリヌクレオチド配列の特徴であって、ポリヌクレオチドが比較のウインドウ上でリファレンス配列と比較されたときに少なくとも50%の同一性を有する配列を含むものを意味する。比較のウインドウ上のリファレンス配列と比較して、少なくとも60%の配列同一性、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、および少なくとも90%の配列同一性のポリヌクレオチド配列も、リファレンス配列と実質的な同一性を有すると見なされる。
【0025】
本明細書で相互交換して使用される、用語「療法(therapy)」および「治療(treatment)」は、受容者の状態を改善する意図を持って行われる介入をいう。この改善は、主観的であってもまたは客観的であってもよく、治療される疾患、障害または症状に伴う兆候の改良、これらの発達を防止すること、またはこれらの病状を改めることに関連する。従って、用語、療法および治療は、最も広い意味で使用され、種々の段階の疾患、障害または症状の予防(病気の予防)、緩和、低減、および治癒を含む。療法/治療の必要な者には、疾患、障害または症状をすでに持っている者だけでなく、疾患、障害または症状に罹りやすい者、即ちこれらを発症するリスクのある者、および疾患、障害または症状を予防しなければならない者が含まれる。
【0026】
用語「改良する」または「改良」は、治療される疾患の1以上の兆候、サイン、および
特徴を、一時的および長期の両方において、抑え、予防し、低下させ、または改善することを含む。
【0027】
本明細書で使用する、用語「対象」または「患者」は治療の必要な哺乳動物をいう。
【0028】
1以上の更なる治療薬と「併用して」本発明の化合物を投与することは、同時(共存)投与および連続投与を含むことを意図している。連続投与は、治療剤(1種または複数種)と本発明の化合物(1種またな複数種)を種々の順序で対象に投与することを包含することを意図する。
【0029】
本発明で使用する、用語「約」は、名目上の値から±10%の変動を意味する。このような変動は、それを特に言及しているかどうかにかかわらず、本明細書中で示されている任意の値に通常含まれると理解されるべきである。
【0030】
アンチセンス分子
選択および特徴
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、哺乳動物リボヌクレオチド還元酵素R2タンパク質をコードする遺伝子に対して標的化されている。種々の哺乳動物リボヌクレオチド還元酵素遺伝子の配列が当分野で知られており、例えば、ヒトリボヌクレオチド還元酵素R2遺伝子の配列は、Pavloff et al.[J DNA sequencing and Mapping, 2; 227-234 (1992)(非特許文献15)]に提供されている。このおよび他の哺乳動物R2配列も、NCBIによって維持されているジーンバンク(GenBank)データベースから利用可能である。
【0031】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも7個の連続したヌクレオチド、またはヌクレオチド類似体であって、哺乳動物リボヌクレオチド還元酵素R2遺伝子のコード領域の一部に対応するものを含む。
【0032】
本発明の、単独使用または併用使用に適したアンチセンスオリゴヌクレオチドの例には、リボヌクレオチド還元酵素R2遺伝子に対して標的化された、米国特許第5,998,383号明細書(特許文献1)および同6,121,000号明細書(特許文献2)(参照として本明細書に組み込む)に開示されたものが含まれる。本発明の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列によって表されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの少なくとも7個の保存的ヌクレオチドを含む。
【0033】
5’−GGCTAAATCGCTCCACCAAG−3’ [配列番号1]
本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列が二本鎖、ヘアピン、二量体を形成するか、または、ホモオリゴマー/配列リピートを含む可能性を少なくとも示すように選択される。オリゴヌクレオチドは、GCクランプをさらに含んでいてもよい。当業者は、これらの特性が種々のコンピュータモデリングプログラム、例えばプログラムOLIGO(登録商標)プライマー分析ソフトウエア、バージョン5.0(the program OLIGO Primer Analysis Software, Version 5.0)、ナショナルバイオサイエンス社、プリマス、MN(National Biosciences, Inc., Plymouth, MN)により販売)を用いて定性的に決定することができる。
【0034】
有効であるためには、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般に、7から100個の長さである。本発明の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは約7から約50個のヌクレオチドの長さである。他の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは約7から約35個のヌクレオチドの長さ、約15から約25個のヌクレオチドの長さ、および約20個のヌクレオチドの長さである。
【0035】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、その標的配列の相補体と100%の同一性を有する必要はない。本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的配列の相補体と少なくとも約75%同一である配列を有する。本発明の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオドは、標的配列の相補体と少なくとも約90%同一である配列を有する。関連する実施形態では、これらは、いくつかの塩基のギャップまたはミスマッチを考慮して、標的配列の相補体と少なくとも約95%同一である配列を有する。同一性は、例えばウイスコンシン大学コンピュータグループ(GCG)ソフトウエアのBLASTNプログラム(the BLASTN program of the University of Wisconsin Computer Group (GCG) software)を用いて決定することができる。
【0036】
本明細書で使用する用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」には、オリゴヌクレオチドミメティック、修飾されたオリゴヌクレオチドおよびキメラアンチセンス化合物を含めた他のオリゴマーアンチセンス化合物が含まれる。キメラアンチセンス化合物は、2以上の科学的に区別できる領域を含み、各々が少なくとも1つのモノマーユニットでできているアンチセンス化合物である。
【0037】
従って、本発明の関連では、用語「オリゴヌクレオチド」は、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、または、RNA若しくはDNAミメティック、のオリゴマーまたはポリマーをいう。従って、この用語は、天然に存在する核酸塩基、糖および核酸間(骨格)共有結合から構成されるオリゴヌクレオチド、並びに、同様に機能する天然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。このような修飾されたオリゴヌクレオチドまたは置換されたオリゴヌクレオチドは、多くの場合、例えば細胞取り込みの強化、核酸標的への親和性の強化、およびヌクレアーゼの存在下での安定の増加のような所望の特性により、天然型よりも好ましい。
【0038】
当分野で公知であるように、核酸は塩基−糖の組み合わせであり、ヌクレオチドは核酸の糖部分に共有結合したホスフェート基をさらに含む核酸である。オリゴヌクレオチドを形成する際に、ホスフェート基は互いに隣接する核酸を共有結合で連結し、線状のポリマー化合物を形成するが、RNAおよびDNAの正常な結合または骨格は、3’から5’までのホスホジエステル結合である。本発明で有用なアンチセンス化合物の特別な例には、修飾された骨格または非天然型の核酸間結合を含有するオリゴヌクレオチドが含まれる。この明細書で定義されるように、修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドには、骨格内にリン原子を保持したもの、および骨格内にリン原子を欠くものの両方が含まれる。本発明では、当分野で時々言及されるように、修飾されたオリゴヌクレオチドの核酸間の骨格内にリン原子を持たない修飾されたオリゴヌクレオチドもオリゴヌクレオチドであると見なすことができる。
【0039】
修飾されたオリゴヌクレオチド骨格を有する代表的なアンチセンスオリゴヌクレオチドには、例えば1以上の修飾されたヌクレオチド間結合あって、ホスホロチオエート、キラルなホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルアルキルホスホネートおよび3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含めた他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’アミノホスホラミデートおよびアミノアルキルホスホラミデートを含めたホスホラミデート、チオノホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、および正常な3’−5’結合を有するボラノホスフェートである1以上の修飾されたヌクレオチド間結合を持つもの、これらの2’−5’結合アナログ、並びに核酸ユニットの隣接する対が3’−5’から5’−3’へまたは2’−5’から5’−2’へ結合した逆極性を持つものが含まれる。種々の塩、混合塩、遊離の酸の形態も含まれる。
【0040】
本発明の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。他の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの4つ、5つまたは6つの3’−末端ヌクレオチドを連結するホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。更なる実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド全てを連結するホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。
【0041】
リン原子を含まない、代表的な修飾されたオリゴヌクレオチドの骨格には、短鎖アルキル若しくは短鎖シクロアルキル核酸間結合、ヘテロ原子とアルキル若しくはシクロアルキルが混合された核酸間結合、または1以上の短鎖のヘテロ原子または複素環核酸間結合によって形成される。このような骨格には、モルホリノ結合(核酸の糖部分から一部形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;並びにN、O、SおよびCH2コンポーネントが混合された部分を有する他の骨格が含まれる。
【0042】
本発明はまた、ヌクレオチドユニットの糖および核酸間結合の両方が新規な基で置き換えられたオリゴヌクレオチドミメティックを意図している。塩基ユニットは適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーション用に維持されている。優れたハイブリダイゼーション特性が示されているこのようなオリゴヌクレオチドミメティックの例は、ペプチド核酸(PNA)である[Nielsen et al., Science, 254:1497-1500 (1991)(非特許文献16)]。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格はアミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置き換えられる。核酸塩基は、保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子と直接にまたは間接的に結合される。
【0043】
本発明はまた、リボースの2’−Oと4’−Cを結合するメチレンブリッジを含む、立体配座的に制限された新規なオリゴヌクレオチドアナログである「固定された核酸(locked nucleic acid)」(LNAs)を含む(Singh et al., Chem. Commun., 1998, 4:455-456(非特許文献17)参照)。LNAおよびLNAアナログは、相補的DNAおよびRNAとの非常に高い二本鎖熱安定性、3’−エキソヌクレアーゼ分解に対する安定性、および良好な溶解度特性を示す。アデニン、シトシン、グアニン、5−メチルシトシン、チミンおよびウラシルのLNAアナログの合成、これらのオリゴマー化、および核酸認識特性は記述されている(Koshkinetal., Tetrahedron, 1998, 54:3607-3630(非特許文献18)参照)。ミスマッチした配列の研究は、LNAがワトソン−クリック塩基対則に従うことを示しており、対応する修飾されていないリファレンスストランドと比べて一般に選択性が改善される。
【0044】
LNAsを含有するアンチセンスオリゴヌクレオチドが記述されており(Wahlestedt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 2000, 97:5633-5638(特許文献19))、これは意図した効果を生じ、無毒である。加えて、LNA/DNAコポリマーは、血清および細胞抽出物中で容易に分解しなかった。
【0045】
LNAsは、相補的DNA若しくはRNAと、または相補的LNAと、高い熱親和性で二本鎖を形成する。LNAで媒介されるハイブリダイゼーションの万能性は、非常に安定なLNA:LNA二本鎖の形成によって強調されている(Koshkin et al., J. Am. Chem. Soc., 1998,120:13252-13253((非特許文献20))。LNA:LNAハイブリダイゼーションは、最も熱的に安定な核酸型の二本鎖システムであることが示されており、LNAのRNAを模倣する特徴が二本鎖レベルで確立されている。3つのLNAモノマー(TまたはA)の導入は、DNA相補体に対して融点を十分に高める。
【0046】
2’−アミノ−LNA(Singh et al., J. Org. Chem., 1998, 63, 10035-10039(非特許文献21))および2’−メチルアミノ−LNAの合成が記述されており、相補的RNAおよびDNAストランドとのこれらの二本鎖の熱的安定性が報告された。ホスホロチオエート−LNAおよび2’−チオ−LNAの調製も記述されている(Kumar et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8:2219-2222(非特許文献22))。
【0047】
修飾されたオリゴヌクレオチドはまた、1以上の置換された糖部分を含有していてもよい。例えば、オリゴヌクレオチドは、以下の基の1つを2’位に有する糖を含んでいてもよい:OH;F;O−、S−またはN−アルキル;O−、S−またはN−アルケニル;O−、S−またはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキル(但し、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換または無置換のC1からC10アルキルまたはC2からC10アルケニルおよびアルキニルであってもよい。)。このような基の例は、O[(CH2nO]mCH3、O(CH2nOCH3、O(CH2nNH2、O(CH2nCH3、O(CH2nONH2、およびO(CH2nON[(CH2nCH3)]z(但し、nおよびmは1から約10である。)である。あるいは、オリゴヌクレオチドは、2’位に以下の置換基:C1からC10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリール若しくはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA開裂基、レポータ基、インターカレータ、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善するための基、またはヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基、並びに、同様の特性を有する他の置換基の1つを含んでいてもよい。具体例には、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH2CH2OCH3、2’−O(2−メトキシエチルまたは2’−MOEとしても知られる)[Martin et al., Helv. Chim. Acta, 78:486-504 (1995)(非特許文献23)]、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ(O(CH22ON(CH32基、2’−DMAOEとしても知られる。)、2’−メトキシ(2’−O−CH3)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCH2CH2CH2NH2)および2’−フルオロ(2’−F)が含まれる。本発明の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、置換された糖部分を含む少なくとも1つのヌクレオチドを含む。他の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの2’−O−(2−メトキシエチル)、即ち2’−MOEで修飾されたヌクレオチドを含む。
【0048】
オリゴヌクレオチドの他の位置、特に3’−末端ヌクレオチド上または2’−5’結合したオリゴヌクレオチド内の糖の3’位、および5’−末端ヌクレオチドの5’位で同様の修飾を行うこともできる。オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル糖の位置に、シクロブチル部分のような糖部分を有していてもよい。
【0049】
オリゴヌクレオチドはまた、核酸塩基に対する修飾または置換基を含んでいてもよい。本明細書で使用する、「修飾されていない」または「天然の」核酸塩基は、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、並びにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。修飾された核酸塩基には、他の合成および天然の核酸塩基、例えば5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミジンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニルウラシルおよびシトシン、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(擬ウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−フルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザクアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザクアニンおよび7−デアザアデニン、並びに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンが含まれる。さらに、核酸塩基には、米国特許第3,687,808号明細書(特許文献3);The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, (1990) pp 858-859, Kroschwitz, J. I., ed. John Wiley & Sons(非特許文献24);Englisch et al., Angewandte Chenaie, Int. Ed., 30: 613 (1991)(非特許文献25);および Sanghvi, Y. S., (1993) Antisense Research and Applications, pp 289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., ed., CRC Press(非特許文献26)に開示されているものが含まれる。これらの核酸塩基のいくつかは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を高めるのに特に有用である。これらには、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、および2−アミノプロピルアデニン、5−プロピルウラシルおよび5−プロピルシトシンを含めたN−2、N−6およびO−6置換プリンが含まれる。5−メチルシトシンの置換は、0.6〜1.2℃だけ核酸二本鎖の安定性を高めることが示されている(Sanghvi, Y. S., (1993) Antisense Research and Applications, pp 276-278, Crooke, S. T. and Lebleu, B., ed., CRC Press, Boca Raton(非特許文献27))。
【0050】
本発明に含まれる他のオリゴヌクレオチドの修飾は、オリゴヌクレオチドの1以上の部分への化学的な結合、または、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取り込みを強化する複合体である。これらの部分には、脂質部分、例えばコレステロール部分[Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:6553-6556 (1989)(非特許文献28)]、コール酸[Manoharan et al., Bioog. Med. Chem. Let., 4:1053-1060 (1994)(非特許文献29)]、チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール[Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 660:306-309 (1992)(非特許文献30);Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 3:2765-2770 (1993)(非特許文献31)]、チオコレステロール[Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 20:533-538 (1992)(非特許文献32)]、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基[Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 10:1111-1118 (1991)(非特許文献33);Kabanov et al., FEBS Lett., 259:327-330 (1990)(非特許文献34);Svinarchuk et al., Biochimie, 75:49-54 (1993)(非特許文献35)]、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート[Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 36:3651-3654 (1995)(非特許文献36);Shea et al., Nucl. Acids Res., 18:3777-3783 (1990)(非特許文献37)]、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖[Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 14:969-973 (1995)(非特許文献38)]、または アダマンタン酢酸[Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 36:3651-3654 (1995)(非特許文献36]、パルミチル部分[Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1264:229-237 (1995)(非特許文献39)]、またはオクタデシルアミン若しくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分[Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 277:923-937 (1996)(非特許文献40))が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
当業者は、与えられたオリゴヌクレオチドの全ての位置が一様に修飾されることは必ずしも必要ないことを認識するであろう。従って、本発明は、1つのオリゴヌクレオチドに、またはオリゴヌクレオチド内の1つの核酸であっても、上記の1を超える修飾の組み込みを意図している。本発明にはキメラ化合物であるアンチセンス化合物が含まれる。これらのオリゴヌクレオチドは、一般には、オリゴヌクレオチドが核酸分解に対する耐性が強化されたオリゴヌクレオチド、細胞取り込みが高められたオリゴヌクレオチド、および/または標的核酸に対する結合親和性が高められたオリゴヌクレオチドを与えるように修飾される少なくとも1つの領域を含有する。オリゴヌクレオチドのその他の領域はRNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断できる酵素に対する基質として機能することができる。例として、RNaseHは、RNA:DNA二本鎖のRNAストランドを切断する細胞性エンドヌクレアーゼである。従って、RNaseHの活性化は、RNA標的の切断で起こり、これによって遺伝子発現のオリゴヌクレオチドの阻害の効率を大きく増強する。その結果として、キメラオリゴヌクレオチドが使用された場合、同じ標的領域にハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドと比較して、より短いオリゴヌクレオチドで、しばしば、比較できる結果を得ることができる。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動および必要であれば糖分野で公知の、関連する核酸ハイブリダイゼーション技術によって、通常通りに検出することができる。
【0052】
本発明に関連して、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、これがDNAおよびRNAヌクレアーゼによる分解を受けにくいように、あるいは、これを送達ビヒクル(このビヒクルは、ビヒクル自体の中では、DNAまたはRNAヌクレアーゼからオリゴヌクレオチド保護する。)内に置くように修飾された場合、「ヌクレアーゼ耐性」である。ヌクレアーゼ耐性のオリゴヌクレオチドには、例えば、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、およびモルホリノオリゴマーが含まれる。ヌクレアーゼ耐性を付与するための適切な送達ビヒクルには、例えばリポソームが含まれる。本発明の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはヌクレアーゼ耐性である。
【0053】
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善するための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基を含有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを意図している。
【0054】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの調製
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、当業者によく知られた従来の技術により調製することができる。例えば、オリゴヌクレオチドは、アプライド・バイオシステムズ・カナダ社、ミシソーガ、カナダ(Applied Biosystems Canada Inc., Mississauga, Canada)から入手できる装置のような、市販の装置を用いて固相合成を用いて調製することができる。当分野でよく知られているように、ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体のような修飾されたオリゴヌクレオチドも、同様の方法によって容易に調製することができる。
【0055】
あるいは、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは。当分野で公知の方法によって、天然に存在するリボヌクレオチド還元酵素R2遺伝子の酵素的消化によって調製することができる。
【0056】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、アンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする核酸を含む発現ベクターを適切な宿主細胞中で発現させる、組み換え法の使用によって調製することができる。このような発現ベクターは当分野で公知の手順を用いて容易に構築することができる。適切なベクターの例には、プラスミド、ファジミド(Phagemide)、コスミド、バクテリオファージ、バキュロウイルスおよびレトロウイルス、並びにDNAウイルスが含まれるが、これらに限定されない。当業者は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの発現に適した宿主細胞の選択は、選ばれたベクターに依存することを理解するであろう。宿主細胞の例には、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞および哺乳動物細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0057】
当業者はまた、発現ベクターが、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列の効率的な転写に必要な調節領域(regulatory element)、例えば転写領域(transcriptional element)をさらに含んでいてもよい。ベクターに取り込むことができる調節領域の例には、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、およびポリアデニル化シグナルが含まれるがこれらに限定されない。当業者は、適切な調節領域の選択が、アンチセンスオリゴヌクレオチドの発現のために選ばれた宿主細胞に依存すること、および、このような調節領域は、細菌の遺伝子、真菌の遺伝子、ウイルスの遺伝子、哺乳動物の遺伝子、または昆虫の遺伝子から誘導されうることを認識するであろう。
【0058】
本発明によれば、発現ベクターは、当分野で公知の種々の方法の1つによって適切な宿主細胞または組織に導入することができる。このような方法は、Sambrook et al., 1992;Ausubel et al., 1989;Chang et al., 1995;Vega et al., 1995;およびVectors: A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses (1988)(非特許文献40〜45)に一般的に開示されていることが見いだされ、このような方法には、例えば安定な若しくは一時的なトランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔法、および組み換えウイルスベクターでの感染が含まれる。
【0059】
化学療法剤
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1以上の化学療法剤と併用して使用される場合、この化学療法剤は、当分野で公知の広範囲の癌の化学療法剤から選択することができる。公知の化学療法剤には、特定のタイプの癌の治療に特異的なもの、並びに、複数の癌の範囲に適用可能なもの、例えばドキソルビシン、カペシタビン、ミトキサントロン、イリノテカン(CPT−11)、およびゲムシタビンが含まれる。エトポシドは、白血病(急性リンパ球性白血病および急性骨髄性白血病を含む)、生殖細胞腫瘍、ホジキン病および種々の肉腫の治療に、一般的に適用可能である。シタラビン(Ara−C)も、急性骨髄性白血病、髄膜白血病、急性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病を含めた種々の白血病、並びに、非ホジキンリンパ腫の治療に適用できる。
【0060】
本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチドと一緒に両方のタイプの化学療法剤を使用することを意図している。単独で使用できるか、または特定の癌の治療のために種々併用して使用することができる代表的な化学療法剤を表1に示した。当業者は、多くの他の化学療法剤が利用できること、および、以下のリストは単に代表であることを認識するであろう。
【0061】
【表1−1】

【0062】
【表1−2】

【0063】
【表1−3】

【0064】
【表1−4】

【0065】
上述のように、化学療法剤の組み合わせを使用することができる。標準的な癌の化学療法剤を用いる併用療法は当分野でよく知られており、そのような組み合わせも、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドと一緒に使用することができる。
【0066】
代表的な併用療法には、乳癌のためのエピルビシンとパクリタキセル若しくはドセタキセルの組み合わせ、または、ドキソルビシン若しくはエピルビシンとシクロホスファミドの組み合わせが含まれる。多剤化学療法の処方計画も有用であり、これは、例えばドキソルビシン/シクロホスファミド/5−フルオロウラシルまたはシクロホスファミド/エピルビシン/5−フルオロウラシルよりなる。上記の併用の多くは、多くの他の固形腫瘍の治療に有用である。
【0067】
エトポシドと、シスプラチン若しくはカルボプラチンのどちらかとの組み合わせは、小細胞肺癌の治療に使用される。胃癌または食道癌の治療には、ドキソルビシン若しくはエピルビシンと、シスプラチンおよび5−フルオロウラシルの組み合わせが有用である。結腸直腸癌に対しては、5−フルオロウラシルをベースとした医薬と併用するCPT−11、または5−フルオロウラシルをベースとした医薬と組み合わせたオキサリプラチンが有用でありうる。オキサリプラチンはまた、カペシタビンと組み合わせて使用される。
【0068】
他の例には、非ホジキンリンパ腫の治療におけるシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾンの組み合わせ;ホジキン病の治療におけるドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン(DTIC)の組み合わせ、および、非小細胞肺癌の治療におけるシスプラチン若しくはカルボプラチンと、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビンまたはエトポシドの任意の1つまたはこれらの組み合わせとの組み合わせが含まれる。
【0069】
種々の肉腫が併用療法によって治療されている。例えば、骨肉腫に対してはドキソルビシンおよびシスプラチン若しくはメトトレキサートと、ロイコボリンの組み合わせが使用でき、進行肉腫に対してはエトポシドがイホスファミドと組み合わせて使用でき、軟部組織肉腫に対しては、ドキソルビシンまたはダカルバジンが単独で使用でき、または進行した肉腫に対してはドキソルビシンがイホスファミド若しくはダカルバジンと組み合わせてまたはエトポシドがイホスファミドと組み合わせて使用できる。ユーウィング肉腫/末梢神経外胚葉腫瘍(PNET)または横紋筋肉腫は、エトポシドおよびイホスファミド、またはビンクリスチン、ドキソルビシンおよびシクロホスファミドの組み合わせを用いて治療されうる。
【0070】
アルキル化剤であるシクロホスファミド、シスプラチンおよびメルファランはまた、しばしば、種々の癌の治療において他の化学療法剤との併用療法で使用される。
【0071】
アンチセンスオリゴヌクレオチドと1以上の化学療法剤の適切な併用の例には、アンチセンスオリゴヌクレオチドと下記の化学療法剤の併用が含まれるが、これらに限定されない:即ち、1以上の化学療法剤は、
−乳癌、腎臓癌、結腸癌、結腸直腸癌および膵臓癌(これらに限定されない)を含めた固形腫瘍の治療に対しては、カペシタビン単独、または他の化学療法剤との組み合わせ、例えば結腸直腸癌、結腸癌および膵臓癌の治療に対してはカペシタビンとオキサリプラチンの組み合わせ、または結腸癌の治療に対してはカペシタビンとゲムシタビンの組み合わせ、
−転移性の癌の治療に対しては、カルボプラチンおよびパクリタキセルの組み合わせ、
−頭部および頸部の癌、食道癌、肺癌、卵巣癌、および子宮頸癌(cervical cancer)の治療に対しては、シスプラチン単独、または他の化学療法剤との組み合わせ、例えば小細胞肺癌(SCLC)の治療に対してはシスプラチンとイリノテカンの組み合わせ、
−急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)の治療に対しては、シタラビン単独、または他の化学療法剤との組み合わせ、例えばCMLの治療に対してはシタラビン、フルダラビンおよびフィルグラスチムの組み合わせ、またはAMLの治療に対してはシタラビン、ミトキサントロンおよびエトポシドの組み合わせ、
−メラノーマの治療に対しては、ダカルバジン、
−非小細胞肺癌(NSCLC)、乳癌、前立腺癌および泌尿生殖路の癌(これらに限定されない)を含めた固形腫瘍の治療に対しては、ドセタキセル単独または他の化学療法剤との組み合わせ、
−腎臓癌、膵臓癌、および胆嚢若しくは輸胆管の癌の治療に対しては、5−FU単独または他の化学療法剤との組み合わせ、
−NSCLC、乳癌、および腎臓癌(これらに限定されない)を含めた固形癌の治療に対しては、ベムシタビン単独、または他の化学療法剤との組み合わせ、例えば乳癌の治療に対してはゲムシタビンとオキサリプラチンの組み合わせ、
−子宮頸癌の治療に対しては、ヒドロキシ尿素単独、または他の化学療法剤との組み合わせ、
−AMLの治療に対しては、イダルビシン単独、または他の化学療法剤との組み合わせ、
−膵臓癌および結腸癌の治療に対しては、イリノテカン単独、または他の化学療法剤との組み合わせ、
−前立腺癌および結腸癌の治療に対しては、ミトキサントロン単独、または他の化学療法剤との組み合わせ、例えば前立腺癌の治療に対してはミトキサントロンとプレドニゾンの組み合わせ、
−卵巣癌および乳癌の治療に対しては、タキソール単独、または他の化学療法剤との組み合わせ、並びに
−腎臓癌の治療に対しては、ビンブラスチン単独、または他の化学療法剤との組み合わせ、
である。
【0072】
アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび併用の有効性
単独または他の化学療法剤と併用して、in vitroおよび/またはin vivoで、癌細胞の成長および/または転移を弱める能力について、まず、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを試験した。潜在的な抗癌化合物を試験する方法は当分野で公知である。代表的な限定を意図しない試験は、以下におよび本明細書に含まれる実施例に示されている。
【0073】
1.in vitro試験
アンチセンスオリゴヌクレオチド単独、または1以上の化学療法剤との併用(「併用剤」)の有効性の初期の測定は、必要な場合には、in vitro手法を用いて行うことができる。
【0074】
例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドと1以上の化学療法剤の併用剤は、腫瘍細胞の固定独立性(anchorage-independent)成長を阻害するこれらの能力を決定することによって、in vitroで試験することができる。固定独立性成長は、腫瘍生成性(tumourigenicity)の良好な指針であることが当分野で公知である。一般に、固定独立性成長は、軟質寒天上で適切な癌細胞系から細胞をプレート化し、適切なインキュベーション期間の後に形成されるコロニーの数を決定することによって評価される。次に、アンチセンスオリゴヌクレオチド単独または併用剤で処理された細胞の成長を、適切な対照(例えば、スクランブル対照(scrambled control)オリゴヌクレオチド若しくは公知の化学療法剤、または未処理細胞)で処理した細胞の成長、および未処理細胞の成長と比較する。
【0075】
典型的には、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび併用剤のin vitro試験は、ヒト癌細胞系で行われる。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび併用剤のin vitro試験に適した癌細胞系の例は当分野で公知であり、本明細書に示される実施例に記載されたものを含む。
【0076】
必要な場合には、標準的な手法を用いてin vitroでアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび併用剤の毒性も最初に評価する。例えば、ヒト一次繊維芽細胞を、リポフェクタミンのような市販の液体担体の存在下でオリゴヌクレオチドとin vitroで処理することができる。次に、細胞は、トリパンブルー排除アッセイのような標準的な生存能力アッセイを用いて、これらの生存能力について、処理後の様々な時点で試験される。細胞はまた、例えば、チミジン取り込みアッセイを用いてDNAを合成するこれらの能力について、および、例えばフルオロサイトメーターセルソータ(FACS)と組み合わせた標準的な細胞分類アッセイを用いて細胞周期動力学の変化についても試験される。
【0077】
2.in vivo試験
in vivoでの腫瘍の成長または増殖を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび併用薬の能力を、当分野で公知の標準的手法を用いて適切な動物モデルで測定することができる(例えば、Enna, et al., Current Protocols in Pharmacology, J. Wiley & Sons, Inc., New York, NY(非特許文献46)を参照)。
【0078】
一般には、抗腫瘍化合物をスクリーニングするための現時点の動物モデルは、ヒトの腫瘍を動物に移植する、異種移植モデルである。ヒト腫瘍の異種移植モデルの例には、皮下注射によって移植され、腫瘍成長アッセイに使用されるマウスへのヒト固形腫瘍の異種移植;脂肪パッド注射によって移植され、腫瘍成長アッセイに使用されるマウスへのヒト固形腫瘍同系移植;生存アッセイに使用されるマウスのリンパ腫および白血病の実験モデル:およびマウスの肺転移の実験モデルが含まれるがこれらに限定されない。代表的で限定を意味しない例は、表2および本明細書に示される実施例に提供されている。
【0079】
例えば、0日目にあらかじめ決められた量の腫瘍断片を左右相称で皮下的に移植したマウスを用いて固形腫瘍について、in vivoで、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび併用剤を試験する。腫瘍を持った動物は混ぜ合わされ、その後種々の治療および対照に当てられる。進行した腫瘍の治療の場合、腫瘍を所望の大きさまで発達させ、腫瘍の発達が不十分な動物は除かれる。選別された動物を、治療を受けるグループまたは対照の役割を果たすグループに、アットランダムに分配する。適切なグループ分けは、例えば、本発明の併用剤を投与するもの、アンチセンスを単独で投与するもの、化学療法剤(1種または複数種)を単独で投与するもの、治療を受けないものであろう。腫瘍に関する特定の効果から毒性の影響を切り離して考えるために、腫瘍を持たない動物も、腫瘍を持った動物と同じ治療を受けうる。化学療法は、一般に、腫瘍のタイプに依存して、移植後2から22日までに開始し、動物を毎日観察する。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび併用剤を、例えばボーラス注射によって動物に投与することができる。最大の体重の低下に達するまで、異なる動物グループを一週間に約3または4回秤量し、この後、このグループを、試験の終了まで一週間に少なくとも1回秤量する。
【0080】
腫瘍があらかじめ決められた大きさおよび/または重量に達するまで、または、腫瘍があらかじめ決められた大きさ/重量に達する前に動物が死んだ場合には、動物が死ぬまで、腫瘍を一週間に約2または3回測定する。次に動物を殺し、評価される腫瘍の、組織の組織学、大きさおよび/または増殖を評価する。
【0081】
白血病に関して、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび併用剤の効果を研究するために、動物に特定数の細胞を移植し、対照に対する治療されたマウスの生存時間の増加によって抗腫瘍活性を測定する。
【0082】
腫瘍の転移に関して本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび併用剤の効果を試験するために、典型的には、腫瘍細胞をex vivoにおいて組成物で処理し、次に適切な試験動物に注射する。注射の部位からの腫瘍細胞の広がりを標準的な手法で適切な期間にわたってモニターする。
【0083】
オリゴヌクレオチドのin vivo毒性効果は、治療中の動物の体重に対するそれらの効果を測定することによって、および、動物を殺した後に、血液学的プロファイルおよび肝酵素の分析を実施することによって評価することができる。
【0084】
【表2】

【0085】
医薬組成物
哺乳動物の癌の治療に対して、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、適切な薬学的薬理学的に許容できる担体、希釈剤、賦形剤またはビヒクルと混合してアンチセンスオリゴヌクレオチド含む医薬組成物として投与することができる。医薬組成物はまた、アンチセンスオリゴヌクレオチドと、適切な場合に患者に同時投与するための1以上の他の化学療法剤を含有するように配合してもよい。
【0086】
本発明の医薬組成物は、従来の非毒性の薬学的に許容しうる担体、アジュバントおよびビヒクルを含有する用量単位の製剤として、経口的に、局所的に、非経口的に、吸入若しくは噴霧によって、または直腸的に投与することができる。本明細書で使用される用語「非経口」には皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、髄腔内注入、または注入技術が含まれる。
【0087】
医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁液、分散可能な粉末若しくは顆粒、エマルジョン硬質若しくは軟質カプセル、またはシロップ若しくはエリキシルのような、経口使用に適した形態であり得る。経口使用を意図した組成物は、医薬組成物の製造の分野で知られた方法にしたがって調製することができ、この組成物は、医薬として洗練され、風味のよい製剤を提供するために、甘味料、香味剤、着色剤および防腐剤の群から選択される1以上の薬剤を含んでいてもよい。錠剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤、コーンスターチまたはアルギン酸のような顆粒化剤および崩壊剤、澱粉、ゼラチンまたはアカシアのような結合剤、並びに、ステアリン酸マグネシウムステアリン酸またはタルクのような潤滑剤を含めた無毒の薬学的に許容しうる適切な賦形剤と混合して、活性成分を含有する。錠剤はコーディングしなくてもよく、または、錠剤は、胃腸管内での崩壊および吸収を遅らせ、これによって所定の長さの期間にわたる持続作用をもたらすために、公知の技術によってコーティングしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセロールまたはジステアリン酸グリセロールのような時間遅延物質を使用することができる。
【0088】
経口使用のための医薬組成物は、活性成分が不活性固形希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合された硬質ゼラチンカプセルとして、または、活性成分が水、またはピーナッツオイル、液体パラフィンまたはオリーブオイルのような油性媒体と混合された軟質ゼラチンカプセルとして提供することができる。
【0089】
水性懸濁液は適切な賦形剤と混合した活性成分を含有し、賦形剤には、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムのような懸濁剤;天然に存在するホスファチド、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物、例えばポリオキシエチレンステアレート、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物、例えばヘプタ−デカエチレンオキシエタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートのような分散剤または湿潤剤が含まれる。水性懸濁液はまた、1以上の防腐剤、例えばp−ヒドロキシ安息香酸エチル若しくはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル、1以上の着色剤、1以上の香味剤または、スクロース若しくはサッカリンのような1以上の甘味料を含有することができる。
【0090】
油性懸濁液は、活性成分を、植物油、例えば落花生油、オリーブオイル、ごま油またはココナッツオイルに、または、液体パラフィンのような鉱物油に懸濁することによって配合することができる。油性懸濁液は、濃化剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有していてもよい。上述のような甘味料および/または香味剤を添加して風味のよい経口製剤を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤の添加によって腐敗を防ぐことができる。
【0091】
水を加えて水性懸濁液を調製するのに適した分散可能な粉末および顆粒は、分散剤若しくは湿潤剤、懸濁剤および1以上の防腐剤と混合して活性化合物を提供する。適切な分散剤若しくは湿潤剤、および懸濁剤は、すでに上で述べたものによって例示されている。追加の賦形剤、例えば甘味料、香味剤および着色剤を存在させてもよい。
【0092】
本発明の医薬組成物は、水中油型乳剤の形態とすることができる。油相は、植物油、例えばオリーブオイル若しくはアカシアオイル、または鉱油、例えば液体パラフィンであってよく、または油相はこれらの油の混合物であってもよい。適切な乳化剤は、天然に存在するゴム、例えばアカシアゴム、トラガカントゴム;天然に存在するホスファチド、例えば大豆、レクチン;または脂肪酸とヘキシトール、無水物から誘導されるエステル若しくは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、および前記の部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであってよい。エマルジョンも甘味料および香味剤を含むことができる。
【0093】
シロップおよびエリキシルは、甘味料、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースと共に配合することができる。このような製剤はまた、粘滑薬(demulcent)、防腐剤、および/または、香味剤および着色剤を含んでいてもよい。
【0094】
医薬組成物は、水性または油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は適切な分散剤または湿潤剤、および上述したような懸濁剤を用いて、公知の技術に従って配合することができる。無菌の注射製剤はまた、無毒な非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール、水、リンゲル溶液、乳酸加リンゲル溶液または等張性塩化ナトリウム溶液中の溶液としてのものとすることができる。使用可能な許容できるビヒクルおよび溶媒の他の例には、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている無菌の不揮発性油、および、例えば合成モノグリセリド若しくはジグリセリドを含めた刺激の少ない種々の不揮発性油が含まれるが、これらに限定されない。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は、注射剤の調製における使用が見いだされている。注射可能な組成物は連続的な注入による投与にも適している。
【0095】
本発明の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは注射可能な組成物として配合される。
【0096】
他の医薬組成物および医薬組成物を調製するための方法は、当分野で公知であり、例えば、"Remington: The Science and Practice of Pharmacy," Gennaro, A., Lippincott, Williams & Wilkins, Philidelphia, PA (2000)(非特許文献47)(形式的には、"Remingtons Pharmaceutical Sciences")に記載されている。
【0097】
アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび併用剤の使用
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび1以上の化学療法剤を含む併用剤は、種々の癌の治療に使用することができる。本発明の一実施形態では、併用は、癌細胞の成長および/または転移を弱めるのに、化学療法剤(1種または複数種)単独よりも効果的である。アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび併用剤は、薬物耐性の腫瘍を効果的に治療するのにも使用される。
【0098】
本発明によって治療、安定化または予防されうる癌の例には、白血病、癌腫(carcinoma)、腺癌、肉腫、リンパ腫およびメラノーマが含まれるが、これらに限定されない。癌腫、腺癌および肉腫は、しばしば「固形腫瘍」と称され、一般に発生する固形腫瘍の例には、脳、乳房、子宮頸部、結腸、頭部および頸部、腎臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、肺、胃および子宮の癌、並びに結腸直腸癌が含まれるが、これらに限定されない。リンパ腫も固形癌であると見なされる。
【0099】
用語「白血病」は、広く、血液を形成する器官の進行性悪性疾患をいう。白血病は、一般に、血液および骨髄中での白血球およびこれらの前駆体のゆがんだ増殖および発育によって特徴づけられるが、未熟赤血球を冒す、赤白血病のような他の血液細胞の悪性疾患についても当てはまる。白血病は、一般に、(1)疾患の継続期間および特徴−急性または慢性;(2)関与する細胞のタイプ−骨髄性(骨髄発生性(myelogenous))、リンパ様(リンパ行性(lymphogenous))または単球性;および(3)血液中の異常細胞の数の増加または非増加−白血病性または非白血病性(亜白血病性)に基づいて、臨床的に分類される。白血病には、例えば急性非リンパ球性白血病(acute lymphocytic leukaemia)、慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic leukaemia)、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、成人T細胞白血病、非白血病性白血病(aleukaemic leukaemia)、非白血病性白血病(aleucocythemic leukaemia)、好塩基球性白血病(basophylic leukaemia)、未分化細胞白血病、ウシ白血病、慢性骨髄球性白血病、皮膚白血病、胎児性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリー細胞白血病、血球芽細胞性白血病、血球始原細胞性白血病、組織球性白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病(lymphatic leukaemia)、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病(lymphocytic leukaemia)、リンパ行性白血病、リンパ性白血病(lymphoid leukaemia)、リンパ肉腫細胞白血病、肥満細胞白血病、巨核球性白血病、ミクロ脊髄芽球性白血病(micronyeloblastic leukaemia)、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄球性白血病、骨髄性顆粒球性白血病、骨髄性単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞性白血病(plasma cell leukaemia)、形質細胞性白血病(plasmacytic leukaemia)、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、シリング白血病、幹細胞性白血病、亜白血病性白血病、および未分化細胞白血病が含まれる。
【0100】
用語「癌腫(carcinoma)」は、組織の周りに浸潤し、転移を引き起こす傾向のある上皮細胞で構成される悪性新成長をいう。代表的な癌腫には、例えば、小葉癌(acinar carcinoma)、小葉癌(acinous carcinoma)、腺分泌細胞癌、腺様嚢胞癌、腺癌(carcinoma adenomatosum)、副腎皮質の癌腫、肺胞上皮癌(alveolar carcinoma)、肺胞細胞癌、基底細胞癌(basal cell carcinoma)、基底細胞癌(carcinoma basocellulare)、類基底細胞癌、基底有棘細胞癌、細気管支肺胞上皮癌、細気管支癌、気管支原生癌、大脳様癌(cerebriform carcinoma)、胆管細胞癌、絨毛膜癌(chorionic carcinoma)、直腸結腸癌(colorectal carcinoma)、膠様癌、コメド癌、子宮体癌(corpus carcinoma)、篩状癌、胸甲癌(carcinoma en cuirasse)、皮膚癌(carcinoma cutaneum)、円柱状癌(cylindrical carcinoma)、円柱状細胞癌(cylindrical cell carcinoma)、導管癌、硬性癌(carcinoma durum)、胎児性癌、脳様癌(encephaloid carcinoma)、類表皮癌、上皮腺様癌(carcinoma epitheliale adenoides)、外方増殖性癌(exophytic carcinoma)、潰瘍を生じさせる癌(carcinoma ex ulcere)、スキルス胃癌(carcinoma fibrosum)、膠様癌(gelatiniform carcinoma)、膠様癌(gelatinous carcinoma)、巨細胞癌(giant cell carcinoma)、巨細胞癌(carcinoma gigantocellulare)、腺癌(glandular carcinoma)、顆粒膜細胞癌、毛母癌(hair-matrix carcinoma)、血液様癌(haematoid carcinoma)、肝細胞癌、ヒュルトレ細胞癌、ヒアリン癌(hyaline carcinoma)、ハイペメフロイド・カルシノーマ(hypemephroid carcinoma)、幼児型胎児性癌、上皮内癌(carcinoma in situ)、表皮内癌、上皮内癌(intraepithelial carcinoma)、クロンペッチャー・カルシノーマ(Krompecher's carcinoma)、クルチツキー細胞癌(Kulchitzky-cell carcinoma)、大細胞癌、レンズ状癌(lenticular carcinoma)、レンズ状癌(carcinoma lenticulare)、脂肪腫癌(lipomatous carcinoma)、リンパ上皮癌(lymphoepithelial carcinoma)、髄様癌(carcinoma medullare)、髄様癌(medullary carcinoma)、黒色癌(melanotic carcinoma)、髄様癌(carcinoma molle)、粘液性癌腫、粘液分泌性癌(carcinoma muciparum)、粘液細胞癌(carcinoma mucocellulare)、粘液性類表皮癌、粘液性癌(carcinoma mucosum)、粘液性癌(mucous carcinoma)、粘液腫様癌(carcinoma myxomatodes)、鼻咽頭癌(naspharyngeal carcinoma)、燕麦細胞癌、非小細胞癌、骨化癌(carcinoma ossificans)、類骨癌(osteoid carcinoma)、乳頭癌、門脈周囲癌(periportal carcinoma)、組織侵入前の癌(preinvasive carcinoma)、有棘細胞癌、粥状癌(pultaceous carcinoma)、腎臓の腎細胞癌、予備細胞癌、肉腫性癌(carcinoma sarcomatodes)、シュナイダー癌(schneiderian carcinoma)、硬性癌(scirrhous carcinoma)、陰嚢癌(carcinoma scroti)、印環細胞癌、シンプレックス・カルシノーマ(carcinoma simplex)、小細胞癌、ソラノイド・カルシノーマ(solanoid carcinoma)、球状細胞癌(spheroidal cell carcinoma)、紡錘細胞癌、海綿性癌(carcinoma spongiosum)、扁平上皮癌(squamous carcinoma)、扁平上皮細胞癌(squamous cell carcinoma)、ストリング・カルシノーマ(string carcinoma)、毛細管拡張性癌(carcinoma telangiectaticum)、毛細管拡張性癌(carcinoma telangiectodes)、移行上皮癌、結節性癌(carcinoma tuberosum)、結節性癌(tuberous carcinoma)、ゆう状癌、および絨毛状癌(carcinoma villosum)が含まれる。
【0101】
本発明のアンチセンオリゴヌクレオチドで治療されうる一般に存在する癌腫には、例えば膵臓、卵巣、肺、肝臓、腎臓および子宮頸部の癌腫が含まれる。
【0102】
用語「癌腫」はまた、腺癌(adenocarcinomas)を包含する。腺癌は、腺(分泌)の特性を有する器官を作る細胞内に由来するか、または、胃腸管若しくは気管支上皮のような中空の内臓の内側を覆っている細胞に由来する癌腫である。これらの例には、乳房、肺、膵臓、結腸および前立腺の腺癌が含まれるがこれらに限定されない。
【0103】
用語、「肉腫」は、一般に、筋肉、骨、軟骨または脂肪のような結合組織に由来する腫瘍を言い、胎児性結合組織のような物質で構成され、一般に原繊維性物質または均質な物質に埋め込まれた緊密にパッキングされた細胞からなる。肉腫には、柔組織肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アベメチ肉腫(Abemety's sarcoma)、脂肪肉腫(adipose sarcoma)、脂肪肉腫(liposarcoma)、胞状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色肉腫(chloroma sarcoma)、絨毛膜癌(chorio carcinoma)、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、繊維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、突発性多発性色素性出血性肉腫(idiopathic multiple pigmented haemorrhagic sarcoma)、B細胞の免疫芽球性リンパ腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性リンパ腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クップファー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉種、悪性間葉腫肉腫(malignant mesenchymoma sarcoma)、骨膜傍肉腫(parosteal sarcoma)、網状赤血球肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢腫性肉腫(serocystic sarcoma)、滑膜肉腫、および毛細管拡張性肉腫(telangiectaltic sarcoma)が含まれる。
【0104】
用語「メラノーマ」は、皮膚および他の器官のメラニン細胞系から生じる腫瘍を意味する。メラノーマには、例えば先端黒子型黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91メラノーマ、ハーディング−パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫(lentigo maligna melanoma)、悪性黒色腫、結節型黒色腫、爪下黒色腫(subungal melanoma)、および表在拡大型黒色腫が含まれる。
【0105】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を含めたリンパ腫、および始原脳腫瘍(primary brain tumour)、神経膠腫、多形性神経膠芽腫を含めた脳の癌;悪性星状膠細胞腫;乏突起膠腫(oligdendroglioma);上衣腫;低グレードの星状膠細胞腫;髄膜腫;間葉腫瘍;下垂体性腫瘍;神経鞘腫のような神経鞘腫瘍;中枢神経系リンパ腫;髄芽細胞腫;未分化神経外胚葉性腫瘍;ニューロンおよびニューロン/グリア腫;頭蓋咽頭腫;胚細胞性腫瘍および脈絡叢腫瘍に使用されうる。追加の癌には、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、始原性血小板増加症(primary thrombocytosis)、始原性マクログロブリン血症(primary macroglobulinemia)、小細胞肺癌、悪性膵臓インスラノーマ(malignant pancreatic inslanoma)、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌性皮膚傷害、睾丸癌、甲状腺癌、食道癌、泌尿生殖路の癌、悪性高カルシウム血症、子宮内膜癌、副腎皮質癌および中皮腫が含まれる。
【0106】
癌は無痛性でありうるか、または攻撃的でありうる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは難治性の癌、進行癌、再発癌、再発したおよび転移性の癌に有用である。当業者は、これらのカテゴリーの多くが重なっていること、例えば攻撃性の癌はまた、一般に進行したものおよび/または転移性のものである。
【0107】
本明細書で使用する「攻撃的な癌」は、迅速に生長する癌をいう。当業者は、乳癌または前立腺癌のような幾つかの癌に対して、用語「攻撃的な癌」は、所与の癌について再発時間の範囲(spectrum)の最初の約三分の二以内で再発する進行癌をいうが、小細胞肺癌(SCLC)のような他のタイプの癌については、存在するほとんど全ての場合で攻撃的であると考えられる迅速に進行する癌をいう。従って、この用語は、特定の癌のタイプの細区分をカバーでき、または、この用語は全ての他の癌のタイプを包含することができる。「難治性の」癌または腫瘍は、治療に応答しない癌または腫瘍をいう。「進行癌」は、患者内の明白な疾患であって、そのような明白な疾患が、手術または放射線療法のような治療の局所的物理療法によって治癒することになじまないものをいう。進行した疾患は局所的に進行した癌をいうか、または、転移性の癌をいう。用語「転移性の癌」は、身体のある部分から他の部分へ広がる癌をいう。進行癌はまた切除不可能であり得、即ちこれらは組織の周りに広がり、手術で除去することができない。
【0108】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、多剤耐性腫瘍を含めた薬物耐性の癌を治療するのに使用することができる。当分野で知られているように、化学療法に対する癌細胞の耐性は、癌の取り扱いにおける中心的な問題の1つである。
【0109】
前立腺癌および乳癌のような特定の癌は、ホルモン療法によって、即ち身体の自然ホルモンをブロックすることによって特定の癌の生長を遅らせるかまたは停止するホルモン剤または抗ホルモン薬で治療することができる。このような癌は、ホルモン治療に対して発育耐性、即ち本質的に耐性でありうる。本発明はさらに、これらの「ホルモン耐性」または「ホルモン難治性」の癌の治療におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を意図する。
【0110】
本発明の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド単独、または1以上の化学療法剤との併用は、転移型、進行型、薬物耐性型またはホルモン耐性型の固形腫瘍を含めた固形腫瘍の治療に使用される。他の実施形態では、固形腫瘍は、腎臓腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、前立腺腫瘍、結腸腫瘍、メラノーマ、卵巣腫瘍、子宮頸部腫瘍、脳腫瘍、肝臓腫瘍、結腸直腸腫瘍、膵臓腫瘍、秘尿生殖器腫瘍、胆嚢腫瘍、頭部および頸部腫瘍、食道腫瘍、胆管腫瘍、リンパ腫、または肉腫であり、これらの転移型、進行型、薬物耐性型またはホルモン耐性型を含む。さらなる実施形態では、固形腫瘍は、卵巣腫瘍、腎臓腫瘍、脳腫瘍、または肉腫であり、これらの転移型、進行型、または薬物耐性型を含む。
【0111】
代替の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド単独、または1以上の化学療法剤との併用は、転移型、進行型、または薬物耐性型を含めた白血病の治療に使用される。
【0112】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与
患者に投与される本発明のアンチセンスオリゴヌクがたチドの用量は、所定期間にわたって患者に有益な治療応答をもたらすのに充分な量、即ち「有効量」であるべきである。このような有益な治療応答は、例えば、疾患の安定化、腫瘍の縮小、進行の時間の減少または長期生存でありうる。用量は、使用される個々のオリゴヌクレオチドの効力、治療される癌のタイプ、および治療される患者の状態、並びに、患者の体重または表面積によって決定されるであろう。適切な用量は、熟練した医師によって容易に決定することができる。
【0113】
典型的には、アンチセンスヌクレオチドは、患者に対して全身に投与される。投与は、1回用量として、または分割した用量としてボーラス注射によって、または、適切な期間にわたる連続注入によって達成することができる。
【0114】
本発明の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、連続注入によって投与される。他の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、連続的な静脈内注入によって投与される。
【0115】
上述のように、投与されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの用量は、治療される癌のタイプ、患者の大きさに依存し、熟練した医師によって容易に決定することができる。単なる例示の目的で、配列番号1によって表されるアンチセンスオリゴヌクレオチドについては、フェーズIの臨床試験によって決定された適切な用量は、約18.5mg/m2/日から約222mg/m2/日である。一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドの用量は、約37mg/m2/日から約222mg/m2/日である。他の実施形骸では、アンチセンスオリゴヌクレオチドの用量は、約74mg/m2/日から約185mg/m2/日である。さらなる実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドの用量は、約100mg/m2/日から約185mg/m2/日、および約148mg/m2/日から約185mg/m2/日である。配列番号1に対する他の例示的な用量には、約2mg/kg/日から約10mg/kg/日、約3mg/kg/日から約8mg/kg/日、および約3mg/kg/日から約5mg/kg/日が含まれる。
【0116】
治療投薬計画は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが周期的に繰り返して患者に投与されるようにデザインすることができる。従って、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドでの治療は、1周期の投与または1周期を越える投与を含む治療投薬計画の一部でありうる。典型的には、周期は約1から約4週間である。代表的な投薬スケジュールは、1以上の周期の21日の連続注入とその後の7日の休止、または、1以上の周期の14日の連続注入とその後の7日の休止を含む。さらなる例は、本明細書の実施例の部に提供されている。他の治療投薬計画は、熟練した医師によって容易に決定することができる。1から6周期の治療が意図されているが、必要な場合には、追加の周期を治療投与計画に組み込んでもよい。
【0117】
本発明は、前もって化学療法を受けている患者に、アンチセンスオリゴヌクレオチドを単独または1以上の他の化学療法剤と併用して使用すること意図する。従って、本発明の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、治療の第二路線またはそれより後(例えば第三または第四)の路線として使用される。代替の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1を超える経路の事前の化学療法をすでに受けている患者を治療するの使用される。単独または1以上の他の化学療法剤と併用するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標準の化学療法が適当でない患者の治療における第一路線の治療として使用することもできる。
【0118】
先に示したように、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1以上の化学療法剤と共に患者に投与されうる。このような併用療法では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1以上の他の化学療法剤の投与の前または後に投与することができ、または、同時に投与することができる。1以上の化学療法剤は、例えばボーラス注射若しくは連続注入によって全身的に投与されるか、または経口により投与されうる。
【0119】
1以上の他の化学療法剤は、周期的に投与され、アンチセンスオリゴヌクレオチドに対する投与の周期と重複していてもよく、または重複していなくてもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが1以上の他の化学療法剤よりも前に投与される場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与の開始と他の薬剤(1種または複数種)の間の時間の長さは、投与の様式、患者の大きさ、投与される他の薬剤(1種または複数種)の性質に依存する。同様に、アンチセンスオリゴヌクレオチドと1以上の他の化学療法剤が同時に投与される場合、化合物の投与は同じ時に開始されてもよく、または他の化学療法剤(1種または複数種)の投与は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与が開始される前または後の適切なときに開始されてもよい。適切な治療投与計画は熟練した医師によって容易に決定することができる。
【0120】
種々の癌の治療に対する標準的な化学療法剤の適切な用量および治療投与計画は、当分野で公知である。以下は、単に例示の目的で提供されるものであり、如何なる方式でも本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0121】
カペシタビンは、約500から約2000mg/m2/日の用量で投与することができる。カペシタビンは、典型的には経口により投与される。1日あたりの量の投与は、1回用量または分割した用量によることができる。代表的な用量は、治療される癌のタイプに依存して、約500〜1500mg/m2/日、約600〜1000mg/m2/日、および1100〜2000mg/m2/日である。一実施形態では、850から1700mg/m2/日の用量のカペシタビンがアンチセンスオリゴヌクレオチドと共に使用される。他の実施形態では、850、1250および1660mg/m2/日の用量が使用される。
【0122】
シタラビンは、治療される癌のタイプおよび使用される投薬スケジュールに依存して、約5から約3000mg/m2/日の種々の用量で投与される。1日あたりの量のシタラビンの投与は、1回用量、分割した用量、または連続注入によることができる。代表的な用量は、約500〜1000mg/m2/日、約1000〜1000mg/m2/日、および4000〜6000mg/m2/日である。一実施形態では、約4000〜6000mg/m2/日の用量のシタラビンがアンチセンスオリゴヌクレオチドと共に使用される。
【0123】
幾つかの指針では、シタラビンは、治療される癌のタイプ、および使用される投薬スケジュールに依存して、約5〜75mg/m2/日、および約100〜200mg/m2/日の用量で髄空内的に投与することができる。従って、特定の癌に対して、シタラビンは約5〜75mg/m2/日の用量でアンチセンスオリゴヌクレオチドと共に使用される。
【0124】
ドセタキセルは、典型的には、1用量あたり約20から約100mg/m2の用量で投与される。代表的な用量は、治療される癌のタイプ、および使用される投薬スケジュールに依存して、約30〜35mg/m2、約30〜36mg/m2、約60〜75mg/m2、約40〜80mg/m2、および60〜100mg/m2である。一実施形態では、約60から約75mg/m2の用量のドセタキセルがアンチセンスオリゴヌクレオチドと共に使用される。
【0125】
ゲムシタビンの1回用量単位は、典型的には、約100から約2500mg/m2である。オリゴヌクレオチドと共に使用するのに適した代表的な投与量単位は、治療される癌のタイプ、および使用される投薬スケジュールに依存して、約400〜1000mg/m2、約600〜1000mg/m2、約800〜1000mg/m2、約500〜1250mg/m2、約750〜1200mg/m2、約800〜1250mg/m2、約1000〜1200mg/m2、約1250〜2500mg/m2である。この用量は、例えば毎週または隔週に投与されうる。一実施形態では、約400〜1000mg/m2のゲムシタビンの毎週の単位用量がアンチセンスオリゴヌクレオチドと共に使用される。
【0126】
幾つかの指針では、ゲムシタビンは、治療される癌のタイプに依存して、より低い用量、例えば約100から約400mg/m2/日で投与することもできる。
【0127】
オキサリプラチンは、約30から約135mg/m2/日の用量で投与することができる。オキサリプラチンの1日あたりの量の投与は、1回用量または分割した用量により、または連続注入による。代表的な用量は、治療される癌のタイプ、および使用される投薬スケジュールに依存して、約80〜100mg/m2/日および約85〜135mg/m2/日である。一実施形態では、約130mg/m2/日の用量のオキサリプラチンが、アンチセンスオリゴヌクレオチドと共に使用される。
【0128】
しかし、上記の代表的な用量および投与の頻度は、異なる癌の治療について当分野で公知の手法に従って情況に適合させることができる。
【0129】
癌患者での臨床試験
当業者は、in vitroおよび動物モデルでの本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド単独または併用剤の例示した有効性に続いて、これらは、癌の治療におけるこれらの有効性をさらに評価し、治療用途のための法的な証人を得るために、臨床試験において試験されるべきであることを認識するであろう。当分野で知られているように、臨床試験は、試験のフェーズを通して進行し、これは、フェーズI、II、IIIおよびIVとして識別されている。
【0130】
最初に、アンチセンスオリゴヌクレオチド単独または併用剤をフェーズI試験で評価した。典型的なフェーズI試験は、投与の最良の様式(例えばピルによってまたは注射によって)、投与の頻度および化合物の毒性を決定するために使用される。フェーズI試験は、しばしば血液試験および生検のような実験室的試験を含み、患者の身体内の化合物の影響を評価する。フェーズI試験では、小グループの癌患者を、特定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび1以上の化学療法剤(1種または複数種)で処理する。試験の間、用量は、化合物に関連した、最大許容用量(MTD)および用量規定毒性(dose-limiting toxicities)(DLT)を決定するために、一般にグループ単位で増加される。この方法は、次のフェーズII試験で使用する適切な用量を決定する。
【0131】
フェーズII試験は、アンチセンスオリゴヌクレオチド単独および併用剤の有効性および安全性をさらに評価するために行うことができる。フェーズII試験では、アンチセンスオリゴヌクレオチド単独および併用剤を、フェーズII試験で有効であったことが見出された用量を用いて、1の特定タイプの癌または関連する癌を持つ患者のグループに投与する。
【0132】
フェーズIII試験は、化合物を、標準的、即ち最も広く受け入れられる治療とどのように比べるかを決定することに焦点を合わせている。フェーズIII試験では、患者は、無作為に、2以上の「アーム」の1つに割り当てられる。2つのアームを用いる試験では、例えば一方のアームには、標準的な治療を受けさせ(対照グループ)、他方のアームには、本発明のオリゴヌクレオチドまたは併用剤での治療を受けさせる(治験グループ)。
【0133】
フェーズIV試験は、化合物の長期安全性および有効性をさらに評価するために使用される。フェーズIV試験は、フェーズI、IIおよびIII試験よりも一般的ではなく、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは併用剤が標準的使用のために承認された後に行われる。
【0134】
臨床試験のための患者の適格性
参加者の適格性の規準は、全般的なもの(例えば、年齢、性別、癌のタイプ)から特定のもの(例えば、事前治療のタイプと回数、腫瘍の特性、血液細胞の計数、器官の機能)までの範囲である。適格性の規準は試験のフェーズでも変化する。例えば、フェーズIおよびIIの試験では、規準は、しばしば、異常な器官の機能または他の因子により、危険に曝される患者を治験的な治療から除外する。フェーズIIおよびIII試験では、しばしば、疾患のタイプおよびステージ、並びに事前治療の回数およびタイプに関する追加の規準が含まれる。
【0135】
フェーズIの癌試験は、通常、他の治療オプションが効果的でない15から30人の参加者を含む。フェーズII試験は、典型的には、すでに化学療法、手術、または放射線治療を受けているが、この治療が効果的でない100人までの参加者を含む。フェーズII試験の参加者は、受けている事前治療に基づいてしばしば制限される。フェーズIII試験は、100から1000人の参加者を含む。この多くの参加者が、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは併用剤の有効性と、標準的な治療との間に確かな違いがあるかどうかを決定するために必要である。フェーズIII試験は、疾患の連続体をカバーするために、新たに癌と診断された者から広範囲の疾患を持つ者までの範囲の患者を含む。
【0136】
当業者は、臨床試験は、あまりにも多種多様すぎて、より狭く規定された母集団で治療が効果的であるかどうかを決定できないような試験母集団を作成することなく、可能な限り包括的になるようにデザインされるべきであることを認識するであろう。試験中に含まれる母集団が多種多様になればなるほど、結果は、特にフェーズIII試験で、一般的な母集団に適用可能となりうる。臨床試験の各フェーズでの適切な参加者の選択は当業者の範囲内であると考えられる。
【0137】
治療前の患者の評価
試験の開始に先立って、当分野で知られた幾つかの基準を用いて、最初に患者を分類することができる。患者は、まず、例えばイースタン・コオペラティブ・オンコロジー・グループ(ECOG)・パフォーマンス・ステータス(PS)(Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status)の尺度またはカルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(KPS)(Karnofsky Performance Status)の尺度(これらは両方とも、患者の機能障害によって測定される患者の疾患の進行を評価するための、広く受け入れられている基準である。)を用いて評価される。
【0138】
例えば、McGillの生活の質質問表(MQOL)(McGill Quality of Life Questionnaire)(Cohen et al (1995) Palliative Medicine 9: 207-219(非特許文献48))を用いて、患者の生活の質を総括的に評価することができる。MQOLは、身体的症状;身体的、心理学的および実際の快適さ;サポート;および生活全体の質を測定する。吐き気、気分、食欲、不眠、移動性および疲労のような症状を評価するためには、McCorkleおよびYoungによって開発された症状の苦痛スケール(SDS)(Symptom Distress Scale)((1978) Cancer Nursing 1: 373-378(非特許文献49))を使用することができる。
【0139】
患者は、疾患のタイプおよび/または段階に従っておよび/または腫瘍の大きさによっても分類することができる。
【0140】
臨床試験における本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド単独または併用剤の投与
アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび1以上の化学療法剤(1種または複数種)は、典型的には、試験参加者に非経口的に投与される。一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは併用剤は静脈内注入によって投与される。静脈内注入によって医薬を投与する方法は、当分野で公知である。通常、静脈内注入は、特定の時間帯にわたって、例えば60分の間行われる。
【0141】
患者の結果の監視
臨床試験の終点は、評価の下での試験の有効性を示す測定可能な結果である。終点は、試験の開始前に確立され、臨床試験のタイプおよびフェーズに依存して変化する。終点の例には、腫瘍応答速度−腫瘍が特定の量まで大きさを減少させた試験参加者の比率(通常パーセンテージで表される);疾患のない生存−癌が発生しないかまたは再発しないで患者が生き延びる時間の総計(通常、月で測定される);全生存−参加者の生きている時間の総計(典型的には、臨床試験の開始から死ぬときまで測定される)が含まれる。進行および/または転移性癌に対しては、疾患の安定化−疾患が安定化した試験参加者、例えば腫瘍(1または複数)が、成長および/または転移を停止した試験参加者、の比率を終点として使用することができる。他の終点には、毒性および生活の質が含まれる。
【0142】
腫瘍応答速度は、一般にフェーズII試験の終点である。しかし、治療が参加者の腫瘍の大きさを減じ、疾患のない生存の期間が長くなったとしても、全生存は長くならないかもしれない。このような場合には、全生存を伸ばすための副作用および障害が、長期の疾患のない生存の利益よりも勝っているのであろう。あるいは、腫瘍のない期間の間に生活の質が改善された参加者は、他の因子が勝っているのであろう。このように、腫瘍応答速度は、しばしば暫定的であり、参加者に対する長期の生存の利益に言い換えることはできないとはいえ、応答速度は、フェーズII試験における治療の有効性の合理的な尺度であり、一方、参加者の生存および生活の質は、典型的には、フェーズIII試験における終点として使用される。
【0143】
薬学的キット
本発明はさらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび任意に1以上の化学療法剤を医薬組成物中に含有する、癌の治療に使用するための治療用キットを提供する。キットの個々の成分は、別々の容器に包装され、そのような容器に付属して、成分には、薬剤または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって指示された形の警告を含むことができ、この警告は人への投与のための製造、使用または販売の政府機関による承認を反映したものである。
【0144】
キットの成分が1以上の液体溶液で提供される場合、この液体溶液は、水性溶液、例えば無菌の水性溶液とすることができる。この場合、容器は、それ自身、吸入器、シリンジ、ピペット、点眼器、または他のこのような装置であって、これらの容器から組成物を患者に投与できるものとすることができる。
【0145】
キットの成分は乾燥または凍結乾燥された形態で提供することもでき、このキットは、凍結乾燥された成分の再構成のための適切な溶媒をさらに含むことができる。容器の数およびタイプに関わりなく、本発明のキットはまた、組成物の患者への投与を助けるための器具を含んでいてもよい。このような器具は、吸入器、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼器、または任意のこのような医学的に承認された送達手段でありうる。
【0146】
この明細書で参照した、全ての、特許、特許出願として刊行されたものを含めた刊行物、データベースの記載は、あたかもそのような個々の特許、刊行物、およびデータベースの記載が、特におよび個々に参照により取り込まれることを指示していたかのように、同じ範囲までそれらの全体を、特に参照により取り込む。
【0147】
本明細書で説明した本発明のよりよい理解を得るために、以下に実施例を示す。これらの実施例は、単に例示の目的であることが理解されるべきである。これらは、どのような様式であってもも本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0148】
実施例全体を通して参照される配列番号1(SEQ ID NO:1)は、以下の配列を持つ、完全にホスホロチオエート化されたオリゴヌクレオチドである。
【0149】
5’−GGCTAAATCGCTCCACCAAG−3’ [配列番号1]
配列番号1は、R2 mRNAのコード領域にハイブリダイズする。
【0150】
配列番号2(SEQ ID NO:2)は、配列番号1のミスマッチ対照アナログであり、以下の配列の中間部に4つの塩基の変化を有する。
【0151】
5’−GGCTAAACTCGTCCACCAAG−3’ [配列番号2]
配列番号3(SEQ ID NO:3)は、配列番号1のスクランブル対照アナログであり、R2と相補的ではないが、配列番号1と同じ塩基成分比を保持している。
【0152】
5’−ACGCACTCAGCTAGTGACAC−3’ [配列番号3]
ホスホロチオエートは、ボストン・バイオシステム社(ボストン、MA)(Boston BioSystem Inc. (Boston, MA))による自動化されたDNA合成機(パーキンエルマー、USA(Perkin-Elmer, USA))で合成され、逆相高速液体クロマトグラフィーで精製した。
(実施例1)
マウス異種移植モデルにおける、種々の化学療法剤と併用した配列番号1のin vivo試験
1.1 HT−29ヒト結腸癌細胞(100μlのPBS中3×106個の細胞)を、6〜7週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約50mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後4日に、マイトマイシンCをボーラス注入によって、3.5mg/kg/週の用量で4、11および18日目に尾静脈に投与した。マイトマイシンCの抗腫瘍効果を、マイトマイシンCと併用した配列番号1の抗腫瘍効果と比較した。配列番号1を、6mg/kgでボーラス注入により毎日尾静脈に投与し、マイトマイシンCを、配列番号1で処理した1時間後に、3.5mg/kg/週の用量で4、11および18日目に静脈内投与した。対照動物には、配列番号1と同じ期間生理食塩水を単独で与えた。全ての治療を22日目に停止した。最後の治療の翌日に腫瘍を動物から切除し、これらの重量を測定した。標準的な棒グラフを用いて腫瘍重量の差を示した。それぞれの棒は5匹の動物から計算した平均腫瘍重量を表す。図示されているように、マイトマイシンCでの治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍の成長の有意な遅れをもたらした。配列番号1とマイトマイシンCの併用によって導き出される抗腫瘍効果は、マイトマイシンCを単独で使用して得られるものよりも強力であった(図1参照)。
【0153】
1.2 HT−29ヒト結腸癌細胞(100μlのPBS中3×106個の細胞)を、5〜6週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後7日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、配列番号1と同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、CPT−11単独での抗腫瘍効果またはCPT−11と併用した配列番号1の抗腫瘍効果と比較した。CPT−11を、100μlの生理食塩水中の20mg/kgの用量で7〜12日から5日間連続して腹腔内により投与した。全ての治療を32日目に停止した。最後の治療の翌日に腫瘍を動物から切除し、これらの重量を測定した。標準的な棒グラフを用いて腫瘍重量の差を示した。それぞれの棒は9匹の動物から計算した平均腫瘍重量を表す。図示されているように、配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍の成長の有意な遅れをもたらした。配列番号1で達成された腫瘍成長の遅れは、CPT−11単独で観測された阻害効果より優れていた。配列番号1とCPT−11の併用治療は、どちらか一方単独よりも強力な、優れた協同的な効果を示した(図2参照)。
【0154】
1.3 Caki−1ヒト腎臓癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雌SCIDマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約200mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後7日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、配列番号1と同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、2種類の化学療法剤:5−FUおよびビンプラスチンの抗腫瘍効果と比較した。5−FUを、13mg/kg/日の用量で7〜13日目、21〜27日目および35〜36日目に腹腔内により投与し、一方、ビンプラスチンを、0.6mg/kg/週の用量で7、14、21、28および35日目に腹腔内により投与した。これらの化合物の各々の抗腫瘍効果を、さらに、5−FUまたはビンプラスチンと併用した配列番号1の抗腫瘍効果と比較した。2種類の化学療法剤は、併用療法を同日に行った場合には、配列番号1で処理した1時間後に、上記のように適用した。全ての治療を36日目に停止した。最後の治療の翌日に腫瘍を動物から切除し、これらの重量を測定した。標準的な棒グラフを用いて腫瘍重量の差を示した。それぞれの棒は5匹の動物から計算した平均腫瘍重量を表す。図示されているように、配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍の成長の有意な遅れをもたらした。配列番号1で達成された腫瘍成長の遅れは、2種類の化学療法化合物のそれぞれで観測された阻害効果より優れていた。配列番号1と5−FUまたはビンプラスチンと併用は、いずれか単独よりも効果的であった(図3参照)。
【0155】
別の実験では、IL−2と併用した配列番号1の効果を評価した。Caki−1ヒト腎臓癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雌SCIDマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後7日に、配列番号1とIL2を以下に示した概略の通りに投与した。
【0156】
治療:
1. 生理食塩水で処理したグループ:生理食塩水0.1ml/マウス/48時間、i.v. n=10
2. 配列番号1で処理したグループ:0.1mlの生理食塩水中10mg/kg/48時間、i.v. n=10
3. IL2治療周期:8日(4日間の治療、2日間の非治療、次いで別の4日間の治療)
I−高用量 1日の治療について(20000単位)/2回 i.p. n=10
II−低容量 1日の治療について(5000単位)/2回 i.p. n=10
4. 配列番号1+IL2治療グループ−I (2+3) n=10
5. 配列番号1+IL2治療グループ−II (2+4) n=10
52日後、マウスを殺し、腫瘍を秤量した。結果を図3Bに示す。各棒は、各治療グループに対して計算された平均腫瘍重量および標準誤差を表す。
【0157】
1.4 図4は、2種類の独立した実験の結果を示す。両実験において、PC−3ヒト前立腺癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雄SCIDマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約50mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後14日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで18回(図4A)または17回(図4B)一日おきに、それぞれ尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、ミトキサントロン(ノバントロン(登録商標))単独または併用した場合の抗腫瘍効果と比較した。ミトキサントロンを、2mg/kg(図4A)の用量で治療の開始時に1回、または0.8mg/kg(図4B)の減らした用量で4週間の間、週に1回静脈内で投与した。全ての治療を50日目(図4A)または48日目(図4B)でそれぞれ停止した。最後の治療の翌日に腫瘍を動物から切除し、これらの重量を測定した。標準的な棒グラフを用いて腫瘍重量の差を示した。それぞれの棒は5匹(図4A)または10匹(図4B)の動物から計算した平均腫瘍重量を表す。図4Aに図示されているように、配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍の成長の有意な遅れをもたらした。配列番号1で達成された腫瘍成長の遅れは、ミトキサントロン単独で観測された阻害効果と同じであった。配列番号1とミトキサントロンの併用(配列番号1+)は、いくらかの相加的抗腫瘍効果を示した。図4Bはミトキサントロン単独を示し、これは腫瘍成長の有意な遅れをもたらし、併用療法はミトキサントロン単剤療法よりも強力であった。
【0158】
1.5 図5は、2種類の独立した実験の結果を示す。両実験において、DU−145ヒト前立腺癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雄SCIDマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約50mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後13日(図5A)または11日(図5B)に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで15回(図5A)または14回(図5B)一日おきに、それぞれ尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、ミトキサントロン(ノバントロン(登録商標))単独または併用した場合の抗腫瘍効果と比較した。ミトキサントロンを、2mg/kg(図5A)の用量で治療の開始時に1回、または0.8mg/kg(図5B)の減らした用量で4週間の間、週に1回静脈内で投与した。全ての治療を42日目(図5A)または38日目(図5B)でそれぞれ停止した。最後の治療の翌日に腫瘍を動物から切除し、これらの重量を測定した。標準的な棒グラフを用いて腫瘍重量の差を示した。それぞれの棒は5匹(図5A)または10匹(図5B)の動物から計算した平均腫瘍重量を表す。図5Aに図示されているように、配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍の成長の有意な遅れをもたらした。配列番号1で達成された腫瘍成長の遅れは、ミトキサントロン単独で観測された阻害効果と同じであった。配列番号1とミトキサントロンの併用(配列番号1+)は、いくらかの相加的抗腫瘍効果を示した。図5Bはミトキサントロン単独を示し、これは腫瘍成長の有意な遅れをもたらし、併用療法はミトキサントロン単剤療法よりも強力であった。
【0159】
1.6 A2058ヒトメラノーマ細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。A2058は転移性のメラノーマ細胞系である。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後6日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、デカルバジン(DTIC)単独での抗腫瘍効果またはDTICと併用した配列番号1の抗腫瘍効果と比較した。DTICを、100μlの生理食塩水中の80mg/kgの用量で6〜10日から5日間連続して静脈内により投与した。全ての治療を24日目に停止した。最後の治療の翌日に腫瘍を動物から切除し、これらの重量を測定した。標準的な棒グラフを用いて腫瘍重量の差を示した。それぞれの棒は10匹の動物から計算した平均腫瘍重量を表す。図示されているように、配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍の成長の有意な遅れをもたらした。配列番号1で達成された腫瘍成長の遅れは、DTIC単独で観測された阻害効果より優れていた。配列番号1とDTICの併用は、どちらか一方単独よりも強力であった(図6)。
【0160】
1.7 図7は、3種類の独立した実験の結果を示す。MDA−MB−231ヒト乳癌細胞(100μlのPBS中の1×107個の細胞)を6〜7週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後5日に、配列番号1、またはスクランブル対照オリゴヌクレオチド[配列番号3]をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、タキソールまたはドキソルビシンの単独または併用での抗腫瘍効果と比較した。タキソールを、10mg/kgの用量で3週間の間(図7A)または4週間の間(図7C)、週に1回静脈内により投与した。ドキソルビシンを、5mg/kgの用量で、最初の3週間の間(図7A)または2週間の間(図7C)、週1回静脈内により投与した。全ての治療を33日目(図7A)または26日目(図7C)でそれぞれ停止した。最後の治療の翌日に腫瘍を動物から切除し、これらの重量を測定した。標準的な棒グラフを用いて腫瘍重量の差を示した。それぞれの棒は10匹の動物(図7Aおよび7B)から計算した平均腫瘍重量を表す。図7Cで、抗腫瘍活性は、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり10匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図示されているように、配列番号1での治療は、3種の全ての実験において、生理食塩水対照と比較して腫瘍の成長の遅れをもたらした。配列番号1で達成された腫瘍成長の遅れは、タキソールまたはドキソルビシン単独で観測された阻害効果よりも優れていた。配列番号1とタキソールまたはドキソルビシンとの併用療法は、いずれかの単剤療法よりも強力であった。図7Bは、配列番号1と同じ塩基組成を有するが、R2 mRNAに相補的でない対照オリゴヌクレオチドが、単剤療法の際には十分な抗腫瘍活性を有さず、ドキソルビシンと協同作用しないことを示しており、これは、配列番号1の効果が配列特異的であることを示唆している。
【0161】
1.8 SK−OV−3ヒト卵巣腺癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後6日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで17回一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、タキソールまたはシスプラチン単独または併用した場合の抗腫瘍効果と比較した。タキソールを、10mg/kgの用量で、最初の3週間の間、週に1回、静脈内により投与し、次の2週間の間、週に1回腹腔内により投与した。タキソールを、4mg/kgの用量で、最初の3週間の間、週に1回、静脈内により投与し、次の2週間の間、週に1回腹腔内により投与した。全ての治療を40日目に停止した。抗腫瘍活性は、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり9匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図示されているように、配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍の成長の有意な遅れをもたらした。配列番号1で達成された腫瘍成長の遅れは、それぞれタキソールまたはシスプラチン単独で観測された阻害効果と同じであるか、またはそれよりも優れていた。配列番号1とタキソールまたはシスプラチンとの併用療法は、いずれかの単剤療法よりも強力であった(図8)。
【0162】
種々の化学療法剤と併用した配列番号1での治療の結果を表3にまとめた。
【0163】
【表3】

【0164】
(実施例2)
薬物耐性腫瘍における配列番号1単独または種々の化学療法剤との併用でのin vivo試験
2.1 BxPC−3ヒト膵臓癌細胞(100μlのPBS中3×106個の細胞)を、6〜7週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。BxPC−3はゲムシタビン耐性細胞系である。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後21日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで17回一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、ゲムシタビンの抗腫瘍効果と比較した。ゲムシタビンを、100mg/kgの用量で、3日ごとに静脈内により投与した。抗腫瘍活性は、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり10匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図示されているように、配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍の成長の有意な遅れをもたらした。予想されるように、同じ期間中のゲムシタビンでの治療は、ゲムシタビン耐性腫瘍に対しては効果がなかった。(図9AおよびB)。
【0165】
2.2 Hela S3ヒト子宮頸部類上皮癌細胞(100μlのPBS中5×105個の細胞)を、6〜7週齢の雌SCIDマウスの右脇腹に皮下注射した。Hela S3はヒドロキシ尿素耐性細胞系である。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後3日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで6回一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、ヒドロキシ尿素またはシスプラチン単独または併用した場合の抗腫瘍効果と比較した。ヒドロキシ尿素を、250mg/kgの用量で、10日間毎日腹腔内により投与した。シスプラチンを、4mg/kgの用量で3週間の間、週1回静脈内により投与した。抗腫瘍活性は、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり10匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図示されているように、配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍の成長の有意な遅れをもたらした。予想されるように、同じ期間中のヒドロキシ尿素での治療は、ヒドロキシ尿素耐性腫瘍に対しては効果がなかった。配列番号1で達成される腫瘍成長の遅れは、陽性対照として使用されるシスプラチン単独で観測された阻害効果よりも優れていた。配列番号1とヒトロキシ尿素の併用療法は、予想されるように、単に配列番号1の単剤療法と同程度の効果であった。しかし、配列番号1とシスプラチンの併用療法は、いずれか一方の単剤療法よりも強力であった(図10AおよびB)。
【0166】
2.3 MDA−CDDP−S4ヒトin vivo選別シスプラチン耐性乳房腺癌(breast adenocarcinoma)細胞(100μlのPBS中4×106個の細胞)を、6〜7週齢の雌SCIDマウスの脂肪パッド(右足の内側)に注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後7日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで9回一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、シスプラチンまたはタキソール単独の抗腫瘍効果と比較した。シスプラチンを、4mg/kgの用量で、3週間、週に1回静脈内により投与した。タキソールを、10mg/kgの用量で3週間の間、週1回静脈内により投与した。抗腫瘍活性は、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり10匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図示されているように、配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍重量の有意な減少を起こした。予想されるように、同じ期間中のシスプラチンでの治療は、シスプラチン耐性腫瘍に対しては効果がなかった。配列番号1で達成される腫瘍成長の遅れは、陽性対照として使用されるタキソールで観測された阻害効果と同じであった(図11)。
【0167】
2.4 MDA−CDDP−S4ヒトin vivo選別シスプラチン耐性乳房腺癌(breast adenocarcinoma)細胞(100μlのPBS中4×106個の細胞)を、6〜7週齢の雌CB−17 SCIDマウスの脂肪パッド(右足の内側)に注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後9日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、タキソール単独または併用の抗腫瘍効果と比較した。タキソールを、10mg/kgの用量で週1回i.p.投与した。抗腫瘍活性は、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害(図12A)によって評価した。各点は、実験グループあたり10匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。動物を殺し、腫瘍の重量を試験の最後に計った(図12C)。配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍重量の有意な減少を起こした。配列番号1で達成される腫瘍成長の遅れは、陽性対照として使用されるタキソールで観測された阻害効果よりも優れていた。併用治療の効果は、いずれか一方の治療単独よりも大きかった。この試験を繰り返したが、同様な結果であった(図12B)。
【0168】
2.5 MDA−MB435ヒトタキソール耐性乳房腺癌(breast adenocarcinoma)細胞(100μlのPBS中4×106個の細胞)を、6〜7週齢の雌SCIDマウスの脂肪パッド(右足の内側)に注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後20日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで15回一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、シスプラチンまたはタキソール単独の抗腫瘍効果と比較した。シスプラチンを、4mg/kgの用量で、4週間、週に1回静脈内により投与した。タキソールを、20mg/kgの用量で4週間、週1回静脈内により投与した。抗腫瘍活性は、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり9〜10匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図示されているように、配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍重量の有意な減少を起こした。予想されるように、同じ期間中のタキソールでの治療は、タキソール耐性腫瘍に対しては効果がなかった。配列番号1で達成される腫瘍成長の遅れは、陽性対照として使用されたシスプラチンで観測された阻害効果より優れていた(図13AおよびB)。
【0169】
2.6 MDA−MB435−To.1ヒトタキソール耐性乳房腺癌(breast adenocarcinoma)細胞(100μlのPBS中4×106個の細胞)を、6〜7週齢の雌CB−17 SCIDマウスの脂肪パッド(右足の内側)に注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後17日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、シスプラチン単独または併用した場合の抗腫瘍効果と比較した。シスプラチンを、4mg/kgの用量で、4週間、週に1回静脈内により投与した。抗腫瘍活性は、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり10匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。試験の最後に、動物を殺し、腫瘍を秤量した。図示されているように、配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍重量の有意な減少を起こした。配列番号1で達成される腫瘍成長の遅れは、陽性対照として使用されたシスプラチンで観測された阻害効果より優れていた。2種類の化合物の併用は、いずれか1つの単独よりも優れた抗腫瘍効果をもたらした(図14AおよびB)。
【0170】
2.7 ヒトタキソール耐性前骨髄球性白血病細胞(HL−60)(100μlのPBS中7×106個の細胞)を、6〜7週齢の雌SCIDマウスの右脇腹に注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後10日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、タキソールの抗腫瘍効果と比較した。タキソールを、10mg/kgの用量で、週に1回i.p.投与した。抗腫瘍活性は、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり10匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。加えて、動物を殺し、腫瘍の重量を試験の最後に計った。配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍重量の有意な減少を起こした。予想されるように、タキソールでの治療は、腫瘍成長または重量について全く効果がなかった。(図15AおよびB)。
【0171】
2.8 LS513多剤耐性結腸癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雌SCIDマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後8日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、CPT−11単独または併用した場合の抗腫瘍効果と比較した。CPT−11を、20mg/kg/日の用量で、5日間i.p.投与した。抗腫瘍活性は、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり10匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。動物を治療の最後に殺した後、腫瘍の重量を測定した。これらの細胞は、陽性対照として使用されたCPT−11に対して耐性ではない。図示されているように、配列番号1での治療は、生理食塩水対照と比較して腫瘍成長の有意な遅れをもたらした。配列番号1は、CPT−11と同程度の効果であり、併用の場合、その効果は、いずれか一方の治療単独よりも大きかった。(図16A、BおよびC)。
【0172】
薬物耐性腫瘍の、配列番号1単独または種々の化学療法剤との併用における治療の結果を表4にまとめた。
【0173】
【表4】

【0174】
(実施例3)
マウス異種移植モデルにおける配列番号1単独のin vivo試験
3.1 HT−29ヒト結腸癌細胞(100μlのPBS中3×106個の細胞)を、6〜7週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後4日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。治療をその後14日間継続した。抗腫瘍活性は、治療期間内の異なる4回の機会にカリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり5匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図示されているように、配列番号1での治療は、ヒト結腸腺癌の成長について、統計学的に有意な阻害効果(P=0.0001)を示した。(図17A)。
【0175】
配列番号1の抗腫瘍効果は、用量依存性であることが示された。HT−29ヒト結腸癌細胞(100μlのPBS中2×106個の細胞)を、6〜7週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後5日に、増加した濃度(T0.4からT0.6で示される、0.4〜6.0mg/kg)の配列番号1をボーラス注入によって14日間一日おきに尾静脈に投与した。対照動物(対照)には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。治療の最後に、動物を殺し、腫瘍を切除してこれらの重量を測定した。各棒は、実験グループあたり6匹の動物から計算した平均腫瘍重量を表す。図17Bに図示されているように、配列番号1は、用量依存性でヒト結腸腺癌の成長について統計的に有意な阻害効果を発揮した。
【0176】
3.2 A2058ヒト皮膚癌細胞(200μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後7日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。治療をその後24日間継続した。抗腫瘍活性は、治療期間にわたって2日おきにカリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり4匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図18Aに図示されているように、配列番号1は、ヒトメラノーマの成長について、強い阻害効果を示した。
【0177】
3.3 MDA−MB−231ヒト乳癌細胞(200μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後7日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。治療をその後24日間継続した。抗腫瘍活性は、治療期間にわたって2日おきにカリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり4匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図18Bに図示されているように、配列番号1は、ヒト乳癌の成長について、強い阻害効果を示した。
【0178】
3.4 SK−OV−3ヒト卵巣癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、5〜6週齢の雌Balb/cヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後11日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。治療をその後22日間継続した。抗腫瘍活性は、22日の期間にわたって2日おきに平均して、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり5匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図18Cに図示されているように、配列番号1は、ヒト卵巣腺癌細胞の成長について、強い阻害効果を示した。
【0179】
3.5 NCI−H460ヒト肺癌細胞(100μlのPBS中5×106個の細胞)を、6〜7週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後3日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。治療をその後14日間継続した。抗腫瘍活性は、16日の期間内の4回の機会にカリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり5匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図18Dに図示されているように、配列番号1は、ヒト肺癌細胞の成長について、強い阻害効果を実証した。
【0180】
3.6 SU.86.86ヒト膵臓癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、5〜6週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約150mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後5日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。異なる時に合成した2つの異なるバッチの配列番号1(バッチ1およびバッチ2として示す。)を、起こりうるバッチ特異的効果を検出するために試験した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。治療をその後34日間継続した。抗腫瘍活性は、治療期間にわたって2日おきにカリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり5匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図19に図示されているように、配列番号1は、ヒト膵臓癌の成長について、強い阻害効果を示し、バッチ特異的な影響は現れなかった。
【0181】
3.7 Hep G2ヒト肝臓癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、7週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、腫瘍の塊を回収し、ほぼ同じ大きさに分割し、その後各片(約25mg)を新たなマウスに移植した。9日の成長後、配列番号1とスクランブル対照オリゴヌクレオチド(配列番号3)を、ボーラス注入によって、2.5mg/kgで毎日尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。治療をその後30日間継続した。抗腫瘍活性は、30日の期間にわたって、種々の時間間隔でカリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり6匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図示されているように、配列番号1は、ヒト肝臓癌細胞の成長について、有意な阻害効果を実証したが、スクランブルオリゴヌクレオチドで治療したマウスの腫瘍成長は、生理食塩水で処理したマウスの腫瘍成長と違わなかった(図20参照)。
【0182】
3.8 Caki−1ヒト腎臓癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雌CD−1ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後7日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、2種類の化学療法剤:5−FUおよびビンブラスチンの抗腫瘍効果と比較した。5−FUは、13mg/kg/日の用量で、7〜13日目、21〜28日目および35〜36日目に腹腔内により投与し、一方、ビンブラスチンを、0.6mg/kg/週の用量で、7、14、21、28および35日目に腹腔内により投与した。全ての治療を36日目に停止した。抗腫瘍活性は、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり5匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図21Aに図示されているように、配列番号1は、ヒト腎臓癌細胞の成長について強力な阻害効果を示し、3匹のマウスにおいて、腫瘍の完全な退行をもたらした。
【0183】
3.9 A498ヒト腎臓癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雌SCIDマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後25日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。配列番号1の抗腫瘍効果を、さらに、3種類の化学療法剤:5−FU、ビンブラスチンおよびゲムシタビンの抗腫瘍効果と比較した。5−FUは、13mg/kg/日の用量で、26〜32日目および39〜46日目に腹腔内により投与し、一方、ビンブラスチンおよびゲムシタビンを、0.6mg/kg/週または80mg/kg/週の用量で、それぞれ26、32、39、46および52日目に腹腔内により投与した。全ての治療を52日目に停止した。生理食塩水で処理したマウスまたは3種類の化学療法剤の1つで治療したマウスは、腫瘍が大きくなりすぎたので80日目に殺した。配列番号1で治療したマウスは、抑えられている腫瘍成長の再発の可能性を観測するために、さらに16日間残しておいた。抗腫瘍活性は、カリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。各点は、実験グループあたり5匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図21Bに図示されているように、配列番号1は、ヒト腎臓癌細胞の成長について強力な阻害効果を示し、腫瘍の完全な退行をもたらした。
【0184】
3.10 SIHAヒト子宮頸癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雌SCIDマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後7日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。治療をその後16日間継続した。抗腫瘍活性は、16日間のうちの異なる4回の機会にカリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。図22Aの各点は、実験グループあたり10匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図示されているように、配列番号1は、ヒト子宮頸癌の成長について強い阻害効果を示した。図22Bは、治療の最後に上記動物から切除した腫瘍の重量測定の結果を示し、これもまた、配列番号1の強い抗腫瘍効果を実証している。
【0185】
3.11 HeLa S3ヒト子宮頸癌細胞(100μlのPBS中1×107個の細胞)を、6〜7週齢の雌SCIDマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後3日に、配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。治療をその後14日間継続した。抗腫瘍活性は、14日間のうちの異なる5回の機会にカリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。図23Aの各点は、実験グループあたり10匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。図示されているように、配列番号1は、ヒト子宮頸癌の成長について強い阻害効果を実証した。図23Bは、治療の最後に上記動物から切除した腫瘍の重量測定の結果を示し、これもまた、配列番号1の強い抗腫瘍効果を実証している。
(実施例4)
転移のマウス実験モデルにおける配列番号1のin vivo試験
4.1 有性生殖モデルにおける、異なるアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理されたマウス線維肉腫(R3)細胞の実験的転移を以下のように評価した。R3細胞懸濁物のアリコートを、2×106の密度で100mmの組織培養皿に接種し、10%FBSを補充したα−MEM培地中、37℃で一夜インキュベートした。細胞を10mlのPBSで1回洗浄し、カチオン性脂質(リポフェクチン試薬、最終濃度10μg/ml、ギブコBRL(Gibco BRL))の存在下で4時間、0.2μMの配列番号1で処理した。細胞を、対照としての生理食塩水単独(C)またはリポフェクチン単独(RE)で処理した。PBSで1回細胞を洗浄することによりオリゴヌクレオチドを除去し、細胞をトリプシン化した。次に細胞を遠心分離により集め、0.2mlのPBSに懸濁された約1×105個の細胞を、10週齢の雌C3Hマウスの尾静脈に注射した。個々のマウスから切除した肺をピクリン酸色素溶液(75%ピクリン酸、20%ホルムアルデヒド、5%氷酢酸)で染色した後、肺腫瘍の数の評価を20日後に行った。結果を図24aに示した。棒は、実験グループあたり4から5匹の動物から得られた肺中の腫瘍小節の平均数を表す。配列番号1(AS−A)でのR3細胞の処理は、肺コロニーの生成を有意に減少した(P=0.0006)。
【0186】
4.2 配列番号1で処理されたC8161ヒトメラノーマ細胞の実験的転移を以下のように評価した。C8161細胞懸濁物のアリコートを、2×106の密度で100mmの組織培養皿に接種し、10%FBSを補充したα−MEM培地中、37℃で一夜インキュベートした。細胞を10mlのPBSで1回洗浄し、カチオン性脂質(リポフェクチン試薬、最終濃度10μg/ml、ギブコBRL)の存在下で4時間、0.2μMの配列番号1で処理した。細胞を、対照としてのリポフェクチン単独(CONTROL)で処理した。PBSで1回細胞を洗浄することにより配列番号1を除去し、細胞をトリプシン化した。次に細胞を遠心分離により集め、0.2mlのPBSに懸濁された約1×105個の細胞を、6〜8週齢の無胸腺症の雌CD−1ヌードマウスの尾静脈に注射した。個々のマウスから切除した肺をピクリン酸色素溶液(75%ピクリン酸、20%ホルムアルデヒド、5%氷酢酸)で染色した後、肺腫瘍の数の評価を4週間後に行った。結果を図24bに示した。棒は、実験グループあたり6匹の動物から得られた肺中の腫瘍小節の平均数を表す。配列番号1でのC8161細胞の処理は、肺コロニーの生成を有意に減少した(P=0.0001)。
(実施例5)
ヒトバーキットリンパ腫を持つSCIDマウスの長期生存
リンパ腫の治療における配列番号1の治療可能性を評価するために、in vivo試験を行った。半集密的(subconfluent)対数成長培養物から集めた、生育可能なヒトバーキットリンパ腫(Raji)細胞(5×106)を各動物の尾静脈を介してi.v.注射し、疾患を2日間確立させた。規定食塩液中の配列番号1を、10mg/kgの用量で、1日おきに尾静脈注射によって投与した。対照動物には、オリゴヌクレオチドを用いずに、生理食塩水を単独で与えた。配列番号1での治療を42日目に停止した。両グループのマウス(n=10)を73日目に殺した。配列番号1の抗腫瘍効果をマウスの生存試験によって評価した。
【0187】
結果を図25Aに示した。治療しないで放置した場合、全てのマウスが23日以内に腫瘍の進行の結果として死亡した。一方、配列番号1で治療した動物は、63日目で死亡した1匹のマウスを除いて、全て73日目を過ぎても生存していた。同様の試験で、対照オリゴヌクレオチド(ミスマッチ配列の配列番号2およびスクランブル配列の配列番号3)を投与したが、効き目は観測されず、これは配列番号1が特異的機構を介して作用していることを示唆する。これらの結果は、配列番号1での治療は、ヒトリンパ腫の患者の、長期生存に対する有効な治療戦略となりうること、およびそのような患者の臨床結果を改善することを示唆する。
【0188】
第2の独立した試験で、図25Bに示されるような配列番号1の抗腫瘍活性を確認した。ヒトバーキットリンパ腫の腫瘍を確立したマウスを、44日間、生理食塩水または配列番号1のいずれかで、上述のようにして1日おきに治療した。対照グループのマウスは、全て、20日目までに疾患の進行により死亡した。44日目から、73日目に治療を停止するまで、配列番号1マウスに毎週治療を継続した。全てのマウスが実験期間の最後まで(140日)生存した。
(実施例6)
マウス赤白血病を持つSCIDマウスの長期生存
マウス赤白血病の治療における配列番号1の治療可能性を評価するために、in vivo試験を行った。半集密的(subconfluent)対数成長培養物から集めた、CB7フレンドレトロウイルスで誘導したマウス赤白血球細胞(5×106)を各動物の尾静脈を介してi.v.注射し、疾患を2日間確立させた。規定食塩液中の配列番号1を、10mg/kgの用量で、1日おきに尾静脈注射によって投与した。対照動物には、オリゴヌクレオチドを用いずに、生理食塩水を単独で与えた。配列番号1での治療を71日目に停止した。配列番号1の抗腫瘍効果をマウスの生存試験によって評価した。
【0189】
結果を図26に示した。治療しないで放置した場合、全てのマウスが36日以内に腫瘍の進行の結果として死亡した。一方、配列番号1で治療した動物は、22日目で死亡した1匹のマウスを除いて、全て71日目を過ぎても生存していた。これらの結果は、配列番号1での治療は、ヒト白血病患者の長期生存に対する有効な治療戦略となりうることを示唆する。
【0190】
配列番号1を用いてマウスで行われたin vivoアッセイの結果の幾つかを表5にまとめた。
【0191】
【表5−1】

【0192】
【表5−2】

【0193】
(実施例7)
配列番号1のin vivo抗腫瘍活性
細胞系および細胞培養物
この実施例において、特に記載しない限り、ヒト腫瘍細胞系は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(The American Type Calture Collection)(ATCC)(ロックビル、MD)から購入した。ヒト結腸腺癌(HT−29)、非小細胞肺癌(NCI−H460)、メラノーマ(A2058)、乳房腺癌(MDA−MB−231)、膵臓癌(AsPC−1およびSU.86.86)、膠芽腫−星状細胞腫(U−87MG)、腎臓癌(A498およびCaki−1)、卵巣癌(SK−OV−3)、子宮頸癌(HeLa)、前立腺癌(PC−3)、膀胱癌(T24)、バーキットリンパ腫(Raji)および肝細胞癌(HepG2)を、10〜20%ウシ胎仔血清(FCS)を補充した、α−MEM、RPMI1640、またはマッコイの5a培地中(インビトロゲンカナダ社、バーリントン、オンタリオ)中で、5%CO2を含有する加湿した大気中、37℃において、ATCCの推奨に従って維持した。正常ヒト細胞系、WI−38(ヒト肺線維芽細胞)およびHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cell))およびネズミR3(線維肉腫)およびL(Ltk-繊維芽細胞)細胞を、上記のように維持した。C8161転移性メラノーマ細胞を、D.R.Welch博士、ペンシルバニア大学、ハーシー、PA(Dr. D. R. Welch, University of Penncsylvania, Hershey, PA)から取得し、上記のように維持した(Welch, et al., Int J Cancer 47:227-37 (1991)(非特許文献50))。これらの実験で使用した全ての培地には、ペニシリン100ユニット/mlおよびストレプトマイシン100μg/ml(インビトロゲンカナダ社、バーリントン、オンタリオ)の最終濃度で、抗生物質性−抗真菌性溶液が含まれる。
【0194】
アンチセンスオリゴヌクレオチドでのin vivo治療
CD−1無胸腺症雌ヌードマウス、BALB/c nu/nuヌードマウス、SCID、およびSCIDベージュマウスを、チャールズ・リバー・ラボラトリーズ(モントリオール、カナダ)(Charles River Laboratories (Montreal, Canada))から購入し、実験は、典型的には、マウスが6〜7週齢になったときに開始した。ヒト腫瘍細胞を適切な成長培地中で成長させ、100μlのPBSに懸濁した3×106〜1×107個の細胞を、23ゲージ針で動物の右脇腹に皮下注射した(細胞数は括弧内の数値の説明文(figure legend)に示されている)。各実験グループは、典型的には、10匹のマウスを含んでいた。腫瘍の大きさが50〜100mm3の平均腫瘍容積に達した後、治療を開始した。アンチセンスオリゴヌクレオチド(生理食塩水に溶解したもの)を、ボーラス注入により、示された用量で一日おきに動物の尾静脈に投与した。5−フルオロウラシル(ファルマシア(Pharmacia))、ビンブラスチン(フォールディング(Faulding))、ゲムシタビン(イーライ・リリー(Eli Lilly))での治療は、括弧内の数値の説明文に示した通りであった。抗腫瘍活性は、2〜3日おきにカリパスで腫瘍容積を測定することによって評価した。腫瘍容積は、式L×W×H/2によって計算した。ここで、Lは長さを表し、Wは幅を表し、Hは高さを表す。最後の治療の後、24時間以内に、動物を殺し、腫瘍重量および体重を測定した。データの統計的分析の結果を括弧内の数値の説明文にP値として示した。
【0195】
リンパ腫生存アッセイ
半集密的対数成長培養物から集めた、生育可能なヒトバーキットリンパ腫(Raji)細胞(5×106)を各動物の尾静脈を介してSCIDマウスに静脈内注射し、疾患を2日間確立させた。規定食塩液中のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、10mg/kgの用量で、1日おきに尾静脈注射によって投与した。対照動物には、生理食塩水を、オリゴヌクレオチドを用いずに単独で、またはミスマッチおよびスクランブル対照アンチセンスオリゴヌクレオチドとともに、与えた。各治療グループは、典型的には、10匹のマウスを含んでいた。治療の抗腫瘍効果をマウスの生存試験によって評価した。生存率は治療グループ内のマウスの開始数のパーセンテージとして報告した。
【0196】
実験的転移アッセイ
C8161ヒトメラノーマ細胞を、2×106の密度で100mmの組織培養皿に接種し、10%FBSを補充したα−MEM培地中、37℃で一夜インキュベートした。細胞をトリプシン化し、遠心分離により集め、アリコートを懸濁液から取り出し、トリパンブルー排除試験を用いて細胞の生育度を決定した。0.1mlのPBSに懸濁された約1×105個の細胞を、6〜8週齢の無胸腺症の雌CD−1ヌードマウスの尾静脈に注射した。2日後に治療を開始した。個々のマウスから切除した肺をピクリン酸色素溶液(75%ピクリン酸、20%ホルムアルデヒド、5%氷酢酸)で染色した後、肺小節の数の評価を5〜7週間後に行った。
【0197】
結果
配列番号1はin vivoで配列特異的および用量依存的抗腫瘍活性を示す
R3マウス繊維肉種細胞(100μlのPBS中1.5×106個の細胞)を6〜8週齢の雌C3Hマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後3日に、配列番号1、配列番号2および配列番号3をボーラス注入によって、5mg/kgで一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。この後、治療を14日間継続した。抗腫瘍活性は、9日目から開始して2日間隔でカリパスで測定した腫瘍容積の阻害によって評価した。図27Aにおける各点は、実験グループあたり6〜7匹の動物から計算した平均腫瘍容積を表す。配列番号1での治療グループは、生理食塩水、スクランブルおよびミスマッチ対照と比較して有意な抗腫瘍効果を有していた(P=0.0001)。図27Bは、治療の終点で上記動物から切除した腫瘍の平均重量を表す。配列番号1は、生理食塩水(P=0.0006)対照、スクランブル対照(P=0.0001)およびミスマッチ対照(0.0002)と比較して有意な抗腫瘍活性を有していた。
【0198】
R3マウス繊維肉種細胞(100μlのPBS中2×106個の細胞)を6週齢の雌C3Hマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後4日に、次第に増加させた濃度(0.5〜30mg/kg、0.5から30と称する)の配列番号1をボーラス注入によって、10mg/kgで10日間、一日おきに尾静脈に投与した。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。治療の終点で、動物を殺し、腫瘍を切除し、これらの重量を測定した。図27Cにおける棒は、実験グループあたり6〜8匹の動物から計算した平均腫瘍重量と標準誤差を表す。生理食塩水に対して比較したP値は以下の通りである:0.5mg/kg(P=0.04)、2mg/kg(P=0.0001)、5mg/kg(P=0.0015)、10mg/kg(P=0.0001)、30mg/kg(P=0.0001)。
【0199】
図27Cは、配列番号1が両ネズミ(R3)に対して用量依存的な抗腫瘍活性を示すことを表している。
【0200】
興味のあることに、配列番号1は腎臓細胞癌(renal cell carcinoma)に対して非常に優れた効能を有する。図28は、Caki−1ヒト腎臓癌細胞であって、100μlのPBS中の5×106個の細胞を6〜7週齢の雌SCIDマウスの右脇腹に皮下注射したものによる異種移植実験からの結果を示す。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後7日に、配列番号1、配列番号2または配列番号3を投与した(10mg/kg/2日、i.v.)。3種類の追加の治療グループには、5−FU(13mg/kg/日×5)、ビンブラスチン(1mg/kg/週)およびゲムシタビン(100mg/kg/週)を与えた。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。1週間間隔でカリパス測定を用いて、腫瘍容積を計算した。図28Aにおける棒は、実験グループあたり10匹の動物(8匹の動物であった配列番号1を除く)から計算した平均腫瘍重量を表す。P値を生理食塩水に対して比較した:配列番号1(P<0.0001)、スクランブル(P=0.4032)、ミスマッチ(P=0.8555)、5−FU(P<0.0001)、ビンブラスチン(P<0.0001)、ゲムシタビン(P<0.0001)。
【0201】
49日後、マウスを殺し、腫瘍を秤量した。結果を図28Bに示した。各棒は、各治療グループに対して計算した平均腫瘍重量と標準誤差を表す。P値を生理食塩水に対して比較した:配列番号1(P=0.0001)、スクランブル(P=0.7183)、ミスマッチ(P=0.3254)、5−FU(P=0.0002)、ビンブラスチン(P=0.0001)、ゲムシタビン(P=0.0007)。
【0202】
図28CおよびDは、A498ヒト腎臓細胞癌を用いた結果を示す。100μlのPBS中の5×106個の細胞を、6〜7週齢の雌SCIDマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが約100mm3の容積に達した後、即ち腫瘍細胞の注射の後19日に、配列番号1、配列番号2または配列番号3を投与した(10mg/kg/2日、i.v.)。3種類の追加の治療グループには、5−FU(13mg/kg/日×5)、ビンブラスチン(1mg/kg/週)およびゲムシタビン(100mg/kg/週)を与えた。対照動物には、同じ期間生理食塩水を単独で与えた。1週間間隔でカリパス測定を用いて、腫瘍容積を計算した。図28Cにおける棒は、実験グループあたり10匹の動物(8匹の動物であった配列番号1を除く)から計算した平均腫瘍重量を表す。P値を生理食塩水に対して比較した:配列番号1(P=0.0001)、スクランブル(P=0.8786)、ミスマッチ(P=0.8224)、5−FU(P<0.8826)、ビンブラスチン(P<0.0001)、ゲムシタビン(P<0.0001)。54日後、マウスを殺し、A498腫瘍を秤量した。結果を図28Dに示した。各棒は、各治療グループに対して計算した平均腫瘍重量と標準誤差を表す。P値を生理食塩水と比較した:配列番号1(P<0.0001)、配列番号3(P=0.5154)、配列番号2(P=0.5741)、5−FU(P=0.9548)、ビンブラスチン(P=0.0582)、ゲムシタビン(P=0.0012)。
【0203】
配列番号1の治療は、実験の終了時点でのCaki−1およびA498の腫瘍容積および腫瘍重量によって評価された通り、Caki−1およびA498の腎臓腫瘍の生長における劇的な阻害をもたらすことが明らかとなった。治療の第1週以内に、治療は迅速な腫瘍の安定化および縮小をもたらした。腫瘍の退行は、治療の3週(腫瘍の移植後28日目)以内に完了した。同じ用量では、対照オリゴヌクレオチドでの治療は、生理食塩水治療と区別できない腫瘍の生長をもたらした。
【0204】
腫瘍生長において一般的な役割を有するRNRと一致して、配列番号1は、in vivoでの広範囲の固形腫瘍に対して抗腫瘍活性を示す。図29は、腫瘍生長に関して配列番号1の効果を、マウス内のヒト腫瘍細胞異種移植で評価した多くの実験から集めたデータの統計的分析結果をまとめたものである。各データポイントは、腫瘍重量および標準誤差を表す。実験は以下のように行った。腫瘍細胞懸濁物(1.5×106から107個)を、示された腫瘍細胞系についてマウスの右脇腹にs.c.注射した(腫瘍塊として皮下移植した肝細胞癌細胞を除く)。腫瘍塊が触診できたとき、即ち通常50から100mm3の範囲のときに、治療を開始した。治療で使用したオリゴヌクレオチドの濃度は、2.5mg/kgから10mg/kgの範囲であり、1日おきにi.v.投与した。腫瘍重量をmgで表し、腫瘍重量が治療の4週間後に得られた肝細胞癌のような生長のゆっくりした腫瘍を除いて、腫瘍重量をオリゴヌクレオチド治療の開始後約2週間で得た。対照と、オリゴヌクレオチド治療したグループとの間の腫瘍重量の差は、全ての場合について、統計的に有意であった(P<0.05)。
【0205】
特定の腫瘍(例えばBcl−2)に対して開発されたアンチセンス化合物の例とは異なり、配列番号1は、所定範囲の癌のタイプに対して活性であることは明かである。試験した全ての癌細胞系で、配列番号1での治療は、腫瘍生長(経時的な容積)および終点での重量の有意な減少をもたらした。
【0206】
配列番号1はRNRベースの治療化合物に比べて優れた抗腫瘍効果を有する。
【0207】
配列番号1の臨床の可能性を評価するために、マウス内でのヒト腫瘍細胞異種移植片に対するその効果を、5−FU、ゲムシタビンおよびビンブラスチンの効果と比較した(図28)。これらの化合物は、現在臨床で使用されており、RNR活性を少なくとも部分的に減少することによって作用すると考えられている。例外なく、配列番号1はヒト腎臓腫瘍、即ちCaki−1およびA498腫瘍に対してこれらの化合物のどれよりも優れていた(図28)。加えて、配列番号1は、腫瘍増殖からの長期間の保護を示した唯一の化合物であった。A498腫瘍異種移植片では、5−FU、ゲムシタビンおよびビンブラスチンでの治療は、腫瘍の安定化について、全て効果がなかった。54日目まで、5−FUで治療したマウスは、生理食塩水で治療した動物の腫瘍に対する容積および重量と等しい腫瘍を有していた。ビンブラスチンおよびゲムシタビンは5−FUよりもよい効果を示したが、せいぜい腫瘍成長速度の遅れが関の山であった(図28C)。これらの結果は、配列番号1が、その標的に対して非常に特異的であり、これによって毒性の可能性を減少させている、今日までに開発された唯一のRNRベースの化合物であるという点で重要である。
【0208】
配列番号1での治療は、異種移植モデルにおける生存を劇的に延ばした。
【0209】
有効性の追加の試験として、配列番号1を活性なバーキットリンパ腫を持つSCIDマウスに投与した(図30)。半集密的対数成長培養物から集めた、生育可能なヒトバーキットリンパ腫(Raji)細胞(5×106)を各動物内にi.v.注射し、疾患を2日間確立させた。規定食塩液中の配列番号1、配列番号2および配列番号3を、10mg/kgの用量で、1日おきに尾静脈注射によって投与した。40日目から、治療スケジュールを3日ごとに10mg/kgに減少した。対照動物には、生理食塩水を、オリゴヌクレオチドを用いずに単独で与えた。生存率はマウスの開始数のパーセンテージとして経時的に示した。配列番号1で治療したマウスは、全て試験の最後まで生存し、動物の収容容器の制限により72日目に殺した。
【0210】
配列番号1は、治療期間を越えて、十分に、マウスの生存時間を劇的に増加させた(治療の終了後72日まで)。生存を延ばしたことに加えて、配列番号1で治療したマウスは、リンパ腫に付随する症状から回復したことが明らかであった。治療が進むにつれて、配列番号1で治療されたマウスは、ざらざらした外皮であることおよび体重の減少から、滑らかな外皮と体重の増加へ変化した。全く定性的であるが、これらの観測は、治療の終了後の長期の生存と一致して、疾患が安定化したのみならず、回復していることを示唆する。
【0211】
最後に、配列特異的な機構を介して作用する配列番号1と矛盾なく、配列番号3と配列番号2の対照ODNsは共に、生存を延ばさなかった。
【0212】
配列番号1での治療は実験的転移モデルにおける肺小節形成を劇的に減少する
マウスの尾静脈内に注射されたネズミR3繊維肉腫およびヒトC8161メラノーマ細胞は、注射後2週間で観測可能な肺小節を形成する。マウスに注射する前に、培養物中で0.2μMの配列番号1によりこれらの腫瘍細胞を事前処理すると、肺小節形成の広がりは有意に減少する。臨床状態をより正確に反映するために、マウスを腫瘍細胞の注射後に配列番号1で治療した。C8161ヒトメラノーマ細胞を、2×106の密度で100mmの組織培養皿に接種し、10%FBSを補充したα−MEM培地中、37℃で一夜インキュベートした。細胞をトリプシン化し、遠心分離により集め、アリコートを懸濁液から取り出し、トリパンブルー排除試験を用いて細胞の生育度を決定した。0.1mlのPBSに懸濁された約1×105個の細胞を、6〜8週齢の雌SCIDマウスの尾静脈に注射した。2日後に治療を開始した。個々のマウスから切除した肺をピクリン酸色素溶液(75%ピクリン酸、20%ホルムアルデヒド、5%氷酢酸)で染色した後、肺小節の数の評価を5〜7週間後に行った。結果を図31に示し、棒は、マウスあたりの小節の平均数を標準誤差と共に表す。配列番号1の治療グループでは、9匹のマウスのうち1匹のみが肺小節を有していた。
【0213】
腫瘍および生存アッセイと同様に、対照ODNsでの治療に関連づけられる抗転移活性は全くなく(図31、配列番号2および配列番号3)、配列番号1の配列特異的な効果を再度確認した。
(実施例8)
免疫刺激
配列番号1が標的配列相互作用での結果ではない、非特異的免疫刺激をもたらすかどうかを決定するために、以下の実験を行った。免疫刺激は、メチル化されていないCpGジヌクレオチドの結果であり得、このジヌクレオチドは、脊椎動物に本来備わっている免疫応答を刺激し、病原体および腫瘍細胞の両方に対して獲得した免疫応答をさらに増大する。オリゴヌクレオチド中のメチル化されていないCpGsの存在は、最適な配列コンテクスト内にあっても、同じ効果を有することができる。
【0214】
配列番号1の治療が、MK−媒介性抗腫瘍活性のCpG刺激に起因するかどうかを直接に決定するために、SCID/ベージュマウス中のヒト腫瘍異種移植片について配列番号1の効果を評価した(図32)。SCID/ベージュマウスはB、TおよびNK細胞機能を欠き、それ自体では、これらのマウスは、生来のまたは獲得した重要な免疫応答をマウントすることができない。SCID/ベージュマウス中のCaki−1腎臓腫瘍異種移植片が配列番号1で効果的に治療されることは、腫瘍生長データから明らかである(図32A)。明らかに、SCID/ベージュモデル中での配列番号1の抗腫瘍効果は、程度および動力学について、SCIDマウスモデルで得られた抗腫瘍効果と等価である。配列番号1をミスマッチおよびスクランブル対照ODNs(それぞれ配列番号2および3)と比較した実験からのデータは、抗腫瘍活性がR2相補性配列に対して特異的であることを今一度実証した(図32B)。刊行された報告から、最大のCpGで媒介される効果については、無傷のNK、TおよびB細胞機能の必要性が実証されていることを考えれば、これらの結果は、配列番号1の作用の一次機構が免疫刺激とは無関係であることを示唆している。
【0215】
これらのデータは、CpGで媒介される免疫刺激が配列番号1の抗腫瘍効果の主要な一因ではないことを示唆するが、配列特異的な抗腫瘍活性に加えて、免疫刺激が免疫応答能を持つ個体では負の副作用にはならないかもしれない。実際に、穏和な免疫刺激は、化学療法によって誘発される免疫不全を相殺しうる。
【0216】
メチル化されたオリゴヌクレオチドのデータ
CpGジヌクレオチドモチーフは、脊椎動物で免疫応答を刺激するためには、メチル化されていてはならない。従って、CpGによって媒介される免疫刺激の問題を扱うための1つのアプローチは、CpGモチーフ中のC残基をメチル化し、これによってCpGで媒介される免疫応答を妨げることである(Krieg, A. M. Annu. Rev. Immunol. 20: 709-760 (2002)(非特許文献51))。
【0217】
CD−1ヌードマウス中でのHT29腫瘍異種移植片の治療について、CpG(C9;配列番号4)でのメチル化は、配列番号1の抗腫瘍活性を妨げず、このことは、配列番号1の抗腫瘍活性は、配列特異的なアンチセンス作用の結果であり、CpGで媒介される免疫刺激ではない機構を支持する(図33)。対照のオリゴヌクレオチドである配列番号5(met−11C)でも見られる抗腫瘍活性についての、有意ではないが測定可能な効果があり、これは、メチル化自体が、ことによると標的結合性、オリゴヌクレオチドの半減期、または腫瘍細胞へのオリゴヌクレオチドの取り込みを低下することによって、アンチセンス機構を介して作用する化合物の能力に僅かながら影響を与えているかもしれないことを示唆する。これらの結果は、配列番号1がCpGに起因しうるいずれの免疫刺激活性から独立して作用することを示している。
(実施例9)
サルおよびラットでの薬物動態学
このオリゴヌクレオチドの安全性の側面を理解するために、毒性試験を、配列番号1を用いて行った。R2 mRNA中の配列番号1の標的配列は、ラットおよびサルの細胞から抽出したmRNAのRT−PCR増幅によって調製されたR2 cDNAの直接の配列決定によって、その配列が決定されており、ヒト、ラットおよびサルの間で完全に保存されている。
【0218】
配列番号1のトキシコキネティクス(toxicokinetics)および組織分布(エキソヌクレアーゼで媒介される鎖の短縮)をラットおよびサルで測定した。配列番号1の薬物動態学および組織分布に加えて、試験の目的は、組織および血液中の配列番号1(および代謝物)の濃度に対して、動物試験での有害な影響を相関付けることであった。キャピラリー電気泳動(CE)法を使用して、血漿および組織中の配列番号1(および代謝物)の濃度を測定した。
【0219】
9.1 吸収
ラットにおける薬物動態学
薬物動態学の試験において、雄のラットのグループに、50mg/kg(295mg/m2)の容量で、配列番号1のボーラスi.v.注射(尾静脈)を1または2回投与し、50mg/kg/日(295mg/m2/日)の容量で、48時間まで静脈内(腹部大静脈)注入した。血液サンプルを、注入およびボーラス注射の開始後56時間まで種々のサンプリング時間で、各グループ内の動物のサブセットからEDTAを含有する管に集めた。もとの配列番号1の濃度を、確認用CE法(validated CE method)によって血漿中で測定した。
【0220】
1日に1または2回の連続したボーラス注射の後に、ラット中の配列番号1の血漿濃度は同様であったので、薬物動態学的パラメータは、2回目のボーラス注射の後に計算した。表6は、ボーラス注射後および50mg/kg/日で24時間の連続静脈内注入後の平均レベルに基づいて計算した薬物動態学的パラメータを示す。ボーラス注射後の配列番号1の血漿半減期は、1.36hであった。注入中の配列番号1の平均の血漿定常状態濃度(Css)は、9.62μg/mLであり、このレベルは注入開始後約3時間で達成された。血漿クリアランス(Cl)は、ボーラス注射後154mL/hr/kgであり、注入後は216mL/hr/kgであると計算された。
【0221】
サルにおける薬物動態学
配列番号1を21日とこれに続く21日の回復期間、連続静脈内注入によってサルに投与した。28匹のサルに以下の用量レベルの1つを投与した:ビヒクル対照、2、10または50mg/kg/日(24.6、123、および615mg/kg/日)。トキシコキネティクス試料を、注入の開始前、注入開始後、約8、24、48および96時間、および用量シリンジに変える前20日目に集めた。
【0222】
2mg/kgの用量グループの配列番号1の血漿濃度は検出できなかった。血漿濃度は、投薬後8時間で定常状態に達したことが明らかとなった。表6には、10mg/kgおよび50mg/kgの用量のグループに対する薬物動態学パラメータを示した。中央のTmaxは、10mg/kgおよび50mg/kgの用量のグループに対して、それぞれ480および24時間であった。
【0223】
【表6】

【0224】
9.2 分布
以下のラットおよびサルの組織中での配列番号1(および関連するn+1、n−1からn−15のオリゴヌクレオチド代謝物)の濃度は、確認用CE法(サウスウエスト・バイオラボ社(southwest Bio-Labs, Inc)によって測定した:腎臓、肝臓、脾臓、心臓、肺、骨髄(ラット)、リンパ節(サル)および脳組織。組織サンプルを、21日の毒性試験において記載したように、指定した動物から集めた:ラットは、2、10または50mg/kgで一日おきに配列番号1をボーラス静脈内注射で投与し、サルは、2、10または50mg/kg/日で連続静脈内注入によって配列番号1を投与した。
【0225】
結果は、ラットおよびサルでの配列番号1の組織体内分布が、他のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドに対して報告されているものと同様であることを示した。両方の種において、配列番号1の最も高い濃度は腎臓>肝臓>骨髄>脾臓>心臓>肺で観測された。脳内の配列番号1の濃度は、両種での検出の限界以下であった(検出の下限はラットで1μg/gであり、サルで0.2μg/gである。表7aおよび6bを参照)。
【0226】
代謝の証拠が、評価した組織の全てで観測されたが、最も高い濃度は、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの代謝に重要であり、該ヌクレオチドの排出の一次経路であることが知られている器官である、腎臓および肝臓で観測された。元のヌクレオチドおよび代謝物の濃度が最も高い器官は、組織病理学的異常を示す器官でもある。この結果は、組織内(高いトランスアミナーゼ、クレアチニンの増加、または血小板総数の減少のような形態学的変化および機能の変化が、これらの組織内で見いだされる)の配列番号1(およびその代謝物)の濃度の間に関連があることを示唆する。
【0227】
配列番号1の投薬を中断すると、元の化合物とその代謝物の両方とも、時間の経過とともに減少するという証拠があった。特に、ラットおよびサルでのこれらの試験は、21日の回復期間後に試料採取した組織で観察された効果が可逆性であるという証拠を提供する。
【0228】
【表7】

【0229】
【表8】

【0230】
(実施例10)
サルおよびラットにおける毒性
10.1 1回用量の毒性
サルの急性静脈内毒性試験
80mg/kg/日(984mg/m2/日)までの用量で24時間の配列番号1の静脈内注入は、アカゲザルについて十分に許容された。試験中の死亡は全くなかった。治療に関連する臨床の徴候、または体重、血圧、心拍数、血清生化学または血液学的パラメータの変化は、いずれの用量でも全く観測されなかった。APTTにおける治療に関連する穏和な変化が40mg/kg/日(492mg/m2/日)および80mg/kg/日(984mg/m2/日)での注入の最後に観測され、相補的スプリット生成物Bbの、治療に関連するわずかな増加が20、40、および80mg/kg/日(246、492、および984mg/m2/日)での注入の最後に観測された。これらの影響は、固有の凝固経路の明らかな阻害、および代替の相補的経路の控えめな活性化をそれぞれ示す。これらの治療に関連する変化は、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの投与の典型的な部類の影響である。
【0231】
10.2 繰り返し用量の毒性
21日の回復を用いたラットでの21日の静脈内毒性試験
配列番号1を、21日の回復期間を用いて、21日まで一日おきに静脈内ボーラス注射によりSprague−Dawleyラットに投与した。この試験設計は、ビヒクル対照、2mg/kg、10mg/kg、および50mg/kgの4つの試験グループを含む。10匹の動物/性別と追加の5匹の動物/性別よりなる主要試験グループは、回復フェーズに対する対照および高用量グループに含まれた。サテライト動物(6/性別/グループ)もトキシコキネティクスの分析に含まれた。
【0232】
単一死亡率は50mg/kgの用量で起こり、並びに種々の有害な臨床的徴候、体重増加の減衰(食事の消費量の減少を伴う)、リンパ球増加症、穏やかな貧血、および血小板減少症、および、血清化学的パラメータの種々の相対的に穏和な変化を起こした。10mg/kgの用量レベルでは、臨床的徴候はなく、体重または食物消費の影響はなく、貧血および血小板減少症の程度は低く、多少の血清化学的パラメータのわずかな変化のみがあった。2mg/kgの用量のレベルは、上記パラメータのいずれについても注目すべき影響は全くなかった。組織病理学的な知見は、最も高い用量レベルでの回復の証拠とともに、10および50mg/kgで標的器官としてリンパ節系、腎臓、および肝臓を示した。重ねて、これらの知見は、ホスホロチオエートの公知の毒性の側面と一致していた。
【0233】
3週間の回復を用いたサルでの配列番号1の、21日の連続注入毒性試験
第2の繰り返し用量試験をサルで行い、21日間の連続静脈内注入と、これに続く21日の回復期間による試験物質の投与に伴う毒性を評価した。28匹のサルに以下の用量レベルの1つを投与した:ビヒクル対照、2mg/kg/日、10mg/kg/日、または50mg/kg/日。トキシコキネティクスサンプルを、注入の開始前、注入の開始後約8、24、48および96時間、並びに用量シリンジの変化の前20日に採集した。予想外の死亡は、試験中に全く起こらなかった。10および50mg/kg/日の用量レベルで見られた影響には、脾臓の組織球増殖症、抗凝固効果、相補的活性化、並びに、血栓および血管損傷の形成、肺の炎症および注入部位での漏れのような連続注入の影響が含まれる。標的器官は、腎臓、肝臓、およびリンパ節の組織病理学的変化を通して明確に同定された。一般に、配列番号1に関連する変化は、重篤さおよび/または発生率について用量依存的であり、3週間の投薬後の治療のない期間の間に、完全にまたは一部(最終的に完全な回復の示唆を含む)可逆的であった。先のラットでの試験のように、2mg/kg/日の用量レベルは、副作用のないレベル(NOAEL)と確認された。
【0234】
静脈内適合性アッセイ
配列番号1の注射を、ヒト全血中での細胞溶解およびヘモグロビン放出に基づく溶血活性を引き起こす可能性について試験し、静的および動的条件下で溶血を起こさなかった。
(実施例11)
種々の化学療法剤と併用して配列番号1を用いる臨床試験
配列番号1を公知の種々の化学療法剤と併用して試験する臨床試験のための可能な設計の例は、表8に示されている。
【0235】
進行中の臨床試験の例、および配列番号1を用いるNCIによって承認された他の臨床試験の例は、以下に概説されている。試験の2〜7の各々に関連するプロトコールの詳細は表9に示されている。試験1(腎臓癌)は、実施例12および13にさらに詳細に記載されている。
【0236】
1.プロトコールLO1−1409(腎臓細胞癌)
試験の説明:
進行したかまたは転移性の腎臓細胞癌(フェーズI/II)を持つ患者における配列番号1およびカペシタビン併用療法
母集団:標準的な治療に失敗した進行したおよび転移性の腎臓細胞癌
試験投薬計画:配列番号1(CIV注入)+カペシタビン
周期:14日+7日の休止
フェーズI/II
状況:フェーズIIの進行中
投薬:配列番号1を148.0mg/m2/日の開始用量で、1660mg/m2/日(一日2回の用量に分割され、21日間)の固定用量で経口投与されるカペシタビンと併用して、21日間連続的に静脈内注入で投与し、次いで7日間休止した。
【0237】
2.プロトコールL6093(乳房)
試験の説明
転移性乳癌の治療における配列番号1およびカペシタビンのフェーズI試験
母集団:乳癌、転移性および2回以上の事前の投薬計画で失敗したもの
試験投薬計画:配列番号1+カペシタビン
21日周期で14日
対象:40(2ステージ:20ea)
フェーズII
状況:再考中の計画
3.プロトコールL6104(NSCLC)
試験の説明:
転移性または進行した非小細胞肺癌における配列番号1およびドセタキセルのフェーズI/II試験
母集団:転移性または切除不可能な局所的に進行したNSCLC
試験投薬計画:配列番号1+ドセタキセル
対象:42(12 フェーズI、30 フェーズII)
4.プロトコールL6091(固形癌)
試験の説明
固形癌を持つ患者における配列番号1およびゲムシタビンのフェーズI試験
母集団:転移性または切除不可能な固形癌、および、治療上の方策または一時的緩和の方策が存在しないかまたはもはやこれらが効果的でないもの
試験投薬計画:配列番号1+ゲムシタビン
対象:34
5.プロトコールL6108(AML)
試験の説明
難治性または再発した急性骨髄性白血病(AML)における、高用量のシタラビンと併用した配列番号1のフェーズI試験
母集団:難治または再発急性骨髄性白血病
試験投薬計画:配列番号1+シタラビン
対象:30
6.プロトコールL6099(結腸直腸)
試験の説明
難治性または再発性の結腸直腸癌における、配列番号1、オキサリプラチンおよびカペシタビンのフェーズI試験
母集団:局所的に進行したかまたは転移性の結腸直腸癌(難治性、再発性)。患者はオキサリプラチン含有の事前投薬計画以外の、少なくとも1回の標準的な事前の化学療法を受けていなければならない。
【0238】
試験投薬計画:配列番号1+オキサリプラチン&カペシタビン
対象:15〜20
フェーズI
状況:再考中の計画
7.プロトコールL6102(前立腺)
試験の説明
ホルモン難治性の前立腺癌を持つ患者における、配列番号1およびドセタキセルのフェーズII試験
母集団:ホルモン難治性前立腺癌およびPSAレベルの上昇(PSA≧20)した患者。ECOG 0〜2、妥当な器官機能を持つ
試験投薬計画:配列番号1+ドセタキセル
対象:40
フェーズII
状況:進行中の試験からフェーズIIの用量を待っている
【0239】
【表9−1】

【0240】
【表9−2】

【0241】
【表9−3】

【0242】
【表9−4】

【0243】
【表9−5】

【0244】
【表9−6】

【0245】
【表10−1】

【0246】
【表10−2】

【0247】
【表10−3】

【0248】
(実施例12)
進行した癌を持つ患者における連続的静脈内注入によって与えられる配列番号1のフェーズI試験
適格性の規準
・効果的な治療が利用可能でない固形癌またはリンパ腫の組織学的に確認される診断である
・計測可能であるかまたは評価可能な疾患である
・年齢=18歳;KPS=70%;インフォームドコンセント
・試験前28日(ニトロソ尿素またはミトマイシンに対しては42日)以内に他の癌治療をしていない
・妥当な臓器機能;INRおよびaPTT WNL
・アスピリン、NSAIDsまたは抗凝固剤の必要がない
・妊娠、授乳または出血しやすい体質でない
試験計画
・オープンラベル、シングルセンター、用量の漸増
・第1相の漸増:1〜3人の患者群;グレード2の毒性まで用量の倍加または148mg/m2の用量で完了する。
【0249】
・グレード2に等しいいずれかの毒性に3人の患者が登録される必要があり、この毒性で第2相の漸増に切り替える。
【0250】
・第2相の漸増:少なくとも3人の患者/群;DLTまで20〜30%の漸増
治療計画
・CADDポンプにより250mLの生理食塩水中で配列番号1を21日CVIで投与し、続いて1週間休止。
【0251】
・開始用量:18.5mg/m2(サルで最小且つ可逆的な毒性をもたらした用量の1/6)
・DLTまたは急速な腫瘍の進行がなければ、毎2周期後に腫瘍を再評価。
【0252】
DLTの定義
・グレード4のANCの長期継続=3日または熱の付随
・グレード4の血小板、またはグレード1または高度の出血を伴うグレード3の血小板
・グレード3、またはグレード1若しくは高度の出血を伴う高度の凝固障害
・最大の支持ケアにもかかわらず、吐き気、嘔吐または下痢=グレード3
・他の任意の非ヘム毒性=グレード3
・周期1の項目(events)に基づくDLT
MTDの定義
・少なくとも3分の1の患者がDLTになる用量レベル
・推奨されるフェーズIIの用量は、MTDよりも低い用量である。
【0253】
薬物動態学的および薬力学的サンプリング
1日目に、ヘパリン化した血液サンプルを、ベースラインで、次に注入の開始後1、2、3、4および6時間に採集した。8日および15日目に、単一のヘパリン化したサンプルをとった。22日目に、ヘパリン化した血液サンプルを、注入の終了の前に、および注入の終了後0.25、0.5、1、2、4および6時間に採集した。血漿をデカンテーションし、−70℃で保存した。
【0254】
患者の特性
特性 患者数
患者の登録数 36
男性 25
女性 11
平均年齢、歳(範囲) 60(29〜78)
カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(KPS)
100 7
90 12
80 13
70 4
事前治療
化学療法/免疫療法 36
化学療法および放射線 10
診断
腎臓 15
結腸直腸 9
中皮腫 3
前立腺 2
未知の一次性 2
肝臓癌 2
その他 3
用量レベル
【0255】
【表11】

【0256】
この試験は、進行した悪性腫瘍を持つ患者における配列番号1の用量規定毒性(DLT)および最大許容用量(MTD)を決定するために行った。薬物動態学的パラメータを評価した。配列番号1をCVIで21日周期とこれに続く1週間の休止でポータブル注入ポンプを用いて投与した。開始用量は、齧歯目およびサルの最小毒性をもたらす1/10および1/6にそれぞれ対応する18.5mg/m2/日であった。グレード1の毒性が現れるまで1〜3人の患者の群で用量を2倍にし、引き続いて3人の患者の群で20〜30%漸増させた。DLTは、3日間継続するかまたは熱を伴うグレード4の好中球減少症;グレード4の血小板減少症(T)またはグレード1の出血を伴うグレード3のT;またはグレード3の非血液学的毒性、と定義される。36人の患者[25人の男性、年齢の中央値60(29〜78)、KPSの中央値90(70〜100)、腎臓細胞癌15人、結腸直腸癌9人、その他12人]に、18.5から222mg/m2/日(6レベル)の範囲の用量で49周期の治療を受けさせた。3人のDLTを、毒性を評価できる25人の患者で観測した:即ち、148mg/m2/日でグレード3の疲労(1/6患者)、222mg/m2/日でグレード4のトランスアミナーゼの上昇(2/6患者)(MTD);他の重篤な毒性は、グレード3の非好中球減少性感染(2患者)および腸閉塞(1患者)であった。血液学的な毒性は強くなく、共通(グレード1〜2)の非血液学的毒性は、疲労(69%)、食欲不振(42%)および吐き気(38%)であった。4人の患者は、2周期後に安定な疾患(SD)となった。配列番号1は、185mg/m2/日の推奨されるフェーズIIの用量で、11の患者に十分許容された。薬物動態学的(PK)パラメータの予備的分析は、フェーズIIの用量で、約2時間のt1/2および0.6μg/mlの平均定常状態血漿濃度を示唆した。結果を表10〜12(以下)および図34AおよびBにまとめた。
【0257】
【表12】

【0258】
【表13】

【0259】
【表14】

【0260】
(実施例13)
進行したかまたは転移性の腎臓細胞癌を持つ患者における配列番号1およびカペシタビン併用療法のフェーズI/II試験
状況
・現在までの試験に参加した31人の患者のうち、29人の患者が試験薬剤(配列番号1)を与えられ、2人の患者は、試験薬剤を与える前に除外した。
【0261】
・1人の患者は試験治療を継続している
試験された集団
・進行したかまたは転移性の腎臓細胞癌
登録状況
・フェーズIの用量漸増(N=9)
・フェーズII:(N=20)
方法論
・オープンラベル、非無作為化
・フェーズII部分で推奨される用量を見出すためにカペシタビンの用量を固定して併用し、配列番号1の用量をフェーズI部分で漸増した。
【0262】
・シモンの2段階計画を、25%の標的活性レベルおよび10%の低活性レベルを有するフェーズII部分に対して用い、18人の患者がフェーズII部分での有効性について評価可能となった後に、最初の評価を予定した。
【0263】
目的
一次的目的:
・この患者集団においてカペシタビンと併用して与えられたときに、配列番号1の推奨されるフェーズIIの用量を決定すること。
【0264】
・この患者集団において、配列番号1・プラス・カペシタビンの応答速度を決定すること。
【0265】
二次的目的:
・この患者集団において、配列番号1・プラス・カペシタビンの毒性を評価すること。
【0266】
薬物動態学的目的:
・この患者集団において、配列番号1およびカペシタビンの薬物動態学的側面を特徴づけること。
【0267】
試験された用法(dose regimens)
・配列番号1 − 148mg/m2/日(N=5 投薬された患者数)を、1,660または1,250または850mg/m2/日のカペシタビンと併用した(必要であれば、1,250または850mg/m2/日にカペシタビンの用量を減少)。
【0268】
・配列番号1 − 185mg/m2/日(N=28)を、1,660mg/m2/日のカペシタビンと併用した(必要であれば、1,250または850mg/m2/日にカペシタビンの用量を減少)。
【0269】
・注:2人の患者は配列番号1の容量を増加し、4人の患者はカペシタビンの用量を減少した。
【0270】
投与経路:
・配列番号1 − 28日の各周期で最初の21日について連続静脈内注入
・カペシタビン − 28日の各周期で最初の21日について毎日2回に分けた用量を経口で与えた。
【0271】
試験薬物は、セカンドラインの治療、サードラインの治療、またはフォースラインの治療として、そして標準的な治療が適切でない患者に対してはファーストラインの治療として与えられる。
【0272】
推奨されるフェーズIIの用量の決定
・1,660mg/m2/日のカペシタビンと併用される配列番号1のmg/m2/日を、この推奨されたフェーズIIの用量での6人を含む9人の患者でのフェーズIの安定性データに基づいたフェーズIIに対する安全な併用用量と定義する。
【0273】
暫定的な評価状況
プロトコールごとに要求される、予定した有効性の評価に対して十分なデータが利用可能であるかどうかを決定するために、予備評価の判定を行った。フェーズIおよびフェーズIIをひとまとめにして考えると、薬剤の安全性/毒性の評価が可能な29人の内、今日までに、配列番号1およびカペシタビンの併用に関する腫瘍評価が可能な21人の患者について、データを集めた。1人の患者は、8ヶ月を超える治療の後、まだ治療を継続中である。
【0274】
大多数の患者は、試験に参加する前に2回以上の事前治療に失敗しており、広範囲の転移を示しており、腎臓細胞癌の非常に乏しい予後結果を有する集団の典型であった。治療は、許容できる頻度でこれらの薬剤で起こることがすでに知られている治療に関連した毒性以外にはほとんど治療に関連する毒性がなく、十分に許容された。
【0275】
未検査の予備データは、腫瘍評価の評価ができる21人の患者の半分以上が疾患の安定化(10人の患者)または安定な疾患の継続期間が8ヶ月を超えるまでに至っている部分的な応答(1人の患者)を示していることを明らかにしている。ベースラインの寸法と比較した腫瘍指数(index tumour)である永続的な腫瘍収縮が2人の患者において観測され、この2人は、今日まで、腫瘍全体の最も長い直径がそれぞれ23%および40%まで減少した。腫瘍応答の完全な評価は、プロトコールで特定された一次有効性評価であるフェーズIIの有効性データの評価で要求される患者の増加が完了した後に限って行われる。
【0276】
有害事象および安全性
有害事象
この試験についての全ての有害事象は、MedDRA辞典を用いる翻訳手順にかけた。治療された患者の全てが、少なくとも1回の有害事象を経験した。有害事象は、以下の種類、即ち、胃腸障害;一般的な障害および投与部位の症状;代謝および栄養障害;血液およびリンパ系の障害;神経系の障害;皮膚および皮下組織の障害;筋骨格および結合組織の障害;呼吸、胸部および隔膜の障害;感染および体内侵入;検査;並びに精神障害、で最も頻繁に発生した。他の種類の有害事象は患者の25%未満までが経験している。
【0277】
重篤な有害事象
今日まで、重篤な有害事象は、この試験に登録されている13人の患者で報告されている。これらの事象は、6人の患者についてはプロトコールの治療に無関係であるか、または関連していないように思われ、7人の患者に対しては、もしかすると、おそらくまたは明らかに関連していると思われる。
【0278】
完了/除外の理由−フェーズI
フェーズI部門に登録されている9人の患者が試験から除かれた。8人の患者は疾患が進行した結果として除かれ、1人の患者は7周期後のさらなる治療を拒絶した。疾患が進行したことにより試験から除かれる前に、1人の患者がわずか1周期のプロトコール療法を受けた。3人の患者が2周期のプロトコール療法を受けた。5人の患者は次に進んで、2周期を超える治療を受けた。即ち、1人の患者は3周期の治療を受け、2人の患者は4周期の治療を受け、3人の患者は7周期の治療を受けた。2人の患者は試験療法中に用量の減少が必要であった。他のフェーズIの患者は試験療法中に用量の減少を必要としなかった。
【0279】
完了/除外の理由−フェーズII
フェーズII部門に登録されている19人の患者が、今日まで試験から除かれた。10人の患者は疾患が進行した結果として除かれ、6人の患者が要望による患者の拒絶で除かれ、2人の患者が重篤な有害事象により除かれ、1人の患者が試験中に死亡した。1人の患者が試験を継続している。
【0280】
10人の患者が2周期後に治療を中止した。2人の患者は、疾患が進行したことにおり試験から除かれる前に、4周期の試験治療を受けた。1人の患者は、SAEs(グレード3のカテーテルに関連した感染、グレード3の血小板輸血およびグレード4の心血管肺塞栓症。全て、試験療法に関連するかもしれない)により試験から除かれる前に、4周期の試験治療を受けた。1人の患者は、疾患が進行したので2周期後に試験からはずされ、1人の患者は、疾患の進行により6周期の後中止した。3人の患者は、試験からはずされる前に1周期の試験療法を受けた。1人の患者は、抗凝固剤を必要とするグレード3の血栓性事象により試験から除外され、有効性について評価不能と見なされた。1人の患者は、放射線治療を必要とする神経学的な徴候の進展により試験から除外され、1人の患者は、腎臓細胞癌に付随する急性腎不全を伴った、腎臓細胞癌からの肺転移に付随する呼吸不全で試験中に死亡した。さらに1人の患者は、試験に継続中であり、治療を受けている。患者は7周期の治療を受け、周期8を開始した。1人の患者は、ALTおよびASTが高くなったことによりカペシタビンの用量を25%減少する必要があった。
【0281】
この明細書で参照された、全ての、特許、公開された特許出願を含めた刊行物およびデータベースの入力の開示は、あたかもそのような個々の特許、刊行物およびデータベースの入力が特にそして個々に参照によって取り込まれることを意図したかのように、同じ範囲までこれらの全体を参照によって特に取り込まれる。
【0282】
上述のように本発明を説明したが、本発明は種々の方法で変更することができる。そのような変更は、本発明の趣旨および範囲から逸脱すると見なされることはなく、当業者に自明であるであろうこのような修正は全て、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるべきであることが意図されている。
【0283】
独占的性質または特許権が請求される本発明は添付の特許請求の範囲の通りに定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シタラビンと併用して、ヒト患者の急性骨髄性白血病を治療するための医薬の製造における、配列番号1で示される配列を含む、長さが35個以下のヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用であって、前記医薬が前記アンチセンスヌクレオチドを3mg/kg/日から8mg/kg/日の用量で前記患者に提供するために配合される使用。
【請求項2】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが25個以下のヌクレオチドである請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが20個のヌクレオチドである請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号1で示される配列からなる請求項1から3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエート化されたオリゴヌクレオチドである請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記急性骨髄性白血病が、難治性急性骨髄性白血病または再発した急性骨髄性白血病である請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記医薬が、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを3mg/kg/日から5mg/kg/日の用量で前記患者に提供するために配合される請求項1から6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記医薬が、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを3.5mg/kg/日の用量で前記患者に提供するために配合される請求項1から7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記医薬が、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを5mg/kg/日の用量で前記患者に提供するために配合される請求項1から7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬が、全身投与用に配合される請求項1から9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記医薬が、静脈投与用に配合される請求項1から9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記シタラビンが、1500mg/m2/12時間から3000mg/m2/12時間の用量で前記患者に投与される請求項1から11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記シタラビンが、1500mg/m2/12時間から2000mg/m2/12時間の用量で前記患者に投与される請求項1から11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記シタラビンが、2000mg/m2/12時間から3000mg/m2/12時間の用量で前記患者に投与される請求項23に記載の使用。
【請求項15】
前記シタラビンが静脈内で投与される請求項1から14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
シタラビンと併用してヒト患者内の急性骨髄性白血病を治療するための医薬の製造における、配列番号1で示される配列よりなるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用であって、前記医薬が、静脈内投与用に配合され、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを3mg/kg/日から8mg/kg/日の用量で前記患者へ提供する使用。
【請求項17】
前記シタラビンが、1500mg/m2/日から3000mg/m2/日の用量で前記ヒトへの静脈内投与用に配合される請求項16に記載の使用。
【請求項18】
ヒト患者に3mg/kg/日から8mg/kg/日の用量を提供するのに有効な量の、配列番号1で示される配列を含む長さが35個以下のヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドと、薬学的に許容しうる担体とを含む用量単位製剤であって、前記用量は、シタラビンと併用して前記患者に投与された場合に、急性骨髄性白血病を治療するのに有効である用量単位製剤。
【請求項19】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、前記患者に3mg/kg/日から5mg/kg/日の用量を提供するのに有効な量である請求項18に記載の用量単位製剤。
【請求項20】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、前記患者に3.5mg/kg/日のアンチセンスオリゴヌクレオチドの用量を提供するのに有効な量である請求項18または19に記載の用量単製剤。
【請求項21】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、前記患者に5mg/kg/日のアンチセンスオリゴヌクレオチドの用量を提供するのに有効な量である請求項18または19に記載の用量単位製剤。
【請求項22】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが25個以下のヌクレオチドである請求項18から21のいずれか1項に記載の用量単位製剤。
【請求項23】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが20個のヌクレオチドである請求項18から21のいずれか1項に記載の用量単位製剤。
【請求項24】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号1で示される配列からなる請求項1
8から23のいずれか1項に記載の用量単位製剤。
【請求項25】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドがホスホロチオエート化されたオリゴヌクレオチドである請求項18〜24のいずれか1項に記載の用量単位製剤。
【請求項26】
前記用量単位製剤が、静脈内投与用に配合される請求項18から25のいずれか1項に記載の用量単位製剤。
【請求項27】
前記用量単位製剤が、注入可能な製剤である請求項18から25のいずれか1項に記載の用量単位製剤。
【請求項28】
前記シタラビンが、1500mg/m2/12時間から3000mg/m2/12時間の用量で前記患者に投与される請求項18から27のいずれか1項に記載の用量単位製剤。
【請求項29】
前記シタラビンが、1500mg/m2/12時間から2000mg/m2/12時間の用量で前記患者に投与される請求項18から28のいずれか1項に記載の用量単位製剤。
【請求項30】
前記シタラビンが、2000mg/m2/12時間から3000mg/m2/12時間の用量で前記患者に投与される請求項18から28のいずれか1項に記載の用量単位製剤。
【請求項31】
前記急性骨髄性白血病が、難治性急性骨髄性白血病または再発した急性骨髄性白血病である請求項18から30のいずれか1項に記載の用量単位製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2012−56961(P2012−56961A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261584(P2011−261584)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願2006−501413(P2006−501413)の分割
【原出願日】平成16年2月10日(2004.2.10)
【出願人】(507285717)ロールス セラペウティクス インク (1)
【氏名又は名称原語表記】Lorus Therapeutics Inc.
【住所又は居所原語表記】2 Meridian Road, Toronto, Ontario M9W 4Z7, Canada
【Fターム(参考)】