説明

リボン張力印加機構

本発明は、身分証明書類加工設備における加工作業に用いられるリボンに対する張力を維持するよう設計された機構を有する身分証明書類加工設備である。張力維持機構は、リボン用の供給ロールおよび巻き取りロールとは別体であるので、張力印加のために供給ロールまたは巻き取りロールに取り付けられるクラッチやブレーキが不要となる。張力維持機構が、供給ロールおよび巻き取りロールとは別体であるので、加工設備の使用中、供給ロールまたは巻き取りロールの慣性は、リボンの張力に影響しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、データカード・コーポレイシヨン名義のPCT国際出願として提出されており、かつ、2005年11月10日提出の「リボン張力印加機構」という名称の米国特許出願No.11/271,599の優先権を主張している。
【0002】
本発明は、身分証明書類加工設備においてリボンに張力を印加するための機構に関する。より詳細には、本発明は、身分証明書類加工設備におけるリボンの使用中にリボンの張力を維持するための機構、および、該張力維持機構を用いて残存リボン量を求めるための機構に関する。
【背景技術】
【0003】
身分証明書類はしばしば、身分証明書類に対するさまざまな加工作業を施すよう構成された加工設備において加工される。例えば、加工には、身分証明書類の意図される所持者に特有の情報を該書類に付加することが含まれてもよい。よく加工される身分証明書類の種類としては、金融カード(例えば、クレジットカードやデビットカード)、運転免許証、国籍証明カードおよびその他のカードといったプラスチックおよび複合材料カード、ならびに、旅券がある。
【0004】
身分証明書類の多量バッチ加工には、複数の加工モジュールを使用して複数の身分証明書類を同時に加工し、書類ごとの加工時間全体を削減するシステムが知られている。そのようなシステムとしては、例えば、米国特許第6,902,107号明細書および米国特許第6,783,067号明細書に開示されているシステム、ならびに、ミネソタ州ミネアポリスのデータカード・コーポレイシヨンから入手可能なDataCard MaxSys,9000およびDPL4000シリーズのシステムが挙げられる。
【0005】
身分証明書類のより少量の加工、例えば、一度に1つずつの加工には、デスクトップ加工機が知られている。デスクトップ加工機としては、例えば、それぞれミネソタ州ミネアポリスのデータカード・コーポレイシヨンから入手可能なSP75機およびSP55機ならびにDPL40機が挙げられる。
【0006】
身分証明書類加工設備では、多数のリボンを用いて書類が加工される。用いられるリボンには、多色印刷リボンおよび単色印刷リボン、ならびに、書類へのさまざまなトップコートおよび保護層の付与に用いられるウェブが含まれる。
【0007】
多くのリボンにおいて、リボンを用いる加工作業の結果を最適化するためにリボンに対して均一な張力を維持することが重要である。例えば、カードに感熱式印刷を施す際、印刷リボンに対して均一な張力を維持することが望ましく、これにより、リボンおよびカードの動きが均一となり、印刷品質の向上につながる。
【0008】
図1を参照して、カード加工設備において用いられる公知の印刷機10を模式的に示す。印刷機10は、プラスチックカード16に感熱式印刷を施す感熱式印刷ヘッドの形態のカード加工機構12を含む。裏当てローラの形態のプラテン14が、印刷ヘッド12に対向して位置しており、印刷中にカードを支持する。カードは、適切な駆動機構18、例えば、一対の駆動ローラによって印刷ヘッド12とプラテン14との間の間隙へと1枚ずつ運ばれる。供給ロール20は、印刷プロセス中に用いられる印刷リボン22を供給し、巻き取りロール24は、使用済みの印刷リボンを巻き取る。印刷リボン22は、複数のリボンガイド26により導かれながら、供給ロール20と巻き取りロール24との間のリボン経路をたどり、印刷ヘッド12を通過する。
【特許文献1】米国特許第6902107号明細書
【特許文献2】米国特許第6783067号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リボン22に張力を印加するためにクラッチまたはブレーキを供給ロールおよび巻き取りロールに取り付け、カードまたは供給ロールおよび巻き取りロールに対するリボンの進行速度または距離の差を解消する(account for)のが一般的である。クラッチ/ブレーキ28、30は、図1において供給ロールおよび巻き取りロールに破線で示している。クラッチ部品またはブレーキ部品は、供給ロールおよび巻き取りロールの軸に取り付けられることが多いので、リボンに伝えられる張力の量は、ロール上のリボンの量により大幅に変化する。一般に、リボンの動きを制御するために、巻き取り側で摩擦ローラを用いる。しかしながら、摩擦ローラは、リボンの方向が逆になるとリボンの正確な動きを妨げる。摩擦ローラはロールを緩めがちであり、かつ、摩擦ローラは滑る可能性があるからである。
【0010】
さらに、リボンは加工設備において消耗品であるので、どれほどのリボンが用いられたかを把握し、かつ、どれほどの残存リボンが用いられるかを監視できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、身分証明書類加工設備における加工作業に用いられるリボンに対する張力を維持するよう設計された機構を有する身分証明書類加工設備に関する。張力維持機構は、リボン用の供給ロールおよび巻き取りロールとは別体であるので、張力印加のために供給ロールまたは巻き取りロールに取り付けられるクラッチやブレーキが不要となる。
【0012】
張力維持機構が、供給ロールおよび巻き取りロールとは別体であるので、加工設備の使用中、供給ロールまたは巻き取りロールの慣性は、リボンの張力に影響しない。これにより、リボンを用いる加工作業の結果の品質を低下させることなく、より大きな供給ロールを用いることができる。身分証明書類加工設備が感熱式印刷機構を含む場合、均一なリボン張力と、供給ロールの慣性をリボンの動きとは無関係とすることとが、印刷中のリボンおよびカードの均一な動きの達成に役立ち、印刷品質の向上につながる。
【0013】
また、張力維持機構を用いて、供給ロール上に残存するリボンの量を示す供給ロールおよび/または巻き取りロールの直径を求めるのに役立てることもできる。そして、残存リボン量に関する情報を、システムコントローラに提供し、かつ/または、適切なメモリ装置、例えば、システムメモリまたは無線周波数認識タグのメモリに保存することができる。
【0014】
これに加えて、張力維持機構を用いて、供給ロール上のリボンの終端への到達時を求めるのに役立てることができる。供給ロール上の残存リボン量を監視できるので、システムは、リボンの終端が近づいているときが分かり、かつ、一旦リボンの終端に到達すると、張力維持機構の構成がこれを示す。
【0015】
発明の一側面において、身分証明書類に加工作業を施すことにより身分証明書類を加工するよう構成された書類加工機構と、モータにより駆動され、かつ、前記書類加工機構により用いられる消耗品のリボンを含む供給ロールと、使用済みリボンを巻き取る巻き取りロールと、前記供給ロールと前記巻き取りロールとの間を前記書類加工機構へと前記リボンが進行するリボン経路と、前記リボン経路に沿って前記リボンを導く複数のリボンガイドとを含む身分証明書類加工設備を提供する。前記供給ロールは、ブレーキ機構またはクラッチ機構に取り付けられていない。これに加えて、前記リボンガイドのうちの1つが、前記供給ロールと前記巻き取りロールとの間の前記リボン経路を変化させるために移動可能なように搭載されている。前記移動可能なリボンガイドが、前記供給ロールと前記巻き取りロールとの間の前記リボン経路の長さを減少させてもよい。
【0016】
また、ある実施形態において、前記移動可能なリボンガイドが、前記供給ロールに対してアームが旋回可能なように旋回可能に搭載された前記アームに搭載されたガイドを含んでいてもよい。前記アームは、前記供給ロールの中心軸から離れて搭載されていることが好ましい。これに加えて、弾性部材が、前記リボンに概ね一定の張力を印加するように前記リボンに接続されている。ある実施形態において、前記弾性部材が、前記リボンに概ね一定の張力を印加するように、前記移動可能なリボンガイドを弾性的に付勢するために前記移動可能なリボンガイドに接続されていてもよい。さらに、ある実施形態において、前記移動可能なリボンガイドが、直線移動のために搭載された滑動部に搭載されているガイドを含み、かつ、前記弾性部材が、前記滑動部に接続されている。前記移動可能なリボンガイドは、前記供給ロールと前記巻き取りロールとの間の前記リボン経路に位置している。ある実施形態において、移動可能なリボンガイドが、前記供給ロールと書類加工機構との間の前記リボン経路に位置していてもよい。
【0017】
発明の別の側面において、身分証明書類に加工作業を施すことにより身分証明書類を加工するよう構成された書類加工機構と、モータにより駆動され、かつ、前記書類加工機構により用いられる消耗品のリボンを含む供給ロールと、使用済みリボンを巻き取る巻き取りロールと、前記供給ロールと前記巻き取りロールとの間を前記書類加工機構へと前記リボンが進行するリボン経路と、前記リボン経路に沿って前記リボンを導く複数のリボンガイドとを含む身分証明書類加工設備を提供する。前記供給ロールは、ブレーキ機構またはクラッチ機構に取り付けられていない。前記リボンガイドのうちの1つが、前記供給ロールと前記巻き取りロールとの間の前記リボン経路に沿って、リボンに対する同一の張力を維持しつつ、前記リボンに供給された保護層を剥がすために移動可能なように搭載されている。これに加えて、弾性部材が、前記リボンに概ね一定の張力を印加するように前記リボンに接続されている。ある実施形態において、前記弾性部材が、前記リボンに概ね一定の張力を印加するように、リボンガイドを弾性的に付勢するために前記リボンガイドに接続されていてもよい。前記リボンガイドは、前記供給ロールと前記巻き取りロールとの間の前記リボン経路に位置している。ある実施形態において、前記リボンガイドが、前記供給ロールと書類加工機構との間の前記リボン経路に位置していてもよい。
【0018】
発明の別の側面において、身分証明書類加工設備においてリボンに対する張力を維持する方法を提供する。前記加工設備は、身分証明書類に加工作業を施すことにより身分証明書類を加工するよう構成された書類加工機構を有する。前記方法は、前記リボンを供給する供給ロールと巻き取りロールとの間のリボン経路に移動可能なリボンガイドを提供することを含む。ここで、前記移動可能なリボンガイドは、前記リボンと係合している。これに加えて、前記リボンに概ね一定の張力を印加するために前記リボンに弾性付勢力を印加する。ある実施形態において、前記リボンに概ね一定の張力を印加するために、前記移動可能なリボンガイドに前記弾性付勢力を印加してもよい。他の実施形態において、前記リボンに概ね一定の張力を印加するために、静止しているリボンガイドに前記弾性付勢力を印加してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、身分証明書類加工設備におけるリボンの使用中に身分証明書類加工設備におけるリボンの張力を維持するための機構、および、該張力維持機構を用いて残存リボン量を求めるための機構に関する。
【0020】
身分証明書類は、金融カード(例えば、クレジットカードやデビットカード)、運転免許証、国籍証明カードおよびその他のカードといったプラスチックおよび複合材料カード、ならびに、旅券であってもよい。書類加工設備は、これらの種類の書類の加工に用いられる設備であってもよい。身分証明書類に施される加工には、該書類の表面に1またはそれ以上の層を印刷および付与すること、例えば、該書類にトップコートおよび保護層を付与することが含まれてもよい。本明細書および請求項で用いられているリボンという語は、多色印刷リボンおよび単色印刷リボン、ならびに、書類へのさまざまなトップコートおよび保護層の付与に用いられるウェブを含むよう意図されている。
【0021】
カードの形態の身分証明書類に印刷作業を施す感熱式印刷機における多色印刷リボンに対する張力を維持するための張力維持機構について、本発明の一実施形態を説明する。旅券の形態の身分証明書類に保護層を付与するオーバーレイ機構におけるウェブに対する張力を維持するための張力維持機構について、本発明の別の実施形態を説明する。ここで説明する概念を用いて、他の種類の身分証明書類加工設備における他の種類のウェブの張力を維持できることが理解されるだろう。
【0022】
図2および図3を参照して、本発明に係るカード印刷機における感熱式印刷ステーションの供給側40を示す。供給側40には、これから用いられるある量の印刷リボン44を含む供給ロール42が含まれている。リボン44は、供給ロール芯46に設置されており、かつ、芯46は、ロール42を回転させる軸48に設置されている。軸48は、印刷機に搭載された基部56に回転可能に搭載されている。軸48は、ロール42からリボン44を繰り出すために軸48と駆動係合しているモータ50、例えば、ステッピングモータにより駆動されている。
【0023】
リボンガイド52は、ロール42の近傍に搭載され、リボンがロール42を離れる際の最初のリボンガイドとして機能している。ロール42に近接した検知機構54、例えば、フォトセルは、通常作業中にリボン44を検知する。検知機構54は、リボン44を検知しなければ、リボンの終端に到達したこと、または、リボンが断裂したことを印刷機に示す。
【0024】
図3にもっともよく示されているように、アーム58は、基部56上に旋回可能に搭載されている。アーム58は、印刷中にアーム58が旋回できるように基部56に旋回可能に取り付けられた第1端60と、第1端60の旋回軸を中心として旋回する第2端62とを含む。弾性部材、例えば、図3に示すバネ68は、リンク64を介してアーム58に力を印加して、図2に矢印で示す時計回り方向Aにアームを付勢する。
【0025】
リボンガイド66、例えば、アイドラーローラは、第2端62に取り付けられ、かつ、リボン44を導くためにそこから上向きに延在している。さらに、アーム58の底部は、そこから下向きに突出したタブ70を備えている。センサ72、例えば、フォトセルは、タブ70を検知することによりアーム58の移動を検出するために基部56上に備えられている。センサ72は、アーム58の原点を検出するために原点に位置している。アーム58が原点から引き離されるにつれて、公知の長さのリボンが巻き取りロール上に巻き付けられる。そして、アームをその原点へ戻すのに必要な供給モータステップの数を用いて、使用済みリボンの量を把握することができる。
【0026】
図2に1つが示されているさらなる複数のリボンガイド68と、図1に示した配置と概ね同様の感熱式印刷ヘッドおよび巻き取りロールとが、供給側40とともに機能する。
【0027】
印刷作業中、カードおよびリボン44はともに移動して、印刷パス中に印刷ヘッドを通過する。印刷中にロール42を移動させるのではなく、巻き取りロールが印刷ヘッドを通過したリボン44を引き寄せるので、アーム58は、印刷中に図2の矢印B方向に旋回する。B方向へのアーム58の旋回により、供給ロール42と巻き取りロールとの間のリボン経路が変化し、これにより、印刷パス中に印刷リボンが印刷ヘッドへ送られる。本実施形態において、B方向へのアーム58の旋回移動により、供給ロール42と巻き取りロールとの間のリボン経路の長さは減少する。同時に、A方向へのアーム58に対する弾性付勢力により、リボン44への張力が一定に維持される。
【0028】
印刷中に供給ロール42は移動しないので、供給ロールの慣性により影響を受ける供給ロールの動きは、印刷中にリボンの張力には影響しない。印刷リボンに対する均一な張力のため、印刷ヘッドを通過するリボンおよびカードの均一な動きが達成され、これがより高品質の印刷につながる。これにより、より大きな供給ロールを用いることができ、印刷品質を低下させることなく供給ロールの交換頻度を低減することができる。
【0029】
さらに、この設計により、供給ロール42上に残存するリボンの量を求めることができる。各印刷パスの後、モータ50は、供給ロール42を回転させて、追加のリボンを繰り出す。同時に、リンク64に作用する付勢バネ68が、アーム58を、センサ72により検出される原点へと旋回させる。モータ50は、軸48とリボン44を繰り出す供給ロール42とを回転させることができ、これにより原点へ戻るアーム58の回転が可能となる。モータ50がステッピングモータである場合、原点へ戻るアーム58の回転に要するステップの数NSと、1プロセスサイクル中に供給ロールから抜き取られるリボンの長さLPとを用いて、以下の等式により供給ロール42の直径を求めることができる。
【0030】
P=XCS=(NS/NT)(πDS)またはDS=LPT/πNS、ここで
Pは、プロセス中に供給ロールから抜き取られるリボンの長さであり、
Xは、ステップに換算した供給ロールの1回転の割合であり、
Sは、供給ロールの外周長であり、
Sは、供給ロールの直径であり、
Sは、アームをその原点へ戻すのに必要なモータのステップ数であり、
Tは、供給軸を1回転させるのに要するモータのステップである。
【0031】
一旦直径を計算すると、ロール上に残存しているリボンは、等式%R=(DS2−DE2)/(DF2−DE2)により求めることができる。ここで、
Rは、供給ロール上に残存しているリボンの百分率であり、
Sは、供給ロールの直径であり、
Eは、空の供給ロールの直径であり、
Fは、満載の供給ロールの直径である。
【0032】
そして、ロール上に残存しているリボンに関する情報を、印刷機コントローラに提供することができ、かつ/または、該情報を、ロール42に固定された(図2において模式的に示されている)無線周波数認識タグ78におけるメモリといった適切な記憶装置に保存することもできる。ロール上の無線周波数認識タグを位置合わせし、無線周波数認識タグにデータを書き込む例は、米国特許出願公開2003/0128269に記載されている。
【0033】
図4に他の実施形態を示す。本図は、旅券加工設備に用いるオーバーレイ機構100を模式的に示している。オーバーレイ機構100は、旅券のシートに保護層を付与するよう設計されている。保護層は、リボンまたはウェブ102上に供給される。このオーバーレイ機構において、旅券およびリボンは、保護層の付与中静止しており、これは、印刷中にリボンおよびカードが移動する図2および図3に関して説明したカード印刷機とは対照的である。旅券シートに対する保護層の付与に用いられる加工機構150を図4に模式的に示す。旅券のシートに保護層を付与するためのオーバーレイ機構の構成および動作は、当業者によく知られている。
【0034】
オーバーレイ機構100は、これから用いられるある量のリボン102を含む供給ロール104を含む。リボン102は、供給ロール芯(図示せず)上に設置されており、かつ、芯は、ロール104を回転させるための軸106上に設置されている。軸106は、ロール104からリボン102を繰り出すために軸106と駆動係合している(破線で示した)モータ108、例えば、ステッピングモータにより駆動される。
【0035】
巻き取りロール110は、使用済みリボン102を巻き取る。巻き取りロール110は、(破線で示した)モータ114、例えば、ステッピングモータにより駆動される軸112上に設置されている。
【0036】
複数のリボンガイド116は、リボン102をリボン経路に沿って導くよう機能する。リボンガイドのうちの1つ116Aは、図4の矢印により示されたA方向およびB方向に移動可能な滑動部118上に搭載されている。滑動部118は、オーバーレイ機構100における固定構造体122と係合して滑動部118を滑動支持するローラ120を含む。弾性部材124、例えば、コイルバネは、一端で滑動部118と、その反対端でオーバーレイ機構100における固定構造体126と接続されている。弾性部材124は、リボン102に対して一定の張力を維持するために、滑動部をA方向に付勢している。第1センサ128および第2センサ130は、滑動部118の移動を検知するよう設けられている。
【0037】
リボン102は、旅券への保護層の付与中は動かないので、滑動部118は、付与中実質的に静止しており、かつ、リボンに一定の張力を印加している。これにより、供給ロール104および巻き取りロール110のクラッチおよび/またはブレーキが不要となる。これらのロールは、クラッチまたはブレーキを通じてではなくモータ108およびモータ114によって直接駆動されているので、リボン102の位置合わせのためにロール104、110のいずれかを前へ移動させるか、または、逆向きにしてもよい。
【0038】
加工機構150に対して必要な位置へリボンを移動させた後、滑動部118が所定の位置へ移動するように、モータ108およびモータ114のいずれかまたは両方を用いることにより、リボン102の張力の量を制御する。より強い張力が望まれる場合は、モータ108およびモータ114の一方または両方を作動して、滑動部118を図4の右側へ移動させて、より大きな張力を得る。弾性部材124は、滑動部118がセンサ128の位置に来るとリボン102に印加される張力が小さくなり、かつ、滑動部118がセンサ130の位置に来るとリボン102に印加される張力が大きくなるように構成することができる。
【0039】
図5および図4を参照して、図4に示されている実施形態を用いて、供給ロール104および巻き取りロール110の大きさ、例えば、直径を求めることができる。図5Aのようにセンサ128の位置にある滑動部118から始めると、巻き取りロール110を反時計回りに回転し、リボン102を進める。これとともに、供給ロール104を固定する。この結果、リボン経路が変化し、これにより、滑動部118が図5Bに示されているように右側へ移動する。巻き取りロール110が反時計回りに回転させられているとき、リボン経路の長さは減少し、これにより、滑動部118が右側へ移動する。滑動部118がセンサ130の位置に来るまで、リボン102を進める。モータ114がステッピングモータである場合、センサ128からセンサ130への滑動部118の移動に必要なステップの数を数える。そして、巻き取りロール110の直径を、以下の等式により求める。
【0040】
T=LSR÷πNS ここで
Tは、巻き取りロールの直径であり、
Sは、滑動部がセンサ128とセンサ130との間を進行する際のリボンの移動距離であり、
Rは、ロールを360度回転させるのに必要なステップの数であり、
Sは、数えられたステップの数である。
【0041】
供給ロール104の直径を求めるために、次いで、図5Cに示すように、巻き取りロール110を固定したまま、供給ロール104を反時計回りに回転させる。これにより、リボン102の張力が低下し、滑動部118が左側へ戻ることができる。滑動部118が再度センサ128の位置に来るまで、供給ロール104を回転させる。モータ108がステッピングモータである場合、ステップの数を数える。そして、以下の等式により直径を計算する。
【0042】
S=LSR÷πNS ここで
Sは、供給ロールの直径であり、
Sは、滑動部がセンサ128とセンサ130との間を進行する際のリボンの移動距離であり、
Rは、ロールを360度回転させるのに必要なステップの数であり、
Sは、数えられたステップの数である。
【0043】
また、図4の実施形態を用いて、供給ロール上のリボンの終端に到達したことを求めることもできる。図6Aを参照して、巻き取りロール110と供給ロール104の両方を反時計回りに回転させて、滑動部を概ね静止させたままリボン102を進める。図6Bに示すように、一旦リボンの終端に到達すると、供給ロールが引き続き回転しても、図6Bに示す点を過ぎて追加のリボンが繰り出されることはない。巻き取りロール110が引き続き回転しているので、滑動部118は、センサ128から移動せざるを得ない。滑動部118がセンサ128から離れるとすぐに、巻き取りロール110の回転を停止する。供給ロール104が引き続き回転することにより、リボンが引き戻され、図6Cに示すように滑動部118がセンサ130の位置に来るよう移動する。この一連の移動は、ロールの終端に到達したことを知らせるものである。
【0044】
図7A〜図7Cは、図4に示した機構の変形例を示す。図4の機構における構成要素に対応する構成要素には、同じ参照番号を付している。図7A〜図7Cに示す実施形態においては、滑動部118は機構の左上に移動されている。左上のリボンガイド116は、滑動部118に搭載され、かつ、リボン102は、供給ロール104から第1リボンガイド116への概ね直線状の経路で延在している。図7Aは、原点に位置する滑動部118を示している。図7Bは、あるセンサから他のセンサへ滑動部118が進行した、測定位置にある滑動部を示している。図7Cは、進行位置の終端にある滑動部118を示している。本実施形態において、滑動部118の位置および進行のため、(図7A〜図7Cには示していない)加工機構150を、供給ロール104と第1リボンガイド116との間に位置させることもできる。それ以外は、図7A〜図7Cにおける機構の構成および動作は、図4に示した実施形態の構成および動作と同様である。
【0045】
図8は、図4に示したオーバーレイ機構のさらに別の変形例を示す。図4の機構における構成要素に対応する構成要素には、同じ参照番号を付している。本実施形態においては、リボン102に対する張力を維持しつつ、リボン102に供給された保護層を剥がす手段が提供される。以下に別段の定めのない限り、図8における機構の構成および動作は、図4に示した実施形態の構成および動作と同様である。
【0046】
図8において描写されているように、リボン102は、矢印132で描写されているリボン経路に沿って供給ロール104から巻き取りロール110へ進行する。1つ以上の静止リボンガイド120、例えば、ローラが設けられてリボンを導き、かつ、リボンガイド120は、弾性的に付勢されて、リボン102に対して概ね一定の張力を両方向矢印により示されているD方向に印加する。リボン102の経路沿いには、滑動部(図示せず)に搭載された保持部(図示せず)に連結されている2つの第1リボンガイド116が存在する。保持部は、駆動手段(図示せず)に接続されている。滑動部により、図8の矢印により示されているC方向およびD方向に沿って、リボンガイド116が前後に移動できる。滑動部の駆動手段は、供給ロール104の駆動に用いられる駆動手段および巻き取りロール110の駆動に用いられる駆動手段とは別体である。
【0047】
オーバーレイ材料が旅券に転写された後または転写中に、第1リボンガイド116をD方向に右側へ駆動して、オーバーレイ材料をリボン102から剥がすことができる。図8の破線は、リボンガイド116の移動と、オーバーレイ材料をリボン102から剥がすことができるリボン102のリボン経路の変化とを示している。この構成において、剥がし操作が行われている間、リボン102の張力を制御し、かつ、独立して維持してもよい。さらに、保護層の旅券への転写が完了する前に、保護層をリボン102から剥がし始めてもよい。また、本実施形態は、剥がし操作が行われているとき、保護層をリボン102から剥がすための角度を同一に維持する。
【0048】
さらなる実施形態、および、ここに説明した発明概念と一致した変更を行うことができる。例えば、弾性機構は、バネ以外またはバネと組み合わせた弾性機構、例えば、1つ以上のゴム弾性部材とすることができる。供給ロールおよび巻き取りロールの駆動に用いられるモータは、使用者がモータの回転量を求めることができるいかなる種類のモータであってもよい。センサは、アームまたは滑動部の移動を監視可能ないかなる種類のセンサであってもよい。リボン誘導機構は、ローラもしくは固定ピン、または、両者の組み合わせであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、書類加工設備の公知の印刷機構を模式的に示す図である。
【図2】図2Aは、旋回アームが原点に位置する、本発明に係るリボン張力印加機構を含む印刷ステーションの供給側の上面図である。図2Bは、図2Aと同様であるが、印刷パスの終わりで旋回アームが旋回して原点から離間している上面図である。
【図3】図3は、図2の印刷ステーションの供給側の斜視図である。
【図4】図4は、リボン張力印加機構の他の実施形態を含む書類加工設備において用いられるオーバーレイモジュールの上面図である。
【図5】図5A〜図5Cは、ロール直径を求めるための、図4のリボン張力印加機構の使用を示す図である。
【図6】図6A〜図6Cは、ロールの終端への到達時を求めるための、図4のリボン張力印加機構の使用を示す図である。
【図7】図7A〜図7Cは、図4に示すリボン張力印加機構の変形例を示す図である。
【図8】図8は、図4に示すリボン張力印加機構のさらに別の変形例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身分証明書類に加工作業を施すことにより身分証明書類を加工するよう構成された書類加工機構と、
駆動モータにより駆動され、かつ、前記書類加工機構により用いられる消耗品のリボンを含む供給ロールと、
使用済みリボンを巻き取る巻き取りロールと、
前記供給ロールと前記巻き取りロールとの間を前記書類加工機構へと前記リボンが進行するリボン経路と、
前記リボン経路に沿って前記リボンを導く複数のリボンガイドとを含む身分証明書類加工設備であって、
前記リボンガイドのうちの1つが、前記供給ロールと前記巻き取りロールとの間の前記リボン経路を変化させるために移動可能なように搭載されており、弾性部材が、前記リボンに概ね一定の張力を印加するために前記リボンに接続されており、前記移動可能なリボンガイドが、前記供給ロールと前記巻き取りロールとの間の前記リボン経路に位置しており、かつ、
前記供給ロールが、ブレーキ機構またはクラッチ機構に取り付けられていないことを特徴とする身分証明書類加工設備。
【請求項2】
前記弾性部材が、前記リボンに概ね一定の張力を印加するように、静止しているリボンガイドを弾性的に付勢するために前記静止しているリボンガイドに接続されている請求項1に記載の身分証明書類加工設備。
【請求項3】
前記弾性部材が、前記リボンに概ね一定の張力を印加するように、前記移動可能なリボンガイドを弾性的に付勢するために前記移動可能なリボンガイドに接続されている請求項1に記載の身分証明書類加工設備。
【請求項4】
前記移動可能なリボンガイドが、直線移動のために搭載された滑動部に搭載されているガイドを含み、かつ、前記弾性部材が、前記滑動部に接続されている請求項1に記載の身分証明書類加工設備。
【請求項5】
前記滑動部の移動を検知するためのセンサをさらに含む請求項4に記載の身分証明書類加工設備。
【請求項6】
前記弾性部材が、前記リボン経路の長さを増加させる方向に前記滑動部を付勢する請求項4に記載の身分証明書類加工設備。
【請求項7】
前記移動可能なリボンガイドが、前記書類加工機構と前記供給ロールとの間の前記リボン経路に位置している請求項1に記載の身分証明書類加工設備。
【請求項8】
前記書類加工機構が印刷機を含み、かつ、前記リボンが印刷リボンを含む請求項1に記載の身分証明書類加工設備。
【請求項9】
前記書類加工機構がオーバーレイ機構を含み、かつ、前記リボンがオーバーレイ材料をその上に有するウェブ材料を含む請求項1に記載の身分証明書類加工設備。
【請求項10】
前記移動可能なリボンガイドが、前記供給ロールに対してアームが旋回可能なように前記供給ロールの中心軸から離間して旋回可能に搭載された前記アームに搭載されたガイドを含み、かつ、前記弾性部材が、前記アームに接続されている請求項1に記載の身分証明書類加工設備。
【請求項11】
前記弾性部材が、前記リボン経路の長さを増加させる方向に前記アームを付勢する請求項10に記載の身分証明書類加工設備。
【請求項12】
前記移動可能なリボンガイドが、2つのガイドを含む請求項1に記載の身分証明書類加工設備。
【請求項13】
身分証明書類に加工作業を施すことにより身分証明書類を加工するよう構成された書類加工機構を有する身分証明書類加工設備においてリボンに対する張力を維持する方法であって、
前記リボンを供給する供給ロールと巻き取りロールとの間のリボン経路において、前記リボンと係合した移動可能なリボンガイドを提供し、
前記リボンに概ね一定の張力を印加するために前記リボンに弾性付勢力を印加し、
加工作業の後、前記供給ロールを回転させて前記リボンを進めることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記リボンが、加工作業中に移動可能であり、かつ、前記移動可能なリボンガイドが、前記リボン経路の長さを減少させるように加工作業中に移動する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記リボンが、加工作業中に静止しており、かつ、前記移動可能なリボンガイドが、加工作業中に概ね静止している請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記リボンに概ね一定の張力を印加するために、前記移動可能なリボンガイドに前記弾性付勢力を印加する請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記リボン経路の長さを増加させる方向に、前記移動可能なリボンガイドに前記弾性付勢力を印加する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、残存リボン量を求める請求項13に記載の方法。
【請求項19】
残存リボン量を求めることは、前記供給ロール上に残存するリボンの量を求めることを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
さらに、前記供給ロール上の前記リボンの終端に到達したことを求める請求項13に記載の方法。
【請求項21】
身分証明書類に加工作業を施すことにより身分証明書類を加工するよう構成された書類加工機構を有する、消耗品のリボンを用いる身分証明書類加工設備において前記消耗品のリボンの使用を把握する方法であって、
前記リボンを供給する供給ロールと巻き取りロールとの間のリボン経路において、前記リボンと係合しており、かつ、加工作業において前記リボンが用いられるとともに移動する移動可能なリボンガイドを提供し、
前記移動可能なリボンガイドの移動の程度に少なくとも部分的に基づいて残存リボン量を求め、
前記身分証明書類加工設備に設置されている無線周波数認識タグに残存リボン量についての情報を記憶させることを特徴とする方法。
【請求項22】
残存リボン量についての情報を記憶させることは、前記リボン供給ロールの直径を求め、残存リボンを計算し、前記無線周波数認識タグに該情報を記憶させることを含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
残存リボンを定期的に再計算し、前記タグに現在の情報を更新する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記無線周波数認識タグが、前記供給ロールに固定されている請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−515735(P2009−515735A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540309(P2008−540309)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/060563
【国際公開番号】WO2007/059388
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(504012756)データカード・コーポレイシヨン (15)
【Fターム(参考)】