説明

リポカリン突然変異タンパク質の制御放出製剤

【課題】リポカリンの突然変異タンパク質の治療応用に対する適合性をさらに改善するために、これらのリポカリン突然変異タンパク質の制御送達を可能にし、in vivo半減期を延長させ、突然変異タンパク質の免疫原性を低下させ、及び/又は突然変異タンパク質のバイオアベイラビリティを向上させる組成物及び製剤を有することが望ましい。本発明の目的は、このような要求を満たすリポカリン突然変異タンパク質の共役物及び製剤を提供する。
【解決手段】ヒト涙リポカリン(hTLc)突然変異タンパク質では、ヒトMet受容体チロシンキナーゼ(c−Met)又はそのフラグメントに対して検知可能な結合親和性を有し、突然変異タンパク質は、配列番号49のアミノ酸配列、又は配列番号49に示されるアミノ酸配列に対して85%配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリマーと組み合わされたリポカリン突然変異タンパク質の制御放出のための医薬組成物又はその共役物(コンジュゲート)に関する。本発明は、さらにリポカリン突然変異タンパク質及びその共役物の制御送達のための方法に関し、制御放出製剤の製造方法及びそれにより製造された製剤に関する。最後に、本発明は、対象者に投与する際、本発明にかかる製剤のリポカリン突然変異タンパク質の制御送達のための使用と、リポカリン突然変異タンパク質のin vivo半減期を延長するための使用と、リポカリン突然変異タンパク質のバイオアベイラビリティを向上させるための使用と、リポカリン突然変異タンパク質の免疫原性を低下させるための使用とを対象にするとともに、本発明にかかる製剤のそれを必要とする対象者への投与が含まれる疾患又は障害の治療方法を対象にする。
【背景技術】
【0002】
リポカリンタンパク質ファミリーのメンバー(非特許文献1)は、一般的に、それらが有する様々な異なる分子認識特性、すなわち、疎水性分子(例えば、レチノイド、脂肪酸、コレステロール、プロスタグランジン、ビリベルジン、フェロモン、味物質、及びにおい物質など)を主とする様々な物質に結合する能力と、特異的な細胞表面受容体に結合する能力と、高分子複合体を形成する能力とによって特徴付けられる低分子分泌タンパク質である。それらは、以前は主として輸送タンパク質として分類されたが、現在では、そのリポカリンは様々な生理的機能を果たすことが明らかである。それらの生理機能には、レチノール輸送、嗅覚、フェロモンシグナル伝達、及びプロスタグランジンの合成における役割を含む。また、リポカリンは、免疫応答の調節及び細胞ホメオスタシスの仲介にも関与している(例えば、非特許文献2において概説されている)。
【0003】
リポカリンは、非常に低いレベルの全体的な配列保存性を共有し、20%未満の配列同一性を有することが多い。著しく対照的に、それらの全体的なフォールディングパターンは、高度に保存されている。リポカリン構造の中心部は、それ自体で後ろが閉鎖された単一の8本の逆平行β−シートからなり、連続的に水素結合したβ−バレルを形成している。β−バレルの一端は、その底面を横切るN末端ペプチドセグメント、及びβ鎖を連結する3つのペプチドループによって立体的に閉鎖される。β−バレルの他端は、溶媒に対して開放しており、かつ、4つのペプチドループによって形成される標的結合部位を包み込んでいる。他の剛直なリポカリン骨格におけるこのループの多様性は、それぞれ、異なるサイズ、形態、及び化学的特性の標的に適合できる様々な異なる結合様式を生じる(例えば、非特許文献3において概説される)。
【0004】
リポカリンファミリーのメンバーは、リポカリンファミリーのメンバーは、定義されたリガンド結合特性を有するタンパク質に関する研究の対象となった。特許文献1には、4つのペプチドループの領域内に突然変異したアミノ酸位置を有するリポカリンファミリーのポリペプチドが開示されている。この4つのペプチドループは、結合ポケットを囲んだ円筒状β−バレル構造の末端に配置され、Pieris brassicaeのビリン結合タンパク質のアミノ酸位置28〜45、58〜69、86〜99、及び114〜129を含む直鎖状ポリペプチド配列中のそれらのセグメントに対応している。
【0005】
特許文献2には、ジゴキシゲニンと特異的に結合するビリン結合タンパク質の突然変異タンパク質が開示されている。一方、特許文献3及び特許文献4には、それぞれ、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン及びアポリポタンパク質Dの突然変異タンパク質に関するものが開示されている。リポカリン変異型のリガンド親和性、特異性、及びフォールディング安定性をさらに改善して微調整するために、余分なアミノ酸残基の置換などの、リポカリンファミリーの異なるメンバーを用いた異なる様々なアプローチが提案されている(非特許文献4)。また、特許文献5には、特許文献5には、低いナノモル範囲においてCTLA−4に対する結合親和性を有するヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン突然変異タンパク質が開示されている。
【0006】
特許文献6には、異なる又は同一の標的リガンドに対して少なくとも1つの結合部位を有する涙リポカリンの突然変異タンパク質が開示されており、また、このようなヒト涙リポカリンの突然変異タンパク質を生成する方法が提案されている。特許文献6によれば、特定のアミノ酸は、涙リポカリンの一次配列において伸長している。特に、所定のリガンドに対して高い結合親和性を有する突然変異タンパク質を生成するために、成熟ヒト涙リポカリンのアミノ酸7〜14、24〜36、41〜49、53〜66、69〜77、79〜84、87〜98、及び103〜110が含まれるループ領域は突然変異誘発を受ける。その結果、突然変異タンパク質は、ナノモル範囲において、選択されたリガンド(KD)に対して、ほとんどの場合に100nM未満である結合親和性を有する。
【0007】
特許文献7には、IL−4受容体、並びにVEGF及びVEGF受容体が含まれる非天然型リガンドに対して、少なくとも1つの結合部位を有するヒト涙リポカリンの突然変異タンパク質が開示されており、また、このようなリポカリン突然変異タンパク質を製造する方法が提案されている。本願には、ヒト涙リポカリンの一次配列において伸長している特定のアミノ酸配列は、所定の標的に対して高い結合親和性を有する突然変異タンパク質を生成するために、突然変異誘発を受けることができることが開示されている。報告された結合親和性は、ナノモルの範囲にある。突然変異した位置は、ループ領域にあるとともに、天然成熟ヒト涙リポカリンの直鎖状ポリペプチド配列における、アミノ酸配列位置26〜34、56〜58、80、83、104〜106、及び108のいずれかでの少なくとも1つの突然変異と、天然成熟ヒト涙リポカリンの直鎖状ポリペプチド配列における、いずれかのアミノ酸配列位置61及び153での少なくとも1つの突然変異とを含む。また、開示された突然変異タンパク質は、天然成熟ヒト涙リポカリンの直鎖状ポリペプチド配列における、アミノ酸配列位置34、80、及び104のいずれかでの少なくとも1つの突然変異を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第1999/16873号
【特許文献2】国際公開第2007/5308号
【特許文献3】国際公開第2003/029463号
【特許文献4】国際公開第2003/029471号
【特許文献5】国際公開第2006/56464号
【特許文献6】国際公開第2005/19256号
【特許文献7】国際公開第2008/015239号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Pervaiz、S.、and Brew、K.(1987)FA SEB J、1、209−214
【非特許文献2】Flower、D. R. (1996) Biochem. J . 318、1−14 and Flower、D.R. et al.(2000 )B iochim、Biophys.Acta 1482、9−24
【非特許文献3】Flower、D. R. (1996)、supra; Flo wer、D. R. et al.(2000)、supra、or Skerra 、A.(2000) Biochim. Biophys. Acta 1482、 337−350
【非特許文献4】Skerra, A.(2001)Rev. Mol. Biot echnol. 74, 257−275; Schlehuber, S., a nd Skerra, A.(2002) Biophys.Chem. 96, 213−228
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
リポカリンの突然変異タンパク質の治療応用に対する適合性をさらに改善するために、これらのリポカリン突然変異タンパク質の制御送達を可能にし、in vivo半減期を延長させ、突然変異タンパク質の免疫原性を低下させ、及び/又は突然変異タンパク質のバイオアベイラビリティを向上させる組成物及び製剤を有することが望ましい。
【0011】
したがって、本発明の目的は、このような要求を満たすリポカリン突然変異タンパク質の共役物及び製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、独立請求項に記載の特徴を有する共役物、医薬製剤、及び制御放出製剤によって達成される。
【0013】
第1の態様において、本発明は、リポカリン突然変異タンパク質と、タンパク質、タンパク質ドメイン、ペプチド、脂肪酸、脂質、多糖類及び/又は有機高分子からなる群より選択される部分とが含まれる共役物を提供している。
【0014】
1つの実施形態において、その共役物は、リポカリン突然変異タンパク質、並びにタンパク質、タンパク質ドメイン、ペプチド、脂肪酸、脂質、多糖類及び/又は有機高分子の部分を含むか、実質的にそれらの部分からなるか、又はそれらの部分からなる。その部分は、例えばグリコペプチド、脂質で修飾されたペプチド及びタンパク質、糖脂質、アルキル化多糖類のような有機基で修飾された多糖類などの前述化合物の組合せを含んでもよい。
【0015】
本発明の1つの実施形態において、リポカリン突然変異タンパク質と、タンパク質、タンパク質ドメイン、ペプチド、脂肪酸、脂質、多糖類及び/又は有機高分子からなる群より選択される部分と、それらの組合せとは、共有結合によって互いに結合している。この結合は、リポカリン突然変異タンパク質のN−末端若しくはC−末端、又はアミノ酸側鎖のN−末端若しくはC−末端を介して形成されてもよい。1つの特定の実施形態において、その結合は、例えばシステイン残基又はリジン残基のような突然変異したアミノ酸残基を介して形成されている。
【0016】
本発明にかかる共役物において、その部分は、リポカリン突然変異タンパク質の制御送達を促進し、リポカリン突然変異タンパク質のin vivo半減期を延長し、リポカリン突然変異タンパク質のバイオアベイラビリティを向上させ、及び/又はリポカリン突然変異タンパク質の免疫原性を低下させることができる。
【0017】
血清半減期を延長する部分は、数例のみを挙げると、親水性ポリマー、パルミチン酸(Vajo&Duckworth2000、Pharmacol、Rev.52、1−9を参照)のような脂肪酸分子、免疫グロブリンのFc部分、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン又はそのフラグメント、アルブミン結合ペプチド又はアルブミン結合タンパク質、ユビキチン、ユビキチン由来ペプチド、ランスフェリンであってもよい。
【0018】
アルブミン結合タンパク質は、細菌性アルブミン結合タンパク質、抗体、ドメイン抗体を含む抗体フラグメント(例えば、米国特許第6,696,245号を参照)、又はアルブミンに対して結合活性を有するリポカリン突然変異タンパク質であってもよい。したがって、本発明におけるリポカリン突然変異タンパク質の半減期を延長するための好適な接合相手は、アルブミン(Osborn、B.L. et al.(2002) Pharmacokinetic and pharmacodynamic studies of a human serum albumin−interferon−alpha fusion protein in cynomolgus monkeys J. Pharmacol. Exp. Ther. 303、540−548を参照)、又はアルブミン結合タンパク質、例えば連鎖球菌性プロテインG結合ドメインのような細菌性アルブミン結合ドメイン(Koenig、T. and Skerra、A. (1998) Use of an albumiN−binding ドメイン for the selective immobilisation of recombinant capture antibody fragments on ELISA plates. J. Immunol. Methods 218、73−83を参照)であってもよい。接合相手として用いられるアルブミン結合ペプチドの他の例は、例えば、米国特許出願第2003/0069395号又はDennisら(Dennis,M.S.,Zhang,M.,Meng,Y.G.,Kadkhodayan,M.,Kirchhofer,D.,Combs,D.&Damico,L.A.(2002)“Albumin binding as a general strategy for
improving the pharmacokinetics of proteins.”J Biol Chem277,35035−35043を参照)に記載のような、Cys−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Cysという共通配列を有するものであってもよく、ここで、Xaa1はAsp、Asn、Ser、Thr、又はTrpであり、Xaa2はAsn、Gln、His、Ile、Leu、又はLysであり、Xaa3はAla、Asp、Phe、Trp、又はTyrであり、Xaa4はAsp、Gly、Leu、Phe、Ser、又はThrである。
【0019】
他の実施形態において、アルブミン自体又はアルブミンの生物学的活性フラグメントは、本発明にかかるリポカリン突然変異タンパク質の接合相手として用いられてもよい。「アルブミン」という用語は、ヒト血清アルブミン、又はウシ血清アルブミン、又はラットアルブミンのような全ての哺乳類アルブミンを含む。アルブミン又はそのフラグメントは、米国特許第5,728,553号、又は欧州特許出願EP0330451及びEP0361991に記載のように組換えて製造されてもよい。Novozymes Delta社(英国、ノッティンガム)の組換えヒトアルブミン(Recombumin(登録商標))は、突然変異タンパク質の半減期を延長するために、リポカリン突然変異タンパク質に接合又は融合してもよい。
【0020】
アルブミン結合タンパク質が抗体フラグメントである場合は、ドメイン抗体であってもよい。ドメイン抗体(dAbs)は、最適安全性及び有効性製品特性(efficacy
product profile)が付与されるために、生物物理学的特性及びin vivo半減期に対する精密制御を可能にするように操作される。ドメイン抗体は、例えば、Domantis社(英国ケンブリッジ及び米国マサチューセッツ州)から市販品として入手することができる。
【0021】
本発明にかかる突然変異タンパク質の血清半減期を延長する部分としてトランスフェリンを使用する場合、突然変異タンパク質は、非グリコシル化トランスフェリンのN−末端及びC−末端の少なくとも一方に遺伝的に融合することができる。非グリコシル化トランスフェリンは、14日〜17日の半減期を有し、また、トランスフェリン融合タンパク質は、さらに、高いバイオアベイラビリティ、体内分布、及び循環安定性を提供している。この技術は、BioRexis(米国ペンシルベニア州のBioRexis Pharmaceutical Corporation社)から市販品として入手することができる。タンパク質安定剤/半減期延長相手として用いられる組換えヒトトランスフェリン(DeltaFerrin(登録商標))は、さらに、Novozymes Delta社(英国ノッティンガム)から市販品として入手することができる。
【0022】
免疫グロブリンのFc部分が本発明にかかる突然変異タンパク質の血清半減期を延長する目的に利用される場合には、Syntonix Pharmaceuticals社(米国マサチューセッツ州)から市販品として入手可能なSyn融合(登録商標)の技術を用いてもよい。このFc融合技術を使用することによって、長時間作用型生物医薬品の生成を可能にし、また、薬物動態、溶解性、及び生産効率を改善するために、例えば抗体のFc領域に結合される突然変異タンパク質の2のコピーから構成されてもよい。
【0023】
さらに、本発明にかかる突然変異タンパク質の半減期を延長するためのもう1つの代替手段は、本発明にかかる突然変異タンパク質のN−末端又はC−末端に、長く不定形でフレキシブルなグリシンリッチな配列(例えば、約20個〜80個の連続的なグリシン残基を有するポリグリシン)を融合することである。国際公開第2007/038619号に開示されたこの手段は、例えば、用語「rPEG(組換えPEG)」等に示されている。
【0024】
ここで、用語「親水性ポリマー」とは、ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化されたグリセロール、及び類似したポリマーが含まれる任意の水溶性の直鎖型、分岐鎖型、三分枝型(forked)、分岐鎖−三分枝型、デンドリマー型(dendrimeric)、多腕型(multi−armed)、又は星状型のポリマーのことをいうが、これに限定されるものではない。好ましくは、このポリマーの分子量は、約300ダルトン〜約70,000ダルトンの範囲にあり、より好ましくは約500ダルトン〜約50,000ダルトンの範囲にあり、さらにより好ましくは約5,000ダルトン〜約30,000ダルトンの範囲にある。
【0025】
本発明に用いられる親水性ポリマーには、一般的に、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、リン酸塩、又はヒドロキシル基の機能を介して対象となる生物活性分子に結合するための少なくとも1つの反応基が組み込まれる。ポリエチレングリコールのような本発明に用いられる親水性ポリマーは、その一端がメトキシ基でキャップされるとともに、他端が生物活性分子における活性基と容易に接合するように活性化されるという標準プロトコルによって調製することができる。例えば、米国特許第6,113,906号は、タンパク質のアミノ基と反応するために、スクシンイミジルコハク酸エステル又はスクシンイミジル炭酸塩反応基がポリエチレングリコールの「U字形」(すなわち、分岐鎖型)の形で使用されることを説明している。米国特許第5,650,234号は、タンパク質のアミノ基と反応して安定的なウレタン結合を形成するために、ポリエチレングリコールのN−ヒドロキシベンゾトリアゾール炭酸塩、2−ヒドロキシピリミジン炭酸塩、及びN−ヒドロキシル−2−ピロリジノン炭酸塩誘導が使用されることを説明している。米国特許第5,672,662号は、タンパク質のアミノ基と反応して安定的なウレタン結合を形成するために、プロピオン酸及びブタン酸置換されたポリエチレングリコールのスクシンイミジルエステルが使用されることを説明している。米国特許第5,446,090号は、タンパク質のスルフヒドリル基と安定なチオエーテル結合を形成するために、ポリエチレングリコールのビニル−スルホン誘導体が使用されることを説明している。米国特許第5,880,255号は、タンパク質のアミノ基と反応して簡単でかつ安定的な第2級アミン結合を形成するために、ポリエチレングリコールのトレシル(2,2,2−トリフルオロエタン−スルホニル)誘導体が使用されることを説明している。米国特許第5,252,714号は、タンパク質のアミノ基と反応して安定な第2級アミン結合を形成するために、ポリエチレングリコールのプロピオンアルデヒド誘導体が使用されることを説明している。このような親水性ポリマーを生物活性分子に結合させることによって形成された結合は、安定又は不安定(すなわち、可逆的)にするように意図的に作られることができる。さらに、本発明に用いられる親水性ポリマーは、活性基の生物活性分子への接合が促進される、2つの類似(例えば、ホモ−二機能)又は非類似(例えば、ヘテロ−二機能)官能基を有する標準プロトコルによって調製することができる。例えば、国際公開第01/26692号は、タンパク質修飾のためのヘテロ−二機能のポリエチレングリコール誘導体が使用されることを説明している。これらの特許の全ての内容は、参照することにより本明細書に組み込まれている。
【0026】
例示的に、本発明にかかる共役物に用いられる親水性ポリマーは、ポリアルキレングリコール、ポリオキシエチル化されたポリオール、ヒドロキシエチルデンプン、ポリヒドロキシ酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びそれらの共重合体と、それらの直鎖型、分岐鎖型誘導体及び活性誘導体とをこのように含むが、これに限定されるものではない。
【0027】
このポリアルキレングリコールは、置換されたもの、非置換のもの、直鎖型又は分岐鎖型のものであってもよく、また、活性ポリアルキレン誘導体であってもよい。このポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン、及びポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体を含むが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明の1つの実施形態において、この親水性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)である。
【0029】
PEGとは、化学式HO−(CH2CH2O)n−Hで表される直鎖型又は分岐鎖型の中性ポリエーテルをいう。PEGは、水及び多くの有機溶媒(例えば、塩化メチレン、エタノール、トルエン、アセトン、及びクロロホルム)に対して高水溶性を有するとともに、様々なサイズ(分子量)及び官能性構造(例えば、アミノ基末端、カルボキシル基末端、及びスルフヒドリル基末端)で簡単に入手できる。PEGは無毒であることが判明しているとともに、その医薬品(非経口、局所応用、坐剤、スプレー式点鼻薬)、食品、及び化粧品への使用がFDAによって承認されている。PEGは溶液中において、それぞれのモノマー(エチレンオキシドユニット)が3個の水分子と結合することによって、高次に水和されたポリマーになっている。さらに、PEGは、より緩く結合した水和水分子における複数の分子層の構造に影響を与えるという能力を持っていると考えられている。単一の表面結合鎖の水における挙動にかかる分子シミュレーションによると、ポリマーは大きなセグメント屈曲性を示すことが分かる。したがって、ポリマーは水性環境において、大きな流体力学的体積を占めると考えられている。これらの研究結果は、PEGはその存在によって他のポリマー(天然及び合成)が排除されることに極めて有効である理由を説明するのに役立つ。他のポリマーの排除は、タンパク質を拒絶したり、他の合成ポリマーと二相系を形成したり、このポリマーに非免疫原性及び非抗原性を与えたりするというPEGの能力を支える主な原動力である。PEGはタンパク質と共有結合される場合、一般的に、ポリマーの有利な特性の多くを結果共役物に転送することがある。上記のような多くの有益な特性のため、PEGはタンパク質修飾によく適している。
【0030】
本明細書において、「PEG」という用語は、PEGのアミノ基反応性誘導体(「PEG試薬」)が含まれる任意のPEGポリマーを含有している。また、タンパク質共役に用いる様々なPEG試薬が知られている。典型的なPEG試薬は、エーテル結合(例えば、O−メチル)において終端となる一端と、反応基によって官能化される他端とを有する直鎖型PEGポリマーである。他のPEG試薬は、分岐鎖状又はデンドリマー状であって、さらにタンパク質と結合するための非反応性末端と反応性官能基との組合せを有する。また、類似又は非類似反応性官能基の組合せを有するホモ−二機能又はヘテロ−二機能のPEG試薬は、タンパク質との結合に用いられてもよい。
【0031】
PEG試薬の例としては、アルデヒドと、N−ヒドロキシスクシンイミジル炭酸塩と、N−ヒドロキシスクシンイミジルプロピオネートと、p−ニトロフェニル−炭酸塩と、N−マレイミジル基、N−スクシンイミジル基、チオール基、若しくはベンゾトリアゾール炭酸塩とによって終端されたPEGの種類、又は他のアミノ基反応性活性化されたPEGの種類を含むが、これに限定されるものではない。
【0032】
PEGポリマーは、例えば、300ダルトン〜70000ダルトンの範囲にある分子量を有する。反応性官能基はリンカー基によってPEG鎖から分離することができる。選択的に、そのポリマーは、PEGとリンカーとの間で分解性内部結合を有する。したがって、本発明の1つの実施形態において、PEGポリマーにおける反応基は、タンパク質求核剤と反応するために、求電子的に活性化されたものであってもよい。求電子基の例としては、N−ヒドロキシスクシンイミジル炭酸塩、トレシル及びアルデヒド官能基がある。これらの官能基を有するPEG試薬は、タンパク質のアミノ基と共有結合を形成するように反応する。タンパク質のアミノ基とのPEG共役のための好ましい。PEG試薬は、プロピオン酸リンカーmPEG−SPAのmPEGスクシンイミジル活性エステルである。他の好ましいPEG試薬は、モノメトキシPEG−アルデヒド(mPEG−Ald)である。
【0033】
適切なポリエチレングリコール(PEG)分子は、既に上記のように説明されている。さらなる例は、国際公開第 99/64016号、米国特許第6,177,074号、又は米国特許第6,403,564号においてインターフェロンに関して記載されたり、PEG修飾アスパラギナーゼ、PEGアデノシンデアミナーゼ (PEG−ADA)、又はPEGスーパーオキシドジスムターゼ(例えば,Fuertges et al.(1990)The Clinical Efficacy of Poly(Ethylene Glycol)−Modified Proteins J. Control.Release11,139−148を参照)のような他のタンパク質のために記載されたりしている。)。他の例は、例えば、米国特許第4,179,337号、米国特許第5,446,090号、及び米国特許第5,880,255号に記載されている。この分野において、このような結合は、明らかな分子量の増加、及び変性された治療用タンパク質(例えば、米国特許第5,320,840号を参照)に対する血中クリアランス速度の減少を引き起こす可能性があるとともに、免疫原性の低下、生分解性高分子薬物送達システムからの放出の継続時間の延長、非ペグ化(unPEGylated)薬物に関する生分解性薬物送達システムにおいて達成した薬物負荷の増加、及び非ペグ化薬物に関する薬物崩壊の低下(例えば、国際公開第02/036169号を参照)を引き起こす可能性もあることが知られている。これらの特許及び特許出願の内容は、本明細書において全体として参照することにより組み込まれる。
【0034】
ポリオキシエチル化されたポリオールは、ポリオキシエチル化されたグリセロール、ポリオキシエチル化されたソルビトール、ポリオキシエチル化されたグルコース、及びそれらのエステルのような誘導体を含むが、これに限定されるものではない。
【0035】
その活性誘導体は、アルデヒド、チオール、N−ヒドロキシスクシンイミド、スクシンイミド、マレイミド、PNP−カーボネート、及びベンゾトリアゾールによって終端された親水性ポリマーからなる群より選択されるアミノ基反応性誘導体を含んでもよい。1つの具体的な実施形態において、親水性ポリマーの活性化誘導体は、さらに突然変異タンパク質におけるシステイン残基の遊離チオール基と反応するマレイミド誘導体化されたPEGである。ここで、これらのシステイン側鎖がタンパク質において天然に存在してもよく、突然変異誘発により人工的に導入されてもよい。これらのチオール基を化学結合に利用できるようにするために、そのタンパク質は、シスチン架橋が形成されたシステイン残基を還元するための還元ステップを経ることがあってもよい。1つの実施形態において、このステップには、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、又はβ−メルカプトエタノールのような還元剤を用いてもよい。
【0036】
ポリマーの分子量は、約300ダルトン〜約70000ダルトンの範囲にあってもよく、例えば、約5、7、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、又は70キロダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールである。
【0037】
さらに、例えば米国特許第6,500,930号、又は米国特許第6,620,413号に記載されるように、デンプン又はヒドロキシエチルデンプン(HES)のような炭水化物の低重合体及びポリマーは、血清半減期を延長するために本発明の変異タンパク質に接合することができる。
【0038】
本発明にかかる共役物において、リポカリン突然変異タンパク質は、タンパク質のリポカリンファミリーに属するタンパク質のいずれかの突然変異タンパク質から選択されてもよい。例示的なリポカリンは、既に上記のように説明されており、また、レチノール結合タンパク質(RBP)、ビリン結合タンパク質(BBP)、アポリポタンパク質D(APO D)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、涙リポカリン(TLPC)、α2−ミクログロブリン−関連タンパク質(A2m)、24p3/ウテロカリン(24p3)、エブネル腺タンパク質1(VEGP1)、エブネル腺タンパク質2(VEGP2)、及び主要アレルゲンCan fl前駆体(ALL−I)。好ましいリポカリン突然変異タンパク質は、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)、ヒト涙リポカリン(hTLPC)、ヒトアポリポタンパク質D(APO D)、及びPieris brassicaeビリン結合タンパク質の突然変異タンパク質を含む。
【0039】
現在は涙リポカリン(TLPC又はTie;SWISS−PROT Data Bank受入番号P31025)と呼ばれるヒト涙プレアルブミンは、最初はヒト涙液の主要タンパク質として記載された(全タンパク質含量の約3分の1)が、最近はまた、前立腺、鼻粘膜及び気管粘膜を含むいくつかの他の分泌組織においても同定されている。相同タンパク質はラット、ブタ、イヌ及びウマで発見されている。
【0040】
ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL、Lcn2とも呼ばれ、SWISS−PROT Data Bank受入番号P80188)は、ヒト血漿に富んでいる178アミノ酸糖タンパク質である。ヒトLcn2の動物相同体は、ラットα2−ミクログロブリン−関連タンパク質(A2m;SWISS−PROT Data Bank受入番号P31052)、及びマウス24p3/ウテロカリン(24p3;SWISS−PROT Data Bank受入番号P11672)である。
【0041】
ヒトアポリポタンパク質D(Apo−D;SWISS−PROT Data Bank受入番号P05090)は、他のアポリポタンパク質配列と著しい類似性を持っていない高密度リポタンパク質の部分である。そのヒトアポリポタンパク質Dは、リポカリンとしても知られているが、血漿レチノール結合タンパク質、及び担体タンパク質のα2ミクログロブリンタンパク質スーパーファミリーにおける他のメンバーと高度の相同性を有する。
【0042】
ビリン結合タンパク質(BBP;SWISS−PROT Data Bank受入番号P09464)は、チョウPieris brassicaeに富んでいるブルー色素タンパク質である。
【0043】
本発明の1つの実施形態において、上記のリポカリン突然変異タンパク質は、ヒト涙リポカリン、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、ラットα2−ミクログロブリン−関連タンパク質、マウス24p3/ウテロカリン、ビリン結合タンパク質、ヒトアポリポタンパク質D、レチノール結合タンパク質、エブネル腺タンパク質1(VEGP1)、エブネル腺タンパク質2(VEGP2)、又は主要アレルゲンCan fl前駆体(ALL−I)のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%の配列相同性を有する。
【0044】
もう1つの実施形態において、リポカリン突然変異タンパク質は、ヒト涙リポカリン、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、ラットα2−ミクログロブリン−関連タンパク質、マウス24p3/ウテロカリン、ビリン結合タンパク質、ヒトアポリポタンパク質D、レチノール結合タンパク質、エブネル腺タンパク質1(VEGP1)、エブネル腺タンパク質2(VEGP2)、又は主要アレルゲンCan fl前駆体(ALL−I)のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%or95%の配列同一性を有する。
【0045】
ここで、「相同性」という用語は本明細書において使用される場合、その通常の意味であり、また、互いに比較される2つのタンパク質の直鎖状アミノ酸配列における同等の位置における、同一のアミノ酸、及び同類置換と見なされるアミノ酸(例えば、グルタミン酸残基のアスパラギン酸残基による置換)を含む。「同一性」又は「配列同一性」は、類似性又は関係を評価する配列の性質を意味する。「配列同一性」又は「同一性」という用語は本発明において使用される場合、問題になっている配列と本発明のポリペプチドの配列の(相同性)アラインメントに従った、これら2つの配列のより長いものにおける残基数について、ペアワイズ同一残基の割合を意味する。同一性は、同一の残基の数を残基の総数で割った結果を、100を掛けて測定される。
【0046】
配列相同性又は配列同一性の割合は、例えば、本明細書ではプログラムBLASTP、version blastp 2.2.5(November 16、2002;cf. Altschul、S. F. et al.(1997)Nucl. Acids
Res. 25、3389−3402を参照)を用いて決定されることができる。この実施形態において、相同性の割合は、ペアワイズ比較の参照としてヒトポカリン2を用いた、プロペプチド配列を含む全ポリペプチド配列のアラインメントに基づく(マトリックス:BLOSUM62;ギャップコスト:11.1;切り捨て値を10〜3に設定)。それは、BLASTPプログラムアウトプットでの結果として示される「陽性」(相同アミノ酸)の数を、アラインメントのためにプログラムによって選択されたアミノ酸の総数で除した割合として計算される。これに関して、この選択されたアミノ酸の総数はヒトリポカリン2の長さとは異なり得ることに注意すべきである。
【0047】
本発明にかかる共役物において、リポカリン突然変異タンパク質は、検出可能な親和性で所定の非天然標的と結合する。その標的は、タンパク質、タンパク質ドメイン、タンパク質フラグメント、又はペプチドであってもよい。
【0048】
本発明の1つの実施形態において、涙リポカリン突然変異タンパク質によって結合される標的は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGF−R2)、インターロイキン4受容体α鎖(IL−4Rα)、細胞傷害性Tリンパ球抗原−4(CTLA−4)、受容体チロシンキナーゼc−Met、又はそれらのフラグメントからなる群より選択されるタンパク質又はそのフラグメントである。また、リガンドとしては、VEGF−R2、IL−4Rα、CTLA−4若しくはc−Metの細胞外領域又はドメインも含まれる。そのリガンドは、哺乳動物由来のものが一般的である。1つの実施形態において、これらのリガンドはヒト由来のものであるが、いくつかの例示のみを挙げると、マウス、ラット、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、マーモセット、又はカニクイザル由来のものであってもよい。
【0049】
本発明にかかる共役物において、リポカリン突然変異タンパク質は、天然リポカリン結合ポケットを包囲する4つのペプチドループAB、CD、EF、及びGH中の任意の配列位置に少なくとも1つの突然変異したアミノ酸残基を含む。これらのループは、リポカリンの既知の結合部位を形成する(従って開放末端と呼ばれる)。ヒト涙リポカリン(hTLPC;SWISS−PROT Data Bank 受入番号P31025)において、ABループには天然成熟ヒト涙リポカリンの直鎖状ポリペプチド配列の位置24〜36を含み、CDループにはその位置53〜66を含み、EFループにはその位置69〜77を含み、GHループにはその位置103〜110を含む。これらの4のループの定義は、Flower(Flower、D. R.(1996)、上記を参照、及びFlower、D. R. et al.(2000)上記を参照)に従って本明細書中で用いられる。Pieris brassicaeのビリン結合タンパク質において、結合ポケットを包囲する円筒状β−バレル構造の末端に配置されているこれらの4つのペプチドループは、Pieris brassicaeのビリン結合タンパク質の直鎖状ポリペプチド配列のアミノ酸位置28〜45、58〜69、86〜99、及び114〜129が含まれる直鎖状ポリペプチド配列におけるセグメントに対応する。
【0050】
他の実施形態において、リポカリン突然変異タンパク質は、天然リポカリン結合ポケットを包囲する4つのペプチドループAB、CD、EF、及びGH中の任意の配列位置に、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21 、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、又は41の突然変異したアミノ酸残基を含む。
【0051】
さらに別の実施形態において、リポカリン突然変異タンパク質は、天然成熟ヒト涙リポカリン(SWISS−PROT Data Bank受入番号P31025)の直鎖状ポリペプチド配列の配列位置24〜36、53〜66、79〜84、及び103〜110に対応する任意の配列位置に、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40又は41の突然変異したアミノ酸残基を含む。好ましい実施形態において、リポカリン突然変異タンパク質は、天然成熟ヒト涙リポカリンの直鎖状ポリペプチド配列の配列位置26〜34、56〜58、80、83、104〜106及び108に対応する任意の配列位置に、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18突然変異したアミノ酸残基を含む。タンパク質のリポカリンファミリーにおける他のメンバーのそれぞれの配列位置は、当業者によって当該技術分野においてよく知られている技術及びプログラムを用いて容易に測定されることができる。
【0052】
本発明にかかるリポカリン突然変異タンパク質は、突然変異したアミノ酸配列位置の外側に野生型(天然)アミノ酸配列を含んでもよい。他方、本明細書に開示されるリポカリン突然変異タンパク質は、さらにその突然変異が突然変異タンパク質の結合親和性及び折り畳みを妨げない限り、突然変異誘発を受けるループ領域における配列位置の外側にもアミノ酸の突然変異を含んでもよい。このような突然変異は、確立された標準的な方法(Sambrook、J. et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2nd Ed.、Cold Spring
Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYを参照)を用いてDNAレベルで非常に容易に達成されることができる。考えられるアミノ酸配列の改変は、挿入又は欠失並びにアミノ酸置換である。このような置換は保存的であってもよく、すなわち、アミノ酸残基は化学的に類似したアミノ酸残基で置換される。保存的置換の例としては、以下の群のメンバー間、すなわち、1)アラニン、セリン、及びトレオニン、2)アスパラギン酸及びグルタミン酸、3)アスパラギン及びグルタミン、4)アルギニン及びリジン、5)イソロイシン、ロイシン、メチオニン、及びバリン、ならびに6)フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンの間での置換である。他方では、アミノ酸配列に非保存的な改変を導入することも可能である。さらに、単一アミノ酸残基を置換する代わりに、涙リポカリンの一次構造の1又はそれ以上の連続的なアミノ酸を挿入するか、それとも欠失させることは、さらに、この欠失又は挿入が安定して折り畳まれた/機能的な突然変異タンパク質(例えば、切断型のN−末端及びC−末端を有する突然変異タンパク質が産生される実験上の切片を参照)を生じさせる限りにおいては可能である。
【0053】
アミノ酸配列のこのような修飾は、特定の制限酵素に対し切断部位を組み込むことによって、突然変異したリポカリン遺伝子又はその一部のサブクローン化を単純化するために、単一アミノ酸位置の定方向の突然変異誘発を含む。さらに、これらの突然変異は所定の標的に対するリポカリンの突然変異タンパク質の親和性をさらに改善するために、さらに組み込まれることができる。さらに、突然変異は必要に応じて、折り畳みの安定性、血清安定性、タンパク質の耐性、若しくは水溶解性を改善する目的、又は凝集傾向を低減する目的のような突然変異タンパク質の特定の特徴を調節する目的で導入されることができる。例えば、ジスルフィド架橋を防止するために、天然に存在するシステイン残基を他のアミノ酸に突然変異してもよい。しかしながら、例えば本発明の部分に接合する目的、又は非天然に存在するジスルフィド結合を形成する目的で新しい反応基を導入するために、他のアミノ酸配列位置をシステインに意図的に突然変異させることはさらに可能である。
【0054】
本発明はさらに、上記のように定義された切断型リポカリン突然変異タンパク質を含み、このような切断型リポカリン突然変異タンパク質において、一つ以上のN−末端及び/又はC−末端のアミノ酸、例えば成熟リポカリンの配列における最初の4つのN−末端のアミノ酸残基及び/又は最後の2つのC−末端のアミノ酸残基は欠失している。
【0055】
本発明にかかる共役物の1つの具体的な実施形態において、リポカリン突然変異タンパク質は、配列番号1〜110のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含むか、実質的にそれらのアミノ酸配列からなるか、又はそれらのアミノ酸配列からなってもよい。リポカリン突然変異タンパク質は、配列番号1〜110のいずれか1つのリポカリン突然変異タンパク質と70%、75%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、96%又は98%の配列同一性を有してもよい。
【0056】
上記の部分の1つとリポカリン突然変異タンパク質との接合は、リポカリン突然変異タンパク質のN−末端、C−末端又はアミノ酸側鎖を介して発生してもよい。接合を容易にするために、その部分は上記のような反応基を含んでもよい。好適なアミノ酸側鎖は、それぞれのリポカリンのアミノ酸配列において天然に存在してもよく、突然変異誘発によって導入されてもよい。好適な結合部位が突然変異誘発を介して導入される場合、1つの可能性はシステイン残基による適切な位置でのアミノ酸置換である。その1つの実施形態において、このような突然変異は、ヒト涙リポカリン(SWISS PROT Databank受入番号P31025)の直鎖状ポリペプチド配列、又はタンパク質のリポカリンファミリーにおける他のメンバーに関する、Thr40→Cys、Glu73→Cys、Arg90→Cys、Asp95→Cys、又はGlu131→Cysの置換のうちの少なくとも1つを含む。これらの位置のいずれかで新しく生産されたシステイン残基は、以下のようにPEG又はその活性化された誘導体のような突然変異タンパク質の血清半減期を延長する部分に、突然変異タンパク質を接合させるように用いられることができる。
【0057】
システインがこれらの任意の配列位置で導入されるヒト涙リポカリンの突然変異タンパク質として、1つの例示的な実施例は、VEGF結合ヒト涙リポカリン突然変異タンパク質236.1−A22(配列番号22)である。このような突然変異の他の例は、当該技術分野で知られており、また以前に国際公開第99/16873号、国際公開第00/75308号、国際公開第03/029471号、国際公開第03/029462号、国際公開第03/029463号、国際公開第2005/019254号、国際公開第2005/019255号、国際公開第2005/019256号、国際公開第2006/56464号、及び国際公開第2008/015239号において開示されたものも含み、その内容が参照によりその全体において本明細書に組み込まれている。
【0058】
もう1つの実施形態において、上述の部分の1つを本発明の突然変異タンパク質に接合すべく好適なアミノ酸側鎖を提供するために、人工アミノ酸は突然変異誘発によって導入されてもよい。一般的に、このような人工アミノ酸はより反応的に、ひいては所望の部分への接合を促進するように設計される。人工tRNAを介して導入できるこのような人工アミノ酸の一例は、パラアセチルフェニルアラニンである。
【0059】
いくつかの実施形態において、リポカリン突然変異タンパク質及びそれに接合される部分は、融合タンパク質の形で用いられてもよい。このような実施形態において、リポカリン突然変異タンパク質は、そのN−末端又はそのC−末端で、タンパク質、タンパク質ドメイン又はペプチド部分に融合される。
【0060】
他の実施形態において、リポカリン突然変異タンパク質は、もう1つのタンパク質、タンパク質ドメイン又はペプチドに融合されてもよく、例えば、同一又は異なる結合特異性の二次リポカリン突然変異タンパク質(その結果、「Duocalins」の形成を引き起こす。cf. Schlehuber、S.、and Skerra、A.(2001)、Duocalins, engineered ligand−binding proteins with dual specificity derived from the lipocalin fold.5z’o/.Chem.382,1335−1342を参照)、及びリポカリン突然変異タンパク質を含んで得られた融合タンパク質は、そのとき上記の部分に接合されてもよい。
【0061】
リポカリン突然変異タンパク質を生成するための技術は、当該分野で知られている(例えば Flower、D.R.(1996)、上記を参照。Flower、D.R. et al.(2000)、上記を参照。Skerra、A.(2000)、上記を参照。Skerra、A.(2001)、上記を参照。Schlehuber、S.、and Skerra、A.(2002)、上記を参照。また、国際公開第99/16873号、国際公開第00/75308号、国際公開第03/029471号、国際公開第03/029462号、国際公開第03/029463号、国際公開第2005/019254号、国際公開第2005/019255号、国際公開第2005/019256号、国際公開第2006/56464号、及び国際公開第2008/015239号を参照)。これらの特許出願の各々の内容は参照によりその全体において本明細書に組み込まれている。
【0062】
「非天然型リガンド」、「非天然結合パートナー」又は「非天然標的」という用語は、ここでは、互換可能に用いられており生理学的条件下でそれぞれ天然リポカリンに結合しない合成物のことを言及する。標的は、免疫性ハプテン、例えばステロイドホルモンのようなホルモン、又はそのいかなるバイオポリマー若しくはフラグメントの特徴を発現する遊離又は接合形態のいかなる化学化合物であってもよい。バイオポリマー又はフラグメントとしては、例えば、タンパク質、タンパク質ドメイン、ペプチド、オリゴデオキシヌクレオチド、核酸、それらのオリゴ若しくは多糖類又は共役物、脂質又は高分子である。
【0063】
本発明にかかる共役物に含まれるリポカリン突然変異タンパク質は、少なくとも200nMの解離定数を例えば有する検知可能な親和性をもって所望のターゲットと結合する能力を保持する。現在の好ましい幾つかの実施形態では、所定の標的に対して少なくとも100nM、20nM、1nM又はそれ未満の解離定数をもって所望の標的と結合するのは、リポカリン突然変異タンパク質である。所望の標的に対する突然変異タンパク質の結合親和性は、例えば蛍光滴定、競合ELISA法、又は表面プラズモン共鳴(BIAコア)のような複数の方法を用いて測定され得る。
【0064】
本発明はまた、リポカリン突然変異タンパク質の制御放出に対する医薬製剤に関し、該医薬製剤は、ポリマー、脂質、リポソーム、および、選択的に、薬学的に許容可能な賦形剤との組み合わせにおける、リポカリン突然変異タンパク質又はその共役物を含んでいる。
【0065】
「制御放出」又は「持続放出」という用語は、本発明の薬剤送達製剤に応じて送達されるリポカリン突然変異分子の割合及び/又は量の制御のことを言及する。制御放出は連続的又は非連続的であり得、及び、線形的又は非線形的であり得る。このことは、所望の効果を得るために、単独で、組み合わせて、又は連続して投与される、一つ又はそれよりも多くのポリマー組成物、製剤担体、賦形剤又は分解エンハンサ―の含有物を用いて実現され得る。ゼロオーダー又は線形放出は、一般的に、ゆっくりと時間をかけて放出される生体活性分子量が、所望の時間枠の間、量/時間の関数として相対的に一定に保たれることを意味するように解釈される。多数相は、一般的に、一つよりも多い「バースト」を生じさせる放出のことを意味するように解釈される。
【0066】
1つの実施形態において、リポソームは、リポカリン突然変異タンパク質又はその共役物をカプセル化する。1つの具体的な実施形態において、リポソームは、基本培地水溶液中に分散又は乳化されている。
【0067】
1つの実施形態において、ポリマーは、生分解性ポリマーである。1つのこのような実施形態では、生分解性ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド),ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルキレンアルキレート、ポリエチレングリコールとポリラクチド又はポリ(ラクチド−co−グリコリド)との共重合体、生分解性ポリウレタン、特定の種類のタンパク質及び多糖類ポリマー、それらの混合物及び共重合体からなる群より選択される。更なる実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリヒドロキシ酸、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリグリコール酸、それらの共重合体、及びそれらの誘導体からなる群より選択される。生分解性ポリマーは、ポリ無水物、ポリオルトエステル、及び多糖類ポリマーも含んでいてもよいし、又は、これらからなるものでもよい。1つの適切なポリ無水物共重合体は、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンとセバシン酸との共重合体である。他の適切な生分解性親水性ポリマーは、上記タンパク質及び多糖類ポリマーなどのバイオポリマーを含み、多糖類ポリマーは、ヒアルロナン、キトサン、ゼラチン、コラーゲン、デンプン、デキストリン、及びセルロースを含むがこれに限定されない。これらの生体高分子は、架橋されて三次元ヒドロゲルを形成してもよい。
【0068】
1つの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリ−(D,L−ラクチド−co−グリコリド)である。本発明の医薬製剤を生成するためのポリマーとしてポリ−(D,L−ラクチド−co−グリコリド)を選択する場合、製剤ポリ−(D,L−ラクチド−co−グリコリド)は、約55モル%〜約80モル%のラクチドモノマーと約45モル%〜約20モル%のグリコリドとを含んでいてもよい。ポリ−(D,L−ラクチド−co−グリコリド)は、約65モル%〜約75モル%のラクチドモノマーと約35モル%〜約25モル%のグリコリドとを含んでいてもよい。使用されるポリ−(D,L−ラクチド−co−グリコリド)は、末端酸性基を含み得る。
【0069】
他の実施形態では、生分解性ポリマーは、アルキル部分によって置換されたラクチドユニットを含む共重合体又はポリ乳酸ポリマーである。生分解性ポリマーは、例えば、ポリ(ヘキシル置換ラクチド)又はポリ(ジヘキシル置換ラクチド)を含むか、実質的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0070】
医薬製剤の更なる実施形態では、生分解性ポリマーは、共役物をカプセル化するミクロ粒子又はナノ粒子の形に製剤される。このような実施形態では、本発明の製剤は、制御放出を提供するために、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、及びそれらの共重合体などの生分解性ポリマーと、本発明のリポカリン突然変異タンパク質、又は、共役物とを組み合わせることにより形成されたミクロ粒子又はナノ粒子をベースにしていてもよく、この共役物とは、例えば、親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール)とリポカリン突然変異タンパク質との共役物である。
【0071】
他の実施形態では、医薬製剤は、インプラント又はインプラント可能な装置の形態であってもよい。インプラント又はインプラント可能な装置は、どのような形状であってもよく、インプラント可能なロッド、プラグ、ディスク、ペレット、膜、又はシートを含むがこれらに限定されない。このようなインプラント可能な装置は、適切なポリマーからモールディング、押出成形、及びフィルム作製などの既知の方法で製造されてもよい。医薬製剤が、インプラント又はインプラント可能な装置である場合、インプラント材料は、生分解性又は非生分解性ポリマーなどのように、生分解性又は非生分解性であってもよい。適切な生分解性ポリマーは、上記のものを含むが、これらに限定されない。
【0072】
非生分解性ポリマーは、数年といった長期間、実質的に分解することなく生体に残留することができる。このような材料は、数例挙げるだけでも、ポリビニルアルコール(PVA)及びエチレン酢酸ビニール(EVA)のポリマーがある。
【0073】
医薬製剤、特に、インプラント可能な装置は、例えば、インプラントのサイトにおける線維形成を防止するために、代謝抵抗物質も含んでいてもよい。
【0074】
1つの実施形態において、本発明は、リポカリン突然変異タンパク質又は高分子接合リポカリン突然変異タンパク質の制御放出のために.生分解性ミクロ粒子を採用する。
【0075】
ここで、「ミクロ粒子」は、好ましくは1.0mm未満、典型的には、1.0ミクロンを上回り200.0ミクロン未満、より好ましくは1.0ミクロンを上回り100.0ミクロン未満の直径を有する粒子を指す。ミクロ粒子は、課題となるリポカリン突然変異タンパク質の十分な持続した放出を提供する限り、どのような適切な粒径を有していてもよい。例示の実施形態では、ミクロ粒子は、100マイクロメートル未満、例えば、約20マイクロメートル〜約80マイクロメートルの範囲の平均粒径(直径)を有していてもよいし、又は、約40マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲の平均粒径(直径)を有していてもよい。「ミクロ粒子」という用語は、典型的には固体球状のミクロ粒子であるミクロスフェアを含む。「ミクロ粒子」という用語は、典型的には周囲の殻とは異なる組成の核を有する球状のミクロ粒子であるマイクロカプセルも含む。本開示については、ミクロスフェア、ミクロ粒子、及びマイクロカプセルは、互換的に使用される。
【0076】
本発明の医薬組成物/製剤の調製に使用されるポリマーの質量に対するリポカリン突然変異タンパク質の質量(比)は、十分な制御された持続放出が達成されるように選択されるのがよい。例示の実施形態では、ミクロ粒子又はナノ粒子などの製剤の調製に使用されるポリマーの質量に対するリポカリン突然変異タンパク質の質量は、15%以下である。他の実施形態では、ポリマーの質量に対する医薬組成物中の突然変異タンパク質の質量は、10%以下である。
【0077】
本発明において使用されるミクロ粒子は、この分野において知られている制御放出製剤に使用される様々な生分解性ポリマーを用いて作成することができる。上記の通り、適切なポリマーは、例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルキレンアルキレート、ポリエチレングリコールとポリラクチド又はポリ(ラクチド−co−グリコリド)との共重合体、生分解性ポリウレタン、特定の種類のタンパク質及び多糖類ポリマー、それらの混合物、及び共重合体を含むがこれに限定されない。タンパク質及び多糖類ポリマーの例は、上で説明されており、ヒアルロナン、キトサン、ゼラチン、コラーゲン、デンプン、デキストリン、及びセルロースを含むがこれに限定されない。
【0078】
本発明については、「生分解性」という用語は、特別な治療状況において容認可能な期間内にin vivoで溶解又は分解するポリマーのことをいう。このような溶解又は分解した生成物は、より小さな化学種を含んでいてもよい。分解は、例えば、酵素的、化学的及び/又は物理的プロセスによって生じる。生分解は、生理学的pH及び温度、例えば、6から9の範囲のpH及び22℃〜38℃の範囲の温度に晒されてから典型的には5年未満、通常は1年未満かかる。
【0079】
好ましいポリマーは、生理学的pH、例えば、体の水溶液環境に晒した後の加水分解によって分解するポリ(ヒドロキシ酸)、特にポリ(乳酸−co−グリコール酸)(ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド);「PLGA」)、ポリグリコリド(PGA)、及びポリラクチド(PLA)又はそれらの誘導体を含む。そして、ポリマーは、加水分解されて、細胞代謝の通常の副産物である乳酸及びグリコール酸モノマーを産出する。ポリマー崩壊の速度は、ポリマー分子量、ポリマー鎖中のグリコリドモノマーに対するラクチドの比、及びモノマーサブユニットの立体規則性を含むいくつかの要因に応じて、数週間から1年以上まで様々である(L及びD立体異性体の混合は、ポリマー結晶性を乱してポリマー崩壊を促す)。例示の実施形態では、製剤を調製するために使用されるポリ−(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(例えば、本発明のミクロ粒子)は、約55モル%〜80モル%のラクチドノマーと約45モル%〜20モル%のグリコリドとを含んでいてもよい。あるいは、ポリ−(D,L−ラクチド−co−グリコリド)は、約65モル%〜75モル%のラクチドモノマーと約35モル%〜25モル%のグリコリドとを含んでいてもよい。使用されるポリ−(D,L−ラクチド−co−グリコリド)は、末端酸性基を含み得る。ミクロスフェアも、分子量及び/又はモノマー比の異なる2つ以上の混合物を含み得る。
【0080】
誘導体化生分解性ポリマーも、PLGAなどに付着した親水性ポリマーを含めて、本発明での使用に適している。特別な実施形態では、親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体、及び、ポリビニルピロリドンからなる群より選択されるが、これに限らない。
【0081】
ミクロスフェアを形成するために、特に、この分野において知られている様々な技術を使用できる。これらには、例えば、溶剤除去を後に行う片面又は両面乳剤ステップを含む。溶剤除去は、他の方法では、抽出、蒸発、又は、吹付乾燥によって行ってもよい。
【0082】
溶剤抽出方法では、ポリマーを、有機溶媒に溶解させる。なお、有機溶媒は、水などの抽出溶剤中に少なくとも部分的に溶解可能である。そして、可溶性の形態の、又は、微粒子として分散されたリポカリン突然変異タンパク質共役物を、高分子溶液に加え、その混合物を、ポリビニルアルコールなどの表面活性剤を含む水相に分散させる。得られた乳剤を、大きな体積の水に加え、有機溶媒を高分子/生物活性剤から除去して硬化されたミクロ粒子を形成する。
【0083】
溶剤蒸発方法では、ポリマーを、揮発性有機溶媒に溶解させる。そして、生理活性分子、すなわち、可溶性の形態の、又は、微粒子として分散されたリポカリン突然変異タンパク質共役物を、高分子溶液に加え、その混合物を、ポリビニルアルコールなどの表面活性剤を含む水相に懸濁する。得られた乳剤を、固体ミクロスフェアを残して大部分の有機溶媒が蒸発するまで攪拌する。
【0084】
吹付乾燥方法では、ポリマーを、塩化メチレン(例えば0.04g/ml)などの適切な溶剤中に溶解させる。そして、既知の量のリポカリン突然変異タンパク質共役物を、高分子溶液中に懸濁(不溶解性の場合)又は混合溶解(溶解性の場合)させる。そして、溶液又は分散剤を吹き付け乾燥させる。直径が1から10ミクロンの範囲のミクロスフェアは、ポリマーの選択に応じた形態で得られる。
【0085】
相分離及び液滴形成などの他の知られている方法、又は上記の変形例は、この分野においては知られており、本発明においても採用されてもよい。
【0086】
他の実施形態では、本発明は、生分解性ナノ粒子を、リポカリン突然変異タンパク質及び高分子共役物リポカリン突然変異タンパク質の制御放出のために使用する。ここで使用される「ナノ粒子」という用語は、好ましくは約20.0ナノメートルを上回り約2.0ミクロン未満、典型的には約100ナノメートルを上回り1.0ミクロン未満の直径を有する粒子を指す。
【0087】
ナノ粒子は、高速攪拌又は均質化によって高分子/生物活性剤乳剤のサイズを約2.0ミクロン未満、好ましくは約1.0ミクロン未満にすること以外は、基本的にはミクロ粒子について上述したのと同様に形成することができる。例えば、ナノ粒子を形成するのに適した技術は、国際公開第97/04747号に記載されており、その全体を参照によりここに引用する。
【0088】
これらの制御放出製剤を、注射、吸入、経鼻、経口によって投与することができる。
【0089】
一般的に、医薬品を生分解性ポリマーミクロスフェア及びナノスフェアにカプセル化することで、薬剤自体の投与に比べて治療薬剤レベルの持続を延ばすことができる。持続放出は、カプセル化された製剤及び活性分子に応じて数ヶ月まで延長されてもよい。しかしながら、治療タンパク質は、高分子担体に治療タンパク質をカプセル化するために必要な手順によって引き起こされる損傷を受けやすく、多くのタンパク質の帯電した極性は、高分子薬剤担体へのカプセル化の範囲を限定する可能性があり、第1回投与時にカプセル化された生理活性分子の少量の迅速な損失(「バースト」)に繋がる可能性があるので、親水性ポリマーをこれらの治療タンパク質に結合させることで、薬剤担体へのカプセル化の条件下における分解及び変性から治療タンパク質を保護することが有利である。さらに、これにより、カプセル化され得る修飾タンパク質の量が、非修飾タンパク質に対して増える。また、生分解性ポリマー薬剤送達担体にカプセル化されたペグ化治療タンパク質の免疫原性は、特に、皮下又は筋肉注射、又は、吸引、又は、粘膜送達(例えば、口又は鼻による送達)によって投与される場合、担体中の非ペグ化タンパクに対して低減される。このように低減された免疫原性は、生分解性ポリマーを経口送達に使用する場合は特に有利である。さらに、通常は胃腸管から吸収されないペグ化タンパク質、ペプチド類、オリゴ糖、及び、オリゴヌクレオチドは、生分解性ポリマーシステム、特にナノスフェアでの投与によってバイオアベイラブルになる、ということが報告されている。これらの利点は、国際公開第02/36169号広報により詳しく記載されており、その全体を参照によりここに引用する。
【0090】
本発明の医薬組成物を、低減された免疫原性、向上されたバイオアベイラビリティ、向上された持続性、向上された安定性、低減されたバースト、及び/又は、in vivoでのリポカリン突然変異タンパク質の制御持続放出などの複数の観点から、リポカリン突然変異タンパク質又はその共役物のin vivoでの送達を向上させるために使用することができる。
【0091】
本発明の医薬組成物は、非接合型リポカリン突然変異タンパク質又はリポカリン突然変異タンパク質の上記共役物を含むことができる。リポカリン突然変異タンパク質が他の部分と接合していない場合、このリポカリン突然変異タンパク質は、本発明の共役物に関連して上記に開示されたリポカリン突然変異タンパク質として定義される。
【0092】
本発明の製剤の1つの実施形態において、リポカリン突然変異タンパク質は、親水性ポリマー、好ましくはポリエチレングリコール部分と接合している。ポリエチレングリコールは、直鎖型又は分岐鎖型でもよく、あるいは、活性PEG誘導体でもよく、あるいは、約5、7、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、又は70kDa、好ましくは、約5〜約40kDa、より好ましくは約15〜25kDa、例えば20kDaの分子量を有していてもよい。具体的な実施形態では、この接合したリポカリン突然変異タンパク質は、ラクチド及びグリコリドのアルキル化誘導体を含む、ポリラクチド、ポリグリコリド、又はポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)などのそれらの共重合体と共に製剤されている。ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)は、約55モル%〜80モル%のラクチドモノマーと約45モル%〜20モル%のグリコリドとを含んでいてもよい。ポリ−(D,L−ラクチド−co−グリコリド)は、約65モル%〜75モル%のラクチドモノマー及び約35モル%〜25モル%のグリコリドも含んでいてもよい。このような製剤は、ミクロ粒子又はナノ粒子の形態であることが好ましい。1つの特定の実施形態において、突然変異タンパク質は、ヒト涙リポカリン又はhNGAL突然変異タンパク質である。
【0093】
他の実施形態において、非接合型リポカリン突然変異タンパク質は、ラクチド及びグリコリドのアルキル化誘導体を含む、ポリラクチド、ポリグリコリド、又はそれらの共重合体と共に製剤されている。このような製剤は、ミクロ粒子又はナノ粒子の形態であってもよく、突然変異タンパク質は、ヒト涙リポカリン突然変異タンパク質又はhNGAL突然変異タンパク質でもよい。
【0094】
本発明の製剤の1つの実施形態において、約30%〜90%、好ましくは40%〜70%のリポカリン突然変異タンパク質が活性型で放出される、すなわち、任意のリガンドと結合する能力を保持している。放出は、製剤の実際の組成に応じた期間に亘っていてもよい。期間は、1日以上、例えば、2日〜70日、好ましくは20日〜60日でもよい。
【0095】
他の観点では、本発明は、リポカリン突然変異タンパク質を制御して統計的又は局部的に被験体に送達するための方法であって、本発明の医薬製剤又は共役物を被験体に投与することを含む方法に関する。
【0096】
このような方法では、リポカリン突然変異タンパク質の制御された局部送達は、被験体の限られた体区画又は臓器に投与することにより促進されてもよい。哺乳類などの被験体、好ましくはヒトの限られた体区画又は臓器に対するリポカリン突然変異タンパク質製剤の投与は、それぞれの体区画又は臓器におけるリポカリン突然変異タンパク質の半減期は全身半減期とは異なっていてもよいので、持続放出効果を促進するということが見出された。したがって、本発明のリポカリン突然変異タンパク質共役物又は製剤を局所的に投与することにより、全身暴露が長くなるのを回避しつつ局所的持続放出を達成してもよい。このことは、リポカリン突然変異タンパク質の代謝分解又は排泄が個別の体区画又は臓器間において異なる、ということに起因するであろう。例えば、眼内腔におけるリポカリン突然変異タンパク質の半減期は、血清半減期に比べて約150倍だけ延長される。したがって、放出された突然変異タンパク質は、体区画又は臓器を離れるリポカリン突然変異タンパク質が腎臓濾過により迅速に分解又は除去されるように、血清中よりもそれぞれの体区画又は臓器中において比較的長い半減期を有していてもよく、その一方で、体区画又は臓器中の半減期は所望の薬理作用を達成するために十分に長い。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態において、限られた体区画は、眼、関節、脳、脊椎、腫瘍又は体管腔又は腔である。
【0098】
これらの方法の1つの実施形態において、共役物又は製剤は、経口、吸入、粘膜送達、皮内注射、皮下注射、筋肉注射、静脈注射、硝子体注射、関節内注射、頭蓋内注射、脊髄内注射、腫瘍内注射、又はインプラントによって投与される。
【0099】
これらの方法において、被験体は、哺乳類、好ましくはヒトである。
【0100】
更なる観点では、本発明は、リポカリン突然変異タンパク質−高分子共役物を調製するための方法も含み、この方法は、少なくとも1つの有機溶媒及び少なくとも1つの金属キレート剤の存在下において、突然変異タンパク質とポリマーとの共役物の生成を促進する条件の下で、親水性ポリマーにリポカリン突然変異タンパク質を結合させることと、その共役物を分離することとを含む。共役物は、カラムクロマトグラフィーなどの様々な標準的な技術を用いて分離することができる。
【0101】
本発明の特定の実施形態では、親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化グリセロール、及び、それらの直鎖型、分岐鎖型及びアミノ基反応性の誘導体からなる群より選択される。適切なアミノ基反応性誘導体は、例えば、アルデヒド、PEG−カルボン酸のN−ヒドロキシルスクシンイミドエステル、PNP−炭酸塩、及びベンゾトリゾール終端親水性ポリマー誘導体を含む。他の好ましいPEG活性誘導体は、N−マレイミドPEG誘導体を含むがこれに限定されない。典型的には、親水性ポリマーとリポカリン突然変異タンパク質とは、約10:1〜1:1、好ましくは3:1〜1.2:1、より好ましくは1.7:1〜1.5:1のモル比で接触されている。
【0102】
本発明において使用するための適切な有機溶媒は、種々の既知の溶媒を含み、これら既知の溶媒は、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、DMSO、ジオキサン、DMF、及びNMPなどの水混和性有機溶媒を含むがこれに限定されない。典型的には、有機溶媒、好ましくはジオキサン、約0〜25%、好ましくは2%〜20%、より好ましくは5%〜15%又は0.1%〜10%の濃度(v/v)で存在する。
【0103】
本発明において使用するための適切な金属キレート剤も、種々の既知の化合物を含み、これら既知の化合物は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、N−2−アセタミド−2−イミノ二酢酸(ADA)、ビス(アミノエチル)グリコールエーテル−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、トランス−ジアミノシクロヘキサン四酢酸(DCTA)、グルタミン酸、及びアスパラギン酸などのアミノポリカルボン酸;N−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、N,N−ビス−ヒドロキシエチルグリシン(ビシン)、及びN−(トリスヒドロキシメチルメチル)グリシン(トリシン)などのヒドロキシアミノカルボン酸;及び、グリシルグリシンなどのN−置換グリシンを含むがこれに限定されない。他の適切なキレート剤は、2−(2−アミノ−2−オキソエチル)アミノエタンスルホン酸(BES)及びデフェロキサミン(DEF)を含む。本発明の方法において使用される適切なキレート剤は、例えば、溶液中の金属イオンと結合して利用可能な酸素と反応できないようにして、タンパク質と自由に反応して分解する−OHラジカルの発生を低減又は防止するものを含む。このようなキレート剤は、キレート剤の保護なしで製剤されたタンパク質の分解を低減又は防止することができる。
【0104】
本発明で使用されるキレート剤は、塩の形態、例えば、上記キレート剤のカルボキシル又は他の酸の官能基の形態で存在していてもよい。このような塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及び他の弱く結合した金属イオンによって生成される塩が挙げられる。この分野において知られているように、塩の性質及び中性化される電荷数は、存在するカルボキシル基の数と、安定化キレート剤が供給されるpHとに依存している。また、この分野において知られているように、キレート剤は、特定の標的イオンと結合するための様々な強度を有している。一般的に、重金属イオンは、その同様に帯電した低分子量相対物よりも強く結合される。
【0105】
本発明の方法において使用されるキレート剤は、EDTA、EGTA、及びこの分野において知られている他の多価陽イオンキレート剤から選択されてもよい。
【0106】
1つの実施形態において、キレート剤は、EDTA、デフェロキサミン(DEF)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、及びビス(アミノエチル)グリコールエーテル−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)からなる群より選択される。
【0107】
一般的に、キレート剤、好ましくはEDTA、約0.1mM〜10mM、好ましくは1mM〜5mM、より好ましくは1mM〜3mMの濃度で存在している。
【0108】
本発明の特定の実施形態では、リポカリン突然変異タンパク質及び親水性ポリマー(例えば、PEG)は、タンパク質の濃度が約0.1重量%〜5重量%、好ましくは0.5重量%〜1.5重量%の水溶液中で接触(例えば、反応又は接合)される。本発明の他の実施形態では、リポカリン突然変異タンパク質及び親水性ポリマーは、約5.0〜7.5のpH、好ましくはpH6.5〜7.2、より好ましくは約7.0のpHの水溶液中で接触されている。緩衝塩を含有、有機酸/塩基を添加、又は共通無機酸/塩基を添加することによってpHを制御することができる。他の特定の実施形態では、親水性ポリマー及びリポカリン突然変異タンパク質は、約4℃〜50℃、好ましくは約15℃〜25℃で接触される。
【0109】
タンパク質−ポリマー共役物は、一旦生成された後、不都合な副反応物及び未反応リポカリン突然変異タンパク質から分離される。このことは、クロマトグラフィーなどの様々な既知の技術を用いて行うことができる。特定の実施形態では、イオン交換クロマトグラフィー(例えば陽イオン交換)が採用され、所望の共役物が収集され、濃縮され、脱塩され、乾燥されてもよい。
【0110】
さらに他の実施形態では、本発明の方法は、共役物の分離前に、リポカリン突然変異タンパク質及び親水性ポリマーの反応(すなわち、接合)を停止するステップをさらに含む。特定の実施形態では、これを、反応のpHを約1〜4、好ましくは約2〜3、より好ましくは約2.4〜2.6に低減することにより行う。
【0111】
一観点では、本発明は、リポカリン突然変異タンパク質−ポリマー共役物を調製するための上記方法によって得られた共役物にも関する。
【0112】
本発明の方法により製造された特定のタンパク質−ポリマー共役物は、例えば、リポカリン突然変異タンパク質−ポリマー共役物、好ましくはリポカリン突然変異タンパク質−PEG共役物(PEG化されたリポカリン突然変異タンパク質)を含む。これは、上述のリポカリン突然変異タンパク質のいずれかを含んでいてもよい。特定の実施形態では、リポカリン突然変異タンパク質は、リポカリン突然変異タンパク質のN−末端、C−末端、又はアミノ酸側鎖において特異的に反応される(PEG化される)。接合を促進するために、PEG部分は、反応基を含んでいてもよい。上述のように、適切なアミノ酸側鎖は、各リポカリンのアミノ酸配列において自然に生成さてもよいし、又は、突然変異誘発により導入されてもよい。適切な結合部位が突然変異誘発によって導入される場合、1つの可能性としては、適切な位置におけるアミノ酸をシステイン残基によって置換することである。1つの実施形態において、このような突然変異は、ヒト涙リポカリンの直鎖型ポリペプチド配列(SWISS PROT Databank受入番号P31025)に関するThr40→Cys、GIu73→Cys、Arg90→Cys、Asp95→Cys又はGIu131→Cys置換、又は、タンパク質のリポカリンファミリーの他のメンバーにおける対応する置換の少なくとも1つを含む。得られたPEG化リポカリン突然変異タンパク質は、この分野において知られているいずれかの適切な製剤で治療において投与することができる。特定の実施形態では、共役物は、例えば、投与前に共役物を生分解性ポリマー中にカプセル化することによって持続放出製剤で投与される。
【0113】
このシングルステップの方法により、迅速且つ効率的にリポカリン突然変異タンパク質−ポリマー共役物を調製することができる。調製方法は、インシュリンに関連して国際公開第2004/091494号により詳しく開示されており、その全体を参照によりここに引用する。
【0114】
更なる観点では、本発明は、リポカリン突然変異タンパク質及びポリマーを含む有機相を水相に組み合わせることと、その組成物を回収することとを含む制御放出組成物の生成方法にも関する。1つの実施形態において、水相は、有機イオンを含んでいてもよく、この有機イオンは、リポカリン突然変異タンパク質が分解する可能性を減らすために存在している。
【0115】
本発明については、「有機相」及び「不連続相」という用語は、互換であり、本発明の制御放出組成物を作成するために乳化プロセスによって水相に接触されることになる本発明の方法で作成された溶媒、ポリマー、及びリポカリン突然変異タンパク質の溶液を指す。
【0116】
本発明については、「分解」という用語は、リポカリン突然変異タンパク質に対してはアシル化などの、又は、ポリマーに対しては融解などの何らかの不都合な変更を指す。
【0117】
本発明については、「水相」及び「連続相」という用語は、互換であり、本発明の制御放出組成物を作成するために乳化プロセスによって有機相と接触されることになる本発明の方法で作成された有機イオン剤及び水の溶液を指す。
【0118】
本発明については、「組み合わせる」という用語は、2つ以上の材料を合わせる任意の方法を指す。このような方法には、攪拌、混合、混和、調合、均質化、融合、混ぜ合わせ、融合、合成、シャッフリング、かき混ぜ、一体化、集成、混同、合成、統合、などがあるがこれに限定されない。
【0119】
本発明については、範囲は、ここでは、「約」又は「およそ」1つの特定値から、及び/又は、「約」又は「およそ」他の特定値までという形で表されていてもよい。このような範囲が表されている場合、別な実施形態は1つの特定値から、及び/又は、他の特定値までを含む。同様に、値が近似値として、先行詞「約」を使用して表されている場合、特定の値は別の実施形態をなしていると理解される。さらに、各範囲の両終点は、他方の終点との関連でも、他方の終点とは無関係でも有意である。通常、「約」という用語は、任意の値の±10%を含む。
【0120】
本発明については、「有機イオン」という用語は、陽イオン及び陰イオンの材料を指す。有機イオンの例としては、パモエート、ナフトエ酸、コール酸などが挙げられる。有機イオンは、その塩又は酸の形態で存在していてもよい。本発明で使用される有機イオンは、陽イオン又は陰イオンの材料を含む。陰イオン材料は、以下の、すなわちドデシル硫黄、コール、トリフルオロメチル−p−トルイル、2−ナフタレンスルホン、2,3−ナフタレンジカルボキシル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ、3−ヒドロキシ−ナフトエ、2−ナフトエ、及びサリチルサリチルの有機酸及びこれらの塩を含むがこれに限定されない。さらに、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、及びホスホン酸塩の有機形態は、適切な有機イオンである。陰イオン材料の塩形態は、ナトリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウムなどを含んでいてもよい。陽イオン分子は、アンモニウム又はグアニジニウムの基又は置換アンモニウム基を有するものを含むがこれに限定されない。有機陰イオン剤は、アンモニウム基又はグアニジニウム基などの正電荷を有する又は受容することのできる1つ以上の官能基を有する生物活性剤と共に使用される。有機陽イオン剤は、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、又はホスホン酸塩基などの負電荷を有する又は受容することのできる1つ以上の官能基を有する生物活性剤と共に使用されてもよい。本発明で使用される有機イオン剤は、カプセル化効率と薬剤装填とを向上するのに必要な程度に水及び有機相中に溶解可能であってもよい。特定の実施形態では、カプセル化効率及び薬剤装填は、生物活性剤の分解を低減することにより向上する。特定の実施形態では、水相中の有機イオン剤の濃度は、約0.5mM〜100mMの範囲である。他の特定の実施形態では、有機イオンは、約5mM〜40mMの範囲である。
【0121】
本発明については、「制御放出組成物」は、天然生物活性剤とは異なる放出プロファイルを有する任意の製剤を指すものとする。典型的には、放出プロファイルは、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも45日、又は45日よりも長い期間に亘る生物活性剤の生理学的に検出可能な濃度を含む。
【0122】
この方法の1つの実施形態において、この方法は、リポカリン突然変異タンパク質とポリマーとを有機相中で組み合わせるステップ、及び/又は、水相中で有機イオンを組み合わせるステップをさらに含む。
【0123】
この方法の更なる1つの実施形態において、有機相及び水相は、乳化プロセスにおいて組み合わされて制御放出組成物を生成する。乳剤は、水相に分散された有機相の小滴を含んでいてもよい。続いて、溶媒を乳剤小滴から除去して硬化ミクロ粒子を形成する。特定の実施形態では、溶媒は、蒸発により除去される。他の特定の実施形態では、溶媒は、抽出液中に抽出されることにより除去される。例えば、抽出液は、水でもよい。さらに他の特定の実施形態では、溶媒は、フィルタリングにより除去される。
【0124】
その後、硬化したミクロ粒子は、水相から回収され乾燥されてもよい。
【0125】
さらに他の実施形態では、乳剤は、有機相と水相とを攪拌することにより製造される。他の実施形態では、乳剤は、ミキサを用いて製造される。特定の実施形態では、ミキサは、スタティックミキサである。特定の実施形態では、乳剤は、乱流混合を用いて製造される。他の実施形態では、乳剤は、乱流混合せずに製造される。
【0126】
乳化プロセスは、成分の沸騰点と氷点との間の任意の温度で実施されてもよい。1つの実施形態において、温度は、約0℃〜約100℃の範囲であり、典型的には5℃を上回り75℃未満である。特定の実施形態では、乳化プロセスは、約15℃を上回り約60℃未満で行われる。
【0127】
特定の実施形態でこの方法は、ポリマー及び生物活性剤を含む有機相を、有機イオンを含む水相に接触させることを含み、有効な量の有機イオンが水相を離れて有機相に入る。
【0128】
1つの実施形態において、有機相は、ジクロロメタン、酢酸エチル、ベンジルアルコール、アセトン、酢酸及びプロピレン炭酸塩からなる群より選択された溶媒を含むが、これに限定されない。有機相は、生分解性ポリマーを溶解させることのできる他の溶媒も含んでいてもよい。好ましい実施形態では、溶媒は、酢酸エチル又はジクロロメタンである。
【0129】
特定の実施形態では、有機相は、補助溶媒をさらに含む。補助溶媒は、有機相中の生物活性剤の溶解を促進するために任意に使用される。
【0130】
補助溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、PEG200、PEG400、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、及び水をからなる群より選択されてもよいがこれに限定されない。
【0131】
他の特定の実施形態では、補助溶媒は、有機相の溶媒の0重量%を上回り90重量%未満で存在していてもよい。他の特定の実施形態では、補助溶媒は、有機相の溶媒の0重量%を上回り50重量%未満で存在する。
【0132】
リポカリン突然変異タンパク質を、適切な体積の補助溶媒にまず溶解させてもよく、これを、その後、生分解性ポリマーが任意に溶解されている有機相の溶媒に加えて有機相の全成分の溶液を生成する。当業者は、リポカリン突然変異タンパク質及び生分解性ポリマーの所望の溶液となるように加える体積と順序とを調節することができる。特定の実施形態では、生分解性ポリマーは、有機相中に、2重量%〜40重量%の濃度で存在することになる。他の特定の実施形態では、生分解性ポリマーは、有機相中に、5重量%〜20重量%の濃度で存在することになる。
【0133】
他の実施形態では、水相は、乳化剤をさらに含む。乳化剤は、ポリ(ビニルアルコール)、アルブミン、レシチン、ビタミンE−D−アルファ−トコフェリルポリエチレングリコール(TPGS)、及びポリソルベートからなる群より選択されてもよいが、これに限定されない。特定の実施形態では、乳化剤は、約0.1重量%〜10重量%の範囲の終濃度、約1.0%重量%〜約8重量%、約1.0%重量%〜約6重量%、約1.5重量%〜約5重量%の終濃度、又は0.5重量%を上回り5重量%未満の濃度で存在していてもよい。
【0134】
本発明の制御放出組成物を作成するための乳化プロセスの特定の実施形態では、リポカリン突然変異タンパク質を有する有機相は、ジクロロメタン、酢酸エチル、ベンジルアルコール、アセトン、酢酸、及びプロピレン炭酸塩からなる群より選択される溶媒を含む。
【0135】
他の実施形態において、有機溶媒は、ジクロロメタンを溶媒として含み、メタノール、酢酸及びH2Oを補助溶媒として含む(実施例6参照)。他の実施形態において、有機溶媒は、ジクロロメタン(のみ)からなり、メタノール、酢酸及びH2Oを補助溶媒として含む(実施例6参照)。
【0136】
有機溶媒が、ジクロロメタンからなり、又は、ジクロロメタンを溶媒として含み、メタノール、酢酸、及びH2Oを補助溶媒として含む実施形態では、有機相は、有機相の全体積に対して、約70体積%〜約85体積%のジクロロメタン、約10体積%〜約15体積%のメタノール、約5体積%〜約10体積%酢酸及び約0.1体積%〜約1.0体積%の水を含む。他のこのような実施形態では、有機相は、有機相の全体積に対して、約75体積%〜82体積%のジクロロメタン、約11体積%〜約14体積%のメタノール、約6体積%〜約8.5体積%のメタノール、及び約0.1体積%〜約0.8体積%の水を含む。なお、この点に関して、有機相がジクロロメタン、メタノール、酢酸及びH2Oのみを溶媒/補助溶媒として含んでいる場合、上記範囲に挙げた各体積は、当然、全体積が100%になるように選択される(実施例6も参照)。
【0137】
特定の実施形態では、有機イオンは、約0.1mM〜1000mMの範囲の終濃度である。特定の実施形態では、有機イオンは1mMを上回り100mM未満の濃度で溶解される。濃度を、所望の薬剤装填及びカプセル化効率を達成するために各特定の有機イオン剤及び生物活性剤について調節してもよい。
【0138】
特定の実施形態では、制御放出組成物は、ミクロ粒子及びナノ粒子からなる群より選択されるが、これに限定されない。特定の実施形態では、ミクロ粒子及びナノ粒子は、生分解性である。
【0139】
他の形態では、ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルキレン、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとの共重合体、生分解性ポリウレタン、それらの混合物及び共重合体からなる群より選択されてもよいがそれに限定されない。
【0140】
特定の実施形態では、乳化プロセスは、水中油型と水/油/水型からなる群より選択される。
【0141】
特定の実施形態では、本発明の方法は、任意の既知の乳化プロセスによって行われてもよい。
【0142】
特定の実施形態において、有機イオンは、陰イオン及び陽イオンの材料からなる群より選択されている。1つの実施形態において、有機イオンは、有機酸の塩である。特定の実施形態では、有機イオンは、トリフルオロメチル−p−トルイル酸、コール酸、2−ナフタレンスルホン酸塩、2,3−ナフタレンジカルボン酸塩、l−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、及びサリチルサリチル酸、又は硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、及びホスホン酸塩の有機誘導体から選択される。
【0143】
他の実施形態では、分解は、アシル化を含む。特定の実施形態では、アシル化反応は、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)などのポリエステルのカルボニル炭素に対する、N−末端アミノ基又はアミノ酸側鎖のアミノ基などのリポカリン突然変異タンパク質のアミノ基の求核攻撃を含む。調製された組成物において、リポカリン突然変異タンパク質の分解は、潜在求核試薬(例えば、アミノ基)の促進されたプロトン化によって防止又は低減されるので、求核試薬がPLGAポリマー骨格又はそのフラグメントとのアシル化反応に寄与しにくくなる。
【0144】
他の実施形態では、分解は、ポリマーの融解を含む。過剰な融解は、ポリマー分子量の急速な減少、及び、生物活性剤の早期放出に繋がる可能性がある。
【0145】
他の特定の実施形態では、本発明は、ポリマー及びリポカリン突然変異タンパク質を含む制御放出組成物を、有機イオンとの複合体の形態で提供する。このような複合体は、有機イオン及びリポカリン突然変異タンパク質が親和性物理結合を形成する場合に形成されてもよい。
【0146】
他の実施形態では、有機イオンが無い場合は本発明の方法により調製された組成物の生物活性剤含有量に対して、リポカリン突然変異タンパク質含有量が上昇されてもよい。
【0147】
更なる一観点では、本発明は、上記方法によって生成された制御放出組成物に関する。
【0148】
更なる観点では、本発明は、本発明に係る共役物、医薬製剤又は制御放出組成物を、リポカリン突然変異タンパク質の送達を制御するため、リポカリン突然変異タンパク質のin vivoでの半減期を延長するため、リポカリン突然変異タンパク質のバイオアベイラビリティを向上するため、又は、被験体への投与時にリポカリン突然変異タンパク質の免疫原性を下げるために使用することを含む。
【0149】
本発明に係るリポカリン突然変異タンパク質共役物、医薬製剤又は制御放出組成物は、タンパク質性薬剤にとって治療効果のある任意の腸管外又は非腸管外(経腸)経路を介して投与することができる。腸管外投与方法は、例えば、皮内、皮下、筋肉、気管内、鼻腔内、硝子体内、関節腔内、頭蓋内、髄腔内、腫瘍内、又は静脈の注射と、注射液、輸液又はチンキなどの形態での注入技術と、エアゾール合剤、スプレー、又は散剤などの形態でのエアゾール設備及び吸入とを含む。肺薬剤送達、すなわち、エアゾール吸入(鼻腔内投与において使用できる)又は気管内点滴注入についての概要は、例えば、J.S.Patton他著、「The lungs as a portal of entry for systemic drug delivery」、Proc. Amer. Thoracic Soc.、2004年、1巻、p.338−344に記載されている)。非腸管外送達モードは、例えば、ピル、タブレット、カプセル、溶液又は懸濁液などの形態で経口、又は座薬の形態で直腸性のものである。本発明のリポカリン突然変異タンパク質共役物、医薬製剤、又は制御放出組成物は、従来の非中毒性の薬剤的に許容可能な賦形剤又はキャリア、添加物、及び媒介物を要望に応じて含む製剤中に組織的に又は局部的に投与することができる。
【0150】
本発明の1つの実施形態において、リポカリン突然変異タンパク質共役物、医薬製剤、又は制御放出組成物は、哺乳類、特にヒトに、腸管外で投与される。対応する投与方法は、例えば、皮内、皮下、筋肉、気管内又は静脈の注射と、注射液、輸液又はチンキなどの形態の注入技術と、エアゾール合剤、スプレー又は散剤などの形態のエアゾール設備及び吸入を含むがこれに限定されない。比較的短い血清半減期を有する化合物の場合、静脈及び皮下の点滴及び/又は注射の組み合わせが便利であろう。医薬組成物は、水溶液、水中油型乳剤、又は油中水型乳剤でもよい。
【0151】
なお、これに関して、Meidan VM、Michniak BB著、2004年、Am. J. Ther.、11巻、4号、p.312−316に記載のようなイオン導入法、超音波導入法又はマイクロニードル強化送達などの経皮送達技術も、ここで説明した突然変異タンパク質の経皮送達のために使用できる。非腸管外送達モードは、例えば、ピル、タブレット、カプセル、溶液、又は懸濁液などの形態で経口、又は、座薬などの形態で直腸投与がある。本発明のリポカリン突然変異タンパク質共役物、医薬製剤又は制御放出組成物は、様々な従来の非中毒性の薬剤的に許容可能な賦形剤又はキャリア、添加物、及び、媒介物を含む製剤中に組織的に又は局所的に投与することができる。
【0152】
適用される突然変異タンパク質の投与量は、所望の予防効果又は治療反応を達成するために広い範囲内で変化させてもよい。例えば、選択したリガンドに対する化合物の類似性、及び、in vivoでのリガンドと突然変異タンパク質との間の複合体の半減期によって決まる。さらに、最適投与量は、突然変異タンパク質又はその融合タンパク質又はその共役物の体内分布と、投与の方法と、治療する疾患/障害の深刻度と、患者の医学的状態とによって決まる。例えば、局所的投与のための軟膏で使用した場合、高濃度のリポカリン突然変異タンパク質を使用することができる。しかしながら、必要であれば、本発明のリポカリン突然変異タンパク質共役物は、持続放出製剤、例えば、PolyActive(登録商標)又はOctoDEX(登録商標)のようなリポソーム分散液又はヒドロゲルベースの高分子ミクロスフェアで与えられてもよい(Bos他著、Business Briefing:Pharmatech、2003年:1−6参照)。他の入手可能な持続放出製剤は、例えば、PLA−PEGベースのヒドロゲル(Medincell)及びPEAベースのポリマー(Medivas)である。
【0153】
したがって、本発明の突然変異タンパク質を、薬学的に許容可能な原料と確立された調製方法とを用いて組成物に製剤することができる(Gennaro,A.L.、Gennaro,A.R.著、(2000年)、「Remington:The Science
and Practice of Pharmacy」、第20版、Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,PA)。本発明の製剤又は組成物を調製するために、薬学的に不活性な無機性又は有機性の賦形剤を使用することができる。例えばピル、散剤、ゼラチンカプセル又は座薬を調製するために、例えば、乳糖、タルク、ステアリン酸及びその塩、脂質、ワックス、液体又は固体のポリオール、天然油及び硬化油を使用することができる。使用前に溶液又はエアゾール合剤に再構成するための溶液、懸濁液、乳剤、エアゾール合剤の製造、又は散剤にとって適切な賦形剤は、水、アルコール、グリセロール、ポリオール、それらの適切な混合物、及び植物油脂を含む。
【0154】
製剤又は組成物は、増量剤、結着剤、湿潤剤、滑剤、安定剤、防腐剤、乳化剤などの添加物と、さらに、溶媒又は可溶化剤とを含んでいてもよい。
【0155】
製剤は、細菌阻止フィルタで濾過することを含む様々な方法で、又は、使用の直前に無菌水又は他の無菌媒体に溶解又は分散させることのできる無菌固体組成物の形態で安定剤を取り入れることにより、安定化可能である。
【0156】
本発明の他の観点は、本発明のリポカリン突然変異タンパク質共役物、医薬製剤又は制御放出組成物を、それを必要とする被験体に上記で定義したように投与することを含む疾患又は障害の治療の方法に関する。
【0157】
このような治療が必要な被験体は、いくつかの例を挙げると、ヒト、イヌ、マウス、ラット、ブタ、カニクイザルなどの類人猿などの哺乳類でもよい。
【0158】
本発明の方法に従って治療される疾患及び障害の正確な性質は、使用される突然変異タンパク質が結合しようとするリガンドに応じている。したがって、本発明の突然変異タンパク質は、疾患又は障害の進行に関係すると知られている標的分子が本発明の核酸ライブラリの発現産物に表示され得る限り、又は、リポカリン突然変異タンパク質を得るために表示され得る限り、どのような疾患の治療にも使用することができる。
【0159】
1つの具体的な実施形態において、本発明の共役物、製剤及び組成物において使用されるリポカリン突然変異タンパク質は、高い親和性でVEGFを結合するヒト涙リポカリン突然変異タンパク質である。1つの更なる例示の実施形態では、リポカリン突然変異タンパク質は、配列番号:22に記載されているアミノ酸配列を有している。1つの実施形態において、このリポカリン突然変異タンパク質は、ポリエチレングリコールなどの好ましくは約20kDaの分子量を有する親水性ポリマーと接合されており、生分解性ポリマーと共に製剤されていてもよく、この生分解性ポリマーは、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーである。1つの実施形態において、製剤は、ミクロ粒子又はナノ粒子の形態である。
【0160】
この共役物、製剤、又は組成物は、疾患又は障害、例えば、VEGF関連の疾患又は障害の治療方法において使用されてもよい。1つの実施形態において、VEGF関連の疾患又は障害といった疾患又は障害は、癌、喘息、骨関節炎.及びリューマチ性関節炎を含む関節炎、炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺高血圧症、新生血管滲出型加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性網膜症又は黄斑浮腫、未熟網膜症又は網膜静脈閉塞症などの増加血管新生に関連している。癌は、いくつか例を挙げると、消化管癌、直腸癌、結腸癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌、乳房癌、膀胱癌、腎臓癌、子宮内膜癌、及び肺癌、白血病、並びに黒皮腫からなる群より選択されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、VEGFに対する結合親和性を持つヒト涙リポカリン突然変異タン パク質の溶液のRP−HPLCクロマトグラムを示す(配列番号:22)。
【図2】図2は、20kDaの分子量を有する直鎖型PEGに結合したVEGFに対 する結合親和性を持つヒト涙リポカリン突然変異タンパク質の溶液のRP−HPLC クロマトグラムを示す(配列番号:22#2 PEG20)。
【図3】図3は、40kDaの分子量を有する分岐鎖型PEGに結合したVEGFに 対する結合親和性を持つヒト涙リポカリン突然変異タンパク質の溶液のRP−HPL Cクロマトグラムを示す(配列番号:22#2 PEG40)。
【図4】図4は、10kDaの分子量を有する直鎖型PEGに結合したVEGFに対 する結合親和性を持つヒト涙リポカリン突然変異タンパク質の溶液のRP−HPLC クロマトグラムを示す(配列番号:22#2 PEG05)
【図5】図5は、10kDaの分子量を有する直鎖型PEGに結合したVEGFに対 する結合親和性を持つヒト涙リポカリン突然変異タンパク質の溶液のRP−HPLC クロマトグラムを示す(配列番号:22#2 PEGl O)
【図6】図6は、ミクロスフェアから抽出された5kDaの分子量を持つ直鎖型PE Gに結合したVEGFに対する結合親和性を持つヒト涙リポカリン突然変異タンパク 質のRP−HPLCクロマトグラムを示す(配列番号:22#2 PEG05).
【図7】図7は、ミクロスフェアから抽出された5kDaの分子量を持つ直鎖型PE Gに結合したVEGFに対する結合親和性を持つヒト涙リポカリン突然変異タンパク 質のRP−HPLCクロマトグラムを示す(配列番号:22#2 PEGlO)。
【図8】図8は、ミクロスフェアから抽出された20kDaの分子量を持つ直鎖型P EGに結合したVEGFに対する結合親和性を持つヒト涙リポカリン突然変異タンパ ク質のRP−HPLCクロマトグラムを示す(配列番号:22#2 PEG20)。
【図9】図9は、ミクロスフェアから抽出された40kDaの分子量を有する分岐鎖 型PEGに結合したVEGFに対する結合親和性を持つヒト涙リポカリン突然変異タ ンパク質の溶液のRP−HPLCクロマトグラムを示す(配列番号:22#2 PE G40)。
【図10】図10は、ミクロスフェアから24時間にわたって放出された20kDa の分子量を持つ直鎖型PEGに結合したVEGFに対する結合親和性を持つヒト涙リ ポカリン突然変異タンパク質のRP−HPLCクロマトグラムを示す(配列番号:2 2#2 PEG20)。
【図11】図11は、ミクロスフェアから24時間以上放出された40kDaの分子 量を有する分岐鎖型PEGに結合したVEGFに対する結合親和性を持つヒト涙リポ カリン突然変異タンパク質の溶液のRP−HPLCクロマトグラムを示す(配列番号 :22#2 PEG40)。
【図12】図12は、本発明in vitroのミクロスフェア製剤のために3週間 にわたって放出されたリポカリン突然変異タンパク質の絶対量を示す。
【図13】図13は、本発明in vitroのミクロスフェア製剤のために3週間 にわたって毎日放出されたリポカリン突然変異タンパク質を示す。
【図14】図14は、本発明の3つの制御放出製剤、ロット372−56、372− 57と372−58から20kDaの分子量を持つ直鎖型PEGに結合したVEGF に対する結合親和性を持つ、VEGF結合ヒト涙リポカリン突然変異タンパク質(配 列番号:22#2 PEG20)の毎日計算された活性in vitro放出を示す 。突然変異タンパク質配列番号:22#2 PEG20(ng/日)のロット372 −56から放出された活性リポカリン突然変異タンパク質の量は、ダークグレー色の バーで示されて、ロット372−57から放出された活性リポカリン突然変異タンパ ク質の量は、ミディアムグレー色のバーで示され、ロット372−58から放出され た活性リポカリン突然変異タンパク質の量は、ライトグレー色のバーで示されている 。
【図15】図15は、本発明の3つの制御放出製剤、ロット372−56、372− 57と372−58から20kDaの分子量を持つ直鎖型PEGに結合したVEGF に対する結合親和性を持つ、VEGF結合ヒト涙リポカリン突然変異タンパク質(配 列番号:22#2 PEG20)の累積する活性in vitro放出を示す。突然 変異タンパク質配列番号:22#2 PEG20(%)のロット372−56から放 出された活性リポカリン突然変異タンパク質の量(突然変異タンパク質の初期量に関 して)は、ダークグレー色の三角形で示されて、ロット372−57から放出された 活性リポカリン突然変異タンパク質の量(%)は、ミディアムグレー色の三角形で示 され、ロット372−58から放出された活性リポカリン突然変異タンパク質の量( %)は、ライトグレー色の三角形で示されている。
【図16】図16は、本発明の3つの制御放出製剤、ロット372−56、372− 57と372−58から20kDaの分子量を持つ直鎖型PEGに結合したVEGF に対する結合親和性を持つ、全ヒト涙リポカリン突然変異タンパク質(配列番号:2 2#2 PEG20)の毎日計算された活性in vitro放出を示す。突然変異 タンパク質配列番号:22#2 PEG20(ng/日)のロット372−56から 放出された活性リポカリン突然変異タンパク質の量は、ダークグレー色のバーで示さ れて、ロット372−57から放出された活性リポカリン突然変異タンパク質の量は 、ミディアムグレー色のバーで示され、ロット372−58から放出された活性リポ カリン突然変異タンパク質の量は、ライトグレー色のバーで示されている。
【図17】図17は、本発明の3つの制御放出製剤、ロット372−56、372− 57と372−58から20kDaの分子量を持つ直鎖型PEGに結合したVEGF に対する結合親和性を持つ、全ヒト涙リポカリン突然変異タンパク質(配列番号:2 2#2 PEG20)の累積する活性in vitro放出を示す。突然変異タンパ ク質配列番号:22#2 PEG20(%)のロット372−56から放出された活 性リポカリン突然変異タンパク質の量(突然変異タンパク質の初期量に関して)は、 ダークグレー色の三角形で示されて、ロット372−57から放出された活性リポカ リン突然変異タンパク質の量(%)は、ミディアムグレー色の三角形で示され、ロッ ト372−58から放出された活性リポカリン突然変異タンパク質の量(%)は、ラ イトグレー色の三角形で示されている。
【図18】図18は、ロット372−56、372−57と372−58から84日 間にわたって全て放出されたリポカリン突然変異タンパク質に関連して、20kDa の分子量を持つ直鎖型PEGに結合したVEGFに対する結合親和性を持つ、VEG F結合ヒト涙リポカリン突然変異タンパク質(配列番号:22#2 PEG20)の 活性放出の割合を示す。ロット372−56、372−57と372−58から放出 された全リポカリン突然変異タンパク質の量は、図14及び図16と同様のシンボル を用いて示している。
【図19】図19は、制御放出製剤ロット372−56、372−57と372−5 8から放出された20kDaの分子量を持つ直鎖型PEGに結合したVEGFに対す る結合親和性を持つ、全ヒト涙リポカリン突然変異タンパク質(配列番号:22#2 PEG20)のプラズマレベルを示す。ロット372−56、372−57と37 2−58から放出された全リポカリン突然変異タンパク質のプラズマレベル(ng/ ml)は、図14及び図16と同様のシンボルを用いて示している。
【発明を実施するための形態】
【0162】
以下の実施例は本発明の具体的な実施形態を示すために含まれている。本発明の実施において十分に機能するために本発明者によって開示される技術に従って表される、この実施例に開示される技術は、当業者によってよく理解されるべきであり、ひいてはその実施のための特定の様態を構成すると考えられる。しかし、当業者は、本開示を踏まえると、具体的な実施形態において多くの変更を行っても、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得るされている特定の実施形態で行うことができることを理解すべきである。
【0163】
他に示されない限り、確立された組換え遺伝子技術の方法は、例えば、Sambrookら(上記を参照)に記載のように用いられた。
【0164】
(実施例1)
ヒト涙リポカリンのPEG化された突然変異タンパク質の調製
ヒトVEGFに対してナノモル結合親和性を有する配列番号22のヒト涙リポカリン突然変異タンパク質は、ポリエチレングリコールポリマー(PEGs)に接合された。
【0165】
不対システイン残基は、アミノ酸Aspの代わりに、活性PEGと結合すべく反応基を提供するために、配列番号22の突然変異タンパク質の位置91で、点突然変異によって導入された。遊離Cys残基を保有する組換え突然変異タンパク質は、その後、上記のようにE.coliで生成された(例えば、国際公開第2008/015239号を参照)。
【0166】
トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)は、PEGによって修飾すべく配列番号22の遊離システイン91残基を得るために、還元剤として用いられる。TCEPの過剰はPRS−055の分子内ジスルフィド結合の減少を引き起こす可能性があるので、TCEP濃度は重要な因子である。この減少した配列番号22種の突然変異タンパク質の存在は、RP−HPLC及びイオン交換HPLCで検出されることができる。ジスルフィド結合が開裂される場合、システインの全てのスルフヒドリル基は、所望のPEG−配列番号22種とmisPEGylated及びオリゴPEGylated配列番号22の突然変異タンパク質と混合するように、PEG化されることができる。TCEP濃度が低すぎる場合、配列番号22の突然変異タンパク質の活性化が未完成であることによって、PEG化収率は減少するようになった。活性化は配列番号22の突然変異タンパク質を含有する溶液とTCEP溶液とを混合することによって実行された。活性化バッチは穏やかな混合で室温において約2時間〜3時間培養された。
【0167】
PEG化は活性化バッチとマレイミド結合されたPEG(平均分子量2、5、10、20キロダルトン、直鎖型炭素鎖、又は平均分子量40キロダルトン、分岐鎖型炭素鎖(例えば、PEG40 Sunbright GL2−400MA01、NOF、Singapore))とを混合することによって実行された。そのPEGは、活性化期間の終了後すぐに添加された。PEGの量は、配列番号22の突然変異タンパク質の量に基づいて計算された。配列番号22の突然変異タンパク質とPEGとの標的モル比は、1:2である。
【0168】
PEG化の終了後に、PEG化されたタンパク質の純度を向上させ、かつ遊離PEG及び反応しない配列番号22の突然変異タンパク質を除去するために、1つの更なるイオン交換クロマトグラフィーステップ(Macro cap)が実行された。
【0169】
このようにして得られた生成物は、配列番号22#1(配列番号22、未接合された突然変異タンパク質)、配列番号22#002PEG05(5キロダルトンの分子量を有する直鎖型PEGと接合された突然変異タンパク質)、配列番号22#002PEG10(10キロダルトンの分子量を有する直鎖型PEGと接合された突然変異タンパク質)、配列番号22#002PEG20(20キロダルトンの分子量を有する直鎖型PEGと接合された突然変異タンパク質)、及び配列番号22#002PEG40(40キロダルトンの分子量を有する分岐鎖型PEGと接合された突然変異タンパク質)と呼ばれる。
【0170】
(実施例2)
配列番号22の突然変異タンパク質及びそのPEG共役物の凍結乾燥
配列番号22の突然変異タンパク質を有機溶媒に溶解させようとする前に、タンパク質溶液から塩類を除去し、かつその原料を凍結乾燥する必要がある。透析法は塩類を除去する方法として選択された。そのタンパク質は、凍結乾燥した後で比較的に無塩粉末を製造するために、重炭酸アンモニウムを含有する揮発性緩衝液に透析された。
【0171】
既知の薬物の在庫量(300μLのPRS−055、2mLの配列番号22#002PEG20、3mLの配列番号22 #002PEG40)は、0.02%重炭酸アンモニウムで10mLの体積まで希釈された。希釈された溶液は、透析管(SpectraPor 3500MWCO)に移され、105rpmで攪拌されながら、4℃において3Lの体積の0.02%重炭酸アンモニウムに対して透析された。0.02%重炭酸アンモニウムの体積は、フレッシュバッファーによって3時間の間隔で2回空にして置き換えられた。第3回目の置換の後、透析は一晩続けるようにしてもよい。その溶液は、その後50mLのファルコンチューブに移され、−80℃において冷凍庫に置かれた。その溶液が凍結されたら、そのチューブはすぐに約72時間凍結乾燥された。
【0172】
活性の確定の後、配列番号22#002PEG20及び配列番号22#002PEG40の残留薬物溶液は透析された。約5mLの配列番号22#002PEG20及び6.5mLの配列番号22#002PEG40は、0.02%重炭酸アンモニウムで、それぞれ20mL及び25mLの量まで希釈された。希釈された溶液は、透析管に移され、105rpmで攪拌されながら、4℃において体積4Lの0.02%重炭酸アンモニウムに対して透析された。0.02%重炭酸アンモニウムの量は、フレッシュバッファーによって2回2時間の間隔で2回空にして置き換えられた。その溶液は、その後50mLのファルコンチューブに移され、−80℃において冷凍庫に置かれた。その溶液が凍結されたら、そのチューブはすぐに約45時間凍結乾燥された。
【0173】
約25mLの配列番号22#002PEG05及び40mLの配列番号22#002PEG10は、0.02%重炭酸アンモニウムで、それぞれ50mL及び40mLの量まで希釈された。希釈された溶液は、透析管に移され、105rpmで攪拌されながら、4℃において体積4Lの0.02%重炭酸アンモニウムに対して透析された。0.02%重炭酸アンモニウムの量は、フレッシュバッファーによって2回2時間の間隔で2回空にして置き換えられた。その溶液は、その後50mLのファルコンチューブに移され、−80℃において冷凍庫に置かれた。その溶液が凍結されたら、そのチューブはすぐに約45時間凍結乾燥された。配列番号22#002PEG05及び配列番号22#002PEG10の一部は再透析され、32.5mgの配列番号22−PEG05及び31.6mgの配列番号22−PEG10は、それぞれ約37.5mL及び35mLの0.02%重炭酸アンモニウムに溶解された。その溶液は透析管と4Lの0.02%重炭酸アンモニウムに投入され、4℃において16時間放置された後、重炭酸アンモニウムが新しく作ったものに置き換えられた。2時間後に、そのサンプルは複数の50mLのファルコンチューブに採取、冷凍、かつ約48時間凍結乾燥された。
【0174】
(実施例3)
配列番号22の突然変異タンパク質及びそのPEG共役物の溶解性
配列番号22及びそのPEG共役物の有機溶媒における溶解性は測定された。少量の配列番号22及びそれぞれの共役物のいずれか一方は、4又は6mLのガラス瓶に入って正確に秤量された。選ばれた有機溶媒は、体積で(マイクロピペッター)少しずつ増えて添加された。その瓶は回転された後、映像の明瞭さのために観察された。透明な溶液が得られるまで、それに続く量の溶媒が追加された。
【0175】
(実施例4)
共役物のRP−HPLC分析
三つの異なる化合物、すなわち配列番号22、配列番号22#002−PEG20、及び配列番号22#002−PEG40の溶液は、それらの溶液の濃度が0.1mg/mLになるようにPBSで希釈された。それらの溶液は逆相HPLC(RP−HPLC)によって分析された。その逆相法は、HP/Agilent system、WatersxBridge BEH30℃I8 3.5μmを用いて、(4.6x250mm)columnという条件で実施された。勾配法を用いて、30℃(表1)において1mL/minで進んだ。15μlの注入量を採用した。
【0176】
(表1)逆相勾配法


表2は得られた結果を含む。RP−HPLC濃度は、突然変異タンパク質配列番号22に基づいて、リポカリン突然変異タンパク質の含有量及び分子量を測定するための基準として、PEG化された類似物の濃度の測定に用いられた。注入された各化合物の溶液のクロマトグラムは、図1〜図3に示されている。
【0177】
(表2)RP−HPLCによるサンプルの濃度


配列番号22#002PEG05及び配列番号22#002PEG10のクロマトグラムは、凍結乾燥及びPBSにおける再懸濁(図4及び図5)をされた後で得られた。
【0178】
(実施例5)
配列番号22及びそのPEG共役物の有機溶媒における溶解性
ミクロスフェア製剤を調整するために、薬物及びポリマー(PLGA)は有機溶媒に共溶解することが必要である。初期テストは配列番号22共役物でジクロロメタン(DCM)において行われた。配列番号22及び共役物がこの溶媒に溶解性が低いので、追加の溶解性テストは、配列番号22及び共役物でジメチルスルホキシド(DMSO)、DCM/ベンジルアルコール(BnOH)、DCM/酢酸(AcOH)、DCM/メタノール(MeOH)、酢酸エチル(EtOAc)、EtOAc/AcOH、並びにDCM、MeOH、AcOH及びH2Oの溶媒システムに行われた。
【0179】
PLGAポリマーは、薬物の溶解性がポリマーの存在下で変更があるかどうかを判断するために、これらの溶液の一部にを添加しました。ポリマーは、PEG化された薬物/ポリマーの結果重量/重量比が15/85になるように追加された。場合によって、ポリマーの添加は、混濁した溶液になることがあるので、混合液が透明になるまで、これ以上の溶媒を追加した。
【0180】
配列番号22#001の溶解性は、全てのテストされた溶媒に低い(<3mg/mL)である(表3)。
【0181】
(表3)配列番号22#001溶解性


配列番号22#002PEG20及び配列番号22#002PEG40は、両方ともDCM/MeOH/AcOH/H2Oからなる溶媒システにおいて最大溶解性を有する
(表4)配列番号22#002PEG20溶解性


(表5)配列番号22#002PEG40溶解性


ポリマーが配列番号22#002PEG20の溶液に添加された場合、その溶解性はほぼ変化しなかった。そして、ポリマーが配列番号22#002PEG40溶液に添加された場合、その溶液は混濁になって、薬物が溶けるようになるためにほぼ2倍に希釈される必要がある。その共役物はDCM/AcOH又はDCM/MeOHのようなもっと簡単な溶媒システムにおける溶解性がDCM/MeOH/AcOH/H2Oにおける溶解性より高くなることはない。
【0182】
配列番号22#002PEG05及び配列番号22#002PEG10は、DCM、MeOH、AcOH、及びH2Oを含む溶媒システムにも、テストが行われた。これらの共役物の溶解性はそれより高い分子量を有する共役物と比較されて表6に示されている。
【0183】
(表6)79%DCM、12.8%MeOH、7.9%AcOH、0.3%diH2O及びPLGAポリマーにおいて配列番号22の共役物の溶解性比較


配列番号22#002−PEG05及び配列番号22#002PEG20共役物は、PLGAポリマーと混合した場合、この溶媒において最も高い溶解性(タンパク質ベース)を有する。
【0184】
(実施例6)
配列番号22の突然変異タンパク質の共役物のミクロスフェア製造技術に対する適合性
配列番号22の突然変異タンパク質の共役物がミクロスフェア形成技術に適合するかどうかを判断するため、サンプルはミクロスフェアプロセスによって調製された。活動分析用サンプルは、その後、ミクロスフェアから共役物を抽出する方法、及びミクロスフェアから放出された共役物をPBSに収集する方法のいずれか一方によって調製された。
【0185】
配列番号22の突然変異タンパク質の共役物のそれぞれは、79%DCM、12.8%MeOH、7.9%AcOH、0.3%H2O及びポリマーからなる溶媒システムに溶解した。ミクロスフェアを製造するために用いられる透明かつ均一な油相溶液は得られた。エマルションは、その油相を1%のポリビニルアルコール(PVA)及び1%のDCMからなる水相と組み合わせることによって製造された。そのエマルションは0.3%PVAに収集され、かつ微粒子を硬化させるためにDCMを蒸発させてもよい。硬化した粒子は、その後、濾過によって収集し、水で洗浄し、凍結乾燥した。
【0186】
粒子が乾燥した後、ミクロスフェアのサンプルをアセトニトリル(ACN)に溶解させ、かつ0.1%TFAでそのポリマーを水に沈殿させることによって、その薬物の含有量は測定された。抽出された薬物を含んだ溶液は遠心分離され、その上清はRP−HPLCによって分析された(図6〜図9を参考)。
【0187】
配列番号22#002PEG05及び配列番号22#002PEG10のクロマトグラムにおいて、ピークがブロードであって、保持時間のシフトが見られたことから、それらはある程度変化されたことが示唆される。ミクロスフェアから抽出された配列番号22#002PEG20及び配列番号22#002PEG40のクロマトグラムにおいて、暫定的にPEG構造の分枝の部分喪失とみなされる異質なピークを含んだ。(Guiotto、A. et al. (2004) Bioorg. Med. Chem. 12、5031−5037を参照)。40キロダルトンのPEG共役物(31.8min)の新しいピークの溶出時間は、20キロダルトンのPEGを有する異質なピーがまだ付着される場合、期待されるように、損なわれていない20キロダルトンのPEG配列番号22(例えば、32.8min)と似ている。
【0188】
ミクロスフェアから抽出された共役物のサンプルは、ミクロスフェアを製造するための条件だけでなく、ミクロスフェアからタンパク質を抽出するための過酷な条件にもさらされた。ミクロスフェアプロセスにもさらされた代表サンプルを得るために、一方のサンプルのミクロスフェアは、微量遠心管において1.5mLのPBSに懸濁した後、37℃でロティサリーに置いてインキュベーションキャビネットに培養された。24時間後に、微量遠心チューブを3000rpmで3分間遠心分離した。放出された共役物を含む得られた上清はRP−HPLCで分析された(図10〜図11を参照)。ここで、配列番号22#002PEG05及び配列番号22#002PEG10は24時間において薬物放出の検出可能なレベルを有しないので、配列番号22#002PEG20及び配列番号22#002PEG40のクロマトグラムだけは示されている。
【0189】
ミクロスフェア(図10〜図11を参照)から放出された、PEG化されたリポカリン突然変異タンパク質のクロマトグラムは、抽出したタンパク質サンプル(図8〜図9を参照)と似ている。
【0190】
その薬物含有量及び初期24時間にミクロスフェアからの薬物放出は測定された。その結果は表7に示され、全てのタンパク質に関するピークの面積を用いて測定された。
【0191】
(表7)配列番号22ミクロスフェアの薬物含有量及び初期放出


ND=未検出
(実施例7)
PLGミクロスフェアにおける配列番号22の突然変異タンパク質の共役物のカプセル化
所望の生成物のプロファイルは、100μL以下の体積で25ゲージ以下の注射針によって運ばれた生分解性PLGミクロスフェア懸濁剤である。そのプロファイルは、少なくとも3ヶ月においてlμg/day〜5μg/dayの範囲で配列番号22を徐放して提供した。
【0192】
50μm未満の平均径を有するミクロスフェアは、25ゲージの注射針によって注入可能である。
【0193】
25ゲージの注射針で注入可能と認められる注射媒体に懸濁したミクロスフェアの割合は、注射媒体の設計によって、10%〜30%の範囲にある。
【0194】
100μLを注入するためには、注射媒体における平均値とする20%のミクロスフェアを用いて、20mgのミクロスフェアを運ぶべきである。
【0195】
配列番号22−PEG20は、ミクロスフェアにおいて13.5重量%以下のPLG(ポリ(ラクチド−co−グリコリド))ポリマーに封入された。20mgのミクロスフェアが注入されると仮定すれば、1回で2.7mgの活性薬物が投入されるべきである。総重量が3月(90日)の日数により分かれ、30μg/日の最大送達率は維持されることができる。この送達率は、ミクロスフェアの注入重量を変更することによって減少することができる。現在のパラメータによって、所定の送達率の維持を達成することができる。
【0196】
(実施例8)
in vitro放出研究
in vitro放出研究を行うために、300mgのPEG化された配列番号22(配列番号22#002PEG20)を用いてミクロスフェアロットが調製された。
【0197】
配列番号22PEG20の含有量、粒径分析、及び残留溶媒(TGAを使用)が評価された(表8を参照)。
【0198】
(表8)ミクロスフェアロットの要約データ


含有量はSEC及びRP−HPLCの両方で評価された。これらの測定値は、分析技術の間で一致しているとともに、測定値は以前に観測された数値より低いである。
【0199】
in vitro放出溶解は、配列番号22−PEG20が担持されたミクロスフェアにより37℃においてシンクコンディションバッファにおける活性薬物の量を測定することによって行われた。つまり、約10mgのミクロスフェアは、質量が正確的に記録されるように、14mLのポリプロピレン試験管において秤量した。4mL体積のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(1xPBS、滅菌濾過、HyClone)は各チューブに加えられた。遠心分離の代わりに、血清分離フィルタを用いた。
【0200】
きつく閉まったin vitro放出アセンブリは、Fisherウォーターシェーカーバスに水平に放置され、37℃において120rpmで行われた。記録された間隔で、16x100mm血清分離フィルタ(Fisher、cat. no. 02−681−52)を用いて、ミクロスフェアから上清を分離された。4mLの上清のほぼ全体は、HPLCガラス瓶に直接転移された体積の一部で、注入器により取られた。過剰な上清を捨てた。HPLCバイアルに採取された試料は、HPLCで分析するまで48時間内に冷蔵された。4mL体積の新しいPBSは、ポリプロピレンチューブに直接添加され、そのチューブを再びきつく閉めた。チューブはシェーカーバスに戻した。これらの実験結果は、図12及び図13に示されている。
【0201】
初期バーストは、以前に観察されたものよりも有意に大きいである。7日後に、製剤は約5μg/dayの近似質量放出速度で第7日から第14日まで放出し続けた。放出百分率の範囲は、1日あたり0.28%から1日あたり0.42%までである
放出は10μg/dayの増加速度で、第2週から第3週まで増加した。ポリマーの低下に従って速度が急激に増加する可能性は、エステル末端基ポリマーと酸性末端基ポリマーとの混合物を含むような製剤アプローチによって対処することができる。
【0202】
(実施例9)
37℃で三つの異なる微粒子製剤の50%ラット血漿におけるin vitro放出
PEG化された配列番号22(配列番号22#002PEG20)をそれぞれ300mg用いて、in vitro及びin vivo放出の研究を実行するために、実施例6で説明された所望の溶媒システムにおける高溶解度を得るようにタンパク質の凍結乾燥サイクルが最適化された後、3ロットのミクロスフェアが調整された(有機相は79%DCM、12.8%MeOH、7.9%AcOH、0.3%H2O、及びポリマーからなり、水相は1%ポリビニルアルコール(PVA)及び1%DCMからなる)。
【0203】
配列番号22PEG20の含有量、24時間バースト放出、残留溶媒(TGAを使用)粒径、及び粒度分布は評価された(表9を参照)。
【0204】
(表9)3ロットのミクロスフェアの要約データ

3つの異なる粒子ロット372〜56、372〜57及び372〜58からの微粒子は、20キロダルトンの分子量を有する直鎖型PEG(配列番号22#2PEG20)(400μl、5%の溶液、〜8%ローディング)にVEGF接合されるための結合親和性を備えるヒト涙リポカリン突然変異タンパク質1.6mgを含む。オーバーヘッドスターラーを用いて、37℃において40rpmで50%ラットLi−ヘパリン血漿にその微粒子を培養した。最初の84日に亘って、シンクに放出された結合活性リポカリン突然変異タンパク質の量は定量的なECL ELISAによって分析された。ロット372〜56及び372〜58に対して、末端酸性基及び0.45Dl/g〜0.55Dl/gの固有粘度を有し、75モル%のDLラクチドモノマー及び25モル%のグリコリドを含有するポリ(DL−ラクチド−グリコリド)ポリマーは用いられた。さらに、パルミチン酸は、ロット#371〜58に対して細孔形成剤として使用された。ロット372〜57に対して、末端酸性基及び0.4Dl/g〜0.5Dl/gの固有粘度を有し、65モル%DLラクチドモノマー及び35モル%グリコリドを含有するポリ(DL−ラクチド−グリコリド)ポリマーは用いられた(サイズ25キャノンフェンスケガラス毛管粘度計を用いて、30℃において0.5%w/vでCHCl3に粘度は測定された)。
【0205】
機能的に活性なリポカリン突然変異タンパク質の叙放性は、全ての3つの製剤から観測された。初期放出の後に、低いプラトー(第28日〜56日)及び第63日以降のより高い放出(図14及び図15を参照)が現れた。拡散律速初期放出は、比較的に遅くて数日間に及んだ。微粒子の多孔率を増加させることで、微粒子フタル酸の含有はロット372〜58の初期放出を有意に25%まで増加させると推定された。全ての3つの製剤のプラトー放出速度はかなり類似している。
【0206】
比較のために、リポカリン突然変異タンパク質の合計放出も測定された(図16及び図17)。放出活性リポカリン突然変異タンパク質レベル及び合計放出リポカリン突然変異タンパク質レベルの結果を比較すると、放出期間を通して40%〜65%の初期放出されたリポカリン突然変異タンパク質は活性を示すように判定した(図17を参照)。活性リポカリン突然変異タンパク質と合計リポカリン突然変異タンパク質との比率は、ミクロスフェア(ロット00372〜58)の1つのロットにおいて最も安定である。
【0207】
(実施例10)
3つの異なる微粒子製剤の雌RNUラットに単回皮下投与した後の薬物動態
この実験の目的は、4月に亘って放出されたリポカリン突然変異タンパク質の血漿中濃度を計量することで、延長したin vivo放出プロファイルを測定してin vitro放出と関連付けることにある。
【0208】
150mg/kg微粒子溶液(5%、3mL/kg)がヌードラットに対して皮下注射(s.c.)投与された第2〜78日の血漿サンプルは、結合活性リポカリン突然変異タンパク質を測定する定量的なECL ELISAによって分析された。ミクロスフェアs.cから放出された活性配列番号22−PEG20は血漿に検出されることができ、また、初期放出の後で一定の低いプラトーフェーズは現れた。最大第43日までの初期in vivo放出パターンは、in vitroで観測されたパターンと非常に対応した。
【0209】
図19に示すように、この研究の結果は、第43日後血漿中濃度が1lig/mLを下回るから、in vivo放出はin vitro放出よりも早い速度で行われる可能性があることが示唆された。30%のs.c.バイオアベイラビリティ及び18mL/h/kgの除去速度は、別の研究において配列番号22−PEG20に対して実験的に測定された。in vivo放出速度は、定常状態(Css=k0/Cl、ここで、k0は放出/注射の速度定数であり、Clは除去速度(Cl=18mL h−1 kg−1)であり、Cssは定常状態における血漿濃度(プラトーでCss=0.015μg/mL)である。)において、放出速度(注射)と等しい消失速度として計算されることができる。配列番号22−PEG20デポ微粒子からの放出速度は、それゆえにk0−Css*Cl=0.015μg/mL*18mL h−1 kg−1=270ng h−1 kg−1又はk0=6.48μg/day*kg=1.3μg/day*ratである。26μg/dayの一定の放出速度は、200gのラットにおいて2mg、4mgまでの3か月デポ(150mg/kg、8%ローディング)からのものが望ましく、現在観測された放出速度より10倍高い(リポカリン突然変異タンパク質の合計放出は活性濃度より2倍高いことも考慮に入れる)。
【0210】
本明細書中に例示的に述べられた本発明は、本明細書に特に開示されない、任意の要素又は複数の要素、限定又は複数の限定なしに、好適に実行できる。従って、例えば用語「含む、具える(“comprising”、“including”、“containing”)」などは、拡張して、及び限定することなく読むべきである。さらに、本明細書中で用いられる用語及び表現は記載の用語かつ限定しない用語として用いられ、図示及び記載された特徴の任意の等価物又はその一部を排除するような用語及び表現の使用の意図はなく、様々な変更が特許請求の範囲の範囲内で可能であることは理解されよう。従って、本発明は好適な実施形態及び選択的な特徴によって特に開示されてきたが、本明細書で例示され、開示された本発明の変更及び変形は当該技術分野の当業者に依拠されること、及び、このような変更及び変形が本発明の範囲内にあると見なされることは理解すべきである。本発明は本明細書中で広範かつ一般的に記載されている。一般的な開示内にある、より限定した種及び亜属の群の各々はさらに、本発明の一部を形成する。摘出された材料が本明細書中に特に列挙されているか否かに拘わらず、その属から任意の材料を除去する条件付き又は消極的な限定を有する本発明の一般的な記載を含む。さらに、本発明の特徴又は態様がマーカッシュ形式の群の用語で記載される場合に、当該技術分野の当業者は、本発明がさらにこれによって任意の独立した要素、又はマーカッシュ形式の群の要素の部分群の用語で記載されることが分かるであろう。本発明の更なる実施形態は、以下の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト涙リポカリン(hTLc)突然変異タンパク質であって、
ヒトMet受容体チロシンキナーゼ(c−Met)又はそのフラグメントに対して検知可能な結合親和性を有し、
前記突然変異タンパク質は、配列番号49のアミノ酸配列、又は配列番号49に示されるアミノ酸配列に対して85%配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでいる、
ことを特徴とする突然変異タンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載の突然変異タンパク質において、
前記突然変異タンパク質は、配列番号49のアミノ酸配列である、
ことを特徴とする突然変異タンパク質。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の突然変異タンパク質において、
前記突然変異タンパク質は、20nM又はそれよりも小さいKDを有するc−Metに対して結合親和性を有している、
ことを特徴とする突然変異タンパク質。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の突然変異タンパク質において、
前記突然変異タンパク質は、前記突然変異タンパク質の血清半減期を延長する部分に共役する、
ことを特徴とする突然変異タンパク質。
【請求項5】
請求項3に記載の突然変異タンパク質において、
前記血清半減期を延長する部分は、ポリエチレン(PEG)又はその活性化された誘導体である、
ことを特徴とする突然変異タンパク質。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のヒト涙リポカリン突然変異タンパク質と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−255007(P2012−255007A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176112(P2012−176112)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2012−523344(P2012−523344)の分割
【原出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(512029319)ピエリス アーゲー (3)
【氏名又は名称原語表記】PIERIS AG
【Fターム(参考)】