説明

リポ酸濃度を高めた発生細胞用培養培地

濃度を高めたリポ酸を含む培養培地を使用する、体外受精のための組成物及び方法が提供される。より詳細には、本発明は、5μM〜40μMの濃度のリポ酸を有する発生細胞用の培養培地を提供する。確認された範囲内の濃度でリポ酸を含む培養培地は、対照培地で培養した胚盤胞と比較して、生存率が増大し、細胞数が増大し、内部細胞塊が増大し、及び/又は塊全体に対する内部細胞の占める割合が増大した胚盤胞を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的に、哺乳動物の体外受精(IVF)、並びに、受精及び胚発生をおこなうのに、及び幹細胞増殖をおこなうのに有用な培地及び工程に関する。特に本発明は、胚を含む発生細胞の増殖及び発生をサポートし、且つIVFにおける妊娠の成功の可能性を顕著に増大させる、リポ酸濃度を高めた培養培地を提供する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2007年5月1日付けで出願された米国仮特許出願第60/915,180号明細書に基づく優先権を主張し、その開示の全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
以下の記載は、読者の理解を助けるために示される。示した情報又は引用した文献のいずれも、本発明に対する先行技術であると認められるものではない。
【0004】
体外受精は、男性及び女性の様々な形態の不妊を克服するために使用される手法である。この工程は、in vitroで卵母細胞を精子で受精させること、及び、その後、発生中の胚を女性の体内に移植することを含む。IVFによる最初の誕生(非特許文献1)から30年近くが経ったが、この工程は、低着床率及び低妊娠率という継続的な課題に直面している。「試験管ベビー」が初めて誕生してから最初の10年間では、報告されたIVFの成功率は、8%〜10%にすぎなかった。この低い成功率は、少なくとも部分的には、胚培養培地の粗悪な品質のためであった。不幸にも、最近の30年間にわたるIVF培養培地を改善し特化させようとする絶え間ない努力にも関わらず、単一胚移植が採用された例(2005年のフィンランド及びスウェーデンにおける国内IVF登録者に基づく)では、成功率は約30〜35%に増加したにすぎない。この単一胚移植データは、1978年のデータに対し最も比較可能なデータである。IVF成功率の改善におけるこの緩慢な進歩は、配偶子、受精卵及び胚等の発生細胞用の培養培地の代替及び増強における困難性及び予測不可能性を反映する。
【0005】
ヒトIVFのために現在使用されている培地の種類は、単純培地と複合培地という2つのカテゴリーに分類される。単純培地は、ピルビン酸塩、乳酸塩及びグルコース等の炭水化物エネルギー源を添加した平衡塩類溶液であるアール液及びヒト卵管液(HTF)等のような培地である。複合培地(Ham’s F−10培地等)は、非必須アミノ酸及び必須アミノ酸と、ビタミン、抗生物質及び血清又はタンパク質等の他の添加物とをさらに含む。
【0006】
IVF培養培地によっては、単一培地中で8細胞期又はそれ以降まで胚発生をサポートすることを目的としているが、様々な発生段階における発生中の胚をサポートするように別々の培養培地を最適化することが趨勢となっている。このことは、IVFにおける逐次培養培地の広範な使用につながっている。例えば、逐次培養培地系は、発生の最初の48時間での1細胞受精卵から8細胞胚までの胚の増殖のために1つの培養培地を、8細胞胚を胚盤胞期まで増殖させるために別の培養培地を使用することがある。女性の生殖器官は発生中の胚に対して環境の変化をもたらすので、逐次培養培地は、in vivoでの胚増殖時の女性の生殖器官をより密に模倣するように構成される。培地の組成は典型的には、胚の増殖及び発生をサポートするために培地の最適化を改善するよう、アミノ酸及び糖質等の成分に関して異なる。
【0007】
IVFにおいて採用される培養培地は、最近の30年間の過程で、ある程度発展してき
た。しかし、いくつかの観点では培養培地は、全く変化してこなかった。胚培養培地の改善を目指すほとんどの研究の焦点は、培地の主要部分(core)または大半(bulk)を構成する成分、すなわち炭水化物エネルギー源、アミノ酸、血清及び塩/緩衝剤に向けられてきた。他の原料は、ほとんど注意を払われてこなかった。場合によっては、これらの原料は、胚培養培地が最初に考案される基礎となった初期の体細胞培養培地中に存在していたという理由だけで、胚培養培地中に含まれてきたようである。リポ酸(LA)は、かかる原料の1つである。
【0008】
α−リポ酸又はチオクト酸としても知られるリポ酸は、ピルビン酸、α−ケトグルタル酸及び分枝鎖α−ケト酸の酸化的脱炭酸を触媒する多酵素複合体のE2(ジヒドロリポ酸アシルトランスフェラーゼ)サブユニットの補酵素としての役割で広く知られている。しかし過去約10年間で、リポ酸が抗酸化剤でもあることが明らかとなった。リポ酸の性能は、リポ酸/ジヒドロリポ酸系の独特な抗酸化特性、その活性酸素種(ROS)除去能、及び、最も強力な抗酸化剤の1つであるグルタチオンを含む他の抗酸化剤の還元型の組織濃度に対する顕著な効果に起因する。文献からのデータは、リポ酸及びジヒドロリポ酸(DHLA)が、マウス白血病細胞及びジャーカット(jurkat)T細胞のような特定の細胞型に対する増殖促進効果を有する場合、又は有しない場合があることを示唆する。非特許文献2及び非特許文献3を参照されたい。
【0009】
リポ酸は、2つの鏡像異性形態(R体及びL体)を作り出すキラル中心を有する両親媒性のジスルフィド化合物であり、最も生物学的に活性なものはR−鏡像異性体である。上記ジスルフィド成分は分子に金属キレート特性をもたらし、その一方で、化合物の両親媒特性によりその相対的に小さな分子(分子量=206.34g/mol)は容易に細胞膜を拡散透過でき、リポ酸はα−ケト酸の脱炭酸(好気条件でのエネルギー代謝における重要な工程)に関与する複数の細胞性多酵素複合体によりそのジチオール、すなわち還元型であるDHLAに容易に変換される。加えて、DHLA/LA対は−0.29Vの酸化還元電位を有すると報告され、それによりDHLA/LA対は強力な電子受容体/酸素ラジカル除去ユニットとなる。この強力な酸化還元電位により、その分子は、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオン、コエンザイムQ10及びユビキノン等の他の抗酸化剤の電位のリサイクル役として機能できる。リポ酸の還元は細胞内で起こると推定されるが、生じたDHLAは細胞から周囲の培地中へ漏出し、細胞内及び細胞外の抗酸化能の両方に影響すると考えられる。
【0010】
リポ酸は、原核生物及び真核生物に広く存在する。脱プロトンした塩基であるリポ酸イオンは、生理的条件での最も一般的な形態であり、前駆体であるオクタン酸、及び、硫黄源(最もありうるのはシステイン残基)からリポ酸合成酵素により細胞内で合成されると考えられる。これにより当該分子は非必須栄養素となるが、関節炎、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、メタボリック症候群及びアルツハイマー病を含め、過度の酸化的ストレスに関連する疾患において、有益な栄養補助食品であることが報告されている。例えば非特許文献4、非特許文献5を参照されたい。
【0011】
体内でのリポ酸の役割に関する知識体系の増大に関わらず、培養における発生細胞(胚等)の増殖に対するその効果についてはほとんど知られていない。リポ酸は胚培養培地中に低濃度で含まれることがあるものの、通常は存在しない。胚培養培地中におけるリポ酸の役割を体系的に調査した2つの研究は、胚培養培地からのリポ酸の除去は結果に対する効果を有しないという結論に至った。第1の研究は、ハムスター8細胞胚の、孵化直前の及び孵化後の胚盤胞へのin vitroでの発生に対する、Ham’s F10培地由来のリポ酸を含む11種類の水溶性ビタミンの効果を調べた(非特許文献6)。この研究は、ハムスター8細胞胚の発生におけるリポ酸の除去は、いずれの培養段階においても発生に対する有意な効果をもたらさないという結論に至った。第2の研究により、拡張胚盤
胞へのウサギ桑実胚の培養における、Ham’s F10培地のリポ酸を含む11種類の水溶性ビタミンの除去の効果を観察した(非特許文献7)。この研究も、リポ酸の除去による有意な効果はないという結論に至った。それにもかかわらず、リポ酸はいくつかの胚培養培地に含まれている。
【0012】
公表された文献からは明らかでない理由により、リポ酸を含むこれらの胚培養培地は、その濃度を1μM以下に制限する。これは、初期の且つ今なお一般的な体細胞培養培地であり、たまたまリポ酸を1μMの濃度で含んでいるHam’s F10培地及びF12培地から、多くの胚培養培地が最初に考案されたという事実のためでありうる。しかし、かかる培地においてリポ酸を含むことの必要性が、又は望ましさでさえもが、初期胚の培養培地の基礎としてのHam’s F10培地及びF12培地の初期の採用時には検討されなかったことは、上で引用した研究から明らかである。これは、現在の主要な市販の胚培養培地製品のいずれもリポ酸を全く含有しないようであるという事実によっても明らかに示される。実際、Ham’s F10培地及びF12培地からの体細胞培養培地の発展の傾向は、それらの培地の希釈にも向かっており、結果としてさらに低濃度のリポ酸を有する培養培地に至った。例えば、Ham’s F12培地に続く一般的な培養培地は、Ham’s F12培地の、リポ酸を含まない別の培養培地であるダルベッコ変法最小必須培地(DMEM)との1+1希釈物である、DMEM/F12である。RDFは、後ほど現れた、DMEM/F12に基づき構成された別の一般的な培養培地である。RDFは、DMEM/F12の、リポ酸を含まない別の培養培地であるRPMI1640との1+1希釈物である。したがって、Ham’s F10培地及びF12培地からの培養培地の発展の傾向は、培養培地におけるリポ酸の役割が見過ごされてきた、又は正しく評価されてこなかったことを示す。
【0013】
リポ酸は、他の濃度で体細胞培養培地中にも含まれてきたが、かかる培地中において使用されるリポ酸の濃度は何オーダーにもわたって幅があり、「異なる細胞型の培養をin
vitroで成功させるには、異なる培地組成の使用が必要とされることが多い。」と認識されている(例えば、特許文献1を参照されたい)。このことは、体細胞とは非常に異なる必要条件を有する、発生細胞(胚等)のための培養培地について特に当てはまる。加えて、体細胞培養の分野内でさえ、培養培地においてリポ酸が有益であるかどうかに関しては意見の相違がある(例えば、「α−リポ酸(チオクト酸)を培養培地に添加することがあるが、それが実際に必要だという証拠はほとんどない。」と述べている特許文献2の44頁を参照されたい)。そのように、体細胞培養培地におけるリポ酸の使用に関する文献は、培養培地におけるリポ酸の、配偶子、受精卵及び胚等の発生細胞に対する望ましさ又は効果を明らかにはしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第98/08934号
【特許文献2】国際公開第99/35242号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】シュテプトー及びエドワーズ(Steptoe, P.C. and Edwards, R.G.), ランセット(Lancet) 2(8085): 366 (1978)
【非特許文献2】ドヴィノヴァ(Dovinova)ら, ネオプラズマ(Neoplasma), Vol. 46, pp. 237-241 (1999)
【非特許文献3】ミズノ(Mizuno)ら, バイオケミカル アンド バイオフィジカル リサーチ コミュニケーションズ(Biochem. Biophys. Res. Commun.), Vol. 200, pp. 1134-1136 (1994)
【非特許文献4】パーシャディン(Pershadsingh HA), エキスパート オピニオン イン インベスティゲイティング ドラッグス(Expert Opin Investig Drugs) 16:291-302 (2007)
【非特許文献5】ホルキスト(Holquist)ら, ファーマコロジー アンド セラピー(Pharmacol Ther.) 113: 154-64 (2007)
【非特許文献6】ケイン(Kane)ら, バイオロジー オブ リプロダクション(Biology of Reproduction), 39, 1137 (1988)
【非特許文献7】ケイン(Kane), ジャーナル オブ エクスペリメンタル ズーロジー(J. of Expt. Zoology), 245, 220 (1988)
【発明の概要】
【0016】
本発明は、哺乳動物の発生細胞、特に胚及び哺乳動物の幹細胞のための改良された培養培地を提供する。本発明は、その培養培地中で哺乳動物の発生細胞を培養する方法をさらに提供する。その培養培地は、任意の他の既知の胚培養培地の少なくとも5倍、及びより望ましくは少なくとも10倍の、リポ酸及び/又はリポ酸誘導体の境界明確な濃度範囲を特徴とする。本発明者らにより特定される範囲内の濃度でリポ酸又はリポ酸誘導体を含む培養培地は、対照培地で培養した胚盤胞と比較して、生存率が増大し、細胞数が増大し、内部細胞塊が増大し、及び/又は塊全体に対する内部細胞の占める割合が増大した胚盤胞を提供することができる。このことは、これらの因子が、胚が健康であるか、及び将来的に子宮内で胎児への発生が成功するか、を予測する判断材料とみなされるため、重要である。
【0017】
特定の一実施形態では、培養培地は、水、無機塩、少なくとも1つのエネルギー源、及び5μM〜40μMの濃度のリポ酸を含む。一実施形態では、培地は、1つ又は複数のアミノ酸をさらに含む。これは、5μM〜20μMの濃度のリポ酸を有する培養培地を含み、5μM〜15μMの濃度のリポ酸を有する培養培地をさらに含み、8μM〜12μMの濃度のリポ酸を有する培養培地をさらに含み、約10μMの濃度のリポ酸を有する培養培地をまたさらに含む。培養培地は、増殖因子、ホルモン、ビタミン及び抗生物質等の他の原料を任意に含み得るが、これらに限定はされない。
【0018】
培養培地は、第1の発生段階から第2の発生段階への発生細胞の増殖をサポートするように調整され得る。例えば培養培地は、哺乳動物の胚を、4細胞期まで、8細胞期まで、又は胚盤胞期までサポートするように構成され得る。したがって、本発明に包含される様々な培養培地は、様々な成分を様々な濃度で含み得る。
【0019】
本発明のさらなる目的、特徴及び効果は、添付した図面と共に提供される以下の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による、20%O2におけるin vitroでのマウス胚の胚盤胞の発生を示すデータを示す図である。
【図2】本発明による、5%O2におけるin vitroでのマウス胚の胚盤胞の発生を示すデータを示す図である。
【図3】リポ酸の存在下における活性酸素種(ROS)の抑制を示すデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、移植前のin vitroでの配偶子、受精卵及び/又は胚の発生をサポートする、濃度を高めたリポ酸及び/又はリポ酸誘導体を含むIVF用及び幹細胞用の培養培地組成物を提供する。より具体的には、本発明のIVF培養培地は、リポ酸及び/又はリポ酸誘導体を5μM〜40μMの濃度で含む。この範囲内では、胚発生についての最大
の改善は約10μMで起こる。したがって本発明の培養培地は、例えば5μM〜20μM、5μM〜15μM及び8μM〜12μM、好ましくは約10μMを含む、より明確な範囲内の濃度のリポ酸及び/又はリポ酸誘導体を有する培地も包含する。したがって本発明は、リポ酸を含む既知の胚培養培地と比較して、リポ酸濃度が少なくとも5倍、及び望ましくは少なくとも10倍増大した、哺乳動物の胚のための培養培地を提供する。
【0022】
本明細書に記載される培養培地とその使用とは、商業的及び工業的用途に加えて(又はその代替として)、重要な非商業的及び非工業的用途(例えば研究)を有する。本発明は、法により禁じられているヒト胚の商業的な使用を後押しすることを意図しない。
【0023】
「培養培地」という用語は、幹細胞、配偶子、受精卵及び胚等の哺乳動物の発生細胞のin vitroでの培養のために使用される、規定の浸透圧及びpHに調製された塩及び炭水化物を含有する水性媒体を表すために、本明細書を通じて使用される。かかる培地は、当業者により研究室で調製することができ、また市販されてもいる。以下の説明の多くは胚を発生させるための培養培地に集中するが、その培養培地は幹細胞、配偶子及び受精卵を発生させる及び培養するために使用され得ることを理解されたい。
【0024】
「胚」という用語は、受精卵から最初の5日又は6日までの、全ての発生段階における細胞を表すために使用される。
【0025】
「発生細胞」という用語は、幹細胞、配偶子、受精卵及び胚を表すために使用される。
【0026】
本発明は、少なくとも部分的には、5μM〜40μMの範囲の濃度でリポ酸を含む培養培地が、リポ酸を除去した、又はこの範囲外の濃度でリポ酸を含む培養培地と比較して、IVF処置の成功率を実質的に改善するという本発明者らの発見に基づく。理論に拘束されることを望むものでも又は意図するものでもないが、本発明者らは、発生細胞のための培養培地中においてリポ酸濃度を高めることによりもたらされる恩恵は、様々な効果の相互作用から得られると考える。リポ酸の抗酸化的効果は、培地中で重要な役割を果たす可能性がある。具体的には、培養へのリポ酸の添加は、フリーラジカル及び活性酸素種により引き起こされる酸化的損傷から発生中の細胞を保護する役割を果たすと考えられる。しかし、他の効果も、この恩恵に寄与し、配偶子、受精卵及び胚のための培養培地におけるリポ酸の狭い有効範囲を定めるのを助けている可能性がある。これらの効果は、GSHの細胞間レベルの増大の可能性とキレート効果とを含む。加えて、培養培地におけるリポ酸のレベルの増大による恩恵は、発生細胞内におけるリポ酸の代謝の様々な段階で存在する、リポ酸の様々な代謝産物の結果であり得る。例えば、その恩恵は、メチル化リポ酸又はDHLA等のリポ酸の誘導体に由来することがある。
【0027】
本発明の培地によりもたらされる改善は、いくつかのパラメータの内の1つ又は複数により測定され得る。これらには、4日段階又は5日段階までの胚盤胞の生存率が向上すること、胚盤胞の細胞数がより多いこと、胚盤胞の内部細胞塊がより大きいこと、及び胚盤胞の内部細胞塊が全体に対してより大きい割合を占めることを含む。本発明者らは、5μM〜40μMの範囲外の濃度のリポ酸を有する培養培地はこれらの有益な効果をもたらすことができず、胚発生に対して有害な効果を有することさえあり得ることを見出した。例えば本発明者らは、リポ酸を培養に5μM未満で添加しても、(i)培養中の胚の胚盤胞期への進行、(ii)in vitroでの胚盤胞中の細胞数、又は(iii)胚盤胞の内部細胞塊に対して、たとえあるにせよ、ほとんど効果がないことを発見した。対照的に、少なくとも5μMのリポ酸を含む培地中で培養した胚は、これらの有益な効果の全てを示す。同様に、約40μMを超える濃度でリポ酸を培養培地に添加すると、リポ酸の有益な効果は失われる。この濃度を超えると、4日目胚盤胞の発生低下と、細胞数減少との傾向がある。したがって、リポ酸は臨界範囲でのみ有効であるようである。
【0028】
本発明の培養培地の使用によりもたらされる胚発生における改善は、高濃度(すなわち5μM〜40μM)のリポ酸及び/又はその誘導体を含有する改善した培地中で培養した胚を、リポ酸又はその誘導体が対照中には存在しない点でのみ改善した培地と異なる対照培地中で培養した胚と比較することにより定量され得る。例えば、受精した哺乳動物の受精卵(例えばCFlマウス受精卵等)を4日目又は5日目まで本発明の培地中で培養したとき、本発明の培養培地は、以下の(1)〜(4)の1つ又は複数において、少なくとも5%、少なくとも10%、又はさらに少なくとも15%の増大をもたらし得る:(1)3日目における緊密化(コンパクション)が起こる割合;(2)4日目における総胚盤胞発生の割合;(3)5日目における総胚盤胞発生の割合;及び(4)5日目における胚盤胞孵化の割合。加えて、本発明の培地は、総内部細胞数が、及び/又は該内部細胞による塊全体に対する割合の増大が、対照培地中で培養した胚盤胞の内部細胞よりも少なくとも10%、又はさらに少なくとも15%高い胚盤胞を提供しうる。
【0029】
本発明の培養培地は、様々な段階の胚発生をサポートするように最適化され得る。例えばその培地は、4細胞期まで、8細胞期まで、4細胞期から8細胞期まで、胚盤胞期まで、又は4細胞期若しくは8細胞期から胚盤胞期まで、胚を培養するように最適化され得る。したがって、培養の必須原料及び非必須原料の性質及び濃度は変化することがあるが、リポ酸(又はその誘導体)を含む各々の培養培地中では、リポ酸の濃度は望ましくは5μM〜40μMである。発生細胞の逐次培養において、リポ酸又はリポ酸誘導体は、1つの培地中には存在し、他の培地中には存在しなくともよい。
【0030】
本発明の培養培地によりもたらされる改善は、大気酸素条件(例えば約20%)下及び低減酸素条件(例えば約5%)下で増殖及び発生した胚盤胞について達成され得る。このことは、低減酸素条件が子宮の環境をより良く模擬しより良い結果をもたらすという事実にも関わらず、ほとんどのIVFプログラムが大気酸素条件下で配偶子及び胚を培養するため、重要である。Quinn, P., Harlow, G.M., 「移植前マウス胚のin vitroでの発生における酸素の影響(The effect of oxygen on the development of preimplantation mouse embryos in vitro)」, J. Exp. Zool., Oct. 1978, 206(l):73-80.;Thompson, J.G., Simpson, A.C., Pugh, P.A., Donnelly, P. E., Tervit, H.R., 「移植前ヒツジ胚及びウシ胚のin vitroでの発生における酸素濃度の影響(Effect of oxygen
concentration on in-vitro development of preimplantation sheep and cattle embryos)」, J. Reprod. Fertil, July 1990, 89(2):573-8。この理由は、低酸素条件下で培養するために必要とされる三重ガスインキュベータの費用のためであることが多い。したがって、本発明の培地組成物は、高い酸化的ストレス下で培養される胚を受け入れるのにより適した培養培地をもたらす。
【0031】
発生細胞(胚等)を培養するための典型的な培養培地は、主要原料として、水と、無機塩と、1つ又は複数のエネルギー源と、1つ又は複数のアミノ酸(非必須アミノ酸及び任意に必須アミノ酸を含む)とを含む。胚培養培地における典型的なエネルギー源は、ピルビン酸塩、乳酸塩及びグルコース等の炭水化物エネルギー源を含む。適切な無機塩は、CaCl2・2H2O、CuSO4・5H2O、FeSO4・7H2O、KCl、MgSO4、NaCl、NaHCO3、Na2HPO4、ZnSO4・7H2O及びKH2PO4を含む。非必須アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸塩、システイン、グルタミン酸塩、グルタミン、グリシン、プロリン、セリン及びチロシンを含む。必須アミノ酸は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン及びバリンを含む。リポ酸及び主要原料に加えて、培養培地は典型的には他の添加物を含む。これらは、ビオチン、パントテン酸塩、葉酸、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン及びチアミン等のビタミンを含み、増殖因子、ホルモン、並びにペニシリンG及びストレプトマイシン硫酸塩等の抗生物質をさらに含
む。アルブミン(例えばヒト血清アルブミン又は組換えヒトアルブミン等)、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、EDTA等のキレート剤、及びHEPES緩衝液又はMOPS緩衝液等の緩衝液を、培養培地に添加することもできる。培養培地中にも含まれ得る特定の様々な原料は、塩化コリン、ヒポキサンチン、イノシトール、チミジン、シアノコバラミン、システアミン、フェノールレッド及びグルタチオンを含むが、これらに限定されない。
【0032】
培養培地中における主要原料及び他の添加物の濃度は、培地を最適化する対象である胚発生段階に応じて変化し得る。培養培地中における無機塩の典型的な濃度は、約100mM〜約150mM又は約110mM〜約140mMであり得る。培地中のエネルギー源の典型的な濃度は、約5mM〜約40mM、約5mM〜約30mM、又は約5mM〜約15mMであり得る。培養培地中におけるアミノ酸の総量の典型的な濃度は、約0.1mM〜約15mM、又は約0.5mM〜約12mM、又は約0.5mM〜約6mMであり得る。アミノ酸の組成及びその濃度は、培養培地中における細胞の発生段階に応じて変化し得る。培養培地中におけるビタミンと、増殖因子と、ホルモンと、他の様々な原料とは、例えば1mM以下、0.5mM以下、又はさらに0.1mM以下の、かなり低い濃度で添加される傾向がある。
【0033】
本発明の培養培地は、従来の胚培養培地に、5μM〜40μMのリポ酸又はリポ酸誘導体濃度となるのに十分なリポ酸又はリポ酸誘導体を添加することにより構築され得る。リポ酸誘導体は、培養中の発生細胞の生存又は発生を改善することに関して等価の、又は実質的に等価の生物学的効果を有するリポ酸から誘導された分子を含む。したがってリポ酸誘導体は、メチル化リポ酸及びDHLAを含むが、これらに限定されない。本出願の目的のために、誘導体は、本質的に等価の生理学的特性を有する他の生物学的に活性な両親媒性のジスルフィド/チオクト分子も表す。
【0034】
リポ酸又はリポ酸誘導体は、鏡像異性形態の混合物として、又は単一の鏡像異性体として、添加され得る。後者の場合には、生物学的により活性であることから、R−鏡像異性体がより望ましいことがある。例えばリポ酸は、エネルギー源としてピルビン酸塩、グルコース及び乳酸塩が添加された、ヒト卵管液(HTF)、ウィッティンガム(Whittingham's)T6培地及びアール平衡塩類溶液(EBSS)(Irvine Scientificから入手可能)等の市販の単純培養培地に添加することができる。これらの単純培地は、卵母細胞の受精と2日目又は3日目の移植までの胚の培養とのための臨床IVF設備(clinical IVF settings)において一般的に採用されてきた。リポ酸は、初期胚の増殖をサポートするように構成されるより複雑な胚培養培地にも添加され得る。かかる培地は、Vitrolifeから入手可能なG1(商標)培養培地を含む。この培地は、卵割期胚の8細胞期前後への発生をサポートするように構成される。培地は、初期胚をサポートするために、炭水化物、アミノ酸及びキレート剤を含む。G1培地の完全な構成を、表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
代替的に、リポ酸又はリポ酸誘導体は、3日目(8細胞期)を越えて胚をサポートすることができる、市販のIVF培養培地に添加され得る。これらの培養培地は、移植に先立ち、胚を胚盤胞期に進ませるように構成されている。本発明によれば、リポ酸は、胚盤胞の発生をさらに増強するために、これらの培地に添加され得る。1つの例として、Desai et al, Human Reprod 12: 328-335 (1997)に記載されているα−変法必須培地(αMEM)が挙げられる。第2の例として、パントテン酸塩を加えたHECM−6培地が挙げられる。McKiernan SH and Bavister BD, Human Reprod 15: 157-164 (2000)。他の例として、Vitrolifeから入手可能なG2培地が挙げられる。G2は、8細胞期(3日目)前後から胚盤胞期への胚の発生をサポートするように構成される培地である。該培地(表2)は、後期胚をサポートするために、炭水化物、アミノ酸及びビタミンを含む。
【0037】
【表2】

【0038】
一実施形態では、8細胞期胚は、初期の増殖(すなわち8細胞期まで)をサポートするように最適化されたリポ酸添加胚培養培地から、後期の増殖(すなわち胚盤胞期まで)をサポートするように最適化された胚培養培地へ移される。リポ酸は、後者の培地には添加してもよく、又はしなくてもよい。
【0039】
本発明の培養培地は、5μM〜40μMのリポ酸濃度となるのに十分なリポ酸又はリポ酸誘導体を、従来の配偶子(卵母細胞又は精子)培養培地又は凍結培地に添加することにより構築することもできる。以下の表3〜表5は、細胞の発生及び生存が改善するようリポ酸が含まれ得る、配偶子培養培地を示す。
【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【実施例1】
【0043】
実施例1−リポ酸は、培養胚の胚盤胞細胞数を増大させる
本発明に従い、in vitroでのマウス胚の発生時に、リポ酸を含む培養培地組成物を使用した。5μM〜40μMの濃度のリポ酸が、胚盤胞細胞数及び細胞塊の有意な増大を含む、マウス胚発生に対する有意に有益な効果を有することがわかる。
【0044】
以下の手順を実施した。リポ酸をエタノールに溶解した。100%のEtOHでの10
0mMの希釈標準溶液(working solution)を調製し、その後適当に希釈を行い培養培地(最終濃度:1μM、10μM及び100μM)とした。最高濃度溶液の希釈に相当する(0.1%)溶媒対照(vehicle control)を全ての培養実験において使用した。受精卵を、4週齢のCF1非近交系雌性マウスから回収した。卵丘細胞に包まれた受精卵をhCG後21時間で回収し、5mg/mLのヒト血清アルブミンを添加したG−MOPS中の1mg/mLのヒアルロニダーゼで剥皮した。培養を、5%O2又は20%O2のいずれかでインキュベーションした。培養4日後に胚盤胞の発生を分析し、1処理当たり200個の培養胚において細胞数を計数した。
【0045】
結果を図1(20%O2)及び図2(5%O2)に示す。データは、1研究当たり200個の培養胚に基づく。培養中の非近交系(CF1)マウス胚に対して1μM〜100μMの濃度にわたりリポ酸を試験したところ、10μMに曝した場合に、得られた胚盤胞の細胞数は有意に高かった。1μMのリポ酸濃度では、5%又は20%の酸素濃度のいずれにおいても、細胞数の統計学的に有意な増加は観察されなかった。さらにリポ酸の有益な効果は、より高い濃度では失われた。事実として、100μMのリポ酸濃度では、対照培地で増殖した対応する胚よりも胚の細胞数は有意に低かった。図1及び図2についてのデータをそれぞれ表6及び表7に示し、これらの表は栄養外胚葉、内部細胞塊(ICM)及びICM率についての結果も示す。
【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【実施例2】
【0048】
実施例2−マウス4日目胚の逐次IVF培養におけるリポ酸
CF1マウス胚を、G1単独で、又は10μMのリポ酸を加えたG1でのいずれかで、増殖させた。48時間後、両方の処理群由来の胚をG2に移した。全ての培養を、低O2においてインキュベーションした。緊密化率を評価し、胚盤胞発生率を71時間及び78時間において測定した。その後、胚盤胞を特異的に染色し計測した。結果を表8に示す。G1へのリポ酸の添加は、内部細胞塊の細胞数と全体に対する内部細胞塊の割合とを増大
させた。
【0049】
【表8】

【実施例3】
【0050】
実施例3−マウス胚発生に対するリポ酸の有効濃度範囲
胚盤胞発生及び細胞数を増強するためのリポ酸濃度の有効範囲を、CF1マウス胚を使用して確定した。結果を表9に示す。データは、胚盤胞発生の促進と細胞数の増大とにおいてリポ酸が5μM〜40μMの間で有効であることを示す。これらの濃度を超えると、リポ酸は、対照と比較して、5日目までの胚盤胞発生の低下と、細胞数の減少とをもたらす。
【0051】
【表9】

【実施例4】
【0052】
実施例4−活性酸素種に対するリポ酸の保護効果
リポ酸が抗酸化的効果を有するかどうかを決定するために、活性酸素種(ROS)の中間体と反応する蛍光色素2’,7’−ジクロロジヒドロフルオレセイン二酢酸(H2DFFDA)を使用して一連の実験を行った。DMSO中の200μMのH2DFFDAを、GMOPS−Plus(Vitrolifeから入手可能)に添加した。EtOH中にリポ酸を溶解し、培地内の最終濃度を0.1%のEtOHとした。その後、各液滴を、UV光を使用する2.5分間の曝露を連続的に4回行って光酸化し、ROSを発生させた。
【0053】
図3は、培養培地内のROSの発生の低減におけるリポ酸の効果を示す。全ての結果は溶媒対照群(0.95% EtOH)との比較に基づいており、溶媒対照群は対照群との比較においては有意でなかった。リポ酸を含むことは、全ての濃度で、活性酸素の発生の濃度依存的な減少をもたらしたので、リポ酸が抗酸化的効果を有していることを示唆する。
【実施例5】
【0054】
実施例5−ヒト胚発生に対するリポ酸G培地の効果
本発明に従い、リポ酸含有培養培地のヒト胚発生に対する効果を試験した。予後良好な患者について、その胚の半分は、リポ酸を含まないG1培養培地(すなわち対照)中で培養され、他の半分は10μMのリポ酸を含有するG1培地(すなわちリポ酸増加培地)中で培養された。
【0055】
データは、マウスモデルで得られたデータに矛盾しない。胚は、リポ酸増加培地では、対照と比較してより急速に8細胞期及び胚盤胞期まで発生する。
【0056】
本開示の目的のために、及び他に特に説明のない限り、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は「1つ又は複数の」を意味する。本明細書で引用した全ての特許、出願、文献及び出版物は、それらが個々に引用により取り込まれたのと同じ程度で、その全体が本明細書に援用される。
【0057】
本発明の原理は特定の実施形態と関連づけて記載されているが、これらの記載は一例としてのみなされており、本発明の範囲を限定することは意図されていないことははっきりと理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水、
(b)無機塩、
(c)少なくとも1つのエネルギー源、及び
(d)約5μM〜約40μMの濃度のリポ酸、リポ酸誘導体又はその組合せ、
を含む発生細胞培養培地。
【請求項2】
1つ又は複数のアミノ酸をさらに含む、請求項1に記載の培養培地。
【請求項3】
前記培養培地が、幹細胞、配偶子、受精卵又は胚のうち少なくとも1つの、或る発生段階から別の発生段階への発生をサポートする、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項4】
前記培養培地が胚の発生をサポートする、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項5】
前記培養培地がヒト胚の発生をサポートする、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項6】
前記培養培地が配偶子の発生をサポートする、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項7】
前記培養培地が幹細胞の発生をサポートする、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項8】
前記培地中における無機塩の濃度が約115mM〜約140mMであり、前記培地中におけるエネルギー源の濃度が約5mM〜約30mMであり、前記培地中におけるアミノ酸の総濃度が約0.1mM〜15mMである、請求項2に記載の培養培地。
【請求項8】
キレート剤、抗生物質及びヒアルロン酸をさらに含む、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項9】
増殖因子、ホルモン、抗生物質及びビタミンから成る群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項10】
エタノールをさらに含む、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項11】
約5μM〜約20μMの濃度のリポ酸を有する、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項12】
約5μM〜約10μMの濃度のリポ酸を有する、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項13】
約8μM〜約12μMの濃度のリポ酸を有する、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項14】
約10μMの濃度のリポ酸を有する、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項15】
前記培養培地が4細胞期まで胚の発生をサポートする、請求項4に記載の培養培地。
【請求項16】
前記培養培地が8細胞期まで胚の発生をサポートする、請求項4に記載の培養培地。
【請求項17】
前記培養培地が胚盤胞期まで胚の発生をサポートする、請求項4に記載の培養培地。
【請求項18】
前記培養培地が8細胞期から胚盤胞期まで胚の発生をサポートする、請求項4に記載の培養培地。
【請求項19】
前記培地が、卵母細胞成熟培地、受精用培地、ICSI培地、精子培地又は凍結培地である、請求項1又は2に記載の培養培地。
【請求項20】
発生細胞を培養する方法であって、該方法が、請求項1又は2に記載の培養培地中で幹細胞、配偶子、受精卵又は胚を培養することを含む、方法。
【請求項21】
前記幹細胞、配偶子、受精卵又は胚が大気酸素条件下で培養される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記幹細胞、配偶子、受精卵又は胚が低減酸素条件下で培養される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
幹細胞、配偶子、受精卵又は胚を培養する前記工程が、ヒト胚を培養することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
幹細胞、配偶子、受精卵又は胚を培養する前記工程が、胚を4細胞期まで培養することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
幹細胞、配偶子、受精卵又は胚を培養する前記工程が、胚を8細胞期まで培養することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
幹細胞、配偶子、受精卵又は胚を培養する前記工程が、胚を胚盤胞期まで培養することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
幹細胞、配偶子、受精卵又は胚を培養する前記工程が、胚を8細胞期から胚盤胞期まで培養することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
幹細胞、配偶子、受精卵又は胚を培養する前記工程が、胚を3日目の段階まで培養することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
幹細胞、配偶子、受精卵又は胚を培養する前記工程が、胚を5日目の段階まで培養することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
(a)水、
(b)無機塩、
(c)少なくとも1つのエネルギー源、及び
(d)リポ酸、リポ酸誘導体又はその組合せ、
を含む発生細胞培養培地であって、該培養培地が哺乳動物の胚の胚盤胞期までの発生をサポートし、さらに該培養培地が、リポ酸及びリポ酸誘導体が存在しないことにおいてのみ該培養培地と異なる対照培地と比較して、5日目の胚盤胞総数について少なくとも10%の増大をもたらす、培地。
【請求項31】
1つ又は複数のアミノ酸をさらに含む、請求項30に記載の培地。
【請求項32】
前記哺乳動物の胚がCF1マウス胚である、請求項30又は31に記載の培地。
【請求項33】
前記発生細胞培養培地が、5μM〜40μMのリポ酸、リポ酸誘導体又はその組合せを含む、請求項30又は31に記載の培地。
【請求項34】
胚を培養する方法であって、請求項30又は31に記載の培養培地中で胚を胚盤胞期ま
で培養することを含む、方法。
【請求項35】
(a)水、
(b)無機塩、
(c)少なくとも1つのエネルギー源、及び
(d)リポ酸、リポ酸誘導体又はその組合せ、
を含む発生細胞培養培地であって、該培養培地が哺乳動物の胚の胚盤胞期までの発生をサポートし、さらに該培養培地が、リポ酸及びリポ酸誘導体が存在しないことにおいてのみ該培養培地と異なる対照培地と比較して、5日目の胚盤胞の細胞総数について少なくとも10%の増大をもたらす、培地。
【請求項36】
1つ又は複数のアミノ酸をさらに含む、請求項35に記載の培地。
【請求項37】
前記哺乳動物の胚がCF1マウス胚である、請求項35に記載の培地。
【請求項38】
前記発生細胞培養培地が、5μM〜40μMのリポ酸、リポ酸誘導体又はその組合せを含む、請求項35に記載の培地。
【請求項39】
胚を培養する方法であって、請求項35に記載の培養培地中で胚を胚盤胞期まで培養することを含む、胚を培養する方法。
【請求項40】
(a)水、
(b)無機塩、
(c)少なくとも1つのエネルギー源、及び
(d)リポ酸、リポ酸誘導体又はその組合せ、
を含む発生細胞培養培地であって、該培養培地が哺乳動物の胚の胚盤胞期までの発生をサポートし、さらに該培養培地が、リポ酸及びリポ酸誘導体が存在しないことにおいてのみ該培養培地と異なる対照培地と比較して、5日目の胚盤胞の内部細胞塊について少なくとも10%の増大をもたらす、培地。
【請求項41】
1つ又は複数のアミノ酸をさらに含む、請求項40に記載の培地。
【請求項42】
前記哺乳動物の胚がCF1マウス胚である、請求項40に記載の培地。
【請求項43】
前記発生細胞培養培地が、5μM〜40μMのリポ酸、リポ酸誘導体又はその組合せを含む、請求項40に記載の培地。
【請求項44】
胚を培養する方法であって、請求項40に記載の培養培地中で胚を胚盤胞期まで培養することを含む、胚を培養する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−525818(P2010−525818A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506387(P2010−506387)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/059897
【国際公開番号】WO2008/134220
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509303785)ヴィトロライフ スウェーデン アクチボラゲット (3)
【Fターム(参考)】