説明

リンクを備えるチェーン

本発明は、複数の隣接リンクと相互に連結した複数の第一リンク(100)を備えるチェーンに関し、第一リンクは、高分子マルチフィラメント糸(110)を含み、少なくともそれらが隣接リンクと相互に連結する部分で厚み(式(I))を有し、前記隣接リンクは、少なくともそれらが第一リンクと相互に連結する部分で厚み(式(II))を有し、比式(II)/式(I)は、少なくとも1.2である。本発明は、さらに、貨物を貯蔵、固定、および荷役するための、例えば、吊り上げ、牽引および装着におけるチェーンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、複数の隣接リンクと相互に連結した複数の第一リンクを備えるチェーンに関し、第一リンクは、高分子マルチフィラメント糸を含み、少なくともそれらが隣接リンクと相互に連結する部分で厚みTを有する。本発明は、さらに、貨物を貯蔵、固定、および荷役するための、例えば、吊り上げ、牽引および装着における、チェーンの使用に関する。
【0002】
高分子マルチフィラメント糸を含むリンクを備えるチェーンの一例は、米国特許第4,779,411号明細書で公知である。この特許公報は、織り外布(woven outer fabric)で外装された芳香族ポリアミド(アラミド)マルチフィラメント糸のコアを有するリンクを備えるチェーンを開示する。米国特許第4,779,411号明細書のチェーンにおいて、糸の一部だけが一つのリンクからもう一つのリンクへの伝達力に効果的に寄与し、その結果、チェーンが低い効率を有することが、判明した。
【0003】
本発明の目的は、公知のチェーンと比較すると改善された効率を有するチェーンを提供することである。
【0004】
本発明の目的は、前記隣接リンクが少なくともそれらが第一リンクと相互に連結する部分で厚みTを有し、その比T/Tが少なくとも1.2であることを特徴とするチェーンにより、実現される。
【0005】
本発明のチェーンは、本発明のチェーンのリンクと同等の構造を有するが比T/Tが1.2未満であるリンクを有するチェーンと比較すると、意外なことに、改善された効率を有することが判明した。
【0006】
隣接リンクは異なる厚みを有するが比T/Tが1.2未満であるチェーンが、独国特許第19724586号明細書で公知である。この特許公報は、垂直方向のチェーンのリンクは平板化されて、チェーンの全高が減少されるが、水平方向のチェーンのリンクはそれらの外周で一定の厚みを有するスクレーパ(scrapper)チェーンを開示する。しかしながら、2つの隣接リンク(すなわち垂直方向と水平方向の隣接リンク)の厚みは、それらが相互に連結する部分で同じであり、従って比T/Tは1に等しくなる。
【0007】
一つのリンクがもう一つのリンクと相互に連結する部分は、本明細書において、チェーンに荷重がかかっている場合に、他方のリンクと接触するリンクの外周からの部分と理解される。
【0008】
比T/Tは、好ましくは少なくとも1.5、さらに好ましくは少なくとも2.0、なおさらに好ましくは少なくとも4.0、その上なおさらに好ましくは少なくとも6.0、最も好ましくは少なくとも8.0である。比T/Tは、好ましくは多くとも50、さらに好ましくは多くとも40、最も好ましくは多くとも30である。比T/Tは、本発明のチェーンを含むリンクの厚みを変えることにより、容易に調整できる。比T/Tが増大すると、チェーンの効率も増大することが判明している。
【0009】
本発明のチェーンの第一リンクが、交互に本発明のチェーンの隣接リンクと相互に連結する、すなわち第一リンク2本毎に、1本の隣接リンクを介して互いに連結するのが好ましい。そのことからの利点は、本発明のチェーンの効率が増大することである。
【0010】
本発明のチェーンは、好ましくは少なくとも0.65cN・m/g、さらに好ましくは少なくとも0.7cN・m/g、なおさらに好ましくは少なくとも0.9cNm/g、最も好ましくは少なくとも1cN・m/gの効率を有する。チェーンの効率は、例えば比T/Tを増大することにより、高められることが可能である。
【0011】
本発明のチェーンの破断強度は、好ましくは少なくとも1kN、さらに好ましくは少なくとも5kN、なおさらに好ましくは少なくとも10kN、その上なおさらに好ましくは少なくとも30kN、その上なおさらに好ましくは少なくとも50kN、その上なおさらに好ましくは少なくとも100kN、その上なおさらに好ましくは少なくとも1000kN、その上なおさらに好ましくは少なくとも10,000kN、その上なおさらに好ましくは少なくとも50,000kN、その上なおさらに好ましくは少なくとも100,000kN、その上なおさらに好ましくは少なくとも150,000kN、その上なおさらに好ましくは少なくとも500,000kN、最も好ましくは少なくとも10kNである。チェーンの破断強度を増大させるために、より強力なリンクを使用でき、さらに、本発明に従った適切なT/T比を選択することによって、より強力なリンクを使用できる。
【0012】
本発明のチェーンのリンクの破断強度は、好ましくは少なくとも1kN、さらに好ましくは少なくとも10kN、さらに好ましくは少なくとも100kNである。例えば、より強力なおよび/またはより厚いおよび/またはより多くのマルチフィラメント糸を、前記リンクを製造する際に使用することにより、リンクの破断強度を増大させる方法は、当業者に公知である。
【0013】
第一リンクは、好ましくは少なくとも1g/m、さらに好ましくは少なくとも3g/m、なおさらに好ましくは少なくとも10g/m、その上なおさらに好ましくは少なくとも30g/m、最も好ましくは少なくとも100g/mの単位長さ当りの総重量を有する。より高い繊度のマルチフィラメント糸および/またはより多いマルチフィラメント糸を使用することにより、単位長さ当りの重量を増大させることが可能である。より重いリンクから製造されたチェーンは、重い荷を所定位置に吊り上げまたは固定する場合の高荷重用途での使用にさらに適切である。本発明のチェーンのリンクに含まれる高分子マルチフィラメント糸(以下単に糸という)は、当技術分野で公知の任意の技術、好ましくは溶融、溶解またはゲル紡糸に基づいて生産されうる。前記糸を生産するのに使用する高分子材料は、前記糸に加工することができるいかなる材料でもよい。適切な例として、ポリアミドおよびポリアラミド(例えば、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(ケブラー(Kevlar)(登録商標)として公知))、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリ(p−フェニレン−2,6ベンゾビスオキサゾール)(PBO)(ザイロン(Zylon)(登録商標)として公知)、LCP(例えば、ベクトラン(Vectran)(登録商標)(パラヒドロキシ安息香酸とパラヒドロキシナフタル酸のコポリマー)、ポリ{2,6−ジイミダゾ−[4,5b−4’,5’e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}(M5として公知)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン6,6として公知)、ポリ(4−アミノ酪酸)(ナイロン6として公知)、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、およびポリ(1,4シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート))、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンとポリプロピレンのホモポリマーおよびコポリマー)、さらにポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。上記の高分子材料から製造される糸の組み合わせもまた、リンクの製造に使用できる。
【0014】
当業者は、所望の機械特性(例えば、引張り強さ)を有する糸を獲得するために、前記高分子材料の分子質量(M)および/または固有粘度(IV)を容易に選択できる。さらに、上に列挙した高分子材料は、市販されている。技術文献は、さらに、強力な糸(すなわち、高い引張り強さを有する糸)を獲得するために、当業者が用いるのが望ましいMまたはIVの値に関してだけでなく、上記の糸の生産の仕方に関しても指針を提供する。
【0015】
糸は、好ましくは少なくとも1GPa、好ましくは少なくとも1.5GPa、さらに好ましくは少なくとも2GPa、なおさらに好ましくは少なくとも3GPa、その上なおさらに好ましくは少なくとも4GPa、最も好ましくは少なくとも5GPaの引張り強さを有する。前記糸の繊度は、好ましくは少なくとも100デニール、なおさらに好ましくは少なくとも1,000デニール、その上なおさらに好ましくは少なくとも2,000デニール、その上なおさらに好ましくは少なくとも3,000デニール、その上なおさらに好ましくは少なくとも5,000デニール、その上なおさらに好ましくは少なくとも7,000デニール、最も好ましくは少なくとも10,000デニールである。上記の糸は、市販されている。
【0016】
好適な一実施形態において、最適な高分子材料は、好ましくは少なくとも3dl/g、さらに好ましくは少なくとも4dl/g、最も好ましくは少なくとも5dl/gのIVを有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。IVは、好ましくは多くとも40dl/g、さらに好ましくは多くとも25dl/g、さらに好ましくは多くとも15dl/gである。UHMWPEは、好ましくは100個の炭素原子当り1つ未満の側鎖、さらに好ましくは300個の炭素原子当り1つ未満の側鎖を有する。
【0017】
UHMWPE糸は、欧州特許出願公開第0205960A号明細書、欧州特許出願公開第0213208A1号明細書、米国特許第4413110号明細書、英国特許出願公開第2042414 A号明細書、英国特許出願公開第‐A‐2051667号明細書、欧州特許第0200547 B1号明細書、欧州特許第0472114 B1号明細書、国際公開第01/73173A1号パンフレット、欧州特許第1,699,954号明細書および「Advanced Fibre Spinning Technology」、T.ナカジマ(Nakajima)編、(Woodhead Publ.Ltd)(1994年)、ISBN 185573 182 7をはじめとする多くの刊行物に記載されているゲル紡糸方法に従って製造されるのが好ましい。
【0018】
糸を含むリンクは、それら自体に糸の多重巻き付けを含むループの形態でも、もしくは糸を含むロープまたはストラップから作られるループの形態でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】各種の断面を有する糸を含むリンクを表す。
【図2】ロープで作られたリンクからの部分を表す。
【図3】ストラップまたは布で作られたリンクを表す。
【図4】本発明のチェーンの一実施形態を表し、第一リンクと隣接リンクの両方とも、ロープで作られている。
【図5】本発明のチェーンの一実施形態を表し、第一リンクは、ロープで作られ、隣接リンクは、ストラップで作られている。
【0020】
図1a)に関して、糸(110)を含むリンク(100)は、それら自体に糸の多重巻き付けを含むループでありうる。糸は、マトリックス(115)によって、一緒に密着されうる。上記のリンクは、円形(図1b))または楕円形(図1c)および1d))である断面(200)を有してもよく、外側へ突出している糸の巻き付け(図1に示していない)のために不規則な断面を有してもよい。
【0021】
図2a)は、糸を含むリンク(100)の部分を示し、リンクは、糸(110)を含むストランド(120)を有するロープ(103)から作られるループで製造される。ロープから獲得されるループは、単一ループでも多重ループでもよい。ロープは、当技術分野で公知の任意の形状、例えば、撚りロープまたは編組ロープもしくはそれらの組み合わせ(例えば、糸を撚った後に編組してロープを形成する)であってよい。図2a)は、編組ロープを示すが、しかしながら、前記図が、ロープの構造を限定すると解釈されるべきではない。上記のロープを製造する方法は、米国特許第4,677,818号明細書、米国特許第5,931,076号明細書および米国特許第6,321,520号明細書の例の通り、当技術分野で公知である。ロープの厚みは、広い限度内で変わってもよく、ロープは、円形断面を有する高荷重ロープであるのが好ましく、本発明の利点は、ロープの厚みが厚いほど関連性が強まるので、好ましくは少なくとも2mm、さらに好ましくは少なくとも4mm、なおさらに好ましくは少なくとも6mm、その上なおさらに好ましくは少なくとも8mm、最も好ましくは少なくとも10mmの厚みを有する。上記のリンクは、通常、ロープのストランドの外側への突出部のため、不規則な断面(図2b))を有する。
【0022】
図2b)に示すような不規則な断面を有するリンクの場合、上記のリンクの断面を楕円(700)と近似させ、楕円の軸(600)を用いて、リンクの厚みを定めると、より正確である。楕円の両軸の長さは、等しくなりえ、この特別な場合において、リンクの不規則な断面は円と近似する。図1c)および1d)に表すような長円形断面を有するリンクを楕円と近似させ、それらの軸(600)を用いて、リンクの厚みを定めてもよい。
【0023】
糸またはロープの遊端は、公知の技術(例えば、結び、接着、または撚り継ぎ(splice))により、互いにおよび/またはループの胴体と連結させてもよい。ロープの場合、好適な連結方法は、撚り継ぎである。
【0024】
糸を含むリンクは、図3に表すような前記糸を含む布またはストラップのループでありうる。布またはストラップ(111)は、マルチフィラメント糸を当技術分野で公知の任意の構造(例として、例えば、平織および/または綾織構造)に、例えば織成または編成することによって、容易に作製される。ストラップは、n層ウェブ構造を有するのが好ましく、nは、好ましくは少なくとも4、さらに好ましくは3、最も好ましくは2である。ストラップは、本明細書において、その幅(w)よりもかなり小さい厚みを有する可撓性で細長い物体を意味する。布またはストラップは、繊維工業で利用される公知の技術(例、縫合(112))によっておよび/または接着によって、ループに成形されうる。ストラップを用いてリンクを製造する場合、本明細書において、リンクの厚み(T)は、ストラップ自体の重なり合う巻き付け数を乗じたストラップの厚み(t)と理解される。
【0025】
本発明のチェーンの第一リンクと隣接リンクのそれぞれの厚みTとTは、同じ方法で測定される。図1a)、2b)および3a)に例示するように、リンクの厚みTは、リンク(100)が隣接リンク(500)と相互に連結する部分(300)で、チェーンに荷重をかけずに、測定されるリンクを含む糸、ロープまたはストラップをぴんと張って、測定される。リンクの厚みTは、リンクが隣接リンクと相互に連結した領域(400)と垂直なリンクの断面(200)を介して測定できる。糸、ロープまたはストラップをぴんと張るとは、本明細書において、糸、ロープまたはストラップに、それらのたるみを回避するのに十分であるがそれらを変形させるほどは強力でない荷重がかかっていると理解される。領域(400)は、リンクの平面、すなわち、リンクの外周によって画定される平面に含まれる。特に、リンクが図1b)のように円形断面を有するならば、厚みTは、それらの直径である。
【0026】
リンクが、それらの全長に渡って一定の厚みTを有するのが好ましい。
【0027】
図1c)および1d)のように非円形断面および/または図2b)のように不規則な断面を有するリンクの場合、不規則な断面を近似する楕円(700)の軸(600)の長さと等しいとして、その厚みTを定義することは、さらに正確であり、前記軸は、それらに接触する隣接リンク(500)に垂直である。楕円(700)の寸法を決定する方法は、当業者に公知であり、それらの一例は、公知の処理ソフトを用いて、リンクの不規則な断面の画像を、調整可能な配向と調整可能な長軸および短軸の楕円と相関させる方法である。
【0028】
好適な一実施形態において、糸を含むリンクは、UHMWPE糸を巻き付けて融着して得られたループである。このようなループは、一対のホイールの周りにUHMWPE糸を巻き付けて前記ループを形成し、UHMWPEの融点より低い温度(その温度で、前記糸を含むフィラメントが少なくとも一部融着する)まで糸を加熱し、ホイールを回転させながら同時にホイール間の距離を広げてループを伸張することにより、製造されうる。ホイール間の距離を増大させることにより、フィラメントは、延伸される。このようなリンクを備えるチェーンは、強力で、さらに、リンク間に荷重を特に良好に分配する。
【0029】
本発明の一実施形態において、隣接リンクは、熱可塑性樹脂組成物からなってもまたは熱硬化性樹脂組成物からなってもよい。適切な熱可塑性樹脂の例として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチルケトン等が挙げられる。適切な熱硬化性樹脂の例として、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ビスマレイドおよびビニルエステルの樹脂が挙げられる。樹脂組成物は、さらに、上記リンクの機械的強度または他の特性(例えば、剛性)を改善する充填材を含んでもよい。当業者は、製造されるリンクの所望の機械特性を得るのに前記充填材の必要量を調整する方法を知っている。技術文献は、樹脂内の充填材の量を増大させると、その強度が高まると示唆し、さらに、様々な量の充填材を有する樹脂に関してASTM D638に従って実施した引張り試験の結果を提供する。適切な充填材は、炭酸カルシウム、酸化ケイ素および/またはガラス、炭素、アラミドおよび/または金属(例えば、鋼、銅(cupper))の繊維である。熱可塑性または熱硬化性樹脂組成物からなる隣接リンクの形状および断面は、当技術分野で公知の任意の形状および任意の断面でよい。それらが、円形断面を有するのが好ましい。上記リンクの断面が不規則ならば、その厚みを決定するために、不規則な断面を楕円と近似させてもよい。
【0030】
本発明の好適な一実施形態において、本発明のチェーンの隣接リンクは、糸を含む。
【0031】
本発明のさらに好適な一実施形態において、隣接リンクは、金属(例えば、鋼、ニッケル、銅およびそれらの合金)からなり、軽量金属(例えば、アルミニウム、チタン、スカンジウム、マグネシウム、亜鉛およびそれらの合金)からなるのがさらに好ましい。特に有益であるのは、標準鍛造、鋳造または他のアルミニウム合金(例えば、アルミニウム協会(Aluminum Association)(AA)指定6061、2024、7075、7079およびA 356で入手可能である合金)である。好適な一実施形態において、隣接リンクは、マグネシウムまたはマグネシウム合金(例えば、Al−Sc−Mg合金)から鋳造される。軽量金属で作られたリンクを用いる利点は、チェーンの重量が、さらに低減されることである。さらなる利点は、上記の軽金属が、高い比強度を有することである。これは、重い貨物の運搬を伴う場合の用途に有益である。上記のチェーンは、運搬される総重量への寄与が少ないので、燃料の必要量を減少させ、また同時にそれらの改善された定着を確保する。金属からなる隣接リンクの形状および断面は、当技術分野で公知の任意の形状および任意の断面であってよい。それらが、円形断面を有するのが好ましい。上記のリンクの断面が不規則であるならば、その厚みを決定するために、その断面を楕円と近似させてもよい。
【0032】
隣接リンクを製造するのに、熱可塑性または熱硬化性樹脂組成物もしくは金属を使用する場合、それらの厚みTを増大させることにより、より強力なリンクを獲得できる。
【0033】
本発明のチェーンは、糸を含む第一リンクと、糸を含み、かつ/またはチェーンを使用する用途に応じて熱可塑性または熱硬化性樹脂組成物もしくは金属、或いはそれらの組み合わせから製造される隣接リンクとを含みうる。
【0034】
本発明のチェーンの好適な実施形態を図4および5に表す。
【0035】
図4に表される好適な一実施形態において、第一リンク(101)と隣接リンク(102)の両方とも、UHMWPE糸(110)を含む。第一リンクと隣接リンクの両方とも、ロープ(103)のループであるのが好ましく、前記ロープは、編組ロープであるのが好ましい。ロープの遊端は、撚り継ぎ(900)で連結されるのが好ましい。本実施形態のチェーンは、吊り上げ重量または荷役重量への寄与が少ないというさらなる利点を有し、上記チェーンを固縛に使用する場合、それらは、貨物に与える損害のリスクを低減する。さらに、それらは、例えば湿潤環境において使用される場合、腐食されにくい。
【0036】
図5に表すさらに好適な一実施形態において、第一リンク(101)は、ストラップ(111)のループであり、隣接リンク(102)は、ロープ(103)のループである。ストラップは、それ自体に少なくとも3回、好ましくは少なくとも5回、さらに好ましくは少なくとも7回巻き付けられるのが好ましい。前記ストラップは、好ましくは少なくとも1mm、さらに好ましくは少なくとも2mm、最も好ましくは少なくとも3mmの厚み(t)を有する。ストラップは、好ましくは少なくとも5:1、さらに好ましくは少なくとも10:1の幅(w)対厚みの比(w/t)を有し、w/t比は、好ましくは多くとも40:1、なおさらに好ましくは多くとも20:1である。ストラップおよび/またはロープは、UHMWPE糸を含むのが好ましい。本実施形態のチェーンは、重い荷を扱う場合の用途での使用に適切な改善された効率を示す。
【0037】
なおさらに好適な一実施形態において、第一リンクは、ストラップのループまたはロープのループであり、隣接リンクは、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物および金属からなる群から選択される材料からなる。前記ストラップまたはロープは、UHMWPE糸を含むのが好ましい。好適な本実施形態のチェーンは、意外なことに、荷重時において高い寸法安定性を示すことが判明した。糸を含むリンクを有する公知のチェーンの欠点は、加荷重下でリンクが変形することである。一旦チェーンに張力がかけられると、リンクは、それらのループを閉じるので、追加のフックまたは他の手段をチェーンの胴体に連結するのが困難になる。本実施形態のチェーンは、これらの不利益を与える程度がより少ない。前記チェーンは、重荷重をかけられている場合でさえも開放リンク(すなわち、隣接リンク)を常に含んでいる。第一リンクのループがさらに小さくなるとしても、チェーンに重荷重がかかっている場合でさえも、他のチェーン、フックまたは連結手段を、隣接リンクを介して主要なチェーン胴体に容易に連結することができる。本実施形態のチェーンのさらに重要な利点は、上記のチェーンが、糸を含むリンクだけを有するチェーンよりも良好な効率を呈することである。従って、本発明は、複数の隣接リンクと相互に連結した複数の第一リンクを備えるチェーンに関し、第一リンクは、高分子マルチフィラメント糸を含み、前記第一リンクは、金属からなる隣接リンクと相互に連結している。
【0038】
本発明のチェーンのリンクは、さらに、被覆されてもよく、或いは難燃剤、付着を抑えるための被覆剤、着色剤、艶消剤等を含有してもよい。
【0039】
第一および隣接リンクは、当技術分野で公知の任意の構造を有し、上に説明したようにマルチフィラメント糸から製造されうる保護的な被覆で外装されてもよい。このようなシートは、例えば米国特許第4,779,411号明細書で公知である。保護的な被覆を用いるならば、シートしたリンクの厚みを決定する際に、被覆の厚みを考慮しない。
【0040】
本発明のチェーンは、線形構造(すなわち、チェーンの端に相当する最後の2つのリンクを除いて、チェーンの第一リンク全てが、2つの隣接リンクとだけ相互に連結し、チェーンの隣接リンク全てが、2つの第一リンクとだけ相互に連結している構造)を有するのが好ましい。例えば貨物の貯蔵、固定、および荷役に利用される場合、他の第二のチェーンを本発明のチェーンの胴体に連結してもよい。
【0041】
取り付けられた場合、本発明のチェーンは、極限条件下における重い貨物(例えば、重い軍用機を荒波で縦揺れしている空母のデッキ上にまたは乱気流中の貨物専用機内に)の確実な定着を提供するのに、有用であり、信頼性がある。
【0042】
本発明は、さらに、例えば、貨物を貯蔵、固定、および荷役する際(例えば、建築工事、貨物の貯蔵、およびダンプスターを牽引するトラックにロールオン/ロールオフのダンプスターを固定する、または商用トラックに、平床トレーラーに、航空機または軍艦の貨物倉に貨物を固定する等のような活動の際)の吊り上げ、牽引および装着における、本発明のチェーンの使用に関する。
【0043】
[方法]
UHMWPEのIVを、ASTM D4020に従って、前記ASTM標準に基づくUHMWPE用の溶剤としてデカリンを使用して、135℃で決定する。
【0044】
マルチフィラメント糸の引張り強さ(または強度)および引張弾性率(または弾性率)を、繊維の公称ゲージ長さ500mm、クロスヘッド速度50%/分およびインストロン(Instron)2714クランプ、タイプFibre Grip D5618Cを使用して、ASTM D 885Mに基づく手順で定義し決定した。測定した応力−ひずみ曲線に基づいて、勾配0.3〜1%のひずみとして引張弾性率を決定する。引張弾性率および引張り強さの算出は、測定した張力を繊度で除する。UHMWPEマルチフィラメント糸に関して、0.97g/cmのポリエチレン濃度を仮定してGPaでの値を算出する。
【0045】
糸の繊度を、10メートルの糸を計量して、得られた値をデニール(9000メートル当りのグラム)に変換して決定する。
【0046】
リンクおよびチェーンの破断強度を、温度約21℃、速度100mm/分で、ツヴィック(Zwick)1484万能試験機を用いて、乾燥試料に関して決定する。D−shacklesを用いてリンクおよびチェーン試料を試験し、シャックルの直径とそれらに連結したリンクの直径の比は、5であった。
【0047】
リンク効率(N.m/g)を、リンクの破断強度にリンクの長さを乗じ、得られた数をリンクの重量で除して決定する。リンクの外周の長さを測定して、それを2で除して、リンクの長さを得る。
【0048】
チェーン効率(N.m/g)を、チェーンの破断強度をチェーンの単位長さ(メートル)の重量で除して、決定する。
【0049】
[実施例および比較実験]
[実施例1]
厚みT約5.5mmのロープの遊端を単ループに撚り継ぎで連結して、リンクを作製した。ロープは、ダイニーマ(Dyneema)(登録商標)SK75の名称で知られているUHMWPEマルチフィラメント糸を含み、形状3×12×5280デシテックス(すなわち、3本のストランドの撚り合わせロープ、各ストランドが、各々5280デシテックスの12本のマルチフィラメント糸を撚り合わることにより、作られる)を有する。各リンクの重量は、26gであり、リンクは、約68kN(1.31kN.m/g)の引張り強さを有した。
【0050】
第一リンクとして上記のリンク5本を用いてチェーンを作り、それら2本毎に隣接リンクと交互に連結した。上記のロープを7回ループ形成して一束のループを作り出し、前記束をわずかに加撚して、その構造を安定させ、ループを作るロープの部分のパッキングを改善して、隣接リンクを作製した。ロープの遊端を、それらを互いに撚り継いで連結した。このように作製された隣接リンクの厚みTは、約15mmであった。
【0051】
この実施形態に関して、比T/T=15/5.5は、2.7であった。チェーンの重量は、69g/mであり、チェーンは、51.7kNの破断強度と0.75kN.m/gの効率を有した。
【0052】
[比較実験1(CE1)]
リンク5本からチェーンを作製した。実施例1のロープの遊端を単ループに撚り継ぎで連結して、各リンクを作った。各リンクの重量は、26gで、リンクは、約68kN(1.31kN.m/g)の引張り強さを有した。
【0053】
この実施形態に関して、比T/T=5.5/5.5は、1であった。
【0054】
チェーンの重量は、5×26g=130gであり、その破断強度は、37kNであった。チェーンの効率は、0.66kN.m/gであった。
【0055】
[実施例2]
第一リンクとして、CE1に基づいて作ったリンク5本のチェーンを多数用いてチェーンを作り、それら2本毎にマグネシウムで作製され円形断面を有する隣接リンクと交互に連結した。マグネシウムリンクの厚み(直径)Tは、16mmであった。マグネシウムリンクの重量は、16gであった。
【0056】
この実施形態に関して、比T/T=16/5.5は、約3であった。
【0057】
単位長さ当りのチェーンの重量は、86g/mであり、その破断強度は、65kNであった。その効率は、0.76kN.m/gであった。
【0058】
[実施例3]
比較例のダイニーマ(登録商標)SK75マルチフィラメント糸を含む織りストラップ(2層ウェブ)を作った。ストラップの厚み(t)は、1mmであり、その幅は、12.5mmであった。経方向での織布の線密度は、11900テックス(11.9g/m)であった。その破断強度は、21kNであり、その結果、ストラップの効率は、1.76kN.m/gであった。
【0059】
ストラップをそれ自体に2回巻き付けて、ストラップからリンクを作った。距離0.06mを超えて、ストラップの遊端を重なり合わせた。遊端の重なり合う部分でストラップ部分全てを通し縫いして、遊端をストラップの胴体に連結した。隣接リンクと接触する領域でのリンクの厚みは、(2×t)2mmであった。リンクの重量は、28.8g(57.6g/m)であった。リンクの引張り強さは、58.7kNであり、効率は、1.02kN.m/gであった。
【0060】
第一リンクとして上記のストラップから作ったリンク3本を用いて、それら2本毎に、アルミニウム(Al7075 T0)で作製され円形断面を有する隣接リンクに交互に連結したチェーンを作った。隣接リンクの厚み(直径)Tは、12mmであった。
【0061】
この実施形態に関して、比T/T=12/6は、2であった。チェーンの重量は、79g/mであり、チェーンは、55kNの破断強度と0.70kN.m/gの効率を有した。
【0062】
[比較実験2(CE2)]
実施例3のストラップから作られたリンクのうち3本からなるチェーンを作製し、チェーンは、60g/mの重量を有した。
【0063】
この実施形態に関して、比T/T=2/2は、1であった。チェーンの破断強度は、55kNであり、効率は、0.46kN.m/gであった。
【図1a)】

【図1b)】

【図1c)】

【図1d)】

【図2a)】

【図2b)】

【図3a)】

【図3b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の隣接リンクと相互に連結した複数の第一リンクを備えるチェーンであって、前記第一リンクが、高分子マルチフィラメント糸を含み、少なくともそれらが前記隣接リンクと相互に連結する部分で厚みTを有するチェーンにおいて、
前記隣接リンクが、少なくともそれらが前記第一リンクと相互に連結する部分で厚みTを有し、比T/Tが、少なくとも1.2であることを特徴とするチェーン。
【請求項2】
前記第一リンクが、マルチフィラメント糸のループ、またはマルチフィラメント糸を含むロープのループ、或いはマルチフィラメント糸を含むストラップのループである請求項1に記載のチェーン。
【請求項3】
前記隣接リンクが、マルチフィラメント糸のループ、ロープのループ、またはストラップのループである請求項1または2に記載のチェーン。
【請求項4】
前記隣接リンクが、軽金属、熱硬化性組成物および熱可塑性組成物からなる群から選択される材料から製造される請求項1または2に記載のチェーン。
【請求項5】
前記マルチフィラメント糸が、UHMWPEマルチフィラメント糸である請求項1〜4のいずれか一項に記載のチェーン。
【請求項6】
貨物の貯蔵、固定および荷役における請求項1〜5のいずれか一項に記載のチェーンの使用。

【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−517482(P2011−517482A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500088(P2011−500088)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001867
【国際公開番号】WO2009/115249
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】