説明

リングカムおよびリングカムを含む流体作動機械

流体作動機械用のリングカム(1)が複数のセグメント(5、7)から形成されている。前記セグメントは、共に流体作動機械の作動面を画定するピストン対向面(15、16)を有している。前記セグメントは、追従端において作動面の一部を形成し、先行端において作動面から窪んでいるピストン対向面を有する先行協働構造(46)、および先行端において作動面の一部を形成し、追従端において作動面から窪んでいるピストン対向面を有する追従協働構造(40)を含んでいる。協働構造は連結し、ローラー(9)は従って、製造公差または磨耗に起因する整列上の僅かな変動にかかわらず1個のセグメントから次のセグメントへ滑らかに引き継がれる。
セグメントは、使用時におけるローラーの動作から生じる引張応力を部分的にまたは完全に補償すべく圧縮応力を受けるピストン対向面を有している。セグメントは波形のカム表面を形成し、作動面を貫通して取り付け手段(3)が設けられていて、先行または追従面のいずれかが使用時にピストンから最も弱い力を受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体作動機械用のリングカムに関する。本発明は、リングカムが使用時に特に強い力を受けるアプリケーションと特別に関連しており、特に大型流体作動機械用途、例えば風力タービンのナセルで使用するリングカムに関する。
【背景技術】
【0002】
流体作動機械には、ポンプ、モーター、および異なる動作モードでポンプまたはモーターのどちらかとして機能できる機械等の流体駆動および/または流体作動機械が含まれる。
【0003】
流体作動機械がポンプとして動作する場合、低圧マニホルドは通常、作動流体の正味ソースとして機能し、高圧マニホルドは通常、流体の正味シンクとして機能する。流体作動機械がモーターとして動作する場合、高圧マニホルドは通常、流体の正味ソースとして機能し、低圧マニホルドは通常、流体の正味シンクとして機能する。本明細書の記述および添付の請求項の範囲内で、用語「高圧」および「低圧」は相対的であって特定のアプリケーションに依存する。いくつかの実施形態において、低圧作動流体は大気圧より高い圧力であってよく、何回かは大気圧であってもよい。しかし、全ての場合において、低圧作動流体は高圧作動流体よりも圧力が低い。流体作動機械は、2つ以上の低圧マニホルドおよび2つ以上の高圧マニホルドを有していてよい。
【0004】
大排出量のリングカム流体作動機械(すなわち、カム周辺に配置された複数のラジアルピストンを駆動する大型回転環状カムを有し、各ピストンは通常、カムの1回転毎に複数回に往復運動する流体作動機械)が公知であって、低速回転入力ながら比較的高速の発電機(Rampen,Taylor & Riddock,Gearless transmissions for wind turbines,DEWEK,Bremen,Dec.2006)を有する再生可能エネルギーの利用に提案されている。リングカム流体作動機械は通常、波形のカム上を転がり、ピストンと動作可能に接続された複数のローラーを有している。各ピストンはシリンダ内でスライド可能に係合されていて、シリンダおよびピストンが共に作動流体を含む作動室を画定し、1個以上のバルブを介して高および低圧マニホルドと連通している。これらのピストンは各々、作動室容積のサイクルが実行されて、その間に作動流体が排出されるように、リングカムが回転する場合に作動室容積を変動させるようにシリンダ内で往復運動をすべく動作可能である。
【0005】
リングカム流体作動機械は、ピストンおよびシリンダがリングカム内に位置して、リングカムが内向きの作動面を有するように構成されていても、あるいはリングカムが外向きの作動面を有してピストンおよびシリンダ内に配置されるように構成されていてよい。実際に、リングカムが回転するかまたはピストンおよびシリンダが回転する、いずれかの構成のリングカム流体作動機械も公知である。また、リングカムがピストンおよびシリンダの内側と外側のリングの間に配置された内向きおよび外向き作動面をリングカムが有していてもよい。更に、ピストンおよびシリンダが回転軸と略平行に整列していて、リングカムが1個以上の軸方向を向く作動面を有していてもよい。
【0006】
比較的小型の油圧モーターを駆動するリングカムポンプが堅牢な可変速度トランスミッションとして、例えば風力タービン発電機または潮流および重力を利用した水力発電機用に提案されている。
【0007】
リングカム流体作動機械を含む多シリンダ流体作動機械は、可変排出量流体作動機械(ポンプまたはモーターのどちらか、あるいはポンプまたはモーターとして動作可能な機械)であってよく、各作動室は、低圧マニホルドから高圧マニホルドへ、またはその逆に、流体の時間平均化された正味排出量を調整すべく、作動室容積のサイクルの最中に作動室により作動流体の正味排水が行なわれる作動室容積の作動(または部分的作動)サイクル、または作動流体の正味排水が実質的に行なわれないアイドリングサイクルを実行すべく選択可能である。
【0008】
大型リングカム機械は修理が困難且つ高価であって、単に1個の作動室を修理するにも全体の分解を必要とする。これは特に再生可能エネルギー用途において高価になり得る。その理由は、アクセスが困難な場所(例えば風力タービンのナセル)から重い流体作動機械を移動させなければならず、これに伴い大型且つ高価な搬送設備(例:クレーン)を必要とするためである。従って、大型機材の搬送の必要性を低減または無くすために、そのような大型の流体作動機械が現地で修理可能であることが望ましい。
【0009】
更に、大型流体作動機械(例えば再生可能エネルギー生成に適したもの)は通常、特に強い内力および圧力を受ける。例えば、風力タービンに適したサイズの大型リングカム流体作動機械の高圧(および実際には低圧)作動流体の圧力は特に高い。その結果、リングカムがローラーから受ける力も強く、リングカム作動面が劣化することが知られている。大型リングカムを多くのセグメントから組み立てることが提案されているが、セグメント間の界面でローラーの圧力下、作動面に現れる不連続箇所に起因してローラーおよび作動面に過度な摩耗が発生することが知られている。また、回転部品自体の重量が過度なリングカム磨耗に至る場合がある。
【0010】
従って、重量が最小限であって寿命が長い流体作動機械、およびラジアル流体作動機械をモジュール構造とするためのリングカムに対するニーズが依然として有る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
リングカムの部分またはそのセグメントの「先行」または「追従」エッジ(あるいは終端その他の特徴)という用語は本明細書において、通常はリングカムの回転に起因するが、いくつかの実施形態ではピストンが搭載されている筐体の回転に起因する、ピストンに対するリングカムの回転方向に関連する表現である。いくつかの実施形態において、リングカムおよびピストンの相対的な回転は、どちらの意味(例えば、所与の流体作動機械の回転の意味は、動作または保守の最中に時折反転する場合がある)であってもよく、且つ先行および追従エッジまたはその他の特徴は回転のどちらか一方の意味に関して画定される。少なくとも1個のピストンに相対的なリングカムの回転に結合された少なくとも1個のピストンの往復運動への言及は、リングカムが回転する、または少なくとも1個のピストンが回転する、あるいは両方が異なる速度で回転する、のどちらかの可能性を含んでいる。全ての場合において、回転はリングカムの中心を通る軸の回りで行なわれる。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1個のピストンを有する流体作動機械用のリングカムを提供し、リングカムが少なくとも2個のセグメントを含み、各前記セグメントが先行領域において先行協働構造、および追従領域において追従協働構造を有し、各先行協働構造が連結領域において前記追従協働構造と協働係合していて、各前記セグメントがピストン対向面を有し、ピストン対向面が共に、カム係合要素(ピストンの一部、例えばピストンシューまたはより典型的にはローラー等)を介して少なくとも1個のピストンと動作可能に係合すべくカム作動面(通常はマルチローブ)を画定して少なくとも1個のピストンの往復運動を少なくとも1個のピストンに相対的なリングカムの回転に結合し、前記先行および追従協働構造の各々がピストン対向面の一部を有していて、各先行協働構造が、先行協働構造の追従領域において作動面の一部を形成し、且つ連結領域全体にわたり先行協働構造の先行領域において作動面から窪んでいるピストン対向面を有し、各追従協働構造が、追従協働構造の先行領域において作動面の一部を形成し、且つ連結領域全体にわたり追従協働構造の追従領域において作動面から窪んでいるピストン対向面を有することを特徴とする。
【0013】
本発明はまた第2の態様において、動作の第1の態様によるリングカム、および少なくとも1個のピストンの往復運動が少なくとも1個のピストンに相対的なリングカムの回転に結合されるようにリングカム作動面と動作可能に係合している少なくとも1個のピストン(通常は複数のピストン)を含むピストン流体作動機械に拡張される。
【0014】
本発明はまた第3の態様において、第1の態様によるリングカムを有し、
およびカム係合要素を介してリングカムに結合された少なくとも1個のピストンを有する流体作動機械を動作させる方法に拡張され、本方法は、少なくとも1個のカム係合要素が第1セグメントの先行協働構造から第2セグメントの追従協働構造へ滑らかに通過するようにリングカムおよび少なくとも1個のピストンの相対的な回転を生じさせるステップを含んでいる。
【0015】
通常、当該または各ピストンは、通常はローラーであるカム係合要素を介してリングカムと動作可能に係合する。
【0016】
公知のセグメント化されたリングカムにおいて、1個のリングカムセグメントの作動面は、ローラーまたはその他のカム係合要素がリングカムセグメント間を滑らかに移動するように、隣接するリングカムセグメントの作動面に整列して接触するよう意図されている。しかし実際には、隣接する作動面の間に重大な不一致が往々にして存在する。不一致は、インストール時に存在しているか、または磨耗により出現するか、あるいは使用時に流体作動機械内で力を受けて一時的に生じる(例えば、カムに力を加えるローラーまたはその他のカム係合要素から生じる)場合がある。従ってノイズだけでなく、ローラーまたはその他のカム係合要素、あるいはリングカムセグメントの作動面の縁に磨耗に至る不連続が生じるであろう。
【0017】
しかし、本発明のリングカムにおいて、隣接セグメントは、各々が一端に作動面の一部を形成し、他端で作動面から窪んでいるピストン対向面を有する連結協働構造を有する。連結ゾーン内に、カム係合要素が両方の協働構造と同時に接触する場所がある。従って、第1セグメントの先行協働構造の作動面を接触させ、次いで第1セグメントの先行協働構造および第2セグメントの追従協働構造の作動面を同時に接触させ、次いで第2セグメントの作動面だけを接触させることにより、ローラー(リングカムとの転がり係合における)、または他のカム係合要素が1個のセグメントから次のセグメントへ滑らかに引き渡される。隣接セグメントの整列配置に僅かな不一致があれば、この処理は少し早く生じる。更に、この場所の正確な位置は、製造公差および磨耗に依存する場合がある。
【0018】
しかし、僅かにずれている平行な作動面に見られるような不連続があってはならない。従って、製造公差および使用時磨耗にもかかわらず磨耗を最小限にする滑らかな引き渡しを実現することができる。協働構造は通常、長さに沿って作動面から次第に窪んでいく。
【0019】
通常、先行協働構造の先行領域におけるピストン対向面、および追従協働構造の追従領域におけるピストン対向面は連結領域の少なくとも一部において、作動面から少なくとも0.25mm、0.5mm、または1mm窪んでいる。
【0020】
通常、各協働構造は舌部を含んでいる。通常、各先行協働構造は、先行舌部の追従エッジで作動面の一部を形成し、連結領域全体にわたり先行舌部の先行領域において作動面から窪んでいるピストン対向面を有する先行舌部を含んでいる。また通常は、各追従協働構造は、追従舌部の先行エッジで作動面の一部を形成し、連結領域全体にわたり追従舌部の追従領域において作動面から窪んでいるピストン対向面を有する追従舌部を含んでいる。協働構造は複数の舌部を有していてよい。協働構造は、間に溝を画定する第1および第2の舌部を含んでいてよい。
【0021】
連結領域とは、協働構造(例:舌部)が、ローラーまたはその他のカム係合要素が使用時に作動面を進む方向に垂直に互いに隣接している領域を指す。従って、カム係合要素は、1個のセグメントから次の隣接セグメントに引き渡される際に一定期間だけ連結領域内の両方の協働構造の上を延びる。
【0022】
通常、複数のピストンが、リングカムの外側(外向きリングカムの場合)、またはリングの内側(内向きリングカムの場合)、あるいはいくつかの実施形態では両方(内向きおよび外向き作動面の両方を有するリングカムの場合)に配置されている。従って、流体作動機械は通常、ラジアルピストン流体作動機械である。しかし、複数のピストンがリングカムの回転軸と略平行に配置されていてよい。これら複数のピストンは通常、リングカム周辺に半径方向に配置されていて、多くの場合等間隔を空けられている。
【0023】
好適には、各ピストンはピストンの往復運動に合わせて周期的に変化する容積の作動室が関連付けられている。好適には、各ピストンはシリンダ内でスライド可能に搭載されていてシリンダとピストンの間に作動室が画定する。通常、流体作動機械は本体を含んでいて、当該または各々のシリンダは本体内に形成されていてよい。例えば、本体はシリンダーブロックを含んでいるかまたはそれにより構成されていてよい。いくつかの実施形態において、当該または各シリンダ、あるいは、当該または各ピストンは(通常は球面ベアリングを介して)一体化されていてよい。当該または各ピストンは、本体内で拘束されていてよい。
【0024】
作動室の容積はリングカムの回転に合わせて周期的に変化する。流体作動機械は、低圧マニホルドと高圧マニホルド、および各作動室と低圧/高圧マニホルドの間の流体の流れを調整する複数のバルブを含んでいる。通常、各作動室に関連付けられた少なくとも1個の前記バルブは電子制御されたバルブである。流体作動機械は、作動室容積の各サイクルにおいて、且つ作動室容積のサイクルと同相関係に1個以上の前記電子制御されたバルブを制御して、各容積サイクルにおいて各作動室より排出される作動流体の正味体積を選択すべく動作可能なコントローラを含んでいる。
【0025】
通常、各ローラーまたはその他のカム係合要素は、リングカム作動面に対して付勢されている。例えば、各ローラーまたはその他のカム係合要素は、バネ等の弾性部材により作動面に対して付勢されていてよい。通常、弾性部材は各ピストンを各ローラーまたはその他のカム係合要素に対して付勢することにより、前記ローラーを(または他のカム係合要素)作動面に対して付勢する。代替的に、または追加的に、各ローラー(または他のカム係合要素)および/または各ピストンは、作動室容積のサイクルの一部または全体にわたり、各作動室内からの流体圧により作動面に対して付勢されている。通常、各作動室内からの流体は、各ローラーまたはその他のカム係合要素とも直接連通していることにより、前記ローラーまたはその他のカム係合要素を作動面に対して付勢し、更にローラーまたはその他のカム係合要素をピストンから引き離す。例えば、各前記ピストンは、作動室から延びてローラーおよびピストンの隣接面と流体連通する通路を画定し、これにより高圧流体がピストンとローラーの間に溜まり、自動平衡流体ベアリングとして機能する。
【0026】
実際には、各ローラーまたはその他のカム係合要素に相当の力が作用する場合があり得る。この力は、作動室容積のサイクルの最中に定期的に変動する(且ついくつかの実施形態ではコントローラにより選択された作動室容積の特定のサイクルにおいて作動室により排出される流体量に依存する)。磨耗を減らすために、各作動室が低圧マニホルドと直接流体連通している、および/または高圧マニホルドから離されている場合に、ローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接するように機械が構成されているかまたは動作可能であってよい。
【0027】
流体作動機械は、各作動室が縮小している(例えば流体作動機械がポンプである実施形態において)ときにローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接しないように構成されていて(または動作可能であって)よい。流体作動機械は、各作動室が拡張する(例えば流体作動機械がモーターである実施形態において)ときにローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接しないように構成されていて(または動作可能であって)よい。流体作動機械は、回転が第1の方向に行なわれている場合、各作動室が縮小しているときにローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接しないように、また回転が第2の方向に行なわれている場合、各作動室が拡張している(例えば、流体作動機械が、第1の回転方向にポンプとして、また第2の回転方向にモーターとして動作可能なポンプ/モーターである実施形態において)ときに、ローラーまたはその他のカム係合要素は連結領域に当接しないように構成されていてよい。
【0028】
いくつかの実施形態において、作動室のローラーまたはその他のカム係合要素は作動室容積の全てのサイクルにおいて連結領域に当接する訳ではない(例えば、ローラーまたはその他のカム係合要素が2番目または3番目のサイクル毎に、あるいは2または3回以上のサイクル毎にしか連結領域に当接しない)。
【0029】
従って、流体作動機械が第1の方向に回転するポンプおよびモーターとして動作可能である実施形態において、流体作動機械は、第1の回転方向において、各カム係合要素は各作動室が縮小している場合は連結領域に当接しないように構成されているかまたは動作可能であってよく、各前記作動室は作動室容積の全てのサイクルにおいてポンピングサイクルを実行すべく動作可能であり、且つ各前記作動室は場合に応じてカム係合要素が2または3サイクル毎に、あるいは3または4回以上のサイクル毎にしか連結領域に当接しない作動室容積のサイクル中に、モータリングサイクルを実行すべく動作可能である。
【0030】
いくつかの実施形態において、流体作動機械は第1の方向に回転するポンプおよびモーターとして動作可能であり、各作動室が拡張している場合だけ各カム係合要素は連結領域に当接せず、各前記作動室は作動室容積の全てのサイクルにおいてモータリングサイクルを実行すべく動作可能であり、各前記作動室はカム係合要素が連結領域に当接しない作動室容積のサイクル中にポンピングサイクルを実行すべく動作可能である。
【0031】
流体作動機械は第1の回転方向にモーターとして、また第2の回転方向にポンプとして動作可能であってよく、第1の回転方向において各カム係合要素は各作動室が拡張しているときは連結領域に当接せず、第2の回転方向において各カム係合要素は各作動室が縮小しているときは連結領域に当接しない。
【0032】
従って、ローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接するときにカム係合要素が作動面の別の領域(すなわち、連結領域その他の不連続箇所を含まない作動面の別の領域)に当接するときの作動室内の流体圧と比較して、作動室内の流体圧は制限される。
【0033】
流体作動機械は、各作動室が拡張している(例えば流体作動機械がポンプである実施形態の)場合に限ってローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接するように構成されて(または動作可能であって)よい。流体作動機械は、各作動室が縮小している(例えば、流体作動機械がモーターである実施形態)場合に限ってローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接するように構成されていてよい。
【0034】
従って、流体作動機械が第1の回転方向にポンプおよびモーターとして動作可能である実施形態において、流体作動機械は、第1の回転方向において、各作動室が拡張している場合に限って各カム係合要素が連結領域に当接するように、構成されているかまたは動作可能であってよく、各前記作動室は作動室容積の全てのサイクルにおいてポンピングサイクルを実行すべく動作可能であり、且つ各前記作動室は、連結領域に当接しない作動室容積のサイクル中に(場合に応じて、作動室容積の2サイクル毎、3サイクル毎、あるいは3または4回以上のサイクル毎にだけ)モータリングサイクルを実行すべく動作可能である。
【0035】
いくつかの実施形態において、流体作動機械は第1の回転方向にポンプおよびモーターとして動作可能であり、各カム係合要素は各作動室が縮小する場合に限って連結領域に当接し、各前記作動室は作動室容積の全てのサイクルにおいてモータリングサイクルを実行すべく動作可能であり、且つ各前記作動室はカム係合要素が連結領域に当接しない作動室容積のサイクル中にポンピングサイクルを実行すべく動作可能である。
【0036】
流体作動機械は第1の回転方向にモーターとして、また第2の回転方向にポンプとして動作可能であってよく、第1の回転方向において各カム係合要素は各作動室が縮小している場合に限って連結領域に当接し、第2の回転方向において各カム係合要素は各作動室が拡張している場合に限って連結領域に当接する。
【0037】
従って、ローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接するときにカム係合要素が作動面の別の領域(すなわち連結領域その他の不連続を含んでいない作動面の別の領域)に当接するときの作動室内の流体圧と比較して、作動室内の流体圧は制限される。
【0038】
流体作動機械は、(一方または両方の回転方向に)ポンプまたはモーターとして機能すべく動作可能であってよい。流体作動機械(例えば風力タービン)は、大部分の時間をポンプとして機能することができるが、保守作動の間タービン羽根(または他の回転装置)を所望の方位へ移動可能にすべくモーターとしても動作可能であってよい。いくつかのアプリケーションにおいて流体作動機械が所定の回転の方向にポンプおよびモーターの両方として動作可能であることは有利であろう。例えば、大部分の時間ポンプとして機能する(且つ作動室が縮小する場合は当該または各カム係合要素が連結領域に当接しない)流体作動機械(例えば風力タービン)は従って、作動室容積のあるサイクル(すなわち、当該または各カム係合要素が連結領域に当接しない場合)にだけ機械の位置あわせを行なうモーターとして動作可能であることが好都合である。例えば、大部分の時間ポンプとして機能する(且つ当該または各カム係合要素は作動室が縮小する場合は連結領域に当接しない)流体作動機械(例えば風力タービン)は従って、機械の位置合わせを行なうモーター(すなわち、作動室が拡張する場合に、当該または各カム係合要素が、連結領域に当接する)として極めて短時間動作可能であることが好都合である。
【0039】
いくつかの実施形態(例えば各前記作動室が作動サイクルまたはアイドリングサイクル中に実行すべく1サイクル毎に選択可能、および/またはポンピングサイクルまたはモータリングサイクルを実行すべく選択可能であるか、あるいは流体作動機械が一連の作動サイクルおよびアイドリングサイクル、または各々の第1および第2の回転方向にポンピングサイクルおよびモータリングサイクルを実行すべく構成されている)において、流体作動機械は、ローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接するときに、(カム係合要素が作動面の別の領域に当接するときの作動室内の流体圧と比較して)の別の領域に当接するときの前記作動室内の流体圧を(カム係合要素が作動面の別の領域に当接するときの作動室内の流体圧と比較して)制限すべく動作可能である(または構成されている)。好適には、流体圧は作動室容積の典型的な作動サイクル中の最大圧力より相当低い圧力に制限される。例えば、圧力は50Bar、100Barまたは200のBar未満に制限される。圧力は、作動室の最大値とされる動作圧力、または作動室容積の典型的な作動サイクル中の最大定格圧力の50%未満、または25%未満に制限されていてよい。
【0040】
好適には、作動室容積のサイクル中に前記作動室により排出される作動流体の正味体積を選択するコントローラによりローラーその他のカム係合要素が連結領域に当接するときに圧力が制限される。作動室容積のサイクル中に作動室により排出される作動流体の正味体積は、作動室容積の各サイクルに先立って選択されてよい。
【0041】
作動室容積のあるサイクル(すなわち作動、アイドリング、モータリングまたはポンピングサイクル)にわたり、前記動室により排出される流体の正味体積は、前記作動室内の作動流体圧を制限すべく高圧マニホルド内の圧力および/または各前記連結領域に関する各前記ローラー(または他のカム係合要素)の位置に応じて選択済みまたは選択可能であってよい。
【0042】
例えば、風力タービンの流体作動機械の高圧マニホルド内の圧力は風速に応じて変動する場合がある。
【0043】
いくつかの実施形態において、コントローラは、(開放、閉鎖、あるいは開放または閉鎖の防止により)1個以上の電子制御されたバルブ(前記動室および高および/または低圧マニホルドとの間の)を制御して、関連付けられたローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接するときに、作動室容積のサイクル中の前記作動室により排出される作動流体の体積を選択する、または作動流体の排出を防止することにより、ローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接するときの前記作動室内の作動流体圧を制限すべく動作可能である。
【0044】
いくつかの実施形態において、各前記作動室は、作動室が排出すべく動作可能である流体の最大体積よりも少ない流体の正味排出量体積が存在する部分的な作動サイクルを実行すべく動作可能である。従って、コントローラは、ローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接するときに、1個以上の電子制御されたバルブを前記作動室の部分的作動サイクルを選択することにより、関連付けられたローラーまたはその他のカム係合要素が連結領域に当接するときに作動室容積の前記サイクルの当該部分にわたり前記作動室内の作動流体圧を制限するよう制御すべく動作可能であってよい。
【0045】
作動面は更なる不連続を含んでいてよく、流体作動機械は、ローラーまたはその他のカム係合要素が不連続箇所に当接するときの前記作動室内の作動流体圧を制限すべく動作可能であってよい。
【0046】
従って、本方法は、カム係合要素が連結領域(または作動面の他の不連続箇所)に当接するときの1個以上の作動室内の圧力を制限すべく、1個以上の前記作動室の作動ポンピングサイクルおよび作動モータリングサイクルまたはアイドリングサイクルのうち1回以上を1サイクル毎に選択するステップを含んでいてよい。本方法は、1個以上の前記作動室の作動ポンピングサイクルおよび作動モータリングサイクルまたはアイドリングサイクルをコントローラに選択させるステップを含んでいてよい。
【0047】
各ピストンの運動軸はリングカムで同一平面上にあるが、リングカムの中心軸から直接半径方向には延びていなくてもよい。その代わりに、各ピストンの運動軸は、好適には傾いている、すなわちリングカムの中心軸から直接離れる方向に延びない。これにより、シリンダ内でスライド可能に搭載されるピストンに作用するせん断力を弱める。
【0048】
通常、リングカムの作動面は、波形(少なくとも1個、通常は複数の波を画定する)をなしている。これらの波は正弦波であってよいが、通常は正弦波形式からいくぶん逸脱している。いくつかまたは全てのセグメントが、波の一部を画定するピストン対向面を有していてよい。いくつかの実施形態において、当該または各前記セグメントの1個以上が、1個より多い、すなわち複数の波を画定するピストン対向面を含んでいる。従って、作動室のローラーまたはその他のカム係合要素は、作動室容積の全てのサイクルで連結領域に当接する訳ではなく、作動室容積の複数のサイクル(作動室容積の整数または非整数回サイクルであってもよい)毎にだけ連結領域に当接することができる。作動室容積のローラーまたはその他のカム係合要素は、作動室容積の2回(または2回より多い)サイクル毎に連結領域に当接することができる。従って、いくつかまたは全てのセグメントは、波形表面の複数の山を含んでいてよい。いくつかまたは全てのセグメントは、波形の表面の複数の谷を含んでいてよい。リングカムを形成するセグメントは全て互いに同じであってよく、あるいはリングカムを形成すセグメントの2個以上の形状があってもよい。
【0049】
リングカムは、回転可能シャフトに搭載されていてよい。回転可能なシャフトは、空洞であってよい。リングカムが回転して、少なくとも1個のピストンが所定位置に留まってもよい。リングカムが静止していて、少なくとも1個のピストンがリングカムに相対的に回転してもよい。リングカムおよび少なくとも1個のピストンの両方が回転するが、異なる回転速度または方向で回転して、リングカムと少なくとも1個のピストンの間に相対的な回転が生じるようにしてもよい。
【0050】
好適には、セグメントの先行協働構造の最先端、またはセグメントの追従協働構造の最後端の領域は滑らかである。鋭いエッジを避けることにより磨耗を減少させることができる。
【0051】
好適には、いくつかまたは全てのセグメントは、カムセグメント支持部に相対的なセグメントの滑りに抗すべく、滑り止め構造を含んでいる。例えば、1個以上のセグメントが、カムセグメント支持部の協働する溝またはスプラインに嵌合するスプラインまたは溝、あるいは同様にカムセグメント支持部上の溝に嵌合するキーイング部材を受容する溝を含んでいてよい。好適には、カムセグメント支持部は回転可能シャフトを含んでいる。
【0052】
好適には、連結領域において係合する隣接セグメントの協働構造のピストン対向面は、180.0°未満(しかし通常は170.0°より大きい)角度で交差する。
【0053】
従って、本発明は第4の態様において少なくとも1個のピストンを有する流体作動機械用のリングカムに拡張され、リングカムが少なくとも2個のセグメントを含み、各前記セグメントが先行領域において先行協働構造、および追従領域において追従協働構造を有し、各先行協働構造が連結領域において前記追従協働構造と協働係合し、各前記セグメントがピストン対向面を有し、少なくとも1個のピストンの往復運動を他方のピストンに相対的なリングカムまたは少なくとも1個のピストンの回転に結合すべく少なくとも1個のピストン(通常はローラー等の、カム係合要素を介して)と動作可能に係合すべくピストン対向面が共にカム作動面(通常はマルチローブ)を画定し、連結領域において係合する隣接セグメントの協働構造のピストン対向面が180.0°未満(しかし通常は170.0°より大きい)角度で交差することを特徴とする。
【0054】
連結領域に係合する隣接セグメントの協働構造のピストン対向面が180.0°未満の角度で交差するため、ピストンに搭載されていて、1個のセグメントから隣接セグメントへの転がるローラーは2個の隣接セグメントの各々の作動面と短時間接触することにより、1個のセグメントから次のセグメントへ次第に力を伝達する。たとえ隣接するピストンのピストン対向面の間にわずかな不一致があるにせよ、それがリングカムおよび前記角度の曲率比べて相対的に小さい場合、依然としてローラーは結果的に生じた不連続箇所を越えることができる。
【0055】
ある角度に交差するとは、連結領域において協働構造のピストン対向面と同一平面上にある平面と、隣接する協働構造のピストン対向面と同一平面上にある平面が交差する角度を指す。
【0056】
本発明はまた第5の態様において、本発明の第4の態様によるリングカムおよび少なくとも1個のピストン(通常は複数のピストン)を含む流体作動機械に拡張され、少なくとも1個のピストンがローラーに結合されていて、少なくとも1個のピストンの往復運動が少なくとも1個のピストンに相対的なリングカムの回転に結合するように少なくとも1個のローラーがリングカム作動面と回転係合している。
【0057】
本発明は第6の態様において、少なくとも1個のピストンを有する流体作動機械用のリングカムに拡張され、リングカムが少なくとも2個のセグメントを含み、前記セグメントがピストン対向面を有し、少なくとも1個のピストンの往復運動を少なくとも1個のピストンに相対的なリングカムの回転に結合すべくカム係合要素(ピストンの一部、例えばピストンシューまたはより典型的にはローラー等)を介して少なくとも1個のピストンと動作可能に係合するピストン対向面が共にカム作動面(通常はマルチローブ)を画定し、各セグメントのピストン対向面が圧縮状態に保持されていることを特徴とする。
【0058】
従って、ピストン(ローラーまたはピストンシュー等のカム係合要素を介して結合された)からの力が各セグメントのピストン対向面に当接するときに結果的に生じる引張応力はセグメントのピストン対向面の圧縮により部分的にまたは完全に相殺され、これが無ければセグメントの寿命が短縮されたであろう引張応力を減衰または回避する。セグメントは通常、引張よりも圧縮に強い鋼等の金属製である。
【0059】
好適には、ピストン対向面は(フープとしても知られる)接線方向の圧縮状態に保持されている。接線方向の圧縮とは、各セグメントのピストン対向面が当該ピストン対向面に接する(およびこれを囲む)方向に圧縮されることを指す。好適には、ピストン対向面の圧縮は、ピストン対向面に接する方向の50MPa、100MPa、または200MPaより大きい。
【0060】
実際には、各セグメントのピストン対向面と同様に、少なくとも各セグメントの表面に隣接する領域が圧縮状態に保たれる。通常、圧縮領域はピストン対向面からセグメント内へ延びており、接線方向の圧縮は好適には50を超えるMPa、100MPaまたは200MPaである。
【0061】
例えば、接線方向の圧縮力はピストン対向面から1mm、2mmまたは5mmを超える深さまでセグメントに存在してもよい。
【0062】
圧縮状態に保たれるとは、ピストンからの力等、他の力が存在しない場合に圧縮歪みが存在することを指す。従って、セグメントは弾性変形する。通常、当該または各セグメントは、圧縮状態に保持されていなければ異なる形状をとるであろう。従って、セグメントは通常、少なくともピストン対向面が1個以上の固定具により、圧縮状態および通常は接線方向の圧縮状態に保たれるように保持されている。1個以上の固定具は、セグメントを取り外せるように取り外し可能であってよい。例えば、セグメントは試験、保守または交換可能にすべく個々に取り外し可能であってよい。
【0063】
通常、各前記セグメントは、セグメントに外力無しで生じる固有曲率を有し、各前記セグメントは異なる曲率で保持されていることにより、各セグメントのピストン対向面を圧縮状態に、且つ通常は接線方向の圧縮状態に保つ。固有の曲率とは、セグメントに作用する外力、例えば1個以上の固定具により弾性変形の下で保持されているピストンまたはセグメントから生じる力が無い場合に生じるであろう曲率を指す。
【0064】
通常、リングカムはドラム等のカムセグメント支持部を含んでいて、各セグメントは1個以上の固定具によりカムセグメント支持部に固定されている。通常、各セグメントはピストン対向面の反対側に支持部対向面を有している。
【0065】
各セグメントは、ピストン対向面が圧縮された状態でセグメントをカムセグメント支持部に保持すべく、ボルト等の1個以上の固定具を受容するために支持部対向面とピストン対向面の間を延びる1個以上の貫通孔を含んでいてよい。従って、各セグメントのピストン対向面は通常、貫通孔が穿たれている。各セグメントはセグメントの側に、ピストン対向面から1個以上の固定具まで延びる切り欠きを含んでいてよい。
【0066】
リングカムは、当該リングカムから半径方向外向きにピストンと動作可能に係合する外向き作動面を有していてよく、各前記セグメントは自身の固有曲率より小さい曲率で保持されている。従って、カムセグメント支持部は第1の曲率半径を画定し、各セグメントは第2の曲率半径を有する固有曲率を有していてよく、第1の曲率半径は第2の曲率半径より大きい。第1の曲率半径は、カムセグメント支持部(セグメント保持構造の間を連続的に延びている必要はない)上のセグメント保持構造(ボルト穴等)の構成により画定することができる。各セグメントは、前記貫通孔を通ってカムセグメント支持部まで延びる1個以上のボルトによりピストン対向面が圧縮された状態で保持されていてよい。好適には、第1の曲率半径は第2の曲率半径より少なくとも0.05%または0.1%大きく、且つ第1の曲率半径は第2の曲率半径より0.1%〜0.5%、またはいくつかの実施形態において0.2%〜0.3%大きくてもよい。
【0067】
リングカムは、リングカムから半径方向に内向きのピストンと動作可能に係合する内向きの作動面を有していてよく、各前記セグメントは自身の固有曲率より大きい曲率に保たれている。従って、カムセグメント支持部は第1の曲率半径を画定し、各セグメントは第2の曲率半径を有する固有曲率を有していてよく、第1の曲率半径は第2の曲率半径より小さい。第1の曲率半径は、セグメント保持構造の間を連続的に延びている必要はないカムセグメント支持部上のセグメント保持構造(ボルト穴等)の構成により画定することができる。各セグメントは、前記貫通孔(または切り欠き)を通ってカムセグメント支持部まで延びる1個以上のボルトによりピストン対向面が圧縮された状態で保持されていてよい。好適には、第1の曲率半径は第2の曲率半径より0.1%または0.5%小さく、且つ第1の曲率半径は第2の曲率半径より少なくとも0.1%〜0.5%、またはいくつかの実施形態において0.2%〜0.3%大きい。
【0068】
各前記セグメントは、ピストン対向面下方に1個以上の圧縮可能ゾーン(支持部係合面よりもピストン対向面に近く、通常ははるかに近い)を含んでいてよく、圧縮可能ゾーンはセグメント周囲の材料よりも大きい圧縮性を有する媒体を含んでいる。
【0069】
これらのゾーンは、セグメントの一部または全体にわたり(例えば、リングカムの回転軸と実質的に平行に)延びていてよい。圧縮可能ゾーンは、前記セグメントの材料内の穴または空洞、例えばセグメントの両側の間を延びる貫通ボアであってよい。圧縮可能ゾーンは、他の任意の適切な圧縮可能な媒体を含んでいてよい。
【0070】
各前記セグメントは複数の圧縮可能ゾーンを含んでいてよい。
圧縮可能ゾーンは、前記ピストン対向面内で圧縮の発生を容易にする点が好都合である。圧縮可能ゾーンは、固定具により加えられた所与の量の力に対してより大きい接線方向の圧縮の発生を可能にすることができる。
【0071】
本発明は第7の態様において、本発明の第6の態様によるリングカム、および少なくとも1個のピストンの往復運動が少なくとも1個のピストンに相対的なリングカムの回転に結合されるようにカム係合要素(ピストンの一部または例えばローラー)を介してリングカム作動面と動作可能に係合している少なくとも1個のピストン(通常は複数のピストン)を含む流体作動機械に拡張される。
【0072】
本発明は第8の態様において、第6の態様によるリングカムを形成すべくリングカムセグメントを嵌合させる方法に拡張され、本方法は、リングカムセグメントを弾性的に変形させて当該セグメントのピストン対向面を圧縮しながら、リングカムセグメントのピストン対向面が前記作動面の一部を形成するようにリングカムを搭載するステップを含んでいる。
【0073】
カムセグメント支持部は、少なくとも2個の前記固定具の間、且つ通常は各前記固定具の間を連続的に延びていてよく、且つ好適にはリングカムセグメントを搭載するステップは、支持部対向面と当該セグメントの先行および追従端の間の少なくとも途中(通常はセグメントの中央を越えて)まで延びている支持部との間に隙間が生じるように当該セグメントの支持部対向面を当該セグメントの先行および追従端またはその近傍でカムセグメント支持部と係合させ、当該セグメントを弾性的に変形させて当該隙間を狭める(且つ好適には除去する)ステップを含んでいる。当該セグメントは、当該セグメントをカムセグメント支持部に接続するボルトに張力が作用した場合に弾性的に変形してよい。
【0074】
本発明の第9の態様によれば、カム係合要素(ピストンの一部、例えばピストンシューまたはより典型的にはローラー等)を介してピストンと動作可能に係合させる作動面部を有するリングカムセグメントを提供し、当該作動面部は反復波(一般には正弦波であってよい)の割合xを記述し、当該セグメントは曲率を有し、当該セグメントは360°の分数y相当湾曲している作動面部の下地をなし、xはyの整数倍ではない。
【0075】
通常、リングカムセグメントは、リングカム内に嵌合すべく少なくとも0.01°程度撓むことが必要である(すなわち、先行および追従端の相対的な向きが少なくとも0.01°程度変化することが必要である)。リングカムセグメントは、少なくとも0.1°程度撓むことが必要である場合がある。一実施形態では0.05°程度撓むことが必要である。通常、リングカムセグメントは、0.05%〜0.1%程度撓むことが必要である(すなわち、セグメントの曲率半径が0.05%〜0.1%程度変化することが必要である)。
【0076】
従って、各セグメントは、反復波の比率(1より大きくても、小さくても、または等しくてもよい)を記述する作動面部を有している。しかし、作動面部の下地をなすセグメントの曲率により、整数個の波を含む連続作動面を有するリングカムを形成すべく複数のセグメントを互いに嵌合させた場合、必然的に当該セグメントが撓んで弾性的に変形してしまう。セグメントは整数個の波を含む連続作動面を有するリングカムを形成すべく構成されていて、セグメントは当該セグメントの作動面部が圧縮状態に保たれるべく適度に撓ませなければならない。
【0077】
本発明の第10の態様によれば、リングカム、低圧マニホルド、高圧マニホルド、作動室を画定する少なくとも1個のピストン、および作動室容積のサイクルと同相関係に作動室を低または高圧マニホルドに交互に接続すべく当該または各作動室に関連付けられた少なくとも1個のバルブ(電子制御されたバルブ、典型的には電子制御された表面密閉ポペットバルブであってよい)を含む流体作動機械を提供し、リングカムが、少なくとも1個のピストンの往復運動を少なくとも1個のピストンに相対的なリングカムの回転に結合し、それにより作動室容積のサイクルを画定すべくカム係合要素(ピストンの一部、例えばピストンシューまたはより典型的にはローラー等)を介して少なくとも1個のピストンと動作可能に係合する波形のカム作動面を有し、波形のカム面の波が各々先行面および追従面を有していて、作動室容積のサイクルと同相関係に作動室を出入りする流体の流れから生じる正常動作中に少なくとも1個のピストンが殆ど仕事を行なわない先行面および追従面のどちらかに(通常はその上に)位置する作動面の不連続箇所を特徴とする。
【0078】
前記ピストンは、作動室容積の各前記サイクル中に、先行または追従面の一方または他方で殆ど仕事を行なくてよい。例えば、作動室容積の各前記サイクル中の作動室内の圧力は通常、周期的に変動し、各々のカム追従要素が先行および追従面の一方に当接している(作動面に作用する力が最大であって大部分の仕事が前記面上でなされるように)場合に最大であって、カム追従要素が先行および追従面の他方に当接している(作動面に作用する力が最小であって、前記面上で殆ど仕事が行なわれない)場合に最小である。
【0079】
前記ピストンは、流体作動機械またはリングカムの動作寿命にわたり先行または追従面の一方または他方で殆ど仕事を行なわない場合がある。任意の所与の時間にわたり先行または追従面の一方または他方で殆ど仕事を行なわない場合がある。例えば、流体作動機械は、複数の動作モードを有し、作動室容積の各前記サイクル(または大多数のサイクル)にわたり先行または追従面の一方でより多くの仕事が行なわれる(第1の回転方向であってよい)第1の動作モードおよび作動室容積の各前記サイクル(または大多数のサイクル)にわたり先行または追従面の他方でより多くの仕事が行なわれる(第2の運動方向であってよい)第2の動作モードを有していてよく、流体作動機械は、大部分の時間(例えば正常動作を行なう間)第1のモードで、ごく短い時間(例えば、保守を行なう間)第2のモードで機能し、前記不連続箇所は、少なくとも1個のピストンが第1の作動モードの間に殆ど仕事を行なわない先行面および追従面のどちらかの上に(通常はその上だけに)配置されている。
【0080】
通常、リングカムは、当該リングカムの外周の回りを延びる少なくとも2個のセグメント、および前記セグメントが取り付けられた支持構造を含み、各前記セグメントがピストン対向面を含んでいて、セグメントのピストン対向面が作動面を画定する。
【0081】
作動面内の前記不連続箇所は、前記セグメントを支持構造に固定する取り付け手段であってよい。取り付け手段は例えば、ボルト等、作動面を通って延びる(通常、リングカムの作動面を画定するセグメントピストン対向面の一部を通る)1個以上の固定具であってよい。取り付け手段は、前記セグメントを通る開口部および/またはボルトを受容する凹部を含んでいてよい。
【0082】
前記不連続箇所は、隣接セグメント間の不連続箇所であってよい。各々が先行および追従協働構造を含む複数のセグメントおよび作動面の不連続箇所が、隣接セグメントの先行および追従協働構造が各連結領域全体に重なる連結領域を含んでいてもよい。
【0083】
リングカム作動面およびカム係合要素の磨耗は、力を受けるに従い増大し、不連続箇所(リングカムセグメント間の連結領域またはセグメントを支持構造に固定する取り付け手段)を有する作動面の領域内で最も大きい。従って、本発明の流体作動機械において、時間の経過と共に不連続箇所(すなわち、前記領域に対して時間平均でなされた仕事、およびいくつかの実施形態では作動室容積の各前記サイクル中になされた仕事)が生じるリングカムの作動面の領域が受けた力は他の領域と比較してより低い。従って、作動面およびカム係合要素の磨耗率は減少する。
【0084】
通常、前記不連続箇所は、作動室容積のサイクルと同相関係にある作動室内外の流体の流れから生じた、ピストンが正常動作を行なう間に殆ど仕事を行なわない(または流体作動機械またはリングカムの動作寿命等の時間平均で殆ど仕事を行なわない)先行面および追従面の前記どちらか一方に位置する。
【0085】
前記不連続箇所が第1の種類(例:取り付け手段または前記連結領域)であって、作動面は更に別途例えば隣接する波同士の谷に、または先行および追従面の両方に分布している、第2の種類の不連続箇所を含んでいてよい。
【0086】
通常、流体作動機械はリングカム周辺に半径方向に配置された複数のピストンを含んでいる。
【0087】
各前記カム係合要素は、(作動室容積の各サイクルの一部またはより典型的には全体にわたり)各作動室内からの流体圧により作動面に対して付勢されていてよい。従って、各作動室内の作動流体の圧力から生じる各前記ピストンに作用する力は、当該または各前記カム係合要素により作動面に伝達されて作動面に当接する(これにより作動面に対して仕事を行なう)。各前記カム係合要素は代替的または追加的に、バネ等の弾性固定具により作動面に対して付勢されていてよい。
【0088】
流体作動機械は、(それにより不連続箇所を含む作動面の領域に対して行なわれる仕事も制限されるように、不連続箇所を含む作動面の領域に作用する力を減らすために)各カム係合要素が前記不連続箇所に当接するときに前記作動室内の圧力を制限すべく動作可能であってよい。
【0089】
好適には、カム係合要素が前記不連続箇所に当接するときに作動室内で圧力を制限するために、作動室は、カム係合要素が前記不連続箇所に当接するときに高圧マニホルドから密閉されている。例えば、作動室は、典型的には電子制御されたバルブ(電子制御された面密閉ポペットバルブであってよい面密閉ポペットバルブ等)であるバルブ(本明細書では高圧バルブと称する)を介して高圧マニホルドから密閉されていてよい。作動室は代替的または追加的に、カム係合要素が前記不連続箇所に当接するときに作動室内の圧力を制限するために、カム係合要素が例えばバルブ(電子制御された面密閉ポペットバルブであってよい面密閉ポペットバルブ等)を介して前記不連続箇所に当接するときに低圧マニホルドと流体連通していてよい。
【0090】
通常、カム係合要素が波の先行面に当接するときに収縮ストロークが生じ、カム係合要素が追従面に当接するときに拡張ストロークが生じる。
【0091】
流体作動機械がポンプであって、各前記不連続箇所が追従面に存在してよい。ポンプにおいて、各カム係合要素が追従面に当接しているために各不連続箇所が作動室内の圧力が比較的低い期間と一致する間、流体は通常、拡張ストロークを行なう間に低圧マニホルドから取り込まれる。
【0092】
流体作動機械がモーターであって、各前記不連続箇所が先行面に存在してよい。そのようなモーターにおいて、各カム係合要素が先行面に当接しているために各不連続箇所が作動室内の圧力が相対的に低い期間と一致する間、流体は通常、収縮ストローク中に低圧マニホルドへ排出される。
【0093】
前記不連続箇所は、第1の動作モードにおいて作動室容積のサイクルと同相関係に作動室を出入りする流体の流れから生じる動作中にピストンが殆ど仕事を行なわない先行面および追従面のどちらかの一部だけの作動面に存在していてよい。
【0094】
流体作動機械は、作動室容積の作動ポンピングまたは作動モータリングサイクルのどちらかを実行して、第1の動作モードで動作する間にピストンが殆ど仕事を行なわない前記先行面および追従面のどちらかに対してより多くの仕事をピストンにさせると共に、ピストンが第1の動作モードで動作する間に殆ど仕事を行なわず前記不連続箇所を有しない前記先行面および追従面のどちらかにカム係合要素が当接するときに前記作動ポンピングまたは作動モータリングサイクルが選択的に実行される第2の動作モードを有していてよい。
【0095】
第1の動作モードはポンピングであってよく、ピストンが第1の動作モードで動作する間に殆ど仕事を行なわない(または殆ど力を作用させない)面は追従面であって、第2の動作モードはモータリングであってよい。
【0096】
第1の動作モードはモータリングであってよく、ピストンが第1の動作モードで動作する間に殆ど仕事を行なわない(または殆ど力を作用させない)面は先行面であって、第2の動作モードはポンピングであってよい。
【0097】
各前記作動室は、1個以上の電子的に制御可能なバルブを含んでいてよく、流体作動機械は、当該または各々の電子的に制御可能なバルブを制御すべく動作可能なコントローラを含んでいてよい。各前記作動室は1サイクル毎に、当該または各々の電子的に制御可能なバルブの制御により作動サイクル(作動流体の正味排出量がある場合)またはアイドリングサイクル(実質的に流体の正味排出量が無い場合)を実行すべくコントローラにより選択可能であってよい。同様に、各前記作動室は1サイクル毎に、作動ポンピングサイクルまたは作動モータリングサイクルを実行すべく選択可能であってよい。コントローラは、計算機可読な記憶媒体に格納されたプログラムを使用時に実行し、プログラムは先行または追従面で使用時に力が殆ど作用していないかまたは殆ど仕事が行なわれていないかを判定するものであってよい。
【0098】
従って、本発明は第11の態様において流体作動機械用のリングカムに拡張され、リングカムは、当該または各ピストンの往復運動を当該または各ピストン相対的なリングカムの回転に結合し、これにより作動室容積のサイクルを画定すべくカム係合要素(ピストンの一部、例えばピストンシューまたはより典型的にはローラー等)を介して少なくとも1個のピストンと動作可能に係合する作動面を含み、作動面は先行および追従面を有する複数の波を含んでいて、作動面は前記複数の波の先行面または追従面のどちらかに不連続箇所を含んでいる。
【0099】
先行および追従面とは、流体作動機械におけるリングカムの使用時に、各カム係合要素が最初および最後に係合する各々の波の面を指す。リングカムが二つの向きのどちらでも使われることを意図しており、その場合どちらを先方または追従と見なすかは任意である。
【0100】
作動面の全ての波が前記不連続箇所を含んでいてよく、あるいは作動面が複数の波長により(例えば、1個半の波毎、または2個の波毎、あるいは3個の波毎に)相互に間隔を空けられた不連続箇所を含んでいてよい。作動面は、不連続箇所を有していない1個以上の波を含んでいてよい。
【0101】
通常、リングカムは当該リングカムの外周の回りを延びる少なくとも2個のセグメント、および前記セグメントが取り付けられた支持構造を含み、各前記セグメントがピストン対向面を含んでいて、セグメントのピストン対向面が作動面を画定する。
【0102】
前記不連続箇所は、(セグメント間の不連続箇所ではなく)セグメントのピストン対向面内の不連続箇所であってよい。作動面内の前記不連続箇所は、前記セグメントを支持構造に固定する取り付け手段であってよい。取り付け手段は、例えば、ボルト等、作動面を通って延びる(通常、リングカムの作動面を画定するセグメントピストン対抗面の一部を通る)1個以上の固定具であってよい。取り付け手段は、前記セグメントを通る開口部またはボルトを受容する凹部を含んでいてよい。
【0103】
しかし、不連続箇所は隣接セグメント間の界面であってよい。例えば、複数のセグメントの各々が先行および追従協働構造を含み、作動面内の前記不連続箇所が、隣接セグメントの先方および追従協働構造が各々の連結領域全体にわたり重なる連結領域を含んでいてよい。
【0104】
通常、前記不連続箇所は、前記先行面だけ、または前記追従面だけに位置する。
前記不連続箇所が前記先行または追従面の一部だけに存在してもよい。例えば、先行または追従面の1個毎に、先行または追従面の3〜4個毎に、先行または追従面の3個毎のうち2個に、あるいは先行または追従面の4個毎のうち3個にあってよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、1個の波毎に(従って、作動室容積のサイクル毎に)複数(例えば、1個半、または2個、あるいは3個以上)の不連続箇所が位置する。
【0106】
作動面の波は正弦波であってよい。
本発明の第12の態様によれば、流体作動機械を動作させる方法を提供し、当該流体作動機械は、リングカム、低圧マニホルド、高圧マニホルド、作動室を画定する少なくとも1個のピストン、および作動室容積のサイクルと同相関係に作動室を低または高圧マニホルドに交互に接続すべく当該または各作動室に関連付けられた少なくとも1個のバルブ(電子制御されたバルブ、典型的には電子制御された表面密閉ポペットバルブであってよい)を含んでいて、リングカムが、少なくとも1個のピストンの往復運動を少なくとも1個のピストンに相対的なリングカムの回転に結合し、それにより作動室容積のサイクルを画定すべくカム係合要素(ピストンの一部、例えばピストンシューまたはより典型的にはローラー等)を介して少なくとも1個のピストンと動作可能に係合する波形のカム作動面を有し、波形のカム面の波が各々先行面および追従面を有していて、先行または追従面は不連続箇所を含み、本方法は、少なくとも1個のピストンが、先行または追従面のどちらかが不連続箇所を含んでいる作動室容積のサイクルと同相関係に作動室を出入りする流体の流れから生じた正常動作中に殆ど仕事をしないことにより特徴付けられる。
【0107】
前記先行または追従面の一部だけが前記不連続箇所を含んでいてよい。
本発明の第13の態様によれば、流体作動機械を動作させる方法を提供し、当該流体作動機械は、リングカム、低圧マニホルド、高圧マニホルド、容積が周期的に変動する作動室を画定する少なくとも1個のピストン、および作動室容積のサイクルと同相関係に作動室を前記低圧マニホルドおよび前記高圧マニホルドに交互に接続すべく当該または各作動室に関連付けられた少なくとも1個の電子制御されたバルブを含んでいて、リングカムが、当該または各ピストンの往復運動を当該または各ピストンに相対的なリングカムの回転に結合し、それにより作動室容積のサイクルを画定すべくカム係合要素(ピストンの一部、例えばピストンシューまたはローラー等)を介して当該または各ピストンと動作可能に係合する作動面を有し、当該作業面の1個以上の領域が不連続箇所を含んでいて、
本方法は、各カム係合要素(すなわち前記作動室を画定するピストンがカム作動面内で係合するカム係合要素)が作動面内の前記不連続箇所に当接するときの前記作動室内の作動流体圧を制限することにより特徴付けられる。
【0108】
従って、カム係合要素が不連続箇所(および、いくつかの実施形態では不連続箇所が位置する先行面または先行面)に当接するときの作動室内の流体圧は通常、カム係合要素が作動面の別の領域に当接するときの作動室内の圧力より小さい。その結果、不連続箇所の領域において、作動面に対する前記ピストンが行なった仕事、および作動面の磨耗が減少する。
【0109】
当該リングカムは、本発明の第11の態様によるリングカムであってよい。
前記作動室内の作動流体圧は、例えば、作動室と高圧マニホルドの間における流体の流れを調整する前記電子制御されたバルブの開閉タイミングを制御することにより、カム係合要素が不連続箇所を通過する(すなわち当接する)場合に作動室を高圧マニホルドから密閉することにより制限されるものであってよい。
【0110】
当該リングは、先方および追従面を有する複数の波を含み、前記不連続箇所は先行または追従面の一方に存在し、前記作動室内の作動流体圧は、カム係合要素が先行または追従面の他方に当接する間に作動室圧が最も大きい作動室容積の各作動サイクル内の時点が生じるように作動室容積の作動サイクルをリングカムの回転に同期させることにより制限されてよい。
【0111】
当該リングカムは、先方および追従面を有する複数の波を含み、前記不連続箇所は前記先行面の一部だけまたは前記追従面の一部だけに(例えば先行面の1個毎に、先行面の3個毎だけに、追従面の1個毎に、あるいは追従面の3個毎だけに)存在し、
流体作動機械は、各カム係合要素が前記先行または追従面(すなわち不連続箇所が存在しないもの)の他方に当接するとき(且つ通常はその場合だけ)各作動室内の圧力が閾値を上回り、
(通常は)各カム係合要素が前記不連続箇所の各々に当接するとき(または各カム係合要素が前記不連続箇所を含む部分または不連続箇所が位置する各前記先行または追従面の全てに当接するとき)は各作動室内の圧力が閾値を上回らない第1の動作モード(例:ポンピング)、および
各作動室内の圧力が、カム係合要素が前記不連続箇所(または不連続箇所が位置する前記先行または追従面)に当接するときに閾値を上回らない第2の動作モード(例:モータリング、またはリングカムが第1のモードとは反対方向に回転する第2のポンピングモード)を有しているものであってよい。
【0112】
前記作動室内の作動流体圧は、カム係合要素が前記不連続箇所(またはいくつかの実施形態では不連続箇所が位置する前記先行または追従面)に当接する時間の大部分または好適には全部で当該圧力が閾値を上回らないように前記動作モードにおける作動室容積の作動サイクルのタイミングを選択することにより(例えば第2の動作モードに)制限されていてよい。
【0113】
閾値は圧力値であっても、または値の範囲であってもよい。閾値は高圧マニホルド内の圧力の割合として、または前記作動室の最大定格動作圧力の割合として選択されてよく、あるいは閾値はリングカムの物理特性に関して経験的に決定されていてもよい。閾値は、流体作動機械の動作要件に従い変動してよい。
【0114】
通常、作動室容積の各サイクルにおける作動流体の正味排出量は、前記1個以上の電子的に制御可能なバルブを制御することにより決定される。通常、作動容積の各サイクルにおいて、作動流体の正味排出がなされる作動サイクル(例:作動ポンピングサイクルまたは作動モータリングサイクル)または流体の正味排出がなされないアイドリングサイクルのどちらを実行すべきかの決定がなされる。
【0115】
好適には、作動室の中の流体圧は、各カム係合要素が前記不連続箇所に当接するときに作動室容積の典型的な作動サイクル中の最大圧力より相当低い圧力に制限される。従って、閾値は通常、作動室容積の典型的な作動サイクル中の最大圧力よりも相当低い。例えば、圧力は50Bar、100Bar、または200Bar未満に制限されていてよい。圧力は、作動室の最大定格動作圧力、または作動室容積の典型的な作動サイクル中の最大圧力の50%未満または25%未満に制限されていてよい。
【0116】
通常、作動室容積のサイクル中に作動室内の圧力は周期的に変動し、各々のカム追従要素が先行および追従面の一方に当接しているときに最大であり、カム追従要素が先行および追従面の他方に当接しているときに最低である。従って、作動室は通常、各カム係合要素が不連続箇所を有していない先行または追従面に当接するときに作動室内の圧力が最大値に達する作動サイクルを実行する。いくつかの実施形態において、作動室は、圧力センサにより測定された高圧マニホルド内の圧力等の測定(または予測)された圧力が閾値未満である場合に限って、各カム係合要素が不連続箇所(例:取り付け手段)を有する先行または追従面に当接している間に作動室内の圧力が最大に達する作動サイクルを実行すべく動作可能であってよい。
【0117】
作動室容積のサイクル中に前記作動室により排出される流体の正味体積は、高圧マニホルド内の圧力および/または各前記不連続箇所(例:取り付け手段)に対する各前記ローラー(または他のカム係合要素)の位置に応じて選択済みまたは選択可能であってよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、コントローラは、1個以上の電子制御されたバルブを(開放、閉鎖、または開閉の防止により)制御して、作動流体の排出量を選択するか、あるいは関連付けられたローラーまたはその他のカム係合要素が不連続箇所に当接するときに、作動室容積のサイクル中に前記作動室による作動流体の排出を防止することにより前記作動室内の作動流体圧を制限すべく動作可能である。
【0119】
作動室容積のサイクル中に前記作動室により排出される流体の正味体積は、高圧マニホルド内の圧力および/または各前記不連続箇所に対する当該または各カム係合要素の位置に応じて選択済みまたは選択可能であることにより前記作動室内の作動流体圧を制限することができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、コントローラは、1個以上の電子制御されたバルブを(開放、閉鎖、または開閉の防止により)制御して、作動流体の排出量を選択するか、あるいは関連付けられたローラーまたはその他のカム係合要素が不連続箇所に当接するときに、作動室容積のサイクル中に前記作動室による作動流体の排出を防止することにより前記作動室内の作動流体圧を制限すべく動作可能である。従って、各前記作動室は、カム係合要素は作動面の不連続箇所に当接するときに、前記作動室内の作動流体の圧力を制限すべく作動サイクル、アイドリングサイクル、部分的作動サイクル、ポンピングサイクル、またはモータリングサイクルを実行すべくコントローラにより1サイクル毎に選択可能または選択済みであってよい。
【0121】
本方法は、リングカムの相対的な向きに対する各前記不連続箇所の位置に関するデータを保存する計算機可読データ記憶媒体(例:メモリ)から不連続箇所の位置データを読み出すステップを含んでいてよい。本方法は、リングカムの方位データを(例えばセンサから)を読み出して、当該データに応じて作動室に関連付けられたカム係合要素が作動室の特定サイクル中にリングカム面の波の先行または追従面上の不連続箇所を通過するか否かを決定するステップを含んでいてよい。
【0122】
本発明の第14の態様によれば、リングカム、低圧マニホルド、高圧マニホルド、容積が周期的に変動する作動室を画定する少なくとも1個のピストン、および作動室容積のサイクルと同相関係に作動室を前記低圧マニホルドおよび前記高圧マニホルドに交互に接続すべく当該または各作動室に関連付けられた少なくとも1個の電子制御されたバルブを含む流体作動機械を提供し、リングカムが、当該または各ピストンの往復運動を当該または各ピストンに相対的なリングカムの回転に結合し、それにより作動室容積のサイクルを画定すべくカム係合要素(ピストンの一部、例えばピストンシューまたはローラー等)を介して当該または各ピストンと動作可能に係合する作動面を有し、当該作業面の1個以上の領域が不連続箇所を含んでいて、当該機械は、各カム係合要素が作動面内の前記不連続箇所に当接するときの前記作動室内の作動流体圧を制限すべく動作可能であることにより特徴付けられる。
【0123】
本発明の第1〜第14の態様のどちらかに関して記述された好適且つ選択的特徴は、本発明の第1〜第14の態様のいずれかの好適且つ選択的特徴に対応している。
【0124】
本発明はまた、組み立てられた場合に本発明の第1の態様、または本発明の第4の態様、または本発明の第7の態様、または本発明の第11の態様によるリングカム、あるいは本発明の第2の態様、または本発明の第5の態様、または本発明の第7の態様、または本発明の第10の態様、または本発明の第14の態様による流体作動機械を形成する部品のキットに拡張される。
【0125】
本発明はまた、本発明の第9の態様による、または第1〜第12の態様に関して開示したカムセグメント支持部および複数のカムセグメントを含む部品のキットに拡張され、複数のカムセグメント支持部のピストン対向面が弾性的に変形してカムセグメント支持部に嵌合した場合に共に整数個の波を有するリングカム作動面を形成する。
【0126】
本発明はまた、流体作動マシンコントローラで実行された際に本発明の第12または第13の態様による方法をコントローラに実行させるプログラムコードを保存する計算機可読媒体に拡張される。
【0127】
本発明の実施形態の例を以下の図面を参照しながら例示する。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1(a)】2個の協働係合するカムセグメントのピストン対向面により画定される風力タービンポンプのリングカムの作動面の一部の平面図である。
【図1(b)】タービン駆動シャフトに固定された2個のカムセグメントを示す、風力タービンポンプのリングカムの線Aに沿った軸方向断面図であって、軸方向ピストンローラーおよび作動室の位置をカムセグメントにより画定される作動面に関して模式的に示している。
【図2】カム支持構造および(a)支持構造に固定される前の応力が掛かっていない状態および(b)支持構造に固定されて事前応力が掛けられた状態のカムセグメントの一部の模式的軸方向断面図である。
【図3】追従面1個ずつに開口部を有する複数のセグメントを含むリングカムの断面を通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0129】
図1(b)を参照するに、リングカム1の一部がカムセグメント5、7から形成され、カムセグメント表面の開口部4から延びてカムセグメントをカム支持構造2に取り付けるボルト3により固定される。完全なリングカムを形成するために、更に複数のカムセグメント(図示せず)をカム支持構造に固定することができる。カム支持構造は、エネルギー源(例:風力または潮力タービンのブレード)からトルクを受ける駆動シャフト10(通常使用時には方向Bに回転する)に結合されている。
【0130】
各カムセグメントは、リングカムの作動面の一部を画定するピストン対向面15、16を有している。従って、リングカムは、駆動シャフトの外周の回りに固定された複数のカムセグメントにより画定される作動面を有している。作動面は波形であって、複数の先行面70および追従面72(回転方向に相対的に画定される)を有する波を含んでいる。波は一般に正弦波であってよいが、これは必須ではない。ピストン対向面は好適には、所望の表面特性を実現すべく製造中に熱および/または化学処理を受ける。
【0131】
セグメント30およびシャフト32の切り欠きが、滑り止め部材として機能してセグメントがシャフトの回りを回転するのを防止するキー34と嵌合する。交差ボルト穴36がサイドプレート(図3に示す120)をセグメントに保持すべく設けられていて、ローラー9が回転面から滑り落ちるのを防止する。あるいは、凸または凹型の反りをローラーおよび/またはピストン対向面に適用して同じ結果を得ることができる。
【0132】
各セグメント5、7は一端において追従舌部構造40(追従協働構造の例として)および、他端において2個の先行舌部構造46(共に先行協働構造の例を形成する)の間に形成された溝構造54を有している。
【0133】
先行セグメント5は、追従セグメント7の溝形成54の先行端44と連結する追従端42を有している。舌部および溝構造の組み合わせが連結領域として機能する。
【0134】
舌部48、50および溝52、54構造の表面は図に示すようにシャフトに垂直であるか、またはシャフトと別の角度をなしていてよい。舌部および溝構造は、端面50、54および側面48、52により互いに相対的なセグメントを固定すべく協働でき、これらは平行である必要はないが、舌部と溝構造の嵌合を所望通りに固くまたは緩くすべく構成されている。舌部40は、セグメント間の嵌合度を向上させて座屈を避けるべく隙間49を残した切り欠き先行端を有している。他の多くの適切な構造も当業者には明らかであろう。
【0135】
各セグメントのピストン対向面は、先行舌部構造の外面から追従舌部構造の外面へ連続的に延びる。追従セグメント7の先行舌部構造ピストン対向面は、先行舌部構造の追従領域で作動面の一部を形成するが、ピストン対向面16が追従セグメントの先行端で作動面から窪むように先行舌部構造の長さ方向に次第に窪んでいる。先行セグメント5の追従舌部構造のピストン対向面は、先行領域で作動面の一部を形成するが、ピストン対向面15が先行セグメントの追従部50で作動面から窪むように追従舌部構造の長さ方向に次第に窪んでいる。従って、各セグメントのピストン対向面は主にリングカムの作動面の一部を形成するが、各セグメントの各終端においてもリングカムの作動面の一部を形成しない(且つリングカムの作動面から窪んでいる)ピストン対向面の一部が位置する。
【0136】
舌部のピストン対向面が追従セグメントの先行協働構造の先行端および先行セグメントの追従協働構造の追従端へ向かって窪んでいるため、先行セグメントおよび追従セグメントのピストン対向面は連結領域において、180.0°に近いが小さい角度、例えば178.0°をなす。
【0137】
流体作動機械を形成するために、ピストン11は、シリンダ13内でピストンに往復運動させるべく使用時に作動面に当接して作動面に沿って転がるローラー9を介してリングカムに結合されている。ピストンおよびシリンダは共に容積が周期的に変動する作動室20を画定し、作動室の容積サイクルはローラーが通過するリングカムの作動面の波形の形状により画定される。ピストンは、バネ(図示せず)により、および/または作動室内の作動流体の圧力によりリングカムの作動面に対して付勢されている。シリンダおよびピストンは、各ピストンおよびシリンダの中央軸がリングカムの中心から直接半径方向に外向きに延びないように僅かに傾いている。これにより、使用時に作動面に重い負荷が掛かっている場合にシリンダに対して作用するピストンの横力が弱まる。
【0138】
使用時には、アプリケーション(例えば、流体作動機械がポンプまたはモーターのどちらとして機能している)に応じて、先行面70または追従面72のどちらかに最大負荷が掛かってもよい。各々の作動室の軸(ピストンの経路により画定される)は通常、リングカムの半径から遠ざかる方へ、且つ通常使用時に最大負荷が掛かっている先行または追従面のどちらかに垂直な軸の方へ傾いている。例えば、先行面だけに重い負荷が掛かっている(例:機械が方向Bに回転していて、主に(または専ら)ポンプとして用いられる)場合、作動室の軸は先行面72に垂直な軸の方へ時計回りに僅かに(通常は1°〜10°の範囲で)傾いていてよい(図1(b)の向きに関して)。
【0139】
シャフトセンサ18を介してシャフトの角位置および速度を読み込んで、制御アルゴリズムに従い各シリンダの低圧バルブ19および(オプションとして)高圧バルブ21を制御すべくコントローラ17が提供されている。低圧バルブは、作動室を低圧マニホルド23と流体連通させ、また作動室を分離することを交互に行なう。高圧バルブは、作動室を高圧マニホルド25と流体連通させ、また作動室を分離することを交互に行なう。マニホルドは、作動流体(図示せず)のソースまたはシンクに接続されている。バルブは理想的には座面のポペット型バルブであり、低圧バルブが流体を作動室へ流入およびオプションとして作動室から流出させるように(制御可能に開放状態に保持されているとき)向けられていて、高圧バルブが流体を作動室から流出およびオプションとして作動室へ流入させるように(制御可能に開放状態に保持されているとき)向けられている。
【0140】
使用時に、リングカムは作動室に対して方向Bに回転し、ローラー9は、先行セグメント5の追従舌部構造42のピストン対向面の最先行部分62の前の追従セグメント7の先行舌部構造44のピストン対向面の最先行部分60の上を転がる。追従セグメントのピストン対向面の最先行部分60が(作動面の一部を形成する)先行セグメントのピストン対向面15の下にあるため、ローラーは1個のセグメントから次のセグメントへ滑らかに移行できる。先方および追従セグメントの間にたとえ僅かな(製造公差内の寸法偏差から生じ得る)不一致があっても、ローラーが1個のセグメントから次のセグメントへ遷移する位置に僅かな差異が生じるだけで、ローラーが作動面内で不連続箇所に遭遇しないため、軋みは生じないであろう。
【0141】
連結領域は、作動室20のローラーが1個のセグメントから次のセグメントへ通過する際に作動室20が拡張する、すなわち作動面の追従面72に存在し、従って連結領域を通過する際のローラーを介してピストンがリングカムに作用させる力が最大でないように配置されている。
【0142】
低(およびオプションとして高)圧力バルブの開閉を制御することにより、各室が排出する作動流体の正味体積を作動室容積の各サイクルについて選択して、全体的な流体排出量が流体体積要求信号または出力圧力信号等の要求信号に一致させることができる。適当な制御アルゴリズムが欧州特許0361927号明細書、同0494236号明細書および同1537333号明細書に開示されていて、その内容を本明細書に引用している。
【0143】
従って、本発明は、磨耗を最小限に抑えながら、ローラーまたはその他のカム係合要素が1個のセグメントから次のセグメントへ滑らかに移動可能にする機構を提供する。しかし、複数のセグメントが提供されるため、これらを個別に点検、保守、および必要ならば交換することができる。
【0144】
更に、ボルト3(取り付け手段として機能する)が、同様に作動面の追従面72に位置する開口部4から延びる貫通孔に配置されており、従って開口部の上を通過する際にローラーを介してピストンがリングカムに作用させる力もまた最大ではない。
【0145】
作動室容積のサイクルの位相は、リングカムの作動面内の波により画定される。この例において、リングカムは流体作動ポンプの一部であり、従ってピストンからリングカムに作用する力は先行面70に沿って通過するローラーに対応する各作動室の圧縮ストローク中に最も大きい。流体作動機械が流体作動モーターである(または相当の時間モーターとして動作する)か、あるいはモーターとして動作する場合に最大トルクが要求される(従って、作動面に最も強い力が伝達される)場合、代わりにボルトが先行面70の作動面の開口部から延びる貫通孔に配置されているのが都合よい。これにより、取り付け手段が作動面に設けることができ(そのためリングカムおよび流体作動機械を公知の装置よりも小型且つ軽量化できる)、さもなければ作動面の開口部により生じた不連続箇所から生じる恐れがあるローラーまたはその他のカム係合要素の磨耗が最小限に抑えられる。
【0146】
セグメントは、例えば連続リングに複数の切欠きまたは不完全部分を作り、次いで前記リングを拡張または別途過度に負荷を掛けて破砕することにより、連続リングをより小さい部品に破砕することができる。
【0147】
図2(a)は、固定されるシャフト105の外面104(カムセグメント支持部として機能する)よりも小さい曲率半径を有する固定面(支持部対向面)102と共にセグメント100を形成して、セグメントとシャフトの間でセグメントがシャフトに接合される場所に隙間106を生じる様子を誇張して示す。
【0148】
図2(b)は、通常は取り付け手段(例えば、図1(a)、(b)に示すセグメント5、7のボルト3)に作用するシャフトに対する固定力110を示す。固定力110はセグメント100を変形させて隙間106を閉じ、(図2(b)に示すように)セグメントを外面104と協働係合させる。固定力110によるセグメントの変形の結果、接線方向の圧縮応力112がセグメントおよび、特にピストン対向面108に誘導される。
【0149】
接線方向の圧縮応力は、使用時にローラーが通過するピストン対向面と略平行に作用する。この接線方向の圧縮応力は、通過するローラーからの極めて強い力を受けたときに転がり面の寿命を延ばす。当該接線方向の圧縮応力が無ければ、負荷の重いローラーが通過することにより、シャフトへ向かう転がり面を局所的に圧縮させ、ピストン対向面に接線方向の引張応力を生じさせる。従って、圧縮応力112は、引張応力の一部を相殺する。実際に、いくつかの他の実施形態において、圧縮応力は、通常の使用時にピストン対向面が接線方向の引張応力を受けないように、期待引張応力を上回る場合がある。
【0150】
従って、セグメントのピストン対向面の曲率、および反対側の面の曲率は異なり、従って湾曲したカムセグメント支持部に嵌合すべくセグメントを撓ませ(それにより弾性的に歪ませ)なければならない。この場合、セグメントのカムセグメント支持部側の曲率はカムセグメント支持部の曲率より大きい。代替的な実施形態において、内向きの作動面(例えば、ピストンがリングカム内に配置されているラジアルピストン機械)を提供すべく、内向きのカムセグメント支持部にセグメントを保持することが意図されていてよい。この場合、カムセグメントのピストン対向面に接線方向の圧縮応力が掛かってもよいように、セグメントの支持部対向面は、固定面よりも大きい曲率半径を有していてよい。
【0151】
作動面のどちらかの側に伸びるフランジ(または他の取り付け手段)により支持構造に固定されたセグメントからなる公知のリングカムと比較して、作動(またはピストン対向)面を通って延びる取り付け手段(例:ボルト)は、セグメントのピストン対向面をより強い圧縮状態に置くことを可能にする。
【0152】
一般に、セグメント100は、組み立てられたリングカムのピストン対向面および作動面に圧縮応力を生じさせる弾性的変形無しにリングカムに嵌合できないように構成されている。セグメントの作動面(通常、使用時に隣接セグメントのピストン対向面の下で窪んでいる部品を除いたピストン対向面)は、リングカム作動面の波の比率xを画定する。図2に示す例において、この比率は2.00である。しかし、作動面の下地をなすセグメント(すなわち、使用時にローラーまたはその他のカム係合要素と係合しない部品を無視する)の曲率は、xの整数倍ではない360°の分数yである。例えば、作動面の下地をなすセグメントの曲率は44°、従ってy=0.122222でもよい。この例における比率はx/y=16.3636(36)であって、整数ではない。従って、セグメントにより設けられた作動面はセグメント自身の曲率とは一致せず、リングカムは整数個の波を有していなければならないため、対応する形状の他のセグメントしか有していないリングカムを形成すべく当該セグメントを用いることはできない。
【0153】
セグメント100はまた、(オプションの)交差開口部114が設けられていて、当該セグメントを通って組み立てられたリングカムの回転軸およびピストン対向面と略平行に延びる。交差開口部は、セグメントの周囲の材料より大きく圧縮可能な領域を提供してセグメントの変形を容易にし、より弱い固定力で所与の接線方向の圧縮力を生成可能にする。セグメントを通る接線方向の圧縮力を所望のように分布させるべく、1個以上の交差開口部の位置および寸法を決めることができる。例えば、交差開口部の位置および寸法は、先行面または先行面の最も急峻な部分に圧縮力を集中させるべく選択できる。
【0154】
いくつかの実施形態において、リングカムセグメントは、動作時にピストンが最大の力を作用させるリングカムを構成する波の先行面または追従面のどちらかの領域に交差開口部114が位置する状態で形成されている。この力は、流体が作動室の内外へ流れる際の作動サイクル中に作動室容積のサイクルと同相関係に周期的に変動する。作動室容積のサイクル中の圧力の変動は機械の機能に依存する。機械がポンプである場合、開口部は先行面に位置するため、各作動室が高圧マニホルドと流体連通して、その結果作動室内の圧力が低圧マニホルド内の圧力より高いとき、ローラーは収縮ストローク中に開口部を通過する。機械がモーターである場合、開口部は追従面にあるため、各作動室に高圧マニホルドから作動流体が流入しているときにローラーは拡張ストローク中に開口部を通過する。両方の場合において、作動サイクル中、作動室が交差開口部を通過する都度作動室は高圧マニホルドに対して開放される。
【0155】
実際には、固定点間のカムセグメント支持部の曲率が重要なのであって、図で示すようにカムセグメント支持部は連続曲率を有していないか、または連続面ですらない。
【0156】
カムセグメントが、第1端部における舌部、および他端で溝を画定する2個の舌部の形の協働構造を有するように図示しているが、他の任意の広範な構成も可能である。舌部は、直線的であっても、湾曲していても、あるいは例えば略三角形であってもよい。カムセグメントは、両端で単一の舌部を有し、これらの舌部が組み立てられた装置で互いに隣接することにより使用時に連結領域を形成するものであってもよい。
【0157】
いくつかの実施形態において、リングカムセグメントは、動作中にピストンが殆ど力を作用させないリングカムを構成する波の先行面または後続面のどちらかだけに開口部4が位置する状態で形成されている。この力は、流体が作動室の内外へ流れる際の作動サイクル中に作動室容積のサイクルとの同相関係に周期的に変動する。作動室容積のサイクル中の圧力の変動は機械の機能に依存する。機械がポンプである場合、開口部は追従面に位置するため、各作動室が低圧マニホルドと流体連通して、その結果作動室内の圧力が低圧マニホルド内の圧力以下のとき、ローラーは拡張ストローク中に開口部を通過する。機械がモーターである場合、開口部は先行面にあるため、各作動室が低圧マニホルドに作動流体を排出しているときにローラーは収縮ストローク中に開口部を通過する。両方の場合において、作動室が開口部を通過する都度作動室は高圧マニホルドから密閉される。開口部は、作動面の不連続箇所の例であって、隣接セグメント間の連結領域等の他の不連続箇所もまた同様に分布していてよい。
【0158】
図3を参照するに、いくつかの実施形態において、開口部4は追従面の一部だけに設けられている。図3のカムセグメントは通常はポンプとして動作可能な流体作動機械に特に有用であるが、ある条件では(例えば位置決め機能を提供すべく)モーターとしても動作可能である。従って、ポンピング動作中、各ピストンシリンダが拡張している間にローラーは開口部を通過するだけであって、作動室内の圧力は比較的低い。しかし、モータリング動作中、ローラーが作動モータリングサイクル中に追従面に当接するときに作動室内の圧力が相対的に高いにもかかわらず、開口部を欠いている波の中で、追従面を通過するローラーまたは追従面のそれらの部分と一致すべく作動モータリングサイクルが選択される。むしろ、作動室は開口部を有する追従面に当接するサイクル中に作動流体の正味排出量無しに常にアイドリングストロークを実行する。これによりモータリング動作中における作動流体の最大スループットが制限されるが、モータリング動作中の最大排出量がポンピング動作中の最大排出量より少ないことが受容可能な多くのアプリケーションがあり、例えば、風力タービンのブレードにより駆動される機械は通常、ポンプとして動作されるが、例えば保守のためにブレードの位置を制御すべく時折モーターとして駆動できる。コントローラは、追従面を通過するローラーと一致させるべく作動サイクルを計時するために、開口部を含む追従面(および開口部の位置)およびシャフトセンサ18に受容されるリングカムの角位置の連続測定値のデータベースを参照して、作動室容積の各々の連続するサイクルで各作動室により排出される作動流体の体積を各々選択する際にこれを考慮する。
【0159】
いくつかの実施形態において、コントローラは、ローラーが開口部(または連結領域、あるいは作動面の他の任意の不連続箇所)に当接する前にコントローラが高圧バルブを閉じる部分的モータリングサイクルを作動室に実行させることにより、ローラーが開口部(または連結領域)に当接するときの作動室内の圧力を閾値未満に制限することができる。
【0160】
いくつかの実施形態において、コントローラは、高圧マニホルド内の圧力が閾値未満である場合に限って、対応するローラーが開口部を含む追従面を通過する間に作動室にモータリングサイクルを実行させることができ、その場合、ローラーを介してリングカムに当接する力はいずれにせよ極端に強くはない。
【0161】
オプションとして、流体作動機械はまた、第2の(逆向きの)方向に回転するポンプとして機能すべく動作可能である。この場合、先行面(流体作動機械が第1の方向に回転する場合)が追従面(流体作動機械が第2の方向に回転する場合)になり、追従面(流体作動機械が第1の方向に回転する場合)が先行面(流体作動機械が第2の方向に回転する場合)になる。いくつかの実施形態において、第2の方向に回転する場合、コントローラにより、高圧マニホルド内の圧力が閾値未満である場合に限って対応するローラーが開口部を含む追従面を通過する間に作動室にポンピングサイクルを実行させることができ、その場合、ローラーを介してリングカムに当接する力はいずれにせよ極端に高くはない。いくつかの実施形態において、第2の方向に回転する場合、コントローラにより、ローラーが開口部(または連結領域)に当接した後でコントローラが低圧バルブを閉じる部分的ポンピングサイクルを作動室に実行させることができるため、ローラーが開口部(または連結領域)に当接するときの作動室内の圧力は閾値未満である。
【0162】
主にモーターとして、およびある条件ではポンプとして動作する機械の場合、開口部は追従面の一部よりむしろ先行面に配置されていてよい。
【0163】
リングカムは更に、リングカムの外周の回りを延びるサイドプレート(1個以上、より好適にはリングカムの両側に)を含んでいて(各サイドプレートはまたリングカムの作動面の端にも当接している)、ローラーがリングカムの波形の表面から滑り落ちるのを防止する。2個以上のリングカムを有する実施形態において、2個のカムリングの間に1個のサイドプレートが配置されていて、ローラーが両方のカムリングから滑り落ちるのを防止するように機能することができる。代替的に、2個以上のカムリングの各々が別々のサイドプレートを有していてよい。
【0164】
サイドプレートは一体化されていても、または図3に示すようにセグメント化されていてもよい。図3に示す実施形態において、リングカムセグメント7はサイドプレートセグメント120に(通常はセグメントの波形の面の両側の、2個のサイドプレートセグメントに)固定されている。代替的な実施形態において、リングカムセグメントより少ない、またはより多くのサイドプレートセグメントが、当該または各リングカムの外周の両側の回りに配置されていてよい。
【0165】
サイドプレートは、交差ボルト穴を通って延びるボルト36によりセグメント7に保持される。ボルトは各々複数のリングカム(またはリングカムセグメント)あるいは複数のサイドプレート(またはサイドプレートセグメント)を通って延びていてよい。
【0166】
リングカムのサイドプレートセグメントは、各サイドプレートが組み立てられたリングカムの2個(またはより多くの)セグメントに重なるように、カムセグメントから角度的にずれていてよい。従って、組み立てられたリングカムにおいて、サイドプレートセグメント間の結合部はセグメント間の結合部とは整列も重なりもせず、リングカムセグメントに固定されたサイドプレートセグメントの重なり部分122を用いて、(例えば、組み立ておよび保守を行なう間、または使用時に波形面に力が加えられたときに、互いに隣接するリングカムセグメントの運動に起因する磨耗を減らすべく)カムセグメントを隣接カムセグメントと軸方向に(すなわち、シャフトに関して)整列させることができる。いくつかの実施形態において、カムセグメントがサイドプレート間を移動するように、サイドプレートをシャフトに固定するかまたはバルブおよび作動室に相対的に固定することができる。
【0167】
本発明のリングカムは、アクセスが困難かつリングカムの長寿命が重要である大型流体作動機械の構成要素として特に有用である。例えば、リングカムは、駆動シャフトが風力タービンのブレードに結合されていて、保守または修理のために流体作動機械または風力タービン羽根を取り外すことが現実的でない風力タービン塔(通常、高さが50mを超える)、または沖合の風力タービン塔のナセル内のポンプの一部であってよい。
【0168】
本明細書に開示する本発明の更なる変型および変更が可能である。
【図1(a)−1(b)】

【図2(a)】

【図2(b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のピストンを有する流体作動機械用のリングカムであり、前記リングカムが少なくとも2個のセグメントを含み、各前記セグメントが先行領域において先行協働構造、および追従領域において追従協働構造を有し、各先行協働構造が連結領域において前記追従協働構造と協働係合していて、各前記セグメントがピストン対向面を有し、前記ピストン対向面が共に、カム係合要素を介して少なくとも1個のピストンと動作可能に係合すべくカム作動面を画定して少なくとも1個のピストンの往復運動を前記少なくとも1個のピストンに相対的な前記リングカムの回転に結合し、前記先行および追従協働構造の各々がピストン対向面の一部を有するリングカムであって、
各先行協働構造が、前記先行協働構造の追従領域において前記作動面の一部を形成し、且つ前記連結領域全体にわたり前記先行協働構造の前記先行領域において前記作動面から窪んでいるピストン対向面を有し、各追従協働構造が、前記追従協働構造の前記先行領域において前記作動面の一部を形成し、且つ前記連結領域全体にわたり前記追従協働構造の前記追従領域において前記作動面から窪んでいるピストン対向面を有することを特徴とするリングカム。
【請求項2】
各協働構造が舌部を含む、請求項1に記載のリングカム。
【請求項3】
前記作動面が波形である、請求項1に記載のリングカム。
【請求項4】
一部のまたは全てのセグメントが、カムセグメント支持部に相対的な前記セグメントの滑りに抗すべく、滑り止め構造を含む、請求項1に記載のリングカム。
【請求項5】
連結領域において係合する隣接セグメントの前記協働構造のピストン対向面が180.0°未満の角度で交差する、請求項1に記載のリングカム。
【請求項6】
請求項1に記載のリングカム、および前記リングカム作動面と動作可能に係合する少なくとも1個のピストンを含むことにより、前記少なくとも1個のピストンの往復運動が前記少なくとも1個のピストンに相対的な前記リングカムの回転に結合する、流体作動機械。
【請求項7】
各前記カム係合要素が作動室容積の全てのサイクルにおいて連結領域に当接する訳ではなく、前記流体作動機械がポンプおよびモーターとして第1の回転方向に動作可能であって、前記流体作動機械は、各作動室が縮小しているときに各カム係合要素が連結領域に当接しないように動作可能であり、各前記作動室は作動室容積の全てのサイクルにおいてポンピングサイクルを実行すべく動作可能であって、各前記作動室は前記カム係合要素が連結領域に当接しない作動室容積のサイクル中にモータリングサイクルを実行すべく動作可能である、請求項6に記載の流体作動機械。
【請求項8】
各前記カム係合要素が作動室容積の全てのサイクルにおいて連結領域に当接する訳ではなく、前記流体作動機械がポンプおよびモーターとして第1の回転方向に動作可能であって、前記流体作動機械は、各作動室が拡張しているときに各カム係合要素が連結領域に当接しないように動作可能であり、各前記作動室は作動室容積の全てのサイクルにおいてモータリングサイクルを実行すべく動作可能であって、各前記作動室は前記カム係合要素が連結領域に当接しない作動室容積のサイクル中にポンピングサイクルを実行すべく動作可能である、請求項6に記載の流体作動機械。
【請求項9】
前記流体作動機械がモーターであって、前記各作動室が縮小している場合に限って前記カム係合要素が連結領域に当接するように前記機械が構成されている、あるいは前記流体作動機械がポンプであって、前記各作動室が拡張している場合に限って、前記カム係合要素が連結領域に当接するように前記機械が構成されている、請求項6に記載の流体作動機械。
【請求項10】
各前記セグメントは、使用時に各前記作動室のカム係合要素が作動室容積の全てのサイクルにおいて連結領域に当接する訳ではないように前記作動面の複数の波を画定し、前記コントローラは、各前記カム係合要素が連結領域に当接するときに、前記カム係合要素が前記作動面の別の領域に当接するときの作動室内の流体圧と比較して、各前記作動室内の作動流体圧を制限すべく動作可能である、請求項6に記載の流体作動機械。
【請求項11】
前記コントローラが、作動室容積のサイクル中に排出される流体の正味体積の選択により、各前記作動室内の前記作動流体圧を制限すべく動作可能である、請求項10に記載の流体作動機械。
【請求項12】
前記コントローラが、アイドリングサイクルを開始する作動室の選択により各前記作動室内の前記作動流体圧を制限すべく動作可能である、請求項10に記載の流体作動機械。
【請求項13】
組み立てられた場合、請求項1に記載のリングカム、または請求項6に記載の流体作動機械を形成する部品のキット。
【請求項14】
前記少なくとも1個のカム係合要素が第1セグメントの前記先行協働構造から第2セグメントの追従協働構造に滑らかに通過するように、前記リングカムおよび前記少なくとも1個のピストンの相対的な回転を生じさせるステップを含む、請求項6に記載の流体作動機械の動作方法。
【請求項15】
各前記作動室の前記カム係合要素が作動室容積の2回以上のサイクル毎に連結領域に当接するように、各前記セグメントが作動面の複数の波を画定し、前記方法が、各前記カム係合要素が連結領域に当接するときに、カム係合要素が作動面の別の領域に当接するときの作動室内の流体圧と比較して各前記作動室内の作動流体圧を制限すべく、1サイクル毎に、各前記作動室により排出される作動流体の体積を選択するステップを含む、請求項14に記載の方法。

【図3】
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【公表番号】特表2012−524871(P2012−524871A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529346(P2012−529346)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【国際出願番号】PCT/GB2011/051366
【国際公開番号】WO2012/022952
【国際公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(509066031)アルテミス インテリジェント パワー リミティド (25)
【氏名又は名称原語表記】ARTEMIS INTELLIGENT POWER LIMITED
【Fターム(参考)】