リングギヤの締結構造
【課題】デフケースとリングギヤとの締結部の破損を早期に発見できるようにすること。
【解決手段】リングギヤ4は、その圧入面12にてデフケース2のフランジ3の外周面21に圧入されると共に、フランジ3の軸線方向Xにおける一端に設けられたかしめ部22によりかしめられる。リングギヤ4の他端面14は、フランジ3の他端に設けられたストッパ部23に押し付けられる。フランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間には、その部分ですべりが発生したときに、そのすべりを利用して異音を発生させる発音手段31が設けられる。発音手段31は、リングギヤ4の圧入面12に設けられた周溝15と、フランジ3の外周面21に設けられた穴24と、穴24にバネ32を介して収容された曲面を有する接触片33と、周溝15に連続的に形成され、接触片33の曲面と接触可能な凹凸16とを含む。
【解決手段】リングギヤ4は、その圧入面12にてデフケース2のフランジ3の外周面21に圧入されると共に、フランジ3の軸線方向Xにおける一端に設けられたかしめ部22によりかしめられる。リングギヤ4の他端面14は、フランジ3の他端に設けられたストッパ部23に押し付けられる。フランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間には、その部分ですべりが発生したときに、そのすべりを利用して異音を発生させる発音手段31が設けられる。発音手段31は、リングギヤ4の圧入面12に設けられた周溝15と、フランジ3の外周面21に設けられた穴24と、穴24にバネ32を介して収容された曲面を有する接触片33と、周溝15に連続的に形成され、接触片33の曲面と接触可能な凹凸16とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載されるデファレンシャルサブアッシに係り、詳しくは、このデファレンシャルサブアッシを構成するデフケースにリングギヤを締結するリングギヤの締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1には、デフケースにリングギヤを締結するために、リングギヤをデフケースのフランジの外周面に圧入した後、リングギヤの両端をフランジの両端部によりかしめて固定することが記載されている。そして、リングギヤの他、所定の部品をデフケースに組み付けることにより、車両の動力伝達機構に使用されるデファレンシャルサブアッシが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】EP0647789B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のデファレンシャルサブアッシでは、以下のような問題が想定された。すなわち、図21に断面図で示すように、デフケースのフランジ51に対するリングギヤ52の圧入かしめによる締結方法では、リングギヤ52のかしめ部53に対する引っ掛かりと、リングギヤ52の圧入面54のフランジ51の外周面55に対する摩擦力とによりトルク伝達を行っている。このため、想定以上の荷重がリングギヤ52に入力された場合に、図22に断面図で示すように、かしめ部53にて損傷が起きるおそれがあった。この場合、その損傷状態で車両の走行を続けると、リングギヤ52の圧入面54とフランジ51の外周面55との間で滑りが発生することがあった。そして、リングギヤ52の噛み合い反力(図21,22に矢印で示す。)は、リングギヤ52をフランジ51のストッパ部56へ押し付ける方向へ働くことから、上記した滑り状態が長期間続くと、ストッパ部56に摩耗が生じることとなり、いずれ図23に断面図で示すように、ストッパ部56が破損してリングギヤ52がその軸線方向Xへずれてしまう懸念があった。この場合、フランジ51とリングギヤ52との締結部が破損しても、そのことが使用者に気づかれ難く、締結部の破損に早期に対処することができなかった。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、締結されたデフケースとリングギヤとの締結部の破損を使用者が早期に発見できるようにしたリングギヤの締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、デファレンシャルサブアッシを構成するデフケースのフランジにリングギヤを締結してなるリングギヤの締結構造であって、リングギヤは、その内周面にてフランジの外周面に圧入されると共に、フランジの軸線方向における両端の少なくとも一方に設けられたかしめ部によりかしめられており、フランジの外周面とリングギヤの内周面との間にすべりが発生したときに、そのすべりを利用して異音を発生させる発音手段が設けられたことを趣旨とする。
【0007】
上記発明の構成によれば、デファレンシャルサブアッシを車両の動力伝達機構に使用した場合に、リングギヤが相手ギヤに噛み合うことで噛み合い反力が発生する。ここで、リングギヤからデフケースへは、かしめ部の引っ掛かりと、フランジの外周面とリングギヤの内周面との間の摩擦力によってトルクが伝達される。そして、想定以上の荷重がリングギヤに入力されて、かしめ部が損傷したときには、フランジの外周面とリングギヤの内周面との間ですべりが発生することがある。従って、このすべりを利用して発音手段が異音を発生させることとなり、そのすべりの発生が報される。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、発音手段は、フランジの外周面とリングギヤの内周面の一方に設けられた周溝及び他方に設けられた穴と、穴にバネを介して収容された曲面を有する駒と、周溝に連続的に形成され、駒の曲面と接触可能な凹凸とを含むことを趣旨とする。
【0009】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、かしめ部が損傷してフランジの外周面とリングギヤの内周面との間ですべりが発生することにより、それら外周面と内周面の一方にて周溝に連続的に形成された凹凸に、他方にて穴に収容された駒の曲面がバネで付勢されて接触する。そして、上記したすべりに伴い、駒の曲面が連続的な凹凸を断続的に乗り越えるときに異音が発生する。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、発音手段は、フランジの外周面又はリングギヤの内周面に設けられた穴と、穴にバネを介して収容された角部を有する駒とを含み、駒の角部がリングギヤの内周面又はフランジの外周面に接触可能に設けられたことを趣旨とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、かしめ部が損傷してフランジの外周面とリングギヤの内周面との間ですべりが発生することにより、それら外周面と内周面の一方にて穴に収容された駒の角部がバネで付勢されて他方の内周面又は外周面と接触する。そして、上記したすべりに伴い、駒の角部が連続的に外周面又は内周面に摺接することにより異音が発生する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1乃至3の何れかに記載の発明によれば、締結されたデフケースとリングギヤとの締結部の破損を使用者が早期に発見することができ、その異常に早期に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係り、デファレンシャルサブアッシの概略構成を示す側面図。
【図2】同実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を概略的に示す断面図。
【図3】同実施形態に係り、リングギヤの一部を示す斜視図。
【図4】同実施形態に係り、フランジとリングギヤの一部を示す図2のA−A線に沿った断面図。
【図5】同実施形態に係り、締結方法の圧入工程を示す図2に準ずる断面図。
【図6】同実施形態に係り、締結方法の圧入工程を示す図2に準ずる断面図。
【図7】第2実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を示す図2に準ずる断面図。
【図8】同実施形態に係り、フランジとリングギヤの一部を示す図7のB−B線に沿った断面図。
【図9】第3実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を示す図2に準ずる断面図。
【図10】同実施形態に係り、フランジとリングギヤの一部を示す図9のC−C線に沿った断面図。
【図11】同実施形態に係り、リングギヤの一部と、接触片及びバネとの関係を示す斜視図。
【図12】第4実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を示す図2に準ずる概略的な断面図。
【図13】同実施形態に係り、フランジとリングギヤの一部を示す図12のD−D線に沿った断面図。
【図14】同実施形態に係り、フランジの一部と、接触片及びバネとの関係を示す斜視図。
【図15】第5実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を示す図2に準ずる断面図。
【図16】同実施形態に係り、フランジとリングギヤの一部を示す図15のE−E線に沿った断面図。
【図17】第6実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を示す図2に準ずる断面図。
【図18】同実施形態に係り、フランジとリングギヤの一部を示す図17のF−F線に沿った断面図。
【図19】同実施形態に係り、フランジの一部と、接触片及びバネとの関係を示す斜視図。
【図20】同実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を示す図2に準ずる断面図。
【図21】従来例に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を概略的に示す断面図。
【図22】従来例に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの損傷時の関係を概略的に示す断面図。
【図23】従来例に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの破損時の関係を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明におけるリングギヤの締結構造を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に、デファレンシャルサブアッシ1の概略構成を側面図により示す。図2に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4との関係を概略的に断面図により示す。図1に示すように、デファレンシャルサブアッシ1は、デフケース2と、デフケース2の一端側(図面左側)の外周に設けられたフランジ3と、フランジ3の外周に締結された円環状をなすリングギヤ4とを備える。デフケース4の中には、一対のサイドギヤと一対のピニオン(共に図示略)が回転可能に支持された状態で収容される。
【0016】
このデファレンシャルサブアッシ1は、車両の動力伝達機構に使用される。例えば、車両において、変速機、トランスファ及び終減速機等に対してデファレンシャルサブアッシ1が設けられる。そして、相手側のギヤ(図示略)からリングギヤ4に入力される動力を、一対のサイドギヤの回転差を許容しながら、それを一対のピニオンに連結された回転部材へ伝達する。ここで、回転部材として、例えば、車両の左右一対の駆動車輪や前後一対の駆動車輪等を挙げることができる。
【0017】
図1,2に示すように、この実施形態で、リングギヤ4は、はすば歯車により構成され、外周に設けられた複数の歯11が、リングギヤ4の軸線方向Xに対して斜めに形成される。リングギヤ4は、その内周面である圧入面12にてフランジ3の外周面21に圧入されると共に、フランジ3にてかしめられる。すなわち、フランジ3の軸線方向Xにおける一端側(図2の左側)には、かしめ部22が形成され、他端側(図2の右側)には、ストッパ部23が形成される。このストッパ部23は、フランジ3の外周に沿って連続的に形成されるものでもよく、同じく外周に沿って断続的に形成されるものでもよい。リングギヤ4は、その軸線方向Xにおける一端側の内周縁にて、斜めに形成され、かしめ部22によりかしめられる複数のノッチ13を有する。
【0018】
そして、リングギヤ4の一端面14がストッパ部23に押し付けられながら、リングギヤ4のノッチ13がかしめ部22によりかしめられる。このようにして、デフケース2のフランジ3にリングギヤ4を締結してなるリングギヤの締結構造が構成される。
【0019】
また、この実施形態では、万が一、フランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間に「すべり」が発生したときに、そのすべりを利用して異音を発生させる発音手段31が設けられる。図3に、リングギヤ4の一部を斜視図により示す。図4に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4の一部を図2のA−A線に沿った断面図により示す。図2〜4に示すように、この実施形態で、発音手段31は、フランジ3の外周面21に形成された穴24と、リングギヤ4の圧入面12に形成された周溝15と、穴24にバネ32を介して収容された曲面を有する接触片33と、周溝15に連続的に形成され、接触片33の曲面と接触可能な凹凸16とを含む。この実施形態では、図2,4に示すように、接触片33は球体をなし、凹凸16は周溝15の底壁に沿って連続する鈍角をなす山と谷により構成される。
【0020】
次に、この実施形態におけるリングギヤの締結方法について説明する。図5,6に、締結方法の圧入工程を、図2に準ずる断面図により示す。
【0021】
先ず、「圧入工程」では、図5に示すように、フランジ3の外周面21に、リングギヤ4を、その圧入面12にて圧入する。このとき、フランジ3のかしめ部22は、外周面21と平行に延びた状態となっており、ストッパ部23は、外周面21に対して直角な状態となっている。このとき、フランジ3の外周面21に形成された穴24には、バネ32を介して球体をなす接触片33を収容しておく。
【0022】
そして、図6に示すように、リングギヤ4を、その一端面14がストッパ部23に当接するまで押圧して圧入する。この圧入後の状態では、リングギヤ4の圧入面12がフランジ3の外周面21に密着した状態となる。また、リングギヤ4の圧入面12に形成された周溝15には、穴24から突出する形で接触片33が嵌り込む。
【0023】
その後、「かしめ工程」では、図2に示すように、フランジ3のかしめ部22をリングギヤ4のノッチ13に対して押し付けてかしめる。この状態では、リングギヤ4が、その軸線方向Xにおいて、フランジ3に対して位置決めされて固定される。
【0024】
以上説明したこの実施形態におけるリングギヤの締結構造によれば、デファレンシャルサブアッシ1を車両の動力伝達機構に使用した場合に、リングギヤ4が相手ギヤに噛み合うことで噛み合い反力(図1に矢印でしめす。)が発生する。ここで、リングギヤ4からデフケース2へは、リングギヤ4のノッチ13のかしめ部22に対する引っ掛かりと、リングギヤ4の圧入面12のフランジ3の外周面21に対する摩擦力とによりトルクが伝達される。
【0025】
そして、万が一、想定以上の荷重がリングギヤ4に入力され、かしめ部22が損傷した場合には、フランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間で「すべり」が発生することがある。このとき、このすべりを利用して発音手段31が異音を発生させることとなり、すべりの発生が使用者(車両の運転者等)に報される。より具体的には、かしめ部22が損傷してフランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間ですべりが発生すると、リングギヤ4の圧入面12における周溝15にて連続的に形成された凹凸16に対し、フランジ3の外周面21の穴24に収容された接触片33の曲面がバネ32により付勢されて接触する。そして、上記した「すべり」に伴い、接触片33の曲面が連続的な凹凸16を断続的に乗り越えるときに異音(断続的な打音)が発生する。この結果、締結されたデフケース2のフランジ3とリングギヤ4との締結部の破損を使用者(車両の運転者等)が早期に発見することができる。このため、その異常に早期に対処することができるようになる。
【0026】
<第2実施形態>
次に、本発明におけるリングギヤの締結構造を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0028】
図7に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4との関係を図2に準ずる断面図により示す。図8に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4の一部を図7のB−B線に沿った断面図により示す。この実施形態では、発音手段31の構成の点で第1実施形態と構成が異なる。すなわち、この実施形態では、図7,8に示すように、周溝15とその底壁の凹凸16が、フランジ3の外周面21に形成される。また、穴24がリングギヤ4の圧入面12に形成され、その穴24の中にバネ32を介して球体の接触片33が収容される。この実施形態では、これらの点で第1実施形態と構成が異なる。
【0029】
従って、この実施形態でも、かしめ部22が損傷してフランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間で「すべり」が発生すると、フランジ3の外周面21の周溝15に連続的に形成された凹凸16に対し、リングギヤ4の圧入面12の穴24に収容された接触片33の曲面がバネ32により付勢されて接触する。そして、上記したすべりに伴い、接触片33の曲面が連続的な凹凸16を断続的に乗り越えることで異音が発生する。この結果、締結されたデフケース2とリングギヤ4との締結部の破損を使用者(車両の運転者等)が早期に発見することができる。このため、その異常に早期に対処することができるようになる。
【0030】
<第3実施形態>
次に、本発明におけるリングギヤの締結構造を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図9に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4との関係を図2に準ずる断面図により示す。図10に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4の一部を図9のC−C線に沿った断面図により示す。この実施形態では、発音手段31の構成の点で前記各実施形態と構成が異なる。すなわち、図9,10に示すように、この実施形態では、リングギヤ4の圧入面12に形成された穴24と、その穴24にバネ32を介して収容された角部34aを有する接触片34とを含む。そして、この接触片34の角部34aがフランジ31の外周面21に接触可能に設けられる。
【0032】
図11に、リングギヤ4の一部と、接触片34及びバネ32との関係を斜視図により示す。この実施形態で、接触片34は、三角柱形状をなし、2つのバネ32を介して穴24の中に収容される。接触片34は、その長手方向の一辺を角部34aとして、フランジ3の外周面21に接触可能に設けられる。
【0033】
従って、この実施形態でも、かしめ部22が損傷してフランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間で「すべり」が発生すると、リングギヤ4の圧入面12にて穴24に収容された接触片34の角部34aがバネ32により付勢されてフランジ3の外周面21と接触する。そして、上記したすべりに伴い、接触片34の角部34aがフランジ3の外周面21に連続的に摺接することで、削りの作用により異音(連続的な引き掻き音)が発生する。この結果、締結されたデフケース2とリングギヤ4との締結部の破損を使用者(車両の運転者等)が早期に発見することができる。このため、その異常に早期に対処することができるようになる。
【0034】
<第4実施形態>
次に、本発明におけるリングギヤの締結構造を具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
図12に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4との関係を、図2に準ずる断面図により示す。図13に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4の一部を図12のD−D線に沿った断面図により示す。この実施形態では、発音手段31の構成の点で前記各実施形態と構成が異なる。すなわち、この実施形態では、図12,13に示すように、フランジ3の外周面21に形成された穴24と、その穴24にバネ32を介して収容された角部34aを有する接触片34とを含む。そして、この接触片34の角部34aがリングギヤ4の圧入面12に接触可能に設けられる。
【0036】
図14に、フランジ3の一部と、接触片34及びバネ32との関係を斜視図により示す。この実施形態で、三角柱形状をなす接触片34は、2つのバネ32を介して穴24の中に収容される。接触片34は、その長手方向の一辺を角部34aとして、リングギヤ4の圧入面12に接触可能に設けられる。
【0037】
従って、この実施形態でも、かしめ部22が損傷してフランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間で「すべり」が発生すると、フランジ3の外周面21にて穴24に収容された接触片34の角部34aがバネ32により付勢されてリングギヤ4の圧入面12と接触する。そして、上記したすべりに伴い、接触片34の角部34aがリングギヤ4の圧入面12に連続的に摺接することで、削りの作用により異音(連続的な引き掻き音)が発生する。この結果、締結されたデフケース2とリングギヤ4との締結部の破損を使用者(車両の運転者等)が早期に発見することができる。このため、その異常に早期に対処することができるようになる。
【0038】
<第5実施形態>
次に、本発明におけるリングギヤの締結構造を具体化した第5実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
図15に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4との関係を、図2に準ずる断面図により示す。図16に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4の一部を図15のE−E線に沿った断面図により示す。この実施形態では、接触片35の形状の点で第1実施形態と構成が異なる。すなわち、図15,16に示すように、この実施形態では、接触片35が、円筒形状をなしている。そして、接触片34は、その軸線方向がリングギヤ4の軸線方向Xと一致するように穴24の中に収容される。
【0040】
従って、この実施形態でも、第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、接触片35の軸線方向がリングギヤ4の軸線方向Xと一致するように接触片35が穴24に収容されると共に、周溝15に嵌り込んでいる。このため、リングギヤ4が、その軸線方向Xへずれようとするときの荷重を、接触片35がフランジ3との間で受けることができる。この結果、リングギヤ4の軸線方向Xのずれを防止することができる。
【0041】
<第6実施形態>
次に、本発明におけるリングギヤの締結構造を具体化した第6実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0042】
図17に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4との関係を、図2に準ずる断面図により示す。図18に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4の一部を図7のF−F線に沿った断面図により示す。この実施形態では、接触片36の形状及び材質の点で第4実施形態と構成が異なる。すなわち、図17,18に示すように、この実施形態では、接触片36が、直方体形状をなしている。また、接触片36は、フランジ3やリングギヤ4の材質よりも硬い材料により形成される。
【0043】
図19に、フランジ3の一部と、接触片36及びバネ32との関係を斜視図により示す。この実施形態で、直方体形状をなす接触片36は、2つのバネ32を介して穴24の中に収容される。接触片36は、その一側面を構成する四辺を角部36aとして、リングギヤ4の圧入面12に接触可能に設けられる。
【0044】
従って、この実施形態でも、第4実施形態と同等の作用効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、接触片36がリングギヤ4よりも硬い材料で形成されるので、接触片36の角部36aがリングギヤ4の圧入面12に摺接することで圧入面12が削れる。これにより、図20に断面図により示すように、リングギヤ4の圧入面12に削り溝17ができ、その削り溝17に、接触片36の一部が嵌り込む。このため、リングギヤ4がその軸線方向Xへずれようとするときの荷重を、接触片36がフランジ3との間で受けることができる。この結果、リングギヤ4の軸線方向Xのずれを防止することができる。
【0045】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して次のように実施することもできる。
【0046】
前記各実施形態では、フランジ3の外周面21又はリングギヤ4の圧入面12に設けられる一つの穴24にバネ32を介して接触片33〜36を収容した。これに対し、フランジの外周面又はリングギヤの圧入面に複数の穴を設け、それぞれの穴にバネを介して接触片を収容するようにしてもよい。
【0047】
前記第1、第2及び第5の実施形態では、周溝15に形成される凹凸16を、周溝15の底壁に沿って連続する鈍角をなす山と谷により構成した。これに対し、凹凸の形状は、これに限られるものではなく、接触片との接触により打音を発するものであれば、どのような形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明は、車両の動力伝達機構に使用されるデファレンシャルサブアッシに利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 デファレンシャルサブアッシ
2 デフケース
3 フランジ
4 リングギヤ
12 圧入面(内周面)
13 ノッチ
14 端面
15 周溝
16 凹凸
21 外周面
22 かしめ部
23 ストッパ部
24 穴
31 発音手段
32 バネ
33 接触片
34 接触片
34a 角部
35 接触片
36 接触片
36a 角部
X 軸線方向
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載されるデファレンシャルサブアッシに係り、詳しくは、このデファレンシャルサブアッシを構成するデフケースにリングギヤを締結するリングギヤの締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1には、デフケースにリングギヤを締結するために、リングギヤをデフケースのフランジの外周面に圧入した後、リングギヤの両端をフランジの両端部によりかしめて固定することが記載されている。そして、リングギヤの他、所定の部品をデフケースに組み付けることにより、車両の動力伝達機構に使用されるデファレンシャルサブアッシが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】EP0647789B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のデファレンシャルサブアッシでは、以下のような問題が想定された。すなわち、図21に断面図で示すように、デフケースのフランジ51に対するリングギヤ52の圧入かしめによる締結方法では、リングギヤ52のかしめ部53に対する引っ掛かりと、リングギヤ52の圧入面54のフランジ51の外周面55に対する摩擦力とによりトルク伝達を行っている。このため、想定以上の荷重がリングギヤ52に入力された場合に、図22に断面図で示すように、かしめ部53にて損傷が起きるおそれがあった。この場合、その損傷状態で車両の走行を続けると、リングギヤ52の圧入面54とフランジ51の外周面55との間で滑りが発生することがあった。そして、リングギヤ52の噛み合い反力(図21,22に矢印で示す。)は、リングギヤ52をフランジ51のストッパ部56へ押し付ける方向へ働くことから、上記した滑り状態が長期間続くと、ストッパ部56に摩耗が生じることとなり、いずれ図23に断面図で示すように、ストッパ部56が破損してリングギヤ52がその軸線方向Xへずれてしまう懸念があった。この場合、フランジ51とリングギヤ52との締結部が破損しても、そのことが使用者に気づかれ難く、締結部の破損に早期に対処することができなかった。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、締結されたデフケースとリングギヤとの締結部の破損を使用者が早期に発見できるようにしたリングギヤの締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、デファレンシャルサブアッシを構成するデフケースのフランジにリングギヤを締結してなるリングギヤの締結構造であって、リングギヤは、その内周面にてフランジの外周面に圧入されると共に、フランジの軸線方向における両端の少なくとも一方に設けられたかしめ部によりかしめられており、フランジの外周面とリングギヤの内周面との間にすべりが発生したときに、そのすべりを利用して異音を発生させる発音手段が設けられたことを趣旨とする。
【0007】
上記発明の構成によれば、デファレンシャルサブアッシを車両の動力伝達機構に使用した場合に、リングギヤが相手ギヤに噛み合うことで噛み合い反力が発生する。ここで、リングギヤからデフケースへは、かしめ部の引っ掛かりと、フランジの外周面とリングギヤの内周面との間の摩擦力によってトルクが伝達される。そして、想定以上の荷重がリングギヤに入力されて、かしめ部が損傷したときには、フランジの外周面とリングギヤの内周面との間ですべりが発生することがある。従って、このすべりを利用して発音手段が異音を発生させることとなり、そのすべりの発生が報される。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、発音手段は、フランジの外周面とリングギヤの内周面の一方に設けられた周溝及び他方に設けられた穴と、穴にバネを介して収容された曲面を有する駒と、周溝に連続的に形成され、駒の曲面と接触可能な凹凸とを含むことを趣旨とする。
【0009】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、かしめ部が損傷してフランジの外周面とリングギヤの内周面との間ですべりが発生することにより、それら外周面と内周面の一方にて周溝に連続的に形成された凹凸に、他方にて穴に収容された駒の曲面がバネで付勢されて接触する。そして、上記したすべりに伴い、駒の曲面が連続的な凹凸を断続的に乗り越えるときに異音が発生する。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、発音手段は、フランジの外周面又はリングギヤの内周面に設けられた穴と、穴にバネを介して収容された角部を有する駒とを含み、駒の角部がリングギヤの内周面又はフランジの外周面に接触可能に設けられたことを趣旨とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、かしめ部が損傷してフランジの外周面とリングギヤの内周面との間ですべりが発生することにより、それら外周面と内周面の一方にて穴に収容された駒の角部がバネで付勢されて他方の内周面又は外周面と接触する。そして、上記したすべりに伴い、駒の角部が連続的に外周面又は内周面に摺接することにより異音が発生する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1乃至3の何れかに記載の発明によれば、締結されたデフケースとリングギヤとの締結部の破損を使用者が早期に発見することができ、その異常に早期に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係り、デファレンシャルサブアッシの概略構成を示す側面図。
【図2】同実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を概略的に示す断面図。
【図3】同実施形態に係り、リングギヤの一部を示す斜視図。
【図4】同実施形態に係り、フランジとリングギヤの一部を示す図2のA−A線に沿った断面図。
【図5】同実施形態に係り、締結方法の圧入工程を示す図2に準ずる断面図。
【図6】同実施形態に係り、締結方法の圧入工程を示す図2に準ずる断面図。
【図7】第2実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を示す図2に準ずる断面図。
【図8】同実施形態に係り、フランジとリングギヤの一部を示す図7のB−B線に沿った断面図。
【図9】第3実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を示す図2に準ずる断面図。
【図10】同実施形態に係り、フランジとリングギヤの一部を示す図9のC−C線に沿った断面図。
【図11】同実施形態に係り、リングギヤの一部と、接触片及びバネとの関係を示す斜視図。
【図12】第4実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を示す図2に準ずる概略的な断面図。
【図13】同実施形態に係り、フランジとリングギヤの一部を示す図12のD−D線に沿った断面図。
【図14】同実施形態に係り、フランジの一部と、接触片及びバネとの関係を示す斜視図。
【図15】第5実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を示す図2に準ずる断面図。
【図16】同実施形態に係り、フランジとリングギヤの一部を示す図15のE−E線に沿った断面図。
【図17】第6実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を示す図2に準ずる断面図。
【図18】同実施形態に係り、フランジとリングギヤの一部を示す図17のF−F線に沿った断面図。
【図19】同実施形態に係り、フランジの一部と、接触片及びバネとの関係を示す斜視図。
【図20】同実施形態に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を示す図2に準ずる断面図。
【図21】従来例に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの関係を概略的に示す断面図。
【図22】従来例に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの損傷時の関係を概略的に示す断面図。
【図23】従来例に係り、デフケースのフランジとリングギヤとの破損時の関係を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明におけるリングギヤの締結構造を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に、デファレンシャルサブアッシ1の概略構成を側面図により示す。図2に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4との関係を概略的に断面図により示す。図1に示すように、デファレンシャルサブアッシ1は、デフケース2と、デフケース2の一端側(図面左側)の外周に設けられたフランジ3と、フランジ3の外周に締結された円環状をなすリングギヤ4とを備える。デフケース4の中には、一対のサイドギヤと一対のピニオン(共に図示略)が回転可能に支持された状態で収容される。
【0016】
このデファレンシャルサブアッシ1は、車両の動力伝達機構に使用される。例えば、車両において、変速機、トランスファ及び終減速機等に対してデファレンシャルサブアッシ1が設けられる。そして、相手側のギヤ(図示略)からリングギヤ4に入力される動力を、一対のサイドギヤの回転差を許容しながら、それを一対のピニオンに連結された回転部材へ伝達する。ここで、回転部材として、例えば、車両の左右一対の駆動車輪や前後一対の駆動車輪等を挙げることができる。
【0017】
図1,2に示すように、この実施形態で、リングギヤ4は、はすば歯車により構成され、外周に設けられた複数の歯11が、リングギヤ4の軸線方向Xに対して斜めに形成される。リングギヤ4は、その内周面である圧入面12にてフランジ3の外周面21に圧入されると共に、フランジ3にてかしめられる。すなわち、フランジ3の軸線方向Xにおける一端側(図2の左側)には、かしめ部22が形成され、他端側(図2の右側)には、ストッパ部23が形成される。このストッパ部23は、フランジ3の外周に沿って連続的に形成されるものでもよく、同じく外周に沿って断続的に形成されるものでもよい。リングギヤ4は、その軸線方向Xにおける一端側の内周縁にて、斜めに形成され、かしめ部22によりかしめられる複数のノッチ13を有する。
【0018】
そして、リングギヤ4の一端面14がストッパ部23に押し付けられながら、リングギヤ4のノッチ13がかしめ部22によりかしめられる。このようにして、デフケース2のフランジ3にリングギヤ4を締結してなるリングギヤの締結構造が構成される。
【0019】
また、この実施形態では、万が一、フランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間に「すべり」が発生したときに、そのすべりを利用して異音を発生させる発音手段31が設けられる。図3に、リングギヤ4の一部を斜視図により示す。図4に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4の一部を図2のA−A線に沿った断面図により示す。図2〜4に示すように、この実施形態で、発音手段31は、フランジ3の外周面21に形成された穴24と、リングギヤ4の圧入面12に形成された周溝15と、穴24にバネ32を介して収容された曲面を有する接触片33と、周溝15に連続的に形成され、接触片33の曲面と接触可能な凹凸16とを含む。この実施形態では、図2,4に示すように、接触片33は球体をなし、凹凸16は周溝15の底壁に沿って連続する鈍角をなす山と谷により構成される。
【0020】
次に、この実施形態におけるリングギヤの締結方法について説明する。図5,6に、締結方法の圧入工程を、図2に準ずる断面図により示す。
【0021】
先ず、「圧入工程」では、図5に示すように、フランジ3の外周面21に、リングギヤ4を、その圧入面12にて圧入する。このとき、フランジ3のかしめ部22は、外周面21と平行に延びた状態となっており、ストッパ部23は、外周面21に対して直角な状態となっている。このとき、フランジ3の外周面21に形成された穴24には、バネ32を介して球体をなす接触片33を収容しておく。
【0022】
そして、図6に示すように、リングギヤ4を、その一端面14がストッパ部23に当接するまで押圧して圧入する。この圧入後の状態では、リングギヤ4の圧入面12がフランジ3の外周面21に密着した状態となる。また、リングギヤ4の圧入面12に形成された周溝15には、穴24から突出する形で接触片33が嵌り込む。
【0023】
その後、「かしめ工程」では、図2に示すように、フランジ3のかしめ部22をリングギヤ4のノッチ13に対して押し付けてかしめる。この状態では、リングギヤ4が、その軸線方向Xにおいて、フランジ3に対して位置決めされて固定される。
【0024】
以上説明したこの実施形態におけるリングギヤの締結構造によれば、デファレンシャルサブアッシ1を車両の動力伝達機構に使用した場合に、リングギヤ4が相手ギヤに噛み合うことで噛み合い反力(図1に矢印でしめす。)が発生する。ここで、リングギヤ4からデフケース2へは、リングギヤ4のノッチ13のかしめ部22に対する引っ掛かりと、リングギヤ4の圧入面12のフランジ3の外周面21に対する摩擦力とによりトルクが伝達される。
【0025】
そして、万が一、想定以上の荷重がリングギヤ4に入力され、かしめ部22が損傷した場合には、フランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間で「すべり」が発生することがある。このとき、このすべりを利用して発音手段31が異音を発生させることとなり、すべりの発生が使用者(車両の運転者等)に報される。より具体的には、かしめ部22が損傷してフランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間ですべりが発生すると、リングギヤ4の圧入面12における周溝15にて連続的に形成された凹凸16に対し、フランジ3の外周面21の穴24に収容された接触片33の曲面がバネ32により付勢されて接触する。そして、上記した「すべり」に伴い、接触片33の曲面が連続的な凹凸16を断続的に乗り越えるときに異音(断続的な打音)が発生する。この結果、締結されたデフケース2のフランジ3とリングギヤ4との締結部の破損を使用者(車両の運転者等)が早期に発見することができる。このため、その異常に早期に対処することができるようになる。
【0026】
<第2実施形態>
次に、本発明におけるリングギヤの締結構造を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0028】
図7に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4との関係を図2に準ずる断面図により示す。図8に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4の一部を図7のB−B線に沿った断面図により示す。この実施形態では、発音手段31の構成の点で第1実施形態と構成が異なる。すなわち、この実施形態では、図7,8に示すように、周溝15とその底壁の凹凸16が、フランジ3の外周面21に形成される。また、穴24がリングギヤ4の圧入面12に形成され、その穴24の中にバネ32を介して球体の接触片33が収容される。この実施形態では、これらの点で第1実施形態と構成が異なる。
【0029】
従って、この実施形態でも、かしめ部22が損傷してフランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間で「すべり」が発生すると、フランジ3の外周面21の周溝15に連続的に形成された凹凸16に対し、リングギヤ4の圧入面12の穴24に収容された接触片33の曲面がバネ32により付勢されて接触する。そして、上記したすべりに伴い、接触片33の曲面が連続的な凹凸16を断続的に乗り越えることで異音が発生する。この結果、締結されたデフケース2とリングギヤ4との締結部の破損を使用者(車両の運転者等)が早期に発見することができる。このため、その異常に早期に対処することができるようになる。
【0030】
<第3実施形態>
次に、本発明におけるリングギヤの締結構造を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図9に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4との関係を図2に準ずる断面図により示す。図10に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4の一部を図9のC−C線に沿った断面図により示す。この実施形態では、発音手段31の構成の点で前記各実施形態と構成が異なる。すなわち、図9,10に示すように、この実施形態では、リングギヤ4の圧入面12に形成された穴24と、その穴24にバネ32を介して収容された角部34aを有する接触片34とを含む。そして、この接触片34の角部34aがフランジ31の外周面21に接触可能に設けられる。
【0032】
図11に、リングギヤ4の一部と、接触片34及びバネ32との関係を斜視図により示す。この実施形態で、接触片34は、三角柱形状をなし、2つのバネ32を介して穴24の中に収容される。接触片34は、その長手方向の一辺を角部34aとして、フランジ3の外周面21に接触可能に設けられる。
【0033】
従って、この実施形態でも、かしめ部22が損傷してフランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間で「すべり」が発生すると、リングギヤ4の圧入面12にて穴24に収容された接触片34の角部34aがバネ32により付勢されてフランジ3の外周面21と接触する。そして、上記したすべりに伴い、接触片34の角部34aがフランジ3の外周面21に連続的に摺接することで、削りの作用により異音(連続的な引き掻き音)が発生する。この結果、締結されたデフケース2とリングギヤ4との締結部の破損を使用者(車両の運転者等)が早期に発見することができる。このため、その異常に早期に対処することができるようになる。
【0034】
<第4実施形態>
次に、本発明におけるリングギヤの締結構造を具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
図12に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4との関係を、図2に準ずる断面図により示す。図13に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4の一部を図12のD−D線に沿った断面図により示す。この実施形態では、発音手段31の構成の点で前記各実施形態と構成が異なる。すなわち、この実施形態では、図12,13に示すように、フランジ3の外周面21に形成された穴24と、その穴24にバネ32を介して収容された角部34aを有する接触片34とを含む。そして、この接触片34の角部34aがリングギヤ4の圧入面12に接触可能に設けられる。
【0036】
図14に、フランジ3の一部と、接触片34及びバネ32との関係を斜視図により示す。この実施形態で、三角柱形状をなす接触片34は、2つのバネ32を介して穴24の中に収容される。接触片34は、その長手方向の一辺を角部34aとして、リングギヤ4の圧入面12に接触可能に設けられる。
【0037】
従って、この実施形態でも、かしめ部22が損傷してフランジ3の外周面21とリングギヤ4の圧入面12との間で「すべり」が発生すると、フランジ3の外周面21にて穴24に収容された接触片34の角部34aがバネ32により付勢されてリングギヤ4の圧入面12と接触する。そして、上記したすべりに伴い、接触片34の角部34aがリングギヤ4の圧入面12に連続的に摺接することで、削りの作用により異音(連続的な引き掻き音)が発生する。この結果、締結されたデフケース2とリングギヤ4との締結部の破損を使用者(車両の運転者等)が早期に発見することができる。このため、その異常に早期に対処することができるようになる。
【0038】
<第5実施形態>
次に、本発明におけるリングギヤの締結構造を具体化した第5実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
図15に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4との関係を、図2に準ずる断面図により示す。図16に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4の一部を図15のE−E線に沿った断面図により示す。この実施形態では、接触片35の形状の点で第1実施形態と構成が異なる。すなわち、図15,16に示すように、この実施形態では、接触片35が、円筒形状をなしている。そして、接触片34は、その軸線方向がリングギヤ4の軸線方向Xと一致するように穴24の中に収容される。
【0040】
従って、この実施形態でも、第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、接触片35の軸線方向がリングギヤ4の軸線方向Xと一致するように接触片35が穴24に収容されると共に、周溝15に嵌り込んでいる。このため、リングギヤ4が、その軸線方向Xへずれようとするときの荷重を、接触片35がフランジ3との間で受けることができる。この結果、リングギヤ4の軸線方向Xのずれを防止することができる。
【0041】
<第6実施形態>
次に、本発明におけるリングギヤの締結構造を具体化した第6実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0042】
図17に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4との関係を、図2に準ずる断面図により示す。図18に、デフケース2のフランジ3とリングギヤ4の一部を図7のF−F線に沿った断面図により示す。この実施形態では、接触片36の形状及び材質の点で第4実施形態と構成が異なる。すなわち、図17,18に示すように、この実施形態では、接触片36が、直方体形状をなしている。また、接触片36は、フランジ3やリングギヤ4の材質よりも硬い材料により形成される。
【0043】
図19に、フランジ3の一部と、接触片36及びバネ32との関係を斜視図により示す。この実施形態で、直方体形状をなす接触片36は、2つのバネ32を介して穴24の中に収容される。接触片36は、その一側面を構成する四辺を角部36aとして、リングギヤ4の圧入面12に接触可能に設けられる。
【0044】
従って、この実施形態でも、第4実施形態と同等の作用効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、接触片36がリングギヤ4よりも硬い材料で形成されるので、接触片36の角部36aがリングギヤ4の圧入面12に摺接することで圧入面12が削れる。これにより、図20に断面図により示すように、リングギヤ4の圧入面12に削り溝17ができ、その削り溝17に、接触片36の一部が嵌り込む。このため、リングギヤ4がその軸線方向Xへずれようとするときの荷重を、接触片36がフランジ3との間で受けることができる。この結果、リングギヤ4の軸線方向Xのずれを防止することができる。
【0045】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して次のように実施することもできる。
【0046】
前記各実施形態では、フランジ3の外周面21又はリングギヤ4の圧入面12に設けられる一つの穴24にバネ32を介して接触片33〜36を収容した。これに対し、フランジの外周面又はリングギヤの圧入面に複数の穴を設け、それぞれの穴にバネを介して接触片を収容するようにしてもよい。
【0047】
前記第1、第2及び第5の実施形態では、周溝15に形成される凹凸16を、周溝15の底壁に沿って連続する鈍角をなす山と谷により構成した。これに対し、凹凸の形状は、これに限られるものではなく、接触片との接触により打音を発するものであれば、どのような形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明は、車両の動力伝達機構に使用されるデファレンシャルサブアッシに利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 デファレンシャルサブアッシ
2 デフケース
3 フランジ
4 リングギヤ
12 圧入面(内周面)
13 ノッチ
14 端面
15 周溝
16 凹凸
21 外周面
22 かしめ部
23 ストッパ部
24 穴
31 発音手段
32 バネ
33 接触片
34 接触片
34a 角部
35 接触片
36 接触片
36a 角部
X 軸線方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デファレンシャルサブアッシを構成するデフケースのフランジにリングギヤを締結してなるリングギヤの締結構造であって、
前記リングギヤは、その内周面にて前記フランジの外周面に圧入されると共に、前記フランジの軸線方向における両端の少なくとも一方に設けられたかしめ部によりかしめられており、前記フランジの外周面と前記リングギヤの内周面との間にすべりが発生したときに、そのすべりを利用して異音を発生させる発音手段が設けられたことを特徴とするリングギヤの締結構造。
【請求項2】
前記発音手段は、前記フランジの外周面と前記リングギヤの内周面の一方に設けられた周溝及び他方に設けられた穴と、前記穴にバネを介して収容された曲面を有する接触片と、前記周溝に連続的に形成され、前記接触片の前記曲面と接触可能な凹凸とを含むことを特徴とする請求項1に記載のリングギヤの締結構造。
【請求項3】
前記発音手段は、前記フランジの外周面又は前記リングギヤの内周面に設けられた穴と、前記穴にバネを介して収容された角部を有する接触片とを含み、前記接触片の前記角部が前記リングギヤの内周面又は前記フランジの外周面に接触可能に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のリングギヤの締結構造。
【請求項1】
デファレンシャルサブアッシを構成するデフケースのフランジにリングギヤを締結してなるリングギヤの締結構造であって、
前記リングギヤは、その内周面にて前記フランジの外周面に圧入されると共に、前記フランジの軸線方向における両端の少なくとも一方に設けられたかしめ部によりかしめられており、前記フランジの外周面と前記リングギヤの内周面との間にすべりが発生したときに、そのすべりを利用して異音を発生させる発音手段が設けられたことを特徴とするリングギヤの締結構造。
【請求項2】
前記発音手段は、前記フランジの外周面と前記リングギヤの内周面の一方に設けられた周溝及び他方に設けられた穴と、前記穴にバネを介して収容された曲面を有する接触片と、前記周溝に連続的に形成され、前記接触片の前記曲面と接触可能な凹凸とを含むことを特徴とする請求項1に記載のリングギヤの締結構造。
【請求項3】
前記発音手段は、前記フランジの外周面又は前記リングギヤの内周面に設けられた穴と、前記穴にバネを介して収容された角部を有する接触片とを含み、前記接触片の前記角部が前記リングギヤの内周面又は前記フランジの外周面に接触可能に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のリングギヤの締結構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−255481(P2012−255481A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128431(P2011−128431)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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