説明

リングコーター塗装方法

【課題】 導電性ローラ基体部の表面への塗料の塗装後に塗膜層からの液だれを生じることがないリングコーター塗装方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 導電性ローラ1の基体部5の表面に塗料を塗布して塗膜層4を形成するリングコーター塗装方法において、塗装工程の直後に連続して紫外線照射手段18により前記ローラ1の塗膜層4を紫外線照射処理し、これら紫外線照射手段18とローラ1とを軸方向に相対移動させて前記塗膜層4の表面を硬化することにより、塗装直後に即座に塗膜層4に紫外線照射が行えるので、特に、被塗装体である導電性ローラ1が鉛直軸方向にトラバース移動するリングコーター30による塗装直後の塗膜層4を、効果的に乾燥・硬化し、液だれを有効に防止することができ、塗膜層の塗りむらや不均一さを解消できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真装置、静電記録装置等の画像形成装置に用いられる導電性ローラを製造する技術に係り、特に、これらの導電性ローラの表面の高品質化のために採用されるもので、導電性ローラの基体部の表面に塗料を塗布するリングコーター塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置においては、潜像を保持した感光ドラム等にトナーを供給し、感光ドラムの潜像に該トナーを付着させて潜像を可視化する現像方法として、加圧現像法が知られている。該加圧現像法においては、例えば、感光ドラムを一定電位に帯電させた後、露光機により感光ドラム上に静電潜像を形成し、さらに、トナーを担持した現像ローラを、静電潜像を保持した感光ドラムに接触させて、トナーを感光ドラムの潜像に付着させる現像を行う。また、感光ドラムと現像ローラに一定の間隙を設け、その間隙にトナーを電気的に飛翔させて現像を行う非接触現像法も提案されている。
【0003】
また、上記感光ドラムの帯電には、従来コロナ放電方式が採用されていたが、コロナ放電方式では、6〜10kVの高電圧を印加する必要があるため、装置の安全確認の観点から好ましくはなく、さらに、コロナ放電中にオゾン等の有害物質が発生するため、環境面からも好ましくなかった。これに対し、感光ドラムを帯電させる接触帯電方式が提案されている。
【0004】
上記加圧現像法における現像ローラ、ならびに上記接触帯電方式における帯電ローラは、感光ドラムに密着した状態を確実に保持しながら回転しなければならないため、また、非接触現像法における現像ローラにおいても、トナーに対するストレスを軽減するために、金属等の良導電性材料からなるシャフトの外周に、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリウレタン等のエラストマーにカーボンブラックや金属粉を分散させた半導電性の弾性体やこれらを発泡させた発泡体からなる半導電性弾性層を形成した構造となっている。また、トナーに対する帯電性や付着性の制御、弾性層による感光ドラムの汚染防止等を目的として、上記弾性層の表面に、さらに、樹脂被覆層を形成する場合がある。
【0005】
さらに、上記現像ローラおよび帯電ローラに加えて、現像ローラにトナーを供給するためのトナー供給ローラ、感光ドラムの潜像に付着したトナーを記録媒体に転写するための転写ローラ、転写後に感光ドラム上に残留するトナーを除去するためのクリーニングローラ等にも、上記のようなシャフトの外周に半導電性弾性層を形成し、該弾性層の表面にさらに樹脂被覆層を形成した構造の導電性ローラが用いられている。
【0006】
一方、カラープリンターやカラー複写機においても、基本的には前記加圧現像法にしたがってプリントが行われるが、カラー印刷の場合には、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを用いて色調を再現するもので、これらのトナーを所定割合で重ね合わせて必要な色調を得るための工夫が必要であり、この工程を行うためにはいくつかの方式が提案されている。
【0007】
4つの感光ドラムを設け、各ドラムの潜像をそれぞれマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーで現像することにより、マゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像、ブラックによるトナー像の4つのトナー像を形成し、これらトナー像が形成された感光ドラムを1列に並べて各トナー像を紙等の記録媒体に順次転写して記録媒体上に重ねるとにより、カラー画像を再現するタンデム方式と、感光体上のトナー像を一旦転写保持するドラムやベルトからなる中間転写部材を設け、この中間転写部材の周囲にマゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像、ブラックによるトナー像を形成した4つの感光体を配置して、4色のトナー像を中間転写部材上に順次転写することにより、この中間転写部材上にカラー画像を形成し、このカラー画像を紙等の記録媒体上に転写する中間転写方式がある。また、タンデム方式と中間転写方式とを組み合わせたタンデム中間転写方式もある。これらの方式において、記録媒体送り機能付与とトナー像形成のために無端状の導電性エンドレスベルトが用いられているのは周知の通りである。
【0008】
これらのベルト表面において、トナー離型性等を向上させるため、基材層とは別に表層として樹脂被覆層を形成することが行われている。
【0009】
従来、上記導電性ローラにおいて、上記樹脂被覆層は、シャフトと弾性層とからなる導電性ローラ基材本体を溶剤系もしくは水系の塗工液中にディップするか、または該塗工液を導電性ローラ基材本体にスプレーした後、熱もしくは熱風で乾燥・硬化して形成されているが、この場合、長時間の乾燥が必要なため、量産には長い乾燥ラインが必要である。また、上記樹脂被覆層は、その用途から微妙な導電性および表面状態が要求されるが、乾燥ライン内の温度分布および風量等のばらつきが樹脂被覆層の性能に大きく影響するため、品質上の問題があった。
【0010】
そこで、円筒状基材に均一に塗布液を塗装することができるリングコーターを用いた塗装方法が提案された(下記特許文献1参照)
【特許文献1】特開2004−97896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特許文献1に開示されたものは、円筒状の塗布ヘッドにより円筒状基材の表面に均一に塗布液を塗布する塗布装置において、前記塗布ヘッドのリング状の突出口の口径を可変構造としたものである。このような構成によって、塗布終了時に、塗布ヘッドと円筒状基材との間隔を拡大し、塗布ヘッドと円筒状基材との間に残留する塗布液を分離して、塗布終了時の液切れ性を向上させ、塗布液が円筒状基材端部や円筒状基材下支持部に回り込むことがなく、非塗布領域の塗布液除去作業等に手間を要することなく、作業性を向上させることができることとなった。
【0012】
しかしながら、このような従来の塗装方法によって、均一な塗装を可能にするとともに、塗装後の工程も簡素化されて生産効率が向上することとなったとしても、円筒状基材である導電性ローラ基体部に塗装された塗膜層が塗装直後に液だれを生じることがあった。特に、通常は導電性ローラの被塗装体が鉛直方向にトラバース移動するリングコーター塗装にあっては、液だれが生じると、塗装側にたれて塗膜層の厚みが不均一になる虞れがあった。
【0013】
そこで本発明は、このような従来の、特にリングコーター塗装の課題を解決して、導電性ローラ基体部の表面への塗料の塗装後に塗膜層からの液だれを生じることがないリングコーター塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため本発明は、導電性ローラの基体部の表面に塗料を塗布して塗膜層を形成するリングコーター塗装方法において、塗装工程の直後に連続して紫外線照射手段により前記ローラの塗膜層を紫外線照射処理し、これら紫外線照射手段とローラとを軸方向に相対移動させて前記塗膜層の表面を硬化することを特徴とする。また本発明は、導電性ローラの基体部の表面に塗料を塗布して塗膜層を形成するリングコーター塗装方法において、塗装工程の直後に連続して電子線照射手段により前記ローラの塗膜層を電子線照射処理し、これら電子線照射手段とローラとを軸方向に相対移動させて前記塗膜層の表面を硬化することを特徴とする。また本発明は、前記塗料が紫外線硬化型樹脂からなることを特徴とする。また本発明は、前記塗料が電子線硬化型樹脂からなることを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導電性ローラの基体部の表面に塗料を塗布して塗膜層を形成するリングコーター塗装方法において、塗装工程の直後に連続して紫外線照射手段により前記ローラの塗膜層を紫外線照射処理し、これら紫外線照射手段とローラとを軸方向に相対移動させて前記塗膜層の表面を硬化することにより、塗装直後に即座に塗膜層に紫外線照射が行えるので、特に、被塗装体である導電性ローラが鉛直軸方向にトラバース移動するリングコーターによる塗装直後の塗膜層を、効果的に乾燥・硬化し、液だれを有効に防止することができ、塗膜層の塗りむらや不均一さを解消することが可能となる。
【0016】
また、前記塗装工程の直後に連続して電子線照射を行う場合は、特に、被塗装体である導電性ローラが鉛直軸方向にトラバース移動するリングコーターによる塗装直後の塗膜層を、効果的に乾燥・硬化し、液だれを有効に防止することができて、塗膜層の塗りむらや不均一さを解消することが可能となることはもとより、高いエナルギーで瞬時に処理ができ、取扱いが容易で安全な照射が可能である。
【0017】
さらに、前記塗料が、紫外線硬化型樹脂あるいは電子線硬化型樹脂から構成された場合は、導電性ローラの基体部表面の塗膜層が、その後の紫外線や電子線のトラバース照射により、塗料が迅速で均一かつ効果的に硬化することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のリングコーター塗装方法を図面に基づいて説明する。図1は本発明のリングコーター塗装方法の1つの実施例を示す縦断面図、図2は導電性ローラの各例の斜視図である。本発明のリングコーター塗装方法の基本的な構成は、図1に示すように、導電性ローラ1の基体部5の表面に塗料を塗布して塗膜層4を形成するリングコーター塗装方法において、塗装工程の直後に連続して紫外線照射手段18により前記ローラ1の塗膜層4を紫外線照射処理し、これらこれら紫外線照射手段18とローラ1とを軸方向に相対移動させて前記塗膜層4の表面を硬化することを特徴とする。
【0019】
以下、実施例について説明する。図2は導電性ローラとして使用される各例を示す。図2(A)は弾性ローラ1の例で、金属や合成樹脂製の硬質の中実棒状体からなる軸6の周囲に弾性体の基体部5が被覆される。該基体部5の周囲にさらに塗膜層4が塗装・形成される。図2(B)はパイプ型ローラ2の例で、金属や合成樹脂製の硬質の管状体からなるパイプ軸7の周囲に厚さの薄い弾性体の基体部5が被覆される。該基体部5の周囲にさらに塗膜層4が塗装・形成される。
【0020】
これらの導電性ローラの中の弾性ローラ1の塗装工程を例として説明する。図1に示すように、被塗装体である導電性の弾性ローラ1は、鉛直方向に配置され、その軸の上下両端部が支持されて軸方向の上方(矢印A)にトラバース移動(トラバース移動とは、回転する導電性ローラと塗装装置とが導電性ローラの軸方向に相対移動すること。このトラバース移動により、塗装装置が導電性ローラの基体部の表面の全域に塗料を塗布できる)する。通常は回転する弾性ローラ1の基体部5の表面の周囲を取り囲んでリングコーター30が配設され、弾性ローラ1の基体部5の表面が塗装される。設計上許容されるなら、リングコーター30側を軸方向にトラバース移動可能に構成してもよい。
【0021】
リングコーター30には、塗料供給源であるシリンダ中の供給ピストン34により塗料が供給される。リングコーター30は、上下一対の環状の上部ヘッド31および下部ヘッド32から構成される。これらの重ね合せ面には、環状の圧力室33と塗料の噴射路37が形成されている。したがって、環状の噴射路37から噴射された塗料により、被塗装体である導電性の弾性ローラ1の基体部5の表面の全周が一度に塗装される。次いで、弾性ローラ1を矢印Aのように上方へ引き抜いていくことで、弾性ローラ1の表面の全域が塗装される。
【0022】
本発明の導電性ローラの弾性層は、エラストマーと導電剤とを含み、必要に応じて充填剤等の他の成分を含む。該弾性層に用いるエラストマーとしては、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタンおよびこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でも、シリコーンゴム、EPDM、ECOおよびポリウレタンが好ましい。上記弾性層には、上記エラストマーを発泡剤を用いて化学的に発泡させたり、ポリウレタンフォームのように空気を機械的に巻き込んで発泡させる等して、上記エラストマーを発泡体として用いてもよい。
【0023】
上記シャフトと弾性層とは、反応射出成形法(RIM成形法)を用いて一体化してもよい。すなわち、弾性層の原料成分を構成する2種類の液を筒状型内に混合射出し、反応硬化させて、シャフトと弾性層とを一体化することができる。これにより、原料の注入から脱型までの所要時間を短縮し、生産コストを大幅に削減することができる。
【0024】
また、上記弾性層にシリコーンゴムを用いる場合、該シリコーンゴムは、一般的なミラブル型シリコーンゴム(HCR)でも液状シリコーンゴム(LSR)でもよい。なお、液状シリコーンゴムを用いる場合、液状射出成形(LIM:Liquid injection Molding)で弾性層を形成するのが好ましい。上記液状シリコーンゴムは、ビニル基含有ポリオルガノシロキサンに対して、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、シリカ等の補強性充填剤、導電剤、白金系触媒、反応抑制剤、シリコーンオイル、その他の各種添加剤を配合してなり、所定の形状のモールドに注入された後、加熱硬化によって成形される。
【0025】
上記ビニル基含有ポリオルガノシロキサンは、分子中に2個以上の反応基を有し、該反応基としてはアルケニル基および水酸基が挙げられる。該ビニル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、下記式1
【数1】

(式1中、R1 は、それぞれ独立して一価の炭化水素基であり、nは100〜10000の整数である)で表される化合物が好ましい。ここで、R1 における一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基およびペンチル基等のアルキル基、ビニル基およびアリル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル等のアラルキル基等が挙げられる。
【0026】
また、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記式2
【数2】

(式2中、R2 は、それぞれ独立して水素または一価の炭化水素基であり、mは10〜1000の整数である)で表され、分子中に2個以上の珪素−水素結合を有する化合物が好ましい。ここで、R2 おける一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基およびペンチル基等のアルキル基、ビニル基およびアリル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル等のアラルキル基等が挙げられる。
【0027】
また、液状シリコーンゴムに含まれる導電剤としては、後述する弾性層に一般に用いられる導電剤を使用することができる。白金系触媒としては、塩化第二白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金等が挙げられ、反応抑制剤としては、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0028】
上記弾性層に用いる導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤等が挙げられる。電子導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラック、酸化処理等を施したカラー用カーボンブラック、熱分解カーボンブラック、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープ酸化スズ、ITO、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属化合物、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、ポリアニリン、ポリビニール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、カーボンウィスカー、黒鉛ウィスカー、炭化チタンウィスカー、導電性チタン酸カリウムウィスカー、導電性チタン酸バリウムウィスカー、導電性酸化チタンウィスカー、導電性酸化亜鉛ウィスカー等の導電性ウィスカー等が挙げられる。上記電子導電剤の配合量は、上記エラストマー100質量部に対して1〜50質量部の範囲が好ましく、5〜40質量部の範囲がさらに好ましい。
【0029】
また、上記イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等が挙げられる。上記イオン導電剤の配合量は、上記エラストマー100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲が好ましく、0.05〜5質量部の範囲がさらに好ましい。上記導電剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、電子導電剤とイオン導電剤とを組み合わせてもよい。
【0030】
上記弾性層は、上記導電剤の配合により、その抵抗値を103 〜1010Ωcmとすることが好ましく、104 〜108 Ωcmとすることが好ましい。弾性層の抵抗値が103 Ωcm未満では、電荷が感光ドラム等にリークしたり、電圧により導電性ローラ自体が破壊する場合があり、1010Ωcmを超えると、地かぶりが発生し易くなる。
【0031】
上記弾性層は、必要に応じて上記エラストマーをゴム状物質とするために、有機過酸化物等の架橋剤、硫黄等の加硫剤を含有してもよく、さらに加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤等を含有してもよい。また、上記弾性層は、さらに充填剤、しゃく解剤、発泡剤、可塑剤、軟化剤、粘着付与剤、粘着防止剤、分離剤、離型剤、増量剤、着色剤等のゴム用配合剤を含有してもよい。
【0032】
また、ポリウレタンまたはEPDMを基材として上記弾性層を形成する場合、表面上のトナー帯電量をコントロールするために、ニグロシン、トリアミノフェニルメタン、カチオン染料等の各種荷電制御剤、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ナイロン等の微粉体を添加してもよい。ここで、上記荷電制御剤の添加量は、上記ポリウレタンまたはEPDM100質量部に対して1〜5質量部の範囲が好ましく、上記微粉体の添加量は、上記ポリウレタンまたはEPDM100質量部に対して1〜10質量部の範囲が好ましい。
【0033】
上記弾性層の硬度は、特に限定されるものではないが、アスカーC硬度で80度以下であるのが好ましく、20〜70度であるのがさらに好ましい。弾性層のアスカーC硬度が80ど超えると、導電性ローラと感光ドラム等との接触面積が小さくなり、良好な現像が行えなく虞れがあり、また、導電性ローラを現像ローラとして用いた場合、トナーに損傷を与え、感光ドラムや成層ブレードへのトナー固着等が発生して画像不良が起こり易い。一方、弾性層が低硬度過ぎると、導電性ローラを現像ローラとして用いた場合、感光ドラムや成層ブレードとの摩擦力が大きくなり、ジッター等の画像不足が発生する虞れがある。なお、上記弾性層は、感光ドラムや成層ブレード等に当接して使用されるため、硬度を低硬度に設定する場合でも、圧縮永久歪みをなるべく小さくすることが好ましく、具体的には20%以下とすることが好ましい。
【0034】
本発明の導電性ローラにおいて、基材に用いる熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではないが、例えば、熱可塑性ポリアミド(PA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、熱可塑性ポリアセタール(POM)、熱可塑性ポリアリレート(PAR)、熱可塑性ポリカーボネート(PC)等を好適に挙げることができる。また、かかる熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとのポリマーアロイ、またはポリマーブレンドを用いることもでき、これらのうちのいずれかを基材として用いることにより、良好な強度、特には良好な屈曲耐久性を備えた素材を得ることができる。
【0035】
また、本発明に用いる高分子イオン導電剤としては、例えば、特開平9−227717号公報、特開平10−120924号公報および特開2000−327922号公報に記載されているものを用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0036】
具体的には、(A)有機ポリマー材料、(B)イオン導電可能なポリマーまたはコポリマーおよび(C)無機または低分子量有機塩からなる混合物を挙げることができ、ここで、成分(A)は、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアミド、ポリウレタンまたはポリエステルであり、成分(B)は、オリゴエトキシ化アクリレートもしくはメタクリレート、芳香族環についてオリゴエトキシ化されたスチレン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテル尿素、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミドまたはポリエーテルエステルであり、また成分(C)は、無機または低分子量有機プロトン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛またはアンモニウム塩であり、好ましくは、LiClo4 、LiCF3 SO3 、NaClo4 、LiBF4 、NaBF4 、KBF4 、NaCF4 SO3 、KClO4 、KPF6 、KCF3 SO3 、KC4 9 SO3 、Ca(ClO4 2 、Ca(PF6)2 、Mg(ClO4)2 、Mg(CF3 SO3 2 、Zn(ClO4)2 、Zn(PF6)2 、またはCaCF3 SO3 2 等である。
【0037】
これらの中でも、成分(B)として、ポリエーテルアミド成分またはポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子イオン導電剤が好適であり、さらにこれに加えて成分(C)として低分子イオン導電剤成分を含有することが好ましい。また、かかるポリエーテルアミド成分およびポリエーテルエステルアミド成分としては、ポリエーテル成分が(C−H2 −CH2 −O)含有し、ポリアミド成分がナイロン12またはナイロン6を含有するものが特に好ましく、これを成分(B)として含有し、さらに成分(C)の低分子イオン導電剤成分としてNaClO4 を含有する高分子イオン導電剤が特に好適である。かかる好適な高分子イオン導電剤は、市場においてIrgastat(登録商標)P18およびIrgastat(登録商標)P22(共に、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・インコーポレーテッド製)、ペレスタットNC6321(三洋化成(株)製)として入手することができる。
【0038】
また、本発明においては、基材に対して、機能性成分として他の導電性材料を添加して、補助的に導電性の付与、調整を行うこともできる。かかる導電性材料としては、特に限定されず、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸、ジメチルエチルアンモニウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(臭化ベルジル塩、塩化ベンジル塩等)等の第4級アンモニウム等の陽イオン界面活性剤:脂肪族スルホン酸、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸塩、高級アルコール燐酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤;各種ベタイン等の両性イオン界面活性剤;高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アコール脂肪酸エステル等の非イオン性帯電防止剤等の帯電防止剤、LiCF2 SO2 、NaClo4 、LiBF4 、NaCl等の周期律表第1族の金属塩;Ca)ClO4 2 等の周期律表第2族の金属塩;およびこれらの帯電防止剤がイソシアネートと反応する活性水素を有する基(水素基、カルボキシル基、一級乃至二級アミン等)を1個以上有するもの等が挙げられる。さらに、これらと多価アルコール(1、4−ブタジエンオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等)またはその誘導体との錯体、あるいはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等との錯体等のイオン導電剤;ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーブン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したカラーインク用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト等;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅等の金属および金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等を例示することができる。
【0039】
これら他の導電性材料の添加量は、基材100重量部に対して好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.1〜20重量部程度である。本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の成分に加えて他の機能性成分を適宜添加することも可能であり、例えば、各種充填材、カップリング剤、酸化防止剤、滑剤、表面処理剤、顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、架橋剤等を適宜配合することができる。さらに、着色剤を添加して、素材に着色を施してもよい。
【0040】
前述したように、塗装に先立つ導電性ローラ1の基体部5の表面へのプラズマ照射は、塗装のためのリングコーター30を上方あるいは下方へ退避させた状態にて行われるが、リングコーターのトラバース塗装としての利点を生かして、リングコーター30を退避させることなく、リングコーター30によるトラバース塗装に先立って導電性ローラ1の先行側にてプラズマ照射あるはコロナ放電を行ってもよい。つまり、上方へトラバース移動する導電性ローラ1に関して、リングコーター30の下部にプラズマ照射手段17を併設する。この場合は、時間が経つと失活してしまうプラズマ照射後の改質面に速やかに塗装を施すことができて、トラバース塗装の利点を最大限に活かせる上に、塗装工程時間の大幅な短縮が可能となる。
【0041】
このようなプラズマ照射あるいはコロナ放電による前記前処理方法により改質された導電性ローラ1等の基体部5表面に、リングコーター30のトラバース塗装手段により塗料が高い密着性により、塗りむら、厚みの不均一を生じることなく確実に塗布される。
【0042】
本発明の樹脂被覆層は、紫外線または電子線硬化型樹脂および/または化合物が好適に用いられるが、非紫外線または非電子線硬化型樹脂を含んでもよい。上記塗工液は、反応性希釈剤、導電剤を含んでもよい。また、紫外線硬化型樹脂または紫外線硬化型化合物の場合には、光重合開始剤、光重合促進剤を含むのが好ましい。その他、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよく、また、溶剤を含まないのが好ましい。
【0043】
上記樹脂被覆層に用いる紫外線または電子線硬化型樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ビニルエステル系樹脂およびこれら樹脂に特定の官能基を導入した変性樹脂等が挙げられ、これら樹脂は、1種単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
上記紫外線または電子線硬化型樹脂は、紫外線または電子線により重合可能な樹脂および/または化合物、好ましくは、紫外線または電子線により重合可能な炭素原子間二重結合を有する樹脂および/または化合物を紫外線または電子線照射により硬化させてなる。上記紫外線または電子線により重合可能な樹脂および/または化合物は、(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーが好ましい。ここで、(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーとしては、ウレタン系(メタ)アクリレート、エポキシ系(メタ)アクリレート、エーテル系(メタ)アクリレート、エステル系(メタ)アクリレート、ポリカーボネート系(メタ)アクリレート、シリコーン系(メタ)アクリレート等のモノマーおよびオリゴマーが挙げられる。
【0045】
上記樹脂被覆層の形成に用いる塗工液には、さらに必要に応じて重合性二重結合を有する反応性希釈剤、導電剤等の各種添加剤を配合してもよい。塗工液に重合性二重結合を有する反応性希釈剤を配合することで、塗工液の粘度を調整することができる。該反応性希釈剤としては、アミノ酸や水酸基を含む化合物に、(メタ)アクリル酸がエステル化反応およびアミド化反応で結合した構造の単官能、2官能または多官能の重合性化合物を使用することができる。上記反応性希釈剤の配合量は、なくてもよいが、配合する場合、配合量は上記紫外線により重合可能な樹脂および化合物の合計100質量部に対して200質量部以下の範囲が好ましい。
【0046】
また、上記塗工液に用いる導電剤としては、上記弾性層用導電剤として例示したものと同様のものを例示することができる。それらの中でも、カーボン系電子導電剤、イオン導電剤および透明導電剤が好ましい。
【0047】
上記樹脂被覆層の形成に用いる塗工液には、紫外線硬化型樹脂の場合、光重合開始剤を配合するのが好ましい。該光重合開始剤としては、公知のものを使用することができる。例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノンおよび3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4、4−ジメトキシベンゾフェノン、4、4−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジルおよびベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体、ベンゾインおよびベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾインイソプロピルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、チオキサントンおよびチオキサントン誘導体、フルオレン、2,4,6トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾオイル)−2,4.4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,66−トリメチリルベンゾオイル)フェニルホスソフィンオキシド、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルホリノフェニル)−ブタン−1等が挙げられる。これら光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記樹脂被覆層の形成に用いる塗工液に光重合開始剤を配合する場合、光重合開始剤による重合反応を促進するために、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第3級アミン系光重合促進剤、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系光重合促進剤。チオジグリコール等のチオエーテル系光重合促進剤等をさらに添加してもよい。これら光重合促進剤の添加量は、紫外線により重合可能な樹脂および化合物の合計100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲が好ましい。
【0049】
上記樹脂被覆層の厚さは、1から100μmの範囲がさらに好ましく、5〜100μmの範囲がより一層好ましい。樹脂被覆層の厚さが1μm未満では、長期使用時の摩擦によりローラの表面の電気性能を充分に確保することができない場合があり、100μmを超えると、表面が硬くなり、トナーにダメージを与えて感光ドラムへのトナーの固着が発生して、画像不良を引き起こす場合がある。
【0050】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、リングコーターの形状(上下分割式の他、一体形式でも可。噴射路の傾斜角度等)、形式、リングコーターへの塗料供給形態(塗料供給ピストンの他、ポンプ等の適宜の塗料供給手段が採用され得る。)、導電性ローラの種類(帯電ローラ、現像ローラ等)、層状形態を含む形状、形式(弾性ローラ、パイプ型ローラ等)、トラバース塗装形態(好適には被塗装体である導電性ローラ側を軸移動させるが、リングコーター等の塗装側を軸移動させてもよい)、導電性ローラのトラバース軸移動駆動(場合によっては回転駆動)のためのアクチュエータの形態(電動、流体、磁気等の駆動源の種類およびラックとピニオン、ピストンとシリンダ等)、プラズマ照射手段およびコロナ放電手段の形状(導電性ローラの全周を同時に照射あるいは放電するような構成とすることもできる。この場合は、導電性ローラを回転させる必要はない。)、形式およびそれらの照射形態、放電形態、導電性ローラの基体部の軸あるいはパイプ軸への固着形態、基体部の材質および導電剤の含有量等の添加形態、紫外線硬化型樹脂あるいは電子線硬化型樹脂等の塗料への含有量等の添加形態等については適宜選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のリングコーター塗装工程の前処理方法の1つの実施例を示す断面図である。
【図2】同、導電性ローラの各例の斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1 導電性ローラ(弾性ローラ)
4 塗膜層
5 基体部(弾性層)
6 軸(中実軸)
17 プラズマ照射手段(あるいはコロナ放電手段)
30 リングコーター
31 上部ヘッド
32 下部ヘッド
33 圧力室
34 塗料供給ピストン
37 噴射路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ローラの基体部の表面に塗料を塗布して塗膜層を形成するリングコーター塗装方法において、塗装工程の直後に連続して紫外線照射手段により前記ローラの塗膜層を紫外線照射処理し、これら紫外線照射手段とローラとを軸方向に相対移動させて前記塗膜層の表面を硬化することを特徴とするリングコーター塗装方法。
【請求項2】
導電性ローラの基体部の表面に塗料を塗布して塗膜層を形成するリングコーター塗装方法において、塗装工程の直後に連続して電子線照射手段により前記ローラの塗膜層を電子線照射処理し、これら電子線照射手段とローラとを軸方向に相対移動させて前記塗膜層の表面を硬化することを特徴とするリングコーター塗装方法。
【請求項3】
前記塗料が紫外線硬化型樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載のリングコーター塗装方法。
【請求項4】
前記塗料が電子線硬化型樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載のリングコーター塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−160771(P2006−160771A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349294(P2004−349294)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】