説明

リング状シール吸着ノズル

【課題】吸着対象であるリング状シールをより柔軟に且つ安定的に吸引・吸着できるリング状シール吸着ノズルを提供すること。
【解決手段】リング状シールSを吸着するリング状シール吸着ノズル100は、吸着対象となるリング状シールSと対向する対向部101と、対向部101に形成される、リング状シールSの形状に対応するリング状の吸着溝102と、を備え、吸着溝102の断面形状は、リング状シールSの断面形状が描く曲線に対する接線となる二つの線分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング状シールを吸着するためのリング状シール吸着ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸引ヘッド31を用いて位置決め台11上に置かれたリング状パッキンPを吸引・吸着して装着対象であるキャップCのところまで運び、そのキャップCの装着溝c2内にそのリング状パッキンPを正確に位置付けるリング状パッキン自動装着機が知られている(例えば、特許文献1の図8参照。)。
【0003】
この吸引ヘッド31は、吸着対象であるリング状パッキンPと対向するヘッド本体32を有し、ヘッド本体32を構成する下部本体33の底板33aには、凹状の吸着面(吸着溝)33cが形成されている。
【0004】
凹状の吸着面(吸着溝)33cは、リング状パッキンPのほぼ上半分の形状に一致するように形成され、吸引ヘッド31がリング状パッキンPを位置ずれなく吸引・吸着できるようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の凹状の吸着面(吸着溝)33cは、吸着対象であるリング状パッキンPの断面形状(円形)の上半分にぴったりと適合するようその断面形状が半円形とされているため、位置決め台11上に正確に置かれた標準サイズのリング状パッキンPを選択的に吸引・吸着できる反面、そのリング状パッキンPが位置決め台11上に正確に置かれていない場合や、そのリング状パッキンPの形状又は寸法に公差範囲内のばらつきがある場合には、そのリング状パッキンPを吸引・吸着できないおそれがある。
【0006】
上述の点に鑑み、本発明は、吸着対象であるリング状シールをより柔軟に且つ安定的に吸引・吸着できるリング状シール吸着ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係るリング状シール吸着ノズルは、リング状シールを吸着するリング状シール吸着ノズルであって、吸着対象となるリング状シールと対向する対向部と、前記対向部に形成される、前記リング状シールの形状に対応するリング状の吸着溝と、を備え、前記吸着溝の断面形状は、前記リング状シールの断面形状が描く曲線に対する接線となる二つの線分を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上述の手段により、本発明は、吸着対象であるリング状シールをより柔軟に且つ安定的に吸引・吸着できるリング状シール吸着ノズルを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】汎用組付機の構成例を示す斜視図である。
【図2】リング状シール吸着ノズルの下面斜視図である。
【図3】リング状シール吸着ノズル及びOリングの断面図(その1)である。
【図4】Oリング供給機の上面斜視図である。
【図5】リング状シール吸着ノズル、Oリング、及びワークの断面図である。
【図6】組付部材、Oリング、及びワークの断面図である。
【図7】汎用組付機の動作の説明図である。
【図8】吸着溝の断面形状を示す図(その1)である。
【図9】吸着溝の断面形状を示す図(その2)である。
【図10】吸着溝の断面形状を示す図(その3)である。
【図11】吸着溝の断面形状を示す図(その4)である。
【図12】リング状シール吸着ノズル及びOリングの断面図(その2)である。
【図13】吸着溝の断面形状を示す図(その5)である。
【図14】吸着溝の断面形状を示す図(その6)である。
【図15】吸着溝の断面形状を示す図(その7)である。
【図16】断面形状の異なる吸着溝の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の実施例に係るリング状シール吸着ノズル100が組み込まれる汎用組付機(ピック・アンド・プレイスマシン)10の構成例を示す斜視図であり、汎用組付機10は、基盤11、基盤11に取り付けられ基盤11に対しX1−X2軸方向にスライド可能なX軸ステージ12、及び、X軸ステージ12に取り付けられX軸ステージ12に対しZ1−Z2軸方向にスライド可能なZ軸ステージ13から構成される。
【0012】
また、汎用組付機10は、Z軸ステージ13のX1方向先端にリング状シール吸着ノズル100を備え、X軸ステージ12及びZ軸ステージ13を作動させることによって、リング状シール吸着ノズル100をX1−X2軸方向及びZ1−Z2軸方向のそれぞれに移動させることができるように構成される。
【0013】
リング状シール吸着ノズル100は、リング状シールSを吸着するためのノズルであり、真空装置(図示せず。)による吸引を用いてノズル下面にリング状シールSを吸引・吸着する。
【0014】
リング状シールSは、それぞれ導管に通じる円形の開口を備えた対向する二つの面の間に装入されるシール部材であり、例えば、その断面形状が円形又は楕円形等の曲線を含む形状で構成されるシール部材であって、シール部分がボルト等で固定される態様のガスケット、及び、シール部分が可動部となる態様のパッキンの何れであってもよい。なお、本実施例において、リング状シール吸着ノズル100は、リング状シールSの一例である、断面が円形のOリングSを吸引・吸着するものとする。
【0015】
図2は、リング状シール吸着ノズル100を斜め下方から見た下面斜視図を示し、図3は、リング状シール吸着ノズル100及びその吸着対象となるOリングSの断面図を示す。
【0016】
本実施例において、リング状シール吸着ノズル100は、OリングSを吸引・吸着させたノズル先端を、OリングSの装着対象であるワークW(図5を参照して後述する。)の表面に形成されるOリング装着用凹部W1(例えば、円柱状である。)に挿入しながら、そのOリング装着用凹部W1の底面に形成されたリング状装着溝W2にOリングSを装着できるよう、そのOリング装着用凹部W1の側壁面に沿ってZ1−Z2軸方向に延びる円柱状の本体部105を有する。なお、本体部105は、そのOリング装着用凹部W1の形状に応じた、円柱以外の他の形状(例えば、角柱である。)を有していてもよい。
【0017】
また、リング状シール吸着ノズル100は、Z2方向先端に、吸着対象となるOリングSに対向する対向部101、対向部101のZ2側の面に形成される吸着溝102、及び、吸着溝102内に形成される複数の開口部103を備える。
【0018】
対向部101は、本体部105と同様、Oリング装着用凹部W1の側壁面に沿ってZ1−Z2軸方向に延びる円柱形状を有する。なお、対向部101は、本体部105と同様、そのOリング装着用凹部W1の形状に応じた、円柱以外の他の形状(例えば、角柱である。)を有していてもよい。
【0019】
吸着溝102は、吸着対象となるOリングSのリング形状にほぼ一致するリング状の溝であり、好適には、OリングSを吸引・吸着した際に、OリングSの高さ(線径D)の半分未満を受け入れるように構成される。
【0020】
開口部103は、吸着溝102の底部に形成される、真空装置に繋がる吸着エア流路104と連通する開口であり、例えば、吸着溝102の円周に沿って等間隔に10個形成されるが、OリングSを安定的に吸引・吸着できるのであれば、より少ない数であってもよく、より多い数であってもよい。
【0021】
なお、対向部101の表面は、テフロンコーティング又はシルバーストーンコーティング等による低摩擦化処理が施されていてもよい。OリングSが対向部101に密着して離れにくくなるのを防止するためである。
【0022】
汎用組付機10は、このようなリング状シール吸着ノズル100を用い、汎用組付機10に隣接して配置されるOリング供給機20(図1参照。)により所定位置に一つずつ正確に供給配置されるOリングSを吸引・吸着し、その後、同じく汎用組付機10に隣接して配置されるコンベア30(図1参照。)により所定位置に一つずつ正確に搬送配置されるワークWまでその吸引・吸着したOリングSを運搬し、ワークWの表面に形成されたOリング装着用凹部W1の底面にあるリング状装着溝W2にOリングSを装着する。
【0023】
図4は、図1の破線円CR1で示す領域を拡大した、Oリング供給機20を斜め上方から見た上面斜視図を示し、Oリング供給機20は、例えば、振動型部品供給装置(図示せず。)によりOリング供給溝21に沿ってOリングSをX1方向に順々に送り込み、Oリング供給溝21のX1方向先端に位置するOリングSがリング状シール吸着ノズル100により吸引・吸着されコンベア30上のワークWに向けて運搬される度に、その運搬されたOリングSが占めていた空間を埋めるように、次のOリングSをその空間に押し込むようにする。
【0024】
図5は、リング状シール吸着ノズル100、OリングS、及びワークWの断面図であり、図6は、組付部材M、OリングS、及びワークWの断面図である。
【0025】
図5は、リング状シール吸着ノズル100の円柱状の本体部105がワークWの表面に形成された円柱状のOリング装着用凹部W1に挿入され、リング状シール吸着ノズル100に吸引・吸着されたOリングSが、Oリング装着用凹部W1の底面にあるリング状装着溝W2に装着される直前の状態を示す。
【0026】
また、図6は、OリングSがリング状装着溝W2に装着された後、別の組付機(図示せず。)によって組付部材MがワークWに組付けられる直前の状態を示す。
【0027】
図5及び図6で示されるように、ワークWは、リング状装着溝W2のリング内側に導管W3を備え、また、組付部材Mは、リング状装着溝M2のリング内側に導管M3を備える。
【0028】
リング状装着溝W2に装着されたOリングSは、組付部材MがワークWに組付けられたときに、組付部材Mに穿設された導管M3とワークWに穿設された導管W3とを密閉的に接続させるようにする。
【0029】
次に図7を参照しながら、汎用組付機10がOリング供給機20のOリング供給溝21内に正確に配置されたOリングSをリング状シール吸着ノズル100により吸引・吸着し、その吸引・吸着したOリングSをコンベア30上のワークWの表面に形成されるOリング装着用凹部W1まで運搬する際のその汎用組付機10の動作について説明する。
【0030】
図7(A)は、リング状シール吸着ノズル100が、Oリング供給溝21のX1方向先端に位置するOリングSの真上に配置された状態を示し、この状態において、汎用組付機10は、Z軸ステージ13を作動させてリング状シール吸着ノズル100をZ2方向に移動させ(下降させ)、リング状シール吸着ノズル100とOリングSとを接触させるようにする。
【0031】
図7(B)は、リング状シール吸着ノズル100が、Oリング供給溝21のX1方向先端に位置するOリングSを吸引・吸着した状態を示し、この状態において、汎用組付機10は、Z軸ステージ13を作動させてリング状シール吸着ノズル100をZ1方向に移動させる(上昇させる。)。
【0032】
図7(C)は、OリングSを吸引・吸着したリング状シール吸着ノズル100が、図7(A)と同じ配置になったことを示し、この状態において、汎用組付機10は、X軸ステージ12を作動させてリング状シール吸着ノズル100をX1方向(ワークWが存在する方向)に移動させる。
【0033】
図7(D)は、リング状シール吸着ノズル100が、コンベア30上のワークWの表面に形成されたOリング装着用凹部W1の真上に配置された状態を示し、この状態において、汎用組付機10は、Z軸ステージ13を作動させてリング状シール吸着ノズル100をZ2方向に移動させ(下降させ)、リング状シール吸着ノズル100(OリングS)をOリング装着用凹部W1に挿入する。
【0034】
図7(E)は、リング状シール吸着ノズル100が、Oリング装着用凹部W1の底面に形成されたリング状装着溝W2にOリングSを装着した状態を示し、この状態において、汎用組付機10は、真空装置による吸引を停止させた後、Z軸ステージ13を作動させてリング状シール吸着ノズル100をZ1方向に移動させる(上昇させる。)。このとき、真空装置は、吸引を停止させる際に僅かに正圧を発生させることで真空破壊を行うようにしてもよい。
【0035】
図7(F)は、OリングSをOリング装着用凹部W1の底面に形成されたリング状装着溝W2に装着した後のリング状シール吸着ノズル100が、図7(D)と同じ配置になった状態を示し、この状態において、汎用組付機10は、X軸ステージ12を作動させてリング状シール吸着ノズル100をX2方向に移動させて図7(A)の状態に戻り、次のOリングSの吸引・吸着に備えるようにする。
【0036】
次に、図8〜図11を参照しながら、吸着溝102の様々な断面形状について説明する。図8〜図11は何れも、図3の破線円CR2で表される領域を拡大して示す断面図であり、OリングSが吸着溝102に配置されたときの状態を示す。なお、OリングSの断面は、明瞭化のために、ハッチングを用いずに表されるものとする。
【0037】
図8は、吸着溝102の一例である吸着溝102aの断面形状を示す図であり、点CCは、OリングSの中心点を示し、距離D1は、OリングSの線径を示す。
【0038】
また、点TP1、TP2は、OリングSの断面が描く円(以下、「断面円」とする。)と吸着溝102aの断面形状との間の二つの接点を示し、距離D2は、接点TP1と接点TP2との間のX1−X2軸方向の距離を示す。
【0039】
また、吸着溝102aの断面形状は、接点TP1を通るその断面円に対する接線の一部、及び、接点TP2を通るその断面円に対する接線の一部を含み、点CP1は、それら二つの接線の交点を示し、距離D3は、対向部101のZ2側の表面(以下、「対向面」とする。)と交点CP1との間のZ1−Z2軸方向の距離を示す。
【0040】
更に、角度α1は、線分CC−TP1と線分CC−TP2との間に形成される角度を示し、角度β1は、線分CP1−TP1(接点TP1を通るその断面円に対する接線)と対向面との間に形成される角度、及び、線分CP1−TP2(接点TP2を通るその断面円に対する接線)と対向面との間に形成される角度を示し、角度γ1は、線分CP1−TP1(接点TP1を通るその断面円に対する接線)と線分CP1−TP2(接点TP2を通るその断面円に対する接線)との間に形成される角度を示す。
【0041】
本実施例において、吸着溝102aは、接点TP1、TP2が何れも対向面上に配置されるように(すなわち、接点TP1、TP2が吸着溝102aの二つの側壁のそれぞれの端部に配置され、OリングSの断面円における円弧TP1−TP2の部分をリング状シール吸着ノズル100が吸引・吸着するように)、また、角度α1が180度未満(好適には、90度未満である。)となるように、角度γ1及び距離D3が決定される。
【0042】
なお、開口部103(図2参照。)の幅若しくは直径は、距離D2よりも小さく、OリングSが吸着溝102a内に吸引・吸着された際に吸着溝102a内でOリングSと開口部103との間に隙間を残すよう構成され、OリングSの吸着面積が十分な大きさ(OリングSの断面円における円弧TP1−TP2の部分で表される大きさ)となるようにする。
【0043】
この構成により、吸着溝102aは、吸着溝の断面形状が円弧状又は矩形状となる場合(図16参照。)に比べ角度β1を比較的小さくすることができるため、リング状シール吸着ノズル100の対向部101をOリングSに押し付けながらOリングSを吸引・吸着する際にリング状シール吸着ノズル100がOリングSの表面を損傷する可能性を低減させることができ(その損傷防止性を向上させることができ)、また、サイズのバラツキを含むOリングSをより柔軟に且つ安定的に吸引・吸着することができる(その吸引・吸着性を向上させることができる。)。
【0044】
また、吸着溝102aは、Oリング供給溝21内に配置されたOリングSの位置が所定位置(OリングSの断面円が吸着溝102aの断面形状との間の二つの接点で接触する位置である。)から僅かにずれている場合であっても、リング状シール吸着ノズル100の対向部101をOリングSに押し付けることにより、リング状シール吸着ノズル100によるOリングSの表面の損傷を防止しながらOリングSをその所定位置に導く(スライドさせる)ので、OリングSに対する芯出し性を向上させることができる。
【0045】
また、吸着溝102aは、溝幅D2を、OリングSを吸引・吸着するための必要最小限の大きさとしながら、OリングSの断面円における(90度未満の角度α1に相当する)円弧TP1−TP2の部分をリング状シール吸着ノズル100が吸引・吸着するように構成されるので、対向部101が装着対象であるワークWにおけるOリング装着用凹部W1の底面と接触するのを確実に防止することができる。
【0046】
図9は、吸着溝102の別の一例である吸着溝102bの断面形状を示す図であり、対向面と交点CP1との間のZ1−Z2軸方向の距離D5が図8の距離D3に比べて大きくなる点、及び、接点TP1、TP2が対向面上に配置されず(接点TP1、TP2が吸着溝102bの二つの側壁のそれぞれの端部に配置されず)吸着溝102bの二つの側壁のそれぞれの中間に配置される点において、図8の場合と相違するが、その他の点で図8の場合と共通する。
【0047】
そのため、溝幅(吸着溝102bの二つの側壁のそれぞれの端部間の距離)を示す距離D4は、接点TP1と接点TP2との間のX1−X2軸方向の距離を示す距離D2よりも大きなものとなっている。
【0048】
この構成により、吸着溝102bは、OリングSのサイズが公差範囲内においてばらつく場合であっても、OリングSが吸引・吸着された場合に、その二つの側壁のうちの少なくとも一方がOリングSの断面円に対する接線となるよう構成されるので、他の断面形状に比べて、サイズのバラツキを有するOリングSをより柔軟に且つ安定的に吸引・吸着することができる(その吸引・吸着性を向上させることができる。)。
【0049】
また、吸着溝102bは、図8の吸着溝102aの溝幅D2よりも大きい溝幅D4を有するため、リング状シール吸着ノズル100の対向部101をOリングSに押し付けながらOリングSを吸引・吸着する際にOリングSの表面を損傷する可能性を更に低減させることができる(その損傷防止性を更に向上させることができる。)。
【0050】
図10は、吸着溝102の更に別の一例である吸着溝102cの断面形状を示す図であり、点TP3、TP4は、OリングSの断面円と吸着溝102cの断面形状との間の二つの接点を示し、距離D6は、接点TP3と接点TP4との間のX1−X2軸方向の距離を示す。
【0051】
また、吸着溝102cの断面形状は、接点TP3を通るその断面円に対する接線の一部、及び、接点TP4を通るその断面円に対する接線の一部を含み、点CP2は、それら二つの接線の交点を示し、距離D8は、対向面と交点CP2との間のZ1−Z2軸方向の距離を示す。
【0052】
更に、角度α2は、線分CC−TP3と線分CC−TP4との間に形成される角度を示し、角度β2は、線分CP2−TP3(接点TP3を通るその断面円に対する接線)と対向面との間に形成される角度、及び、線分CP2−TP4(接点TP4を通るその断面円に対する接線)と対向面との間に形成される角度を示し、角度γ2は、線分CP2−TP3(接点TP3を通るその断面円に対する接線)と線分CP2−TP4(接点TP4を通るその断面円に対する接線)との間に形成される角度を示す。
【0053】
図10の吸着溝102cは、角度β2が角度β1よりも小さく、角度γ2が角度γ1よりも大きい点において、図9の吸着溝102bと相違するが、その他の点で図9の吸着溝102bと共通する。
【0054】
そのため、接点TP3、TP4が対向面上に配置されず(接点TP3、TP4が吸着溝102cの二つの側壁のそれぞれの端部に配置されず)吸着溝102cの二つの側壁のそれぞれの中間に配置されるので、吸着溝102cの二つの側壁のそれぞれの端部間のX1−X2軸方向の距離を示す距離D7は、接点TP3と接点TP4との間のX1−X2軸方向の距離を示す距離D6よりも大きなものとなっている。
【0055】
この構成により、吸着溝102cは、図9の吸着溝102bにおける角度β1よりも小さい角度β2を有し、その対向面と吸着溝102cの側壁とが形成する角度がより大きな角度(鈍角)となるため、リング状シール吸着ノズル100の対向部101をOリングSに押し付けながらOリングSを吸引・吸着する際にリング状シール吸着ノズル100がOリングSの表面を損傷する可能性を更に低減させることができる(その損傷防止性を更に向上させることができる。)。
【0056】
また、吸着溝102cは、その断面形状により、リング状シール吸着ノズル100に吸引・吸着されたOリングSのリング中心と、ワークWのOリング装着用凹部W1の底面に形成されたリング状装着溝W2のリング中心とが多少ずれている場合であっても、その吸引・吸着されたOリングSをリング状装着溝W2に押し付けそのリング状装着溝W2にぴったりと嵌るように導く(スライドさせる)ことができ、OリングSのリング状装着溝W2に対する組付性を向上させることができる。この場合、真空装置による吸引は、OリングSをリング状装着溝W2に押し付けたときにその作動が終了させられてもよい。OリングSのスライドをより容易にするためである。なお、この効果は、接点TP3、TP4が対向面上に配置されている場合にも得られるものである。
【0057】
図11は、吸着溝102の更に別の一例である吸着溝102dの断面形状を示す図であり、点TP5、TP6は、OリングSの断面円と吸着溝102dの断面形状との間の二つの接点を示し、距離D9は、接点TP5と接点TP6との間のX1−X2軸方向の距離を示す。
【0058】
また、吸着溝102dの断面形状は、接点TP5を通るその断面円に対する接線の一部、及び、接点TP6を通るその断面円に対する接線の一部を含み、点CP3は、それら二つの接線の交点を示し、距離D11は、対向面と交点CP3との間のZ1−Z2軸方向の距離を示す。
【0059】
更に、角度α3は、線分CC−TP5と線分CC−TP6との間に形成される角度を示し、角度β1(図8及び図9の場合と同じ角度である。)は、線分CP3−TP5(接点TP5を通るその断面円に対する接線)と対向面との間に形成される角度を示し、角度β2(図10の場合と同じ角度である。)は、線分CP3−TP6(接点TP6を通るその断面円に対する接線)と対向面との間に形成される角度を示し、角度γ3は、線分CP3−TP5(接点TP5を通るその断面円に対する接線)と線分CP3−TP6(接点TP6を通るその断面円に対する接線)との間に形成される角度を示す。
【0060】
図11の吸着溝102dは、角度β1と角度β2とが異なる点において、図9の吸着溝102b及び図10の吸着溝102cと相違するが、その他の点で図9の吸着溝102b及び図10の吸着溝102cと共通する。
【0061】
そのため、接点TP5、TP6が対向面上に配置されず(接点TP5、TP6が吸着溝102dの二つの側壁のそれぞれの端部に配置されず)吸着溝102dの二つの側壁のそれぞれの中間に配置されるので、吸着溝102dの二つの側壁のそれぞれの端部間のX1−X2軸方向の距離を示す距離D10は、接点TP5と接点TP6との間のX1−X2軸方向の距離を示す距離D9よりも大きなものとなっている。
【0062】
この構成により、吸着溝102dは、比較的大きな角度β1により、その外径が標準サイズよりも大きい側にばらつくOリングSに対する芯出し性を向上させながら、比較的小さな角度β2により、その外径が標準サイズよりも小さい側にばらつくOリングSに対するその吸引・吸着性及びその損傷防止性を向上させることができる。
【0063】
なお、図11は、X2側の角度β1がX1側の角度β2よりも大きい場合について説明するが、この説明は、X2側の角度β1がX1側の角度β2よりも小さい場合であっても同様に適用されるものとする。
【0064】
この場合、吸着溝102dは、比較的小さな角度β1により、その外径が標準サイズよりも大きい側にばらつくOリングSに対するその吸引・吸着性及びその損傷防止性を向上させながら、その外径が標準サイズよりも小さい方にばらつくOリングSに対する芯出し性を向上させることができる。
【0065】
なお、これらの効果は、接点TP5、TP6が対向面上に配置されている場合にも得られるものである。
【0066】
次に、図12を参照しながら、リング状シール吸着ノズル100の別の一例であるリング状シール吸着ノズル100xについて説明する。
【0067】
図12は、リング状シール吸着ノズル100xが吸着対象となるOリングSを吸引・吸着した際の、リング状シール吸着ノズル100x及びOリングSの断面図を示し、対向部101xの対向面がOリングSの基準面(ここでは水平面である。)に対して角度δ1だけ傾斜している点、及び、対向部101xの直径B1がOリングSの外径B2よりも小さい点で、図3で示されるリング状シール吸着ノズル100と相違するが、その他の点で共通する。
【0068】
この構成により、リング状シール吸着ノズル100xは、対向部101xの中心部をZ2方向(OリングSのリング内)に突出させるので、OリングSに対する芯出し性を更に向上させることができる。
【0069】
また、リング状シール吸着ノズル100xは、その対向部101xの直径B1がOリングSの外径B2よりも小さいため、OリングSの装着対象であるワークWの表面に形成される円柱状のOリング装着用凹部W1の直径がOリングSの外径B2にほぼ等しい場合であっても、対向部101xの側壁をOリング装着用凹部W1の側壁に接触させることなく、OリングSをそのOリング装着用凹部W1の底面に形成されたリング状装着溝W2に円滑に装着することができ、Oリング装着用凹部W1の側壁をZ1側に開くテーパー形状にする必要もなく、OリングSのリング状装着溝W2に対する組付性を更に向上させることができる。
【0070】
次に、図13〜図15を参照しながら、吸着溝102の更に別の一例である吸着溝102e〜102gについて説明する。なお、図13〜図15は、図8〜図11と同様、吸着溝102の断面形状を説明するための図であり、OリングSの断面は、明瞭化のために、ハッチングを用いずに表されるものとする。
【0071】
図13において、吸着溝102eは、接点TP7、TP8から延びる対向面の断面形状がそれら接点TP7、TP8から滑らかに続く曲線で構成される点に特徴を有し、この構成により、その損傷防止性を更に向上させることができる。
【0072】
また、図14において、吸着溝102fは、その断面形状が、OリングSの断面円に対する二つの接線(接点TP9、TP10における二つの接線である。)のそれぞれの一部を含む二つの線分とは別に更に二つの線分(吸着溝102fの底面を構成する二つの線分である。)を有する点に特徴を有し、この構成により、OリングSが吸着溝102f内に吸引・吸着された際のOリングSと吸着溝102fとの間の体積を低減させ、その吸引・吸着性を向上させることができる。
【0073】
また、図15において、吸着溝102gは、角度β3が角度β4より小さく、二つの側壁のうちの一方の端部(接点TP11)を形成する第一の対向面の第一のレベル(Z1−Z2軸方向の位置)と、二つの側壁のうちの他方の端部(接点TP12)を形成する第二の対向面の第二のレベル(Z1−Z2軸方向の位置)とが異なる点に特徴を有し、第二のレベルを有する第二の対向面がOリングSのリング内に突出することにより、OリングSに対する芯出し性を向上させることができ、また、比較的小さな角度β3により、その外径が標準サイズよりも大きい側にばらつくOリングSに対するその吸引・吸着性及びその損傷防止性を向上させることができる。
【0074】
次に、図16を参照しながら、本発明の実施例に係る三角形状の断面形状を有する吸着溝102と、比較例に係る矩形状の断面形状を有する吸着溝102S、及び円弧状の断面形状を有する吸着溝102Rとの違いについて説明する。
【0075】
図16(A)は、三つの吸着溝102、102S、102Rのそれぞれの断面形状を示す図であり、三つの吸着溝102、102S、102Rのそれぞれは、比較のため、深さ及び幅が共通であるものとする。
【0076】
図16(B)は、標準サイズのOリングSが三つの吸着溝102、102S、102Rのそれぞれに吸引・吸着された状態を示し、OリングSは、例えば、内径1.8±0.1mm、線径1.0±0.05mmであり、その公差範囲内における最大外径が4.00mm(最大内径(1.8+0.1=1.9mm)と最大線径の2倍((1.0+0.05)×2=2.10mm)との和)、最小外径が3.60mm(最小内径(1.8−0.1=1.7mm)と最小線径の2倍((1.0−0.05)×2=1.90mm)との和)であるものとする。
【0077】
また、図16(C)は、その公差範囲内における最大外径を有するOリングSが三つの吸着溝102、102S、102Rのそれぞれに吸引・吸着された状態を示し、図16(D)は、その公差範囲内における最小外径を有するOリングSが三つの吸着溝102、102S、102Rのそれぞれに吸引・吸着された状態を示す。
【0078】
なお、図16(C)及び図16(D)は、比較のため、矩形状の吸着溝102S及び円弧状の吸着溝102Rの内側に、三角形状の吸着溝102が描く輪郭を破線で示すものとする。
【0079】
図16(B)で示されるように、三つの吸着溝102、102S、102Rのそれぞれによって標準サイズのOリングSを吸引・吸着する場合、三つの吸着溝102、102S、102Rのそれぞれの断面形状とOリングSの断面円とが複数の接点において接触するため、リング状シール吸着ノズルは、OリングSを確実に吸引・吸着することができる。
【0080】
一方、図16(C)で示されるように、三つの吸着溝102、102S、102Rのそれぞれによって最大外径のOリングSを吸引・吸着する場合には、三つの吸着溝102、102S、102Rのそれぞれの断面形状とOリングSの断面円とが一つの接点のみで接触し、別の場所で隙間CL1、CL2、CL3のそれぞれを形成した状態で、リング状シール吸着ノズルは、その最大外径のOリングSを吸引・吸着することとなる。
【0081】
この場合において、三角形状の吸着溝102に関する隙間CL1は、矩形状の吸着溝102Sに関する隙間CL2及び円弧状の吸着溝102Rに関する隙間CL3よりも小さいものとなり、吸着溝102は、吸着溝102S及び吸着溝102Rよりも安定的にOリングSを吸引・吸着できることとなる。
【0082】
同様に、図16(D)で示されるように、三つの吸着溝102、102S、102Rのそれぞれによって最小外径のOリングSを吸引・吸着する場合にも、三つの吸着溝102、102S、102Rのそれぞれの断面形状とOリングSの断面円とが一つの接点のみで接触し、別の場所で隙間CL4、CL5、CL6のそれぞれを形成した状態で、リング状シール吸着ノズルは、その最小外径のOリングSを吸引・吸着することとなる。
【0083】
この場合においても、三角形状の吸着溝102に関する隙間CL4は、矩形状の吸着溝102Sに関する隙間CL5及び円弧状の吸着溝102Rに関する隙間CL6よりも小さいものとなり、吸着溝102は、吸着溝102S及び吸着溝102Rよりも安定的にOリングSを吸引・吸着できることとなる。
【0084】
このように、三角形状の吸着溝102は、OリングSのサイズが公差範囲内でばらつく場合であっても、矩形状の吸着溝102S及び円弧状の吸着溝102Rに比べ、より安定的にOリングSを吸引・吸着することができ、その吸引・吸着性を向上させることができる。
【0085】
以上より、リング状シール吸着ノズル100、100xは、吸引・吸着されるOリングSを高精度に供給配置するための高精度のOリング供給機を用いることなく、ノズル単体でOリングSの芯出しを高精度に行うことができ、OリングSをより柔軟に且つ安定的に吸引・吸着することができる。
【0086】
また、リング状シール吸着ノズル100、100xは、他の部材を用いることなくノズル単体でOリングSの損傷防止性、芯出し性、吸引・吸着性、及び組付性を向上させるので、異物を発生させることがなく、安価で且つ安定的なOリングSの吸引・吸着を実現させることができる。
【0087】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0088】
例えば、図8〜図11、及び図13〜図15の実施例において、リング状シール吸着ノズル100の対向部101は、その幅又は直径がOリングSの外径よりも大きいものとして説明されているが、その幅又は直径がOリングSの外径よりも小さくなるように構成されてもよい。
【0089】
また、実施例のそれぞれで個別に説明された特徴は、他の任意の実施例に任意の組み合わせで導入され得るものとする。
【符号の説明】
【0090】
10・・・汎用組付機 11・・・基盤 12・・・X軸ステージ 13・・・Z軸ステージ 20・・・Oリング供給機 21・・・Oリング供給溝 30・・・コンベア 100、100x・・・リング状シール吸着ノズル 101、101x・・・対向部 102、102a〜102g、102S、102R・・・吸着溝 103・・・開口部 104・・・吸着エア流路 105・・・本体部 S・・・Oリング M・・・組付部材 M2・・・リング状装着溝 M3・・・導管 W・・・ワーク W1・・・Oリング装着用凹部 W2・・・リング状装着溝 W3・・・導管
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開平8−47827号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状シールを吸着するリング状シール吸着ノズルであって、
吸着対象となるリング状シールと対向する対向部と、
前記対向部に形成される、前記リング状シールの形状に対応するリング状の吸着溝と、を備え、
前記吸着溝の断面形状は、前記リング状シールの断面形状が描く曲線に対する接線となる二つの線分を含む、
ことを特徴とするリング状シール吸着ノズル。
【請求項2】
前記吸着溝の幅は、前記吸着対象となるリング状シールの太さよりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載にリング状シール吸着ノズル。
【請求項3】
前記吸着溝は、該吸着溝の断面形状と前記リング状シールの断面形状との間の二つの接点が該吸着溝の断面形状の二つの縁部に位置付けられるよう、構成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載にリング状シール吸着ノズル。
【請求項4】
前記吸着溝が形成される前記対向部の表面は、前記リング状シールの基準面に対して傾斜する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載にリング状シール吸着ノズル。
【請求項5】
前記対向部は、円柱状であり、該円柱の直径は、前記リング状シールの外径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載にリング状シール吸着ノズル。
【請求項6】
前記リング状シールは、Oリングであり、
前記吸着溝の断面形状は、前記Oリングの線径で定められる円に対する接線となる二つの線分を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載にリング状シール吸着ノズル。
【請求項7】
前記対向部は、低摩擦化処理が施される、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載にリング状シール吸着ノズル。
【請求項8】
前記吸着溝は、該吸着溝内に形成された開口及び吸着エア流路を介して真空装置に連通され、該吸着溝の断面形状と前記リング状シールの断面形状との間の二つの接点間の距離が前記開口の幅より大きくなるよう、構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載にリング状シール吸着ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−24892(P2012−24892A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167118(P2010−167118)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】