説明

リング精紡機の合成樹脂製ディスクセパレータ

リング精紡機において、ディスクセパレータ1の縁部(3,5)に切れた糸の端が衝突することによる磨耗に対する補強を容易にするために、ディスクセパレータに挟み留め可能であり、またはその他の方法で簡単に固定でき、または磨耗もしくは破損の際に交換可能である金属製のガードバー(8)で縁部を保護することを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも前縁部が耐摩耗性の補強部を備えた、リング精紡機の合成樹脂製ディスクセパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リング精紡機の大多数はディスクセパレータを備えており、このディスクセパレータは、スピンドルの間のリング台の上方に、巻糸体の高さで配置されている。ディスクセパレータの役割は、ときおり広く膨らんだ巻き糸が隣接する紡糸部に接触すること、および隣接する巻き糸に切れた糸の端が叩きつけられることを防止することである。これは隣接する巻き糸の糸を切断し、さらに糸の切断の続発に発展する恐れがある。
【0003】
現在のディスクセパレータはほとんどが合成樹脂製である。糸が切れると、しばしば巻糸体の糸の端がディスクセパレータの前縁部または後縁部に叩きつけられ、巻糸体が回転する際に縁部で引っぱられる。この場合、特に合成材料から成る糸は、ディスクセパレータの合成樹脂製の縁部に食い込み、縁部を破損させる。このような破損は、繊維くずまたは食い込んだ糸の残骸を捕らえやすく、そのことがまたさらなる糸の切断の原因になる恐れがある。
【0004】
これを防止するため、合成樹脂製のディスクセパレータの前縁部および後縁部に金属製の保護被覆材を備えることが既に知られている(特許文献1)。この目的のため縁部は肉厚になっている。この肉厚部の上にスリットが付いた金属製被覆材を被せ、被覆材の弾性で肉厚部に固定する。
【0005】
この配設では、肉厚部と金属製被覆材の間の許容差を狭くする必要があり、また弾力性のある金属製被覆材が必要になる。さらにこの配設は被覆材を被せることができる真っ直ぐな縁部を前提条件としており、したがってディスクセパレータに最適な形状付与の可能性が狭められている。
【特許文献1】特開平10−204732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、容易で融通の利く解決手段を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この解決手段は、主請求項の特徴部分に挙げた特徴から成る。
【0008】
ガードバーをディスクセパレータの縁部の前に配置することによって、縁部を任意の形状にすることができ、特に曲げることができる。ディスクセパレータにガードバーを挟み留めで固定することで、磨耗または破損の際の交換が容易になる。従属請求項には、ガードバーの様々な形態、およびガードバーのディスクセパレータへの固定に関する変形が示されている。
【0009】
図には本発明の実施形態が概略的に示してある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図にはディスクセパレータ1が示してあり、ディスクセパレータの平面2は、その前縁部3、その下縁部4、およびその後縁部5の一部が肉厚部6により補強されている。縁部の後ろの領域ではディスクセパレータはほぞ孔状の止め具7で終端しており、この止め具によって、ディスクセパレータを図示しない固定バーに固定することができる。
【0011】
図1および図2の実施形態では、ディスクセパレータ1には、前縁部3の一部分上でガードバー8が所属しており、このガードバーは、金属ワイヤ、特にスチールワイヤ製の互いに平行に設けられた2つの分枝9および10から成る。ワイヤバーの両方の分枝9,10は、ほぞ孔11を介して互いに接続されており、このほぞ孔は、ディスクセパレータ1の下縁部4のほぞ12に挟み留めされている。そこから両方の分枝がディスクセパレータの前縁部3に沿って上方に延びており、そこで両方の分枝は再びほぞ孔13を形成し、このほぞ孔により、両分枝はディスクセパレータの平面2の互いに相対する側から突出したほぞ14を把持する。
【0012】
ほぞ12は同時に、リング台上でディスクセパレータ1を支える役割をし、これによってディスクセパレータの正確な位置決めは確実に行われる。
【0013】
ほぞ12にほぞ孔11を、およびほぞ14にほぞ孔13を挟み留めすることによって、ガードバー8がディスクセパレータに固定されている。これらのほぞは、末端に平らな肉厚部を有することができ、これらの肉厚部が、ほぞ孔11または13を固定している。ガードバーは、容易にほぞ12および14から再び取り外して、別のものと交換することができる。
【0014】
図2の実施形態において、ガードバー8は、ディスクセパレータ1の前縁部3の前で僅かな間隔をおくように形成されている。
【0015】
図3から明らかなように、ガードバー8’は、ディスクセパレータ1の前縁部3および/または下縁部4の肉厚部6における孔15,16に差し込み可能な、単一のワイヤバーから成っていてもよい。しかし分枝を1つだけ備えたこの種のガードバーも、選択的にほぞ孔を有することができ、これらのほぞ孔によって、ガードバーはディスクセパレータ1のほぞに挟み留め可能である。
【0016】
図4には、ガードバー8”が相応するように曲げられた金属薄板から成る実施形態が示されており、この金属薄板はその下端部で、開放または閉鎖されたほぞ孔11’で終端しており、このほぞ孔によって、ガードバーはほぞ12にクリップ留め可能である。ガードバーの上端部には巻き込み部17があり、この巻き込み部は、その側からディスクセパレータ1の前縁部3の肉厚部6における陥凹部18に差し込み可能である。
【0017】
図5および図6に示した変形実施形態では、板金から作製された図4のガードバー8”はその下端部において及びその上側の領域において、保持クリップ19を備えており、この保持クリップによって、ガードバーがディスクセパレータ1の肉厚部6の上に挟み留め可能である。
【0018】
単一のワイヤ、または2つの分枝を有するワイヤバー、または金属薄板から成るガードバー8,8’,8”を、その他の極めて異なる方法でディスクセパレータ1に固定できることは自明である。例えば、ガードバーをディスクセパレータにねじ止めしてもよい。ガードバーの下端部および上端部への上記の様々な固定方法を組み合わせることも可能であり、多くの場合に有利である。
【0019】
詳しくは述べなかったが、ディスクセパレータ1の後縁部5にもガードバーを備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態の斜視図である。
【図2】第2の実施形態を図1と同様に示した図である。
【図3】別の実施形態を図1および図2と同様に示した図である。
【図4】別の実施形態を図1および図2と同様に示した図である。
【図5】図4による実施形態の変形を部分的に示した図である。
【図6】図4の面A−Aの横断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ディスクセパレータ
2 平面
3 前縁部
4 下縁部
5 後縁部
6 肉厚部
7 止め具
8 ガードバー
8’ ガードバー
8” ガードバー
9 分枝
10 分枝
11 ほぞ孔
11’ほぞ孔
12 ほぞ
13 ほぞ孔
14 ほぞ
15 孔
16 孔
17 巻き込み部
18 陥凹部
19 保持クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前縁部が耐摩耗性の補強部を備えた、リング精紡機の合成樹脂製ディスクセパレータにおいて、
少なくともディスクセパレータ(1)の前縁部(3)の前に、金属製のガードバー(8,8’,8”)が固定されていることを特徴とするディスクセパレータ。
【請求項2】
ガードバー(8,8’)が、金属ワイヤから成ることを特徴とする請求項1記載のディスクセパレータ。
【請求項3】
ガードバー(8’)が、金属ワイヤ製の単一バーから成ることを特徴とする請求項2記載のディスクセパレータ。
【請求項4】
ガードバー(8)が、金属ワイヤ製で、2つの分枝(9,10)を有する二重バーから成ることを特徴とする請求項2記載のディスクセパレータ。
【請求項5】
ガードバー(8”)が、金属薄板から成ることを特徴とする請求項1に記載のディスクセパレータ。
【請求項6】
ガードバー(8,8”)が、その下端部にほぞ孔(11,11’)を有しており、前記ほぞ孔によって、ガードバーがディスクセパレータ(1)のほぞ(12)に挟み留め可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のディスクセパレータ。
【請求項7】
ガードバー(8’)、または二重のガードバー(8)の両方の分枝(9,10)のそれぞれが、上端部にほぞ孔(13)を有しており、前記ほぞ孔によって、ガードバーがディスクセパレータ(1)の1つのほぞ、またはディスクセパレータの両方の側で向かい合っている2つのほぞ(14)に挟み留め可能であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のディスクセパレータ。
【請求項8】
ワイヤ状の分枝を1つだけ有するガードバー(8’)が、その端部を、ディスクセパレータ(1)の肉厚部(6)における孔(15,16)に差し込み可能であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のディスクセパレータ。
【請求項9】
板金から作られたガードバー(8”)が2つの保持クリップ(19)を有しており、前記保持クリップによって、ガードバーがディスクセパレータ(1)の肉厚部(6)に挟み留め可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のディスクセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−517165(P2008−517165A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536075(P2007−536075)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010948
【国際公開番号】WO2006/042671
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(504011069)ザウラー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフト (17)
【Fターム(参考)】