説明

リン酸カルシウム骨セメント、その前駆体およびその作製方法

【課題】
リン酸カルシウム骨セメント、その前駆体および作製方法を提供する。
【解決手段】
本発明の作製方法は、(a)Ca/P原子比が1.33未満である低いCa/P原子比のリン酸カルシウムを酸性溶液に浸す工程、(b)前記酸性溶液に、リン酸カルシウム化合物、または、カルシウムイオン含有化合物およびリン酸イオン含有化合物、を加えて反応溶液を得る工程(c)反応溶液を静置して低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの表面にナノ結晶を成長させる工程、(d)工程(c)の溶液をろ過および乾燥して、表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末を得る工程、ならびに、(e)工程(d)の粉末と高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末とを混合する工程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨セメントに関し、より詳細にはリン酸カルシウム骨セメント(CPC)に関する。なお、本出願は、出願日を2009年6月12日とする台湾特許出願第098119682号の優先権を主張するものであり、その全体がここに参照として組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
リン酸カルシウム骨セメント(CPC)は、優れた生体適合性および骨伝導性の特徴を持つことから、骨充填材料として用いられている。
1983年にBrownおよびChowは、リン酸四カルシウム(TTCP)および無水リン酸水素カルシウム(DCPA)粉末を混合することより得られる粉末混合物を開示した。
その混合溶液を希釈リン酸イオン含有溶液中に入れると、ハイドロキシアパタイト(HA)生成物相が生じる。CPCの関連技術として、特許文献1〜4を参照することができる。
しかし、上述のように用いられてはいるものの、臨床的に使用される際にCPCには、(1)硬化時間(setting time)が長い、(2)機械強度が低い、(3)人体組織に吸収されにくい、といった不備がある。
よって、臨床的に適用可能で、上述した不備を解消できる優れたCPCを開発することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7204876号明細書
【特許文献2】米国特許第7186294号明細書
【特許文献3】米国特許第6960249号明細書
【特許文献4】米国特許第6379453号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した事情に鑑みて、本発明の目的は、リン酸カルシウム骨セメント、その前駆体およびその作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、リン酸カルシウム骨セメントの作製方法であって、(a)Ca/P原子比が1.33未満である低いCa/P原子比のリン酸カルシウムを酸性溶液に浸す工程、(b)前記酸性溶液に、リン酸カルシウム化合物、または、カルシウムイオン含有化合物およびリン酸イオン含有化合物、を加えて反応溶液を得る工程、(c)反応溶液を静置して、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの表面にナノ結晶を成長させる工程、(d)工程(c)の溶液をろ過および乾燥して、表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末を得る工程、ならびに、(e)工程(d)の粉末と高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末とを混合する工程、を含むリン酸カルシウム骨セメントの作製方法を提供する。
【0006】
本発明はまた、表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末であって、該低いCa/P原子比が1.33未満であるリン酸カルシウム粉末と、高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末であって、該高いCa/P原子比が1.33以上であるリン酸カルシウム粉末と、を含むリン酸カルシウム骨セメント前駆体も提供する。
【0007】
本発明はさらに、リン酸カルシウム骨セメントであって、表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末と、高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末と、を含み、高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末と低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末とを混合することでリン酸カルシウム骨セメントが形成され、リン酸カルシウム骨セメントが二相(biphasic)または多相(multiphasic)の生成物相を有するリン酸カルシウム骨セメントをも提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリン酸カルシウム骨セメントは、その低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの表面上のナノ結晶が、硬化時間を短縮するだけでなく、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムが擬似体液中で崩壊(dispersing)するのを防ぐことができる。また、本発明のリン酸カルシウム骨セメントの二相または多相の生成物相によって、例えばアパタイト(HA)のような単一の塩基性相を有する従来技術のリン酸カルシウム骨セメントとは対照的に、人体組織に容易に吸収されるようになる。さらに、当業者は、臨床試験において埋め込む位置に応じ、本発明の酸性および塩基性生成物相の比率を調整することで骨の再生(osteo-regeneration)および材料の吸収率(biosorption rate)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1のCPCのTEM図(装置の型番が、JEOL JEM−3010である)の明視野像(bright field image)を示している。
【図2】図2は、実施例1のCPCのTEM図(装置の型番が、JEOL JEM−3010である)の暗視野像(dark field image)を示している。
【図3】図3は、実施例1のCPCのTEM図の制限視野回折図(selected area diffraction, SAD)を示している。
【図4】図4は、本発明によるCPCの制限視野回折図(selected area diffraction,SAD)を示している。
【図5】図5Aから図5Bは、本発明によるCPCのX線回折像 (Rigaku D-max IIIV X線回折装置、リガク社製)を示している。(□:DCPA,▼:DCPD,▽:HA)
【図6】図6は、本発明によるCPCの圧縮強度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照にしながら、以下の実施形態においてより詳細な説明を行う。
添付の図面を参照に下記の詳細な説明および実施例を読めば、本発明をより完全に理解することができる。
以下の記載は本発明を実施するための最良の形態である。この記載は本発明の主要な原理を説明するためのものであり、限定の意味で解されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照に判断されなくてはならない。
【0011】
本発明は、リン酸カルシウム骨セメントの作製方法を提供する。該作製方法は工程(a)から(e)を含む。該方法は、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムであって、該低いCa/P原子比が1.33未満であるリン酸カルシウムを酸性溶液に浸す工程(a)から始める。例えば、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムとしては、無水リン酸水素カルシウム(dicalcium phosphate anhydrous ,DCPA,CaHPO)、リン酸水素カルシウム二水和物(dicalcium phosphate dihydrate,DCPD,CaHPO・2HO)、リン酸二水素カルシウム(monocalcium phosphate,MCPM,Ca(HPO・HO)、無水リン酸二水素カルシウム(monocalcium phosphate anhydrate,MCPA,Ca(HPO)、リン酸ナトリウムカルシウム(calcium sodium phosphates,CaNaPO)またはリン酸カリウムカルシウム(calcium potassium phosphate,CaKPO)が挙げられる。
工程(a)における「低いCa/P原子比のリン酸カルシウム(DCPA)」は、酸性溶液に浸してもわずかしか溶解しないため、イオン(高いCa/P原子比のリン酸カルシウム類は酸性溶液において高度な溶解性を有する)がナノ結晶に成長するための核となる。
【0012】
上記酸性溶液としては、HNO、HCl、HPO、HCO、NaHPO、KHPO、NHPO、CHCOOH、リンゴ酸(malic acid)、乳酸(lactic acid)、クエン酸(citric acid)、シュウ酸(oxalic acid)、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、酒石酸(tartaric acid)またはこれらの組み合わせが挙げられる。ただし、酸性溶液はここに開示した酸性溶液のみに限定されず、pH値が7未満、好ましくは5未満の水溶液も本発明の範囲に含まれる。
【0013】
上記低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの濃度の範囲は約0.01〜10g/mlである。1実施形態において、好ましい濃度は約0.125g/mlである。
【0014】
上記方法は引き続き、酸性溶液にリン酸カルシウム化合物を加えて反応溶液を得る工程(b)を行う。リン酸カルシウム化合物はイオン添加剤として用いられ、続いて起こるナノ結晶成長反応のために十分なカルシウムイオンおよびリン酸イオンを提供する。リン酸カルシウム化合物としては、リン酸八カルシウム(octacalcium phosphate,OCP,Ca(HPO(PO・5HO)、リン酸三カルシウム(tricalcium phosphate,TCP,Ca(PO)、非晶質リン酸カルシウム(amorphous calcium phosphate,ACP,Ca(PO・nHO)、カルシウム欠損ハイドロキシアパタイト(calcium-deficient hydroxyapatite,CDHA,Ca10(HPO(PO6−x(OH)2−x,0<X<1)、フルオロアパタイト(fluorapatite,FA,Ca(POF)、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,Ca10(PO(OH))、リン酸四カルシウム(tetracalcium phosphate,TTCP,Ca(POO)、リン酸カリウムカルシウム(calcium potassium phosphate,CaKPO)、リン酸ナトリウムカルシウム(calcium sodium phosphates,CaNaPO)またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0015】
リン酸カルシウム化合物の他、カルシウムイオン含有化合物およびリン酸イオン含有化合物もイオン添加剤として用いられる。例えば、カルシウムイオン含有化合物としては、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))または炭酸カルシウム(CaCO)が挙げられる。リン酸イオン含有化合物としては、五酸化リン(phosphorus pentoxide,P)、リン酸ナトリウム(sodium phosphate,NaPO)、リン酸水素二ナトリウム(sodium phosphate dibasic,NaHPO)、リン酸二水素ナトリウム(sodium dihydrogen phosphate,NaHPO)、リン酸(phosphoric acid,HPO)、リン酸カリウム(potassium phosphate,KPO)、リン酸水素二カリウム(potassium phosphate dibasic ,KHPO)、リン酸二水素カリウム(potassium dihydrogen phosphate,KHPO)、リン酸アンモニウム(ammonium phosphate,(NHPO)、リン酸水素二アンモニウム(ammonium phosphate dibasic,(NHHPO)またはリン酸二水素アンモニウム(ammonium dihydrogen phosphate,NHPO)が挙げられる。
【0016】
上記方法は引き続き、反応溶液を静置して低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの表面にナノ結晶を成長させる工程(c)を行う。ナノ結晶は室温で約5〜60分間、好ましくは約10〜50分間、さらに好ましくは約20〜30分間成長させる。ナノ結晶の幅は約1〜100nm、長さは約10〜1000nmである。
【0017】
なお、低いCa/P原子比のリン酸カルシウム(Ca/P<1.33)は酸性状態にあり、塩基性の人体組織(pH約7.4)中において不安定となるため、これで作られるリン酸カルシウム骨セメントは細胞毒性試験をパスすることができないという点に注意すべきである。低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの表面上のナノ結晶は、硬化時間を短縮するだけでなく、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムが擬似体液中で崩壊(dispersing)するのを防ぐ。
【0018】
上記方法は引き続き、工程(c)の溶液をろ過、乾燥してから、オーブンに入れて50〜100℃でベークし、表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末を得る工程(d)を行う。
【0019】
上記方法は引き続き、工程(d)の粉末を高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末と混合する工程(e)を行う。ここで、かかる高いCa/P原子比は1.33以上である(Ca/P≧1.33)。高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末としては、リン酸八カルシウム(octacalcium phosphate,OCP,Ca(HPO(PO・5HO)、リン酸三カルシウム(tricalcium phosphate,TCP,Ca(PO)、非晶質リン酸カルシウム (amorphous calcium phosphate,ACP,Ca(PO・nHO)、カルシウム欠損ハイドロキシアパタイト(calcium-deficient hydroxyapatite,CDHA,Ca10(HPO(PO6−x(OH)2−x,0<X<1)、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,Ca10(PO(OH)))、フルオロアパタイト(fluorapatite,FA,Ca(POF)またはリン酸四カルシウム(tetracalcium phosphate,TTCP,Ca(POO)が挙げられる。工程(d)の粉末と高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末とは、1/1〜3/1、より好ましくは1.5/1〜2.5/1のモル比で混合する。
【0020】
低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの粒径は約200μm未満であって、高いCa/P原子比のリン酸カルシウムの粒径よりも大きい。1実施形態において、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの粒径は約8μm、高いCa/P原子比のリン酸カルシウムの粒径は約3μmである。従来技術において、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムと高いCa/P原子比のリン酸カルシウムの粒径分布は約1μmと10μmが好ましいとされるが、本発明のリン酸カルシウム骨セメントでは、かかる好適な粒径分布は変更可能であり、限定はされないという点に留意すべきである。
【0021】
また注意すべきなのは、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムは人体組織に吸収され易いものの、過剰量になると問題が生じ得るという点である。例えば、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムのモル比が増加するにつれ、リン酸カルシウム骨セメントの機械強度は低下し、かつその細胞毒性が増加する。機械強度を許容できるレベルに保つため、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムのモル比は高いCa/P原子比のリン酸カルシウムよりも少なくされる場合が多い。従来技術に比べ、本発明のリン酸カルシウム骨セメントは、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムのモル比が増えても、その機械強度が許容できるレベルに保たれ得る。加えて、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムが増えても、本発明のリン酸カルシウム骨セメントの吸収率は高まる。さらに本発明によれば、ナノ結晶に保護されるために、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムは塩基性の環境(例えばpH≧7)中で安定である。本発明において、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムを、モル比にして高いCa/P原子比のリン酸カルシウムの1倍〜3倍添加したとき、リン酸カルシウム骨セメントの圧縮強度は30MPaよりも大きくなり、これはASTM F451−99aの規格を満たすものである。
【0022】
臨床上、塩基性のリン酸カルシウム骨セメントのみが塩基性の環境で存在することができる。よって、従来技術では、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムと高いCa/P原子比のリン酸カルシウムとを混合することでリン酸カルシウム骨セメントを得る場合に、リン酸カルシウム骨セメントの最終的な生成物相は、単一の塩基性相のみとなる。例えば、無水リン酸水素カルシウム(DCPA,CaHPO)とリン酸四カルシウム(TTCP,Ca(POO)とを混合した場合、最終的な生成物相はアパタイト(HA)となる。従来技術と比較して、本発明では低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの表面がナノ結晶により保護されるため、塩基性の体液中で元の酸性相が保たれ得る。故に、本発明のリン酸カルシウム骨セメントは二相(biphasic)または多相(multiphasic)の生成物相を有することができる。ここで、二相または多相の生成物相は酸性相および塩基性相を含む。
【0023】
上記酸性相は、無水リン酸水素カルシウム(dicalcium phosphate anhydrous ,DCPA,CaHPO)、リン酸水素カルシウム二水和物(dicalcium phosphate dihydrate,DCPD,CaHPO・2HO)、リン酸二水素カルシウム(monocalcium phosphate,MCPM,Ca(HPO・HO)、無水リン酸二水素カルシウム(monocalcium phosphate anhydrate,MCPA,Ca(HPO)、リン酸ナトリウムカルシウム(calcium sodium phosphates,CaNaPO)またはリン酸カリウムカルシウム(calcium potassium phosphate,CaKPO)を含む。また上記塩基性相は、リン酸八カルシウム(octacalcium phosphate,OCP,Ca(HPO(PO・5HO)、リン酸三カルシウム(tricalcium phosphate,TCP,Ca(PO)、非晶質リン酸カルシウム(amorphous calcium phosphate,ACP,Ca(PO・nHO)、カルシウム欠損ハイドロキシアパタイト(calcium-deficient hydroxyapatite,CDHA,Ca10(HPO(PO6−x(OH)2−x,0<X<1)、フルオロアパタイト(fluorapatite, FA,Ca(POF)ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,Ca10(PO(OH)))またはリン酸四カルシウム(tetracalcium phosphate,TTCP,Ca(POO)を含む。1実施形態において、本発明の二相の生成物相は、リン酸水素カルシウム二水和物(dicalcium phosphate dihydrate,DCPD,CaHPO・2HO)およびハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,Ca10(PO(OH)))である。別の実施形態において、本発明の多相の生成物相は、リン酸水素カルシウム二水和物(dicalcium phosphate dihydrate,DCPD,CaHPO・2HO)、無水リン酸水素カルシウム(dicalcium phosphate anhydrous ,DCPA,CaHPO)およびハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,Ca10(PO(OH)))である。
【0024】
よって、本発明のリン酸カルシウム骨セメントの二相または多相の生成物相により、例えばアパタイト(HA)のような単一の塩基性相を有する従来技術のリン酸カルシウム骨セメントとは対照的に、人体組織に容易に吸収されるようになる。加えて、酸性生成物相が塩基性生成物相よりも容易に人体組織に吸収されることはよく知られている。したがって、当業者は、臨床試験において埋め込む位置に応じ、本発明の酸性および塩基性生成物相の比率を調整することで骨の再生(osteo-regeneration)および材料の吸収率(biosorption rate)を向上させることができる。
【0025】
本発明はまた、表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末であって、該低いCa/P原子比が1.33未満であるリン酸カルシウム粉末と、高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末であって、該高いCa/P原子比が1.33以上であるリン酸カルシウム粉末と、を含むリン酸カルシウム骨セメント前駆体も提供する。表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末は、上述した工程(a)から(d)により作製される。該ナノ結晶の幅は約1〜100nm、長さは約10〜1000nmである。該ナノ結晶は、低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末が擬似体液中で崩壊(dispersing)するのを防ぐのみならず、低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末の元の酸性相を保つこともできる。
【0026】
表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末と高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末とは、1/1〜3/1、好ましくは1.5/1〜2.5/1のモル比で混合される。
【0027】
本発明はさらに、表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末と、高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末とを含むリン酸カルシウム骨セメントも提供する。該リン酸カルシウム骨セメントは二相(biphasic)または多相(multiphasic)の生成物相を有し、該二相または多相の生成物相は酸性相および塩基性相を含む。
【0028】
1実施形態において、本発明の二相の生成物相は、リン酸水素カルシウム二水和物(dicalcium phosphate dihydrate,DCPD,CaHPO・2HO)およびハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,Ca10(PO(OH)))である。本発明のリン酸カルシウム骨セメントの二相または多相の生成物相によって、例えばアパタイト(HA)のような単一の塩基性相を有する従来技術のリン酸カルシウム骨セメントとは対照的に、人体組織に容易に吸収されるようになる。加えて、当業者は、臨床試験において埋め込む位置に応じ、本発明の酸性および塩基性生成物相の比率を調整することで骨の再生(osteo-regeneration)および材料の吸収率(biosorption rate)を向上させることができる。故に、本発明のリン酸カルシウム骨セメントは脊椎の再生(vertebra reconstruction)および歯の修復(dental restoration)に適用されると共に、骨置換材料(bone replacement material)として用いられ得る。
【0029】
本発明のリン酸カルシウム骨セメントには次の長所がある。
(a)低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの表面上のナノ結晶は、硬化時間を短縮するだけでなく、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムが擬似体液中で崩壊(dispersing)するのを防ぐ。
(b)本発明のリン酸カルシウム骨セメントの二相または多相の生成物相によって、例えばアパタイト(HA)のような単一の塩基性相を有する従来技術のリン酸カルシウム骨セメントとは対照的に、人体組織に容易に吸収されるようになる。
(c)当業者は、臨床試験において埋め込む位置に応じ、本発明の酸性および塩基性生成物相の比率を調整することで骨の再生(osteo-regeneration)および材料の吸収率(biosorption rate)を向上させることができる。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
(1)TTCP(リン酸四カルシウム)の作製
TTCP粉末は、BrownおよびEpstein が示した方法(Journal of Research of the National Bureau of Standards-A physical and Chemistry 6 (1965) 69A 12)を用い、ピロリン酸二カルシウム(dicalcium pyrophosphate,Ca)および炭酸カルシウム(CaCO)を反応させることにより作製した。その反応は次のように示される。
2CaCO+Ca→Ca+2CO
【0031】
(2)表面にナノ結晶を有するDCPA粉末の作製
無水リン酸水素カルシウム(DCPA,CaHPO)5gを希釈リン酸水溶液(25mM,pH=1.96)40mlに浸した。次いで、その希釈リン酸水溶液にリン酸四カルシウム(TTCP)を加え、室温にて15分間静置し、成長反応を進行させた。15分後、脱イオン水で希釈することにより成長反応を停止させた。そして、その溶液を数回ろ過および洗浄し、オーブン中で乾燥させて、表面にナノ結晶を有するDCPA粉末を得た。
【0032】
(3)リン酸カルシウム骨セメントの作製
DCPA(粒径8μm)2.07gおよびTTCP(粒径3μm)5.54gを100mlのポリエチレン(PE)瓶中で混合した。その混合物を、酸化アルミニウム(混合物の4倍の重量)が入ったボールミルで24時間機械的に混合し、リン酸カルシウム骨セメントを得た。
【0033】
(実施例2〜11)
ナノ結晶の成長に割り当てた時間およびDCPAの量を表1に示すように調整したこと以外は、実施例1と同じ手順を繰り返した。
【表1】

【0034】
(実施例12)
実施例1のリン酸カルシウム骨セメント(CPC)の表面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察した。図1に示すTEMの明視野像(bright field images)および図2に示す暗視野像(dark field images)から、リン酸カルシウム骨セメントの表面にナノ結晶が成長したことが認められた。
【0035】
また図3は、実施例1のCPCのTEM図の制限視野回折図(selected area diffraction, SAD)を示しており、図4は、本発明によるCPCの制限視野回折図(selected area diffraction,SAD)を模式的に示している。表面上のナノ結晶の成分は、無水リン酸水素カルシウム(DCPA)、リン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)、ハイドロキシアパタイト(HA)およびCa(OH)である。ナノ結晶の幅は約1〜100nm、長さは約10〜1000nmである。図5Aから図5Bは、実施例2〜4および7〜9によるCPCのX線回折像(Rigaku D-max IIIV X線回折装置、リガク社製)を示している。
【0036】
図5Aは、擬似体液(例えばハンクス溶液)に24時間浸した後の実施例2〜4および7〜9によるCPCの生成物相を示す。生成物相は、無水リン酸水素カルシウム(DCPA)、リン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)およびハイドロキシアパタイト(HA)を含む多相の生成物相となっている。
【0037】
図5Bは、擬似体液(例えばハンクス溶液)に32日間浸した後の実施例4によるCPCの生成物相を示す。得られたデータより、擬似体液に一定期間浸した後も、多相の生成物相が依然存在していることが示された。当業者は、臨床的応用において、埋め込む位置に応じ、多相の生成物相を調整することができる。
【0038】
(実施例13)
図6を参照されたい。ASTM F451−99aの規格にしたがって実施例2〜11によるCPCを擬似体液(例えばハンクス溶液)に浸し、それらの圧縮強度を測定した。得られたデータから、CPCのナノ結晶が成長する時間は約20〜35分間であり、CPCの圧縮強度は30MPaより大きいことが分かった。このように、低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの添加量を従来技術より多くした場合でも、リン酸カルシウム骨セメントの機械強度は許容できるレベルに維持された。
【0039】
以上、実施例および好適な実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらに限定はされないと解されるべきである。本発明は、(当業者には明らかであるように) 各種の変更および類似のアレンジが包含されるべく意図されている。よって、添付の特許請求の範囲は、かかる変更および類似のアレンジがすべて包含されるように、最も広い意味に解釈されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸カルシウム骨セメントの作製方法であって、
(a)Ca/P原子比が1.33未満である低いCa/P原子比のリン酸カルシウムを酸性溶液に浸す工程、
(b)前記酸性溶液に、リン酸カルシウム化合物、または、カルシウムイオン含有化合物およびリン酸イオン含有化合物、を加えて反応溶液を得る工程、
(c)前記反応溶液を静置して前記低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの表面にナノ結晶を成長させる工程、
(d)工程(c)の前記溶液をろ過および乾燥して、表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末を得る工程、ならびに、
(e)工程(d)の前記粉末と高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末とを混合する工程、
を含むリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項2】
前記高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末が、リン酸八カルシウム(octacalcium phosphate,OCP,Ca(HPO(PO・5HO)、リン酸三カルシウム(tricalcium phosphate,TCP,Ca(PO)、非晶質リン酸カルシウム(amorphous calcium phosphate,ACP,Ca(PO・nHO)、カルシウム欠損ハイドロキシアパタイト(calcium-deficient hydroxyapatite,CDHA, Ca10(HPO(PO6−x(OH)2−x, 0<X<1)、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,Ca10(PO(OH)))、フルオロアパタイト(fluorapatite,FA,Ca(POF)またはリン酸四カルシウム(tetracalcium phosphate,TTCP,Ca(POO)を含む請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項3】
工程(d)の前記粉末と前記高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末とを1/1〜3/1のモル比で混合する請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項4】
前記低いCa/P原子比のリン酸カルシウムが、無水リン酸水素カルシウム(dicalcium phosphate anhydrous ,DCPA,CaHPO)、リン酸水素カルシウム二水和物(dicalcium phosphate dihydrate,DCPD,CaHPO・2HO)、リン酸二水素カルシウム(monocalcium phosphate,MCPM,Ca(HPO・HO)、無水リン酸二水素カルシウム(monocalcium phosphate anhydrate,MCPA,Ca(HPO)、リン酸ナトリウムカルシウム(calcium sodium phosphates,CaNaPO)またはリン酸カリウムカルシウム(calcium potassium phosphate,CaKPO)を含む請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項5】
前記酸性溶液が、HNO、HCl、HPO、HCO、NaHPO、KHPO、NHPO、CHCOOH、リンゴ酸(malic acid)、乳酸(lactic acid)、クエン酸(citric acid)、シュウ酸(oxalic acid)、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、酒石酸(tartaric acid)またはこれらの組み合わせを含む請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項6】
工程(b)の前記リン酸カルシウム化合物が、リン酸八カルシウム(octacalcium phosphate,OCP,Ca(HPO(PO・5HO)、リン酸三カルシウム(tricalcium phosphate,TCP,Ca(PO)、非晶質リン酸カルシウム(amorphous calcium phosphate,ACP,Ca(PO・nHO)、カルシウム欠損ハイドロキシアパタイト(calcium-deficient hydroxyapatite,CDHA,Ca10(HPO(PO6−x(OH)2−x,0<X<1)、フルオロアパタイト(fluorapatite,FA,Ca(POF)、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,Ca10(PO(OH))、リン酸四カルシウム(tetracalcium phosphate,TTCP,Ca(POO)、リン酸カリウムカルシウム(calcium potassium phosphate,CaKPO)、リン酸ナトリウムカルシウム(calcium sodium phosphates,CaNaPO)またはこれらの組み合わせを含む請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項7】
工程(b)の前記カルシウムイオン含有化合物が、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))または炭酸カルシウム(CaCO)を含む請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項8】
工程(b)の前記リン酸イオン含有化合物が、五酸化リン(phosphorus pentoxide,P)、リン酸ナトリウム(sodium phosphate,NaPO)、リン酸水素二ナトリウム(sodium phosphate dibasic,NaHPO)、リン酸二水素ナトリウム(sodium dihydrogen phosphate,NaHPO)、リン酸(phosphoric acid,HPO)、リン酸カリウム(potassium phosphate,KPO)、リン酸水素二カリウム(potassium phosphate dibasic,KHPO)、リン酸二水素カリウム(potassium dihydrogen phosphate,KHPO)、リン酸アンモニウム(ammonium phosphate,(NHPO)、リン酸水素二アンモニウム(ammonium phosphate dibasic,(NHHPO)またはリン酸二水素アンモニウム(ammonium dihydrogen phosphate,NHPO)を含む請求項7に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項9】
前記低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの濃度の範囲が約0.01〜10g/mlである請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項10】
工程(a)と(d)の前記低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの粒径が約200μmよりも小さい請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項11】
工程(a)と(d)の前記低いCa/P原子比のリン酸カルシウムの粒径が、前記高いCa/P原子比のリン酸カルシウムの粒径よりも大きい請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項12】
前記ナノ結晶の幅が約1〜100nmである請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項13】
前記ナノ結晶の長さが約10〜1000nmである請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項14】
工程(c)の前記ナノ結晶を約5〜60分間成長させる請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項15】
前記リン酸カルシウム骨セメントが二相(biphasic)または多相(multiphasic)の生成物相を有する請求項1に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項16】
前記二相または多相の生成物相が酸性相および塩基性相を含む請求項15に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項17】
前記酸性相が、無水リン酸水素カルシウム(dicalcium phosphate anhydrous ,DCPA,CaHPO)、リン酸水素カルシウム二水和物(dicalcium phosphate dihydrate,DCPD,CaHPO・2HO)、リン酸二水素カルシウム(monocalcium phosphate,MCPM,Ca(HPO・HO)、無水リン酸二水素カルシウム(monocalcium phosphate anhydrate,MCPA,Ca(HPO)、リン酸ナトリウムカルシウム(calcium sodium phosphates,CaNaPO)またはリン酸カリウムカルシウム(calcium potassium phosphate,CaKPO)を含む請求項16に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項18】
前記塩基性相が、リン酸八カルシウム(octacalcium phosphate,OCP,Ca(HPO(PO・5HO)、リン酸三カルシウム(tricalcium phosphate,TCP,Ca(PO)、非晶質リン酸カルシウム(amorphous calcium phosphate,ACP, Ca(PO・nHO)、カルシウム欠損ハイドロキシアパタイト(calcium-deficient hydroxyapatite,CDHA,Ca10(HPO(PO6−x(OH)2−x,0<X<1)、フルオロアパタイト(fluorapatite,FA,Ca(POF)、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,CA10(PO(OH)))またはリン酸四カルシウム(tetracalcium phosphate,TTCP,Ca(POO)を含む請求項16に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項19】
前記多相の生成物相が、リン酸水素カルシウム二水和物(dicalcium phosphate dihydrate,DCPD,CaHPO・2HO)、無水リン酸水素カルシウム(dicalcium phosphate anhydrous ,DCPA,CaHPO)およびハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,Ca10(PO(OH)))を含む請求項15に記載のリン酸カルシウム骨セメントの作製方法。
【請求項20】
表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末であって、該低いCa/P原子比が1.33未満であるリン酸カルシウム粉末と、
高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末であって、該高いCa/P原子比が1.33以上であるリン酸カルシウム粉末と、
を含むリン酸カルシウム骨セメント前駆体。
【請求項21】
前記低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末が、無水リン酸水素カルシウム(dicalcium phosphate anhydrous ,DCPA,CaHPO)、リン酸水素カルシウム二水和物(dicalcium phosphate dihydrate,DCPD,CaHPO・2HO)、リン酸二水素カルシウム(monocalcium phosphate,MCPM,Ca(HPO・HO)、無水リン酸二水素カルシウム(monocalcium phosphate anhydrate,MCPA,Ca(HPO)、リン酸ナトリウムカルシウム(calcium sodium phosphates,CaNaPO)またはリン酸カリウムカルシウム(calcium potassium phosphate,CaKPO)を含む請求項20に記載のリン酸カルシウム骨セメント前駆体。
【請求項22】
前記高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末が、リン酸八カルシウム(octacalcium phosphate,OCP,Ca(HPO(PO・5HO)、リン酸三カルシウム(tricalcium phosphate,TCP,Ca(PO)、非晶質リン酸カルシウム(amorphous calcium phosphate,ACP,Ca(PO・nHO)、カルシウム欠損ハイドロキシアパタイト(calcium-deficient hydroxyapatite,CDHA,Ca10(HPO(PO6−x(OH)2−x,0<X<1)、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,Ca10(PO(OH)))、フルオロアパタイト(fluorapatite,FA,Ca(POF)またはリン酸四カルシウム(tetracalcium phosphate,TTCP,Ca(POO)を含む請求項20に記載のリン酸カルシウム骨セメント前駆体。
【請求項23】
前記表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末と、前記高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末とが1/1〜3/1のモル比で混合される請求項20に記載のリン酸カルシウム骨セメント前駆体。
【請求項24】
前記ナノ結晶の幅が約1〜100nmである請求項20に記載のリン酸カルシウム骨セメント前駆体。
【請求項25】
前記ナノ結晶の長さが約10〜1000nmである請求項20に記載のリン酸カルシウム骨セメント前駆体。
【請求項26】
リン酸カルシウム骨セメントであって、
表面にナノ結晶を有する低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末と、
高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末と、を含み、
前記高いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末と前記低いCa/P原子比のリン酸カルシウム粉末とを混合することで前記リン酸カルシウム骨セメントが形成され、前記リン酸カルシウム骨セメントが二相(biphasic)または多相(multiphasic)の生成物相を有するリン酸カルシウム骨セメント。
【請求項27】
前記二相または多相の生成物相が酸性相および塩基性相を含む請求項26に記載のリン酸カルシウム骨セメント。
【請求項28】
前記酸性相が、無水リン酸水素カルシウム(dicalcium phosphate anhydrous ,DCPA,CaHPO)、リン酸水素カルシウム二水和物(dicalcium phosphate dihydrate,DCPD,CaHPO・2HO)、リン酸二水素カルシウム(monocalcium phosphate,MCPM,Ca(HPO・HO)、無水リン酸二水素カルシウム(monocalcium phosphate anhydrate,MCPA,Ca(HPO)、リン酸ナトリウムカルシウム(calcium sodium phosphates,CaNaPO)またはリン酸カリウムカルシウム(calcium potassium phosphate,CaKPO)を含む請求項27に記載のリン酸カルシウム骨セメント。
【請求項29】
前記塩基性相が、リン酸八カルシウム(octacalcium phosphate,OCP,Ca(HPO(PO・5HO)、リン酸三カルシウム(tricalcium phosphate,TCP,Ca(PO)、非晶質リン酸カルシウム(amorphous calcium phosphate,ACP,Ca(PO・nHO)、カルシウム欠損ハイドロキシアパタイト(calcium-deficient hydroxyapatite,CDHA,Ca10(HPO(PO6−x(OH)2−x,0<X<1)、フルオロアパタイト(fluorapatite,FA,Ca(POF)、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,Ca10(PO(OH)))またはリン酸四カルシウム(tetracalcium phosphate,TTCP,Ca(POO)を含む請求項27に記載のリン酸カルシウム骨セメント。
【請求項30】
前記多相の生成物相が、リン酸水素カルシウム二水和物(dicalcium phosphate dihydrate,DCPD,CaHPO・2HO)、無水リン酸水素カルシウム(dicalcium phosphate anhydrous,DCPA,CaHPO)およびハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite,HA,Ca10(PO(OH)))を含む請求項26に記載のリン酸カルシウム骨セメント。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−284522(P2010−284522A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123995(P2010−123995)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(505302362)高雄醫學大學 (11)
【Fターム(参考)】