説明

リン酸ジルコニウム粒子の合成法

【課題】ゾルゲル法によるリン酸ジルコニウム粒子の合成法を提供する。
【解決手段】水性溶媒中オキシ塩化ジルコニウム溶液を得るステップと、その溶液に少なくとも一種の含酸素添加物を加えるステップ(含酸素添加物は、オキシ塩化ジルコニウム溶液中でジルコニウムイオンと錯体を形成させ、それによってジルコニウムイオンの水和反応を減少させるように選択される)、およびこの溶液とリン酸またはリン酸塩とを混合して、ゾルゲル沈殿によってリン酸ジルコニウム粒子を得るステップ、によってリン酸ジルコニウム粒子を合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法119条(e)に基づき、2004年12月28日出願の先の米国仮特許出願第60/639,740号の優先権を主張し、その全体を参照により本明細書組み込まれているものとする。
【0002】
本発明は、リン酸ジルコニウム(zirconium phosphate)粒子に関し、特に、ゾルゲル合成などによるリン酸ジルコニウム粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子は、イオン交換物質として使用され、特に、再生透析用吸収物質として有用である。リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子は、出発物質として塩化ジルコニルとも呼ばれるオキシ塩化ジルコニウム(zirconium oxychloride)(ZOC)を使用するゾルゲル法によって合成することができる。ZOCは、豊富にあり低価格で購入できるので好ましい出発物質である。
【0004】
ゾルゲル沈殿は、その用語を本明細書で使用するように、一般的に、セラミックまたは触媒を形成する一工程をさし、その工程では、水和した金属イオン(III族およびIV族)と沈殿剤とを反応させることによってコロイド粒子(ゾルと称する)を形成し、続いてそのコロイド粒子を重合させてゲル粒子を形成する。例えば、参照により本明細書に組み込む、Bogdanov SGら、Structure of zirconium phosphate gels produced by the sol-gel method, J. Phys.: Condens. Matter 9 4031-4039 (1997)を参照されたい。ゾルゲル沈殿は、室温で実施できる直接的一段階転換工程であるが故に、オキシ塩化ジルコニウムからリン酸ジルコニウムを得るのに特に有利な方法である。従って、他の工程と比較して、ゾルゲル沈殿は効率および製造コストの点で非常に有利である。さらに、ゾルゲル沈殿によって得られるリン酸ジルコニウム粒子は、一般的に、空孔率が高くBET表面積も大きく、それによってアンモニアを吸着するリン酸ジルコニウム粒子の能力は増強される。さらに、ゾルゲル沈殿法を使用すると、生成物の粒径および形態を制御し、不純物レベルも制御できるようになる。リン酸ジルコニウム粒子のこれらの特性は、透析に適用するためのアンモニア吸着およびカートリッジの設計に関して重要である。
【0005】
これらの利点の全てに関わらず、製造規模でゾルゲル沈殿を実現するのは容易ではない。その困難は、主として、原料(例えばZOC)の性質、制御するのが難しい速い反応速度、および適当な工程制御法(流速、攪拌速度、濃度など)が無いことに起因する。これらの困難は以下に記載することができる。
【0006】
ゾルゲルリン酸ジルコニウムは、沈殿剤としてリン酸(phosphoric acid)を使用しオキシ塩化ジルコニウム溶液から直接沈殿させた場合、粒径が広い範囲にわたるソフトゲル粒子の形をとる。これが生じる一つの理由は、オキシ塩化ジルコニウム溶液中のジルコニウムイオンが高度に水和したモノマーであり、すなわち、それらのイオンが多数の配位された水分子によって囲まれているためである。リン酸ジルコニウムの形成時、反応工程中生成物スラリーの濃度を増すとき、あるいはろ過および乾燥工程中それらの粒子を充填するとき、ソフトゲル粒子は集塊する傾向がある。この集塊の結果として、乾燥後、最終生成物中に大きい凝集が現われ、その結果、自由流動粉末を得るためには製粉または粉砕処理が必要となるが、その処理には製粉によって極めて微細な粒子が大量に生成されるという別の欠点が伴う。集塊はまた、カラムまたは分離適用には望ましくない程度まで粒径を増大させる。
【0007】
粒径は、沈殿が進むにつれて徐々に減少する反応物の濃度に依存し、それが小さい粒子の形成を引き起こすという別の理由によって、完成生成物の粒径が広い範囲にわたるということは、従来のゾルゲル沈殿工程に共通する結果である。従って、単一反応物用添加技術を使用し粒径を制御するのは困難である。大きい粒子および極端に微細な粒子はどちらも透析適用に望ましくない。というのは、大きい粒子はアンモニア漏出および吸着能低下の原因となる可能性があり、微細な粒子は吸着剤カートリッジ中の流動抵抗および圧力落ちを増大させる可能性があるからである。
【0008】
さらに、スラリー濃度が上昇するにつれて、沈殿工程中のゾルゲルリン酸ジルコニウムの集塊は反応物の攪拌および混合に干渉し、その結果、過剰な数の微細粒子が形成される。
【0009】
ゾルゲルリン酸ジルコニウムの粒径は、リン酸(phosphoric acid)の量および濃度の上昇によって(例えば、ZrO:PO比1:3を提供することによって)大きくすることができるが、ZrP中の過剰な格子状HがHO分子と結合するので、リン酸の増大もまたゲル化効果を亢進する。
【特許文献1】米国公開特許出願第2002−0112609号明細書
【特許文献2】米国特許第6,878,283号明細書
【非特許文献1】Bogdanov SGら、Structure of zirconium phosphate gels produced by the sol-gel method, J. Phys.: Condens. Matter 9 4031-4039 (1997)
【非特許文献2】"Sorbent Dialysis Primer," COBE Renal Care, Inc.1993年9月4日版
【非特許文献3】"Rx Guide to Custom Dialysis," COBE Renal Care, Inc. 1993年9月改訂版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、製造規模で実施できる、改善されたリン酸ジルコニウム粒子の合成法が必要とされている。
【0011】
上記短所の一つまたは複数を克服する、改善されたリン酸ジルコニウム粒子の合成法がさらに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の特徴は、上記短所の一つまたは複数を回避する、ゾルゲル法によるリン酸ジルコニウム粒子の合成法を提供することである。
【0013】
本発明の別の特徴は、ソフトゲル粒子の形成を回避し、かつ/またはリン酸ジルコニウムゲル粒子の集塊を回避する、ゾルゲル法によるリン酸ジルコニウム粒子の合成法を提供することである。
【0014】
本発明の別の特徴は、ゾルゲル法によるリン酸ジルコニウム粒子の合成法を提供することであり、かつ/または望ましい硬度、粒径、粒径範囲、形、充填密度、空孔率、BET吸着表面積、および/または吸着能を有する粒子を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の利点は、一部以下の文章中に記述され、一部その記述から明らかになり、または本発明を実施することによって理解されるであろう。本発明の目標および利点は、特に添付の特許請求の範囲で指摘した成分によって実現し達成される。
【0016】
上記の目標を実現するために、そして本明細書に具体化し概略した本発明の目的に従って、本発明は、含酸素添加物がその溶液中でジルコニウムイオンと錯体を形成し、それによってジルコニウムイオンの水和反応を減少できる溶液を形成するために、好ましくは水性溶媒中で、オキシ塩化ジルコニウムと、少なくとも一種の含酸素添加物とを混合するステップ、次いでその溶液とリン酸またはリン酸塩(phosphoric acid salt)とを混合してゾルゲル沈殿によってリン酸ジルコニウム粒子を得るステップによるリン酸ジルコニウム粒子の合成法を提供する。
【0017】
本発明は、さらに、粒径または粒径分布が制御されたリン酸ジルコニウム粒子の合成法を提供する。その方法は、ゾルゲル沈殿によってリン酸ジルコニウム粒子を得るために、オキシ塩化ジルコニウムとリン酸とを反応させるステップを含む。例えば、方法は、ゾルゲル沈殿によってリン酸ジルコニウム粒子を得るために、撹拌器を備える反応槽を用意するステップ、およびジルコニウムイオンとリン酸が反応するように、オキシ塩化ジルコニウム溶液とリン酸溶液とを同時に反応槽に加えるステップを含むことができる。得られたリン酸ジルコニウム粒子の粒径および/または粒径分布は、以下のパラメーター:反応槽にオキシ塩化ジルコニウム溶液を加える速度、反応槽にリン酸溶液を加える速度、リン酸溶液のpH、反応槽中のオキシ塩化ジルコニウムおよびリン酸の濃度、および撹拌器の速度、の少なくとも一つを制御することによって制御する。
【0018】
本発明は、さらに、含酸素添加物(単数および複数)がその溶液中でジルコニウムイオンと錯体を形成し、それによってジルコニウムイオンの水和反応を減少できる溶液を形成するために、水性溶媒中で、オキシ塩化ジルコニウムと、少なくとも一種の含酸素添加物とを混合するステップ、次いでその溶液とリン酸またはリン酸塩とを混合してゾルゲル沈殿によってリン酸ジルコニウム粒子を得るステップによる、リン酸ジルコニウム粒子の合成法を提供する。その方法は、リン酸ジルコニウム粒子を含む水性スラリーを熱処理にかけるステップを含むことができる。
【0019】
本発明は、さらに、ゾルゲル沈殿によってリン酸ジルコニウム粒子を得るために、オキシ塩化ジルコニウム溶液とリン酸溶液とを同時に反応槽に加えるステップを含む、リン酸ジルコニウム粒子の作製方法を提供する。
【0020】
本発明は、さらに、リン酸ジルコニウム粒子の作製方法であって、(a)水性溶媒中で、少なくとも一種の含フッ素添加物と、オキシ塩化ジルコニウムとを混合して、その溶液中でその含フッ素添加物がジルコニウムイオンと錯体を形成する溶液を形成するステップ、および(b)ステップ(a)で得られた溶液と、リン酸またはリン酸塩とを混合してゾルゲル沈殿によってリン酸ジルコニウム粒子を得るステップを含む作製方法を提供する。
【0021】
本発明は、水性溶液中に水溶性ジルコニウム含有ポリマーを含む組成物であって、該ポリマーが、水性溶媒中で、ジルコニウムイオンと錯体を形成することができる少なくとも一種の含酸素添加物と、オキシ塩化ジルコニウムとを混合することによって形成された組成物をさらに提供する。
【0022】
本発明は、粒径分布の20%未満が>60〜120ミクロンの範囲にあり、80%超が30〜60ミクロンの範囲にあり、かつ10%未満が30ミクロン未満の範囲にあり、アンモニア吸着能が15〜20mg NH−N/ZP(gm)であり、またはより具体的には16〜17mg NH−N/ZP(gm)であり、かつNa含有量が3.8〜6.2wt%であるという特性を有するリン酸ジルコニウム粒子をさらに提供する。
【0023】
本発明は、さらに、粒径分布の20%未満が>60〜120ミクロンの範囲にあり、80%超が30〜60ミクロンの範囲にあり、かつ10%未満が30ミクロン未満の範囲にあり、アンモニア吸着能が15〜20mg NH−N/ZP(gm)であり、またはより具体的には16〜17mg NH−N/ZP(gm)であり、かつNa含有量が3.8〜6.2wt%であるという特性を有するリン酸ジルコニウム粒子を含むカートリッジを含む透析カートリッジを提供する。
【0024】
前記一般的記述および以下の詳細な記述は、単に例示にすぎず、特許請求する本発明を制限するものではないことは理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、部分的に、オキシ塩化ジルコニウム溶液を使用し、ゾルゲル法によってリン酸ジルコニウム粒子を合成する方法であって、その溶液中のジルコニウムイオンの水和反応を減少させた方法に関する。これは、例えば、オキシ塩化ジルコニウム溶液中の一種または複数の添加物を使用して、その溶液中のジルコニウムイオンを高度に水和した単量体から、多数のポリマー単位を含み水和反応の水分が低い溶解性ポリマージルコニウム錯体に変えることによって実現できる。
【0026】
一実施形態では、本発明は、リン酸ジルコニウム粒子の作製方法であって、(a)水性溶媒中で、少なくとも一種の含酸素添加物と、オキシ塩化ジルコニウムとを混合して、該溶液中で該含酸素添加物がジルコニウムイオンと錯体を形成する溶液を形成するステップ、および(b)ステップ(a)で得られた溶液と、リン酸またはリン酸塩とを混合してゾルゲル沈殿によってリン酸ジルコニウム粒子を得るステップを含む作製方法に関する。典型的な限定しない量として、少なくとも一つの含酸素添加物は、オキシ塩化ジルコニウムの約0.1〜20重量%であり、オキシ塩化ジルコニウム対リン酸のモル比は1:2.8〜1:3.2であってよい。水性溶媒は、脱イオン水またはRO水であってよい。その水性溶媒にオキシ塩化ジルコニウムを溶解することができ、次いでその含酸素添加物を加えてステップ(a)の溶液を形成することができる。その水性溶媒にオキシ塩化ジルコニウムを溶解することができ、次いでその含酸素添加物を加えてステップ(a)の溶液を形成することができる。オキシ塩化ジルコニウムは、水性溶媒に飽和濃度で、または他の濃度レベルで存在してよい。水性溶媒に含酸素添加物を溶解することができ、次いでオキシ塩化ジルコニウムを加えてステップ(a)の溶液を形成することができる。含酸素添加物は、ステップ(a)の溶液中に、溶液中のジルコニウムイオンの全てまたは実質全てが錯体に転換されるのに十分なモル量で存在しうる。含酸素添加物は、ジルコニウムイオンを有する溶解性ポリマーを形成することができる。
【0027】
ゾルゲル工程で形成されたリン酸ジルコニウムの特性に、添加物がどのように影響しうるかを説明するためには、添加物が含まれていないオキシ塩化ジルコニウム溶液中のジルコニウムイオンの性質を理解することが役立つ。オキシ塩化ジルコニウム溶液中のジルコニウムイオンはそれ自体、各Zr原子と共に4〜8個のHO分子が配位された高度に水和したジルコニウム種である。水和したイオンは、溶液の濃度に応じて、ZrOOHのモノマーからZr(OH)+8の四量体の範囲でポリマー単位を形成しうる。室温でリン酸とオキシ塩化ジルコニウム溶液を混合するので、ゾルゲルリン酸ジルコニウム沈殿物は、ゲル粒子内に多数の配位された水分子(または、格子HはHO分子と結合してHが形成するのでヒドロニウムイオン)を取り込んで非常に速い速度で形成され、ソフトゲルが生成される。先に述べたように、これらのソフトゲル粒子は、スラリーの濃度が増すほど、そしてろ過中フィルター上に、または乾燥中トレイ上に物質を充填するとき集塊する傾向がある。
【0028】
少なくとも一種の添加物を使用して、少量の配位された水分子および高ポリマーユニットを含む溶液中に新規なジルコニウムポリマー種を形成するのが好ましく、その結果、これらのZrポリマー種がリン酸と反応しても、過剰な水和反応から生じる上記問題は生まれない。特に、ジルコニウムイオンとリン酸塩の反応が遅延され、その遅延によって反応物の濃度はより制御しやすくなり、従って沈殿によって形成される粒子の粒径および/または粒径分布を制御できるようになる。低い含水率のおかげで、沈殿によって形成される粒子は、硬く、集塊しにくく、より微細な分子構造を有する。使用する添加物が乳化剤の特性も有している場合、沈殿によって形成される粒子形を不規則なものからほぼ球形に改善することができる。そのようにすれば、乾燥中の集塊問題は減少し、自由流動粉を形成できるようになる。たとえ粒径を小径に維持しても、カラムで適用するための流動性能を改善することができる。
【0029】
本明細書に別段に示した場合を除き、ゾルゲル工程によるリン酸ジルコニウム粒子の合成は、既知のゾルゲル法に従って実施してよい。例えば、初めにオキシ塩化ジルコニウムを溶解するために使用する水性溶液は、微量金属などのイオン性不純物を除去するために、逆浸透によって精製された水(RO水)、またはリン酸ジルコニウム粒子の意図した最終用途に使用可能なほど混入物質のレベルを十分に低くする他の任意の方法によって精製した水、あるいは脱イオン水であってよい。ゾルゲル沈殿の実施には、高pH時を除き、リン酸またはリン酸塩溶液を使用することができ、リン酸塩を使用するとアンモニウム吸着能が低減した生成物がもたらされる。
【0030】
本発明で使用する添加物は、オキシ塩化ジルコニウム水性溶液中、ジルコニウムイオンに配位された、好ましくはジルコニウムイオンを架橋して水溶性ポリマー種を形成できる水分子を排除することができる。添加物は最終生成物に組み込まれないので添加物の正体は重要ではない。一種を超える添加物、例えば混合物を使用することができる。添加物はまた、リン酸ジルコニウムを形成するリン酸またはリン酸塩と反応中、ジルコニウムイオンから添加物を排除できるように選択すべきである。添加物は、固体、液体、および/または気体であってよい。添加物は、化合物、混合物、ポリマーなどであってよい。酸素はジルコニウムと強力な結合を形成できるので、本発明では酸素原子を含む化合物が特に有用である。従って、本発明で好ましい添加物は、化合物中に酸素原子を配置して含み、その結果、配位された水分子を排除するのに酸素原子を利用でき、そしてジルコニウム原子を架橋してポリマー種を形成できる無機および有機化合物が含まれる。添加物はまた、好ましくは水に可溶性なポリマー種を形成することができる。
【0031】
本発明で使用できる添加物の例には、無機物、例えば、硫酸ナトリウムなどの硫酸塩または硫酸、および炭酸塩などの化合物;有機物、例えばアルコール;グリセロール、ソルビトール、またはマンニトールなどのポリアルコール;カルボン酸塩;酢酸もしくはヘキサン酸などのカルボン酸またはポリカルボン酸;ケトン、アルデヒドなどの化合物;あるいはドデシル硫酸塩(dodecyl sulfate)などの有機硫酸塩、および過酸化水素などの過酸化物が含まれる。分散剤または界面活性剤として作用する添加物は特に有用である。例えば、界面活性剤として作用しうるドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)は、リン酸ジルコニウムの結晶性およびアンモニウム吸着能を高めるのに特に有用である。界面活性剤は、より規則的配列でリン酸と反応するために、ジルコニウムポリマー錯体のミセル構造を形成することによって、ZrPの結晶性を改善すると考えられている。グリセロール、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、酒石酸(tartaric acid)などの分散剤は、ZrP粒子を乳化し分散させて集塊を回避し、それによって生成物の粒径を制御する。使用可能な添加物の具体的な限定しない例は、硫酸ナトリウム(sodium sulfate)、グリセロール(glycerol)、イソプロパノール(isopropanol)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)(SDS)、酒石酸(tartaric acid)(典型的にはDLラセミ混合物として)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、2−アミノ−2−メチル−プロパノール(2-amino-2-methyl-propanol)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose)、AEROSOL 22[N−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホサクシナメート四ナトリウム(tetrasodium N-(1,2-dicarboxyethyl)-N-octadecyl sulfosuccinamate)]、TRITON 100[オクチルフェノキシポリエトキシ(9−10)エタノール(octylphenoxypolyethoxy(9-10) ethanol)]、RHODASURF ON-870[ポリエトキシ化(20)オレイルアルコール(polyethoxylated(20) oleyl alcohol)]、TETRONIC 1307(エチレンジアミンアルコキシレート(ethylenediamine alkoxylate)ブロックコポリマー)およびこれらのいずれかの混合物である。リン酸ジルコニウム粒子を透析などの目的に使用する場合、無毒の添加物、または毒性レベルが受容可能なほど低い添加物を使用するのが好ましいであろう。例えば、グリセロール、硫酸ナトリウム、AEROSOL 22、DL酒石酸、ポリビニルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、およびTETRONIC 1307は、無毒、特にリン酸ジルコニウム粒子中に残留物として存在しうるレベルで無毒と考えられている。添加物の別の具体的な限定しない例は、硫酸ナトリウム(sodium sulfate)とグリセロールの組合せまたは混合物、硫酸ナトリウムとラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)の組合せまたは混合物、硫酸ナトリウムと酒石酸の組合せまたは混合物、あるいは硫酸ナトリウムとN−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホサクシナメート四ナトリウム(tetrasodium N-(1,2-dicarboxyethyl)-N-octadecyl sulfosuccinamate)の組合せまたは混合物、あるいはそれらの組合せである。
【0032】
添加物、およびオキシ塩化ジルコニウム溶液中で形成されるジルコニウムポリマー種の典型的な例は以下の通りである。
【表0】

【0033】
添加物がジルコニウムイオンと錯体を形成する溶液は、オキシ塩化ジルコニウムを含む溶液に添加物を加えることによって、または添加物を含む溶液にオキシ塩化ジルコニウムを加えることによって形成しうる。すなわち、水性溶媒に添加物とオキシ塩化ジルコニウムを加える順序は重要ではない。
【0034】
配位された水分子を排除し、ポリマー種を形成するのと同じ結果が、添加物としてフッ素含有化合物を使用しても実現することができる。フッ素化合物の例には、それだけには限らないが、フッ化水素酸およびフッ化ナトリウム;フッ素またはフッ素含有アルカリ金属を含有する他の酸が含まれる。
【0035】
本発明の方法に従い、ゾルゲル沈殿によって得られるリン酸ジルコニウム粒子の品質は、使用するリン酸溶液のpHを調整することによって任意に改善することができる。例えば、本発明の方法で使用される沈殿剤はオルトリン酸であってよく、このオルトリン酸はNaOHなどの塩基でpH約1〜約4まで滴定される。部分的に滴定したリン酸は、ゾルゲルZrPの酸度を低下させ、それによって水和反応の水分を減少させることができる。そうでなくても、格子HはHOと結合してヒドロニウムイオンを形成することができる。従って、リン酸塩のpHが高いときにゾルゲル沈殿を実施することはZrPゲルの硬化促進に役立つ。しかし、アルカリpHで沈殿反応を実施することはあまり好ましくない。アルカリリン酸塩によって沈殿したリン酸ジルコニウムは、アンモニア吸着特性が不十分でありうるからである。この技術は、上記のように少なくとも一種の添加物の使用と併せて実施することが好ましい。
【0036】
本発明はまた、部分的に、ゾルゲル沈殿によってリン酸ジルコニウム粒子を合成する方法に関し、その場合、得られるリン酸ジルコニウム粒子の粒径および/または粒径分布は、オキシ塩化ジルコニウム溶液(その溶液は上記のように添加物含有溶液であってよい)を反応槽に加える速度、リン酸溶液を反応槽に加える速度、反応槽中のオキシ塩化ジルコニウムおよび/またはリン酸の濃度、ならびに/あるいは反応混合物の攪拌の速度および方式を制御することによって制御される。特に、ゾルゲル沈殿によって得られる粒径は、部分的に反応物の濃度に依存することが判明した。オキシ塩化ジルコニウム溶液をリン酸溶液に加えるとき、リン酸濃度は反応が進行するにつれて減少し、ますます小さな粒子が形成される可能性がある。その結果、望ましくないほど広い範囲の粒径が生成されうる。これが生じる可能性を防ぐためには、反応物、オキシ塩化ジルコニウム、およびリン酸を同時に(またはほぼ同時に)反応槽に加えることができ、その投入を、例えば、10〜30分以上など一定期間にわたって引き伸ばすことができ、それによって沈殿工程全体にわたって、反応溶液中のリン酸濃度を一定にそして制御可能に維持することができる。さらに別の例として、リン酸溶液の一部を反応槽に加えることができ、そしてオキシ塩化ジルコニウム溶液と残りのリン酸溶液を制御した速度で同時に反応槽に加えることができ、再度、沈殿工程全体にわたって反応溶液中のリン酸濃度を一定にそして制御可能に維持できるようになる。
【0037】
オキシ塩化ジルコニウムとリン酸溶液の同時添加に加えて、オキシ塩化ジルコニウム溶液の添加方式および反応物の混合方式を含む他のパラメーターを制御して、より効率的な反応を行い、粒径範囲を制御することができる。例えば、オキシ塩化ジルコニウム溶液を液滴形で反応槽に添加し、それによってより効率的に反応が行えるように、オキシ塩化ジルコニウム溶液用の流入口としてスプレーヘッドを使用することができる。さらに、反応槽に反応物を加えるにつれ、そして反応が進行するにつれ反応物を攪拌するために、反応槽を具備することができ、それによって混合はより効率的になり、反応槽の異なる部位での反応物の濃度差によって生じる粒径差が回避される。例えば反応槽には、反応槽中の反応物を全てのレベルで徹底的に混合できるように、撹拌器、例えば一組を超えるブレードセットをシャフトに異なるレベルで取り付けた撹拌器などを備えることができる。特定の例として、各セットをシャフトに異なるレベルで取り付けた3組のブレードセットを有する撹拌器など、多翼インペラー撹拌器を使用しうる。集塊を制御しまたは低減するための撹拌器の使用は任意である。撹拌器を使用する場合、多翼インペラー撹拌器を含め、市販の撹拌器を使用することができる。多翼インペラー撹拌器では、ゲル粒子の分解を引き起こすことなく集塊を回避するために、低速の攪拌速度、例えば20〜40rpmなどが好ましい。単翼インペラー撹拌器では、例えば約60〜70rpmの速度を使用することができる。任意の所与の撹拌器については、最適速度は、例えばタンクサイズ、形、整流装置、インペラーサイズなどの変数に依存する。他の攪拌または混合法も使用しうる。
【0038】
望ましい粒径範囲または分布を得られるように、適当な工程制御法を使用して、反応物の適当な濃度範囲および沈殿工程の流量を確実にすることができる。一例として、吸着剤透析カートリッジで使用するリン酸ジルコニウム粒子の望ましい粒径分布は以下の通りである:20%未満が>60〜120ミクロンの範囲にあり(例えば0.1%〜19.5%、または0.5%〜15%、または1%〜10%)、80%超が30〜60ミクロンの範囲にあり(例えば80.5%〜99.9%、または85%〜99%、または90%〜99%)、かつ10%未満が30ミクロン未満の範囲にある(例えば0.1%〜9.5%、または0.5%〜9%、または1%〜5%)。他の粒径分布および範囲も使用することができる。この粒径分布を実現するために、そして一例として、硫酸ナトリウムとグリセロールを含むオキシ塩化ジルコニウム溶液およびリン酸溶液は、以下のように形成することができる。ポリマー単位の大きさは濃度が上昇するにつれて増大するので、オキシ塩化ジルコニウム溶液は、その飽和点(例えば水2.4LにZOC結晶4kg)でオキシ塩化ジルコニウムを含みうる。Zr錯体イオン中に配位された水の量を最大限減少させ、ゲル化の程度を抑制するために、NaSOの量はZOC溶液中での溶解性を基にして最大であってよい(例えば、本明細書に記載したZOC溶液中、約300〜500gm、または好ましくは500gm)。本明細書に記載した溶液中のグリセロールの量は、典型的には200〜800gmの範囲でありうる。過量のグリセロールは、過剰な乳化によって粒径を過度に減少させ、それによって微細な粒子を多量に生成しかねない。不十分な量のグリセロールは、高度な集塊を招き、80〜120ミクロンという大きいサイズ範囲の粒子の割合を高くする可能性がある。典型的なリン酸溶液は、76% HPOを4.52kgと水8L(±1L)を含みうる。ZOC対リン酸塩もしくはHPOのモル比は、約1:3±0.2でありうる。ZOC処方液の具体的な限定しない例は、脱イオン水またはRO水2.4L中、ZOC結晶粉末4kg;NaSO粉(好ましくは純度98〜99%)500gm、およびグリセロール(好ましくは純度98%)800gmである。ZOC処方液の別の具体的な限定しない例は、脱イオン水またはRO水2.4L中ZOC結晶粉末4kg;NaSO粉末300gm、およびグリセロール200gmである。以下の実施例8に記載するように、このZOC処方液は、HPOと反応させるための単翼インペラー撹拌器による高速攪拌速度と組み合わされると、所望の粒径分布を有するZrP粒子を提供することが判明し、最適カートリッジ性能をもたらした。もちろん、典型的な溶液を得るための量は、同じ比率で反応物を維持しながら規模を拡大または縮小すればよい。吸着剤透析カートリッジで使用するための粒径制御もまた、カートリッジ性能要件に合わせて、必要に応じて追加製粉することによって達成できる。
【0039】
リン酸溶液の流速は、25〜30分の添加時間に対して250〜290ml/minであってよく、ZOC溶液の流速は15〜30分の添加時間に対して150〜180ml/minであってよい。この流速は、上記溶液について示されたものであり、異なる量の反応物を使用する場合は、規模を拡大または縮小しうる。リン酸流速が上昇すると、反応槽中のその濃度の安定性は増大し、硬く安定した結晶質ZrP粒子が生成される。これに反して、流速が下降すると脆い生成物が生成される。具体例として、反応物の添加時間は30分であってよい。他の流速および時間も使用することもできる。
【0040】
本発明による方法によって形成したスラリー中のゾルゲルリン酸ジルコニウム粒子は、直ちに滴定してスラリーのpHを上げることによって安定させることができる。例えば、スラリーは、50%NaOHなどの塩基で滴定してpH約1〜2の範囲まで上げてよい(典型的には、形成されたときスラリーのpHは0.1付近である)。次いで、リン酸ジルコニウム粒子を沈殿させ、さらに硬化させた後、スラリーを徐々に滴定して高いpH、例えばpH5.5またはpH6にし、完成生成物を得ることができる。部分的滴定を行うと、その物質の酸度は直ちに減少し、それ以外では、(格子HがHOと結合してヒドロニウムイオンが形成されるので)水和反応の水の吸着とゲルの柔軟化が誘発される。徐々に段階的に滴定を実施することが利点であるのは、アルカリの添加が急激だと、ゲル粒子中に急速に水が形成され、それによって粒子が破壊され、過剰な数の微粒子が生成される恐れがあるということにある。吸着剤透析カートリッジ中のリン酸ジルコニウム粒子という特定の使用には、スラリー中既にNaおよびPOイオンが存在するので、生成物中の最適Na含有量を得るためには、2回目の滴定でpH5.5にするのが好ましい。
【0041】
本発明で使用されるリン酸濃度範囲でのゾルゲル沈殿は、たとえ添加物を使用しても室温で高速に反応する傾向があるので、周囲温度より高温で加熱しなくても上記の技術を実施することができる。典型的には、室温で沈殿させた後、必ずしもゾルゲル生成物を熱処理する必要はない。しかし、水中で熱処理を実施することは、結晶性を亢進することによってリン酸ジルコニウム粒子の分子構造を改善するのに役立つかもしれない。熱処理は、以下のオキソル化(oxolation)反応
【化1】

を促進することによって、そしてゾルゲル沈殿で形成されたリン酸ジルコニウム格子からイオン性不純物が放出されるのを援助することによって、ZrPの結晶構造を改善する。例えば、硫酸ナトリウムなどの硫酸塩含有化合物をリン酸ジルコニウムの形成で添加物として使用する場合、水中でのゾルゲル生成物の熱処理は、リン酸ジルコニウム格子から残留する硫酸塩を放出させるのに役立つであろう。熱処理を実施する方法の一例として、ゾルゲル沈殿によってリン酸ジルコニウムを形成した後、その反応スラリーをろ過洗浄して塩化物、過剰なリン酸、硫酸塩、および添加薬物を除去することができる。次いで、ろ過によって得られたろ過ケークを脱イオン水(またはRO水)槽に移すことができ、そのスラリーを短時間攪拌(第一洗浄)することができる。ろ過洗浄は、例えば、スラリー中の総溶解固形物濃度(TDS濃度)が1200ppm未満になるまで繰り返してよい。ろ過ケークは、撹拌器を備えた加熱容器中の脱イオン水(またはRO水)槽に移してよく、そのスラリーを中速の攪拌速度で約180〜185°F(約82〜85℃)に徐々に加熱し、温度をこの範囲で1時間以上維持しうる。次いで、加熱したスラリーを放置して室温まで冷まし容量を水で調節してよい。その後、スラリーを50%NaOHなどの塩基で開始pH約1.8から所望のpHに、例えばpH5.75、pH6、またはpH6.25(またはそれらの間の範囲)に滴定し、様々なNa含有量および酸度のZrP生成物を得ることができる。次いで、滴定したZrPは、スラリーのTDS濃度が500ppm未満になるまで、脱イオン水(またはRO水)で繰り返して洗浄ろ過してよい。次いで、最終洗浄後のろ過ケークをトレイ乾燥機に移し、滴定した生成物を湿度平衡(LOD)による乾燥で14〜18%減少するまで温度約160°〜180°F(71°〜81℃)で乾燥してよい。最終生成物は、集塊させることなく(または1%未満)、例えば、目標粒径範囲30〜60μmの自由流動粉形にすることができる。
【0042】
本発明は、さらに、上記のように、オキシ塩化ジルコニウム溶液と含酸素添加物を混合して水溶性ポリマーを形成することによる、本発明の方法で中間体として形成された組成物に関する。含酸素添加物の量は、特定の添加物に依存し、性能研究によって容易に決定することができる。含酸素添加物の量は、生成物の粒径を改善するのに有効な最少量にすることができる。
【0043】
少なくとも一実施形態では、本発明は、粒径分布の20%未満が>60〜120ミクロンの範囲にあり、80%超が30〜60ミクロンの範囲にあり、かつ10%未満が30ミクロン未満の範囲にあり、アンモニア吸着能が16〜17mg NH−N/ZP(gm)であり、かつNa含有量が3.8〜6.2%であるという特性を有するリン酸ジルコニウム粒子に関する。リン酸ジルコニウム粒子を含むカートリッジを含む透析カートリッジも本発明の実施形態である。
【0044】
透析カートリッジは、リン酸ジルコニウム粒子が少なくとも一層として存在し、その透析カートリッジがさらに少なくとも一層の他の吸着剤物質層を含むことができる、リン酸ジルコニウム粒子を含むカートリッジであってよい。
【0045】
本発明のZrPは、ZrPを使用するあらゆる適用に使用することができ、そして米国公開特許出願第2002−0112609号および米国特許第6,878,283B2号、およびSorbのREDYカートリッジ(例えば、"Sorbent Dialysis Primer," COBE Renal Care, Inc.1993年9月4日版、および"Rx Guide to Custom Dialysis," COBE Renal Care, Inc. 1993年9月改訂版を参照)に記載されている吸着剤カートリッジ中のZrP層として、または追加のZrP層として使用することができ、その全てを完全に参照により本明細書に組み込む。これらの公開出願でZrPを使用する全ての実施形態は、本発明のZrPを使用する本出願の実施形態である。用途のみを例示すると、管状ハウジングまたはカートリッジ内の様々なろ過材区分を、本発明のZrP粒子と共に使用することができる。ハウジングまたはカートリッジは、顆粒状活性炭区分、固定酵素区分、粉末アルミナ(Al)区分、リン酸ジルコニウム、ならびに/あるいは酢酸塩体の含水酸化ジルコニウム(hydrous zirconium oxide)と炭酸ジルコニウムナトリウム(sodium zirconium carbonate)との混合物、または炭酸ジルコニウムナトリウム単独を含む区分のような吸着物質を含むことができる。透析カートリッジは、一層または複数のリン酸ジルコニウム粒子の層または区域を含むカートリッジであってよく、その場合、透析カートリッジは、第1端から出発して第2端で終了する、活性炭区分、固定酵素区分、粉末アルミナ区分、リン酸ジルコニウム区分、ならびに炭酸ジルコニウムナトリウム区分または酢酸塩体の含水酸化ジルコニウムと炭酸ジルコニウムナトリウムとの混合物区分の配列を含む複数のろ過材区分(または層)を有する。血液透析には、高度に精製した水を透析液ベースとして使用するのでなければ、水道水から塩素を除去するように適合させたろ過材が好ましい。その媒体は活性炭であってよい。重金属、酸化体、およびクロラミンと結合させるために、活性炭をろ過材として使用することができる。酵素変換によって尿素を炭酸アンモニウムに転換させるために、固定したウレアーゼなどの酵素をろ過材に使用することができる。ウレアーゼは、吸着、共有結合、分子間架橋結合、架橋結合ポリマー内への捕捉、マイクロカプセル化、および半透性メンブレン器具内への封じ込めによって固定することができる。吸着剤としては、アルミナ(Al)、活性炭、アニオン交換樹脂、および珪藻土を使用することができる。ウレアーゼは、非水溶性ポリマーに共有結合し、活性化手順または反応性ポリマーによって酵素ポリマー抱合体を形成するために、使用することができる。ウレアーゼの分子間架橋結合に影響を与えるために、多機能性試薬、例えば、グルタルアルデヒドおよびヘキサメチレンジアミンを使用することができる。ウレアーゼは、例えば、ポリアクリルアミドゲルなどの架橋結合ポリマー内に捕捉することができる。ウレアーゼは、例えば、ナイロン、ニトロセルロース、エチルセルロース、またはポリアミドを使用して、マイクロカプセル化することができる。ウレアーゼは、数種の透過性メンブレン器具、例えば、ペンシルバニア州ピッツバーグ在Fisher Scientificから入手できるAMICOMウルトラフィルトレーションセル、またはミシガン州ミッドランド在The Dow Chemical Co.から入手できるDOW中空繊維ビーカーデバイス内に納めることができる。塩素を除去するための活性炭の使用は、塩素が酵素を不活化する恐れがあるので、もし使用するならば、酵素を培地に固定する前に行ってよい。水道水中のアンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、および他のカチオン、ならびに有毒微量金属と結合させるためにカチオン交換物質を使用することができる。これらのろ過材の別の機能は、尿素加水分解から炭酸塩を重炭酸塩に転換することでありうる。そのようなカチオン交換物質には、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、またはゼオライトが含まれうる。アニオン交換ろ過材は、リン酸塩、フッ化物、および他の重金属と結合する。アニオン交換ろ過材の副生成物には、酢酸塩および重炭酸塩が含まれることがあり、これらはまた患者の血液の代謝性アシドーシスを正常にする。そのようなろ過材には、酢酸塩体の含水酸化ジルコニウム、含水シリカ、酸化第二スズ(stannic oxide)、酸化チタニウム(titanium oxide)、アンチモン酸(antimonic acid)、含水酸化タングステン(hydrous tungsten oxide)、または炭酸ジルコニウムナトリウムが含まれうる。
【0046】
本発明の性質を例示するために以下の実施例を提供する。しかし、本発明は、これらの実施例に記載された特定の条件または詳細に限定されないことは理解されるものとする。
(実施例)
【実施例1】
【0047】
添加物として硫酸ナトリウム
85%オルトリン酸160gmと容器A中の脱イオン水700mlを混合することによって希釈リン酸溶液を作製した。最初にZOC溶液を形成するために容器Bの脱イオン水120mlに結晶粉末形のZOC200gmを溶解し、そのZOC溶液にNaSO 25gmを加え、次いでジルコニウム−硫酸塩錯体の透明溶液を形成するために攪拌することによって、オキシ塩化ジルコニウム(ZOC)/硫酸塩溶液を作製した。次に、容器Aから、異なるレベルで3組のブレードセットを備える撹拌器を取り付けたリアクター容器Cに希釈リン酸100mlを移した。リアクター容器Cの撹拌速度を中速にし室温で、両成分の添加および混合がほぼ同時に終了(約30分後)できるように、キャピラリーチューブによって、リアクター容器Cに(容器Aから)残りのリン酸と(容器Bから)ジルコニウム−硫酸塩錯体溶液を、それぞれ、流速約23ml/minおよび8.3ml/minでポンプ移送した。反応槽では、可溶性ジルコニウム−硫酸塩錯体がリン酸と反応し、このリン酸によってジルコニウム−硫酸塩錯体から硫酸塩が排除され、100〜150ミクロン範囲の均一な粒径のZrPゾルゲル沈殿物が形成された。(追加の実験では、リン酸濃度または反応物の流速を減少させることによって、そして攪拌速度を上げることによって、カラム適用に適当な範囲(30〜60ミクロン)に粒径範囲を下げることができることが判明した)。添加終了後、同じ速度で攪拌を維持しながら、50%NaOH約40mlを加えることによって沈殿物スラリーをpH約1〜2まで滴定した。次いで、攪拌をやめてゲル沈殿物を沈殿させ、さらに硬化させた。次いで、さらに攪拌しながらスラリーをpH6まで滴定した。滴定終了後、その物質を攪拌せずに再度30分間放置し、次いで再度スラリーのpHをチェックした。pHが、5.75〜6.0の範囲で安定しているのが判明した時、それ以上攪拌するのをやめ、ワットマンろ紙#1を使用しブフナー漏斗によってスラリーをろ過した。次いで、ろ液中のTDS(総溶解固形物)が500ppms未満になるまで、ろ過ケークを十分な量の脱イオン水で洗浄して、塩化物、硫酸塩、過剰なリン酸塩、およびNaを除去した。次いで、ろ過ケークをトレイ乾燥機に移し、湿度が16〜20%LOD(湿度平衡による乾燥減量)になるまで生成物を120°F〜160°Fで乾燥した。生成物は、乾燥によっても集塊を含まない望ましい粒径範囲(この試験では100〜150ミクロン)の自由流動粉であった。
【実施例2】
【0048】
添加物としてグリセロール
ジルコニウム−硫酸塩錯体の溶液の代わりに、ZOC溶液にグリセロール20gmを加えることによって形成したジルコニウム−グリセロール錯体溶液を使用した以外は、実施例1に記載したステップを繰り返した。沈殿工程中、粒径が20〜40ミクロンの範囲の平滑で卵円形の粒子が得られた。粒径が小さいにもかかわらず、グリセロールの乳化効果による形成粒子の平滑な形のために、ろ過中の流動抵抗および完成生成物のカラム適用に問題はなかった。さらに、乾燥すると、この硬質ゲルZrPは、集塊せずに自由流動粉末を形成した。生成物の試料が、粒径分布の30%未満が>60〜120ミクロンの範囲にあり、70%以上が30〜60ミクロンの範囲にあり、そして10%未満が30ミクロン未満の範囲にあり、アンモニア吸着能が16〜17mg NH−N/ZP(gm)であり、Na重量含有量が5.2〜6.2wt%であるという特性を有することについて試験した。
【実施例3】
【0049】
添加物として炭酸ナトリウム
ジルコニウム−硫酸塩錯体の溶液の代わりに、ZOC溶液に炭酸ナトリウム25gmを加えることによって形成したジルコニウム−炭酸塩錯体溶液を使用した以外は、実施例1に記載したステップを繰り返した。実施例1で炭酸ナトリウムを使用することによって、硫酸ナトリウムを使用した場合と同じ効果が工程性能および生成物の粒径で得られた。
【実施例4】
【0050】
添加物なし、リン酸の滴定
沈殿剤がNaOHでpH4まで滴定したリン酸であること以外、そして添加物なしにZOC溶液単独を使用した以外は、実施例1に記載したステップを繰り返した。未調整のリン酸とZOC単独溶液を使用することによって得られた生成物と比較して、集塊の減少が観察されたが、集塊は完全には除去されなかった。
【実施例5】
【0051】
添加物としてイソプロパノール
ジルコニウム−硫酸塩錯体を含む溶液の代わりに、ZOC溶液にイソプロパノール40gmを加えることによって形成したジルコニウム−イソプロパノール錯体溶液を使用した以外は、実施例1のステップを繰り返した。実施例1と同じように工程中集塊の減少が観察され、生成物は、100〜150ミクロンの粒径範囲の自由流動粉末であった。
【実施例6】
【0052】
同時添加物として硫酸ナトリウムおよびグリセロール
ジルコニウム−硫酸塩錯体のみを含む溶液の代わりに、添加物としてNaSOとグリセロールを使用することによって形成されたジルコニウム錯体溶液を使用した以外は実施例1のステップを繰り返した。
【0053】
最初にZOC溶液を形成するために脱イオン水120mlに結晶粉末のZOC 200gmを溶解し、次いでその溶液にNaSO 25gmを加えることによって溶液を作製した。ジルコニウム−硫酸塩錯体イオンの透明溶液を形成するために攪拌した後、その溶液にグリセロール25gmを加えよく混合した。(実施例2で述べたように、グリセロールは、粒子形を平滑にする乳化剤として役立ち、そしてジルコニウムイオンと錯体を形成するのに役立ちうる)本実施例で使用したリン酸を50%NaOHでpH2まで滴定して、反応中の集塊をさらに減少させた。特に、最初に工業等級リン酸(76%)173.3gmと容器中の脱イオン水400mlを混合し、次いでその酸を50%NaOH56mlでゆっくり滴定してpH約2.0にすることによって希釈したリン酸溶液を作製した。次いで、その希釈した酸の100mlを容器から、異なるレベルで3組のブレードセットを備える撹拌器を取り付けた1500mlリアクター容器に移した。撹拌速度を高速にして室温で、両成分の添加および混合がほぼ同時に終了(約30分後)できるように、残りのリン酸と硫酸ジルコニウム/グリセロール錯体溶液を、それぞれ、流速約20ml/minおよび8ml/minでポンプ移送した。形成された硬質ゲルZrP沈殿物は、30〜60ミクロンの均一な範囲粒径であり、それはカラム適用に適しているサイズであった。(実施例1で得られた粒径と比較して)小さいサイズは、高速の攪拌速度およびグリセロールの乳化効果によるものと考えられる。沈殿終了後、スラリーをpH6.0まで滴定し、続いて実施例1のように生成物を洗浄し乾燥した。生成されたZrPは、乾燥しても集塊を含まない30〜60ミクロンの粒径範囲の自由流動粉末であり、アンモニア吸着能は約17mg NH−N/gmZrPであった。
【実施例7】
【0054】
添加物として炭酸ナトリウムおよびグリセロール
ZOC溶液への添加物としてNaSOの代わりに炭酸ナトリウム25gmを使用したこと以外は、実施例6のステップを繰り返した。実施例6と同じ工程性能およびZrP生成物の品質が得られた。
【実施例8】
【0055】
添加物として硫酸ナトリウムおよびグリセロールを使用し、かつ処理パラメーターを変えて規模拡大
ゾルゲル沈殿によるZOCからZrPの規模拡大合成の工程性能を評価し、カートリッジ性能試験に基づいてZrPの品質を評価するために研究を実施した。規模拡大には以下の物質を使用した:サザンIonics、Inc.製オキシ塩化ジルコニウム(ZOC)、工業等級リン酸76%、添加物として硫酸ナトリウム、添加物としてグリセロール、RO水または脱イオン水、およびZrPを滴定するための50%NaOH。以下の工程設備を使用した:希釈リン酸の調製に12L容器(容器A)、ZOC/硫酸塩錯体溶液の調製に6L容器(容器B)、多翼インペラーブレード撹拌器を取り付けたリアクター容器(容器C)、撹拌器モーター、蠕動ポンプ(Watson Marlow 100〜400ml/min)を備えるリン酸およびZOC溶液を送達するための送達ライン、およびリアクター流入口に取り付けるZOC用スプレーノズル、減圧ろ過ユニット(減圧装置、ポンプ、ろ過フラスコ、ブフナー漏斗、およびワットマンろ紙#541)、pH計、TDSメーター、ならびにトレイ乾燥機。
【0056】
基線として、以下の手順によってパイロットスケールでZrPを合成した。76% HPO 4.52kgと容器A中の脱イオン化またはRO水8Lを混合することによって希釈リン酸溶液を作製した。最初にZOC溶液を形成するために、容器B中の脱イオン化またはRO水3Lに結晶粉末形のZOC 4kgを溶解し、次いでそのZOC溶液にNaSO 500gmを加え、次いでジルコニウム−硫酸塩錯体の透明溶液を形成するために攪拌することによって、オキシ塩化ジルコニウム(ZOC)/硫酸塩錯体の溶液を作製した。次にグリセロール800gmを加え混合して透明溶液を形成した。次に、容器Aからシャフトに異なるレベルで3組のインペラーブレードセットを備える撹拌器を取り付けたリアクター容器Cにその希釈リン酸を1L移した。リアクター容器Cの撹拌速度を中速にし室温で、両成分の添加および混合がほぼ同じ時間(約30分後)に終了するように、リアクター容器Cに(容器Aから)残りのリン酸と(容器Bから)ジルコニウム−硫酸塩錯体溶液を、それぞれ、流速約460ml/minおよび167ml/minでポンプ移送した。ZOC溶液がリン酸と反応する前に液滴形であるように、ZOC送達ラインのリアクターの流入口にスプレーノズルを使用した。可溶性ジルコニウム−硫酸塩錯体はリン酸と反応し、その結果、ジルコニウム−硫酸塩錯体から硫酸塩が排除され、反応槽には均一な粒径のZrPゾルゲル沈殿物が形成された。添加の終了後、同じ速度で攪拌を維持しながら、そのようにして形成されたZrPスラリーを、スラリーを希釈するための脱イオン化またはRO水4Lで希釈し、pH計によりモニターしながら、50%NaOH約2.9Lを徐々に加えてそのスラリーをpH約5.75〜6.00まで滴定した。次いで、最終pHが安定したとき攪拌をやめ、ゲル沈殿物を沈殿させ1時間硬化させた。次いで、攪拌を再開し、ワットマンろ紙#541を使用しブフナー漏斗によってスラリーをろ過した。次いで、ろ液中のTDS(総溶解固形物)が500ppms未満になるまで、塩化物、硫酸塩、過剰なリン酸塩、およびNaを除去するために、十分な量の脱イオン化またはRO水でろ過ケークを洗浄した。次いで、ろ過ケークをトレイ乾燥機に移し、湿度が16〜20%LOD(湿度平衡による乾燥減量)になるまで生成物を120°F〜160°Fで乾燥した。生成物は、乾燥しても硬い集塊を含まない望ましい粒径範囲の自由流動粉末を形成した。
【0057】
製剤および工程条件を多少調整する効果について研究するために、製剤および工程条件(添加物量およびZOC濃度、リン酸濃度およびモル混合比、反応物供給量、攪拌速度、滴定前ZrPスラリー希釈など)を多少調整して、10バッチのゾルゲルZrP(約4kg/バッチ)を作製した。バッチの全てにおいて、以下の工程条件は変えなかった:混合終了時間:30分、滴定前ZrPスラリー希釈:HO 4L、および滴定に必要なNaOH量およびpH:3L以下、pH5.5。次いで、沈殿中の集塊、微細な粒子の量、およびろ過困難さ、および粒径範囲(30〜60ミクロンが理想的)に基づく生成物の品質、アンモニア吸着能、およびカートリッジ性能に基づいて各バッチを評価した。具体的バッチを表1に示す。
【表1】


【0058】
試験バッチの全てで、沈殿中の集塊も、乾燥時の集塊も、ろ過困難もなかった。試験バッチを生成物の品質およびカートリッジ性能について試験した。粒子の脆弱性、NH吸着、粒径範囲、ならびにUNC(尿素窒素吸着能)、未使用ZrPの%割合、およびカートリッジ圧力を含むカートリッジ性能パラメーター。QC単一パスシステムを使用し、三つ組試験でREDY(登録商標)D−31吸着剤透析カートリッジを用いてカートリッジ性能パラメーターを試験した。工程性能および生成物の品質データを表2に示す(試験化合物は表1のものと同じ化合物である)。便宜上、処理パラメーターを表2に要約する。
【表2】

【0059】
表2に示す通り、ZrPの粒径および粒径分布は、高速の攪拌速度と組み合わせた最適の添加物量を使用することによって制御することができ、それによって良好なカートリッジ吸着性能に典型的最適範囲である30〜60ミクロンの目標ZrP粒径範囲内で均一な粒径を達成することができる。過剰な添加物量は、微細な粒子(<10ミクロン)の量を増大し、高いフロー抵抗および高いカートリッジ背圧の原因となり、他方で不十分な量では集塊を増大させ、大きな粒子(>6ミクロン)を形成する原因となり、アンモニア漏出およびカートリッジの吸着能(または低いUNC)の低下を引き起こす。反応物の濃度と共に攪拌速度および時間も、粒径範囲の制御に重要な要素である。攪拌速度が遅いと、目標範囲よりも大きいまたは小さい粒子が多く生成されることによって非均一な粒径範囲が増大し、それに対して最適の添加物量と併せた高速の攪拌速度は粒子の均一性を増大する。生成物のカートリッジ性能によって反映されるように、様々な量の添加物および攪拌速度を使用することが、生成物の粒径分布に及ぼす影響を上記表2の結果によって要約できる。カートリッジ試験結果(試験8、9)は、上記カートリッジ性能の要件を満たすために粒径が制御可能であることを示し、限定しない例として、少なくとも一種の特定の吸着剤透析カートリッジで使用するために、パイロットスケールでZrP粒子を製造するのに最適の添加物量は、以下の通りであることが判明した:ZOC固体4kg/HO 2.4L;NaSO 300gmおよびグリセロール200gm。
【実施例9】
【0060】
様々な添加物の評価
以下の一般的合成手順を使用して、様々な添加物を選別し評価した。希釈リン酸およびZOC溶液を、それぞれ、容器Aおよび容器Bに調製する。76%工業等級HPO39重量%と、容器Aの脱イオン水またはRO水61重量%を混合することによって、希釈リン酸溶液を製造した。ZOC固体粉末57重量%と、脱イオン水またはRO水34重量%、さらに添加物である残りのもの、例えば、硫酸ナトリウム約4.5重量%および界面活性剤/分散剤約2.4%などを混合することによってZOCを製造する(以下具体例に具体的な量を示す)。次に希釈リン酸の約40%を容器Aから撹拌器を取り付けたリアクター容器Cに移す。リアクター容器Cの撹拌速度をやや高速にし室温で、リアクター容器Cに容器BからZOC溶液をポンプ移送してリン酸と混合する。ZrPの沈殿は直ちに始まり、界面活性剤/分散剤の量および攪拌速度によって粒径を制御する。反応するリン酸は、容器Aから希釈リン酸を同時に加えることによって補充する。希釈リン酸とZOC溶液の流速は、両反応物の添加がほぼ同時に終了(例えば、約30分後)するように調整する。リン酸の添加の終了は、ZOC溶液の添加の終了よりもわずかに早い場合もある。
【0061】
添加終了後、生成物スラリーをろ過して、塩化物、過剰なリン酸、および硫酸塩を含む添加物の大部分を除去する。ろ過ケークを脱イオン水(またはRO水)の槽に移し、短時間スラリーを攪拌する(第一洗浄)。スラリーのTDS濃度が1200ppm未満になるまで、ろ過および洗浄を繰り返す。
【0062】
熱処理を施す場合は、初期洗浄後にZrPをろ過し、撹拌器を備えた加熱容器中の脱イオン水(またはRO水)槽に、ろ過ケークを中速で攪拌しながら移すことによってこれを行う。スラリーを中程度の速度で約180〜185°Fに加熱し、その温度をこの範囲で約1時間維持する。小さい粒径を望む場合、攪拌速度を速くして処理時間を長くすることによってこれは実現することができる。次いで、スラリーを室温に冷まし、必要に応じて水で容量を調整する。
【0063】
次に、スラリーを50%NaOHでpH1.8以下からpH5.75、pH6、またはpH6.25まで滴定して、異なるNa含有量および酸度のZrP生成物を得る。次いで、スラリーのTDS濃度が500ppm未満になるまで、滴定したZrPを脱イオン水(またはRO水)で繰り返しろ過洗浄する。
【0064】
最終洗浄後に、ろ過ケークをトレイ乾燥機に移し、約160°〜180°Fの温度で14〜18%LODまで乾燥する。最終生成物は、典型的には、集塊がない(または1%未満)30〜60μmの目標粒径範囲内の自由流動粉末形である。
特定の添加物を用いる一般的合成手順の使用
【0065】
熱処理を省くことを除き、上記ゾルゲル沈殿法を以下の特定の添加物に使用した。各試験では、ZOCを80gm使用し、HPO:ZrOClのモル比3:1を維持した。残り成分量を以下に明記した。
(1) グリセロール(ZOC 80gmにつき4gm、6gm)
(2) AEROSOL 22またはCYBREAK 4003(ZOC 80gmにつき0.8gm;1.5gm;2gm;6gm)
(3) DL酒石酸(ZOC 80gmにつき0.5gm;1gm;1.5gm)
(4) ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)(ZOC 80gmにつき0.5gm;1gm)
(5) ポリビニルアルコール(ZOC 80gmにつき0.5gm;1gm)
(6) 2アミノ−2メチルプロパノール95%(ZOC 80gmにつき4gm)
(7) ヒドロキシプロピルセルロース(ZOC 80gmにつき0.5gm)
(8) TRITON 100(ZOC 80gmにつき3gm)
(9) RHODASURF ON-870(ZOC 80gmにつき4gm)
(10) TETRONIC 1307(ZOC 80gmにつき6gm)
(11) 酒石酸/硫酸ナトリウム(ZOC 80gmにつき6/6gm)
(12) SDS/硫酸ナトリウム(ZOC 80gmにつき3/6gm)
【0066】
熱処理を含め、上記ゾルゲル沈殿法を以下の特定の添加物に使用した。
(13) グリセロール/硫酸ナトリウム(ZOC 80gmにつき6/6gm)
(14) ラウリル硫酸ナトリウム/硫酸ナトリウム(ZOC 80gmにつき3/6gm)
(15) AEROSOL 22/硫酸ナトリウム(ZOC 80gmにつき4/6gm)
具体的な量を使用する具体例
上記一般的合成手順による合成では、熱処理および添加物として酒石酸を使用することなく、ZOC溶液には、ZOC 80gm、DL酒石酸1.5gm、および脱イオン化もしくはRO水45mlが含まれた。希釈リン酸溶液には、工業等級76% HPO 90.4gmおよび脱イオン化もしくはRO水140mlが含まれた。希釈リン酸溶液の80mlを最初にリアクター容器Cに加えた。ZOC溶液を1.4ml/minの速度でリアクター容器Cに加え、希釈リン酸溶液は4ml/minの速度で加えた。最終生成物は、1%未満の集塊(>100ミクロン)を含む、平均粒子径が60ミクロンの自由流動粉末形であった。生成物のアンモニア吸着能は16.46mg/gmであり、充填密度は1cc当たり0.94gmであった。収量は101gmであった。
【0067】
DL酒石酸と組み合せて硫酸ナトリウム6gmを含むことを除き、同じ合成手順を使用したが、最終生成物には集塊も微細な粒子も含まれず、30〜60ミクロンの均一な粒径範囲であった。結晶性の改善を反映して粒子は硬度を増した。
全体の結果のまとめ
【0068】
これらの添加物のそれぞれと、かつ明記した添加物量のそれぞれを用いて生成したリン酸ジルコニウム粒子をアンモニア吸着能、粒子の充填密度および硬度、粒径範囲の制御性;生体適合性試験および透析適用FDA安全性限界に基づいて適用する間の有毒薬物の放出の欠如または放出;ならびに受容可能な工程性能、経済的要素(コストおよび収量)、および工程危険性に基づく製造ならびに廃棄物処理の実現可能性;に従って評価した。結果を表3に示す。
【表3】


【0069】
要約すると、この研究で試験した界面活性剤および分散剤の全てが、リン酸と反応中のZrPの集塊を防止し、生成物の粒径を制御することができる。これらの界面活性剤の全ては、その内部に酸素原子を有する官能基を含み、その酸素原子はZOCと共に可溶性ジルコニウムポリマー種を形成し、ZrPのゲル化を引き起こしうるZrから配位された水分子を除去する傾向がある。一般的に、分散剤の量、反応中の攪拌速度、およびZOC溶液とリン酸の濃度を最適に調整することによって補助した場合、乳化強度が高い分散剤の方が、30〜60ミクロンの適当な範囲に粒径を制御するのに有効であった。硫酸ナトリウムと組み合せた、グリセロールまたは酒石酸などの強力な分散剤が好ましい。
【0070】
様々な型の添加物を使用して得られたZrP生成物のアンモニア吸着能に有意差はなかったが、以下の観察がなされた。
【0071】
(i) ミセル形成が多い界面活性剤(すなわち泡沫が多い界面活性剤)(例えば、AEROSOL 22、ラウリル硫酸ナトリウム、Triton 100、Rhodasurf ON-870、Tetronic 1307)は、たとえ充填密度が改善されているようには見えなくても、ZrPのアンモニア吸着をわずかに上昇させる傾向がある。
【0072】
(ii) 硫酸ナトリウムと別の添加物の組合せは、ZrP生成物の硬度および充填密度の改善に役立つが、ZrP格子から残留硫酸塩を放出するために水中で生成物を熱処理しないと、同時にアンモニア吸着能をわずかに減少させる。
【0073】
製造目的には、たとえアンモニア吸着がわずかに上昇するとしても、泡沫の多い界面活性剤は余り好ましくない。また、硫酸ナトリウムは、依然として生成物の硬度、粒径、および充填密度を改善するのに好ましい。従って、この点においてグリセロール/硫酸ナトリウムおよび酒石酸/硫酸ナトリウムが好ましい。
【0074】
添加物に基づいて、どの特定のZrP生成物の充填密度も、その他に対して明らかに改善が見られるということはなかった。硫酸塩、カルボン酸塩、またはグリセロールを含む添加物は、アルコール、エーテル、またはグリコールを含む添加物よりも高い充填密度ZrPを有することができる。充填密度はまた、生成物の水分含有量によって影響を受ける恐れがある。生成物を熱処理することによって充填を改善することができる。
【0075】
残留界面活性剤/分散剤は、ZrP格子と密接に結合するようになる可能性があり、洗浄によっても効果的に除去できない。透析用カートリッジにZrP粒子を使用する場合、そして生成物をさらに精製するための熱処理を施さない場合、これらの残留薬物は透析中に再び放出される恐れがある。この理由のため、Triton 100、Rhodasurf ON-870、および2アミノ−2メチルプロパノール95%は、それらの放出がその毒性のため問題となりうる透析、または他のあらゆる用途に使用されるZrP粒子の形成に好ましくない。他方で、毒性試験によれば、グリセロール/硫酸ナトリウムを使用して作製されたZrP粒子は透析で使用するのにより好ましい。
【0076】
リスト中の添加物のどの使用に関しても処理上の困難さはなかった。生成物は、洗浄中ろ過問題を引き起こしたり、反応中および乾燥後に集塊したりすることもない。しかし、ミセル形成が多い界面活性剤(すなわち泡沫がより多い界面活性剤)は、残留する界面活性剤または泡沫を除去するために、ZrP粒子に過剰な洗浄処理を行うことがある。従って、効率に関しては泡沫の多い分散剤は好ましくない。
【0077】
収量は、添加物の性質の影響を受けないと思われるが(ゾルゲル沈殿工程の理論収量は100%のはずである)、様々な添加物の使用に伴い実際の収量は変動する可能性があり、その変動は洗浄ろ過中の微細な粒子の損失によって生じうる。脆い粒子が形成される可能性を排除するために、適当な添加物を選択して使用することができる。試験結果から、グリセロール、グリセロール/硫酸ナトリウム、酒石酸、およびラウリル硫酸ナトリウムが他のものよりも性能が良い。
【0078】
生成物の品質、工程性能、コスト、および安全性要素についての上記分析に基づき、好ましい界面活性剤/分散剤は、グリセロール、ラウリル硫酸ナトリウム、酒石酸、およびAEROSOL 22である。硫酸ナトリウムは、上記のどれと組み合わせて使用しても、ZrPの結晶性、硬度、充填密度、および粒径均一性を高めることができる。
【0079】
熱処理を実施した例では、アンモニア吸着能、粒径均一性、充填密度、および粒子硬度が改善された。これは、処理中に、結晶性が上昇し、ZrP格子からイオン性不純物が放出されたためであると考えられる。例えば、グリセロール/硫酸ナトリウムの組合せを添加物として使用した例では、熱処理を実施しなった時は、ZrP生成物のアンモニウム吸着は約16.6mg/gmであり、充填密度は0.98gm/ccであったが、熱処理を実施した時は、ZrP生成物のアンモニウム吸着は約17.1mg/gmであり、充填密度は1.05gm/ccであった。
【実施例10】
【0080】
添加物として硫酸ナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウム(SDS)を使用し規模拡大
以下の手順によりパイロットスケールでZrPを合成した:工業等級76%HPO 4.52kgと、容器A中の脱イオン化またはRO水7Lとを混合することによって希釈リン酸溶液を作製した。最初に容器Bの脱イオン化またはRO水2.4LにSDS100gmと硫酸ナトリウム300gmを溶解し、次いで結晶粉末形のZOC 4kgを加え、次いでジルコニウムポリマー錯体の透明溶液を形成するために攪拌することによって、添加物としてSDSおよび硫酸ナトリウムを含むZOC溶液を作製した。次に希釈リン酸の3Lを容器Aから撹拌器を取り付けたリアクター容器Cに移した。リアクター容器Cの撹拌速度を適度に高速にし室温で、容器BからZOC溶液をリアクター容器Cにスプレーノズルを通じてポンプ移送してリン酸と混合した。ZOC溶液中のSDS量を選択し、攪拌速度を選択することによって、粒径が30〜60ミクロンの範囲に制御されたゾルゲルZrPが即時に形成された。反応中に消失するリン酸は、容器Aからリン酸の残りをポンプによって補充した。リン酸の添加の終了をZOC溶液の添加よりわずかに早くさせながら、ZOC溶液およびリン酸の添加が、約30分後に終了するように各反応物流の流速を調整した。
【0081】
反応終了後、生成物スラリーをろ過して、塩化物、過剰なリン酸、および硫酸塩を含む添加物の大部分を除去する。ろ過ケークを脱イオン水(またはRO水)槽に移し、スラリーを低速で短時間攪拌した(一回目の洗浄)。スラリーのTDS濃度が1200ppm未満になるまで、ろ過および洗浄を繰り返した。
【0082】
撹拌器を備えた加熱容器中の脱イオン水(またはRO水)槽に、最後のろ過ステップから得たろ過ケークを移した。中速で攪拌しながら、スラリーを中程度の速度で約180〜185°Fに加熱し、温度をこの範囲で約1時間維持した。次いで、スラリーを室温に冷まし、容量を水で調整した。
【0083】
次に、スラリーをpH約1.8からpH5.75、pH6、またはpH6.25にするために50%NaOHで滴定して、異なるNa含有量および酸度のZrP生成物を得た。次いで、スラリーのTDS濃度が500ppm未満になるまで、滴定したZrPを脱イオン水(またはRO水)で繰り返してろ過し洗浄した。
【0084】
最終洗浄後、ろ過ケークをトレイ乾燥機に移し、14〜18%LODになるまで約160°〜180°Fの温度で乾燥した。最終生成物は、集塊(>100ミクロン)1%未満および微細な粒子(<10ミクロン)10%未満を含む、平均粒子径30〜40ミクロンの自由流動粉末形であった。生成物のアンモニア吸着能は16.6mg/gmであり、充填密度は0.8gm/ccであった。収量は3841gmであった。QC単一パス試験手順に従って、その物質をD−31カートリッジに入れて試験した。粒径は、攪拌速度および添加物量を下げることによって調節することができる。さらに、充填密度は、熱処理時間および温度を増加することによって改善できると考えられる。さらに、沈殿反応中の集塊およびゲル化などの工程困難さ、工程中の粒子の分解、微細な粒子の形成によるろ過困難さ、500ppm未満のTDS濃度を実現するためのZrP生成物の洗浄困難さ、または乾燥時の生成物の集塊は見られなかった。
【0085】
本出願人は、本開示中に引用した全ての参照文献の内容全体を明確に組み込む。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、または好ましい値より高いおよび好ましい値より低いリストとして示される場合、これは、範囲を別個に開示しているか否かに関わらず、任意の上限範囲または好ましい値、ならびに任意の下限範囲または好ましい値の任意のペアから形成された全ての範囲を具体的に開示していると理解されたい。数値範囲が本明細書に列挙されている場合は、特に明記しない限り、その範囲は、範囲内のそのエンドポイント、および全ての整数、および比を含むものものとする。範囲を定義する場合、本発明の範囲は、列挙した具体的値に限定されないものとする。
【0086】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考察、および本明細書に開示した本発明の実施から当業者に明らかであろう。本明細書および実施例は、代表例にすぎないと見なされ、本発明の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲およびその同等物によって示されているものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽にオキシ塩化ジルコニウム溶液とリン酸溶液とを同時に加えることにより、ゾルゲル沈殿によってリン酸ジルコニウム粒子を得るステップを含む、リン酸ジルコニウム粒子の作製方法。
【請求項2】
少なくとも一個のスプレーヘッドを通して、反応槽にオキシ塩化ジルコニウム溶液を加える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リン酸溶液と混合する前は、オキシ塩化ジルコニウム溶液が液滴形である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応槽が撹拌器を具備する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記撹拌器が、異なるレベルでシャフトに取り付けた複数のブレードを有するシャフトを具備する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
粒径が制御されているリン酸ジルコニウム粒子の作製方法であって、
請求項1に記載の方法によるゾルゲル沈殿によってリン酸ジルコニウム粒子を形成するステップを含み、
該リン酸ジルコニウム粒子が、以下のパラメーター:反応槽にオキシ塩化ジルコニウム溶液を加える速度、反応槽にリン酸またはリン酸塩の溶液を加える速度、リン酸またはリン酸塩の溶液のpH、反応槽中のオキシ塩化ジルコニウムおよびリン酸もしくはリン酸塩の濃度、または撹拌器の速度、あるいはそれらの組合せ、の少なくとも一つを制御することによって得られる粒径および粒径分布を有する作製方法。
【請求項7】
水性溶液中に水溶性ジルコニウム含有ポリマーを含む組成物であって、該ポリマーが、水性溶媒中で、ジルコニウムイオンと錯体を形成することができる少なくとも一種の含酸素添加物と、オキシ塩化ジルコニウムとを混合することによって形成される組成物。
【請求項8】
前記含酸素添加物が、無機硫酸塩、無機炭酸塩、アルコール、カルボン酸塩、ケトン、アルデヒド、有機硫酸塩、またはそれらの組合せである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記含酸素添加物が、硫酸ナトリウムとグリセロールの組合せ、硫酸ナトリウムとラウリル硫酸ナトリウムの組合せ、硫酸ナトリウムと酒石酸の組合せ、または硫酸ナトリウムとN−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホサクシナメート四ナトリウムの組合せ、あるいはそれらの組合せである、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
粒径分布の20%未満が60〜120ミクロンの範囲にあり、80%超が30〜60ミクロンの範囲にあり、かつ10%未満が30ミクロン未満の範囲にあり、
アンモニア吸着能が15〜20mg NH4−N/ZP(gm)であり、かつ
リン酸ジルコニウム粒子の重量に対するNa+含有量が3.8〜6.2wt%である
という特性を有するリン酸ジルコニウム粒子。
【請求項11】
アンモニア吸着能が、16〜17mg NH4−N/ZP(gm)である、請求項10に記載のリン酸ジルコニウム粒子。
【請求項12】
請求項10に記載のリン酸ジルコニウム粒子を含むカートリッジを含む、透析カートリッジ。
【請求項13】
前記リン酸ジルコニウム粒子が一層として存在し、前記透析カートリッジが少なくとも一層の他の吸収物質層をさらに含む、請求項10に記載の透析カートリッジ。
【請求項14】
前記透析カートリッジが、任意の順序で、活性炭区分、固定酵素区分、粉末アルミナ区分、リン酸ジルコニウム区分、ならびに炭酸ジルコニウムナトリウム区分または酢酸塩体の含水酸化ジルコニウムと炭酸ジルコニウムナトリウムとの混合物区分を含む複数のろ過材区分を有する、請求項10に記載の透析カートリッジ。
【請求項15】
前記透析カートリッジが、第1端から出発して第2端で終了する、活性炭区分、固定酵素区分、粉末アルミナ区分、リン酸ジルコニウム区分、ならびに炭酸ジルコニウムナトリウム区分または酢酸塩体の含水酸化ジルコニウムと炭酸ジルコニウムナトリウムとの混合物区分の配列を含む複数のろ過材区分を有する、請求項10に記載の透析カートリッジ。

【公開番号】特開2012−72059(P2012−72059A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245377(P2011−245377)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【分割の表示】特願2007−549421(P2007−549421)の分割
【原出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(504200939)レナル ソリューションズ,インク. (2)
【Fターム(参考)】