説明

リースによる社会資本の整備方法及び装置

【課題】道路や側溝などの社会資本の整備をリースで行う場合に予想される、官民の境界が不明確となり、責任の所在も曖昧となるなどの管理上の問題を解消する。
【解決手段】リースによって整備された側溝15の区間を道路地図上に表示する。データベースはリースによって整備された側溝15を表示する地図データを有し、端末のプルダウンメニューから社会資本の種類、地域を選択することにより、当該地域におけるリース物件の側溝15を表示した図面が端末画面に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路(橋梁を含む。以下同じ)やその付帯設備、例えば側溝やマンホール等の排水設備をリースによって整備する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国や地方公共団体の財政が逼迫し、公共事業費が削減されるなかで、上述する道路やその付帯設備(以下、社会資本ということがある)の新たな整備は困難な状況になっている。そこで近年、民間資金を利用して民間に公共施設の整備と、公共サービスの提供を委ねるPFI(Private Finance Initiative)と呼ばれる手法が導入されるようになってきた。
【0003】
また公共施設の整備や維持管理のため、レンタルやリースなどの賃貸システムを導入する提案もなされている(特許文献1)。
【0004】
社会資本をリースによって整備する手法によると、
(1)少ない予算でも必要な社会資本を整備することができ、一時的な負担を軽減できること、
(2)社会資本は法定の耐用年数の如何にかかわらず、使用され続け、例えば道路に穴が開いたり、排水設備を構成する側溝の溝蓋やマンホールの蓋等に欠陥を生じたときに、その都度改修したり、補修したりしている実情にあり、また上記欠陥により被害を生ずると、被害者への補償などの問題を生ずることもあるが、リースによって整備された社会資本は、所有権が民間側にあるため、民間側に維持管理の責任を生じ、民間側は責任回避上、定期的に点検することを余技なくされるようになることから、事故がおきる前に欠陥を見付け出すことが可能となり、事故を未然に防ぐことができること、
(3)リースは通常、一定期間で契約が終了し、再リースする際には、社会資本の再構築が行われるため、最新及び最適の社会資本を定期的に整備することが可能となり、廃棄された社会資本はものによっては、再利用し、資源の有効利用を図ることができること、
などの利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−306670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リースによる社会資本の整備は、前述するような利点を有するが、自治体や公団(以下、官側ということがある)が所有する既存の社会資本の一部に欠陥を生じ、それを改修ないし補修するため、当該部分にリースを適用することは事実上困難である。社会資本の一部の所有権が民間に移り、官民の所有権が入り交じるようになると、官民の境界が不明確となりがちで、管理上難しく、また事故が起きた場合、所有権を官民どちらかに特定することが困難で、責任の所在が曖昧になりがちになるためである。
【0007】
本発明は、社会資本をリースによって整備する方法及び装置における上記の問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、例えば歩道、自転車道、自転車歩行者道或いは車道等の道路(中央分離帯や路肩等を含む)と、側溝やマンホール等の排水設備、道路標識、並木、照明設備或いは防護柵、駒止等の交通安全設備、上下水道等の付帯設備とよりなる社会資本のうち、少なくとも一つの社会資本をリースによって整備する方法において、リースによって整備された前記社会資本の区間が道路地図上に表示されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明を実施する装置に関するもので、リースによって整備された道路及び若しくは上記付帯設備の区間を表示した地図データからなるデータベースが格納される記憶手段と、社会資本の種類や地域を選択するための入力手段と、該入力手段からのデータ入力により前記記憶手段に格納されるデータベースを検索する検索処理手段と、該検索処理手段によって検索された地図データを表示する表示手段とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、リースによる社会資本の整備が道路地図上に表示される区間で行われ、地図上でリース区間とそれ以外が容易に判別され、所有権が特定できるため、管理が容易で、責任の所在も明確となり、リースによる問題が生じなくなる。そのため前述する道路や側溝その他の道路付帯設備をリースにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本装置の構成の一例を示すブロック図。
【図2】本装置に係わるリース情報提供サーバの一例を示すブロック図。
【図3】リース物件の道路を表示した地図表示画面の一例を示す図。
【図4】リース物件の側溝を表示した地図表示画面の一例を示す図。
【図5】地図指定受付画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面により説明する。
図1は、本実施形態に係わる装置の構成の一例を示すもので、地図データベースを格納する記憶手段1を備えた地図データベースサーバ2と、プリントサーバ3と、リース情報提供サーバ4と、端末5とを有し、地図データベースサーバ2とプリントサーバ3とリース情報提供サーバ4は基幹系LAN6で接続され、またリース情報提供サーバ4とパソコンよりなる端末5とはユーザ系LANによって接続されている。
【0013】
なお、前述する地図データベースサーバ2、プリントサーバ3及びリース情報提供サーバ4は、単一のコンピュータ上に構築することもできる。
【0014】
前記記憶手段1に格納される地図データベースは、自治体が管轄する管轄区域における、リースによって整備された歩道、自転車道、自転車歩行者道或いは車道等の各種道路や道路付帯設備、例えば側溝やマンホール等の排水設備、道路標識、並木、照明設備或いは防護柵、駒止等の交通安全設備、上下水道等の地図データを有している。
【0015】
図2に示すリース情報提供サーバ4は、CPUからなり、サーバ4全体の制御を行う制御部9と、地図データベースサーバ2に対し、データベース蓄積データの検索と供給を依頼する、検索処理手段としての機能を有するデータベースクライアント部10と、プリントサーバ3に対し、印刷を依頼するプリントクライアント部11と、インターネット、スキャナー或いはデジタルカメラ等で取り込んだ地図上に入力用のレイヤーを設定し、描画ソフトでリース物件の道路或いは前記各種道路付帯設備の区間を前記地図上に表示する作業を行う描画部12を有し、該描画部12によってリース区間を表示した地図情報は前記記憶手段1に格納されるようになっている。
【0016】
図3は、自治体が管轄する管轄区域C町のリース物件である道路14を太線或いは着色した線で表した地図データの一例を示すものであり、図4は、リース物件の道路付帯設備、例えばグレーチング等の溝蓋を備えた側溝15を太線或いは着色した線で表した地図データの一例を示すものである。リース物件の道路と側溝は、図3と図4に示す地図データを合成することによって表わすことができる。他の付帯設備も同様である。
【0017】
こうしたリース物件の道路や道路付帯設備は、その多くが自治体の外部機関である住宅供給公社或いは民間の開発業者が開発した造成地から、公園、道路、道路付帯設備、上下水道設備等を引き継いたものである。こうしたリース物件の道路や道路付帯設備は通常無償で引き継がれるが、後年度負担を生ずることから相当年分のリース料金を含む有償にしてもよい。
【0018】
本装置は以上のように構成され、次のその動作について説明する。
ユーザが端末5を用いてリース情報提供サーバ4にログインすると、表示手段としての端末の画面に図5a〜cに示すプルダウンメニューが表示され、このメニューの中からユーザがリース物件の種類である、付帯設備、側溝を順に選択し、ついで地域C町を選択すると、図4に示すようなC町におけるリース物件の側溝地図が表示される。なお、上述するログインやメニューの選択は端末5に備わるマウスやキーボード等の入力手段を用いて行われる。
【0019】
本装置によると、リース物件の道路や付帯設備が地図上において特定の区間で表示されるため、ユーザはどこからどこまでがリースの道路や道路付帯設備であるかを容易に知ることができ、リースの範囲を特定できるため管理が容易となり、責任の所在が明確になるため、リースにすることによる問題が生じなくなる。その結果として、道路やその付帯設備をリースにすることが可能となる。
【0020】
前記実施形態は、自治体の管轄区域内の道路や付帯設備について示すものであるが、国土交通省や特殊法人等が管轄する道路や付帯設備についても上下水道を除き、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1・・記憶手段
2・・地図データベースサーバ
3・・プリントサーバ
4・・情報提供サーバ
5・・端末
6・・基幹系LAN
7・・サーバ系LAN
9・・制御部
10・・データベースクライアント部
11・・プリントクライアント部
12・・描画部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路と、該道路の付帯設備とよりなる社会資本のうち、少なくとも一つの社会資本をリースによって整備する方法において、リースによって整備された前記社会資本の区間が道路地図上に表示されることを特徴とするリースによる社会資本の整備方法。
【請求項2】
リースによって整備された道路及び若しくは上記付帯設備の区間を表示した地図データからなるデータベースが格納される記憶手段と、社会資本の種類や地域を選択するための入力手段と、該入力手段からのデータ入力により前記記憶手段に格納されるデータベースを検索する検索処理手段と、該検索処理手段によって検索された地図データを表示する表示手段とからなることを特徴とする請求項1記載のリースによる社会資本の整備方法を実施する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−8895(P2012−8895A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145682(P2010−145682)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【Fターム(参考)】