説明

リーダライタシステム、及び物品仕分システム

【課題】RFIDタグが移動しているか停止しているかを判別することができるリーダライタを提供する。
【解決手段】リーダライタシステム100は、アンテナ6a、6bを備えたリーダライタ50と、PC60により構成されている。また、PC(制御手段)60は、リーダライタ50と情報の授受を行なう通信部20と、リーダライタ50により演算された遅延時間に基づいてタグ7とアンテナとの相対速度を演算する相対速度演算手段22と、各アンテナ6a、6bとタグ7との相対速度を比較する相対速度比較手段23と、相対速度と最接近点からタグ7の通過及び通過方向を判定する判定部24と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダライタシステム、及び物品仕分システムに関し、さらに詳しくは、アンテナと非接触情報記録媒体の相対速度から、当該非接触情報記録媒体の移動の有無を判定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波を利用したRFIDシステムは、電源を持たないパッシブ型のRFIDタグに対しても、数十cm〜数mという長い交信可能距離を持つ。しかし、RFIDタグとの交信可能距離は、RFIDタグに搭載されたアンテナの特性により決定されるため、狭指向性の小型アンテナの実現が困難な帯域(1GHz以下のUHF帯など)を利用したRFIDシステムにおいては、RFIDタグが移動しているか否かを短時間に判別することは困難であった。即ち、RFIDタグまでの距離の変化(ドップラー効果)の測定により、アンテナとRFIDタグとの相対速度を取得することは可能であったが、相対速度は絶対速度との相関を持たないため、この相対速度からRFIDタグが移動しているか停止しているかを、正確に判別することはできなかった。
特許文献1には、指向性の強い少数のアンテナで、通信不能部分の無い広い通信領域をカバーできるタグ通信用アンテナについて開示されている。
【特許文献1】特開2006−20083公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
即ち、ベルトコンベア上の物品を識別する従来のシステムの場合、例えば、ベルトコンベアの近傍にRFIDタグを取り付けた物品が置かれているとき、移動している物品と停止している物品を判別できないため、不必要な物品の情報も併せて読んでしまうといった問題がある。
また、特許文献1に開示されている従来技術では、RFIDリーダ/ライタに用いられるタグ通信用アンテナは、送信する電波のビームをスキャンできるビームスキャンアンテナであること、ビームはスキャン方向に指向性の強いビームであること、ビームのスキャンはスキャン方向を含む面が最も強い反射波の生じる反射面である床面と交わるように行われること、等の制約条件が多いため、場所によっては、アンテナを最適な位置に設置できないといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、2つのアンテナを備え、リーダライタから発信された電波とRFIDタグから反射された電波の遅延時間に基づいて、夫々のアンテナとRDIDタグとの相対速度を求めることにより、RFIDタグが移動しているか停止しているかを判別することができるリーダライタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、電波を利用して非接触情報記録媒体が移動しているか否かを判定するリーダライタシステムであって、前記非接触情報記録媒体に電波を送信する送信手段、該電波の一部を前記非接触情報記録媒体が変調することにより得た反射波を復調する復調手段、前記反射波の遅延時間を算出する演算手段、及び前記送信手段からの電波を前記非接触情報記録媒体に出力し、前記反射波を受信する固定された2つのアンテナ、を有するリーダライタと、前記リーダライタを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記演算手段により算出された遅延時間に基づいて前記各アンテナとの関係における前記非接触情報記録媒体の相対速度を演算し、少なくとも何れか一方のアンテナにより受信された反射波に基づいて演算された相対速度に係る演算結果がゼロでない場合、該非接触情報記録媒体は移動していると判定することを特徴とする。
本発明は、マイクロ波を利用して非接触情報記録媒体と通信を行うマイクロ波方式におけるリーダライタであり、リーダライタから送信した電波(マイクロ波)は、2つのアンテナから放射されて非接触情報記録媒体により変調されて反射波として夫々のアンテナにより受信される。このとき発信した電波と反射波との間には、距離に応じた遅延時間が生じる。本発明は、その時の各アンテナと非接触情報記録媒体との遅延時間から相対速度を求めることにより、非接触情報記録媒体が移動しているか停止しているかを判定する。即ち、少なくとも何れか一方のアンテナにより受信された反射波により演算された相対速度がゼロでなければ、非接触情報記録媒体が移動していると判定することができる。これにより、移動している非接触情報記録媒体を対象としたシステムにおいては、停止している非接触情報記録媒体を選別して除外することができる。また、実際に非接触情報記録媒体が移動していることを保証することができる。
【0005】
請求項2は、前記制御手段は、前記リーダライタと情報の授受を行なう通信部と、前記リーダライタにより演算された遅延時間に基づいて前記相対速度を演算する相対速度演算手段と、前記各アンテナとの関係における前記非接触情報記録媒体の相対速度を比較する相対速度比較手段と、前記相対速度比較手段の比較結果に基づいて前記非接触情報記録媒体が移動しているか否かを判定する判定部と、全体を同期制御する制御部と、を備えていることを特徴とする。
リーダライタからは各アンテナと非接触情報記録媒体間の反射波の遅延時間が出力される。制御手段は、この遅延時間から各アンテナとの関係における前記非接触情報記録媒体の相対速度を求める。そして求められた相対速度を相対速度比較手段により比較して、その結果に基づいて非接触情報記録媒体が移動しているか否かを判定する。これにより、簡単な演算結果から容易に非接触情報記録媒体が移動しているか否かを判定することができる。
【0006】
請求項3は、前記制御手段は、前記演算手段により算出された遅延時間に基づいて前記各アンテナとの関係における前記非接触情報記録媒体の相対速度を演算し、前記2つのアンテナにより受信された反射波により演算された相対速度に係る演算結果が共にゼロである場合、該非接触情報記録媒体は停止していると判定することを特徴とする。
2つのアンテナにより受信された反射波により演算された相対速度に係る演算結果が共にゼロである場合、非接触情報記録媒体は停止していると判定することができる。これにより、停止している非接触情報記録媒体を対象としたシステムにおいては、移動している非接触情報記録媒体を選別して除外することができる。また、実際に非接触情報記録媒体が停止していることを保証することができる。
請求項4は、前記制御手段は、前記非接触情報記録媒体の絶対速度がゼロではなく、且つ、前記2つのアンテナとの相対速度がゼロである時、該非接触情報記録媒体は、前記2つのアンテナを中心とし、該非接触情報記録媒体と該2つのアンテナ間の距離と直径が等しい球に沿って移動していると判定することを特徴とする。
タグの絶対速度が0ではなく、かつ、アンテナ6aと6bとタグ7との相対速度が0(移動による距離の変化が無し)である時、タグ7は、アンテナ6aと6bを中心とし、タグ7とアンテナ6aと6b間の距離と直径が等しい球に沿って移動しているといえる。
請求項5は、前記制御手段は、前記2つのアンテナを結ぶ直線上に前記非接触情報記録媒体が存在しない場合、前記2つのアンテナの相対速度がゼロでなければ、該非接触情報記録媒体は移動していると判定することを特徴とする。
【0007】
請求項6は、請求項1乃至5の何れか一項に記載のリーダライタシステムと、物品に係る情報を記録した非接触情報記録媒体を取り付けた物品と、該物品を搬送する搬送手段と、該搬送手段により搬送されてくる物品の通過を検知する検知手段と、前記搬送手段により搬送された物品を仕分けする仕分手段と、仕分制御手段と、を備え、
前記仕分制御手段は、前記リーダライタシステムにより移動していると判定された非接触情報記録媒体を取り付けた最初の物品を前記検知手段が検知すると、当該物品に係る仕分けを実行することを特徴とする。
移動する物品を識別して自動的に仕分する仕分システムに関するものである。即ち、本発明のリーダライタを備え、例えば、ベルトコンベアの近傍にアンテナを配置して、物品に取り付けられた非接触情報記録媒体との情報の授受を行い、その情報から移動している物品の並び順を識別する。また、それらの物品を仕分するために、物品が通過したことを検知する検知手段と、実際に物品を仕分する仕分機を備える。そして、PC等から構成される制御手段は、並び順を記憶しておき、検知手段が物品の通過を検知すると、並び順の最も先頭の物品が通過したと判断して、当該物品に係る仕分けを実行する。これにより、読み取り領域内の移動する物品だけの並び順を把握して、正確に仕分けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各アンテナと非接触情報記録媒体との遅延時間から相対速度を求め、少なくとも何れか一方のアンテナにより受信された反射波により演算された相対速度がゼロでなければ、非接触情報記録媒体が移動していると判定することができるので、移動している非接触情報記録媒体を対象としたシステムにおいては、停止している非接触情報記録媒体を選別して除外することができる。また、実際に非接触情報記録媒体が移動していることを保証することができる。
また、2つのアンテナにより受信された反射波により演算された相対速度に係る演算結果が共にゼロである場合、非接触情報記録媒体は停止していると判定することができるので、停止している非接触情報記録媒体を対象としたシステムにおいては、移動している非接触情報記録媒体を選別して除外することができる。また、実際に非接触情報記録媒体が停止していることを保証することができる。
また、並び順を記憶しておき、検知手段が物品の通過を検知すると、並び順の最も先頭の物品が通過したと判断して、当該物品に係る仕分けを実行するので、読み取り領域内の移動する物品だけの並び順を把握して、正確に仕分けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、本発明の一実施形態に係るリーダライタのブロック図である。このリーダライタ50は、VCO2の出力信号の位相を、基準となる入力信号の位相に同期させるPLL回路1と、PLL回路1の制御電圧に基づいて所定の周波数を発振するVCO2と、VCO2から発信された信号をマイクロ波(電波)に変調する変調器3と、マイクロ波を増幅する増幅器4(ここまでが送信手段)と、マイクロ波の方向により向きを決定するサーキュレータ5と、マイクロ波を発信して非接触ICタグ(非接触情報記録媒体)(以下、単にタグと呼ぶ)7からの反射波を受信するアンテナ6a、6bと、サーキュレータ5により合成された合成波を増幅する増幅器8と、VCO2の信号と増幅器8により増幅された信号を加算重畳してsin波を復調するミキサ9と、VCO2の信号を90°移相器10により移相した信号と増幅器8により増幅された信号を加算重畳してcos波を復調するミキサ11と、ミキサ9の信号から所定の周波数成分のみを通過するBPF12と、ミキサ11の信号から所定の周波数成分のみを通過するBPF13と、BPF12の出力信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ14と、BPF13の出力信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ16と(ここまでが復調手段)、A/Dコンバータ14とA/Dコンバータ16から位相を演算する演算器15(ここまでが演算手段)と、タグ7を同時に読取可能とするように配置された2つのアンテナ6a、6bと、を備えて構成されている。尚、図1では制御手段の図示を省略している。
【0010】
電波を利用したRFIDシステムでは、タグ7に与えた電波(CW波)の一部を、タグ7が変調を加えて戻す(振幅・位相を変化させて反射させる)ことにより、タグ7からリーダライタ50への通信を行っている。
リーダライタ50には「自ら発信した電波の反射波(後方散乱波)」が戻ることとなるが、この後方散乱波は、タグ7とアンテナ6a、又は6bとの間を往復した波であるため、自ら発信した電波に対しタグ7とアンテナ6a、又は6bの距離の倍に比例した遅延を持った波であると考えることができる。
本実施形態では、複数のアンテナ6a、6bを使用して、タグ7からの後方散乱波の遅延の測定を行い、それぞれのアンテナ6a、6bとタグ7との相対速度を求めることで、タグ7の移動の有無を判定することができる。
本発明は、マイクロ波を利用してタグ7と通信を行うマイクロ波方式におけるリーダライタ50であり、リーダライタ50から送信した電波(マイクロ波)は、2つのアンテナ6a、6bから放射されてタグ7により変調されて反射波として夫々のアンテナ6a、6bにより受信される。このとき発信した電波と反射波との間には、距離に応じた遅延時間が生じる。本発明は、その時の各アンテナ6a、6bとタグ7との遅延時間から相対速度を求めることにより、タグ7が移動しているか停止しているかを判定する。即ち、少なくとも何れか一方のアンテナの相対速度がゼロでなければ、タグ7が移動していると判定することができる。これにより、移動しているタグを対象としたシステムにおいては、停止しているタグを選別して除外することができる。また、実際にタグ7が移動していることを保証することができる。
【0011】
また、2つのアンテナ6a、6bでの相対速度に係る演算結果が共にゼロである場合、タグ7は停止していると判定することができる。これにより、停止しているタグを対象としたシステムにおいては、移動しているタグを選別して除外することができる。また、実際にタグ7が停止していることを保証することができる。
ここで、リーダライタ50に接続されたアンテナ6a、6bから送信されるCW波を

・・・(1)
とした時(AとθCは回路による決まる一定値)、同じアンテナで受信されるタグ7からの後方散乱波は、以下のように表せる。

・・・(2)
l[m]はタグ−アンテナ間の距離、cは電波の速度[m/s]、Bは空間やタグでの減衰を表す係数、θTはタグでの反射時の位相変化である。電波を利用するRFIDにおいては、タグ7からリーダライタ50への通信を行う際、タグ7で加えられる変調により、このBとθTが変化する。
ここで、タグ7→リーダライタ50間における通信がASK変調により行われる場合には、1を表すシンボルに同期して遅延時間の測定を行うとする。これにより、θTをタグ固有のある一定の値とする事ができる。
【0012】
また、BPSK変調の場合では、1または0を表すシンボルに同期して遅延時間の測定を行うとする。これにより、θTをタグ固有のある一定値θT1、もしくは、θT2(=θT1+π)のどちらかの値とする事ができる。同様に、その他の位相変調においても、あるシンボルに同期して遅延時間を測定を行うとすることで、θTをタグ固有のある一定の値とする事ができる。
このように、タグ7との通信を行う際に、そのシンボルと同期して遅延時間を測定する事により、タグ7で反射される際の位相が安定し、θTを定数値とみなすことができる。
また、変調のかけられた後方散乱波を対象として測定を行う事で、変化を持たない後方散乱波(反射波)を、BPFにより除去することが可能となり、周囲の金属物や通信状態に無いタグからの反射等の影響を排除する事ができる。
さらに、タグ7からリーダライタ50への通信を行う際に遅延時間を測定しているため、アンチコリジョン機能を持つプロトコルのもとでは、通信相手となるタグを一つに限定した条件の下で遅延時間の測定を行うことが可能となり、複数のタグが存在する環境においても、特定のタグの後方散乱波のみを選択して遅延時間を測定する事と、その通信で得られたデータ(ID)と遅延時間を関連付けて管理することが可能となる。
【0013】
後方散乱波の遅延時間の測定は、CW波と共通の信号源から作成されるローカル信号

・・・(3)
を使用して、直交検波を行うことによって行う。
これにより、以下のIQ信号が得られる。

・・・(4)

・・・(5)
ここで、CとθRは、直交検波の操作により付加される変数であるが、Cは回路により決まる値であるため一定値と考える事ができる。また、ローカル信号とCW波は、同じ信号源からの信号であるため、その位相差を回路により決まる一定値とみなすことができ、これにより、θRも回路により決まる一定値とみなすことができる。
ここで、θc・θT・θRはいずれも定数値とみなせるため、θrは以下のように表すことができる。



・・・(6)
【0014】
ただし、θRは回路による固有値であるため、使用するアンテナによって、値が異なる場合がある。そこで、あらかじめそれぞれのアンテナを使用した際のθconstの値を得ておき、各アンテナにおいて測定されたθrから、固有のオフセット量θconstを減算することで補正を行うこととし、その補正後の値をθANTnとする。

・・・(7)
タグ7への電波の送信をアンテナ6aとアンテナ6bからそれぞれ行い、その後方散乱波の遅延を同じアンテナで得たとする。この時、θANT1−θANT2により、タグ7−アンテナ6aの距離l1とタグ7−アンテナ6bの距離l2の差のd=l1−l2を得る事ができる。

・・・(8)
このとき、θANT1とθANT2の測定を行う間にタグ7が移動すると、その移動量が誤差となるが、この場合、θANT2の測定後に、再度θANT1の測定を行い平均化することで、誤差を補正できる。
【0015】
また、アンテナmで送信を行い、異なるアンテナnで受信をおこなった場合は、アンテナmとタグ7との距離をlm、アンテナnとタグとの距離をlnとした時、以下のように表すことができる。



・・・(9)
そして、回路による固有値であるθRの補正を、前記と同様に行い、その補正後の値をθANTmnとする。


・・・(10)
ここで、タグ7への電波の送信をあるアンテナaから行い、その後方散乱波の遅延をアンテナ6aとアンテナ6bで得たとすれば、θANTa1−θANTa2により、タグ7−アンテナ6aの距離l1とタグ7−アンテナ6bの距離l2の差のd=l1−l2を得る事ができる(アンテナaはアンテナ6aもしくはアンテナ6bであっても構わない)。

・・・(11)
この場合には、二組の直交検波回路を使用して同時にθANTa1とθANTa2の取得を行うこともできる。また、1つの直交検波回路とアンテナ切替回路を用いて、アンテナ6aにおいてθANTa1の測定を行った後で、アンテナ切替を行い、アンテナ6bにおいてθANTa2の取得を行ってもよい。
後者の手段を用いる場合は、θANTa1とθANTa2の測定を行う間にタグ7が移動すると、その差が誤差となるが、この場合、θANTa2の測定後に、再度θANTa1の測定を行い平均化することで、誤差を補正できる。
【0016】
図2は本発明に係るリーダライタシステムの機能を表すブロック図である。リーダライタシステム100は、アンテナ6a、6bを備えたリーダライタ50と、PC60により構成されている。また、PC(制御手段)60は、リーダライタ50と情報の授受を行なう通信部20と、リーダライタ50により演算された遅延時間に基づいてタグ7とアンテナとの相対速度を演算する相対速度演算手段22と、各アンテナ6a、6bとタグ7との相対速度を比較する相対速度比較手段23と、相対速度と最接近点からタグ7の通過及び通過方向を判定する判定部24と、を備えて構成されている。
即ち、リーダライタ50からは各アンテナ6a、6bとタグ7との遅延時間が出力される。PC60は、この遅延時間から各アンテナ6a、6bとタグ7との相対速度を求める。そして各アンテナ6a、6bとの相対速度を相対速度比較手段23により比較して、その結果に基づいてタグ7が移動しているか否かを判定する。これにより、簡単な演算結果から容易にタグ7が移動しているか否かを判定することができる。
【0017】
次に、図3を参照して相対速度からタグの移動の有無を求める。
2つのアンテナ6aと6bを用意し、読取対象とする領域を2つのアンテナの両方から読取可能なように設置する。2つのアンテナ6aと6bを結ぶ直線を直線Aとした時、直線Aの方向を、それぞれのアンテナ6aと6bにおいて指向性のヌル方向とし、その位置に存在するタグは読めないようにする。もしくは、物理的・システム的に、直線A上にタグが位置する事がないようにする。図3でアンテナ6aからタグ7までの等距離の円をR、アンテナ6bからタグ7までの等距離の円をSとし、アンテナ6aと6bの間は距離dだけ離間して設置している。ここで円R、円Sは各アンテナからタグ7までの距離であり、読取可能範囲を表しているのではない。従って、各円の外側でも読み取りが可能の場合もある。
それぞれのアンテナ6aと6bで、タグ7との通信を行い、その際にアンテナ6aと6bとタグ7の相対速度を取得する。アンテナ6aと6bが移動しないとするならば、タグ7の絶対速度が0である時、相対速度も0である。また、タグ7とアンテナ6aと6bとの相対速度が0ではない時、タグ7の絶対速度は0ではない。
【0018】
タグの絶対速度が0ではなく、かつ、アンテナ6aと6bとタグ7との相対速度が0(移動による距離の変化が無し)である時、タグ7は、アンテナ6aと6bを中心とし、タグ7とアンテナ6aと6b間の距離と直径が等しい球に沿って移動しているといえる。また、逆に、タグ7がその球に沿って移動していなければ、絶対速度が0でない場合に、相対速度が0となる事はない。
それぞれのアンテナを中心とした任意の大きさの球を考えた場合、その球同士が接する面は、直線A上にのみ存在する。このため、直線A上にタグ7が存在しないといえれば、少なくともタグ7はどちらかのアンテナを中心とした球に沿った移動はしていないといえる。
ここで、タグ7が直線A上になく絶対速度を持つならば、どちらかのアンテナではタグ7との相対速度が0にならないといえる。このため、少なくともどちらかのアンテナでの相対速度が0でなければ、そのタグは移動している(絶対速度が0ではない)といえる。
また、同様に、2つのアンテナで得た相対速度が共に0であれば、タグは停止している(絶対速度が0)といえる。即ち、移動している場合は、a1=a2で且つb1≠b2の場合、a1≠a2で且つb1=b2の場合、a1≠a2で且つb1≠b2の場合である。また、停止している場合は、a1=a2で且つb1=b2の場合である。
【0019】
図4は制御手段がタグの移動の有無を判定する動作を説明するフローチャートである。先ずリーダライタ50から得られた各アンテナ6a、6bに係る遅延時間から相対速度を演算する(S1)。演算の結果、アンテナ1(6a)の相対速度がゼロか否かを判定する(S2)。判定の結果、ゼロでなければ(S2でNO)、タグが移動していると判定する(S4)。一方、ステップS2で相対速度がゼロであれば(S2でYES)、次にアンテナ2(6b)の相対速度がゼロか否かを判定する(S3)。判定の結果、ゼロでなければ(S3でNO)、タグが移動していると判定する(S4)。一方、ステップS3で相対速度がゼロであれば(S3でYES)、アンテナ1、2とも相対速度がゼロなので、タグが停止していると判定する(S5)。
【0020】
図5は、本発明の物品仕分システムの構成を示すブロック図である。同じ構成要素には図1と同じ参照番号を付して説明する。この物品仕分システム100は、図1に記載のリーダライタ50と、電波の送受信を仲介するアンテナ6a、6bと、図示しない搬送手段により搬送されてくる物品の通過を検知するセンサ(検知手段)21と、搬送手段により搬送された物品を仕分けする仕分機(仕分手段)22と、PC(仕分制御手段)20と、を備え、PC20は、リーダライタ50により移動していると判定されたタグ7を取り付けた物品をセンサ21が検知すると、先頭の物品が通過したと判断して、当該物品に係る仕分けを実行する。
即ち、本実施形態は、移動する物品を識別して自動的に仕分する仕分システムに関する発明である。即ち、図1のリーダライタ50を備え、例えば、ベルトコンベア23の近傍にアンテナ6a、6bを配置して、物品に取り付けられたタグ7と情報の授受を行い、その情報から物品の並び順を識別する。また、それらの物品を仕分するために、物品が通過したことを検知するセンサ21と、実際に物品を仕分する仕分機22を備える。そして、PC20は、並び順を記憶しておき、センサ21が物品の通過を検知すると、並び順の最も先頭の物品が通過したと判断して、当該物品に係る仕分けを実行する。これにより、読み取り領域内の移動する物品だけの並び順を把握して、正確に仕分けることができる。
移動する物品を識別して自動的に仕分する仕分システムに関するものである。即ち、本発明のリーダライタを備え、例えば、ベルトコンベアの近傍にアンテナを配置して、物品に取り付けられた非接触情報記録媒体との情報の授受を行い、その情報から移動している物品の並び順を識別する。また、それらの物品を仕分するために、物品が通過したことを検知する検知手段と、実際に物品を仕分する仕分機を備える。そして、PC等から構成される制御手段は、並び順を記憶しておき、検知手段が物品の通過を検知すると、並び順の最も先頭の物品が通過したと判断して、当該物品に係る仕分けを実行する。これにより、読み取り領域内の移動する物品だけの並び順を把握して、正確に仕分けることができる。
【0021】
図6は、図5の仕分システムの動作を説明するフローチャートである。図5を参照して説明する。リーダライタ50は、読み取り可能領域6aにある物品a、b、cのタグ7の情報を一括して読み取る(S10)。リーダライタ50は読み取った情報から各タグの遅延時間を演算する(S11)。次に、PC20は遅延時間から各物品a、b、cとの相対速度を求める(S12)。この図では、物品aはアンテナ6から遠ざかる方向に移動しており、物品bはアンテナ6に最接近しており、物品cはアンテナ6に近づいてきていることを認識する。そして、これらの演算結果から、物品が移動しているか否かを判定する(S13)。停止していれば(S13でNO)、停止しているタグ情報を消去して(S14)、ステップS10に戻って繰り返す。一方、ステップS13で物品が移動していれば(S13でYES)、移動している物品の並び順が先頭からa、b、cであることを認識する(S15)。この情報は、PC20内のメモリに記憶する(S16)。ここでセンサ21が物品を検出したかをチェックする(S17)。このチェックは何時、発生するか分からないので、割り込み処理により行われるのが好ましい。ステップS17でセンサ21がOFF(S17でNO)のときは、ステップS10に戻って繰り返す。ステップS17でセンサ21がON(S17でYES)のときは、メモリに記憶されている先頭の物品名aから、ルート先を判別する(S18)。この例では、物品aのルート先がBであると仮定すると、仕分機22は物品aをルートBになるように仕分操作を行なう(S19)。次に、仕分が完了した物品aのデータは必要ないので消去して、次の物品bを先頭に繰り上げてS1に戻って繰り返す(S20)。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るリーダライタのブロック図である。
【図2】本発明に係るリーダライタシステムの機能を表すブロック図である。
【図3】相対速度からタグの移動の有無を求める図である。
【図4】制御手段がタグの移動の有無を判定する動作を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の物品仕分システムの構成を示すブロック図である。
【図6】図5の仕分システムの動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
1 PLL回路、2 VCO、3 変調器、4、8 増幅器、5サーキュレータ、6a、6b アンテナ、7 タグ、9、11 ミキサ、12、13 BPF、14、16 A/Dコンバータ、15 演算器、20 通信部、21 制御部、22 相対速度演算手段、23 相対速度比較手段、24 判定部、50 リーダライタ、60 PC、100 リーダライタシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を利用して非接触情報記録媒体が移動しているか否かを判定するリーダライタシステムであって、
前記非接触情報記録媒体に電波を送信する送信手段、該電波の一部を前記非接触情報記録媒体が変調することにより得た反射波を復調する復調手段、前記反射波の遅延時間を算出する演算手段、及び前記送信手段からの電波を前記非接触情報記録媒体に出力し、前記反射波を受信する固定された2つのアンテナ、を有するリーダライタと、
前記リーダライタを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記演算手段により算出された遅延時間に基づいて前記各アンテナとの関係における前記非接触情報記録媒体の相対速度を演算し、少なくとも何れか一方のアンテナにより受信された反射波に基づいて演算された相対速度に係る演算結果がゼロでない場合、該非接触情報記録媒体は移動していると判定することを特徴とするリーダライタシステム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記リーダライタと情報の授受を行なう通信部と、前記リーダライタにより演算された遅延時間に基づいて前記相対速度を演算する相対速度演算手段と、前記各アンテナとの関係における前記非接触情報記録媒体の相対速度を比較する相対速度比較手段と、前記相対速度比較手段の比較結果に基づいて前記非接触情報記録媒体が移動しているか否かを判定する判定部と、全体を同期制御する制御部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のリーダライタシステム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記演算手段により算出された遅延時間に基づいて前記各アンテナとの関係における前記非接触情報記録媒体の相対速度を演算し、前記2つのアンテナにより受信された反射波により演算された相対速度に係る演算結果が共にゼロである場合、該非接触情報記録媒体は停止していると判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のリーダライタシステム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記非接触情報記録媒体の絶対速度がゼロではなく、且つ、前記2つのアンテナとの相対速度がゼロである時、該非接触情報記録媒体は、前記2つのアンテナを中心とし、該非接触情報記録媒体と該2つのアンテナ間の距離と直径が等しい球に沿って移動していると判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のリーダライタシステム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記2つのアンテナを結ぶ直線上に前記非接触情報記録媒体が存在しない場合、前記2つのアンテナの相対速度がゼロでなければ、該非接触情報記録媒体は移動していると判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のリーダライタシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のリーダライタシステムと、物品に係る情報を記録した非接触情報記録媒体を取り付けた物品と、該物品を搬送する搬送手段と、該搬送手段により搬送されてくる物品の通過を検知する検知手段と、前記搬送手段により搬送された物品を仕分けする仕分手段と、仕分制御手段と、を備え、
前記仕分制御手段は、前記リーダライタシステムにより移動していると判定された非接触情報記録媒体を取り付けた最初の物品を前記検知手段が検知すると、当該物品に係る仕分けを実行することを特徴とする物品仕分システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−113669(P2010−113669A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287900(P2008−287900)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】