リード組立体、電気刺激装置およびリード
【課題】リードの湾曲した皮下への植え込みを容易に行えるようにする。
【解決手段】リード組立体は、生体内に植え込まれるリードと、このリードを移動させて植え込み位置の調節を行う長尺体状のリード操作体とを含む。リードは、基端から所定位置まで連通する第1ルーメン、該所定位置から先端まで連通するとともに第1ルーメンよりも径が小さい第2ルーメン、並びに第1ルーメンおよび第2ルーメン間の境界に係止部が形成されたリード本体を備える。リード操作体は、第2ルーメンに貫入可能な長尺体状の操作部と、操作部に連続し、該操作部が第1ルーメンを通じて第2ルーメンに貫入された状態において、係止部と当接する被係止部と、を備える。
【解決手段】リード組立体は、生体内に植え込まれるリードと、このリードを移動させて植え込み位置の調節を行う長尺体状のリード操作体とを含む。リードは、基端から所定位置まで連通する第1ルーメン、該所定位置から先端まで連通するとともに第1ルーメンよりも径が小さい第2ルーメン、並びに第1ルーメンおよび第2ルーメン間の境界に係止部が形成されたリード本体を備える。リード操作体は、第2ルーメンに貫入可能な長尺体状の操作部と、操作部に連続し、該操作部が第1ルーメンを通じて第2ルーメンに貫入された状態において、係止部と当接する被係止部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード組立体、このリード組立体を用いた電気刺激装置およびリード組立体を構成するリードに関し、特に、生体内に植え込んで使用されるリード組立体、電気刺激装置およびリードに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、痛み治療において、従来の薬物療法、神経ブロック療法あるいは外科的療法に効果を示さない場合や、副作用などによりその治療が継続できない場合に、神経を電気刺激することにより痛みを緩和する電気刺激療法が効果を上げている。電気刺激療法の1つである脊髄電気刺激療法は、脊髄を介して脳へ伝播する痛みを緩和するために、脊髄を電気刺激する刺激療法である。
【0003】
脊髄電気刺激療法では、通常、電気刺激による疼痛緩和の有効性を確かめるために、24時間から数週間のトライアル期間が設けられる。トライアル期間では、一般的に、電極リードを背中側から穿刺して脊髄を覆う脊髄硬膜の外側にある硬膜外腔に刺激電極を留置した後、電極リードを体外の刺激装置と接続して様々な刺激パターンの下で疼痛緩和の程度が調べられる。そして、トライアル期間において所定の効果が認められた場合に、本植え込みが実施される。
【0004】
本植え込みを行う場合には、トライアル期間に留置された電極リードが抜去された後、再び硬膜外腔に新たな電極リードの刺激電極が留置され、電極リードは皮下トンネルを通って腰部や腹部、あるいは胸部に導かれる。そして、電極リードが刺激装置と接続されて皮下に植え込まれる。
【0005】
脊髄電気刺激療法におけるトライアル期間では、電極リードが体外の刺激装置と接続されているために、感染の危険性や、患者の活動の制限、あるいは、この活動の制限がストレスとなって疼痛緩和の有効性判断に影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
この問題を解決するために、ハウジングの両端に電極を備えた、リードレスの微小刺激装置が考えられた(特許文献1を参照)。この微小刺激装置は、備える電極が神経の近くに配置された状態において、生体内に完全に植え込まれるように構成されている。これにより、感染の危険性を軽減するとともに、患者の活動の制限を極力少なくすることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,193,539号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載の微小刺激装置による刺激の強度等を変更する際には、微小刺激装置と電磁結合方式で通信を行うプログラマが用いられる。しかしながら、電磁結合方式での通信では、微小刺激装置のコイルとプログラマのコイルが近接対向しなければならない。そのため、微小刺激装置を硬膜外腔内に配置する必要のある脊髄神経刺激療法の場合は、プログラマを背中に当てて微小刺激装置と通信を行わなければならない。このようなプログラマの操作は患者によっては困難な場合があり、またその操作を非常にわずらわしく感じる患者もいた。
【0009】
この点、微小刺激装置の少なくとも電極の位置をそのままにして、コイル部(プログラマから電磁波を受信するための構成)だけを腹部や体側の皮下に配置することができれば、微小刺激装置と通信を行うためのプログラマの操作を手の届く範囲で行うことができる。
【0010】
ここで、コイル部を腹部や体側の皮下に配置するためには、例えば、コイル部をリードに内蔵して、このリードを、背部(あるいは腰部)から体側(あるいは、体側を介して腹部)まで導くように生体内に植え込むという方法が考えられる。しかしながら、背部(あるいは腰部)から体側(あるいは、体側を介して腹部)までの皮膚は極端に湾曲しているので、そのような皮下にリードを植え込むことは、たとえ通常のスタイレットやガイドワイヤ等を用いたとしても困難であった。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、湾曲した皮下への植え込みが容易なリード組立体、電気刺激装置およびリードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のリード組立体は、生体内に植え込まれるリードと、このリードを移動させて植え込み位置の調節を行う長尺体状のリード操作体とを含む。
リードは、基端から所定位置まで連通する第1ルーメン、該所定位置から先端まで連通するとともに第1ルーメンよりも径が小さい第2ルーメン、並びに第1ルーメンおよび第2ルーメン間の境界に係止部が形成されたリード本体を備える。
リード操作体は、第2ルーメンに貫入可能な長尺体状の操作部と、操作部に連続し、該操作部が第1ルーメンを通じて第2ルーメンに貫入された状態において、係止部と当接する被係止部と、を備える。
【0013】
本発明の上述した構成によれば、リードの基端の開口からリード操作体を挿入して係止部と被係止部とを当接させた状態では、リードの先端から操作部の少なくとも一部が突出する。そして、この突出部分を引っ張ると、係止部が被係止部に押されてリードが移動する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リードの先端から突出した操作部を引っ張ることにより、リードの植え込み(生体内でリードを移動させること)が行えるので、当該植え込みの最中にリードが折れ曲がって生体内に進めることが困難になることを防止できる。その結果、例えば極端に湾曲した皮下トンネルなどにも容易にリードを植え込むことができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
【図2】図2(a):本発明の実施形態に係る第2リードの先端付近における軸方向の断面を示す模式図である。 図2(b):ガイドワイヤが挿入された状態の第2リードを示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る刺激回路およびプログラマの機能を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図10】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態例について説明する。以下に述べる実施の形態例は、本発明の好適な具体例である。そのため、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明の範囲は、下記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。例えば、以下の説明で挙げる各パラメータの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係も概略的なものである。
【0017】
以下の手順で説明を行う。
<実施形態例>
1.電気刺激装置の構成
2.刺激回路の機能
3.プログラマの機能
4.電気刺激装置の植え込み手順
<変形例>
【0018】
<実施形態例>
本発明の実施形態の例を、図1〜10を参照して説明する。
[1.電気刺激装置の構成]
図1は、本発明の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
【0019】
電気刺激装置101は、生体に植え込み可能に構成されており、電気的な刺激信号(以下、「電気的刺激信号」という)により、生体内における脊髄等の神経や筋肉を刺激するものである。この電気刺激装置101は、神経等を刺激するための第1リード102と、第1リード102に電気的刺激信号を供給する刺激装置103と、刺激装置103の動作を制御するための第2リード104(リード)と、を備える。電気刺激装置101は、第2リード104を生体内に植え込むためのガイドワイヤ130(リード操作体)をさらに有する。
【0020】
まず、第1リード102について説明する。
第1リード102は、神経等を刺激するための4つの刺激電極105と、第1リード102を生体内に配置した際に各刺激電極105が生体に対して剥き出しになるように固定するボディ106とを備える。ここでは、刺激電極105の数を4つとしたが、これはあくまでも一例であって、刺激電極105の数は任意に設定可能である。
【0021】
刺激電極105は、導電性があって生体適合性がある素材、例えばプラチナやプラチナ合金(例えば、プラチナ90%/イリジウム10%合金)等の素材でできており、中空の略円筒状に形成されている。例えば、脊髄の神経を刺激する際には、脊髄硬膜と脊柱背側との距離が約5mmの硬膜外腔に第1リード102が植え込まれることになるので、この場合の刺激電極105の外径は、約1〜3mmであることが好ましい。また、刺激電極105の内径は、後述するスタイレット用ルーメン109の直径よりも大きく設定する必要がある。これは、刺激電極105でスタイレット用ルーメン109を塞がないようにするためである。
【0022】
4つの刺激電極105には、4本の導線205(図3を参照)の一端がそれぞれ接続されている。そして、4本の導線205の他端が、後述する刺激装置103の刺激回路117とそれぞれ接続されている。これにより、各刺激電極105と刺激回路117とが電気的に接続されている。なお、4本の導線205は、ボディ106内部に完全に埋め込まれている。
【0023】
ボディ106は、柔軟性があって、かつ生体適合性がある素材、例えばシリコーンやポリウレタン等の樹脂素材でできており、略円筒形状に形成されている。そして、ボディ106には、基端108に開口して先端107付近まで連通する、開口形が円形の孔が軸方向に開けられている。この孔が、スタイレット150を挿入するためのスタイレット用ルーメン109である。スタイレット用ルーメン109の直径は、スタイレット150の直径とほぼ等しいか、それより少し大きい必要がある。
【0024】
このようなスタイレット用ルーメン109を第1リード102に形成したことにより、第1リード102を生体内に植え込む際に、スタイレット150を利用できる。その結果、第1リード102の生体内への植え込みをより容易に行うことができるとともに、刺激電極105の生体内への配置の正確性をより向上させることができる。
【0025】
また、ボディ106の外径は、刺激電極105が剥き出しになるようにするため、刺激電極105の外径とほぼ等しい。ところで、硬膜外腔に第1リード102を植え込む場合、刺激電極105が安定して配置されるためには、第1リード102の一部が硬膜外腔に少なくとも脊椎における3椎体に等しい長さ以上入っている必要がある。そのため、ボディ106の軸方向の長さは、脊椎における3椎体に等しい長さプラス15cmよりも長くなっている。ここでの15cmという長さは、背中の皮膚の穿刺部位から硬膜外腔までの平均的な長さと、後述する硬膜外針のスリットを基端108付近で引き裂くための余剰の長さの和に相当する。
【0026】
次に、第2リード104について、図1に加えてさらに図2を参照して説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る第2リード104の先端付近を示す説明図である。
図2(a)は第2リード104の軸方向の断面を示す模式図、図2(b)はガイドワイヤ130が完全に挿入された状態の第2リード104を示す模式図である。
【0027】
第2リード104のボディ110(リード本体)は、第1リード102のボディ106と同様に、柔軟性があって、かつ生体適合性がある素材、例えばシリコーンやポリウレタン等の樹脂素材でできており、略円筒形状に形成されている。
【0028】
ボディ110の軸方向の長さは、例えば第2リード104を、腰部(あるいは背部)から体側まで導かれるように生体内に配置する場合には、患者の腹囲の約1/4程度の長さであることが好ましい。ただし、腰部から体側を通じて腹部まで導かれるように第2リード104を配置する場合には、ボディ110の軸方向の長さは患者の腹囲の約1/2程度の長さにする必要がある。
【0029】
また、ボディ110は、第2リード104の生体内への挿入を容易にするために、その先端112付近が図2(a)に示すようにテーパー状に形成されている。そして、ボディ110は、先端112から基端113まで貫通し、開口形が円形の貫通孔を有している。この貫通孔が、ガイドワイヤ130を貫入するためのガイドワイヤ用ルーメン114である。
【0030】
ガイドワイヤ用ルーメン114は、図2(a),(b)に示すように、第1ルーメン114aと、この第1ルーメン114aの直径よりも小さい直径を有する第2ルーメン114bとからなる。第1ルーメン114aはボディ110の基端113から先端112付近の所定位置まで形成されており、第2ルーメン114bは、当該所定位置から先端112まで形成されている。
【0031】
また、ボディ110において、第1ルーメン114aと第2ルーメン114bとの境目を形成している部分が係止部202に相当し、この係止部202よりも先端112側にコイル部111が埋め込まれている。コイル部111が埋め込まれている部分は、その他の部分に比べて厚みがあるので、コイル部111全体を確実にボディ110に内蔵することができる。これにより、第2リード104を植え込んだ際に、コイル部111が生体に接触することを防止できる。その上、第2リード104を腰部から体側(あるいは、体側を通じて腹部)まで導かれるように生体内に植え込んだ際に、体側や腹部などの人の手が届く場所の皮下にコイル部111を配置することができる。
【0032】
また、ボディ110の先端112付近には、第2リード104を生体内に植え込んだ際に、第2リード104の位置を保持する固定機構115が設けられている。固定機構115は、ボディ110の外周面から突出した複数の枝部115aからなる。枝部115aは、ボディ110と同じ素材で略棒状に形成されており、その一方の端面が丸みを帯びている。そして、他方の端面がボディ110と接合している。
【0033】
これらの枝部115aは、ボディ110の外周面の周方向に沿って、等角度間隔に配置されており、ボディ110の軸に対して基端113側に向かって傾斜している。これにより、ボディ110が基端113側に引っ張られた場合に、枝部115aが生体の組織に引っ掛かって先端112の位置がずれるのを防ぐ。なお、枝部115aのボディ110への接合方法としては、例えば、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)による方法、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法等が挙げられる。
【0034】
コイル部111は、図2(a),(b)に示すように、例えば電線をらせん状に巻いたコイルを含む回路であり、導線204(図3を参照)を介して後述する刺激装置103の刺激回路117と電気的に接続されている。なお、導線204は、ボディ110内部に完全に埋め込まれている。
【0035】
次に、刺激装置103について説明する。
刺激装置103は、筐体116およびこの筐体116に収納・固定された刺激回路117を備えている。
筐体116は、比較的硬く、生体適合性がある金属や樹脂、例えばチタンやエポキシ等、あるいはセラミック等の素材でできており、略直方体状に形成されている。この筐体116には、開口形が円形の貫通孔118a,118bが開けられている。
【0036】
一方の貫通孔118aの直径は、第1リード102のボディ106の外径とほぼ等しく、ボディ106の基端108から所定の位置までの部分がこの貫通孔118aに挿入・固定されている。これにより、筐体116の一方の側面から、ボディ106の基端108に開口するスタイレット用ルーメン109を露出させることができ、スタイレット150を当該スタイレット用ルーメン109に挿入可能にしている。
【0037】
また、他方の貫通孔118bの直径は、第2リード104のボディ110の外径とほぼ等しく、ボディ110の基端113から所定の位置までの部分がこの貫通孔118bに挿入・固定される。これにより、筐体116の他方の側面から、ボディ110の基端113に開口するガイドワイヤ用ルーメン114を露出させることができ、ガイドワイヤ130を当該ガイドワイヤ用ルーメン114に挿入可能にしている。
【0038】
刺激回路117は、回路基板上にカスタムICなどの小型部品を実装した回路であり、電気的刺激信号を生成する。この刺激回路117は、生成した電気的刺激信号を各刺激電極105に独立して供給するように、ボディ106に埋め込まれている4本の導線205(図3を参照)と電気的に接続されている。また、刺激回路117は、コイル部111と導線204(図3を参照)を介して電気的に接続されている。なお、刺激回路117の機能的な構成については、図3にて後述する。
【0039】
次に、ガイドワイヤ130について説明する。
ガイドワイヤ130は、長尺体状であって超弾性合金やステンレスなどの金属線をコアとしてできている。コアの表面には必要に応じて樹脂被覆などを設けることができる。ガイドワイヤ130は、図1に示すように、基端113に形成された開口を通じてガイドワイヤ用ルーメン114にその先端から挿入され、図2(b)に示すように、第2リード104に貫入された状態で使用される。そのため、ガイドワイヤ130の軸方向の長さは、第2リード104の軸方向の長さよりも十分に長くなければならない。
【0040】
このガイドワイヤ130には、その先端側から順番に、第1操作部131(操作部)、被係止部132および第2操作部133が設けられている。
【0041】
第1操作部131は略円柱形状に形成されている。この第1操作部131の直径は、図2(b)に示すように、第2ルーメン114bの直径とほぼ等しいか、それよりも小さくなっており、第1操作部131は第1ルーメン114aはもちろん第2ルーメン114bを通過可能としている。この第1操作部131の表面には、第1操作部131の軸方向の長さを示す目盛り203が形成されている。
【0042】
被係止部132は、第1操作部131と同じ軸を有する略円柱形状に形成されている。被係止部132は、例えばコア上にパイプ状の金属部材を溶接などによって形成することができる。被係止部132の直径は、第2ルーメン114bの直径よりも大きく、第1ルーメン114aの直径以下となっており、被係止部132は第1ルーメン114aのみを通過可能としている。これにより、図2(b)に示すように、第1操作部131が第2ルーメン114bに完全に貫入された状態においては、被係止部132が係止部202に当接した状態となる。
【0043】
第2操作部133は、被係止部132と同じ軸を有する略円柱形状に形成されている。図1および図2(b)に示す例では、第2操作部133の直径は、第1操作部131と同じく第2ルーメン114bの直径とほぼ等しいか、それよりも小さくなっている。しかしながら、第2操作部133は第1ルーメン114aを通過可能となるように構成されていればよく、その直径は、第1ルーメン114aの直径とほぼ等しいか、それよりも小さければよい。すなわち、被係止部132の延在長を長くして、被係止部132で第2操作部133を兼ねるようにしてもよい。
【0044】
次に、刺激回路117および刺激回路117への指示をコイル部111に送るためのプログラマ350の機能的な構成について図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る刺激回路およびプログラマの機能を示すブロック図である。
【0045】
[2.刺激回路の機能]
まず、刺激回路117の機能的な構成について説明する。
刺激回路117は、充電池303と、充電部304と、通信部305と、制御部306と、刺激パラメータ設定部307と、電極構成設定部308と、発振部309と、刺激電極スイッチ部310とを備える。
【0046】
充電池303は、例えばリチウムイオン電池等の充電可能な電池である。この充電池303は、蓄積している電力を、刺激回路117を構成する各ブロックに供給している。
【0047】
第2リード104に内蔵されたコイル部111は、例えばコイルとコンデンサとで構成される共振回路である。コイル部111は、充電池303の充電を行う場合、後述するプログラマ350から送信される充電用の電磁波を受信する。そして、この受信に伴ってコイル部111から発生する交流電流が充電部304に出力される。また、コイル部111はプログラマ350から送信される、所定の情報がのせられた電磁波を受信し、受信した電磁波がコイル部111から通信部305に出力される。
【0048】
充電部304は、整流回路を内蔵し、コイル部111から出力された交流電流を直流電流に変換して電力を取得する。そして、取得した電力で充電池303の充電を行う。
【0049】
通信部305は、コイル部111が受信した電磁波を復調し、電磁波にのせられている情報を取り出す。取り出された情報は制御部306に出力される。
【0050】
制御部306は、例えばマイクロコンピュータ等であり、刺激回路117の各ブロックを制御している。この制御部306は、通信部305から入力された情報を記憶する。ただし、すでに情報が記憶されている場合には、この情報を新たに入力された情報に置き換えて記憶する。そのため、制御部306は、通信部305から入力された最新の情報を記憶している。
【0051】
ここで、制御部306が記憶している情報は刺激パラメータおよび電極構成情報である。
刺激パラメータは、電気的刺激信号の刺激強度に関する情報であり、電気的刺激信号の刺激強度を決定するパルス電圧、パルス電流、パルス幅あるいは周波数の値を示す情報であり、刺激パラメータ設定部307に出力される。
【0052】
また、電極構成情報は、電極構成に関する情報であり、電気的刺激信号の極性を変更するための情報と、電気的刺激信号を出力する刺激電極105を刺激電極スイッチ部310に選択させるための情報とを含む情報であり、電極構成設定部308に出力される。
【0053】
刺激パラメータ設定部307は、入力された刺激パラメータに基づいて、発振部309で発生する電気的刺激信号の刺激強度を変更するための刺激強度変更信号を生成する。
【0054】
電極構成設定部308は、入力された電極構成情報に基づいて、発振部309で発生する電気的刺激信号を出力する刺激電極105を選択するための電極構成選択信号を生成する。なお、刺激パラメータ設定部307から出力される刺激強度変更信号は発振部309に出力され、電極構成設定部308から出力される電極構成選択信号は刺激電極スイッチ部310に出力される。
【0055】
発振部309は、刺激パラメータ設定部307から入力される刺激強度変更信号に基づいて、電気的刺激信号を生成して刺激電極スイッチ部310に出力する。
【0056】
刺激電極スイッチ部310は、電極構成設定部308から入力される電極構成選択信号に基づいて、発振部309から入力される電気的刺激信号を出力する刺激電極105を決定する。
【0057】
[3.プログラマの機能]
次に、プログラマ350の機能的な構成について説明する。
プログラマ350は、体外から使用される外部装置の一例であり、生体内に植え込まれた電気刺激装置101に対して通信等を行うものである。このプログラマ350は、電源部351と、制御部352と、通信部353と、コイル部354とを備える。
【0058】
電源部351は、蓄積している電力を、プログラマ350を構成する各ブロックに供給している。電源部351には、例えば一次電池や充電池が用いられる。
【0059】
制御部352は、例えばマイクロコンピュータを含み、医師等のユーザの操作に基づいて、通信部353を制御する。この操作は、例えばプログラマ350が備える操作部(不図示)を操作することにより行われる。
【0060】
通信部353は、ユーザからの給電指示があった場合、制御部352の制御に基づいて、給電用電磁波を生成する。そして、生成した給電用電磁波を、コイル部354を介して電気刺激装置101のコイル部111に送信する。
【0061】
また、通信部353は、ユーザからの電気的刺激信号の刺激強度等を変更する指示があった場合、制御部352の制御に基づいて、刺激パラメータや電極構成情報がのせられた電磁波を生成する。そして、生成した電磁波を、コイル部354を介して電気刺激装置101のコイル部111に送信する。
【0062】
コイル部354は、電磁波を電気刺激装置101へ送信できるコイルであればよく、例えば電線を円形あるいはらせん状に巻いたものでもよい。
【0063】
[4.電気刺激装置の植え込み手順]
次に、硬膜外腔から脊髄の神経の電気刺激を行う場合の電気刺激装置101を植え込む手順について図4〜10を参照して説明する。
図4〜6は背中付近を示す人体の縦断面図、図7〜10は人体を背中側から見た説明図である。
【0064】
まず、医師は、患者の痛みの分布状況に基づき、予め目標とする脊髄の刺激部位を決定する。そして、図4に示すように、分割式あるいはスリット付きの硬膜外針406を、X線透視下で患者の背中側から穿刺して硬膜外腔405まで挿入する。この硬膜外針406が硬膜外腔405に挿入される位置は、一般的に、目標とする刺激部位から脊椎403における3椎体以上低位が選ばれる。
【0065】
次に、第1リード102に形成されたスタイレット用ルーメン109(図1を参照)に、スタイレット150を完全に挿入する。そして、図5に示すように、スタイレット150が挿入された第1リード102の先端107を硬膜外針406に通し、当該第1リード102を生体404内に挿入する。そして、スタイレット150の基端150aを軸方向に押すことにより、第1リード102が硬膜外腔405内に挿入される。
【0066】
続いて、スタイレット150の基端150aを軸方向にさらに押して、硬膜外腔405内に第1リード102を上向させ、第1リード102の刺激電極105を目標とする刺激部位の近くに位置させる。
【0067】
そして、第1リード102を生体404内で挿抜して刺激電極105の位置を少しずつ移動させながら、プログラマ350を操作して神経刺激を行う。このとき、刺激装置103では、医師の操作に基づいて、所定の刺激強度の電気的刺激信号が生成され、生成された電気的刺激信号が刺激電極105に出力されて、当該刺激電極105の位置に近い部分の神経刺激が行われる。そして、医師は、患者の神経刺激に対する反応を聞きながら、最適な刺激電極105の位置を決定する。
【0068】
ここで、医師は、図6に示すように、決定した最適な位置から刺激電極105が移動しないように第1リード102とスタイレット150とを保持しながら、第1リード102のスタイレット用ルーメン109にスタイレット150が通った状態で硬膜外針406を生体404から抜く。そして、硬膜外針406のスリット部分(不図示)を引き裂いて、硬膜外針406を第1リード102の表面から取り去る。このとき、体から突出しているボディ106の一部(以下、「突出部」という)が、図1にて説明した、硬膜外針406を生体404から抜くための余剰の部分に相当する。
【0069】
続いて、図7に示すように、背中側の第1リード102の刺入部位に小切開408を形成し、スタイレット150を第1リード102のスタイレット用ルーメン109から取り出す。そして、小切開408により露出した組織に第1リード102のボディ106を糸(不図示)で縫い付けて固定する。これにより、決定した刺激電極105の位置がずれないようにすることができる。
【0070】
続いて、医師は、体側にも小切開410を入れる。そして、トンネリングツール(不図示)を用いて、小切開408と小切開410とを貫通する皮下トンネル(不図示)を生体404に形成する。
【0071】
以上の処理が完了した後、医師は、ガイドワイヤ130の第2操作部133(図1を参照)を手に持ち、第1操作部131を、第2リード104の基端113に形成された開口を通じて第1ルーメン114aに挿入する。このとき、第2リード104が動かないように、医師は、ガイドワイヤ130を持っていない方の手で第2リード104を保持する。
【0072】
そして、医師が、第2操作部133をその軸方向に押していくと、第1操作部131が第1ルーメン114a内を進み、第2ルーメン114b内に挿入される。第2操作部133をその軸方向にさらに押すと、図2(b)に示すように、係止部202に被係止部132が当接し、ガイドワイヤ130の移動が停止される。このとき、第1操作部131は第2リード104の先端112から突出している。
【0073】
続いて、医師は、第2リード104の先端112から突出している第1操作部131を、小切開408に形成された開口を通じて皮下トンネル(不図示)内に挿入する。そして、第1操作部131をその軸方向に押す。これにより、第1操作部131が皮下トンネル(不図示)内を進み、図8に示すように、第1操作部131の先端が、小切開410から突出する。
【0074】
続いて、医師は、第1操作部131の先端を掴み、小切開410から体外へ向かう方向(例えば、図8中の白抜き矢印で示される方向)に引っ張る。すると、第2リード104の係止部202(図2(b)を参照)がガイドワイヤ130の被係止部132により押される。これにより、ガイドワイヤ130とともに第2リード104が、図8中の白抜き矢印で示される方向に動かされ、第2リード104はその先端112から、小切開408に形成された開口を通じて皮下トンネル(不図示)内に挿入される。
【0075】
そして、医師が、図8中の白抜き矢印で示される方向に第1操作部131をさらに引っ張ることで、第2リード104が、図9に示すように、皮下トンネル内を進んでいく。このとき、医師は、第1操作部131の目盛り203(図2を参照)を確認することで、第2リード104の植え込み位置を知ることができる。
【0076】
そして、医師は、適切な位置に第2リード104が植え込まれたことを確認すると、第2リード104の植え込み位置が変わらないように第2リード104を支えつつ、ガイドワイヤの第2操作部を引っ張って、第2リード104のガイドワイヤ用ルーメン114からガイドワイヤ130を取り出す。そして、小切開408により露出した組織に第2リード104のボディ110を糸(不図示)で縫い付けて固定する。そして、第1および第2リード102,104の小切開408から突出したボディ部分を束ねて、刺激装置103とともに小切開408の皮下に植え込みを行う。
【0077】
続いて、電気刺激装置101が生体404内に完全に植え込まれた状態で固定されるようにするため、刺激装置103の筐体116(図1を参照)に形成された縫合孔(不図示)に糸(不図示)を通し、刺激装置103を生体404の組織に縫いつける。そして、図10に示すように、小切開408,410をそれぞれ縫合糸409で縫合する。この処置は、刺激装置103が生体404内で移動しないように、あるいは、電気刺激装置101の挿入口から感染症等を起こさないようにするためのものである。
【0078】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、第2リード104にガイドワイヤ130が完全に貫入された状態で、ガイドワイヤ130の第1操作部131を引っ張ることにより、第2リード104を生体内に植え込むことができる。ガイドワイヤ130を引っ張って第2リード104の植え込みを行うため、当該植え込みの最中に第2リード104が折れ曲がって生体内に進めることが困難になることを防止できる。その結果、例えば極端に湾曲した皮下トンネルなどにも容易に第2リード104を植え込むことができる、という効果がある。
【0079】
なお、上述した実施形態においては、第1および第2リード102,104と刺激装置103とからなるものを電気刺激装置101として説明しているが、さらにプログラマ350を含んだものを電気刺激装置101として広い概念で捉えることもできる。また、第2リード104とガイドワイヤ130とにより構成されるものがリード組立体に相当する。
【0080】
<変形例>
なお、上述した実施形態において、各種リード(第1リード102または第2リード104)と刺激装置103とを着脱可能に接続するコネクタを、各種リードおよび刺激装置103に設けてもよい。この場合、各種リードと刺激装置103とがそれぞれのコネクタで接続されると、刺激電極105またはコイル部111と、刺激回路117とが電気的に接続される。これにより、各種リードをそれぞれ別々に植え込むことができ、植え込みの難度を低下させることができる。
【0081】
さらに、この場合、第1リード102だけを植え込むことができるので、この第1リード102の植え込みに使用する硬膜外針406(図6を参照)を引き裂くことなく、第1リード102から抜き去ることができる。その結果、硬膜外針406を引き裂くための余剰部分をボディ106(図1を参照)に設ける必要がなくなり、ボディ106の軸方向の長さを短くすることができる。
【0082】
その上、上述したように、第1リード102の植え込みに使用する硬膜外針406を引き裂くことなく、第1リード102から抜き去ることができるので、植え込みの際に使用する硬膜外針406は、分割式やスリット付きのものでなくてもよいことはいうまでもない。
【0083】
また、上述した実施形態および変形例では、電気刺激装置101は、第2リード104にコイル部111を内蔵するようにしたが、コイル部111以外のものを内蔵するようにしてもよい。例えば、刺激回路のオン/オフを体外から切り替えることのできるリードスイッチなどでもよい。また、第1リード102に第2リード104のようなガイドワイヤ用ルーメン114を形成してもよい。
【0084】
また、図4〜図10では、第2リード104を腰部(背部)から体側まで導くように生体内に植え込む例について説明したが、同様にしてこの第2リード104を腰部から体側を通って腹部まで導くように生体内に植え込むこともできる。さらに、電気刺激装置101は、生体内のその他の場所にも同様の手順で植え込むことができる。
【符号の説明】
【0085】
101…電気刺激装置、102…第1リード、103…刺激装置、104…第2リード、105…刺激電極、106,110…ボディ、109…スタイレット用ルーメン、111…コイル部、114…ガイドワイヤ用ルーメン、114a…第1ルーメン、114b…第2ルーメン、115…固定機構、116…筐体、117…刺激回路、130…ガイドワイヤ、131…第1操作部、132…被係止部、133…第2操作部、150…スタイレット、202…係止部、303…充電池、304…充電部、305…通信部、306…制御部、307…刺激パラメータ設定部、308…電極構成設定部、309…発振部、310…刺激電極スイッチ部、350…プログラマ、351…電源部、352…制御部、353…通信部、354…コイル部、403…脊椎、404…生体、405…硬膜外腔、406…硬膜外針、408,410…小切開、409…縫合糸
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード組立体、このリード組立体を用いた電気刺激装置およびリード組立体を構成するリードに関し、特に、生体内に植え込んで使用されるリード組立体、電気刺激装置およびリードに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、痛み治療において、従来の薬物療法、神経ブロック療法あるいは外科的療法に効果を示さない場合や、副作用などによりその治療が継続できない場合に、神経を電気刺激することにより痛みを緩和する電気刺激療法が効果を上げている。電気刺激療法の1つである脊髄電気刺激療法は、脊髄を介して脳へ伝播する痛みを緩和するために、脊髄を電気刺激する刺激療法である。
【0003】
脊髄電気刺激療法では、通常、電気刺激による疼痛緩和の有効性を確かめるために、24時間から数週間のトライアル期間が設けられる。トライアル期間では、一般的に、電極リードを背中側から穿刺して脊髄を覆う脊髄硬膜の外側にある硬膜外腔に刺激電極を留置した後、電極リードを体外の刺激装置と接続して様々な刺激パターンの下で疼痛緩和の程度が調べられる。そして、トライアル期間において所定の効果が認められた場合に、本植え込みが実施される。
【0004】
本植え込みを行う場合には、トライアル期間に留置された電極リードが抜去された後、再び硬膜外腔に新たな電極リードの刺激電極が留置され、電極リードは皮下トンネルを通って腰部や腹部、あるいは胸部に導かれる。そして、電極リードが刺激装置と接続されて皮下に植え込まれる。
【0005】
脊髄電気刺激療法におけるトライアル期間では、電極リードが体外の刺激装置と接続されているために、感染の危険性や、患者の活動の制限、あるいは、この活動の制限がストレスとなって疼痛緩和の有効性判断に影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
この問題を解決するために、ハウジングの両端に電極を備えた、リードレスの微小刺激装置が考えられた(特許文献1を参照)。この微小刺激装置は、備える電極が神経の近くに配置された状態において、生体内に完全に植え込まれるように構成されている。これにより、感染の危険性を軽減するとともに、患者の活動の制限を極力少なくすることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,193,539号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載の微小刺激装置による刺激の強度等を変更する際には、微小刺激装置と電磁結合方式で通信を行うプログラマが用いられる。しかしながら、電磁結合方式での通信では、微小刺激装置のコイルとプログラマのコイルが近接対向しなければならない。そのため、微小刺激装置を硬膜外腔内に配置する必要のある脊髄神経刺激療法の場合は、プログラマを背中に当てて微小刺激装置と通信を行わなければならない。このようなプログラマの操作は患者によっては困難な場合があり、またその操作を非常にわずらわしく感じる患者もいた。
【0009】
この点、微小刺激装置の少なくとも電極の位置をそのままにして、コイル部(プログラマから電磁波を受信するための構成)だけを腹部や体側の皮下に配置することができれば、微小刺激装置と通信を行うためのプログラマの操作を手の届く範囲で行うことができる。
【0010】
ここで、コイル部を腹部や体側の皮下に配置するためには、例えば、コイル部をリードに内蔵して、このリードを、背部(あるいは腰部)から体側(あるいは、体側を介して腹部)まで導くように生体内に植え込むという方法が考えられる。しかしながら、背部(あるいは腰部)から体側(あるいは、体側を介して腹部)までの皮膚は極端に湾曲しているので、そのような皮下にリードを植え込むことは、たとえ通常のスタイレットやガイドワイヤ等を用いたとしても困難であった。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、湾曲した皮下への植え込みが容易なリード組立体、電気刺激装置およびリードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のリード組立体は、生体内に植え込まれるリードと、このリードを移動させて植え込み位置の調節を行う長尺体状のリード操作体とを含む。
リードは、基端から所定位置まで連通する第1ルーメン、該所定位置から先端まで連通するとともに第1ルーメンよりも径が小さい第2ルーメン、並びに第1ルーメンおよび第2ルーメン間の境界に係止部が形成されたリード本体を備える。
リード操作体は、第2ルーメンに貫入可能な長尺体状の操作部と、操作部に連続し、該操作部が第1ルーメンを通じて第2ルーメンに貫入された状態において、係止部と当接する被係止部と、を備える。
【0013】
本発明の上述した構成によれば、リードの基端の開口からリード操作体を挿入して係止部と被係止部とを当接させた状態では、リードの先端から操作部の少なくとも一部が突出する。そして、この突出部分を引っ張ると、係止部が被係止部に押されてリードが移動する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リードの先端から突出した操作部を引っ張ることにより、リードの植え込み(生体内でリードを移動させること)が行えるので、当該植え込みの最中にリードが折れ曲がって生体内に進めることが困難になることを防止できる。その結果、例えば極端に湾曲した皮下トンネルなどにも容易にリードを植え込むことができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
【図2】図2(a):本発明の実施形態に係る第2リードの先端付近における軸方向の断面を示す模式図である。 図2(b):ガイドワイヤが挿入された状態の第2リードを示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る刺激回路およびプログラマの機能を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図10】本発明の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態例について説明する。以下に述べる実施の形態例は、本発明の好適な具体例である。そのため、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明の範囲は、下記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。例えば、以下の説明で挙げる各パラメータの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係も概略的なものである。
【0017】
以下の手順で説明を行う。
<実施形態例>
1.電気刺激装置の構成
2.刺激回路の機能
3.プログラマの機能
4.電気刺激装置の植え込み手順
<変形例>
【0018】
<実施形態例>
本発明の実施形態の例を、図1〜10を参照して説明する。
[1.電気刺激装置の構成]
図1は、本発明の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
【0019】
電気刺激装置101は、生体に植え込み可能に構成されており、電気的な刺激信号(以下、「電気的刺激信号」という)により、生体内における脊髄等の神経や筋肉を刺激するものである。この電気刺激装置101は、神経等を刺激するための第1リード102と、第1リード102に電気的刺激信号を供給する刺激装置103と、刺激装置103の動作を制御するための第2リード104(リード)と、を備える。電気刺激装置101は、第2リード104を生体内に植え込むためのガイドワイヤ130(リード操作体)をさらに有する。
【0020】
まず、第1リード102について説明する。
第1リード102は、神経等を刺激するための4つの刺激電極105と、第1リード102を生体内に配置した際に各刺激電極105が生体に対して剥き出しになるように固定するボディ106とを備える。ここでは、刺激電極105の数を4つとしたが、これはあくまでも一例であって、刺激電極105の数は任意に設定可能である。
【0021】
刺激電極105は、導電性があって生体適合性がある素材、例えばプラチナやプラチナ合金(例えば、プラチナ90%/イリジウム10%合金)等の素材でできており、中空の略円筒状に形成されている。例えば、脊髄の神経を刺激する際には、脊髄硬膜と脊柱背側との距離が約5mmの硬膜外腔に第1リード102が植え込まれることになるので、この場合の刺激電極105の外径は、約1〜3mmであることが好ましい。また、刺激電極105の内径は、後述するスタイレット用ルーメン109の直径よりも大きく設定する必要がある。これは、刺激電極105でスタイレット用ルーメン109を塞がないようにするためである。
【0022】
4つの刺激電極105には、4本の導線205(図3を参照)の一端がそれぞれ接続されている。そして、4本の導線205の他端が、後述する刺激装置103の刺激回路117とそれぞれ接続されている。これにより、各刺激電極105と刺激回路117とが電気的に接続されている。なお、4本の導線205は、ボディ106内部に完全に埋め込まれている。
【0023】
ボディ106は、柔軟性があって、かつ生体適合性がある素材、例えばシリコーンやポリウレタン等の樹脂素材でできており、略円筒形状に形成されている。そして、ボディ106には、基端108に開口して先端107付近まで連通する、開口形が円形の孔が軸方向に開けられている。この孔が、スタイレット150を挿入するためのスタイレット用ルーメン109である。スタイレット用ルーメン109の直径は、スタイレット150の直径とほぼ等しいか、それより少し大きい必要がある。
【0024】
このようなスタイレット用ルーメン109を第1リード102に形成したことにより、第1リード102を生体内に植え込む際に、スタイレット150を利用できる。その結果、第1リード102の生体内への植え込みをより容易に行うことができるとともに、刺激電極105の生体内への配置の正確性をより向上させることができる。
【0025】
また、ボディ106の外径は、刺激電極105が剥き出しになるようにするため、刺激電極105の外径とほぼ等しい。ところで、硬膜外腔に第1リード102を植え込む場合、刺激電極105が安定して配置されるためには、第1リード102の一部が硬膜外腔に少なくとも脊椎における3椎体に等しい長さ以上入っている必要がある。そのため、ボディ106の軸方向の長さは、脊椎における3椎体に等しい長さプラス15cmよりも長くなっている。ここでの15cmという長さは、背中の皮膚の穿刺部位から硬膜外腔までの平均的な長さと、後述する硬膜外針のスリットを基端108付近で引き裂くための余剰の長さの和に相当する。
【0026】
次に、第2リード104について、図1に加えてさらに図2を参照して説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る第2リード104の先端付近を示す説明図である。
図2(a)は第2リード104の軸方向の断面を示す模式図、図2(b)はガイドワイヤ130が完全に挿入された状態の第2リード104を示す模式図である。
【0027】
第2リード104のボディ110(リード本体)は、第1リード102のボディ106と同様に、柔軟性があって、かつ生体適合性がある素材、例えばシリコーンやポリウレタン等の樹脂素材でできており、略円筒形状に形成されている。
【0028】
ボディ110の軸方向の長さは、例えば第2リード104を、腰部(あるいは背部)から体側まで導かれるように生体内に配置する場合には、患者の腹囲の約1/4程度の長さであることが好ましい。ただし、腰部から体側を通じて腹部まで導かれるように第2リード104を配置する場合には、ボディ110の軸方向の長さは患者の腹囲の約1/2程度の長さにする必要がある。
【0029】
また、ボディ110は、第2リード104の生体内への挿入を容易にするために、その先端112付近が図2(a)に示すようにテーパー状に形成されている。そして、ボディ110は、先端112から基端113まで貫通し、開口形が円形の貫通孔を有している。この貫通孔が、ガイドワイヤ130を貫入するためのガイドワイヤ用ルーメン114である。
【0030】
ガイドワイヤ用ルーメン114は、図2(a),(b)に示すように、第1ルーメン114aと、この第1ルーメン114aの直径よりも小さい直径を有する第2ルーメン114bとからなる。第1ルーメン114aはボディ110の基端113から先端112付近の所定位置まで形成されており、第2ルーメン114bは、当該所定位置から先端112まで形成されている。
【0031】
また、ボディ110において、第1ルーメン114aと第2ルーメン114bとの境目を形成している部分が係止部202に相当し、この係止部202よりも先端112側にコイル部111が埋め込まれている。コイル部111が埋め込まれている部分は、その他の部分に比べて厚みがあるので、コイル部111全体を確実にボディ110に内蔵することができる。これにより、第2リード104を植え込んだ際に、コイル部111が生体に接触することを防止できる。その上、第2リード104を腰部から体側(あるいは、体側を通じて腹部)まで導かれるように生体内に植え込んだ際に、体側や腹部などの人の手が届く場所の皮下にコイル部111を配置することができる。
【0032】
また、ボディ110の先端112付近には、第2リード104を生体内に植え込んだ際に、第2リード104の位置を保持する固定機構115が設けられている。固定機構115は、ボディ110の外周面から突出した複数の枝部115aからなる。枝部115aは、ボディ110と同じ素材で略棒状に形成されており、その一方の端面が丸みを帯びている。そして、他方の端面がボディ110と接合している。
【0033】
これらの枝部115aは、ボディ110の外周面の周方向に沿って、等角度間隔に配置されており、ボディ110の軸に対して基端113側に向かって傾斜している。これにより、ボディ110が基端113側に引っ張られた場合に、枝部115aが生体の組織に引っ掛かって先端112の位置がずれるのを防ぐ。なお、枝部115aのボディ110への接合方法としては、例えば、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)による方法、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法等が挙げられる。
【0034】
コイル部111は、図2(a),(b)に示すように、例えば電線をらせん状に巻いたコイルを含む回路であり、導線204(図3を参照)を介して後述する刺激装置103の刺激回路117と電気的に接続されている。なお、導線204は、ボディ110内部に完全に埋め込まれている。
【0035】
次に、刺激装置103について説明する。
刺激装置103は、筐体116およびこの筐体116に収納・固定された刺激回路117を備えている。
筐体116は、比較的硬く、生体適合性がある金属や樹脂、例えばチタンやエポキシ等、あるいはセラミック等の素材でできており、略直方体状に形成されている。この筐体116には、開口形が円形の貫通孔118a,118bが開けられている。
【0036】
一方の貫通孔118aの直径は、第1リード102のボディ106の外径とほぼ等しく、ボディ106の基端108から所定の位置までの部分がこの貫通孔118aに挿入・固定されている。これにより、筐体116の一方の側面から、ボディ106の基端108に開口するスタイレット用ルーメン109を露出させることができ、スタイレット150を当該スタイレット用ルーメン109に挿入可能にしている。
【0037】
また、他方の貫通孔118bの直径は、第2リード104のボディ110の外径とほぼ等しく、ボディ110の基端113から所定の位置までの部分がこの貫通孔118bに挿入・固定される。これにより、筐体116の他方の側面から、ボディ110の基端113に開口するガイドワイヤ用ルーメン114を露出させることができ、ガイドワイヤ130を当該ガイドワイヤ用ルーメン114に挿入可能にしている。
【0038】
刺激回路117は、回路基板上にカスタムICなどの小型部品を実装した回路であり、電気的刺激信号を生成する。この刺激回路117は、生成した電気的刺激信号を各刺激電極105に独立して供給するように、ボディ106に埋め込まれている4本の導線205(図3を参照)と電気的に接続されている。また、刺激回路117は、コイル部111と導線204(図3を参照)を介して電気的に接続されている。なお、刺激回路117の機能的な構成については、図3にて後述する。
【0039】
次に、ガイドワイヤ130について説明する。
ガイドワイヤ130は、長尺体状であって超弾性合金やステンレスなどの金属線をコアとしてできている。コアの表面には必要に応じて樹脂被覆などを設けることができる。ガイドワイヤ130は、図1に示すように、基端113に形成された開口を通じてガイドワイヤ用ルーメン114にその先端から挿入され、図2(b)に示すように、第2リード104に貫入された状態で使用される。そのため、ガイドワイヤ130の軸方向の長さは、第2リード104の軸方向の長さよりも十分に長くなければならない。
【0040】
このガイドワイヤ130には、その先端側から順番に、第1操作部131(操作部)、被係止部132および第2操作部133が設けられている。
【0041】
第1操作部131は略円柱形状に形成されている。この第1操作部131の直径は、図2(b)に示すように、第2ルーメン114bの直径とほぼ等しいか、それよりも小さくなっており、第1操作部131は第1ルーメン114aはもちろん第2ルーメン114bを通過可能としている。この第1操作部131の表面には、第1操作部131の軸方向の長さを示す目盛り203が形成されている。
【0042】
被係止部132は、第1操作部131と同じ軸を有する略円柱形状に形成されている。被係止部132は、例えばコア上にパイプ状の金属部材を溶接などによって形成することができる。被係止部132の直径は、第2ルーメン114bの直径よりも大きく、第1ルーメン114aの直径以下となっており、被係止部132は第1ルーメン114aのみを通過可能としている。これにより、図2(b)に示すように、第1操作部131が第2ルーメン114bに完全に貫入された状態においては、被係止部132が係止部202に当接した状態となる。
【0043】
第2操作部133は、被係止部132と同じ軸を有する略円柱形状に形成されている。図1および図2(b)に示す例では、第2操作部133の直径は、第1操作部131と同じく第2ルーメン114bの直径とほぼ等しいか、それよりも小さくなっている。しかしながら、第2操作部133は第1ルーメン114aを通過可能となるように構成されていればよく、その直径は、第1ルーメン114aの直径とほぼ等しいか、それよりも小さければよい。すなわち、被係止部132の延在長を長くして、被係止部132で第2操作部133を兼ねるようにしてもよい。
【0044】
次に、刺激回路117および刺激回路117への指示をコイル部111に送るためのプログラマ350の機能的な構成について図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る刺激回路およびプログラマの機能を示すブロック図である。
【0045】
[2.刺激回路の機能]
まず、刺激回路117の機能的な構成について説明する。
刺激回路117は、充電池303と、充電部304と、通信部305と、制御部306と、刺激パラメータ設定部307と、電極構成設定部308と、発振部309と、刺激電極スイッチ部310とを備える。
【0046】
充電池303は、例えばリチウムイオン電池等の充電可能な電池である。この充電池303は、蓄積している電力を、刺激回路117を構成する各ブロックに供給している。
【0047】
第2リード104に内蔵されたコイル部111は、例えばコイルとコンデンサとで構成される共振回路である。コイル部111は、充電池303の充電を行う場合、後述するプログラマ350から送信される充電用の電磁波を受信する。そして、この受信に伴ってコイル部111から発生する交流電流が充電部304に出力される。また、コイル部111はプログラマ350から送信される、所定の情報がのせられた電磁波を受信し、受信した電磁波がコイル部111から通信部305に出力される。
【0048】
充電部304は、整流回路を内蔵し、コイル部111から出力された交流電流を直流電流に変換して電力を取得する。そして、取得した電力で充電池303の充電を行う。
【0049】
通信部305は、コイル部111が受信した電磁波を復調し、電磁波にのせられている情報を取り出す。取り出された情報は制御部306に出力される。
【0050】
制御部306は、例えばマイクロコンピュータ等であり、刺激回路117の各ブロックを制御している。この制御部306は、通信部305から入力された情報を記憶する。ただし、すでに情報が記憶されている場合には、この情報を新たに入力された情報に置き換えて記憶する。そのため、制御部306は、通信部305から入力された最新の情報を記憶している。
【0051】
ここで、制御部306が記憶している情報は刺激パラメータおよび電極構成情報である。
刺激パラメータは、電気的刺激信号の刺激強度に関する情報であり、電気的刺激信号の刺激強度を決定するパルス電圧、パルス電流、パルス幅あるいは周波数の値を示す情報であり、刺激パラメータ設定部307に出力される。
【0052】
また、電極構成情報は、電極構成に関する情報であり、電気的刺激信号の極性を変更するための情報と、電気的刺激信号を出力する刺激電極105を刺激電極スイッチ部310に選択させるための情報とを含む情報であり、電極構成設定部308に出力される。
【0053】
刺激パラメータ設定部307は、入力された刺激パラメータに基づいて、発振部309で発生する電気的刺激信号の刺激強度を変更するための刺激強度変更信号を生成する。
【0054】
電極構成設定部308は、入力された電極構成情報に基づいて、発振部309で発生する電気的刺激信号を出力する刺激電極105を選択するための電極構成選択信号を生成する。なお、刺激パラメータ設定部307から出力される刺激強度変更信号は発振部309に出力され、電極構成設定部308から出力される電極構成選択信号は刺激電極スイッチ部310に出力される。
【0055】
発振部309は、刺激パラメータ設定部307から入力される刺激強度変更信号に基づいて、電気的刺激信号を生成して刺激電極スイッチ部310に出力する。
【0056】
刺激電極スイッチ部310は、電極構成設定部308から入力される電極構成選択信号に基づいて、発振部309から入力される電気的刺激信号を出力する刺激電極105を決定する。
【0057】
[3.プログラマの機能]
次に、プログラマ350の機能的な構成について説明する。
プログラマ350は、体外から使用される外部装置の一例であり、生体内に植え込まれた電気刺激装置101に対して通信等を行うものである。このプログラマ350は、電源部351と、制御部352と、通信部353と、コイル部354とを備える。
【0058】
電源部351は、蓄積している電力を、プログラマ350を構成する各ブロックに供給している。電源部351には、例えば一次電池や充電池が用いられる。
【0059】
制御部352は、例えばマイクロコンピュータを含み、医師等のユーザの操作に基づいて、通信部353を制御する。この操作は、例えばプログラマ350が備える操作部(不図示)を操作することにより行われる。
【0060】
通信部353は、ユーザからの給電指示があった場合、制御部352の制御に基づいて、給電用電磁波を生成する。そして、生成した給電用電磁波を、コイル部354を介して電気刺激装置101のコイル部111に送信する。
【0061】
また、通信部353は、ユーザからの電気的刺激信号の刺激強度等を変更する指示があった場合、制御部352の制御に基づいて、刺激パラメータや電極構成情報がのせられた電磁波を生成する。そして、生成した電磁波を、コイル部354を介して電気刺激装置101のコイル部111に送信する。
【0062】
コイル部354は、電磁波を電気刺激装置101へ送信できるコイルであればよく、例えば電線を円形あるいはらせん状に巻いたものでもよい。
【0063】
[4.電気刺激装置の植え込み手順]
次に、硬膜外腔から脊髄の神経の電気刺激を行う場合の電気刺激装置101を植え込む手順について図4〜10を参照して説明する。
図4〜6は背中付近を示す人体の縦断面図、図7〜10は人体を背中側から見た説明図である。
【0064】
まず、医師は、患者の痛みの分布状況に基づき、予め目標とする脊髄の刺激部位を決定する。そして、図4に示すように、分割式あるいはスリット付きの硬膜外針406を、X線透視下で患者の背中側から穿刺して硬膜外腔405まで挿入する。この硬膜外針406が硬膜外腔405に挿入される位置は、一般的に、目標とする刺激部位から脊椎403における3椎体以上低位が選ばれる。
【0065】
次に、第1リード102に形成されたスタイレット用ルーメン109(図1を参照)に、スタイレット150を完全に挿入する。そして、図5に示すように、スタイレット150が挿入された第1リード102の先端107を硬膜外針406に通し、当該第1リード102を生体404内に挿入する。そして、スタイレット150の基端150aを軸方向に押すことにより、第1リード102が硬膜外腔405内に挿入される。
【0066】
続いて、スタイレット150の基端150aを軸方向にさらに押して、硬膜外腔405内に第1リード102を上向させ、第1リード102の刺激電極105を目標とする刺激部位の近くに位置させる。
【0067】
そして、第1リード102を生体404内で挿抜して刺激電極105の位置を少しずつ移動させながら、プログラマ350を操作して神経刺激を行う。このとき、刺激装置103では、医師の操作に基づいて、所定の刺激強度の電気的刺激信号が生成され、生成された電気的刺激信号が刺激電極105に出力されて、当該刺激電極105の位置に近い部分の神経刺激が行われる。そして、医師は、患者の神経刺激に対する反応を聞きながら、最適な刺激電極105の位置を決定する。
【0068】
ここで、医師は、図6に示すように、決定した最適な位置から刺激電極105が移動しないように第1リード102とスタイレット150とを保持しながら、第1リード102のスタイレット用ルーメン109にスタイレット150が通った状態で硬膜外針406を生体404から抜く。そして、硬膜外針406のスリット部分(不図示)を引き裂いて、硬膜外針406を第1リード102の表面から取り去る。このとき、体から突出しているボディ106の一部(以下、「突出部」という)が、図1にて説明した、硬膜外針406を生体404から抜くための余剰の部分に相当する。
【0069】
続いて、図7に示すように、背中側の第1リード102の刺入部位に小切開408を形成し、スタイレット150を第1リード102のスタイレット用ルーメン109から取り出す。そして、小切開408により露出した組織に第1リード102のボディ106を糸(不図示)で縫い付けて固定する。これにより、決定した刺激電極105の位置がずれないようにすることができる。
【0070】
続いて、医師は、体側にも小切開410を入れる。そして、トンネリングツール(不図示)を用いて、小切開408と小切開410とを貫通する皮下トンネル(不図示)を生体404に形成する。
【0071】
以上の処理が完了した後、医師は、ガイドワイヤ130の第2操作部133(図1を参照)を手に持ち、第1操作部131を、第2リード104の基端113に形成された開口を通じて第1ルーメン114aに挿入する。このとき、第2リード104が動かないように、医師は、ガイドワイヤ130を持っていない方の手で第2リード104を保持する。
【0072】
そして、医師が、第2操作部133をその軸方向に押していくと、第1操作部131が第1ルーメン114a内を進み、第2ルーメン114b内に挿入される。第2操作部133をその軸方向にさらに押すと、図2(b)に示すように、係止部202に被係止部132が当接し、ガイドワイヤ130の移動が停止される。このとき、第1操作部131は第2リード104の先端112から突出している。
【0073】
続いて、医師は、第2リード104の先端112から突出している第1操作部131を、小切開408に形成された開口を通じて皮下トンネル(不図示)内に挿入する。そして、第1操作部131をその軸方向に押す。これにより、第1操作部131が皮下トンネル(不図示)内を進み、図8に示すように、第1操作部131の先端が、小切開410から突出する。
【0074】
続いて、医師は、第1操作部131の先端を掴み、小切開410から体外へ向かう方向(例えば、図8中の白抜き矢印で示される方向)に引っ張る。すると、第2リード104の係止部202(図2(b)を参照)がガイドワイヤ130の被係止部132により押される。これにより、ガイドワイヤ130とともに第2リード104が、図8中の白抜き矢印で示される方向に動かされ、第2リード104はその先端112から、小切開408に形成された開口を通じて皮下トンネル(不図示)内に挿入される。
【0075】
そして、医師が、図8中の白抜き矢印で示される方向に第1操作部131をさらに引っ張ることで、第2リード104が、図9に示すように、皮下トンネル内を進んでいく。このとき、医師は、第1操作部131の目盛り203(図2を参照)を確認することで、第2リード104の植え込み位置を知ることができる。
【0076】
そして、医師は、適切な位置に第2リード104が植え込まれたことを確認すると、第2リード104の植え込み位置が変わらないように第2リード104を支えつつ、ガイドワイヤの第2操作部を引っ張って、第2リード104のガイドワイヤ用ルーメン114からガイドワイヤ130を取り出す。そして、小切開408により露出した組織に第2リード104のボディ110を糸(不図示)で縫い付けて固定する。そして、第1および第2リード102,104の小切開408から突出したボディ部分を束ねて、刺激装置103とともに小切開408の皮下に植え込みを行う。
【0077】
続いて、電気刺激装置101が生体404内に完全に植え込まれた状態で固定されるようにするため、刺激装置103の筐体116(図1を参照)に形成された縫合孔(不図示)に糸(不図示)を通し、刺激装置103を生体404の組織に縫いつける。そして、図10に示すように、小切開408,410をそれぞれ縫合糸409で縫合する。この処置は、刺激装置103が生体404内で移動しないように、あるいは、電気刺激装置101の挿入口から感染症等を起こさないようにするためのものである。
【0078】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、第2リード104にガイドワイヤ130が完全に貫入された状態で、ガイドワイヤ130の第1操作部131を引っ張ることにより、第2リード104を生体内に植え込むことができる。ガイドワイヤ130を引っ張って第2リード104の植え込みを行うため、当該植え込みの最中に第2リード104が折れ曲がって生体内に進めることが困難になることを防止できる。その結果、例えば極端に湾曲した皮下トンネルなどにも容易に第2リード104を植え込むことができる、という効果がある。
【0079】
なお、上述した実施形態においては、第1および第2リード102,104と刺激装置103とからなるものを電気刺激装置101として説明しているが、さらにプログラマ350を含んだものを電気刺激装置101として広い概念で捉えることもできる。また、第2リード104とガイドワイヤ130とにより構成されるものがリード組立体に相当する。
【0080】
<変形例>
なお、上述した実施形態において、各種リード(第1リード102または第2リード104)と刺激装置103とを着脱可能に接続するコネクタを、各種リードおよび刺激装置103に設けてもよい。この場合、各種リードと刺激装置103とがそれぞれのコネクタで接続されると、刺激電極105またはコイル部111と、刺激回路117とが電気的に接続される。これにより、各種リードをそれぞれ別々に植え込むことができ、植え込みの難度を低下させることができる。
【0081】
さらに、この場合、第1リード102だけを植え込むことができるので、この第1リード102の植え込みに使用する硬膜外針406(図6を参照)を引き裂くことなく、第1リード102から抜き去ることができる。その結果、硬膜外針406を引き裂くための余剰部分をボディ106(図1を参照)に設ける必要がなくなり、ボディ106の軸方向の長さを短くすることができる。
【0082】
その上、上述したように、第1リード102の植え込みに使用する硬膜外針406を引き裂くことなく、第1リード102から抜き去ることができるので、植え込みの際に使用する硬膜外針406は、分割式やスリット付きのものでなくてもよいことはいうまでもない。
【0083】
また、上述した実施形態および変形例では、電気刺激装置101は、第2リード104にコイル部111を内蔵するようにしたが、コイル部111以外のものを内蔵するようにしてもよい。例えば、刺激回路のオン/オフを体外から切り替えることのできるリードスイッチなどでもよい。また、第1リード102に第2リード104のようなガイドワイヤ用ルーメン114を形成してもよい。
【0084】
また、図4〜図10では、第2リード104を腰部(背部)から体側まで導くように生体内に植え込む例について説明したが、同様にしてこの第2リード104を腰部から体側を通って腹部まで導くように生体内に植え込むこともできる。さらに、電気刺激装置101は、生体内のその他の場所にも同様の手順で植え込むことができる。
【符号の説明】
【0085】
101…電気刺激装置、102…第1リード、103…刺激装置、104…第2リード、105…刺激電極、106,110…ボディ、109…スタイレット用ルーメン、111…コイル部、114…ガイドワイヤ用ルーメン、114a…第1ルーメン、114b…第2ルーメン、115…固定機構、116…筐体、117…刺激回路、130…ガイドワイヤ、131…第1操作部、132…被係止部、133…第2操作部、150…スタイレット、202…係止部、303…充電池、304…充電部、305…通信部、306…制御部、307…刺激パラメータ設定部、308…電極構成設定部、309…発振部、310…刺激電極スイッチ部、350…プログラマ、351…電源部、352…制御部、353…通信部、354…コイル部、403…脊椎、404…生体、405…硬膜外腔、406…硬膜外針、408,410…小切開、409…縫合糸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に植え込まれるリードと、該リードを移動させて植え込み位置の調節を行う長尺体状のリード操作体とを含むリード組立体であって、
前記リードは、
基端から所定位置まで連通する第1ルーメン、該所定位置から先端まで連通するとともに前記第1ルーメンよりも径が小さい第2ルーメン、並びに前記第1ルーメンおよび前記第2ルーメン間の境界に係止部が形成されたリード本体を備え、
前記リード操作体は、
前記第2ルーメンに貫入可能な長尺体状の操作部と、
前記操作部に連続し、該操作部が前記第1ルーメンを通じて前記第2ルーメンに貫入された状態において、前記係止部と当接する被係止部と、を備える
ことを特徴とするリード組立体。
【請求項2】
前記係止部と前記被係止部とが当接した状態では、前記リード本体の先端から前記操作部の少なくとも一部が前記第2ルーメンを通じて突出し、該突出している部分を引っ張ると、前記係止部が前記被係止部に押されて、前記リード操作体とともに前記リードが移動される
ことを特徴とする請求項1に記載のリード組立体。
【請求項3】
前記リードには、該リードを生体内に固定する固定機構が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のリード組立体。
【請求項4】
前記操作部は、その軸方向長さを示す目盛りを有する
請求項1から3のいずれかに記載のリード組立体。
【請求項5】
刺激信号を生成する刺激回路を有する刺激装置と、該刺激装置に接続されるとともに生体内に留置されるリードと、該リードを移動させて植え込み位置の調節を行う長尺体状のリード操作体と、を含む電気刺激装置であって、
前記リードは、
基端から所定位置まで連通する第1ルーメン、該所定位置から先端まで連通するとともに前記第1ルーメンよりも径が小さい第2ルーメン、並びに前記第1ルーメンおよび前記第2ルーメン間の境界に係止部が形成されたリード本体を備え、
前記リード操作体は、
前記第2ルーメンに貫入可能な長尺体状の操作部と、
前記操作部に連続し、該操作部が前記第1ルーメンを通じて前記第2ルーメンに貫入された状態において、前記係止部と当接する被係止部と、を備える
ことを特徴とする電気刺激装置。
【請求項6】
前記リードは、前記刺激信号が印加されて生体内の神経および/または筋肉を刺激する刺激電極を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の電気刺激装置。
【請求項7】
前記リードは、前記刺激回路の動作のオン/オフを切り替えるスイッチを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の電気刺激装置。
【請求項8】
前記リードは、外部装置から発振された電磁波に応じて給電および/または通信を前記刺激回路に行うコイル部を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の電気刺激装置。
【請求項9】
生体内に植え込まれるリードであって、
基端から所定位置まで連通する第1ルーメン、該所定位置から先端まで連通するとともに前記第1ルーメンよりも径が小さい第2ルーメン、並びに前記第1ルーメンおよび前記第2ルーメン間の境界に係止部が形成されたリード本体を含む
ことを特徴とするリード。
【請求項1】
生体内に植え込まれるリードと、該リードを移動させて植え込み位置の調節を行う長尺体状のリード操作体とを含むリード組立体であって、
前記リードは、
基端から所定位置まで連通する第1ルーメン、該所定位置から先端まで連通するとともに前記第1ルーメンよりも径が小さい第2ルーメン、並びに前記第1ルーメンおよび前記第2ルーメン間の境界に係止部が形成されたリード本体を備え、
前記リード操作体は、
前記第2ルーメンに貫入可能な長尺体状の操作部と、
前記操作部に連続し、該操作部が前記第1ルーメンを通じて前記第2ルーメンに貫入された状態において、前記係止部と当接する被係止部と、を備える
ことを特徴とするリード組立体。
【請求項2】
前記係止部と前記被係止部とが当接した状態では、前記リード本体の先端から前記操作部の少なくとも一部が前記第2ルーメンを通じて突出し、該突出している部分を引っ張ると、前記係止部が前記被係止部に押されて、前記リード操作体とともに前記リードが移動される
ことを特徴とする請求項1に記載のリード組立体。
【請求項3】
前記リードには、該リードを生体内に固定する固定機構が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のリード組立体。
【請求項4】
前記操作部は、その軸方向長さを示す目盛りを有する
請求項1から3のいずれかに記載のリード組立体。
【請求項5】
刺激信号を生成する刺激回路を有する刺激装置と、該刺激装置に接続されるとともに生体内に留置されるリードと、該リードを移動させて植え込み位置の調節を行う長尺体状のリード操作体と、を含む電気刺激装置であって、
前記リードは、
基端から所定位置まで連通する第1ルーメン、該所定位置から先端まで連通するとともに前記第1ルーメンよりも径が小さい第2ルーメン、並びに前記第1ルーメンおよび前記第2ルーメン間の境界に係止部が形成されたリード本体を備え、
前記リード操作体は、
前記第2ルーメンに貫入可能な長尺体状の操作部と、
前記操作部に連続し、該操作部が前記第1ルーメンを通じて前記第2ルーメンに貫入された状態において、前記係止部と当接する被係止部と、を備える
ことを特徴とする電気刺激装置。
【請求項6】
前記リードは、前記刺激信号が印加されて生体内の神経および/または筋肉を刺激する刺激電極を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の電気刺激装置。
【請求項7】
前記リードは、前記刺激回路の動作のオン/オフを切り替えるスイッチを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の電気刺激装置。
【請求項8】
前記リードは、外部装置から発振された電磁波に応じて給電および/または通信を前記刺激回路に行うコイル部を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の電気刺激装置。
【請求項9】
生体内に植え込まれるリードであって、
基端から所定位置まで連通する第1ルーメン、該所定位置から先端まで連通するとともに前記第1ルーメンよりも径が小さい第2ルーメン、並びに前記第1ルーメンおよび前記第2ルーメン間の境界に係止部が形成されたリード本体を含む
ことを特徴とするリード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−161496(P2012−161496A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24541(P2011−24541)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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