リード線の潤滑性、耐摩耗性および温度弾性を改善するための表面改質
外側表面を有し、かつ内側表面を有する少なくとも1つの管腔を備える医療用電気リード線本体であって、該管腔の内側表面はシラン系表面改質剤で処理されて、該内側表面少なくとも一部の上に三次元の密に架橋した潤滑性のコーティングが形成される医療用電気リード線本体。リード線本体の外側表面も同様に処理されてもよい。潤滑性のシランコーティングは、コーティングされていない表面と比較すると、リード線本体のコーティング表面の摩擦係数を80%程度低減することができる。摩擦係数の低減は、リード線本体の管腔を通した導体の架線効率を増大させることが可能であり、また耐摩耗性を増大させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑性の表面コーティングで物体の表面を処理する方法に関する。より具体的には、本発明は、医療用電気リード線の表面の摩擦係数を低減するために該リード線を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは生物学的に安定な熱硬化性のポリマーであり、リード線本体の構築において絶縁体として一般に使用される。シリコーンゴムおよび他のポリマーはその存続期間を通じて摩耗を生じる可能性がある。シリコーンゴムに関連する別の課題は、リード線本体の製造の際のリード線架線(lead stringing)である。リード線架線とは、リード線本体の中に設けられた管腔を通して導体を牽引することを指す。シリコーンゴムの粘着性の表面特性は、リード線架線工程の自動化を妨げ、該工程を、時間を要しかつ高価なものとする可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
1つの実施形態によれば、本発明は、外側表面と、内側表面を有する少なくとも1つの管腔とを備えるリード線本体に潤滑性のコーティングを形成する方法である。該方法は、リード線本体の内側表面および外側表面を、シラン系表面改質剤を含むコーティング組成物に接触させる工程と、リード線本体の表面を多湿環境に曝露する工程と、その後、シロキサンコーティングを形成するために前記表面のうち少なくとも一方の上のコーティング組成物を硬化させる工程とを含む。
【0004】
別の実施形態によれば、本発明は、内側表面を有する少なくとも1つの管腔を備えるリード線本体に潤滑性のコーティングを形成する方法である。該方法は、内側表面を、シラン系表面改質剤を含むコーティング組成物に接触させる工程と、内側表面を水蒸気と接触させる工程と、シロキサンコーティングを形成するためにリード線本体の内側表面上のコーティング組成物を硬化させる工程とを含む。
【0005】
別の実施形態によれば、本発明は、上述のような様々な実施形態によって作製されたコーティングされた医療用電気リード線である。
さらに別の実施形態によれば、本発明は、外側表面を有し、第1の端部および第2の端部ならびに第1の端部と第2の端部との間に伸びる内側表面を有する少なくとも1つの管腔を有するリード線本体を備える医療用電気リード線である。該医療用電気リード線は、少なくとも1つの管腔を通って伸びる少なくとも1つの導体と、少なくとも1つの導体に作動可能に接続された少なくとも1つの電極とを備えている。少なくとも1つの管腔の内側表面の少なくとも一部の上にシロキサンコーティングが提供されている。さらなる実施形態では、シロキサンコーティングは医療用電気リード線の外側表面の少なくとも一部の上に提供されている。
【0006】
多数の実施形態が開示されるが、当業者には、本発明の例示的な実施形態を示しかつ説明する以下の詳細な説明から、本発明のさらに別の実施形態が明白となるであろう。従って、図面および詳細な説明は当然例示としてみなされるべきであり、限定的なものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態による医療用電気リード線の概略図。
【図2】本発明の実施形態によるリード線本体の一部分の側断面図。
【図3】本発明の実施形態によるリード線本体の端部の断面図。
【図4】本発明の実施形態による方法のフローチャート。
【図5A】実施例1に記載の管試料の走査電子顕微鏡像。
【図5B】実施例1に記載の管試料の走査電子顕微鏡像。
【図6A】実施例2に記載の管試料の外側表面の走査電子顕微鏡像。
【図6B】実施例2に記載の管試料の管腔の内側表面の走査電子顕微鏡像。
【図7】実施例3に記載のコーティングが提供された管試料の管腔の内側表面の走査電子顕微鏡像。
【図8A】実施例4に記載の管試料の外側表面の走査電子顕微鏡像。
【図8B】実施例4に記載の管試料の管腔の内側表面の走査電子顕微鏡像。
【図9A】実施例5に記載の管試料の管腔の内側表面の走査電子顕微鏡像。
【図9B】実施例5に記載の管試料の外側表面および管腔の内側表面の走査電子顕微鏡像。
【図9C】実施例5に記載の管試料の外側表面および管腔の内側表面の走査電子顕微鏡像。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明には様々な改変形態および代替形態の可能性があるが、特定の実施形態が例として図面に示されており、かつ以下に詳細に説明される。しかしながら、本発明を記載されている特定の実施形態に限定することが目的ではない。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるすべての改変形態、等価物、および代替形態を包含するように意図されている。
【0009】
詳細な説明
以降の詳細な説明において、本明細書の一部を形成している添付図面を参照するが、図面には、本発明を実行することが可能な具体的実施形態が実例として示されている。これらの実施形態は、当業者が本発明を実行するのを可能にするための十分詳細な説明がなされており、また当然ながら、他の実施形態も利用可能であり、かつ本発明の範囲から逸脱することなく構造上の変更を加えることが可能である。したがって、以降の詳細な説明は、限定的な意味でとらえるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される。
【0010】
図1は、本発明の様々な実施形態による、医療用電気リード線10の部分断面図である。いくつかの実施形態によれば、医療用電気リード線10は患者の心臓内への移植用に構成されることが可能である。他の実施形態によれば、医療用電気リード線10は患者の神経脈管領域内への移植用に構成される。医療用電気リード線10は、基端部16から先端部20まで伸びる長尺状の絶縁性リード線本体12を備えている。基端部16は、コネクタ24を介してパルス発生器に作動可能に連結されるように構成される。少なくとも1つの導体32は、リード線10の基端部16のコネクタ24からリード線10の先端部20の1つまたは複数の電極28へと伸びる。導体32はコイル状導体またはケーブル導体であってよい。複数の導体が用いられる一部の実施形態によれば、リード線はコイル状導体とケーブル導体との組み合わせを備えることができる。コイル状導体が用いられる場合、いくつかの実施形態によれば、導体は同径の構成または同軸の構成のいずれかを有することができる。
【0011】
リード線本体12は可撓性を有するがその長さに沿ってほぼ非圧縮性であり、かつ円形の断面を有する。本発明の1つの実施形態によれば、リード線本体12の外径は約0.67〜約5mm(約2〜約15フレンチ)の範囲にある。医療用電気リード線10は、送達すべき治療法の種類に応じて単極性、双極性、または多極性であってよい。複数の電極28および複数の導体32を使用する本発明の実施形態では、導体32はそれぞれ1対1方式で個々の電極28に連結されるように適合され、各電極28を個々にアドレス可能にする。
【0012】
さらに、リード線本体12は1つまたは複数の管腔を備えることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの管腔は医療用電気リード線の構築時に導体の挿入を受けるように適合されている。さらなる実施形態では、少なくとも1つの管腔は、患者の心臓内の標的位置にリード線10を送達するためのガイドワイヤまたはスタイレットのような誘導要素を受け入れるように適合されている。
【0013】
当分野で知られているように、電極28は任意の電極構成を有することができる。本発明の1つの実施形態によれば、少なくとも1つの電極はリング電極または部分的にリング状の電極であってよい。別の実施形態によれば、少なくとも1つの電極52はショック用コイルである。本発明のさらに別の実施形態によれば、少なくとも1つの電極28は露出した電極部分と絶縁された電極部分とを備えている。いくつかの実施形態では、電極構成の組み合わせが使用されてもよい。電極28は、プラチナ、ステンレス鋼、MP35N、白金‐イリジウム合金、または別の類似の導体材料でコーティングされてもよいし、前記材料から形成されてもよい。さらなる実施形態では、少なくとも1つの電極28に隣接してステロイド溶出性のカラーが設けられてもよい。
【0014】
様々な実施形態によれば、リード線本体12は、患者の体内の標的部位において1つまたは複数の電極28を備えるリード線本体12を固定かつ安定化するために、1つまたは複数の固定部材を備えることができる。固定部材は能動型であっても受動型であってもよい。いくつかの実施形態では、固定部材はねじ込み式の固定部材であってよい。他の実施形態では、固定部材は伸長/収縮式の固定部材であってよく、固定部材を伸長/収縮しやすくするように適合された1つまたは複数の機械的な構成要素を備えることができる。典型的な伸長/収縮式の固定部材は、参照により本願に組込まれる米国特許第6,463,334号明細書に表示および説明されている。
【0015】
図2は、本発明の様々な実施形態によるリード線本体12の一部分の断面図である。図3は、本発明の他の実施形態によるリード線本体12の端部の断面図である。リード線本体12は、図2に示されるように、内側表面40を有する少なくとも1つの管腔36を備えている。いくつかの実施形態において、図3に示されるように、リード線本体12は2つ以上の管腔36を備えている場合もある。様々な実施形態によれば、潤滑性のコーティング50は、少なくとも1つの管腔36の内側表面40の少なくとも一部の上に提供される。他の実施形態では、潤滑性のコーティングは複数の管腔36の内側表面40の上に提供されてもよい。いくつかの実施形態では、潤滑性のコーティング50は、該コーティング50がリード線本体12の基端部16から先端部20へと十分に伸びるように、少なくとも1つの管腔36の内側表面40の上に提供される。少なくとも1つの管腔36の内側表面40の上に提供された潤滑性のコーティング50は、該リード線の製造過程において管腔36を通して導体を架線するのを促進することができる。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、リード線本体12は、リード線本体12の外側表面42の少なくとも一部分の上に配置された潤滑性のコーティング50を備えることができる。本発明のいくつかの実施形態によれば、潤滑性のコーティング50は、該コーティング50がリード線本体12の基端部から先端部へと十分に伸びるように、絶縁性のリード線本体の外側表面の上に提供される。本発明の他の実施形態によれば、コーティング50はリード線本体12に沿って1つまたは複数の不連続な位置に提供される。
【0017】
本発明の様々な実施形態によれば、リード線本体12は、リード線本体12の内側表面40および外側表面42の両方の少なくとも一部分の上に提供された潤滑性のコーティング50を備えていてもよい。他の実施形態によれば、リード線本体42は、少なくとも1つのリード線本体の管腔36の内側表面40の少なくとも一部分の上にのみ提供された潤滑性のコーティング50を備えていてもよい。さらの別の実施形態によれば、リード線本体12は、リード線本体12の外側表面42の少なくとも一部分の上に提供された潤滑性のコーティングを備えていてもよい。
【0018】
本発明のさらなる実施形態によれば、コーティング50は、他の適切な基材の表面上に提供されてもよい。例示的な適切な基材には、限定するものではないが、oリング、シール、固定装置(例えば伸長/収縮式の固定装置およびその機械的構成要素)、パルス発生器のハウジング、ステント、または任意の他の基材であって潤滑性のコーティングもしくは摩擦係数の低減が望まれる表面を有するもの、が挙げられる。
【0019】
本発明の様々な実施形態によれば、潤滑性のシランコーティング50は、シラン系表面改質剤を含むコーティング組成物を、リード線本体12の内側表面40もしくは外側表面42のうち少なくともいずれか一方またはその他の適切な基材の上で架橋させることによって形成される。例示的なシラン系表面改質剤は、参照により全体が本願に組込まれる米国特許第5,736,251号明細書に記載されている。一実施形態によれば、コーティング組成物は、下記一般式:
【0020】
【化1】
【0021】
を有するシラン系表面改質剤を含み、上記式中、Rは、約15個以下の炭素を有する、非置換およびハロゲンで置換された脂肪族基、脂環式基、芳香族基ならびに直鎖および分岐鎖のアルキル置換芳香族基から選択されるか、またはRはモノマー単位の数が約1〜15個のオリゴマーおよびその他の短鎖ポリマーから選択され;R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素、水酸基、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アシル基、アセトキシ基、アルコキシ基およびアシルオキシ基、ならびにこれらの組み合わせから選択される。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、官能基R1、R2およびR3のシランは最大の架橋密度および架橋官能性のために同一であってもよい。R1、R2またはR3のうち少なくともいずれかについて選択される官能基は任意の好適なシラン脱離基であってよく、水素、ハロゲン、水酸基、アルコキシ基およびアシルオキシ基から独立に選択可能である。いくつかの例示的な実施形態によれば、R1、R2、またはR3置換基のうちいずれかまたは全部として使用するのに好適な脱離基には、メトキシ、エトキシ、アセトキシなど、およびこれらの混合物、または水酸基もしくはクロロ基が挙げられる。より低い架橋官能性を許容しうる他の実施形態によれば、R2およびR3置換基について選択される官能基は、R1と異なるか、または互いに異なりうる。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、シラン部分またはR基は、15個以下の炭素原子を有する脂肪族基、脂環式基、芳香族基およびアルキル芳香族基から選択可能である。R基は非置換であってもよいし、クロロ基、ブロモ基またはフルオロ基のようなハロゲン基で置換されてもよいし、先述のうち任意のものの混合物であってもよい。上記式のR基として使用される例示的なシラン部分は、メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのようなC1〜C8低級アルキル基、ならびに1,1,1‐トリフルオロプロピルのようなハロゲンで置換されたアルキル、またはベンジル基もしくはトリル基のような芳香族基である。本発明のさらに別の実施形態によれば、R基はポリエチレングリコール(PEG)またはポリビニルピロリドン(PVP)であってよい。
【0024】
式1による、本発明の様々な実施形態とともに使用するための例示的なシラン系表面改質剤としては、限定するものではないが、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、1,1,1‐トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルトリクロロシラン、およびトリフルオロエチルトリフルオロシランが挙げられる。式Iによるシランは一般に、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ所在のヒュルス・アメリカ社(Huels America, Inc.)を含むいくつかの供給元から市販されている。上記式によって定義されるシランモノマーまたはコーティング前駆物質を作製するための合成法は、一般に当業者に良く知られている。
【0025】
本発明の他の実施形態によれば、式Iによって定義されるシラン系表面改質剤のうち任意のものの混合物は、リード線本体の内側表面もしくは外側表面のうち少なくともいずれか一方または他の適切な基材の上に潤滑性のシランコーティングを提供するために使用可能である。さらに別の実施形態によれば、様々な官能性を有するシラン系表面改質剤の混合物も、リード線本体の内側表面もしくは外側表面のうち少なくともいずれか一方または他の適切な基材の上に潤滑性のコーティングを提供するために可能である。
【0026】
本発明の様々な実施形態によれば、シラン系表面改質剤は、該シラン系表面改質剤と反応することができる表面基が基材表面上に存在している様々な基材の表面をコーティングするために使用することができる。シラン系表面改質剤は、基材表面上に存在する反応基と反応して三次元の架橋された潤滑性シランコーティングを形成する。いくつかの実施形態によれば、コーティングされる基材は、該基材の表面上に存在する複数の水酸(OH)基またはその他の活性化水素(H)基を備えている。様々な実施形態によれば、コーティングされる基材は、三次元の架橋されたコーティングマトリックスを形成するための、シランとの反応性を有する表面基を備えた任意のポリマー材料、コポリマー材料、天然または合成のエラストマー材料を備えていてもよい。活性OH基または活性H基のうち少なくともいずれかが表面上に存在する例示的な基材材料には、限定するものではないが、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、アセトキシ誘導型シリコーン、シラノール終端シリコーン、ポリシロキサン、ポリウレタン、ナイロン、ポリオレフィンポリマー、ゴム状コポリマー、ブチルゴム、ブチルニトリルゴム、ポリイソプレン、イソブチレンコポリマー、シロキサン‐ウレタンコポリマーなどが挙げられる。他の実施形態によれば、シラン系表面改質剤は、望ましい場合には金属またはその他の材料の表面をコーティングするために使用されてもよい。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、式Iのシラン系表面改質剤は不活性表面を有する基材上に潤滑性のコーティングを提供するために使用することもできる。不活性表面は最初に、基材の表面にシランと反応することができる基を提供するために前処理される。基材表面の前処理は、基材への潤滑性コーティングの接着を高めることができる。例示的な化学的表面処理法には、化学エッチング、界面活性剤吸着、共押出、プラズマ放電のような化学線照射、表面の酸化または還元、およびポリビニルアルコール、ポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリラート)などのような材料を用いた表面グラフトが挙げられる。活性水素を提供するために基材表面のバルク改質を行うこともできる。この種の従来型改質の例には、活性水素を有するポリマーとのブレンド、ポリマーの部分的な分解、末端基の改質、モノマーの官能基化、酸化、還元、共重合、などが挙げられる。一実施形態によれば、基材表面の表面酸化を使用して該表面を前処理することができる。さらに、コーティングされる基材が自動酸化を受けてもよいし、反応性の表面基の形成をもたらす環境酸化を受けてもよい。反応性の表面基は基材の製造に使用される方法によって提供されてもよい。例えば、反応性の表面基は、押出加工の際に、コーティングされる基材の表面に形成されてもよい。
【0028】
図4は、リード線本体12の内側表面40もしくは外側表面42のうち少なくともいずれか一方またはコーティングすべき表面を有する他の適切な基材に三次元の潤滑性シランコーティングを形成するために使用される方法100のフローチャートである。リード線本体12の内側表面40または外側表面42のうち少なくともいずれか一方をコーティングする前に、リード線本体12または他の基材を、当業者に周知の様々な洗浄方法を使用して洗浄し、すすぐ(ブロック110)。例えば、リード線本体12または基材を超音波処理するかまたは溶媒中に浸漬し、次いで大量の新しい溶媒ですすぐ。リード線本体12または基材の洗浄およびすすぎに有用な適切な溶媒は当業者に周知である。
【0029】
洗浄後、リード線本体12を室温で、またはオーブン中で、またはこれらを組み合わせて乾燥させる(ブロック120)。いくつかの実施形態によれば、リード線本体12または基材を約1時間未満の時間で乾燥させる。例えば、基材を、約5〜約60分、約10〜約55分、約15〜約50分、約20〜約45分、約25〜約40分、約30〜約35分、または約15〜約25分の範囲の時間で乾燥させてもよい。別の実施形態によれば、リード線本体12または基材を約155℃未満の温度で乾燥させる。例えば、リード線本体12または基材を、約50°〜約110℃、より具体的には約60°〜約80℃の範囲の温度で乾燥させる。
【0030】
一実施形態によれば、リード線本体または基材を、約5%を超える相対湿度を有する環境中で乾燥させる。例えば、初期の乾燥ステップは、約35%〜約95%の範囲の相対湿度を有する環境中で行われてもよい。その後、リード線本体12または基材をさらに空気乾燥させて室温まで冷却してもよい。
【0031】
その後、リード線本体12の所望の表面を、シラン系改質剤を含有する組成物でコーティングする(ブロック130)。一実施形態によれば、リード線本体12または基材を、1つまたは複数の式Iのシラン系表面改質剤と溶媒とを含むコーティング組成物中にディップコーティングまたは浸漬することにより、リード線本体12または他の適切な基材をコーティングすることができる。噴霧コーティングまたは蒸着のような当業者に既知の他のコーティング方法も使用可能である。
【0032】
一実施形態では、コーティングは、重量百分率で少なくとも約2%のシラン系改質剤、より具体的には重量百分率で約2〜約10%のシラン系改質剤を含む。コーティング組成物は1つまたは複数の溶媒をさらに含むこともできる。適切な溶媒には、式のシランを室温で溶解可能または少なくとも部分的に溶解可能な任意の有機溶媒が挙げられる。説明に役立つ例には、炭化水素溶媒およびハロ炭化水素溶媒が挙げられる。いくつかの実施形態によれば、選択される溶媒は無極性かつ非芳香族系の有機溶媒である。コーティング組成物の形成に使用可能な他の例示的な溶媒には、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、キシレン、短鎖ハロ炭化水素およびシリコーン流体、例えばポリジメチルシロキサンオイル、例えばダウコーニング(Dow Corning、登録商標)Medical Fluid200などが挙げられる。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、コーティング組成物は、ある所望の硬化温度範囲におけるコーティング物のより完全またはより急速な硬化を促進するために有効量の架橋触媒を任意選択で含むことができる。一般に、当業者によく知られている既知のシロキサン触媒、例えば鉛、スズ、亜鉛およびチタンの化合物をベースとした有機金属触媒ならびに第四級化合物触媒が使用可能である。触媒は、シラン成分の総重量に基づいて0.0001重量%〜約5.0重量%の範囲の量で使用可能である。特に好ましい触媒には、ジアルキルメタルモノカルボキシラートまたはジアルキルメタルポリカルボキシラート、例えば第一錫オクトアート、ジブチル錫ジラウレートおよびジブチル錫ジアセテートが挙げられる。
【0034】
リード線本体12または基材は、コーティングされるリード線本体12または基材の、あらゆる内側表面40を含む全ての表面がコーティング組成物と接触するように、十分な時間にわたってコーティング組成物中にディップコーティングされるか、または他の方法で該コーティング組成物と接触させられる。一実施形態によれば、リード線本体12または基材は最短で2分間、コーティング組成物中に浸漬される。例えば、リード線本体12または基材は、約2〜約20分間、約5〜約15分間、約7〜約12分間、または約10分間、コーティング組成物に浸漬されてもよい。
【0035】
コーティング厚は浸漬時間により影響を受ける。一般に、リード線本体12または基材がより長くコーティング組成物に浸漬されるほど、コーティングはより厚くなる。一実施形態によれば、コーティング厚は約0.01μm〜約200μmの範囲である。別の実施形態によれば、コーティング厚は約5μm〜約25μmの範囲である。様々な実施形態によれば、コーティング厚は、コーティングすべきリード線本体12または基材の表面を前処理するために1つまたは複数の層として塗布される任意の下塗り剤またはカップリング剤の厚さよりも概して大きい。
【0036】
その後、リード線本体12のコーティング表面は多湿環境に曝露される(ブロック140)。本発明の一実施形態によれば、リード線本体12または少なくともその被コーティング部分は、多湿チャンバまたは類似の多湿環境の中に置かれる。多湿環境は、該環境における水蒸気、水分凝縮、またはその他の水分蓄積に由来するものであってよい。例えば、リード線本体12は、約50〜約85パーセント、より特定すれば約5〜約85パーセント、さらにより特定すれば約65〜約75パーセントの湿度レベルを有するチャンバ内に置かれてもよい。リード線本体は、約30秒〜約10分間、より特定すれば約1〜約5分間多湿チャンバ内に置かれてもよい。実施例において実証されるように、リード線本体の外側表面のより完全かつ/または均一なコーティングは、該外側表面を高湿度に曝露することにより達成可能である。
【0037】
別の実施形態によれば、リード線本体12の1つまたは複数の管腔36は、該管腔を水蒸気に接触させることにより多湿環境に曝露される。一実施形態によれば、水蒸気は管腔36の中に最短で5秒間注入される。別の実施形態では、水蒸気は約5秒〜約300秒(5分)間の範囲の時間にわたって注入される。さらに別の実施形態では、水蒸気は、約15秒〜約1分間に及ぶ時間にわたって注入される。実施例において実証されるように、内部管腔のより完全かつ/または均一なコーティングは、水蒸気の注入によって達成可能である。さらなる実施形態では、水蒸気は過熱水蒸気であってよい。過熱水蒸気は、所与の圧力における沸点より高い温度の水蒸気である。
【0038】
ある実施形態によれば、外側表面および内部管腔のコーティングを提供するために、最初にリード線本体12が多湿チャンバ内に置かれ、次に内部管腔36が水蒸気と接触するようにしてもよいし、またはその逆であってもよい。他の実施形態によれば、密閉容器の中で湿度供給源として作用する水蒸気注入を用いて両方のステップが同時に行われることも考えられる。
【0039】
別の実施形態によれば、リード線本体12または基材の内側表面40および外側表面42をコーティングする工程を併せて単一ステップとすることができる。例えば、リード線本体12または基材をコーティング組成物と接触させた後に、リード線本体12または基材の内側表面40および外側表面42の両方を水蒸気と接触させることができる。内側表面40および外側表面42は、リード線本体12の管腔36を通して水蒸気を噴射し、同時にリード線本体12の外側表面42の上に水蒸気を噴射することにより、水蒸気と接触させることができる。リード線本体12または基材の内側表面40および外側表面42の全ての利用可能な反応部位が湿気と接するように、水蒸気接触ステップは十分な長さの時間にわたって実施される。例えば、水蒸気は、リード線本体12の管腔36の中および外側表面42の上に、約5秒〜約5分間にわたって、またはより特定すれば約15秒〜約1分間にわたって、噴射することができる。その後、上述のような方法に従ってリード線本体12の内側表面40および外側表面42の上でコーティングが硬化される。
【0040】
多湿環境への曝露の後、次にリード線本体12は、リード線本体12の内側表面40または基材の上のコーティングを硬化するために、温度および湿度条件が制御されたオーブン内に置かれる(ブロック150)。いくつかの実施形態によれば、リード線本体12の内側表面40または基材の上のコーティングは、約5分〜約2時間、より特定すれば約30〜約90分間、さらにより特定すれば約45〜約75分間にわたる時間で硬化される。リード線本体12は、約65℃〜約155℃、さらにより特定すれば約100℃〜約120℃の範囲の温度で硬化されうる。一実施形態によれば、リード線本体12の内側表面40または基材の上のコーティングは、約5%より高い相対湿度を有する環境で硬化される。例えば、硬化ステップは、約35%〜約95%の範囲の相対湿度を有する環境で行なわれる。その後、リード線本体12をオーブンから取り出し、さらに空気乾燥させて室温まで冷却する。別の実施形態によれば、コーティングは、加湿されていないオーブンの中で硬化される。
【0041】
硬化が完了した後、コーティングされた表面は、該表面上に形成された三次元のマトリックスをほとんど変化させることなく水または有機溶媒の中で繰り返しすすぐことができる。コーティングされた表面のすすぎは、マトリックス内部のあらゆる未反応または未結合のシランまたはポリマー残留物を除去するために繰り返し行うことができる。
【0042】
以降に述べる実施例においてさらに示されるように、シラン系表面改質剤は適切な基材の表面で表面反応基と反応して、該表面に化学的に結合した密に架橋したシランコーティングを提供する。結果として生じるコーティングは、基材表面上の三次元マトリックスおよび基材内部の架橋した相互貫入網目構造を形成する。三次元コーティングは、表面の摩擦係数を非コーティング表面と比較して低減することができる。コーティングされた基材について表面係数が低減することにより、該基材の潤滑性または耐摩耗性のうち少なくともいずれか一方が増大しうる。
【0043】
ある実施形態のコーティング、特にコーティング中にエチルトリアセトキシシランを用いるコーティングは、基材表面において非常に小さい水滴状の外観を呈する。この半球状の微小結節を有するコーティングマトリックス構造は、コーティングされた基材の表面摩擦係数をさらに低減することができる。それほど多湿でない環境中で行われるか、または改質もしくはコーティングすべき基材の予備給湿もしくは保湿なしで行なわれるかのうち少なくともいずれかの硬化反応であっても、効果的に表面摩擦特性および粘着性を低減する非常に有用な潤滑性のコーティングが提供される。さらに、本発明の様々な実施形態によるリード線本体の内側表面または外側表面のうち少なくともいずれか一方の上に形成された潤滑性のコーティングは、リード線本体の内径および外径をほとんど増大させない。一実施形態では、リード線本体の内径または外径の増大は約0.051mm(約0.002インチ)未満である。
【0044】
本発明の様々な実施形態によれば、一実施形態によれば、上述の実施形態による基材の表面上に提供された潤滑性のシランコーティングは、以下の実施例で実証されるように、該表面の摩擦係数をコーティングされていない表面と比較して80%程度低減する。
【0045】
(実施例1)
シリコーン製の管試料を500mLのヘプタン中で1時間超音波処理し、次に清浄なヘプタンですすいだ。管試料の各端部についてキムワイプ(Kimwipe、登録商標)で吸水し、試料を室内の湿度以下の70℃のオーブン中に2時間置いた。
【0046】
管試料をオーブンから取り出し、60mLのヘプタン中に5.5重量%のエチルトリアセトキシシラン(ETA)を含有する溶液中に15分間浸した。管試料をETA溶液から取り出し、管試料の各端部をキムワイプ(登録商標)で吸水した。その後、試料を、加湿されていないオーブン中にて110℃で1時間硬化させた。図5Aおよび5Bは、硬化後の試料のうちの1つの管腔の内側表面および外側表面のSEM写真である。図5Aおよび5Bに示されるように、試料の外側表面および内部管腔表面はETAではほとんどコーティングされなかった。
【0047】
(実施例2)
シリコーン管材料の試料を500mLのヘプタン中で1時間超音波処理し、次に清浄なヘプタンですすいだ。試料を室温で25分間乾燥させた。管試料の各端部をキムワイプ(登録商標)で吸水し、試料を、室内の湿度以下の70℃のオーブン中に15分間置いた。
【0048】
管試料をオーブンから取り出し、60mLのヘプタン中に5.5重量%のエチルトリクロロシラン(ETC)を含有する溶液中に10分間浸した。管試料をETC溶液から取り出し、湿度70%のチャンバ内に1分間置いた。その後、試料を、加湿されていないオーブン中にて110℃で1時間硬化させた。図6Aおよび6Bは、試料のうちの1つの外側表面および内部管腔を示すSEM写真である。図6Aおよび6Bに示されるように、完全で概ね均一なコーティングが管試料の外側表面に形成されたが、図6Bの白い斑点状のアーティファクトで証明されるように内部管腔上では不均一なコーティングが形成された。
【0049】
(実施例3)
管試料をETC溶液の代わりにETA溶液でコーティングする以外はほぼ同じプロトコールを使用して、実施例2で述べた実験を再度実施した。図7は、試料のうちの1つの内部管腔のSEM像であり、このSEM像は内部管腔上に不均一なコーティングが形成されたことを示している。
【0050】
(実施例4)
多湿チャンバ内に置く前に試料の内部管腔に水蒸気を30秒〜1分間注入する以外はほぼ同じプロトコールを使用して、実施例2で述べた実験を再度実施した。図8Aおよび8Bは、試料のうちの1つの外側表面および内部管腔のSEM像である。これらの図面は、試料の外側表面および内部管腔の両方に、完全でほぼ均一なコーティングが形成されたことを示している。
【0051】
(実施例5)
シリコーン管材料の試料を500mLのヘプタン中で1時間超音波処理し、次に清浄なヘプタンですすいだ。試料を室温で5分間乾燥させた。管試料の各端部についてキムワイプ(登録商標)で吸水し、試料を室内の湿度以下の70℃のオーブン中に20分間置いた。次いで試料をさらに5分間空気乾燥させた。
【0052】
その後、管試料を、60mLのヘプタン中に5.5重量%のエチルトリアセトキシシラン(ETA)を含有する溶液中に10分間浸した。管試料をETA溶液から取り出し、湿度75%のチャンバ内に1分間置き、該試料の内部管腔の中に水蒸気を30秒〜1分間注入した。その後、試料を、加湿されていないオーブン中にて110℃で1時間硬化させた。図9A〜9Cは、1つの試料の外側表面および内部管腔を示している。これらの図面は、外側表面および内部管腔の両方のほぼ完全なコーティングを示している。さらに、両方の表面上のコーティングの少なくとも一部は半球状の形態を有していた。
【0053】
議論された典型的な実施形態に対し、本発明の範囲から逸脱することなく様々な改変および追加を加えることができる。例えば、上述の実施形態は特定の特徴を表しているが、本発明の範囲には、様々な組み合わせの特徴を有する実施形態および記載された特徴を必ずしも全て含んでいない実施形態も含まれる。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲の範囲内に入るそのような全ての代替形態、改変形態および変更形態を、それらの等価物全てとともに包含するように意図されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑性の表面コーティングで物体の表面を処理する方法に関する。より具体的には、本発明は、医療用電気リード線の表面の摩擦係数を低減するために該リード線を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは生物学的に安定な熱硬化性のポリマーであり、リード線本体の構築において絶縁体として一般に使用される。シリコーンゴムおよび他のポリマーはその存続期間を通じて摩耗を生じる可能性がある。シリコーンゴムに関連する別の課題は、リード線本体の製造の際のリード線架線(lead stringing)である。リード線架線とは、リード線本体の中に設けられた管腔を通して導体を牽引することを指す。シリコーンゴムの粘着性の表面特性は、リード線架線工程の自動化を妨げ、該工程を、時間を要しかつ高価なものとする可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
1つの実施形態によれば、本発明は、外側表面と、内側表面を有する少なくとも1つの管腔とを備えるリード線本体に潤滑性のコーティングを形成する方法である。該方法は、リード線本体の内側表面および外側表面を、シラン系表面改質剤を含むコーティング組成物に接触させる工程と、リード線本体の表面を多湿環境に曝露する工程と、その後、シロキサンコーティングを形成するために前記表面のうち少なくとも一方の上のコーティング組成物を硬化させる工程とを含む。
【0004】
別の実施形態によれば、本発明は、内側表面を有する少なくとも1つの管腔を備えるリード線本体に潤滑性のコーティングを形成する方法である。該方法は、内側表面を、シラン系表面改質剤を含むコーティング組成物に接触させる工程と、内側表面を水蒸気と接触させる工程と、シロキサンコーティングを形成するためにリード線本体の内側表面上のコーティング組成物を硬化させる工程とを含む。
【0005】
別の実施形態によれば、本発明は、上述のような様々な実施形態によって作製されたコーティングされた医療用電気リード線である。
さらに別の実施形態によれば、本発明は、外側表面を有し、第1の端部および第2の端部ならびに第1の端部と第2の端部との間に伸びる内側表面を有する少なくとも1つの管腔を有するリード線本体を備える医療用電気リード線である。該医療用電気リード線は、少なくとも1つの管腔を通って伸びる少なくとも1つの導体と、少なくとも1つの導体に作動可能に接続された少なくとも1つの電極とを備えている。少なくとも1つの管腔の内側表面の少なくとも一部の上にシロキサンコーティングが提供されている。さらなる実施形態では、シロキサンコーティングは医療用電気リード線の外側表面の少なくとも一部の上に提供されている。
【0006】
多数の実施形態が開示されるが、当業者には、本発明の例示的な実施形態を示しかつ説明する以下の詳細な説明から、本発明のさらに別の実施形態が明白となるであろう。従って、図面および詳細な説明は当然例示としてみなされるべきであり、限定的なものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態による医療用電気リード線の概略図。
【図2】本発明の実施形態によるリード線本体の一部分の側断面図。
【図3】本発明の実施形態によるリード線本体の端部の断面図。
【図4】本発明の実施形態による方法のフローチャート。
【図5A】実施例1に記載の管試料の走査電子顕微鏡像。
【図5B】実施例1に記載の管試料の走査電子顕微鏡像。
【図6A】実施例2に記載の管試料の外側表面の走査電子顕微鏡像。
【図6B】実施例2に記載の管試料の管腔の内側表面の走査電子顕微鏡像。
【図7】実施例3に記載のコーティングが提供された管試料の管腔の内側表面の走査電子顕微鏡像。
【図8A】実施例4に記載の管試料の外側表面の走査電子顕微鏡像。
【図8B】実施例4に記載の管試料の管腔の内側表面の走査電子顕微鏡像。
【図9A】実施例5に記載の管試料の管腔の内側表面の走査電子顕微鏡像。
【図9B】実施例5に記載の管試料の外側表面および管腔の内側表面の走査電子顕微鏡像。
【図9C】実施例5に記載の管試料の外側表面および管腔の内側表面の走査電子顕微鏡像。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明には様々な改変形態および代替形態の可能性があるが、特定の実施形態が例として図面に示されており、かつ以下に詳細に説明される。しかしながら、本発明を記載されている特定の実施形態に限定することが目的ではない。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるすべての改変形態、等価物、および代替形態を包含するように意図されている。
【0009】
詳細な説明
以降の詳細な説明において、本明細書の一部を形成している添付図面を参照するが、図面には、本発明を実行することが可能な具体的実施形態が実例として示されている。これらの実施形態は、当業者が本発明を実行するのを可能にするための十分詳細な説明がなされており、また当然ながら、他の実施形態も利用可能であり、かつ本発明の範囲から逸脱することなく構造上の変更を加えることが可能である。したがって、以降の詳細な説明は、限定的な意味でとらえるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される。
【0010】
図1は、本発明の様々な実施形態による、医療用電気リード線10の部分断面図である。いくつかの実施形態によれば、医療用電気リード線10は患者の心臓内への移植用に構成されることが可能である。他の実施形態によれば、医療用電気リード線10は患者の神経脈管領域内への移植用に構成される。医療用電気リード線10は、基端部16から先端部20まで伸びる長尺状の絶縁性リード線本体12を備えている。基端部16は、コネクタ24を介してパルス発生器に作動可能に連結されるように構成される。少なくとも1つの導体32は、リード線10の基端部16のコネクタ24からリード線10の先端部20の1つまたは複数の電極28へと伸びる。導体32はコイル状導体またはケーブル導体であってよい。複数の導体が用いられる一部の実施形態によれば、リード線はコイル状導体とケーブル導体との組み合わせを備えることができる。コイル状導体が用いられる場合、いくつかの実施形態によれば、導体は同径の構成または同軸の構成のいずれかを有することができる。
【0011】
リード線本体12は可撓性を有するがその長さに沿ってほぼ非圧縮性であり、かつ円形の断面を有する。本発明の1つの実施形態によれば、リード線本体12の外径は約0.67〜約5mm(約2〜約15フレンチ)の範囲にある。医療用電気リード線10は、送達すべき治療法の種類に応じて単極性、双極性、または多極性であってよい。複数の電極28および複数の導体32を使用する本発明の実施形態では、導体32はそれぞれ1対1方式で個々の電極28に連結されるように適合され、各電極28を個々にアドレス可能にする。
【0012】
さらに、リード線本体12は1つまたは複数の管腔を備えることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの管腔は医療用電気リード線の構築時に導体の挿入を受けるように適合されている。さらなる実施形態では、少なくとも1つの管腔は、患者の心臓内の標的位置にリード線10を送達するためのガイドワイヤまたはスタイレットのような誘導要素を受け入れるように適合されている。
【0013】
当分野で知られているように、電極28は任意の電極構成を有することができる。本発明の1つの実施形態によれば、少なくとも1つの電極はリング電極または部分的にリング状の電極であってよい。別の実施形態によれば、少なくとも1つの電極52はショック用コイルである。本発明のさらに別の実施形態によれば、少なくとも1つの電極28は露出した電極部分と絶縁された電極部分とを備えている。いくつかの実施形態では、電極構成の組み合わせが使用されてもよい。電極28は、プラチナ、ステンレス鋼、MP35N、白金‐イリジウム合金、または別の類似の導体材料でコーティングされてもよいし、前記材料から形成されてもよい。さらなる実施形態では、少なくとも1つの電極28に隣接してステロイド溶出性のカラーが設けられてもよい。
【0014】
様々な実施形態によれば、リード線本体12は、患者の体内の標的部位において1つまたは複数の電極28を備えるリード線本体12を固定かつ安定化するために、1つまたは複数の固定部材を備えることができる。固定部材は能動型であっても受動型であってもよい。いくつかの実施形態では、固定部材はねじ込み式の固定部材であってよい。他の実施形態では、固定部材は伸長/収縮式の固定部材であってよく、固定部材を伸長/収縮しやすくするように適合された1つまたは複数の機械的な構成要素を備えることができる。典型的な伸長/収縮式の固定部材は、参照により本願に組込まれる米国特許第6,463,334号明細書に表示および説明されている。
【0015】
図2は、本発明の様々な実施形態によるリード線本体12の一部分の断面図である。図3は、本発明の他の実施形態によるリード線本体12の端部の断面図である。リード線本体12は、図2に示されるように、内側表面40を有する少なくとも1つの管腔36を備えている。いくつかの実施形態において、図3に示されるように、リード線本体12は2つ以上の管腔36を備えている場合もある。様々な実施形態によれば、潤滑性のコーティング50は、少なくとも1つの管腔36の内側表面40の少なくとも一部の上に提供される。他の実施形態では、潤滑性のコーティングは複数の管腔36の内側表面40の上に提供されてもよい。いくつかの実施形態では、潤滑性のコーティング50は、該コーティング50がリード線本体12の基端部16から先端部20へと十分に伸びるように、少なくとも1つの管腔36の内側表面40の上に提供される。少なくとも1つの管腔36の内側表面40の上に提供された潤滑性のコーティング50は、該リード線の製造過程において管腔36を通して導体を架線するのを促進することができる。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、リード線本体12は、リード線本体12の外側表面42の少なくとも一部分の上に配置された潤滑性のコーティング50を備えることができる。本発明のいくつかの実施形態によれば、潤滑性のコーティング50は、該コーティング50がリード線本体12の基端部から先端部へと十分に伸びるように、絶縁性のリード線本体の外側表面の上に提供される。本発明の他の実施形態によれば、コーティング50はリード線本体12に沿って1つまたは複数の不連続な位置に提供される。
【0017】
本発明の様々な実施形態によれば、リード線本体12は、リード線本体12の内側表面40および外側表面42の両方の少なくとも一部分の上に提供された潤滑性のコーティング50を備えていてもよい。他の実施形態によれば、リード線本体42は、少なくとも1つのリード線本体の管腔36の内側表面40の少なくとも一部分の上にのみ提供された潤滑性のコーティング50を備えていてもよい。さらの別の実施形態によれば、リード線本体12は、リード線本体12の外側表面42の少なくとも一部分の上に提供された潤滑性のコーティングを備えていてもよい。
【0018】
本発明のさらなる実施形態によれば、コーティング50は、他の適切な基材の表面上に提供されてもよい。例示的な適切な基材には、限定するものではないが、oリング、シール、固定装置(例えば伸長/収縮式の固定装置およびその機械的構成要素)、パルス発生器のハウジング、ステント、または任意の他の基材であって潤滑性のコーティングもしくは摩擦係数の低減が望まれる表面を有するもの、が挙げられる。
【0019】
本発明の様々な実施形態によれば、潤滑性のシランコーティング50は、シラン系表面改質剤を含むコーティング組成物を、リード線本体12の内側表面40もしくは外側表面42のうち少なくともいずれか一方またはその他の適切な基材の上で架橋させることによって形成される。例示的なシラン系表面改質剤は、参照により全体が本願に組込まれる米国特許第5,736,251号明細書に記載されている。一実施形態によれば、コーティング組成物は、下記一般式:
【0020】
【化1】
【0021】
を有するシラン系表面改質剤を含み、上記式中、Rは、約15個以下の炭素を有する、非置換およびハロゲンで置換された脂肪族基、脂環式基、芳香族基ならびに直鎖および分岐鎖のアルキル置換芳香族基から選択されるか、またはRはモノマー単位の数が約1〜15個のオリゴマーおよびその他の短鎖ポリマーから選択され;R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素、水酸基、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アシル基、アセトキシ基、アルコキシ基およびアシルオキシ基、ならびにこれらの組み合わせから選択される。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、官能基R1、R2およびR3のシランは最大の架橋密度および架橋官能性のために同一であってもよい。R1、R2またはR3のうち少なくともいずれかについて選択される官能基は任意の好適なシラン脱離基であってよく、水素、ハロゲン、水酸基、アルコキシ基およびアシルオキシ基から独立に選択可能である。いくつかの例示的な実施形態によれば、R1、R2、またはR3置換基のうちいずれかまたは全部として使用するのに好適な脱離基には、メトキシ、エトキシ、アセトキシなど、およびこれらの混合物、または水酸基もしくはクロロ基が挙げられる。より低い架橋官能性を許容しうる他の実施形態によれば、R2およびR3置換基について選択される官能基は、R1と異なるか、または互いに異なりうる。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、シラン部分またはR基は、15個以下の炭素原子を有する脂肪族基、脂環式基、芳香族基およびアルキル芳香族基から選択可能である。R基は非置換であってもよいし、クロロ基、ブロモ基またはフルオロ基のようなハロゲン基で置換されてもよいし、先述のうち任意のものの混合物であってもよい。上記式のR基として使用される例示的なシラン部分は、メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのようなC1〜C8低級アルキル基、ならびに1,1,1‐トリフルオロプロピルのようなハロゲンで置換されたアルキル、またはベンジル基もしくはトリル基のような芳香族基である。本発明のさらに別の実施形態によれば、R基はポリエチレングリコール(PEG)またはポリビニルピロリドン(PVP)であってよい。
【0024】
式1による、本発明の様々な実施形態とともに使用するための例示的なシラン系表面改質剤としては、限定するものではないが、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、1,1,1‐トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルトリクロロシラン、およびトリフルオロエチルトリフルオロシランが挙げられる。式Iによるシランは一般に、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ所在のヒュルス・アメリカ社(Huels America, Inc.)を含むいくつかの供給元から市販されている。上記式によって定義されるシランモノマーまたはコーティング前駆物質を作製するための合成法は、一般に当業者に良く知られている。
【0025】
本発明の他の実施形態によれば、式Iによって定義されるシラン系表面改質剤のうち任意のものの混合物は、リード線本体の内側表面もしくは外側表面のうち少なくともいずれか一方または他の適切な基材の上に潤滑性のシランコーティングを提供するために使用可能である。さらに別の実施形態によれば、様々な官能性を有するシラン系表面改質剤の混合物も、リード線本体の内側表面もしくは外側表面のうち少なくともいずれか一方または他の適切な基材の上に潤滑性のコーティングを提供するために可能である。
【0026】
本発明の様々な実施形態によれば、シラン系表面改質剤は、該シラン系表面改質剤と反応することができる表面基が基材表面上に存在している様々な基材の表面をコーティングするために使用することができる。シラン系表面改質剤は、基材表面上に存在する反応基と反応して三次元の架橋された潤滑性シランコーティングを形成する。いくつかの実施形態によれば、コーティングされる基材は、該基材の表面上に存在する複数の水酸(OH)基またはその他の活性化水素(H)基を備えている。様々な実施形態によれば、コーティングされる基材は、三次元の架橋されたコーティングマトリックスを形成するための、シランとの反応性を有する表面基を備えた任意のポリマー材料、コポリマー材料、天然または合成のエラストマー材料を備えていてもよい。活性OH基または活性H基のうち少なくともいずれかが表面上に存在する例示的な基材材料には、限定するものではないが、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、アセトキシ誘導型シリコーン、シラノール終端シリコーン、ポリシロキサン、ポリウレタン、ナイロン、ポリオレフィンポリマー、ゴム状コポリマー、ブチルゴム、ブチルニトリルゴム、ポリイソプレン、イソブチレンコポリマー、シロキサン‐ウレタンコポリマーなどが挙げられる。他の実施形態によれば、シラン系表面改質剤は、望ましい場合には金属またはその他の材料の表面をコーティングするために使用されてもよい。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、式Iのシラン系表面改質剤は不活性表面を有する基材上に潤滑性のコーティングを提供するために使用することもできる。不活性表面は最初に、基材の表面にシランと反応することができる基を提供するために前処理される。基材表面の前処理は、基材への潤滑性コーティングの接着を高めることができる。例示的な化学的表面処理法には、化学エッチング、界面活性剤吸着、共押出、プラズマ放電のような化学線照射、表面の酸化または還元、およびポリビニルアルコール、ポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリラート)などのような材料を用いた表面グラフトが挙げられる。活性水素を提供するために基材表面のバルク改質を行うこともできる。この種の従来型改質の例には、活性水素を有するポリマーとのブレンド、ポリマーの部分的な分解、末端基の改質、モノマーの官能基化、酸化、還元、共重合、などが挙げられる。一実施形態によれば、基材表面の表面酸化を使用して該表面を前処理することができる。さらに、コーティングされる基材が自動酸化を受けてもよいし、反応性の表面基の形成をもたらす環境酸化を受けてもよい。反応性の表面基は基材の製造に使用される方法によって提供されてもよい。例えば、反応性の表面基は、押出加工の際に、コーティングされる基材の表面に形成されてもよい。
【0028】
図4は、リード線本体12の内側表面40もしくは外側表面42のうち少なくともいずれか一方またはコーティングすべき表面を有する他の適切な基材に三次元の潤滑性シランコーティングを形成するために使用される方法100のフローチャートである。リード線本体12の内側表面40または外側表面42のうち少なくともいずれか一方をコーティングする前に、リード線本体12または他の基材を、当業者に周知の様々な洗浄方法を使用して洗浄し、すすぐ(ブロック110)。例えば、リード線本体12または基材を超音波処理するかまたは溶媒中に浸漬し、次いで大量の新しい溶媒ですすぐ。リード線本体12または基材の洗浄およびすすぎに有用な適切な溶媒は当業者に周知である。
【0029】
洗浄後、リード線本体12を室温で、またはオーブン中で、またはこれらを組み合わせて乾燥させる(ブロック120)。いくつかの実施形態によれば、リード線本体12または基材を約1時間未満の時間で乾燥させる。例えば、基材を、約5〜約60分、約10〜約55分、約15〜約50分、約20〜約45分、約25〜約40分、約30〜約35分、または約15〜約25分の範囲の時間で乾燥させてもよい。別の実施形態によれば、リード線本体12または基材を約155℃未満の温度で乾燥させる。例えば、リード線本体12または基材を、約50°〜約110℃、より具体的には約60°〜約80℃の範囲の温度で乾燥させる。
【0030】
一実施形態によれば、リード線本体または基材を、約5%を超える相対湿度を有する環境中で乾燥させる。例えば、初期の乾燥ステップは、約35%〜約95%の範囲の相対湿度を有する環境中で行われてもよい。その後、リード線本体12または基材をさらに空気乾燥させて室温まで冷却してもよい。
【0031】
その後、リード線本体12の所望の表面を、シラン系改質剤を含有する組成物でコーティングする(ブロック130)。一実施形態によれば、リード線本体12または基材を、1つまたは複数の式Iのシラン系表面改質剤と溶媒とを含むコーティング組成物中にディップコーティングまたは浸漬することにより、リード線本体12または他の適切な基材をコーティングすることができる。噴霧コーティングまたは蒸着のような当業者に既知の他のコーティング方法も使用可能である。
【0032】
一実施形態では、コーティングは、重量百分率で少なくとも約2%のシラン系改質剤、より具体的には重量百分率で約2〜約10%のシラン系改質剤を含む。コーティング組成物は1つまたは複数の溶媒をさらに含むこともできる。適切な溶媒には、式のシランを室温で溶解可能または少なくとも部分的に溶解可能な任意の有機溶媒が挙げられる。説明に役立つ例には、炭化水素溶媒およびハロ炭化水素溶媒が挙げられる。いくつかの実施形態によれば、選択される溶媒は無極性かつ非芳香族系の有機溶媒である。コーティング組成物の形成に使用可能な他の例示的な溶媒には、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、キシレン、短鎖ハロ炭化水素およびシリコーン流体、例えばポリジメチルシロキサンオイル、例えばダウコーニング(Dow Corning、登録商標)Medical Fluid200などが挙げられる。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、コーティング組成物は、ある所望の硬化温度範囲におけるコーティング物のより完全またはより急速な硬化を促進するために有効量の架橋触媒を任意選択で含むことができる。一般に、当業者によく知られている既知のシロキサン触媒、例えば鉛、スズ、亜鉛およびチタンの化合物をベースとした有機金属触媒ならびに第四級化合物触媒が使用可能である。触媒は、シラン成分の総重量に基づいて0.0001重量%〜約5.0重量%の範囲の量で使用可能である。特に好ましい触媒には、ジアルキルメタルモノカルボキシラートまたはジアルキルメタルポリカルボキシラート、例えば第一錫オクトアート、ジブチル錫ジラウレートおよびジブチル錫ジアセテートが挙げられる。
【0034】
リード線本体12または基材は、コーティングされるリード線本体12または基材の、あらゆる内側表面40を含む全ての表面がコーティング組成物と接触するように、十分な時間にわたってコーティング組成物中にディップコーティングされるか、または他の方法で該コーティング組成物と接触させられる。一実施形態によれば、リード線本体12または基材は最短で2分間、コーティング組成物中に浸漬される。例えば、リード線本体12または基材は、約2〜約20分間、約5〜約15分間、約7〜約12分間、または約10分間、コーティング組成物に浸漬されてもよい。
【0035】
コーティング厚は浸漬時間により影響を受ける。一般に、リード線本体12または基材がより長くコーティング組成物に浸漬されるほど、コーティングはより厚くなる。一実施形態によれば、コーティング厚は約0.01μm〜約200μmの範囲である。別の実施形態によれば、コーティング厚は約5μm〜約25μmの範囲である。様々な実施形態によれば、コーティング厚は、コーティングすべきリード線本体12または基材の表面を前処理するために1つまたは複数の層として塗布される任意の下塗り剤またはカップリング剤の厚さよりも概して大きい。
【0036】
その後、リード線本体12のコーティング表面は多湿環境に曝露される(ブロック140)。本発明の一実施形態によれば、リード線本体12または少なくともその被コーティング部分は、多湿チャンバまたは類似の多湿環境の中に置かれる。多湿環境は、該環境における水蒸気、水分凝縮、またはその他の水分蓄積に由来するものであってよい。例えば、リード線本体12は、約50〜約85パーセント、より特定すれば約5〜約85パーセント、さらにより特定すれば約65〜約75パーセントの湿度レベルを有するチャンバ内に置かれてもよい。リード線本体は、約30秒〜約10分間、より特定すれば約1〜約5分間多湿チャンバ内に置かれてもよい。実施例において実証されるように、リード線本体の外側表面のより完全かつ/または均一なコーティングは、該外側表面を高湿度に曝露することにより達成可能である。
【0037】
別の実施形態によれば、リード線本体12の1つまたは複数の管腔36は、該管腔を水蒸気に接触させることにより多湿環境に曝露される。一実施形態によれば、水蒸気は管腔36の中に最短で5秒間注入される。別の実施形態では、水蒸気は約5秒〜約300秒(5分)間の範囲の時間にわたって注入される。さらに別の実施形態では、水蒸気は、約15秒〜約1分間に及ぶ時間にわたって注入される。実施例において実証されるように、内部管腔のより完全かつ/または均一なコーティングは、水蒸気の注入によって達成可能である。さらなる実施形態では、水蒸気は過熱水蒸気であってよい。過熱水蒸気は、所与の圧力における沸点より高い温度の水蒸気である。
【0038】
ある実施形態によれば、外側表面および内部管腔のコーティングを提供するために、最初にリード線本体12が多湿チャンバ内に置かれ、次に内部管腔36が水蒸気と接触するようにしてもよいし、またはその逆であってもよい。他の実施形態によれば、密閉容器の中で湿度供給源として作用する水蒸気注入を用いて両方のステップが同時に行われることも考えられる。
【0039】
別の実施形態によれば、リード線本体12または基材の内側表面40および外側表面42をコーティングする工程を併せて単一ステップとすることができる。例えば、リード線本体12または基材をコーティング組成物と接触させた後に、リード線本体12または基材の内側表面40および外側表面42の両方を水蒸気と接触させることができる。内側表面40および外側表面42は、リード線本体12の管腔36を通して水蒸気を噴射し、同時にリード線本体12の外側表面42の上に水蒸気を噴射することにより、水蒸気と接触させることができる。リード線本体12または基材の内側表面40および外側表面42の全ての利用可能な反応部位が湿気と接するように、水蒸気接触ステップは十分な長さの時間にわたって実施される。例えば、水蒸気は、リード線本体12の管腔36の中および外側表面42の上に、約5秒〜約5分間にわたって、またはより特定すれば約15秒〜約1分間にわたって、噴射することができる。その後、上述のような方法に従ってリード線本体12の内側表面40および外側表面42の上でコーティングが硬化される。
【0040】
多湿環境への曝露の後、次にリード線本体12は、リード線本体12の内側表面40または基材の上のコーティングを硬化するために、温度および湿度条件が制御されたオーブン内に置かれる(ブロック150)。いくつかの実施形態によれば、リード線本体12の内側表面40または基材の上のコーティングは、約5分〜約2時間、より特定すれば約30〜約90分間、さらにより特定すれば約45〜約75分間にわたる時間で硬化される。リード線本体12は、約65℃〜約155℃、さらにより特定すれば約100℃〜約120℃の範囲の温度で硬化されうる。一実施形態によれば、リード線本体12の内側表面40または基材の上のコーティングは、約5%より高い相対湿度を有する環境で硬化される。例えば、硬化ステップは、約35%〜約95%の範囲の相対湿度を有する環境で行なわれる。その後、リード線本体12をオーブンから取り出し、さらに空気乾燥させて室温まで冷却する。別の実施形態によれば、コーティングは、加湿されていないオーブンの中で硬化される。
【0041】
硬化が完了した後、コーティングされた表面は、該表面上に形成された三次元のマトリックスをほとんど変化させることなく水または有機溶媒の中で繰り返しすすぐことができる。コーティングされた表面のすすぎは、マトリックス内部のあらゆる未反応または未結合のシランまたはポリマー残留物を除去するために繰り返し行うことができる。
【0042】
以降に述べる実施例においてさらに示されるように、シラン系表面改質剤は適切な基材の表面で表面反応基と反応して、該表面に化学的に結合した密に架橋したシランコーティングを提供する。結果として生じるコーティングは、基材表面上の三次元マトリックスおよび基材内部の架橋した相互貫入網目構造を形成する。三次元コーティングは、表面の摩擦係数を非コーティング表面と比較して低減することができる。コーティングされた基材について表面係数が低減することにより、該基材の潤滑性または耐摩耗性のうち少なくともいずれか一方が増大しうる。
【0043】
ある実施形態のコーティング、特にコーティング中にエチルトリアセトキシシランを用いるコーティングは、基材表面において非常に小さい水滴状の外観を呈する。この半球状の微小結節を有するコーティングマトリックス構造は、コーティングされた基材の表面摩擦係数をさらに低減することができる。それほど多湿でない環境中で行われるか、または改質もしくはコーティングすべき基材の予備給湿もしくは保湿なしで行なわれるかのうち少なくともいずれかの硬化反応であっても、効果的に表面摩擦特性および粘着性を低減する非常に有用な潤滑性のコーティングが提供される。さらに、本発明の様々な実施形態によるリード線本体の内側表面または外側表面のうち少なくともいずれか一方の上に形成された潤滑性のコーティングは、リード線本体の内径および外径をほとんど増大させない。一実施形態では、リード線本体の内径または外径の増大は約0.051mm(約0.002インチ)未満である。
【0044】
本発明の様々な実施形態によれば、一実施形態によれば、上述の実施形態による基材の表面上に提供された潤滑性のシランコーティングは、以下の実施例で実証されるように、該表面の摩擦係数をコーティングされていない表面と比較して80%程度低減する。
【0045】
(実施例1)
シリコーン製の管試料を500mLのヘプタン中で1時間超音波処理し、次に清浄なヘプタンですすいだ。管試料の各端部についてキムワイプ(Kimwipe、登録商標)で吸水し、試料を室内の湿度以下の70℃のオーブン中に2時間置いた。
【0046】
管試料をオーブンから取り出し、60mLのヘプタン中に5.5重量%のエチルトリアセトキシシラン(ETA)を含有する溶液中に15分間浸した。管試料をETA溶液から取り出し、管試料の各端部をキムワイプ(登録商標)で吸水した。その後、試料を、加湿されていないオーブン中にて110℃で1時間硬化させた。図5Aおよび5Bは、硬化後の試料のうちの1つの管腔の内側表面および外側表面のSEM写真である。図5Aおよび5Bに示されるように、試料の外側表面および内部管腔表面はETAではほとんどコーティングされなかった。
【0047】
(実施例2)
シリコーン管材料の試料を500mLのヘプタン中で1時間超音波処理し、次に清浄なヘプタンですすいだ。試料を室温で25分間乾燥させた。管試料の各端部をキムワイプ(登録商標)で吸水し、試料を、室内の湿度以下の70℃のオーブン中に15分間置いた。
【0048】
管試料をオーブンから取り出し、60mLのヘプタン中に5.5重量%のエチルトリクロロシラン(ETC)を含有する溶液中に10分間浸した。管試料をETC溶液から取り出し、湿度70%のチャンバ内に1分間置いた。その後、試料を、加湿されていないオーブン中にて110℃で1時間硬化させた。図6Aおよび6Bは、試料のうちの1つの外側表面および内部管腔を示すSEM写真である。図6Aおよび6Bに示されるように、完全で概ね均一なコーティングが管試料の外側表面に形成されたが、図6Bの白い斑点状のアーティファクトで証明されるように内部管腔上では不均一なコーティングが形成された。
【0049】
(実施例3)
管試料をETC溶液の代わりにETA溶液でコーティングする以外はほぼ同じプロトコールを使用して、実施例2で述べた実験を再度実施した。図7は、試料のうちの1つの内部管腔のSEM像であり、このSEM像は内部管腔上に不均一なコーティングが形成されたことを示している。
【0050】
(実施例4)
多湿チャンバ内に置く前に試料の内部管腔に水蒸気を30秒〜1分間注入する以外はほぼ同じプロトコールを使用して、実施例2で述べた実験を再度実施した。図8Aおよび8Bは、試料のうちの1つの外側表面および内部管腔のSEM像である。これらの図面は、試料の外側表面および内部管腔の両方に、完全でほぼ均一なコーティングが形成されたことを示している。
【0051】
(実施例5)
シリコーン管材料の試料を500mLのヘプタン中で1時間超音波処理し、次に清浄なヘプタンですすいだ。試料を室温で5分間乾燥させた。管試料の各端部についてキムワイプ(登録商標)で吸水し、試料を室内の湿度以下の70℃のオーブン中に20分間置いた。次いで試料をさらに5分間空気乾燥させた。
【0052】
その後、管試料を、60mLのヘプタン中に5.5重量%のエチルトリアセトキシシラン(ETA)を含有する溶液中に10分間浸した。管試料をETA溶液から取り出し、湿度75%のチャンバ内に1分間置き、該試料の内部管腔の中に水蒸気を30秒〜1分間注入した。その後、試料を、加湿されていないオーブン中にて110℃で1時間硬化させた。図9A〜9Cは、1つの試料の外側表面および内部管腔を示している。これらの図面は、外側表面および内部管腔の両方のほぼ完全なコーティングを示している。さらに、両方の表面上のコーティングの少なくとも一部は半球状の形態を有していた。
【0053】
議論された典型的な実施形態に対し、本発明の範囲から逸脱することなく様々な改変および追加を加えることができる。例えば、上述の実施形態は特定の特徴を表しているが、本発明の範囲には、様々な組み合わせの特徴を有する実施形態および記載された特徴を必ずしも全て含んでいない実施形態も含まれる。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲の範囲内に入るそのような全ての代替形態、改変形態および変更形態を、それらの等価物全てとともに包含するように意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側表面と、内側表面を有する少なくとも1つの管腔とを備えるリード線本体に潤滑性のコーティングを形成する方法であって、
a)リード線本体の内側表面および外側表面を、溶媒と下式
【化1】
(式中、Rは、約15個以下の炭素を有する、非置換およびハロゲンで置換された脂肪族基、脂環式基、芳香族基ならびに直鎖および分岐鎖のアルキル置換芳香族基からなる群から選択されるか、またはRはモノマー単位の数が1〜15個の短鎖ポリマーからなる群から選択され、かつ、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素、水酸基、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アシル基、アセトキシ基、アルコキシ基およびアシルオキシ基、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される)
のシラン系表面改質剤とを含むコーティング組成物に接触させる工程と、
b)接触させた表面を多湿環境に曝露する工程と、
c)曝露の後、リード線本体の外側表面および内側表面のうち少なくとも一方の上のコーティング組成物を硬化させてシロキサンコーティングを形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
コーティング組成物を硬化させる工程は、該医療用品を温度が約65℃〜約155℃の環境に曝露する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リード線本体の接触させた表面を多湿環境に曝露するステップは、内部管腔を水蒸気に接触させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
リード線本体の接触させた表面を多湿環境に曝露する工程は、内部管腔を約5秒〜約300秒の範囲の時間にわたって水蒸気に接触させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
リード線本体の接触させた表面を多湿環境に曝露する工程は、リード線本体を約35%〜約95%の範囲の相対湿度を有する多湿環境に曝露する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該医療用品の内側表面および外側表面をコーティング組成物と接触させる工程は、該医療用品をコーティング組成物中に少なくとも2分間浸漬する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
シラン系表面改質剤はエチルトリクロロシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
シラン系表面改質剤はエチルトリアセトキシシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
シラン系表面改質剤はトリフルオロエチルトリクロロシランである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
シラン系表面改質剤は、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、1,1,1‐トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルトリクロロシラン(CF3CH2Si(Cl)3)、またはトリフルオロエチルトリフルオロシランのうちのいずれか1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
Rは、約15個以下の炭素を有する、非置換およびハロゲンで置換された脂肪族基、脂環式基、芳香族基ならびに直鎖および分岐鎖のアルキル置換芳香族基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
Rはポリエチレングリコールまたはポリビニルピロリドンである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
RはC1〜C8アルキル基のうちのいずれか1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
Rはフルオロ置換アルキル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
内側表面を有する少なくとも1つの管腔を備えるリード線本体に潤滑性のコーティングを形成する方法であって、
a)リード線本体の内側表面を、溶媒と下記一般式
【化2】
(式中、Rは、約15個以下の炭素を有する、非置換およびハロゲンで置換された脂肪族基、脂環式基、芳香族基ならびに直鎖および分岐鎖のアルキル置換芳香族基からなる群から選択されるか、またはRはモノマー単位の数が1〜15個の短鎖ポリマーからなる群から選択され、かつ、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素、水酸基、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アシル基、アセトキシ基、アルコキシ基およびアシルオキシ基、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される)
のシラン系表面改質剤とを含むコーティング組成物に接触させる工程と、
b)内側表面を水蒸気に接触させる工程と、
c)接触させる工程の後、内側表面上のコーティング組成物を硬化させてシロキサンコーティングを形成する工程と
を含む方法。
【請求項16】
リード線本体は外側表面を備えるとともに、硬化させる工程の前に外側表面を多湿環境に曝露する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記曝露する工程および水蒸気と接触させる工程が同時に行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該医療用品の内側表面および外側表面をコーティング組成物に接触させる工程は、該医療用品を該コーティング組成物中に少なくとも2分間浸漬する工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの管腔の内側表面上のコーティング組成物を硬化させる工程は、該医療用品を温度が約65℃〜約155℃の環境に曝露する工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
シラン系表面改質剤は、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、1,1,1‐トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルトリクロロシラン、またはトリフルオロエチルトリフルオロシランのうちのいずれか1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項1】
外側表面と、内側表面を有する少なくとも1つの管腔とを備えるリード線本体に潤滑性のコーティングを形成する方法であって、
a)リード線本体の内側表面および外側表面を、溶媒と下式
【化1】
(式中、Rは、約15個以下の炭素を有する、非置換およびハロゲンで置換された脂肪族基、脂環式基、芳香族基ならびに直鎖および分岐鎖のアルキル置換芳香族基からなる群から選択されるか、またはRはモノマー単位の数が1〜15個の短鎖ポリマーからなる群から選択され、かつ、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素、水酸基、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アシル基、アセトキシ基、アルコキシ基およびアシルオキシ基、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される)
のシラン系表面改質剤とを含むコーティング組成物に接触させる工程と、
b)接触させた表面を多湿環境に曝露する工程と、
c)曝露の後、リード線本体の外側表面および内側表面のうち少なくとも一方の上のコーティング組成物を硬化させてシロキサンコーティングを形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
コーティング組成物を硬化させる工程は、該医療用品を温度が約65℃〜約155℃の環境に曝露する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リード線本体の接触させた表面を多湿環境に曝露するステップは、内部管腔を水蒸気に接触させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
リード線本体の接触させた表面を多湿環境に曝露する工程は、内部管腔を約5秒〜約300秒の範囲の時間にわたって水蒸気に接触させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
リード線本体の接触させた表面を多湿環境に曝露する工程は、リード線本体を約35%〜約95%の範囲の相対湿度を有する多湿環境に曝露する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該医療用品の内側表面および外側表面をコーティング組成物と接触させる工程は、該医療用品をコーティング組成物中に少なくとも2分間浸漬する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
シラン系表面改質剤はエチルトリクロロシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
シラン系表面改質剤はエチルトリアセトキシシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
シラン系表面改質剤はトリフルオロエチルトリクロロシランである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
シラン系表面改質剤は、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、1,1,1‐トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルトリクロロシラン(CF3CH2Si(Cl)3)、またはトリフルオロエチルトリフルオロシランのうちのいずれか1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
Rは、約15個以下の炭素を有する、非置換およびハロゲンで置換された脂肪族基、脂環式基、芳香族基ならびに直鎖および分岐鎖のアルキル置換芳香族基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
Rはポリエチレングリコールまたはポリビニルピロリドンである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
RはC1〜C8アルキル基のうちのいずれか1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
Rはフルオロ置換アルキル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
内側表面を有する少なくとも1つの管腔を備えるリード線本体に潤滑性のコーティングを形成する方法であって、
a)リード線本体の内側表面を、溶媒と下記一般式
【化2】
(式中、Rは、約15個以下の炭素を有する、非置換およびハロゲンで置換された脂肪族基、脂環式基、芳香族基ならびに直鎖および分岐鎖のアルキル置換芳香族基からなる群から選択されるか、またはRはモノマー単位の数が1〜15個の短鎖ポリマーからなる群から選択され、かつ、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素、水酸基、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アシル基、アセトキシ基、アルコキシ基およびアシルオキシ基、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される)
のシラン系表面改質剤とを含むコーティング組成物に接触させる工程と、
b)内側表面を水蒸気に接触させる工程と、
c)接触させる工程の後、内側表面上のコーティング組成物を硬化させてシロキサンコーティングを形成する工程と
を含む方法。
【請求項16】
リード線本体は外側表面を備えるとともに、硬化させる工程の前に外側表面を多湿環境に曝露する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記曝露する工程および水蒸気と接触させる工程が同時に行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該医療用品の内側表面および外側表面をコーティング組成物に接触させる工程は、該医療用品を該コーティング組成物中に少なくとも2分間浸漬する工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの管腔の内側表面上のコーティング組成物を硬化させる工程は、該医療用品を温度が約65℃〜約155℃の環境に曝露する工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
シラン系表面改質剤は、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、1,1,1‐トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルトリクロロシラン、またはトリフルオロエチルトリフルオロシランのうちのいずれか1つである、請求項15に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【公表番号】特表2012−501375(P2012−501375A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525166(P2011−525166)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/055022
【国際公開番号】WO2010/033359
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/055022
【国際公開番号】WO2010/033359
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
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