説明

リール

【課題】被巻き取り物を巻き取る際や、巻き出して使用する際などの作業の安定性などを向上させることができるリールの提供を目的とする。
【解決手段】リール1は、テープ10が巻き付けられる巻き取り部2と、軸芯方向と直交するように、巻き取り部2に設けられた第一側板3と、巻き取られたテープ10を挟むように第一側板3と対向して、軸芯方向に移動可能に設けられた第二側板4とを備えた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤層や粘着剤層などの形成されたフィルム材、又は、接着剤層や粘着剤層などの形成されていないフィルム材などを、細幅のテープ状に切断したテープ、フィルム又はシートなど(適宜、被巻き取り物と呼称する。)を巻き取り、かつ、巻き出すためのリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細幅のテープ状に切断した被巻き取り物を巻き取り、かつ、巻き出すリールは、様々な分野で使用されてきた。
たとえば、電子部品を収納するポケットの形成されたキャリアテープや、電子部品の収納されたキャリアテープをパッキングするためのシールテープなどを巻き取り、かつ、巻き出すリールがある。
【0003】
上記のシールテープを巻き取り、かつ、巻き出すリールは、電子部品のテーピング装置(たとえば、特許文献1参照)などに用いられる。
この電子部品のテーピング装置は、キャリアテープを搬送する搬送機構と、搬送機構によって搬送されるキャリアテープに対して、電子部品を載置する載置機構と、駆動源の作動により、シールテープを送り出すシールテープ送出機構と、シールテープ送出機構から送出されるシールテープの張力を制御するシールテープ張力制御機構と、電子部品が載置されたキャリアテープに対して、シールテープを圧着する圧着機構とを備えている。
この技術は、細幅のフィルム状のテープをリールから巻き出し、テープの張力を一定に制御することにより、テープに起因するトラブルを低減することを目的としている。
【0004】
また、被巻き取り物を巻き取り、かつ、巻き出すリールについても、様々な技術が開発されている。
たとえば、特許文献2には、一対のリールフランジと、これらのリールフランジを結合しキャリアテープを巻取る巻芯と、巻芯の内部に収容され、各リールフランジを互に内側へ付勢するばねとを有し、一対のリールフランジの間隔をキャリアテープの巻き取り可能の範囲で、かつ、キャリアテープの幅よりも狭くなるように設定し、キャリアテープを巻き取ったときには、一対のリールフランジがキャリアテープの側面を押圧することを特徴とするキャリアテープリールの技術が開示されている。
この技術によれば、各リールフランジがキャリアテープの側面を押圧した状態で、キャリアテープを巻き取ることができるので、キャリアテープの巻きずれや巻崩れを防止することができるとされている。
【0005】
また、特許文献3、及び、特許文献4には、テープを巻装するための軸部と、金属補強材やリール側板矯正具を有する一対の側板とを備えたリールの技術が開示されている。この技術によれば、巻きずれや巻崩れを防止することができるとされている。
さらに、特許文献5には、磁気テープ用オープンリールのフランジと、オープンリールに巻取られた磁気テープの側端部との間へ挿入され、空気の注入と排気とにより厚さの制御が可能な薄膜状で気密性を有するクッション部材からなるオープンリール用スペーサーの技術が開示されている。この技術によれば、輸送中等にオープンリールに巻付けられたテープの側端部(エッジ)に巻きずれが生じないようにして、テープ側端部の損傷を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−69946号公報
【特許文献2】特開平10−329992号公報
【特許文献3】特開2005−41668号公報
【特許文献4】特開2006−165111号公報
【特許文献5】特開平8−153380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、特許文献1に開示された技術では、細幅(たとえば、0.数mm〜数mm)のテープをリールから巻き出すにあたり、上述した張力制御のみでは、安定して巻き出すことにおいて、未だ改善すべき課題が残されているという知見を得るに至った。すなわち、張力をいかに精度よく一定に制御しても、テープ幅が狭くなるにつれて、巻き出されるテープの巻き出し位置がリールの軸芯方向にぶれやすくなってしまい、テープの巻き出し位置を一定に保つのが困難となることが分かった。
【0008】
また、特許文献2に開示された技術では、各リールフランジがキャリアテープの側面を押圧した状態でキャリアテープを巻き取るものであるため、巻き取り時にテープ側面に負荷がかかることが避けられず、テープ側面にダメージを与えやすいという問題があった。特に、接着剤層や粘着剤層などの形成されたテープにあっては、接着剤層や粘着材層がリールフランジに付着してしまうことが危惧される。
【0009】
また、リールが上記のシールテープを巻き取り、かつ、巻き出すリールである場合、リールは、電子部品の様々な形状や大きさなどに応じて、様々なテープ幅やテーピング装置に対応可能である必要があった。すなわち、使い勝手等に優れていることや、リールの各部品の共用化が可能であることなどが要望されている。
なお、特許文献3〜5の技術は、本発明に関連する技術ではあるもの、上記の課題を解決することはできず、また、上記の要望に応えることはできない。
【0010】
本発明は、上記のような本発明者の検討にもとづいてなされたものであって、被巻き取り物を巻き取る際、及び、被巻き取り物を巻き出して使用する際などの作業の安定性などを向上させることができるリールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のリールは、被巻き取り物が巻き付けられる巻き取り部と、巻き取り部の軸芯方向と直交するように、巻き取り部に設けられた第一側板と、巻き取られた被巻き取り物を挟むように第一側板と対向して、巻き取り部に軸芯方向に移動可能に設けられた第二側板とを備えた構成としてある。
【0012】
このような構成とすることで、被巻き取り物を巻き取るときには、被巻き取り物の側面と第二側板との間に所定の隙間をあけて、被巻き取り物へのダメージや巻きずれを効果的に抑制することができる。
また、巻き取りを終えた後には、第二側板で被巻き取り物の側面を押圧するように第二側板を移動させることで、被巻き取り物の巻きづれを修正したり、巻き崩れを抑制したりすることができる。さらに、巻き出して使用する際に、その状態で巻き出される被巻き取り物は、第一側板と第二側板とによって挟み付けられた状態で送り出されるので、送り出される被巻き取り物の巻き出し位置がリールの軸芯方向にぶれないようにすることができる。
したがって、フィルム材を細幅に切断しながらリールに巻き取るテープの製造や、リールに巻き取ったテープを供給する際に本発明のリールを用いれば、被巻き取り物としてのテープを巻き取る際や、巻き出して使用する際などに、その作業の安定性などを向上させることができる。
【0013】
また、本発明のリールは、被巻き取り物を巻き取るときに、被巻き取り物の側面と第二側板との間に所定の隙間をあけ、かつ、巻き取りを終えた後に、第二側板で被巻き取り物の側面を押圧するために、被巻き取り物が巻き付けられる際、被巻き取り物に対して所定の隙間を空けるように、第二側板を係止する係止手段と、第二側板を付勢し、被巻き取り物が巻き取られた後、係止手段による係止が解除されると、巻き取られた被巻き取り物を押圧する付勢手段とを備えた構成とすることができる。
【0014】
また、本発明のリールは、付勢手段が、第二側板と係止板との間に設けられた構成とすることができる。
このような構成とすることで、第二側板に対して付勢手段からの付勢力を効率よく作用させることができる。
【0015】

また、本発明のリールは、付勢された第二側板が押圧方向へ移動し過ぎることを防止するためのストッパ手段を備えた構成とすることができる。 このような構成とすることで、被巻き取り物が巻き出され、被巻き取り物の残量が少なくなった場合であっても、残った被巻き取り物を押圧し過ぎることはなく、被巻き取り物にダメージを与えるといった不具合を回避することができる。
【0016】
また、本発明のリールは、巻き取り部が、所定の形状を有する軸孔の形成された専用コアと、専用コアの外周面側に着脱自在に取り付けられる共用コアとを有し、第一側板、第二側板及び係止板が、共用コアに着脱自在に取り付けられた構成とすることができる。
このような構成とすることで、種々の軸孔形状に対応しなければならない場合であっても、部品の共用化を図ることができる。
【0017】

また、本発明のリールにおいて、被巻き取り物を巻き取るときのダメージや巻きずれを効果的に抑制するために、被巻き取り物の側面と第二側板の間にあける所定の隙間は、0.1mm〜2.0mmとするのが好ましく、その範囲内でも、被巻き取り物の幅寸法に対して、10〜40%とすることが好ましい。
さらに、本発明のリールに用いる付勢手段としては、弾性体又は気泡緩衝材を用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のリールによれば、被巻き取り物を巻き取る際、及び、被巻き取り物を巻き出して使用する際などの作業の安定性などを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態にかかるリールの概略図であり、(a)は側面図を示しており、(b)は平面図を示している。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態にかかるリールの、巻き出し状態を説明するための概略図であり、(a)は側面図を示しており、(b)は平面図を示している。
【図3】図3は、本発明の第二実施形態にかかるリールの概略図であり、(a)は側面図を示しており、(b)は平面図を示している。
【図4】図4は、図3(a)のA部を含む概略拡大図を示している。
【図5】図5は、本発明の第二実施形態にかかるリールの、巻き出し状態を説明するための要部の概略拡大図を示している。
【図6】図6は、本発明の第三実施形態にかかるリールの概略図であり、(a)は側面図を示しており、(b)は平面図を示している。
【図7】図7は、図6(b)のB−B断面図を示している。
【図8】図8は、本発明の第三実施形態にかかるリールの、巻き出し状態を説明するための要部の概略拡大図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態にかかるリールの概略図であり、(a)は側面図を示しており、(b)は平面図を示している。
図1において、本実施形態のリール1は、巻き取り部2、第一側板3、第二側板4、係止板5、及び、ばね6などを備えた構成としてある。このリール1は、被巻き取り物としてのテープ10を巻き取るとともに、巻き出すことができる。
なお、テープ10は、特に限定されるものではなく、たとえば、細幅のテープ状に切断したテープ、フィルム又はシートなどであってもよい。また、接着剤層や粘着剤層などを有していてもよく、あるいは、有していなくてもよい。
【0021】
(巻き取り部)
巻き取り部2は、巻き取り軸(図示せず)などが貫通する軸用孔の形成されたほぼ円筒状としてあり、外周面にテープ10が巻き付けられる。この巻き取り部2は、通常、樹脂製であるが、アルミニウムなどの金属製、あるいは、樹脂と金属からなる複合材料であってもよい。また、巻き取り部2は、キー溝を有する軸用孔が形成されているが、軸用孔の形状は、これに限定されるものではなく、様々な形状とすることができる。
【0022】
(第一側板)
第一側板3は、ほぼ円環板状としてあり、巻き取り部2の軸芯方向と直交するように、巻き取り部2の一方の端部に設けられている。この第一側板3は、通常、樹脂製であり、本実施形態では、巻き取り部2と一体的に成形されている。なお、第一側板3は、この構成に限定されるものではなく、たとえば、アルミニウムなどの金属製であってもよく、また、接着、溶着、螺着などによって、巻き取り部2に固定されてもよい。
【0023】
(第二側板)
第二側板4は、ほぼ円環板状としてあり、巻き取り部2の軸芯方向と直交するように、巻き取り部2の他方の端部側に、巻き取り部2の軸芯方向に移動可能に設けられている。すなわち、第二側板4は、巻き取られたテープ10を挟むように、第一側板3と対向して設けられている。この第二側板4は、通常、樹脂製であるが、アルミニウムなどの金属製であってもよい。また、第二側板4は、後述する係止部41などが一体的に形成されている。
【0024】
(係止手段)
本実施形態の係止手段は、第二側板4の外側面(テープ10と反対側の面)から突出した係止部41と、巻き取り部2に設けられ、係止部41と対応する位置に係止孔51の形成された係止板5とを有する構成としてある。
係止部41は、ほぼ矩形板状としてあり、先端側にガイド面(斜面)及び係止面を有している。また、係止部41は、第二側板4の周方向の四箇所にほぼ等間隔で配設されている。
【0025】
また、係止板5は、ほぼ円環板状としてあり、巻き取り部2の軸芯方向と直交するように、巻き取り部2の他方の端部に設けられている。この係止板5は、上述したように、係止部41と対応する位置にほぼ矩形状の係止孔51が形成されており、接着、溶着、螺着などによって、巻き取り部2に固定されている。なお、係止板5は、通常、樹脂製であるが、アルミニウムなどの金属製であってもよい。
【0026】
上記の係止手段は、テープ10が巻き取り部2に巻き付けられる際、係止部41が係止孔51に挿入され、係止部41の係止面が係止板5の外側面に係止される。これにより、本実施形態の係止手段は、テープ10に対して所定の隙間Δを空ける位置に、第二側板4を係止する。
なお、リール1が備える係止手段は、係止板5のような他の部材と係わりあって第二側板4を所定の位置に止める(係止する)ことができれば、その具体的な態様は、上記した例には限定されない。
【0027】
ここで、好ましくは、上記の所定の隙間Δを、0.1mm〜2.0mmとするとよい。この理由は、所定の隙間Δが0.1mmに満たないと、テープ10の両側が第一側板3及び第二側板4と当接することがあり、テープ10の両側端部へのダメージが発生する場合があるからである。また、所定の隙間Δが2.0mmを超えると、巻きずれを抑制する効果を十分に発揮することができない場合があるからである。
【0028】
さらに好ましくは、上記の所定の隙間Δは、作業性と巻きずれ抑制の観点から、上記0.1mm〜2.0mmの範囲内で、被巻き取り物であるテープ10の幅寸法(すなわち、被巻き取り物としてのテープ10の軸芯方向に沿った長さ)に対して10%〜40%とすることが好ましく、10%〜30%とすることがより好ましく、10%〜20%とすることがさらに好ましく、10〜15%とすることが特に好ましい。たとえば、テープ10の幅寸法が2mmの場合、上記所定の隙間Δは、0.2mm〜0.8mmとすることが好ましく、0.2mm〜0.6mmとすることがより好ましく、0.2mm〜0.4mmとすることがさらに好ましく、0.2mm〜0.3mmとすることが特に好ましい。また、テープ10の幅寸法が、0.9mmの場合、上記所定の隙間Δは、0.1mm〜0.36mmとすることが好ましく、0.1mm〜0.27mmとすることがより好ましく、0.1mm〜0.18mmとすることがさらに好ましく、0.1mm〜0.14mmとすることが特に好ましい。この理由は、テープ10の幅寸法の40%以内の巻きずれが発生しても、後述するように、第二側板4がテープ10を押圧することにより、容易に巻きずれを修正することができるからである。
このように、所定の隙間Δを、0.1mm〜2.0mm、さらに好ましくは、被巻き取り物であるテープ10の幅寸法に対して、10%〜40%とすることにより、テープ10へのダメージや巻きずれを効果的に抑制することができ、作業性も向上する。
【0029】
(付勢手段)
本実施形態の付勢手段は、ばね6としてあり、ばね6は、第二側板4と係止板5との間に設けられている。これらばね6は、第二側板4を第一側板3の方向に付勢し、テープ10が巻き取られた後、上記の係止手段による係止が解除されると、付勢された第二側板4は、巻き取られたテープ10を押圧する。これにより、容易に巻きずれを修正することができ、また、巻き崩れの発生を防止することができる。さらに、テープ10を巻き出す際、送り出されるテープ10の巻き出し位置がリール1の軸芯方向にぶれないようにすることができ、安定した巻き出しが可能になる。
【0030】
ここで、好ましくは、少なくとも三つ以上のばね6を、第二側板4の半径方向のほぼ中央部に、周方向に等間隔で配設するとよい。すなわち、本実施形態では、8つのばね6を、第二側板4の半径方向のほぼ中央部(≒(第二側板4の外径+内径)/4の半径位置)に、周方向に等間隔で配設してある。このようにすると、ほぼ均等な圧力で、第二側板4が巻き取られたテープ10を押圧することができ、テープ10を局所的に押し過ぎて、テープ10へダメージを与えるといった不具合を回避することができる。
なお、ばね6のばね定数や自由長さなどは、テープ10の機械的強度などに応じて、適宜設定される。また、リール1が備える付勢手段は、第二側板4を所定の方向に押しつけるようにして(付勢して)、巻き取られた被巻き取り物としてのテープ10が第二側板4によって押圧されるようにすることができれば、ばね6以外の他の代替手段を用いてもよい。たとえば、ゴム、軟質ウレタンフォーム、発泡スチロール(発泡ポリスチレン)、発泡ポリエチレンシート、スポンジ等のばね以外の弾性体や、気泡シート(たとえば、川上産業(株)製商品名「プチプチ」)、気泡ボード(たとえば、川上産業(株)製商品名「プラパール」)等の気泡緩衝材(エアーパック)などを用いてもよい。
【0031】
次に、上記構成のリール1の動作などについて、図面を参照して説明する。
図1は、リール1が、テープ10を巻き取る状態を示している。
図1に示すように、まず、リール1は、第二側板4が第一側板3と反対の方向へ移動され、係止部41が係止孔51に係入され、第二側板4は、係止板5に係止される。
次に、リール1は、巻き取り装置の巻き取り軸(図示せず)に取り付けられ、テープ10の先端が、接着剤などによって巻き取り部2に貼り付けられる。この際、テープ10は、片側の端部が第一側板3とほぼ当接する状態で、貼り付けられる。
【0032】
続いて、巻き取り軸が巻き取り方向に回転し、テープ10が巻き取り部2に巻き付けられる。
ここで、テープ10は、通常、片側の端部が第一側板3とほぼ当接する状態で、巻き付けられる。また、リール1は、上述した係止手段によって、第二側板4が、テープ10に対して所定の隙間Δを空ける位置に、係止されている。これにより、上述したように、テープ10へのダメージや巻きずれを効果的に抑制することができる。
【0033】
次に、所定の長さのテープ10がリール1に巻き取られると、上記の巻き取り装置の巻き取り軸が回転を停止する。続いて、オペレータが、テープ10をカットし、カットされたテープ10の端を接着剤付き紙テープなどで留め、さらに、係止部41の係止を解除する。これにより、リール1は、ばね6によって、第二側板4が巻き取られたテープ10を第一側板3の方向に押圧する。この押圧により、リール1は、テープ10の巻きずれを修正するとともに、巻き崩れを抑制することができる。
次に、オペレータは、巻き取り作業の完了したリール1を巻き取り軸から取り外し、次の工程(たとえば、検査工程や出荷工程)へ搬送する。
【0034】
図2は、本発明の第一実施形態にかかるリールの、巻き出し状態を説明するための概略図であり、(a)は側面図を示しており、(b)は平面図を示している。
図2において、出荷されたリール1は、たとえば、上述した電子部品のテーピング装置の巻き出し軸(図示せず)に取り付けられ、テープ10が、巻き出される。
ここで、リール1から巻き出されるテープ10は、第一側板3と第二側板4とによって挟み付けられた状態で送り出される。すなわち、送り出されるテープ10の巻き出し位置がリール1の軸芯方向にぶれないようにすることができ、安定した巻き出しが可能になる。
【0035】
また、テープ10が送り出され、テープ10の残量が少なくなってきても、上述した位置に配設された複数のばね6によって、ほぼ均等な圧力で、第二側板4が残っているテープ10を押圧することができる。これにより、テープ10の残量が少なくなってきても、テープ10を局所的に押し過ぎて、テープ10へダメージを与えるといった不具合を回避することができる。
次に、テープ10の巻き出しが終了すると、オペレータは、リール1を巻き出し軸から取り外し、リール1の巻き出し作業が完了する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のリール1によれば、フィルム材を細幅に切断しながらリール1に巻き取るテープ10の製造や、リール1に巻き取ったテープ10の供給において、テープ10を巻き取る際、巻きずれやテープ10へのダメージなどを抑制でき、また、テープ10を巻き出して使用する際、テープ10の巻き出し位置がリール1の軸芯方向にぶれないようにすることができ、安定した巻き出しが可能になる。したがって、テープ10を巻き取る際、及び、テープ10を巻き出して使用する際などの作業の安定性などを向上させることができる。
【0037】
[第二実施形態]
図3は、本発明の第二実施形態にかかるリールの概略図であり、(a)は側面図を示しており、(b)は平面図を示している。
また、図4は、図3(a)のA部を含む概略拡大図を示している。
図3、及び図4において、本実施形態のリール1aは、上述した第一実施形態のリール1と比べると、巻き取り部2aが、所定の形状を有する軸孔の形成された専用コア21と、専用コア21の外周面に着脱自在に取り付けられる共用コア22とを有し、第一側板3a、第二側板4、及び、係止板5aが、共用コア22に着脱自在に取り付けられた点、及び、共用コア22に段付き部223が形成されている点が相違する。 なお、本実施形態の他の構成は、第一実施形態のリール1とほぼ同様としてある。したがって、図3、及び図4において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0038】
本実施形態の巻き取り部2aは、専用コア21と共用コア22とを有している。
専用コア21は、巻き取り軸(図示せず)などが貫通する軸用孔の形成されたほぼ円筒状としてある。また、専用コア21は、両端部の外周面側の複数箇所(本実施形態では、周方向に等間隔で位置する4箇所)に、係止爪211が突設されている(図4参照)。これら係止爪211によって、共用コア22は、専用コア21の外周面に着脱自在に取り付けられる。このようにすることによって、顧客が指定する様々な軸用孔に対応した専用コア21を容易に取り付けることができ、顧客の要求に応えてサービスを向上させることができる。さらに、専用コア21は、外周面の軸芯方向にキー形状の凸部212が形成されている。この凸部212は、共用コア22の凹部221と嵌合し、トルクを伝達する(図3(b)参照)。
【0039】
共用コア22は、専用コア21の外周面に嵌合されるほぼ円筒状としてあり、両端面の複数箇所(本実施形態では、周方向に等間隔で位置する4箇所)に、第一側板3aのボス31、及び、係止板5aのボス52が装入されるボス用穴222が形成されている(図4参照)。また、共用コア22は、内周面の軸芯方向に、上記の凸部212と嵌合する凹部221が形成されている。この共用コア22には、外周面(後述する段付き部223の外周面)にテープ10が巻き付けられ、また、第二側板4が、段付き部223を除く範囲で軸芯方向に移動可能に取り付けられる。
【0040】
また、共用コア22には、外周面の第一側板3a側に、ほぼ円筒状の段付き部223が突設されている。この段付き部223は、軸芯方向の長さがW−Δ1である。ここで、Wはテープ10の幅寸法であり、Δ1はばね6(付勢手段)によってテープ10が軸芯方向に押圧される幅寸法であって、0〜0.数mm(たとえば、0.1〜0.2mm)に設定される。この段付き部223は、テープ10の無い状態で第二側板4の係止が解除されると、側面(段付き面)が、移動してきた第二側板4と当接する。すなわち、段付き部223は、付勢された(かつ、係止の解除された)第二側板4が押圧方向(第一側板3aに向かう方向)へ移動し過ぎることを防止するためのストッパ手段として機能する。
【0041】
たとえば、テープ10の幅寸法Wが0.8mm、Δ1が0.2mmであるとき、段付き部223の軸芯方向の長さW−Δ1は0.6mmである。ここで、テープ10の巻き付けられる段付き部223の長さW−Δ1は、テープ10の幅寸法Wより短いが、短い部分が微小なため、テープ10は、図4に示すように、支障なく巻き取られる。
この状態から、係止手段による係止が解除されると、第二側板4は、テープ10に向かって移動し、テープ10と当接する。
また、図5に示すように、テープ10がさらに巻き出され、テープ10の残量が少なくなると(たとえば、テープ10の巻き取り厚さがたとえば数mm〜0.数mmになると)、第二側板4は、さらに距離Δ1(たとえば、0.2mm)だけ第一側板3aに向かう押圧方向に移動し、段付き部223と当接して停止する。したがって、第一側板3aと第二側板4との距離は、W−Δ1となる。
【0042】
このようにすると、テープ10が巻き出され、テープ10の残量が少なくなった場合であっても、残ったテープ10を押圧し過ぎることはなく、テープ10にダメージを与えるといった不具合を回避することができる。また、同様にテープ10の残量が少なくなった場合であっても、第二側板4の外径側の端部が第一側板3aに接近し過ぎるといった不具合を抑制することができ、テープ10を正常に(たとえば、テープ10にダメージを与えるほど湾曲させた状態や折り曲げた状態とすることなく)送り出すことができる。
さらに、ばね6のばね定数や自由長さなどを設定する際の自由度を高めることができ、より適した押圧力を設定することができる。
【0043】
第一側板3aは、ほぼ円環板状としてあり、軸芯方向と直交するように、共用コア22の一方の端面に着脱自在に取り付けられる。すなわち、上述したように、第一側板3aは、内径側縁部の内側面(テープ10側の面)の複数箇所(本実施形態では、周方向に等間隔で位置する4箇所)に、ボス31が突設されている。これらボス31が共用コア22のボス用穴222に装入されることにより、第一側板3aは、共用コア22の一方の端面に着脱自在に取り付けられる。
【0044】
係止板5aは、ほぼ円環板状としてあり、軸芯方向と直交するように、共用コア22の他方の端面に着脱自在に取り付けられる。すなわち、上述したように、係止板5aは、内径側縁部の内側面(テープ10側の面)の複数箇所(本実施形態では、周方向に等間隔で位置する4箇所)に、ボス52が突設されている。これらボス52が共用コア22のボス用穴222に装入されることにより、係止板5aは、共用コア22の一方の端面に着脱自在に取り付けられる。
【0045】
第二側板4は、第一実施形態とほぼ同様な構成としてあり、ほぼ円環板状としてある。この第二側板4は、軸芯方向と直交するように、共用コア22の他方の端部側に、段付き部223を除く範囲で共用コア22の軸芯方向に移動可能に設けられている。
なお、その他の構成や動作は、第一実施形態のリール1とほぼ同様としてある。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のリール1aによれば、第一実施形態のリール1とほぼ同様の効果を奏するとともに、顧客が指定する様々な軸用孔に容易に対応でき、使い勝手や付加価値などを向上させることができる。また、第一側板3a、第二側板4及び係止板5aなどを共用化することができるので、製造原価のコストダウンを図ることができる。さらに、テープ10が巻き出され、テープ10の残量が少なくなった場合であっても、残ったテープ10を押圧し過ぎることはなく、テープ10にダメージを与えるといった不具合を回避することができる。
【0047】
[第三実施形態]
図6は、本発明の第三実施形態にかかるリールの概略図であり、(a)は側面図を示しており、(b)は平面図を示している。
また、図7は、図6(b)のB−B断面図を示している。
図6、及び図7において、本実施形態のリール1bは、上述した第二実施形態のリール1aと比べると、段付き部223の代わりに、押圧方向ストッパ42、割りピン43及びシム44からなるストッパ手段を備える点が相違する。 なお、本実施形態の他の構成は、第二実施形態のリール1aとほぼ同様としてある。したがって、図6、及び図7において、図3、及び図4と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0048】
本実施形態の巻き取り部2bは、専用コア21と共用コア22bとを有している。なお、専用コア21は、第二実施形態とほぼ同様な構成としてある。
共用コア22bは、第二実施形態と比べると、段付き部223が形成されていない点(すなわち、外周面が段差のない円筒外周面である点)が相違する。その他の構成は、第二実施形態の共用コア22とほぼ同様としてある。
【0049】
係止板5bは、第二実施形態と比べると、後述する押圧方向ストッパ42が貫入される貫通孔53が形成されている点が相違する。これら貫通孔53は、係止板5bの周方向の四箇所にほぼ等間隔で配設されている。また、貫通孔53の縁部には、厚さtの円環状のシム44が貼り付けられている。その他の構成は、第二実施形態の係止板5aとほぼ同様としてある。
【0050】
第二側板4bは、第二実施形態と比べると、外側面(テープ10と反対側の面)に、ほぼ円柱状の押圧方向ストッパ42が突設されている点が相違する。これら押圧方向ストッパ42は、第二側板4bの周方向の四箇所にほぼ等間隔で配設され、さらに、押圧方向ストッパ42の先端部には、割りピン43が取り付けられている。その他の構成は、第二実施形態の第二側板4とほぼ同様としてある。
【0051】
ここで、上述した押圧方向ストッパ42、割りピン43及びシム44は、付勢された(かつ、係止の解除された)第二側板4が押圧方向(第一側板3aの方向)へ移動し過ぎることを防止するためのストッパ手段として機能する。すなわち、図7に示すように、第二側板4bが係止手段により係止されている状態において、テープ10の幅寸法はWであり、テープ10と第二側板4bの内側面との所定の隙間はΔであり、シム44の厚さはtであり、シム44と割りピン43との距離はΔ2(Δ2≧Δ)である。
【0052】
この状態から、係止手段による係止が解除されると、第二側板4bは、距離Δだけテープ10に向かって移動し、テープ10と当接する。
また、図8に示すように、テープ10がさらに巻き出され、テープ10の残量が少なくなると(たとえば、テープ10の巻き取り厚さがたとえば数mm〜0.数mmになると)、第二側板4bは、さらに距離(Δ2−Δ)だけ第一側板3aに向かう押圧方向に移動し、割りピン43がシム44に当接して停止する。通常、上記の距離(Δ2−Δ)は、0〜0.数mm(たとえば、0.1〜0.2mm)に設定される。したがって、第一側板3aと第二側板4bとの距離は、W−(Δ2−Δ)となる。
【0053】
このようにすると、テープ10が巻き出され、テープ10の残量が少なくなった場合であっても、残ったテープ10を押圧し過ぎることはなく、テープ10にダメージを与えるといった不具合を回避することができる。また、同様にテープ10の残量が少なくなった場合であっても、第二側板4bの外径側の端部が第一側板3aに接近し過ぎるといった不具合を抑制することができ、テープ10を正常に(たとえば、テープ10にダメージを与えるほぼ湾曲させた状態や折り曲げた状態とすることなく)送り出すことができる。
【0054】
また、テープ10の幅は様々であり、たとえば、0.8mm〜2.4mmまでは、0.2mmピッチごとに9種類の幅寸法があり、また、2.5mm〜5.5mmまでは、0.5mmピッチごとに7種類の幅寸法がある場合、各テープ幅に対応するには、16種類のリールが必要となる。これに対し、本実施形態のリール1bは、第二実施形態とほぼ同様に、着脱式の第一側板3a、第二側板4b及び係止板5bなどを共用化することができるので、製造原価のコストダウンを図ることができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、厚さtの異なるシム44を用いることにより、共用コア22bにおいても、共用化を図ることが可能となる。すなわち、第二側板4bが係止手段により係止されている状態において、第一側板3aと第二側板4bとの離間距離(リール内寸)が、たとえば2.5mmとなるようにリール1bを設計した場合、テープ10と第二側板4bの内側面との所定の隙間Δは、好ましくは0.1mm〜2.0mmの範囲で設定できるので、この場合には、0.5mm〜2.4mmの幅寸法を有するテープ10に対して、係止手段は、その機能を発揮することができる。そして、本実施形態のリール1bは、上記のストッパ手段を備えており、厚さtの異なるシム44を用いることにより、付勢手段としてのばね6は、上記の0.5mm〜2.4mmの幅寸法に対応することができ、テープ10を押圧し過ぎるといった不具合などを回避することができる。このように、共用コア22bにおいても、共用化を図ることが可能となるので、さらに製造原価のコストダウンを図ることができる。
なお、その他の構成や動作は、第二実施形態のリール1aとほぼ同様としてある。
【0056】
以上説明したように、本実施形態のリール1bによれば、第二実施形態のリール1aとほぼ同様の効果を奏するとともに、共用コア22bにおいても、共用化を図ることが可能となるので、さらに製造原価のコストダウンを図ることができる。また、リール1bは、シム44を交換することにより、異なる幅寸法(たとえば、0.5mm〜2.4mm)を有するテープ10に対して、適用することができるので、使い勝手や付加価値などを大幅に向上させることができる。
【0057】
以上、本発明のリールについて、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係るリールは、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0058】
例えば、図示してないが、ばね6は、第二側板4及び係止板5に突設されたほぼ円筒状の凸部に圧入される構成としてもよく、このようにすると、ばね6を容易に取り付けることができる。
【0059】
また、図示してないが、リール1aなどにおいては、専用コア21や共用コア22にリブを設け、機械的強度を維持しつつ軽量化を図る構造としてもよい。また、第一側板3aや第二側板4に複数の開口部を設け、軽量化を図る構造としてもよい。
【0060】
また、前述した各実施形態の構成を適宜組み合わせて本発明を実施することもできる。
【符号の説明】
【0061】
1、1a、1b リール
2、2a、2b 巻き取り部
3、3a 第一側板
4、4b 第二側板
5、5a、5b 係止板
6 ばね
10 テープ
21 専用コア
22、22b 共用コア
31 ボス
41 係止部
42 押圧方向ストッパ
43 割りピン
44 シム
51 係止孔
52 ボス
53 貫通孔
211 係止爪
212 凸部
221 凹部
222 ボス用穴
223 段付き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被巻き取り物が巻き付けられる巻き取り部と、
前記巻き取り部の軸芯方向と直交するように、前記巻き取り部に設けられた第一側板と、
巻き取られた前記被巻き取り物を挟むように前記第一側板と対向して、前記巻き取り部に前記軸芯方向に移動可能に設けられた第二側板と
を備えたことを特徴とするリール。
【請求項2】
前記被巻き取り物が巻き付けられる際、前記被巻き取り物に対して所定の隙間を空けるように、前記第二側板を係止する係止手段と、前記第二側板を付勢し、前記被巻き取り物が巻き取られた後、前記係止手段による係止が解除されると、巻き取られた前記被巻き取り物を押圧する付勢手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のリール。
【請求項3】
前記係止手段が、前記第二側板の外側面から突出した係止部と、前記巻き取り部に設けられ、前記係止部と対応する位置に係止孔の形成された係止板とを有することを特徴とする請求項2に記載のリール。
【請求項4】
前記付勢手段が、前記第二側板と前記係止板との間に設けられたことを特徴とする請求項3に記載のリール。
【請求項5】
付勢された前記第二側板が押圧方向へ移動し過ぎることを防止するためのストッパ手段を備えたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のリール。
【請求項6】
前記巻き取り部が、所定の形状を有する軸孔の形成された専用コアと、前記専用コアの外周面側に着脱自在に取り付けられる共用コアとを有し、前記第一側板、前記第二側板及び前記係止板が、前記共用コアに着脱自在に取り付けられたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のリール。
【請求項7】
前記所定の隙間を、0.1mm〜2.0mmとしたことを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載のリール。
【請求項8】
前記所定の隙間を、前記被巻き取り物の幅寸法に対して、10〜40%としたことを特徴とする請求項7に記載のリール。
【請求項9】
前記付勢手段を、弾性体又は気泡緩衝材としたことを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載のリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−26064(P2011−26064A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173083(P2009−173083)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】