ルテニウムを含有する生物活性コーティングおよびその装置
本発明は、例えば、水または水溶液の細菌除去、消毒、および浄化のための、新規の生物活性装置および金属コーティングの製造および利用に関する。これによって、公知の細菌を低減する銀の微量作用を、銀と、ルテニウムおよびビタミン若しくはその誘導体とを組み合わせることによって改善および強化する。この生物活性金属表面の新規の特性は、微生物を迅速且つ効率良く死滅させる。同時に、この新規の生物活性金属表面は、微生物の生息、および、DNA、RNA、またはタンパク質といった問題のある生体分子の固着または安定な形での堆積を妨げる。このようにして、水または水溶液と接触すると、極めて迅速且つ効率良く無菌状態になると共に、この状態を長期に亘って維持する自浄式表面を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に銀含有表面用のルテニウムを含有する生物活性コーティング、銀およびルテニウム含有表面を有する生物活性装置、並びに、上記生物活性コーティングおよび上記生物活性装置の製造および利用に関する。
【0002】
極少量の銀の抗菌作用については、既に1869年にRavelinが、1893年にはvon Na:geliが記載している。現在でも、銀の効果に対する関心は失われていない(Landau, U.(2006):衛生、医学、および水処理における銀の減菌作用:銀のオリゴダイナミー;Isensee−Verlag,Oldenburg,2006−10−03)。
【0003】
依然として、微生物汚染によって大きな問題が生じており、水質、水溶液、および衛生と関係があるあらゆる領域における商業的損失が発生している。この領域とは、例えば、病院、衛生機関、食品技術分野、生産分野、空調技術分野、および、家庭である。
【0004】
このため以前から、例えば、ホルムアルデヒド、アルコール、フェノール、アジ化ナトリウム、次亜塩素酸塩ナトリウムといった、微生物に対して有害な影響を与える化学物質を有する、または、例えば次亜塩素酸塩、漂白剤、若しくは鉱酸といった強酸化剤を有する抗菌性の様々な浄化溶液が存在している。
【0005】
これらの溶液および手法の欠点は、浄化および消毒に用いられるこの極めて強力な化学薬品および強酸化剤の腐食性および毒性が高い点である。このため、処理水および水溶液は、通常、飲料用には適しておらず、使用する機器または表面が腐食して破損することもある。
【0006】
従って、機器、器具、および作業面を洗浄したりすすいだりすることに使われる、このような強力な化学溶液は、通常、閉鎖系において使用される。
【0007】
この問題は、上述の銀技術を用いることによって徐々に改善されてきた。銀の微量作用が、水または水溶液を、人間に危険がなく材料および表面を傷つけない品質に細菌除去することを可能にするのである。従ってこの銀技術は、飲料水の製造、調合、および、品質保証の際といった飲料水にも利用される。
【0008】
このため常に、銀技術の効率を改善するための研究が行われている。文献1および文献2からは、例えば、ナノ粒子の特性を利用して、銀イオンを極めて広い表面に亘って急速に放射することを実現する新規の方法が知られている。
【0009】
この銀技術によって、高水質を得る、または、一般的に飲料用品質の水溶液を得るための材料および手法に関する商業的関心は、既にこういった製品が、様々な商号の下で広範囲に亘って商品流通していることによって強調されている。
【0010】
銀技術の公知の手法の欠点は、銀と水とを接触させた後の作用の開始が極めて遅いことと、選択的にしか抗菌作用がないことである。従って、銀と汚染された水とが接触した後に微生物を完全に死滅させて水の細菌除去を行うことができる程度に十分な量の銀イオンが表面から放出されるまでは、大抵、数時間、それどころかこれよりも長くかかる場合が多い。
【0011】
銀技術はまた、問題となる2つの分野を有している。一つ目は、細菌を死滅させる作用の開始が時間的に遅いことであり、二つ目は、微生物および問題となる生体分子を死滅または除去するために水または水溶液を効率良く浄化および消毒することの、作用スペクトルが制限されていることである。従って、銀技術の効率を向上させるためのより良い手法および方法が、常に求められている。
【0012】
現在の分子生物学および遺伝子工学の最新の洞察はまた、微生物に加えて、単に遺伝情報だけでも、つまり個々の遺伝子または遺伝子の断片、および、特定のタンパク質も、病気を引き起こしたり、または、望ましくない遺伝子障害の原因となり得ることを示している(Elhafi et al., 2004)。従って、活性生体分子を死滅または除去するために表面を効率良く浄化することは、水質および衛生のあらゆる分野におけるさらなる安全確保をもたらすであろう。
【0013】
従って実際には、水または水溶液を効率良く、とりわけ無毒且つ非腐食的に完全に浄化および消毒して、微生物、並びに、例えばDNA、RNA、およびタンパク質といった活性生体分子を死滅させる、または除去するための、改善された材料、手法、および方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO 2005/023206 A2
【特許文献2】DE 100 54 248 A1
【発明の概要】
【0015】
従って本発明の課題は、従来技術の欠点を克服すると共に、銀技術の作用の改善および拡張を実現する新規の材料および方法を開発することにある。
【0016】
上記課題を、本発明に従って、生物活性装置の銀およびルテニウム含有表面がさらに、少なくとも1つのビタミンまたはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンを含むことによって解決する。
【0017】
さらに上記課題を、本発明に従って、少なくともルテニウムと、さらなる、少なくとも1つのビタミンまたはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンとを含む、生物活性コーティングによって解決する。本発明に係るコーティングは、さらなる銀、または、ルテニウムの代わりに銀−ルテニウム−バイメタル−粒子を含むことが有効であるが、あるいは、該コーティングを、装置または他の対象物の銀含有表面上に堆積させてもよい。
【0018】
ここで、銀表面上の、または、銀分子に直接接触しているルテニウム分子は、急速な銀イオンの放出を助長するが、同時に、ビタミンまたはその誘導体、例えばアスコルビン酸分子またはその誘導体を結合させて錯体化するための「アンカーポイント」としても機能する。
【0019】
さらに上記課題を、生物活性装置を製造する一方法によって解決する。すなわち、銀およびルテニウムを含有する表面を有した装置を用意する、または、上記装置の銀含有表面上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、上記装置上に銀−コーティングを堆積させ、その後上記銀−コーティング上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、上記装置上にルテニウム−銀−粒子を堆積させることと、上記装置の銀およびルテニウムを含有する表面上に、少なくとも1つのビタミン若しくはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンを堆積させることとによって、解決する。
【0020】
さらに上記課題を、装置をコーティングする一方法によって解決する。すなわち、上記装置の銀含有表面上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、上記装置上に銀−コーティングを堆積させ、その後上記銀−コーティングの上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、上記装置上にルテニウム−銀−粒子を堆積させることと、上記装置の銀およびルテニウムを含有する表面上に、少なくとも1つのビタミン若しくはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンを堆積させることとによって、解決する。
【0021】
本発明は、公知の、細菌を低減させる銀の微量作用を、銀と、ルテニウムおよびビタミン、有利にはアスコルビン酸またはその誘導体とを組み合わせることによって、大幅に改善および強化するものである。この新規の生物活性金属表面が、微生物を迅速且つ効率良く死滅させる。同時に、この新規の金属表面は、微生物の生息、および、DNA、RNA、またはタンパク質といった生体分子の固着または沈着を妨げる。このようにして、水または水溶液と接触すると、迅速且つ効率良く無菌状態になると共に、この状態を長期に亘って維持する自浄式表面を得る。
【0022】
本発明に従って用いられる銀含有表面または銀表面は、対応する小型材料または固形物の表面であり得る。しかしながら、本発明に係る装置装置は、基本的に、薄い銀を含有するコーティングを有する他の任意の材料(例えば、プラスチック、セラミック、ガラス等)を含んでもよい。この銀を含有するコーティングは、外側に堆積されたルテニウム−コーティングと共に、効果的なルテニウム−銀−サンドイッチ−システムを形成している。このシステムは、銀または銀合金の下層または基層と、透湿性または透水性のルテニウムの外層、上層、または被膜層とを備えるものである。
【0023】
本発明に係るコーティングまたはコーティングシステム、すなわちルテニウム−コーティング、および、場合によっては必要な(一般的には2〜10μmの厚さの)銀下層は、電気めっきによって堆積または析出させることが有効である。PVD法、CVD法、スパッタ法、ゾルゲル法、および還元法といった他のコーティング方法も、これに適したメッキ方法である。
【0024】
ここで、ルテニウム−コーティングの堆積は、銀含有表面が、貫通した、有利には細かく形成された自由表面、開口、細孔、亀裂、空隙、若しくはルテニウム−コーティング内の同様のものによって、周囲の湿気と接触しているか、または、周囲の湿気と接触することが可能であり、これによって、銀とルテニウムとの間に湿気に暴露された接触が確保されるように制御される。銀表面がルテニウム−クラスタを有している場合、銀の微量作用は有効に強化され得る。特にこのクラスタ形の、多孔性のまたは微小割れしたルテニウム−層を銀と組み合わせることによって、銀イオンを周囲に極めて効率良く放出させることが可能である。有利にはナノメータまたはマイクロメータの範囲の厚さのルテニウムを堆積させる。この場合、最大約2μm、特に約0.05μm、および、最小約0.005−0.01μmの厚さが特に有効である。
【0025】
もちろんAg−Ru−粒子を用いてもよい。この粒子では、銀およびルテニウムが導電的に接触しており、両金属は湿気または水によって濡れている。銀−ルテニウム−バイメタル粒子は、マイクロメータまたはナノメータの範囲、有効には約50nm未満の大きさのナノメータの範囲に存在していることが可能である。銀およびルテニウム粒子は、両種類の粒子間に密着した金属接触が存在しているならば、単一粒子としても有効であり得る。
【0026】
ナノメータおよびマイクロメータの大きさの金属粒子は、例えば、研削法、電気化学法、化学的還元法、毛管法、電気泳動法、熱水合成法、PVD法、CVD法、または、ゾルゲル法によって製造可能である。従来技術に従って、ルテニウム−銀(Wu et al., 1990 II)、白金−ルテニウム(Schmidt et al., 1998)、ルテニウム−銅(Wu et at., 1990 I)、および、ルテニウム−金(Wu et al., 1990 II)から成るナノ粒子が、主として触媒目的に製造されている。
【0027】
電気めっきによる析出、特に本発明に係る、有利にはクラスタ形の多孔性のまたは微小ひび割れしたルテニウム−層の析出は、適した電解液の選択、電解液中の金属含有量、電解液の温度、電解液のpH値、析出時間または処理時間によって、および/または、電流密度または電流の量によって、調節しながら制御することが可能である。従って特に、ルテニウム−層内の本発明に係るルテニウム−クラスタ、細孔(微小孔)、および微小ひび割れの構造および寸法は、選択された電気めっき析出条件によって決定される。このため、ルテニウム−層の厚さおよび構造を、必要に応じて適切に設定可能または設計可能であり、それぞれの用途に最適に調節可能である。電気めっきによる析出の際には、本発明に係るルテニウム−銀−サンドイッチ−システムの各層を単に順番に析出可能な、容易且つ公知の従来のプロセス制御だけが利用可能というわけでなく、市販されている、公知且つ試験済みの電解質システムもこれに利用可能である。
【0028】
コーティングの前、有利には最初に、表面をきれいにして、該表面の酸洗いおよび/または洗浄を行う。非導電性装置の場合、銀−コーティングおよびルテニウム−コーティングを堆積させる前に、上記装置の表面には、電気めっきを行う技術者に公知な方法に従って前処理を施して、接着性のある、銀およびルテニウムを有するコーティングを可能にする必要がある。
【0029】
特に、ルテニウムとアスコルビン酸との間の相乗的相互作用に関する最初のヒントから、ビタミン誘導体、金属イオン、および、洗浄剤を有する新規の浄化溶液中に、ルテニウムを極めて効率良く用いることが可能であるということが分かった。
【0030】
二価または三価の金属イオン、ビタミン誘導体、および、洗浄剤を有する新規の溶液および方法を開発した。これは、普遍的な消毒および浄化溶液に関する従来技術の欠点を克服するものであり、また強力な腐食性化学薬品または強酸化剤によって行うものではなく、処理する基板を常温または少し高い温度で完全に浄化するものである。
【0031】
マイクロモルの濃度の生理量では、酸化防止剤を二価の金属イオンと組み合わせると、散発的に、核酸分子の損傷および部分的鎖切断が導かれ得ることが知られている(Padayatty et al., 2003; Blokhina et al., 2003; Veal et al., 1991)。しかしながらこれらは、個々の特殊なケースにのみ利用可能な、散発的且つ単独の結果に過ぎない。
【0032】
金属イオン、ビタミン誘導体、および、洗浄剤の新規の組み合わせを体系的に試みることによって、極めて高効率且つ普遍的な、新規の浄化溶液および消毒溶液の開発を促進させた。最近の実験は、ルテニウムも、このシステムにおいて極めて高効率の相乗効果を有していることを証明している(図1参照)。
【0033】
驚くべきことに、新たに開発した、銀およびルテニウムでコーティングした金属表面をアスコルビン酸溶液中で培養すると、アスコルビン酸分子が、ルテニウム分子に自発的に結合され、錯体化されることが新たに分かった。このため金属表面には、アスコルビン酸分子から成る持続性のあるデポが形成される。銀−コーティングおよびルテニウム−コーティングは、金属接触されている限り、隣接させて並べることも可能である。両金属間が水溶液によって接触し合っている限り、多孔性のルテニウム−層の上方に、多孔性且つ微小ひび割れした銀層を配置することも想定可能である。この新規に開発した、銀、ルテニウム、およびアスコルビン酸から成るコーティングシステム、および/または、周期表の第4周期、および/または、周期表副族の第I族、II族、およびVIII族の二価および/または三価の金属イオン、および/または、不活性の界面活性剤は、全く新規な驚くべき特性を有している。
【0034】
この金属表面の新規な特性は、微生物を、従来の材料および方法を用いた従来技術において可能な程度よりも、迅速且つ効率良く死滅させる。
【0035】
これは、アスコルビン酸−処理後の、銀/ルテニウム−コーティングを有する様々な銀サンプルの細菌死滅効率を比較すると、明らかである。
【0036】
直径1.3cmの丸い銀メッキに、電気めっきにより、対応する微小孔のあるコーティングを設けて、その後0.5Mのアスコルビン酸水溶液中で、24時間培養した。培養後、このメッキを、滅菌水で2回洗浄した。アスコルビン酸で処理した銀/ルテニウム−メッキ(Ag/Ru)は、比較サンプルと比べて、著しく早い細菌死滅を示している。従って、試験培養液の細菌の数は、2〜20分後にはもう、急激に低減するか、または、完全に死滅している(図2A〜2D参照)。アスコルビン酸によるこの処理の後、純粋な銀メッキ(Ag)、金コーティング(Ag/Au)を有する銀メッキ、または、パラジウム−コーティングおよびニッケル−コーティング(Ag/Pd/Ni)を有する銀メッキといった様々な比較サンプルは、約60分の接触時間および作用時間の後にようやく、細菌の数の最初の顕著な減少を示している。しかしこの期間においても、全ての細菌が完全に死滅しているわけではない。
【0037】
アスコルビン酸で処理した銀−ルテニウム−表面を滅菌水で複数回洗浄しても、高い抗菌作用が著しく低減することはない(図3A〜3D参照)。これは、銀およびルテニウムから成る表面上のアスコルビン酸分子が持続的に結合し合ってデポを形成することを示している。さらに、これら3つの成分全ての間には、特別な相乗的相互作用が生じる。
【0038】
必要に応じて、アスコルビン酸のデポは、アスコルビン酸水溶液を単に塗布するかまたはアスコルビン酸水溶液でただ拭うことによって、再び補充することが可能である。あるいは、このデポの充填を、アスコルビン酸溶液中での新たな培養によって行ってもよい。
【0039】
アスコルビン酸、金属イオン、および洗浄剤から成る薄い層を堆積させて、アスコルビン酸から成るデポを補充することによって、特別な付加作用が生じて、核酸分子がこの表面と接触しても、迅速且つ完全に分解されることになる。持続的なデポ形成にとって新たな重要点は、本発明に係る、好ましくは、クラスタ形であると共に、多孔性のまたは微小ひび割れしたルテニウム−銀−層である。この層が、効率の良いデポ形成を助長する。
【0040】
従来技術の、銀技術、一般的にほとんどの生物活性表面の欠点は、DNA、RNA、またはタンパク質といった問題となる生体分子に対して分解機能が欠けているという点である。独自の実験では、様々なプラスチックまたは金属表面は、DNA−分子に対して全く分解作用がないか、または、極めて制限された分解作用しか有していないことが証明された(図4参照)。
【0041】
この実験では、新規のAg/Ru−コーティングをアスコルビン酸、金属イオン、および洗浄剤と組み合わせた場合の特別な相乗効果は、このようにコーティングされた表面上のDNA−分子の安定性試験において示される。この表面上に、所定のDNA−サンプルを汚染として堆積させると、アガロースゲルおよび電気泳動による分析は、30分〜24時間以内の迅速且つ完全な分解を示す。極めて敏感なPCR−技術によるさらなる分析は、堆積させたDNA分子が30分後にはもう検出不可能であることを示している(図6参照)。プラスチック表面上の1つの比較サンプルは、この期間には全くDNA−分解を示していない。従って、新規の生物活性表面は、問題となる生体分子用の自浄式表面の新規のさらなる特性を有している。
【0042】
本発明のさらなる対象は、本発明に係る生物活性装置、コーティング、および金属表面を、衛生状態および水質の保全のために水または水溶液の無菌状態を生成および維持することに利用することに関する。
【0043】
本発明の有効なさらなる実施形態を、従属請求項の対象に明記する。
【0044】
新規の金属表面の高効率な作用は、個々の単一成分が同程度の高効率な作用を示さないことが確認されているだけに、驚くべきことである。
【0045】
まず、銀およびルテニウムから成る金属表面またはコーティングに、少なくとも1つのビタミンまたはその誘導体、および、有利にはさらなる二価または三価の金属イオンおよび/または洗浄剤を積載することによって相乗効果が導かれ、水溶液の細菌除去を加速させると共に効率よく行い、その金属表面またはコーティング上の問題となる生体分子を分解させる。
【0046】
つまり、本発明に従って製造される金属表面またはコーティングは、銀、ルテニウム、および、有利にはアスコルビン酸またはその誘導体を含有している。
【0047】
特に本発明に従って共に用いられるビタミンまたはその塩、若しくは酸誘導体は、酸化防止作用を有する水溶性ビタミン、有利には、ビタミンC、リボフラビン、およびナイアシンから成る群から選択された、1つまたはそれ以上の化合物および/またはその塩である。これは、全溶液に対して約1mM〜1000mMの量、有利には約10mM〜100mMの量で用いられる。
【0048】
アスコルビン酸またはその誘導体とさらなる界面活性物質とから成る薄い層を堆積させることによって、さらに効果を増大させることが可能である。本発明に従って共に使用される界面活性物質は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、若しくは不活性の陽イオン界面活性剤であるか、または、これらを互いに好適に混ぜ合わせた混合物である。特に、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル−スルホン酸塩および/またはアリールスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、両性界面活性剤、ベタイン、アルキルアミドアルキルアミン、アルキル置換されたアミノ酸、アルキル置換されたイミノ酸、アシル化したアミノ酸、および、両性界面活性剤の組み合わせが用いられ得る。基本的に、不活性の全ての界面活性剤が適している。不活性とは、これらが相乗的溶液にも、実験結果にも影響を与えないことを意味している。本発明では、陰イオン界面活性剤および非イオン界面活性剤が好ましい。
【0049】
上記界面活性物質は、全溶液に対して約0.1〜10重量%の量、有利には約0.2〜0.5重量%の量で用いられる。本発明に係る生物活性表面上には、さらに二価および/または三価の金属イオンを堆積させてもよい。これらは、周期表の第4周期、および/または、周期表の副族第I族、第II族、および、第VIII族の金属のイオンである。上記金属イオンは、有機酸および/または無機酸または塩基との塩の形で用いられる。本発明では、副族第VIII族、特に、鉄、コバルト、ニッケル、銅、または亜鉛から選択された、1つまたはそれ以上の化合物が好ましい。
【0050】
上記金属イオンは、全水溶液に対して約1mM〜100mMの量、有利には約5mM〜10mMの量で用いられる。
【0051】
本発明に係る生物活性表面上には、一般的な不活性の補助剤および添加剤をさらに堆積させてもよい。これらは例えば、所定のpH値を設定するために適した緩衝物質であり、例えば、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン)、MES(2−(モルホリノ)エタンスルホン酸)、HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−エタンスルホン酸、MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)、コハク酸の炭酸塩および誘導体である。これら緩衝物質を、全水溶液に対して約1mM〜500mMの量で用いる。
【0052】
本発明に係る生物活性金属表面と水または水溶液との間の接触時間および作用時間としては、通常、室温または少し高い温度で約5〜20分で十分である。これによって、完全な浄化および消毒が可能である。しかしながら、用いる方法を変化させて、それぞれの要件に適合させてもよい。
【0053】
本発明は、衛生−用途のため、および高い水質を得るための、新規の生物活性表面の開発を、銀、ルテニウム、および、アスコルビン酸またはその誘導体から成るコーティングによって可能にするものである。従って、銀技術による浄化および消毒の質を新たに向上させるものであり、これは、抗菌作用をより迅速に作用させると共にこれを長期に亘って持続的に維持可能だからである。同時に、DNA、RNA、またはタンパク質といった活性生体分子が表面に安定な形で堆積することを回避する。
【0054】
本発明を、以下の模範的な図面および実施形態を参照しながら、具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】例えばDNA−分子の分解時のルテニウムとアスコルビン酸との間の特別な相乗効果を示す図である。
【図2A】従来技術に係る他の銀サンプルと比較した、本発明に係る、銀、ルテニウム、およびアスコルビン酸から成るコーティングの高い抗菌作用を示す図である。
【図2B】従来技術に係る他の銀サンプルと比較した、本発明に係る、銀、ルテニウム、およびアスコルビン酸から成るコーティングの高い抗菌作用を示す図である。
【図2C】従来技術に係る他の銀サンプルと比較した、本発明に係る、銀、ルテニウム、およびアスコルビン酸から成るコーティングの高い抗菌作用を示す図である。
【図2D】従来技術に係る他の銀サンプルと比較した、本発明に係る、銀、ルテニウム、およびアスコルビン酸から成るコーティングの高い抗菌作用を示す図である。
【図3A】図2と同一の金属メッキを、再び滅菌水で洗浄して乾燥させた後の、図2と同様の試験を示す図である。
【図3B】図2と同一の金属メッキを、再び滅菌水で洗浄して乾燥させた後の、図2と同様の試験を示す図である。
【図3C】図2と同一の金属メッキを、再び滅菌水で洗浄して乾燥させた後の、図2と同様の試験を示す図である。
【図3D】図2と同一の金属メッキを、再び滅菌水で洗浄して乾燥させた後の、図2と同様の試験を示す図である。
【図4】様々な表面上のDNA−分子の安定性を分析した結果を示す図である。
【図5】特別なコーティングを有する新規の金属表面上の有効なDNA−分解を分析した結果を示す図である。
【図6】DNA−サンプルを本発明に従ってコーティングされた新規の金属表面と様々な時間接触させた後の、DNA−サンプルのPCR−分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、例えばDNA−分子の分解時のルテニウムとアスコルビン酸との間の特別な相乗効果を示す図である。DNA−プラスミド(YEp351)の同一のアリコートを、下記の溶液で2分間処理して、サンプル1−7を得た。その後、このDNA−サンプルを変性させて、一本鎖のDNA−分子をアガロースゲル(1%)上でゲル電気泳動によって分離させた。臭化エチジウムで着色した後、示した図を得た。コントロールは、滅菌水による処理後の無傷のプラスミド−DNAを示す。鎖切断が起こると、該当するDNA−分子の分子量は減少する。このことは、ゲルにおいて、コントロールおよび分子量マーカーと比較することによって測定可能である。5μlの滅菌トリス緩衝液(1mM;pH8.0)中の5μgのDNAを、それぞれ、5μlの下記の溶液と共に、室温で2分間処理して、各サンプル1−7を得た。その後、このサンプルを、5μlの100mMのトリス(pH12)と混合し、ブロモフェノールブルーマーカーを添加して、95°Cで5分間変性させた。この変性したサンプルを、直ちに、4°Cに冷却し、1μgDNAを有するアリコートをゲルレーン毎にそれぞれ添加した。このDNAに、1%のアガロースゲル中でゲル電気泳動を行った後、臭化エチジウムで着色し、写真を撮った。
【0057】
サンプルの説明
M:DNA−マーカー、1kbのラダー
K:コントロール:DNA+5μlの滅菌H2O
1:100mMのアスコルビン酸+10mMのFeCl3
2:10mMのアスコルビン酸+1mMのFeCl3
3:100mMのアスコルビン酸+10mMのRuCl3
4:10mMのアスコルビン酸+1mMのRuCl3
5:100mMのアスコルビン酸+10mMのAgNO3
6:10mMの安息香酸
7:100mMのアスコルビン酸
図2A−Dは、他の銀サンプルと比較した、銀、ルテニウム、およびアスコルビン酸から成る新規のコーティングの高い抗菌作用を示す図である。金属メッキ(直径1.3cm)を、0.5Mのアスコルビン酸−溶液中で培養し、その後、滅菌水で洗浄して乾燥させた。乾燥させた後、このサンプルをそれぞれ、大腸菌標準株Escherichia coli RRIの細菌を105含む1mlの滅菌水中に入れた。生存する細菌の数を、1分、5分、20分、および60分の培養の後に測定して、105〜100まで記載した。
【0058】
サンプル
0:滅菌H2Oのみ
1:純粋な銀メッキ(Ag)
2:ルテニウムを有する銀メッキ(Ag/Ru)
3:金を有する銀メッキ(Ag/Au)
4:パラジウムおよびニッケルを有する銀メッキ(Ag/Pd/Ni)
5:100mMのアスコルビン酸、10mMのFeCl3
6:100mMのアスコルビン酸、10mMのRuCl3
(5+6はそれぞれ、0.3%のSDSおよび0.2%のTween20を有する)。
【0059】
図3A−Dは、図2と同一の金属メッキを、再び滅菌水で洗浄して乾燥させた後の、図2と同様の試験を示す図である。乾燥させた後、各サンプルを再び、大腸菌標準株Escherichia coli RRIの細菌を各105含む1mlの滅菌水中に入れた。生存する細菌の数を、1分、5分、20分、および60分の培養の後に測定して、105〜100まで記載した。
【0060】
サンプル
0:滅菌H2Oのみ
1:純粋な銀メッキ(Ag)
2:ルテニウムを有する銀メッキ(Ag/Ru)
3:金を有する銀メッキ(Ag/Au)
4:パラジウムおよびニッケルを有する銀メッキ(Ag/Pd/Ni)
5:100mMのアスコルビン酸、10mMのFeCl3
6:100mMのアスコルビン酸、10mMのRuCl3
(5+6はそれぞれ、0.3%のSDSおよび0.2%のTween20を有する)。
【0061】
図4は、様々な表面上のDNA−分子の安定性を分析した結果を示す図である。50μlのDNA溶液(25ng/μl)を各表面上に滴下した。24時間後、2μlのアリコートをそれぞれ取って、分析用アガロースゲル中で調べた。DNAに、1%のアガロースゲル中でゲル電気泳動を行った後、臭化エチジウムで着色して、写真を撮った。コントロール−表面には、滅菌プラスチック材料を用いた。
【0062】
ゲルへのロード
K:プラスチック表面のコントロールサンプル
M:マーカー/1kbのラダー
1:アスコルビン酸処理後のAgのDNA−サンプル
2:アスコルビン酸処理後のAg/AuのDNA−サンプル
3:アスコルビン酸処理後のAg/RuのDNA−サンプル
4:アスコルビン酸処理後のPd/NiのDNA−サンプル
図5は、特別なコーティングを有する新規の金属表面上の有効なDNA−分解を分析した結果を示す図である。Ag/Ru−コーティングに、さらに、アスコルビン酸、金属イオン、および洗浄剤から成る薄い層を設けた。このため、100mMのアスコルビン酸、10mMのFeCl3、0.3%のSDS、および、0.2%のTween20を有する溶液を、短時間浸して、水気を取り、乾燥させることによって、表面につけた。その後、50μlのDNA−溶液(25ng/μl)を表面上に滴下した。それぞれ2μlのアリコートを、所定時間後に採取し、このDNAに、1%のアガロースゲル中でゲル電気泳動を行った後、臭化エチジウムで着色して、写真を撮った。コントロール−表面には、滅菌プラスチック材料を用いた。
【0063】
ゲルへのロード
M:マーカー/1kbのラダー
K1:30分後のプラスチック表面のコントロールサンプル
K2:1時間後のプラスチック表面のコントロールサンプル
K3:4時間後のプラスチック表面のコントロールサンプル
K4:24時間後のプラスチック表面のコントロールサンプル
Ab1:30分後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
Ab2:1時間後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
Ab3:4時間後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
Ab4:24時間後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
図6は、DNA−サンプルをコーティングされた新規の金属表面と様々な時間接触させた後の、DNA−サンプルのPCR−分析を示す図である。Ag/Ru−コーティングに、さらに、アスコルビン酸、金属イオン、および洗浄剤を有する薄い層を設ける。このため、100mMのアスコルビン酸、10mMのFeCl3、0.3%のSDS、および、0.2%のTween20を含む溶液を、短時間浸して、水気を取り、乾燥させることによって、表面につけた。その後、50μlのDNA−溶液(0.1ng/μl)を表面に滴下した。各2μlのアリコートを、所定時間の後に取り出して、各50μlのPCR−反応混合物中にピペットで移した。このPCR−反応混合物は、試験−DNA(酵母のscPCP1−Gen)を増幅させるためのプライマー対を含んでいる。コントロール(+/−)は、PCR−反応が成功したかどうかを示している。試験−DNAの780塩基対(Bp)のバンドは、この遺伝子にまだ無傷のDNA分子が存在していることを示している。試験−DNAを完全に除去または破壊する場合、ゲル中では、増幅されたDNA−バンドを検出することはできない。このDNAに、1%のアガロースゲル中でゲル電気泳動を行った後、臭化エチジウムで着色して、写真を撮った。コントロール−表面には、滅菌プラスチック材料を用いた。
【0064】
ゲルへのロード
+:試験−DNAによるPCR−反応の正のコントロール
−:DNAを用いないPCR−反応負のコントロール
M:マーカー/1kbのラダー
K1:30分後のプラスチック表面のコントロールサンプル
K2:1時間後のプラスチック表面のコントロールサンプル
K3:4時間後のプラスチック表面のコントロールサンプル
Ab1:30分後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
Ab2:1時間後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
Ab3:4時間後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
【符号の説明】
【0065】
Ag:銀
Ag):純粋な銀メッキ
Ag/Ru):ルテニウム−コーティングを有する銀メッキ
Ag/Au):金−コーティングを有する銀メッキ
Ag/Pd/Ni):パラジウム−コーティングおよび−コーティングを有する銀メッキ
EtBr:臭化エチジウム
K:コントロール
M:分子量マーカー
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
RT:室温
Ru:ルテニウム
sc:出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae、サッカロマイセス・セレヴィシエ)
scPCP1:サッカロマイセス・セレヴィシエ遺伝子(シトクロムcペルオキシダーゼの処理用)
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
YEp351:酵母エピソームプラスミド
【引例】
【0066】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に銀含有表面用のルテニウムを含有する生物活性コーティング、銀およびルテニウム含有表面を有する生物活性装置、並びに、上記生物活性コーティングおよび上記生物活性装置の製造および利用に関する。
【0002】
極少量の銀の抗菌作用については、既に1869年にRavelinが、1893年にはvon Na:geliが記載している。現在でも、銀の効果に対する関心は失われていない(Landau, U.(2006):衛生、医学、および水処理における銀の減菌作用:銀のオリゴダイナミー;Isensee−Verlag,Oldenburg,2006−10−03)。
【0003】
依然として、微生物汚染によって大きな問題が生じており、水質、水溶液、および衛生と関係があるあらゆる領域における商業的損失が発生している。この領域とは、例えば、病院、衛生機関、食品技術分野、生産分野、空調技術分野、および、家庭である。
【0004】
このため以前から、例えば、ホルムアルデヒド、アルコール、フェノール、アジ化ナトリウム、次亜塩素酸塩ナトリウムといった、微生物に対して有害な影響を与える化学物質を有する、または、例えば次亜塩素酸塩、漂白剤、若しくは鉱酸といった強酸化剤を有する抗菌性の様々な浄化溶液が存在している。
【0005】
これらの溶液および手法の欠点は、浄化および消毒に用いられるこの極めて強力な化学薬品および強酸化剤の腐食性および毒性が高い点である。このため、処理水および水溶液は、通常、飲料用には適しておらず、使用する機器または表面が腐食して破損することもある。
【0006】
従って、機器、器具、および作業面を洗浄したりすすいだりすることに使われる、このような強力な化学溶液は、通常、閉鎖系において使用される。
【0007】
この問題は、上述の銀技術を用いることによって徐々に改善されてきた。銀の微量作用が、水または水溶液を、人間に危険がなく材料および表面を傷つけない品質に細菌除去することを可能にするのである。従ってこの銀技術は、飲料水の製造、調合、および、品質保証の際といった飲料水にも利用される。
【0008】
このため常に、銀技術の効率を改善するための研究が行われている。文献1および文献2からは、例えば、ナノ粒子の特性を利用して、銀イオンを極めて広い表面に亘って急速に放射することを実現する新規の方法が知られている。
【0009】
この銀技術によって、高水質を得る、または、一般的に飲料用品質の水溶液を得るための材料および手法に関する商業的関心は、既にこういった製品が、様々な商号の下で広範囲に亘って商品流通していることによって強調されている。
【0010】
銀技術の公知の手法の欠点は、銀と水とを接触させた後の作用の開始が極めて遅いことと、選択的にしか抗菌作用がないことである。従って、銀と汚染された水とが接触した後に微生物を完全に死滅させて水の細菌除去を行うことができる程度に十分な量の銀イオンが表面から放出されるまでは、大抵、数時間、それどころかこれよりも長くかかる場合が多い。
【0011】
銀技術はまた、問題となる2つの分野を有している。一つ目は、細菌を死滅させる作用の開始が時間的に遅いことであり、二つ目は、微生物および問題となる生体分子を死滅または除去するために水または水溶液を効率良く浄化および消毒することの、作用スペクトルが制限されていることである。従って、銀技術の効率を向上させるためのより良い手法および方法が、常に求められている。
【0012】
現在の分子生物学および遺伝子工学の最新の洞察はまた、微生物に加えて、単に遺伝情報だけでも、つまり個々の遺伝子または遺伝子の断片、および、特定のタンパク質も、病気を引き起こしたり、または、望ましくない遺伝子障害の原因となり得ることを示している(Elhafi et al., 2004)。従って、活性生体分子を死滅または除去するために表面を効率良く浄化することは、水質および衛生のあらゆる分野におけるさらなる安全確保をもたらすであろう。
【0013】
従って実際には、水または水溶液を効率良く、とりわけ無毒且つ非腐食的に完全に浄化および消毒して、微生物、並びに、例えばDNA、RNA、およびタンパク質といった活性生体分子を死滅させる、または除去するための、改善された材料、手法、および方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO 2005/023206 A2
【特許文献2】DE 100 54 248 A1
【発明の概要】
【0015】
従って本発明の課題は、従来技術の欠点を克服すると共に、銀技術の作用の改善および拡張を実現する新規の材料および方法を開発することにある。
【0016】
上記課題を、本発明に従って、生物活性装置の銀およびルテニウム含有表面がさらに、少なくとも1つのビタミンまたはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンを含むことによって解決する。
【0017】
さらに上記課題を、本発明に従って、少なくともルテニウムと、さらなる、少なくとも1つのビタミンまたはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンとを含む、生物活性コーティングによって解決する。本発明に係るコーティングは、さらなる銀、または、ルテニウムの代わりに銀−ルテニウム−バイメタル−粒子を含むことが有効であるが、あるいは、該コーティングを、装置または他の対象物の銀含有表面上に堆積させてもよい。
【0018】
ここで、銀表面上の、または、銀分子に直接接触しているルテニウム分子は、急速な銀イオンの放出を助長するが、同時に、ビタミンまたはその誘導体、例えばアスコルビン酸分子またはその誘導体を結合させて錯体化するための「アンカーポイント」としても機能する。
【0019】
さらに上記課題を、生物活性装置を製造する一方法によって解決する。すなわち、銀およびルテニウムを含有する表面を有した装置を用意する、または、上記装置の銀含有表面上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、上記装置上に銀−コーティングを堆積させ、その後上記銀−コーティング上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、上記装置上にルテニウム−銀−粒子を堆積させることと、上記装置の銀およびルテニウムを含有する表面上に、少なくとも1つのビタミン若しくはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンを堆積させることとによって、解決する。
【0020】
さらに上記課題を、装置をコーティングする一方法によって解決する。すなわち、上記装置の銀含有表面上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、上記装置上に銀−コーティングを堆積させ、その後上記銀−コーティングの上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、上記装置上にルテニウム−銀−粒子を堆積させることと、上記装置の銀およびルテニウムを含有する表面上に、少なくとも1つのビタミン若しくはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンを堆積させることとによって、解決する。
【0021】
本発明は、公知の、細菌を低減させる銀の微量作用を、銀と、ルテニウムおよびビタミン、有利にはアスコルビン酸またはその誘導体とを組み合わせることによって、大幅に改善および強化するものである。この新規の生物活性金属表面が、微生物を迅速且つ効率良く死滅させる。同時に、この新規の金属表面は、微生物の生息、および、DNA、RNA、またはタンパク質といった生体分子の固着または沈着を妨げる。このようにして、水または水溶液と接触すると、迅速且つ効率良く無菌状態になると共に、この状態を長期に亘って維持する自浄式表面を得る。
【0022】
本発明に従って用いられる銀含有表面または銀表面は、対応する小型材料または固形物の表面であり得る。しかしながら、本発明に係る装置装置は、基本的に、薄い銀を含有するコーティングを有する他の任意の材料(例えば、プラスチック、セラミック、ガラス等)を含んでもよい。この銀を含有するコーティングは、外側に堆積されたルテニウム−コーティングと共に、効果的なルテニウム−銀−サンドイッチ−システムを形成している。このシステムは、銀または銀合金の下層または基層と、透湿性または透水性のルテニウムの外層、上層、または被膜層とを備えるものである。
【0023】
本発明に係るコーティングまたはコーティングシステム、すなわちルテニウム−コーティング、および、場合によっては必要な(一般的には2〜10μmの厚さの)銀下層は、電気めっきによって堆積または析出させることが有効である。PVD法、CVD法、スパッタ法、ゾルゲル法、および還元法といった他のコーティング方法も、これに適したメッキ方法である。
【0024】
ここで、ルテニウム−コーティングの堆積は、銀含有表面が、貫通した、有利には細かく形成された自由表面、開口、細孔、亀裂、空隙、若しくはルテニウム−コーティング内の同様のものによって、周囲の湿気と接触しているか、または、周囲の湿気と接触することが可能であり、これによって、銀とルテニウムとの間に湿気に暴露された接触が確保されるように制御される。銀表面がルテニウム−クラスタを有している場合、銀の微量作用は有効に強化され得る。特にこのクラスタ形の、多孔性のまたは微小割れしたルテニウム−層を銀と組み合わせることによって、銀イオンを周囲に極めて効率良く放出させることが可能である。有利にはナノメータまたはマイクロメータの範囲の厚さのルテニウムを堆積させる。この場合、最大約2μm、特に約0.05μm、および、最小約0.005−0.01μmの厚さが特に有効である。
【0025】
もちろんAg−Ru−粒子を用いてもよい。この粒子では、銀およびルテニウムが導電的に接触しており、両金属は湿気または水によって濡れている。銀−ルテニウム−バイメタル粒子は、マイクロメータまたはナノメータの範囲、有効には約50nm未満の大きさのナノメータの範囲に存在していることが可能である。銀およびルテニウム粒子は、両種類の粒子間に密着した金属接触が存在しているならば、単一粒子としても有効であり得る。
【0026】
ナノメータおよびマイクロメータの大きさの金属粒子は、例えば、研削法、電気化学法、化学的還元法、毛管法、電気泳動法、熱水合成法、PVD法、CVD法、または、ゾルゲル法によって製造可能である。従来技術に従って、ルテニウム−銀(Wu et al., 1990 II)、白金−ルテニウム(Schmidt et al., 1998)、ルテニウム−銅(Wu et at., 1990 I)、および、ルテニウム−金(Wu et al., 1990 II)から成るナノ粒子が、主として触媒目的に製造されている。
【0027】
電気めっきによる析出、特に本発明に係る、有利にはクラスタ形の多孔性のまたは微小ひび割れしたルテニウム−層の析出は、適した電解液の選択、電解液中の金属含有量、電解液の温度、電解液のpH値、析出時間または処理時間によって、および/または、電流密度または電流の量によって、調節しながら制御することが可能である。従って特に、ルテニウム−層内の本発明に係るルテニウム−クラスタ、細孔(微小孔)、および微小ひび割れの構造および寸法は、選択された電気めっき析出条件によって決定される。このため、ルテニウム−層の厚さおよび構造を、必要に応じて適切に設定可能または設計可能であり、それぞれの用途に最適に調節可能である。電気めっきによる析出の際には、本発明に係るルテニウム−銀−サンドイッチ−システムの各層を単に順番に析出可能な、容易且つ公知の従来のプロセス制御だけが利用可能というわけでなく、市販されている、公知且つ試験済みの電解質システムもこれに利用可能である。
【0028】
コーティングの前、有利には最初に、表面をきれいにして、該表面の酸洗いおよび/または洗浄を行う。非導電性装置の場合、銀−コーティングおよびルテニウム−コーティングを堆積させる前に、上記装置の表面には、電気めっきを行う技術者に公知な方法に従って前処理を施して、接着性のある、銀およびルテニウムを有するコーティングを可能にする必要がある。
【0029】
特に、ルテニウムとアスコルビン酸との間の相乗的相互作用に関する最初のヒントから、ビタミン誘導体、金属イオン、および、洗浄剤を有する新規の浄化溶液中に、ルテニウムを極めて効率良く用いることが可能であるということが分かった。
【0030】
二価または三価の金属イオン、ビタミン誘導体、および、洗浄剤を有する新規の溶液および方法を開発した。これは、普遍的な消毒および浄化溶液に関する従来技術の欠点を克服するものであり、また強力な腐食性化学薬品または強酸化剤によって行うものではなく、処理する基板を常温または少し高い温度で完全に浄化するものである。
【0031】
マイクロモルの濃度の生理量では、酸化防止剤を二価の金属イオンと組み合わせると、散発的に、核酸分子の損傷および部分的鎖切断が導かれ得ることが知られている(Padayatty et al., 2003; Blokhina et al., 2003; Veal et al., 1991)。しかしながらこれらは、個々の特殊なケースにのみ利用可能な、散発的且つ単独の結果に過ぎない。
【0032】
金属イオン、ビタミン誘導体、および、洗浄剤の新規の組み合わせを体系的に試みることによって、極めて高効率且つ普遍的な、新規の浄化溶液および消毒溶液の開発を促進させた。最近の実験は、ルテニウムも、このシステムにおいて極めて高効率の相乗効果を有していることを証明している(図1参照)。
【0033】
驚くべきことに、新たに開発した、銀およびルテニウムでコーティングした金属表面をアスコルビン酸溶液中で培養すると、アスコルビン酸分子が、ルテニウム分子に自発的に結合され、錯体化されることが新たに分かった。このため金属表面には、アスコルビン酸分子から成る持続性のあるデポが形成される。銀−コーティングおよびルテニウム−コーティングは、金属接触されている限り、隣接させて並べることも可能である。両金属間が水溶液によって接触し合っている限り、多孔性のルテニウム−層の上方に、多孔性且つ微小ひび割れした銀層を配置することも想定可能である。この新規に開発した、銀、ルテニウム、およびアスコルビン酸から成るコーティングシステム、および/または、周期表の第4周期、および/または、周期表副族の第I族、II族、およびVIII族の二価および/または三価の金属イオン、および/または、不活性の界面活性剤は、全く新規な驚くべき特性を有している。
【0034】
この金属表面の新規な特性は、微生物を、従来の材料および方法を用いた従来技術において可能な程度よりも、迅速且つ効率良く死滅させる。
【0035】
これは、アスコルビン酸−処理後の、銀/ルテニウム−コーティングを有する様々な銀サンプルの細菌死滅効率を比較すると、明らかである。
【0036】
直径1.3cmの丸い銀メッキに、電気めっきにより、対応する微小孔のあるコーティングを設けて、その後0.5Mのアスコルビン酸水溶液中で、24時間培養した。培養後、このメッキを、滅菌水で2回洗浄した。アスコルビン酸で処理した銀/ルテニウム−メッキ(Ag/Ru)は、比較サンプルと比べて、著しく早い細菌死滅を示している。従って、試験培養液の細菌の数は、2〜20分後にはもう、急激に低減するか、または、完全に死滅している(図2A〜2D参照)。アスコルビン酸によるこの処理の後、純粋な銀メッキ(Ag)、金コーティング(Ag/Au)を有する銀メッキ、または、パラジウム−コーティングおよびニッケル−コーティング(Ag/Pd/Ni)を有する銀メッキといった様々な比較サンプルは、約60分の接触時間および作用時間の後にようやく、細菌の数の最初の顕著な減少を示している。しかしこの期間においても、全ての細菌が完全に死滅しているわけではない。
【0037】
アスコルビン酸で処理した銀−ルテニウム−表面を滅菌水で複数回洗浄しても、高い抗菌作用が著しく低減することはない(図3A〜3D参照)。これは、銀およびルテニウムから成る表面上のアスコルビン酸分子が持続的に結合し合ってデポを形成することを示している。さらに、これら3つの成分全ての間には、特別な相乗的相互作用が生じる。
【0038】
必要に応じて、アスコルビン酸のデポは、アスコルビン酸水溶液を単に塗布するかまたはアスコルビン酸水溶液でただ拭うことによって、再び補充することが可能である。あるいは、このデポの充填を、アスコルビン酸溶液中での新たな培養によって行ってもよい。
【0039】
アスコルビン酸、金属イオン、および洗浄剤から成る薄い層を堆積させて、アスコルビン酸から成るデポを補充することによって、特別な付加作用が生じて、核酸分子がこの表面と接触しても、迅速且つ完全に分解されることになる。持続的なデポ形成にとって新たな重要点は、本発明に係る、好ましくは、クラスタ形であると共に、多孔性のまたは微小ひび割れしたルテニウム−銀−層である。この層が、効率の良いデポ形成を助長する。
【0040】
従来技術の、銀技術、一般的にほとんどの生物活性表面の欠点は、DNA、RNA、またはタンパク質といった問題となる生体分子に対して分解機能が欠けているという点である。独自の実験では、様々なプラスチックまたは金属表面は、DNA−分子に対して全く分解作用がないか、または、極めて制限された分解作用しか有していないことが証明された(図4参照)。
【0041】
この実験では、新規のAg/Ru−コーティングをアスコルビン酸、金属イオン、および洗浄剤と組み合わせた場合の特別な相乗効果は、このようにコーティングされた表面上のDNA−分子の安定性試験において示される。この表面上に、所定のDNA−サンプルを汚染として堆積させると、アガロースゲルおよび電気泳動による分析は、30分〜24時間以内の迅速且つ完全な分解を示す。極めて敏感なPCR−技術によるさらなる分析は、堆積させたDNA分子が30分後にはもう検出不可能であることを示している(図6参照)。プラスチック表面上の1つの比較サンプルは、この期間には全くDNA−分解を示していない。従って、新規の生物活性表面は、問題となる生体分子用の自浄式表面の新規のさらなる特性を有している。
【0042】
本発明のさらなる対象は、本発明に係る生物活性装置、コーティング、および金属表面を、衛生状態および水質の保全のために水または水溶液の無菌状態を生成および維持することに利用することに関する。
【0043】
本発明の有効なさらなる実施形態を、従属請求項の対象に明記する。
【0044】
新規の金属表面の高効率な作用は、個々の単一成分が同程度の高効率な作用を示さないことが確認されているだけに、驚くべきことである。
【0045】
まず、銀およびルテニウムから成る金属表面またはコーティングに、少なくとも1つのビタミンまたはその誘導体、および、有利にはさらなる二価または三価の金属イオンおよび/または洗浄剤を積載することによって相乗効果が導かれ、水溶液の細菌除去を加速させると共に効率よく行い、その金属表面またはコーティング上の問題となる生体分子を分解させる。
【0046】
つまり、本発明に従って製造される金属表面またはコーティングは、銀、ルテニウム、および、有利にはアスコルビン酸またはその誘導体を含有している。
【0047】
特に本発明に従って共に用いられるビタミンまたはその塩、若しくは酸誘導体は、酸化防止作用を有する水溶性ビタミン、有利には、ビタミンC、リボフラビン、およびナイアシンから成る群から選択された、1つまたはそれ以上の化合物および/またはその塩である。これは、全溶液に対して約1mM〜1000mMの量、有利には約10mM〜100mMの量で用いられる。
【0048】
アスコルビン酸またはその誘導体とさらなる界面活性物質とから成る薄い層を堆積させることによって、さらに効果を増大させることが可能である。本発明に従って共に使用される界面活性物質は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、若しくは不活性の陽イオン界面活性剤であるか、または、これらを互いに好適に混ぜ合わせた混合物である。特に、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル−スルホン酸塩および/またはアリールスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、両性界面活性剤、ベタイン、アルキルアミドアルキルアミン、アルキル置換されたアミノ酸、アルキル置換されたイミノ酸、アシル化したアミノ酸、および、両性界面活性剤の組み合わせが用いられ得る。基本的に、不活性の全ての界面活性剤が適している。不活性とは、これらが相乗的溶液にも、実験結果にも影響を与えないことを意味している。本発明では、陰イオン界面活性剤および非イオン界面活性剤が好ましい。
【0049】
上記界面活性物質は、全溶液に対して約0.1〜10重量%の量、有利には約0.2〜0.5重量%の量で用いられる。本発明に係る生物活性表面上には、さらに二価および/または三価の金属イオンを堆積させてもよい。これらは、周期表の第4周期、および/または、周期表の副族第I族、第II族、および、第VIII族の金属のイオンである。上記金属イオンは、有機酸および/または無機酸または塩基との塩の形で用いられる。本発明では、副族第VIII族、特に、鉄、コバルト、ニッケル、銅、または亜鉛から選択された、1つまたはそれ以上の化合物が好ましい。
【0050】
上記金属イオンは、全水溶液に対して約1mM〜100mMの量、有利には約5mM〜10mMの量で用いられる。
【0051】
本発明に係る生物活性表面上には、一般的な不活性の補助剤および添加剤をさらに堆積させてもよい。これらは例えば、所定のpH値を設定するために適した緩衝物質であり、例えば、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン)、MES(2−(モルホリノ)エタンスルホン酸)、HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−エタンスルホン酸、MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)、コハク酸の炭酸塩および誘導体である。これら緩衝物質を、全水溶液に対して約1mM〜500mMの量で用いる。
【0052】
本発明に係る生物活性金属表面と水または水溶液との間の接触時間および作用時間としては、通常、室温または少し高い温度で約5〜20分で十分である。これによって、完全な浄化および消毒が可能である。しかしながら、用いる方法を変化させて、それぞれの要件に適合させてもよい。
【0053】
本発明は、衛生−用途のため、および高い水質を得るための、新規の生物活性表面の開発を、銀、ルテニウム、および、アスコルビン酸またはその誘導体から成るコーティングによって可能にするものである。従って、銀技術による浄化および消毒の質を新たに向上させるものであり、これは、抗菌作用をより迅速に作用させると共にこれを長期に亘って持続的に維持可能だからである。同時に、DNA、RNA、またはタンパク質といった活性生体分子が表面に安定な形で堆積することを回避する。
【0054】
本発明を、以下の模範的な図面および実施形態を参照しながら、具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】例えばDNA−分子の分解時のルテニウムとアスコルビン酸との間の特別な相乗効果を示す図である。
【図2A】従来技術に係る他の銀サンプルと比較した、本発明に係る、銀、ルテニウム、およびアスコルビン酸から成るコーティングの高い抗菌作用を示す図である。
【図2B】従来技術に係る他の銀サンプルと比較した、本発明に係る、銀、ルテニウム、およびアスコルビン酸から成るコーティングの高い抗菌作用を示す図である。
【図2C】従来技術に係る他の銀サンプルと比較した、本発明に係る、銀、ルテニウム、およびアスコルビン酸から成るコーティングの高い抗菌作用を示す図である。
【図2D】従来技術に係る他の銀サンプルと比較した、本発明に係る、銀、ルテニウム、およびアスコルビン酸から成るコーティングの高い抗菌作用を示す図である。
【図3A】図2と同一の金属メッキを、再び滅菌水で洗浄して乾燥させた後の、図2と同様の試験を示す図である。
【図3B】図2と同一の金属メッキを、再び滅菌水で洗浄して乾燥させた後の、図2と同様の試験を示す図である。
【図3C】図2と同一の金属メッキを、再び滅菌水で洗浄して乾燥させた後の、図2と同様の試験を示す図である。
【図3D】図2と同一の金属メッキを、再び滅菌水で洗浄して乾燥させた後の、図2と同様の試験を示す図である。
【図4】様々な表面上のDNA−分子の安定性を分析した結果を示す図である。
【図5】特別なコーティングを有する新規の金属表面上の有効なDNA−分解を分析した結果を示す図である。
【図6】DNA−サンプルを本発明に従ってコーティングされた新規の金属表面と様々な時間接触させた後の、DNA−サンプルのPCR−分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、例えばDNA−分子の分解時のルテニウムとアスコルビン酸との間の特別な相乗効果を示す図である。DNA−プラスミド(YEp351)の同一のアリコートを、下記の溶液で2分間処理して、サンプル1−7を得た。その後、このDNA−サンプルを変性させて、一本鎖のDNA−分子をアガロースゲル(1%)上でゲル電気泳動によって分離させた。臭化エチジウムで着色した後、示した図を得た。コントロールは、滅菌水による処理後の無傷のプラスミド−DNAを示す。鎖切断が起こると、該当するDNA−分子の分子量は減少する。このことは、ゲルにおいて、コントロールおよび分子量マーカーと比較することによって測定可能である。5μlの滅菌トリス緩衝液(1mM;pH8.0)中の5μgのDNAを、それぞれ、5μlの下記の溶液と共に、室温で2分間処理して、各サンプル1−7を得た。その後、このサンプルを、5μlの100mMのトリス(pH12)と混合し、ブロモフェノールブルーマーカーを添加して、95°Cで5分間変性させた。この変性したサンプルを、直ちに、4°Cに冷却し、1μgDNAを有するアリコートをゲルレーン毎にそれぞれ添加した。このDNAに、1%のアガロースゲル中でゲル電気泳動を行った後、臭化エチジウムで着色し、写真を撮った。
【0057】
サンプルの説明
M:DNA−マーカー、1kbのラダー
K:コントロール:DNA+5μlの滅菌H2O
1:100mMのアスコルビン酸+10mMのFeCl3
2:10mMのアスコルビン酸+1mMのFeCl3
3:100mMのアスコルビン酸+10mMのRuCl3
4:10mMのアスコルビン酸+1mMのRuCl3
5:100mMのアスコルビン酸+10mMのAgNO3
6:10mMの安息香酸
7:100mMのアスコルビン酸
図2A−Dは、他の銀サンプルと比較した、銀、ルテニウム、およびアスコルビン酸から成る新規のコーティングの高い抗菌作用を示す図である。金属メッキ(直径1.3cm)を、0.5Mのアスコルビン酸−溶液中で培養し、その後、滅菌水で洗浄して乾燥させた。乾燥させた後、このサンプルをそれぞれ、大腸菌標準株Escherichia coli RRIの細菌を105含む1mlの滅菌水中に入れた。生存する細菌の数を、1分、5分、20分、および60分の培養の後に測定して、105〜100まで記載した。
【0058】
サンプル
0:滅菌H2Oのみ
1:純粋な銀メッキ(Ag)
2:ルテニウムを有する銀メッキ(Ag/Ru)
3:金を有する銀メッキ(Ag/Au)
4:パラジウムおよびニッケルを有する銀メッキ(Ag/Pd/Ni)
5:100mMのアスコルビン酸、10mMのFeCl3
6:100mMのアスコルビン酸、10mMのRuCl3
(5+6はそれぞれ、0.3%のSDSおよび0.2%のTween20を有する)。
【0059】
図3A−Dは、図2と同一の金属メッキを、再び滅菌水で洗浄して乾燥させた後の、図2と同様の試験を示す図である。乾燥させた後、各サンプルを再び、大腸菌標準株Escherichia coli RRIの細菌を各105含む1mlの滅菌水中に入れた。生存する細菌の数を、1分、5分、20分、および60分の培養の後に測定して、105〜100まで記載した。
【0060】
サンプル
0:滅菌H2Oのみ
1:純粋な銀メッキ(Ag)
2:ルテニウムを有する銀メッキ(Ag/Ru)
3:金を有する銀メッキ(Ag/Au)
4:パラジウムおよびニッケルを有する銀メッキ(Ag/Pd/Ni)
5:100mMのアスコルビン酸、10mMのFeCl3
6:100mMのアスコルビン酸、10mMのRuCl3
(5+6はそれぞれ、0.3%のSDSおよび0.2%のTween20を有する)。
【0061】
図4は、様々な表面上のDNA−分子の安定性を分析した結果を示す図である。50μlのDNA溶液(25ng/μl)を各表面上に滴下した。24時間後、2μlのアリコートをそれぞれ取って、分析用アガロースゲル中で調べた。DNAに、1%のアガロースゲル中でゲル電気泳動を行った後、臭化エチジウムで着色して、写真を撮った。コントロール−表面には、滅菌プラスチック材料を用いた。
【0062】
ゲルへのロード
K:プラスチック表面のコントロールサンプル
M:マーカー/1kbのラダー
1:アスコルビン酸処理後のAgのDNA−サンプル
2:アスコルビン酸処理後のAg/AuのDNA−サンプル
3:アスコルビン酸処理後のAg/RuのDNA−サンプル
4:アスコルビン酸処理後のPd/NiのDNA−サンプル
図5は、特別なコーティングを有する新規の金属表面上の有効なDNA−分解を分析した結果を示す図である。Ag/Ru−コーティングに、さらに、アスコルビン酸、金属イオン、および洗浄剤から成る薄い層を設けた。このため、100mMのアスコルビン酸、10mMのFeCl3、0.3%のSDS、および、0.2%のTween20を有する溶液を、短時間浸して、水気を取り、乾燥させることによって、表面につけた。その後、50μlのDNA−溶液(25ng/μl)を表面上に滴下した。それぞれ2μlのアリコートを、所定時間後に採取し、このDNAに、1%のアガロースゲル中でゲル電気泳動を行った後、臭化エチジウムで着色して、写真を撮った。コントロール−表面には、滅菌プラスチック材料を用いた。
【0063】
ゲルへのロード
M:マーカー/1kbのラダー
K1:30分後のプラスチック表面のコントロールサンプル
K2:1時間後のプラスチック表面のコントロールサンプル
K3:4時間後のプラスチック表面のコントロールサンプル
K4:24時間後のプラスチック表面のコントロールサンプル
Ab1:30分後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
Ab2:1時間後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
Ab3:4時間後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
Ab4:24時間後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
図6は、DNA−サンプルをコーティングされた新規の金属表面と様々な時間接触させた後の、DNA−サンプルのPCR−分析を示す図である。Ag/Ru−コーティングに、さらに、アスコルビン酸、金属イオン、および洗浄剤を有する薄い層を設ける。このため、100mMのアスコルビン酸、10mMのFeCl3、0.3%のSDS、および、0.2%のTween20を含む溶液を、短時間浸して、水気を取り、乾燥させることによって、表面につけた。その後、50μlのDNA−溶液(0.1ng/μl)を表面に滴下した。各2μlのアリコートを、所定時間の後に取り出して、各50μlのPCR−反応混合物中にピペットで移した。このPCR−反応混合物は、試験−DNA(酵母のscPCP1−Gen)を増幅させるためのプライマー対を含んでいる。コントロール(+/−)は、PCR−反応が成功したかどうかを示している。試験−DNAの780塩基対(Bp)のバンドは、この遺伝子にまだ無傷のDNA分子が存在していることを示している。試験−DNAを完全に除去または破壊する場合、ゲル中では、増幅されたDNA−バンドを検出することはできない。このDNAに、1%のアガロースゲル中でゲル電気泳動を行った後、臭化エチジウムで着色して、写真を撮った。コントロール−表面には、滅菌プラスチック材料を用いた。
【0064】
ゲルへのロード
+:試験−DNAによるPCR−反応の正のコントロール
−:DNAを用いないPCR−反応負のコントロール
M:マーカー/1kbのラダー
K1:30分後のプラスチック表面のコントロールサンプル
K2:1時間後のプラスチック表面のコントロールサンプル
K3:4時間後のプラスチック表面のコントロールサンプル
Ab1:30分後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
Ab2:1時間後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
Ab3:4時間後のコーティングされた表面のDNA−サンプル
【符号の説明】
【0065】
Ag:銀
Ag):純粋な銀メッキ
Ag/Ru):ルテニウム−コーティングを有する銀メッキ
Ag/Au):金−コーティングを有する銀メッキ
Ag/Pd/Ni):パラジウム−コーティングおよび−コーティングを有する銀メッキ
EtBr:臭化エチジウム
K:コントロール
M:分子量マーカー
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
RT:室温
Ru:ルテニウム
sc:出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae、サッカロマイセス・セレヴィシエ)
scPCP1:サッカロマイセス・セレヴィシエ遺伝子(シトクロムcペルオキシダーゼの処理用)
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
YEp351:酵母エピソームプラスミド
【引例】
【0066】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀およびルテニウムを含有する表面を備え、当該表面は、さらに、少なくとも1つのビタミン若しくはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンを含むことを特徴とする、生物活性装置。
【請求項2】
上記銀およびルテニウムを含有する表面は、銀−ルテニウム−接触が、周囲の湿気と接触しているように、形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の生物活性装置。
【請求項3】
上記ビタミンは、酸化防止作用を有する水溶性ビタミンの群から成る少なくとも1つの化合物、または、当該化合物の塩、または、当該化合物の酸誘導体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の生物活性装置。
【請求項4】
上記ビタミンは、アスコルビン酸またはアスコルビン酸の誘導体であることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載の生物活性装置。
【請求項5】
上記金属イオンは、周期表の第4周期、および/または、副族第I族、副族第II族、または副族第VIII族のいずれか1つの金属のイオンであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性装置。
【請求項6】
上記金属は、酸または塩基との塩の形で存在していることを特徴とする、請求項5に記載の生物活性装置。
【請求項7】
上記界面活性物質は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、若しくは、陽イオン界面活性剤の群から成る少なくとも1つの化合物であるか、または、これらの化合物の適した組み合わせであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生物活性装置。
【請求項8】
少なくともルテニウムと、さらに少なくとも1つのビタミン若しくはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンとを含む、特に銀含有表面用の生物活性コーティング。
【請求項9】
銀をさらに含むか、または、ルテニウムの代わりに、銀−ルテニウム−バイメタル−粒子をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の生物活性コーティング。
【請求項10】
上記ビタミンは、アスコルビン酸またはアスコルビン酸の1つの誘導体であることを特徴とする、請求項8または9に記載の生物活性コーティング。
【請求項11】
ルテニウムを含有するコーティングは、最小5〜10nm且つ最大2μmの厚さを有することを特徴とする、請求項8、9、または10に記載の生物活性コーティング。
【請求項12】
上記ルテニウムを含有するコーティングは、クラスタ形に、微孔性に、および/または、微小ひび割れして、形成されていることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の生物活性コーティング。
【請求項13】
銀およびルテニウムを含有する表面を有した装置を用意する、または、装置の銀含有表面上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、装置上に銀−コーティングを堆積させ、その後上記銀−コーティング上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、装置上にルテニウム−銀−粒子を堆積させることと、上記装置の銀およびルテニウムを含有する表面上に、少なくとも1つのビタミン若しくはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンを堆積させることとによって、生物活性装置を製造する方法。
【請求項14】
装置の銀含有表面上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、装置上に銀−コーティングを堆積させ、その後上記銀−コーティングの上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、装置上にルテニウム−銀−粒子を堆積させることと、上記装置の銀およびルテニウムを含有する表面上に、少なくとも1つのビタミン若しくはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンを堆積させることとによって、装置をコーティングする方法。
【請求項15】
上記銀−コーティング、および/または、上記ルテニウム−コーティングが周囲の湿気と接触しているように、上記銀−コーティング、および/または、上記ルテニウム−コーティングを形成する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
上記ルテニウム−コーティングを、最小5〜10nm且つ最大2μmの厚さで堆積させることを特徴とする、請求項13、14、または、15に記載の方法。
【請求項17】
クラスタ形、微孔性、および/または、微小ひび割れしたルテニウム−コーティングを堆積させることを特徴とする、請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
上記銀−コーティングを、2〜10μmの厚さで堆積させることを特徴とする、請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
上記ルテニウム−コーティング、および/または、上記銀−コーティングを、電気化学法、化学的還元法、PVD法、CVD法、スパッタ法、還元法、および、ゾルゲル法によって製造することを特徴とする、請求項13〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
上記銀−ルテニウム−粒子を、互いに金属結合されたバイメタル−粒子として製造することを特徴とする、請求項13〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
上記バイメタル−粒子を、マイクロメータの規模またはナノメータの規模で、有利には50nm未満で製造することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ルテニウム−粒子および銀−粒子を、純粋な金属−粒子として製造し、密着した金属接触を形成して、銀−ルテニウム−粒子を製造することを特徴とする、請求項13〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
上記銀および/または上記ルテニウムの単一金属−粒子を、マイクロメータの規模またはナノメータの規模で、有利には50nm未満で、製造することを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の記載の生物活性装置、および/または、請求項8〜12のいずれか1項に記載の記生物活性コーティングの、水または水溶液の浄化または消毒のための利用。
【請求項1】
銀およびルテニウムを含有する表面を備え、当該表面は、さらに、少なくとも1つのビタミン若しくはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンを含むことを特徴とする、生物活性装置。
【請求項2】
上記銀およびルテニウムを含有する表面は、銀−ルテニウム−接触が、周囲の湿気と接触しているように、形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の生物活性装置。
【請求項3】
上記ビタミンは、酸化防止作用を有する水溶性ビタミンの群から成る少なくとも1つの化合物、または、当該化合物の塩、または、当該化合物の酸誘導体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の生物活性装置。
【請求項4】
上記ビタミンは、アスコルビン酸またはアスコルビン酸の誘導体であることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載の生物活性装置。
【請求項5】
上記金属イオンは、周期表の第4周期、および/または、副族第I族、副族第II族、または副族第VIII族のいずれか1つの金属のイオンであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性装置。
【請求項6】
上記金属は、酸または塩基との塩の形で存在していることを特徴とする、請求項5に記載の生物活性装置。
【請求項7】
上記界面活性物質は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、若しくは、陽イオン界面活性剤の群から成る少なくとも1つの化合物であるか、または、これらの化合物の適した組み合わせであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生物活性装置。
【請求項8】
少なくともルテニウムと、さらに少なくとも1つのビタミン若しくはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンとを含む、特に銀含有表面用の生物活性コーティング。
【請求項9】
銀をさらに含むか、または、ルテニウムの代わりに、銀−ルテニウム−バイメタル−粒子をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の生物活性コーティング。
【請求項10】
上記ビタミンは、アスコルビン酸またはアスコルビン酸の1つの誘導体であることを特徴とする、請求項8または9に記載の生物活性コーティング。
【請求項11】
ルテニウムを含有するコーティングは、最小5〜10nm且つ最大2μmの厚さを有することを特徴とする、請求項8、9、または10に記載の生物活性コーティング。
【請求項12】
上記ルテニウムを含有するコーティングは、クラスタ形に、微孔性に、および/または、微小ひび割れして、形成されていることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の生物活性コーティング。
【請求項13】
銀およびルテニウムを含有する表面を有した装置を用意する、または、装置の銀含有表面上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、装置上に銀−コーティングを堆積させ、その後上記銀−コーティング上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、装置上にルテニウム−銀−粒子を堆積させることと、上記装置の銀およびルテニウムを含有する表面上に、少なくとも1つのビタミン若しくはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンを堆積させることとによって、生物活性装置を製造する方法。
【請求項14】
装置の銀含有表面上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、装置上に銀−コーティングを堆積させ、その後上記銀−コーティングの上にルテニウム−コーティングを堆積させる、または、装置上にルテニウム−銀−粒子を堆積させることと、上記装置の銀およびルテニウムを含有する表面上に、少なくとも1つのビタミン若しくはビタミンの少なくとも1つの誘導体、少なくとも1つの界面活性物質、および/または、少なくとも1つの二価または三価の金属イオンを堆積させることとによって、装置をコーティングする方法。
【請求項15】
上記銀−コーティング、および/または、上記ルテニウム−コーティングが周囲の湿気と接触しているように、上記銀−コーティング、および/または、上記ルテニウム−コーティングを形成する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
上記ルテニウム−コーティングを、最小5〜10nm且つ最大2μmの厚さで堆積させることを特徴とする、請求項13、14、または、15に記載の方法。
【請求項17】
クラスタ形、微孔性、および/または、微小ひび割れしたルテニウム−コーティングを堆積させることを特徴とする、請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
上記銀−コーティングを、2〜10μmの厚さで堆積させることを特徴とする、請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
上記ルテニウム−コーティング、および/または、上記銀−コーティングを、電気化学法、化学的還元法、PVD法、CVD法、スパッタ法、還元法、および、ゾルゲル法によって製造することを特徴とする、請求項13〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
上記銀−ルテニウム−粒子を、互いに金属結合されたバイメタル−粒子として製造することを特徴とする、請求項13〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
上記バイメタル−粒子を、マイクロメータの規模またはナノメータの規模で、有利には50nm未満で製造することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ルテニウム−粒子および銀−粒子を、純粋な金属−粒子として製造し、密着した金属接触を形成して、銀−ルテニウム−粒子を製造することを特徴とする、請求項13〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
上記銀および/または上記ルテニウムの単一金属−粒子を、マイクロメータの規模またはナノメータの規模で、有利には50nm未満で、製造することを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の記載の生物活性装置、および/または、請求項8〜12のいずれか1項に記載の記生物活性コーティングの、水または水溶液の浄化または消毒のための利用。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【公表番号】特表2010−505618(P2010−505618A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531741(P2009−531741)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008564
【国際公開番号】WO2008/046513
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(509102177)エージーエックスエックス インテレクチュアル プロパティー ホールディング ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008564
【国際公開番号】WO2008/046513
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(509102177)エージーエックスエックス インテレクチュアル プロパティー ホールディング ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
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