説明

ルピナスのタンパク質に基づく代替乳製品を製造するための改良方法

本発明は、以下の段階を含む、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を調製するための方法に関する:(a)アルカリ性条件を用いてルピナス粉からタンパク質を可溶化する段階、(b)可溶化されたタンパク質を沈殿させる段階、(c)段階(b)の沈殿したタンパク質を可溶化する段階であって;これらから、(a)ルピナス由来のタンパク質強化調製品を希釈する段階、(b)所望の感覚刺激と栄養的特性を得るために、脂肪、炭水化物、および白化成分を混合する段階を通じて、ルピナス乳液および派生産物を製造する段階。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はルピナスのタンパク質の精製と濃縮ための改良方法に関するものであり、とりわけ、ヨーグルト、アイスクリーム、およびチーズのような加工乳製品の代替品となる派生産物の製造に用いるのに適する、ルピナスタンパク質の分散液の形態である、ルピナスのタンパク質に基づく代替乳製品を製造するための改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ルピナスは種子のなるマメ科の植物であり、地中海性気候環境における穀物輪作の中心にある有用な区切り作物である。ルピナスの種子は栄養価の高いタンパク質に富むが、相対的に脂肪価は低い。前述の試みは、大豆由来の代用乳製品(以下、「豆乳」、「豆乳製品」とよぶ)に類似の、牛乳に似た代用乳製品を製造するためにルピナスの種子を加工するために行われる。
【0003】
これら多くの試みは、望ましくない非栄養物質、特にアルカロイド、およびある種の多糖を除去するための前処理過程を含む(例えば、EP 084 547はルピナスの種子を脱苦味する(debitter)ために抽出剤として水を使う事を記述している)。植物の育成者は市販用のルピナスの種子の品質を向上させてきており、最新の市販用の(「甘い」)ルピナスの品種においてはこれら望ましくない非栄養(苦味)物質の濃度を減少させ、ルピナスの加工のための苦味除去の重要性が減少している。
【0004】
EP 449 396はルピナス乳液を調製するための過程を記述しており、これは豆乳生産のために大豆を加工する際に用いられる方法の一つを反映している。浸漬されたルピナスの種子をひき、水中でかき混ぜて厚いペーストにし、タンパク質を含んだルピナス乳液を押し出す。この結果できた乳液は、食料品の調理ための原材料として意図される。しかしながらこの過程の主な不都合な点は、産物は静止すると、上述の水溶性の非栄養物質を含むざらついた黄色い沈殿物の上に位置する半透明の乳清へと分離する事である。この産物を人が消費すると、臭い、視覚、触感、味覚の不満足な反応という結果、ならびに消化系の不整と鼓腸が報告されている(Kyle, 1994)。この産物はそれ自体は食物、派生産物の成分の利用には適さず(Camacho, et al., 1988; Zhang et al., 2000)、そのようなものとして商用規模では開発されていない。
【0005】
マメ科の植物からタンパク質を抽出するための現存する方法の多くは、薄片にされた種子から油分を除去するために有機溶媒を用いて脱脂する工程を組み入れている。こうした溶媒の使用は高価で潜在的には環境面で危険であり、植物性タンパク質に基づく乳製品の健康的な印象を損なう可能性がある。
【0006】
大豆のために開発された、他のタンパク質抽出方法(例えば、US 4,241,100)はルピナスには適用できない。
【0007】
乳、ならびにチーズ、ヨーグルト、およびアイスクリームのような乳派生製品の代用品として用いられる可能性のある、ルピナス種子由来のタンパク質調製品を製造するために、単純で費用効率が良く、迅速な手法を提供するという商業的な需要がなおある。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明はルピナス乳液とその派生製品における使用に適した、ルピナス由来の(lupin-sourced)タンパク質強化調製品を調製するための方法であって、以下の段階を含む方法に関する:(a)アルカリ性の条件を用いてルピナス粉からタンパク質を可溶化する段階、(b)可溶化したタンパク質を沈殿させる段階、および(c)段階(b)で沈殿したタンパク質を可溶化する段階。タンパク質強化調製品が段階(c)において可溶化されると、その調製品のpHは約6から7.5の間に調整される。
【0009】
好ましい形態として、本発明はルピナス乳液とその派生産物における使用に適する、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造するための方法に属しており、この方法は以下の段階を含む:(a)ルピナス原料を選択し、ルピナス粉を製造する物質を製粉する段階;(b)アルカリ条件を用いてルピナス粉のタンパク質を可溶化する段階;(c)沈殿から上清を分離する段階;(d)段階(c)で産生される上清から可溶性タンパク質を沈殿させる段階;(e)上清から沈殿を分離する段階;(f)沈殿したタンパク質を分離する段階;(g)ルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造するために、可溶化されたタンパク質調製品のpHを約6から7.5の間に調整する段階。
【0010】
本発明はまた、本明細書において記述された方法のいずれか一つによって産生される、ルピナス由来のタンパク質強化調製品にも関連する。
【0011】
加えて、本発明は乳製品または豆乳製品の代用品となるような、ルピナス乳液および/またはルピナス乳液の派生産物を製造する方法を提供し、この方法は以下の段階を含む:
(a)本明細書において記述された方法によりルピナス由来のタンパク質強化調製品を調製する段階;
(b)乳製品を調製するのに適した濃度にルピナス由来のタンパク質強化調製品を希釈する段階;および
(c)乳液を製造するのに必要な希釈調製品に、脂肪;油;炭水化物;塩;乳化剤;ビタミン;および着色剤からなる群より選択される産物を加える段階。
【0012】
さらに、本発明はルピナス由来のタンパク質強化調製品を用いて製造したルピナス乳液に関する。本明細書において記述された方法によって産生されるルピナス乳液とルピナス乳製品は、他のルピナスおよび大豆に基づく製品と比較して、外観、味、質感、そして全般的な美味しさに関して非常に満足できることが見いだされている。そのようなものとして、これらはヨーグルト、チーズ、およびアイスクリームのような乳および乳製品、ならびに豆乳およびヨーグルト、チーズ、およびアイスクリームの代用となる豆乳関連製品の代替品または選択肢として明らかな商業的用途がある。
【0013】
発明の詳細の説明
概要
当業者は、本明細書に記述された本発明がこれらの具体的に記述された以外の変化および改変を受け入れる余地がある事を認識する。本発明がそのような変化および改変の全てを含む事は了解される。また、本発明は、個々にまたは一括して、本明細書の中で言及または意図されている、全ての段階、特徴、組成物、および化合物、ならびに任意のおよび全ての組み合わせまたは段階や特徴の任意の二種類もしくはそれ以上を含む。
【0014】
本発明は、本明細書に記述された、例示のみを目的として意図された特定の態様によって範囲を限定されない。機能的に同等な製品、組成、および方法は明らかに本明細書に記述された本発明の範囲内に含まれる。
【0015】
本明細書において引用された刊行物(特許、特許出願、学術論文、研究室のマニュアル、書物、もしくはそれ以外の資料)の全ての開示は、参照により本明細書に組み入れられる。いかなる引例も、先行技術を構成とするか、もしくは本発明に関連する分野における当業者の共有の一般的な知識の一部であるとは認められない。
【0016】
本明細書において用いられる場合、「由来する、派生する(derived)」「〜に由来する、派生する(derived from)」という用語は、特定の完全体(integer)が、必ずしもその起源から直接ではないが、特定の起源より得られることを示すと見なされる。
【0017】
本明細書の全体を通して、文脈上必要とされない限り、「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」や「含んでいる(comprising)」のような変形は、提示された完全体または完全体の群を含むと理解されるが、その他のいかなる完全体または完全体の群を排除するものではない。
【0018】
本明細書で用いられている選択された用語の他の定義は、本発明の詳細な記述の中に見ることができ、全体を通して適用される。特に定義されない限り、本明細書で用いられている全ての科学技術用語は、本発明が属している分野の当業者に一般に理解されて用いられているのと同じ意味を持つ。
【0019】
好ましい態様の説明
本発明者は、本明細書において記述された下記の方法により、食品産業において広範囲に渡る応用性がある新規のルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造する事ができると見出した。好ましくは、その製品はルピナス乳液の調製において用いられる。ルピナス乳液は乳もしくは豆乳の代用品として用いることができ、また、ヨーグルト、チーズ、およびアイスクリームを含むがそれらに限定されない、幅広い製品を製造するために利用できる。
【0020】
一つの局面において、本発明は、ルピナス乳液と派生産物における使用に適した、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造する方法に属しており、この方法は以下の段階を含む:
(a)アルカリ性条件を用いてルピナス粉からタンパク質を可溶化する段階;
(b)可溶化したタンパク質を沈殿させる段階;および
(c)段階(b)の沈殿したタンパク質を可溶化する段階。
【0021】
タンパク質強化調製品が段階(c)によって可溶化されると、調製品のpHは約6から7.5の間に調整される。結果として得られた産物は、乳製品と豆乳製品の代用品として特定の用途のルピナス乳液およびルピナス乳製品を調製するために用いることができる。
【0022】
好ましい態様により、本発明は、ルピナス乳液とその派生産物の調製における用途に適した、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造するための方法を提供し、この方法は以下の段階を含む:
(a)ルピナス原料を選択してこの原料を製粉し、ルピナス粉を製造する段階;
(b)アルカリ性条件を用いてルピナス粉中のタンパク質を可溶化する段階;
(c)沈殿から上清を分離する段階;
(d)段階(c)で産生した上清から可溶化されているタンパク質を沈殿させる段階;
(e)上清から沈殿を分離する段階;
(f)沈殿したタンパク質を可溶化する段階;および
(g)可溶化されたタンパク質の調製品のpHを約6から7.5の間に調整して、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造する段階。
【0023】
好ましくは、段階(d)において、可溶化されたタンパク質を沈殿させるために酸性溶液を加える。酸性溶液は調製品のpHを約3から5.5の間に調製するべきである。
【0024】
好ましくは、段階(f)において、沈殿したタンパク質を可溶化するためにアルカリ性溶液が加えられる。アルカリ性溶液は調製品のpHを約8から10の間に調整するべきである。
【0025】
さらに好ましい態様により、本発明はルピナス乳液と派生産物を調製する用途に適した、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造するための方法を提供し、前記方法は以下の段階を含む:
(a)ルピナス原料を選択してその原料を製粉し、ルピナス粉を製造する段階;
(b)アルカリ性条件を用いてルピナス粉中のタンパク質を可溶化する段階;
(c)沈殿から上清を分離する段階;
(d)pHを約3から5.5の間に調整できる酸性溶液を用いて、段階(c)で産生した上清から可溶化されているタンパク質を沈殿させる段階;
(e)上清から沈殿を分離する段階;
(f)pHを約8から10の間に調整できるアルカリ性溶液を用いて、沈殿したタンパク質を可溶化する段階;および
(g)段階(f)で調整された溶液のpHを約6から7.5の間に調整して、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造する段階。
【0026】
ルピナス乳液もしくはルピナス乳液の派生産物を製造する際は、ルピナス由来のタンパク質強化調製品はまず上記方法のいずれか一つによって調製される。ルピナス乳液および/または派生産物を製造するために、脂肪、油、炭水化物、乳化剤、塩、ビタミン、および着色剤が適量添加された後、ルピナス由来のタンパク質強化調製品の濃度を3%から5%(w/v)の間に調整する。
【0027】
本発明の本質から離れる事無く、本発明に対して様々な改変がなされうる。以下の記述は本発明を理解するのに役立つよう提供するが、本発明を形成する方法の制限として読むべきではない。
【0028】
例えば、ルピナス乳製品における用途に適しているような、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造する際の第1段階は、ルピナス原料からルピナス粉を調製する事である。好ましくは、本方法で用いられるルピナス原料は葉が細く甘いルピナス(アオバナルーピン(Lupins angustifolius))から得られるが、他種のルピナスも用いることができ、例えばシロバナルピナス(Lupinus albus)、キバナハウチワマメ(Lupinus luteus)、ザッショクノボリフジ(Lupinus mutabilus)から得ることもできる。本明細書において用いられる場合、「ルピナス原料」とは、ルピナスの仁に限定されず、むしろすりつぶしてルピナス粉を形成することができる、任意の加工されたルピナス原料を含む(例えば、部分的に加工されたルピナスの仁)。しかしながら、ルピナスの仁が、本方法のためにもっとも望ましい出発原料である。ルピナス原料がルピナスの仁である場合、仁はまず皮をきれいに剥かれる。
【0029】
ルピナス原料を選択した後、それらの原料はルピナス粉を製造するために製粉される。「ルピナス粉」とは、粉末状のルピナス原料を指する。これは穀粉と同様、様々な大きさの粒状の原料を含む。好ましくは、ルピナス原料は、約200から600マイクロメートルの間の粒子サイズを持つ粉単位(course meal)を製造するようにひかれる。さらに好ましくは、ルピナス原料をひいて、穀粉および粒状の原料組成物を製造する。
【0030】
ルピナス粉を調製すると、液体と粉の比率が5:1から20:1(v/w)、好ましくは10:1(v/w)の範囲で溶液を調製するために、その粉は水などの溶液に穏やかに混合されるべきである。ルピナス粉を混合するのに適した液体は、例えばろ水、滅菌、精製水、脱イオン水、および二重脱イオン水(double deionized water)である。
【0031】
ルピナス粉の混合物は、アルカリ性溶液を加える事によって約pH8から12の間に調整される。好ましくは、溶液はpHを約8.5から9.5の間、例えばpH9.0に調製される。アルカリ性溶液を加える際は、ルピナス粉の混合物は穏やかに撹拌されるべきである。混合している間は、泡立たないように注意するべきである。任意のアルカリ性溶液がルピナス粉中のタンパク質を可溶化するために用いられうるが、好ましいアルカリ性溶液は水酸化ナトリウム(NaOH)である。または、例えば水酸化アンモニウムもしくは水酸化カリウムのようなアルカリ金属の水酸化物を用いることができる。
【0032】
ルピナス粉を可溶化するために用いるアルカリ性溶液の濃度は、用いるアルカリ性溶液による。理想的には、アルカリ性溶液の濃度は約0.1Mから10Mの間である。アルカリ性溶液がNaOHである場合、その溶液の濃度は約1Mである。
【0033】
混合の間、ルピナス粉の混合物とアルカリ性溶液の溶液は、約0℃から40℃の間の温度に保たれるべきである。好ましくは、溶液は約10℃から30℃の温度に保たれる。さらに好ましくは、溶液の温度は、例えば部屋の温度の様に、約20℃から25℃の間に保たれる。
【0034】
アルカリ溶液と共にルピナス粉の混合物を混合した後、得られるスラリー(slurry)は選択されたpHと選択された温度に少なくとも60分間は保たれる。さらに好ましくは、スラリーは選択されたpHと選択された温度に少なくとも90分間は保たれる。
【0035】
次に、上清(可溶化されたタンパク質を含む)は、例えばろ過や遠心分離などの従来の分離過程により、沈殿(炭水化物の実質的な部分を含む)から分離される。好ましくは、上清は遠心分離によって沈殿から分離される。
【0036】
上清が沈殿から分離されたら、可溶性の糖類と塩類が溶液中にある状態のままで上清からルピナスのタンパク質を分離するよう、上清のpHは調整される。これは上清に酸性溶液を加える事により実現できる。本発明における使用に適した酸性溶液は以下が可能であるものである:(a)可溶化したタンパク質を分解すること無く沈殿させること;および(b)哺乳類による消費に関して安全な産物を生じること。例えば、その酸性溶液は塩酸もしくは酢酸であってもよいが、前述の条件を満たす任意の無機もしくは有機酸も用いることができる。タンパク質を沈殿するためには、可溶化されたタンパク質画分のpHはpH3.0から5.5の間に調整され、さらに好ましくは、約pH3.5〜5の間のpHに調整される。本発明の例においては、pHは4.5に調整される。
【0037】
混合中、溶液は約0℃から40℃の間の温度に保たれるべきである。好ましくは、その溶液は約10℃から30℃の温度に保たれる。さらに好ましくは、その溶液の温度は約20℃から25℃に保たれる。例えば、その溶液は室温に保たれる。
【0038】
ルピナスのタンパク質は酸性のpHでは不溶のため、遠心分離やその他の従来の方法により、可溶性の砂糖、塩などから分離できる。
【0039】
ルピナスのタンパク質が溶液から沈殿させると、その後、沈殿したタンパク質は水中もしくは水様の液体の中で約10:1w/vの液体/沈殿の比率で溶液を調製するために懸濁される。ルピナスのタンパク質と共に混合するのに適した液体は、例えばろ水、滅菌水、精製水、脱イオン水、および二重脱イオン水を含む。
【0040】
沈殿したタンパク質が水もしくは水様の液体の中で混合された後、その溶液のpHは約8から10の間に上昇する。好ましくは、その溶液のpHは8.5から9.5の間、例えばpH9.0に上昇する。アルカリ性溶液を加える場合は、その溶液は穏やかに撹拌されるべきである。ルピナス粉中のタンパク質を可溶化するために、任意のアルカリ性溶液を用いることができるが、用いる水性の好ましいアルカリ性溶液は水酸化ナトリウム(NaOH)である。または、例えば水酸化アンモニウムもしくは水酸化カリウムのようなアルカリ金属の水酸化物を用いることができる。
【0041】
混合の間、溶液は約0℃から40℃の間の温度に保たれるべきである。好ましくは、その溶液は約10℃から30℃の温度に保たれるべきである。さらに好ましくは、その溶液の温度は約20℃から25℃の間に保たれるべきである。例えば、その溶液は室温に保たれる。
【0042】
適切なアルカリ性条件に達したら、残存する任意の不溶物質を除去するために、その溶液を再び遠心分離もしくはろ過することができる。その後、その溶液のpHは必要に応じてpH6から7の間に調整される。
【0043】
第二の局面において、本発明は上記の方法に従って産生される、ルピナス由来のタンパク質強化調製品に属する。
【0044】
記載された方法により産生される、ルピナス由来のタンパク質強化調製品は、食品産業において多くの応用がある。例えば、ルピナス由来のタンパク質強化調製品は:
(a)ルピナス乳液もしくはルピナス乳製品を製造するために;
(b)乳化剤や乳化安定剤として;
(c)脂肪もしくは水を結合する能力があり、他のタンパク質単離体と類似の結合剤として;
(d)風味が少ないという特徴、水および脂肪の吸収、ならびに乳化(分散形態)が必要な用途;
(e)凍結融解サイクルのような、製品にストレスを加える条件下で食品を保護するために;または
(f)加熱処理もしくは調理済み製品の保持時間を延長するために
用いることができる。
【0045】
第三の局面として、本発明はルピナス由来のタンパク質強化調製品を用いてルピナス乳製品を調製するための方法を提供する。上述のタンパク質強化調製品を用いて産生されたルピナス乳液とルピナス乳製品は、大幅に改善した感覚的な魅力(特に、白色不透明、滑らかな質感、無臭、魅力的な味覚)と、ルピナスの種子から代替乳製品を製造しようとする前述の試みに始まる、製品における最終用途の汎用性がある。
【0046】
したがって、本発明は乳もしくは豆乳の代用品として役立つ可能性のあるルピナス乳液を調製する方法を提供し、この方法は以下の段階を含む:
(a)上述された任意の方法により産生された、ルピナス由来のタンパク質強化調製品の濃度を3%から5%(w/v)の間に調整する段階;ならびに
(b)段階(a)で調整された溶液と、風味のない植物性脂肪および/もしくは油を、乳製品を調製するのに適した量で混合する段階。
【0047】
段階(b)で用いられる脂肪もしくは油の量は、必要とされる産物の種類によって変更してもよい。例えば、約3.5%(w/v)まで脂肪または油を「全乳製(full cream)」乳液のために用いる。
【0048】
また、マルトデキストリンと、グルコースおよび/またはスクロースのような糖を含む炭水化物も混合物に加えることができる。例えば、溶液に加えられる炭水化物の量は約3%(w/v)である。
【0049】
もしラクトース無しの製品が必要なければ、ラクトースもまた加えることができる。ラクトースの添加は、ヨーグルト生産を容易にするために用いることができる。
【0050】
また、植物性の乳化剤、例えばレシチン、ならびに無機塩、例えば塩化ナトリウムおよびカルシウム、マグネシウムおよびカリウムのリン酸塩を含む、他の添加物も加えることができる。製品の外観を改善するために、食品用着色剤もまた用いることができる。また、ビタミンも加えることができる。
【0051】
脂肪、油、炭水化物、およびその他の添加物のような追加の成分を提供するのに都合が良く単純な方法は、コーヒー用クリーム(coffee whitner)、非乳性クリーム、または同様なものを、ルピナス乳液を製造するための希釈したルピナス由来のタンパク質強化調製品に加えることである。例えば、簡便に植物性脂肪、植物性乳化剤、炭水化物、無機物、および食品色素を提供するために、Coffee-mate(登録商標)を使うことができる。
【0052】
上記方法により産生されたルピナス乳液は、好ましくは包装される前に均質化され低温殺菌される。
【0053】
ルピナス由来のタンパク質強化調製品が乳または豆乳の代用品の調製において用いられない場合、その調製品はゲル状もしくは他の液体との乳濁液として調製することができる。この方法で調製された場合、本発明は食材、飲料(例えば、栄養飲料、スポーツ飲料)、および動物飼料の成分として有用性を見いだせる。例えば、ベビーフード、パン製品(例えば、パン、酵母製品、ケーキ)またはパンの補助製品(例えば、カスタード、パンの具、もしくはトッピング)、バターもしくはパン粉、シリアル、菓子類、香料、飲料の乳剤、果物の具、グレイビーソース、スープ、ソース(例えば、ミートソース)もしくは食品用増粘剤、超高温処理(UHT)グレイビーソース、食事成分(例えば、菜食主義者用の食事/成分)、肉製品(例えば、挽肉製品、ソーセージ、ハンバーガー、直火焼きステーキ、缶詰肉、ミートパイ、魚類調製品、ミートパテ、ミートスプレッド、およびペースト)、ピザのトッピング、ペットフード、薬剤もしくは栄養補助食品、ジャガイモ製品、ドレッシング(例えば、サラダ用もしくは低脂肪ドレッシング)、軽食もしくはクラッカースプレッド(例えば、香りのよいもしくは甘みがあるスプレッド)、パスタ製品(例えば、麺類)、脂肪に満ちた粉、キッシュもしくはフラン、チーズもしくはクリーム模倣物、ならびに本発明の記載内に具体的には詳述されていないその他の代替乳製品(例えば、デザート、風味付き乳飲料(flavoured milk)、ミルクシェーク、チーズ、チーズスプレッド、もしくはディップ)の成分として、乳濁液および/またはゲルを用いることができる。
【0054】
発明を実施するための記載
以下の記載は、上記の発明を準備する方法をより十分に説明するために役立ち、さらに本発明の様々な局面を実施するために意図された最良の形態を説明するのにも役立つ。この記載は決して本発明の正確な適用範囲を制限するものではなく、むしろ例示目的のみのために提示されることが理解されるべきである。
【0055】
「全乳製の」ルピナス乳液の調製
ルピナス粉をL. angustifolius var Myallieの種子を挽くことにより調製した。100gの粉に対し、1Lのろ水が加えられ穏やかに撹拌した。その混合物のpHは1MのNaOHを加えることによってpH9に調整した。その混合物を室温下で少なくとも90分間撹拌した(おおよそ25℃)。
【0056】
その後、その混合物は目の細かい布フィルターを通してろ過され、ろ液が集められた。ろ液のpHは1MのHClを加えることによりpH4.5に調整した。その後、その溶液を8,000Gで15分間遠心分離し、その上清を除去した。
【0057】
沈殿したタンパク質沈殿物は1Lの水の中で懸濁し、そのpHは1MのNaOHを加えることによりpH9に調整した。室温下(おおよそ25℃)で少なくとも30分間撹拌した後、そのpHは1MのHClを加えることによりpH6.5に調整した。
【0058】
上記のルピナスのタンパク質溶液を撹拌しながら約60℃に加熱した。約110gのCoffee-mate(登録商標)を加え、その混合物を温度が85℃に上がるように撹拌した。その溶液を滅菌された脱脂綿を通してろ過し、5℃まで冷やした。
【0059】
一つの製品中に植物性脂肪、植物性乳化剤、炭水化物、無機物、および食品色素を簡便に提供するために、Coffee-mate(登録商標)を用いた。
【0060】
「低カロリーの(light)」ルピナス乳液の調製
代替乳としてのルピナス乳液は上記と同様の方法で調製されるが、代替乳の「低カロリーの」種類を製造するためには、Coffee-mate(登録商標)を70gだけ添加した。
【0061】
ルピナス「ヨーグルト」の調製
250mLのルピナス乳液と17gの脱脂粉乳の粉もしくは17gのCoffee-mate(登録商標)を十分に混合し、約90℃に加熱した。その混合物は約45℃に冷却してよく、25gの市販のヨーグルトをスタータ・カルチャー(starter culture)として加えた。ヨーグルトは40℃で一晩おいた。その後ヨーグルトは必要になるまで冷蔵保存した。
【0062】
ルピナス「アイスクリーム」の調製
200mLの上記ルピナス乳液、60gの植物性脂肪(油)、150gのスクロース、10mLの1%(w/v)カラギーナン1型(carrageenan type 1)、170mLの水を十分に混合した。イチゴのトッピングとレモン果汁を風味として加えた。その混合物を2分間撹拌し、その後冷凍庫に置いた。混合物を2時間の間30分毎に2分間撹拌した。その後は必要になるまで冷凍した。
【0063】
本発明の製品試験
上記の工程により調製されたルピナスタンパク質に基づく乳液と、その後に記述された工程により調製されたヨーグルトを、30人の試食者が食べた。
【0064】
試食者全員がルピナスタンパク質に基づく乳液は外観、味、質感、および全体の美味しさの点で好ましいとした。29人の試食者が、ルピナス製品は試食手順に含まれる二つの市販の豆乳製品より優れていると述べた。
【0065】
30人の試食者全員がルピナス乳液から調製したヨーグルトは市販の大豆に基づくヨーグルト製品より優れていると見なした。
【0066】
参考文献


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルピナス由来の(lupin-sourced)タンパク質強化調製品を調製するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)アルカリ性条件下でルピナス粉からタンパク質を可溶化する段階;
(b)該可溶化されたタンパク質を沈殿させる段階;および
(c)段階(b)で沈殿したタンパク質を可溶化する段階。
【請求項2】
段階(a)で用いられるアルカリ性条件のpHが約8から12の間である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
段階(c)でタンパク質沈殿物が可溶化された後、段階(c)における溶液のpHが約6から7.5の間に調整される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ルピナス乳液とその派生産物を調製する用途に適した、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)ルピナス原料を選択し、ルピナス粉を製造するために該原料を製粉する段階;
(b)アルカリ性条件を用いて該ルピナス粉中のタンパク質を可溶化する段階;
(c)沈殿物から上清を分離する段階;
(d)可溶化されたタンパク質を、段階(c)で産生された上清から分離する段階;
(e)該上清から沈殿物を分離する段階;
(f)沈殿したタンパク質を可溶化する段階;および
(g)ルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造するため、段階(f)において産生された可溶化したタンパク質の調製品のpHを約6から7.5の間に調整する段階。
【請求項5】
段階(c)で産生された上清中のタンパク質を、溶液のpHを約3.0から5.5の間に調整することのできる酸性溶液を用いて、段階(d)において沈殿させる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
段階(e)で産生されたタンパク質の沈殿物を、溶液のpHを約8.0から10の間に調整することのできるアルカリ性溶液を用いて、段階(f)において可溶化する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
ルピナス乳液とその派生産物を調製する用途に適した、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)ルピナス原料を選択し、ルピナス粉を製造するために該原料を製粉する段階;
(b)アルカリ性条件を用いて該ルピナス粉中のタンパク質を可溶化する段階;
(c)沈殿から上清を分離する段階;
(d)該溶液のpHを約3.0から5.5の間に調整することのできる酸性溶液を用いて、可溶化されたタンパク質を段階(c)で産生された上清中から沈殿させる段階;
(e)該上清から沈殿物を分離する段階;
(f)該溶液のpHを約8.0から10の間に調整することのできるアルカリ性溶液を用いて、沈殿したタンパク質を可溶化する段階;および
(g)段階(f)で産生された可溶化したタンパク質調製品のpHを、pH約6から7.5の間に調整して、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を製造する段階。
【請求項8】
ルピナス乳液とルピナス乳液の派生産物を調製する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)請求項1から7のいずれか一項記載の方法により、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を調製する段階;
(b)乳製品を調製するのに適した濃度に調製品を希釈する段階;および
(c)脂肪、油、炭水化物、乳化剤、塩、ビタミン、および着色剤からなる群より選択される、乳液の生産に適した産物を、希釈した調製品に加える段階。
【請求項9】
ルピナス乳液を製造するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)請求項1から7のいずれか一項記載の方法により、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を調製する段階;
(b)ルピナス由来のタンパク質の濃度が約3%から5%(w/v)である溶液を製造するために、ルピナス由来のタンパク質強化調製品を希釈する段階;
(c)乳製品を調製するのに適した量の、風味のない植物性脂肪および/または油を、段階(b)で調製した溶液と混合する段階。
【請求項10】
濃度を2.5%から5%(w/v)の間に調整するために脂肪および/または油を加える、請求項9記載の方法。
【請求項11】
濃度を3.5%(w/v)の間に調整するために脂肪および/または油を加える、請求項10記載の方法。
【請求項12】
段階(c)において、乳液の調製に適した炭水化物を濃度約1%から5%(w/v)の間で溶液に加える、請求項9記載の方法。
【請求項13】
段階(c)において、乳液の調製に適した炭水化物を濃度約3%(w/v)で溶液に加える、請求項12記載の方法。
【請求項14】
添加される炭水化物の一つがラクトースである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
請求項1から7のいずれか一項記載の方法により調製される、ルピナス由来のタンパク質強化調製品。
【請求項16】
以下の段階を含む、ルピナス乳液を製造する方法:ルピナス乳液を製造するために、請求項15記載のルピナス由来のタンパク質強化調製品に、コーヒー用クリーム(coffee whitner)、非乳性クリーム、または同様なものを加える段階。
【請求項17】
コーヒー用クリーム、非乳性クリーム、または同様なものがCoffee-mate(登録商標)である、請求項13記載の方法。
【請求項18】
請求項1から6のいずれか一項記載の方法であって、ルピナス粉がアオバナルーピン(Lupinus angustifolius)、シロバナルピナス(Lupinus albus)、キバナハウチワマメ(L. luteus)、およびザッショクノボリフジ(L. mutabilus)からなる群より選択される、ルピナス種から得られる方法。
【請求項19】
請求項1から14または16から18のいずれか一項記載の方法であって、ルピナス粉が細い葉の甘いルピナス種(sweet lupin)であるアオバナルーピンから得られる方法。

【公表番号】特表2006−524041(P2006−524041A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504015(P2006−504015)
【出願日】平成16年4月20日(2004.4.20)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000515
【国際公開番号】WO2004/093560
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(505395607)ザ ステイト オブ ウエスタン オーストラリア スルー イッツ デパートメント オブ アグリカルチュア (1)
【Fターム(参考)】