説明

ルミネッセント大環状ランタニド錯体

本発明は、新規な部類の大環状化合物、ならびに金属(例えば、ランタニド)イオンと本発明の化合物との間で形成された錯体を提供する。好ましい錯体は、第2の活性化剤を必要とすることなく、水性媒体においてランタニドイオンルミネッセンスの高い安定性と高い量子収量を示す。好ましい化合物は、その大環状構造中にヒドロキシイソフタルアミド部分を組み込んでおり、抗体やタンパク質などの様々なポリペプチドとの驚くほど低い非特異的結合ならびに高い動力学的安定性を特徴とする。これらの特徴は、上記化合物を、既知の開いた構造のリガンドに対して際立ったものにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府による委託研究または開発に関する記述)
本発明は、National Institutes of HealthによりThe Regents of the University of California Chart Str.へ授与された認可番号F32 EB04239−01、多方面の提供者によりThe Regents of the University of Californiaへ授与された56156−10673−44−CCKNR、NIH SBIRによりLumiphore/Biostrideへ授与された認可番号 R43 AI063531−01、およびDOE(Lawrence Berkeley National Laboratory)によりThe Regents of the University of Californiaへ授与された認可番号DE−AC03−7600098のもとで政府支援により実施されたものである。政府は本発明において一定の権利を有するものである。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2006年8月15日出願の米国仮出願番号第60/822,482号(Attorney Docket No.061818−02−5028PR)に関する優先権を請求するものである。これを参照により本明細書に組み込む。
【0003】
本発明は、ルミネッセントマーカー(luminescent markers)として有用な大環状リガンドおよびそのランタニド錯体、ならびに本発明のリガンドおよび錯体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
研究や診断用の混合物における検体としての化学的、生化学的および生物学的物質を検出および定量化する迅速かつ高度に特異的な方法の必要性が引き続き増している。特に価値のあるものは、少量の核酸、ペプチド、調合薬、代謝産物、微生物および診断価値のある他の物質を測定するための方法である。そのような物質の例には、小分子生体活性物質(例えば、麻薬および毒物、治療目的で投与される薬物、ホルモン)、病原微生物およびウイルス、抗体ならびに酵素および核酸、特に疾患の状態に関わるものが含まれる。
【0005】
特定の検体の存在はしばしば、多くの生化学的および生物学的系の特徴とする特異性を高度に引き出す結合法によって判定することができる。しばしば用いられる方法は、例えば、抗原−抗体系、核酸ハイブリダイゼーション技術およびタンパク質−リガンド系をもとにしたものである。これらの方法では、診断価値のある錯体の存在は一般に、相互作用物質の1つ以上と結合した観測可能な「標識」の有無によって示される。選択される特定の標識化方法はしばしば、対象検体を検出するための特定の系の有用性および多用途性を決定づける。好ましい標識は、安価で安全性が高く、そのような材料の重要な結合特性をそれほど変えることなく様々な化学的、生化学的および生物学的物質と効果的に結合可能なものである。その標識は、非常に特徴的なシグナルを与えるものであり、かつ、自然界ではほとんど見られないか、好ましくは全く見られないものでなければならない。標識は水系で数カ月の期間にわたって安定であり、かつ検出可能なものでなければならない。標識の検出は、高価な特別の装置を必要としないかまたは作業者を保護するための特別な予防措置を必要としないで、迅速で高感度であり、かつ再現性のあるものであることが好ましい。標識の定量化は、温度やアッセイされる混合物の組成などの変数に対して比較的独立していることが好ましい。
【0006】
多種多様な標識が開発されてきており、それぞれ、ある利点および欠点を有している。例えば、放射性標識は非常に用途が広く、非常に低い濃度で検出することができる。しかし、この標識は高価で有害であり、その使用には、高性能な装置と訓練された人材を必要とする。したがって、非放射性標識、特に分光学的、スピン共鳴およびルミネッセンス技術、ならびにそのような分子を生成する酵素などの反応性物質により観測可能な標識に広範な関心がもたれている。
【0007】
当業界で知られている標識が非常に多いため、蛍光分光法を用いて検出できる標識には特に関心がもたれている。さらに、他の分子との結合が容易に可能なように誘導体化された蛍光標識の合成についての文献が数多く見られ、そのような多くの蛍光標識は市販されている。
【0008】
多くの蛍光標識は、直接検出されることに加えて、隣接する第2の蛍光標識の蛍光をクエンチするように作用する。クエンチャー(quencher)とフルオロフォア(fluorophore)との間の相互作用の距離および大きさに対して依存性があるため、蛍光種のクエンチングは、分子の配座および結合または他の相互作用のための高感度なプローブを提供する。蛍光レポータークエンチャーペアの使用の好例は、核酸の検出および分析に見られる。
【0009】
従来の有機フルオロフォアは一般に蛍光寿命が短く、それはナノセカンド(ns)のオーダーである。これは、バックグラウンド蛍光からの最適な識別には短すぎる。従来の蛍光より理論的に感度のよい代替の検出スキームは時間分解ルミネッセンスである。この方法によれば、長い放射寿命を有するキレート化されたランタニド金属を対象の分子と結合させる。ゲート型検出系と合わせたパルス状励起によって、短命のバックグラウンドエミッションに対する効率的な差別化が可能になる。例えば、このアプローチを用いた、ユウロピウム標識化抗体によるDNAハイブリッドの検出および定量化が実証されている(Syvanenら、Nucleic acids Research 14:1017〜1028頁(1986年))。さらに、ビオチン化DNAは、Eu−標識化ストレプトアビジンを用いたマイクロタイターウェルで測定されている(Dahlen,Anal.Biochem.(1982年)、164:78〜83頁)。しかし、この種のアッセイの欠点は、プローブから標識を洗い落とし、増強試薬の中でそのルミネッセンスを増強させなければならないことである。
【0010】
予測可能な実際上の利点を考慮すると、用いるランタニドキレートは、10μsの崩壊期間で遅れるルミネッセンスを示すことが一般に望ましい。既知のルミネッセントキレートの多くのルミネッセンスは水によって抑制される傾向がある。アッセイ系、特に免疫アッセイ系においては通常水が存在するので、水の存在下でルミネッセンスの抑制を受けるランタニド錯体は、多くの用途で、少々不都合であるかまたは実用的でないと見られている。さらに、ルミネッセンスの崩壊期間が短いことはこれらの化合物の欠点と考えられている。この抑制は、水分子の配位に対するランタニドイオンの親和性に起因するものである。ランタニドイオンが配位した水分子を有する場合、吸収光エネルギー(励起エネルギー)はルミネッセンスとして放出されず、クエンチされる。
【0011】
したがって、優れたルミネッセンス特性を示すランタニドキレート、特に配位的に飽和したキレートが非常に望ましい。あるいは、水の存在下で、許容されるルミネッセンスを示す配位的に不飽和のランタニドキレートも有利である。アッセイの1つ以上の成分とのその接合を可能にするように誘導体化されたそのようなキレートは、様々なアッセイ方式の範囲で用途が見出される。本発明は、上記および他のそのような化合物、ならびにこれらの化合物を用いたアッセイを提供する。Tb3+などのランタニドイオンのヒドロキシイソフタルアミド(IAM)錯体は、様々な生物学的応用分野で潜在的に有用である。生物学的応用分野で特に重要なことは、nMレベル以下の濃度の水溶液中で、これらの錯体が動力学的な安定性を示すことである。
【0012】
【化1】

【0013】
ルミネッセンスを必要とする用途に有用なヒドロキシイソフタルアミドリガンドは文献に記載されている(Petoudら、J.Am.Chem.Soc.2003年、125,13324〜13325頁;Raymondらの米国特許第7,018,850号)。H(2,2)主鎖は、図1の1および2などのイソフタルアミドベースのリガンドを合成するのに用いられている。これらの八座リガンドは、三価のランタニドイオンとキレート化した場合、比較的高い熱力学的安定性を示す。官能化されたTIAMリガンド2は生体分子と接合し、TR−LRET研究における供与体として用いられている(Johanssonら、J.Am.Chem.Soc.2004年、126(50):16451〜16455頁)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、生物学的に該当する条件下で、低濃度で安定であり、かつ同時にタンパク質との低い非特異的相互作用を示すルミネッセント錯体が依然として必要である。本発明はこれらおよび他の必要性に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、新規な部類の大環状リガンドおよびその金属錯体を提供する。具体的には、本発明はルミネッセントランタニド錯体を提供する。より具体的には、本発明はルミネッセントテルビウムおよびユウロピウム錯体を提供する。これらの錯体は、ミセルまたはフルオリドによるなどの外的添加物なしで、水性媒体中における高い安定性および溶解性、ならびに水の中での高いランタニドイオンルミネッセンス量子収量を示す。錯体は、ランタニド系列の金属イオンと新規な部類の大環状リガンドとの間で形成される。好ましいリガンドは、その構造内にヒドロキシ−イソフタルアミド部分を組み込んでおり、そのリガンドは驚くほど低い、抗体やタンパク質などの様々な異なるポリペプチドとの非特異的結合を特徴とする。その独特の化学的および物理化学的特性のため、本発明の錯体は、医療診断系および生物分析アッセイ系を含む水性媒体中でルミネッセンスを必要とするどの応用分野でも用途を見出すことができる。
【0016】
したがって、第1の態様では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物を提供する。
【0017】
【化2】

(I)
ただし、上記化合物は少なくとも1つの官能性部分で共有結合により修飾されている。
【0018】
式Iでは、各ZはOおよびSから独立に選択されるメンバーである。L、L、L、L、L、L、L、L、LおよびL10は、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリールおよび置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択される連結基である。
【0019】
、A、AおよびAは以下の構造から独立に選択されるメンバーである。
【0020】
【化3】

ただし、各Rは、H、酵素不安定性基、加水分解不安定性基、代謝不安定性基および単一の負電荷から独立に選択されるメンバーである。R、RおよびRのそれぞれは、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、ハロゲン、CN、CF、アシル、−SONR1718、−NR1718、−OR17、−S(O)17、−C(O)R18、−COOR17、−CONR1718、−S(O)OR17、−OC(O)R17、−C(O)NR1718、−NR17C(O)R18、−NR17SO18および−NOから独立に選択されるメンバーであり、ただし、RとR、Rおよびその組合せから選択されるメンバーとは、任意選択で連結して置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールから選択されるメンバーである環系を形成する。
【0021】
17およびR18は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリールおよび置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、R17とR18は、それに結合している原子と一緒に、任意選択で結合して5〜7員環を形成する。
【0022】
第2の態様では、本発明は、少なくとも1つの金属イオンと本発明の化合物との間で形成されたルミネッセント錯体を提供する。
【0023】
第3の態様では、本発明は、試料中の検体の有無を検出する方法を提供する。その方法は、(a)試料と本発明の錯体を含む組成物とを接触させることと、(b)その錯体を励起させることと、(c)錯体からのルミネッセンスを検出することとを含む。一例では、検体の有無は錯体からのルミネッセンスの有無によって示される。
【0024】
第4の態様では、本発明は、試料中の検体の有無を検出する方法を提供する。その方法は、(a)試料と、本発明の錯体およびルミネッセンス改変基を含む組成物とを接触させること(ここで、錯体が励起されたときに錯体とルミネッセンス改変基の間でエネルギーを移動させることができ、錯体とルミネッセンス改変基が同じ分子の一部であっても異なる分子の一部であってもよい)と、(b)その錯体を励起させることと、(c)試料のルミネッセント特性を判定することであって、その検体の有無が試料のルミネッセント特性によって示されることとを含む。一例では、試料中の検体の有無は試料のルミネッセント特性の変化によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】2]様々な条件下、室温での化合物1の動力学的安定性を示すチャートである。
【図2】3]様々な条件下、室温での化合物3の動力学的安定性を示すチャートである。
【図3】4]様々な条件下、室温での化合物5Aの動力学的安定性を示すチャートである。
【図4】5]接合していない5a−Tbの発光スペクトルが、5a−Tbの異なるタンパク質接合について得られる発光スペクトルに匹敵することを示すチャートである。
【図5】6]接合していない5a−Tbとストレプトアビジン接合した5a−Tbのルミネッセンス崩壊寿命を比較したチャートである。
【図6】7]化合物4−Tbについて記録した定常状態吸収および発光スペクトルを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本明細書で用いる「検体」は、そのために診断学的検査が実施される、生体高分子もしくは小分子生体活性材料などの任意の対象化合物または分子を意味する。検体は、例えばタンパク質、ペプチド、炭水化物、多糖、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、ウイルス、基質、代謝産物、遷移状態の類似体、共同因子(cofactor)、阻害物質、薬物、染料、栄養素、成長因子、脂質等であってよいが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で用いる「エネルギー移動」は、ルミネッセント基の光の放出がルミネッセンス改変基によって変化する過程を指す。ルミネッセンス改変基がクエンチング基である場合、ルミネッセント基からの光の放出が減衰する(クエンチする)。エネルギー移動の機序には、双極子間相互作用によるルミネッセンス共鳴エネルギー移動(例えば、より長い範囲のエネルギー移動において)または電子移動(例えば、より短い距離にわたって)が含まれる。エネルギー移動は、しばしば、(それらの基間の距離に加えて)ルミネッセント基の発光スペクトルとルミネッセンス改変基の吸収スペクトルとのスペクトルの重なりに基づくが、エネルギー移動が起こるために、スペクトルの重なりは必ずしも必要ではないことが実証されている(例えば、Latvaらの米国特許第5,998146号を参照されたい。これを参照により本明細書に組み込む)。本明細書で言及される「エネルギー移動」はどれも、機構的にはっきりした現象のすべてを包含することを理解されたい。
【0028】
「エネルギー移動ペア」は、エネルギー移動に関与する分子のグループを指すのに用いられる。そのような錯体は、例えば、互いに異なっていてよい2つのルミネッセント基と1つのクエンチング基、2つのクエンチング基と1つのルミネッセント基、または複数のルミネッセント基と複数のクエンチング基を含むことができる。複数のルミネッセント基および/または複数のクエンチング基が存在する場合、個々の基は互いに異なっていてよい。一般に、分子の一方はルミネッセント基として作用し、他方はルミネッセンス改変基として作用する。本発明の好ましいエネルギー移動ペアは、本発明のルミネッセント基とクエンチング基を含む。本明細書で説明するエネルギー移動ペアの個々のメンバーの実体に対する制限はない。必要なのは、個々のメンバー間の距離がある臨界量で変えられた場合に、エネルギー移動ペアの全体としての分光特性が何らかの測定できる形で変化することだけである。
【0029】
本明細書で用いる「ルミネッセンス改変基(luminescence-modifiying group)」は、ルミネッセント基からのルミネッセンス発光を何らかの形で変えることができる本発明の分子を指す。ルミネッセンス改変基は、通常、これをエネルギー移動の機序によって遂行する。ルミネッセンス改変基の実体に応じて、ルミネッセンス発光に、減衰、完全なクエンチング、増強、波長シフト、極性シフトおよびルミネッセンス寿命の変化を含むがこれらに限定されない多くの変化を施すことができる。ルミネッセンス改変基の一例は蛍光改変基である。ルミネッセンス改変基の別の例はクエンチング基である。
【0030】
本明細書で用いる「クエンチング基」は、ルミネッセント基によって放出される光を少なくとも部分的に減衰させることができる本発明の任意のルミネッセンス改変基を指す。この減衰を本明細書では「クエンチング」と称する。したがって、クエンチング基の存在下でのルミネッセント基の励起では、予想される強度より弱い発光シグナルがもたらされるかまたはそのシグナルは完全に消失する。クエンチングは通常ルミネッセント基とクエンチング基の間のエネルギー移動によって起こる。
【0031】
「蛍光共鳴エネルギー移動」すなわち「FRET」は、「FET」および「ルミネッセンス共鳴エネルギー移動(LRET)」と互換的に用いられ、これは、励起されたルミネッセント基によって放出された光が、本発明のルミネッセンス改変基によって少なくとも部分的に吸収されるエネルギー移動現象を指す。ルミネッセンス改変基は例えばクエンチング基であってよい。LRETは、ルミネッセント基とルミネッセンス改変基の間のエネルギー移動の影響を受ける。LRETはまたルミネッセンス改変基とルミネッセント基の間の距離の影響も受ける。
【0032】
本明細書で論じる「高度希釈」すなわち「H.D.」状態は、望ましくない生成物より、望ましい生成物を得るのにより適した状態を指す。化学反応、特に環化反応を実施する際、高度希釈状態は、1つ以上の反応物の濃度を、望ましくないポリマー系副生成物の生成を少なくするのに十分低く保持することによって実現される。反応が異なれば、望ましい生成物を所望の収率で得るようにする反応物濃度要件も異なってくる。当業者は、望ましい生成物の所望収率が得られるように反応物濃度を調節することができよう。例示的実施形態では、高度希釈条件下で調製される本発明の化合物は、少なくとも1つの反応物の濃度が非常に低い(約1×10−5M以下)仕方などで調製される。高い濃度での反応で望ましい生成物を得ることができるが、望ましい生成物の収率は低く、望ましくない生成物の収率は高い。
【0033】
「部分」は、別の部分と結合する分子の基を指す。
【0034】
「標的部分」という用語は、本発明の錯体と結合する任意の部分を意味するものとする。標的部分は小分子であってよい。その小分子は非ペプチドとペプチドの両方を含むものとする。標的基はまた、糖類、レクチン、受容体、受容体のためのリガンド、BSAなどのタンパク質、抗体、核酸、固体支持体などを含む巨大分子であってもよい。標的基は、脂質、ならびにプラスチック表面、ポリエチレングリコール誘導体などのポリマーであってもよい。
【0035】
本明細書で用いる「核酸」は、DNA、RNA、一本鎖、二本鎖またはより高次に会合したハイブリダイゼーションモチーフおよびその任意の化学修飾体を意味する。修飾には、これらに限定されないが、核酸リガンド塩基または全体としての核酸リガンドに、付加的に電荷、極性、水素結合、静電相互作用および流動性(fluxionality)を取り込む化学基を提供するものが含まれる。そのような修飾体には、これらに限定されないが、ペプチド核酸、ホスホジエステル基修飾体(例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート)、2’位糖修飾体、5位ピリミジン修飾体、8位プリン修飾体、環外アミンでの修飾体、4−チオウリジンの置換、5−ブロモまたは5−ヨード−ウラシルの置換;主鎖修飾体、メチル化、イソ塩基、イソシチジンおよびイソグアニジンなどの異常塩基対合の組合せなどが含まれる。修飾は、SL、フルオロフォアまたは別の部分でキャッピングすることなどの3’および5’修飾も含むことができる。
【0036】
「ペプチド」は、モノマーがアミノ酸であり、それがアミド結合を介して一緒に結合しているポリマーを指し、これはポリペプチドとも称される。アミノ酸がα−アミノ酸である場合、L−光学異性体もD−光学異性体も用いることができる。さらに、非天然アミノ酸、例えばβ−アラニン、フェニルグリシンおよびホモアルギニンも含まれる。遺伝子コード化されていない、通常見られるアミノ酸も本発明で使用することができる。本発明で用いるアミノ酸はすべて、D異性体であってもL異性体であってもよい。L異性体が一般に好ましい。本明細書で用いる「ペプチド」または「ポリペプチド」という用語は、天然由来ペプチドならびに合成ペプチドを指す。さらに、ペプチド模倣体も本発明で有用である。概説については、Spatola,A.F.のCHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY OF AMINO ACIDS,PEPTIDES AND PROTEINS,B.Weinstein,eds.,Marcel Dekker,New York、267頁(1983年)を参照されたい。
【0037】
置換基が左から右へ書かれたその通常の化学式で指定されている場合、これらは、構造を右から左へ書いて得られる化学的に同一の置換基を同等に包含する。例えば−CHO−は−OCH−も指すものとする。
【0038】
「アルキル」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、別段の言及のない限り、分枝鎖もしくは直鎖または環状炭化水素基、あるいはその組合せを意味し、これらは完全に置換されていても、モノまたはポリ不飽和であってもよく、表示された炭素原子の数(すなわち、C〜C10は1から10個の炭素原子を意味する)を有する二価および多価の基を含むことができる。飽和炭化水素基の例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えばn−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルの同族体および異性体などの基が含まれる。不飽和アルキル基は1つもしくは複数の二重結合または三重結合を含む基である。不飽和アルキル基の例には、これらに限定されないが、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニルならびにより高次の同族体および異性体が含まれる。「アルキル」という用語は、別段の記述のない限り、「ヘテロアルキル」などの以下でより詳細に定義するアルキルの誘導体を含むことも意味するものとする。炭化水素基に限定されたアルキル基は「ホモアルキル」と称される。
【0039】
「アルキレン」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、これに限定されないが、−CHCHCHCH−で例示されるアルカンから誘導された二価の基を意味し、「ヘテロアルキレン」として以下で説明する基もさらに含む。一般に、アルキル(またはアルキレン)基は1〜24個の炭素原子を有する。本発明では、10個以下の炭素原子を有する基が好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、鎖がより短いアルキルまたはアルキレン基であり、一般に8個以下の炭素原子を有する。
【0040】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ」(または低級アルコキシ)という用語はその慣用的な意味で用いられ、酸素原子、アミノ基またはイオウ原子をそれぞれ介して、分子の残りのものと結合しているアルキル基を指す。
【0041】
「ヘテロアルキル」という用語はそれ自体で、または他の用語と組み合わせて、別段の言及のない限り、表示された数の炭素原子と、O、N、SiおよびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなる安定した直鎖もしくは分枝鎖または環状炭化水素基、あるいはその組合せを意味する。ここで、その窒素およびイオウ原子は任意選択で酸化されていてよく、窒素ヘテロ原子は任意選択で四級化されていてよい。ヘテロ原子O、N、S、BおよびSiは、ヘテロアルキル基のどの内部位置に配置されていても、また、アルキル基が分子の残りのものと結合している位置に配置されていてもよい。その例には、これらに限定されないが、−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH、−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCHおよび−CH=CH−N(CH)−CHが含まれる。例えば−CH−NH−OCHおよび−CH−O−Si(CHのように、最大で2個のヘテロ原子は連続していてよい。同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、これらに限定されないが、−CH−CH−S−CH−CH−および−CH−S−CH−CH−NH−CH−によって例示されるヘテロアルキルから誘導される二価の基を意味する。ヘテロアルキレン基については、ヘテロ原子は、鎖末端の一方かまたはその両方を占めていてよい(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基については、連結基の式が書かれている方向によって、連結基の方向付けが示されるものではない。例えば、式−C(O)R’−は−C(O)R’−と−R’C(O)−の両方を表す。
【0042】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語はそれ自体で、または他の用語と組み合わせて、別段の言及のない限り、「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状バージョンをそれぞれ表す。さらに、ヘテロシクロアルキルについては、ヘテロ原子は、複素環が分子の残りのものと結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例には、これらに限定されないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが含まれる。ヘテロシクロアルキルの例には、これらに限定されないが、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが含まれる。
【0043】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、別段の言及のない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語はモノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば「ハロ(C〜C)アルキル」という用語は、これらに限定されないが、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどを含むことを意味する。
【0044】
「アリール」という用語は、別段の言及のない限り、一緒に縮合するかまたは共有結合により結合した単環もしくは多環(好ましくは1〜3個の環)であってよいポリ不飽和の芳香族置換基を意味する。「ヘテロアリール」という用語は、N、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含むアリール基(または環)を指し、その窒素およびイオウ原子は任意選択で酸化されていてよく、その窒素原子は任意選択で四級化されていてよい。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介してその分子の残りのものと結合していてよい。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的例には、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリルおよび6−キノリルが含まれる。上記のアリールおよびヘテロアリール環系のそれぞれについての置換基は、以下に記載の許容される置換基の群から選択される。
【0045】
簡単に言えば、「アリール」という用語は、他の用語と組み合わせて用いられる場合(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)、上記定義のアリールおよびヘテロアリール環の両方を含む。したがって、「アリールアルキル」という用語は、アリール基が、炭素原子(例えば、メチレン基)が例えば酸素原子で置換されたアルキル基を含む、アルキル基と結合している基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を指すことを意味する(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)。
【0046】
上記のそれぞれ(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)は、表示された基の置換された形態と置換されていない形態の両方を含むことを意味する。基の各タイプについての好ましい置換基を以下に示す。
【0047】
アルキルおよびヘテロアルキル基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニルとしばしば称される基を含む)についての置換基は一般に「アルキル基置換基」と称され、これらは、これらに限定されないが、0〜(2m’+1)(m’はこのような基中の炭素原子の総数である)の範囲の数で、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−NRSOR’、−CNおよび−NOから選択される様々な基の1つ以上であってよい。R’、R’’、R’’’およびR’’’’はそれぞれ好ましくは独立に、水素、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、例えば1〜3個のハロゲンで置換されたアリール、置換もしくは非置換アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基またはアリールアルキル基を指す。本発明の化合物が2個以上のR基を含む場合、例えば、R基のそれぞれは、R’、R’’、R’’’およびR’’’’基のそれぞれが(これらの基の2個以上が存在する場合に)そうであるように、独立に選択される。R’とR’’が同じ窒素原子に結合している場合、これらは窒素原子と一緒に5員、6員または7員の環を形成することができる。例えば、−NR’R’’は、これらに限定されないが、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意味する。置換基についての上記考察から、当業者は、「アルキル」という用語が、ハロアルキル(例えば、−CFおよび−CHCF)およびアシル(例えば、−C(O)CH、−C(O)CF、−C(O)CHOCHなど)などの水素基以外の基と結合した炭素原子を含む基を含むことを意味することを理解されよう。
【0048】
アルキル基について説明した置換基と同様に、アリールおよびヘテロアリール基についての置換基を一般に「アリール基置換基」と称する。置換基は例えば、ゼロから芳香族環系上の開いた原子価の総数までの範囲の数で、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、ハロゲン、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−NRSOR’、−CNおよび−NO、−R’、−N、−CH(Ph)、フルオロ(C〜C)アルコキシならびにフルオロ(C〜C)アルキルから選択される。ただし、R’、R’’、R’’’およびR’’’’は、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールから独立に選択されることが好ましい。本発明の化合物が2個以上のR基を含む場合、例えばR基のそれぞれは、R’、R’’、R’’’およびR’’’’基のそれぞれ(これらの基の2個以上が存在する場合に)がそうであるように、独立に選択される。
【0049】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、式−T−C(O)−(CRR’)−U−(ただし、TおよびUは独立に−NR−、−O−、−CRR’−または単結合であり、qは0〜3の整数である)の置換基で任意選択で置き換えられていてよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、式−A−(CH−B−(ただし、AおよびBは独立に−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR’−または単結合であり、rは1〜4の整数である)の置換基で任意選択で置き換えられていてよい。形成された新たな環の単結合のうちの1つは、任意選択で二重結合で置き換えられていてよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、式−(CRR’)−X−(CR’’R’’’)−(ただし、sおよびdは独立に0〜3の整数であり、Xは−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、または−S(O)NR’−である)の置換基で任意選択で置き換えられていてよい。置換基R、R’、R’’およびR’’’は独立に、水素または置換もしくは非置換(C〜C)アルキルから選択されることが好ましい。
【0050】
本明細書で用いる「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、イオウ(S)、ケイ素(Si)およびホウ素(B)を含む。
【0051】
「R」という記号は、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリールおよび置換または非置換ヘテロシクリル基から選択される置換基を表す一般的略語である。
【0052】
本発明は、塩基性基および酸性基などのイオン性官能基を含む分子のすべての塩の形態を含む。「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書で記載の化合物の具体的な置換基に応じて、比較的非毒性の酸または塩基で調製された活性化合物の塩を含む。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、塩基付加塩は、中性形態のそのような化合物をそのままかまたは適切な不活性溶媒中で、十分な量の所望の塩基と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノもしくはマグネシウムの塩または同様の塩が含まれる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、中性形態のそのような化合物をそのままかまたは適切な不活性溶媒中で、十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素、リン酸、リン酸一水素、リン酸二水素、硫酸、硫酸一水素、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などのような無機酸から誘導される塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的非毒性の有機酸から誘導される塩が含まれる。アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などのような有機酸の塩も含まれる(例えば、Bergeら、Journal of Pharmaceutical Science,66:1〜19頁(1977年)を参照されたい)。本発明のある特定の化合物は、その化合物を塩基かまたは酸付加塩のいずれかに転換できるようにする塩基性官能基と酸性官能基の両方を含む。
【0053】
中性の形態の化合物は、その塩を塩基または酸と接触させ、従来の方法でその親化合物を単離することによって再生することが好ましい。化合物の親形態物は、極性溶媒中での溶解性などのある種の物理的特性において種々の塩の形態と異なるが、本発明のためには、その塩はその他の点では、化合物の親形態物と同等である。
【0054】
本明細書で、残基(R、R、RおよびRなどの)が単一の負電荷として定義される場合、その残基は任意選択でカチオン対イオンを含むことができる。その化合物の得られる塩形態は、示された構造に包含される。
【0055】
塩の形態に加えて、本発明はプロドラッグの形態の化合物を提供する。本明細書で説明する化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学変化を受けて、本発明の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、エクスビボの環境での化学的または生化学的方法によって本発明の化合物に転換させることができる。例えば、適切な酵素または化学的試薬と共に経皮貼布リザーバー中に置くと、プロドラッグを徐々に本発明の化合物に転換させることができる。
【0056】
本発明の特定の化合物は、溶媒和していない形態としても、また水和した形態を含む溶媒和した形態としても存在することができる。一般に、溶媒和した形態は溶媒和していない形態と同等のものであり、本発明の範囲内に包含される。本発明の特定の化合物は、多結晶形または非晶形で存在することができる。一般に、すべての物理的形態は、本発明で考慮する使用に対して等価であり、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0057】
本発明の特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有し、ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体は本発明の範囲内に包含される。
【0058】
本明細書で用いるラセミ化合物、アンビスケールミック(ambiscalemic)化合物およびスケールミック(scalemic)化合物または鏡像異性体として純粋な化合物の図的表現は、Maehr,J.Chem.Ed.,62:114〜120頁(1985年)からとったものである。実線状および破線状のくさび(solid and broken wedge)はキラル要素の絶対配置を表すのに用いられ、波線は、それが表す結合がもたらす可能性のある立体化学的意味を否定することを示し、太い実線および破線は、相対配置を示しているが、絶対的立体化学を意味するものではない幾何学的記述子であり、くさび状輪郭線(wedge outline)および点線または破線は、確定できない絶対配置からなる鏡像異性体として純粋な化合物を表す。
【0059】
「鏡像異性体過剰」および「ジアステレオマー過剰」という用語は、本明細書では互換的に用いられる。単一の立体中心を有する化合物は「鏡像異性体過剰」であると称され、少なくとも2つの立体中心を有する化合物は「ジアステレオマー過剰」であると称される。
【0060】
本発明の化合物は、その化合物を構成する原子のうちの1つ以上において、自然界にない割合の原子同位元素を含むこともできる。例えば化合物を、例えば三重水素(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性同位元素で放射性標識化することができる。本発明の化合物のすべての同位体の変更形態は、放射性であってもなくても、本発明の範囲内に包含されるものとする。
【0061】
導入
本発明は、金属イオンと新規な部類の大環状リガンドとの間で形成される金属キレートをベースとしたルミネッセントプローブの部類を提供する。具体的には、本発明はルミネッセントランタニド錯体を提供する。より具体的には、本発明はルミネッセントテルビウムおよびユウロピウム錯体を提供する。これらの錯体は、ミセルまたはフルオリドによるなどの二次的活性化剤を必要とせずに、水性媒体中で高い安定性、ならびにランタニドイオンルミネッセンスの高い量子収量を示す。好ましいリガンドは、その大環状構造内にヒドロキシ−フタルアミド部分を組み込んでおり、そのリガンドは驚くほど高い動力学的安定性と、予想外に少ない抗体やタンパク質などの様々な異なるポリペプチドへの非特異的結合を特徴とする。これらの特徴によって、そのリガンドは、既知の開かれた構造のリガンドと区別される。
【0062】
これらのランタニド錯体の価値は、その高い量子効率と比較的高い吸収効率に由来する。これらの特性は、化合物5などのリガンドを、供与体および受容体分子が低濃度で用いられる均一時間分解ルミネッセンス共鳴エネルギー移動(TR−LRET)の用途において有用なものとしている。本発明の錯体は、免疫アッセイ、ペプチド切断アッセイ、DNAレポーターアッセイなどの、医学的診断および生物分析アッセイ系を含む、水性条件下で強いルミネッセンスを必要とするどのような用途でも用いることができる。さらに、これらの錯体およびその誘導体は、錯体を光の透過を可能にする固体材料の中に埋め込むことができる、ナノテクノロジー(粒子中への取り込み)および材料科学において広範囲の適用性を見出すことができる。
【0063】
本発明のフルオロフォアは、エネルギー移動プローブの成分として、他のフルオロフォアまたはクエンチャーと共に用いることができる。多くのルミネッセントまたは非ルミネッセント標識は、本発明の錯体と併用するのに有用であり、そのような多くの標識は、当業者に知られているSIGMA(Saint Louis)またはInvitrogenなどの市販業者から入手することができる。さらに、当業者は、具体的な用途に適したフルオロフォアの選択の仕方を理解されよう。もし容易に入手できない場合、必要なフルオロフォアまたはクエンチャーを新たに合成するか、あるいは市販のルミネッセント化合物を合成的に改変して所望のルミネッセント標識を得ることができよう。
【0064】
小分子フルオロフォアに加えて、天然由来の蛍光タンパク質およびそのようなタンパク質の改変類似体も本発明の化合物に有用である。そのようなタンパク質には、例えば刺胞動物の緑色蛍光タンパク(Wardら、Photochem.Photobiol.1982年、35:803〜808頁;Levineら、Comp.Biochem.Physiol.1982年、72B:77 85)、ビブリオ・フィシェリ株(Vibrio fischeri strain)からの黄色蛍光タンパク質(Baldwinら、Biochemistry 1990,29:5509 15)、渦鞭毛藻シンビオジニウム種(dinoflagellate Symbiodinium sp.)からのペリジニン−クロロフィル(Morrisら、Plant Molecular Biology 1994年、24:673:77)、シネココッカス(Synechococcus)などの海洋シアノバクテリアからのフィコビリタンパク質、例えばフィコエリトリンおよびフィコシアニン(Wilbanksら、J.Biol.Chem.1993年、268:1226 35)などが含まれる。
【0065】
本発明の化合物は、他の溶質からの特定のイオンの分離のためのプローブとして、手段として、また顕微鏡検査、酵素学、臨床化学、分子生物学および医薬におけるプローブとして使用することができる。本発明の化合物は、治療薬として、また画像検査法での診断薬としても有用である。さらに、本発明の化合物は光、導波路などの光学的増幅剤の成分として有用である。さらに、本発明の化合物は、貨幣や他の文書の印刷に用いられるものなどのインクや染料中に混ぜ込むことができる。
【0066】
一実施形態では、本発明の化合物は、例えば光または電子化学的エネルギーを含む当業界で知られている任意の方法でそれを励起させるとルミネッセンスを示す(例えば、Kulmalaら、Anafytica Chimica Acta 1999年、386:1を参照されたい)。本発明のキラル化合物の場合、ルミネッセンスは円偏光させることができる(例えば、Riehlら、Chem.Rev.1986年、86:1を参照されたい)。
【0067】
以下の節で論じる化合物、プローブおよび方法は、本発明の組成物およびそのような組成物を使用できる方法の一般的代表例である。以下の考察は、本発明の選択された態様および実施形態を例証しようとするものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきものではない。
【0068】
組成物
第1の態様では、本発明は、以下のものから選択されるメンバーの構造を有する化合物を提供する。
【0069】
【化4】

【0070】
式IおよびIaでは、各ZはOおよびSから独立に選択されるメンバーである。L、L、L、L、L、L、L、L、LおよびL10は、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリールおよび置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択される連結基である。A、A、AおよびAは、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキルおよび縮合環系から独立に選択されるメンバーであるビルディングブロックである。
【0071】
一実施形態では、式IおよびIaの化合物は、官能性部分で共有結合により修飾されている。例示的実施形態では、A、A、A、A、L、L、L、L、L、L、L、L、LおよびL10の少なくとも1つは官能性部分で置換されている。
【0072】
他の実施形態では、本発明の大環状リガンドは、ビルディングブロックとしてのヒドロキシフタル酸もしくはヒドロキシイソフタル酸またはその組合せを基にしている。この態様による例示的実施形態では、A、A、AおよびAは以下の式の構造を有する。
【0073】
【化5】

ただし、A、A、AおよびAのためのそれぞれの一般構造は独立に選択されるメンバーである。各Rは、H、酵素不安定性基、加水分解不安定性基、代謝不安定性基および単一の負電荷から独立に選択されるメンバーである。各R、RおよびRは、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、ハロゲン、CN、CF、アシル、−SONR1718、−NR1718、−OR17、−S(O)17、−COOR17、−S(O)OR17、−OC(O)R17、−C(O)NR1718、−NR17C(O)R18、−NR17SO18および−NOから独立に選択されるメンバーであり、RとR、Rおよびその組合せから選択されるメンバーとは任意選択で結合して置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールから独立に選択されるメンバーである環系を形成する。
【0074】
17およびR18は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリールおよび置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、R17とR18は、それに結合している原子と一緒に任意選択で結合して5〜7員環を形成する。
【0075】
他の例示的実施形態では、本発明の化合物は以下の構造を有する。
【0076】
【化6】

式中、R、R、RおよびRは、H、酵素不安定性基、加水分解不安定性基、代謝不安定性基および単一の負電荷から独立に選択されるメンバーである。例示的化合物には、L、L、L、L、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つが官能性部分で置換されており、好ましくはL、L、L、L、L、L、L、L、LおよびL10の少なくとも1つが官能性部分で置換されている化合物が含まれる。
【0077】
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、ハロゲン、CN、CF、アシル、−SONR1718、−NR1718、−OR17、−S(O)17、−COOR17、−S(O)OR17、−OC(O)R17、−C(O)NR1718、−C(O)R18;−NR17C(O)R18、−NR17SO18および−NOから独立に選択されるメンバーであり、R17およびR18は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリールおよび置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、R17とR18は、それに結合している原子と一緒に、任意選択で結合して5〜7員環を形成する。RとR、Rおよびその組合せから選択されるメンバーとは任意選択で結合して環系を形成する。同様に、RとR、R10およびその組合せから選択されるメンバーとは任意選択で結合して環系を形成している。さらに、R12とR11、R13およびその組合せから選択されるメンバーとは任意選択で結合して環系を形成し、その環系は、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールから選択されるメンバーである。
【0078】
例示的実施形態では、式(I)または(Ia)の化合物において、L、L、L、L、L、L、L、L、LおよびL10は置換または非置換ヘテロアルキレンおよび置換または非置換C〜Cアルキレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(I)または(Ia)の化合物において、L、L、L、Lは置換または非置換エチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(I)または(Ia)の化合物において、L、L、L、L10は置換または非置換エチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(I)または(Ia)の化合物において、L、L、L、L10は置換または非置換メチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(I)または(Ia)の化合物において、Lは置換または非置換エチレンである。例示的実施形態では、式(I)または(Ia)の化合物において、Lは置換または非置換エチレンである。例示的実施形態では、式(I)または(Ia)の化合物において、L、L、L、LおよびLは置換または非置換エチレンである。例示的実施形態では、式(I)または(Ia)の化合物において、L、L、L、L、L10は置換または非置換エチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(I)または(Ia)の化合物において、L、L、L、L、L10は置換または非置換メチレンから独立に選択されるメンバーである。
【0079】
例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、L、L、L、L、L、L、L、L、LおよびL10は置換または非置換ヘテロアルキレンおよび置換または非置換C〜Cアルキレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、L、L、L、Lは置換または非置換エチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、L、L、L、L10は置換または非置換エチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、L、L、L、L10は置換または非置換メチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、Lは置換または非置換エチレンである。例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、Lは置換または非置換エチレンである。例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、L、L、L、LおよびLは置換または非置換エチレンである。例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、L、L、L、L、L10は置換または非置換エチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、L、L、L、L、L10は置換または非置換メチレンから独立に選択されるメンバーである。
【0080】
例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、R、RおよびRはHである。例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、R、RおよびR10はHである。例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、R11、R12およびR13はHである。例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、R14、R15およびR16はHである。
【0081】
他の例示的実施形態では、L、L、L、L、L、L、L、L、LおよびL10は置換または非置換C〜Cアルキレンから独立に選択されるメンバーである。例示的化合物には、L、L、L、L、L、L、L、L、LおよびL10が置換または非置換エチレンから独立に選択されるメンバーであるものが含まれる。この実施形態による例示的なリガンドは化合物3の構造を有する。
【0082】
【化7】

【0083】
官能性部分
1つの例示的な実施形態では、本発明の化合物(例えば、リガンド3)は官能性部分を用いて誘導体化される。官能性部分は、例えば、リンカー単位の1つまたはビルディングブロックの1つと結合することができる。2つ以上の官能部分を用いる場合、それぞれは、利用できる結合部位のどれとも結合することができる。
【0084】
例示的実施形態では、官能性部分は以下の構造を有する。
【0085】
【化8】

ただし、L11は、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールから選択されるメンバーであるリンカー部分であり、Xは反応性官能基および標的部分から選択されるメンバーである。
【0086】
その官能性部分は、得られる官能化リガンドが安定した金属イオン錯体の形成を受けられるように結合していることが好ましい。例示的実施形態では、大環状リガンド3は官能性部分を用いて誘導体化される。図2は3のための好ましい誘導部位を示す。
【0087】
【化9】

【0088】
1つの例示的な実施形態では、化合物3は、図2の位置(aa)、(bb)または(cc)で誘導体化される。しかし、リガンドのコア構造内の代替位置(例えば、位置(dd)および(ee))が官能性部分で誘導体化されたリガンドは、同様に有用な特性を有すると予測される。
【0089】
例示的実施形態では、化合物は1つの官能性部分を含む。他の例示的実施形態では、化合物は、
【0090】
【化10】

【化11】

【化12】

から選択されるメンバーである構造を有する。
【0091】
例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L、L、L、L、L、L、L、L、LおよびL10は置換または非置換C〜Cアルキレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L、L、L、Lは置換または非置換エチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L、L、L、L10は置換または非置換エチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L、L、L、L10は置換または非置換メチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、Lは置換または非置換エチレンである。例示的実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物において、Lは置換または非置換エチレンである。例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L、L、L、LおよびLは置換または非置換エチレンである。例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L、L、L、L、L10は置換または非置換エチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L、L、L、L、L10は置換または非置換メチレンから独立に選択されるメンバーである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、この組成物は金属をさらに含み、したがって錯体を形成する。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、その金属はランタニドである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはNd、Sm、Eu、Tb、DyおよびYbから選択されるメンバーである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはTbである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはEuである。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xはそれが生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xはペプチド、タンパク質、酵素または抗体である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは核酸である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは炭水化物である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xはペプチド、タンパク質、酵素または抗体である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは核酸である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは炭水化物である標的部分である。
【0092】
例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、R、RおよびRはHである。例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、R、RおよびR10はHである。例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、R11、R12およびR13はHである。例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、R14、R15およびR16はHである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、この組成物は金属をさらに含み、したがって錯体を形成する。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、その金属はランタニドである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはNd、Sm、Eu、Tb、DyおよびYbから選択されるメンバーである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはTbである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはEuである。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xはそれが生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xはペプチド、タンパク質、酵素または抗体である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは核酸である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは炭水化物である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xはペプチド、タンパク質、酵素または抗体である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは核酸である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは炭水化物である標的部分である。
【0093】
例示的実施形態では、化合物は2つの官能部分を含む。他の例示的実施形態では、これらの官能基の一方はLと結合しており、他方はL、LおよびLから選択されるメンバーと結合している。他の例示的実施形態では、これらの官能基の一方はLと結合しており、他方はL、L、LおよびL10から選択されるメンバーと結合している。他の例示的実施形態では、これらの官能基の一方はLと結合しており、他方はLおよびLから選択されるメンバーと結合している。他の例示的実施形態では、これらの官能基の一方はLと結合しており、他方はR、R、R12およびR15から選択されるメンバーと結合している。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、この組成物は金属をさらに含み、したがって錯体を形成する。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、その金属はランタニドである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、ランタニドはNd、Sm、Eu、Tb、DyおよびYbから選択されるメンバーである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはTbである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはEuである。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xはそれが生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xはペプチド、タンパク質、酵素または抗体である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは核酸である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは炭水化物である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xはペプチド、タンパク質、酵素または抗体である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは核酸である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは炭水化物である標的部分である。
【0094】
他の例示的実施形態では、これらの官能基の一方はLと結合しており、他方はL、L、LおよびLから選択されるメンバーと結合している。他の例示的実施形態では、これらの官能基の一方はLと結合しており、他方はL、L、LおよびL10から選択されるメンバーと結合している。他の例示的実施形態では、これらの官能基の一方はLと結合しており、他方はLと結合している。他の例示的実施形態では、これらの官能基の一方はLと結合しており、他方はR、R、R12およびR15から選択されるメンバーと結合している。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、この組成物は金属をさらに含み、したがって錯体を形成する。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、その金属はランタニドである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはNd、Sm、Eu、Tb、DyおよびYbから選択されるメンバーである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはTbである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはEuである。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xはそれが生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xはペプチド、タンパク質、酵素または抗体である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは核酸である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは炭水化物である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xはペプチド、タンパク質、酵素または抗体である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは核酸である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは炭水化物である標的部分である。
【0095】
他の例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、Xはアミン、カルボン酸、マレイミジル、チアゾリジル、置換または非置換NHSエステル、スルホン化NHSエステルおよびスクシンイミジル部分から選択されるメンバーである。他の例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L11は置換もしくは非置換ヘテロアルキレンまたは置換もしくは非置換アルキレンであり、Xはアミン、カルボン酸、マレイミジル、チアゾリジル、置換または非置換NHSエステル、スルホン化NHSエステルおよびスクシンイミジル部分から選択されるメンバーである。他の例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L11−Xは、
【0096】
【化13】

から選択されるメンバーである。他の例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L11は置換または非置換アリールアルキルである。他の例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L11は置換または非置換アリールアルキルであり、Xはアミン、カルボン酸、マレイミジル、チアゾリジル、置換または非置換NHSエステル、スルホン化NHSエステルおよびスクシンイミジル部分から選択されるメンバーである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、この組成物は金属をさらに含み、したがって錯体を形成する。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、その金属はランタニドである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはTbである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはEuである。
【0097】
他の例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L11は置換もしくは非置換ヘテロアルキレンまたは置換もしくは非置換アルキレンであり、Xはそれが生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L11は置換または非置換C〜Cアルキレンであり、Xはそれが生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L11は置換または非置換ブチレンであり、Xはそれが生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L11は非置換ブチレンであり、Xはそれが生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、この組成物は金属をさらに含み、したがって錯体を形成する。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、その金属はランタニドである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはTbである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはEuである。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xはペプチド、タンパク質、酵素または抗体である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは核酸である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは炭水化物である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xはペプチド、タンパク質、酵素または抗体である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは核酸である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは炭水化物である標的部分である。
【0098】
例示的実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)の化合物において、L、L、LおよびLは置換または非置換エチレンから独立に選択されるメンバーであり、L11は置換もしくは非置換ヘテロアルキレンまたは置換もしくは非置換アルキレンであり、Xはそれが生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、この組成物は金属をさらに含み、したがって錯体を形成する。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、その金属はランタニドである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはTbである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはEuである。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xはペプチド、タンパク質、酵素または抗体である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは核酸である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物または錯体において、Xは炭水化物である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xはペプチド、タンパク質、酵素または抗体である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは核酸である標的部分である。他の例示的実施形態では、この段落で説明するテルビウムまたはユウロピウム錯体において、Xは炭水化物である標的部分である。
【0099】
官能性部分を含む本発明の好ましい化合物は以下の構造を有する。
【0100】
【化14】

式中、L11、X、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は上記定義通りである。例示的実施形態では、L11は置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキルおよび置換または非置換アリールから選択されるメンバーであり、Xはそれが生体分子である標的部分である。例示的実施形態では、L11は置換もしくは非置換ヘテロアルキレンまたは置換もしくは非置換アルキレンから選択されるメンバーであり、Xは、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーである生体分子である標的部分である。例示的実施形態では、L11は置換または非置換ブチレンであり、Xは抗体、酵素、核酸、炭水化物である。他の例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、この組成物は金属をさらに含み、したがって錯体を形成する。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、その金属はランタニドである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはTbである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはEuである。
【0101】
例えば、化合物3の位置(aa)(図2)を(CHNH基で官能化すると大環状誘導体4が得られる。
【0102】
【化15】

【0103】
反応性官能基
一実施形態では、官能性部分は反応性官能基Xを含み、これは、錯化剤を他の分子と共有結合により結合させるのに用いることができる。他の例示的実施形態では、他の分子は生体分子である。他の例示的実施形態では、他の分子は小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子である。あるいは、反応性官能基は、リガンドをいかなる種類のナノ粒子に結合させるのにも使用することができる。
【0104】
本明細書で説明する化合物を結合させるのに有用な反応性官能基および反応の部類は、一般に、バイオコンジュゲートケミストリー(bioconjugate chemistry)の技術分野でよく知られている。本発明の反応性官能基で得られる、最近好まれている部類の反応は、比較的穏やかな条件下で進行する反応である。これらには、これらに限定されないが、求核置換(例えば、アミンおよびアルコールとアシルハライドおよび活性化エステルの反応)、求電子置換(例えば、エナミン反応)ならびに炭素−炭素および炭素−ヘテロ原子多重結合への付加(例えば、マイケル(Michael)反応およびディールスアルダー(Diels- Alder)反応)が含まれる。上記および他の有用な反応は、例えば:March,ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY,3rd Ed.,John Wiley & Sons,New York,1985年;Hermanson,BIOCONJUGATE TECHNIQUES,Academic Press,San Diego,1996年;およびFeeneyら、MODIFICATION OF PROTEINS;Advances in Chemistry Series,Vol.198,American Chemical Society,Washington,D.C.,1982年において論じられている。
【0105】
a)アミンおよびアミノ反応基
一実施形態では、反応性官能基は、第一または第二アミン、ヒドラジン、ヒドラジドおよびスルホニルヒドラジドなどのアミンから選択されるメンバーである。アミンは、例えばアシル化、アルキル化または酸化されていてよい。アミノ反応基の有用な非限定的例には、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、スルホ−NHSエステル、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、アシルハライド、アリールアジド、p−ニトロフェニルエステル、アルデヒド、スルホニルクロリドおよびカルボキシル基が含まれる。
【0106】
NHSエステルおよびスルホNHSエステルは、反応相手の第一(芳香族を含む)アミノ基と優先的に反応する。ヒスチジンのイミダゾール基は第一アミンと競争的に反応することが知られているが、反応生成物は不安定であり簡単に加水分解される。反応は、NHSエステルの酸カルボキシルのアミンの求核攻撃を伴ってアミドを生成し、N−ヒドロキシスクシンイミドを放出する。
【0107】
イミドエステルは、例えばタンパク質のアミン基との反応に対する最も特異的なアシル化試薬である。7〜10のpHで、イミドエステルは第一アミンとだけ反応する。第一アミンはイミデートを求核的に攻撃して、高いpHでアミジンに分解するか、または低いpHで新規のイミデートに分解する中間体を生成する。新規のイミデートは別の第一アミンと反応して2つのアミノ基を架橋することができる。一官能性と推定されるイミデートが二官能性的に反応するケースである。第一アミンとの反応の主要生成物は、元のアミンより強い塩基のアミジンである。したがって、元のアミノ基の正電荷は保持される。結果として、イミドエステルは共役全体の電荷に影響を及ぼさない。
【0108】
イソシアネート(およびイソチオシアネート)は共役成分の第一アミンと反応して安定した結合を形成する。そのスルフヒドリル、イミダゾールおよびチロシル基との反応によって比較的不安定な生成物が得られる。
【0109】
アシルアジドはアミノ特異試薬としても用いられる。その場合、反応相手の求核アミンは弱いアルカリ性条件下、例えばpH8.5で酸性のカルボキシル基を攻撃する。
【0110】
1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなどのアリールハライドは、共役成分のアミノ基およびチロシンフェノール基と優先的に反応するが、そのスルフヒドリルおよびイミダゾール基とも優先的に反応する。
【0111】
カルボン酸のp−ニトロフェニルエステルは有用なアミノ−反応基でもある。試薬特異性はそれほど高くはないが、α−およびε−アミノ基が最も速く反応するようである。
【0112】
アルデヒドは共役成分の第一アミン(例えば、リシン残基のε−アミノ基)と反応する。不安定ではあるが、タンパク質アミノ基とアルデヒドの反応によってシッフ塩基が生成される。しかし、別の二重結合と共役した場合、シッフ塩基は安定である。両方の二重結合の共鳴相互作用によってシッフ結合の加水分解は防止される。さらに、高い局所濃度でのアミンはエチレン二重結合を攻撃して安定したマイケル付加生成物を生成することができる。あるいは、還元的アミノ化によって安定した結合を形成させることができる。
【0113】
芳香族スルホニルクロリドは、共役成分の様々な部位で反応するが、安定したスルホンアミド結合をもたらすアミノ基との反応が最も重要である。
【0114】
遊離カルボキシル基は、水と有機溶媒の両方に可溶性のカルボジイミドと反応してプソイド尿素を生成する。このプソイド尿素は、次いで利用できるアミンと結合してアミド結合を形成することができる。例えば、Yamadaら、Biochemistry 1981年、20:4836〜4842頁はカルボジイミドでタンパク質を修飾する仕方を教示している。
【0115】
b)スルフヒドリルおよびスルフヒドリル反応基
他の実施形態では、反応性官能基はスルフヒドリル基(ジスルフィドへ転換させることができる)およびスルフヒドリル反応基から選択されるメンバーである。スルフヒドリル反応基の有用な非限定的例には、マレイミド、アルキルハライド、アシルハライド(ブロモアセトアミドまたはクロロアセトアミドを含む)、ピリジルジスルフィドおよびチオフタルイミドが含まれる。
【0116】
マレイミドは共役成分のスルフヒドリル基と優先的に反応して安定したチオエーテル結合を形成する。これらは、ずっと遅い速度で、ヒスチジンの第一アミノ基およびイミダゾール基とも反応する。しかし、このpHでは、単なるチオールの反応速度は対応するアミンの反応速度より1000倍も速いので、pH7ではマレイミド基を、スルフヒドリル特異基であると見なすことができる。
【0117】
アルキルハライドはスルフヒドリル基、スルフィド、イミダゾールおよびアミノ基と反応する。しかし、中性からややアルカリ性のpHでは、アルキルハライドは主にスルフヒドリル基と反応して安定したチオエーテル結合を形成する。より高いpHでは、アミノ基との反応が好ましい。
【0118】
ピリジルジスルフィドは、ジスルフィド交換によって、遊離スルフヒドリル基と反応して混合ジスルフィドを生成する。結果的には、ピリジルジスルフィドは比較的特異的なスルフヒドリル反応基である。
【0119】
チオフタルイミドも遊離スルフヒドリル基と反応してジスルフィドを生成する。
【0120】
c)他の反応性官能基
他の反応性官能基の例には、
(a)カルボキシル基、ならびに、(これらに限定されないが)N−ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、酸ハライド、アシルイミダゾール、チオエステル、p−ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび芳香族エステルを含む様々なその誘導体、
(b)エステル、エーテル、アルデヒド等へ転換できるヒドロキシル基、
(c)ハロアルキル基(そのハライドを、例えばアミン、カルボキシレートアニオン、チオールアニオン、カルバニオンまたはアルコキシドイオンなどの求核基で置き換え、それによってハロゲン原子の部位での新規な基の共有結合をもたらすことができる)、
(d)例えばマレイミド基などのディールアルダー反応に参加することができるジエノフィル基;
(e)例えばイミン、ヒドラゾン、セミカルバゾンもしくはオキシムなどのカルボニル誘導体の生成によって、あるいはグリニャール付加もしくはアルキルリチウム付加のような機序によって後続の誘導体化が可能であるアルデヒドまたはケトン基、
(f)例えば付加環化、アシル化、マイケル付加等を施すことができるアルケン、
(g)例えばアミンやヒドロキシル基と反応できるエポキシド、
(h)核酸合成において有用なホスホルアミダイトおよび他の標準的な官能基、ならびに
(i)官能化リガンドと、分子的実体または表面との間で共有結合を形成するのに有用な任意の他の官能基
が含まれる。
【0121】
d)非特異的反応性を有する反応性官能基
部位特異的反応性部分の使用に加えて、本発明は、本明細書で記載の化合物を標的部分と結合させる非特異的反応性官能基の使用を考慮する。非特異基には、例えば光活性化可能な基が含まれる。光活性化可能な基は、暗所で不活であり、光の存在下で反応性種に転換されることが理想的である。一実施形態では、光活性化可能な基は、アジドを加熱または光分解して得られるナイトレンの前駆体から選択される。電子が不足したナイトレンは著しく反応性であり、N−H、O−H、C−HおよびC=Cを含む様々な化学結合と反応することができる。3つのタイプのアジド(アリール、アルキルおよびアシル誘導体)が使用できるが、今のところアリールアジドが好ましい。光分解の際のアリールアジドの反応性は、C−H結合とより、N−HおよびO−Hとの反応性がより良好である。電子不足アリールナイトレンは急速に開環してデヒドロアゼピンを生成する。これは、C−H挿入生成物とより、求核物質と反応する傾向がある。アリールアジドの反応性は、環中にニトロまたはヒドロキシル基などの電子吸収置換基を存在させることよって増大させることができる。そのような置換基は、アリールアジドの吸収最大をより長い波長の方へ押しやる。非置換アリールアジドは260〜280nmの範囲に吸収最大を有するが、ヒドロキシおよびニトロアリールアジドは305nmを超えたところで相当な光を吸収する。したがって、非置換アリールアジドより、親和性成分のためにより有害性の小さい光分解条件を用いることを可能にするので、ヒドロキシおよびニトロアリールアジドが最も好ましい。
【0122】
他の好ましい実施形態では、光活性化可能な基はフッ素化アリールアジドから選択される。フッ素化アリールアジドの光分解生成物はアリールナイトレンであり、そのすべては、C−H結合挿入を含むこの基の特徴的な反応が高効率で受けられる(Keanaら、J.Org.Chem.55:3640〜3647頁、1990年)。
【0123】
他の実施形態では、光活性化可能な基はベンゾフェノン残基から選択される。ベンゾフェノン試薬は一般にアリールアジド試薬より高い架橋収率を与える。
【0124】
他の実施形態では、光活性化可能な基は、光分解により電子不足カルベンを生成するジアゾ化合物から選択される。これらのカルベンは、C−H結合中への挿入、二重結合(芳香族系を含む)への付加、水素誘引(hydrogen attraction)および求核中心との配位を含む様々な反応を受けて炭素イオンを生成する。
【0125】
さらに他の実施形態では、光活性化可能な基はジアゾピルベートから選択される。例えば、p−ニトロフェニルジアゾピルベートのp−ニトロフェニルエステルは脂肪族アミンとの反応によってジアゾピルビン酸アミドが得られる。これは紫外線光分解されてアルデヒドを生成する。光分解したジアゾピルベート改変親和性成分は、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドの様に反応してタンパク質内架橋を形成する。
【0126】
反応相手に応じて反応性官能基を選択するのは、十分に当業者の能力の範囲内であろう。一例として、NHSエステルなどの活性化エステルは、リシン残基を介してタンパク質を標識化するのに有用であろう。マレイミドなどのスルフヒドリル反応基は、SH基を担持するアミノ酸残基(例えば、システイン)を介してタンパク質を標識化するのに用いることができる。抗体は、まずその炭水化物部分を酸化し(例えば、ペリオデートで)、次いで得られたアルデヒド基を、リガンドを含むヒドラジンと反応させることによって標識化することができる。
【0127】
本発明の化合物上および標的部分(またはポリマーもしくはリンカー)上で見られる反応性官能基の他の例示的組合せを表2に示す。
【0128】
【表1】

【0129】
当業者は、これらの結合の多くを、様々な仕方でかつ様々な条件を用いて形成できることを容易に理解されよう。エステルの作製のためには、例えば、チオエステルについては上記Marchの1157を;カーボネートについては上記Marchの362〜363、491、720〜722、829、941および1172頁を;カルバメートについては上記Marchの346〜347頁を;アミドについては上記Marchの1156〜57頁を;尿素およびチオ尿素については上記Marchの1152頁を;アセタールおよびケタールについては上記Marchの1174頁を;アシルオキシアルキル誘導体については上記Greeneらの178〜210頁および上記Marchの1146頁を;エノールエステルについてはPRODRUGS:TOPICAL AND OCULAR DRUG DELIVERY,K.B.Sloan,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1992頁を;N−スルホニルイミデートについては上記Marchの1160頁を;無水物についてはBundgaardら、J.Med.Chem.,31:2066頁(1988年)を;N−アシルアミドについては上記Marchの355〜56、636〜37、990〜91および1154頁を;N−マンニッヒ塩基については上記Marchの379頁を;ヒドロキシメチルケトンエステルについては上記Marchの800〜02および828頁を;ジスルフィドについてはPetracekらのAnnals NY Acad.ScL,507:353〜54頁(1987年)を;また、ホスホネートエステルおよびホスホンアミデートについては上記Marchの1160頁を参照されたい。
【0130】
反応性官能基は、反応性のリガンド類似体を構築するのに必要な反応に関与しないかまたはそれを妨げないように選択することができる。あるいは、保護基を存在させることによって、反応性官能基が反応に関与することを防ぐことができる。当業者は、選択された一連の反応条件について、特定の官能基が邪魔するのをどのようにして保護するかを理解されていよう。有用な保護基の例としては、例えばGreeneら、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,John Wiley & Sons,New York、1991年を参照されたい。
【0131】
一般に、本発明の化合物と標的化剤(または他の薬剤)および任意選択の連結基との結合を形成させる前に、化学官能基の少なくとも1つを活性化することになる。当業者は、ヒドロキシ、アミノおよびカルボキシ基を含む様々な化学官能基を、種々の標準的方法および条件を用いて活性化できることを理解されよう。例えば、リガンド(または標的化剤)のヒドロキシル基は、ホスゲンでの処理により活性化させて対応するクロロホーメートを生成することができ、また、p−ニトロフェニルクロロホーメートでの処理により活性化させて対応するカーボネートを生成することができる。
【0132】
例示的実施形態では、本発明は、カルボキシル官能基を含む標的化剤を使用する。カルボキシル基は、例えば、対応するアシルハライドまたは活性エステルへの転換によって活性化させることができる。この反応は、March、上記388〜89頁で示されるような様々な条件下で実施することができる。例示的実施形態では、アシルハライドは、カルボキシル含有基を塩化オキサリルと反応させて調製する。活性化剤を、リガンドまたはリガンド−リンカーアームの組合せと合わせて本発明の接合を形成させる。当業者は、カルボキシル含有標的化剤の使用は単に例示のためだけであり、多くの他の官能基を有する薬剤を本発明のリガンドに接合させることができることを理解されよう。
【0133】
標的部分
例示的実施形態では、標的部分は生体分子である。例示的な標的部分には、小分子リガンド、脂質、直鎖および環状ペプチド、ポリペプチド(例えば、EPO、インスリン等)ならびに酵素および受容体などのタンパク質が含まれる。他の標的部分には、抗体および抗体断片(例えば、小分子や受容体リガンドを認識するために生成されたもの)、抗原、核酸(例えば、RNAおよびcDNA)、炭水化物部分(例えば、多糖類)ならびに毒素、調合薬および乱用薬物などの薬理学的に活性な分子(例えば、ステロイド)が含まれる。他の標的部分は、固体支持体および高分子表面(例えば、高分子ビーズおよびプラスチックウェルプレートなどのプラスチック試料リザーバー)、シート、繊維ならびに膜から選択される。標的部分は粒子(例えば、ナノ粒子)および薬物送達媒体も含む。
【0134】
一実施形態では、標的部分は、少なくとも1つの単位の大環状化合物を含む。例示的実施形態では、標的部分の大環状化合物は、本明細書で記載の化合物である構造を有する。他の例示的実施形態では、標的部分の大環状化合物は式(I)もしくは(Ia)または(II)もしくは(IIa)または(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)による構造を有する。他の例示的実施形態では、本発明の化合物は、デンドリマー構造を有し、本明細書で記載の化合物による構造を有する複数のリガンドを含む。他の例示的実施形態では、本発明の化合物は、デンドリマー構造を有し、式(I)もしくは(Ia)または(II)もしくは(IIa)または(III)もしくは(IIIa)または(IV)もしくは(IVa)または(V)もしくは(Va)または(VI)もしくは(VIa)または(VII)もしくは(VIIa)または(VIII)もしくは(VIIIa)による構造を有する複数のリガンドを含む。この態様による、他の例示的実施形態では、そのようなデンドリマーをベースとした錯体は少なくとも2つの金属イオンを含む。
【0135】
1つの例示的な実施形態では、標的部分は、錯体が励起されたとき本発明の錯体とルミネッセンス改変基との間のルミネッセンスエネルギー移動を可能にするルミネッセンス改変基で置換される。
【0136】
さらなる実施形態では、本発明の化合物は、試料中(例えば、患者の血液中)の脂質を検出することを目的とした任意のアッセイ様式で用いることができる。この実施形態による錯体の例には、脂質認識モチーフを含むタンパク質である標的部分が含まれる。脂質結合タンパク質の例には、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルイノシトールホスフェートまたは他の生体脂質と結合するものが含まれる。
【0137】
他の例では、標的部分は、検体を認識しそれと結合する抗体である。例示的なアッセイシステムでは、検体を、まず試料を本発明の錯体とインキュベートすることによって試料中で検出することができる。ここで、その錯体は、検体のための結合部位を含む抗体と共有結合により結合している。次いで、その混合物に、検体と同じ結合部位に結合し、かつルミネッセンス改変基(例えば、受容体)を含む過剰のプローブ分子を加えることができる。試料中での検体の存在と濃度はアッセイ混合物のルミネッセンスによって示される。例えば、試料中の検体の濃度が高い場合、抗体結合部位の多くは検体で占有されており、より少ない結合部位しかプローブ分子のために利用できない。例示的実施形態では、検体は脂質分子である。
【0138】
他の好ましい実施形態では、標的部分は薬物の部分である。薬物部分は、臨床使用ですでに受け入れられている薬剤であってよく、あるいは、その使用が実験段階であるかまたはその作用の活性もしくは機序が研究中のものである薬物であってもよい。他の好ましい実施形態では、標的部分は乱用薬物である。その薬物部分は、所与の病状において立証された作用を有していても、また所与の病状において望ましい作用を示すと仮定されているだけでもよい。好ましい実施形態では、薬物部分は、選択された検体と相互作用する能力があることをスクリーニングされている化合物である。したがって、本発明の標的部分として有用な薬物部分には、様々な薬理活性を有する広範な薬物類からの薬物が含まれる。
【0139】
有用な薬剤類には、例えば非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS)が含まれる。NSAIDSは、例えば以下の範疇のものから選択することができる:(例えば、プロピオン酸誘導体、酢酸誘導体、フェナミン酸誘導体、ビフェニルカルボン酸誘導体およびオキシカム);ヒドロコルチゾンなどを含むステロイド系抗炎症薬;抗ヒスタミン剤(例えば、クロルフェニラミン、トリプロリジン);鎮咳薬(例えば、デキストロメトルファン、コデイン、カラミフェンおよびカルベタペンタン);かゆみ止め剤(例えば、メチジリジン(methidilizine)およびトリメプリジン(trimeprizine));抗コリン薬(例えば、スコポラミン、アトロピン、ホマトロピン、レボドパ);制吐剤および鎮吐剤(例えば、シクリジン、メクリジン、クロルプロマジン、ブクリジン);食欲減退薬(例えば、ベンズフェタミン、フェンテルミン、クロルフェンテルミン、フェンフルラミン);中枢刺激剤(例えば、アンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミンおよびメチルフェニデート);抗不整脈薬(例えば、プロパノロール(propanolol)、プロカインアミド、ジソピラミド、キニジン、エンカイニド);β−アドレナリン遮断薬(例えば、メトプロロール、アセブトロール、ベタキソロール、ラベタロールおよびチモロール);強心剤(例えば、ミルリノン、アムリノンおよびドブタミン);抗高血圧薬(例えば、エナラプリル、クロニジン、ヒドララジン、ミノキシジル、グアナドレル、グアネチジン);利尿薬(例えば、アミロリドおよびヒドロクロロチアジド);血管拡張薬(例えば、ジルチアゼム、アミオダロン、イソクスプリン、ナイリドリン、トラゾリンおよびベラパミル);血管収縮薬(例えば、ジヒドロエルゴタミン、エルゴタミンおよびメチルセルギド);抗潰瘍薬(例えば、ラニチジンおよびシメチジン);麻酔薬(例えば、リドカイン、ブピバカイン、クロルプロカイン、ジブカイン);抗うつ薬(例えば、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン);精神安定剤および鎮静剤(例えば、クロルジアゼポキシド、ベナクチジン、ベンズキナミド、フルラゼパム、ヒドロキシジン、ロキサピンおよびプロマジン);抗精神病薬剤(例えば、クロルプロチキセン、フルフェナジン、ハロペリドール、モリンドン、チオリダジンおよびトリフルオペラジン);抗菌薬(抗菌剤、抗真菌剤、抗原虫剤および抗ウイルス剤)。
【0140】
本発明の組成物中に混ぜ込むのに好ましい抗菌薬には、例えば、β−ラクタム薬物、キノロン薬物の薬学的に許容される塩、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、アミカシン、トリクロサン、ドキシサイクリン、カプレオマイシン、クロルヘキシジン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クリンダマイシン、エタンブトール、ヘキサミジンイソチオネート、メトロニダゾール、ペンタミジン、ゲンタマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メタサイクリン、メテナミン、ミノサイクリン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ミコナゾールおよびアマンタジンが含まれる。
【0141】
本発明を実施するのに用いられる他の薬物部分には、抗腫瘍薬(例えば、抗アンドロゲン薬(例えば、ロイプロリドまたはフルタミド)、細胞破壊薬(例えば、アドリアマイシン、ドキソルビシン、タクソール、シクロホスファミド、ブスルファン、シスプラチン、α−2−インターフェロン)、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン)、代謝拮抗物質(例えば、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン)が含まれる。
【0142】
標的部分には、ホルモン(例えば、メドロキシプロゲステロン、エストラジオール、ロイプロリド、メゲストロール、オクトレオチドまたはソマトスタチン);筋弛緩薬(例えば、シンナメドリン、シクロベンザプリン、フラボキセイト、オルフェナドリン、パパベリン、メベベリン、イダベリン、リトドリン、ジフェノキシレート、ダントロレンおよびアズモレン);鎮痙薬;骨活性剤(bone-active drug)(例えば、ジホスホネートおよびホスホノアルキルホスフィネート薬剤化合物);内分泌調節剤(例えば、避妊薬(例えば、エチノジオール、エチニルエストラジオール、ルエチンドロン、メストラノール、デソゲストレル、メドロキシプロゲステロン)、糖尿病の調節剤(例えば、グリブリドまたはクロルプロパミド)、テストラクトンまたはスタノゾロール、アンドロゲン(例えば、メチルテストステロン、テストステロンまたはフルオキシメステロン)などの同化剤、抗利尿薬(例えば、デスモプレシン)およびカルシトニン)も含まれる。
【0143】
本発明では、エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロール)、グルココルチコイド(例えば、トリアムシノロン、ベータメタゾン等)、およびノルエチンドロン、エチノジオールジ、ノルエチンドロン、レボノルゲストレルなどのプロゲンストゲン(progenstogen);甲状腺剤(例えば、リオチロニンもしくはレボシロキシン)または抗甲状腺薬(例えば、メチマゾール);抗高プロラクチン血症剤(例えば、カベルゴリン);ホルモン抑制剤(例えば、ダナゾールまたはゴセレリン)、分娩促進薬(例えば、メチルエルゴノビンまたはオキシトシン)およびプロスタグランジン、例えばミソプロストール、アルプロスタジルまたはジノプロストンも使用することができる。
【0144】
他の有用な標的部分には、免疫調節薬(例えば、抗ヒスタミン剤、ロドキサミドおよび/またはクロモリンなどの肥満細胞安定剤、ステロイド(例えば、トリアムシノロン、ベクロメタゾン(beclomethazone)、コルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベクロメタゾン、またはクロベタゾール)、ヒスタミンHアンタゴニスト(例えば、ファモチジン、シメチジン、ラニチジン)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロスポリン)等が含まれる。スリンダク、エトドラク、ケトプロフェンおよびケトロラクなどの抗炎症活性を有するグループも用いられる。本発明と併用される他の薬剤は当業者に明らかであろう。
【0145】
上記に列挙したものおよび他の分子を、当業者に周知の方法によって本発明の化合物、固体基質などへ結合させることができる。例えば、バイオコンジュゲートケミストリーおよび薬物送達の分野を扱った文献に多くのガイダンスが記載されている。例えば、利用可能なアミンを含む薬物に直面している当業者は、様々なアミン誘導体化反応の中から選択し、有機層のために適度に官能性のパートナー(例えば、カルボン酸末端チオール)を配置し、所望の結合を実施するように選択された条件下でパートナーを反応させることができる(例えば、脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド)。例えば、MODIFICATION OF PROTEINS:FOOD,NUTRITIONAL,AND PHARMACOLOGICAL ASPECTS,Feeneyら、Eds.,American Chemical Society,Washington,D.C.,1982年、370〜387頁;POLYMERIC DRUGS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,Dunnら、Eds.,American Chemical Society,Washington,D.C.,1991年を参照されたい。
【0146】
リンカーL11
1つの好ましい実施形態では、官能性部分のリンカーL11は、合成の際の副反応(例えば、分子内ペプチド結合の形成などの分子内反応)を回避して本発明の化合物または錯体の標的部分への結合を可能にし、標的部分による目的とする機能の遂行を可能にするのに十分長いものである。有用なリンカーには約2〜約50個の直鎖状原子、好ましくは約4〜約20個の直鎖状原子を有するものが含まれる。
【0147】
他の例示的実施形態では、リンカー部分L11または標的部分にはポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体などのポリエーテルが含まれる。一例では、そのポリエーテルは約50〜約10,000ダルトンの分子量を有する。
【0148】
例示的化合物
本発明の例示的化合物には以下のものが含まれる。
【0149】
【化16】

【化17】

ただし、R、R、RおよびRは上記定義通りである。例示的実施形態では、これらの例示的化合物のうちの1つは金属とキレート化し、それによって錯体を形成する。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、その金属はランタニドである。例示的実施形態では、そのランタニドはNd、Sm、Eu、Tb、DyおよびYbから選択されるメンバーである。例示的実施形態では、そのランタニドはTbである。例示的実施形態では、この段落で説明する化合物において、そのランタニドはEuである。例示的実施形態では、化合物は4であり、ランタニドはNd、Sm、Eu、Tb、DyおよびYbから選択されるメンバーである。例示的実施形態では、化合物は4であり、そのランタニドはTbである。例示的実施形態では、化合物は4であり、そのランタニドはEuである。例示的実施形態では、化合物は5aであり、ランタニドはNd、Sm、Eu、Tb、DyおよびYbから選択されるメンバーである。例示的実施形態では、化合物は5aであり、そのランタニドはTbである。例示的実施形態では、化合物は5aであり、そのランタニドはEuである。
【0150】
合成
本発明の化合物および錯体は、一般によく知られている合成方法との適切な組合せによって合成される。本発明の化合物を合成するのに有用な技術は、容易に明らかなものと当業者が利用できるものとの両方である。本発明の化合物を構築するのに用いることができる様々な方法のいくつかを示すために、以下の考察を提供するが、本発明の化合物を調製するのに有用な反応の範囲または反応の順番を限定しようとするものではない。
【0151】
本発明の化合物は、単一の立体異性体としてまたは立体異性体の混合物として調製することができる。好ましい実施形態では、化合物は実質的に単一の異性体として調製される。異性体として純粋な化合物は、不斉中心での立体構造を変えないでおくかまたはその完全な逆転をもたらす反応と組み合わせて、異性体として純粋な合成中間体を用いて調製する。あるいは最終生成物または合成経路に沿った中間体を、単一の立体異性体に分割することができる。特定の立体中心を逆転させるかまたは変えないでおく技術、および立体異性体の混合物を分割する技術は当業界で周知であり、特定の状態に適した方法を選択することは十分に当業者の能力の範囲内である。一般的には、Furnissら、(eds.),VOGEL’s ENCYCLOPEDIA OF PRACTICAL ORGANIC CHEMISTRY 5TH ED.,Longman Scientific and Technical Ltd.,Essex,1991年、809〜816頁;およびHeller,Ace.Chem.Res.23:128(1990年)を参照されたい。
【0152】
一実施形態では、本発明の化合物は、キャップ分子をヒドロキシイソフタル酸などの適切なビルディングブロックと反応させて合成する。次いで得られた中間体を、選択的に官能性部分を含む第2のキャップ分子と反応させる。実施例の節で例示の合成経路を概略的に示す。
【0153】
図2における(aa)での結合
官能基を含む例示的なキャップ分子の合成法の概略を以下に示す。化合物13はスキーム1に示す合成経路にしたがって調製することができる。次いで、実施例4、5、6および7に概略を示す合成アプローチを用いて、化合物13を化合物9に転換させることができる。
【0154】
【化18】

【0155】
以下のスキームに示す例示的な説明にしたがって、複数の官能基を結合させることができる。異なる官能基を結合させる他の方法は、当業者に周知の方法によって行われる。
【0156】
【化19】

【0157】
図2における(bb)での結合
スキーム3は、本発明の化合物を合成するための例示的方法の概要を示す。
【0158】
【化20】

【0159】
図2における(cc)での結合
スキーム4は、化合物11を合成するための例示的方法の概要を示す。
【0160】
【化21】

【0161】
スキーム5は、化合物10を合成するための例示的方法の概要を示す。
【0162】
【化22】

【0163】
化合物15はスキーム5に概要を示す手順を用いて調製することができる。続いて、ニトロ基の還元に有用な合成ことに加えて、実施例4、5、6および7に記載する合成ことを用いて、15を化合物10に転換させることができる。
【0164】
スキーム6は、化合物11aを合成するための例示的方法の概要を示す。
【0165】
【化23】

【0166】
スキーム7は、化合物11bを合成するための例示的方法の概要を示す。
【0167】
【化24】

【0168】
スキーム8は、化合物12を合成するための例示的方法の概要を示す。
【0169】
【化25】

【0170】
化合物16はスキーム6に概要を示す手順を用いて合成することができ、これを、実施例4、5、6および7で概要を示す合成ことにしたがって、化合物12を合成するための出発原料として使用することができる。
【0171】
スキーム9は、化合物16と類似しているが、異なったアミン保護スキームを用いて化合物を合成する別の例示的な方法の概要を示す。
【0172】
【化26】

【0173】
図2における(dd)での結合
スキーム10は、(dd)位置に結合する官能性部分を有する化合物を合成するための例示的方法の概要を示す。このスキームは、(cc)と(dd)の両方の位置に官能性部分を有する錯化剤の合成を示しているが、本明細書で説明する合成方法の1つ以上を用いて、(dd)位置に単一官能性部分(または別の位置に他の官能性部分)を有する錯化剤を合成することができる。
【0174】
【化27】

【化28】

【0175】
図2における(ee)での結合
スキーム11は、(ee)位置に結合する官能性部分を有する化合物を合成するための例示的方法の概要を示す。このスキームは、(cc)と(ee)の両方の位置に官能性部分を有する錯化剤の合成を示しているが、本明細書で説明する合成方法の1つ以上を用いて、(ee)位置に単一官能性部分(または別の位置に他の官能性部分)を有する錯化剤を合成することができる。
【0176】
【化29】

【0177】
これらの分子の合成のための他の例は実施例の節に見ることができる。
【0178】
錯化剤が生成し精製されると、金属錯体は、例えば、リガンドの塩をランタニド塩(例えば、ランタニドトリハライド、ランタニドトリアセテート)などの金属塩とのインキュベートによることを含む、広い範囲の当業界で認められている方法のいずれかによって合成される。本発明の錯体を得るために、錯化剤を標的部分と結合させる前かまたはその後に、錯化剤と金属イオンの反応を実施する。
【0179】
第1のキャップ部分の結合
スキーム12は、フタラミジル部分と結合したキャップ分子を合成するための例示的方法の概要を示す。
【0180】
【化30】

【0181】
第2のキャップ部分の結合
第2のキャップ部分は、スキーム13による本明細書に記載の分子と結合させることができる。
【0182】
【化31】

【0183】
第2のキャップ部分を結合させる他の例示的方法をスキーム14に示す。
【0184】
【化32】

【0185】
第2のキャップ部分を結合させる他の例示的方法をスキーム15に示す。
【0186】
【化33】

【0187】
第2のキャップ部分を結合させる他の例示的方法をスキーム16に示す。
【0188】
【化34】

【0189】
第2のキャップ部分を結合させる他の例示的方法をスキーム17に示す。
【0190】
【化35】

【0191】
11−Xの官能化
様々なリンカー部分を本発明の化合物に結合させることができる。リンカー部分の選択は、分子がそれに結合することになる部分によって分かることになる。例えば、以下のスキームはマレイミド部分を有するが、これは、システインなどのチオール部分への結合に有用である。マレイミド部分の本発明の化合物への結合の状態をスキーム18に示す。
【0192】
【化36】

【0193】
11−Xを官能化するための他の例示的方法をスキーム19に示す。
【0194】
【化37】

【0195】
11−Xを官能化するための他の例示的方法をスキーム20に示す。このスキームでは、オリゴヌクレオチド鎖中に組み込むための本発明の化合物のホスホルアミダイト誘導体を示す。
【0196】
【化38】

【0197】
11−Xを官能化するための他の例示的方法をスキーム21に示す。このスキームでは、本発明の炭水化物接合化合物を示す。
【0198】
【化39】

【0199】
糖類または多糖類中のヒドロキシ基は、アセトキシまたはベンジル基で容易に保護することができる。保護された炭水化物は、カルボキシルまたはアミノ基で誘導化することができる。典型的な例は以下のものである。
【0200】
【化40】

【0201】
上記の合成スキームは本発明の特定の実施形態を例示しようとしたものであり、当業者は、必要以上に実験することなく、本発明のリガンドを作製するための他の多くの合成戦略を利用できることを認識されよう。
【0202】
イソフタルアミジル基上と、イソフタルアミジル基を結合させるキャッピング分子上の置換基はそれ自体、ヒドロキシイソフタルアミジル基以外のキレート剤を含むことができる。これらのキレーターは、カルボキシレートまたはホスホネート基などの複数のアニオン基を含むことが好ましい。好ましい実施形態では、これらの非PLキレート剤は、それ自体ランタニドキレーターとして機能できる化合物から選択される。他の好ましい実施形態では、キレーターはアミノカルボキシレート(すなわち、EDTA、DTPA、DOTA、NTA、HDTA等、およびDTPP、EDTP、HDTP、NTPなどのそのホスホネート類似体)である。
【0203】
多くの有用なキレート基、クラウンエーテル、クリプタンドなどが当業界で周知であり、これらを本発明の化合物に取り込むことができる。例えばPitt et ah,“The Design of Chelating Agents for the Treatment of Iron Overload,”In,INORGANIC CHEMISTRY IN BIOLOGY AND MEDICINE;Martell,Ed.;American Chemical Society,Washington,D.C,1980年、279〜312頁;Lindoy,THE CHEMISTRY OF MACROCYCLIC LIGAND COMPLEXES;Cambridge University Press,Cambridge,1989年;Dugas,BIOORGANIC CHEMISTRY;Springer−Verlag,New York,1989年およびこれらに含まれている文献を参照されたい。
【0204】
さらに、キレート剤であるクラウンエーテルおよびシクロデキストリンの他の分子への結合を可能にする様々な経路を当業者は利用することができる。例えばMearesら、“Properties of In Vivo Chelate−Tagged Proteins and Polypeptides.”In,MODIFICATION OF PROTEINS:FOOD,NUTRITIONAL,AND PHARMACOLOGICAL ASPECTS;“Feeneyら、Eds.,American Chemical Society,Washington,D.C.,1982年、370〜387頁;Kasinaら、Bioconjugate Chem.,9:108〜117頁(1998年);Songら、Bioconjugate Chem.,8:249〜255頁(1997年)を参照されたい。
【0205】
他の実施形態では、イソフタルアミジル基上または主鎖上の置換基はルミネッセンス感光性のものである。感光性物質の例には、ローダミン560、575および590フルオレセイン、2−もしくは4−キノロン、2もしくは4−クマリンまたはその誘導体、例えばクマリン445、450、490、500および503、4−トリフルオロメチルクマリン(TFC)、7−ジエチル−アミノ−クマリン−3−カルボヒドラジド等、特にカルボスチリル124(7−アミノ−4−メチル−2−キノロン)、クマリン120(7−アミノ−4−メチル−2−クマリン)、クマリン124(7−アミノ−4−(トリフルオロメチル)−2−クマリン)、アミノメチルトリメチルソラレン、ナフタレンなどが含まれる。
【0206】
錯体
第2の態様では、本発明は、少なくとも1つの金属イオンと本発明の化合物との間で形成される錯体を提供する。1つの例示的な実施形態では、金属はランタニドの群から選択されるメンバーである。ランタニドの例には、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)およびイッテルビウム(Yb)が含まれる。その中でユウロピウムおよびテルビウムが好ましい。エルビウム(Er)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)およびルテチウム(Lu)などの他のランタニドイオンが有用であるが、これらはそれほど好ましいものではない。他の好ましい実施形態では、本発明の錯体はルミネッセントである。
【0207】
錯化剤を生成させ精製した後、例えば、キレートの塩をランタニドトリハライド、トリアセテートなどのランタニド塩とインキュベートすることを含む当業界で周知の様々な方法のいずれかによって、金属錯体を合成することができる。
【0208】
ルミネッセンス改変基(供与体および受容体部分)
本発明のルミネッセント化合物を、広範囲のエネルギー供与体および受容体分子とともに使用して、ルミネッセンスエネルギー移動ペア、例えば、蛍光エネルギー移動(FET)プローブを構成することができる。本発明の錯体と共に用いるのに有用なフルオロフォアは当業者に周知である。例えばCardulloら、Proc.Natl Acad.Sci.USA 85:8790〜8794頁(1988年);Dexter,D.L.,J.of Chemical Physics 21:836〜850頁(1953年);Hochstrasserら、Biophysical Chemistry 45:133〜141頁(1992年);Selvin,P.,Methods in Enzymology246:300〜334頁(1995年);Steinberg,I.Ann.Rev.Biochem.,40:83〜114頁(1971年);Stryer,L.Ann.Rev.Biochem.,47:819〜846頁(1978年);Wangら、Tetrahedron Letters 31:6493〜6496頁(1990年);Wangら、Anal.Chem.67:1197〜1203頁(1995年)を参照されたい。
【0209】
本発明のルミネッセント錯体と共に使用できる供与体または受容体部分の例の非限定的なリストを表1に挙げる。
【0210】
【表2】


【0211】
特定のプローブに適した供与体−受容体ペアを選択するのに利用できる実際的なガイダンスは、以下の文献に例示されている:Pesceら、Eds.,FLUORESCENCE SPECTROSCOPY(Marcel Dekker,New York,1971年);Whiteら、FLUORESCENCE ANALYSIS:A PRACTICAL APPROACH(Marcel Dekker,New York,1970年)。そのような文献には、レポーター−クエンチャーペアを選択するための、ルミネッセントおよび色原体分子ならびに関連するその光学的特性の包括的リストを提供する文献も含まれる(例えば、Berlman,HANDBOOK OF FLUORESCENCE SPECTRA OF AROMATIC MOLECULES,2nd Edition(Academic Press,New York,1971年);Griffiths,COLOUR AND CONSTITUTION OF ORGANIC MOLECULES(Academic Press,New York,1976年);Bishop,Ed.,INDICATORS(Pergamon Press,Oxford,1972年);Haugland,HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES AND RESEARCH CHEMICALS(Molecular Probes,Eugene,1992年)Pringsheim,FLUORESCENCE AND PHOSPHORESCENCE(Interscience Publishers,New York,1949年)などを参照されたい。さらに、分子に付加可能な容易に入手できる反応基を介した共有結合のためのレポーターおよびクエンチャー分子を誘導化する包括的ガイダンスが文献に記載されている。
【0212】
フルオロフォアを他の分子や表面と接合させるのに利用できるケミストリーの多様性および有用性は、フルオロフォアで誘導化された核酸の調製に関する多くの文献に例示されている。例えばHaugland(上記);Ullmanら、米国特許第3,996,345号;Khannaら、米国特許第4,351,760号を参照されたい。したがって、特定の用途のためのエネルギー交換ペアを選択し、そのペアのメンバーを、例えば小分子生体活性材料、核酸、ペプチドまたは他のポリマーなどのプローブ分子に接合することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0213】
FETペアでは、受容体の吸収帯域が、供与体のルミネッセンス発光帯域と実質的に重なることが一般に好ましい。供与体(フルオロフォア)がルミネッセンス共鳴エネルギー移動(LRET)を利用するプローブの成分である場合、その本発明の供与体ルミネッセント部分およびクエンチャー(受容体)は、供与体部分が励起されたとき供与体および受容体部分がルミネッセンス共鳴エネルギー移動を示すように選択されることが好ましい。フルオロフォア−クエンチャーペアを選択する際に考慮すべき1つの要素は、それらの間のルミネッセンス共鳴エネルギー移動の効率性である。供与体と受容体部分の間のLRETの効率は少なくとも10%、より好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも80%であることが好ましい。LRETの効率は、本明細書に記載の方法と当業界で知られている方法のどちらを用いても実験的に容易に試験することができる。
【0214】
供与体−受容体ペア間のLRETの効率は、供与体と受容体が二量体化するかまたは密に会合する能力を変えることによって調節することもできる。供与体部分と受容体部分が密に会合していることが既知であるかそう判断されている場合、2つのルミネッセント実体間のリンカー部分またはプローブ自体の長さを調節することによって会合の増大または減少を促進させることができる。供与体と受容体がペアで会合する能力は、プローブ構造体の中での疎水性もしくはイオン性の相互作用または立体反発を調節することによって増大または減少させることができる。したがって、供与体−受容体ペアの会合に関わる分子内相互作用を増強または減衰させることができる。したがって、例えば供与体−受容体ペア間の会合は、例えば全体的に負電荷を有する供与体と全体的に正電荷を有する受容体を用いて増強させることができる。
【0215】
プローブと直接結合しているフルオロフォアに加えて、間接的な手段によってもフルオロフォアを結合させることができる。いくつかの実施形態では、リガンド分子(例えば、ビオチン)は、プローブ種と共有結合により結合していることが好ましい。次いで、リガンドは、本質的に検出可能であるか、あるいは、本発明のルミネッセント化合物、または非ルミネッセント化合物の転換によってルミネッセント化合物を生成する酵素などのシグナル系と共有結合により結合する別の分子(例えば、ストレプトアビジン)と結合する。興味のある標識として有用な酵素には、例えば加水分解酵素、特にホスファターゼ、エステラーゼおよびグリコシダーゼまたはオキシドレダクターゼ、特にペルオキシダーゼが含まれる。蛍光化合物には、上記したような、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン等が含まれる。使用することができる様々な標識化系またはシグナル生成系の総説としては、米国特許第4,391,904号を参照されたい。
【0216】
ルミネッセント標識を検出するための手段は当業者に周知である。したがって、例えば、ルミネッセント標識は、適切な波長の光でフルオロフォアを励起させ、得られたルミネッセンスを検出することによって検出することができる。ルミネッセンスは、写真用フィルムによって、電荷結合素(CCD)または光電子増倍管などの電子感知器の使用によって目視で検出することができる。同様に酵素標識は、酵素に適した基質を提供し、得られた反応生成物を検出することによって検出することができる。
【0217】
方法
本発明の化合物および錯体は、様々な生物学的アッセイシステムおよび診断用途でのプローブとして有用である。競合アッセイ方式、免疫学的アッセイ、マイクロアレイ、膜結合アッセイおよび酵素活性アッセイなどのアッセイシステムの総説はRaymondらの米国特許第6,864,103号に記載されている。その全体をすべての目的のために参照により本明細書に組み込む。本発明の錯体を含み、かつ各アッセイシステムに適したプローブを選択し、それを作製することは当業者の能力の範囲内である。例示的実施形態では、ルミネッセントプローブ分子を、試料中の検体の有無を検出するために使用する。
【0218】
したがって、一態様では、本発明は、本発明の錯体と検体を混合したものを提供する。
【0219】
他の態様では、本発明は、試料中の検体の有無を検出する方法を提供する。その方法は、(a)試料を、本発明の錯体を含む組成物と接触させることと、(b)その錯体を励起させることと、(c)錯体からのルミネッセンスを検出することを含む。検体の有無は、錯体からのルミネッセンスの有無によって示される。
【0220】
他の態様では、本発明は、試料中の検体の有無を検出する方法を提供する。その方法は、(a)試料を、本発明の錯体およびルミネッセンス改変基を含む組成物と接触させること(ここで、錯体が励起されたときに錯体とルミネッセンス改変基の間でエネルギーを移動することができ、その錯体とルミネッセンス改変基は、同一分子の一部かまたは異なる分子の一部であってよい)と、(b)前記錯体を励起させることと、(c)試料のルミネッセント特性を判定することであって、検体の有無が試料のルミネッセント特性によって示されることとを含む。
【0221】
例示的実施形態では、前記試料中に存在する場合、検体は、認識分子上に位置する結合部位と結合しようとして、本発明の錯体を含むプローブ分子と競合する。他の例示的実施形態では、検体は、結合部位と結合することによって、認識分子上に位置するその結合部位からプローブ分子を移動させる。他の例示的実施形態では、プローブ分子は本発明の錯体である。
【0222】
したがって、一態様では、本発明は、認識分子および本発明の化合物または錯体を含むキットを提供する。認識分子の例には、全細胞、細胞膜調製物、抗体、抗体断片、タンパク質(例えば、G−タンパク質結合受容体などの細胞表面受容体)、タンパク質ドメイン、ペプチド、核酸などの生体分子が含まれる。
【0223】
検体
本発明の化合物、錯体および方法は、任意の試料中の任意の検体または検体の部類を検出するのに使用することができる。試料は、例えば生体液(例えば、患者の血液)または組織を含むことができる。他の試料は、例えば、合成分子または植物もしくは微生物からの抽出物の溶液(例えば、薬物スクリーニング作業のための)を含むことができる。検体の例は、医薬品、乱用薬物、合成小分子、生物学的マーカー化合物、ホルモン、病原菌、毒素、抗体、タンパク質、脂質、有機および無機のイオン、炭水化物などである(検体の他の例については、例えば、Raymondらの米国特許第6,864,103号を参照されたい)。
【0224】
以下の実施例は、本発明で選択した実施形態を例示するために提供するものであり、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0225】
(実施例1)
【0226】
メチル2−メトキシ−3−メチルベンゾエート(E−1)
【0227】
【化41】

5リットルの丸瓶型フラスコ中の3−メチル−サリチル酸(200g、1.32モル)、無水炭酸カリウム(500g、3.6モル)および無水アセトン(3.5L)の混合物に、硫酸ジメチル(DMS、210mL、2.2モル)を複数回に分けて添加した。室温で終夜撹拌した後、混合液を還流加熱し、TLCで反応を監視した。完全にエーテル化させるために、DMSおよびKCOの添加がさらに必要となることがある。TLCにより反応の完結が示されたら、混合液をさらに4時間還流して残留DMSを分解させる。混合液をろ過し、ろ液を蒸発させて溶媒を除去した。粘性の淡黄色のオイルを粗生成物として得た。収量215g、91%。H NMR(500MHz,CDCl,25℃)δ:2.26(s,3H,CH)、3.78(s,3H,OCH)、3.85(s,3H,OCH)、6.98(t,J=7.5,1H,ArH)、7.27(d,J=7.5,1H,ArH)、7.58(d,J=7.5,1H,ArH);13C NMR(500MHz,CDCl,25℃)δ:15.7、51.8、61.1、123.2、124.3、128.8、132.4、134.8、158.1、166.6。
【0228】
【化42】

【0229】
2−メトキシ−イソフタル酸(E−2)
メタノール(2L)と水(0.5L)の混合液中の化合物E−2(215g、1.19モル)の溶液に、冷却しながら水酸化カリウムペレット(100g、1.5モル)を加えた。混合液を終夜還流させ、次いで乾燥するまで蒸発させた。次いで残留物を水(0.5L)に溶解し、6N HClで酸性化した。2−メトキシ−3−メチル安息香酸が白色結晶として沈殿した。収量189g、95%。H NMR(500MHz,CDCl,25℃)δ:2.23(s,3H,CH)、3.71(s,3H,OCH)、7.06(t,J=7.5,1H,ArH)、7.36(d,J=7.5,1H,ArH)、7.49(d,J=7.5,1H,ArH)。
【0230】
メカニックスターラーおよび加熱マントルを備えた5リットルのフラスコに入れた2−メトキシ−3−メチル安息香酸(75g、0.45モル)と水(4L)の混合物に水酸化ナトリウム(20g、0.5モル)を加えると、混合液は透明な溶液となった。溶液を75℃に加熱し、過マンガン酸カリウム(158g、1モル)を6時間かけて複数回に分けて加えた。得られた茶色のスラリーを終夜撹拌した。その間、反応混合物の温度は80〜85℃の範囲に保持した。
【0231】
酸化の過程はプロトンNMR(DO−NaODで)で監視した。NMRで、2.06ppmでの3−メチルの特徴的ピークが依然認められる場合、数gの過マンガン酸カリウムをさらに加えて酸化反応を確実に完結させることができる。次いでスラリーをろ過して大量のMnOを除去し、ろ液を濃HClで酸性化した。結晶生成物の沈澱は緩慢であることに留意されたい。高純度の生成物が真っ白な結晶として得られ、これをろ取した。収量75g、85%。H NMR(500MHz,DMSO−d,25℃)δ:3.79(s,3H,CH)、7.24(t,J=7.5,1H,ArH)、7.79(d,J=7.5,2H,ArH)。
【0232】
2−メトキシ−イソフタル酸クロリド(E−3)
【0233】
【化43】

無水ジオキサン中の2−メトキシイソフタル酸E−2(75g、0.41モル)の溶液に、撹拌しながら塩化チオニル(119g、1モル)と1滴のDMFを加えた。N雰囲気下で混合物を終夜還流させ、次いで、減圧蒸留により、すべての揮発性物質を除去した。残留物を減圧下(0.1mmHg)で少なくとも8時間乾燥した。この湿気に敏感な化合物は、次の反応段階のためには十分純度の高いものである。
【0234】
2−メトキシ−ビス(2−メルカプトチアゾリド)イソフタルアミド(E−4)
【0235】
【化44】

350mL無水THF中の2−メルカプトチアゾリン(107g、0.9モル)および150mLのトリエチルアミンの氷冷溶液に、300mL無水THF中の化合物E−3(75gの2−メトキシ−イソフタル酸から作製)の溶液を撹拌しながら滴下させた。粘性の黄色スラリーが生成し、これを終夜撹拌してろ過した。黄色ろ過ケーキを水で完全に洗浄し、空気乾燥し、2−プロパノールから再結晶化させて106.7gの純粋な生成物を得た。ろ液を乾燥するまで蒸発させ、CHClに溶解させ、1N HClおよび1N KOHで順次抽出し、次いでフラッシュクロマトグラフィーで精製して、さらに31gの生成物を得た。合計収量137.7g、84%。H NMR(500MHz,CDCl,25℃)(図7)δ:3.419(t,J=7.5,2H,CH)、3.897(s,3H,OCH)、4.589(t,J=7.5,2H,CH)、7.137(t,J=7.5,1H,ArH)、7.433(d,J=7.5,1H,ArH)。13C NMR(500MHz,CDCl,25℃)δ:29.2、55.6、62.9、123.1、128.1、131.9、154.7、167.1、200.8。元素分析:(実測値):C1514・HO(352.427)の計算値:C,43.25(43.02);H,3.87(3.78):N,6.72(6.81)。
【0236】
図2の(dd)および(ee)位置での官能化に関連して、イソフタルアミジル部分を官能化させるための他の方法を本明細書で記載する。
(実施例2)
【0237】
H(2,2)−アミンまたはペンテン(E−5)
化合物E−5を、報告されている手順(Bianke K.Wagnont and Susan C.Jackels,Inorg.Chem.1989年、28,1923〜1927頁)を若干修正して合成した。
【0238】
【化45】

【0239】
ClEtNHTs(E−5B)
【0240】
【化46】

2−クロロエチルアミン塩酸塩(E−5A)70%水溶液(1モル)およびKCO(1.2モル)を蒸留水(4リットル)中に溶解した。撹拌しながらTsCl(1モル)を徐々に加えた。反応混合物を室温で約24時間撹拌した。4M KOH溶液をゆっくり加えて反応混合物のpHを9に調節し、TLCによりTsClがすべて消失したことが示されるまで、撹拌しながら混合物を保持した。得られた沈殿物を吸引ろ過により集め、蒸留水で洗浄し、真空下で乾燥した(220g、95%収率)。mp:77〜78℃。H NMR(CDCl):δ2.4(3H,s)、3.28(2H,q)、3.52(2H,t)、5.2(1H,s)、7.4(2H,dd)、7.9(2H,dd)。
【0241】
トシルアジリジン(E−5C)
【0242】
【化47】

ClEtNHTs(100g、0.4モル)を、塩/氷浴中のNaOH(1200mL、1.4M)の撹拌溶液に加え、撹拌を約1.5時間継続した。次いで沈殿物を10℃で終夜沈降させた。生成物を集め、冷蒸留水で洗浄し、真空下で乾燥した(180g、92%収率)。mp:51〜52℃。H NMR(CDCl):δ2.3(4H,s)、2.4(3H,s)、7.3(2H,dd)、7.8(2H,dd)。
【0243】
ペンテン−4−Ts(N,N,N’,N’−テトラキス(テトラキス(2−((p−トリルスルホニル)アミノ)−エチル))エチレンジアミン)(E−5D)
【0244】
【化48】

トシルアジリジン(80.8g、0.41モル)を無水トルエン(160mL)およびアセトニトリル(80mL)の中に溶解させた。アセトニトリル(80mL)中のエチレンジアミン(6g、0.1モル)の溶液を1時間かけて滴下した。次いで混合物を、撹拌しながら60〜65℃で終夜加熱した。冷却後、ペンテン−4−Tsを白色の微結晶として集め、これをアセトニトリルで洗浄し、室温で真空乾燥した。収率90%。H NMR(CDCl):δ2.41(s,12H,CH)、2.50(s,8H,CH)、2.95(s,12H,CH)、5.95(広幅,4H,NHTs)、7.2〜7.9(m,16H,芳香族H)。
【0245】
ペンテン・6HBr(E−5E)
【0246】
【化49】

化合物E−5D(42.5g、0.5モル)を、1L丸底フラスコ中のHBr(300mL)と酢酸(200mL)の混合物に溶解させた。フラスコに凝縮器を取り付け、48時間還流加熱し、次いで氷浴に入れた。得られた沈殿物を集め、メタノールで洗浄し、真空下で乾燥した(36g、95%収率)。H NMR(DO):δ2.53(8H,d)、2.60(2H,d)、2.63(2H,d)、2.66(8H,m)、4.1(8H,s)。
【0247】
ペンテン(E−5)
【0248】
【化50】

ペンテン(E−5)を、イオン交換クロマトグラフィーによって臭化水素酸塩から調製した。塩基性(OH)形態のDowex 1X8樹脂を1%NaOH洗浄により再生し、続いてCO非含有水で洗浄し、CO非含有水(40mL)中のペンテン・6HBr(4.0g、0.4モル)を再生Dowex樹脂カラム(100mLのベッド容積)にロードさせた。カラムを水で溶出させ、塩基性を示した画分を集めた。集めた画分を蒸発させて油状物を得た(1.2g、95%収率)。H NMR(DO):d 2.05(s,4H)、2.16(t,8H)、2.45(t,8H)、4.15(s,8H)。
(実施例3)
【0249】
官能化H(2,2)アミンキャップの合成(E−4)
【0250】
【化51】

(5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−6−ヒドロキシ−ヘキシル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(Cbz−Lys(Boc)−アルコール)(E−8)
【0251】
【化52】

この化合物は2001年に69%の収率で合成されている。Ripkaら、Org.Lett.,2001年、3(15)、2309頁。我々は、通常用いられている混合無水物法(G.Kototos,Synthesis,1990年、299)は純粋な生成物を生成しないが、一般的CDI手順(Kimら、Synlett,1999年、1239)は満足すべき収率で純粋な生成物を提供できることを見出した。この手順を以下のように修正した。
【0252】
100mL丸型フラスコの中のTHF(25mL)中の2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−6−tert−ブトキシカルボニルアミノ−ヘキサン酸(Cbz−Lys(Boc)−OH)(Chem−Impex International、3.8g、10ミリモル)の撹拌溶液に、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)(1.7g、10.5ミリモル)を室温で加えた。20分後、THF溶液を、テフロン(登録商標)製(Teflon)カニューレ(φ=2mm)を用いて、5〜10℃で水浴に入れた1L丸型フラスコ中での水(10mL)の中の水素化ホウ素ナトリウム(0.75g、20ミリモル)の撹拌溶液に移した。この添加により水素ガスが激しく発生した。混合物を2〜3時間撹拌した。次いで、ロトバップ(rotovap)で揮発性物質を除去し、残留物を酢酸エチル(150mL)に溶解した。酢酸エチル溶液を、冷却した1N HCl(2×50mL)、飽和重炭酸ナトリウム溶液(2×50mL)、塩水(100mL)で順次抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。次いで、1インチのシリカゲルフラッシュ充填物に無水酢酸エチル溶液に通し、濃縮した無色固体を得た(3.3g、91%)、TLC R=0.24(95:5:2 EtOAc:MeOH:HO)。
H NMR(500MHz,CDCl,25℃):δ1.34〜1.59(m,6H,Lys CH)、1.42(s,9H,Boc CH)、2.29(s,広幅,1H,CHOH)、3.11(m,2H,CH)、3.63(m,3H,CH+CH)、4.60(s,1H,BocNH)、5.08(s,2H,CH)、5.10(s,1H,CbzNH)、7.32(m,5H,ArH)。13C NMR(500MHz,CDCl):δ、22.66、28.41、29.89、39.73、52.98、64.82、66.77、79.28、128.09、128.12、128.52、136.47、156.42、156.79。MS(FAB,NBA)C1930:[M+H]367.2。
【0253】
(5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−6−オキソ−ヘキシル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(Cbz−Lys(Boc)−アルデヒド)(E−9)
【0254】
【化53】

このアルデヒドは、Cbz−Lys(Boc)−メチルエステルをジイソブチルアルミニウムヒドリドで処理することによって、1990年(McConnell,ら、J.Med.Chem.1990年、33,86〜93頁)に合成されている。(Richら、J.Org.Chem.,1978年、43,3624)。我々の実験室では、対応するアルコールを、オキサンモニウム酸化によって対応するアミノアルデヒドに転換させた(Leanna,ら、Tet.Lett.1992年、52(35),5029)。
【0255】
トルエン(30mL)/酢酸エチル(30mL)と水(5mL)の二相混合液中のCbz−Lys(Boc)−アルコール(3.66g.0.01モル)、TEMPO遊離基(0.014g.0.0001モル)およびNaBr(1.1g.0.011モル)を中に入れた500mLの3ッ口のMortonフラスコを0℃で氷水浴に浸漬させた。メカニカルスターラーで急速に撹拌しながら(1200rpm)、市販の6%漂白剤(Choloroxultra)(14mL)、水(20mL)およびKHCO(2.5g、0.025モル)を混合して得た水溶液を、ガラス毛管チップを備えたテフロン(登録商標)管を用いて1時間かけて加え、さらに10分間撹拌した。水層を分離し、トルエン(10mL)で洗浄した。一緒にした有機層を、10%KHSO水溶液(15mL)中に溶解したKI(0.1g)の溶液で洗浄した。次いでヨウ素の色をした有機層を、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液(10mL)、pH7のリン酸緩衝液(0.2M、20mL)および飽和塩水で順次洗浄した。無水NaSOで乾燥し、ろ過し濃縮して3.1g(85%)の粗製アルデヒド(E−9)を無色粘性油状物として得た。これをフラッシュクロマトグラフィー(CHCl中に5〜20%EtOAc)で精製した。適切な画分を一緒にして真空下で溶媒を除去して白色固体を生成物として得た。この純粋な化合物は冷凍庫に数カ月保管しても反応性を維持した。
H NMR(500MHz,CDCl,25℃):δ1.32〜1.86(m,6H,Lys CH)、1.41(s,9H,Boc CH)、3.10(s,広幅,2H,CH)、4.27(m,1H,CH)、4.58(s,広幅,1H,BocNH)、5.10(s,2H,CH)、5.53(d,1H,J=6Hz,CbzNH)、7.31(m,5H,ArH)、9.57(s,1H,アルデヒドH)。MS(FAB,NBA)C1928:[M+H]365.2。
【0256】
{2−[(2−アミノ−エチル)−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−エチル)−アミノ]−エチル}−カルバミン酸ベンジルエステル(ビスCbzTREN)(E−10)
【0257】
【化54】

これも既知の化合物である(日本国特許第11302243号、Takayanagi,Hisao,Mitsubishi Chemical Industries)。この特許は、出発原料としてエチレンジアミンを用いた多段合成法を報告している。我々は、化合物E−10を穏やかな条件下、一段反応で調製できることを見出した。
【0258】
氷浴で冷却しながら、ベンジルフェニルカーボネート(Pittelkowら、Synthesisi,2002年、2195)(4.56g、20ミリモル)を、無水EtOH(50mL)中のTREN(1.46g、10ミリモル)の撹拌溶液に加えた。反応混合物を室温で終夜撹拌した。揮発性物質を真空下で除去し、最少量のCHClに溶解し、フラッシュシリカカラムにロードした。化合物E−10を、CHCl中の3〜10%CHOH+1%TEAの勾配液を用いたクロマトグラフィーにより分離した。単離された適切な画分を一緒にし、強塩基性アルミナ充填物を通し、濃縮して純粋なビスZ−TRENを粘性の無色油状物として75%の収率で得た。
H NMR(500MHz,CDCl,25℃):δ2.48(t,2H,J=5.5Hz,CH)、2.56(s,広幅,4H,CH)、2.67(t,2H,J=5.5Hz,CH)、3.23(s,広幅,4H,CH)、5.06(s,2H,CH)、5.72(s,2H,CbzNH)、7.04(m,10H,ArH)。13C NMR(500MHz,CDCl):δ、38.91、39.35、53.82、52.69、66.28、127.78、127.82、136.58、156.70。MS(FAB,NBA)C2230:[M+H]415。
【0259】
炭酸ベンジルエステルフェニルエステル(ベンジルフェニルカーボネート)
(Pittelkow,ら、Synthesis,2002年、2195)
この化合物は既知のものであるが市販されてはいない。これを文献にある手順にしたがって調製した(Richら、J.Org.Chem.,1978年、43,3624)。凝縮器、メカニカルスターラーおよび添加漏斗を備えた500mLの3ッ口フラスコ中のベンジルアルコール(新規蒸留品、69.2g、0.64モル)、ピリジン(64mL)およびCHCl(115mL)の混合物に、フェニルクロロホーメート(100g、0.64モル)を1時間かけて加えた。反応混合物をさらに3時間撹拌し、HO(160mL)を加えた。有機相をHSO水溶液(2M;150mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過して真空下で濃縮した。粗生成物を真空下、127〜131℃/0.1mmHgで蒸留して所望の化合物を無色油状物として得た。収量:108g(94%)(文献収率:79%)。
H NMR(500MHz,CDCl,25℃):δ5.37(s,2H,CH)、7.18〜7.48(m,10H,ArH)。MS(FAB):m/z=372.1(MH)。
【0260】
(5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−6−{2−[ビス−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−エチル)−アミノ]−エチルアミノ}−ヘキシル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(トリスCbzLysBocTREN)(E−11)
【0261】
【化55】

ビスCbz−TREN(E−10)(4.14g、10ミリモル)とCbz−Lys(Boc)−アルデヒド(E−9)(3.64g、10ミリモル)をN雰囲気下、室温でTHF(50mL)中で混合した。混合物を0.2gの活性化4Åモレキュラーシーブと共に3時間撹拌し、次いでナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(3.18g、15ミリモル)を加え、混合物をN雰囲気下、室温で24時間撹拌した。1N NaOH水溶液を加えて反応混合物をクエンチし、混合物をジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。ジクロロメタン抽出物をフラッシュシリカゲルカラムにロードした。勾配溶出液(ジクロロメタン中に3〜10%メタノール)の適切な画分を集め、乾燥するまで蒸発させて淡いベージュ色の粘性油状物を得た。静置するとこれは固化した。収量:6.27g、82%。
H NMR(500MHz,CDCl,25℃):δ1.17(s,広幅,2H,Lys CH)、1.24〜1.89(m,4H,Lys CH)、1.41(s,9H,Boc CH)、2.53(s,広幅,8H,Tren CH)、3.03(s,2H,BocNHCH)、3.14(s,2H,CbzNHCH)、3.20(s,2H,CbzNHCH)、3.64(s,広幅,1H,リシンのキラルCH)、4.54(s,1H,BocNH)、5.05(m,6H,CbzCH)、7.27(m,15H,ArH)。13C NMR(500MHz,CDCl):δ、22.80、28.33、29.54、32.52、39.40、39.97、47.41、50.85、53.77、54.34、66.45、78.93、79.27、127.92、128.06、128.35、136.59、156.01、156.68、156.86。MS(FAB,NBA)C4158:[M+H]763.5。
【0262】
[5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−6−((2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−エチル)−{2−[ビス−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−エチル)−アミノ]−エチル}−アミノ)−ヘキシル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(E−13)
【0263】
【化56】

トリスCbzLysBocTREN(E−11)(3.81g、5ミリモル)とCbz−アジリジン*(E−12)(1.24g、7ミリモル)をN雰囲気下、室温でtert−ブタノール(50mL)中で混合した。TLCで反応が完結したことが確認されるまで、混合物をN雰囲気下、80℃で16時間撹拌した。揮発性物質を真空下で除去し、残留物をジクロロメタン中に溶解させた。勾配フラッシュシリカゲルカラム(ジクロロメタン中に1〜7%メタノール)の適切な画分を集め、乾燥するまで蒸発させて淡いベージュ色の粘性油状物を得た。収量:3.98g、84.7%。
H NMR(500MHz,CDCl,25℃):δ1.24〜1.87(m,6H,Lys CH)、1.42(s,9H,Boc CH)、2.26(s,広幅,2H,CH)、2.47(m,広幅,,6H,CH)、2.58(s,広幅,2H,CH)、2.93〜3.35(m,広幅,8H,CH)、5.05(m,8H,CbzCH)、7.27(m,20H,ArH)。
H NMR(300MHz,DMSO−d,25℃):δ1.12〜1.55(m,6H,Lys CH)、1.34(s,9H,Boc CH)、2.60(m,2H,CH)、2.43(s,8H,CH)、2.85(m,2H,CH)、3.01(s,6H,CH)、3.43(s,1H,CH)、4.98(s,8H,CbzCH)、6.71(t,1H,J=8Hz,アミドH)、6.92(d,1H,J=8Hz,アミドH)、7.01(t,1H,J=8Hz,アミドH)、7.07(t,2H,J=8Hz,アミドH)、7.31(s,広幅,20H,ArH)。13C NMR(500MHz,CDCl3):δ、22.78、28.37、29.65、31.15、32.96、38.54、38.67、40.09、49.36、52.09、52.31、59.35、66.47、69.10、78.94、127.94、127.97、128.02、128.11、128.36、128.38、136.57、136.64、156.01、156.68。MS(FAB,NBA)C516910:[M+H]940.5。
【0264】
アジリジンおよびそのCBZまたはBoc誘導体
アジリジンまたはエチレンイミンはよく知られている化合物である。これは、酸化銀;水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの強塩基の水溶液を用いて2−ハロエチルアミンヒドロハライドから調製することができる。2−アミノエチル硫酸水素塩を水酸化ナトリウムで処理することによるアジリジンの合成がOrganic Synthesis(Allen,ら、“Organic Synthesis”,V.30,John Wiley and Son,Inc.,New York,N.Y.,1950年、38〜40頁)で推奨されており、これは最も一般的な調製方法である。それが重合する傾向が高いため、この方法の調製収率は低い。37%のアジリジン収率がOrganic Synthesisで報告されているが、これでも良好な収率と思われる。
【0265】
アジリジンは市販されていないので、文献法(Reevesら、J.Amer.Chem.Soc,1951年、73,3522)を若干修正して採用して、これを合成した。合成の重要な点は、望ましくない重合ができるだけ起こらないようにするために、アジリジンが生成すると即座に蒸発させ、迅速に蒸留することである。
【0266】
大きな磁気撹拌子、250mL滴下漏斗および蒸留用の長い凝縮器(3つの凝縮器からなる)を備えた、加熱マントル付き5リットル3ッ口フラスコを、十分に換気されているフードの中にセットした(図5)。100mLの14%水酸化ナトリウム溶液を5リットルフラスコに入れ、調節器制御の金属ヒーターで加熱した。蒸留が速い速度で進行するように、溶液を能力いっぱいで加熱した。63gの2−アミノエチル硫酸水素塩、78gの水酸化ナトリウムおよび270mLの水で作製した冷却溶液を、フラスコ中の液量がほぼ一定に保たれる速度で、滴下漏斗で蒸留フラスコに加えた。100〜115℃にわたって留出した過熱留出液を受器用フラスコに集め、フラスコを氷浴中に浸漬させた。このフラスコはサイドアームを備えており、これは希硫酸で満たしたアミンガス捕集器に連結されている。
【0267】
文献では、留出液を大量の水酸化ナトリウムで処理して粗アジリジンを塩析し、これを再蒸留して生成物の純度を確実に高めている。大量の強塩基性の毒性廃棄物が発生する可能性があるので、毒性が非常に強くかつ揮発性のアジリジンの再蒸留は望ましくない。アジリジンと、主要な汚染物質であるその二量体の沸点は、それぞれ56〜58℃と126〜127.5℃であるので、50〜115℃で沸騰する留出液だけを集めれば、アジリジンの純度の制御は可能である。さらに処理することなく、留出した希薄アジリジン溶液を、Boc−アジリジンおよびCBZ−アジリジンを調製するのに直接使用した。アジリジンの収率は約60%と推定された。特性評価のため、留出液の画分を過剰の水酸化ナトリウムで飽和させ、アジリジンを粘性油状物として分離した。その純度をNMR分光法で確認した。
H NMR(500MHz,CDCl,25℃):δ0.56(s,広幅,1H,NH)、1.56(s,4H,CH)。13C NMR(500MHz,CDCl):δ、18.03。
【0268】
アジリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(Cbz−アジリジンE−12)
【0269】
【化57】

酸塩基滴定により較正した留出液中のアジリジン濃度は0.1〜0.2Mの範囲であった。溶液を、Cbz−アジリジンおよびBoc−アジリジンの調製に直接使用した。
【0270】
氷浴で冷却されている丸底フラスコ中の蒸留アジリジンの撹拌溶液(500mL、0.1モル)に、3当量の炭酸カリウムを加えた。すべての固形物が溶解したら、エチルエーテル(150mL)中のクロロギ酸ベンジル(1.5当量)を2時間かけて加えた。溶液を終夜撹拌し、室温に加温し、水相を塩化メチレン(5×30mL)で抽出した。有機相を一緒にしてフラッシュシリカゲル充填物に通し、濃縮してCbz−アジリジンを無色粘性油状物として得た。収量:7.2g、81%。
H NMR(500MHz,CDCl,25℃):δ2.22(s,4H,CH)、5.14(s,2H,CH)、7.34(m,5H,ArH)。13C NMR(500MHz,CDCl,25℃):δ、20.51、65.93、127.3、127.4、128.7、140.9、159 4。
【0271】
[5−アミノ−6−((2−アミノ−エチル)−{2−[ビス−(2−アミノ−エチル)−アミノ]−エチル}−アミノ)−ヘキシル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(BocLys−H(2,2)アミン)(E−14)
【0272】
【化58】

200mgの湿潤5%Pd/C触媒を備えたガラス製の水添容器に、5mLのメタノールを、触媒を覆うようにガラスに沿って注意深く加えた(注意:この触媒は空気中で発火する可能性がある)。メタノール(30mL)中のテトラCbzBocLys−H(2,2)アミン(E−13)(0.94g、1ミリモル)の溶液を容器に加えた。容器をパールボンベ(Parr bomb)に入れ、500psiの圧力で終夜水素化した。TLCにより出発原料がないことが確認された。溶媒を真空下で除去した。BocLys−H(2,2)アミンをその炭酸塩の形で透明無色の粘性油状物として得た。粗収率は90%であった。
H NMR(500MHz,CDCl,25℃):δ1.24〜1.87(m,6H,Lys CH)、1.42(s,9H,Boc CH)、2.41〜2.82(m,広幅,10H,CH)、2.82〜3.23(m,広幅,9H,CH)、3.29(s,広幅,1H,CH)、5.48(s,1H,BocNH)、8.52(s,3H,カルボネートのNH)。13C NMR(500MHz,CDCl):δ、22.63、28.39、29.47、31.11、37.00、39.93、49.79、51.99、68.79、78.62、156.19、168.99。MS(FAB,NBA)C516910:[M+H]404.3722。
【0273】
この粗製アミンは、マクロ三環(macrotricycle)IAMリガンドをもたらす環化反応に直接使用しても首尾よく行かないことが判明した。この粗生成物を、Dowex 1X8強塩基性陰イオン交換樹脂にかけて炭酸塩を除去した。得られた遊離アミンを次の工程の環化反応で使用した。
(実施例4)
【0274】
MeH(2,2)IAM−テトラチアゾリド(E−6)
【0275】
【化59】

CHCl(3L)中のE−4(100g、0.25モル)の溶液に、300mLのCHCl中の化合物E−5(1g、4ミリモル)の溶液を24時間かけて滴下した。反応混合物を、CHClを充填したフラッシュシリカゲルカラムにかけてCHCl中の3〜5%2−プロパノールで溶出させ、未反応の1を分離した。連続勾配溶出液(CHCl中に5〜20%イソプロパノール)の適切な画分を一緒にし、乾燥するまで蒸発させて高純度化合物6を黄色泡状物として得た。収量4.5g(83%)。
H NMR(500MHz,CDCl,25℃):δ2.70(s,4H,CH)、2.76(t,J=6.2Hz,8H,CH)、3.43(t,J=7.2Hz,8H,CH)、3.53(q,8H,J=6.0Hz,CH)、3.85(s,12H,OCH)、4.64(t,J=7.5,8H,CH)、7.17(t,J=8.2Hz,4H,ArH)、7.79(t,J=5.4Hz,4H,ArH)、8.63(d,J=7.5,1H,ArH)。13C NMR(500MHz,CDCl,25℃)δ:29.2、37.9、50.6、53.5、55.7、63.1、124.3、127.2、129.1、132.0、133.9、155.6、164.9、167.3、201.4。元素分析:(実測値):C58641012・HO(1367.73)の計算値:C,50.93(51.02);H,4.86(4.98):N,10.24(10.01)。
(実施例5)
【0276】
【化60】

【0277】
MeBocLysBH(2,2)IAM(E−15)
この懸垂型トリ大員環E−15を高度希釈条件下で合成した。遊離アミン(E−6)(1.2g、3ミリモル)、5mLのトリエチルアミンおよび10mLのイソプロパノールを混合して均一溶液を形成させ、1L丸底フラスコ中の950mLのクロロホルムに溶解させた。他方で、H(2,2)IAMテトラチアゾリド(E−14)(4.05g、3ミリモル)を、別の1L丸底フラスコの950mLのクロロホルムに溶解した。E−6とE−14(約3〜4mM)の溶液を、8リットルのジクロロメタンと2mLのトリエチルアミンを入れた12Lの3ッ口丸型フラスコに、手製の「テフロン(登録商標)管−ガラス毛管型スロー添加装置」を介して同時に加えた。8〜10日間にわたり、各反応物について添加速度を24時間当たり約100〜120mLに調節して、主反応フラスコ中で淡黄色のものが得られた。ポリマー系副生成物を最小限にするために、高度希釈状態に保持することが必要である。反応物がすべて消費された後、反応混合物をさらに8時間撹拌した。TLCにより、反応混合物が複雑な混合物であることが示される。この不斉分子について共存する多くの可能性のある異性体が存在するので、これらの異性体は、TLCプレートで異なったスポットで見える。次いで、反応混合物を、フラッシュシリカ充填物(200g)を通して溶媒を再循環させ、充填物上に残る生成物と副生成物を、1%トリエチルアミンを含むCHCl中の20%イソプロパノールの混合液に洗い込む。精製および分離の工程を簡略化するために、大員環E−15および他の副生成物を含む洗浄用液を塩基性アルミナカラム、続いてフラッシュシリカゲルカラムで処理し、フラッシュシリカカラムの勾配溶出液(CHCl中に3〜7%MeOH)の適切な画分を一緒にし、蒸発させて化合物E−15を25〜30%の収率で得た。HPLCにより粗生成物の純度が約90%であることが確認される。純粋な生成物を得るためには、さらなるカラム精製が必要である。
【0278】
非常に異なるR値(0.58と0.76。0.5/8/10/90の比のAcOH/MeOH/CHCN/CHClの混合液で展開した)をほぼ等量有する2つの主要画分が単離された。質量スペクトルによりどちらの画分も所望の大員環(E−15)であることが確認された。
H NMR(500MHz,DMSO−d,25℃):δ1.24〜1.55(m,15H,Boc CH+Lys CH)、2.52〜2.95(m,広幅,24H,NCH)、3.21〜3.62(m,広幅,16H,NHCH)、3.65〜3.7(m,12H,CH)、6.78(s,1H,BocNH)、7.01〜7.15(m,8H,ArH)、7.50〜7.62(m,16H,ArH)、8.15〜8.30(m,広幅,8H,アミドH)。13C NMR(500MHz,CDCl):δ23.12、28.25、28.27、29.76、31.06、37.09、38.36、46.01、50.12、52.68、53.48、62.53、62.73、62.85、78.73、124.84、126.61、133.42、133.82、154.89、155.91、156.01、164.69、165.01、165.28。MS[(+)−FAB,NBA)]C65891314:m/Z[M+H]1276.7。
【0279】
LysBH(2,2)IAM(4)
MeBocLysBH(2,2)IAM(E−15)(0.22g、0.17ミリモル)を、テフロン(登録商標)栓を備えたシュレンク(Schlenk)フラスコ中の20mLのCHClに溶解した。N流雰囲気下で、溶液を−10℃に冷却し、続いて1mLのBBrを注入した。スラリーを5日間撹拌し、続いて過剰のBBrとCHClをポンプで抜き出した。残る淡黄色固形物を冷却しながらメタノール(100mL)に溶解した。メタノール溶液を緩やかに還流させ、栓を外して放置して、揮発性ホウ素化合物を6時間放出させた。次いで溶液を乾燥するまで蒸発させた。残留物をメタノール(10mL)中に溶解し、これを水(50mL)に希釈した。混合した溶液を、容積が約10mLに減少するまで沸騰させ、次いで冷却し、白色固体を生成物として得た。これを遠心分離して収集し、40℃で真空乾燥した。収量:150mg(53%)。
【0280】
官能化されていない高度に対称性の分子BCH(2,2)IAMと比較すると、化合物4のNMRは複雑である。これは多分、この分子が非対称性であり、複数の配座異性体が共存するためである。
H NMR(500MHz,DO−NaOD,25℃):δ0.78〜1.25(m,6H,LysCH)、2.15〜2.30(m,2H,CH)、2.40〜2.92(m,26H,NCH)、3.00〜3.45(m,14H,NHCH)、3.66(s,広幅,1H,CH)、6.08〜6.52(m,4H,ArH)、7.35〜7.90(m,8H,ArH)。MS[(+)−FAB,TG/G)]C56731312:m/Z 1120.5[MH]。元素分析:(実測値):C56731312・5HBr・8 HO(1668.95)の計算値:C,40.30(40.29);H,5.68(5.68);N,10.91(10.65)。
(実施例6)
【0281】
マクロ三環生成物の合成(化合物19、20、21)
【0282】
【化61】

【0283】
MeEtグルタルBocLysBH(2,2)IAM(E−18)
化合物E−15(0.25g、0.2ミリモル)をジクロロメタンとトリフルオロ酢酸(10mL)の1:1混合液にとり、この溶液を3時間撹拌させた。蒸発させた後、残留物をメタノールに溶解し、0.1N KOHのメタノール溶液で溶液のpHを11に調節した。この塩基性溶液を塩基性アルミナ充填物にロードし、ジクロロメタン中の10%メタノールで溶出させて、TFA塩と過剰の塩基を除去した。溶媒を除去した後、脱Bocした大員環E−16を次の工程の反応に直接使用した。
【0284】
粗製化合物E−18を無水DMAA(2mL)に溶解し、無水ジクロロメタン溶液(10mL)中の過剰(2当量)のエチルグルタレートNHSエステルと混合した。反応混合物を室温で4時間撹拌し、得られた大員環E−18を勾配フラッシュシリカクロマトグラフィー(CHCl中の2〜7%MeOH)で精製した。
H NMR(500MHz,DMSO−d,25℃):δ1.14(t,3H,CH)、1.20〜1.60(m,6H,CH)、2.05(m,2H,CH)、2.26(m,2H,CH)、2.52〜2.80(m,広幅,23H,NCH+NCH)、3.21〜3.62(m,広幅,16H,NHCH)、3.65〜3.7(m,12H,CH)、4.03(m,2H,CH)、5.73(s,1H,アミドH)、7.01〜7.15(m,4H,ArH)、7.32(d,1H,アミドH)、7.50〜7.65(m,8H,ArH)、7.75(m,1H,アミドH)、7.95(m,1H,アミドH)、8.10〜8.20(m,4H,アミドH)、8.26(m,1H,アミドH)。13C NMR(500MHz,CDCl):δ13.7、20.5、22.6、24.8、28.5、32.6、32.9、34.7、37.3、38.4、45.5、50.8、52.8、53.1、59.8、62.0、62.3、62.6、124.0、127.5、133.5、155.0、155.1、164.9、165.4、172.0、172.7。MS[(+)−FAB,NBA]:C67911315:m/Z 1318.8[MH]。
【0285】
グルタルLysBH(2,2)IAM(5a)
化合物4について記載したように、化合物18(0.4g、0.3ミリモル)をBBrで脱保護し、脱保護した化合物5aを遠心分離により集め、40℃で真空乾燥して生成物をベージュ色の固体として得た。収量:150mg(53%)。
H NMR(500MHz,DO−NaOD,25℃):δ0.78〜2.25(m,10H,CH)、2.40〜2.92(m,26H,NCH)、3.00〜3.85(m,17H,NHCH)、6.08〜6.52(m,4H,ArH)、7.35〜7.90(m,8H,ArH)。元素分析:(実測値):C61791315・3HBr・5.5HO(1576,184)の計算値:C,46.48(46.44);H,5.96(5.98);N,11.55(11.39)。MS[(+)−FAB,TG/G]]C61H↓71315:m/Z 1234.5[MH]。
【0286】
グルタルLysBH(2,2)IAM−NHSエステル(6a)
無水DMF(2mL)中のグルタルLysBH(2,2)IAM(16mg、0.01ミリモル)の溶液に、過剰のNHS(3当量)と触媒量のDMAP(2mg)を加えた。溶液を30分間撹拌し、DCC(2当量)を加えた。反応混合物を4時間撹拌した後、もう1当量のDCCを加え、溶液を窒素雰囲気下で終夜撹拌した。混合物をシクロヘキサンと2−プロパノール(5mL)の1:1混合液に分割し、30分間撹拌し、次いで遠心分離にかけて沈殿物を母液から分離した。強く撹拌しながら、沈殿物を5mLの2−プロパノールに懸濁させて低分子量の不純物を洗い落とし、次いで遠心分離にかけた。この洗浄−遠心分離の処理工程を3回繰り返し、沈殿物を真空下で乾燥させた。FAB(+)質量スペクトルは、活性化されていない分子イオンピーク(1234)は示さず、MH+イオン(1331)を示した。この化合物のさらなる特性評価の試みはしなかった。これらの活性化化合物の新規な評価方法は開発中である。
【0287】
リンカーの作製方法
【0288】
【化62】

(実施例7)
【0289】
大環状リガンド(5)の官能化
以下のスキーム23により、化合物4とジグリコール無水物を結合させて、化合物5を合成した。
【0290】
【化63】

(実施例8)
【0291】
タンパク質(ストレプトアビジン)との非特異的相互作用
これまで、2などのある種のリガンドはタンパク質と非特異的相互作用を示し、Tween−20などの少量の非イオン性合成洗剤を加えると、Tween−20を含まない溶液と比較して、Tb−2のルミネッセンスを短時間安定化させるようであることが確認されていた。しかし、合成洗剤が存在することは多くの用途において望ましくない。
【0292】
したがって、新規なリガンドがタンパク質と非特異的に相互作用する傾向を判定することが重要であった。化合物5のスルホNHSエステルおよびNHSエステル誘導体を合成し、ストレプトアビジンと接合させた。比較のために、リガンド2のNHSエステルもストレプトアビジンと接合させた。ストレプトアビジンは炭酸緩衝液中、pH9で、約130μMの濃度で平衡に達した。各リガンドの活性化エステルのDMF溶液をタンパク質に約1mMの最終濃度で加えた。混合物を4℃で1時間インキュベートした。リガンドとタンパク質の接合の前か後に金属を加えた。非接合リガンドを、G50ゲルろ過式遠心分離スピンカラム技術(Penefsky,H.S,Methods Enzymol 1979年、56:527〜30頁)を用いて接合タンパク質から分離した。この技術では、タンパク質溶液の希釈度合は従来のゲルろ過技術より小さい。リガンドの非特異的吸収の程度を評価するために、単一のタンパク質試料溶液で、スピンカラムを連続的に実施した。単一のゲルろ過分離に続いて過剰リガンドの大部分を除去し、ゲルベッドの頂部に置く。リガンドのタンパク質との非共有会合が起こらない限り、第2のスピンカラム処理では、さらなるリガンドが第2のカラムの頂部に残らないようにしなければならない。
【0293】
結果
多く残留するルミネッセンスによって目視されることから、相当な量のリガンド2が、第2さらには第3の連続したゲルろ過スピンカラムのゲルベッドの頂部に残っていた。他方、活性化4についての残留ルミネッセンス(スルホNHSとNHSの両方)はバックグラウンドに近接していた。したがって、接合ストレプトアビジンからの非接合4の分離は効率的であり、ストレプトアビジンへのこれらのリガンドの非特異的結合は最少であることが分かった。
【0294】
これらの実験によって、非環式リガンド2について認められたタンパク質との特徴的な非特異的会合は、大幅に減少しており、大環状リガンド4についてはほとんど消失していることが実証された。これらの結果は、自由度が小さい大員環と比べると、非環式リガンドがより開きやすいことによって説明される。大員環の束縛性が高くなるほど、疎水性部分をより接近しにくいものにし、これらの基のタンパク質との非特異的相互作用を制限することになる。
【0295】
大環状リガンド4は、タンパク質Aおよび複数の抗体を含むストレプトアビジン以外の様々なタンパク質に接合した。リガンドのこれらのタンパク質との非共有会合の量は、リガンド2について観察されたレベルと比べてわずかなものであることが分かった。
(実施例9)
【0296】
テルビウム(Tb)錯体の安定性
酸またはEDTAの存在下におけるTb錯体の安定性
大環状錯体の安定性を評価するために、1%酢酸および5mMEDTA溶液などのかなり厳しい条件下に錯体を曝した。10%酢酸はゲルを固定し染色するのにしばしば用いられるが、EDTAは一般に用いられる保存剤であり、これは1mMの濃度でしばしば使用される。
【0297】
結果
検討により、Tb−3錯体(μM濃度で)は1%AcOH中で1時間以上持続する強いTb発光を示すが、他方Tb−1錯体は、1%AcOHで希釈するとその特徴的なルミネッセンスを直ちに失うことが分かった。同様に、μM濃度でのTb−3のルミネッセンスは5mM EDTA中で1時間以上安定であるが、Tb−1のルミネッセンスは5分間以内で消失する。大過剰EDTAの存在下で、リガンド3がTb3+イオンを放出しようとしない傾向により、リガンド1と比べて、中性pHで(かなり酸性の条件に加えて)非常に高い動力学的安定性を示す。錯体が様々な分子や材料に曝される錯体水溶液中において比較的薄い濃度(<1×10−8M)で、イソフタルアミド錯体の使用を必要とする用途を開発する場合、高い錯体安定性が非常に重要である。高度希釈での高い安定性がないと再現性が劣り、定量的結果に対する信頼性が低下する。
【0298】
種々の媒体中における異なるTb錯体についての動力学的安定性の比較
大環状リガンドの安定性をさらに検討するために、異なるTb−錯体の安定性を、1%酢酸および1mM EDTAを含む様々な媒体を用いて判定した。化合物1、3および5a(1uM)のTb錯体のストック溶液を、TBST、50mMトリス、150mM NaCl、0.05%Tween−80、pH7.6で調製した。次いで各ストック溶液を、ポリプロピレン微小遠心管中の異なる試験溶液に200×希釈して5nM Tb−錯体の最終濃度にした。各試験溶液は0.05%Tween−80も含有した。試験溶液を室温でインキュベートした。指定された時間点で試料をとり、3通りで評価し、ルミネッセンスを標準的時間分解ルミネッセンス設定、340nmおよび490励起ならびにエミッションフィルターを用いてそれぞれ記録した。結果を図1(化合物1)、図2(化合物3)および図3(化合物5a)にまとめて示す。結果は、大環状リガンド(3および5a)から誘導されたテルビウム錯体について、比較できる「非束縛型」リガンド(1)と比べて、安定性が著しく増大していることを示している。この結果はさらに、大環状リガンド(3)の置換によって、特定の媒体中における安定性をさらに増大させることができることを実証している。
【0299】
SDS−PAGEの間のTb錯体の安定性
実施例3で述べたタンパク質接合リガンドをSDS−PAGEにより評価した。2Xの還元性SABまたは非還元性SABと1:1で混合した後、すべての試料を95℃で5分間沸騰させた。緩衝剤を含まないPhastsystemゲル(GE Healthcare)を製造業者の使用説明書にしたがってロードした。
【0300】
実験結果
試料を95℃に加熱しSDSに曝露させた後、すべての標識化タンパク質試料について可視Tb3+ルミネッセンスを観測した。これらの結果は、本発明のランタニド錯体が、試験条件下で予想外に安定であることを実証している。時間分解CCDベースの画像システムは、得られた画像での信号対ノイズ差をさらに評価するのに有用のようである。励起光を取り除く遮断フィルタを使用すると画像品質はさらに向上する。
(実施例10)
【0301】
様々なタンパク質と接合していない場合と、それに接合している場合について、化合物5a−Tbの発光を比較するために定常状態発光スペクトルを記録した。非接合5a−Tbの発光スペクトルは、5a−Tbの異なるタンパク質接合について得られた発光スペクトルと同等である(図4)。5a−Tbのタンパク質接合体は、ストレプトアビジン(sAv)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウシガンマグロブリン(BgG)および免疫グロブリンG(IgG)を用いて調製した。手短に言えば、5aのスルホNHSエステルを、無水DMF中の5a、EDCおよびスルホNHSとその場で1時間混合して調製した。次いで5aのスルホNHSエステルを、100mM炭酸塩、pH=9.0で平衡にしたタンパク質撹拌溶液に滴下し4℃に冷却した。タンパク質分子当たり3〜5個の5a−Tb分子が、共有結合により結合するまで反応を進行させた。ルミネッセンス測定をトリス−緩衝食塩水、pH7.6中で記録した。340nmで励起させた。分かり易くするために、階層状に間隔をおいたプロットで表示する。
【0302】
非接合5a−Tbとストレプトアビジン接合5a−Tbのルミネッセンス崩壊寿命の比較により、ルミネッセンス発光寿命が本質的に同じであることが示されている(図5)。測定は、キセノン閃光電球および崩壊寿命検出ハードウェアを組み込んだJovin YvonからのFluorolog−3を用いて実施した。
【0303】
化合物4−Tbについて定常状態吸収および発光スペクトルを記録した(図6)。340nmを中心にしたブロードな吸収ピークは、感光性の2−ヒドロキシイソフタルアミドキレート化単位の特徴を示している。340nmで励起させて発光スペクトルを記録した。これは488nm、545nm、585nmおよび618nmを中心にした発光ピークを有するルミネッセントテルビウム錯体の特徴を示している。
【0304】
本明細書で説明した実施例および実施形態は例示するためだけのものであり、当業者にはそれに照らした様々な修正形態または変更形態が提起され、かつそのような修正形態または変更形態は本明細書および添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に包含されることを理解されよう。本明細書で参照したすべての出版物、特許および特許出願をすべての目的のために参照により本明細書に組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造を有する化合物
【化64】

[ただし、前記化合物は、少なくとも1つの官能性部分で共有結合により修飾されており、
式中、各ZはOおよびSから独立に選択されるメンバーであり、
、L、L、L、L、L、L、L、LおよびL10は、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリールおよび置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択される連結基であり、
、A、AおよびAは以下の一般構造から独立に選択されるメンバーである
【化65】

(式中、各Rは、H、酵素不安定性基、加水分解不安定性基、代謝不安定性基および単一の負電荷から独立に選択されるメンバーであり、
各R、RおよびRは、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、ハロゲン、CN、CF、アシル、−SONR1718、−NR1718、−OR17、−S(O)17、−COOR17、−S(O)OR17、−OC(O)R17、−C(O)NR1718、−NR17C(O)R18、−NR17SO18および−NOから独立に選択されるメンバーであり、
とR、Rおよびその組合せから選択されるメンバーとは任意選択で結合して置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールから選択されるメンバーである環系を形成し、
ただし、R17およびR18は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリールおよび置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、R17とR18は、それに結合している原子と一緒に、任意選択で結合して5〜7員環を形成する)]。
【請求項2】
次式の構造を有する請求項1に記載の化合物
【化66】

(式中、R、R、RおよびRは、H、酵素不安定性基、加水分解不安定性基、代謝不安定性基および単一の負電荷から独立に選択されるメンバーであり、
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、ハロゲン、CN、CF、アシル、−SONR1718、−NR1718、−OR17、−S(O)17、−COOR17、−S(O)OR17、−OC(O)R17、−C(O)NR1718、−NR17C(O)R18、−NR17SO18および−NOから独立に選択されるメンバーであり、
ただし、R17およびR18は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリールおよび置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、R17とR18は、それに結合している原子と一緒に任意選択で結合して5〜7員環を形成し、
と、R、Rおよびその組合せから選択されるメンバーとは任意選択で結合して環系を形成し、
と、R、R10およびその組合せから選択されるメンバーとは任意選択で結合して環系を形成し、
12と、R11、R13およびその組合せから選択されるメンバーとは任意選択で結合して環系を形成し、
前記環系は、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールから選択されるメンバーである)。
【請求項3】
、L、L、L、L、L、L、L、L、L10、A、A、AおよびAの少なくとも1つが官能性部分で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記官能性部分が以下の構造を有する、請求項1に記載の化合物
【化67】

(式中、L11は、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールから選択されるメンバーであるリンカー部分であり、
Xは反応性官能基および標的部分から選択されるメンバーである)。
【請求項5】
【化68】

から選択されるメンバーである構造を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記標的部分が、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、抗原、核酸、炭水化物、脂質および薬理学的に活性な分子から選択されるメンバーを含む、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
前記標的部分が、前記錯体が励起されたとき前記錯体と前記ルミネッセンス改変基との間のルミネッセンスエネルギー移動を可能にするようにルミネッセンス改変基で置換されている、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
前記反応性官能基が、−OH、−SH、−NH、−C(O)NHNH(ヒドラジド)、マレイミド、活性化エステル、アルデヒド、ケトン、ヒドロキシルアミン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホニルクロリド、アシルハライドおよび−COOYから選択されるメンバーであり、Yが、H、負電荷および塩対イオンから選択されるメンバーである、請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
XがNHであり、L11が、置換または非置換C〜C10アルキルおよび置換または非置換C〜C10ヘテロアルキルから選択されるメンバーである、請求項4に記載の化合物。
【請求項10】
前記官能性部分がポリエーテルを含む、請求項4に記載の化合物。
【請求項11】
前記ポリエーテルが、ポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体から選択されるメンバーである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記ポリエーテルが約50〜約10,000ダルトンの分子量を有する、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記リンカー部分のL、L、L、L、L、L、L、L、LおよびL10が、置換または非置換C〜Cアルキルから独立に選択されるメンバーである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
前記リンカー部分のL、L、L、L、L、L、L、L、LおよびL10が、置換または非置換エチルから独立に選択されるメンバーである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
少なくとも1つの金属イオンと請求項1に記載の化合物との間で形成されたルミネッセント錯体。
【請求項16】
前記金属イオンがランタニドイオンである、請求項15に記載の錯体。
【請求項17】
前記ランタニドが、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)およびイッテルビウム(Yb)から選択されるメンバーである、請求項16に記載の錯体。
【請求項18】
認識分子および請求項15に記載の錯体を含むキットであって、前記認識分子が、抗体、タンパク質、ペプチドおよび核酸から選択されるメンバーであるキット。
【請求項19】
試料中の検体の存在を検出する方法であって、
(a)前記試料と、請求項15に記載のルミネッセント錯体を含む組成物とを接触させることと、
(b)前記錯体を励起させることと、
(c)前記錯体からのルミネッセンスを検出することと
を含む方法。
【請求項20】
試料中の検体の存在を検出する方法であって、
(a)前記試料と、請求項15に記載のルミネッセント錯体およびルミネッセンス改変基を含む組成物とを接触させること(ここで、前記錯体が励起されたときに前記ルミネッセント錯体と前記ルミネッセンス改変基との間でエネルギーを移動させることができ、前記錯体および前記ルミネッセンス改変基は同一分子の一部であっても異なる分子の一部であってもよい)と、
(b)前記錯体を励起させることと、
(c)前記試料のルミネッセント特性を測定することであって、前記検体の存在が前記ルミネッセント特性の変化をもたらすことと
を含む方法。
【請求項21】
前記試料中に検体が存在する場合、前記検体が抗体と結合する方法であって、前記抗体がルミネッセンス改変基および請求項15に記載の錯体から選択されるメンバーと共有結合により結合する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記検体が脂質である、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−501008(P2010−501008A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524791(P2009−524791)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/076047
【国際公開番号】WO2008/063721
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(508228061)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (10)
【Fターム(参考)】