説明

ルーバーの羽根板支持構造

【課題】子供が登る可能性のある場所に配設されても、子供が羽根板に登ることを抑制できるともにルーバーの機能や意匠性を確保することができるルーバーの羽根板支持構造を提供する。
【解決手段】樹脂を押し出して平面視長方形に形成された羽根板2が、バネ鋼材によりコ字形に形成された支持金具3を介してその短手方向の一端部を支持された状態で多段に配置されたルーバーの羽根板支持構造であって、ルーバーが人の通るような場所に設置され、人がルーバーに登ろうとして羽根板2に足をかけ、羽根板2の上面に荷重がかかったとき、所定角度羽根板2が他端側下方に傾くように、支持金具3が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、日よけや目隠しを目的として建築物の壁面等に設けられるルーバーの羽根板支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂に木粉やフライアッシュ等の充填材を混合した人工木材が、建築物の窓や壁面に設けられるルーバーの羽根板に用いられている。例えば、特許文献1では、上階と下階の境界付近に位置するバルコニーの周囲に、かかる人工木材製の羽根板を多段の棚上に配列し、コ字金具やボルト等で支持部材に固定するルーバーが提案されている。
【0003】
特許文献1のルーバーは、子供の通るような場所に羽根板を配設するものではないが、この種の羽根板を用いたルーバーは、道路等に面した1階店舗の壁面の意匠性を高めるため、あるいは、窓からの直射日光を遮るため等にも用いられるようになっており、この場合、ルーバーが、丁度棚のような形状をしているため、子供がふざけてルーバーに登る可能性がある。
【0004】
ところが、この種のルーバーは、構造材ではなく外装材とみなされるため、必要とする強度は、風や積雪による荷重等により決定されており、子供が登ると、羽根板や支持金具が破損する虞が有る。
また、子供がルーバーによじ登って転落し、怪我をする場合も有り得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−013876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、子供が登れないようにするために、子供が手の届く高さに羽根板を取り付けないようにしたり、子供の手の届く高さだけ羽根板を手前側に傾斜させたりすると、ルーバーの設置現場で求められる機能や意匠性を害する虞が有る。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、子供が登る可能性のある場所に設けられた場合であっても、子供が羽根板に登ることを抑制できるとともに、ルーバーの羽根板支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明は、平面視長方形をした羽根板が、支持金具を介してその短手方向の一端部を支持された状態で多段に配置されたルーバーの羽根板支持構造であって、前記支持金具が、人が足をかけて前記羽根板の上面に荷重がかかったとき、所定角度羽根板が他端側下方に傾くように構成されていることを特徴とする。
本発明において、「所定角度羽根板が他端側下方に傾くように」とは、人が足をかけて羽根板の上面に荷重がかかったとき、その人が感じる程度に羽根板が傾くことをいい、例えば、羽根板の上面に足をかけて羽根板の他端側に20kgの荷重が加わった場合に、羽根板の上面の水平面に対する傾き角θが8度以上傾き、40kgの荷重が加わった場合であっても、傾き角θが30度以下であることが好ましい。
【0008】
本発明にかかるルーバーの羽根板支持構造は、上記のように、羽根板の短手方向の一端を支持する支持金具が、人が足をかける等して羽根板の上面に荷重がかかったとき、その人が感じる程度に羽根板が他端側下方に傾くように構成されていることで、人に危険を感じさせ、人が羽根板に登ることを抑制することができる。
【0009】
また、支持金具は、バネ鋼材で形成され、側面視略コ字形をしていて、羽根板がその短手方向の一端部をコ字の内側に嵌合させた状態で支持固定されていることが好ましい。
【0010】
このように、支持金具がバネ鋼材で形成され、側面視コ字形をなす支持金具に羽根板の一端部を嵌合させて支持する構造とすることで、羽根板に人が足をかける等して下方向の荷重が加わった際に、支持金具を弾性変形させて、羽根板の他端を下方に傾けることができるとともに、荷重が解除された際には、支持金具の弾性力により羽根板をもとの位置に復帰させることができる。
【0011】
また、前記羽根板が、前記支持金具に、羽根板の短手方向の一端面と支持金具のコ字の縦辺部との間に隙間を形成した状態で支持固定されていることが好ましい。
こうすることで、支持金具の縦横辺の連結部が羽根板に拘束されることを抑制でき、この部分の弾性変形を促して、羽根板をより柔軟に傾斜させることが可能となる。
【0012】
羽根板としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ナイロンおよびポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂と木粉やフライアッシュなどの充填材との混合樹脂組成物を押出成形して得られ、長手方向に連続する複数の中空孔を短手方向に平行に複数備えた樹脂成形品(人工木材)を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のルーバーの羽根板支持構造によれば、羽根板に登ろうとする人に危険を感じさせて、人が羽根板に登ることを抑制することができるとともに、ルーバーの機能や意匠性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る羽根板支持構造を用いたルーバーの正面図である。
【図2】図1に示したルーバーの平面図である。
【図3】図1に示したルーバーの側面図である。
【図4】図3のX−X線断面図である。
【図5】図1に示したルーバーにおいて、羽根板を取り付ける様子を示した説明図である。
【図6】人が登ろうとして羽根板が傾斜する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図1〜図6により、本発明の実施の形態を詳述する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限られるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るルーバーであり、このルーバー1は、窓(図示せず)前面を覆うように建築物の一階壁面Aに支持されている。
ルーバー1は、多数の羽根板2,…と、この羽根板2,…を支持する支持金具3,…と、支持金具3が固定される支持アングル5と、壁面Aに固定されて支持アングル5を支持する基礎アングル6とを主に備えている。
【0017】
羽根板2は、木粉やフライアッシュ等の充填材が混合された樹脂を押し出し成型した平面視長方形の板状であり、図2〜図6に示すように押出し方向に貫通する複数の中空孔2a,…を備えている。
また、図3〜図5に示すように、羽根板2の短手方向の一端から3本目の中空孔2aの厚み方向の両壁面には、長手方向の両端部と中央部の3か所に、中空孔2aの厚み方向の両壁面を貫通するようにボルト孔2b,2b,2bが設けられている。
また、図2〜図4に示すように、ボルト孔2b,2b,2bが設けられた中空孔2aには、中空孔2a内壁と断面外周が略同形状の角パイプ状の内部補強材4が嵌入されている。
【0018】
なお、羽根板2は、本実施形態では、樹脂に木粉やフライアッシュ等の充填材が混合された人工木材製であるが、木粉やフライアッシュ等を混入しない樹脂やアルミニウム等の金属で形成してもよい。
【0019】
内部補強材4は、図2に示すように羽根板2よりやや短めに形成されており、中空孔2aに挿入した際に、両端面が、中空孔2aの開口から少し内側に入るよう設けられ、また、図4に示すようにボルト孔2b,2b,2bに対応する位置にボルト孔4a,4a,4aが穿設されている。ただし、内部補強材4は、羽根板と同じ長さに形成されてもよい。内部補強材4としては、アルミニウムやステンレス等の金属が用いられるほか、充分な強度を有するものであれば、樹脂や木材を用いることもでき、パイプ状のものに限られず棒状のものを用いることもできる。
【0020】
そして、羽根板2は、図1、図3及び図5に示すように、厚み方向を鉛直方向、長手方向を壁面Aに平行にして、上下方向に多段に配列され、支持金具3を介して後述する支持アングル5に連結固定されている。
ただし、本発明のルーバーは、壁面に設置するだけでなく、窓やフェンス等に設けられてもよいし、傾斜面に設けられてもよい。
【0021】
支持金具3は、図3及び図5に示すように、長板状のバネ鋼材をコ字形に折り曲げて形成されている。詳細には、支持金具3は、縦辺部3aとその上下両端から水平方向に延出する一対の横辺部3b,3bを備えており、縦辺部3aの中央には、ボルト孔3c(図3参照)が、横辺部3b,3bの先端部には、ボルト孔3d,3(図4参照)がそれぞれ設けられている。
尚、支持金具3は、充分な強度と弾性力とが得られれば、溶接により形成してもよい。
【0022】
支持アングル5は、断面がL字の条材であり、図1、図2及び図5に示すように羽根板2のボルト孔2b,2b,2bの位置に対応して3本が長手方向を鉛直にし、基礎アングル6を介して、壁面Aに連結されている。
図3及び図5に示すように、基礎アングル6は、支持アングル5と略同形状の条材を短く切断して形成されている。支持アングル5及び基礎アングル6には、互いに重なり合う面の対抗位置にそれぞれボルト孔(図示せず)が設けられており、図2に示すようにボルト11、ナット12により互いに固定されている。基礎アングル6は、壁面Aに埋め込まれたアンカーボルト13とナット14により壁面Aに固定されている。
【0023】
次に、壁面Aに羽根板2を取り付ける方法を説明する。上述したように、基礎アングル6を介して壁面Aに支持アングル5を連結固定した後、図3に示すように、支持アングル5に支持金具3を取り付けるためのボルト孔5aを設ける。ただし、ボルト孔5aは支持アングル5を壁面Aに固定する前に予め設けておいてもよい。そのあと、ボルト孔3c及びボルト孔5aにボルト9を通してナット10で固定し、支持金具3を支持アングル5に固定する。
【0024】
支持金具3を取り付けた後、図5に示すように支持金具3に羽根板2の短手方向の一端部を挿入する。ボルト孔3d,3d、ボルト孔2b,2bボルト孔4aにボルト7を通してナット8で固定し、羽根板2を支持金具3に固定する。
【0025】
このとき、図3に示すように、羽根板2は、支持金具3に、羽根板2の短手方向の一端面と支持金具のコ字の縦辺部3aとの間に隙間を形成した状態で支持固定されている。これにより、支持金具3の縦辺部3aと横辺部3bとの連結部が羽根板2に拘束されることを抑制でき、この部分の弾性変形を促して、羽根板2をより柔軟に傾斜させることが可能となる
【0026】
ルーバー1が取り付けられたあと、図6に示すように、子供が羽根板2に足をかける等して羽根板2に下向きの荷重が加わると、ボルトを介して支持金具3に荷重が伝達され、支持金具3の横辺部3b,3bが縦辺部3aとの連結部を支点にして下方に撓むように弾性変形する。したがって、羽根板2は、横辺部3b,3bの撓みにともなって、上面が開放端側に向かって下り勾配θ(傾き角θ)となるように傾斜する。すなわち、子供が羽根板2の傾きを感じて、子供がルーバー1に登ることを思い止まる。
結果として、子供がルーバー1の上方によじ登り、落下して怪我をする、あるいは、羽根板2や支持金具3が破損するといった事故を未然に防止することができる。
また、下段まで、羽根板2を水平に設けることが可能となり、ルーバー1の設置現場で求められる機能や意匠性を満足させることができる。
【0027】
ここで、本実施形態のルーバー1は、羽根板2の上面に人が足をかけて、羽根板の他端側に20kgの荷重が加わると、羽根板の上面の水平面に対する傾き角θが8度以上となるよう構成されている。傾き角θがこのような条件を満たすことで、羽根板2に足をかけた子供に、より確実に危険を感じさせることができる。
ルーバー1は、羽根板の他端側に20kgの荷重が加わると、傾き角θが20度以上となるよう構成されていることが好ましい。傾き角θがこのような条件を満たすことで、羽根板2にかけた子供の足を滑らせることができるため、さらに確実に子供がルーバーに登ることを抑制することができる。
また、ルーバー1は、羽根板の上面に40kgの荷重を加えても、傾き角θが30度以下となるよう構成されていることが、さらに好ましい。
【0028】
本発明のルーバーの羽根板支持構造は、上記の実施形態に限られるものでない。例えば、上記の実施の形態では、羽根板を支持金具自体の弾性変形によって傾斜するようにしていたが、支持金具自体は剛性があり弾性変形しにくくても、支持金具の横辺部と羽根板との間にゴムやエラストマー、あるいは板ばねやコイルスプリング等の弾性体を介在させるようにしても構わないし、縦辺部と支持アングルとの間にゴムやエラストマー、あるいは板ばねやコイルスプリング等の弾性体を介在させるようにしても構わない。
また、上記の実施の形態ではルーバーのすべての羽根板を本発明の支持構造で支持しているが、子供の手の届く羽根板だけを本発明の支持構造とし、他の羽根板は、従来の支持構造で支持するようにしてもよい。
また、上記の実施の形態では、建築物の1階の窓の前面にルーバーを設けたが、本発明の支持構造を利用したルーバーは、地階や2階以上の場所に設けてもよいし、フェンスやバルコニーの周辺に設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のルーバーの羽根板支持構造は、子供が足をかける等して羽根板に荷重を加えた際に、子供が感じる程度に羽根板が傾斜し、子供がルーバーに登ることを抑制できるとともに、ルーバーの機能や意匠性を確保することができるため、子供が通る場所の窓等の日よけや目隠しのために設けられるルーバーの他、フェンスやバルコニー周辺に設けられる各種のルーバーの羽根板支持構造に好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ルーバー
2 羽根板
2a 中空孔
2b ボルト孔
3 支持金具
3a 縦辺部
3b 横辺部
3c ボルト孔
3d ボルト孔
4 内部補強材
4a ボルト孔
5 支持アングル
5a ボルト孔
6 基礎アングル
7 ボルト
8 ナット
9 ボルト
10 ナット
11 ボルト
12 ナット
13 アンカーボルト
14 ナット
A 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視長方形をした羽根板が、支持金具を介してその短手方向の一端部を支持された状態で多段に配置されたルーバーの羽根板支持構造であって、
前記支持金具が、人が足をかけて前記羽根板の上面に荷重がかかったとき、所定角度羽根板が他端側下方に傾くように構成されていることを特徴するルーバーの羽根板支持構造。
【請求項2】
支持金具が、バネ鋼材で形成され、側面視略コ字形をしていて、羽根板がその短手方向の一端部をコ字の内側に嵌合させた状態で支持固定されている請求項1に記載のルーバーの羽根板支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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