説明

ルーフボックスを固定するためのクランプ装置

ルーフボックスを自動車の屋根に固定されているクロスキャリアに装着するための、ルーフボックスの底部を通り抜け、その底部を締め付けることができる2つのクランプ爪を有するクランプ装置であるが、クランプ爪(3、4)を純粋な旋回運動によりロック位置とアンロック位置との間を動かすために、クランプ爪(3、4)をルーフボックス内に装着可能である支持体(2)において固定位置の回転軸の回りに旋回可能に設けること、そしてクランプ爪(3、4)の内部の端部が当り金(9)に接触し、その当り金が操作要素の回転により上下に移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフボックスを自動車の屋根に固定されているクロスキャリアに装着するためのクランプ装置に関する。このクランプ装置はルーフボックスの底部を通り抜け、その底部を締め付けることができる2つのクランプ爪を有する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】EP1338474A1
【0003】
特許文献1において、自動車の屋根にルーフボックスを装着するためのクランプ装置が知られている。このクランプ装置はルーフボックス内部に設けられ、L字状の連結手段に対応する孔を備えている取付け装具を有する。これらの連結手段は回転ノブの内ねじとかみ合う外ねじをもつ駆動部に保持されている。回転ノブを回すと、駆動部はロックされた位置から回転ノブの中にねじ込まれ、まずL状フック群が降下する。取付け装具の孔の特殊な形状により伝達運動は旋回運動と重なり合うので、フックは旋回しながら互いに離反する。この強制ガイドにより旋回運動は常に伝達運動と連動する。ロックまたはアンロックのときのひっかかりを防止するために、運動部分は比較的大きな遊び間隙をもつ構造にしなければならないので、ガタガタ揺れる構造という印象が生まれる。もうひとつの欠点は、フックが製造コストの高い曲げ成形鍛造部材であるうえに、幅が広く、高いルーフキャリアの場合、その荷重能力が制限されることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって本発明の課題は堅牢な構造であり、確実なロックまたはアンロックが可能であるルーフボックス固定用クランプ装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、冒頭に述べた様態のクランプ装置において、本発明により、クランプ爪を純粋な旋回運動によりロック位置とアンロック位置との間を動かすために、クランプ爪をルーフボックス内に装着可能である支持体において固定位置の回転軸の回りに旋回可能に設けること、そしてクランプ爪の内部の端部が当り金に接触し、その当り金が操作要素の回転により上下に移動可能であることを提案する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、堅牢な構造であり、確実なロックまたはアンロックが可能であるルーフボックス固定用クランプ装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のクランプ装置は、2つのアームで構成されるクランプ爪が支持体に旋回可能に設けられるように構成される。この構造により、クランプ爪はクランプ装置が操作されるとその回転軸を支軸として純粋な旋回運動ないしは回転運動をおこなう。クランプ爪はそれらの内部に収まる端部により常に支持体に接しているので、メカニズム全体には空隙が発生せず、その結果、クロスキャリアにおけるルーフボックスの確実な保定が確実となる。操作要素の回転により、クランプ爪は互いに抱き合い、離間し合いながら旋回し、ルーフボックスをロックまたはアンロックする。
【0008】
本発明によるクランプ装置の当り金は、特に優れた形態として、ねじ条を有する。このねじ条は操作要素に回り止めされて連結されているねじ要素に設けられる対応のねじ条と噛み合い、そして操作要素の回転にともない当り金を上下に動かす。すなわち、操作要素が回されると、当り金はスピンドル形態のねじ要素を伝って上下に移動する。クランプ爪の端部は当り金に接しているので、当り金の上下方向の運動がクランプ爪の旋回を生み出すのである。
【0009】
クランプ装置の特に優れたひとつの機能を、ねじ要素を基本的に円筒状またはパイプ状に形成し、このねじ要素に当り金の内ねじ条と噛み合う外ねじ条を設けることにより実現することができる。操作要素を回すとねじ要素の外ねじ条の回転が生まれるように、このねじ要素を操作要素と連結される支持体の内部または側部に回転可能に設けることができる。このねじ要素は支持体の内部または側部に設けられる1つのガイド機素に支えることができる。このガイド機素はその上にねじ要素をかぶせてのせることができるピンとして形成することが好ましい。操作要素を回すと、これに連結されているねじ要素は回転するだけであるから位置は変えない。これに反し、当り金は、ねじ要素と当り金の内ねじ条を介して係合しているので、ねじ要素の回転に伴い上下に運動をおこなう。
【0010】
さらなる改善は、片方のまたは双方のクランプ爪が、支持体内部に隠れる方のクランプ爪端部を当り金に圧しつけるばね要素による圧力を受ける構造とすることにより実現できる。ばね要素はどの位置のクランプ爪に対しても作用するので、ロックまたはアンロックはよどみなくおこなわれる。支持体外部に出ている方の、クランプ爪の端部はばね要素により常に開放位置に保持され、支持体内部に隠れる方の、クランプ爪の端部は当り金に接する。この構造により、クランプ爪は自動的に最大限に開かれる。これによりクランプ装置のとりつけは容易となる。ばね要素は特に好ましくは板ばねとして形成される。クランプ爪がばね要素により当り金に対して圧しつけられることが確保されている限り、ばね要素は支持体または他の箇所に支承されることが可能である。
【0011】
クランプ爪にカバーケースを備えることも本発明の範囲内にある。特に好ましくは、このカバーケースは金属製のクランプ爪を包み、クロスキャリアの表面を保護できるようにプラスチック製とすることが提案される。
【0012】
さらに、本発明の一環として、クランプ爪は平行に配置され、運動可能であることである。特に好ましくは、双方のクランプ爪は平行に、そして互いに逆の方向に移動し、その移動のための運動は少なくとも各クランプ爪の厚みの半分を間隙としておこなわれることが提案される。これにより、クランプ装置をロックするときは、クランプ爪は互いに行き違いに運動し、ロック位置では重なり合うことが可能になる。この構造により、伝達される圧力は双方のクランプ爪に分配される。
【0013】
本発明をさらに展開し、自動車の屋根に固定されるクロスキャリアに押し付けられ、そしてロック状態のときクロスキャリアを中心に捉えるセンタリング部材をルーフボックスの外に設けること、または設けることを可能にすることを提案する。このセンタリング要素はクロスキャリアに対するほぼ凹型の受収部を形成する接触面を有する。このセンタリング部材は支持体に連結されており、とりつけられた状態ではルーフボックスの下側にくる。クランプ装置のロック状態では互いに斜めに推移する接触面は自動的にクロスキャリアにおけるクランプ装置のセンタリングをおこなう。
【0014】
さらに、本発明は自動車の屋根にとりつけられるクロスキャリアへ装着するためのルーフボックスに関する。このルーフボックスは、少なくとも1つの、好ましくは4つの上記のクランプ装置を有することを特徴とする。個々のクランプ装置はスナップ連結方式によりルーフボックスの床と連結される。
【実施例】
【0015】
本発明のさらなる利点および詳細は図面を参照しつつ1つの実施例により説明する。図面は概念図であり、以下の内容を示す。
図1 本発明のクランプ装置の実施例の展開図。
図2 図1に示すクランプ装置の断面図。
図3 アンロック位置のクランプ装置基本部分。
図4 ロック位置における図3に示すクランプ装置。
【0016】
図1に示すクランプ装置1は、2つのアーム状に形成されるクランプ爪3、4が旋回可能に設けられている支持体2から成る。クランプ爪3、4は鎌状に形成され、ボルトを介して支持体2に回転可能に設けられる。金属製、好ましくはスチール製のクランプ爪3、4はそれらのルーフボックス側の端部にプラスチック製のカバーケース5を有する。クランプ爪3、4は鍛造品であり、コスト面で有利に製造することができる。
【0017】
支持体2はもっぱら梯形の基本形状を有し、部分的に空胴になっている。支持体2の中心部はパイプ状のピン6を有する。このピン6はねじ要素7を支える。ねじ要素7はピン6の上において自由に回転できる。支持体2の両側の先端部の領域には、それぞれ板ばね8として形成されるばね要素が設けられる。このばね要素の一方の端は支持体2の端に支えられ、他方の端はクランプ爪3、4の上面に接し、クランプ爪をばね力によって当り金9に圧しつけている。
【0018】
当り金9にはねじ要素7の外ねじに合う内ねじ条が切られているので、当り金9はねじ要素7にかぶせて締め込むことができる。ねじ要素7に支持体2に差し込めば、当り金9は支持体2の内部空間を動くことができる。当り金9は両側端に向かい合う2つの当り面を有する。当り金9の端部断面は基本的にU状に形成されている。これらの当り面はクランプ爪3、4の端部を挟み、支えている。クランプ爪3、4は板ばね8により当り金9に圧しつけられる。
【0019】
図1にはさらに、基本的にルーフボックスの中に固定できる上下のケース部材から成るケース10を示す。ケース10の上には操作要素としての回転ノブ11が示されている。この回転ノブ11は組み込み状態で回り止めされてねじ要素7に連結される。
【0020】
図1はさらにまたシールストリップ12、ゴムシール13、およびセンタリング部材14を示す。ゴムシール13はクランプ装置をルーフボックス外側に対して密閉しつつ、緩衝要素の役割をはたす。センタリング部材14は自動車屋根のクロスキャリアに接することができる左右に斜めの凹みをもつ接触面15を有する。
【0021】
図2は図1のクランプ装置の断面図である。この図では見やすくするためにクランプ爪3のみを示す。他方のクランプ爪4はシンメトリックに動くことができる。図2の組立図から分かるように、ねじ要素7は支持体2のピン6に回転可能に支承される。ねじ要素7の外ねじ条および当り金9の内ねじ条は互いに噛み合うので、ねじ要素7と回り止めされて連結されている回転ノブが回転すると、当り金9はねじ条の軸に沿って上下に送られうる。回転ノブ11が時計方向に回転すると、当り金9は上方に動き、回転ノブが反時計方向に回転すると、当り金9は下方に動く。これらの運動は、当り金9の上側がケース10の内面に当たるとき、または当り金9の下側は支持体2の床に当たるとき、制限される。
【0022】
クランプ爪3はボルト17を介して支持体2に回転自在に支承されている。ケース10の中にある、クランプ爪3の端部18は当り金9のU形状の側方の端部19に接触する。板ばね8の予張力がはたらき、クランプ爪3はどの位置にあっても当り金9に圧しつけられる。その結果、クランプ爪3の外部に突き出ている端は常に外に向かって作用する圧力を有する。
【0023】
図2には、センタリング部材14の接触面15がクロスキャリア20に接している状態が示される。クロスキャリア20はセンタリング部材14と接触する2つの接触点ないしは接触面を有し、そしてクランプ爪3、4のカバーケース5と接触する2つの接触点ないしは接触面を有する。
【0024】
クランプ装置1の個別部品はスナップ連結方式で互いに連結される。クランプ装置1はルーフボックスの床とねじ止めされるか、またはスナップ連結方式で床にとりつけられる。
【0025】
図3はアンロック状態のクランプ装置の主要部品の外観図である。この外観図には支持体は示されていない。当り金9は最も下がった位置にあり、当り金9の接触しているクランプ爪3、4は最も開いた状態である。この状態のとき、ルーフボックスにとりつけられているクランプ装置1は自動車のクロスキャリアに簡単に設置することができる。引き続いて回転ノブ11を時計方向に回すと、当り金9はねじ要素7に沿って垂直に上方に送られる。当り金9が動くとクランプ爪3、4が連動し、それらの回転点を支点として旋回するので、クランプ爪は閉じられる。
【0026】
図4は図3に示した、ロック状態のクランプ装置1の外観図である。当り金9はその最上位の位置にあり、クランプ爪3、4はそれに応じて互いに旋回し合い、その結果、クランプ爪3、4の外側にある端は互いに重なり合い、そしてクロスキャリアを完全に囲むことができる。
【0027】
当り金9と支持体2とは、両方のクランプ爪3、4が平行な面に設けられ、そして運動可能であるような形態となっている。この構造により、クランプ爪3、4は互いに重なり合うまで旋回運動をおこない、ロック状態を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のクランプ装置の実施例の展開図。
【図2】図1に示すクランプ装置の断面図。
【図3】アンロック位置のクランプ装置基本部分。
【図4】ロック位置における図3に示すクランプ装置。
【符号の説明】
【0029】
1 クランプ装置 2 支持体 3 クランプ爪
4 クランプ爪 5 カバーケース 6 ピン
7 ねじ要素 8 板ばね 9 当り金
10 ケース 11 回転ノブ 12 シールストリップ
13 ゴムシール 14 センタリング部材 15 接触面
17 ボルト 18 端部 19 端部
20 クロスキャリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフボックスを自動車の屋根に固定されているクロスキャリアに装着するための、ルーフボックスの底部を通り抜け、その底部を締め付けることができる2つのクランプ爪を有するクランプ装置において、
クランプ爪(3、4)を純粋な旋回運動によりロック位置とアンロック位置との間を動かすために、クランプ爪(3、4)をルーフボックス内に装着可能である支持体(2)において固定位置の回転軸の回りに旋回可能に設けること、そしてクランプ爪(3、4)の内部の端部が当り金(9)に接触し、その当り金が操作要素の回転により上下に移動可能であることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
請求1に掲げるクランプ装置において、クランプ装置の当り金(9)はねじ条を有し、このねじ条は操作要素に回り止めされて連結されているねじ要素(7)に設けられる対応のねじ条と噛み合い、そして操作要素の回転にともない当り金(9)を上下方向に動かすことを特徴とするクランプ装置。
【請求項3】
請求2に掲げるクランプ装置において、ねじ要素(7)を基本的に円筒状またはパイプ状に形成し、このねじ要素に当り金(9)の内ねじ条と噛み合う外ねじ条を設けることを特徴とするクランプ装置。
【請求項4】
請求2または請求3に掲げるクランプ装置において、ねじ要素(7)は支持体(2)の内部または側部に、特にピン(6)として形成されるガイド機素に回転可能に設けられることを特徴とするクランプ装置。
【請求項5】
前掲の請求のいずれかに掲げるクランプ装置において、片方のまたは双方のクランプ爪(3,4)が、支持体内部に隠れる方のクランプ爪(3,4)の端部(18)を当り金(9)に圧しつけるばね要素による圧力を受けることを特徴とするクランプ装置。
【請求項6】
請求5に掲げるクランプ装置において、ばね要素は板ばね(8)として形成されることを特徴とするクランプ装置。
【請求項7】
請求5または請求6に掲げるクランプ装置において、ばね要素は支持体(2)支承されることを特徴とするクランプ装置。
【請求項8】
前掲の請求のいずれかに掲げるクランプ装置において、クランプ爪(3,4)は、特に好ましくは、プラスチック製のカバーケース(5)を備えることを特徴とするクランプ装置。
【請求項9】
前掲の請求のいずれかに掲げるクランプ装置において、クランプ爪(3,4)は平行に配置し、運動可能であることを特徴とするクランプ装置。
【請求項10】
前掲の請求のいずれかに掲げるクランプ装置において、自動車の屋根に固定されるクロスキャリアに押し付けられ、そしてロック状態のときクロスキャリアを中心に捉えるセンタリング部材(14)をルーフボックスの外に設けること、または設けることを可能にすることを特徴とするクランプ装置。
【請求項11】
請求10に掲げるクランプ装置において、センタリング要素(14)はクロスキャリアに対するほぼ凹型の受収部(15)を形成する接触面を有することを特徴とするクランプ装置。
【請求項12】
前掲の請求のいずれかに掲げるクランプ装置において、操作要素は回転ノブ(11)として形成されることを特徴とするクランプ装置。
【請求項13】
前掲の請求のいずれかに掲げるクランプ装置において、クランプ装置は支持体(2)を少なくともその1部を被覆するケース(10)を有することを特徴とするクランプ装置。
【請求項14】
ルーフボックスが少なくとも1つの、優れた構造としては4つのクランプ装置(1)を有することを特徴とする、請求1から13のいずれかに掲げるルーフボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−506585(P2008−506585A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521779(P2007−521779)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001194
【国際公開番号】WO2006/007813
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(507015583)
【氏名又は名称原語表記】THULE SWEDEN AB
【Fターム(参考)】