説明

ループゲイン調整回路

【課題】波形の比較を適切に行う。
【解決手段】加算回路20において、被駆動部材であるレンズ10の位置を補償するために被駆動部材の位置検出信号に基づき発生される補償信号にサイン波を加算する。加算回路20によりサイン波が加算される前後の信号について、絶対値積分回路30において絶対値積分する。得られた2つの積分値を比較回路34で比較し、ゲイン調整回路36は両者が一致するように前記補償信号を増幅するアンプのゲインを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被駆動部材の位置を検出し、被駆動部材が目的位置に位置するよう被駆動部材をアクチュエータで駆動するサーボ制御のループゲイン調整回路に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の機器制御において、サーボ制御が利用されており、特に部材の位置制御には、検出位置が目標位置に一致させるべくフィードバック制御するサーボ制御が広く用いられている。
【0003】
ここで、このようなサーボ制御を適切に行うためには、フィードバックループでのループゲインが適切なものでなければならない。そこで、ループゲインを調整する必要があるがこの調整には、ループの信号伝達経路に例えばサイン波を加算し、このサイン波によってフィードバックループを動作させ、サイン波の加算前後の信号が同一になるようにループゲインを調整していた。すなわち、加算前後の信号を取り出し、これら信号の振幅を検出して、これが同じになるようにループゲインを調整していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−86019号公報
【特許文献2】特開2009−151028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、信号がループを一巡する間には、信号ひずみが発生する場合がある。このような場合に、正確に振幅を測定することが難しい。振幅測定の精度を上げるためには何周期もの測定結果の平均を求めたりする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被駆動部材の位置を検出し、被駆動部材が目的位置に位置するよう被駆動部材をアクチュエータで駆動するサーボ制御のループゲイン調整回路であって、被駆動部材の位置を補償するために被駆動部材の位置検出信号に基づき発生される補償信号にサイン波を加算しアクチュエータをサイン波駆動する信号を得るサイン波加算手段と、このサイン波加算手段によりサイン波が加算される前後の信号について、それぞれ絶対値積分する絶対値積分回路と、この絶対値積分回路で得られた、2つの積分値を比較し、両者が一致するように前記補償信号を増幅するアンプのゲインを調整するゲイン調整回路と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、前記絶対値積分回路は、サイン波加算前後の信号のそれぞれ1周期分を絶対値積分することが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、絶対値積分を利用することで、補償信号の波形が歪んだ場合にも適切な比較が行え、ゲイン調整とより的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】サイン波の絶対値積分を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、実施形態の全体構成を示す図であり、ループゲイン調整装置は、カメラの手振れ補正についてのループゲインの調整に用いられる。
【0012】
本手振れ補正は、撮像素子の受光面に光学像を形成する光学系に設けられた被駆動部材であるレンズ10の位置を調整して手ぶれ補正する。
【0013】
ホール素子12は、レンズ10に取り付けられた磁石からの磁界を検出することで、レンズ10の位置に応じた位置検出信号を出力する。位置検出信号は、A/D変換回路14において、デジタルデータに変換され、サーボ回路16に入力される。
【0014】
サーボ回路16では、ジャイロセンサ(図示せず)から供給されるカメラの移動量を加算するとともに、レンズ10の位置に基づいて、レンズ10を目標位置に移動されるための補償データを算出する。ここで、ループゲインの調整の際には、ジャイロセンサからの信号はなく、レンズ10の原点位置と位置検出信号との誤差が補償データとして出力される。
【0015】
得られた補償データは、ゲイン調整アンプ18において、所定のゲインで増幅された後、加算回路20に供給される。この加算回路20には、サイン波発生回路22からのサイン波が供給されている。このサイン波は、100Hz程度の追従可能な周波数で、振幅も追従可能なものに設定されている。
【0016】
そして、この加算後の信号がD/A変換器24でアナログ信号に変換され、ドライバ26に供給される。ドライバ26はD/A変換器24から供給される信号に応じてアクチュエータ28を駆動するための制御信号を生成し、これをアクチュエータ28に供給する。
【0017】
アクチュエータ28は、ボイスコイルやピエゾ素子で構成されており、ドライバ26からの制御信号に応じてレンズ10を駆動する。そして、このレンズ10には永久磁石が取り付けられており、レンズ10の移動がホール素子12によって検出される。
【0018】
ここで、加算回路20には、サイン波が供給されている。アクチュエータ28は、加算されたサイン波に応じてレンズ10を駆動し、駆動されたレンズ10の移動がホール素子12によって検出される。そして、サーボ回路16は、レンズ10を原点位置に移動させるように補償データを発生する。
【0019】
本実施形態では、加算回路20の前後の信号は、絶対値積分回路30に供給される。この絶対値積分回路30は、図2に示すように、入力される2つの信号について0から離れた部分の加算された1周期分の面積についてのデータを出力する。すなわち、全波整流した値を出力する。必ずしも1周期分に限定されず、1周期以上、1周期未満でもよいが、あまり短いと十分な精度が得られず、あまり長いと制御周期が長くなってしまうため、1周期が特に好適であり、または数周期とすることができる。
【0020】
絶対値積分回路30において得られた、加算回路20の前後の信号の絶対値積分の値は、比較回路34に供給され、ここで比較される。比較回路34では、加算前の信号と、加算後の信号の積分値のどちらが大きいかという比較が行われる。
【0021】
比較回路34の比較結果は、ゲイン調整回路36に供給される。ゲイン調整回路36は加算回路20の前後の信号の絶対値積分の値が同一になるように、前の信号の積分値が大きい場合にはゲインを小さく、後の信号の積分値が大きい場合にはゲインを大きく変更する。
【0022】
ここで、ゲイン調整アンプ18のゲインの変更については、固定値を1度の制御ステップとして、順次ゲインを変更することが考えられる。しかし、この手法では、ゲインが正しいゲインとは大きく異なっている場合に適切な値に制御するのに時間が掛かる。
【0023】
そこで、本実施形態においては、逐次比較方式や除算方式が採用される。逐次比較方式では、A点での信号の大きさA、B点での信号の大きさをBとした場合に、AとBの大きさを比較し、比較結果に応じてゲイン調整アンプ18のゲイン値の上位ビットから下位ビットまでを順次決定する。例えば、ゲイン調整アンプ18のゲイン値が16ビットのデジタル値で表されるものとし、ゲイン値を8000h(0100000000000000)に設定してサイン波を供給する。A≧Bの場合、bit15を“1”に設定した場合のゲイン値が目標のゲイン値より大きいため、bit15の“0”を確定し、ゲイン値を4000h(0010000000000000)に変更し、下位ビットの調整に移る。A<Bの場合、bit15を“1”に設定した場合のゲイン値が目標のゲイン値より小さいため、bit15の“1”を確定し、ゲイン値をc000h(0110000000000000)に変更し、下位ビットの調整に移る。つまり、検査したいゲイン値のbitに対して、“1”を設定してサイン波を供給し、A≧Bの場合にはそのbitの“0”を確定し、A<Bの場合にはそのbitの“1”を確定する。除算方式では、両信号の比であるA/Bを現在のゲインに掛けてゲインを修正する。また、これら3つの方式を適宜組み合わせることも好適である。AとBとの差が大きいときに逐次比較方式または除算方式を採用し、差が所定値以下になったときに固定値の加減算を採用することが好適である。
【0024】
このように、本実施形態では、A点、B点の信号の大きさの測定に絶対値積分を使用する。これによって、サイン波1周期の全波形データを使用できるのでサイン波何周期もの平均が必要なくなり、調整時間の短縮ができる。アクチュエータ28の種類によっては、ループ一巡後の波形が歪み、振幅が精度よく検出できない場合がある。このような場合にも、絶対値積分であれば、波形歪みの影響が軽減できる。
【0025】
なお、本実施形態では、振幅測定回路32を有しており、数周期の振幅を測定することも可能である。アクチュエータ28の特性に応じて、振幅、絶対値積分の選択が可能である。この切り替えは、決定後のループゲインと同様に、不揮発性メモリなどに記憶しておき、読み出した信号によって行うことが好適である。
【0026】
このようにして、ループゲインを決定した場合には、その設定値を不揮発性メモリなどに書込み、その後は書き込まれたループゲインを利用してサーボ制御が行われる。また、電源立ち上がりや立ち下がり時などに、適当な頻度で、上述のようなループゲインの設定作業を行うことも好適である。これによって、サーボ制御の経時的な変化にも対応することが可能になる。
【符号の説明】
【0027】
10 レンズ、12 ホール素子、14 A/D変換回路、16 サーボ回路、18 ゲイン調整アンプ、20 加算回路、22 サイン波発生回路、24 D/A変換器、26 ドライバ、28 アクチュエータ、30 絶対値積分回路、32 振幅測定回路、34 比較回路、36 ゲイン調整回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動部材の位置を検出し、被駆動部材が目標位置に位置するよう被駆動部材をアクチュエータで駆動するサーボ制御のループゲイン調整回路であって、
被駆動部材の位置を補償するために被駆動部材の位置検出信号に基づき発生される補償信号にサイン波を加算しアクチュエータをサイン波駆動する信号を得るサイン波加算手段と、
このサイン波加算手段によりサイン波が加算される前後の信号について、それぞれ絶対値積分する絶対値積分回路と、
この絶対値積分回路で得られた、2つの積分値を比較し、両者が一致するように前記補償信号を増幅するアンプのゲインを調整するゲイン調整回路と、
を含む、ループゲイン調整回路。
【請求項2】
請求項1に記載のループゲイン調整回路において、
前記絶対値積分回路は、サイン波加算前後の信号のそれぞれ1周期分を絶対値積分する、ループゲイン調整回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−254353(P2011−254353A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127629(P2010−127629)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】