説明

ループ織りブラシ、クリーニングブラシ、潤滑剤塗布ブラシ、及びクリーニング装置

【課題】ループ織りブラシの特性を充分に生かしたクリーニング性能を発揮し得るループ織りブラシ、クリーニングブラシ、潤滑剤塗布ブラシ及びクリーニング装置を提供する。
【解決手段】基材21bと、基材21bの表面に起毛された複数本のブラシ糸21cからなるブラシ毛とを備える。ブラシ毛は、複数本のブラシ糸21cを束にして基材21bにループ状に植毛した第1ブラシ毛LB1と、複数本のブラシ糸21cを束にして捻ったものを基材21bにループ状に植毛した第2ブラシ毛LB2との2種類からなる。1つの第1ブラシ毛LB1と1つの第2ブラシ毛LB2とを交互に蛇行して配した条が複数列に配されてなっている。捻じれのない第1ブラシ毛LB1は、ループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して垂直となる一方、捻じれのある第2ブラシ毛LB2は、ループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して平行となるように配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、該基材の表面に起毛された複数本のブラシ糸からなるブラシ毛とを備え、上記ブラシ毛が、複数本のブラシ糸を束にして上記基材に対してループ状に植毛されてなるループ織りブラシ、クリーニングブラシ、潤滑剤塗布ブラシ、及びクリーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、静電潜像担持体である感光体ドラム上の転写後の残留トナーや紙粉等を除去するクリーニング装置が設けられている。
【0003】
このクリーニング装置には、例えば、感光体ドラム上の転写後の残留トナーや紙粉等を物理的に掻き落として除去するクリーニングブレードが設けられると共に、このクリーニングブレードよりも感光体ドラムの回転方向上流側には、クリーニングブレードでの残留トナーの除去に先立って、クリーニングブラシが設けられている。
【0004】
従来のクリーニングブラシは、例えば、ロールにカットパイルブラシ糸を植毛し、ロールを回転させ、カットパイルブラシの毛先を感光体ドラムに摺接させて残留トナー等を除去していた。
【0005】
しかし、このようなカットパイルブラシ糸を用いると、原糸は太くて腰が強いため、そのカットしたエッジが感光体ドラムと点接触し、感光体ドラムの表面を傷付ける恐れがある。
【0006】
そこで、この問題を解決するため、例えば、特許文献1では、図8(a)(b)(c)に示すように、ブラシ101の先端をループ形状に形成している。このブラシ101は、ループパイルブラシを金属製の芯金102に巻き付けて接着することによって形成されている。このループパイルブラシは、基材に複数本のブラシ糸をループ状に織り込んで作製したものである。複数本のブラシ糸は、それぞれの毛先が弧状をなすと共に、ループパイルブラシを基材と直交する方向から平面視した状態で各毛先がそれぞれ同方向へ延びるように配置されている。そして、ループパイルブラシは、ブラシ101の毛先を感光体ドラムに線接触状態で接触させることにより、ブラシ101による感光体ドラムの傷付きを緩和するよう構成されている。
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1では、ブラシ101は感光体ドラムに対して線接触という広い範囲で接触されることにより、感光体ドラムの回転による影響を受け易くなっている。したがって、感光体ドラムの回転による影響を受けた複数本のブラシ101は、全てが同じ方向(感光体ドラムの回転方向)へと毛倒れしてしまう。このように、ブラシ糸が毛倒れした場合には、ブラシ体の径が小さくなって感光体ドラムへのブラシ糸の接触不良が生じたり、互いに折り重なって倒れたブラシ糸間にトナーが取り込まれて同トナーが感光体へ再付着したりする等の不具合を生じるという問題点を有している。
【0008】
そこで、この問題を解決するために、特許文献2では、図9に示すように、毛先が弧状をなしている隣接する一対のブラシ糸201・201は、毛先における接線のうち基材202の表面と平行な面内で延びる接線を互いに交差するように配置させている。尚、各ブラシ糸201は、複数本の繊維を撚り合わせて得られたものであって、ループの形状が少し歪んでいる。
【0009】
これにより、ブラシ糸をループ状としつつ、該ブラシ糸の毛倒れを抑制することが可能なブラシ体を提供するものとなっている。
【特許文献1】特開平1−116677号公報(1989年5月9日公開)
【特許文献2】特開2005−230732号公報(2005年9月2日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の特許文献2のクリーニングブラシでは、隣接する一対のブラシ糸201・201のいずれもが複数本の繊維を撚り合わせて得られたものであるので、ループ織りブラシの特性を充分に生かしていないという問題点を有している。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ループ織りブラシの特性を充分に生かしたクリーニング性能を発揮し得るループ織りブラシ、クリーニングブラシ、潤滑剤塗布ブラシ、及びクリーニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のループ織りブラシは、上記課題を解決するために、基材と、該基材の表面に起毛された複数本のブラシ糸からなるブラシ毛とを備え、上記ブラシ毛は、複数本のブラシ糸を束にして上記基材にループ状に植毛した第1ブラシ毛と、複数本のブラシ糸を束にして捻ったものを上記基材にループ状に植毛した第2ブラシ毛との2種類からなり、1つの上記第1ブラシ毛と1つの第2ブラシ毛とを交互に蛇行して配した条が複数列に配されてなっていると共に、捻じれのない上記第1ブラシ毛は、ループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して垂直となるように配設されている一方、捻じれのある上記第2ブラシ毛は、ループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して平行となるように配設されていることを特徴としている。
【0013】
上記の発明によれば、ループ織りブラシは、基材と、該基材の表面に起毛された複数本のブラシ糸からなるブラシ毛とを備えている。ここで、例えば、クリーニング装置のクリーニングブラシとして、カットブラシ毛を使用すると、通常、原糸は太く腰が強いためその破断エッジが静電潜像担持体と点接触し、静電潜像担持体の表面を傷付けて異常に摩耗させる恐れがある。この点、ループ織りブラシでは、先端がループ状に形成されているため、ブラシ毛先の接触が所謂線接触状態となる。この結果、太く腰の強いブラシ糸からなるブラシ毛を用いても静電潜像担持体の表面を傷付けることはない。
【0014】
また、本発明では、上記ブラシ毛は、複数本のブラシ糸を束にして上記基材にループ状に植毛した第1ブラシ毛と、複数本のブラシ糸を束にして捻ったものを上記基材にループ状に植毛した第2ブラシ毛との2種類からなっている。
【0015】
すなわち、従来のループ織りブラシは、複数本のブラシ糸を束にして捻って一体としたブラシ毛からなっていた。このため、ループ織りブラシをクリーニングブラシとして使用した場合、静電潜像担持体の表面を傷付けることはないが、ループ形成平面の向きと静電潜像担持体の回転方向との関係で、転写後の静電潜像担持体に残留するトナーのクリーニングが不十分であった。つまり、従来のループ織りブラシは、ループ織りブラシの特性を充分に生かしていないという問題があった。また、潤滑剤塗布ブラシは、静電潜像担持体の表面を滑り易くするために、固体潤滑剤を静電潜像担持体の表面に塗布する。この場合、固体潤滑剤を潤滑剤塗布ブラシにて削り取り、潤滑剤塗布ブラシを静電潜像担持体に接触させることにより、固体潤滑剤を静電潜像担持体の表面に塗布することになるが、固体潤滑剤の削り取り性能も不十分であるという問題があった。
【0016】
そこで、本発明では、ブラシ毛は、複数本のブラシ糸を束にして上記基材に対してループ状に植毛した第1ブラシ毛と、複数本のブラシ糸を束にして捻ったものを上記基材に対してループ状に植毛した第2ブラシ毛との2種類のものを使用している。そして、1つの第1ブラシ毛と1つの第2ブラシ毛とを交互に蛇行して配した条を複数列に配していると共に、捻じれのない上記第1ブラシ毛は、ループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して垂直となるように配設されている一方、捻じれのある上記第2ブラシ毛は、ループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して平行となるように配設されている。
【0017】
この結果、捻じれのない第1ブラシ毛は、ループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して垂直となるように配設されている。このため、単糸のブラシ糸における一本、一本が、静電潜像担持体上の残留トナーや固体潤滑剤に充分に引っ掛かるので、クリーニングムラや固体潤滑剤の削りムラが発生し難い。また、単糸のブラシ糸における一本、一本が、静電潜像担持体に接触するので、静電潜像担持体への密着性がよい。
【0018】
一方、捻じれのある第2ブラシ毛は、ループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して平行となるように配設されている。このため、複数本のブラシ糸を束にして捻じって1つに一体化した第2ブラシ毛を、ループ形成平面が被摺接体である静電潜像担持体への摺接方向に対して平行となるようにして、静電潜像担持体に接触させる。この結果、第2ブラシ毛を逃がすことなく静電潜像担持体に密着させることができる。
【0019】
さらに、1つの第1ブラシ毛と1つの第2ブラシ毛とを交互に蛇行して配した条を複数列に配しているので、第1ブラシ毛と第2ブラシ毛とは互いに支持し合うことができる。このため、ブラシ毛が倒れるのを防止することができる。
【0020】
したがって、ループ織りブラシの特性を充分に生かしたクリーニング性能を発揮し得るループ織りブラシを提供することができる。
【0021】
また、本発明のループ織りブラシでは、前記基材は、帯状にてなり、回転自在のブラシ軸に対して螺旋状に巻回されていることが好ましい。
【0022】
これにより、ループ織りブラシを回転自在のブラシ軸に対して容易に巻回することができる。また、帯状の基材に格子状に第1ブラシ毛と第2ブラシ毛とを交互に配設した場合においても、ブラシ軸に対する螺旋状への巻回角度を調整することにより、容易に、第1ブラシ毛をループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して垂直とする一方、第2ブラシ毛をループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して平行とすることができる。
【0023】
また、本発明のクリーニングブラシは、上記記載のループ織りブラシを用いている。
【0024】
これにより、ループ織りブラシの特性を充分に生かしたクリーニング性能を発揮し得るクリーニングブラシを提供することができる。
【0025】
また、本発明の潤滑剤塗布ブラシは、上記記載のループ織りブラシを用いている。
【0026】
これにより、ループ織りブラシの特性を充分に生かしたクリーニング性能を発揮し得る潤滑剤塗布ブラシを提供することができる。
【0027】
本発明のクリーニング装置は、上記課題を解決するために、電子写真方式にて画像形成する画像形成装置における転写後の静電潜像担持体をクリーニングするクリーニング装置において、上記記載のクリーニングブラシと、上記記載の潤滑剤塗布ブラシと、上記潤滑剤塗布ブラシに対して押圧力を付与する状態で隣接して対向配置される固体潤滑剤を有してなる潤滑剤供給手段とを備えていることを特徴としている。
【0028】
上記の発明によれば、固体潤滑剤は上記ループ織りブラシからなる潤滑剤塗布ブラシによって、効率よく削りとられ、その結果、静電潜像担持体に均一に潤滑剤を塗布することができる。
【0029】
また、ループ織りブラシからなるクリーニングブラシによって、転写後の静電潜像担持体に残存するトナーを効率よく除去することができる。
【0030】
したがって、ループ織りブラシの特性を充分に生かしたクリーニング性能を発揮し得るクリーニング装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のループ織りブラシは、以上のように、基材と、該基材の表面に起毛された複数本のブラシ糸からなるブラシ毛とを備え、上記ブラシ毛は、複数本のブラシ糸を束にして上記基材にループ状に植毛した第1ブラシ毛と、複数本のブラシ糸を束にして捻ったものを上記基材にループ状に植毛した第2ブラシ毛との2種類からなり、1つの上記第1ブラシ毛と1つの第2ブラシ毛とを交互に蛇行して配した条が複数列に配されてなっていると共に、捻じれのない上記第1ブラシ毛は、ループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して垂直となるように配設されている一方、捻じれのある上記第2ブラシ毛は、ループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して平行となるように配設されているものである。
【0032】
本発明のクリーニングブラシは、以上のように、上記記載のループ織りブラシを用いている。
【0033】
本発明の潤滑剤塗布ブラシは、以上のように、上記記載のループ織りブラシを用いている。
【0034】
本発明のクリーニング装置は、以上のように、上記記載のクリーニングブラシと、上記記載の潤滑剤塗布ブラシと、上記潤滑剤塗布ブラシに対して押圧力を付与する状態で隣接して対向配置される固体潤滑剤を有してなる潤滑剤供給手段とを備えているものである。
【0035】
それゆえ、ループ織りブラシの特性を充分に生かしたクリーニング性能を発揮し得るループ織りブラシ、クリーニングブラシ、潤滑剤塗布ブラシ及びクリーニング装置を提供するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0037】
図2は、本実施の形態のループ織りブラシを備えた画像形成装置における画像形成部の構造を模式的に示す正面図である。
【0038】
尚、画像形成装置は、画像形成装置が備えるスキャナにて読み込まれたデータや、画像形成装置に接続された外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等の画像処理装置)からのデータを画像として出力するものである。
【0039】
図2に示すように、画像形成部30は、感光体ドラム1と、帯電ブラシ2と、露光装置3と、現像装置10と、転写ブラシ4と、搬送ベルト5と、図示しない除電手段と、クリーニング装置20とを備えており、感光体ドラム1の周囲に、回転方向に沿って、帯電ブラシ2、露光装置3、現像装置10、転写ブラシ4及び搬送ベルト5、図示しない除電手段、クリーニング装置20をこの順序で配置した構成となっている。
【0040】
感光体ドラム1は、画像形成装置における静電潜像担持体となるものであり、円柱形状を有している。
【0041】
帯電ブラシ2は、感光体ドラム1と物理的に接触して、感光体ドラム1の表面を一様に所定の電位まで帯電させるためのものである。帯電ブラシ2は、感光体ドラム1と互いの回転軸を平行にして隣接対向して設置されている。
【0042】
露光装置3は、帯電ブラシ2によって帯電された感光体ドラム1の表面を、例えばパーソナルコンピュータ等の画像処理装置からのデータに基づき、レーザ光等により露光して、感光体ドラム1の表面に静電潜像を形成させるためのものである。露光装置3として、例えば半導体レーザや発光ダイオードを用いることができる。
【0043】
現像装置10は、感光体ドラム1の表面に現像ロール11にて現像剤を供給し、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤像として顕像化するつまり現像するためのものである。本実施の形態の現像装置10では、例えば非磁性1成分トナーからなる現像剤が使用されており、いわゆる非磁性1成分現像方式を採用している。尚、本発明においては、必ずしも非磁性1成分トナーに限らず、全ての現像剤を対象とすることができる。
【0044】
搬送ベルト5は、感光体ドラム1の表面に現像剤像が形成された後に、PPC(Plain Paper Copy)用紙等の記録媒体6を感光体ドラム1に運搬するためのものである。
【0045】
転写ブラシ4は、感光体ドラム1の表面の現像剤像を、転写材としての記録媒体6に転写するためのものであり、板金の面方向と記録媒体6の面方向とを平行にして、搬送ベルト5を間に挟んで感光体ドラム1と隣接対向するように設置されている。尚、記録媒体6は、例えば用紙、OHP等である。転写ブラシ4は、板金に、板金と接する面を底面とした見かけ上直方体のブラシ体を貼り付けた固定型ブラシである。
【0046】
図示しない除電手段は、感光体ドラム1の表面を除電するためのものである。除電手段としては、例えば除電ブラシ等が挙げられる。
【0047】
クリーニング装置20は、クリーニングブラシ21と、潤滑剤塗布ブラシ22と、固体潤滑剤供給装置23と、クリーニングブレード24とを備えており、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去するためのものである。尚、クリーニング装置20については、後で詳述する。
【0048】
上記構成の画像形成装置において、画像を形成する動作を、図2に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0049】
感光体ドラム1の表面は、帯電ブラシ2と接触することにより、均一に帯電する。表面が帯電された感光体ドラム1は、露光装置3によって、データに基づき露光され、感光体ドラム1の表面に静電潜像が形成される。そして、現像装置10の現像剤供給ロール12にて現像ロール11の表面に現像剤が塗布され、現像ロール11から感光体ドラム1の表面に現像剤が供給され、感光体ドラム1の表面の静電潜像が、現像されて顕像化される。続いて、搬送ベルト5によって記録媒体6が感光体ドラム1へ運搬され、転写ブラシ4によって、感光体ドラム1の表面の現像剤像が、記録媒体6に転写される。転写後の感光体ドラム1は、図示しない例えば除電ブラシ等の除電手段により、感光体ドラム1の表面が除電される。次いで、残留したトナーや紙粉等が、クリーニングブラシ21、及びクリーニングブレード24によって除去される。このようなサイクルで画像形成は行われる。
【0050】
次に、本実施の形態のクリーニング装置20の詳細について、図1〜図3に基づいて以下に説明する。尚、図1(a)〜(d)は、本実施の形態のクリーニングブラシ21の構成を示す図であり、図3(a)(b)は、上記クリーニングブラシ21における捻じれのない第1ブラシ毛及び捻じれのある第2ブラシ毛をそれぞれ示す図である。
【0051】
本実施の形態のクリーニング装置20は、図2に示すように、ループ織りブラシとしてのクリーニングブラシ21と、ループ織りブラシとしての潤滑剤塗布ブラシ22と、潤滑剤供給手段としての固体潤滑剤供給装置23と、クリーニングブレード24とを備えており、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去すると共に、感光体ドラム1の表面に潤滑剤を塗布するためのものである。
【0052】
詳細には、上記クリーニングブラシ21は、感光体ドラム1と物理的に接触して、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去する。
【0053】
また、潤滑剤塗布ブラシ22は、固体潤滑剤供給装置23から供給される図示しない固体潤滑剤を、感光体ドラム1の表面に均一に塗布する。すなわち、潤滑剤塗布ブラシ22は、クリーニングブレード24の感光体ドラム1への摺接に際しての摩擦抵抗を小さくしてクリーニング効率を高くするようになっている。固体潤滑剤供給装置23は、潤滑剤塗布ブラシ22の表面全体に固体潤滑剤が行き渡るように、潤滑剤塗布ブラシ22と隣接対向して設置されている。使用する固体潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0054】
さらに、クリーニングブレード24は、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を物理的に掻き落とす。このクリーニングブレード24は、感光体ドラム1の回転方向に沿って、クリーニングブラシ21の後側に備えられ、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を均一に最終除去するために、感光体ドラム1の法線方向に対して鋭角に摺接している。
【0055】
ここで、特徴のある本実施の形態のクリーニングブラシ21及び潤滑剤塗布ブラシ22の構成について詳述する。尚、本実施の形態では、クリーニングブラシ21と潤滑剤塗布ブラシ22とは同じ構成を有している。したがって、以下の説明では、主としてクリーニングブラシ21の構成について説明するが、潤滑剤塗布ブラシ22についても同様に形成されているものである。
【0056】
本実施の形態では、クリーニングブラシ21は、図1(a)(b)に示すように、回転自在のブラシ軸としてのシャフト21aの周囲に、ブラシ毛を起毛した基材21bを螺旋状に巻回してなり、上記感光体ドラム1の回転軸方向とシャフト21aの軸方向とを互いに平行にして、感光体ドラム1に隣接対向するように設置されている。
【0057】
また、クリーニングブラシ21は、図1(d)に示すように、基材21bと、この基材21bの表面に起毛された複数本のブラシ糸21cからなるブラシ毛とを備えている。ブラシ糸21cの繊維材料として、例えばナイロンを使用している。
【0058】
すなわち、クリーニング装置20のクリーニングブラシとして、カットブラシ毛を使用すると、通常、原糸は太く腰が強いためその破断エッジが静電潜像担持体と点接触し、感光体ドラム1の表面を傷付けて異常に摩耗させる恐れがある。この点、ループ織りブラシでは、先端がループ状に形成されているため、ブラシ毛先の接触が所謂線接触状態となる。この結果、太く腰の強いブラシ糸からなるブラシ毛を用いても感光体ドラム1の表面を傷付けることはない。
【0059】
さらに、従来のループ織りブラシは、複数本のブラシ糸を束にして捻って一体としたブラシ毛からなっていた。このため、ループ織りブラシをクリーニングブラシとして使用した場合、感光体ドラム1の表面を傷付けることはないが、ループ形成平面の向きと感光体ドラム1の回転方向との関係で、転写後の感光体ドラム1に残留するトナーのクリーニングが不十分であった。つまり、従来のループ織りブラシは、ループ織りブラシの特性を充分に生かしていないという問題があった。
【0060】
一方、潤滑剤塗布ブラシは、感光体ドラム1の表面を滑り易くするために、固体潤滑剤を感光体ドラム1の表面に塗布する。この場合、固体潤滑剤を潤滑剤塗布ブラシにて削り取り、この潤滑剤塗布ブラシを感光体ドラム1に接触させることにより、固体潤滑剤を感光体ドラム1の表面に塗布することになるが、従来のループ織りブラシからなる潤滑剤塗布ブラシでは、固体潤滑剤の削り取り性能も不十分であるという問題があった。
【0061】
そこで、本実施の形態のクリーニングブラシ21及び潤滑剤塗布ブラシ22では、ブラシ毛は、図1(d)及び図3(a)に示すように、複数本のブラシ糸21cを束にして基材21bにループ状に植毛した第1ブラシ毛LB1と、図1(d)及び図3(b)に示すように、複数本のブラシ糸21cを束にして捻ったものを基材21bにループ状に植毛した第2ブラシ毛LB2との2種類のものを使用している。
【0062】
そして、本実施の形態では、図1(c)に示すように、1つの第1ブラシ毛LB1と1つの第2ブラシ毛LB2とを交互に蛇行して配した条が複数列に配されてなっていると共に、捻じれのない第1ブラシ毛LB1は、被摺接体としての前記感光体ドラム1への摺接方向に対して垂直となるように配設される一方、捻じれのある第2ブラシ毛LB2は、感光体ドラム1への摺接方向に対して平行となるように配設されている。
【0063】
すなわち、捻じれのない第1ブラシ毛LB1は、ループ形成平面が被摺接体としての感光体ドラム1への摺接方向に対して垂直となるように配設されている。このため、単糸のブラシ糸における一本、一本が、感光体ドラム1上の残留トナーや固体潤滑剤に充分に引っ掛かるので、クリーニングムラや固体潤滑剤の削りムラが発生し難い。また、単糸のブラシ糸における一本、一本が、感光体ドラム1に接触するので、感光体ドラム1への密着性がよい。
【0064】
一方、捻じれのある第2ブラシ毛LB2は、ループ形成平面が感光体ドラム1への摺接方向に対して平行となるように配設されている。このため、複数本のブラシ糸を束にして捻じって1つに一体化した第2ブラシ毛LB2を、ループ形成平面が感光体ドラム1への摺接方向に対して平行となるようにして、感光体ドラム1に接触させる。この結果、第2ブラシ毛LB2を逃がすことなく感光体ドラム1に密着させることができる。
【0065】
このように、捻じれのない第1ブラシ毛LB1と捻じれのある第2ブラシ毛LB2とを組み合わせることによって、対向物である固体潤滑剤、及び対向物である感光体ドラム1に付着している残留トナーへの摩擦係数が増大する。この結果、ステアリン酸亜鉛等の固体潤滑剤の削り性能が向上し、安定した感光体ドラム1への塗布性能を発揮することができる。また、多量の残留トナーが存在している場合、及び高付着力のトナーが存在している場合でもクリーニング性能を発揮することができる。
【0066】
さらに、1つの第1ブラシ毛LB1と1つの第2ブラシ毛LB2とを交互に蛇行して配した条を複数列に配しているので、第1ブラシ毛LB1と第2ブラシ毛LB2とを互いに支持し合うことができる。このため、ブラシ毛が倒れるのを防止することができる。
【0067】
したがって、ループ織りブラシの特性を充分に生かしたクリーニング性能を発揮し得るループ織りブラシを提供することができる。
【0068】
また、本実施の形態のループ織りブラシでは、基材21bは、帯状にてなり、回転自在のシャフト21aに対して螺旋状に巻回されている。これにより、ループ織りブラシを回転自在のシャフト21aに対して容易に巻回することができる。また、帯状の基材21bに格子状に第1ブラシ毛LB1と第2ブラシ毛LB2とを交互に配設した場合においても、シャフト21aに対する螺旋状への巻回角度を調整することにより、容易に、第1ブラシ毛LB1をループ形成平面が感光体ドラム1への摺接方向に対して垂直とする一方、第2ブラシ毛LB2をループ形成平面が感光体ドラム1への摺接方向に対して平行とすることができる。
【0069】
また、本実施の形態のループ織りブラシでは、ブラシ毛の基材21b上の密度は、10〜200kF/inch(=1.55〜31.00kF/cm)であることが好ましい。尚、尚、Fはフィラメントである。これにより、クリーニングムラや固体潤滑剤の削りムラが発生し難いループ織りブラシを提供することができる。尚、ブラシ毛の基材21b上の密度が10kF/inch(=1.55kF/cm)未満では、密度が小さすぎて、充分に、感光体ドラム1の表面全体をクリーニングしたり、固体潤滑剤を感光体ドラム1の表面全体に塗布したりすることができない恐れがある。また、ブラシ毛の基材21b上の密度が200kF/inch(=31.00kF/cm)を超える場合には、密度が大き過ぎてトナーの通過性に支障を来たす。
【0070】
また、本実施の形態のクリーニングブラシ21は、本実施の形態独自のループ織りブラシを用いている。これにより、ループ織りブラシの特性を充分に生かしたクリーニング性能を発揮し得るクリーニングブラシ21を提供することができる。
【0071】
また、本実施の形態の潤滑剤塗布ブラシ22は、本実施の形態独自のループ織りブラシを用いている。これにより、ループ織りブラシの特性を充分に生かしたクリーニング性能を発揮し得る潤滑剤塗布ブラシ22を提供することができる。
【0072】
尚、本実施の形態では、本実施の形態独自のクリーニングブラシ21と本実施の形態独自の潤滑剤塗布ブラシ22とのセットで用いられているが、本発明においては必ずしもこれに限らず、それぞれ単独にて使用することができる。
【0073】
また、本実施の形態のクリーニング装置20は、電子写真方式にて画像形成する画像形成装置における転写後の感光体ドラム1をクリーニングするクリーニング装置20において、上記記載のクリーニングブラシ21と、上記記載の潤滑剤塗布ブラシ22と、上記潤滑剤塗布ブラシに対して押圧力を付与する状態で隣接して対向配置される固体潤滑剤を有してなる固体潤滑剤供給装置23とを備えている。
【0074】
これにより、ループ織りブラシからなるクリーニングブラシ21によって、転写後の感光体ドラム1に残存するトナーを効率よく除去することができる。また、固体潤滑剤はループ織りブラシからなる潤滑剤塗布ブラシ22によって、効率よく削りとられ、その結果、感光体ドラム1に均一に潤滑剤を塗布することができる。
【0075】
したがって、ループ織りブラシの特性を充分に生かしたクリーニング性能を発揮し得るクリーニング装置20を提供することができる。
【0076】
尚、本実施の形態のループ織りブラシでは、ブラシ糸21cの繊維材料は、例えば、ナイロンを使用しているが、必ずしもこれに限らず、その用途に応じて、例えばポリエステル、アクリル等を使用することができる。また、繊度は、2〜30デシテックス(T)とするのが好ましい。ブラシ糸21cの繊維形状は、円形又は不定形のいずれでもよい。
【0077】
また、ブラシ糸21cの繊維材料として、絶縁性とするのではなく例えば抵抗値が1×10Ω等の導電性能を付与することが可能である。これにより、電圧を印加して、残留トナー及び感光体ドラム1を除電することできる。尚、導電構造としては、ブラシ糸21cの繊維全体を導電性としたものや、同心の芯材と鞘とを備えた2重構造として例えば鞘に導電性を付与した構造とすることができる。
【実施例】
【0078】
本実施の形態のループ織りブラシについての効果を確認するために、潤滑剤塗布ブラシ22における固体潤滑剤の削り取り性について実験を行った。
【0079】
具体的には、基材21bのシャフト21aへの巻回方向を変えることにより、図4(a)(b)に示すように、本実施の形態の第1ブラシ毛LB1と第2ブラシ毛LB2との方向に合わせたものを実施例として評価する一方、図5(a)(b)に示すように、本実施の形態の第1ブラシ毛LB1と第2ブラシ毛LB2との方向とは互いに逆となるようにしたもの、つまり捻じれのない第1ブラシ毛LB1を固体潤滑剤又は感光体ドラム1等の被摺接体への摺接方向に対してループ形成平面が平行となるように配設すると共に、捻じれのある第2ブラシ毛LB2をループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して垂直となるように配設したものを比較例として評価した。
【0080】
実験方法としては、図6に示すように、固体潤滑剤であるステアリン酸亜鉛をクリーニングブラシ21に対して押し込み圧力3Nにて押圧した状態で当接させ、ステアリン酸亜鉛の削り量を把握した。
【0081】
また、実施例と比較例とでは、評価仕様は、表1の通りとした。具体的には、第1ブラシ毛LB1と第2ブラシ毛LB2との方向を互いに逆とした以外は、他の特性は共通とした。
【0082】
【表1】

【0083】
すなわち、繊維材料としてはナイロンを使用し、繊度は6デシテックス(T)とし、繊維形状は円形とした。また、ブラシ毛は絶縁性とし、ブラシ毛の基材21bでの密度は、100kF/inch(=15.5kF/cm)とした。さらに、ブラシ毛の長さは5mmとした。また、シャフト21aの回転数は200rpmとし、回転時間は48時間とした。
【0084】
この結果、シャフト21aの回転時間=48時間後のステアリン酸亜鉛の削り量は、図7に示すように、比較例では3.2gであったのに対して、実施例では4.6gであった。
【0085】
これにより、本実施の形態の第1ブラシ毛LB1をループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して垂直となるように配設されている一方、捻じれのある第2ブラシ毛LB2をループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して平行となるように配設したものの方が、逆の方向に配設したものよりもステアリン酸亜鉛の削り性が良いことがわかった。
【0086】
尚、クリーニングブラシ21についても、感光体ドラム1における転写後の残留トナーの除去性能が優れていることについて確認が取れている。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のループ織りブラシは、感光体上の静電潜像を現像するプリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置におけるループ織りブラシ、クリーニングブラシ、潤滑剤塗布ブラシ、及びクリーニング装置、並びに画像形成装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】(a)は、本発明におけるループ織りブラシの実施の一形態を示すものであり、ループ織りブラシをシャフトに螺旋状に巻回したスクリューブラシを示す平面図、(b)は該スクリューブラシを示す側面図、(c)はスクリューブラシのループ織りブラシを拡大して示す平面図、(d)はループ織りブラシの捻じれ無し及び捻じれ有りの構成を示す図である。
【図2】上記ループ織りブラシを備えた画像形成装置の画像形成部を示す全体構成図である。
【図3】(a)は、捻じれ無しのループ織りブラシの構成を示す斜視図であり、(b)は捻じれ有りのループ織りブラシの構成を示す斜視図である。
【図4】(a)は、捻じれ無しのループ織りブラシの配設位置を示す平面図であり、(b)は捻じれ有りのループ織りブラシの配設位置を示す平面図である。
【図5】(a)は、比較例を示すものであり、捻じれ無しのループ織りブラシの配設位置を示す平面図であり、(b)は同様に比較例を示すものであり、捻じれ有りのループ織りブラシの配設位置を示す平面図である。
【図6】評価モデルを示す説明図である。
【図7】本実施例及び比較例におけるループ織りブラシによるステアリン酸亜鉛の削り量を示すグラフである。
【図8】(a)(b)(c)は従来のループ織りブラシの構成を示す図である。
【図9】従来の他のループ織りブラシの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0089】
1 感光体ドラム(被摺接体、静電潜像担持体)
2 帯電ブラシ
3 露光装置
4 転写ブラシ
5 搬送ベルト
6 記録媒体
10 現像装置
11 現像ロール
12 現像剤供給ロール
20 クリーニング装置
21 クリーニングブラシ(ループ織りブラシ)
21a シャフト(ブラシ軸)
21b 基材
21c ブラシ糸
22 潤滑剤塗布ブラシ(ループ織りブラシ)
23 固体潤滑剤供給装置(潤滑剤供給手段)
24 クリーニングブレード
30 画像形成部
LB1 第1ブラシ毛(ブラシ毛)
LB2 第2ブラシ毛(ブラシ毛)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の表面に起毛された複数本のブラシ糸からなるブラシ毛とを備え、
上記ブラシ毛は、複数本のブラシ糸を束にして上記基材にループ状に植毛した第1ブラシ毛と、複数本のブラシ糸を束にして捻ったものを上記基材にループ状に植毛した第2ブラシ毛との2種類からなり、
1つの上記第1ブラシ毛と1つの第2ブラシ毛とを交互に蛇行して配した条が複数列に配されてなっていると共に、
捻じれのない上記第1ブラシ毛は、ループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して垂直となるように配設されている一方、捻じれのある上記第2ブラシ毛は、ループ形成平面が被摺接体への摺接方向に対して平行となるように配設されていることを特徴とするループ織りブラシ。
【請求項2】
前記基材は、帯状にてなり、回転自在のブラシ軸に対して螺旋状に巻回されていることを特徴とする請求項1記載のループ織りブラシ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のループ織りブラシを用いたことを特徴とするクリーニングブラシ。
【請求項4】
請求項1又は2記載のループ織りブラシを用いたことを特徴とする潤滑剤塗布ブラシ。
【請求項5】
電子写真方式にて画像形成する画像形成装置における転写後の静電潜像担持体をクリーニングするクリーニング装置において、
請求項3記載のクリーニングブラシと、
請求項4記載の潤滑剤塗布ブラシと、
上記潤滑剤塗布ブラシに対して押圧力を付与する状態で隣接して対向配置される固体潤滑剤を有してなる潤滑剤供給手段とを備えていることを特徴とするクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−117523(P2010−117523A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290268(P2008−290268)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(390026147)東英産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】