説明

レジスタマーク位置同定装置及び方法

【課題】レジスタマークの実際の画像には必ず含まれる図形的ノイズに対して十分な免疫性を有するレジスタマーク位置同定装置を提供する。
【解決手段】レジスタマーク位置同定装置100は、フィードされてきたシート500上のレジスタマーク600を撮像する撮像装置120と、撮像装置が撮像したレジスタマークの画像データを記憶する画像メモリ130と、画像メモリに記憶された画像データ上においてレジスタマークを構成する各々の辺に平行に走査を行うとともに、走査を行う向きを各々の辺と直交する方向に移動させる走査装置110と、走査の結果に基づいてレジスタマークの各々の辺の位置を特定し、もってレジスタマークの位置を特定する解析装置140と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見当合わせ制御を行う前段階として、シート上に印刷されたレジスタマークの位置ひいては当該レジスタマークの心(例えば、中心または重心)を読み取るレジスタマーク位置同定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷工程における見当合わせ制御にはレジスタマークが使用されている。このレジスタマークは縦方向及び横方向における印刷ズレに対して有感であることが要求される。
【0003】
このため、これまでにこの要求を満足する各種の図形がレジスタマークとして提案され、そのうちのいくつかが実用化されている。
【0004】
見当合わせ制御は、レジスタマークの特徴的な部分の幅を測定することにより行うもの(以下、「第一の見当合わせ制御」と呼ぶ)と、レジスタマークの心(中心または重心)の位置を測定することにより行うもの(以下、「第二の見当合わせ制御」と呼ぶ)とに大別される。
【0005】
第一の見当合わせ制御においては、レジスタマークとして、例えば、直角三角形が使用される。例えば、特許文献1においては、直角ダイヤモンドをレジスタマークとして使用するウェブ整合制御装置が提案されている。
【0006】
また、第二の見当合わせ制御においては、レジスタマークとして、例えば、円が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2538913号(特開昭63−22651)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第一の見当合わせ制御及び第二の見当合わせ制御は、制御の対象となる図形すなわちレジスタマークがいずれも完全な図形(すなわち、欠落や余剰がない図形)であることを前提として成り立っている。
【0009】
しかしながら、実際のレジスタマークには種々の図形的ノイズが含まれており、この図形的ノイズに起因して、レジスタマークの図形としての不完全性が発生している。例えば、レジスタマークが印刷されているシートの表面の凹凸度の大小、レジスタマークを解像する際の解像力の不足、レジスタマークを撮像するレンズの歪み、レジスタマークの撮像から解像に至る各種工程における電気的ノイズなどにより、種々の図形的ノイズが発生する。
【0010】
このため、見当合わせ制御を行う見当合わせ制御装置の性能以前の問題として、見当合わせ制御を意図した通りに行うことは理論的には不可能である。
【0011】
具体的には、上記の第一及び第二の見当合わせ制御においては、次のような制御不良が発生する。
【0012】
第一の見当合わせ制御においては、レジスタマークの一カ所に対して一回だけ行ったスキャニングにより得たデータに基づいて、レジスタマークの解析を行う。このため、得られたデータに高周波の図形的ノイズが含まれていると、測定誤差に直結する。
【0013】
一般に、重心や中心の算定においては、対象となる図形の重量分布が等方性であることが前提とされる。このため、第二の見当合わせ制御においては、レジスタマークの外形における欠け、レジスタマークの内部の穴(ボイド)の存在が誤差の原因となる。
【0014】
レジスタマークの外形に欠けがある場合に、その欠けを図形フィッテング(欠け以外の他の部分により、欠けた部分を予測する方法)により補完することも考えられるが、上述のように、欠け以外のレジスタマークの外形がそもそも不完全であるため、図形フィッテングは所望の通りには機能しない。
【0015】
以上のように、現在多用されているいずれの見当合わせ制御も、レジスタマークの実際の画像には必ず含まれる図形的ノイズ(レジスタマークの図形としての不完全性)に対して免疫性を有していない。
【0016】
本発明は、このような従来の見当合わせ制御における問題点に鑑みてなされたものであり、レジスタマークの実際の画像には必ず含まれる図形的ノイズに対して十分な免疫性を有するレジスタマーク位置同定装置及び方法、すなわち、レジスタマークに図形的ノイズが含まれていたとしても、レジスタマークの位置をより正確に同定することができるレジスタマーク位置同定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明は、シート上に印刷されたレジスタマークの位置を読み取るレジスタマーク位置同定装置であって、前記レジスタマークを構成する複数の辺の各々の方向は予め定められており、前記レジスタマーク位置同定装置は、フィードされてきた前記シート上の前記レジスタマークを撮像する撮像装置と、前記撮像装置が撮像した前記レジスタマークの画像データを記憶する画像メモリと、前記画像メモリに記憶された前記画像データ上において前記レジスタマークを構成する前記各々の辺に平行に走査を行うとともに、前記走査を行う向きを前記各々の辺と直交する方向に移動させる走査装置と、前記走査の結果に基づいて前記レジスタマークの前記各々の辺の位置を特定し、もって前記レジスタマークの位置を特定する解析装置と、を備えるレジスタマーク位置同定装置を提供する。
【0018】
前記各々の辺の位置の特定は、例えば、各走査により得られた積算画素数(画像を構成する画素数)のピーク値を判定することにより行われる。
【0019】
さらに、本発明は、シート上に印刷されたレジスタマークの位置を読み取るレジスタマーク位置同定方法であって、前記レジスタマークを構成する複数の辺の各々の方向は予め定められており、前記レジスタマーク位置同定方法は、フィードされてきた前記シート上の前記レジスタマークを撮像する第一の過程と、前記第一の過程において撮像された前記レジスタマークの画像データ上において前記レジスタマークを構成する前記各々の辺に平行に走査を行うとともに、前記走査を行う向きを前記各々の辺と直交する方向に移動させる第二の過程と、前記走査の結果に基づいて前記レジスタマークの前記各々の辺の位置を特定し、もって前記レジスタマークの位置を特定する第三の過程と、を備えるレジスタマーク位置同定方法を提供する。
【0020】
前記第一の過程において撮像された前記レジスタマークの前記画像データを画像メモリに記憶する過程をさらに備えることが好ましい。
【0021】
本発明は、さらに、シート上に印刷されたレジスタマークの位置を読み取るレジスタマーク位置同定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記レジスタマークを構成する複数の辺の各々の方向は予め定められており、前記プログラムが行う処理は、フィードされてきた前記シート上の前記レジスタマークを撮像する第一の処理と、前記第一の過程において撮像された前記レジスタマークの画像データ上において前記レジスタマークを構成する前記各々の辺に平行に走査を行うとともに、前記走査を行う向きを前記各々の辺と直交する方向に移動させる第二の処理と、前記走査の結果に基づいて前記レジスタマークの前記各々の辺の位置を特定し、もって前記レジスタマークの位置を特定する第三の処理と、からなるものであるプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るレジスタマーク位置同定装置またはレジスタマーク位置同定方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0023】
第一に、レジスタマークの形状の欠落または余剰に対して大きな免疫性が保障される。
【0024】
従来では、レジスタマークに欠けがあると、レジスタマークの位置を正確に特定することはほぼ不可能であった。これに対して、本発明に係るレジスタマーク位置同定装置またはレジスタマーク位置同定方法によれば、レジスタマークを構成する各辺に沿って走査を実施するため、レジスタマークに形状の欠落(例えば、穴(ボイド)や欠け(デント))または余分な形状の追加(例えば、ボテ(ブロット))があったとしても、辺の位置の特定はそれらにより影響を受けることはなく、正確に実行することが可能である。すなわち、レジスタマークに穴、欠け、ボテが存在したとしても、レジスタマークの位置特定の誤差の原因とならない。
【0025】
第二に、レジスタマークの各辺におけるノイズが辺全体で平均化されるため、実質上誤差が軽減される。
【0026】
第三に、レジスタマークの位置の誤差を軽減することができる。
【0027】
例えば、レジスタマークが三角形である場合には、3つの辺の位置を特定することにより、レジスタマークの位置を特定することができる。このため、レジスタマーク自体が三角形としての形状の完全性に欠けるものであったとしても、レジスタマークの位置の誤差が図形全体で平均化され、誤差を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明の第一の実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置のブロック図である。
【図2】図2は本発明の第一の実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置の一構成要素である走査装置のブロック図である。
【図3】図3は本発明の第一の実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置の一構成要素である解析装置のブロック図である。
【図4】図4はレジスタマークの一つの辺に対する走査の実施状況を示す概略図である。
【図5】図5は解析装置がレジスタマークの画像データを解析した結果を示す概略図である。
【図6】図6は解析装置が、図5とは他の方法により、レジスタマークの画像データを解析した結果を示す概略図である。
【図7】図7はレジスタマークの一つの辺に対する走査の実施状況を示す概略図である。
【図8】図8はレジスタマークの一つの辺に対する走査の実施状況を示す概略図である。
【図9】図9は従来の見当合わせ制御における走査の実施状況を示す概略図である。
【図10】本発明の第一の実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置を含む見当合わせ制御装置の一例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第一の実施形態)
最初に、レジスタマークを用いて見当合わせ制御を行う見当合わせ制御装置の一例を図10に示す。
【0030】
図10は見当合わせ制御装置1000のブロック図である。
【0031】
見当合わせ制御装置1000は、本発明の第一の実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100(後述)と、比較器200と、メモリ300と、制御装置400と、から構成されている。
【0032】
メモリ300には、シート500上のレジスタマーク600が本来あるべき位置すなわちレジスタマーク600の基準位置の座標が記憶されている。
【0033】
本発明の第一の実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100により同定されたレジスタマーク600の位置を示す信号は比較器200に送信される。
【0034】
比較器200はメモリ300から基準位置を示す信号を受信し、レジスタマーク位置同定装置100から受信したレジスタマーク600の位置と基準位置とを比較する。
【0035】
比較器200は比較の結果を示す比較信号を制御装置400に送信する。制御装置400は比較信号が示す、基準位置からのレジスタマーク600の位置のズレに応じて、シート500の位置を修正する。
【0036】
以上のように、本発明の第一の実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100は見当合わせ制御装置1000の一構成要素をなすものである。
【0037】
以下、本発明の第一の実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100について説明する。
【0038】
図1は本発明の第一の実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100を示す概略図である。
【0039】
図1に示すように、見当合わせ制御の対象となるシート500が矢印Aの方向にフィードされている。シート500には複数個のレジスタマーク600が一定間隔毎に印刷されており、各レジスタマーク600はシート500上において同一の向きになるように印刷されているものとする。すなわち、レジスタマーク600を構成する複数の辺の各々の方向は予め定められており、レジスタマーク600を構成する複数の辺の相互間の位置関係は既知であるものとする。
【0040】
本実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100は、フィードされてきたシート500上のレジスタマーク600を撮像する撮像装置120と、撮像装置120が撮像したレジスタマーク600の画像データを記憶する画像メモリ130と、画像メモリ130に記憶された画像データ上においてレジスタマーク600を構成する各々の辺に平行に走査を行うとともに、走査を行う向きを各々の辺と直交する方向に移動させる走査装置110と、走査の結果に基づいてレジスタマーク600の各々の辺の位置を特定し、もってレジスタマーク600の位置を特定する解析装置140と、から構成されている。
【0041】
図2は走査装置110のブロック図である。
【0042】
図2に示すように、走査装置110は正スキャン実施装置111と副スキャン実施装置112とから構成されている。
【0043】
正スキャン実施装置111は、レジスタマーク600を構成する各々の辺に平行に走査を実施する。副スキャン実施装置112は、正スキャン実施装置111が行う走査を、レジスタマーク600を構成する各々の辺に直交する方向において一定間隔毎に移動させたうえで、走査を実施させる。すなわち、正スキャン実施装置111及び副スキャン実施装置112によって、レジスタマーク600を構成する各々の辺に平行に、かつ、各々の辺から一定距離毎に複数回の走査が行われる。
【0044】
図3は解析装置140のブロック図である。
【0045】
解析装置140は、中央処理装置(CPU)1401と、第一のメモリ1402と、第二のメモリ1403と、各種命令及びデータを中央処理装置1401に入力するための入力インターフェイス1404と、中央処理装置1401により実行された処理の結果を出力する出力インターフェイス1405と、中央処理装置1401と第一のメモリ1402、第二のメモリ1403、入力インターフェイス1404及び出力インターフェイス1405とを接続するバス1406と、から構成されている。
【0046】
第一のメモリ1402及び第二のメモリ1403の各々は、リード・オンリー・メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)またはICメモリーカードなどの半導体記憶装置、フレキシブルディスクなどの記憶媒体、ハードディスク、あるいは、光学磁気ディスクなどからなる。本実施形態においては、第一のメモリ1402はROMからなり、第二のメモリ1403はRAMからなる。
【0047】
第一のメモリ1402は中央処理装置1401が実行するための各種の制御用プログラムその他の固定的なデータを格納している。第二のメモリ1403は様々なデータ及びパラメータを記憶しているとともに、中央処理装置1401に対する作動領域を提供する、すなわち、中央処理装置1401がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納している。
【0048】
中央処理装置1401は第一のメモリ1402からプログラムを読み出し、そのプログラムを第二のメモリ1403の作動領域において実行する。すなわち、中央処理装置1201は第一のメモリ1402に格納されているプログラムに従って作動する。
【0049】
本実施形態においては、説明を単純化するため、図4に示すように、レジスタマーク600は直角三角形からなるものとする。すなわち、レジスタマーク600は3つの辺601、602、603からなり、2辺601、602が直角を構成し、他の1辺603が斜辺をなしているものとする。
【0050】
本実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100は以下のようにしてレジスタマーク600の位置を同定する。
【0051】
まず、レジスタマーク600の内部の任意の点を基準点630として定義する。この基準点630の座標は(0,0)で表される。
【0052】
最初に、3辺601、602、603のうち、例えば、辺601に着目する。
【0053】
基準点630(0,0)から、辺601に対する垂線601Aの方向に辺601のベクトルに等しいベクトルを有する直線(辺601に平行な直線)Sを平行移動させ、基準点630から各直線Sまでの距離rを記録する。
【0054】
次いで、各距離r毎に各直線Sが辺601と交差する長さm(後述)を記録する。
【0055】
このようにして求められた距離rのうち、長さmが最大となる距離r(a)(後述)を決定する。この距離r(a)がレジスタマーク600の辺601の位置を示すパラメータである。
【0056】
以上の処理は具体的には以下のように行われる。
【0057】
図4はレジスタマーク600の辺601に対して走査が実施されている状況を示す概略図である。
【0058】
シート500が矢印Aの方向にフィードされてくると、撮像装置120は、シート500上に印刷された複数のレジスタマーク600の各々を順次撮像し、各レジスタマーク600の画像データを画像メモリ130に送信する。画像メモリ130は、撮像装置120から受信したレジスタマーク600の画像データを記憶する。
【0059】
次いで、以下に述べるように、矢印Aの方向に連続的に移動する複数のレジスタマーク600の各々に対して、あたかも各レジスタマーク600が静止しているかの状態において、走査装置110による走査が行われる。なお、上記から明らかであるように、レジスタマーク600に対する走査とは、画像メモリ130内に蓄積されているレジスタマーク600の画像データに対する走査を意味する。
【0060】
走査装置110の正スキャン実施装置111は、画像メモリ130に蓄積されたレジスタマーク600の画像データに対して、レジスタマーク600の辺601と平行な方向(すなわち、シート500がフィードされる方向と直交する方向)に一定間隔毎に走査を実施する。
【0061】
例えば、図4に示すように、正スキャン実施装置111は、レジスタマーク600の辺601に平行に走査線111a、111b、111c、111d、111e(上述の直線Sに対応する)を順次放射する。この場合、副スキャン実施装置112によって、各走査線111a、111b、111c、111d、111e間の間隔は一定になるように維持される。
【0062】
解析装置140は、走査装置110にアクセスし、走査装置110によるレジスタマーク600に対する走査の結果を解析する。
【0063】
図5は解析装置140が、走査されたレジスタマーク600の画像データを解析した結果を示す概略図である。
【0064】
前述のように、画素レベルで見た場合、図5(A)に示すように、レジスタマーク600の各辺601、602、603は実際には直線ではなく、波形の線をなしている。
【0065】
図5(A)に示すように、走査装置110は一定間隔Xで走査方向Y(辺601と平行な方向)に走査線111a、111b、111c、111d、111eを順次走らせる。
【0066】
レジスタマーク600に対する走査により、各走査線111a、111b、111c、111d、111eとレジスタマーク600とが交差する領域の長さに応じた数の画素が検出される。
【0067】
図5(B)は縦軸が検出された画素数、横軸がレジスタマーク600の辺601と直交する方向(辺602と平行な方向)における位置を示すグラフである。
【0068】
検出された画素の位置に応じて、検出された画素数をプロットすると、図5(B)に示すようなグラフ121が得られる。このグラフ121はピーク(極大値)122を有している。すなわち、検出された画素数は、辺601の直近の位置において、ピーク122を示している。
【0069】
図5(C)は、図5(B)に示す画素数の値を微分し、得られた微分値をプロットすることにより得られたグラフ121Aである。
【0070】
画素数を微分することにより、図5(C)に示すように、ピーク122Aがより鮮明に示される。ピーク122またはピーク122A(ピーク122の位置とピーク122Aの位置はほぼ同じである)の位置(すなわち、長さmが最大となる距離r(a))がレジスタマーク600の辺601の位置を示している。
【0071】
図6は、解析装置140が、図5に示した方法とは別の方法により、走査されたレジスタマーク600の画像データを解析した結果を示す概略図である。
【0072】
レジスタマーク600に対して、例えば、ラプラシアンを適用することにより、図6(A)に示すように、レジスタマーク600の輪郭図形161を得る。
【0073】
図6(B)は、図6(A)に示すレジスタマーク600の輪郭図形161に対して走査を行った場合に得られるグラフである。図6(B)に示すグラフは図5(C)に示すグラフと等価である。
【0074】
このように、レジスタマーク600に対してラプラシアンを適用し、レジスタマーク600の輪郭図形161を使用することによっても、同様の結果が得られる。すなわち、図6(B)に示すピークの位置がレジスタマーク600の辺601の位置を示している。
【0075】
次いで、図7に示すように、走査装置110は辺602の画像データに対して、辺601の場合と同様に走査を行う。解析装置140は、辺601の場合と同様にして、走査装置110による走査の結果を解析し、辺602の位置を同定する。
【0076】
さらに、図8に示すように、走査装置110は辺603の画像データに対して、辺601の場合と同様に走査を行う。解析装置140は、辺601の場合と同様にして、走査装置110による走査の結果を解析し、辺603の位置を同定する。
【0077】
以上のようにして、撮像装置120が撮像した画像のデータに対して走査装置110が行った走査の結果を解析装置140が解析することにより、レジスタマーク600を構成する3辺601、602、603の位置が特定される。
【0078】
このようにして3つの辺601、602、603が求められると、これら3つの辺601、602、603がそれぞれ交差する3個の交点701、702、703(図4参照)を定義することができる。この3個の交点701、702、703がレジスタマーク600の3個の頂点を示している。
【0079】
次いで、解析装置140は、相互に隣り合う2個の頂点、すなわち、一つの辺の両端の頂点の中央からその辺に対して仮想的に垂線を引く。例えば、2個の頂点として頂点701と702を選択すると、頂点701及び702を両端とする辺601の中点から辺601の垂線を引く。
【0080】
同様にして、残りの二辺についても、それぞれの中点から仮想的にそれらの辺の垂線を引く。
【0081】
合計3本の垂線が引かれる。これらの3本の垂線の交点がレジスタマーク600の中心(この場合、中心は重心と同義である)である。
【0082】
以上のようにして、レジスタマーク600を構成する3辺601、602、603の位置が特定され、次いで、レジスタマーク600の各頂点の位置が特定され、さらに、レジスタマーク600の中心が特定される。これはシート500上におけるレジスタマーク600の位置が同定されたことを意味する。
【0083】
本実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100によれば、次のような利点を確保することができる。
【0084】
第一に、レジスタマーク600の形状の欠落に対して大きな免疫性が保障される。
【0085】
図9は従来の見当合わせ制御におけるレジスタマークの走査の実施状況を示す概略図である。
【0086】
従来の見当合わせ制御においては、例えば、図9(A)に示すように、レジスタマーク600を通過する一本の走査線610によってのみレジスタマーク600の位置の特定がなされていた。走査線610がレジスタマーク600と交差すると、走査線610とレジスタマーク600とが交差した2点611、612に対応する2値パルス614(パルス幅をBとする)が作成される。
【0087】
例えば、図9(B)に示すように、レジスタマーク600の外形に欠け620が生じていたものと仮定する。
【0088】
走査線610が欠け620を通過すると、走査線610は2点613、612においてレジスタマーク600と交差する。この2点のうちの一つの点613は欠け620上に位置する点である。このため、走査線610とレジスタマーク600とが交差した2点613、612に対応する2値パルス615(パルス幅をAとする)が作成される。
【0089】
レジスタマーク600の欠け620に起因して、2値パルス615の幅Aは2値パルス614の幅Bよりも小さい。このため、2値パルス615に基づいて特定されたレジスタマーク600の位置は正確性に欠けることとなる。
【0090】
これに対して、本実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100によれば、レジスタマーク600を構成する各辺に沿って走査を実施するため、レジスタマーク600の外形に欠け620のような形状の欠落があったとしても、レジスタマーク600の各辺の位置の特定は欠け620により影響を受けることはない。すなわち、欠け620の有無に関わらず、各辺601、602、603の位置を正確に特定することが可能である。
【0091】
このように、本実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100においては、レジスタマーク600にボイド(穴)やデント(欠け)が存在したとしても、それらはレジスタマーク600の位置特定の誤差の原因とならない。
【0092】
第二に、レジスタマーク600の辺におけるノイズが辺全体で平均化されるため、実質上、誤差が軽減される。
【0093】
第三に、レジスタマーク600の位置の誤差を軽減することができる。
【0094】
本実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100においては、3つの辺601、602、603の位置を特定することにより、レジスタマーク600の位置を特定する。このため、レジスタマーク600自体が三角形としての形状の完全性に欠けるものであったとしても(すなわち、三角形としての形状に欠落や余剰があったとしても)、位置の誤差が図形全体で平均化され、軽減される。
【0095】
なお、上述の本実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100においては、レジスタマーク600は直角三角形からなるものとしたが、レジスタマーク600の形状は直角三角形には限定されない。N角形(Nは3以上の整数(N3))であれば、レジスタマーク600の形状として採用することができる。
【0096】
なお、レジスタマーク600の形状としてN角形(N3)を採用する場合、Nは偶数よりも奇数を選択することが好ましい。Nが偶数であると、相互に平行に対向する一対の辺が存在するケースが起こりうる(例えば、正方形)。この場合、相互に平行に対向する一対の辺のうち、走査線が移動する向き(例えば、図4の垂線601Aの方向)において最初に現れる辺ではなく、2番目に現れる辺を捕捉してしまう可能性があり、目標とする辺の位置を正確に同定できないことがあるためである。
【0097】
ただし、レジスタマーク600の形状として正N角形を選択することにより、レジスタマーク600の位置を同定するためのプロセスを大幅に簡略化することが可能である(このため、上述の実施形態においては、説明を簡略化するため、レジスタマーク600は直角三角形からなるものとした)。
【0098】
なお、一般的には、レジスタマーク600がN角形である場合のレジスタマーク600の位置同定は次のようなステップに従って行われる。
【0099】
(1)まず、4象限で表現された一つの検定平面を準備する。この平面上の任意の一点の座標はグローバル座標である。従って、この平面上に、位置を判定したい図形(レジスタマーク600)を重ねると、この図形の基準位置(例えば、その図形の中心)のグローバル座標はその図形の位置を示すパラメータとなる。このパラメータが示す基準位置からの変位は位置の誤差を表す。
【0100】
まず、N角形の内部の任意の点を基準点として定義する。この基準点の座標を(0,0)とする。
【0101】
次いで、基準点(0,0)からN角形のN個の辺の各々に対する垂線の方向に各辺のベクトルに等しいベクトルを有する直線Sを等間隔に平行移動させ、基準点(0,0)から各直線Sまでの距離rを記録する。
【0102】
(2)次いで、各距離r毎に各直線SがN角形の各辺と交差する長さmを記録する。
【0103】
(3)0<r<R(Rはグローバル座標平面の物理的限界)の範囲内において上記(1)及び(2)の過程を繰り返す。
【0104】
(4)このようにして求められた距離rのうち、長さmが最大となる距離r(a)を決定する。この距離r(a)がN角形の各辺のグローバル座標上の位置を示すパラメータである。
【0105】
(5)全ての垂線について上記(1)乃至(4)の過程を繰り返すことにより、N個の距離r(a)が求められる。
【0106】
(6)このようにして求められたN個の距離r(a)によりN個の交点を定義することができる。これらの交点はN角形のN個の頂点を示している。
【0107】
(7)相互に隣り合う2個の頂点、すなわち、一つの辺の両端の頂点の中央からその辺に対して垂線を引く。N角形はN個の辺を有しているため、N個の垂線が形成される。
【0108】
(8)N個の垂線のうちの任意の2本の垂線は個の交点をつくる。例えば、N=3(三角形)のときの交点の数は3である。
【0109】
(9)仮に、N角形が図形として完全であり、さらに、距離rのサンプリングが稠密であれば、個の交点の座標は一致する。ただし、上記の計算上の座標と実際の図形の座標とは一般には一致しない。そのような場合には、各座標が得られた経緯に依存した信頼度評価を行った後、各座標を加重平均化することにより、各座標の精度を向上させることができる。
【0110】
以上のように、本実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100においては、レジスタマーク600としてどのような図形を使用したとしても、利用するデータはレジスタマーク600の外形(輪郭)を示す線についてのデータのみである。従って、レジスタマーク600が中実型の図形であっても、あるいは、輪郭型(中空型)の図形であっても、レジスタマーク位置同定装置100の動作は変わらない。このため、たとえ、レジスタマーク600にボイドが存在したとしても、そのボイドがレジスタマーク600の位置同定における誤差の原因となることはない。
【0111】
上述の本実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置100においては、辺601、602、603の順番に走査及び解析を行ったが、この順番には限定されない。任意に順番を決定することができる。また、走査及び解析を一つの辺ずつ行うことは必ずしも必要ではなく、同時に二個または三個の辺の走査及び解析を行うことが可能である。
【0112】
なお、レジスタマーク600としては、例えば、星型のレジスタマークを用いることもできる。
【符号の説明】
【0113】
100 本発明の第一の実施形態に係るレジスタマーク位置同定装置
110 走査装置
111 正スキャン実施装置
112 副スキャン実施装置
120 撮像装置
121 グラフ
130 画像メモリ
140 解析装置
500 シート
600 レジスタマーク
601、602、603 レジスタマークの3辺
601A、602A、603A レジスタマークの3辺の垂線
630 基準点
1000 見当合わせ制御装置
200 比較器
300 メモリ
400 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート上に印刷されたレジスタマークの位置を読み取るレジスタマーク位置同定装置であって、
前記レジスタマークを構成する複数の辺の各々の方向は予め定められており、
前記レジスタマーク位置同定装置は、
フィードされてきた前記シート上の前記レジスタマークを撮像する撮像装置と、
前記撮像装置が撮像した前記レジスタマークの画像データを記憶する画像メモリと、
前記画像メモリに記憶された前記画像データ上において前記レジスタマークを構成する前記各々の辺に平行に走査を行うとともに、前記走査を行う向きを前記各々の辺と直交する方向に移動させる走査装置と、
前記走査の結果に基づいて前記レジスタマークの前記各々の辺の位置を特定し、もって前記レジスタマークの位置を特定する解析装置と、
を備えるレジスタマーク位置同定装置。
【請求項2】
前記各々の辺の位置の特定は、各走査により得られた積算画素数のピーク値を判定することにより行うことを特徴とする請求項1に記載のレジスタマーク位置同定装置。
【請求項3】
シート上に印刷されたレジスタマークの位置を読み取るレジスタマーク位置同定方法であって、
前記レジスタマークを構成する複数の辺の各々の方向は予め定められており、
前記レジスタマーク位置同定方法は、
フィードされてきた前記シート上の前記レジスタマークを撮像する第一の過程と、
前記第一の過程において撮像された前記レジスタマークの画像データ上において前記レジスタマークを構成する前記各々の辺に平行に走査を行うとともに、前記走査を行う向きを前記各々の辺と直交する方向に移動させる第二の過程と、
前記走査の結果に基づいて前記レジスタマークの前記各々の辺の位置を特定し、もって前記レジスタマークの位置を特定する第三の過程と、
を備えるレジスタマーク位置同定方法。
【請求項4】
前記第一の過程において撮像された前記レジスタマークの前記画像データを画像メモリに記憶する過程をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のレジスタマーク位置同定方法。
【請求項5】
前記各々の辺の位置の特定は、各走査により得られた積算画素数のピーク値を判定することにより行うことを特徴とする請求項3または4に記載のレジスタマーク位置同定方法。
【請求項6】
シート上に印刷されたレジスタマークの位置を読み取るレジスタマーク位置同定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記レジスタマークを構成する複数の辺の各々の方向は予め定められており、
前記プログラムが行う処理は、
フィードされてきた前記シート上の前記レジスタマークを撮像する第一の処理と、
前記第一の過程において撮像された前記レジスタマークの画像データ上において前記レジスタマークを構成する前記各々の辺に平行に走査を行うとともに、前記走査を行う向きを前記各々の辺と直交する方向に移動させる第二の処理と、
前記走査の結果に基づいて前記レジスタマークの前記各々の辺の位置を特定し、もって前記レジスタマークの位置を特定する第三の処理と、
からなるものであるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−11472(P2011−11472A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158056(P2009−158056)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000135254)株式会社ニレコ (41)
【Fターム(参考)】