説明

レジスタマーク

【課題】見当合せ制御に使用するレジスタマークにおいて、マークに含まれるノイズへの耐性が高いマークと該マークの位置同定法を提供する。
【解決手段】該レジスタマークは、5足の星型で形成する。レジスタマークを構成する複数の辺の各々の方向は予め定められており、レジスタマーク位置同定方法は、上記の星型のレジスタマークを前記シート上に印刷する第一の過程と、フィードされてきた前記シート上の前記レジスタマークを撮像する第二の過程と、前記第一の過程において撮像された前記レジスタマークの画像データ上において前記レジスタマークを構成する前記各々の辺に平行に走査を行うとともに、前記走査を行う向きを前記各々の辺と直交する方向に移動させる第三の過程と、前記走査の結果に基づいて前記レジスタマークの前記各々の辺の位置を特定し、もって前記レジスタマークの位置を特定する第四の過程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見当合わせ制御に使用されるレジスタマークに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷工程における見当合わせ制御にはレジスタマークが使用されている。このレジスタマークは縦方向及び横方向における印刷ズレに対して有感であることが要求される。
【0003】
このため、これまでにこの要求を満足する各種の図形がレジスタマークとして提案され、そのうちのいくつかが実用化されている。
【0004】
見当合わせ制御は、レジスタマークの特徴的な部分の幅を測定することにより行うもの(以下、「第一の見当合わせ制御」と呼ぶ)と、レジスタマークの心(中心または重心)の位置を測定することにより行うもの(以下、「第二の見当合わせ制御」と呼ぶ)とに大別される。
【0005】
第一の見当合わせ制御においては、レジスタマークとして、例えば、直角三角形が使用される。例えば、特許文献1においては、直角ダイヤモンドをレジスタマークとして使用するウェブ整合制御装置が提案されている。
【0006】
また、第二の見当合わせ制御においては、レジスタマークとして、例えば、円が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2538913号(特開昭63−22651)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第一の見当合わせ制御及び第二の見当合わせ制御は、制御の対象となる図形すなわちレジスタマークがいずれも完全な図形(すなわち、欠落や余剰がない図形)であることを前提として成り立っている。
【0009】
しかしながら、実際のレジスタマークには種々の図形的ノイズが含まれており、この図形的ノイズに起因して、レジスタマークの図形としての不完全性が発生している。例えば、レジスタマークが印刷されているシートの表面の凹凸度の大小、レジスタマークを解像する際の解像度の不足、レジスタマークを撮像するレンズの歪み、レジスタマークの撮像から解像に至る各種工程における電気的ノイズなどにより、種々の図形的ノイズが発生する。
【0010】
このため、理論的には、見当合わせ制御を行う見当合わせ制御装置の性能以前の問題として、見当合わせ制御を意図した通りに行うことは不可能である。
【0011】
具体的には、上記の第一及び第二の見当合わせ制御においては、次のような制御不良が発生する。
【0012】
第一の見当合わせ制御においては、レジスタマークの一カ所に対して一回だけ行ったスキャニングにより得たデータに基づいて、レジスタマークの解析を行う。このため、得られたデータに高周波の図形的ノイズが含まれていると、測定誤差に直結する。
【0013】
一般に、重心や中心の算定においては、対象となる図形の重量分布が等方性であることが前提とされる。このため、第二の見当合わせ制御においては、レジスタマークの外形における欠け、レジスタマークの内部の穴(ボイド)の存在が誤差の原因となる。
【0014】
レジスタマークの外形に欠けがある場合に、その欠けを図形フィッテング(欠け以外の他の部分により、欠けた部分を予測する方法)により補完することも考えられるが、上述のように、欠け以外のレジスタマークの外形がそもそも不完全であるため、図形フィッテングは所望の通りには機能しない。
【0015】
以上のように、現在多用されているいずれの見当合わせ制御も、レジスタマークの実際の画像には必ず含まれる図形的ノイズ(レジスタマークの図形としての不完全性)に対して免疫性を有していない。
【0016】
本発明は、このような従来の見当合わせ制御における問題点に鑑みてなされたものであり、レジスタマークの実際の画像には必ず含まれる図形的ノイズに対して十分な免疫性を有するレジスタマーク、さらには、当該レジスタマークの性能を有効に発揮しうるレジスタマーク位置同定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明は、シート上に印刷されたレジスタマークの位置を読み取ることにより行われる前記シートの見当合わせ制御において使用される前記レジスタマークであって、星形からなるものであることを特徴とするレジスタマークを提供する。
【0018】
このレジスタマークは、例えば、5足の星形からなる。
【0019】
さらに、本発明は、シート上に印刷されたレジスタマークの位置を読み取るレジスタマーク位置同定方法であって、前記レジスタマークを構成する複数の辺の各々の方向は予め定められており、前記レジスタマーク位置同定方法は、上記の星型のレジスタマークを前記シート上に印刷する第一の過程と、フィードされてきた前記シート上の前記レジスタマークを撮像する第二の過程と、前記第一の過程において撮像された前記レジスタマークの画像データ上において前記レジスタマークを構成する前記各々の辺に平行に走査を行うとともに、前記走査を行う向きを前記各々の辺と直交する方向に移動させる第三の過程と、前記走査の結果に基づいて前記レジスタマークの前記各々の辺の位置を特定し、もって前記レジスタマークの位置を特定する第四の過程と、を備えるレジスタマーク位置同定方法を提供する。
【0020】
本発明に係るレジスタマーク位置同定方法は、前記第二の過程において撮像された前記レジスタマークの前記画像データを画像メモリに記憶する過程をさらに備えることが好ましい。
【0021】
前記各々の辺の位置の特定は、例えば、各走査により得られた積算画素数のピーク値を判定することにより行われる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るレジスタマークまたはレジスタマーク位置同定方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0023】
第一に、レジスタマークの形状の欠落または余剰に対して大きな免疫性が保障される。
【0024】
従来では、レジスタマークに欠けがあると、レジスタマークの位置を正確に特定することはほぼ不可能であった。これに対して、本発明に係るレジスタマークまたはレジスタマーク位置同定方法によれば、レジスタマークを構成する各辺に沿って走査を実施するため、レジスタマークに形状の欠落(例えば、穴(ボイド)や欠け(デント))または余分な形状の追加(例えば、ボテ(ブロット))があったとしても、辺の位置の特定はそれらにより影響を受けることはなく、正確に実行することが可能である。すなわち、レジスタマークに穴、欠け、ボテが存在したとしても、レジスタマークの位置特定の誤差の原因とならない。
【0025】
第二に、レジスタマークの各辺におけるノイズが辺全体で平均化されるため、実質上誤差が軽減される。
【0026】
第三に、レジスタマークの位置の誤差を軽減することができる。
【0027】
例えば、レジスタマークが5足の星形である場合には、5つの辺の位置を特定することにより、レジスタマークの位置を特定することができる。このため、レジスタマーク自体が星形としての形状の完全性に欠けるものであったとしても、レジスタマークの位置の誤差が図形全体で平均化され、誤差を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明の第一の実施形態に係るレジスタマークを示す平面図である。
【図2】図2は本発明の第一の実施形態に係るレジスタマークの他の例を示す平面図である。
【図3】星形の5個の辺の番号を示す平面図である。
【図4】図4(A)は星形を構成する5辺のうちの3辺が得られた組み合わせを示し(組み合わせ番号7、11、13、14、19、21、22、25、26、28)、図4(B)は星形を構成する5辺のうちの4辺が得られた組み合わせを示す(組み合わせ番号15、23、27、29、30)。
【図5】図5は本発明の第一の実施形態に係るレジスタマークの位置同定に使用されるレジスタマーク位置同定装置のブロック図である。
【図6】図6は図5に示したレジスタマーク位置同定装置の一構成要素である走査装置のブロック図である。
【図7】図7は図5に示したレジスタマーク位置同定装置の一構成要素である解析装置のブロック図である。
【図8】図8はレジスタマークの一つの辺に対する走査の実施状況を示す概略図である。
【図9】図9は解析装置がレジスタマークの画像データを解析した結果を示す概略図である。
【図10】図10は解析装置が、図9とは他の方法により、レジスタマークの画像データを解析した結果を示す概略図である。
【図11】図11はレジスタマークの一つの辺に対する走査の実施状況を示す概略図である。
【図12】図12はレジスタマークの一つの辺に対する走査の実施状況を示す概略図である。
【図13】図13は従来の見当合わせ制御における走査の実施状況を示す概略図である。
【図14】図5に示したレジスタマーク位置同定装置を含む見当合わせ制御装置の一例のブロック図である。
【図15】星形レジスタマークの領域分割を示す平面図である。
【図16】図16(A)はシミュレーション1における境界表現式を図示したものであり、図16(B)は境界の内外の判断をマトリクス上にプロットしたものである。
【図17】星形レジスタマークの各辺の定義式の決定過程を示す平面図である。
【図18】星形レジスタマークの各辺の定義式の決定過程を示す平面図である。
【図19】シミュレーション1の対象となる星形レジスタマークとシミュレーションの検証結果を示す図である。
【図20】シミュレーション1の対象となる星形レジスタマークとシミュレーションの検証結果を示す図である。
【図21】シミュレーション1の対象となる星形レジスタマークとシミュレーションの検証結果を示す図である。
【図22】シミュレーション2の対象となる星形レジスタマークを示す平面図である。
【図23】シミュレーション2の対象となる星形レジスタマークとシミュレーションの検証結果を示す図である。
【図24】シミュレーション3の例1の対象となる星形レジスタマークとシミュレーションの検証結果を示す図である。
【図25】シミュレーション3の例2の対象となる星形レジスタマークとシミュレーションの検証結果を示す図である。
【図26】シミュレーション4の例1の対象となる星形レジスタマークとシミュレーションの検証結果を示す図である。
【図27】シミュレーション4の例2の対象となる星形レジスタマークとシミュレーションの検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上述のように、本発明に係るレジスタマークは星形からなる。
【0030】
図1は本発明の第一の実施形態に係るレジスタマークを示す平面図である。図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係るレジスタマークは5足の星形からなる。
【0031】
星形の図形における足の数は5には限定されない。5以上の任意の奇数を選択することが可能である。
【0032】
図2は本発明の第一の実施形態に係るレジスタマークの他の例を示す平面図である。図2に示すように、例えば、本発明の第一の実施形態に係るレジスタマークは7足の星形から構成することも可能である。
【0033】
以下、レジスタマークの形状として星形を選択した理由を説明する。
【0034】
例えば、N個の辺の相互間の位置関係が予め決まっているN角形を想定する。このようなN角形においては、少なくとも1つの辺を意味する1本の線分を完全に定義することができ、かつ、その線分がN角形のどの辺に相当するかを定義することができれば、このN角形は理論的には同定可能である。これは、N角形をつくるN本の線分のうち(N−1)本はそのN角形を同定する上では冗長であることを意味する。
【0035】
ただし、これは数学的な意味においてのことであり、現実には、物理的観測によって、何らかの図形を構成する線分、すなわち、二つの端点(その線分の両端)を直接的に定義することは不可能である。これは、本来、線分は2つの端点から定義されるが、収集された像の解像度限界やボケなどによって、端点となるべきN角形の頂点の正確な座標は得られないからである。
【0036】
このため、端点に代わり、各辺の延長として定義可能な直線を用いる。これは一次式として表現される。さらに、二つの直線はそれらを連立方程式と見ることによって1つの交点を定義する。この交点がN角形の1つの頂点を表す。この方法を用いて一つの辺を定義するには二つの交点を定義する必要性があることから、端点(すなわち、二つの点)を定義するためには、最低でも3本の直線を必要とする。これは、例えば、基本図形として三角形を使った場合には、冗長が全く無いことを意味する。
【0037】
このため、N角形における最大の冗長Rは次式で与えられる。
R=(N−3)
【0038】
以下に述べるように、例えば、何れかの辺に欠落があるような場合には、この冗長をその辺に割り当てることによって、欠落に対する免疫性を向上させることができる。
【0039】
冗長賦与の観点から、レジスタマークとして用いるのに適した図形に求められる特徴を列記すると以下のようになる。
【0040】
(1)冗長性を得るに足る辺数を持つこと
すなわち、R=N−3 が1以上となること、すなわち、Nが4以上であること(4辺形以上であること)、である。
【0041】
(2)Nが奇数であること
奇数角形は相互に平行な一対の辺を有しないため、レジスタマークの位置を同定する方法(後述)において、辺を二重に同定することがない(この点については後述する)。
【0042】
(3)挟み径(図形の代表径)に比較して、一辺の長さがなるべく大きいこと
条件(1)及び(2)を考慮して、レジスタマークとして使用するN角形の候補を5角形、7角形及び9角形の3個に絞る。この3個のN角形に対して条件(3)を評価すると次の表1を得る。
【0043】
【表1】

【0044】
表1における挟み径Dは図1及び図2に示す通りである。また、辺長Eは次式により定義される。
E=L−S
【0045】
表1における挟み径D及び辺長Eは重心から頂点までの距離すなわち代表半径を0.5とした場合の計算値である。
【0046】
Vは各辺が検出可能/不可能となる「場合の数」を示す。
【0047】
実用的見地から、辺長効率が悪く、場合の数が過大な9角形は候補から除外し、以下、5角形及び7角形についてのみ考察する。
【0048】
次に、5角形及び7角形について、その変形であるところの星形を評価する。N足の星形は正N角形の各辺を両側に延長することにより得ることができる。
【0049】
表2は、5角形及び7角形について、画像効率すなわちE/Dを計算した表である。
【0050】
【表2】

【0051】
表2から、代表外形寸法に対して有効辺長が最も大きい図形、すなわち、画像の利用効率が最も高い図形は5足の星形であると結論できる(以下、「5足の星形」を単に「星形」と呼ぶ)。
【0052】
星形において検出可能な辺の組み合わせは2=32通りである。検出された辺に応じて交点の数(すなわち、星形における凸の頂点及び凹の頂点の数)が決定される。表3は星形における検出可能な辺の組み合わせを示す。
【0053】
【表3】

【0054】
表3において、各記号の意味は次の通りである。
【0055】
P:組み合わせ番号
a−f:星形の5個の辺(図3参照)
S:検出された辺の数
D:星形を推定するための最低限の交点を定義できる場合は「○」、できない場合は「×」で示した。
【0056】
星形の5個の辺a−fは図3のように定義される。ただし、星形に内接する5角形の各辺は仮想的なもの(すなわち、この5角形は実際の図形には現れない(従って検出不能な)線分で構成される)であり、辺の長さには含めない。
【0057】
以上のように定義した結果を用い、D−TRUEの組み合わせの全てを示したものが図4である。
【0058】
図4(A)は星形を構成する5辺のうちの3辺が得られた組み合わせを示し(組み合わせ番号7、11、13、14、19、21、22、25、26、28)、図4(B)は星形を構成する5辺のうちの4辺が得られた組み合わせを示す(組み合わせ番号15、23、27、29、30)。なお、星形を構成する5辺の全てが得られた組み合わせ(組み合わせ番号31)は省略した。
【0059】
図4において、Aで示される「○」は凸の端点を表し、Bで示される「○」は凹の端点を表す。
【0060】
[レジスタマーク位置同定装置]
以下に、星形のレジスタマークの位置を同定する装置及び方法の一例を示す。
【0061】
最初に、レジスタマークを用いて見当合わせ制御を行う見当合わせ制御装置の一例を図14に示す。
【0062】
図14は見当合わせ制御装置1000のブロック図である。
【0063】
見当合わせ制御装置1000は、本発明の実施形態に係るレジスタマークの位置を同定するレジスタマーク位置同定装置100(後述)と、比較器200と、メモリ300と、制御装置400と、から構成されている。
【0064】
メモリ300には、シート500上のレジスタマーク600が本来あるべき位置すなわちレジスタマーク600の基準位置の座標が記憶されている。
【0065】
レジスタマーク位置同定装置100により同定されたレジスタマーク600の位置を示す信号は比較器200に送信される。
【0066】
比較器200はメモリ300から基準位置を示す信号を受信し、レジスタマーク位置同定装置100から受信したレジスタマーク600の位置と基準位置とを比較する。
【0067】
比較器200は比較の結果を示す比較信号を制御装置400に送信する。制御装置400は比較信号が示す、基準位置からのレジスタマーク600の位置のズレに応じて、シート500の位置を修正する。
【0068】
以上のように、レジスタマーク位置同定装置100は見当合わせ制御装置1000の一構成要素をなすものである。
【0069】
以下、本発明の実施形態に係るレジスタマークの位置を同定するレジスタマーク位置同定装置100について説明する。
【0070】
図5は本発明の実施形態に係るレジスタマークの位置を同定するレジスタマーク位置同定装置100を示す概略図である。
【0071】
図5に示すように、見当合わせ制御の対象となるシート500が矢印Aの方向にフィードされている。シート500には複数個のレジスタマーク600が一定間隔毎に印刷されており、各レジスタマーク600はシート500上において同一の向きになるように印刷されているものとする。すなわち、レジスタマーク600を構成する複数の辺の各々の方向は予め定められており、レジスタマーク600を構成する複数の辺の相互間の位置関係は既知であるものとする。
【0072】
レジスタマーク位置同定装置100は、フィードされてきたシート500上のレジスタマーク600を撮像する撮像装置120と、撮像装置120が撮像したレジスタマーク600の画像データを記憶する画像メモリ130と、画像メモリ130に記憶された画像データ上においてレジスタマーク600を構成する各々の辺に平行に走査を行うとともに、走査を行う向きを各々の辺と直交する方向に移動させる走査装置110と、走査の結果に基づいてレジスタマーク600の各々の辺の位置を特定し、もってレジスタマーク600の位置を特定する解析装置140と、から構成されている。
【0073】
図6は走査装置110のブロック図である。
【0074】
図6に示すように、走査装置110は正スキャン実施装置111と副スキャン実施装置112とから構成されている。
【0075】
正スキャン実施装置111は、レジスタマーク600を構成する各々の辺に平行に走査を実施する。副スキャン実施装置112は、正スキャン実施装置111が行う走査を、レジスタマーク600を構成する各々の辺に直交する方向において一定間隔毎に移動させたうえで、走査を実施させる。すなわち、正スキャン実施装置111及び副スキャン実施装置112によって、レジスタマーク600を構成する各々の辺に平行に、かつ、各々の辺から一定距離毎に複数回の走査が行われる。
【0076】
図7は解析装置140のブロック図である。
【0077】
解析装置140は、中央処理装置(CPU)1401と、第一のメモリ1402と、第二のメモリ1403と、各種命令及びデータを中央処理装置1401に入力するための入力インターフェイス1404と、中央処理装置1401により実行された処理の結果を出力する出力インターフェイス1405と、中央処理装置1401と第一のメモリ1402、第二のメモリ1403、入力インターフェイス1404及び出力インターフェイス1405とを接続するバス1406と、から構成されている。
【0078】
第一のメモリ1402及び第二のメモリ1403の各々は、リード・オンリー・メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)またはICメモリーカードなどの半導体記憶装置、フレキシブルディスクなどの記憶媒体、ハードディスク、あるいは、光学磁気ディスクなどからなる。本実施形態においては、第一のメモリ1402はROMからなり、第二のメモリ1403はRAMからなる。
【0079】
第一のメモリ1402は中央処理装置1401が実行するための各種の制御用プログラムその他の固定的なデータを格納している。第二のメモリ1403は様々なデータ及びパラメータを記憶しているとともに、中央処理装置1401に対する作動領域を提供する、すなわち、中央処理装置1401がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納している。
【0080】
中央処理装置1401は第一のメモリ1402からプログラムを読み出し、そのプログラムを第二のメモリ1403の作動領域において実行する。すなわち、中央処理装置1201は第一のメモリ1402に格納されているプログラムに従って作動する。
【0081】
説明を単純化するため、図7に示すように、レジスタマーク600は直角三角形からなるものとする。すなわち、レジスタマーク600は3つの辺601、602、603からなり、2辺601、602が直角を構成し、他の1辺603が斜辺をなしているものとする。
【0082】
レジスタマーク位置同定装置100は以下のようにしてレジスタマーク600の位置を同定する。
【0083】
まず、レジスタマーク600の内部の任意の点を基準点630として定義する。この基準点630の座標は(0,0)で表される。
【0084】
最初に、3辺601、602、603のうち、例えば、辺601に着目する。
【0085】
基準点630(0,0)から、辺601に対する垂線601Aの方向に辺601のベクトルに等しいベクトルを有する直線(辺601に平行な直線)Sを平行移動させ、基準点630から各直線Sまでの距離rを記録する。
【0086】
次いで、各距離r毎に各直線Sが辺601と交差する長さm(後述)を記録する。
【0087】
このようにして求められた距離rのうち、長さmが最大となる距離r(a)(後述)を決定する。この距離r(a)がレジスタマーク600の辺601の位置を示すパラメータである。
【0088】
以上の処理は具体的には以下のように行われる。
【0089】
図8はレジスタマーク600の辺601に対して走査が実施されている状況を示す概略図である。
【0090】
シート500が矢印Aの方向にフィードされてくると、撮像装置120は、シート500上に印刷された複数のレジスタマーク600の各々を順次撮像し、各レジスタマーク600の画像データを画像メモリ130に送信する。画像メモリ130は、撮像装置120から受信したレジスタマーク600の画像データを記憶する。
【0091】
次いで、以下に述べるように、矢印Aの方向に連続的に移動する複数のレジスタマーク600の各々に対して、あたかも各レジスタマーク600が静止しているかの状態において、走査装置110による走査が行われる。なお、上記から明らかであるように、レジスタマーク600に対する走査とは、画像メモリ130内に蓄積されているレジスタマーク600の画像データに対する走査を意味する。
【0092】
走査装置110の正スキャン実施装置111は、画像メモリ130に蓄積されたレジスタマーク600の画像データに対して、レジスタマーク600の辺601と平行な方向(すなわち、シート500がフィードされる方向と直交する方向)に一定間隔毎に走査を実施する。
【0093】
例えば、図8に示すように、正スキャン実施装置111は、レジスタマーク600の辺601に平行に走査線111a、111b、111c、111d、111e(上述の直線Sに対応する)を順次放射する。この場合、副スキャン実施装置112によって、各走査線111a、111b、111c、111d、111e間の間隔は一定になるように維持される。
【0094】
解析装置140は、走査装置110にアクセスし、走査装置110によるレジスタマーク600に対する走査の結果を解析する。
【0095】
図9は解析装置140が、走査されたレジスタマーク600の画像データを解析した結果を示す概略図である。
【0096】
前述のように、画素レベルで見た場合、図9(A)に示すように、レジスタマーク600の各辺601、602、603は実際には直線ではなく、波形の線をなしている。
【0097】
図9(A)に示すように、走査装置110は一定間隔Xで走査方向Y(辺601と平行な方向)に走査線111a、111b、111c、111d、111eを順次走らせる。
【0098】
レジスタマーク600に対する走査により、各走査線111a、111b、111c、111d、111eとレジスタマーク600とが交差する領域の長さに応じた数の画素が検出される。
【0099】
図9(B)は縦軸が検出された画素数、横軸がレジスタマーク600の辺601と直交する方向(辺602と平行な方向)における位置を示すグラフである。
【0100】
検出された画素の位置に応じて、検出された画素数をプロットすると、図9(B)に示すようなグラフ121が得られる。このグラフ121はピーク(極大値)122を有している。すなわち、検出された画素数は、辺601の直近の位置において、ピーク122を示している。
【0101】
図9(C)は、図9(B)に示す画素数の値を微分し、得られた微分値をプロットすることにより得られたグラフ121Aである。
【0102】
画素数を微分することにより、図9(C)に示すように、ピーク122Aがより鮮明に示される。ピーク122またはピーク122A(ピーク122の位置とピーク122Aの位置はほぼ同じである)の位置(すなわち、長さmが最大となる距離r(a))がレジスタマーク600の辺601の位置を示している。
【0103】
図10は解析装置140が、図9に示した方法とは別の方法により、走査されたレジスタマーク600の画像データを解析した結果を示す概略図である。
【0104】
レジスタマーク600に対して、例えば、ラプラシアンを適用することにより、図10(A)に示すように、レジスタマーク600の輪郭図形161を得る。
【0105】
図10(B)は、図10(A)に示すレジスタマーク600の輪郭図形161に対して走査を行った場合に得られるグラフである。図10(B)に示すグラフは図10(C)に示すグラフと等価である。
【0106】
次いで、図11に示すように、走査装置110は辺602の画像データに対して、辺601の場合と同様に走査を行う。解析装置140は、辺601の場合と同様にして、走査装置110による走査の結果を解析し、辺602の位置を同定する。
【0107】
さらに、図12に示すように、走査装置110は辺603の画像データに対して、辺601の場合と同様に走査を行う。解析装置140は、辺601の場合と同様にして、走査装置110による走査の結果を解析し、辺603の位置を同定する。
【0108】
以上のようにして、撮像装置120が撮像した画像のデータに対して走査装置110が行った走査の結果を解析装置140が解析することにより、レジスタマーク600を構成する3辺601、602、603の位置が特定される。
【0109】
このようにして3つの辺601、602、603が求められると、これら3つの辺601、602、603がそれぞれ交差する3個の交点701、702、703(図4参照)を定義することができる。この3個の交点701、702、703がレジスタマーク600の3個の頂点を示している。
【0110】
次いで、解析装置140は、相互に隣り合う2個の頂点、すなわち、一つの辺の両端の頂点の中央からその辺に対して仮想的に垂線を引く。例えば、2個の頂点として頂点701と702を選択すると、頂点701及び702を両端とする辺601の中点から辺601の垂線を引く。
【0111】
同様にして、残りの二辺についても、それぞれの中点から仮想的にそれらの辺の垂線を引く。
【0112】
合計3本の垂線が引かれる。これらの3本の垂線の交点がレジスタマーク600の中心(この場合、中心は重心と同義である)である。
【0113】
以上のようにして、レジスタマーク600を構成する3辺601、602、603の位置が特定され、次いで、レジスタマーク600の各頂点の位置が特定され、さらに、レジスタマーク600の中心が特定される。これはシート500上におけるレジスタマーク600の位置が同定されたことを意味する。
【0114】
レジスタマーク位置同定装置100によれば、次のような利点を確保することができる。
【0115】
第一に、レジスタマーク600の形状の欠落に対して大きな免疫性が保障される。
【0116】
図13は従来の見当合わせ制御におけるレジスタマークの走査の実施状況を示す概略図である。
【0117】
従来の見当合わせ制御においては、例えば、図13(A)に示すように、レジスタマーク600を通過する一本の走査線610によってのみレジスタマーク600の位置の特定がなされていた。走査線610がレジスタマーク600と交差すると、走査線610とレジスタマーク600とが交差した2点611、612に対応する2値パルス614(パルス幅をBとする)が作成される。
【0118】
例えば、図13(B)に示すように、レジスタマーク600の外形に欠け620が生じていたものと仮定する。
【0119】
走査線610が欠け620を通過すると、走査線610は2点613、612においてレジスタマーク600と交差する。この2点のうちの一つの点613は欠け620上に位置する点である。このため、走査線610とレジスタマーク600とが交差した2点613、612に対応する2値パルス615(パルス幅をAとする)が作成される。
【0120】
レジスタマーク600の欠け620に起因して、2値パルス615の幅Aは2値パルス614の幅Bよりも小さい。このため、2値パルス615に基づいて特定されたレジスタマーク600の位置は正確性に欠けることとなる。
【0121】
これに対して、レジスタマーク位置同定装置100によれば、レジスタマーク600を構成する各辺に沿って走査を実施するため、レジスタマーク600の外形に欠け620のような形状の欠落があったとしても、レジスタマーク600の各辺の位置の特定は欠け620により影響を受けることはない。すなわち、欠け620の有無に関わらず、各辺601、602、603の位置を正確に特定することが可能である。
【0122】
このように、レジスタマーク位置同定装置100においては、レジスタマーク600にボイド(穴)やデント(欠け)が存在したとしても、それらはレジスタマーク600の位置特定の誤差の原因とならない。
【0123】
第二に、レジスタマーク600の辺におけるノイズが辺全体で平均化されるため、実質上、誤差が軽減される。
【0124】
第三に、レジスタマーク600の位置の誤差を軽減することができる。
【0125】
レジスタマーク位置同定装置100においては、3つの辺601、602、603の位置を特定することにより、レジスタマーク600の位置を特定する。このため、レジスタマーク600自体が三角形としての形状の完全性に欠けるものであったとしても(すなわち、三角形としての形状に欠落や余剰があったとしても)、位置の誤差が図形全体で平均化され、軽減される。
【0126】
なお、一般的には、レジスタマーク600がN角形である場合のレジスタマーク600の位置同定は次のようなステップに従って行われる。
【0127】
(1)まず、4象限で表現された一つの検定平面を準備する。この平面上の任意の一点の座標はグローバル座標である。従って、この平面上に、位置を判定したい図形(レジスタマーク600)を重ねると、この図形の基準位置(例えば、その図形の中心)のグローバル座標はその図形の位置を示すパラメータとなる。このパラメータが示す基準位置からの変位は位置の誤差を表す。
【0128】
まず、N角形の内部の任意の点を基準点として定義する。この基準点の座標を(0,0)とする。
【0129】
次いで、基準点(0,0)からN角形のN個の辺の各々に対する垂線の方向に各辺のベクトルに等しいベクトルを有する直線Sを等間隔に平行移動させ、基準点(0,0)から各直線Sまでの距離rを記録する。
【0130】
(2)次いで、各距離r毎に各直線SがN角形の各辺と交差する長さmを記録する。
【0131】
(3)0<r<R(Rはグローバル座標平面の物理的限界)の範囲内において上記(1)及び(2)の過程を繰り返す。
【0132】
(4)このようにして求められた距離rのうち、長さmが最大となる距離r(a)を決定する。この距離r(a)がN角形の各辺のグローバル座標上の位置を示すパラメータである。
【0133】
(5)全ての垂線について上記(1)乃至(4)の過程を繰り返すことにより、N個の距離r(a)が求められる。
【0134】
(6)このようにして求められたN個の距離r(a)によりN個の交点を定義することができる。これらの交点はN角形のN個の頂点を示している。
【0135】
(7)相互に隣り合う2個の頂点、すなわち、一つの辺の両端の頂点の中央からその辺に対して垂線を引く。N角形はN個の辺を有しているため、N個の垂線が形成される。
【0136】
(8)N個の垂線のうちの任意の2本の垂線は個の交点をつくる。例えば、N=3(三角形)のときの交点の数は3である。
【0137】
(9)仮に、N角形が図形として完全であり、さらに、距離rのサンプリングが稠密であれば、個の交点の座標は一致する。ただし、上記の計算上の座標と実際の図形の座標とは一般には一致しない。そのような場合には、各座標が得られた経緯に依存した信頼度評価を行った後、各座標を加重平均化することにより、各座標の精度を向上させることができる。
【0138】
以上のように、レジスタマーク位置同定装置100においては、レジスタマーク600としてどのような図形を使用したとしても、利用するデータはレジスタマーク600の外形(輪郭)を示す線についてのデータのみである。従って、レジスタマーク600が中実型の図形であっても、あるいは、輪郭型(中空型)の図形であっても、レジスタマーク位置同定装置100の動作は変わらない。このため、たとえ、レジスタマーク600にボイドが存在したとしても、そのボイドがレジスタマーク600の位置同定における誤差の原因となることはない。
【0139】
[シミュレーション1]
星形のレジスタマークとしての有効性を示すため、シミュレーションを行った。
【0140】
シミュレーションを行う場合、星形のレジスタマークに対して正確に図形領域定義を行うことが必要となる。
【0141】
図形領域定義は一種の関数である。この関数の入力は座標であり、出力はINまたはOUTで示される。INは座標が境界の内側に有り、OUTは境界の外側にあることを意味する。
【0142】
(1)領域分割
星形の分割は、それぞれの領域が単項式で表せるようになっていれば、どのように分割することも可能である。各領域を単項式で表す基本は、各領域がN角形で表現されることである。ここでは、項数を減らすためと、すべての領域が3直線で表現できることから、図15に示すように、星形を4個の三角形L,M,N,Pに分ける4分割を採用した。
【0143】
(2)区分された領域定義
図形基準: 重心
外接円半径:1
角度単位:×πラジアン
入力座標:[x,y]
直線a:ya=−sin(1/10)
直線b:yb=−1+tan(2/5)×(−x)
直線c:yc=(3/10)cos(1/5)−tan(1/5)×(−x)
直線d:yd=(3/10)cos(1/5)−tan(1/5)×x
直線e:ye=−1+tan(2/5)×x
【0144】
このとき
if((y>ya)&&(y<yc)&&(y<yd)) L=true;else L=false;
if((y<ya)&&(y>yb)&&(y>ye)) M=true;else M=false;
if((x<0)&&(y>yb)&&(y<yd)) N=true;else N=false;
if((x>0)&&(y<yc)&&(y>ye)) P=true;else P=false;
if(L||M||N||P)prot(1); else prot(0);
【0145】
(3)検算
図16(A)は境界表現式を図示したものであり、図16(B)は境界の内外の判断をマトリクス上にプロットしたものである。
【0146】
マトリクスサイズは201×201としたので、座標はx,yともに−100乃至+100である。星形の半径(外接円の半径)は100に設定した。また、星形の重心はマトリクスの中心から下方に5画素のオフセットを与えてある。従って、最終的に判断された星形の心の座標は(0,5)となる。
【0147】
このようにして、前記の領域定義式は正しいことが確認された。
【0148】
以下、本実施形態に係る星形のレジスタマークについて行ったシミュレーションについて説明する。
【0149】
ここでは、図形としてバイナリ像を扱う。
【0150】
星形の心を同定するための段階は次の通りである。
(1)画像としての各エッジを検出する
(2)一定の向きの走査線でスイープして、図形としての推定境界位置を決定する
(3)推定境界位置を示す直線を1次式として表現する
(4)1次式で表現された2直線の交点から仮想内接5角形の各頂点の座標を推定する
(5)隣り合った2つの頂点の間の中点からその辺に対する垂線を定義する
(6)任意の2垂線の交点座標(最大10個)を算出する
(7)交点座標の平均値を算出し、これを心とする
【0151】
エッジを境界線の代用にするため、バイナリ像に対してラプラシアンを定義する。これが図16(B)の白い領域と黒い領域の境界に存在する画素である。
【0152】
次に、予め定義された傾斜を持つ直線を、検定平面の中心から、星形の各足の向きを示すベクトルに沿って移動させ、予めラプラシアンが正となることが判明している画素(すなわち、図16(B)の白い領域と黒い領域の境界に存在する画素)との一致度を検査する。全移動範囲内において、一致した画素が最大となる位置を記憶する。
【0153】
画素で表現された平面の座標が整数で示されるのに対して、ベクトルは実数で表現されるため、エッジを示す全ての画素が数式にヒットするとは限らない。
【0154】
この処理で得られる本質的に必要なデータは、画素平面の中心から各辺までの距離である。数式的にはこの値は
sin(π/10)×100=30.90
となる。実際の検出結果は以下の表4に示すように、25から35の間に分布する。
【0155】
【表4】

【0156】
確認のために、これらのデータを用いて再度一次式を定義して、平面にプロットする。
【0157】
直線a乃至eに対して得られた平面中心からの距離をta乃至tbとする。図形が等方性の星形である場合、直線定義に用いられる係数の数は有限である。それらを予め三角関数を用いて次のように定義する。角度単位は(×πラジアン)である。
【0158】
sin(n/10)=ksn 例えば、sin18°=sin(1×π/10)=ks1
cos(n/10)=kcn 例えば、sin36°=sin(2×π/10)=kc2
tan(n/10)=ktn 例えば、tan72°=sin(4×π/10)=kt4
【0159】
この時、星形の各辺に対し次の表現が決定する。
【0160】
(辺a)
基本式 y=0
修正式 y=ta
【0161】
(辺b) (図17参照)
基本式 y=−kt4×x
ib=tb/ks1
修正式 y=tb/ks1−kt4×x
【0162】
(辺c) (図18参照)
基本式 y=kt2×x
ic=−(1/kc2)×tc
修正式 y=−tc/kc2+kt2×x
【0163】
(辺d)
辺dは辺cの鏡像であるので、以下のような式になる。
【0164】
基本式 y=−kt2×x
id=−(1/kc2)×td
修正式 y=−td/kc2−kt2×x
【0165】
(辺e)
辺eは辺bの鏡像であるので、以下のような式になる。
【0166】
基本式 y=kt4×x
ie=te/ks1
修正式 y=te/ks1+kt4×x
【0167】
次に、隣り合った二つの頂点の間の中点を検出する。
【0168】
先ず、星形の凹部、すなわち、内接正5角形の頂点の座標を求める。それは各辺を表す1次式の隣り合う2本の直線の交点を求めることに等しい。
【0169】
辺aと辺bを示す直線の交点をXabとする。以下同様に、Xbc、Xcd、Xde、Xeaを定義する。各頂点の座標を求めることは次の連立方程式を解くことに等しい。
【0170】
(1)Xabについて
y=ta
y=tb/ks1−kt4×x
【0171】
この2式から
ta=tb/ks1−kt4×x
0=tb/ks1−kt4×x−ta
kt4×x=tb/ks1−ta
x=(tb/ks1−ta)/kt4
【0172】
(2)Xbcについて
y=tb/ks1−kt4×x
y=−tc/kc2+kt2×x
【0173】
この2式から
tb/ks1−kt4×x=−tc/kc2+kt2×x
−kt4×x−kt2×x=−tc/kc2−tb/ks1
kt4×x+kt2×x=tc/kc2+tb/ks1
x(kt4+kt2)=(tc/kc2+tb/ks1)
x=(tc/kc2+tb/ks1)/(kt4+kt2)
【0174】
(3)Xcdについて
y=−tc/kc2+kt2×x
y=td/kc2−kt2×x
【0175】
この2式から
−tc/kc2+kt2×x=−td/kc2−kt2×x
2×kt2×x=(−td+tc)/kc2
x=(−td+tc)/(kc2/2)×kt2
【0176】
(4)Xdeについて
y=−td/kc2−kt2×x
y=te/ks1+kt4×x
【0177】
この2式から
−td/kc2−kt2×x=te/ks1+kt4×x
−kt2×x−kt4×x=te/ks1+td/kc2
x=−(te/ks1+td/kc2)/(kt2+kt4)
【0178】
(5)Xeaについて
XeaはXabの写像であるので、
y=ta
x=−(te/ks1−ta)/kt4
【0179】
次に、このようにして得られた頂点の座標2組から中点の座標Ma乃至Meを求める。それらは中点をはさむ二頂点の座標の算術平均として求められる。
【0180】
決定された中点の座標を図19にクロスプロットC1−C5で示した。中点の座標が正しいらしく表現されているので、その前段階の内接5角形の頂点座標も正しいらしく求められているとして良い。図19において各頂点の座標はPentagonal_Crosとして示してある。
【0181】
次に、各中点Ma−Meから、それが存在する辺に対しての垂線を定義する。ここでは、各垂線のパラメータに対し、全部の垂線に共通でx,y,xm,ymの文字を用いてある。
【0182】
(垂線A)
基本 x=0
修正 x=xm
【0183】
(垂線B)
基本 y=kt1×x
修正 y=kt1×(x−xm)+ym
【0184】
(垂線C)
基本 y=kt3×x
修正 y=kt3×(−x+xm)+ym
【0185】
(垂線D)
基本 y=kt3×x
修正 y=kt3×(x−xm)+ym
【0186】
(垂線E)
基本 y=kt1×(−x)
修正 y=kt1×(−x+xm)+ym
【0187】
図20には、得られた5本の垂線が図示されている。これらの垂線は正しいらしく定義されていることがほぼ証明された。
【0188】
5本の垂線は原則として10個の交点を定義する。理想的にはこれら10個の交点は全く同一の座標を持つ。従って、理想的には2本の垂線だけで星形の心を定義することが可能である。
【0189】
心の計算は再び1次連立方程式を解くことによって行われる。これらの方程式では、各垂線に対して予め決定されている傾斜と中点の座標が用いられる。ここでは、各中点の座標をcv[p]のように表現する。
【0190】
cは固定文字であり、vは各辺a乃至eを示す。pは座標成分を指し、0=x,1=yとする。
【0191】
(1)XAB(垂線Aと垂線Bによって定義される交点)
vx=ca[0]
vy=kt1(vx−cb[0])+cb[1]
fx=vx
fy=kt1(ca[0]−cb[0])+cb[1]
【0192】
(2)XBC(垂線Bと垂線Cによって定義される交点)
vy=kt1(vx−cb[0])+cb[1]
vy=−kt3(−fx+cc[0])+cc[1]
kt1(vx−cb[0])+cb[1]=kt3(−vx+cc[0])+cc[1]
kt1×vx−kt1×cb[0]+cb[1]=−kt3×vx+kt3×cc[0]+cc[1]
kt1×vx+kt3×vx=kt3×cc[0]+cc[1]+kt1×cb[0]−cb[1]
fx=(kt3×cc[0]+cc[1]+kt1×cb[0]−cb[1])/(kt1+kt3)
fy=kt1(fx−cb[0])+cb[1]
【0193】
(3)XCD(垂線Cと垂線Dによって定義される交点)
vy= kt3・(-vx + cc[0]) + cc[1]
vy= kt3・(fx−cd[0]) + cd[1]
kt3・fx−kt3・cd[0] + cd[1]= -kt3・fx + kt3・cc[0] + cc[1]
kt3・fx + kt3・fx= kt3・cc[0] + cc[1] + kt3・cd[0]−cd[1]
fx= cc[0] + cd[0] + (cc[1]−cd[1])/(2・kt3)
fy= kt3・(-fx + cc[0]) + cc[1]
【0194】
(4)XDE(垂線Dと垂線Eによって定義される交点)
vy= kt3・(vx−cd[0]) + cd[1]
vy= kt1・(-vx + ce[0]) + ce[1]
kt3・vx−kt3・cd[0] + cd[1]= -kt1・vx + kt1・ce[0] + ce[1]
vx(kt3 + kt1)= kt3・cd[0]−cd[1] + kt1・ce[0] + ce[1]
fx= (kt3・cd[0]−cd[1] + kt1・ce[0] + ce[1])/ (kt3 + kt1)
fy= kt3(fx−cd[0] ) + cd[1]
【0195】
(5)XEA(垂線Eと垂線Aによって定義される交点)
vy= kt1・(-vx + ce[0]) + ce[1]
vx= ca[0]
fx= vx
fy= kt1・(-ca[0] + ce[0]) + ce[1]
以下同様にして計算を行い、結果のみを示す。
【0196】
(6)XAC(垂線Aと垂線Cによって定義される交点)
fx= ca[0]
fy= kt3・(-fx + cc[0]) + cc[1]
【0197】
(7)XCE(垂線Cと垂線Eによって定義される交点)
fx= (kt1・ce[0] + ce[1]−kt3・cc[0]−cc[1])/(kt1−kt3)
fy= kt3・(-fx + cc[0]) + cc[1]
【0198】
(8)XEB(垂線Eと垂線Bによって定義される交点)
fx= (-kt1・cb[0] + cb[1]−kt1・ce[0]−ce[1])/(-2・kt1)
fy= kt1・(-fx + ce[0]) + ce[1]
【0199】
(9)XBD(垂線Bと垂線Dによって定義される交点)
fx= (-kt3・cd[0] + cd[1] + kt1・cb[0]−cb[1])/(kt1−kt3)
fy= kt1・(fx−cb[0]) + cb[1]
【0200】
(10)XDA(垂線Dと垂線Aによって定義される交点)
fx= ca[0]
fy= kt3・(fx−cd[0]) + cd[1]
【0201】
図21には、計算結果としての最終座標が「Determ’d Co_ord」として表示されている。
【0202】
前述したように、今回のシミュレーションにおける心の座標期待値は(0,5)である。これに対して、今回の評価結果は離散化誤差を考慮した時、ほぼ完璧に合致している。
【0203】
特に注目すべきことは、どの二つの垂線の組み合わせでも、それ単独で期待値を満足していることである。これは、星形のレジスタマークが理論的に冗長を含んでいることを意味している。
【0204】
以下、図形として完全ではない星形に対して心を同定する場合のシミュレーションを例示する。
【0205】
[シミュレーション2]
シミュレーション2においては、図22に示すように、星形の5足のうち2足に欠損が生じている場合を採り上げる。
【0206】
このような図形欠損は従来の心検出機構、たとえば、重心や中心を求めるタイプの検出機構においては大きな誤差を生じる。
【0207】
以下、図22に示す欠損のある星形レジスタマークに対してシミュレーション1と同様の解析を行う。
【0208】
図22に示した星形の図形を図16(B)に示した星形の図形と比較すると、所定の辺長が短縮された分だけ、期待接線と合致するピクセル数は減っているものの、中心からの距離はシミュレーション1の場合と同じように認識可能である(このことは、本来であれば、これ以上の検討が必要ではないことを示すものであるが、説明を明確にするため、引き続きシミュレーション結果を示す)。
【0209】
シミュレーション1の場合と同様にして、2頂点間の中点の検出、垂線の定義式の設定及びその確認、最終交点の算出を行った結果を図23に示す。
【0210】
図23の「Determ’d Co_ord」に示す結果から明らかであるように、図22に示したような2足程度の欠損では星形レジスタマークの心同定に全く影響を与えないことが確認された。
【0211】
[シミュレーション3]
(例1)
シミュレーション3の例1においては、図24に示すように、部分的に崩壊が生じている星形を対象とする。
【0212】
図24に示すような星形の図形は、例えば、サイズと位置とを乱数で発生させ、原バイナリ像に対して、エロージョン+ダイレーション処理を相当回数行い、意図的に部分的破壊を行うことにより、得られる。
【0213】
図24に示した星形に対しても、シミュレーション1と同様の手順に従って、基準位置(心)を検出する。
【0214】
シミュレーション1の場合と同様にして、2頂点間の中点の検出、垂線の定義式の設定及びその確認、最終交点の算出を行った結果を図24に示す。
【0215】
図24の「Determ’d Co_ord」に示すように、部分的に崩壊が生じている星形であっても、その基準位置の最終誤差は1ピクセル未満である。
【0216】
(例2)
シミュレーション3の例2においては、図25に示すように、例1とは別の形のボイドと離れ島とができるようにパラメータを調整した星形を対象とする。例1よりも全体的な崩れは更に大きい。例2は、実際の印刷を平滑度の良くない紙に行った後、拡大観察した場合の図形不整を想定している。
【0217】
シミュレーション1の場合と同様にして、2頂点間の中点の検出、垂線の定義式の設定及びその確認、最終交点の算出を行った結果を図25に示す。
【0218】
図25の「Determ’d Co_ord」に示すように、X,Y両方向とも検出誤差は1ピクセル未満である。
【0219】
[シミュレーション4]
シミュレーション4においては、高度に崩壊が生じている星形を対象とする。
【0220】
以下の例1及び例2は、限界と思われる程度まで崩壊した星形における基準位置の検出を行う例である。
【0221】
(例1)
シミュレーション4の例1においては、図26に示すように、星形の基本図形が極端に変形しているのみならず、図形の分断を伴っている。
【0222】
シミュレーション1の場合と同様にして、2頂点間の中点の検出、垂線の定義式の設定及びその確認、最終交点の算出を行った結果を図26に示す。
【0223】
図26の「Determ’d Co_ord」に示すように、高度に崩壊が生じている星形であっても、その基準位置の最終誤差は1ピクセル未満である。
【0224】
(例2)
シミュレーション4の例2においては、図27に示すように、ほとんど星形と認められない程度までに星形が大きく崩壊している。
【0225】
シミュレーション1の場合と同様にして、2頂点間の中点の検出、垂線の定義式の設定及びその確認、最終交点の算出を行った結果を図26に示す。
【0226】
図27の「Determ’d Co_ord」に示すように、ほとんど星形と認められない程度まで形状が崩壊している星形であっても、その基準位置の最終誤差は約1ピクセルである。
【0227】
以上のように、シミュレーション1−4によれば、星形レジスタマークを使用することにより、その基準位置(心)を極めて正確に同定することが可能であることが示された。
【符号の説明】
【0228】
100 本発明の実施形態に係るレジスタマークに対して使用されるレジスタマーク位置同定装置
110 走査装置
111 正スキャン実施装置
112 副スキャン実施装置
120 撮像装置
121 グラフ
130 画像メモリ
140 解析装置
500 シート
600 レジスタマーク
601、602、603 レジスタマークの3辺
601A、602A、603A レジスタマークの3辺の垂線
630 基準点
1000 見当合わせ制御装置
200 比較器
300 メモリ
400 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート上に印刷されたレジスタマークの位置を読み取ることにより行われる前記シートの見当合わせ制御において使用される前記レジスタマークであって、
星形からなるものであることを特徴とするレジスタマーク。
【請求項2】
5足の星形からなるものであることを特徴とする請求項1に記載のレジスタマーク。
【請求項3】
シート上に印刷されたレジスタマークの位置を読み取るレジスタマーク位置同定方法であって、
前記レジスタマークを構成する複数の辺の各々の方向は予め定められており、
前記レジスタマーク位置同定方法は、
請求項1または2に記載のレジスタマークを前記シート上に印刷する第一の過程と、
フィードされてきた前記シート上の前記レジスタマークを撮像する第二の過程と、
前記第一の過程において撮像された前記レジスタマークの画像データ上において前記レジスタマークを構成する前記各々の辺に平行に走査を行うとともに、前記走査を行う向きを前記各々の辺と直交する方向に移動させる第三の過程と、
前記走査の結果に基づいて前記レジスタマークの前記各々の辺の位置を特定し、もって前記レジスタマークの位置を特定する第四の過程と、
を備えるレジスタマーク位置同定方法。
【請求項4】
前記第二の過程において撮像された前記レジスタマークの前記画像データを画像メモリに記憶する過程をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のレジスタマーク位置同定方法。
【請求項5】
前記各々の辺の位置の特定は、各走査により得られた積算画素数のピーク値を判定することにより行うことを特徴とする請求項3または4に記載のレジスタマーク位置同定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−11471(P2011−11471A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158055(P2009−158055)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000135254)株式会社ニレコ (41)
【Fターム(参考)】