説明

レジスタ

【課題】間接送風のための空気流路を開閉可能なダンパと、直接送風の空気流路を開閉可能なダンパを、操作部材の操作に連動させて直接送風モードと、間接送風モードと、全シャットモードを切り替え可能とするにあたり、各ダンパ及び連動部材の動作スペースをより小さいものとすると共に、各空気流路を開閉させるための機構を簡単なものとして、当該機構を構成する部品点数も削減できるレジスタを提供する。
【解決手段】第1流路80と第2流路81、82には、回転軸200が回動可能に支持されると共に回転軸200を中心とした略円弧状の断面を有する第1絞り部90と第2絞り部91、92が形成される。回転軸200に設けられる第1回転ダンパ130は、回転軸200の回転により第1絞り部90を開閉可能であると共に、当該回転軸200に設けられる第2回転ダンパ101A、101Bは回転軸200の回転により第2絞り部91、92をそれぞれ開閉可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通風ダクトから供給される空気を吹き出す車室空調用のレジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、通風ダクトから供給された空気を車室内に吹き出し、該吹き出し風によって車室内を空調する車室空調用のレジスタが知られている。
一般的なレジスタは、通風ダクトから供給された空気を乗員の体等に向かって直接吹き出す直接送風に用いられている。しかし、近年、気象条件等によっては強い風が直接体等に当たることによる煩わしさや不快感を回避したいというユーザの要望が強くなっている。このため、直接送風だけでなく、吹き出し風を乗員に直接当てらないように吹き出す間接送風も可能なレジスタが提案されている。
【0003】
例えば、レジスタの一例である特許文献1の車両用空気吹出グリル装置1は、通風ダクトの通風路に連通する筒状のハウジング15と、円筒状でハウジング15内に移動可能に嵌合配置された中間グリルケース21と、先端に先端吹出孔40が開口する円筒状で中間グリルケース21内に嵌合配置された先端グリルケース31と、先端吹出孔40に軸支されて先端吹出孔40を開閉するフィン41、42を有する。中間グリルケース21の側部には複数の側部吹出孔28が開口し、中間グリルケース21がハウジング15に収容位置にある場合はハウジング15により側部吹出孔28が閉じられる一方、中間グリルケース21がハウジング15から突出した位置にある場合は、側部吹出孔28が開放される。同様に、先端グリルケース31の側部には複数の側部吹出孔39が開口し、先端グリルケース31が中間グリルケース21のから突出した位置にある場合は、側部吹出孔39が開放される。
よって、この車両用空気吹出グリル装置1ではこのフィン41、42を手動で押すことによって先端吹出孔40を開放させて車両用空気吹出グリル装置1の前方に位置する乗員に向かって吹き出される直接送風を得ることが出来る。また、中間グリルケース21が、収容位置から突出位置に突出すると、側部吹出孔28が開放されて前方の乗員に直接当たらないように吹き出される間接送風が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−238920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の車両用空気吹出グリル装置1では、直接送風から間接送風に切り替えるために、先端グリルケース31のフィン41、42の閉鎖操作と、先端グリルケース31の中間グリルケース21からの引き出し操作及び中間グリルケース21のハウジング15からの引き出し操作を行う必要があり、手間がかかる。逆に、間接送風から直接送風に切り替えるために、先端グリルケース31のフィン41、42の開放操作と、先端グリルケース31の中間グリルケース21への収納操作及び中間グリルケース21のハウジング15への収納操作を行う必要があり、手間がかかる。また、間接送風から、送風停止に切り替えるためには、先端グリルケース31のフィン41、42の閉鎖操作と、先端グリルケース31の中間グリルケース21への収納操作及び中間グリルケース21のハウジング15への収納操作を行う必要があり、手間がかかる。また送風停止したとしても閉鎖したフィン41、42の間から漏れ出る送風を完全には止められない。
【0006】
このため、仮に特許文献1の車両用空気吹出グリル装置1を、通風ダクトから側部吹出孔28、39へ向かう空気の流路と、通風ダクトから先端吹出孔40へ向かう空気の流路を分けて、両方の空気流路にそれぞれダンパを設けると共にダイヤル等の操作部材の操作に各ダンパの開閉動作を連動させて、一つの操作部材を操作するだけで側部吹出孔28、39からの間接送風モードと、先端吹出孔40からの直接送風モードと、側部吹出孔28、39からの送風も先端吹出口40からの送風もシャットさせる全シャットモードの3モードを切り替え可能に現出しようとすると、以下の問題点が出てくる。
すなわち、そのような場合は、ダンパの開閉動作のためのスペースや、各ダンパと操作部材とを連動させる連動部材の動作のスペースが大きくなりすぎ、限られた大きさの通風ダクトにはレジスタを配設できなくなってしまう。また、3モードを実現するために各ダンパ、操作部材、連動部材を含めた機構全体が複雑になり部品点数が増えて製造コストが大きくなる。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、通風ダクトから間接送風のための吹出口までの空気流路を開閉可能なダンパと、通風ダクトから直接送風のための吹出口までの空気流路を開閉可能なダンパを、操作部材の操作に連動させて乗員に向かって吹き出す直接送風モードと、乗員に直接当たらないように吹き出す間接送風モードと、レジスタからの送風をほとんど完全に停止させる全シャットモードを切り替え可能とするにあたり、各ダンパ及び連動部材の動作スペースをより小さいものとすると共に、各ダンパ、操作部材、連動部材からなり各空気流路を開閉させるための機構を簡単なものとして、当該機構を構成する部品点数も削減できるレジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のレジスタは、通風ダクトに配設されて通風ダクトからの通風を乗員に向かって吹き出す直接送風及び乗員に直接当たらないように吹き出す間接送風のいずれも可能な車室空調用のレジスタにおいて、前記直接送風の吹出口となる第1開口部と、前記間接送風の吹出口となる第2開口部と、前記第1開口部と前記通風ダクトとを連通する第1流路と、前記第2開口部と前記通風ダクトとを連通する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路とに回転可能に支持される回転軸と、前記第1流路に形成されて、前記回転軸を中心とした略円弧状の断面を有する第1絞り部と、前記第2流路に形成されて前記回転軸を中心とした略円弧状の断面を有する第2絞り部と、前記回転軸に設けられて回転軸の回転により前記第1絞り部を開閉可能な第1回転ダンパと、前記回転軸に設けられて回転軸の回転により前記第2絞り部を開閉可能な第2回転ダンパと、前記回転軸を回転させる操作部材と、を有し、前記操作部材を操作することにより、前記第1回転ダンパが前記第1絞り部を開放すると共に前記第2回転ダンパが前記第2絞り部を閉鎖する状態と、第1回転ダンパが第1絞り部を閉鎖すると共に第2回転ダンパが第2絞り部を開放する状態と、第1回転ダンパが第1絞り部を閉鎖すると共に第2回転ダンパが第2絞り部を閉鎖する状態とを現出することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2のレジスタは、請求項1に記載のレジスタにおいて、前記第1回転ダンパは前記第2回転ダンパと位相をずらすように前記回転軸に形成されると共に第1回転ダンパと第2回転ダンパは、先端から回転軸までの距離が略等しく、前記第1絞り部と前記第2絞り部は一体に形成され、第1絞り部の略円弧状の断面と前記第2絞り部の略円弧状の断面はほぼ同一形状をしていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3のレジスタは、請求項1又は請求項2に記載のレジスタにおいて、前記第1回転ダンパと、前記第2回転ダンパは前記回転軸と一体に形成されると共に、前記操作部材と前記回転軸を連動させるリンク部材が前記回転軸と一体に形成されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4のレジスタは、請求項2に記載のレジスタにおいて、前記第1回転ダンパと前記第2回転ダンパの位相のずれは約60°であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5のレジスタは、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のレジスタにおいて、その長手方向が前記通風ダクトの通風方向に沿うように配設され、前記第1流路は、前記通風ダクト内において通風ダクトの通風方向と対向する方向に開口する第1吸入口を有し、前記第2流路は、前記通風ダクト内において通風ダクトの通風方向と対向する方向に開口する第3吸入口を有し、前記第1絞り部は前記第1吸入口に、前記第2絞り部は前記第2吸入口にそれぞれ形成されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6のレジスタは、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のレジスタにおいて、前記第1絞り部及び第2絞り部は2つの分離体が接続して形成されると共に、当該2つの分離体に分かれて形成されて2つの分離体が接続すると前記回転軸を軸支する支持孔を有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7のレジスタは、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のレジスタにおいて、前記操作部材は所定のダイヤル軸に回動可能に支持されるダイヤルであって、前記レジスタの前面部に前記ダイヤル軸の端部に当接して前記ダイヤルの抜けを防ぐ支持部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1のレジスタは、直接送風の吹出口となる第1開口部と、間接送風の吹出口となる第2開口部、通風ダクトと第1開口部とを連通する第1流路、通風ダクトと第2開口部とを連通する第2流路を有する。そして、第1流路と第2流路には回転軸が回動可能に支持されると共に、それぞれ回転軸を中心とした略円弧状の断面を有する第1絞り部と第2絞り部が形成される。当該回転軸に設けられる第1回転ダンパは、回転軸の回転により第1絞り部を開閉可能であると共に、当該回転軸に設けられる第2回転ダンパは回転軸の回転により第2絞り部を開閉可能である。そして操作部材を操作して回転軸を回転させると、第1絞り部が開放されると共に第2絞り部が閉鎖される状態、第1絞り部が閉鎖されると共に第2絞り部が開放される状態、第1絞り部と第2絞り部が共に閉鎖される状態が現出されるので、第2開口部から間接送風が吹き出される間接送風モードと、第1開口部から直接送風が吹き出される直接送風モードと、全シャットモードとの3モードが実現される。
以上、請求項1のレジスタでは、回転軸に第1回転ダンパ及び第2回転ダンパを設けて第1回転ダンパの第1絞り部を開閉する動作と第2回転ダンパの第2絞り部を開閉する動作とを同軸回りの回動とすることにより、第1回転ダンパと第2回転ダンパの動作の省スペースを図りながら上記の3モードを実現できる。また操作部材の操作と各回転ダンパとを連動させる回転軸を回転させれば第1絞り部及び第2絞り部をそれぞれ開閉できるから、操作部材の操作を第1回転ダンパ及び第2回転ダンパの動作とを連動させる連動部材の動作の省スペースが図れることとなる。
更に、第1回転ダンパと第2回転ダンパを連動部材の一つとも言える回転軸に直接設けるから、各流路を開閉するための機構を簡単なものとして、機構を構成する部品点数を削減し、製造コストを軽減できる。
【0016】
また、請求項2のレジスタでは、第2回転ダンパは第1回転ダンパと位相をずらして設けられている。またまた第1回転ダンパと第2回転ダンパは、先端から回転軸までの距離が略等しく、第1絞り部と前記第2絞り部は一体に形成され、第1絞り部の略円弧状の断面と前記第2絞り部の略円弧状の断面はほぼ同一形状をしている。ここで本明細書において、同一形状とは、円弧の向く方向も同一であり、2つの断面を重ねあわせると円弧形状が重なりあうように揃っていることを指す。
すなわち請求項2のレジスタは、第1回転ダンパと第2回転ダンパの位相をずらすので、第1絞り部の略円弧状の断面と前記第2絞り部の略円弧状の断面を略同一形状としても、上記の3モードが実現可能となるものである。
以上、請求項2のレジスタでは、第1絞り部と第2絞り部を一体に形成するので、第1絞り部と第2絞り部をよりコンパクトに製造できて製造コストを削減できる。また第1絞り部の略円弧状の断面と前記第2絞り部の略円弧状の断面を略同一形状として第1絞り部と第2絞り部を単純な形状とできるので、更に製造コストを軽減できる。
【0017】
また、請求項3のレジスタでは、第1回転ダンパと、第2回転ダンパは回転軸と一体に形成されると共に、操作部材と回転軸を連動させるリンク部材が回転軸と一体に形成される。よって、請求項3のレジスタでは、各回転ダンパと操作部材とを連動させる連動部材は、回転軸とリンク部材とからなり、当該連動部材を全て各回転ダンパと一体化できるので、各ダンパと操作部材と連動部材からなる開閉機構を各回転ダンパとリンク部材と一体化された回転軸と、操作部材との2部品のみで構成でき、更に部品点数を削減することができる。
【0018】
請求項4のレジスタでは、第1回転ダンパと第2回転ダンパの位相のずれは約60°である。よって、第1絞り部と第2絞り部は、その断面を、円弧中心点を通り通風方向と略直交する直線上に中心を有する中心角約60°の円弧状となるように形成できる。よって各絞り部の絞り形状により通風路が狭まるのを最小限に抑えることができ、第1開口部及び第2開口部から吹き出される風圧が弱まることを防ぐことができる。また、例えば間接送風モードから直接送風モード、直接送風モードから全シャットモードというようにモード間で回動軸を回動させる角度を同じ約60°とできるので、ユーザは各モードの切換え操作をよりスムーズに行うことができる。
【0019】
また、請求項5のレジスタは、その長手方向が前記通風ダクトの通風方向に沿うように配設される。ここで、通常、レジスタにおいて通風ダクトからの空気が流入する吸入口はレジスタの後方向(この場合では通風ダクトの通風方向と交差する方向)に開口することが多い。しかし、請求項5のレジスタでは、第1流路の第1吸入口も第2流路の第2吸入口も、通風ダクト内において通風方向と対向する方向に開口する。よって第1、第2吸入口は、レジスタの長手方向の長さと関係なくコンパクトに設計できる。すなわち第1、第2吸入口にそれぞれ形成される第1、第2絞り部もコンパクトに製造できることとなる。また、通風ダクトの通風方向と対向する方向に開口する第1、第2吸入口に第1、第2絞り部を形成できるから第1開口部及び第2開口部から吹き出される風も通風ダクトの風速がより直接伝わった大きな風速のものとなる。
【0020】
また、請求項6のレジスタは、第1絞り部及び第2絞り部は2つの分離体が接続して形成されると共に、当該2つの分離体に分かれて形成されて2つの分離体が接続すると回転軸を軸支する支持孔を有する。よって本発明のレジスタを金型成型により製造する場合は、2つの分離体と各回転ダンパが設けられる回転軸とに分けて成型することにより、より容易にレジスタを成型できる。
【0021】
また、請求項7のレジスタは、操作部材は所定のダイヤル軸に回動可能に軸支され、レジスタの前面部にダイヤル軸の端部に当接してダイヤルの抜けを防ぐ支持部材を有する。よって支持部材によりダイヤルがダイヤル軸から外れるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態のレジスタの正面図である。
【図2】本実施形態のレジスタの分解斜視図である。
【図3】図2で円Cに囲まれる部分を拡大した図である。
【図4】本実施形態のレジスタを右方向から見た斜視図である。
【図5】間接送風モードにおける図1のB−B断面図である。
【図6】間接送風モードにおける図1のA−A断面図である。
【図7】間接送風モードにおけるレジスタからの送風を説明する模式図である。
【図8】全シャットモードにおけるレジスタを図1のB−Bの位置で切断した断面図である。
【図9】全シャットモードにおけるレジスタを図1のA−Aの位置で切断した断面図である。
【図10】全シャットモードにおけるレジスタからの送風を説明する模式図である。
【図11】直接送風モードにおけるレジスタを図1のB−Bの位置で切断した断面図である。
【図12】直接送風モードにおけるレジスタを図1のA−Aの位置で切断した断面図である。
【図13】直接送風モードにおけるレジスタからの送風を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るレジスタについて、具体化した実施形態に基づいて図1乃至図13を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態のレジスタ1の方向を説明する際には、図1の上下方向をレジスタ1の上下方向、図1の左右方向をレジスタ1の左右方向、図1の手前を前方向、後側を後方向とする。
【0024】
始めに図1〜図4に基づきレジスタ1の概観について説明する。
図1〜図2に示すように、レジスタ1は、レジスタ1の前面を構成するベゼル20と、ベゼル20の第1開口部2の内側に回動可能に軸支されるバレル30と、ベゼル20に接続されてバレル30を収納するリテーナ24と、を有する。
【0025】
図1に示すように、ベゼル20の前面を構成する略板状の前面部21には、略中央部分に横長の略長方形状の第1開口部2が開口する。なお図1ではバレル30に回動可能に軸支される複数のフィン40により第1開口部2が閉塞されている。この複数のフィン40は中央の1枚に形成されるフィンノブ44を乗員が操作することにより連動して回動し、第1開口部2を開閉する。また、図1には複数のフィン44の右隣にバレルノブ45が見られるが、このバレルノブ45は乗員の操作によりバレル30を上下方向に回動させて第1開口部2からの送風方向を上下に変動させるものである。
【0026】
図2に一部示すように、ベゼル20は前面部21から後方に突出する左壁部27、右壁部28を有するが、これらは第1開口部2の左右の外縁を形成する。また、第1開口部2は下壁部29によりその下側の外縁が形成されると共に、上壁部31(図5等参照)によりその上側の外縁が形成されている。左壁部27、右壁部28、下壁部29、上壁部31はいずれも略板状の前面部21と略直交するように形成されるため、バレル30が上下に変動せずに図1のような通常状態にあり、複数のフィン40が第1開口部2を全開している場合は、第1開口部2からは前面部21と略直交するレジスタ1の前方向の風が吹き出される。
なお、ベゼル20とリテーナ24が接続されるときには、この左壁部27と右壁部28がそれぞれリテーナ24の左枠体22と接続する(図5等参照)と共に、上壁部31は左枠体22の上側内壁85Aと接続する(図5等参照)。また下壁部29は左枠体22の下側内壁86Aと接続する(不図示)。
【0027】
また図1等に示すようにベゼル20の前面部21において、第1開口部2の上方には第2開口部3Aが、第1開口部2の下方には第2開口部3Bがそれぞれ細長い長方形状に形成されている。第2開口部3A、3Bの長手方向は第2開口部2の長手方向と略平行であり、第2開口部3A、3Bの長手方向の長さは第1開口部2の長手方向の長さと略同等である。
図4のように、第2開口部3Aの上端部には、第2開口部3Aからの送風をレジスタ1の前方に対し斜め上方に向ける反り板12が形成されると共に、第2開口部3Bの下端部には、第2開口部3Bからの送風をレジスタ1の前方に対し斜め下方に向ける反り板13が形成され、第2開口部3Aからの送風がレジスタ1の前方に対し斜め上方を向くと共に第2開口部3Bからの送風がレジスタ1の前方に対し斜め下方を向くように構成されている。
なお、ベゼル20とリテーナ24が接続される際には、リテーナ24の左枠体22に形成される上反り部83(図2参照)の前面部が第2開口部3Aの反り板12(図4参照)の後面部に嵌合すると共に、左枠体22の下反り部84(図2参照)の第2開口部3Bの反り板13(図4参照)の後面部に嵌合する。
【0028】
なお図1のようにベゼル20の前面部21には後述する操作孔25が開いており、後述するダイヤル50の円弧部51が後方から回動可能に挿入される。そして操作穴25の直ぐ下方には水平な表面を有する支持板26が形成され、後述のダイヤル軸95の下端を支持する。
【0029】
また図2のように、ベゼル21には、上述した左壁部27と右壁部28にそれぞれ形成される一対のバレル支持孔15(右側は不図示)が形成される。一対のバレル支持孔15にはバレル30の外枠体32において左右両側壁からそれぞれ外側に立設される一対のバレル回転軸33(左側は不図示)が嵌入されて、バレル30は第1開口部2の内側に回動可能に軸支されることになる。
【0030】
ここでバレル30は外枠体32のほかに、外枠体32の内側に嵌合される内枠体34、外枠体32の内側に配置される第1補助板70、第2補助板71、第1補助板70及び第2補助板71に回動可能に軸支される複数のフィン40を有する。
第1補助板70と第2補助板71はそれぞれ複数の孔70A、71Aを有しており、第1補助板70の孔70Aに複数のフィン40の上側回動軸41が挿入され、第2補助板71の孔71Aに複数のフィン40の下側回動軸41が挿入される。
また複数のフィン40は上側回動軸41と略同方向に突出する突起部42をそれぞれ有し、この突起部42が連結板43の複数の連結孔43にそれぞれ挿入されることにより、複数のフィン40が連動して回動可能となる。
【0031】
また、内枠体34には後方に、緩やかに湾曲する2枚の変流板34A、34B、34Cを有する。レジスタ1が通風ダクトD(図7等参照)に配設される際には、各変流板34A、34B、34Cの各先端部が通風ダクトDの通風方向上流を向く。よって、これらの変流板34A、34B、34Cは通風ダクトDからの通風を交差方向(すなわちレジスタ1の前方)へ円滑に曲げることができる。
【0032】
また図2及び図3のように、リテーナ24は、左枠体22と右枠体23とが嵌合することにより形成される。
図2等のように、左枠体22は、その外縁を構成する略平行な上壁88A、下壁89Aのほか右壁、左壁が一枚板により連続して形成される一方、その内部は、上側内壁85Aと下側内壁86Aにより上下方向に3つに区画されている。右枠体24も同様に内部を上側内壁85Bと下側内壁86Bにより上下方向に3つに区画される。なお、左枠体22において、上側内壁85Aと下側内壁86Aは上壁88A、下壁89Aと略平行に形成され、右枠体23も同様である。
【0033】
そして、左枠体22と右枠体23とが嵌り合うと、左枠体の上壁88A、上側内壁85A、下側内壁86B、下壁89Bがそれぞれ、右枠体23の上壁88B、上側内壁85B、下側内壁86B、下壁89Bと連続する。更に左枠体22とベゼル20とが接続されると、上述のようにべゼル20の反り板12に左枠体22の上壁に形成される上反り部83が接続し(不図示)、ベゼル20の上壁部31に上側内壁85Aが接続し(図5等参照)、ベゼル20の下壁部29に左枠体22の下側内壁86Aが接続し(不図示)、ベゼル20の反り板13に左枠体22の下壁に形成される下反り部84が接続し(不図示)、更にベゼル20の左壁部27に左枠体22の左壁が接続し(図5等参照)、ベゼル20の右壁部28が左枠体22の後述する吸入口部133の付け根部分に接続する(図5等参照)。
これにより、レジスタ1において第1開口部2から後述する第1吸入口130までの直接送風のための空気流路である第1流路80(図2、図6等参照)が形成される。同時に、第2開口部3Aから後述する第2吸入口131までの間接送風のための空気流路である第2流路81(図2、図5参照)、第2開口部3Bから後述する第2吸入口132までの間接送風のための空気流路である第2流路82(図2参照)が形成される。なお、第2流路82については図5、図6のような断面図では表していないが、図5に示す第2流路81とほぼ同様の形状をしている。
【0034】
続いて図2、図3に基づいて本実施形態の絞り部やダンパ、ダイヤルの構成について説明する。図3は図2の一部拡大図である。
図2〜図4のようにレジスタ1では、通風ダクトDから送風される空気が流入する吸入口部133がレジスタ1の右横部分に形成され、その開口方向は図1の右方向である。レジスタ1が、その長手方向が車両ルーフサイド部RSの通風ダクトDの通風方向に沿うように配設されると、リテーナ22の後部が通風ダクトDの開口部に嵌入される。すると吸入口部133は通風ダクトD内部において通風ダクトDの通風方向に対向する方向に開口することになる(図7等参照)。
【0035】
図2、図3のように、この吸入口部133は左枠体22と右枠体23とが嵌合することにより形成され、円筒がその中心線に平行な2つの面で切断され、その略長方形の切断端部が外側に突出したような外形をしている。
そして吸入口部133はその内部において、上述した上側内壁85A・85B及び下側内壁86A・86Bにより第1流路80の一部である第1吸入口130(図3、図6等参照)と、第2流路81の一部である第2吸入口131(図2、図5等参照)と、第2流路82の一部である第2吸入口132に区画される。
【0036】
また図3のように、吸入口部133の上壁88A・88Bと下壁89A・89B及び上側内壁85A・85Bと下側内壁86A・86B、下壁89A・89Bには、上述の円筒の中心線が通る箇所にダンパ部120の回転軸200を回転可能に軸支するための支持孔96が形成されている。図3等のように吸入口部133を構成する各壁は、外枠体22と内枠体23とを嵌合させる断差部を一部に設けつつ、左枠体22と右枠体23の分かれ目(例えば上壁88Aと88Bの分かれ目)が支持孔96を二分するように形成されている。よって外枠体22と内枠体23が嵌合すると、左枠体22と右枠体23に分かれて各壁に形成される支持孔96にダンパ部120の回動軸200が入れ込まれて、回転軸200は支持孔96に軸支される。
【0037】
また、上述した吸入口部133の外形により、第1吸入口130及び第2吸入口131、第2吸入口132を回転軸200と略直交する断面で切断するとほぼ同形状となる。具体的には、回転軸200を中心とする所定半径の円を通風ダクトの通風方向と略直交する2つの平行線で切断し2つの平行線の内側の2つの円弧の各端部から、通風ダクトの通風方向と略平行な外側方向にそれぞれ直線を延出させた形状である。すなわち、第1吸入口130、第2吸入口131、132は、いずれも、この略同一形状の断面が回転軸200と平行方向に連続して形成されるものである。
また、回転軸200を中心とする各円弧の中心角は約60°であり、各円弧の両端は、支持孔96を通り通風ダクトDの通風方向と略直交する直線に対して対称な位置にある。よって、1の円弧の両端からそれぞれ延出される直線は一直線上になる。
以下、第1吸入口130及び第2吸入口131、132において回転軸200と略直交する断面が円弧状となる部分をそれぞれ第1絞り部90及び第2絞り部91、92と呼ぶ(図5、6等参照)。
【0038】
また、右枠体23における吸入口部133の前側面下端部からは前方に突起する突起部98が設けられ、この突起部98から下方に、後述するダイヤル50の軸孔53が回動可能に嵌合するダイヤル軸95が突出する。また左枠体22における吸入口部133の下壁から下方に左ストッパ93が突出すると共に、右枠体23における吸入口部133の下壁から下方には右ストッパ94が突出する。左ストッパ93と右ストッパ94とは、左枠体22と右枠体23とが嵌合すると、ダイヤル軸95に対して略対称に位置することとなり、ダイヤル50が回動しすぎるのを左右から規制するものである(図4参照)。
なお、レジスタ1を組み立てると、ダイヤル軸95、左ストッパ93、右ストッパ94の突出方向はいずれも回転軸200と略平行となる。
【0039】
次に図3及び図4に基づいてダンパ部120について説明する。ダンパ部120は、回転軸200と、回転軸200と一体に形成される第1回転ダンパ100、第2回転ダンパ101A・101B及び回転板102のほか、回転板102から下方に立設されるリンク軸103、リンク軸103の下端に設けられる下ストッパ104により構成されている。
各回転ダンパ100、101A、101Bは、いずれも横幅が上述した第1、第2絞り部90、91、92の断面に係る円弧の直径と略等しい長方形の板状をしている。また各回転ダンパ100、101A、101Bは、各々を横幅方向に二分する中心線を回転軸200が通るように回転軸200に設けられる。よって第1回転ダンパ100と第2回転ダンパ101A、101Bは、先端から回転軸200までの距離が略等しい。
また第2回転ダンパ101A、101Bは同方向を向くように回転軸200に設けられるが、第1回転ダンパ100は第2回転ダンパ101A、101Bに対して平面視時計回りに約60°位相をずらして設けられる。
【0040】
また、第1回転ダンパ100の高さは第1絞り部90の高さ(上側内壁85Aと下側内壁86Aとの距離)と略等しく、第2回転ダンパ101Aの高さ、第2回転ダンパ101Bの高さ、第2絞り部91の高さ(上壁88Aと上側内壁85Aとの距離)及び第2絞り部92の高さ(下壁89Aと下側内壁85Bとの距離)はいずれも略等しい。各回転ダンパ100、101A、101Bは第2吸入口131、第1吸入口130、第2吸入口132にそれぞれ対応する位置に、上から第2回転ダンパ101A、第1回転ダンパ100、第2回転ダンパ101Bの順で回転軸200に設けられる。
【0041】
また回転軸200の下端部は、回転軸200と略直交する回転板102の端部上面と一体に形成されている。そして回転板102における回転軸200と連続する端部とは反対側の端部の下面からはリンク軸103が回転軸200と略平行な下方に突出する。リンク軸103は後述のダイヤル50の二股部52に挟まれる。また、リンク軸103の下端には厚板状の下ストッパ104が一体に形成されて、リンク軸103から後述するダイヤル50の抜けを防止する。
【0042】
また、本実施形態のダイヤル50は、吸入口部133のダイヤル軸95に嵌合する軸孔53と、軸孔53の外縁の一部に沿うように設けられると共に、上述のように前面部21の操作孔25に後方から挿入される円弧部51と、円弧部51の略中央部から突出して乗員に操作されるダイヤルノブ51Aと、上述のようにダンパ部120のリンク軸103を挟んでリンク軸103と係合する二股部52とを有する。
【0043】
そして左枠体22と右枠体23とをダンパ部120の回転軸200を挟むように嵌合させると、図4のように、回転軸200の各部分、すなわち第2回転ダンパ101Aより上の上端部分、第2回転ダンパ101Aと第1回転ダンパ100との間の部分、第1回転ダンパ100と第2回転ダンパ101Bとの間の部分、第2回転ダンパ101Bと回転板102との間の部分が、それぞれ上壁88A・88B、上側内壁85A・85B、下側内壁86A・86B、下壁89A・89Bの各壁の支持孔96に回動可能に軸支される。
【0044】
そしてリンク軸103をダイヤル50の二股部52で挟み、吸入口部133に形成されるダイヤル軸95にダイヤル50の軸孔53を係合させ、前面部21の操作孔25にダイヤル50の円弧部51を後方から挿入してレジスタ1を組み立てると図4のようにダイヤル軸95の下端が、操作孔25の直ぐ下方に形成される支持板26の上面に当接して、ダイヤル50の軸孔53のダイヤル軸95からの外れが防止される。
そして、乗員が前面部21の前方に突出したダイヤルノブ51Aを左右方向に操作すると、軸孔53がダイヤル軸95周りに回動することによりダイヤル50の二股部52に挟まれるリンク軸103がダイヤルノブ51Aの操作方向と反対方向に回動する。これにより回転軸200が回転し、第1回転ダンパ100、第2回転ダンパ101A、101Bも回転することとなる。
【0045】
図4のように、ダイヤルノブ51Aを左右に回動させた場合に、ダイヤル50が右ストッパ94に当接して回動が規制されるとき、ダイヤルノブ51Aは最も左側に位置することになる。反対に、ダイヤル50は左ストッパ93に当接して回動が規制されるとき、ダイヤルノブ51Aは最も右側に位置することとなる。以下では左右ストッパ93、94に規制されるダイヤルノブ51Aの回動範囲をダイヤルノブ51Aの回動操作範囲と呼ぶ。
なお、ダイヤル50の軸孔93と二股部52との距離やリンク軸103と回転軸200との距離等は、ダイヤルノブ51Aを最も左位置から最も右位置まで回動させると、回動軸200が約120°回動するように設計されている。
【0046】
続いて図5〜図13に基づいて、上記レジスタ1の構成の作用について詳述する。図5、図8、図11はレジスタ1を図1のB−B線で切断した断面図であり、ダイヤルノブ51Aの各操作段階における第2回転ダンパ101Aの状態を示す。また、図6、図9、図12はレジスタ1を図1のA−A線で切断した断面図であり、ダイヤルノブ51Aの各操作段階における第1回転ダンパ100の状態を示す。また、図6、図10、図13はダイヤルノブ51Aの各操作段階におけるレジスタ1からの送風状態を示す。
なお、第2回転ダンパ101Bの状態を示す断面図は省略するが、第2回転ダンパ101Bは第1回転ダンパ101Aと大きさも略等しく略同方向を向くように設けられるため、第1回転ダンパ101Aと同様の作用をするものである。
【0047】
図5〜図7はダイヤルノブ51Aを最大限右側に回動させた状態を示す。
このとき、図5のように、第2吸入口131において第2回転ダンパ101Aは通風ダクトDの通風方向と略平行となり、絞り部91を全開している。よって通風ダクトDの空気は第2吸入口131から第2流路81に入り込む。一方、第1回転ダンパ100は第2回転ダンパ101Aに対して平面視時間回りに約60°位相をずらして回転軸200に設けられている。よって図6に示すように、第1吸入口130において、第1回転ダンパ100は通風ダクトDからの通風方向に対して略60°平面視時計回りに傾いた状態となり、第1回転ダンパ100の両端部は絞り部90において回転軸200を挟んで対向する左後端部と右前端部にそれぞれ対向して絞り部90を閉鎖する。よって通風ダクトDの空気は第2吸入口130から第1流路80にほとんど流入しない。
【0048】
図7には、上記のようにダイヤルノブ51Aを最大限右側に回動させたレジスタ1からの送風の様子を示す。上述のようにレジスタ1は車両のルーフサイド部RSに配管される通風ダクトDに、通風ダクトDの通風方向と略直交する方向であって乗員のいる斜め下方を向くように配設され、第1開口部2の開口方向は乗員方向に向かう。なお、本明細書でルーフサイド部とは、天井部においてルーフサイドレールが配設される左右側端部分を指す。
またレジスタ1の前方向に対して斜め上方向である第2開口部3Aの開口方向は天井部Rに沿う横方向となり、レジスタ1の前方向に対して斜め下方向である第2開口部3Bの開口方向は窓部Wに沿う斜め下方となる。これは図10、図13でも同様である。
【0049】
そして図7のように、ダイヤルノブ51Aが最も右側に位置させた図5及び図6の状態のレジスタ1からは、通風ダクトDの空気は第2流路81を通り第2開口部3Aから天井部Rに沿う横方向に吹き出されると共に、第2流路82を通り第2開口部3Bから車両の窓部Wに吹き出される。一方、第1開口部2からは、仮に複数のフィン40が第1開口部2を全開していたとしても送風はほとんど得られない。
以上より、ダイヤルノブ51Aが最も右に位置させたレジスタ1からは、乗員のいる前方に対して上方に反れて天井部Rを沿う横方向に吹き出される間接送風と、乗員のいる前方に対し下方に反れて窓部Wに沿う斜め下方向に吹き出される間接送風が得られるが、乗員のいる前方に向かう直接送風は得られない。
なお天井部Rを沿う横方向の間接送風は天井部Rを空調し、特に冷房時は車室内の温度分布を効果的に改善して車内を快適な状態に保つことができる。また、窓部Wを沿う斜め下方の間接送風は外部の温度が伝わり易い車窓部分を空調して、車室内の温度分布の偏りを効果的に改善して車内を快適な状態に保つことができる。
【0050】
次に、ダイヤルノブ51Aを上述した回動操作範囲の略中央位置に来るように、図5〜図7の状態からダイヤル50を回動操作する。すると、回動軸200が平面視時計回りに約60°回動して、図5〜図8の状態となる。
図5及び図8のように、第2吸入口131において通風ダクトDの通風方向と略平行状態だった第2回転ダンパ101Aは、この回動操作の間に約60°平面視時計回りに回動して、絞り部91に接近する。そしてダイヤルノブ51Aが略中央位置に来た図8の状態では、第2回転ダンパ101Aの両端部は、絞り部91の左後端部と右前端部にそれぞれ対向して絞り部91を閉鎖する。よって通風ダクトDの空気は第2吸入口131から第2流路81にほとんど流入しない。
また図6及び図9のように、第1吸入口130において、絞り部90の左後端部と右前端部に両端部が対向していた第1回転ダンパ100は、この回動操作の間、絞り部91の内周面に沿って約60°平面視時計回りに回動する。そしてダイヤルノブ51Aが略中央位置に来た図9の状態では、その両端部が絞り部90の右後端部と左前端部に対向して絞り部90を閉鎖することとなる。よって通風ダクトDの空気は第1吸入口130から第1流路80にほとんど流入しない。
【0051】
以上より、図10のように、ダイヤルノブ51Aを回動操作範囲の略中央位置に位置させた図8及び図9のレジスタ1からは、通風ダクトDの空気は第1流路80にも第2流路81、82にもほとんど流入しないので、第1開口部2からの送風も第2開口部3A、3Bからの送風もシャットでき、レジスタ1からの送風をほぼ完全にシャットできる。
【0052】
次に、ダイヤルノブ51Aが最大限左側の位置に来るように、図8〜図10の状態からダイヤル50を回動操作する。すると、ダイヤル50を介して回動軸200が平面視時計回りに更に約60°回動して、図11〜図13の状態となる。
図8及び図11のように、第2吸入口131において絞り部91の左後端部と右前端部にそれぞれ両端部が対向していた第2回転ダンパ101Aは、ダイヤル50の回動操作の間に約60°平面視時計回りに絞り部91の内周面に沿って回動する。よってダイヤルノブ51Aが最も左側の位置に来た図11の状態では、第2回転ダンパ101Aは、その両端部が絞り部91の右後端部と左前端部に対向して絞り部91を閉鎖する。よって通風ダクトDの空気は第2吸入口131から第2流路81にほとんど流入しない。
また図9及び図12のように、第1吸入口130において、その両端部が絞り部90の右後端部と左前端部に対向していた第1回転ダンパ100は、ダイヤル50の回動操作の間、平面視時計回りに約60°回動して第1絞り部90から離間する。そしてダイヤルノブ51Aが最大限左側の位置にある図12の状態では、第2回転ダンパ100は通風ダクトDの通風方向と略平行となり、絞り部90を全開することとなる。よって通風ダクトDの空気が第2吸入口130から第1流路80に流入する。
【0053】
以上より、図13のように、ダイヤルノブ51Aが最も左側に位置する図11及び図12の状態のレジスタ1からは、通風ダクトDの空気は第2流路81、82にほとんど流入しないが、第1流路80には流入する。よってこの状態のレジスタ1からは第2開口部3A、3Bからの間接送風がほぼシャットされる一方、第1開口部2から、レジスタ1前方の乗員に向かう直接送風が吹き出される。
【0054】
ここで回転板102、リンク軸103は請求項のリンク部材の一例である。またダイヤル50は請求項の操作部材の一例であり、左枠体22と右枠体23は請求項の分離体の一例である。また、支持板26は請求項の支持部材の一例である。
【0055】
以上詳細に説明した通り、本実施形態のレジスタ1は、直接送風の吹出口となる第1開口部2と、間接送風の吹出口となる第2開口部3A、3B、通風ダクトDと第1開口部2とを連通する第1流路80、通風ダクトDと第2開口部3A、3Bとを連通する第2流路81、82を有する。そして、第1流路80と第2流路81、82には回転軸200が回動可能に支持されると共に、それぞれ回転軸200を中心とした略円弧状の断面を有する第1絞り部90と第2絞り部91、92が形成される。回転軸200に設けられる第1回転ダンパ130は、回転軸200の回転により第1絞り部90を開閉可能であると共に、当該回転軸200に設けられる第2回転ダンパ101A、101Bは回転軸200の回転により第2絞り部91、92をそれぞれ開閉可能である。そしてダイヤル50を操作して回転軸200を回転させると、第1絞り部90が開放されると共に第2絞り部91、92が閉鎖される状態、第1絞り部90が閉鎖されると共に第2絞り部91、92が開放される状態、第1絞り部90と第2絞り部91、92が共に閉鎖される状態が現出されるので、第2開口部3A、3Bから間接送風が吹き出される間接送風モードと、第1開口部2から直接送風が吹き出される直接送風モードと、全シャットモードとの3モードが実現される。
以上、請求項1のレジスタでは、回転軸200に第1回転ダンパ100及び第2回転ダンパ101A、101Bを設けて第1回転ダンパ100の第1絞り部90を開閉する動作と第2回転ダンパの第2絞り部91、92を開閉する動作とを同軸回りの回動とすることにより、第1回転ダンパ100と第2回転ダンパ101A、101Bの動作の省スペースを図りながら上記の3モードを実現できる。またダイヤル50の操作と各回転ダンパ100、101A、101Bとを連動させる回転軸200を回転させれば第1絞り部90及び第2絞り部91、92をそれぞれ開閉できるから、ダイヤル50の操作を第1回転ダンパ100及び第2回転ダンパ101A、101Bの動作とを連動させる連動部材の動作の省スペースが図れることとなる。
更に、第1回転ダンパ100と第2回転ダンパ101A、101Bを連動部材の一つとも言える回転軸200に直接設けるから、各流路80、81、82を開閉させるための機構を簡単なものとして、機構を構成する部品点数を削減し、製造コストを軽減できる。
【0056】
またレジスタ1では、第2回転ダンパ101A、101Bは第1回転ダンパ100と位相をずらして設けられている。また第1回転ダンパ100と第2回転ダンパ101A、101Bは、先端から回転軸200までの距離が略等しく、第1絞り部90と第2絞り部91、92は一体に形成され、第1絞り部90の略円弧状の断面と第2絞り部91、92の略円弧状の断面はほぼ同一形状をしている。
すなわちレジスタ1では、第1回転ダンパ100と第2回転ダンパ101A、101Bの位相をずらすので、第1絞り部90の略円弧状の断面と第2絞り部91の略円弧状の断面を略同一形状としても、上記の3モードが実現可能となるものである。
以上、レジスタ1では、第1絞り部90と第2絞り部91、92を一体に形成するので、第1絞り部90と第2絞り部91、92をよりコンパクトに製造できて製造コストを削減できる。また第1絞り部90の略円弧状の断面と第2絞り部91、92の略円弧状の断面を略同一形状として第1絞り部90と第2絞り部91、92を単純な形状とできるので、更に製造コストを軽減できる。
【0057】
またレジスタ1では、第1回転ダンパ100と、第2回転ダンパ101A、101Bは回転軸200と一体に形成されると共に、ダイヤル50と回転軸200を連動させる回転板102及びリンク軸103が回転軸200と一体に形成される。よってレジスタ1では、各回転ダンパ100、101A、101Bとダイヤル500とを連動させる連動部材は、回転軸200と回転板102、リンク軸103とからなり、当該連動部材を全て各回転ダンパ100、101A、101Bと一体化できるので、各流路80、81、82を開閉するための開閉機構を、各回転ダンパ100、101A、101B、回転板102、リンク軸103と一体化された回転軸200と、ダイヤル50との2部品のみで構成でき、更に部品点数を削減することができる。
【0058】
またレジスタ1では、第1回転ダンパ100と第2回転ダンパ101A、101Bの位相のずれは約60°である。よって、第1絞り部90と第2絞り部91、92は、その断面を、円弧中心点(支持孔96)を通り通風方向と略直交する直線に対して略対称な両端を有する中心角約60°の円弧状となるように形成できる。よって各絞り部90、91、92の絞り形状により通風路が狭まるのを最小限に抑えることができ、第1開口部2及び第2開口部3A、3Bから吹き出される風圧が弱まることを防ぐことができる。また、例えば間接送風モードから直接送風モード、直接送風モードから全シャットモードというようにモード間で回動軸を回動させる角度を同じ約60°とできるので、ユーザは各モードの切換え操作をよりスムーズに行うことができる。
【0059】
また、レジスタ1は、その長手方向が通風ダクトDの通風方向に沿うように配設される。ここで、通常、レジスタにおいて通風ダクトからの空気が流入する吸入口はレジスタの後方向(この場合では通風ダクトの通風方向と交差する方向)に開口することが多い。しかし、本実施形態のレジスタ1では、第1流路80の第1吸入口130も第2流路81、82の第2吸入口131、132も、通風ダクトD内において通風方向と対向する方向に開口する。よって第1吸入口130と第2吸入口131、132は、レジスタ1の長手方向の長さと関係なくコンパクトに設計できる。すなわち各吸入口130、131、132にそれぞれ形成される各絞り部90、91、92もコンパクトに製造できることとなる。また、通風ダクトDの通風方向と対向する方向に開口する各吸入口130、131、132に各絞り部90、91、92を形成できるから第1開口部2及び第2開口部3A、3Bから吹き出される風も通風ダクトDの風速がより直接伝わった大きな風速のものとなる。
【0060】
また、レジスタ1は、第1絞り部90及び第2絞り部91、92は左枠体22と右枠体23が接続して形成されると共に、当該左枠体22と右枠体23に分かれて形成されて左枠体22と右枠体23が接続すると回転軸200を軸支する支持孔96を有する。よってレジスタ1を金型成型により製造する場合は、左枠体22と右枠体23と各回転ダンパ100、101A、101Bが設けられる回転軸200とに分けて成型することにより容易にレジスタ1を成型できる。
【0061】
またレジスタ1は、ダイヤル50がダイヤル軸95に回動可能に軸支され、レジスタ1の前面部21にダイヤル軸95の端部に当接してダイヤル50の抜けを防ぐ支持板26を有する。よってダイヤル50がダイヤル軸95から外れるのを防止できる。
【0062】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
たとえば、実施形態では、レジスタをルーフサイド部に配設したが、別の個所でも構わない。また第2回転ダンパは一枚でもよく、その場合は、第2吸入口や第2絞り部も一つとなる。また、回転軸を回転させる操作部材は実施形態のような二股部を有するダイヤルである必要は無く、回転軸を回転させる機能を有するものであればよい。
また第1絞り部と第2絞り部を略同一形状とはせずに、例えば第1絞り部と第2絞り部を、位相をずらすように形成すれば、第1回転ダンパと第2回転ダンパの位相をずらす必要はない。しかしその場合は第1吸入口と第2吸入口の開口方向がずれてしまう等、第1絞り部と第2絞り部の構造が複雑になる。
同様に、第1回転ダンパと第2回転ダンパの回転軸から先端までの長さは異なっても良いが、この場合も第1絞り部と第2絞り部の構造が複雑となる。
【0063】
また、第1絞り部と第2絞り部とを断面略同一形状として第1回転ダンパと第2回転ダンパとの回転軸から先端までの長さが略等しい場合であっても、第1回転ダンパと第2回転ダンパの位相のずれは約60°でなくてもよい。
例えば第1回転ダンパと第2回転ダンパとの位相のずれが約60°未満とする。例えば約45°の場合、各絞り部の断面形状を、中心点(支持孔)を通って通風方向と略直交する直線に中心を有する2つの円弧(中心角約90°)とすれば、回転軸を約45°ずつ回動させて上記の3モードが実現できる。しかしこのように第1回転ダンパと第2回転ダンパの位相のずれが約60°未満の場合は、位相のずれが約60°の場合に対して、絞り部の絞りにより通風路が狭くなってしまう。
また、例えば第1回転ダンパと第2回転ダンパとの位相のずれが約60°〜約90°とする。すると、例えば約90°とした場合は、全シャットモードを実現するために、絞り部断面の円弧の中心角を約90°とするか、円弧間の角度を約90°とするかしなければならず、これにより位相のずれを約60°とする場合に比べて通風路が狭くなったり、モード間で回動軸を回動させる回動角度が変わってしまう。
仮に、第1回転ダンパが第2回転ダンパに対して約90°位相がずれており、各絞り部断面は、中心点(支持孔)を通って通風方向と略直交する直線に中心を有する円弧(中心角約90°)だったとする。この場合、例えば、間接送風モードから直接送風モードまでの回転軸の回動角度は約90°となる一方、直接送風モードから全シャットモードまでの回転軸の回転角度は約45°となるというように、モード間において回動軸の回動角度が異なることになる。
【符号の説明】
【0064】
1 レジスタ
2 第1開口部
3A、3B 第2開口部
22 左枠体
23 右枠体
26 支持板
50 ダイヤル
51A ダイヤルノブ
53 軸孔
80 第1流路
81、82 第2流路
90 第1絞り部
91、92 第2絞り部
95 ダイヤル軸
100 第1回転ダンパ
101A、101B 第2回転ダンパ
102 回転板
103 リンク軸
120 ダンパ部
130 第1吸入口
131 第2吸入口
133 吸入口部
200 回転軸
D 通風ダクト
R 天井部
RS ルーフサイド部
W 窓部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風ダクトに配設されて通風ダクトからの通風を乗員に向かって吹き出す直接送風及び乗員に直接当たらないように吹き出す間接送風のいずれも可能な車室空調用のレジスタにおいて、
前記直接送風の吹出口となる第1開口部と、
前記間接送風の吹出口となる第2開口部と、
前記第1開口部と前記通風ダクトとを連通する第1流路と、
前記第2開口部と前記通風ダクトとを連通する第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とに回転可能に支持される回転軸と、
前記第1流路に形成されて、前記回転軸を中心とした略円弧状の断面を有する第1絞り部と、
前記第2流路に形成されて前記回転軸を中心とした略円弧状の断面を有する第2絞り部と、
前記回転軸に設けられて回転軸の回転により前記第1絞り部を開閉可能な第1回転ダンパと、
前記回転軸に設けられて回転軸の回転により前記第2絞り部を開閉可能な第2回転ダンパと、
前記回転軸を回転させる操作部材と、を有し、
前記操作部材を操作することにより、前記第1回転ダンパが前記第1絞り部を開放すると共に前記第2回転ダンパが前記第2絞り部を閉鎖する状態と、第1回転ダンパが第1絞り部を閉鎖すると共に第2回転ダンパが第2絞り部を開放する状態と、第1回転ダンパが第1絞り部を閉鎖すると共に第2回転ダンパが第2絞り部を閉鎖する状態とを現出することを特徴とするレジスタ。
【請求項2】
前記第1回転ダンパは前記第2回転ダンパと位相をずらすように前記回転軸に形成されると共に第1回転ダンパと第2回転ダンパは、先端から回転軸までの距離が略等しく、
前記第1絞り部と前記第2絞り部は一体に形成され、第1絞り部の略円弧状の断面と前記第2絞り部の略円弧状の断面は、ほぼ同一形状であることを特徴とする請求項1に記載のレジスタ。
【請求項3】
前記第1回転ダンパと、前記第2回転ダンパは前記回転軸と一体に形成されると共に、前記操作部材と前記回転軸を連動させるリンク部材が前記回転軸と一体に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレジスタ。
【請求項4】
前記第1回転ダンパと前記第2回転ダンパの位相のずれは約60°であることを特徴とする請求項2に記載のレジスタ。
【請求項5】
前記レジスタは、その長手方向が前記通風ダクトの通風方向に沿うように配設され、
前記第1流路は、前記通風ダクト内において通風ダクトの通風方向と対向する方向に開口する第1吸入口を有し、
前記第2流路は、前記通風ダクト内において通風ダクトの通風方向と対向する方向に開口する第3吸入口を有し、
前記第1絞り部は前記第1吸入口に、前記第2絞り部は前記第2吸入口にそれぞれ形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のレジスタ。
【請求項6】
前記第1絞り部及び第2絞り部は2つの分離体が接続して形成されると共に、当該2つの分離体に分かれて形成されて2つの分離体が接続すると前記回転軸を軸支する支持孔を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のレジスタ。
【請求項7】
前記操作部材は所定のダイヤル軸に回動可能に支持されるダイヤルであって、
前記レジスタの前面部に前記ダイヤル軸の端部に当接して前記ダイヤルの抜けを防ぐ支持部材を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のレジスタ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−218993(P2011−218993A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91359(P2010−91359)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(308016242)豊和化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】