説明

レジスト密着強度評価パターン付きウエハ及びレジスト密着強度試験方法

【課題】 貫通穴を形成するためにシリコン表面に塗布されたレジスト密着強度を、パターンニング後でかつエッチング処理前に、精度良く測定できるレジスト密着強度評価パターン付きウエハ及びレジスト密着強度試験方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 ウエハ面内にレジスト密着強度を評価するレジスト密着強度評価パターン105を予め形成し、レジスト密着強度評価パターン105の外周部に、周囲のレジストと切り離すための隔離部106を設けて、レジスト密着強度評価パターン105を孤立パターンとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ同士を積層し各半導体チップ間を配線接続する三次元実装技術において、レジストの密着強度評価試験に用いられるレジスト密着強度評価パターン付きウエハ及びレジスト密着強度試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型及び多機能化に伴い、電子機器の内部に設けられる半導体チップ等の各種電子部品の小型化が図られており、更にその電子部品を実装するスペースも極めて制限されてきている。今後、更に小型化及び多機能化が求められる中、半導体チップの実装密度を一段と高める必要が出てきている。かかる背景の下、三次元実装技術が考案されてきた。三次元実装技術は、半導体チップ同士を積層し各半導体チップ間を配線接続することで、半導体の高密度実装を図る技術である。
【0003】
三次元実装技術で用いられる半導体チップ又は半導体チップと基板とを繋ぐシリコンインターポーザとして、その表面と裏面とを貫通する貫通穴を有する電極構造を備えているものがある。この電極構造では、貫通穴内に形成された導電部材を介して、その表面と裏面とに形成された接続端子及び電極パッド部が、電気的に接続されている。そして、このような電極構造を有する半導体チップ又はシリコンインターポーザを積層すると、半導体チップの裏面に形成された接続端子又は電極パッド部が、他の半導体チップの表面に形成された接続端子又は電極パッド部と接続されることになる。このような積層により、各半導体チップ間又は基板間で、配線接続が行われる。
【0004】
シリコンインターポーザの貫通穴は、シリコン表面にレジスト材を塗布し、リソグラフィー技術を用いてレジストをパターンニングした後、エッチングにより貫通穴のシリコンを除去して形成する。
【0005】
貫通穴の加工としては低コスト化が求められるようになってきている。また、環境に配慮した危険なガスを用いない加工が求められており、加工条件として、シリコンのエッチングレートに対するレジストのエッチングレート比(レジスト選択比)を低くすると共に、レジストの膜厚を厚くする必要がある。こうした加工条件の中で、レジストの密着強度を確保し、エッチング中のレジスト剥がれによるエッチング不良を減少させることが求められてきている。
【0006】
レジストの密着強度は、塗布する下地材料とその表面状態とに左右されるため、精度良く評価し、過酷なエッチング条件に耐えうるレジスト材料を選定することが求められている。
【0007】
レジストを含む薄膜の密着強度を評価する方法としては、スコッチテープ法、スタッドプル法、スクラッチ試験法、mELT(modified Edge Liftoff Test)法、ナノインテンダー法、及び、4点曲げ法などが広く知られている。
【0008】
スタッドプル法を改良し、精度良く密着強度を測定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。図6に特許文献1に示す垂直引張型密着強度試験機を示す。以下、特許文献1に示す垂直引張型密着強度試験機での密着強度試験方法について説明する。図6に示すように、まず、試料602の表面に垂直にスタッド603を固定する。そして、このスタッド603を、試料固定板604の試料固定位置に設けた穴605を通して、一定荷重でクランプする。それと共に、スタッド603に対し、試料602の表面と垂直な方向の応力をコレット601で加える。
【0009】
そして、スタッド603と試料602との垂直の関係を維持して、接着剤(図示せず)にて取り付け、滑りを生じることなくスタッド603をコレット601でクランプする。このクランプによって密着強度を試験することで、再現性が高いスタッドプル法による密着強度試験を行なうことを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−256651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のスタッドプル法、又は、スコッチテープ法、スクラッチ試験法、mELT法、ナノインテンダー法、及び、4点曲げ法(以下、まとめて従来の試験方法と称す)は、それぞれ、試料を用いた破壊試験が中心である。実際の貫通穴を形成するためのレジストの密着強度は、下地材料とその表面状態などの前工程のばらつきによって左右される。そのため、従来の試験方法では、シリコン表面にレジストを塗布し、パターンニング後、エッチング処理前に密着強度をウエハ毎に精度良く測定する必要がある。
【0012】
また、シリコン表面に塗布されたレジストの密着強度をスタッドプル法で測定する場合、レジストと下地材料との密着強度の測定時に、膜を破断する強度が測定値として付加され、密着強度を精度良く測定できない。この対策として、レジストにスタッド先端と同じ形状を予めパターンニングして孤立パターンを形成し、膜を破断強度の影響の無い孤立パターン部の密着強度を測定する方法もある。しかしながら、この方法では、次工程のエッチング工程で貫通穴部を形成する際、孤立パターン周囲のシリコンも除去するため、孤立パターンがシリコンごと脱落するという課題があった。
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、貫通穴を形成するために下地材料表面に塗布されたレジスト密着強度を、パターンニング後でかつエッチング処理前に、精度良く測定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。
【0015】
本発明の一つの態様によれば、下地材料と、
前記下地材料上に形成されたレジストと、を備え、
前記レジストには、レジスト密着強度を評価するレジスト密着強度評価パターンが形成され、
前記レジスト密着強度評価パターンは、その周囲に設けられた隔離部により周囲のレジストと切り離されたパターンであることを特徴とするレジスト密着強度評価パターン付きウエハを提供する。
【0016】
本発明の別の態様によれば、本発明の前記態様に記載のレジスト密着強度評価パターン付きウエハの前記レジスト密着強度評価パターンを吸着可能な吸着装置を先端に備えたレジスト密着強度評価ヘッドと、前記レジスト密着強度評価ヘッドを昇降させる昇降機構と、
前記レジスト密着強度評価ヘッドの荷重を検出するロードセルと、を用いて、
前記レジスト密着強度評価ヘッドを下降し、
前記レジスト密着強度評価ヘッドの前記吸着装置で前記レジスト密着強度評価パターンを吸着し、
前記ロードセルで荷重を検出しながら前記レジスト密着強度評価ヘッドを上昇させて、密着強度試験を行うことを特徴とする、
レジスト密着強度評価パターン付きウエハの密着強度試験方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明は、貫通穴を形成するために下地材料表面に塗布されたレジスト密着強度を、レジスト塗布後、パターンニング後でかつエッチング処理前に、精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態におけるレジスト密着強度評価パターン付きウエハを示す斜視図
【図2】本発明の第1実施形態におけるレジスト密着強度評価パターン付きウエハを示す断面図
【図3】本発明の第1実施形態におけるウエハのレジスト密着強度試験方法を示す断面図
【図4】本発明の第1実施形態におけるレジスト密着強度評価用ウエハのエッチング後の断面図
【図5】本発明の第2実施形態におけるレジスト密着強度評価パターン付きウエハを示す平面図
【図6】従来の垂直引張型密着強度試験機を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面においては、同じ部品については同じ参照符号を付して説明を省略している。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態におけるレジスト密着強度評価パターン付きウエハを示す斜視図である。図1において、101はレジストである。105は、シリコンウエハ102の表面に塗布された後、リソグラフィー技術を用いてパターンニングしたレジスト密着強度評価パターンである。103はチップエリアである。チップエリア103には、シリコンインターポーザの貫通穴をプラズマエッチングするための図柄(図示せず)がパターンニングされている。一例として、一つのチップエリア103には、直径が50μmから100μmの円が複数個パターンニングされている。チップエリア103の外側には、後工程でチップを分割するためのスクライブライン104が設けられている。105はレジスト密着強度評価パターンである。レジスト密着強度評価パターン105には、その周囲に、レジスト密着強度評価パターン105の周囲のレジスト101(チップエリア103内のレジスト)と切り離すための隔離部106が設けられている。隔離部106は、例えば、レジスト101に形成された溝で形成されている。すなわち、第1実施形態では、レジスト密着強度評価パターン105を、隔離部106でレジスト密着強度評価パターン105の周囲のレジストと予め切り離している。このように周囲のレジストと予め切り離すことによって、レジスト101の密着強度を測定する際に、隔離部106とレジスト密着強度評価パターン105の周囲のレジストとの膜を破断する強度が付加されることがない。このため、精度良くレジスト101の密着強度測定が可能となる。
【0021】
第1実施形態では、レジスト密着強度評価パターン105の領域をできる限り小さくするため、レジスト密着強度評価パターン105として円形状パターンを用いている。さらに、第1実施形態では、測定精度を上げるため、直径10mmのレジスト密着強度評価パターン105を、図1の105a、105b、105c、105dの4箇所に設けている。よって、隔離部106も、4個のレジスト密着強度評価パターン105a、105b、105c、105dの周囲にそれぞれ円形リング状に106a、106b、106c、106dとして形成されている。107は、シリコンウエハ102の裏面に接着剤108で貼り付けられた補強ガラスである。この第1実施形態では、4個のレジスト密着強度評価パターン105a、105b、105c、105dは、シリコンウエハ102の表面に、シリコンウエハ102の表面の中心に対して大略90°間隔離れて配置されているが、これは一例であって、これに限られるものではない。
【0022】
図2は、図1のA−A’断面を矢印B方向から見た断面拡大図である。図2は、レジスト101がシリコンウエハ102の表面に塗布された後、リソグラフィー技術を用いてパターンニングされている状態を示している。レジスト101は、一例として、感光剤を含有したノボラック系樹脂で構成されている。レジスト101の塗布厚みCは、エッチングする下地材料の一例としてのシリコンのエッチングレートEに対するレジスト101のエッチングレートEの比(レジスト選択比)によって決まる。第1実施形態では、一例として、厚みD=200μmのシリコンウエハ102に対してフッ素系ガスを用いたプラズマエッチングを行い、このプラズマエッチングにより、レジスト選択比E/E=10となる条件で貫通穴を形成している。そして、以下の(式1)から、レジスト101の厚みは20μmとなる。第1実施形態では、シリコンウエハ102の厚みD=200μmをエッチングしても、レジスト101がシリコンウエハ102の表面に残るように塗布するため、レジスト101の厚みは、(式1)から算出したレジスト101の厚み20μmよりも10%増しの22μmとしている。
【0023】
【数1】

【0024】
円形のレジスト密着強度評価パターン105aの外周部には、レジスト密着強度評価パターン105aの周囲のレジスト(チップエリア103のレジスト)と切り離すため、隔離部106aを設けている。この隔離部106aは、レジスト101を厚み方向に貫通すると共に、シリコンウエハ102を厚み方向に貫通しない、円環状の溝として設けられている。この隔離部106aにより、レジスト密着強度評価パターン105aを孤立パターンにしている。隔離部106aの幅Fは、シリコンウエハ102をエッチングしたときに、エッチング深さがシリコンウエハ102の厚みの1/2に達しないように設定している。エッチング深さがシリコンウエハ102の厚みの1/2以下であれば、後工程のシリコンウエハ搬送時などでシリコンウエハ102に外力がかかっても、クラック等がシリコンウエハ102裏面にまで達することがなく、レジスト密着強度評価パターン105が脱落することはない。隔離部106の幅Fの設定方法は、レジスト101の塗布厚みをCとし、シリコンのエッチングレートをEとし、レジスト101のエッチングレートをEとし、シリコンのエッチング角度をθとして、以下の(式2)に基づいて決める。
【0025】
【数2】

【0026】
第1実施形態では、隔離部106の幅Fを(式2)に基づいて、レジスト膜厚C=20μm、E/E(レジスト選択比)=10、エッチング角度θ=89.7°として算出し、幅F=1μmとしている。
【0027】
エッチング角度θは、エッチング処理条件(ガス配合比、圧力、及び、電力パワー等)によって決まる。このため、テストエッチングしたシリコンウエハを割断し、その断面を走査式電子顕微鏡により観察して、エッチング角度θを予め求めておく。
【0028】
図2において、201はレジスト101に形成された円形の貫通穴である。ウエハ中心部のチップエリア103にシリコンインターポーザの貫通穴をプラズマエッチングするために、直径50μmのレジスト101がパターンニングされている。プラズマエッチングの特性上、シリコンウエハ102の外縁部分ではエッチングレートが低下するため、シリコンウエハ102のウエハエッジ202の周辺部までチップエリア103を設けることができない。
【0029】
レジスト101はスピンコート法によって塗布しているため、レジスト101の粘性から、下地材料の外縁の一例であるウエハエッジ202から10mm以内の外縁部分で、レジスト膜厚C’が厚くなる。本第1実施形態では、あえて、レジスト密着強度評価パターン105aをウエハエッジ202の周辺(シリコンウエハ102の外縁部分)に設け、隔離部106aのエッチング深さを浅くし、レジスト密着強度評価パターン105の脱落を防止している。
【0030】
ここで、レジスト密着強度評価パターン105aの膜厚もウエハエッジ202側で厚くなっているが、レジスト密着強度評価パターン105aは、隔離部106aによって、レジスト密着強度評価パターン105aの周囲のレジストと切り離された孤立パターンとなっている。このため、第1実施形態のように構成したレジスト密着強度評価パターン105aにのみ垂直方向(図3の矢印Gの方向)の剥離荷重をかけることで、レジスト101の厚みムラの影響を受けることなく、レジスト101の密着強度(以下、レジスト密着強度と称す)を測定することができる。
【0031】
図3に、レジスト密着強度評価パターン付きウエハの密着強度試験方法を示す。図3において、レジスト密着強度評価パターン105aは、シリコンウエハ102の表面にレジスト101が塗布された後、リソグラフィー技術を用いてレジスト101をパターンニングして形成されている。レジスト密着強度評価パターン105aの周囲には、レジスト密着強度評価パターン105aの周囲のレジストと切り離すための隔離部106aが設けられている。第1実施形態の密着強度試験方法は、先端に吸着装置301を備えたレジスト密着強度評価ヘッド302と、レジスト密着強度評価ヘッド302を昇降させる昇降機構303と、昇降機構303に備えられたロードセル304とで構成されるレジスト密着強度試験装置を用いて行なう。最初に、先端(図3の下端)に吸着装置301を備えたレジスト密着強度評価ヘッド302を昇降機構303で下降させて、吸着装置301の下端面を矢印G方向沿いにレジスト密着強度評価パターン105aの表面へ押し当てる。ここでは、吸着装置301の下端面とレジスト密着強度評価パターン105aとの大きさを同じに設定している。
【0032】
数値条件を算出するために、一例として、吸着装置(吸着部材)301として、0.4N/mmの粘着力の粘着テープを使用して実験を行った。粘着テープからなる先端の吸着装置301の下端面の全面をレジスト密着強度評価パターン105aに密着させた後、レジスト密着強度評価ヘッド302の昇降機構303を矢印G方向沿いに上昇させて、レジスト密着強度の試験を行う。この際、ロードセル307にかかる荷重(ロードセル307で検出される荷重)は、レジスト密着強度評価ヘッド302の先端形状(面積)による。ここでは、レジスト密着強度評価ヘッド302の面積をレジスト密着強度評価パターン105aと同形状の直径10mmにしているため、ロードセル307にかかる荷重は、30N以上かつ50N以下となっている。このレジスト密着強度評価パターン105aの直径の寸法(レジスト密着強度評価パターン105aの面積)と、ロードセル307で検出される荷重とより、レジスト密着強度を算出することができる。
【0033】
ここで、ロードセル307で検出される荷重を基に算出されたレジスト密着強度が0.4N/mm以上であれば、レジスト密着強度評価ヘッド302の昇降機構303を上昇させたとき、レジスト密着強度評価パターン105aは、吸着装置301から離れてウエハ面に残り、密着強度試験の合格品として次工程のエッチング工程に送られる。これに対して、レジスト密着強度が0.4N/mm未満であれば、レジスト密着強度評価パターン105aが吸着装置301側に付いて矢印G方向にウエハ面から剥がれてしまい、密着強度試験の不合格品として再生工程に送られる。再生工程では、アセトン等でシリコンウエハ102の表面のレジスト101を除去し、シリコンウエハ102の表面を洗浄して、再度、レジスト101を塗布して行なう。
【0034】
このような密着強度試験装置を用いて、レジスト密着強度評価ヘッド302の先端部の吸着装置301でレジスト密着強度評価パターン105を吸着することで、レジスト密着強度を精度良く測定することができる。
【0035】
図4に、レジスト密着強度が0.4N/mm以上となって試験に合格した密着強度評価用ウエハのエッチング後の断面図を示す。第1実施形態では、一例として、エッチングガスとしてフッ素系ガスを用いてプラズマエッチングしている。図4において、シリコンウエハ102は、接着剤108にて補強ガラス107に貼り付けられており、第1実施形態では、一例として、シリコンウエハ102の厚みは200μmのものを用いている。401はシリコンインターポーザの貫通穴である。このシリコンインターポーザの貫通穴401は、以下のようにして形成される。すなわち、まず、ウエハ中心部のチップエリア103で、レジスト402が円形パターンにパターンニングされる。このレジスト402は、ウエハ中心部のチップエリア103に存在するレジスト101を意味する。次いで、このパターンニングされたレジスト402を基に、シリコンウエハ102がエッチングされて、シリコンウエハ102を貫通したシリコンインターポーザの貫通穴401が形成される。このとき、レジスト402もエッチングされるが、第1実施形態では、レジスト選択比10の条件でエッチングされるため、レジスト402は、その塗布膜厚22μmから20μmにエッチングされて、膜厚2μmのレジスト402が残っている。一例として、レジスト密着強度評価パターン105aの周囲のレジストと切り離すための溝形状の隔離部106aの幅Fは1μmであり、エッチング角度θ=89.7となるため、隔離部106aのエッチング深さHは、以下の(式3)から94μmであることが算出され、シリコンウエハ401の厚みの1/2までしかエッチングされないことになる。ウエハエッジ202の周辺では、更にエッチングレートが10%低下するため、エッチング深さH’は85μmと浅くなる。
【0036】
【数3】

【0037】
このような結果、レジスト密着強度評価パターン105aからは、孤立したシリコンブロックが形成されない。そのため、レジスト密着強度評価パターン105aは、エッチング後もシリコンごと脱落することはない。
【0038】
すなわち、第1実施形態によれば、ウエハ面内に、レジスト密着強度を評価するレジスト密着強度評価パターン105(105a、105b、105c、105d)を予め形成し、レジスト密着強度を評価するレジスト密着強度評価パターン105の外周部に、その周囲のレジストと切り離すための隔離部106(106a、106b、106c、106d)を設けている。このようにすることで、レジスト密着強度評価パターン105を孤立パターンとしている。このような第1実施形態によれば、パターンニング後でかつエッチング処理前に、貫通穴を形成するためシリコン表面に塗布されたレジスト密着強度を精度良く測定できると共に、レジスト密着強度を評価するレジスト密着強度評価パターン105のエッチング後の脱落も防止できる。
【0039】
よって、第1実施形態によれば、エッチング工程でのレジストの剥れによる不良が、低減できる。また、エッチング工程投入前に選別した、レジスト密着強度が弱いウエハのレジスト除去、ウエハ表面の再洗浄を行なうようにすれば、ウエハの再生も可能となる。
【0040】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態におけるレジスト密着強度評価パターン付きウエハの中央部を示す拡大平面図である。図5において、501は四角形のシリコンウエハ500の表面にレジスト101と同様なレジスト507が塗布された後、リソグラフィー技術を用いてレジスト507をパターンニングして形成された四角形(例えば長方形)のチップエリアである。このチップエリア501には、シリコンインターポーザの貫通穴をプラズマエッチングするための図柄(図示せず)がパターンニングされている。一つのチップエリア501には、一例として、直径が50μmから100μmの円が複数個パターンニングされている。チップエリア501の外側には、後工程でチップを分割するための縦横の2本のスクライブライン502が設けられている。503は縦横の2本のスクライブライン502がクロスする位置に設けられた四角形(例えば正方形)のレジスト密着強度評価パターンである。レジスト密着強度評価パターン503の周囲には、レジスト密着強度評価パターン503の周囲のレジスト(チップエリア501のレジスト)と切り離すための細い長方形の溝形状の隔離部504、505がそれぞれ設けられている。隔離部504の幅I及び隔離部505の幅I’は、それぞれ、第1実施形態と同様に、シリコンウエハ500をエッチングしたときにエッチング深さがシリコンウエハの厚みの1/2に達しないように設定する。設定方法は、レジスト507の塗布厚みをCとし、シリコンのエッチングレートをEとし、レジスト507のエッチングレートをEとし、シリコンのエッチング角度をθとして、以下の(式4)の式に基づいて決める。第2実施形態では、隔離部504と隔離部505の四隅にレジスト残り部506を設けて、孤立したシリコンブロックが形成されることを防止している。レジスト残り部506は、レジスト密着強度評価パターン503の1辺の長さの10%以下に設定している。1辺の長さの10%以下であれば、レジスト密着強度評価パターン503を、レジスト密着強度評価パターン503の周囲のレジストから剥離する際、膜を破断する強度の影響が無く、レジスト密着強度を精度良く測定することができる。さらに、このように構成することで、レジスト密着強度評価パターン503はエッチング後も脱落することはない。
【0041】
【数4】

【0042】
スクライブライン502がクロスする位置を活用してレジスト密着強度評価パターン503を設けることで、チップ部の面積を減じることなく、シリコンウエハ500の中央部でも精度良くレジスト密着強度評価が可能となる。
【0043】
なお、上記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のレジスト密着強度評価パターン付きウエハ及びレジスト密着強度試験方法は、半導体チップ又は半導体チップと基板とを繋ぐ三次元実装又は電子部品の実装などに適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
101 レジスト
102 シリコンウエハ
103 チップエリア
104 スクライブライン
105、105a、105b、105c、105d レジスト密着強度評価パターン
106、106a、106b、106c、106d 隔離部
107 補強ガラス
108 接着剤
201 貫通穴
202 ウエハエッジ
301 吸着装置
302 レジスト密着強度評価ヘッド
303 昇降機構
304 ロードセル
500 シリコンウエハ
501 チップエリア
502 スクライブライン
503 レジスト密着強度評価パターン
504、505 隔離部
506 レジスト残り部
507 レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材料と、
前記下地材料上に形成されたレジストと、を備え、
前記レジストには、レジスト密着強度を評価するレジスト密着強度評価パターンが形成され、
前記レジスト密着強度評価パターンは、その周囲に設けられた隔離部により周囲のレジストと切り離されたパターンであることを特徴とする、
レジスト密着強度評価パターン付きウエハ。
【請求項2】
前記レジスト密着強度評価パターンは、前記下地材料の外縁部分に形成されたことを特徴とする、
請求項1に記載のレジスト密着強度評価パターン付きウエハ。
【請求項3】
前記レジスト密着強度評価パターンは、前記下地材料の外縁から10mm以内の外縁部分に形成されたことを特徴とする、
請求項2に記載のレジスト密着強度評価パターン付きウエハ。
【請求項4】
前記レジスト密着強度評価パターンの外周部に設けられた前記隔離部の幅Fは、前記レジストの塗布厚みをCとし、エッチングする前記下地材料のエッチングレートをEとし、前記レジストのエッチングレートをEとし、前記下地材料へのエッチング角度をθとして、以下の式に基づいて決定されることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれか1つに記載のレジスト密着強度評価パターン付きウエハ。
F≦C*(E/E)/tanθ
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のレジスト密着強度評価パターン付きウエハの前記レジスト密着強度評価パターンを吸着可能な吸着装置を先端に備えたレジスト密着強度評価ヘッドと、
前記レジスト密着強度評価ヘッドを昇降させる昇降機構と、
前記レジスト密着強度評価ヘッドの荷重を検出するロードセルと、を用いて、
前記レジスト密着強度評価ヘッドを下降し、
前記レジスト密着強度評価ヘッドの前記吸着装置で前記レジスト密着強度評価パターンを吸着し、
前記ロードセルで荷重を検出しながら前記レジスト密着強度評価ヘッドを上昇させて、密着強度試験を行うことを特徴とする、
レジスト密着強度評価パターン付きウエハの密着強度試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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