説明

レジンコーテッドサンドの温度調節ユニット及び温度調節装置

【課題】シェルモールド用造型装置ごとにシェル鋳型用RCSの予熱のための温度調節装置を簡単かつ経済的に具備させ得る小型のRCS温度調節ユニットを提供する。
【解決手段】温度調節ユニットUは、複数の被加熱気体吹出孔4が形成されたハウジングAと、ハウジングAの内部に収容されており気体導入孔から気体排出孔に至る気体通路が内部に形成されているインゴットCと、インゴットCを加熱するためにインゴットCに取り付けられている加熱器7とを備える。インゴットCの気体導入孔から気体通路に導入された気体が気体通路を通る間に加熱器7で加熱されたインゴットCとの熱交換により加熱され、インゴットCによって加熱された気体がハウジングAの被加熱気体吹出孔4から放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルモールド法によって鋳型を製造する際に使用するレジンコーテッドサンド(以下「RCS」と記載する。)の温度調節のために使用される温度調節装置の製作に有用な温度調節ユニットと、該温度調節ユニットをシェルモールド用造型装置(シェルモールドマシン)のサンドホッパー内に設置することにより製作される温度調節装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シェル鋳型の造型において、鋳型の生産性、造型性及び品質(例えば、強度)のさらなる向上、並びに、冬季環境における造型及び品質に関するトラブルの解消に加え、昨今の環境問題の施策(省エネルギー)に応えた金型温度の低温化による環境負荷の軽減、金型温度の低温化による金型の熱ひずみの軽減を試みるべく、シェル鋳型用RCSの加熱が見直されてきた。例えば、特開昭54−48632号公報(特許文献1、シェル鋳物砂の予熱方法)は、シェル鋳型の造型に先立ってシェル鋳型用RCSを予熱することを提案している。
【0003】
ところが、特許文献1に開示されるようなシェル鋳型用RCSの予熱方法に使用される予熱装置は、各構成要素が大きく、それらが一体として固定化されているので、大型となり、大きな設置スペースを必要としていた。このような大型のシェル鋳型用RCSの予熱装置は、エネルギー消費が大きくなるので、省エネルギーの視点から問題があり、また、設置の容易さにも欠けることから、シェルモールド用造型装置ごとに少ない設置スペースで容易に設置することができる予熱装置への移行が試みられてきた。
【0004】
例えば実開昭51−116915号公報(特許文献2、シェルモールドマシンのコーテッドサンド予熱装置)に開示される装置では、従来のシェルモールド用造型装置において直接接続されていた、シェル鋳型用RCSのサンドホッパーとシェルモールド用造型装置の金型にシェル鋳型用RCSを供給するブローヘッドとの間に、予熱装置として、乾燥温風を供給する装置を介在させるようにしている。また、特開平6−142837号公報(特許文献3、シェルモールド造型方法)に開示のシェルモールド造型方法で使用される装置では、予熱装置として、内タンクと外タンクとを備えた2重構造のシェル鋳型用RCSの加温装置を設け、内タンク内に投入されたシェル鋳型用RCSを、内タンクの底部に配置された複数のバブリングノズルから、外タンク内で蒸気との熱交換により加温された間欠エア(5秒間隔で3秒間)を吹出させることにより、上方へ舞い上がらせて流動化させて加温した後、内タンクの下部排出口から金型へ排出するようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開昭54‐48632号公報
【特許文献2】実開昭51‐116915号公報
【特許文献3】特開平6‐142837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2や特許文献3に開示される予熱装置は、従来使用されていたシェルモールド用造型装置に後から追加して設置することが困難であり、また、高いコストを要するものであった。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術に存する問題を解消して、シェルモールド用造型装置ごとにシェル鋳型用RCSの予熱のための温度調節装置を簡単かつ経済的に具備させ得る小型のRCS温度調節ユニットを提供することにある。また、本発明の他の目的は、シェルモールド用造型装置のサンドホッパー内に、上記の温度調節ユニットを設けることによって、所要量のRCSを小刻みかつ適温に加熱処理できる温度調節装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、気体通路を内部に形成したインゴットに加熱器を取り付けて熱交換器として利用することにより、常温の気体を迅速かつ適温に加熱して温風化できることを見出し、この知見をもとに所期の課題を克服すべく更なる検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、第1の態様において、複数の被加熱気体吹出孔が形成されたハウジングと、該ハウジングの内部に収容されており気体導入孔から気体排出孔に至る気体通路が内部に形成されているインゴットと、該インゴットを加熱するために該インゴットに取り付けられている加熱器とを備え、前記気体導入孔から前記気体通路に導入された気体が前記気体通路を通る間に前記加熱器で加熱された前記インゴットとの熱交換により加熱され、前記インゴットによって加熱された気体が前記ハウジングの前記被加熱気体吹出孔から放出されるようになっているレジンコーテッドサンドの温度調節ユニットを提供する。
【0010】
上記温度調節ユニットにおいて、前記インゴットの気体通路は、前記気体導入孔から複数に分岐して延びていることが好ましい。また、前記ハウジングの形状がそろばん珠形状であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、第2の態様において、レジンコーテッドサンドが供給されるサンドホッパー内に、上記温度調節ユニットを設置して成るレジンコーテッドサンドの温度調節装置を提供する。
【0012】
前記温度調節装置が温度検出器をさらに備えており、温度検出器によって検出された温度に基づいて前記加熱器を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る温度調節ユニットは、気体通路を内部に設けたインゴットに加熱器を取り付けたものを熱交換器として使用し、被加熱気体吹出孔を有するハウジングでこれを覆って保護するようにしていることから、次の諸効果を提供することができる。
(1)温度調節ユニットが、低コストで製作できる上、小型化が可能である。しかも構造上、殆どメンテナンスを必要としない。
(2)加熱されたインゴットと常温の気体との直接的な接触による熱交換であるため、熱効率が高く、迅速な加熱を行うことができる。また、インゴットからハウジング内の周囲空間への放熱による保温効果によって、シェル鋳型用RCSの加熱に用いる高温の被加熱気体の温度低下を防止することができる。
(3)既設のサンドホッパーを簡単かつ容易に温度調節装置へ改造することができるため、特段の設置スペースや設備費を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳しく説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る温度調節ユニットの一例を示す縦断面図である。温度調節ユニットUは、上下に分離可能な金属ハウジング(以下、「ハウジング」という。)Aと、熱交換器Bとから構成されている。熱交換器Bは、ハウジングAの内部において二つのフランジ付き固定板(例えば、鉄板)5の間に保持されており、該固定板5は、例えばボルト及びナットを用いた締結や溶接など適宜の方法でフランジを介してハウジングAに固定されている。熱交換器Bは、固定板5への熱の伝達を最小限に抑えるために、図1に示されているように、断熱材(例えば、断熱ボード)6を介して固定板5に保持されていることが好ましいが、断熱材6は必ずしも設けなくてよい。ハウジングAの内部には、気体供給装置(図示せず、以下同様)に接続する気体供給管1がハウジングAの頂部を通って延びており、熱交換器Bの気体導入孔から延びる気体導入管2に気密に連結されている。なお、本願における「気体」とは、空気は勿論のこと、窒素ガス等の不活性ガスと空気との混合物、不活性ガス自体などを含むものとする。
【0016】
ハウジングAの形状は、特に限定されないが、後述するような流動加熱域10(図5を参照)へのRCSの円滑な補給を考慮すると、RCSの自然な流下を惹起するように、水平面に対して安息角以上の角度をなす勾配面をハウジングAの下側部分に有する形状が好ましく、例えばハウジングAの縦断面がひし形、そろばん珠形、平行四辺形、多角形(6角形や8角形)などを有した略紡錘形(円柱の両端がとがった形状)にすることができる。これらの中でも、製作の容易さ、流動加熱域10の容積などの観点から、ひし形やそろばん珠形の縦断面を有した略紡錘形が好ましく、特にそろばん珠形状(そろばん珠形縦断面を有した略紡錘形)が好ましい。また、ハウジングAの材質としては、コストや耐久性の観点から、一般に金属、とりわけ鉄が好適であるが、これに限定されるものではなく、例えばジュラルミン、アルミニウムなどであってもよい。また、例えばSMC,BMCなどの繊維強化プラスチックであってもよい。なお、RCSの安息角とは、JACT試験法S−5(鋳物砂の流動度試験法)に準じて測定される傾斜角度を意味する。
【0017】
さらに、ハウジングAの下側部分の傾斜壁面には、流動加熱域10でのRCSの流動・加熱を果たすための温風すなわち被加熱気体の供給を目的とした多数の被加熱気体吹出孔4が所望の間隔で設けられている。被加熱気体吹出孔4は、下記(1)〜(3)の観点から、傾斜壁面に対して直角ないし鋭角(真下)の角度に穿孔されており、これによりRCSの流動加熱に効果的に作用する被加熱気体の吹出しが実現できるようになっている。
(1)低流速の被加熱気体の圧力・風量であってもRCSを効果的に流動させることができる。
(2)被加熱気体の吹出しを停止した際、例えばサンドホッパーDからハウジングA内へのRCSの流入ないし被加熱気体吹出孔4内への目詰りが生じ難い。
(3)被加熱気体のショートパスの発生を防いでRCSの流動、加熱に有効に寄与することができる。
また、被加熱気体吹出孔4の形状としては、吹出抵抗(圧損)が小さくかつ加工が容易なことから、円形が好適とされるが、これに限定されるものではない。さらに、被加熱気体吹出孔4の大きさ(直径)は、主にRCSの流動状態を考慮して決定されるが、1.0〜3.0mm程度が好ましく、特に1.0〜2.0mmの範囲が好ましい。
【0018】
このようなハウジングAの外側表面には、RCSの流下を助長すべくフッソ樹脂加工を施してもよい。また、ハウジングA自体は、後述するように、熱交換器Bからの放熱により加熱されるため、本来のRCS加熱処理に影響を及ぼさない程度でハウジングAの上側部分の傾斜壁面にも被加熱気体吹出孔を設けて、未加熱RCSの予備加熱(1次加熱)を行うようにしてもよい。なお、被加熱気体の温度低下防止を重視する場合には、ハウジングAの上側部分又は全体を耐摩耗性断熱材で覆ってもよい。
【0019】
本発明の温度調節ユニットUでは、熱交換器Bは、図3及び図4に示されるように、気体供給装置から気体供給管1及び気体導入管2を通して供給される気体を導入するための気体導入孔から気体排出孔3に至る任意の数の気体通路9と任意の数の熱源収容穴とが内部に形成されかつ熱源として使用される加熱器7が熱源収容穴に嵌挿されたインゴットCによって構成されている。熱源として使用される加熱器7は、例えばカートリッジ式や自己発熱体式等の棒状電熱式加熱器とすることができる。このような構成の熱交換器Bに供給された気体は、インゴットCの内部に形成された気体通路9を流通する間に加熱器7で加熱されたインゴットCと熱交換を行って加熱(すなわち温風化)され、インゴットCの外周面(周面、底面)に開口する気体排出孔3からハウジングA内へ放出されることになる。
【0020】
本発明で用いられるインゴットCは、熱交換媒体として使用されていることから、熱を伝え易くかつ冷めにくい材質から形成されていることが要求される。これに加え、鋳造性、タップ加工性、コスト及び軽量さ等を考慮すると、インゴットCの材質は、アルミニウム、マグネシウム等の非鉄金属を主体とする合金とすることが好ましく、特にアルミニウム合金とすることが好ましい。また、インゴットCの形状は、特に限定されず、例えば板状、角柱状(立方体、直方体)、円柱状、球体状、先端部を裁断除去した立体(円錐台、角錐台)等とすることができるが、熱交換性に優れた気体通路9の形成など、設計・加工の容易さを考慮すると、円柱状が特に好適である。
【0021】
このようなインゴットCにおいて、気体導入孔を設ける位置は特に限定されるものではなく、最大の熱交換効率を発現させるようにインゴットCの外周面(上面、周面、底面)上の適切な位置が選定されるが、加工の容易さの観点からインゴットCの上面が選定されることが好ましい。また、この気体導入孔の下に続く気体通路9の形状も特に限定されるものではなく、熱交換効率を最大にすべく、例えば分岐状(複数の気体通路に分岐した形状)、螺旋状、蛇腹状等をインゴットCの形状に照らして適宜に選択すればよい。しかしながら、加工の容易さや製造コストの観点から、特に分岐状の通路が好ましい。すなわち、インゴットCに、一つの気体導入孔と複数の気体排出孔3とを設け、一つの気体導入孔から複数の気体通路9が分岐して各気体排出孔3へ至るようにすることが好ましい。
【0022】
なお、前述したような熱源収納穴や気体通路9の製作方法は、特に限定されるものではなく、例えば下記の(1)〜(3)のような方法をとることができるが、製作の容易さや熱交換効率の観点から、タップ加工により通路の表面積を増大させることができる(3)の方法が特に好適である。
(1)インゴット鋳造時に熱源収納穴や気体通路等を形成するためのパイプを鋳ぐるみする方法。
(2)インゴットCにドリル加工で穴を開ける方法。
(3)インゴットCにドリル加工で開けた穴に更にタップ加工を施す方法。
なお、気体通路9の寸法又は大きさは、ドリル刃やタップ刃の大きさに制約を受け、一般的には5〜15mmの範囲から選択されるが、10mm程度とすることが好ましい。
【0023】
次に、図3及び図4を参照して、上述した熱交換器Bの構成の例示的かつ具体的な実施例について説明する。図3は図1の熱交換器の斜視図であり、図4は図3の線IV−IVに沿った熱交換器の縦断面図である。インゴットCはアルミニウム合金から形成されており、このインゴットは、直径200mm、高さ200mmの円柱形状を有している。図3及び図4から分かるように、インゴットCの上面中央には気体導入管2が接続される気体導入孔が形成されている。また、インゴットCの内部には、この気体導入孔から8本に分岐して延びインゴットCの周面(外周面及び底面)に形成された八つの気体排出孔(インゴットCの外周面の下部の四つの気体排出孔3及び底面の四つの気体排出孔)3に至る気体通路9が形成されている。インゴットCの内部には、加熱器7の加熱による温度分布にばらつきが生じないように適切な位置に四つの熱源収納穴がさらに形成されており、熱源収納穴にはそれぞれ3kWhの出力を有した加熱器7が嵌挿されている。そして、これら加熱器7による加熱によって、インゴットCが所要温度(例えば、約150±5℃)に維持され、気体通路9を流通する気体がインゴットCとの熱交換により加熱されて温風すなわち被加熱気体(例えば、約60±5℃)となって、インゴットCの周面に形成された気体排出孔3からハウジングA内に放出・供給されるようになっている。
【0024】
ここで、上記気体通路9及び熱源収納穴の具体的な作製方法を説明する。まず、インゴットCの上面中央に気体導入管2が接続される気体導入孔を形成し、図3に示されているようにインゴットCの上面においてこの気体導入孔を基点として十字をなす位置(気体導入孔を挟んで左右及び前後に対称的に2箇所ずつ)に8本の上側縦孔(円柱形状のインゴットCの中心軸線方向に延びる孔)を形成する。次に、その上側縦孔のうち直径方向に一直線に並んだ4本の上側縦孔の上端部と気体導入孔の下端部とをそれぞれ直径方向に延びるように形成された一つの上側横孔で連通させると共に、その上側縦孔のうち直径方向に一直線に並んだ4本の縦孔の隣接する2本の縦穴の下端部をそれぞれ直径方向に延びるように形成された一つの下側横孔で連通させる。また、インゴットCの底面に、インゴットCの上面から延びる上側縦孔と一直線上にならない位置に、インゴットCの下側部分に形成された各横孔に連通するように短い下側縦孔を穿孔する。次に、このように形成された上側縦孔の上端部及び上側横孔の両端部が埋め栓により密栓処理される。詳細には、図3及び図4に示されているように、インゴットCの上面に、気体導入孔を基点として十字状に八つの埋め栓が埋設されると共に、インゴットCの外周面の上部に、四つの埋め栓(図3では、このうちの一つのみが見えている)が埋設される。このような加工の結果、2本の上側横孔、8本の上側縦孔、4本の下側横孔及び4本の下側縦孔が気体通路9を形成する。また、インゴットCの外周面における4本の下側横孔の開口及びインゴットCの底面における4本の下側縦孔の開口が気体排出孔3を形成する。さらに、四つの熱源収納穴が、加熱器7の加熱による温度分布にばらつきが生じないような適切な位置であって上側縦孔を避ける位置において、上側横穴及び下側横穴と交差しないように、インゴットCの上面から縦孔を穿孔することによって形成される。
【0025】
気体供給装置から供給される気体の条件は、特に限定されるものではないが、好ましくは流動加熱域10のRCSを軽微な流動状態、場合によっては多少の吹上げ流動状態に保持できる程度の吹出圧と風量を有すればよい。かかる気体を供給する装置としては、例えばコンプレッサーやブロワーのほか圧力ボンベなどが挙げられる。特に、RCSの流動状態を考慮すると、コンプレッサーによる気体(例えば、圧縮空気)の供給が好ましい。なお、圧力は、流動加熱域10でのRCSの流動状態に応じて決定されるが、一般的には0.1〜0.5MPa程度であり、好ましくは0.1〜0.2MPaである。一方、風量は、ショートパスの発生に注意しながらRCSの流動状態に応じて調整すればよいが、一般的には、20〜1000L/分程度である。また、供給される気体としては、任意の脱湿装置によって除湿処理されたドライエアなど乾燥したものが好ましい。また、気体の供給は、連続的であっても、間歇的であってもよい。
【0026】
次に、図5を参照して、本発明に係る温度調節装置について説明する。図5は温度調節装置の一例を示す縦断面図である。従来のシェルモールド用造型装置(図示せず)において保温材で被覆されたサンドホッパーD内に、サンドホッパーDの縮径部11の内壁面と温度調節ユニットUのハウジングAの外壁面との間に流動加熱域10として空間が形成されるように、温度調節ユニットUを設置、固定することにより、サンドホッパーDが温度調節装置として改造されている。こうして構築された温度調節装置によれば、サンドホッパーD内のRCSは、温度調節ユニットUのハウジングAの下側部分の傾斜壁面の被加熱気体吹出孔4から吹出される被加熱気体(温風)によって、微流動ないし流動しながら所定の温度まで加熱された後、サンドホッパーDの排出口12からシェルモールド用造型装置のブローヘッド(図示せず)内に排出されるようになる。
【0027】
図5の温度調節装置では、前述したように、サンドホッパーDの縮径部11の内壁面と温度調節ユニットUのハウジングAの外壁面との間隔の調整により流動加熱域10のRCS量が定められる機構を採用しており、この間隔は、一般に20〜50mm程度、好ましくは25〜35mmに調整される。通常、RCSの加熱処理は、RCS所要量(造型に要するRCS量の2〜3倍)に応じて間隔を決定した上で、前述したような被加熱気体(温風)の温度、吹出条件(圧力、風量など)により、RCSの流動状態や加熱効率等を調節するようにしている。
【0028】
図5の温度調節装置は、加熱処理後のRCSの排出に伴って流動加熱域10にRCSが上部から逐次補給される機構であるため、連続的な造型にも断続的な造型にも追従することができるようになっている。また、流動加熱域10の容積に相応するRCS量の加熱を繰り返す方法であることから、大型装置に比べて、迅速かつ均等に、しかも熱効率よくRCSの加熱処理を行なうことができる。したがって、造型作業の再開に際しても大型装置のような長い待ち時間が発生することがなく、待ち時間の無駄を省くことができる。また、サンドホッパーDには、適宜な保温材による被覆保温措置が施されている。これにより、流動加熱域10での加熱処理効率の向上や温風の廃熱利用によるRCSの予備加熱(1次加熱)を図るようにしている。
【0029】
このように、上記温度調節装置にあっては、サンドホッパーDの縮径部11の内壁面と温度調節ユニットUのハウジングAの下側部分の傾斜外壁面との間に形成される流動加熱域でのシェル鋳型用RCSの適温化を図る機構を採用していることから、次の諸効果を提供することができる。
(1)サンドホッパーDの縮径部11の内壁面と温度調節ユニットUのハウジングAの下側部分の傾斜外壁面との間隙の調整によって設定される所要量のシェル鋳型用RCSが、従来の大型装置に比べて、加熱効率よく、迅速かつ均等に加熱されるため、造型現場での作業能率の向上及びエネルギーコストの低減化に寄与することができる。
(2)従来のような大型の温度調節装置(予熱装置)に比べて被加熱気体の吹出条件が緩やかであるため、シェル鋳型用RCS間の流動摩擦による表面からのレジンの剥離を防止することができる。
(3)流動加熱域10には、加熱処理後のシェル鋳型用RCSの排出に伴って未加熱RCSが上部から補給される機構を採用しているため、鋳型に見合った所要量を小刻みに排出しながら連続的に加熱処理を行なうことができる。
(4)その他、造型作業中断後の再開始に際しても、従来の大型の温度調節装置に比べて作業の立ち上がりが容易であること、温風の余熱により上部の未加熱RCSの予備加熱に寄与することができること、気体供給源として造型現場の既設エア配管等を利用すれば、新たな設備を付設する必要もないなどの利点を提供することができる。
【0030】
図5の温度調節装置におけるRCSの温度制御方法では、温度検出器として流動加熱域10に設けられている温度センサー13により測温されたRCS温度を電気信号(電流又は電圧)に変換し、変換された電気信号を温度制御装置(図示せず)に取り込み、温度制御装置によって、インゴットC(熱交換器B)に設けられた加熱器7の動作を制御し、インゴットCを所定温度に維持するようになっている。
【0031】
温度制御方法として、具体的には、(1)温度センサー13で測温されたRCSの温度が予め定められた設定温度の範囲より低いときには、加熱器7をオンとし、逆に高いときには、加熱器7をオフとするオン/オフ指令制御によって電源管理をする方法、又は(2)温度センサー13で測温されたRCS温度と設定温度との差に応じて出力される電圧信号を温度制御装置に取り込むことにより、熱交換器Bに設けられた加熱器7の電圧を比例制御する方法などを例示することができる。しかしながら、一般的には、温度制御の精度及び設備コストの観点から、熱源管理としては電源のオン/オフ制御を採用し、インゴットCの温度管理をするようにすることが好ましい。これにより、RCSの加熱温度のバラツキを抑制することができるようになる。
【0032】
なお、上記では、温度センサー13を流動加熱域10に設け、温度センサー13によって流動加熱域10のRCSの温度を測定するとして説明しているが、図5に示されているように、流動加熱域10に設ける温度センサー13に代えて又はそれに加えて、温度範囲温度調節ユニットUのハウジングAに取り付けられた温度センサー13や排出口12内に配置された温度センサー13を用いて、温度調節ユニットUの温度又は排出口12から排出されるRCSの温度が予め定められた温度範囲になるように加熱器7の動作を制御するようにしてもよい。
【0033】
本発明に係るRCSの温度調節装置及びそこで使用される温度制御方法によって、RCSは一般に40〜70℃程度、好ましくは50〜65℃程度に加熱処理されるが、RCSの吸湿分の乾燥も併せて行われるため、本来の流動性に回復し自由流動性に優れるという利点をも提供することができる。したがって、得られたRCSは、造型上・品質上の改善のみならず、環境温度の影響を受けることなく、シェル鋳型を安定的に造型することができる。また、造型温度を低下させることを可能とさせ、強いては金型の熱ひずみや環境負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】温度調節ユニットの構成を示す縦断面図である。
【図2】図1の温度調節ユニットにおいて使用される、熱交換器をハウジングに保持するための固定板の平面図である。
【図3】図1の温度調節ユニットの熱交換器の斜視図である。
【図4】図3の線IV−IVに沿った熱交換器の縦断面図である。
【図5】サンドホッパー内に温度調節ユニットを設置した温度調節装置の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0035】
A ハウジング
B 熱交換器
C インゴット
D サンドホッパー
U 温度調節ユニット
1 気体供給管
2 気体導入管
3 気体排出孔
4 被加熱気体吹出孔
5 固定板
6 断熱材
7 加熱器
8 埋め栓
9 気体通路
10 流動加熱域
11 縮径部
12 排出口
13 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被加熱気体吹出孔が形成されたハウジングと、該ハウジングの内部に収容されており気体導入孔から気体排出孔に至る気体通路が内部に形成されているインゴットと、該インゴットを加熱するために該インゴットに取り付けられている加熱器とを備え、前記気体導入孔から前記気体通路に導入された気体が前記気体通路を通る間に前記加熱器で加熱された前記インゴットとの熱交換により加熱され、前記インゴットによって加熱された気体が前記ハウジングの前記被加熱気体吹出孔から放出されるようになっていることを特徴とするレジンコーテッドサンドの温度調節ユニット。
【請求項2】
前記インゴットの気体通路は、前記気体導入孔から複数に分岐して延びている請求項1に記載のレジンコーテッドサンドの温度調節ユニット。
【請求項3】
前記ハウジングの形状がそろばん珠形状である請求項1又は請求項2に記載のレジンコーテッドサンドの温度調節ユニット。
【請求項4】
レジンコーテッドサンドが供給されるサンドホッパー内に、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の温度調節ユニットを設置して成ることを特徴とするレジンコーテッドサンドの温度調節装置。
【請求項5】
前記温度調節装置が温度検出器をさらに備えており、温度検出器によって検出された温度に基づいて前記加熱器を制御する請求項4に記載のレジンコーテッドサンドの温度調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−142830(P2009−142830A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320118(P2007−320118)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(507405924)株式会社大勢シェル (2)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】