説明

レチノール−レチノール結合タンパク質(RBP)−トランスチレチン(TTR)複合体の形成のモジュレーター

本明細書では、トランスチレチン(TTR)、レチノール結合タンパク質(RBP)およびレチノールの複合体の形成を検出するための方法および組成物が開述される。また、本明細書で開述されている方法および組成物は、レチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターをスクリーニングする手段も提供する。更に、本方法および組成物は、加齢性黄斑変性症及び/又はジストロフィーを治療及び/又は予防するための治療薬も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2004年11月4日に出願された米国仮特許出願第60/625,532号、2004年11月19日に出願された米国仮特許出願第60/629,695号、2005年3月11日に出願された米国仮特許出願第60/660,904号、2005年4月18日に出願された米国仮特許出願第60/672,405号に対する利益を主張する。これらの開示は全て、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本明細書で開述されている方法および組成物は、眼科的状態の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
レチノイドは正常な成長、発達、免疫力、再生、視力および他の生理学的プロセスの維持にとって不可欠な物質である。逆に、レチノイドの異常な産生またはプロセッシングは、黄斑変性症を含め、種々の疾患プロセスの発現と相関関係を有している。
【0004】
黄斑変性症は、米国における55歳以上の人々の失明の主要原因である一群の眼疾患であり、一千万人以上のアメリカ人が罹患している。幾つかの研究は、疫学的特性を斟酌し、次の十年間で新たな黄斑変性症の件数が6倍増大すると予測している。加齢性黄斑変性症またはジストロフィー、特に衰弱生疾患は、視力の漸進的な喪失を導き、最終的には中心視覚の重度の損傷をもたらす。
【0005】
今までのところ、黄斑変性症に対する効果的な治療方法は存在していない。従って、これらの疾患を治療するための治療用組成物をスクリーニングする検定法を提供することに対する差し迫った必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本明細書では、レチノール−レチノール結合タンパク質(RBP)−トランスチレチン(TTR)複合体の形成をモジュレートする物質を検出するための方法および組成物が開述される。また、本明細書において、レチノール−RBP−TTR複合体を検出、定量及び/又はモニタリングするための方法および組成物も開述される。更に、本明細書において、湿性および乾性形態の黄斑変性症およびジストロフィーならびにジオグラフィックアトロフィーを含む眼科的状態の治療方法も提示され、その治療方法は、レチノール−レチノール結合タンパク質(RBP)−トランスチレチン(TTR)複合体の形成をモジュレートする化合物を投与する工程を含む。
【0007】
一つの実施態様においては、本明細書で開述されている方法および組成物は、RBP、レチノールおよびTTRを含むサンプル中におけるレチノール−RBP−TTR複合体を検出及び/又は定量する手段を提供し、その手段は上述の複合体の発光スペクトルを測定する工程を含み、ここで、上述のTTRのうちの少なくとも幾分かは、更に、標識物質を含んでいる。一つの実施態様においては、上述のTTRは蛍光性部分で標識されている。別の実施態様においては、この蛍光性部分はアクセプター蛍光性部分である。代替的に、上述の複合体は、蛍光共鳴エネルギー移動により検出することもできる。
【0008】
更なる実施態様においては、本明細書で開述されている蛍光性部分は、380nmから480nmまでの間の波長を吸収し、520nmから600nmまでの間の波長を放射する。更に別の実施態様では、この蛍光性部分は:N−((2−(ヨードアセトキシ)エチル)−N−メチル)アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、4−ジヘキサデシルアミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサン酸、スクシンイミジル6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサノアート、ルシファーイエローヨードアセトアミド、N−(5−アミノペンチル)−4−アミノ−3,6−ジスルホ−1,8−ナフタルイミド、N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)エチレンジアミン、1−(2−マレイミジルエチル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムメタンスルホナート、1−(2,3−エポキシプロピル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(3−(スクシンイミジルオキシカルボニル)ベンジル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムブロミド、3−(4−カルボキシベンゾイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒド、3−(2−フロイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒドまたはALEXA FLUOR(登録商標)(蛍光性化学物質および生体分子標識キット)染料;からなる群から選択されてよい。幾つかの実施態様においては、サンプルは、RBPのアミノ酸基のうちの少なくとも幾つかを励起すべく光を照射されてよい。
【0009】
代替的に、本明細書で開述されている標識TTR−RBP−レチノール複合体は、275nmから295nmまでの間の波長で励起されてよく、発光波長は330nmから650nmまでの間で測定されてよい。別の実施態様では、発光スペクトルを測定するための励起波長は315nmから345nmまでの間であってよく、発光波長は525nmから600nmまでの間で測定されてよい。
【0010】
更なる実施態様においては、標識TTRは固体の支持体に固定化されていてよい。代替的に、RBPが固体の支持体に固定化されていてもよい。本明細書で開述されている固体支持体はナノ粒子を含んでいてよい。別の実施態様では、標識TTR、RBPおよびレチノールを含むサンプルは、マイクロタイタープレートまたはマイクロアレイ内でインキュベートされてよい。別の実施態様では、本明細書で開述されているサンプルは、更に、レチノール−RBP−TTR複合体形成の阻害剤を含んでいる。更に、一つの実施態様においては、この阻害剤はレチニル誘導体である。
【0011】
また、本明細書で開述されている方法および組成物は、レチノール−RBP−TTR複合体形成を検出及び/又は定量する手段も提供し、そのサンプルはRBP、レチノールおよび蛍光性部分に結合されたTTRを含み、ここで、上述の手段は、レチノール−RBP−TTR複合体の形成を可能にするのに充分な条件下においてサンプルをインキュベートする工程、およびその複合体の発光スペクトルを測定する工程を含む。別の実施態様においては、この複合体は、蛍光共鳴エネルギー移動により検出され、ここで、その蛍光性部分は380nmから480nmまでの間の波長を吸収し、520nmから600nmまでの間の波長を放射してよい。別の実施態様においては、本明細書で開述されている方法は、発光スペクトルを測定するための275nmから295nmまでの間の励起波長を提供してよく、発光波長は330nmから650nmまでの間で測定されてよい。更に別の実施態様においては、本明細書で開述されている方法は、発光スペクトルを測定するための315nmから345nmまでの間の励起波長を提供してよく、発光波長は525nmから600nmまでの間で測定されてよい。
【0012】
更なる実施態様においては、本明細書で開述されている方法は、サンプル中におけるレチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターをスクリーニングするための方法を提供し、そのサンプルは少なくとも一つの候補モジュレーター、標識TTR、RBPおよびレチノールを含み、更に、この方法は、レチノール−RBP−TTR複合体の形成を可能にするのに充分な条件下においてサンプルをインキュベートする工程、およびその複合体の発光スペクトルを測定する工程を含み、ここで、この候補モジュレーターのインキュベーション後における複合体の発光スペクトルの変化がレチノール−RBP−TTR複合体のモジュレーションを指示する。幾つかの実施態様においては、TTR標識物質は蛍光性部分である。別の実施態様においては、この蛍光性部分はアクセプター蛍光性部分である。
【0013】
更に別の実施態様においては、本複合体は蛍光共鳴エネルギー移動により検出される。別の実施態様では、その蛍光性部分は、380nmから480nmまでの間の波長を吸収し、520nmから600nmまでの間の波長を放射する。代替的に、その蛍光性部分は:N−((2−(ヨードアセトキシ)エチル)−N−メチル)アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、4−ジヘキサデシルアミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサン酸、スクシンイミジル6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサノアート、ルシファーイエローヨードアセトアミド、N−(5−アミノペンチル)−4−アミノ−3,6−ジスルホ−1,8−ナフタルイミド、N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)エチレンジアミン、1−(2−マレイミジルエチル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムメタンスルホナート、1−(2,3−エポキシプロピル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(3−(スクシンイミジルオキシカルボニル)ベンジル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムブロミド、3−(4−カルボキシベンゾイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒド、3−(2−フロイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒドまたはALEXA FLUOR(登録商標)染料;からなる群から選択されてよい。
【0014】
一つの実施態様においては、サンプルは、RBPのアミノ酸部分のうちの少なくとも幾つかを励起するのに充分な光で照射されてよい。別の実施態様では、サンプルのRBPのうちの少なくとも幾つかが、サンプル中においてレチノール−RBP−TTR複合体を形成する。
【0015】
更なる実施態様においては、その励起波長は275nmから295nmまでの間で設定されてよく、発光波長は330nmから650nmまでの間で測定されてよい。代替的に、その励起波長は315nmから345nmまでの間で設定されてよく、発光波長は525nmから600nmまでの間で測定されてよい。
【0016】
更に、本明細書で開述されている方法は、固体の支持体に固定された標識TTRを含んでいてよい。代替的に、RBPが固体の支持体に固定化されていてもよい。幾つかの実施態様においては、この固体支持体はナノ粒子であってよい。別の実施態様では、サンプルがマイクロタイタープレートまたはマイクロアレイ内でインキュベートされる。
【0017】
更なる実施態様においては、本明細書で開述されている方法は、サンプル中におけるレチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターをスクリーニングするための方法を提供し、そのサンプルは少なくとも一つの候補モジュレーター、アクセプター蛍光性部分に結合されたTTR、RBPおよびレチノールを含み、この方法は、更に、レチノール−RBP−TTR複合体の形成を可能にするのに充分な条件下においてサンプルをインキュベートする工程、およびそのサンプルの発光スペクトルを測定する工程を含み、ここで、この候補モジュレーターのインキュベーション後における複合体の発光スペクトルの変化がレチノール−RBP−TTR複合体のモジュレーションを指示する。
【0018】
別の実施態様においては、本明細書で開述されている方法は、固体の支持体に固定された標識TTRを含んでいてよい。代替的に、RBPが固体の支持体に固定化されていてもよい。幾つかの実施態様においては、この固体支持体はナノ粒子であってよい。別の実施態様では、サンプルがマイクロタイタープレートまたはマイクロアレイ内でインキュベートされる。
【0019】
更なる実施態様においては、本明細書で開述されている方法は、更に、サンプル中におけるレチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターをスクリーニングするための方法を提供し、そのサンプルは少なくとも一つの候補モジュレーター、アクセプター蛍光性部分に結合されたTTR、RBPおよびレチノールを含み、この方法は、更に、レチノール−RBP−TTR複合体の形成を可能にするのに充分な条件下においてサンプルをインキュベートする工程、および蛍光共鳴エネルギー移動によりそのサンプルの発光スペクトルを測定する工程を含み、ここで、この候補モジュレーターのインキュベーション後における複合体の発光スペクトルの変化がレチノール−RBP−TTR複合体のモジュレーションを指示する。
【0020】
一つの実施態様においては、本明細書で開述されている方法は、更に、サンプル中におけるレチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターをスクリーニングするための方法を提供し、そのサンプルは少なくとも一つの候補モジュレーター、アクセプター蛍光性部分に結合されたTTR、RBPおよびレチノールを含み、この方法は、更に、レチノール−RBP−TTR複合体の形成を可能にするのに充分な条件下においてサンプルをインキュベートする工程、少なくとも一つの候補阻害剤を加える工程、およびそのサンプルの発光スペクトルを測定する工程を含み、ここで、この候補モジュレーターのインキュベーション後における複合体の発光スペクトルの変化がレチノール−RBP−TTR複合体のモジュレーションを指示する。
【0021】
更なる実施態様においては、本明細書で開述されている方法は、インビボにおけるレチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターをスクリーニングするための方法を提供し、その方法は、標識TTRを被験体に注入する工程、少なくとも一つの候補モジュレーターをその被験体に導入する工程、その被験体から生物学的なサンプルを採取する工程、およびそのサンプルの発光スペクトルを測定する工程を含み、ここで、この候補モジュレーターの導入後における複合体の発光スペクトルの変化がインビボにおけるレチノール−RBP−TTR複合体のモジュレーションを指示する。
【0022】
別の実施態様においては、本明細書で開述されている方法は、インビボにおけるレチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターをスクリーニングするための方法を提供し、その方法は、アクセプター蛍光性部分に結合されたTTRを被験体に注入する工程、少なくとも一つの候補モジュレーターをその被験体に導入する工程、その被験体から生物学的なサンプルを採取する工程、および蛍光共鳴エネルギー移動によりそのサンプルの発光スペクトルを測定する工程を含み、ここで、この候補モジュレーターの導入後における複合体の発光スペクトルの変化がインビボにおけるレチノール−RBP−TTR複合体のモジュレーションを指示する。
【0023】
更なる実施態様においては、レチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターをスクリーニングするためのキットが提供され、本キットは、TTRおよびそのTTRの少なくとも一部を標識化するための手段を含む。幾つかの実施態様においては、このキットは、更に、レチノールおよびRBPを含む。別の実施態様では、本キットは、TTRを標識化するための蛍光標識手段を提供する。別の実施態様においては、本キットの蛍光性標識物質はアクセプター蛍光性部分である。幾つかの実施態様では、本キットのアクセプター蛍光性部分は:N−((2−(ヨードアセトキシ)エチル)−N−メチル)アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、4−ジヘキサデシルアミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサン酸、スクシンイミジル6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサノアート、ルシファーイエローヨードアセトアミド、N−(5−アミノペンチル)−4−アミノ−3,6−ジスルホ−1,8−ナフタルイミド、N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)エチレンジアミン、1−(2−マレイミジルエチル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムメタンスルホナート、1−(2,3−エポキシプロピル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(3−(スクシンイミジルオキシカルボニル)ベンジル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムブロミド、3−(4−カルボキシベンゾイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒド、3−(2−フロイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒドまたはALEXA FLUOR(登録商標)染料;からなる群から選択される。
【0024】
別の実施態様においては、本キットのアクセプター蛍光性部分は、380nmから480nmまでの間の波長を吸収し、520nmから600nmまでの間の波長を放射する。更に、本キットのRBP及び/又は標識TTRは固体の支持体に固定化されていてよい。一つの実施態様では、本キットの固体支持体はナノ粒子であってよい。
【0025】
更なる実施態様においては、標識TTR分子が提供され、ここで、この標識TTRは蛍光性部分に結合されている。幾つかの実施態様では、この標識TTR分子に結合されている蛍光性部分は:N−((2−(ヨードアセトキシ)エチル)−N−メチル)アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、4−ジヘキサデシルアミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサン酸、スクシンイミジル6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサノアート、ルシファーイエローヨードアセトアミド、N−(5−アミノペンチル)−4−アミノ−3,6−ジスルホ−1,8−ナフタルイミド、N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)エチレンジアミン、1−(2−マレイミジルエチル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムメタンスルホナート、1−(2,3−エポキシプロピル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(3−(スクシンイミジルオキシカルボニル)ベンジル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムブロミド、3−(4−カルボキシベンゾイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒド、3−(2−フロイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒドまたはALEXA FLUOR(登録商標)染料;からなる群から選択されてよい。別の実施態様においては、この標識TTR分子に結合されているアクセプター蛍光性部分は、380nmから480nmまでの間の波長を吸収してよく、520nmから600nmまでの間の波長を放射してよい。更に、この標識TTRは固体の支持体に結合されていてよい。
【0026】
更なる実施態様においては、標識TTR、RBPおよびレチノールを含む組成物が提供される。一つの実施態様では、これらの方法および組成物は、更に、標識TTR、RBPおよびレチノールを含む本組成物により形成された複合体を提供する。
【0027】
更に別の実施態様においては、本組成物は、更に、少なくとも一つの候補治療薬を含む。幾つかの実施態様では、この候補治療薬は、低分子、ポリペプチド、核酸または抗体である。別の実施態様においては、この候補治療薬はレチニル誘導体である。
【0028】
更なる実施態様においては、本組成物の標識TTRは蛍光性部分に結合されていてよい。一つの実施態様では、この蛍光性部分は、N−((2−(ヨードアセトキシ)エチル)−N−メチル)アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、4−ジヘキサデシルアミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサン酸、スクシンイミジル6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサノアート、ルシファーイエローヨードアセトアミド、N−(5−アミノペンチル)−4−アミノ−3,6−ジスルホ−1,8−ナフタルイミド、N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)エチレンジアミン、1−(2−マレイミジルエチル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムメタンスルホナート、1−(2,3−エポキシプロピル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(3−(スクシンイミジルオキシカルボニル)ベンジル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムブロミド、3−(4−カルボキシベンゾイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒド、3−(2−フロイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒドまたはALEXA FLUOR(登録商標)染料であってよい。代替的に、本組成物のこの蛍光性部分は、380nmから480nmまでの間の波長を吸収し、520nmから600nmまでの間の波長を放射してよい。一つの実施態様では、この標識TTRは固体の支持体に結合されている。
【0029】
別の実施態様においては、本明細書で開述されている方法は、黄斑変性症(湿性形態と乾性形態との両方の加齢性黄斑変性症を含む)またはジストロフィーを治療するための治療薬を同定する方法を提供し、その方法は、少なくとも一つの候補治療薬、標識TTR、RBPおよびレチノールを含むサンプルを、レチノール−RBP−標識TTR複合体の形成を可能にするのに充分な条件下においてインキュベートする工程、およびその複合体の発光スペクトルを測定する工程を含み、ここで、候補治療薬は、インキュベーション後、その複合体の発光スペクトルを減少させる。
【0030】
幾つかの実施態様においては、このTTR標識物質は蛍光性部分である。別の実施態様では、この蛍光性部分はアクセプター蛍光性部分である。幾つかの実施態様においては、その複合体は蛍光共鳴エネルギー移動により検出される。別の実施態様では、この蛍光性部分は、380nmから480nmまでの間の波長を吸収し、520nmから600nmまでの間の波長を放射する。一つの実施態様においては、この蛍光性部分は、N−((2−(ヨードアセトキシ)エチル)−N−メチル)アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、4−ジヘキサデシルアミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサン酸、スクシンイミジル6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサノアート、ルシファーイエローヨードアセトアミド、N−(5−アミノペンチル)−4−アミノ−3,6−ジスルホ−1,8−ナフタルイミド、N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)エチレンジアミン、1−(2−マレイミジルエチル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムメタンスルホナート、1−(2,3−エポキシプロピル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(3−(スクシンイミジルオキシカルボニル)ベンジル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムブロミド、3−(4−カルボキシベンゾイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒド、3−(2−フロイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒドまたはALEXA FLUOR(登録商標)染料であってよい。一つの実施態様では、本明細書で開述されているサンプルは、RBPのアミノ酸部分のうちの少なくとも幾つかを励起するのに充分な光で照射される。更に、別の実施態様においては、このサンプル中に含まれているRBPのうちの少なくとも幾つかがレチノール−RBP−TTR複合体を形成する。
【0031】
更に別の実施態様においては、その励起波長は275nmから295nmまでの間であり、発光波長は330nmから650nmまでの間で測定される。代替的には、その励起波長は315nmから345nmまでの間であり、発光波長は525nmから600nmまでの間で測定される。幾つかの実施態様では、標識TTRまたはRBPが固体の支持体に固定化される。この固体支持体はナノ粒子であってもよい。別の実施態様においては、本サンプルは、マイクロタイタープレートまたはマイクロアレイ内においてインキュベートされる。
【0032】
更なる実施態様においては、本明細書で開述されている候補治療薬は、低分子、ポリペプチド、核酸または抗体である。別の実施態様では、その候補治療薬はレチニル誘導体である。代替的に、そのレチニル誘導体は、N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド(本明細書では、「HPR」もしくは「フェンレチニド」もしくは「4−ヒドロキシフェニルレチンアミド」もしくは「ヒドロキシフェニルレチンアミド」とも呼ばれる)、N−(4−メトキシフェニル)レチンアミド(「MPR」;HPRの最も一般的な代謝産物)、またはエチルレチンアミドである。
【0033】
更なる実施態様においては、本明細書で開述されている方法は、黄斑変性症(湿性形態と乾性形態との両方の加齢性黄斑変性症を含む)またはジストロフィーを治療するための治療薬を同定する方法を提供し、ここで、その方法は、少なくとも一つの候補治療薬、アクセプター蛍光性部分に結合されたTTR、RBPおよびレチノールを含むサンプルを、TTR−RBP−レチノール複合体の形成を可能にするのに充分な条件下においてインキュベートする工程、および蛍光共鳴エネルギー移動によりそのサンプルの発光スペクトルを検出する工程を含み、また、ここで、候補治療薬は、インキュベーション後、その複合体の発光スペクトルを減少させる。
【0034】
別の実施態様においては、本明細書で開述されている方法は、レチノール、RBPおよびTTRを含む複合体の形成のモジュレーターを提供し、ここで、そのモジュレーターは、レチノール、RBPおよび標識TTRを含む複合体の形成もモジュレートする。一つの実施態様では、そのTTRは蛍光的に標識されている。幾つかの実施態様においては、そのモジュレーターの複合体はインビトロサンプル中に存在する。別の実施態様では、その複合体はインビボサンプル中に存在する。一つの実施態様においては、そのモジュレーターは、更に、レチニル誘導体を含む。代替的に、そのモジュレーターのレチニル誘導体は、N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド(「HPR」)、N−(4−メトキシフェニル)レチンアミド(「MPR」)、またはエチルレチンアミドである。
【0035】
前述のスクリーニングもしくは検出もしくは測定もしくは定量する方法、方策、組成物およびキットのいずれかにおいて、更に、以下の更なる実施態様が単独で、またはあらゆる組み合わせにおいて用いられてよい:(a)サンプルが凍結されていない;(b)サンプルが約2週間の期間まで凍結されている;(c)サンプルがジメチルスルホキシドを含んでいない;(d)サンプルが約8%までのジメチルスルホキシドを含んでいる;(e)サンプルがハイスループット法で実行される;(f)サンプルが384−ウェルマイクロタイタープレートのウェル内に入れられている;(g)テトラマーTTRに対する標識物質のモル%が5%未満である;(h)テトラマーTTRに対する標識物質のモル%が3%未満である;(i)テトラマーTTRに対する標識物質のモル%が2.5%未満である;(j)テトラマーTTRに対する標識物質のモル%が1.8%未満である;(k)式(I)の化合物が使用される;(l)フェンレチニドが使用される;(m)フェンレチニドの代謝産物が使用される;(n)サンプルに対するレチノール−RBP−TTR形成のモジュレーターの付加が検出信号の減少をもたらす;(o)レチノール−RBP−TTR複合体から得られる検出信号がモジュレーターの濃度の関数として測定される;(p)レチノール−RBP−TTR複合体から得られる検出信号が分光光度計を用いて測定される;(r)レチノール−RBP−TTR複合体から得られる検出信号が二重回折格子発光分光分析装置を用いて測定される;(s)レチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターが、ヒトに投与されたときに、血清レチノールレベルを低下させる;(t)レチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターが、ヒトに投与されたときに、眼のレチノールレベルを低下させる;(u)レチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターが、ヒトに投与されたときに、眼のレチノイドレベルを低下させる;(v)レチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターが、ヒトに投与されたときに、眼のA2Eレベルを低下させる;または(w)レチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターが、ヒト患者に投与される場合、そのヒト患者の加齢性黄斑変性症(湿性形態と乾性形態との両方の加齢性黄斑変性症を含む)を治療するために使用される。前述のどの実施態様においても、「TTR」は発蛍光性原子団で標識されていてよい。
【0036】
別の実施態様においては、黄斑変性症(湿性形態と乾性形態との両方の加齢性黄斑変性症を含む)およびジストロフィー、ならびにジオグラフィックアトロフィーを含む眼科的状態に対する治療方法が提供され、その方法は、レチノール−レチノール結合タンパク質(RBP)−トランスチレチン(TTR)複合体の形成をモジュレートする化合物を投与する工程を含む。これらの治療法の更なる実施態様においては、レチノール−レチノール結合タンパク質(RBP)−トランスチレチン(TTR)複合体の形成をモジュレートする化合物はオール−trans型レチニル誘導体であり、ここで、そのオール−trans型レチニル誘導体が有効量で少なくとも一回投与され、また、この化合物は、式(I):
【0037】
【化2】

[式中、XはNR、O、S、CHRからなる群から選択され;Rは(CHR−L−R(式中、xは0、1、2もしくは3である)であり;Lは単結合もしくは−C(O)−であり;Rは、H、(C−C)アルキル、F、(C−C)フルオロアルキル、(C−C)アルコキシ、−C(O)OH、−C(O)−NH、−(C−C)アルキルアミン、−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)フルオロアルキル、−C(O)−(C−C)アルキルアミン、および−C(O)−(C−C)アルコキシからなる群から選択される部分であり;そして、RはHであり、または、Rは、xが0であると共にLが単結合であるときにはRがHではないことを条件として、必要に応じて1〜3個の独立して選択される置換基で置換された、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリール、(C−C)シクロアルキル、(C−C)シクロアルケニルおよびヘテロ環からなる群から選択される部分である]の構造を有しており、または前述のものの活性代謝産物もしくは薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和物の形態を有している。
【0038】
更なる実施態様においては、(a)XはNRであり、ここで、RはHまたは(C−C)アルキルである;(b)xは0である;(c)xは1であって、Lは−C(O)−である;(d)Rは必要に応じて置換されたアリールである;(e)Rは必要に応じて置換されたヘテロアリールである;(f)XはNHであって、Rは必要に応じて置換されたアリールである[この実施態様は尚も更なる実施態様を含み、それらの実施態様では、(i)このアリール基は一つの置換基を有している;(ii)このアリール基は、ハロゲン、OH、O(C−C)アルキル、NH(C−C)アルキル、O(C−C)フルオロアルキルおよびN[(C−C)アルキル]からなる群から選択される一つの置換基を有している;(iii)このアリール基は一つの置換基を有しており、その置換基はOHである;(v)このアリールはフェニルである;または(vi)このアリールはナフチルである];(g)その化合物は、
【0039】
【化3】

であり、または前述のものの活性代謝産物もしくは薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和物である;(h)その化合物は、4−ヒドロキシフェニルレチンアミドであり、または前述のものの代謝産物もしくは薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和物である;(i)その化合物は、4−メトキシフェニルレチンアミド、または(j)4−オキソフェンレチニドであり、または前述のものの代謝産物もしくは薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和物である。
【0040】
更なる実施態様においては、式(I)の化合物の投与は、患者の体内における血清レチノールのレベルを下げることにより眼科的状態を治療するために行われる。更なる実施態様においては、(a)有効量の本化合物が哺乳動物に対して全身的に投与される;(b)有効量の本化合物が哺乳動物に対して経口的に投与される;(c)有効量の本化合物が哺乳動物に対して静脈内に投与される;(d)有効量の本化合物が哺乳動物に眼科的に投与される;(e)有効量の本化合物がイオントフォレーシスにより投与される;または(f)有効量の本化合物が哺乳動物に対して注射により投与される。
【0041】
更なる実施態様においては、この哺乳動物はヒトであり、これらの実施態様は、(a)このヒトがStargardt病に対する突然変異ABCA4遺伝子の保有者である実施態様、またはこのヒトがStargardt病に対する突然変異ELOV4遺伝子を有しているか、もしくは加齢性黄斑変性症と関わり合いのある補体因子Hにおける遺伝的変異を有している実施態様、または(b)このヒトが、Stargardt病、劣性網膜色素変性症、ジオグラフィックアトロフィー(そのうち、暗点は一つの非限定的な例である)、光受容体の変性、乾性型AMD、劣性錐体−桿状体ジストロフィー、滲出性(または湿性型)の加齢性黄斑変性症、錐体−桿状体ジストロフィー、および網膜色素変性症からなる群から選択される眼科的状態もしくは特質を有している実施態様を含む。更なる実施態様では、この哺乳動物は網膜変性症の動物モデルである。
【0042】
更なる実施態様においては、有効量の本化合物を複数回投与することを含む方法が提供され、これらの実施態様は、更に、(i)複数回の投与間の時間が少なくとも一週間である実施態様;(ii)複数回の投与間の時間が少なくとも一日である実施態様;および(iii)本化合物が哺乳動物に毎日投与される実施態様;または(iv)本化合物が哺乳動物に12時間毎に投与される実施態様を含む。更なる実施態様または代替的な実施態様においては、本方法は休薬期間を含み、ここでは、本化合物の投与は一時的に停止され、または投与される本化合物の用量が一時的に低減され;休薬期間の終了時には、本化合物の投薬が再開される。休薬期間の長さは2日間から1年間までであってよい。
【0043】
更なる実施態様においては、酸化窒素産生の誘導剤、抗炎症薬、生理学的に受容可能な酸化防止剤、生理学的に受容可能なミネラル、負に帯電したリン脂質、カロテノイド、スタチン、抗血管新生薬、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、13−cis−レチノイン酸(13−cis−レチノイン酸の誘導体を含む)、11−cis−レチノイン酸(11−cis−レチノイン酸の誘導体を含む)、9−cis−レチノイン酸(9−cis−レチノイン酸の誘導体を含む)およびレチニルアミン誘導体からなる群から選択される少なくとも一つの付加的な物質を投与することを含む方法が提供される。更なる実施態様では:
(a)この付加的な物質が酸化窒素産生の誘導剤であり、これらの実施態様は、その酸化窒素産生の誘導剤がシトルリン、オルニチン、ニトロソ化L−アルギニン、ニトロシル化L−アルギニン、ニトロソ化N−ヒドロキシ−L−アルギニン、ニトロシル化N−ヒドロキシ−L−アルギニン、ニトロソ化L−ホモアルギニンおよびニトロシル化L−ホモアルギニンからなる群から選択される実施態様を含み;
(b)この付加的な物質が抗炎症薬であり、これらの実施態様は、その抗炎症薬が非ステロイド系抗炎症薬、リポキシゲナーゼ阻害剤、プレドニゾン、デキサメタゾンおよびシクロオキシゲナーゼ阻害剤からなる群から選択される実施態様を含み;
(c)この付加的な物質が少なくとも一つの生理学的に受容可能な酸化防止剤であり、これらの実施態様は、その生理学的に受容可能な酸化防止剤がビタミンC、ビタミンE、ベータ−カロテン、補酵素Qおよび4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン−N−オキシルからなる群から選択される実施態様を含み、または(i)この少なくとも一つの生理学的に受容可能な酸化防止剤が式(I)の構造を有する本化合物と共に投与される実施態様、もしくは(ii)少なくとも二つの生理学的に受容可能な酸化防止剤が式(I)の構造を有する本化合物と共に投与される実施態様を含み;
(d)この付加的な物質が少なくとも一つの生理学的に受容可能なミネラルであり、これらの実施態様は、その生理学的に受容可能なミネラルが亜鉛(II)化合物、Cu(II)化合物およびセレン(II)化合物からなる群から選択される実施態様を含み、または更に哺乳動物に少なくとも一つの生理学的に受容可能な酸化防止剤を投与することを含む実施態様を含み;
(e)この付加的な物質が負に帯電したリン脂質であり、これらの実施態様は、その負に帯電したリン脂質がホスファチジルグリセロールである実施態様を含み;
(f)この付加的な物質がカロテノイドであり、これらの実施態様は、そのカロテノイドがルテインおよびゼアキサンチンからなる群から選択される実施態様を含み;
(g)この付加的な物質がスタチンであり、これらの実施態様は、そのスタチンがロスバスタチン、ピチバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン、フルバスタチン、コンパクチン、ロバスタチン、ダルバスタチン、フルインドスタチン、アトルバスタチン、アトルバスタチンカルシウムおよびジヒドロコンパクチンからなる群から選択される実施態様を含み;
(h)この付加的な物質が抗血管新生薬であり、これらの実施態様は、その抗血管新生薬がRhufab V2、トリプトファニル−tRNAシンテターゼ、抗−VEGFペギル化アプタマー、スクアラミン、酢酸アネコルタブ、コンブレタスタチンA4プロドラッグ、MacugenTM、ミフェプリストン、結膜下トリアムシノロンアセトニド、硝子体内結晶性トリアムシノロンアセトニド、AG3340、フルオシノロンアセトニドおよびVEGF−Trapである実施態様を含み;
(i)この付加的な物質がマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤であり、これらの実施態様は、そのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤がメタロプロテイナーゼの組織阻害剤、α−マクログロブリン、テトラサイクリン、ヒドロキサマート、キレート化剤、合成MMPフラグメント、スクシニルメルカプトプリン、ホスホンアミダートおよびヒドロキサム酸である実施態様を含み;
(j)この付加的な物質が13−cis−レチノイン酸(13−cis−レチノイン酸の誘導体を含む)、11−cis−レチノイン酸(11−cis−レチノイン酸の誘導体を含む)または9−cis−レチノイン酸(9−cis−レチノイン酸の誘導体を含む)であり;
(k)この付加的な物質が、オール−trans−レチニルアミン誘導体、13−cis−レチニルアミン誘導体、11−cis−レチニルアミン誘導体または9−cis−レチニルアミン誘導体を含む、レチニルアミン誘導体であり;
(l)この付加的な物質が、(i)式(I)の構造を有する本化合物の投与前に投与され、(ii)式(I)の構造を有する本化合物の投与後に投与され、(iii)式(I)の構造を有する本化合物の投与と同時的に投与され、もしくは(iv)式(I)の構造を有する本化合物の投与前と投与後の両方で投与され;または
(m)この付加的な物質と式(I)の構造を有する本化合物とが、同じ薬剤組成物中において投与される。
【0044】
更なる実施態様においては、哺乳動物に体外レオフェレーシスを施すことを含む方法が提供される。更なる実施態様では、哺乳動物に限局的網膜移動術、光線力学療法、ドルーゼンレーザー処置、黄斑円孔手術、黄斑移動術、Phi−Motion、陽子ビーム療法、網膜剥離および硝子体手術、強膜バックル、黄斑下手術、経瞳孔温熱療法、光化学系I療法、微少電流刺激、抗炎症薬、RNA干渉、眼用薬剤、例えばヨウ化ホスホリンもしくはエコチオファート、またはカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤などの投与、マイクロチップ埋め込み、幹細胞療法、遺伝子置換療法、リボザイム遺伝子療法、光受容体細胞/網膜細胞移植術、ならびに鍼治療からなる群から選択される治療法を施すことを含む方法が提供される。
【0045】
更なる実施態様においては、哺乳動物の眼からドルーゼンを除去するためにレーザー光凝固術を用いることを含む方法が提供される。
【0046】
更なる実施態様においては、式(I)の構造を有する有効量の第二の化合物を少なくとも一回哺乳動物に投与することを含む方法が提供され、ここで、前述の第一の化合物はこの第二の化合物とは異なるものである。
【0047】
更なる実施態様においては、レチノール−RBP−TTR複合体を検出及び/又は定量することができる装置が提供され、ここで、少なくともそのTTRの一部は蛍光標識されている。
【0048】
本明細書で開述されている方法および組成物の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるである。しかし、当業者にとっては、この詳細な説明から、本発明の精神および範囲内における様々な変更および修飾が明らかになるため、特定の実施態様を指示しているこれらの詳細な説明および特定の実施例は例証の目的でのみ与えられていることを理解すべきである。
【0049】
この明細書で言及されているすべての出版物および特許出願書類は、恰もそれぞれ個々の出版物または特許出願書類が参照により組み入れられるべく特定的および個別的に指示されているのと同一程度にまで、参照により本明細書に組み入れられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
(発明の詳細な説明)
次に、本明細書で開示されている方法および組成物の実施態様について詳細に言及する。これらの実施態様の例は、以下の実施例セクションで例証されている。
【0051】
別な具合に定められていない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般的に理解している意味と同じ意味を有している。本明細書で言及されているすべての特許書類および出版物は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0052】
レチノール−RBP−TTR複合体の形成をモジュレートする物質を検出するための一つの方法が図1に概略的に示されている。選択的な第一工程はサンプルの調製である。サンプルは、レチノール−RBP−TTR複合体の精製された成分を含んでいてよく;代替的に、サンプルは、これらに限定するものではないが、血液、血清、組織、粘液、唾液、涙液、尿または大便を含む生物学的な試料を含んでいてよい。更に、本明細書で開述されている方法および組成物は、試験動物及び/又は実験動物、例えばマウス、ラット、非ヒト霊長類などを用いて使用されてよい。このような試験動物及び/又は実験動物は、生きていてもよいし、または死んでいてもよい。このような更なる調製は、別の媒質内における分散化または懸濁化などを含め、これらの生物学的試料の均質化を含む。更に、これらのサンプルは、培養細胞を含んでいてよく、もしくは培養細胞から誘導されたものであってよく、または組織バンクから得られたものを含んでいてよく、もしくは組織バンクから得られたものから誘導されたものであってよく、または保管センターから得られたものを含んでいてよく、もしくは保管センターから得られたものから誘導されたものであってよい。
【0053】
この選択的なサンプルの調製後、例えば光で照射することにより、複合体の形成が検出される。本明細書で開述されている方法および装置は光のタイプまたは光源によって限定されるものではなく、即ち、この光は、単なる例として挙げれば、ランプ、レーザーまたは発光ダイオードから発せられたものであってよい。また、この光は、(あらゆるシーケンスにおいて)パルス化されていてよく、もしくは連続的であってもよく;更に、この光は、コヒーレント光であってもよいし、もしくは非コヒーレント光であってもよく;更に、この光は、偏光であってもよいし、偏光でなくてもよく;更に、この光は、フィルター(これらに限定するものではないが、バンドパスフィルターを含む)、ブロッキング(例えば空間フィルタリング)及び/又はフォーカシング装置を通過してよく;更に、この光は、サンプルのすべてを照射してもよいし、もしくはサンプルの一部のみを照射してもよい。サンプルを光照射するために使用される一つもしくは複数の波長範囲は、検出されるべき一つもしくは複数の蛍光性化合物に依存し、本明細書では、特定の化合物に対する更なる詳細が与えられている。好適には、この光照射工程において使用される光の一つもしくは複数の波長は、その後に検出及び/又は測定することができる蛍光信号を放射させるため、この蛍光性化合物を励起することができる波長であるべきである。更に、光照射用に使用される波長範囲は、その興味ある蛍光性化合物によってあまり吸収されない波長(例えば全く吸収されない波長)も含んでいてよく;そのような光は、基準信号として使用することができ、またはバックグラウンド減算用に使用することができる。しかし、そのような基準信号またはバックグラウンド信号の使用は、本明細書で開述されている方法および装置の必須要件ではない。更に、その照射光の吸光度も測定されてよく、その吸光度は、この検出工程において測定及び/又は検出された蛍光信号とは別個に使用されてもよいし、またはそのような蛍光信号と組み合わせて使用されてもよい。そのような吸光度信号は、本明細書の別の箇所で開述されている如く、特定の蛍光性化合物に対する診断用であってよい。この光照射工程に対する非常に重要な要件は、一つもしくは複数のこれらの蛍光性化合物が、サンプルに当てられた光のうちの少なくとも一部を吸収することである。また、この光照射工程を制御するため、マイクロプロセッサーの使用が用いられてもよい。どのようなサンプルにおいても、一つより多くのタイプの蛍光性化合物が存在していてよく;一つより多くの蛍光性化合物が存在しているときには、照射光は、一つのタイプの化合物のみにより吸収されるように与えられてよく、または複数のタイプの化合物により吸収されるように与えられてもよい。
【0054】
サンプルへの光照射後、サンプル中に存在する蛍光性化合物から放射された蛍光が検出される。放射されたこのような蛍光は、数多くのどのような方法によって検出されてもよく、または種々の方法の組み合わせにより検出されてもよい。例えば、この蛍光信号は、一つの波長のみで検出されてよく、種々の異なる波長で検出されてよく、ある波長範囲で検出されてよく、または複数の波長範囲にわたって検出されてもよい。固有の蛍光(specific fluorescence)が検出及び/又は測定されるときには、ここで述べられている方法のうちの一つが、その主要な成分に対応する特定の波長範囲を調べる。
【0055】
この検出工程から取得された情報またはデータは、様々な媒体に一時的または恒久的に保存されてよく、そのような媒体は、単なる例として挙げれば、フィルム、コンピューターの記憶装置または他のあらゆる形態のアーカイバル材料を含む。このような記録の保持及び/又は情報およびデータの保存は、一般的に、検査室の業務、及び/又は患者の診断および治療と関わっており、更には(インビボまたはインビトロにおける)モジュレーターまたは治療薬の有効性を試験するためのものである。そのような情報を保存またはアーカイブすることにより、当業者は、そのサンプルの時間的解析を生み出すこともできる。その上、それらのアーカイブされた情報、データまたは画像は、望ましい場合には、更に処理(例えば、拡大、強化、デコンボリューション、疑似カラー化、定量化)を施すこともできる。
【0056】
これらの選択的なサンプルの調製、サンプルの光照射、蛍光の検出および選択的な情報の保存は、一つの検出サイクルと見なすことができる。そのようなものとして、本明細書では、一つのサンプルに対してこの検出サイクルを反復することが想定されている。勿論、サンプルが既に調製されている場合には、サンプルを再調製する必要はなく、特に、検出サイクル間の時間インターバルが短い場合(例えば、10秒未満、1分未満、5分未満もしくは1時間未満、更には1日未満)には、サンプルの再調製は必要でない。単なる例として挙げれば、測定の正確度を確保するために検出サイクルの反復が必要になってよく、この場合、検出サイクル間の時間インターバルは比較的短くてよい。検出サイクル間のインターバルが比較的長い場合には、サンプルの保管が必要になり得る。更に、治療薬または潜在的モジュレーターを用いてサンプルが試験される場合(例えば、新薬の試験及び/又は設計)には、検出サイクル間のインターバルは、サンプルに更なる操作を施すために用いられてよい。検出サイクル間の時間は、10秒未満、1分未満、5分以上、1時間以上、更には1日以上であってよい。検出サイクル間の継続時間、および検出サイクルが反復される回数は当業者の判断力の範囲内である。どのようなケースにおいても、検出サイクル間の継続時間は一様である必要はなく、複数の反復サイクルの組み合わせであってよい。
【0057】
一つもしくは複数の検出サイクルから収集された情報は、数多くの目的のために選択的に使用されてよく、例えば、サンプルから検出された吸光度及び/又は蛍光がサンプルの状態に対する代理マーカー及び/又はリスクファクターとして使用されてよい。非限定的な例は、(a)サンプルに治療学的候補物質を加えた後に、そのサンプル中に存在する一つもしくは複数の蛍光性化合物の量の変化を測定することにより、インビトロサンプルまたはインビボサンプル(齧歯動物またはABCA4ノックアウトマウスを含めた生きている実験動物にレチノール−RBP−標識TTRの成分を注射することを含む)中における、関連する眼科的疾患または状態(網膜変性症及び/又は黄斑変性症(湿性形態と乾性形態との両方の加齢性黄斑変性症を含む)またはジストロフィーを含む)に対する治療学的候補物質の有効性を測定すること;および(b)実験動物に治療を施した後に、そのサンプル中に存在する一つもしくは複数の蛍光性化合物の量の変化を測定することにより、インビボサンプル(齧歯動物またはABCA4ノックアウトマウスを含めた生きている実験動物にレチノール−RBP−標識TTRの成分を注射することを含む)中における、関連する眼科的疾患または状態(網膜変性症及び/又は黄斑変性症(湿性形態と乾性形態との両方の加齢性黄斑変性症を含む)またはジストロフィーを含む)に対する治療の有効性を測定すること;を含む。
【0058】
本明細書で使用する場合、「ABCA4遺伝子」という用語は、リム(rim)タンパク質またはRmPをエンコードする遺伝子を表す。このABCA4遺伝子はABCR遺伝子としても知られている。
【0059】
本明細書で使用する場合、「酸化防止剤」という用語は、ある化合物または生物学的物質の酸化を防止、遅延または別な仕方で抑制することができる合成または天然の物質を表す。
【0060】
本明細書で使用する場合、「デコンボリューションする」という用語は、データ、情報及び/又は画像を(少なくとも部分的に)構成成分に変換するプロセスを表す。例えば、複雑な波形を特徴とする蛍光スペクトルまたは吸光度スペクトルは、その複雑な波形を構成している別々の吸光度ピークまたは蛍光ピークに数学的にデコンボリューションすることができる。当技術分野において、適切な数学的手順およびアルゴリズムが広く知られており、また、データ、情報及び/又は画像をデコンボリューションするための適切なソフトウェアパッケージを商業的に入手することもできる。
【0061】
本明細書で使用する場合、「視覚サイクルの撹乱」または同様な用語は、視覚サイクルに関わっている少なくとも一つの酵素の活性を直接的または間接的にモジュレートするためのあらゆる手段を表す。
【0062】
本明細書で使用する場合、「分散させる」という用語は、ある物質を別の媒質中に懸濁させることを表す。分散させる工程は、懸濁化工程を促進させるため、ある物質の均質化工程、分画化工程、細分化工程、流動化工程またはサイズの低減化工程を含むことができる。
【0063】
本明細書で使用する場合、レチニル誘導体という用語は、様々なcisまたはtransレチナール異性体のうちの一つを別の化合物もしくは一連の化合物と反応させることにより生成され得る化合物を表す。
【0064】
本明細書で使用する場合、「加齢性黄斑変性症もしくはジストロフィー」または「ARMD」という用語は、湿形態性および乾性形態のARMDを含む衰弱性疾患を表す。すべてのケースのうちの約90パーセントを占める乾性形態のARMDは、萎縮性、非滲出性またはドルーゼノイド(drusenoid)(加齢性)黄斑変性症としても知られている。乾性形態のARMDの場合、ドルーゼンは、典型的には、Bruch膜の下側/Bruch膜内の網膜色素上皮(PRE)組織に蓄積する。その際、ドルーゼンが黄斑内に存在する光受容体の機能を妨害したときに視力喪失が起こり得る。乾性形態のARMDは長い年数を掛けて漸進的な視力の喪失をもたらす。また、乾性形態のARMDは湿性形態のARMDをもたらし得る。滲出性または血管新生(加齢性)黄斑変性症としても知られている湿性形態のARMDは、急速に進行し、中心視覚に重大な損傷をもたらし得る。黄斑ジストロフィーは、Stargardt黄斑ジストロフィーまたは黄斑眼底としても知られているStargardt病を含み、Stargardt病は、最も頻繁に遭遇する若年発症型の黄斑ジストロフィーである。
【0065】
本明細書で使用する場合、「哺乳動物」という用語は、ヒトを含むすべての哺乳動物を表す。哺乳動物は、単なる例として挙げれば、ヒト、ヒト以外の霊長類、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラット、マウスおよびウサギを含む。
【0066】
本明細書で使用する場合、「生物学的なサンプル」という用語は、哺乳動物の眼、血漿、血液、尿、大便、組織、粘液、涙液または唾液を表す。
【0067】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、被験体または患者にとって意味のある便益性を示すのに充分な、本薬剤調合物または本方法における治療薬の合計量を表す。
【0068】
本明細書で使用する場合、「放射蛍光を測定する」という用語は、(a)ある形態の光照射による励起後、その化合物からの蛍光の存在を検出することにより、蛍光性化合物の存在を検出するためのあらゆる手段、(b)ある形態の光照射による励起後、サンプル中に存在する蛍光性化合物により放射される蛍光の(絶対的または相対的)強度を測定することにより、蛍光性化合物の量を測定するためのあらゆる手段、ならびに(c)上述の検出および測定を組み合わせて行うためのあらゆる手段を表す。
【0069】
本明細書で使用する場合、「発光スペクトル」という用語は、波長の関数として、放出された放射線の相対強度をプロットしたものを表す。
【0070】
本明細書で使用する場合、「発光波長」という用語は、光エネルギーによる励起で放出される放射線の最大波長または波長範囲を表す。
【0071】
本明細書で使用する場合、「励起波長」という用語は、白熱ランプまたはレーザーなどの外部エネルギー源により供給され、発蛍光性原子団により吸収されて励起電子一重項状態を創出する、エネルギーhνEXの光子に相当する外部エネルギー源の波長を表す。
【0072】
本明細書で使用する場合、「蛍光性部分」という用語は、蛍光を発する種または物質を表す。
【0073】
本明細書で使用する場合、「アクセプター蛍光性部分」という用語は、ドナー蛍光性種からのドナー電子を受容する、FRET検出における発蛍光性の種または物質を表す。
【0074】
本明細書で使用する場合、「蛍光共鳴エネルギー移動」または「FRET」という用語は、アクセプター種とドナー種との間でのエネルギーの移動を表し、ここで、アクセプター種の吸収スペクトルは、ドナー種の発光スペクトルと重なり合っている。
【0075】
本明細書で使用する場合、「眼科的疾患または状態」という用語は、眼または関連する組織に関わるあらゆる疾患または状態を表す。非限定的な例は、網膜ジストロフィー及び/又は黄斑ジストロフィー、ならびに網膜変性症及び/又は黄斑変性症を含め、網膜及び/又は黄斑の変性に関わる疾患もしくは状態を含む。
【0076】
本明細書で使用する場合、「固定化された」という用語は、化学的な種または生物学的な種が、支持体に共有結合により結合されている状態、または共有結合以外の仕方で結合されている状態を表す。
【0077】
本明細書で使用する場合、「霊長類」という用語は、最高位の哺乳動物を表し;人間、類人猿および猿を含む。
【0078】
本明細書で使用する場合、「リスク」という用語は、ある事象が起こる可能性を表す。
【0079】
視覚サイクル
脊椎動物の網膜は二つのタイプの光受容体細胞を含んでいる。桿状体は、特に、微光条件下における視力用である。錐体はそれより感度が低く、高い時間分解能および空間分解能で視力をもたらし、また、色知覚を可能に成している。昼光条件下においては、桿状体の応答が飽和し、視力は、完全に錐体により取り成される。どちらのタイプの細胞も、積み重なった膜性円板を含む外側セグメントと呼ばれる構造を含んでいる。視覚伝達の反応は、これらの円板の表面で起こる。視覚の第一工程は、レチナール発色団の11−cis型からオール−trans型への異性化に関わるオプシン−色素分子による光子の吸収である。光感受性を取り戻すことができるようになる前には、結果として生じたオール−trans−レチナールをオプシンアポタンパク質から解離し、11−cis−レチナールへ異性化しなければならない。
【0080】
脊椎動物の眼の解剖学的構成、ロドプシンを再生するための視覚サイクル、およびA2E−オキシランの生物発生に関する更なる情報は、2004年6月23日に出願された米国仮特許出願第60/582,293号、2004年8月18日に出願された米国仮特許出願第60/602,675号、および2004年10月25日に出願された米国仮特許出願第60/622,213号に与えられており、これらの仮特許出願の内容は、参照によりそれらの内容全体が本明細書に組み入れられる。
【0081】
黄斑または網膜の変性
上で検討されているように、黄斑変性症(網膜変性症とも呼ばれる)は、網膜の中央部分に存在する黄斑の変性に関わる眼の疾患である。黄斑変性症の症例のうち約85%から90%までが「乾性」(萎縮性または非血管新生)型である。
【0082】
「乾性」黄斑変性症のケースにおいては、網膜の劣化が、黄斑下における、ドルーゼンとして知られている小さな黄色い沈着物の形成とかかわり合っている。この現象は、黄斑の菲薄化および乾燥化をもたらす。ドルーゼンにより引き起こされる網膜の菲薄化の場所および量は、中心視覚喪失の量と直接的に相関している。網膜色素上皮層の変性およびドルーゼン上に存在する光受容体は、萎縮性になり、中心視覚の遅速化をもたらす。これは、十年もしくはそれ以上の年月を掛けて起こることが多い。
【0083】
加齢性黄斑変性症により視力を喪失する殆どの人々は、「湿性」の黄斑変性症を有している。「湿性」(血管新生)黄斑変性症においては、網膜下血管新生として知られている、眼の脈絡膜層からの異常な血管が網膜および黄斑下において成長する。これらの血管は線維性組織を伴って増殖し、黄斑下において出血および液漏れを起こす傾向があり、これが原因となって、黄斑の膨隆または移動、および中心視覚の歪みがもたらされる。急性失明は、濾出液または出血が網膜内もしくは網膜の下側に蓄積したときに起こる。恒久的な失明は、網膜の外側が萎縮性になったとき、または線維性組織で置き換えられたときに起こる。
【0084】
Stargardt病
Stargardt病は、幼年時代の発症を伴う劣性型の黄斑変性症として発現する黄斑ジストロフィーである。例えば、AllikmetsらのScience、277:1805−07(1997)を参照のこと。Stargardt病は、臨床的には、中心視覚の進行性喪失および黄斑上に存在するRPEの進行性萎縮により特徴付けられる。RmPに対するヒトABCA4遺伝子の突然変異がStargardt病に関与している。疾病経過の早期に、患者は暗順応の遅延を示すが、それ以外では、正常な桿状体機能を示す。組織学的には、Stargardt病は、RPE細胞におけるリポフスチン色素顆粒の沈着とかかわり合っている。
【0085】
Stargardt病のほかに、ABCA4の突然変異は、劣性色素性網膜炎、劣性錐体−桿状体ジストロフィーおよび非滲出性加齢性黄斑変性症(AMD)に関わりがあるものと見なされており(但し、AMDにおけるABCA4突然変異の一般性(prevalence)は未だ確かではない)、例えば、LewisらのAm.J.Hum.Genet.、64:422−34(1999)を参照のこと。更に、AllikmetsのAm.J.Hum.Gen.、67:793−799(2000)を参照のこと。Stargardt病と同様に、これらの疾患は、桿状体の暗適応の遅延とかかわり合っている。RPE細胞内におけるリポフスチン沈着は、AMD(KliffenらのMicrosc.Res.Tech.、36:106−22(1997)参照)、ならびに色素性網膜炎および錐体−桿状体ジストロフィーの幾つかの症例でも顕著に見られる。
【0086】
この病期の患者を検査した眼科医は、殆どの人々が何ら症状を有していないにもかかわらず、これらのドルーゼンの存在に気付く可能性がある。検査でドルーゼンの存在に気付いたときには、長い期間を掛けてモニタリングすることが必要になるであろう。60歳以上の多くの人々は、幾分かのドルーゼンを有しているであろう。
【0087】
レチノール−レチノール結合タンパク質(RBP)−トランスチレチン(TTR)結合のモジュレーション
本明細書で開述されている方法および組成物は、レチノール結合タンパク質(RBP)に結合するレチノールの検出およびモジュレーターのスクリーニング、ならびに輸送複合体レチノールRBP−TTRの検出およびモジュレーターのスクリーニングに有用である。ビタミンA(オール−trans型のレチノール)は、デノボ合成することができない必要不可欠な細胞栄養素であり、それ故、食事源から得られなければならない。消化後、食物材料中に存在していたレチノールは、肝臓へ輸送され、脂質集合体に結合される。BellovinoらのMol.Aspects Med.、24:411−20(2003)を参照のこと。肝臓に輸送されると、レチノールは、レチノール結合タンパク質(RBP)との複合体を形成し、その後、血液循環系に分泌される。レチノール−RBPホロタンパク質が眼などの肝外標的組織へ送給できるようになる前には、レチノール−RBPホロタンパク質はトランスチレチン(TTR)と結合しなければならない。ZanottiおよびBerni、Vitam.Horm.、69:271−95(2004)。レチノールを循環系に長時間留まることができるように成しているのは、この二次的な複合体である。TTRとの連合は、肝細胞からのRBP放出を促進し、RBP−レチノール複合体の腎臓濾過を防ぐ。レチノール−RBP−TTR複合体が標的組織へ送給され、そこで、レチノールが吸収され、様々な細胞プロセスで利用される。RBP−TTR複合体による循環系を通じてのレチノールの細胞への送給は、細胞および組織がレチノールを獲得するための主要な経路である。
【0088】
レチノール結合タンパク質、またはRBPは、分子量が約21kDの単一のポリペプチド鎖である。RBPは、クローニングおよび配列決定が為されており、また、そのアミノ酸配列も決定されている。Colantuniら、Nuc.Acids Res.、11:7769−7776(1983)。RBPの三次元構造は、脂溶性ビタミンレチノールを結合および保護するように設計された特殊な疎水性ポケットの存在を明らかにしている。Newcomerら、EMBO J.、3:1451−1454(1984)。インビトロ実験にいて、培養肝細胞は、RBPを合成および分泌することが示されている。Balner,W.S.、Endocrine Rev.、10:308−316(1989)。その後に行われた種々の実験は、多くの細胞がRBPに対するmRNAを含んでいることを示しており、これは、RBP合成が全身隈無く広範囲にわたって分布していることを示唆している(Blaner(1989))。肝臓で分泌される殆どのRBPは1:1のモル比でレチノールを含んでおり、RBPへのレチノールの結合は、正常なRBP分泌にとって必要である。
【0089】
細胞内では、RBPが小胞体内のレチノールにしっかりと結合しており、そこでは、RBPが高濃度で見られる。RBPへのレチノールの結合は、小胞体からゴルジ複合体へのレチノール−RBPの転位を開始させ、続いて、それらの細胞からのレチノール−RBPの分泌がもたらされる。肝細胞から分泌されたRBPは肝細胞から星細胞へのレチノールの移動をも助け、星細胞で血漿内へのレチノール−RBPの直接的な分泌が起こる。
【0090】
血漿内では、血漿RBPのうちの約95%が1:1のモル/モル比でトランスチレチン(TTR)と連合しており、ここでは、本質的にすべての血漿ビタミンAがRBPに結合されている。TTRは、分子量が54,980の4つの同じサブユニットからなる、良好に特徴付けが成された血漿タンパク質である。X線回折により解明された完全三次元構造は、四面体的に配列された広範なβ−シートの存在を明らかにしている。Blakeら、J.Mol.Biol.、121:339−356(1978)。このテトラマーの中心を通って一つのチャンネルが走っており、そこには、チロキシンに対する二つの結合部位が配置されている。しかし、負の協同性のため、通常は、一つのチロキシン分子のみがTTRに結合しているものと思われる。RBP−レチノールへのTTRの複合体化は、レチノールの糸球体濾過を低減させ、これにより、血漿中のレチノールおよびRBPの半減期が約三倍延長されているものと考えられる。例えばBlomhoff(1994)を参照のこと。
【0091】
複合体化されたレチノール−RBP−TTRの形態からの細胞内へのレチノール取り込みは、標的細胞に存在する細胞受容体へのRBPの結合により起こる。この相互作用はRBP−受容体複合体のエンドサイトーシスを引き起こし、その後に生じるその複合体からのレチノールの放出、または細胞性レチノール結合タンパク質(CRBP)へのレチノールの結合、更には、その後に生じるそれらの細胞による血漿内へのアポRBPの放出をもたらす。レチノールを単独で細胞内に取り込むことを含め、他の経路は、レチノールを細胞内へ進入させるための種々の代替的なメカニズムを想定している。再調査の際には、Blomhoff(1994)を参照のこと。
【0092】
リポフスチンの主要な発蛍光性原子団であるA2Eは、A2Eの前駆体である視覚サイクルレチノイド、オール−trans−レチンアルデヒドの過剰な産生のため、加齢性黄斑変性症およびStargardt病を含め、黄斑または網膜の変性症もしくはジストロフィーで形成される。それ故、網膜のビタミンAおよびオールtrans型レチンアルデヒドを低減することは、A2Eおよびリポフスチンの構築を低減させる上で有益であり、また、加齢性黄斑変性症の治療にも有益であろう。複数の研究により、血清レチノールを下げることがRPE中におけるA2Eおよびリポフスチンを低減させる上で有益な効果を果たし得ることが確かめられている。例えば、ビタミンA欠乏食が与えられ続けた動物は、リポフスチン蓄積量の有意な低減を呈することが示されている。Katzら、Mech.Ageing Dev.、35:291−305(1986);Katzら、Mech.Ageing Dev.、39:81−90(1987);Katzら、Biochim.Biophys.Acta、924:432−41(1987)。ビタミンAレベルを低減させることが黄斑変性症およびジストロフィーの進行にとって有益であり得ることの更なる証拠がRaduらによって示されており、そこでは、眼のビタミンAレベルの低減がリポフスチンとA2Eとの両方の低減をもたらした。Raduら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、100:4742−7(2003);Raduら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101:5928−33(2004)。
【0093】
レチノイン酸類似体、N−4−(ヒドロキシフェニル)レチンアミドの投与は、血清レチノールおよびRBPの大いなる低減をもたらすことが示されている。Formelliら、Cancer Res.49:6149−52(1989);Formelliら、J.Clin Oncol.、11:2036−42(1993);Torrisiら、Cancer Epidemol.Biomarkers Prev.、3:507−10(1994)。幾つかのインビトロ研究は、HPRがTTRとRBPとの正常な相互作用を妨害することを示している。Malpeliら、Biochim.Biophys.Acta 1294:48−54(1996);Holvenら、Int.J.Cancer 71:654−9(1997)。
【0094】
従って、レチノールがRBPもしくはRBP−TTR複合体に結合するのを妨害するか、またはレチノールおよびRBPの腎排泄を高めるかのいずれかにより、細胞へのレチノールの送給を抑制するモジュレーター(例えばHPR)は、眼などの標的組織における血清レベル、ならびにレチノールおよびレチノール誘導体の構築を低減させるのに有用であろう。本明細書で開述されている方法および組成物は、そのようなモジュレーターを検出およびスクリーニングする手段を提供し、また、レチノール結合モジュレーターをスクリーニングするためのキットを提供する。
【0095】
一つの実施態様は、レチノール−RBP−TTR複合体形成をモニタリングするためのレチノール、レチノール結合タンパク質(RBP)およびトランスチレチン(TTR)を提供する。レチノール、またはビタミンAは、眼などの標的器官へ輸送するため、レチノール結合タンパク質を含め、様々な結合タンパク質に結合する。ビタミンAは、結合活性を含め、レチノールの生物活性を持った化合物を表す一般名称である。1レチノール当量(RE)は、1μgのオール−trans型レチノール(3.33IU)または6μg(10IU)のベータ−カロテンの比生物活性度である。ベータ−カロテン、レチノールおよびレチナールは、すべて、効果的で信頼性のあるビタミンA活性を持っている。
【0096】
レチノール−RBP−TTR複合体形成の潜在的なモジュレーターの幾つかの例は、トレチノイン(オールtrans−レチノイン酸)およびイソトレチノイン(13−cis−レチノイン酸)などのビタミンAの誘導体を含み、これらの誘導体は、座瘡および特定の他の皮膚疾患の治療に使用されている。他の誘導体は、フェンレチニド(N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド)、MPRおよびエチルレチンアミドを含む。本明細書で開示されている方法および組成物の幾つかの側面においては、レチノールの誘導体、レチニル誘導体および関連するレチノイドは単独で使用されてよく、またはレチノールの他の誘導体もしくは関連するレチノイドと組み合わせて使用されてもよいことが想定されている。
【0097】
フェンレチニド(以後、ヒドロキシフェニルレチンアミドと呼ぶ)は、本明細書で開示されている組成物および方法において特に有用である。以下で説明されているように、フェンレチニドは、レチノール、RBPおよびTTR複合体形成のモジュレーターとして使用されてよい。本明細書で開述されている方法および組成物の幾つかの側面においては、フェンレチニドの誘導体が、フェンレチニドの代わりに使用されてよく、またはフェンレチニドと組み合わせて使用されてよい。本明細書で使用する場合、「フェンレチニド誘導体」という用語は、その化学構造が4−ヒドロキシ部分およびレチンアミドを含む化合物を表す。HPRの最も一般的な代謝産物はMPRであり、MPRは、同じく血清レチノールレベルを低下させることができる化合物である。従って、本明細書におけるHPRまたはフェンレチニドへの言及は、代謝産物MPRを含む。
【0098】
幾つかの実施態様においては、使用され得るフェンレチニドの誘導体は、これらに限定するものではないが、N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド−O−グルクロニドのC−グリコシドおよびアリールアミド類似体を含み、例えば、これらに限定するものではないが、4−(レチンアミド)フェニル−C−グルクロニド、4−(レチンアミド)フェニル−C−グルコシド、4−(レチンアミド)フェニル−C−キシロシド、4−(レチンアミド)ベンジル−C−グルクロニド、4−(レチンアミド)ベンジル−C−グルコシド、4−(レチンアミド)ベンジル−C−キシロシドを含み;また、レチノイルβ−グルクロニド類似体、例えば、米国特許第5,516,792号、第5,663,377号、第5,599,953号、第5,574,177号およびBhatnagarらのBiochem.Pharmacol.、41:1471−7(1991)(これらの各特許および参考文献は、参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている、1−(β−D−グルコピラノシル)レチンアミドおよび1−(D−グルコピラノシルウロノシル)レチンアミドなどを含む。
【0099】
別の実施態様においては、他のビタミンA誘導体が使用されてよく、そのような誘導体は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,743,400号で開示されているものを含む。これらのレチノイドは、例えば、オール−transレチノイルクロリド、オール−trans−4−(メトキシフェニル)レチンアミド、13−cis−4−(ヒドロキシフェニル)レチンアミドおよびオール−trans−4−(エトキシフェニル)レチンアミドを含む。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,310,546号は、N−(4−アシルオキシフェニル)−オール−transレチンアミド、例えばN−(4−アセトキシフェニル)−オール−trans−レチンアミド、N−(4−プロピオニルオキシフェニル)−オール−trans−レチンアミドおよびN−(4−n−ブチリルオキシフェニル−)オール−trans−レチンアミドなどを開述しており、これらのレチンアミドは、すべて、特定の実施態様における使用が想定されている。
【0100】
他のビタミンA誘導体または代謝産物、例えばN−(1H−テトラゾル−5−イル)レチンアミド、N−エチルレチンアミド、13−cis−N−エチルレチンアミド、N−ブチルレチンアミド、エトレチン(アシトレチン)、エトレチナート、トレチノイン(オール−trans−レチノイン酸)またはイソトレチノイン(13−cis−レチノイン酸)なども特定の実施態様における使用を想定することができる。米国仮特許出願第60/582,293号および第60/602,675号を参照のこと;また、TurtonらのInt.J.Exp.Pathol.、73:551−63(1992)も参照のこと(これらの特許および参考文献はすべて参照により本明細書に組み入れられる)。
【0101】
他の潜在的なモジュレーターは、これらに限定するものではないが、非ステロイド系抗炎症薬を含み、単なる例として挙げれば、フルフェナム酸、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ジフルニサル、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、フェノプロフェンおよびインドメタシンなどを含む。他の潜在的なモジュレーターは、これらに限定するものではないが、ビアリール、ビアリールアミン、スチルベンおよびジベンゾフランを含む。更なる例証的な潜在的モジュレーターは、PurkeyらのProc.Natl.Acad.Sci.、98:5566−71(2001)に見出すことができ、この参考文献は、これをもって、参照により、その内容全体が本明細書に組み入れられる。
【0102】
他の潜在的なモジュレーターは、低分子、ポリペプチド、核酸および抗体を含む。例えば、本明細書で開述されている方法および組成物は、本明細書で開示されている教示と併用して、低分子のライブラリー、核酸のライブラリー、ペプチドのライブラリーまたは抗体のライブラリーをスクリーニングするために使用することができる。組み合わせライブラリーおよび上で開示されている他のライブラリーなどの様々なライブラリーをスクリーニングするための方法は、米国特許第5,591,646号;第5,866,341号;および第6,343,257号などに見出すことができ、これらの特許は、これをもって、参照により、それらの内容全体が本明細書に組み入れられる。
【0103】
一つの実施態様においては、本明細書で開示されている方法および組成物は、レチノール−RBP−TTR複合体メンバーを標識化するために適用することができる。この手法では、標識物質、例えば酵素、蛍光物質、放射性標識物質、化学発光物質、アビジンおよびビオチンなどの特異結合対、リガンド、ならびに抗体、例えばジゴキシンおよび抗ジゴキシンなどが使用され、興味のあるタンパク質、例えばTTRなどが上で指示されている標識物質で標識されてよい。一つの実施態様においては、発蛍光性原子団がTTRに結合される。幾つかの実施態様では、それらのタンパク質が、380nmから480nmまでの間の吸光度スペクトルを有し、且つ、520nmから600nmまでの間の発光スペクトルを有する発蛍光性原子団で標識される。別の実施態様においては、それらのタンパク質が、410nmから490nmまでの間の吸光度スペクトルを有し、且つ、530nmから595nmまでの間の発光スペクトルを有する発蛍光性原子団で標識されてよい。当業者であれば、レチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターを同定するため、本明細書で開示されている教示と併用して、他の発蛍光性原子団部分を使用し得ることが認識されよう。
【0104】
使用され得る代表的な発蛍光性原子団は、N−((2−(ヨードアセトキシ)エチル)−N−メチル)アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、4−ジヘキサデシルアミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサン酸、スクシンイミジル6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサノアート、ルシファーイエローヨードアセトアミド、N−(5−アミノペンチル)−4−アミノ−3,6−ジスルホ−1,8−ナフタルイミド、N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)エチレンジアミン、1−(2−マレイミジルエチル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムメタンスルホナート、1−(2,3−エポキシプロピル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(3−(スクシンイミジルオキシカルボニル)ベンジル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムブロミド、および3−(4−カルボキシベンゾイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒド、3−(2−フロイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒドを含む。一つの実施態様においては、これらのタンパク質は、バックグラウンドタンパク質またはレチノール蛍光からの干渉が極めて少ない染料で標識される。そのようなバックグラウンド干渉は、RBP上の内部芳香族アミノ酸残基またはレチノール自体に由来する。従って、本明細書で開示されている教示においては、RBPまたはレチノールとははっきり異なる波長を吸収および放射する染料が望ましいであろう。
【0105】
一つの実施態様は、ALEXA FLUOR(登録商標)染料(蛍光性化学物質および生体分子標識キット、Molecular Probes,Inc.)の使用を提供し、この染料は、380nmから480nmまでの間の吸光度スペクトルを有し、且つ、520nmから600nmまでの間の発光スペクトルを有している。例えば、ALEXA FLUOR(登録商標)430は、430nmの波長を吸収し、約540nmの波長を放射する。当業者であれば、本明細書で提示されている開示と共に、実践者が入手可能な多くの様々な染料により、実践者が本明細書で開示されている目的に適した発蛍光性原子団染料を選ぶことが可能になることが認識されよう。
【0106】
タンパク質(例えばTTRなど)は、ALEXA FLUOR(登録商標)430タンパク質標識キット(Molecular Probes,Inc.、Eugene、OR)を含め、商業的に入手可能なキットを用いて発蛍光性原子団で標識されてよい。代替的に、タンパク質は反応性リンカーを持った発蛍光性原子団標識物質で標識されてもよく(例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,140,041号を参照のこと)、または興味あるタンパク質に共有結合により結合される発蛍光性原子団標識物質で標識されてもよい。当業者であれば、選択された発蛍光性原子団のタイプに依存して、他の標識化手段が明らかになるであろう。
【0107】
また、本明細書で開示されている標識物質は、好適には蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)検出において使用するため、アクセプター蛍光性部分も含んでいてよい。FRETは結合事象を表す信号を検出し、その結合事象では、別の発蛍光性原子団もしくは消光物質のいずれかである蛍光共鳴エネルギーアクセプター部分から蛍光共鳴エネルギードナー部分を隔たらせている距離の変化によってサンプルの蛍光が変わる。発蛍光性原子団および相互作用する分子または部分の組み合わせは「FRETペアー」として知られている。FRET−ペアーの二つのメンバー間におけるエネルギーの移動は、このペアーの第二メンバーの吸収スペクトルがこのペアーの第一メンバーの発光スペクトルと重なり合っていることを必要とする。
【0108】
FRET検出においては、第一プローブは、第一プローブ蛍光ドナーまたはアクセプターを含む。第二プローブは、第二蛍光ドナーまたはアクセプターを含む。これらの第一蛍光ドナーまたはアクセプターおよび第二蛍光ドナーまたはアクセプターは、予め定められた波長または波長帯の光による蛍光ドナーの活性化に応答して相互に蛍光共鳴エネルギー移動を起こすことができる蛍光ドナーおよび蛍光アクセプターを含むドナー/アクセプターペアーを形成すべく選択される。
【0109】
蛍光性部分およびそれと対を成す部分の励起および発光スペクトルにより、それが蛍光ドナーであるが蛍光アクセプターであるかが決まる。それらの蛍光染料は、ドナー発蛍光性原子団の発光スペクトルがアクセプター発蛍光性原子団の励起スペクトルと重なるように選択される。更に、幾つかの方法においては、高い減衰係数および低い蛍光量子収率を有するドナー発蛍光性原子団は、そのドナー発蛍光性原子団の励起波長で強く発光しないアクセプター発蛍光性原子団とペアーが組まれる。シアニンドナー(例えばCYA)とローダミン染料(例えばR110、R6G、TAMRAおよびROX)は、そのようなペアーの一例である。本明細書で開示されている方法で効果的に使用することができるドナーとアクセプターのペアーの選択に関する更なる指針は:Fluorescence Spectroscopy(Pesceら編集)Marcel Dekker、New York、(1971);Whiteら、Fluorescence Analysis:A Practical Approach、Marcel Dekker、New York、(1970);Berlman、Handbook of Fluorescence Spectra of Aromatic Molecules、第二版、Academic Press、New York、(1971);Griffiths、Colour and Constitution of Organic Molecules、Academic Press、New York、(1976);Indicators(Bishop編集).Pregamon Press、Oxford、19723;およびHaugland、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、Molecular Probes、Eugene(1992);を含む。
【0110】
蛍光共鳴エネルギー移動の効率は、D×10−6に比例することが報告されており、ここで、Dは、ドナーとアクセプターとの間の距離である(Forster,Z.Naturforsch A、4:321−327(1949))。従って、蛍光共鳴エネルギー移動は、典型的には、10−70Åの間の距離で起こる。検出は、蛍光性のドナーにより放射された光、蛍光性のアクセプターにより放射された光、または蛍光性のドナーとアクセプターとの両方から放射された光(即ち、比)を検出することにより果たされる。一つの実施態様においては、蛍光性のドナーと蛍光性のアクセプターが共に発蛍光性原子団である。第一の発蛍光性原子団は、その特定の発蛍光性原子団の関数(function)である適切な波長または波長帯の光で活性化される。一つの代替的な実施態様では、蛍光性ドナーが発蛍光性原子団であって、蛍光性アクセプターは消光物質であり、検出は、その発蛍光性原子団の発光を測定することにより果たされる。
【0111】
一つの実施態様においては、レチノール−RBP−TTR複合体の一つのメンバーが蛍光性アクセプターで標識される。例えば、蛍光性アクセプター分子をTTRタンパク質またはポリペプチドに結合させ、その後、FRET検出法によりその蛍光性アクセプター分子を検出することができる。使用され得る代表的な発蛍光性原子団は、N−((2−(ヨードアセトキシ)エチル)−N−メチル)アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、4−ジヘキサデシルアミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサン酸、スクシンイミジル6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサノアート、ルシファーイエローヨードアセトアミド、N−(5−アミノペンチル)−4−アミノ−3,6−ジスルホ−1,8−ナフタルイミド、N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)エチレンジアミン、1−(2−マレイミジルエチル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムメタンスルホナート、1−(2,3−エポキシプロピル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(3−(スクシンイミジルオキシカルボニル)ベンジル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムブロミド、3−(4−カルボキシベンゾイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒド、3−(2−フロイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒドを含む。これらのタンパク質は、380nmから480nmまでの間の吸光度スペクトルを有し、且つ、520nmから600nmまでの間の発光スペクトルを有するALEXA FLUOR(登録商標)染料で標識されてもよい。
【0112】
一つの実施態様においては、TTRがアクセプター発蛍光性原子団で標識されているレチノール−RBP−TTRタンパク質複合体は、275nmから295nmまでの間の光で励起されてよく、また、発光波長は330nmから650nmまでの間で測定されてよい。特定のどのような理論によっても拘束されるものではないが、RBP上に存在する芳香族アミノ酸基がドナー発蛍光性原子団として作用してレチノールに電子を供与し、このレチノールがアクセプターおよびドナーの両発蛍光性原子団として作用するものと確信される。従って、RBP上に存在する活性化芳香族アミノ酸基からの約340nmの発光がレチノールを励起し、レチノールは、約325nmの波長を吸収し、次いで、約470nmの波長で発光し、この光が標識TTR上に存在するアクセプター発蛍光性原子団基を励起し、これにより、そのアクセプター発蛍光性原子団に特徴的な発光波長でのFRET検出が可能になる。芳香族アミノ酸は、約280nmの波長で光を吸収し、アッセイ環境に依存して約325−350nmで発光する。
【0113】
図2は、標識されたTTRでのFRET検出を描いている。RBPおよびレチノールの吸光度および励起発光スペクトルが図2A、2Bおよび2Eに示されている。芳香族アミノ酸残基の励起を通じたRBPの励起が280nmで起こり、340nmでの発光をもたらす。ALEXA FLUOR(登録商標)430で標識されたTTR(図2C〜2E)の吸光度が430nmで起こり、540nmで発光する。280nmで標識レチノール−RBP−TTR複合体を励起すると、約540nmの波長における発光放射線信号が、TTR上に存在するアクセプターALEXA FLUOR(登録商標)430標識物質へのFRETを通じて検出されるであろう(図2E参照)。
【0114】
一つの代替的な実施態様においては、TTRがアクセプター発蛍光性原子団で標識されているレチノール−RBP−TTRタンパク質複合体は、315nmから345nmまでの間の光で励起されてよく、また、発光波長は525nmから600nmまでの間で測定されてよい(図2参照)。特定のどのような理論によっても拘束されるものではないが、レチノールから標識されたTTR上に存在するこのアクセプター発蛍光性原子団へのエネルギー移動が起こり、結果としてこのアクセプター発蛍光性原子団に特徴的な発光波長がもたらされるものと確信される(図2E参照)。
【0115】
アッセイ条件
本明細書で開示されている方法および組成物の一つの典型的な実施態様は、サンプル中におけるレチノール−RBP−TTR複合体を検出及び/又は定量することであり、その実施態様は、レチノール−RBP−TTR複合体形成に通じる条件を必要とする。一つの実施態様は、生理学的条件において、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)または同等物中において、RBP、TTRおよびレチノールをインキュベートすることである。代替的に、インビトロにおいて生理学的条件に近い状態をもたらす他の条件も使用することができる。他の実施態様は、エタノールもしくはヘキサンなどの適切な溶媒(例えば、Ong,D.E.、J.Biol.Chem.、259:1476−1482(1984)参照)中におけるインキュベーション、またはレチノール−RBP−TTR複合体形成を可能に成す他の緩衝液調合物中におけるインキュベーションを含む。更なる実施態様においては、レチノール−RBP−TTR複合体形成の潜在的モジュレーターの溶解度を促進させるため、サンプルにジメチルスルホキシドが加えられる。(それ自体が)レチノール−RBP−TTR複合体形成を有害に抑制してしまうことなく、体積で少なくとも8%までの量のジメチルスルホキシドを加えることができるものと思われる。更に、サンプルは、新鮮なものであってよく、または、(それ自体が)レチノール−RBP−TTR複合体形成を有害に抑制してしまうことなく、必要になるまで凍結されてもよい。
【0116】
本明細書で開示されている教示と併用して、TTRおよびRBPを含め、精製されたタンパク質成分を使用することができる。TTRおよびRBPの精製の例は、BerniらのAnal.Biochem.、150:273−277(1985);Peterson,P.A.のJ.Biol.Chem.、246:34−43(1971);BerniおよびLambertiのComp.Biochem.Physiol.、94B:79−83(1989);Ong,D.E.のJ.Biol.Chem.、259:1476−1482(1984);に見出すことができ、これらの参考文献は、参照により、それらの内容全体が本明細書に組み入れられる。精製は、天然のサンプルと比較して、サンプル中における所望タンパク質の量のあらゆる改善を含む(例えば、天然のサンプルが1.5%の所望タンパク質を含んでいる場合、精製は、その天然のサンプルから誘導されたサンプル中の所望タンパク質の量を1.5%より多くなるように増加させる工程を含む)。代替的に、本明細書で開示されている方法および組成物の成分は、哺乳動物から得られる生物学的サンプルで自然に生じるものであってもよい。例えば、哺乳動物から得られた生物学的サンプルに標識TTRが加えられてよく、また、本明細書で開示されている方法および組成物により試験される潜在的なモジュレーターが加えられてもよい。この哺乳動物は、好適にはヒトであるが、他の哺乳動物、例えば霊長類、ウマ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、マウスまたはラットなども使用することができる。生物学的なサンプルは、これらに限定するものではないが、血漿、血液、尿、大便、涙液または唾液を含み得る。
【0117】
レチノール−RBP−TTR複合体が形成された後、この反応混合物に潜在的なモジュレーターが加えられ、標識物質の活性度、例えば蛍光強度をモニタリングすることにより、その複合体の分裂状態がモニタリングされる。例えば、モジュレーターが加えられていない反応混合物と比べて蛍光が減少している状態は、そのモジュレーターにより複合体が分裂したことを示すであろう。逆に、蛍光活性度が変化していない状態は、レチノール−RBP−TTR複合体が分裂していないことを示すであろう。潜在的なモジュレーターの付加は、複合体の形成前、形成中または形成後に行われてよい。
【0118】
また、本明細書で開示されている化合物および組成物は、固体の支持体に結合されたレチノール−RBP−TTR複合体形成メンバーからなる試薬を利用するアッセイにおいて使用することもできる。例えば、RBPまたは標識TTRをビオチンに結合し、その後、ストレプト/アビジンでコーティングまたは修飾された固体支持体に結合することができる。代替的に、RBPまたは標識TTRを誘導体化し、固相支持体の表面に存在する活性な基に接合させてもよい。結合アッセイ用にタンパク質またはペプチドを誘導体化する例は、米国特許第4,478,946号;第5,169,756号に見出すことができ、これらの特許は、参照により、それらの内容全体が本明細書に組み入れられる。代替的に、タンパク質またはポリペプチドを固相上に吸着させてもよい。タンパク質またはポリペプチドのカップリングまたは吸着後、その固相表面の露出された結合部位の非特異的ブロッキングが行われてよい。
【0119】
上述の固相は、試験管壁もしくはマイクロタイタープレートであってよく、またはガラスもしくはシリコンスライド、マイクロアレイ、マイクロチップもしくは他の半導体、または固相にタンパク質もしくはペプチドを結合させるための微量分析用プラットフォームであってよい。代替的に、上述の固相は、アガロース、ポリスチレン、ラテックス、半導体材料およびポリメタクリラートを含むビーズ(ナノ粒子、マイクロ粒子、磁気ビーズなど)であってもよい。
【0120】
上述のアッセイは、何らかのアッセイ成分または何らかのアッセイ生成物の分離を伴うことなく果たされてもよいし(ホモジニアスアッセイ)、またはそのような分離を伴って果たされてもよい(ヘテロジニアスアッセイ)。本方法および組成物は、溶液相において反応を実施することができるホモジニアスアッセイで特別な用途を見出す。これらのアッセイにおいては、標識されたレチノール、RBPまたはTTRメンバーのいずれかの遊離標識物質への解離は、例えば非標識TTRの結合が標識TTRの結合と競合することができ、次いで、それが、決定されるべきモジュレーターの存在または量と関係付けされるため、このアッセイの感度を低減させ得る。
【0121】
ヘテロジニアスアッセイは、通常、一回またはそれ以上の分離工程を要件として含み、また、競合的でもあり得るし、または非競合的でもあり得る。様々な競合的および非競合的なヘテロジニアスアッセイフォーマットが米国特許第5,089,390号に開示されており、この特許は、参照により本明細書に組み入れられる。一つの典型的な競合ヘテロジニアスアッセイにおいては、そこに結合された被分析物用抗原を有する支持体が、サンプルおよび酵素(「接合体(conjugate)」)、蛍光性部分または放射性標識物質などの検出可能な標識物質に接合された被分析物を含有する媒質と接触させられる。サンプル中の被分析物は、抗体に結合しようとして前述の接合体と競合する。支持体と媒質の分離後、支持体または媒質の標識物質の活性度が通常の技術により決定され、サンプル中の被分析物の量と関係付けされる。
【0122】
一つの典型的な非競合的サンドイッチアッセイは、米国特許第4,486,530号に開示されているアッセイであり、この特許は、参照により本明細書に組み入れられる。この方法の場合、アッセイ媒質中において、サンドイッチ複合体、例えば免疫複合体が形成される。この複合体は、被分析物、第一抗体、または被分析物および第二抗体に結合する結合メンバー、または被分析物もしくは被分析物と第一抗体との複合体に結合する結合メンバー、または結合メンバーを含む。その後、このサンドイッチ複合体が検出され、サンプル中の被分析物の存在及び/又は量と関係付けされる。このサンドイッチ複合体は、その複合体に標識物質が存在していることにより検出され、ここで、第一抗体と第二抗体のいずれか一方もしくは両方、または結合メンバーが、標識物質、または標識物質と連合することができる置換基を含んでいる。
【0123】
サンドイッチアッセイは、抗原および受容体被分析物の検出おける殆どの部分で用途を見出す。このアッセイの場合、被分析物は、その分析物に特異的な二つの受容体部分または抗体により結合される。一つの手法においては、支持体にカップリングされているか、さもなければ不溶化結合基として知られている非標識抗体または結合メンバーの第一インキュベーションが、被分析物を含有しているものと思われるサンプルを含んだ媒質と接触させられる。洗浄および分離工程の後、その支持体が、第二インキュベーション時間の間、一般的には標識物質を含む第二抗体または結合メンバーを含有した媒質と接触させられる。支持体が再び洗浄され、且つ、媒質から分離され、その媒質または支持体のうちのいずれかが、標識物質の存在について調べられる。その標識物質の存在および量が被分析物の存在または量と関係付けされる。この手法のもっと詳細な検討については、米国特許第Re29,169号および第4,474,878号を参照のこと(これらの特許の関連する開示は、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0124】
上述のサンドイッチアッセイの一つの変形態様では、適切な媒質中のサンプルが、その被分析物に対する標識抗体または標識結合メンバーと接触させられ、ある時間の間、インキュベートされる。次いで、その媒質が、被分析物に対する第二抗体または結合メンバーが結合されている支持体と接触させられる。インキュベーション時間の後、その支持体が媒質から分離され、結合されていない試薬を除去すべく洗浄される。その支持体または媒質が標識物質の存在について調べられ、被分析物の存在または量と関係付けされる。この手法のもっと詳細な検討については、米国特許第4,098,876号を参照のこと(この特許の関連する開示は、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0125】
上述の実施態様の別な変形態様においては、サンプル、支持体に結合された第一抗体(または結合メンバー)および標識抗体(または標識結合メンバー)が媒質中において混ぜ合わされ、単一のインキュベーション工程でインキュベートされる。分離および洗浄工程、ならびに標識物質の検査工程は、上で述べられている通りである。この手法のもっと詳細な検討については、米国特許第4,244,940号を参照のこと(この特許の関連する開示は、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0126】
ホモジニアスアッセイは、アッセイ成分の分離を必要とせず、ハイスループットアッセイとの兼ね併せるのに特に有用である。従って、一つの実施態様は、TTR−RBP−レチノール複合体形成のモジュレーターを検出及び/又は定量するためのホモジニアスアッセイ用の手段を提供することである。特に、蛍光共鳴エネルギー移動アッセイがホモジニアスアッセイフォーマットに適している。蛍光共鳴エネルギー移動においては、ドナー蛍光性部分とアクセプター蛍光性部分との間でエネルギー移動事象が起こらない限り、蛍光信号は検出されない。従って、結合事象が存在しない場合、標識成分と非標識成分を分離する必要性は極めて少ない。同様に、その混合物にある物質が加えられたとき、形成が生じた後に複合体の摂動(perturbation)がない場合には、標識成分と非標識成分を分離する必要性は極めて少ない。従って、一つの他の側面は、TTR、RBPおよびレチノールの複合体形成の分裂のFRET検出を利用するホモジニアスアッセイフォーマットを提供することである。
【0127】
また、本明細書で開示されている方法および組成物は、上述のすべてのヘテロジニアスアッセイへの適用も有しており、そこでは、モジュレーターの付加後に上述の結合事象の分裂がモニタリングされる。例えば、不溶化された結合メンバー、標識されたTTRまたはRBPのいずれかは、本明細書で開示されている教示に従って、支持体に結合されているアビジンを標識されたTTRまたはRBP上のビス−ビオチン化合物と混ぜ合わせることにより形成することができる。これは、標識TTR−RBP−レチノール複合体の形成前、形成中または形成後に行われてよい。この後、TTR−RBP−レチノール複合体形成の潜在的なモジュレーターを加えることができ、また、蛍光をモニタリングして、分裂が起こったかどうかを決定することができる。代替的に、またはそれと併せて、標識TTRまたはRBPを固体の基体に結合することもでき、その後、モジュレーターがTTR−RBP−レチノール複合体の他の成分と共に加えられる。
【0128】
モジュレーターの活性度のインビボ検出
上で開述されているインビトロ法に加え、本明細書で開示されている方法および組成物は、TTR−RBP−レチノール複合体形成のモジュレーターの活性度のインビボ検出及び/又は定量と併用して使用することもできる。例えば、標識TTRが被験体に注射されてよく、ここで、候補モジュレーターは、その標識TTRの注射前、注射中または注射後にこの被験体に加えられてよい。この被験体は哺乳動物、例えばヒトであってよい;しかし、他の哺乳動物、例えば霊長類、ウマ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、マウスまたはラットなどが使用されてもよい。この後、その被験体から生物学的なサンプルが採取され、標識物質が検出される。生物学的なサンプルは、これらに限定するものではないが、血漿、血液、尿、大便、粘液、組織、涙液または唾液からなっていてよい。
【0129】
標識物質の測定
本明細書で開示されている標識試薬は、その標識物質の性状に依存して、当業者に知られているあらゆる通常の手段を用いて使用されてよい。例えば、本明細書で開述されている蛍光法を用いて使用され得る装置の一例の概略図が図3に提示されている;この図に描かれている様々なミラーおよびレンズは、例証を目的としたものであり、本明細書で開述されている検出法、測定法および分析法を用いて使用され得る装置の設計に制限を与えるものではない。(本明細書の別の箇所で説明されている如き)あるソースから光が与えられ、その後、その光は二重回折格子励起分光分析装置を通り、その分光分析装置は一連のミラーおよびレンズを含むことができる。これらの構成要素に加え、この二重回折格子励起分光分析装置は、それらのミラーおよびレンズの動作を制御し、更には、その二重回折格子励起分光分析装置を通る光の特性に関する何らかの情報を記録するための、マイクロプロセッサーおよび関連するソフトウェアを含んでいてよい。サンプルと接触する前の光を操作、制御及び/又は測定するための他の方法および設計がこのような装置で用いられてよい。
【0130】
二重回折格子励起分光分析装置を通った後、光はサンプルコンパートメントを通過する;図3のケースでは、サンプルコンパートメントはT字ボックス型のサンプルコンパートメントモジュールとして設計されているが、本明細書で開述されている装置の範囲内において、他の設計も充分に考慮されている。一連のレンズおよびミラーがこのサンプルモジュール内にも配列されていてよい。更に、このサンプルモジュールは二重回折格子分光分析装置内にあってもよい;即ち、サンプルコンパートメントは、別個のモジュールとして存在しなければならない訳ではない。このサンプルコンパートメントモジュールの構成要素および特性も、マイクロプロセッサーおよび関連するソフトウェアを用いて、またはアナログ装置により、またはこの装置のエンドユーザーによりもっと直接的に、制御、モニタリング及び/又は記録されてよい。ソース光がサンプルと相互作用した後、結果としてそのサンプルから(反射、発光、透過などにより)生じた光を更に分析することができる。ソース光の一部を参照ビームとして使用してもよく、その場合、参照ビームはサンプルと接触しなくてよい。図3で概略的に示されているこの例示装置の場合、結果として生じた光(本明細書では、測定光および受信光とも呼ばれる)は、更にサンプルコンパートメント内の一連のミラーおよびレンズを通ることができる;更に、結果として生じたこの光の一部が他の装置または機器へ送られてもよい。
【0131】
図3においては、サンプルコンパートメント内の一連の選択的なミラーおよびレンズを通過した後、上述の結果的な光は二重回折格子発光分光分析装置を通り、この分光分析装置は更に一連のレンズおよびミラーを含んでいてよい。二重回折格子励起分光分析装置の場合と同様に、この二重回折格子発光分光分析装置は、それらのミラーおよびレンズの動作を制御し、更には、その二重回折格子発光分光分析装置を通る光の特性に関する何らかの情報を記録するための、マイクロプロセッサーおよび関連するソフトウェアを含んでいてよい。サンプルと接触した後の光を操作、制御及び/又は測定するための他の方法および設計がこのような装置で用いられてよい。図3で概略的に示されている装置の最後の段階において、前述の結果的な光は光電子増倍管と相互作用し、この光電子増倍管は、前述の結果的な光の特性を記録するための機器の一部として使用することができる。この結果的な光の特性を記録、記憶および分析するための方法が本明細書で説明されており、また、それらの方法を図3で概略的に示されている装置に組み込んでもよい。また、そのような装置は、これらに限定するものではないが、様々なタイミング装置、チョッパーおよび関連するハードウェア、マイクロプロセッサー、データ記憶装置、ならびにソフトウェアを含め、一連の測定を行うための手段も含んでいてよい。本明細書で開示されている教示に従って、測定は一回のみ行われてよく;または同一のサンプルについて複数回の測定、好適には少なくとも二回の測定が行われてもよい。複数回の測定が行われる場合、後続の測定では短時間の遅れが起こり得る。幾つかの実施態様においては、例えば、後続の測定が行われる前に、少なくとも10秒が与えられる。他の実施態様では、一つのサンプル、例えば潜在的モジュレーターの不在下におけるレチノール−RBP−標識TTRのサンプルを別々に測定することにより、非特異的なバックグラウンド蛍光が斟酌される。
【0132】
本明細書で開述されている方法に適した装置は、光照射工程、検出工程、情報をアーカイブする工程、前述の検出工程から得られた画像、データまたは情報を操作またはデコンボリューションする工程など制御するためのソフトウェアを含んでいてよい。
【0133】
化学発光、放射性標識物質または他の標識化合物に対するモニタリング装置の例は米国特許第4,618,485号;第5,981,202号に見出すことができ、これらの特許の関連する開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0134】
ハイスループットアッセイ
また、本明細書で開示されている方法および組成物は、本明細書で開示されている方法および組成物と併用して複数のモジュレーターを迅速にスクリーニングするためのハイスループットアッセイにも関係する。このアッセイは、レチノール−RBP−標識TTR複合体の潜在的モジュレーターを検出及び/又は定量し、ここで、その潜在的モジュレーターまたは候補治療薬は、複合体の形成前、形成中または形成後に加えられる。モジュレーターまたは上で開示されているライブラリー化合物を含んでいてよい種々の物質による結合の抑制は、TTRタンパク質もしくはポリペプチドに結合されている光学的に検出可能な標識物質の量の変化をもたらし、その標識TTRまたはRBPは、必要に応じては固体の支持体に結合されている。モジュレーションの程度は、溶液中の標識物質の量を測定することにより決定され、または、TTRまたはRBPが結合されているケースでは、その固体の支持体に結合された標識物質の量を測定することにより決定される。これらの量が、モジュレーターの不在下において存在する標識物質の量と比較される。測定は、マイクロタイタープレート蛍光リーダーまたはマイクロチップアレイ蛍光リーダーを含め、ハイスループット光学装置を用いて果たされてよい。このアッセイはホモジニアスアッセイであってよく、即ち、個々の細胞または固体支持体をスキャニングすることにより結合標識物質の量を識別することができるため、非結合標識物質を除去するための分離工程を必要としないアッセイであってよい。代替的に、このアッセイは、あらゆる遊離成分、例えば複合体化されなかった標識TTRなどを取り除くための洗浄工程を含むヘテロジニアスアッセイであってもよい。本方法は、少容量で少量の試験化合物を用いるアッセイにおいて、非常に優れた感度および高いスループットを得ることを可能にする。
【0135】
キット
一つの更なる実施態様は、本明細書で開示されている方法および組成物を用いてモジュレーターをスクリーニングすることができるアッセイを実行するためのキットである。このキットは、TTRプローブおよびそのTTRタンパク質またはポリペプチドを標識化するための手段を含む。このTTRは、本明細書で開示されている様々な実施態様により、蛍光アクセプター部分を含め、蛍光性分子で標識されてよい。代替的に、本キットはRBPおよびレチノールを含んでいてよく、TTRは、遊離形態であってもよいし、または固体支持体に結合(結合もしくは吸着)されていてもよい。
【0136】
治療法、用量および組み合わせ療法
黄斑または網膜の変性症およびジストロフィーで患者が考慮し得る処置法および治療法には、広範囲にわたる様々な方法があり、そのような処置法および治療法は:光線力学療法(PDT)、低線量放射線療法、黄斑下手術、RPE移植、黄斑移動術、ドルーゼンのレーザー治療、および投薬療法(これらの薬剤は、オール−trans−レチナールおよび13−cis−レチナールの誘導体を含め、有効量のレチニル誘導体を含むことができる)を含む。
【0137】
黄斑変性症およびジストロフィー、網膜変性症、ならびにジオグラフィックアトロフィーを治療するために他の方法を使用することもできる。従って、そのような状態を治療するため、黄斑変性症(湿性形態と乾性形態との両方の加齢性黄斑変性症を含む)、黄斑ジストロフィー、網膜変性症及び/又はジオグラフィックアトロフィーを有するヒトに、治療有効量の式(I)の化合物を投与する方法を用いることができる。従って、フェンレチニドおよびフェンレチニドの活性代謝産物がそのようにして投与されてよい。このような治療方法、用量、薬学的調合物および付加的な実験に関する詳細については、2004年6月23日に出願された米国仮特許出願第60/582,293号および2004年8月18日に出願された米国仮特許出願第60/602,675号、2004年11月4日に出願された米国仮出願第60/625,532号、2004年11月19日に出願された米国仮出願第60/629,695号、2005年3月11日に出願された米国仮出願第60/660,904号、ならびに2005年4月18日に出願された米国仮出願第60/672,405号を参照のこと(これらの特許書類の開示内容は、参照により、それらの内容全体が具体的に本明細書に含められる)。
【0138】
個人に利益をもたらすために使用され得る更なる組み合わせは、その個人が特定の眼科的状態と相関性のあることが知られている突然変異遺伝子の保有者であるかどうかを決定するための遺伝子検査の使用を含む。単なる例として挙げれば、ヒトABCA4遺伝子の欠損は、Stargardt病、錐体−桿状体ジストロフィー、加齢性黄斑変性症および色素性網膜炎を含む四種類の別個の表現型と関わりがあるものと考えられている。このような患者は、本明細書で開述されている方法に治療学的及び/又は予防学的利益を見出すことが期待されよう。
【0139】
前述の成分に加え、本明細書で開示されている調合物は、更に、薬剤調合物の分野において利用されている一つもしくはそれ以上の選択的な副成分、即ち、希釈剤、緩衝剤、矯味矯臭剤、着色剤、結合剤、界面活性剤、増粘剤、滑沢剤、沈殿防止剤、保存剤(酸化防止剤を含む)などを含んでいてよい。
【実施例】
【0140】
本明細書で開示されている方法を実践するための以下の成分、プロセスおよび手順は、上で説明されているものに対応している。以下の手順は、特に、レチノール結合に対するモジュレーターを検出およびスクリーニングするためのプロセスの現時点で好適な実施態様について述べている。アッセイおよびスクリーニングの技術分野における当業者にとっては、ここで詳細に述べられていない方法、材料、試薬または賦形剤が広く知られており、それらを利用することが可能であろう。
【0141】
実施例1:TTRの標識化
TTR(Sigma Chemical Co.)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液(pH7.2)に溶解し、そのタンパク質濃度を約2〜3mg/mlに調節した。標識化する前に、10%(v/v)の1M NaHCO3(pH8.3)を加え、サンプルのpHを高めた。
【0142】
このタンパク質溶液に、モル数が4倍過剰なALEXA FLUOR(登録商標)430(Molecular Probes)の原液(DMSO中)を加えた。この混合物を、暗所において、Nutatorを用いて室温でインキュベートした。30分後、別のアリコートの蛍光プローブを、最初のアリコートと略同じ量で加えた。得られた混合物を更に30分間インキュベートした。
【0143】
その後、Econo−Pac 10 DG脱塩カラム(Bio−Rad)を用いて、ALEXA FLUOR(登録商標)430標識−TTRを遊離プローブから分離した。このタンパク質フラクションを濃縮し、Centricon YM−3(Millipore)濃縮装置を用いて、残留量の遊離プローブを更に除去した。
【0144】
この標識タンパク質溶液の280nmおよび434nmにおける吸光度を蛍光分光光度計を用いて測定した。タンパク質濃度は、以下の式により算出された:
TTR(M)=[A280−(A434×0.28)]x希釈係数
/77600
式中、0.28は、280nmにおけるプローブ吸光度を斟酌するための補正係数であり、77,600cm−1−1は、TTRのモル吸光係数である。
【0145】
(a)この後、標識化の程度が以下の式により算出された:
1モルのタンパク質当たりのプローブモル数=(A434x希釈係数)/(16000×タンパク質濃度(M))
式中、16,000cm−1−1は、434nmにおけるAlexa Fluor 430のモル吸光係数である。
【0146】
実施例2:TTRおよびRBP結合の蛍光測定
3mlの1μM TTRまたはAlexa Fluor 430−標識TTRをPBS緩衝液中において調製し、3−ml用の蛍光キュベットに入れた。発光スペクトルは、Jobin−Yvon Fluorolog 3蛍光分光光度計を用いて、280nmの励起波長で290nmから650nmまでの間で測定され、また、330nmの励起波長における340nmから650nmまでの間の発光スペクトルが測定された。この蛍光分光光度計のバンドパスは1.5nmに設定された。
【0147】
その後、少量のアリコートの濃縮ホロ−RBP(RBPに結合されたレチノール)の原液がこのTTR溶液に逐次的に加えられた。RBPの最終濃度は、それぞれ、0.33μM、0.67μM、1μM、1.33μM、1.67μMおよび2μMであった。それぞれの付加後、サンプルを混合し、室温で20分間インキュベートした。上述の如くにして蛍光スペクトルを測定した。適切な濃度におけるRBPのブランクを用いることにより、この発光に及ぼすRBPの寄与分が測定スペクトルから差し引かれた。
【0148】
330nmにおけるTTRタンパク質の発光(280nmで励起)および540nmにおけるAlexa Fluor 430の発光(330nmで励起)の二つの発光ピークを種々の異なるRBP対TTR比で詳細にモニタリングした(図4参照)。
【0149】
実施例3:芳香族アミノ酸クエンチングの比較
RBP−TTR相互作用の検出で現在用いられている方法は、漸増的濃度のRBPの存在下におけるTTRタンパク質(芳香族アミノ酸)の蛍光のクエンチングに基づくものである。生血清の分析は、血清中に他の妨害タンパク質が存在しているため、このアッセイにおいては許容されない。従って、TTR結合の分析を行う前に、生血清からRBPを精製しなければならない。これは時間のかかるプロセスであり、ハイスループットスクリーニングには適していない。この技術を用いて取得されたデータの一例が図4Aに与えられている。図4Aの場合、レチノール−RBP−非標識TTR複合体の蛍光発光は、280nmの励起波長で測定されている。このグラフの種々の異なる曲線は、サンプル混合物に加えられた漸増濃度のRBPを表している。RBPの量が増えると、そこでは漸増レベルのRBPが非標識TTRと複合体を形成し、その複合体化されたRBPが、TTRにおける芳香族アミノ酸の蛍光信号を徐々に消光する。
【0150】
このルーチン的な結合アッセイの限界を克服するため、RBP−TTR相互作用の動力学を調べることができるようにハイスループットアッセイが開発された(図4B参照)。このアッセイにおいては、商業的に調製されたTTRが、そこにレチノイドタンパク質複合体が結合したとき(即ち、レチノール−RBP)にのみ励起される蛍光プローブで修飾される。従って、生血清中に存在する非特異的タンパク質及び/又は非結合レチノイド−タンパク質種は、RBP−標識TTR複合体の検出を妨害しないであろう。更に、このアッセイは、2倍乃至3倍感度が高く、検出および定量に関してこれまで以上に大きなダイナミックレンジおよび直線性を示す。これら二つの技術の直接的な比較が与えられている(図5)。このアッセイ技術は、ハイスループットフォーマットにおける多数のサンプルのスクリーニングを促進させるため、96−ウェルプレートフォーマットに適用することができる。
【0151】
実施例4:血清HPRレベルと血清レチノール、ならびに眼のレチノイドおよびA2Eのレベルとの関係のインビボ分析
インビトロアッセイにおいては、LRAT活性の抑制は、オール−trans型レチニルエステルプールの正味の低減をもたらし、従って、11−cis型レチノールの低減をもたらす。視覚サイクルにおけるHPRの役割を更に探求するため、マウスにおけるHPRのインビボ効果について調べた。従って、28日間、HPRがABCA4ヌル変異体マウスに投与された(DMSO中における5〜20mg/kgのi.p.)。対照マウスは、DMSO賦形剤のみを投与された。治療期間の終了時に、血清中のレチノールおよびHRPの濃度、ならびに眼組織のレチノイド含有量を測定した。漸増する血清HRPの関数として、血清レチノールの著しい低減が観測された。この効果は、眼のレチノイドおよびA2E(有毒なレチノイドベースの発蛍光性発色団)の相応する低減を伴っていた。従って、測定されたレチノイドおよびA2Eのそれぞれに対して算出された低減率(パーセント)は殆ど同じであった(図6参照)。これらの結果は、HPRは、全身的に投与されたときに、視覚サイクルタンパク質(例えばLRAT)に及ぼす効果が限られていることを示しており;代わりに、これらの結果は、HPRの全身的な投与によりもたらされる眼のレチノイドおよびA2Eの低減が血清レチノールレベルの低減に由来することを示している。もし、全身的に投与されたHPRが眼のLRATを抑制するのであれば、眼のレチノイドおよびA2Eの低減は、血清レチノイドの低減を上回るはずである。
【0152】
ABCA4ヌルマウスで観測されたHPRの効果が遺伝変種によるものではないことを確かめるため、HPR(DMSO中における20mg/kgのi.p.)を野生型マウスに5日間投与した。対照マウスは、DMSO賦形剤のみを投与された。HPR治療の最終日に、視覚サイクルを「刺激」して視覚発色団を発生させるため、それらのマウスを一定の光照射(1000ルクスで10分間)下に晒した。この光照射時間の後、直ちにそれらの動物を犠牲にし、血清および眼組織のレチノイドの濃度を測定した。データ(図7参照)は、レチニルエステルまたは視覚発色団のどちらの合成にも有意な抑制がないことを示している。従前の研究の場合と同様に、HPRは、血清レチノール(〜55%)、眼のレチノール(〜40%)および眼のレチナール(〜30%)に有意な低減をもたらした。HPRは、治療期間中に間違いなく眼組織内に蓄積したが(〜5μM)、LRATまたはRpe65/イソメラーゼ活性に及ぼす効果は観測されなかった。
【0153】
血清および眼組織のレチノールレベルの仲介におけるRBPの役割を調べるため、RBP4マウスとABCA4−/−マウスとの遺伝的交雑を行った。この交雑の第一世代のマウス(即ち、RBP4/ABCA4+/−)は、投与用量が10mg/kgであった場合、HPR試験で観測すると、かなりのレベルのRBP−レチノール低減を示す(血清RBP−レチノールの〜50〜60%の低減)。更に、RBP4/ABCA4+/−マウスは、眼レチノールの相応する低減を示す(〜60%の低減)。これらの知見は、HPRによるRBP−レチノールの薬理学的モジュレーションで得られたデータと一致し、それ故、A2E−ベースの発蛍光性発色団が比例して低減されることを強く示唆している。
【0154】
インビトロ分析で観測されたLRAT活性の抑制は、HPRの急性投与および慢性投与を受けたマウスでは観測されなかった。インビボ観測とインビトロ観測におけるこのような相違は、インビトロとインビボとでは、視覚サイクル酵素に対するHPRの接近可能性が異なることにより生じたものであり得る。即ち、インビトロアッセイでは、HPRは、基質を加えてアッセイを開始させる前に、酵素ソース材料と共にプレインキュベートされる。HPRは、このプレインキュベーションおよびアッセイ時間の間に、視覚サイクルタンパク質へ一層接近しやすくなり、そのため、観測されたような結果がもたらされたものと考えられる。インビボでの状況は、それとは非常に異なっているものと考えられる。視覚サイクルの酵素タンパク質はすべて、その性状が疎水性であるため、HPRなどの小さな極性分子による接近可能性は大いに妨げられ得る。
【0155】
実施例6:RBP/TTR相互作用を検出するためのハイスループットアッセイ
血清レチノールおよびRBPの低減は、有毒なリポフスチン発蛍光性原子団の同時発生的な低減と相関している。RBP−TTR相互作用に影響を及ぼす化合物は、眼の発蛍光性原子団レベルに直接的に影響を及ぼすものと考えられるため、RBPとTTRとの相互作用を防止する低分子に対するハイスループットスクリーニング法(screen)が開発された。このスクリーニング法は、複合体が形成されるときの独特な蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)事象に関与する、プローブ標識形態のRBPおよびTTRを使用する。RBP−TTR相互作用を妨害する化合物はFRETを妨げる。このタイプのアッセイの過程で取られたサンプルスペクトルが図8に示されている。これらのデータは、HPR(1μM)の不在下(実線)および存在下(破線)におけるRBP−TTR(0.5μMの非標識RBP+0.5μMのAlexa430−TTR)の相互作用を示している。このサンプルは、37℃で30分間インキュベートされた後、330nmの光を照射される。その発光スペクトルが400〜600nmの範囲で示されている。HPRは、RBPに結合し、TTRとの相互作用を妨げ、ここで、このHPRの特性は、RBP−TTR相互作用の抑制を検出することに関するこのスクリーニング法の能力が正当であると確認するためにここで利用されている。HPRの存在は、複合体化の消失を指示するレチノールおよびTTR−プローブ蛍光の有意な低減とかかわり合っている。更に、このアッセイの設計は、RBPと相互作用する化合物とTTRと相互作用する化合物との間の識別を可能にする。従って、二つのはっきり異なる励起エネルギー(それぞれ、タンパク質およびレチノール用の280nmおよび330nm)を使用し、且つ、レチノールおよびTTR−プローブ蛍光の同時的なモニタリングを実行することにより、推定的な低分子の「標的」を容易に決定することができる。
【0156】
実施例7:384−ウェルプレートフォーマットへのアッセイの適用および最適化
多数の試験化合物のスクリーニングを促進させるため、このRBP−TTRアッセイが384−ウェルプレートフォーマットに適用された。この移行は、溶解度および検出感度を維持するための試薬濃度および最小アッセイ容量の再評価を必要とした。384−ウェルプレートフォーマットの下で、このアッセイは、0.5μMのアポ−RBP、0.5μMのTTR、2〜8μMの試験化合物および1μMのレチノールを用い、50μlの容量で効率的に果たすことができる。極めて少ない蛍光バックグラウンド、最良の光学的透明度および最適なウェル設計を備えたマイクロプレートはCorningのモデル#3711であることが決定された。
【0157】
試験化合物をRBP−TTRアッセイ混合物へ送給するためにジメチルスルホキシド(DMSO)が使用されるであろう。更に、特定の化合物で観測された抑制の動力学的特性を決定するため、これらの試験化合物は様々な濃度で評価される。ハイスループットアッセイにおいてこの目的を達成する最も便利な方法は、一定の化合物濃度を漸増する体積で加えることである。この手法は、アッセイ混合物におけるDMSOの濃度が漸増する結果をもたらす。従って、DMSOの濃度を漸増させることに対するRBP−TTRアッセイの許容範囲を決定するため、種々の試験を実施した。RBP−TTR抑制に対する陽性対照として使用したHPRが不在の場合も存在する場合もどちらも、濃度が8%までのDMSO(v/v)はRBP−TTR相互作用に影響を及ぼさないことが判明した。
【0158】
TTR−AlexaFluor 430タンパク質を生成する際の一つの重要な考察は、RBPに対するTTRの固有の親和性を損なうことなく、TTRタンパク質を効果的に標識化(特定の状況下においては、最適に標識化)するのに必要なAlexaFluor 430のモル量である。この関心事は、AlexaFluor 430のモル%を高めることが必要になった場合にはコストが増大することを意味するため、経済的な含みを有している。RBPへの結合に影響を及ぼすことなく、TTRを効果的に標識化するために必要なAlexaFluor 430の最低のモル%を決定するため、種々の試験を実施した。1モルのテトラマーTTRを標識化するには1.7モル%のAlexaFluor 430が必要であることが判明した。
【0159】
RBP−TTRアッセイのハイスループットを更に促進させるため、試験化合物は一度にマスタープレートへ加えられ、それらのプレートは、レチノールを加えてアッセイを実施する前に、2週間の期間まで、−20℃で保管されるであろう。本アッセイは、これらの条件下において非常に安定している。−20℃で2週間保管した後も感度の喪失は観測されていない
実施例8:アッセイの妥当性確認および従来技術との比較
HPRは、クロマトグラフィーおよび分光光度測定法により示されているように、RBP−TTR相互作用の効果的な抑制剤である(例えば、Radu RA、Han Y、Bui TV、Nusinowitz S、Bok D、Lichter J、Widder K、Travis GHおよびMata NL;Reductions in Serum Vitamin A Arrest Accumulation of Toxic Retinal Fluorophores:A Potential Therapy for Treatment of Lipofuscin−based Retinal Diseases、Invest Ophthamol.Vis Sci.、印刷中(2005)を参照のこと)。従って、HPRは、ハイスループットアッセイが有するRBP−TTR相互作用の抑制剤を検出する能力の正当性を確認するための陽性対照として使用することができる。それ故、ハイスループットアッセイを評価するため、実施例7で特定されている条件を用い、HPRを様々な濃度(0〜4マイクロM)で使用した。図9に示されているように、ハイスループットアッセイは、HPRの如く、RBP−TTR相互作用を抑制する化合物を検出するのに効果的である。
【0160】
生理学的に、RBP−レチノールは、高い定常状態濃度のRBP−レチノールを達成するためには、TTRと複合体を形成しなければならない。この相互作用は、糸球体濾過に抵抗し、肝外標的組織へのレチノールの送給を可能にする、大きな分子サイズの複合体を創出する。RBP−TTR相互作用の抑制は、比較的小さなサイズのRBP−リガンド複合体が糸球体濾過により失われると考えられるため、循環RBPの低減をもたらす。次いで、循環RBPの低減は、循環レチノールの低減を引き起こす。この効果は、幾人かの研究者により、HPRに対してインビボで立証されている。また、この効果は、オール−trans型および13−cis型のレチノイン酸を用いて、インビボで観測されてもいる(例えば、Berni R、Clerici M、Malpeli G、Cleris L、Formelli F;Retinoids:in vitro interaction with retinol−binding protein and influence on plasma retinol、FASEB J.(1993)7:1179−84を参照のこと)。
【0161】
この効果の根底を成す作用のメカニズムは、RBP−TTR相互作用の崩壊により説明付けることができる。この可能性を探求し、更には本RBP−TTRスクリーニング法の正当性を確認するため、HPRの分析の項で特定されている条件を用い、オール−trans型レチノイン酸および13−cis型レチノイン酸の効果を調べた。得られたデータ(図10参照)は、上述のインビボでのデータと全体的に一致している。この知見は、更に、このアッセイが有するRBP−TTR相互作用の既知の生理学的抑制剤を検出する能力の正当性を認めるものである。
【0162】
実施例9:本アッセイと従来技術との比較
二つのタンパク質間の複合体化を検出するために用いられている現行のハイスループット方法論は、蛍光技術を用いる方法に限られている。ポピュラーな方法は蛍光異方性測定法である。分子の体積(またはサイズ)の変化を測定するこの方法は、RBP−レチノールとTTRとの間の相互作用を測定するための分析的な研究で成功裏に使用されている(例えば、van Jaarsveld PPらのJ Biol Chem.、248:4698−705(1973);Kopelman MらのBiochim Biophys Acta.439:449−60(1976);Malpeli GらのBiochim Biophys Acta.、1294:48−54(1996)を参照のこと)。この手法においては、TTRの不在下および存在下において、レチノールの蛍光発光が0度および90度の角度においてモニタリングされる。この技法は非常に敏感であるが、定量的ではない。従って、出力値はあらゆる程度のRBP−TTR結合で同じになるであろう。このアッセイに存在する100%のRBP−レチノールがTTRに結合した状態と10%のみが結合した状態とを識別することができないであろう。異方性を利用するこの技法の欠点が図11に示されている。ここでは、RBP−TTR相互作用に及ぼすHPRの影響が我々のルーチン的なFRET(ハイスループット)アッセイを用いて測定されており、また、従来の蛍光異方性測定法により測定されている。
【0163】
RBP−TTR相互作用に影響を及ぼす化合物をスクリーニングすることに関する蛍光異方性測定法のこの技術的な行き詰まりに加え、近紫外線範囲で検出する蛍光異方性測定法を提供し、且つ、ハイスループット能力を備えた、商業的に入手可能な機器は僅かしか存在しない。その一方で、本FRETアッセイは、あらゆる通常の蛍光マイクロプレートリーダーで使用することができる。
【0164】
ここで開示および特許請求されているすべての方法は、本開示に照らし、過度の実験を伴うことなく、実行および実施することができる。当業者にとっては、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、種々の変形を加え得ることが明らかであろう。より詳細には、化学的な観点と生理学的な観点との両観点において関係する特定の物質が、同一または同様な結果を達成しながら、本明細書で開述されている物質の代わりに使用し得ることは明らかであろう。当業者にとって明白なすべてのこのような同様の置換および修飾は、添付の特許請求項により定められている通りの本発明の精神、範囲および概念内であると見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
本明細書で開示されている方法および組成物の新規な特徴は、添付の特許請求項で詳細に定められている。本明細書で開示されている原理を利用した例証的な実施態様を説明している以下の詳細な説明および添付図面を参照することにより、これらの特徴および利点についての一層良好な理解が得られるであろう。それらの添付図面中:
【図1】図1は、一つの具体化された方法のフローチャートを表しており;
【図2】図2は、標識TTRを伴うTTR−RBP−レチノール複合体形成のFRET検出を表しており;
【図3】図3は、サンプル中における蛍光性化合物の存在を検出及び/又は定量するための計装の一例の概略図を表しており;
【図4】図4は、レチノール−RBP−TTR複合体形成のFRET検出との対比における、芳香族アミノ酸クエンチングから得られた結果を表しており;
【図5】図5は、レチノール−RBP−TTR複合体形成のFRET検出との対比における、芳香族アミノ酸クエンチングから得られた結果を表している。
【図6】図6は、血清HPRレベルおよび血清レチノールレベル、ならびに眼のレチノイドおよびA2Eのレベルの関係を表している。
【図7】図7は、野生型マウスにHPRを投与することによる(A)血清レチノールレベルおよび(B)眼のレチノイドレベルに及ぼす効果を表している。
【図8】図8は、HPRの不在下および存在下におけるRBP−TTR複合体で得られるFRETスペクトルの一例を表しており、ここで、このTTRは蛍光性部分で標識されたものである。
【図9】図9は、本明細書で説明されているFRET法を用いて決定したときの、HPRによるレチノール−RBP−TTR複合体形成の用量依存性阻害の一例を表している。
【図10】図10は、本明細書で説明されているFRET法を用いて決定したときの、HPR、13−cis−レチノイン酸およびオール−trans−レチノイン酸を用いるレチノール−RBP−TTR複合体形成の阻害の比較を表している。
【図11】図11は、本明細書で説明されているFRET法および蛍光異方性測定法を用いて決定したときの、HPRを用いるレチノール−RBP−TTR複合体形成の阻害の比較を表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識TTR、RBPおよびレチノールを含む組成物であって、該標識TTRが蛍光性部分に結合されている、組成物。
【請求項2】
更に、標識TTR、RBPおよびレチノールにより形成された複合体を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
更に、少なくとも一つの候補治療薬を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
黄斑変性症またはジストロフィーを治療するための治療薬を同定する方法であって、該方法が:
a. 少なくとも一つの候補治療薬、標識TTR、RBPおよびレチノールを含むサンプルを、レチノール−RBP−標識TTR複合体の形成を可能に成すに充分な条件下においてインキュベートする工程;および
b. 該複合体の発光スペクトルを測定する工程;
を含み、前記候補治療薬が、インキュベーション後、該複合体の該発光スペクトルを低減させる、方法。
【請求項5】
前記TTR標識物質が蛍光性部分である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記蛍光性部分がアクセプター蛍光性部分である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記複合体が蛍光共鳴エネルギー移動により検出される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記蛍光性部分が、380nmと480nmとの間の波長を吸収し、且つ、520nmと600nmとの間の波長を放射する、請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記蛍光性部分が:N−((2−(ヨードアセトキシ)エチル)−N−メチル)アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、4−ジヘキサデシルアミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサン酸、スクシンイミジル6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサノアート、ルシファーイエローヨードアセトアミド、N−(5−アミノペンチル)−4−アミノ−3,6−ジスルホ−1,8−ナフタルイミド、N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)エチレンジアミン、1−(2−マレイミジルエチル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムメタンスルホナート、1−(2,3−エポキシプロピル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(3−(スクシンイミジルオキシカルボニル)ベンジル)−4−(5−(4−メトキシフェニル)オキサゾル−2−イル)ピリジニウムブロミド、3−(4−カルボキシベンゾイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒド、3−(2−フロイル)キノリン−2−カルボキシアルデヒドおよびALEXA FLUOR(登録商標)染料;からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項10】
前記蛍光性部分がALEXA FLUOR(登録商標)染料である、請求項5記載の方法。
【請求項11】
前記励起波長が275nmと295nmとの間であり、且つ、前記発光波長が330nmと650nmとの間で測定される、請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記励起波長が315nmと345nmとの間であり、且つ、前記発光波長が525nmと600nmとの間で測定される、請求項7記載の方法。
【請求項13】
前記候補治療薬が低分子である、請求項4記載の方法。
【請求項14】
前記候補治療薬がレチニル誘導体である、請求項4記載の方法。
【請求項15】
前記レチニル誘導体がN−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド、N−(4−メトキシフェニル)レチンアミドまたはエチルレチンアミドである、請求項9記載の方法。
【請求項16】
黄斑変性症またはジストロフィーを有する被験体を治療する方法であって、該方法は、該被験体に、請求項4記載の方法を用いて同定された、治療有効量のレチノール−RBP−TTR複合体形成のモジュレーターを投与することを含む、方法。
【請求項17】
前記治療薬が低分子である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記治療薬がレチニル誘導体である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
レチノール、RBPおよびTTRを含む複合体の形成のモジュレーターであって、該モジュレーターは、レチノール、RBPおよび標識TTRを含む複合体の形成もまたモジュレートする、モジュレーター。
【請求項20】
前記TTRが蛍光的に標識されている、請求項19記載のモジュレーター。
【請求項21】
前記複合体がインビトロサンプル中にある、請求項19記載のモジュレーター。
【請求項22】
前記複合体がインビボサンプル中にある、請求項19記載のモジュレーター。
【請求項23】
前記モジュレーターがレチニル誘導体である、請求項19記載のモジュレーター。
【請求項24】
ヒトにおける黄斑変性症を治療する方法であって、該方法は、レチノール−レチノール結合タンパク質(RBP)−トランスチレチン(TTR)複合体の形成を抑制する、治療有効量の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項25】
前記化合物が、式(I)
【化1】

の構造、またはその活性代謝産物もしくは薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和物の形態を有し、
ここで、XはNR、O、S、CHRからなる群から選択され;Rは(CHR−L−R(式中、xは0、1、2もしくは3である)であり;Lは単結合もしくは−C(O)−であり;Rは、H、(C−C)アルキル、F、(C−C)フルオロアルキル、(C−C)アルコキシ、−C(O)OH、−C(O)−NH、−(C−C)アルキルアミン、−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)フルオロアルキル、−C(O)−(C−C)アルキルアミン、および−C(O)−(C−C)アルコキシからなる群から選択される部分であり;そして、RはHであるか、またはRは、xが0かつLが単結合である場合にはRがHではないことを条件として、必要に応じて1−3個の独立して選択される置換基で置換された、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリール、(C−C)シクロアルキル、(C−C)シクロアルケニルおよびヘテロ環からなる群から選択される部分である、
請求項24記載の方法。
【請求項26】
はNRであり;Rは(CHR−L−Rであり、ここで、xは0であり;Lは単結合であり;RはHであり;そしてRは一置換アリールである、請求項25記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−519054(P2008−519054A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540121(P2007−540121)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/040236
【国際公開番号】WO2006/052860
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(506422490)シリオン セラピューティクス, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】