説明

レトルト白がゆの製造方法

【課題】 レトルト処理を施されているにも拘らず、鍋等で炊飯した手作りの白がゆと同様、米粒の粒残りに優れ、しかも製したときの季節に拘らず、喫食したときの重湯の粘性が程よい粘性を有したレトルト白がゆの製造方法を提供する。
【解決手段】 米と清水を耐熱性容器に充填し、レトルト処理を施すレトルト白がゆの製造方法において、前記米として無洗米、及び前記清水として80℃以上の熱水をそれぞれ用いて、13〜20%の水分とした無洗米と前記熱水とを耐熱性容器に充填密封し、充填密封後20分以内に昇温を開始して115〜120℃で30分以内の殺菌条件でレトルト処理を施し、該レトルト処理物を品温を20分以内に40℃以下まで急冷した後、該冷却物を20〜35℃下で少なくとも0.5日以上熟成させるレトルト白がゆの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト処理を施されているにも拘らず、鍋等で炊飯した手作りの白がゆと同様、米粒の粒残りに優れ、しかも製したときの季節に拘らず、喫食したときの重湯の粘性が程よい粘性を有したレトルト白がゆの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト処理を施されたレトルト粥は、常温で長期間保存でき、単に温めるだけで簡便に喫食することが可能であり、しかも低カロリーであることから、近年の健康志向により、その需要が増加している。これらの代表的な製造方法としては、例えば、特許第2986243号公報(特許文献1)には、レトルト白がゆとして、洗米浸漬した精米を清水と共にレトルトパウチ等の耐熱性容器に充填密封し、炊飯と殺菌を兼ねてレトルト処理を施す方法等が採られいる。
【0003】
しかしながら、このようなレトルト粥は、その製造工程において、レトルト処理による過度の熱がかかることを避けられないことから、単に、洗米浸漬した精米と清水を用いて炊飯と殺菌とを兼ねてレトルト処理を施す方法で製しただけで得られるレトルト粥は、通常の鍋等で炊飯した手作りお粥に比べ米粒の粒残りが悪い。特に、レトルト白がゆにおいては、崩れた米粒が多数観察されるという問題があった。
【0004】
このように、レトルト白がゆの米粒が崩れ易いのは、レトルト処理が施されたレトルト白がゆ以外のお粥、例えば、梅がゆ、鮭がゆ、あるいは卵がゆ等は、具材としてそれぞれ梅、塩鮭、卵等が配合され、場合によっては、更に食塩等の調味料や添加物等が配合されている。一方、レトルト白がゆは、米本来の風味を重視するお粥であることから、一般的に米と清水のみを原料としている。そのため、レトルト白がゆ以外のレトルト粥は、具材等に由来する塩や有機酸等を含有することとなることにより、これらの成分がレトルト処理による過度の熱による米粒の崩れをある程度防止するのに対し、レトルト白がゆは、具材等に由来する塩や有機酸等を含有していないため、米粒が崩れ易いのではないかと推定される。
【0005】
レトルト粥の状態改善に関する発明は、既にいくつか提案されている。例えば、特開昭57−155958号公報(特許文献2)には、レトルト粥が糊状となることを防止した形態に優れたレトルト粥の製造方法が提案されている。特許文献2に開示の製造方法は、生米1部に対して水または調味料を6〜10部の割合で耐熱容器である缶に充填密封後、密封品の中心温度を65〜95℃として5分間〜30分間加熱し、ついで中心温度が65℃以下になるように冷却した後、レトルト処理を施すもので、1次加熱を行った後に冷却し、そしてレトルト処理を施している。また、同文献の実施例では、生米40gを軽く水洗いし、この洗米と清水269g(生米1部に対し7部弱)に精製塩1gを溶解した水溶液とを用いたレトルト粥が記載されている。
【0006】
そこで、本発明者は、特許文献2に開示の発明の効果を確認すべく、前記実施例において、一般的な白がゆの配合である精製塩を除いた、つまり洗米と清水のみの配合で追試を行った。また、参考までに、精製塩を除き、且つ洗米への吸水量を考慮して清水を生米1部に対し9部となるように調整した5分粥の配合としたもので前記実施例を追試した。なお、5分粥は、土鍋等で製する場合、生米1部に対し清水10部の配合で行うが、炊飯の際に10部の内、1部程度が蒸発するため、レトルト粥の場合は、その分を考慮した水量としている。
【0007】
その結果、洗米した生米と清水を缶に充填密封した後、同条件でレトルト処理を施して製したものに比べ、特許文献2開示の方法で製したものは、米粒の崩れはある程度改善されているものの、手作り品と同様、米粒の粒残りがあるとは言い難く、更に、清水量を多くした5分粥においては、米粒の崩れが多くなる傾向があり、依然として米粒の崩れが多数観察され、未だ満足できるものではなかった。
【0008】
また、レトルト白がゆの製造方法によっては、当該製造を一定にしているにも拘らず、喫食したときの重湯の粘性が季節により異なる場合があった。特に、冬場に製したものは、他の季節に製したものに比べ重湯の粘性がシャバシャバとなる傾向を示し、その改善が要望されていた。
【0009】
【特許文献1】特許第2986243号公報
【特許文献2】特開昭57−155958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、レトルト処理を施されているにも拘らず、鍋等で炊飯した手作りの白がゆと同様、米粒の粒残りに優れ、しかも製したときの季節に拘らず、喫食したときの重湯の粘性が程よい粘性を有したレトルト白がゆの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく原料の米や各工程等、様々な諸条件について鋭意研究を重ねた結果、特定の米及び清水を用い、これらの原料をホットパック充填すること、炊飯と殺菌を兼ねてレトルト処理を施すための昇温を開始するタイミング、殺菌条件並びに殺菌後の冷却を特定条件で行なうこと、更に冷却後に特定条件で熟成を施すならば、レトルト処理を施されているにも拘らず、米粒の粒残りが非常に優れ、しかも製したときの季節に拘らず、喫食したときの重湯の粘性が程よい粘性を有したレトルト白がゆが得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1) 米と清水を耐熱性容器に充填し、レトルト処理を施すレトルト白がゆの製造方法において、前記米として無洗米、及び前記清水として80℃以上の熱水をそれぞれ用いて、13〜20%の水分とした無洗米と前記熱水とを耐熱性容器に充填密封し、充填密封後20分以内に昇温を開始して115〜120℃で30分以内の殺菌条件でレトルト処理を施し、該レトルト処理物を品温を20分以内に40℃以下まで急冷した後、該冷却物を20〜35℃下で少なくとも0.5日以上熟成させるレトルト白がゆの製造方法、
(2) 無洗米1部に対し清水を8部以上配合する(1)のレトルト白がゆの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明で得られるレトルト白がゆは、炊飯と殺菌を兼ねて100℃以上のレトルト処理を施しているにも拘らず、従来の方法で製されたレトルト白がゆと比べ、米粒の粒残りに優れ、しかも製したときの季節に拘らず、喫食したときの重湯の粘性が程よい粘性を有したものであることから、本発明によれば、手作りの白がゆと同等の品位のものを工業的規模で安定的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0015】
本発明は、米と清水を原料とし、これらの原料を耐熱性容器、例えば、缶、レトルトパウチ、好ましくはアルミニウム箔、有機樹脂塗工ポリエチレンテレフタレート(呉羽化学工業(株)製、商品名「ベセーラ」)等によるガスバリア層を有したアルミパウチ等のガスバリア層含有耐熱性パウチ、あるいは自立性を有したスタンディングパウチ等に充填密封され、炊飯と殺菌を兼ねて食品の中心部の品温を120℃で4分間相当加熱する又はこれと同等以上の効力を有する条件で処理する、いわゆるレトルト処理されたレトルト白がゆの製造方法である。本発明の製造方法は、まず、使用原料である米が特定のものであり、また耐熱性容器に充填する際の米の状態に特徴を有する。つまり、本発明では、米として無洗米を用い、且つ耐熱性容器に充填する際の無洗米の状態を13〜20%の水分とすることに特徴を有する。
【0016】
ここで、「無洗米」とは、炊飯の準備の際に行う水洗作業を不要にしたいわゆる無洗米を言い、具体的には、水分含量が13〜16%、白度が40%以上、濁度が90ppm以下のものをいう。
【0017】
無洗米の製造方法としては、様々な方法が知られている。例えば、特開2000−354773号公報等に記載されているような精米機によりとう精された精米を研磨ブラシで除糠する方法、特許第2615314号公報等に記載されているような精米を極めて短時間に水中とう精した後、脱水乾燥する方法、特許第3206752号公報等に記載されているような精米をタピオカ等の除糠用粘着物質を用いて除糠する方法、あるいは糠からなる除糠用粘着物質を用いて除糠する方法等が挙げられる。
【0018】
これらの方法で製した無洗米は、実際に市販されているものもあり、本発明では、いずれの無洗米を用いても良いが、米粒の粒残りに優れたレトルト白がゆが得られ易いことから、精米に対し清水10%以下添加あるいは無添加の状態で除糠用粘着物質により糠層が除去された無洗米を用いることが好ましい。前記除糠用粘着物質としては、精米表面の糠層を吸着する性質を有するものであれば、特に限定するものではないが、例えば、粟、稗、蕎麦、高梁、米、麦、タピオカ等の穀粒の粉砕物や米糠等が挙げられる。また前記無洗米は、これらの除糠用粘着物質を混合等の方法で精米と接触させ精米表面に残存する糠層を除去する際に、精米に対し清水を10%以下添加あるいは無添加の状態で行ったものである。具体的には、例えば、精米に対し清水を5%程度添加した状態でタピオカにより糠層を除去する(株)サタケ製のネオ・テイスティ・ホワイト・プロセス(NTWP)と称する無洗米製造装置で製せられたもの、あるいは米糠で糠層を除去する(株)東洋精米機製作所製のBG米装置と称する無洗米製造装置で製せられたもの等が挙げられる。
【0019】
なお、前記無洗米の水分含量は、常法である105℃での乾燥法により蒸発した水分の試料全量に対する質量比を求めた値であり、本発明では、他の無洗米の水分含量も同様の方法で求めた値である。また、白度は、白度計を用いて測定した値である。そして、濁度は、洗米水濁度試験、すなわち、15℃の水200mlに20gの試料米を入れ、10分間振とうし、その液50mlを採取して10倍に希釈した液を濁度計を用いて測定した値である。
【0020】
本発明は、米として上記無洗米を用いるが、充填する際の無洗米の状態として水分13〜20%のものを用いることが肝要である。充填する際の無洗米の状態として水分の上限を20%としたのは、通常、お粥を含めた米飯類を炊飯するには、まず精米を水洗いにより精米表面の糠層を除去し、必要に応じ水浸漬を行い、これらの工程で生米に吸水させることで美味しい米飯類を炊飯することができると言われており、特許文献1においても精米に対し1.25倍量となるように吸水させた米(水分含量=約32%)を用いている。また無洗米を用いる場合でも、同様にある程度吸水させた無洗米を用いることが美味しい米飯類を炊飯すると言われている。
【0021】
しかしながら、上述した無洗米の水分を20%より多くすると、当該水分が炊飯を兼ねたレトルト処理する際に米粒の状態に影響するためか、後述の比較例に示すように手作り品と比べ崩れた米粒が多数観察され米粒の粒残りに優れたレトルト白がゆが得られ難く好ましくない。これに対し、無洗米の水分を13〜20%としたものは、意外にも手作り品と同様、米粒の粒残りに優れたレトルト白がゆが得られ好ましい。
【0022】
本発明において、無洗米の水分を13〜20%の状態に調整する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、無洗米の水分が13〜16%であることから、無洗米を清水に浸漬処理等による吸水を行うことなくそのまま用いる方法、あるいは水分含量が20%を超えない程度に無洗米を清水に短時間浸漬する方法等が挙げられる。特に、無洗米を吸水させずにそのまま用いる方法は、米粒の粒残りが特に優れ好ましい。
【0023】
さらに、本発明は、原料として使用する清水に特徴を有する。つまり、本発明において使用する清水の種類は、レトルト粥で一般的に使用されている清水、例えば、水道水、イオン交換水、蒸留水、ミネラルウォータ、ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、海洋深層水、あるいはこれらの清水から酸素を除去した脱気水、窒素等の不活性ガスを含気させた含気水等を用いれば良いが、本発明は、これらの清水を加温して80℃以上にした熱水を用いることを特徴とする。使用する清水が、80℃より低い水温のものであると、後述の比較例で示すように本発明の他の構成要件を満たしたとしても、崩れた米粒が依然として多数観察され、米粒の粒残りに優れたレトルト白がゆが得られ難く好ましくない。
【0024】
本発明の製造方法で使用する米及び清水について詳述したが、本発明は、更に、13〜20%の水分とした無洗米と80℃以上の熱水をレトルトパウチ等の耐熱性容器に充填密封、即ち、ホットパック充填した後、充填密封後20分以内、好ましくは15分以内に昇温を開始して炊飯と殺菌を兼ねてレトルト処理を施すことを特徴とする。前記時間以内に昇温を開始しないと、米粒の粒残りに優れたレトルト白がゆが得られ難く好ましくないからである。
【0025】
全ての密封物を充填密封後上記時間以内に昇温を開始してレトルト処理を施す方法としては、例えば、バッチ式の加圧加熱(レトルト)殺菌機を用いる場合でも、少量単位でレトルト処理を施すことにより可能ではあるが、工業的規模で製するためには、複数の加圧加熱(レトルト)殺菌機を必要とし工程が煩雑となることから、連続式の加圧加熱(レトルト)殺菌機を用いる方法が好ましい。なお、本発明においては、本発明の効果を損わない範囲でホットパック充填する際に、ヘッドスペースの大気を例えば、窒素置換、あるいは蒸気置換等を行っても良い。
【0026】
また、本発明は、特定殺菌条件でレトルト処理を施すことを特徴とする。具体的には、本発明は、115〜120℃で30分以内の殺菌条件でレトルト処理を行う。ここで、殺菌条件とは、加圧加熱(レトルト)殺菌機で殺菌を行う際の殺菌機の殺菌設定条件を意味する。殺菌条件が上記条件を外れると、後述の比較例で示すように本発明の他の構成要件を満たしたとしても、崩れた米粒が依然として多数観察され、米粒の粒残りに優れたレトルト白がゆが得られ難く好ましくない。なお、本発明では、殺菌処理時間の下限値は特に規定していないが、食品衛生法の「容器包装詰加圧加熱殺菌食品(レトルト食品)」を満たすための殺菌条件である「食品の中心部の品温を120℃で4分間相当加熱する又はこれと同等以上の効力を有する条件で処理する」ことを満たすため10分以上行うと良い。
【0027】
また、本発明は、レトルト処理を施した後に、品温を20分以内、好ましくは15分以内に40℃以下まで急冷することを特徴とする。品温とは、耐熱性容器内の食品の略中心部の温度のことであり、前記条件となるように急冷する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、粗熱を除いた後、15℃以下の冷水に浸漬する方法等が挙げられる。また、連続式の加圧加熱(レトルト)殺菌機を用いるならば、レトルト処理物を随時急冷することが可能となり工業的規模で効率的に急冷を行なうことが出来好ましい。後述の比較例で示すように冷却が緩慢冷却であると米粒同士が結着してのり化し、その結果、米粒の粒残りに優れたレトルト白がゆが得られ難く好ましくないからである。
【0028】
更に、本発明は、上記急冷した後に当該冷却物を20〜35℃、好ましくは20〜30℃下で少なくとも0.5日以上、好ましくは1日以上熟成させることが肝要である。ここで、前記温度範囲で熟成させるとは、冷却物を前記温度範囲にコントロールされた環境下に保管することであり、例えば、冷却物を前記温度範囲にコントロールされた恒温室に保管する、あるいは前記温度範囲にコントロールされた水槽に浸漬する等の方法が挙げられる。
【0029】
通常、工業規模で製せられた食品は、日配品を除き流通されるまで一旦倉庫に保管される。またレトルト処理を施されたレトルト食品は、レトルト処理により無菌化状態となり細菌的問題を生じないことから、冷凍食品あるいはチルド品(冷蔵食品)と異なり常温で長期間保管することが出来る。そのため、上記倉庫での保管も特に保管温度をコントロールすることなく保管されるケースが多く、この場合、倉庫内の気温は、外気温に影響される。したがって、冬場の寒い日は、保管温度をコントロールしなくても自然にチルド品と同様、冷蔵保管となり、本発明で得られるレトルト白がゆも同様、冬場の寒い日等は実質的に冷蔵保管された状態となる。
【0030】
しかしながら、後述の試験例で示しているとおり上記熟成を行なった本発明品は、その後、冬場の寒い日を想定した冷蔵保管品でも他の季節を想定した保管品と同様、喫食したときの重湯の粘性が手作りの白がゆと同等の程よい粘性を有するのに対し、上記熟成を行なわないと、当該冷蔵保管品の食感は他の季節を想定した保管品に比べ喫食ときの重湯の粘性がシャバシャバとなり好ましくない。
【0031】
また、熟成を行なったとしても、上記温度範囲より低い条件、あるいは熟成時間が短い条件では、上述の熟成を行なわないときと同様、冬場の寒い日を想定した冷蔵保管品の食感は他の季節を想定した保管品に比べ喫食したときの重湯の粘性がシャバシャバとなり好ましくない。また、上記温度範囲より高い条件で熟成した場合は、得られたレトルト白がゆは、全体の粘性が手作りの白がゆより高くなり食感が重くなることから好ましくない。したがって、熟成を行なわなかったり、行なったとしても上記熟成条件に適合しない場合は、製した季節により商品価値を損なう場合がある。
【0032】
以上、述べたとおり本発明の製造方法は、無洗米を特定水分量の状態で80℃以上の清水と共に耐熱性容器に充填密封し、特定時間内に昇温を開始すると共に特定条件でレトルト処理を施した後、急冷し、更に熟成させる製造方法である。また、得られたレトルト白がゆは、レトルト処理を施されているにも拘らず、鍋等で炊飯した手作りの白がゆと同様、米粒の粒残りに非常に優れ、しかも製したときの季節に拘らず、喫食したときの重湯の粘性が程よい粘性を有したものである。通常、レトルト白がゆの米粒の崩れは、配合する清水量が多い程、具体的には生米あるいは無洗米1部に対し清水を8部以上配合する場合に生じ易いが、本発明の製造方法によると米粒の崩れを抑えられることから、無洗米1部に対し清水を8部以上配合するような清水量が多いレトルト白がゆに好適である。
【0033】
以下、本発明のレトルト白がゆの製造方法について、実施例及び比較例、並びに試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定するものではない。
【実施例】
【0034】
[参考例]
手作りのお粥(5分粥)を製した。つまり、精米30gを洗米し1時間水浸漬した吸水米(水分含量約30%)を土鍋に入れ、これに、合計配合量が330gになるように清水を加えた。そして、蓋をして最初強火にかけ、沸騰してきたら弱火にして吹きこぼれないように蓋をずらして約50分間炊いて製した。
【0035】
[実施例1]
精米に対し清水5%程度添加した状態で、タピオカにより糠層が除去された無洗米[(株)サタケ製のNTWPと称される無洗米製造装置で製された無洗米、水分含量約15%]、清水を90℃に加温した熱水を準備した。次に、25gの無洗米をそのまま90℃の熱水225gと共にスタンディングアルミパウチに充填密封した後、この密封物を15分以内に炊飯と殺菌とを兼ねて連続式の加圧加熱(レトルト)殺菌機を用い118℃で25分間の条件でレトルト処理を施した。そして、得られたレトルト処理物を清水(約25℃)で粗熱を除いた後、10℃の冷水に浸漬して品温を40℃以下に冷却した。品温を40℃以下に冷却するのに12分間を要した。次に、冷却物を25℃の恒温室で1日熟成して、レトルト白がゆを製した。得られたレトルト白がゆは、手作り品と同様、米粒の粒残りに非常に優れ、しかも喫食したときの重湯の粘度が程よい粘性を有していた。なお、得られたレトルト白がゆを喫食するための温め方法は、未開封のまま沸騰水で5分間温めて行なった。また、以降の実施例、試験例においても同様の方法で温めた。
【0036】
[実施例2]
実施例1のスタンディングパウチに充填密封する無洗米及び清水を90℃に加温した熱水において、無洗米25gとして、米糠で糠層が除去された無洗米[(株)東洋精米機製作所製のBG米装置と称される無洗米製造装置で製された無洗米、水分含量約15%]25gを用い、この無洗米を短時間水浸漬した後、水切りした水分18%の無洗米、及びスタンディングパウチへの総充填量が250gとなるように調整した85℃の清水を用い、更に熟成を20℃の水槽に1.5日行なった他は、実施例1と同じ方法でレトルト白がゆを製した。得られたレトルト白がゆは、手作り品と同様、米粒の粒残りに非常に優れ、しかも喫食したときの重湯の粘度が程よい粘性を有していた。
【0037】
[比較例1]
精米を洗米し1時間水浸漬した吸水米(水分含量約30%)と清水(室温)を準備した。精米1部に対し清水9部、かつ総充填量が250gとなるように前記吸水米と清水をスタンディングアルミパウチに充填密封した他は、実施例1と同じ方法でレトルト白がゆを製した。得られたレトルト白がゆは、手作り品と比べ、重湯の粘性がやや高いものの問題とならない範囲であったが、崩れた米粒が多数観察された。
【0038】
[比較例2]
実施例1のスタンディングパウチに充填密封する無洗米及び清水を90℃に加温した熱水において、無洗米25gは実施例1と同じものを用い、この無洗米を水浸漬した後、水切りした水分25%の無洗米、及びスタンディングパウチへの総充填量が250gとなるように調整した熱水(90℃)を用いた他は、実施例1と同じ方法でレトルト白がゆを製した。得られたレトルト白がゆは、手作り品と比べ、重湯の粘性がやや高いものの問題とならない範囲であったが、崩れた米粒が多数観察された。
【0039】
[比較例3]
実施例1において、清水を90℃に加温した熱水に替えて60℃の熱水を用いた他は、実施例1と同じ方法でレトルト白がゆを製した。得られたレトルト白がゆは、手作り品と比べ、重湯の粘性がやや高いものの問題とならない範囲であったが、崩れた米粒が多数観察された。
【0040】
[比較例4]
実施例1において、この密封物を30分間室温に放置した後に炊飯と殺菌とを兼ねてレトルト処理を施した他は、実施例1と同じ方法でレトルト白がゆを製した。得られたレトルト白がゆは、手作り品と比べ崩れた米粒が多数観察された。
【0041】
[比較例5]
実施例1において、殺菌条件を112℃で60分間とした他は、実施例1と同じ方法でレトルト白がゆを製した。得られたレトルト白がゆは、手作り品と比べ、重湯の粘性がやや高いものの問題とならない範囲であったが、崩れた米粒が多数観察された。
【0042】
[比較例6]
実施例1において、殺菌条件を124℃で20分間とした他は、実施例1と同じ方法でレトルト白がゆを製した。得られたレトルト白がゆは、手作り品と比べ、重湯の粘性がやや高いものの問題とならない範囲であったが、崩れた米粒が多数観察された。
【0043】
[比較例7]
実施例1において、得られたレトルト処理物を清水(約25℃)で粗熱を除いた後、室温で放冷した他は、実施例1と同じ方法でレトルト白がゆを製した。得られたレトルト白がゆは、米粒同士が結着してのり化したものが多数観察され、また全体の粘性が手作り品より高く食感が重いものであった。なお、品温を40℃以下に冷却するのに約90分間を要した。
【0044】
[比較例8]
特許文献2の実施例において精製塩(食塩)を含有しない系で追試した。つまり、精米40gを軽く水洗いし水切りした。得られた洗米(水分23%)を缶容器(5号缶)に充填し、さらに清水269gを充填した後、バキュームシーマにて巻き締めした。この密封物を85℃の熱水中で20分間加熱した後、清水(約25℃)中で12分間冷却した。なお、加熱及び冷却工程では密封物を2回転/分の割合で回転させた。次いで冷却した密封物を炊飯と殺菌とを兼ねてバッチ式の加圧加熱(レトルト)殺菌機を用い118℃で35分間の条件でレトルト処理を施した後、清水(約25℃)を殺菌機内に注ぎ余熱を除き、そしてレトルト処理物を殺菌機より取り出した後、室温で放冷してレトルト白がゆを製した。得られたレトルト白がゆは、手作り品と比べ崩れた米粒が多数観察され、また全体の粘性が手作り品より高く食感が重いものであった。
【0045】
上記実施例及び比較例より、米と清水を耐熱性容器に充填し、レトルト処理を施すレトルト白がゆの製造方法において、前記米として無洗米、及び前記清水として80℃以上の熱水をそれぞれ用いて、13〜20%の水分とした無洗米と前記熱水を耐熱性容器に充填密封し、充填密封後20分以内に昇温を開始して115〜120℃で30分以内の殺菌条件でレトルト処理を施した後、品温を20分以内に40℃以下まで急冷し、更に20〜35℃下で少なくとも0.5日以上熟成した実施例1又は2で得られたレトルト白がゆは、単に吸水米及び清水(室温)を用いた比較例1、20%超の水分とした無洗米を用いた比較例2、80℃未満の熱水を用いた比較例3、充填密封後20分以内に昇温しなかった比較例4、115〜120℃で30分以内の殺菌条件でレトルト処理を施さなかった比較例5及び6、並びに品温を20分以内に40℃以下まで冷却しなかった比較例7で得られたそれぞれのレトルト白がゆと比較し、レトルト処理を施されているにも拘らず、鍋等で炊飯した手作りお粥と同様、米粒の粒残りに非常に優れた好ましいものであることが理解される。
【0046】
また、本発明品である実施例1及び2で得られたレトルト白がゆは、特許文献2の方法である比較例8で得られたレトルト白がゆと比較し、米粒の粒残りに非常に優れ、しかも喫食したときの重湯の粘度が程よい粘性を有した好ましいものであることが理解される。
【0047】
[試験例]
熟成の有無の影響を調べるため次のような試験を行なった。つまり、実施例1で得られた熟成品と、実施例1で熟成を行なわなかった未熟成品を準備した。それぞれを冬場の寒い日を想定して4℃で1週間保管した。また、他の季節を想定して20℃で1週間保管した。それぞれの保管品において、保管後の重湯の状態を評価するため、それぞれの保管品を喫食できるように温め、上記参考例の手作り品と比較した。結果を、表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1より、熟成を行なった本発明品(熟成品)は、冬場を想定した4℃での保管、その他の季節を想定した20℃での保管のいずれにおいても、喫食したときの重湯の粘性が手作り品と同等の程よい粘性を有した。これに対し熟成を行なわなかった未熟成品は、冬場以外の季節を想定した20℃での保管では、喫食ときの重湯の粘性が手作り品と同等の程よい粘性を有したものの、冬場を想定した4℃での保管では、重湯の粘性が手作り品に比べ低くシャバシャバとなり異なる品位となった。これらの結果より、熟成を行なった本発明品は、製したときの季節に拘らず、喫食したときの重湯の粘性が程よい粘性を有し好ましいことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と清水を耐熱性容器に充填し、レトルト処理を施すレトルト白がゆの製造方法において、前記米として無洗米、及び前記清水として80℃以上の熱水をそれぞれ用いて、13〜20%の水分とした無洗米と前記熱水とを耐熱性容器に充填密封し、充填密封後20分以内に昇温を開始して115〜120℃で30分以内の殺菌条件でレトルト処理を施し、該レトルト処理物を品温を20分以内に40℃以下まで急冷した後、該冷却物を20〜35℃下で少なくとも0.5日以上熟成させることを特徴とするレトルト白がゆの製造方法。
【請求項2】
無洗米1部に対し清水を8部以上配合することを特徴とする請求項1記載のレトルト白がゆの製造方法。