説明

レドーム

【課題】広い周波数帯域かつ広い範囲の入射角にわたって高い透過特性を実現することができるレドームを得る。
【解決手段】アンテナ4を収納するレドーム10であって、表皮材3aと、表皮材3aの一方の側に設けられたコア材2aと、コア材2aの表皮材3aと反対側に設けられ、表皮材3a、3bおよびコア材2a、2bよりも高い比誘電率を有する高比誘電率層1と、高比誘電率層1のコア材2aと反対側に設けられたコア材2bと、コア材2bの高比誘電率層1と反対側に設けられた表皮材3bと、アンテナ4から放射される電磁波の進行方向に対して、アンテナ4の使用周波数帯域における上限周波数λhについて、互いの間隔がλh/2となるように、高比誘電率層1の表面および裏面に交互に形成された突起5とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダ用アンテナや通信用アンテナを収納するレドームに関し、特に、空力学的形状を有し、例えば航空機や飛翔体等に搭載されるレドームに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば航空機や飛翔体等(以下、「航空機等」と称する)に搭載されたレーダ用アンテナや通信用アンテナを収納するレドームは、空気抵抗を低減するために空力学的形状を有しており、先端が細く形成されている。そのため、機軸方向(電磁波の進行方向)について、アンテナから放射された電磁波のレドームへの入射角が大きくなる。一般に、レドームの透過特性は、入射角が小さい場合について最適化されているので、電磁波のレドームへの入射角が大きくなると、損失が増大することが知られている。
【0003】
そこで、上記の問題を解決するために、図2に示されるようなレドームが提案されている。図2において、レドーム50は、高比誘電率層51を挟んで両側にコア材52a、52bが積層され、高比誘電率層51およびコア材52a、52bをさらに挟んで両側に表皮材53a、53bが積層された構成を有し、アンテナ54を収納している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、高比誘電率層51の厚さは、レドーム50の使用が想定された特定の使用周波数帯域の中心周波数において、電磁波が小さな入射角で入射した場合に、表皮材53a、53bでの反射を打ち消すような値に設定されている。
【0005】
これによれば、レドーム50を、表皮材53a、コア材52a、高比誘電率層51、コア材52bおよび表皮材53bが順に積層された構成とし、高比誘電率層51の厚さを、表皮材53a、53bでの反射を打ち消すような値に設定したので、広い範囲の入射角にわたって電磁波の損失を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−5797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、航空機等は、多くのアンテナを搭載する必要に迫られており、航空機等の開発において、これらのアンテナをどのように配置するかが問題となっていた。そこで、複数のアンテナの機能を1つの広帯域のフェーズドアレーアンテナに統合し、このフェーズドアレーアンテナを航空機等の機首に搭載することにより、アンテナの配置の問題を解決するとともに、搭載機器を軽量化することが提案されている。
【0008】
ここで、このような広帯域のフェーズドアレーアンテナを収納するレドームに対しては、広い周波数帯域にわたって高い透過特性を有することが求められる。
しかしながら、特許文献1に記載されたレドームを、この広帯域フェーズドアレーアンテナに適用すると、上述した特定の使用周波数帯域と、それ以外の周波数帯域とでは、レドームの透過特性が互いに異なることとなる。
【0009】
具体的には、レドームの特定の使用周波数帯域においては、電磁波が大きな入射角で入射した場合でも、レドームが高い透過特性を実現することができ、損失を低減することができる。これに対して、例えば広帯域フェーズドアレーアンテナの使用周波数帯域における上限周波数の電磁波が、大きな入射角でレドームに入射した場合には、高比誘電率層の見かけの厚さが厚くなるので、高比誘電率層での反射と表皮材での反射との位相関係が崩れ、レドームの透過特性が悪化する。
【0010】
すなわち、特許文献1に記載されたレドームは、特定の使用周波数帯域においては、広い範囲の入射角にわたって高い透過特性を実現することができるものの、使用周波数帯域が狭いので、広い周波数帯域にわたって高い透過特性を実現することができない。そのため、特許文献1に記載されたレドームを、広帯域フェーズドアレーアンテナに適用した場合には、レーダ等の運用で最も重要となる機軸方向において、高い透過特性を実現することができないという問題がある。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、広い周波数帯域かつ広い範囲の入射角にわたって高い透過特性を実現することができるレドームを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るレドームは、アンテナを収納するレドームであって、第1表皮材と、第1表皮材の一方の側に設けられた第1コア材と、第1コア材の第1表皮材と反対側に設けられ、表皮材およびコア材よりも高い比誘電率を有する高比誘電率層と、高比誘電率層の第1コア材と反対側に設けられた第2コア材と、第2コア材の高比誘電率層と反対側に設けられた第2表皮材と、アンテナから放射される電磁波の進行方向に対して、アンテナの使用周波数帯域における上限周波数λhについて、互いの間隔がλh/2となるように、高比誘電率層の表面および裏面に交互に形成された突起とを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るレドームによれば、機軸方向に対して、アンテナの使用周波数帯域における上限周波数λhについて、互いの間隔がλh/2となるように、高比誘電率層の表面および裏面に交互に突起が形成されている。
これにより、アンテナの使用周波数帯域における上限周波数の電磁波が、大きな入射角で入射した場合であっても、高比誘電率層での反射が打ち消される。
そのため、広い周波数帯域かつ広い範囲の入射角にわたって高い透過特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレドームを示す構成図である。
【図2】従来のレドームを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明のレドームの好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
なお、以下の実施の形態では、このレドームが航空機に搭載されている場合について説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るレドーム10を示す構成図である。
図1において、高比誘電率層1の両側には、高比誘電率層1を挟んでコア材2a、2b(第1コア材、第2コア材)が積層されている。コア材2a、2bの両側には、高比誘電率層1およびコア材2a、2bを挟んで表皮材3a、3b(第1表皮材、第2表皮材)が積層されている。また、高比誘電率層1は、コア材2a、2bおよび表皮材3a、3bよりも高い比誘電率を有している。
【0017】
また、レドーム10は、空気抵抗を低減するために、先端が細く形成された空力学的形状を有しており、上述した広帯域フェーズドアレーアンテナ4(以下、「アンテナ4」と略称する)を収納している。なお、レドーム10の材料は、上記特許文献1に記載されたレドームと同一の材料を用いることができる。
【0018】
ここで、高比誘電率層1の表面および裏面には、アンテナ4から放射される電磁波の進行方向である機軸方向に対して、アンテナ4の使用周波数帯域における上限周波数λhについて、互いの間隔がλh/2となるように、交互に突起5が複数形成されている。また、突起5は、高比誘電率層1と同一の材料で、レドーム10に対するアンテナ4からの電磁波の入射角が、任意に設定される所定の角度よりも大きくなる部分にのみ、すなわちレドーム10の先端部分にのみ形成されている。
【0019】
アンテナ4から機軸方向に放射された、アンテナ4の使用周波数帯域における上限周波数の電磁波は、レドーム10への入射角が大きくなるので、高比誘電率層1の表面および裏面の界面で反射する。上記特許文献1に記載されたレドームでは、これらの反射した電磁波を互いに打ち消すことができない。
【0020】
これに対して、この発明の実施の形態1に係るレドーム10によれば、複数の突起5が高比誘電率層1の表面および裏面に交互に形成されているので、レドーム10に入射した、アンテナ4の使用周波数帯域における上限周波数の電磁波は、突起5の表面で反射する。このとき、それぞれの突起5の間隔が、アンテナ4の使用周波数帯域における上限周波数λhについてλh/2となっているので、突起5の表面で反射したアンテナ方向への電磁波は、互いに打ち消される。
【0021】
これにより、アンテナ4の使用周波数帯域における上限周波数の電磁波が、大きな入射角で入射した場合であっても、高比誘電率層1での反射が打ち消される。
さらに、突起5の大きさおよび厚さについて、表皮材3a、3bでの反射を打ち消すような値を設定することにより、レドーム10全体での反射を低減させて、高い透過特性を実現することができる。
【0022】
また、使用周波数帯域における中心周波数または下限周波数の電磁波については、突起5どうしの間隔が、突起5の表面で反射した電磁波を打ち消す間隔とはなっていないものの、突起5を含めた高比誘電率層1からの反射自体が小さいので、影響は生じない。
さらに、アンテナ4から機軸方向以外に電磁波を放射する場合には、レドーム10への入射角が小さくなるとともに、レドーム10の先端部分の影響が小さくなる。したがって、突起5は、レドーム10の先端部分にのみ形成されればよい。
【0023】
以上のように、実施の形態1によれば、機軸方向に対して、アンテナの使用周波数帯域における上限周波数λhについて、互いの間隔がλh/2となるように、高比誘電率層の表面および裏面に交互に突起が形成されている。
これにより、アンテナの使用周波数帯域における上限周波数の電磁波が、大きな入射角で入射した場合であっても、高比誘電率層での反射が打ち消される。
そのため、広い周波数帯域かつ広い範囲の入射角にわたって高い透過特性を実現することができる。
【0024】
また、突起を、レドームに対する電磁波の入射角が所定の角度以上となる部分にのみ形成することにより、レドームを安価かつ簡素な構成とすることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 高比誘電率層、2a、2b コア材(第1コア材、第2コア材)、3a、3b 表皮材(第1表皮材、第2表皮材)、4 アンテナ、5 突起、10 レドーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを収納するレドームであって、
第1表皮材と、
前記第1表皮材の一方の側に設けられた第1コア材と、
前記第1コア材の前記第1表皮材と反対側に設けられ、表皮材およびコア材よりも高い比誘電率を有する高比誘電率層と、
前記高比誘電率層の前記第1コア材と反対側に設けられた第2コア材と、
前記第2コア材の前記高比誘電率層と反対側に設けられた第2表皮材と、
前記アンテナから放射される電磁波の進行方向に対して、前記アンテナの使用周波数帯域における上限周波数λhについて、互いの間隔がλh/2となるように、前記高比誘電率層の表面および裏面に交互に形成された突起と、
を備えたことを特徴とするレドーム。
【請求項2】
前記レドームは、空力学的形状を有し、
前記突起は、前記レドームに対する前記電磁波の入射角が所定の角度以上となる部分にのみ形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のレドーム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−228852(P2011−228852A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95160(P2010−95160)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】