説明

レバー組立体

【課題】回り止め用の係合ピンをレバーに簡単かつ確実に取り付けることができるレバー組立体を安価に提供すること。
【解決手段】レバー組立体1は、レバー2の貫通横孔21に係合ピン3が挿通されて、この係合ピン3の両端部がレバー2の側方へ突出している。レバー2には貫通横孔21に連通する取付穴22が開設されており、この取付穴22内へ差し込んだ固定具4が係合ピン3と一体化される。係合ピン3は、貫通横孔21の内壁面に係合する大径部31と、大径部31よりも小径で取付穴22内に配置される小径部30とを有する。固定具4は、取付穴22の内壁面に係合する胴部40と、胴部40から延出する一対の相対向する弾性脚片42とを有し、これら弾性脚片42を自身の弾性で小径部30にスナップ嵌合させることにより、小径部30が両弾性脚片42の間に嵌着されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動可能に支持されるレバーの所定位置に回り止め用の係合ピンが取り付けられているレバー組立体に係り、特に、レバーの貫通横孔に挿通された状態で固定される係合ピンの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
揺動可能に支持されるレバーは、レバー自身を回り止めするために揺動中心の近傍に係合ピンを取り付けたり、上端部に装着される操作つまみを回り止めするためにレバーの上端部に係合ピンを取り付けることがある。このような回り止め用の係合ピンは、その両端部が突出するようにレバーの貫通横孔に挿通された状態で固定されており、係合ピンの長手方向とレバーの軸線方向は略直交している。そして、レバーの揺動中心の近傍に係合ピンが取り付けられている場合、この係合ピンの両端部をレバー支持部材の溝部に挿入すれば、該溝部の内壁面で係合ピンの不所望方向への移動を規制することができるため、レバー支持部材に揺動可能に支持されたレバーの不所望方向への回転を規制することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。また、係合ピンの両端部がレバーの上端部の側方へ突出している場合には、この係合ピンの突出部を操作つまみの割溝等に上下動可能に挿入すれば、操作つまみをパネル等の操作面に沿ってスライド操作するのに伴ってレバーが傾倒(揺動)するという動力変換が可能となり、かつ操作つまみが操作面上で回転しないように係合ピンで位置規制することが可能となる。
【0003】
なお、このようにレバーの所定位置に係合ピンが取り付けられているレバー組立体においては、レバーの貫通横孔に挿通された状態で固定される係合ピンの取付構造として、レバーと係合ピンのそれぞれにねじ孔を開設しておき、レバーのねじ孔に螺着させた取付ねじを係合ピンのねじ孔に締結させることによって、係合ピンをレバーにねじ止め固定するという公知の技術(例えば、特許文献2参照)が広く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−220581号公報
【特許文献2】実開平5−64518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来技術のように、取付ねじを用いて係合ピンがレバーに固定されているレバー組立体においては、レバーが経年的に繰り返し揺動操作されると、取付ねじの締結が緩んで係合ピンがガタつきやすくなるという問題があった。そこで、こうした取付ねじの緩みを防止するために、取付ねじの締結箇所に予め接着剤を塗布したりスプリングワッシャ等を介在させることが考えられるが、その場合、レバー組立体の組立作業性が悪化したり部品点数が増えてしまうため、コストアップを余儀なくされるという別の問題が発生する。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、回り止め用の係合ピンをレバーに簡単かつ確実に取り付けることができるレバー組立体を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、貫通横孔および該貫通横孔に連通する取付穴が開設されたピン取付部を有するレバーと、前記貫通横孔に挿通されて両端部が前記ピン取付部の側方へ突出する係合ピンと、前記取付穴に挿入されて前記係合ピンを前記ピン取付部に固定せしめる固定具とを備えたレバー組立体において、前記係合ピンが、前記貫通横孔と略同径で該貫通横孔の内壁面に係合する大径部と、この大径部よりも小径で前記取付穴内に配置される小径部とを有すると共に、前記固定具が、前記取付穴と略同径で該取付穴に挿入される胴部と、この胴部から前記取付穴の内方に向かって延出する一対の相対向する弾性脚片とを有し、これら一対の弾性脚片を自身の弾性で前記小径部にスナップ嵌合させることにより、この小径部が前記両弾性脚片の間に嵌着されるように構成した。
【0008】
このように構成されたレバー組立体は、レバーの貫通横孔に係合ピンを挿通してその小径部をレバーの取付穴内に露出させた状態で、固定具を取付穴に挿入して押し込むことにより、一対の弾性脚片を係合ピンの小径部にスナップ嵌合させることができるため、小径部が両弾性脚片間に嵌着されて係合ピンと固定具とが一体化される。また、係合ピンの大径部は貫通横孔の内壁面にて径方向に位置規制され、かつ、固定具の胴部は取付穴の内壁面にて径方向に位置規制されるため、一体化された係合ピンと固定具はいずれもレバーに対する移動が規制され、これら三者を一体品とみなすことができる。それゆえ、このレバー組立体は、経年的な使用で締結の緩みが懸念される取付ねじを用いなくても、1つの固定具だけで極めて容易に係合ピンをレバーのピン取付部に取り付けることができる。
【0009】
上記の構成において、一対の弾性脚片が取付穴の軸線を挟んでそれぞれ舌片状に形成されていると共に、これら弾性脚片の途中に互いの対向間距離を小径部の径寸法よりも短くした係止突部がそれぞれ形成されており、固定具を取付穴に差し込むときに、両係止突部の対向間距離を押し広げて小径部にスナップ嵌合させるようにしてあると、一対の弾性脚片を係合ピンの小径部に確実にスナップ嵌合させることができると共に、係合ピンの小径部を両弾性脚片の係止突部で包み込むように拘持してガタ防止効果を高めることができる。
【0010】
また、上記の構成において、一対の弾性脚片を胴部に形成した幅狭部から延出させると共に、小径部の周囲で隣接する大径部に挟まれている係合ピンの凹段部にこの幅狭部を嵌入させると、係合ピンに対して長手方向に強い外力が加わった場合にも、幅狭部と凹段部の嵌合によって係合ピンの位置ずれを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレバー組立体によれば、レバーの貫通横孔に係合ピンを挿通してその小径部をレバーの取付穴内に露出させた状態で、固定具を取付穴に挿入して押し込むことにより、一対の弾性脚片を小径部にスナップ嵌合させることができるため、小径部が両弾性脚片間に嵌着されて係合ピンと固定具とを一体化することができる。また、係合ピンの大径部は貫通横孔の内壁面にて径方向に位置規制され、かつ、固定具の胴部は取付穴の内壁面にて径方向に位置規制されるため、一体化された係合ピンと固定具はいずれもレバーに対する移動が規制され、これら三者を一体品とみなすことができる。したがって、1つの固定具だけで極めて容易に係合ピンをレバーのピン取付部に取り付けることができ、少ない部品点数で組立作業性を大幅に向上させることが可能となり、その結果としてレバー組立体のコストダウンが容易となる。また、経年的な使用で締結の緩みが懸念される取付ねじが不要なため、このレバー組立体は長期間使用しても係合ピンがガタつく虞がない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態例に係るレバー組立体の外観図である。
【図2】図1に示すレバー組立体の分解斜視図である。
【図3】図1に示すレバー組立体の上面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図3のB−B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態例について図1〜図5を参照しつつ説明する。これらの図に示すレバー組立体1は、図示せぬレバー支持部材に揺動可能に支持されたレバー2と、レバー2の上端部に取り付けられた係合ピン3と、係合ピン3をレバー2に固定するための固定具4とによって主に構成されている。
【0014】
レバー2は図示せぬ下端部に揺動中心を有し、図5の紙面と平行な面に沿って同図の時計回りと反時計回りに回動可能である。レバー2の上端部には円椀状のピン取付部20が一体形成されており、このピン取付部20に係合ピン3と固定具4が組み付けられる。図2と図4に示すように、ピン取付部20には、レバー2の軸線に対して略直交する方向へ貫通する貫通横孔21と、上面の中央部に露出する取付穴22とが開設されており、この取付穴22は貫通横孔21と連通している。すなわち、貫通横孔21は取付穴22を横切る位置に設けられているため、取付穴22の内壁面の相対向する2箇所に貫通横孔21が臨出している。なお、貫通横孔21の内壁面は円周面であり、取付穴22の内壁面も底部を除いて円周面であるが、貫通横孔21よりも取付穴22のほうが若干大径に設定されている。
【0015】
係合ピン3の長手方向中央部には小径部30が形成されており、係合ピン3の他部は小径部30よりも大径な大径部31となっている。図4に示すように、大径部31はレバー2の貫通横孔21と略同径であり、この大径部31が貫通横孔21内に配置されていると共にレバー2の側方へ突出している。小径部30は貫通横孔21の延長線上で取付穴22内に配置されており、この小径部30と隣接している大径部31の一部も取付穴22内に配置されている。大径部31が貫通横孔21の内壁面と係合するため、この係合ピン3は径方向に位置規制された状態でレバー2に組み付けられる。また、大径部31のうちレバー2の側方へ突出している部分(係合ピン3の両端部)は図示せぬ操作つまみの割溝に上下動自在な状態で係合しており、この操作つまみは図3のB−B線に沿ってスライド操作可能となっている。これにより、操作つまみをスライド操作するのに伴いレバー2が傾倒(揺動)するという動力変換が可能となり、かつ、操作つまみが操作面上で回転しないように係合ピン3で位置規制することができる。
【0016】
固定具4は、レバー2の取付穴22内へ差し込むことによって、取付穴22の内壁面にて径方向に位置規制されると共に、係合ピン3の小径部30にスナップ嵌合させることができる。この固定具4は、取付穴22と略同径な円柱状の胴部40と、胴部40の下端に連続する幅狭部41(図4参照)と、幅狭部41から下方へ延出する一対の弾性脚片42とからなり、これら弾性脚片42は取付穴22の軸線を挟んでそれぞれ舌片状に形成されている。かかる固定具4の構成について詳細に説明すると、各弾性脚片42は、先端部に比べて基端部が肉厚であり、かつ両端部の途中に係止突部42aを設けた舌片状に形成されているため、一対の弾性脚片42を互いの対向間隔を広げる向きに弾性変形させることができる。一方の弾性脚片42の係止突部42aは他方の弾性脚片42の係止突部42aに向かって突出しており、固定具4をレバー2に組み付ける前の状態(図2参照)において、両係止突部42aの対向間距離は係合ピン3の小径部30の径寸法よりも短くなるように設定されている。そして、固定具4を取付穴22内へ差し込んでいく挿入過程で、両係止突部42aの対向間距離が小径部30の径寸法と同じになるまで押し広げられた後、再び両係止突部42aの対向間距離が狭まって小径部30の下面側に入り込むため、両弾性脚片42を自身の弾性力によって係合ピン3の小径部30にスナップ嵌合させることにより、この小径部30を両弾性脚片42の間に嵌着させることができる(図5参照)。また、固定具4の幅狭部41は係合ピン3の小径部30の周囲に配置されるが、図4に示すように、この幅狭部41の幅寸法は係合ピン3の長手方向に沿う小径部30の長さ寸法と略同等に設定されているため、小径部30の周囲で隣接する大径部31に挟まれている凹段部3a内に幅狭部41を嵌入させることができる。
【0017】
このように構成されたレバー組立体1を組み立てる場合、まず、レバー2の貫通横孔21に係合ピン3を挿通して小径部30を取付穴22内に露出させた後、この状態で固定具4を取付穴22に挿入して内方へ押し込む。こうすることによって、一対の弾性脚片42を係合ピン3の小径部30にスナップ嵌合させることができるため、小径部30が両弾性脚片42間に嵌着されて係合ピン3と固定具4とが一体化される。また、前述したように、係合ピン3の大径部31は貫通横孔21の内壁面にて径方向に位置規制され、かつ、固定具4の胴部40は取付穴22の内壁面にて径方向に位置規制されるため、一体化された係合ピン3と固定具4はいずれもレバー2に対する移動が規制され、これらレバー2と係合ピン3および固定具4の三者を一体品とみなすことができる。それゆえ、このレバー組立体1は、1つの固定具4だけで極めて簡単に係合ピン3をレバー2のピン取付部20に取り付けることができ、少ない部品点数で組立作業性を大幅に向上させることが可能となるため、その結果としてレバー組立体1のコストダウンが容易となる。また、経年的な使用で締結の緩みが懸念される取付ねじが不要なため、このレバー組立体1は長期間使用しても係合ピン3がガタつく虞がない。
【0018】
また、本実施形態例に係るレバー組立体1では、一対の弾性脚片42が取付穴22の軸線を挟んでそれぞれ舌片状に形成されていると共に、これら弾性脚片42の途中に互いの対向間距離を小径部30の径寸法よりも短く設定した係止突部42aが形成されており、固定具4を取付穴22に差し込むときに、両係止突部42aの対向間距離を押し広げて小径部30にスナップ嵌合させるようにしてあるため、一対の弾性脚片42を係合ピン3の小径部30に確実にスナップ嵌合させることができると共に、係合ピン3の小径部30を両弾性脚片42の係止突部42aで包み込むように拘持してガタ防止効果が高まっている。
【0019】
また、本実施形態例に係るレバー組立体1では、一対の弾性脚片42を固定具4の胴部40に形成した幅狭部41から延出させると共に、小径部30の周囲で隣接する大径部31に挟まれている係合ピン3の凹段部3aに幅狭部41を嵌入させているため、係合ピン3に対して長手方向に強い外力が加わった場合でも、幅狭部41と凹段部3aの嵌合によって係合ピン3の位置ずれを確実に防止することができ、この点でもガタ防止効果が高まっている。
【0020】
なお、上記実施形態例では、係合ピン3がレバー2の上端部に取り付けられている場合について説明したが、係合ピン3がレバー2の揺動中心の近傍に取り付けられているレバー組立体の場合においても、本発明を適用することによって上記実施形態例とほぼ同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0021】
1 レバー組立体
2 レバー
3 係合ピン
3a 凹段部
4 固定具
4a 湾曲面
20 ピン取付部
21 貫通横孔
22 取付穴
30 小径部
31 大径部
40 胴部
41 幅狭部
42 弾性脚片
42a 係止突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通横孔および該貫通横孔に連通する取付穴が開設されたピン取付部を有するレバーと、前記貫通横孔に挿通されて両端部が前記ピン取付部の側方へ突出する係合ピンと、前記取付穴に挿入されて前記係合ピンを前記ピン取付部に固定せしめる固定具とを備えたレバー組立体であって、
前記係合ピンが、前記貫通横孔と略同径で該貫通横孔の内壁面に係合する大径部と、この大径部よりも小径で前記取付穴内に配置される小径部とを有すると共に、前記固定具が、前記取付穴と略同径で該取付穴に挿入される胴部と、この胴部から前記取付穴の内方に向かって延出する一対の相対向する弾性脚片とを有し、これら一対の弾性脚片を自身の弾性で前記小径部にスナップ嵌合させることにより、この小径部が前記両弾性脚片の間に嵌着されるようにしたことを特徴とするレバー組立体。
【請求項2】
請求項1の記載において、一対の前記弾性脚片が前記取付穴の軸線を挟んでそれぞれ舌片状に形成されていると共に、これら弾性脚片の途中に互いの対向間距離を前記小径部の径寸法よりも短くした係止突部がそれぞれ形成されており、前記固定具を前記取付穴に差し込むときに、前記両係止突部の対向間距離を押し広げて前記小径部にスナップ嵌合させるようにしたことを特徴とするレバー組立体。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、一対の前記弾性脚片を前記胴部に形成した幅狭部から延出させると共に、前記小径部の周囲で隣接する前記大径部に挟まれている前記係合ピンの凹段部に前記幅狭部を嵌入させたことを特徴とするレバー組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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