説明

レバー開閉検知装置、電子回路搭載ブレード、およびラック状電子機器

【課題】 強度、動作信頼性、耐久性を低下させることなく、また、ブレードの基板上の高さスペースの制約を逸脱することなく、スイッチの開閉ストロークに余裕を持たせたレバー開閉検知装置を提供する。
【解決手段】 基板の板厚方向に開閉するスイッチ261と、イジェクトレバー23の板面方向の開閉動作に駆動されることによってスイッチ261を板厚方向に開閉する梃子部材262と備えている。イジェクトレバー23の略板面方向dの開閉ストロークs23と、スイッチ261の板厚方向tの開閉ストロークs261との比は、x対1(x>1)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックに挿抜される電子回路搭載ブレード(単に、ブレードとも呼ぶ)に関し、特に、ブレードに取り付けられ、ブレードのイジェクトレバーの開閉を検知するレバー開閉検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレードと、ブレードを複数枚収容可能な、各ブレードへの電源供給機能を持つラックとを有するラック状電子機器として、例えば、テレコムサーバがある。
【0003】
テレコムサーバに関連したATCA(Advanced telecom computing architecture)規格は、通信事業者向けコンピュータのハードウエア規格であり、ラックならびにブレードのハードウエア仕様を規定している。ATCA規格に準拠したテレコムサーバにおいては、CPUや各種チップが搭載されたブレード単位で通信処理を実行できると共に、ブレードを追加することでサーバ全体の処理能力を容易に拡張することができる。
【0004】
ATCA規格においては、ラックやブレードのサイズや構造の他に、電源を入れたままブレードを抜き挿しできるホットスワップ機能も規定されている。具体的には、ブレードに備えられたイジェクトレバーを解除状態に操作してブレードをラックから引き抜くことより取り外すことができる。この際に、イジェクトレバーの解除状態を検知し、この検知結果に応じてブレードが担っていた業務処理を停止して自身の電源を落とすホットスワップ処理が実行される。このように、ホットスワップ処理の実行条件として、イジェクトレバーの開閉を検知する必要がある。
【0005】
図1を参照すると、ATCA規格に準拠したブレードの一例は、基板71と、基板71上に搭載された電子回路72と、基板71の後端71r側に取り付けられたイジェクトレバー73と、イジェクトレバーの開閉を検知するプッシュスイッチ76と、基板71やイジェクトレバー73等を支持する板金ベース78とを備えている。
【0006】
イジェクトレバー73は、基板71の後端71rに取り付けられ、基板71がその先端からラック10に挿入された時に、基板71の板面に平行な方向である略板面方向dに閉じられる。イジェクトレバー73はまた、基板71がラック10から抜去される時に、略板面方向dに開かれる。イジェクトレバー73が閉じられたときは、スイッチスタッド731が板金ベース78に取り付けられたラッチ75に係合することで保持される。このスイッチスタッド731は、イジェクトレバー73が閉じられたときに、プッシュスイッチ76の後述するピン76aを押す。
【0007】
プッシュスイッチ76は、イジェクトレバー73の略板面方向dの開閉動作に応じて、イジェクトレバーと同じく板面方向dに開閉するプッシュ式マイクロスイッチである。具体的には、プッシュスイッチ76は、イジェクトレバー73が閉じたときに、スイッチスタッド731に押されるピン76aを備えている。プッシュスイッチ76は、基板71上に搭載された電子回路72に含まれるスワッピング制御回路等に電気的に接続されている。そして、スワッピング制御回路等は、プッシュスイッチ76が開のときはイジェクトレバー73も開であり、プッシュスイッチ76が閉のときはイジェクトレバー73も閉であることを判別できる。
【0008】
図1に示されたもの以外にも、イジェクトレバーの開閉を検知するスイッチを備えたブレードは、例えば、特許文献1〜4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許公開2008−218835号公報
【特許文献2】特許公開2008−269003号公報
【特許文献3】登録実用新案第3122956号の登録実用新案公報
【特許文献4】登録実用新案第3126104号の登録実用新案公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図1に示されたブレードならびに特許文献1〜4に開示されたブレードにおいて、イジェクトレバーの開閉を検知するスイッチはいずれも、イジェクトレバーと同じく電子回路搭載ブレードの基板の板面に平行な方向である板面方向に開閉するプッシュスイッチによって構成されている。即ち、イジェクトレバーの開閉ストロークと、レバー開閉検知スイッチの開閉ストロークとの比は、1対1である。尚、本明細書において、イジェクトレバーの開閉ストロークとは、イジェクトレバーのスイチスタッドがプッシュスイッチのピン先端に接しているときのストロークを云う。
【0011】
ここで、スイッチの開閉ストロークは、比較的短いという実情にある。短い開閉ストロークのうちでスイッチの開閉が切り替わるため、スイッチを押すイジェクトレバーには、高い寸法精度が要求される。このような高い寸法精度での設計は、製品のコストの上昇を招き、好ましくない。また、イジェクトレバーの僅かなズレによって、レバー開閉を誤検出する虞もある。
【0012】
これに対し、スイッチの開閉ストロークを延長し、スイッチ開閉に余裕を持たせることが考えられる。しかし、スイッチのピンの長さがスイッチの開閉ストロークに対して一義的に決まるため、開閉ストロークの延長に伴い、ピンの長さをも延長する必要がある。この場合、強度確保の点から、ピン径も太くする必要があるが、これはブレードの基板上の高さスペースの制約があり、困難である。また、ピンの延長は、その自重やリーチの増加に伴い、スイッチの接点部に不要なモーメントを与えることにも繋がるため、スイッチの誤作動の発生や、耐久性が低下が懸念される。
【0013】
それ故、本発明の課題は、電子回路搭載ブレードのイジェクトレバーの開閉を検知するレバー開閉検知装置において、その強度、動作信頼性、耐久性を低下させることなく、また、ブレードの基板上の高さスペースの制約を逸脱することなく、スイッチの開閉ストロークに余裕を持たせたることである。
【0014】
本発明の他の課題は、そのようなレバー開閉検知装置を備えた電子回路搭載ブレードを提供することである。
【0015】
本発明の他の課題は、そのような電子回路搭載ブレードを有するラック状電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、基板と、前記基板上に搭載された電子回路と、前記基板の後端側に設けられ、該基板がその先端からラックに挿入された時に該基板の板面に平行な方向である板面方向に閉じられる一方、該基板がラックから抜去される時に該板面方向に開かれるイジェクトレバーとを備えた電子回路搭載ブレードに取り付けられ、前記イジェクトレバーの開閉を検知するレバー開閉検知装置において、前記基板の板厚方向に開閉するスイッチと、支点、該前記イジェクトレバーから前記板面方向の開閉動作を受ける力点、および前記スイッチに前記板厚方向の開閉動作を与える作用点を持つ梃子部材と備え、前記イジェクトレバーの前記板面方向の開閉ストロークと、前記スイッチの前記板厚方向の開閉ストロークとの比は、x対1(x>1)であることを特徴とするレバー開閉検知装置が得られる。
【0017】
前記スイッチは、前記基板に形成された切欠部に入り込むようにして取り付けられていてもよい。
【0018】
前記梃子部材は、前記基板の板面に対する傾斜角度が30度以上45度未満であってもよい。
【0019】
前記スイッチは、マイクロスイッチであってもよい。
【0020】
本発明によればまた、前記レバー開閉検知装置と、前記基板と、前記電子回路と、前記イジェクトレバーとを有することを特徴とする電子回路搭載ブレードが得られる。
【0021】
前記電子機器搭載ブレードは、ATCA規格に準拠していてもよい。
【0022】
本発明によればさらに、少なくとも1枚の前記電子機器搭載ブレードと、前記電子回路搭載ブレードを複数枚収容可能な前記ラックとを有することを特徴とするラック状電子機器が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるレバー開閉検知装置は、その強度、動作信頼性、耐久性を低下させることなく、また、ブレードの基板上の高さスペースの制約を逸脱することなく、スイッチの開閉ストロークに余裕を持っている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の関連技術による電子回路搭載ブレードにおけるイジェクトレバーの開閉を検知する手段を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例による電子回路搭載ブレードにおけるイジェクトレバーの開閉を検知するレバー開閉検知装置を示す平面図である。
【図3】図2に示されたレバー開閉検知装置を示す斜視図である。
【図4】図2に示されたレバー開閉検知装置の動作を説明するための概念図である。
【図5】図2に示されたレバー開閉検知装置の取り付けられ方を説明するための図であり、(a)はスイッチ装置が取り付けられるブレードの基板を示す斜視図であり、(b)は基板に取り付けられたレバー開閉検知装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明によるレバー開閉検知装置は、基板と、基板上に搭載された電子回路と、基板の後端側に設けられ、基板がその先端からラックに挿入された時に基板の板面に平行な方向である板面方向に閉じられる一方、基板がラックから抜去される時に板面方向に開かれるイジェクトレバーとを備えた電子回路搭載ブレードに取り付けられ、イジェクトレバーの開閉を検知するものである。
【0026】
特に、本レバー開閉検知装置は、基板の板厚方向に開閉するスイッチと、梃子部材と備えている。梃子部材は、支点と、イジェクトレバーから板面方向の開閉動作を受ける力点と、およびスイッチに板厚方向の開閉動作を与える作用点とを持っている。そして、イジェクトレバーの板面方向の開閉ストロークと、スイッチの板厚方向の開閉ストロークとの比は、x対1(x>1)である。
【0027】
このような構成により、スイッチの実際の開閉ストロークはそのままで、イジェクトレバーの開閉ストロークが延長される。よって、強度、動作信頼性、耐久性を低下させることなく、また、ブレードの基板上の高さスペースの制約を逸脱することなく、スイッチの見かけ上の開閉ストロークに余裕が加えられる。
【実施例】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明によるレバー開閉検知装置のより具体的な実施例を詳細に説明する。
【0029】
図2、図3、図4、図5(a)および(b)を参照すると、本発明の実施例によるレバー開閉検知装置26は、ATCA規格に準拠した電子回路搭載ブレード20に取り付けられ、後述するイジェクトレバー23の開閉を検知し、検知結果をスワッピング制御回答(図示せず)等の電子回路に出力するものである。電子回路搭載ブレード20は、基板21と、基板21上に搭載された電子回路22と、イジェクトレバー23と、基板21やイジェクトレバー23等を支持する板金ベース28とを備えている。尚、本発明によるラック状電子機器は、電子機器搭載ブレード20と、電子回路搭載ブレード20を複数枚収容可能なラック10とを有している。
【0030】
イジェクトレバー23は、基板21の後端21r側に取り付けられ、基板21がその先端からラック10に挿入された時に基板21の板面に平行な方向である板面方向に閉じられる一方、基板21がラック10から抜去される時に板面方向に開かれる。イジェクトレバー23が閉じられたときは、スイッチスタッド231が板金ベース28に取り付けられたラッチ25に係合することで保持される。このスイッチスタッド231は、イジェクトレバー23が閉じられたときに、後述するスイッチ261のピン261aを押す。
【0031】
レバー開閉検知装置26は、基板の板厚方向に開閉するスイッチ261と、イジェクトレバー23の板面方向の開閉動作に駆動されることによってスイッチ261を板厚方向に開閉する梃子部材262と備えている。
【0032】
スイッチ261は、イジェクトレバー23の略板面方向dの開閉動作に応じて、基板21の板厚方向tに開閉するプッシュ式マイクロスイッチである。具体的には、スイッチ261は、イジェクトレバー23が閉じたときに、スイッチスタッド231に押されるピン261aを備えている。スイッチ261は、基板21上に搭載された電子回路22に含まれるスワッピング制御回路(図示せず)等に、ランド221aを介して電気的に接続されている。そして、スワッピング制御回路等は、スイッチ261が開のときはイジェクトレバー23も開であり、スイッチ261が閉のときはイジェクトレバー23も閉であることを判別できる。スイッチ261はまた、図5(a)および(b)から明らかなように、基板21に形成された切欠部213に入り込むようにして取り付けられている。このため、基板21の両板面の一方にのみスイッチ検知装置26が搭載されるのに比べ、電子回路搭載ブレード20の厚さ方向のサイズをコンパクトにできる。尚、スイッチ261は鍔を備えているため、梃子部材262に押されても、基板21の切欠部213から脱落することがない。
【0033】
さて、イジェクトレバー23の略板面方向dの開閉ストロークs23と、スイッチ261の板厚方向tの開閉ストロークs261との比は、x対1(x>1)である。つまり、スイッチ261の実際の開閉ストロークはそのままで、イジェクトレバー23の開閉ストロークが延長される。よって、強度、動作信頼性、耐久性を低下させることなく、また、電子回路搭載ブレード20の基板21上の高さスペースの制約を逸脱することなく、スイッチ261の見かけ上の開閉ストロークに余裕が加えられる。尚、本発明において、イジェクトレバー23の開閉ストロークとは、イジェクトレバー23のスイチスタッド231が梃子部材262の表面に接しているときのストロークを云う。
【0034】
電子回路搭載ブレード20がその先端からラック10に挿入された後、イジェクトレバー23が開方向に回動されると、スイッチスタッド231によってレバー開閉検知装置26の梃子部材262のおもて側にある力点が押される。この結果、梃子部材262の裏側にある作用点によってピン261aが押され、スイッチ261が閉となる(検知回路がオンになる)。
【0035】
尚、スイッチ261の見かけ上の開閉ストロークs261をより長くするには、イジェクトレバー23のスイッチスタッド231を延長するか、梃子部材262の梃子の種類を支点、スイッチ261のピン261aに接する作用点、イジェクトレバー23のスイッチスタッド231に接する力点の順で並ぶ第2種梃子とするか、あるいは、梃子部材262の基板21の板面に対する傾斜角度を45度未満とすることである。ただし、梃子部材262の傾斜角度は、30度以上であることが好ましい。これは、梃子部材262の傾斜角度が30度未満であると、スイッチスタッド231によって梃子部材262を確実に押すことができずに空滑りする虞があるからである。あるいは、梃子部材262の材質として、ある程度の弾性を持つものを採用し、イッチ261の開閉ストロークよりも大きいイジェクトレバー23の開閉ストロークの余剰分を吸収するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明した実施例に限定されることなく、本発明は、その範囲内であれば、種々の変形が可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
10 ラック
20 電子回路搭載ブレード
21 基板
213 切欠部
22 電子回路
221a ランド
23 イジェクトレバー
231 スイッチスタッド
25 ラッチ
26 レバー開閉検知装置
261 スイッチ
261a ピン
262 梃子部材
28 板金ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に搭載された電子回路と、前記基板の後端側に設けられ、該基板がその先端からラックに挿入された時に該基板の板面に平行な方向である板面方向に閉じられる一方、該基板がラックから抜去される時に該板面方向に開かれるイジェクトレバーとを備えた電子回路搭載ブレードに取り付けられ、前記イジェクトレバーの開閉を検知するレバー開閉検知装置において、
前記基板の板厚方向に開閉するスイッチと、
支点、該前記イジェクトレバーから前記板面方向の開閉動作を受ける力点、および前記スイッチに前記板厚方向の開閉動作を与える作用点を持つ梃子部材と備えており、
前記イジェクトレバーの前記板面方向の開閉ストロークと、前記スイッチの前記板厚方向の開閉ストロークとの比は、x対1(x>1)であることを特徴とするレバー開閉検知装置。
【請求項2】
前記梃子部材は、前記基板の板面に対する傾斜角度が30度以上45度未満である請求項1に記載のレバー開閉検知装置。
【請求項3】
前記梃子部材は、その梃子の種類が第2種梃子である請求項1または2に記載のレバー開閉検知装置。
【請求項4】
前記スイッチは、前記基板に形成された切欠部に入り込むようにして取り付けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレバー開閉検知装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレバー開閉検知装置と、前記基板と、前記電子回路と、前記イジェクトレバーとを有することを特徴とする電子回路搭載ブレード。
【請求項6】
ATCA規格に準拠している請求項5に記載の電子回路搭載ブレード。
【請求項7】
請求項5または6に記載の少なくとも1枚の電子機器搭載ブレードと、前記電子回路搭載ブレードを複数枚収容可能な前記ラックとを有することを特徴とするラック状電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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