説明

レブリン酸のペンタン酸への転化方法

(a)レブリン酸を含む供給原料を水素化条件下、水素の存在下、固体触媒担体上に水素化金属を担持してなる非酸性不均質水素化触媒と接触させて、γ−バレロラクトンを含有する第一流出流を得る工程、(b)該第一流出流の少なくとも一部を水素の存在下に強酸性触媒及び水素化金属と接触させる工程を含むレブリン酸のペンタン酸への転化方法であって、工程(b)はペンタン酸及び未転化γ−バレロラクトンを含有する第二流出流を得るため、1パス当たり70重量%以下の転化率で操作すると共に、該未転化γ−バレロラクトンは工程(a)及び/又は工程(b)に再循環する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はレブリン酸をペンタン酸に転化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
WO2006/067171には、レブリン酸を水素の存在下に不均質二官能性触媒、即ち、水素化成分含有強酸性不均質触媒と接触させてペンタン酸を形成するレブリン酸の水素化方法が開示されている。
【0003】
WO2006/067171の方法でレブリン酸を反応体として使用すると、酸反応体及び酸反応生成物の存在による浸出、反応水の存在による被毒、及び/又は酸触媒存在下でのアンゲリカ−ラクトン及びペンテノン酸のような不飽和中間体のオリゴマー化又は重合による汚染により触媒の失活が起こる可能性がある。
【0004】
レブリン酸のペンタン酸への水素化反応は非常に発熱性なので、望ましくない触媒の失活又は副反応を防止するには慎重な温度管理が極めて重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
レブリン酸の接触水素化によるペンタン酸の形成において、該接触水素化反応を、第一工程では非酸性触媒により、第二工程では酸性及び水素化触媒機能により別々の2つの工程で行うと、触媒の失活を限定し、かつタールの形成を最小化して、ペンタン酸を形成できることが今回、見出された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は
(a)レブリン酸を含む供給原料を水素化条件下、水素の存在下、固体触媒担体上に水素化金属を担持してなる非酸性不均質水素化触媒と接触させて、γ−バレロラクトンを含有する第一流出流を得る工程、
(b)該第一流出流の少なくとも一部を水素の存在下に強酸性触媒及び水素化金属と接触させる工程、
を含む、レブリン酸のペンタン酸への転化方法であって、工程(b)はペンタン酸及び未転化γ−バレロラクトンを含有する第二流出流を得るため、1パス当たり70重量%以下の転化率で操作すると共に、該未転化γ−バレロラクトンは工程(a)及び/又は工程(b)に再循環することを特徴とする該方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
WO2006/067171に開示された単一段階法と比べた本発明の2段階法の利点は、水素化発熱反応により放出される熱が一層良好に順応できることである。工程(a)及び/又は工程(b)の流出流の一部を、任意に流出流の冷却と組み合わせて、再循環すると、酸濃度が希釈され、また任意に熱が除去される。
別の利点は、工程(a)ではアンゲリカ−ラクトンが存在しないので、即ち、工程(a)はアンゲリカ−ラクトンが存在しない工程なので、タールが殆ど形成されないことである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】冷却流出流の単一再循環を含む断熱操作式積重ね床反応器で工程(a)及び(b)を行う本発明の第一実施態様を示す。
【図2】各反応器への冷却流出流の再循環を含む2つの別々の反応器で工程(a)及び(b)を行う本発明の第二実施態様を示す。
【図3】気相及び細流相操作下、PT/ZSM−5/SiOによるγ−バレロラクトンの水素化を示す。
【図4】気相及び細流相操作下、PT/ZSM−5/SiOによるγ−バレロラクトンの水素化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明方法は2つの工程を含む。工程(a)ではレブリン酸は、水素化条件下、非酸性不均質水素化触媒と接触して、γ−バレロラクトンに転化する。工程(b)では工程(a)で形成されたγ−バレロラクトンの少なくとも一部は、水素化条件下、強酸性触媒及び水素化金属と接触して、ペンタン酸を形成する。工程(b)における強酸性触媒及び水素化金属は、二官能性不均質触媒、即ち、酸性及び水素化の両機能を有する固体触媒の形態であっても、或いは非酸性固体水素化触媒及び液体酸性触媒の形態であってもよい。
【0010】
工程(a)では水素、及びレブリン酸含有供給原料は、水素化条件下で非酸性触媒と接触する。いかなる理論にも束縛されたくないが、γ−バレロラクトンは、2つの反応経路に従って形成されるものと考えられる。第一の経路では、レブリン酸はまず、水素化されて4−ヒドロキシペンタン酸を形成し、該ヒドロキシ酸は、内部エステル化(エステル交換)反応によりγ−バレロラクトンに転化される。第二の経路では、まず水が除去されて、アンゲリカ−ラクトンを形成し、引続き該ラクトンは水素化されてγ−バレロラクトンを形成する。
水素は、純水素として又は水素含有ガスとして工程(a)に供給してよい。水素化反応に好適な水素含有ガスは当該技術分野で周知である。
【0011】
供給原料はレブリン酸を好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、なお更に好ましくは90重量%以上含有する。レブリン酸含有供給原料は、水素化条件下で触媒と接触する。工程(a)は、好ましくは100〜350℃、更に好ましくは150〜250℃の範囲の温度で行われる。水素圧は、好ましくは1〜150バール(絶対圧)、更に好ましくは10〜50バール(絶対圧)の範囲である。水素対レブリン酸のモル比は、通常、0.1〜20の範囲である。重合性中間体であるα−アンゲリカラクトンの量を最小にするため、化学量論量に対し過剰量の水素が使用される。したがって、水素対レブリン酸モル比は、1.1〜5.0の範囲が好ましい。
【0012】
レブリン酸及び工程(a)の反応生成物、即ち、γ−バレロラクトン及び水は、工程(a)中は液相又は気相、好ましくは液相であってよい。水素は気相に存在する。したがって、工程(a)で行われる反応は、固体触媒存在下での気相反応又は気体/液体反応である。したがって、また工程(a)は、気体/固体反応(気体のレブリン酸及びγ−バレロラクトンの場合)又は気体/液体/固体反応(液体のレブリン酸及びγ−バレロラクトンの場合)に好適ないかなる反応器で行ってもよい。工程(a)を液相の供給原料及び反応体で行う場合は、工程(a)は、例えば固定触媒配列を有する細流反応器、懸濁気泡塔又は沸騰床反応器で行ってよい。
【0013】
工程(a)における触媒は、固体触媒担体上に水素化金属を担持してなる非酸性水素化触媒である。水素化金属は、元素の周期表(最近のLUPAC命名)第7〜11欄のいずれか一欄の金属が好ましく、更に好ましくは貴金属、なお更に好ましくはRu、Rh、Pt、Pd、Ir及び/又はAuである。非酸性固体触媒担体は、好ましくはカーボン又は酸性耐火性酸化物、更に好ましくはシリカ、チタニア又はジルコニアである。この触媒担体は、ゼオライト系材料又は非晶質シリカ−アルミナのようないかなる酸性材料も含有しない。
【0014】
触媒の全重量に対する水素化金属の濃度は、通常、非貴金属では1〜50重量%の範囲、貴金属では0.01〜5重量%の範囲である。好ましい濃度は、非貴金属では2〜20重量%の範囲、貴金属では0.1〜2重量%の範囲である。
工程(a)において酸、及びα−アンゲリカラクトンのような重合性化合物の量を最小化し、こうして触媒の金属浸出及びタールの形成を回避するには、工程(a)は、連続撹拌槽反応器(CSTR)、例えば懸濁気泡塔で行うことが好ましい。
【0015】
第一流出流は、γ−バレロラクトン、水、水素及び任意にその他の反応生成物、例えばメチルテトラヒドロフラン、ペンタノール、ペンタンジオール、及び未転化レブリン酸を含有する。
特に工程(a)を連続撹拌槽反応器で行わない場合は、工程(a)における酸濃度は、第一流出流の一部を工程(a)に再循環することにより、低く保持してよい。触媒活性に対する悪影響を回避するには、第一流出流を工程(a)に再循環する前に、第一流出流から水の少なくとも一部を除去することが好ましい。第一流出流からの水の除去は、当該技術分野に公知の技術、例えばフラッシュ分離又は蒸留により行ってよい。
【0016】
工程(a)におけるレブリン酸のγ−バレロラクトンへの転化は発熱反応である。したがって、温度管理、特に熱点の発生を防止することが重要である。特に固定床反応器の場合、熱点を防止するには、供給原料の段階的供給及び/又は水素の段階的供給を利用することが好ましい。第一流出流の一部を再循環する場合、該発熱転化工程で放出される熱の一部を除去するため、第一流出流は、再循環する前に、冷却することが好ましい。再循環される第一流出流は、工程(a)に再循環する前に、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは10〜100℃の範囲の温度に冷却される。
【0017】
工程(a)は、冷却流出流の再循環を含む断熱操作式反応器で行うことが好ましい。或いは工程(a)は、内部冷却を利用して、等温操作式反応器で行われる。
工程(b)では第一流出流の少なくとも一部は、水素化条件下、水素の存在下で強酸性触媒及び水素化金属と接触して、ペンタン酸を含有する第二流出流が得られる。
【0018】
工程(b)には追加の水素を供給してよい。しかし、第一流出流が工程(b)においてγ−バレロラクトンがペンタン酸に転化するのに充分な水素を含む場合は、追加の水素を工程(b)に供給する必要はない。工程(b)は、1パス当たり50重量%以下の転化率で操作することが好ましい。なお更に好ましくは未転化γ−バレロラクトンは、第二流出流を工程(a)及び/又は工程(b)に再循環する前に、例えば蒸留により第二流出流から分離される。
【0019】
特に工程(a)をCSTRで行なうと共に、熱除去のため第一流出流の一部の循環を必要としない場合、第一流出流全体は本発明方法の工程(b)に供給してよい。
水による工程(b)の触媒に対する悪影響を防止するため、第一流出流を工程(b)に供給する前に、第一流出流から水を除去することが好ましい。
第二流出流は、ペンタン酸、未転化γ−バレロラクトン、水素、及び任意に未転化レブリン酸及び水を含有する。
【0020】
工程(b)では第一流出流は、水素化条件下で強酸性触媒及び水素化金属と接触する。工程(b)は、好ましくは150〜300℃、更に好ましくは200〜300℃、なお更に好ましくは240〜280℃の範囲の温度で行われる。水素圧は、好ましくは1〜150バール(絶対圧)、更に好ましくは5〜50バール(絶対圧)の範囲である。工程(a)から工程(b)まで水素の流れを容易にするため、工程(b)の水素圧は、工程(a)での水素圧よりも低いことが好ましく、更に好ましくは2〜30バール低い。
【0021】
工程(b)において水素対γ−バレロラクトンのモル比は、0.1〜10の範囲が好ましい。
工程(a)の温度は工程(b)の温度よりも低いことが好ましく、更に好ましくは30〜100℃低い。
【0022】
工程(b)では反応体及び反応生成物、即ち、それぞれγ−バレロラクトン及びペンタン酸は、液相又は気相、好ましくは気相であってよい。気相には水素が存在する。したがって、工程(b)で行われる反応は、固体触媒存在下での気相反応又は気体/液体反応である。したがって、また工程(b)は、気体/固体反応又は気体/液体/固体反応に好適ないかなる反応器で行ってもよい。工程(b)は、気相条件下で少なくとも一部行うことが好ましい。
【0023】
工程(a)及び(b)は、単一反応器又は別々の反応器中の積重ね床構造で行ってよい。単一反応器中の積重ね床構造で行う場合は、工程(a)の積重ね床は、工程(b)の積重ね床よりも低温で操作することが好ましい。
この低温操作は、例えば第二流出流の冷却再循環を工程(a)に適用することにより行ってよい。
【0024】
工程(b)は強酸性触媒機能及び水素化触媒機能の存在下で行われる。したがって、第一流出流は強酸性触媒及び水素化金属の両方と接触する。これらの機能は、二官能性触媒、即ち、水素化金属を含有する不均質強酸性触媒に組合わされている。水素化金属含有不均質強酸性触媒の場合、該触媒は、少なくとも1種の水素化金属を支持した、好ましくは酸性ゼオライト、更に好ましくは酸性ゼオライトβ又は酸性ZSM−5を含有する。或いはこのような触媒は、酸性混合酸化物、スルホン化カーボン、又は耐熱性スルホン化樹脂を含有してよい。
【0025】
或いは工程(b)における強酸性触媒は、均質強酸性触媒、例えば鉱酸又はタングステンホスフェート、タングステンシリケートのようなヘテロポリ酸であり、また水素化金属は、固体非酸性触媒支持体、例えばシリカ、チタニア又はジルコニアに担持される。液体強酸性触媒は、好ましくは鉱酸、更に好ましくは硫酸又は燐酸、なお更に好ましくは硫酸である。
【0026】
工程(b)において固体非酸性触媒支持体上の水素化金属と組み合わせて液体強酸性触媒を用いる利点は、例えば酸性ゼオライトのような強酸性触媒支持体を必要としないこと、及び酸反応生成物(ペンタン酸)の存在によるこのような支持体の浸出が回避されることである。
【0027】
工程(b)において二官能性触媒中又は固体比酸性触媒支持体上に担持された水素化金属は、元素の周期表第7〜11欄のいずれか一欄の金属が好ましく、更に好ましくはRu、Rh、Pt、Pd、Ir及び/又はAuである。
【0028】
図面の詳細な説明
図1に積重ね床構造中の2つの触媒床(2、3)を有する反応器1を示す。触媒床2は非酸性不均質水素化触媒を有し、触媒床3は水素化金属含有酸性不均質触媒を有する。
【0029】
レブリン酸を90重量%以上含有する供給原料及び水素は、それぞれライン4、5経由で反応器1に供給される。触媒床2の全流出流6は、触媒床3に供給される。触媒床3の流出流は、ライン7経由で反応器1から取り出され、冷却器8で冷却後、蒸留塔9に供給され、ここで水素、水及びペンタン酸を含む塔頂流と、主としてγ−バレロラクトンを含む塔底流とに分離される。塔頂流はライン10経由で蒸留塔9から取り出され、一方、塔底流はライン11経由で取り出され、冷却器12で冷却後、ライン13経由で反応器1に再循環される。塔底流の一部はライン14経由でパージしてよい。
反応器1は断熱的に操作される。温度は冷却γ−バレロラクトン再循環を用いて制御される。
【0030】
図2に、工程(a)及び(b)を2つの別々の反応器20、30で行う本発明方法の陣容を示す。反応器20は、非酸性不均質水素化触媒含有触媒床22を有する。レブリン酸を90重量%以上及び水素を含有する供給原料は、それぞれライン24、25経由で反応器20に供給される。触媒床22の流出流の一部は、ライン26及び冷却器28経由で反応器20に再循環される。この流出流の残部はライン29経由で反応器30に供給される。反応器30は、水素化金属含有酸性不均質触媒を含有する触媒床33を有する。触媒床33の流出流は、ライン37経由で反応器30から取り出され、冷却器38で冷却後、蒸留塔39に供給され、ここで水素、水及びペンタン酸を含む塔頂流と、主としてγ−バレロラクトンを含む塔底流とに分離される。塔頂流はライン40経由で蒸留塔39から取り出され、一方、塔底流はライン41経由で取り出され、冷却器42で冷却後、ライン43経由で反応器30に再循環される。塔底流の一部はライン44経由でパージしてよい。反応器20及び30の両方とも断熱的に操作される。温度は冷却再循環流を使用して制御される。
【実施例】
【0031】
本発明を以下の非限定的実施例により更に説明する。
実験1
この実験は、等温条件下で行い、比較的少量の第一流出流を再循環した本発明方法の工程(a)を示す。
【0032】
内径13mmの反応器管に、6.3gの炭化珪素粒子で希釈したシリカ(直径1.6mmの円筒形押出物)上にPTを0.8重量%含む不均質触媒6.0gからなる固定床を装入し、オーブンに入れた。この触媒を水素で予備処理(250℃、3時間)して還元した。次いで反応器を200℃の温度及び40バール(ゲージ圧)の圧力とし、この反応器にレブリン酸91.0重量%、γ−バレロラクトン7.8重量%及び水1.2重量%を含む供給原料を、重量の1時間当たり空間速度=1時間当たり触媒1g当たりレブリン酸2.0gで供給した。反応器には水素対供給原料のモル比4.5で水素を供給した。これらの条件を500時間維持した。流出流を集め、その組成をガスクロマトグラフィーで測定した。表1に、稼働中、特定時間後の流出流中のレブリン酸(LA)及びγ−バレロラクトン(GVL)の濃度を示す。濃度は、流出流中の有機成分に対するモル%で表す。各少量のメチルテトラヒドロフラン(<0.5モル%)、ペンタン酸(<0.5モル%)及び未知の有機成分(<1.0モル%)が見られた。
【0033】
これらの結果から触媒は最終的に失活することが判る。この触媒を空気中、450℃で24時間焼成して触媒を再生すると、触媒活性は初期の値に回復した。
【0034】
【表1】

【0035】
実験2
この実験は、等温条件下で行い、比較的多量のγ−バレロラクトンを再循環した本発明方法の工程(a)を示す(レブリン酸供給原料は第一及び第二流出流からのγ−バレロラクトンで希釈し、これにより比較的多量の未反応γ−バレロラクトンを工程(a)に再循環することをシミュレートする)。
【0036】
内径13mmの反応器管に、6.3gの炭化珪素粒子で希釈したシリカ(直径1.6mmの円筒形押出物)上にPTを0.8重量%含む不均質触媒6.0gからなる固定床を装入し、オーブンに入れた。この触媒を水素で予備処理(250℃、3時間)して還元した。次いで反応器を200℃の温度及び40バール(ゲージ圧)の圧力とし、この反応器に、レブリン酸13重量%及びγ−バレロラクトン87重量%及び水1.2重量%を含む供給原料を、重量の1時間当たり空間速度(WHSV)=1時間当たり触媒1g当たりレブリン酸0.25g(0.25g/g.h)で供給した。反応器には1時間当たり触媒1g当たり1.7リットル(標準温度及び圧力(STP)で)の一定水素流量で水素を供給した。触媒を再活性化することなく、この温度、圧力及び水素流量条件を150時間維持した。WHSVを稼働30時間後0.5g/g.h、稼働123時間後2.0g/g.hに上げた後、稼働127時間後、再び0.25g/g.hに下げた。流出流を集め、その組成をガスクロマトグラフィーで測定した。表2に、稼働中、異なる時間での流出流中のレブリン酸の転化率(転化したモル%で)及びレブリン酸(LA)及びγ−バレロラクトン(GVL)の濃度(流出流のモル%)を示す。
【0037】
【表2】

【0038】
実験3
この実験は、等温条件下で行った本発明方法の工程(b)を示す。
内径15mmの反応器管に、炭化珪素粒子30gで希釈した触媒粒子17g(直径1.6mmの円筒形押出物)からなる固定床を装入した。触媒は、表面脱アルミ化ZSM−5 25重量%及びシリカバインダー75重量%からなる酸性担体上にPtを0.7重量%含有するものである。
【0039】
反応器管をオーブンに入れ、1時間当たり30リットル(STPで)の水素流速下、300℃で8時間還元し、45バール(絶対圧)の圧力に加圧後、250℃の温度とした。この反応器に純γ−バレロラクトンの供給原料を1.0g/触媒g/hのWHSVで供給した。反応器には供給原料1モル当たり水素9.1モルの速度で水素を供給した。これらの条件下で供給原料及び流出流は液体であった。稼働450時間後、温度を275℃に上げ、また圧力を10バール(絶対圧)に下げた。これらの条件では供給原料及び流出流はガス状であった。
【0040】
稼働490時間後、初期条件(250℃、45バール)で実験を続けた。表3に、流出流中の転化したγ−バレロラクトン(GVL)の転化率(モル%)、及びγ−バレロラクトン(GVL)、ペンタン酸(PA)、メチルテトラヒドロフラン(MTHF)、ペンタン酸ペンチル(PP)及び未知の有機化合物の濃度を示す。
表3に記載の成分とは別に、流出流中にはペンタン及び1−ペンタノールがそれぞれ1〜2モル%、1モル未満の濃度で見られた。
【0041】
【表3】

【0042】
気相条件下での工程(b)の操作を評価するため、更に2つの実験(実験4、実験5)を行った。両実験とも反応は気相条件下で100〜150時間で開始し、次いで操作圧を上げて(同時に温度も変える)、γ−バレロラクトンの分圧をその濃縮圧を強制的に超過させることにより、突然、液相に切換えた。
【0043】
実験4
例1〜3の構成(set up)及び触媒を使用した。触媒床は、この触媒9.6gをSiC 14.5gで希釈したものである。
触媒は、反応前に、10バールで2500Nl/kg/hの水素流中、5時間で125℃に上昇させる温度プログラムに従って還元し、次いでこれらの条件を2時間維持し、更に3.5時間内で300℃に昇温し、最後に、反応温度に冷却する前に、これらの条件で3時間安定化させた。
【0044】
引続き、原料としてγ−バレロラクトンを用いて270時間実験を行った。実験は気相条件下、275℃、水素圧10バール及びWHSV=γ−バレロラクトン2g/触媒g/h、150時間で開始し、次いで細流相操作下、250℃、水素圧45バール及びWHSV=1g/g/hで約100時間行った。
実験中、気相、液相とも触媒活性は低下した。しかし、バレリアン酸誘導体に対する選択率は、気相条件下では150時間約75モル%とかなり安定に維持されたが、細流相に切換え後は<10モル%に急速に低下し、一方、メチルテトラヒドロフランに対する選択率は85モル%に上昇した(図3及び表4参照)。
【0045】
実験5
構成は例4と同様であり、触媒床は、例4で使用した触媒と同じ触媒12gをSiC24gで希釈して構成される。この触媒は例4に示す条件と同じ条件で還元した。
【0046】
次いで実験は気相条件下、250℃、WHSV=GVL2g/触媒g/h及び水素圧9バール、更に水素/GVLモル比=10、120時間で開始し、続いて細流相操作下、275℃、水素圧60バール及びWHSV=2g/g/hで約60時間行った後、275℃、水素圧10バール及びWHSV=2g/g/hで約120時間の気相条件に戻した。気相操作(250℃、10バール)では高い初期活性及びバレリアン酸(VA)に対する高い選択率が得られた。触媒活性は実験中、単調に低下した。しかし、選択率は気相操作中、約80%と高いままであった。液相操作(275℃、60バール)に切換えると、転化率は一旦上昇したが、経時と共に活性及び選択率とも低下した。この圧力を10バール(275℃、10バール)に降下させることにより、気相に切換えると、転化率の初期低下が生じたが、選択率は一部回復し、続いて活性及び選択率とも安定化した(図4及び表5参照)。
【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【符号の説明】
【0049】
1 反応器
2 非酸性不均質水素化触媒含有触媒床
3 水素化金属含有酸性不均質触媒を有する触媒床
6 触媒床2の全流出流
8 冷却器
9 蒸留塔
12 冷却器
20 反応器
22 非酸性不均質水素化触媒含有触媒床
28 冷却器
30 反応器
33 水素化金属含有酸性不均質触媒を有する触媒床
38 冷却器
39 蒸留塔
42 冷却器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】WO2006/067171

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)レブリン酸を含む供給原料を水素化条件下、水素の存在下、固体触媒担体上に水素化金属を担持してなる非酸性不均質水素化触媒と接触させて、γ−バレロラクトンを含有する第一流出流を得る工程、
(b)該第一流出流の少なくとも一部を水素の存在下に強酸性触媒及び水素化金属と接触させる工程、
を含む、レブリン酸のペンタン酸への転化方法であって、工程(b)はペンタン酸及び未転化γ−バレロラクトンを含有する第二流出流を得るため、1パス当たり70重量%以下の転化率で操作すると共に、該未転化γ−バレロラクトンは工程(a)及び/又は工程(b)に再循環することを特徴とする該方法。
【請求項2】
工程(b)において前記第一流出流の全体が強酸性触媒及び水素化金属と接触する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一流出流の一部が工程(a)に再循環される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記再循環される第一流出流の一部が、工程(a)に再循環される前に冷却される、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは40〜100℃の範囲の温度に冷却される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)が連続撹拌槽反応器(CSTR)中で行われる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)が非酸性水素化触媒の固定床を有する固定床反応器中で行われ、かつ前記転化方法は該非酸性水素化触媒の固定床への段階的供給を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)において前記第一流出流を強酸性触媒及び水素化金属と接触させる前に、該第一流出流から水が分離される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記再循環される未転化γ−バレロラクトンが、工程(a)及び/又は工程(b)に供給される前に冷却される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)が150〜250℃の範囲の温度で行われる請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)が200〜300℃、好ましくは240〜280℃の範囲の温度で行われる請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)が工程(a)よりも低い温度、好ましくは30〜100℃の範囲低い温度で行われる請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)における前記強酸性触媒及び水素化金属が、水素化金属含有不均質強酸性触媒中に配合される請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)における前記強酸性触媒が液体強酸性触媒であり、前記水素化金属が固体非酸性触媒支持体に担持される請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)が少なくとも部分的に気相条件下で行われる請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−527963(P2010−527963A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508849(P2010−508849)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056293
【国際公開番号】WO2008/142127
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】