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レブリン酸の製造方法
説明

レブリン酸の製造方法

【課題】マイルドな条件で反応を行うことによって、高い収率でフルクトースからレブリン酸を製造する。
【解決手段】レブリン酸の製造するための方法は、固体触媒とフルクトースとを含む水性溶媒を加熱することによってレブリン酸を製造する反応工程を含む。当該固体触媒は、スルホ基を有する重合体である。反応工程は、150℃未満の温度で実施される。固体触媒の一例は、複数種のビニル芳香族化合物に由来する複数種の構成単位を含む重合体であって、当該複数種の構成単位は、ジビニルベンゼンに由来する構成単位と、ベンゼン環にスルホ基が導入されたスチレンに由来する構成単位とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レブリン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レブリン酸(levulinic acid)は、2−メチルテロラヒドロフラン、アクリル酸、1,4−ペンタンジオールなどの極めて重要な化学原料として利用が可能である。これまでレブリン酸は、塩酸、硫酸、リン酸などの均一系触媒を用いて糖や炭水化物から合成されてきた。一方、イオン交換樹脂などの固体酸触媒を用いたレブリン酸合成も研究されている(特許文献1および非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2233477号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】R. A. Schraufnagel, H. F. Rase, Ind. End. Chem. Prod. RD. 1975年, 14, 40.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塩酸、硫酸、リン酸などの均一系触媒は、入手が容易で、60〜70%の収率でレブリン酸を合成できる。しかし、これらの均一系触媒は、反応物との分離が困難であり、再使用が難しい。また、これらの触媒を廃棄する際には、大量の塩基性物質が必要であり、また、大量の廃棄物塩を生じるという欠点がある。
【0006】
また、イオン交換樹脂を触媒とする上記非特許文献1の方法では、スクロースをレブリン酸とヒドロキシメチルフルクトース(HMF)に転換しているが、極めて長い反応時間を必要とし、生成物の収率も高くない。また、上記特許文献1の方法では、反応が高温(たとえば150℃)で行われている。
【0007】
このような状況において、本発明は、マイルドな条件で反応を行うことによって、高い収率でフルクトースからレブリン酸を簡単に製造できる方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために検討した結果、本件発明者らは、所定のイオン交換樹脂を用いることによって、簡単に、高い収率でフルクトースからレブリン酸を製造できることを見出した。本件発明は、この新たな知見に基づく発明である。
【0009】
すなわち、レブリン酸を製造するための本発明の方法は、固体触媒とフルクトースとを含む水性溶媒を加熱することによってレブリン酸を製造する反応工程を含み、前記固体触媒がスルホ基を有する重合体であり、前記反応工程が150℃未満の温度で実施される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マイルドな条件で反応を行うことによって、高い収率でフルクトースからレブリン酸を簡単に製造できる
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)実験1で合成された反応生成物および(b)市販のレブリン酸の1H−NMRの結果を示すグラフである。
【図2】(a)実験1で合成された反応生成物および(b)市販のレブリン酸の13C−NMRの結果を示すグラフである。
【図3】本発明の方法において予想される反応機構を示す図である。
【図4】(a)アンバーリスト15の一部の構造、および(b)ナフィオンNR50の一部の構造を示す図である。
【図5】触媒の再生回数と触媒活性との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、以下に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されない。以下の説明では特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。
【0013】
レブリン酸を製造するための本発明の方法は、固体触媒とフルクトース(fructose)とを含む水性溶媒を加熱することによってレブリン酸を製造する反応工程を含む。この方法で用いられる固体触媒は、スルホ基(−SO3H)を有する重合体である。なお、この重合体は、1つの観点では樹脂である。そして、上記反応工程は、150℃未満の温度で実施される。
【0014】
固体触媒は、水性溶媒に溶解しない重合体(樹脂)であり、たとえば粒子状の形態で用いられる。粒子状の固体触媒を用いることによって、反応終了後の反応溶液から触媒を分離して再利用することが容易になる。
【0015】
固体触媒の好ましい一例は、ビニル芳香族化合物に由来する構成単位を含む重合体であって、当該ビニル芳香族化合物に由来するベンゼン環にスルホ基が結合しているものである。ビニル芳香族化合物は、芳香環と芳香環に結合したビニル基とを含む化合物である。ビニル芳香族化合物の例には、スチレンやジニビルベンゼンが含まれる。
【0016】
固体触媒の特に好ましい一例は、複数種のビニル芳香族化合物に由来する複数種の構成単位を含む重合体であって、複数種の構成単位が、ジビニルベンゼンに由来する構成単位と、ベンゼン環にスルホ基が導入されたスチレンに由来する構成単位とを含む。ジビニルベンゼンに由来する構成単位は、重合体中(樹脂中)において架橋構造を形成している。このような固体触媒の例には、ダウケミカル社の陽イオン交換樹脂であるアンバーリスト15(Amberlyst-15)が含まれる。
【0017】
固体触媒の酸度関数H0(ハメットの酸度関数H0)は、−2程度であってもよい。また、固体触媒の比表面積は、50m2/g程度であってもよい。
【0018】
反応は、水性溶媒中で行われる。水性溶媒は水を含む溶媒であり、典型的には水である。
【0019】
水性溶媒中に、固体触媒およびフルクトースを加えて加熱することによって、反応が進行する。反応温度は、150℃未満であり、たとえば、100〜140℃の範囲にあってもよい。反応時間に特に限定はないが、レブリン酸の収率を高めるために8時間以上としてもよく、たとえば8〜48時間や8〜24時間の範囲としてもよい。
【0020】
本発明の好ましい一例は、以下の条件を満たす。
(1)固体触媒が複数種のビニル芳香族化合物に由来する複数種の構成単位を含む重合体であって、当該複数種の構成単位は、ジビニルベンゼンに由来する構成単位と、ベンゼン環にスルホ基が導入されたスチレンに由来する構成単位とを含む(この固体触媒の例にはアンバーリスト15が含まれる)。固体触媒の典型的な一例は、それら2種類の構成単位のみによって構成される。
(2)溶媒が水性溶媒(たとえば水)である。
(3)反応温度が、150℃未満である。
【実施例】
【0021】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例で用いた、アンバーリスト(登録商標)15(Amberlyst-15)、ナフィオン(登録商標)、およびNR50(Nafion NR 50)、およびP123は、シグマ−アルドリッチ社から購入した。なお、P123は、ポリ(エチレンオキサイド)−ポリ(プロピレンオキサイド)−ポリ(エチレンオキサイド)という構造を有するブロック共重合体であり、(エチレンオキサイド)20(プロピレンオキサイド)70(エチレンオキサイド)20という式で示される分子量が5800の共重合体である。また、ナフィオンNR50は、エーテル基とスルホ基とパーフルオロ鎖(炭化フッ素鎖)とによって主に構成される固体触媒である。
【0022】
(SBA−SO3Hの作製)
固体触媒であるSBA−SO3Hを、以下の方法で作製した。まず、2gのP123を、2M(2mol/L)の塩酸50mLに313K(40℃)で2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、4mLの98%テトラエトキシシラン(TEOS)を添加した。8時間の前加水分解期間(pre-hydrolysis period)の後、1mLの3−メルカプトプロピルトリメチルシラン(95%)を上記溶液に添加した。その12時間後に、混合液をオートクレーブ中に配置し、373Kで24時間加熱した。テンプレートとして用いたP123は、エタノールを用いた還流によって除去した。このようにして得られた固体を80mLの5%H22で処理することによって、チオール基(−SH)を酸化してスルホ基(−SO3H)とした。このようにして得られた固体触媒を、遠心分離したのち、洗浄し、333Kで24時間乾燥した。このようにして、固体触媒(SBA−SO3H)を得た。得られたSBA−SO3Hの比表面積をBET法で測定したところ、425m2/gであった。
【0023】
(実験1)
実験1では、アンバーリスト15を触媒としてフルクトースからレブリン酸を合成した。
【0024】
まず、キャップされたガラス管に、0.3g(1.67mmol)のフルクトースと、所定の量(0.1〜0.4g)のアンバーリスト15とを、6mLの水とともに配置した。次に、この混合物を、撹拌しながら、オイルバス中で異なる温度(373K〜413K:100〜140℃)で加熱することによって、反応を進行させた。加熱時間(反応時間)は、8時間または24時間とした。反応後、オイルバスからガラス管を取り出し、すぐに冷却水で冷却することによって、反応を停止させた。次に、反応後の混合液を10倍に希釈し、0.2μmのフィルターでろ過した。このようにして反応生成物を得た。反応生成物の量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。
【0025】
反応生成物の特定のために、反応生成物を精製したのち、1H−NMRおよび13C−NMRの測定を行った。なお、比較のために、市販のレブリン酸(東京化成工業株式会社から入手)についても同様に測定を行った。1H−NMRについて、反応生成物の測定結果を図1(a)に示し、市販のレブリン酸の測定結果を図1(b)に示す。また、13C−NMRについて、反応生成物の測定結果を図2(a)に示し、市販のレブリン酸の測定結果を図2(b)に示す。図1および図2に示すように、反応生成物のNMRスペクトルは、市販品のレブリン酸のNMRスペクトルとよい一致を示しており、レブリン酸が合成されたことが示された。
【0026】
実験1の反応機構の詳細については明確ではないが、現在のところ、図3に示す反応が生じていると考えられる。この反応は、フルクトースからヒドロキシメチルフルフラール(hydroxymethylfurfural:HMF)への脱水反応と、HMFからレブリン酸への水和反応とを含んでいる。この反応では、レブリン酸とほぼ等しいモル量のギ酸(formic acid)が生成する。実験1の反応の条件、反応率、および収率を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示すように、触媒としてアンバーリスト15を用いることによって、マイルドな反応条件において、高い収率でレブリン酸を合成できた。
【0029】
(実験2)
実験2では、触媒を変えたことを除いて実験1と同様の方法で実験を行った。ただし、実験2では、固体触媒については触媒量を0.4gとし、反応温度を393Kとし、反応時間を12時間または24時間とした。
【0030】
実験2では、触媒として、アンバーリスト15、ナフィオンNR50、SBA−SO3H、0.1M(0.1mol/L)の硫酸を用いた。なお、硫酸の使用量は、H+換算で1.2mmolとなる量とした。実験条件および実験結果を表2に示す。なお、表2には、アンバーリスト15、ナフィオンNR50、SBA−SO3Hのイオン交換容量(mmolH+/g)を滴定法で測定した結果も示す。なお、番号17は、触媒を用いない対照実験である。
【0031】
【表2】

【0032】
表2に示すように、アンバーリスト15を用いることによって、特に高い収率でレブリン酸を合成できた。なお、硫酸を触媒とすることによっても高い収率でレブリン酸を合成できるが、硫酸を用いることには上述した問題がある。
【0033】
表2に示すように、アンバーリスト15の方が、ナフィオンNR50よりも触媒活性が高かった。アンバーリスト15とナフィオンNR50は、それぞれ、図4(a)および(b)に示す構造を有し、いずれもスルホ基を含有する。しかし、表2に示すように、両者のイオン交換容量(酸基量)は異なる。また、以下の表3に示すように、両者の比表面積および酸度関数は異なる。触媒活性の差には、これらの物性の差が影響している可能性がある。
【0034】
【表3】

【0035】
(実験3)
実験3では、実験1と同様の条件(ただし、アンバーリスト15の量を0.4gとし、反応温度を393Kとした)でレブリン酸を合成する反応を行った。そして、反応後に濾別したアンバーリスト15を、5mLの水で3回洗浄したのち、5mLのアセトンで2回洗浄し、触媒に付着している有機化合物を除去した。その後、再度5mLの水で洗浄し、2.5mLの1M(1mol/L)の硫酸に318K(45℃)で4時間浸漬した。最後に、5mLの水で2回洗浄を行い、318Kで一晩乾燥した。このように、アンバーリスト15の再生を行い、同一のアンバーリスト15を用いてレブリン酸の合成を6回行った。そのときのフルクトースの反応率、ならびにレブリン酸およびHMFの収率を、図5に示す。図5に示すように、アンバーリスト15は、簡単な再生方法で再生することによって、充分な触媒活性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、レブリン酸の製造に利用できる。フルクトースは、木質系バイオマス(これは、太陽光、水、炭酸ガスから合成される)に多く含まれている。酵素や微生物を使用しない本願発明のレブリン酸の製造方法は、バイオマスからの化成品合成への可能性を切り開き、石油に依存しない社会の構築に寄与すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レブリン酸の製造方法であって、
固体触媒とフルクトースとを含む水性溶媒を加熱することによってレブリン酸を製造する反応工程を含み、
前記固体触媒がスルホ基を有する重合体であり、
前記反応工程が150℃未満の温度で実施される、レブリン酸の製造方法。
【請求項2】
前記反応工程が、100〜140℃の範囲にある温度で実施される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記固体触媒は、ビニル芳香族化合物に由来する構成単位を含む重合体であって、前記ビニル芳香族化合物に由来するベンゼン環にスルホ基が結合している、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記固体触媒は、複数種のビニル芳香族化合物に由来する複数種の構成単位を含む重合体であって、
前記複数種の構成単位は、ジビニルベンゼンに由来する構成単位と、ベンゼン環にスルホ基が導入されたスチレンに由来する構成単位とを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記水性溶媒が水である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103921(P2013−103921A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250429(P2011−250429)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【Fターム(参考)】